﻿キャー！
七不思議の謎を解いてほしいの
金田一君 あなたにね
この事件 必ず解決してみせる
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて！
あっ
あった
あー！
消えてたの その首つり死体
その後も同じものを見た
生徒がたくさん出て
ついに扉は閉ざされ
鍵が掛けられた
開かずの生物室 それが
不動高校旧校舎にまつわる
七不思議の１つになったの
開かずの生物室？
知らなかった？七不思議
じゃあ あと６つも
不思議があるの？あの旧校舎に
イエース　２つ目
手首のはい回る印刷室
３つ目 血を吸う井戸
６つ目まで分かってるの
７つ目だけ謎
最後の１つを知ったら
殺されちゃうんだって
放課後の魔術師に
放課後の魔術師？
そう　正体は分からないけど
旧校舎に住んでるってうわさ
まさかね　あっ
キャー！
血 血だ！
あっ 違うよ　見て
ケチャップ
あー 食った　食った
はじめちゃん また授業
サボってると思ったら
やっぱりこんな所で
美雪 うまかったぞ オムレツ
ごちそうさーん
これ あたしの？
あしたは もうちっと腹にたまる
おかず頼むわ よっ
おー足がイチー あイチチ…
信じらんない
金田一一　人類のクズよね
数学 また０点だって
優等生の美雪と幼なじみなんて
ウソみたい
はじめちゃん これ
あー 今朝 頼んどいた宿題
もう できちゃったの？
サンキュー
やっぱり自分の宿題は
自分でやって
えー？
いつもやってあげたら
はじめちゃんのために
ならないもん
どケチ　幼稚園の時は
もっと優しかったぞ
ダメだったらダメ
意地悪　頼むってば
ダメ！
相変わらずね 金田一君
桜樹先輩
放っときなさい
幼なじみのタコ娘なんて
タ… タコ
あなたの隠された価値が
分かってるのは 私だけ
あの…
私？
ミステリー研究会の会長
桜樹るい子よ これは任せて
あ… やってくれるんですか？
先輩
その代わり お願いがあるの
金田一君
あなたに解いてほしいのよ
不動高校 七不思議の謎をね
七不思議の謎？
ミステリー研究会の部室って
私 初めて
何で美雪がついてくんだよ
はじめちゃん
何するか分かんないでしょ
監視役よ
ちわーっす
ん？
何だ？お前は
ああ 金田一です
桜樹さんに
ここに来るように言われて
あの桜樹くんが
スカウトしたって言うから
どんな切れ者かと思ったら
およそ推理という知的なものとは
縁遠そうなヤツだな
あっ やっぱりそうだ
新聞に載ってた真壁誠さんでしょ
推理小説大賞に入賞した
｢死体はかく語る｣
今ベストセラーの第２位だ
真壁君は
今やマスコミのスターだよ
天才高校生作家って
誰かの書いたやつは
予選も通らなかったんだっけな
的場先生がポスターを
あんな所に貼らなけりゃ
尾ノ上 お前にも１枚ぐらいは
やってもよかったんだけどな
何やってんだ？
別に
続けてください
気持ちわりーな　ああっ
ああっ すいません
ありがとう
それ ひょっとして手術用の手袋？
彼女は病的に潔癖症でね
何か俺 場違いな感じ
しかしこれ 困ったな
何なんですか？
誰も読めないんですよ
桜樹先輩の暗号なんです
この意味が分からなきゃ
今度の合宿に
参加させないって言うんだ
彼女らしい気まぐれだよ
恐らく意味なんかないのさ
何だ 合宿の日程じゃん これ
え？
こうすりゃ ゴールデンウィークの
カレンダーになるだろ
ホ… ホントだ
合宿は
ゴールデンウィークってことだよ
すごい はじめちゃん
マッチでかけるを作るところが
ミソよね
かるちん かるちん
見事ね 金田一君
バカバカしい 偶然さ
彼は あの名探偵
金田一耕助の孫なのよ
ＩＱ180の天才的頭脳の持ち主
ＩＱ180 あいつが？
それでは部会を始めます
今日の議題は
最近うわさになってる
不動高校旧校舎にまつわる
七不思議のことなの
７つ目を知ってしまうと
放課後の魔術師に
殺されるとかっていう あれかい？
その放課後の魔術師から
校長宛てに脅迫状が届いたのよ
え？
え？
放課後の魔術師から脅迫状？
学校側がこの旧校舎を
取り壊そうとしてるのは
知ってるでしょ？
脅迫状には もし旧校舎を壊せば
７つの呪いが降りかかると
旧校舎を壊せば
呪いが
なぜそんな脅迫状を　それを
近々迫った創立祭のテーマにして
すべての謎を 我が
ミステリー研究会が究明するの
もちろん七不思議の最後の１つも
明らかにしてみせるのよ
一応 ミステリー研究会の
顧問として言わせてもらうよ
はい 的場先生
昔 七不思議の１つを知ろうとして
行方不明になった生徒も
いるそうだ
もし君たちに何かが起こっ…
科学を追及する
物理の先生らしからぬ
お言葉ですね
しかし問題を起こしてからでは…
責任を追及されて
困るのは私… ですか？
いや その…
ご心配なく
調査には細心の注意を払います
いいわね？みんな
ほら 見て
ミステリー研究会の会報 10年前の
書庫で見つけたの
ひょっとしたら これが
カギを握ってる可能性もあるのよ
勇敢なんですね 桜樹先輩って
私 金田一君の才能に
一番期待しているの
あなたならきっと
謎の究明に一役買ってくれるわ
頼んだわよ
やっぱりここにあったんだ
謎を解くカギが
謎の解明 進んでるようだね
真壁君 まだいたの
相変わらず冷たいなあ
私ね 頭のいい男しか
好きになれないの
俺は天才高校生作家だぜ
そうね　それが本当に
あなたの実力だったら
ステキだったのに
クソ… あの女
はい 約束の
人に見られたらどうする
もしバレたら
俺の名声はおしまいなんだぞ
私の推理が当たってるとしたら
恐らく…
やだ 地震？
イヤー！
やっと 収まった
ほんっとにボロいんだから
この校舎
こっ これは…
そうか
分かった　七不思議の謎が
ねえ はじめちゃん
どれならいいの？明日のお弁当
桜樹先輩 何でまた
俺に肩入れしてくれんだろう
ひょっとして 俺ってモテモテ？
んもう はじめちゃんったら
電話だ
はい 金田一
あー 桜樹先輩
そう ついに分かったの
七不思議の最後の１つが
ホントですか？
とにかく 今すぐ来て
面白いもの見せてあげる
何もかも 私の推理どおりだった
でも あんな恐ろしい秘密までは…
きっと彼 驚くわ
七不思議の最後の１つか
大丈夫かな？それを知ると
放課後の魔術師に
殺されちゃうって
そんなの作り話だよ
不気味ね 夜の学校って
そう？
あ ここだ
昔 印刷室だった…
七不思議の２つ目ってここよ
昔 この印刷室で男子生徒が
自分の手首を裁断機で
切り落としちゃったの
そのまま出血多量で死んじゃって
ところが
その後 いくら捜しても
切断された手は
見つからなかったの
それ以来 夜になると この中で
手首が はいずり回る音が…
何？はじめちゃん
今 何か妙な音が
ま まさか
やめてよ
ほら 後ろー！
キャー！
なーんてね
もう はじめちゃんたら！
あれ
真っ暗ね
君も呼び出されたのかい？
うわー！
あのヘンな電話で
びっくりしたー
ごめん ごめん
電気つけようと思ったら
君たちが入ってきたもんだから
みんなも桜樹先輩の電話で？
僕のは妙な男の声でしたよ
10時に死の儀式が行われるから
来いって
死の儀式？
こら！お前たち何をしている
電話で呼び出されただと？
ええ　どこ行っちゃったんだろう
桜樹先輩
そろそろ10時だぞ
死の儀式の時間だ
怖いこと 言わないで
見回りに行く　お前たちは帰れ
一緒に行っていいですか？
はじめちゃん
妙な予感がするんだ
みんな ここで待っててくれ
あの… ここじゃなくて
旧校舎の方を見回りませんか？
何か起こりそうな気がして
心配なら この新校舎からだって
旧校舎が見える
改めて見ると
相当 老朽化してるな
もうじき壊される運命か… ん？
明かりが
妙だな
あの突き当たりは 開かずの生物室
誰も入れないはずだが
開かずの生物室？あっ
あれは…
桜樹先輩！
な 何だ
先輩！
間違いない　生物室だ
開かない 鍵は？
鍵なんてないから
開かずの生物室なんだ
くっそー
どうかしたのか？
真壁先輩 この中で桜樹先輩が
つるされてたんだ
放課後の魔術師に
放課後の魔術師に？
何事かね
はじめちゃん どうしたの？
佐木 お前も手伝えよ
いえ 僕は
今 手が離せませんので
消えてる　死体も ろうそくも
そんなバカな この目で確かに
内側から全部 鍵がかかってる
窓から出たわけでもない
じゃあ 我々が見たものは…
どうしたの？みんな
何だか七不思議
そっくりじゃないですか？
開かずの生物室で
つるされた死体が消えるなんて
縁起でもないこと言わないでよ
ねえねえ ゆうべのこと
私 分かっちゃった
要するに みんな桜樹先輩の
いたずらだったのよ
面白いもの見せてあげるって
電話で言ってたんでしょ？
だと いいんだけど
何かあったのかな？
美雪！
美雪 美雪
大変
何？
開かずの生物室で…
さあ 早く教室に戻るんだ
来ちゃダメだって言ってるだろ
戻りなさい
何度言ったら分かるんだ お前ら
授業が始まるぞ
おい
何だよ 押すなよ
通して 通して
あっ こら お前
バカな…
桜樹先輩
おい 早く教室に
おいっ 君
私 金田一君の才能に
一番期待しているの
あなたならきっと
謎の究明に一役買ってくれるわ
放課後の魔術師
お前の仕業なのか
この事件 きっと解決してみせる
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて
桜樹先輩は殺された
あの夜 俺たちの見た死の儀式は
幻なんかじゃない
先輩が俺に残した 奇妙な暗号は
きっと
放課後の魔術師に関係がある
後ろに迫る黒い影
そして起きる第二の殺人
え？美雪がいない？
美雪 美雪はどこにいるんだ
次回 金田一少年の事件簿
君にこの謎が解けるか
真犯人は この中にいる
七不思議の謎？
金田一君
あなたに解いてほしいのよ
放課後の魔術師 お前の仕業なのか
桜樹先輩
この事件 必ず解決してみせる
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて
ねえ 見た？桜樹先輩の死体
七不思議そっくりに
つるされてたんだって
やめて　怖い
七不思議に首を突っ込むからだ
放課後の魔術師に殺されたのよ
桜樹先輩
よう
お？あっ剣持のおっさん
この事件は
俺が担当することになったよ
警部殿　お知り合いですか？
昔 ちょっとな
捜査に協力してもらったことが
よろしくしてやってくれ 金田二だ
金田一だよ
今までに分かったことは？
検視の結果
被害者 桜樹るい子が
亡くなったのは
昨夜９時から10時と推定された
ゆうべ？
じゃあ やっぱり
あれが死の儀式だったんだ
聞くところによると
ゆうべ被害者が亡くなった時間に
この旧校舎にいたのは
君たちだけだったそうだな
はい　僕たち奇妙な電話で
呼び出されたんです
な？
警備員の立花さんでしたな
私は見たんだ
仮面を着けた男がこの教室に…
その時 立花さんと俺は
ここに立っていた
この旧校舎と新校舎の見取り図か
そして ここからこの教室
開かずの生物室で行われている
死の儀式を目撃したんだ
俺たちは すぐ走った
それから生物室の
扉の前に着くまで
生物室が視界から消えたのは
この間 わずか数秒だけなんだ
ところが扉を開けた時には
何もかもが消えていた
消えた？
つまり犯人は たった数秒間で
先輩の死体を下ろし
室内を片づけて
あの扉から運んだことになる
窓から外に運んだんだろう
いや それはありえない
窓に 全て内側から
鍵がかかってたんだ
じゃあ 他にどんな方法で
消えたというんだ？
まるで魔法
魔法？
ヤツだ
ん？
ヤツの魔術だ
やはり生きていたんだ
的場先生　今 何て？
｢やっぱり生きてた｣
そう言いましたよ
どういうことですかな？先生
これは正式な尋問と
取っていただいて結構
は… 話すのも恐ろしいです
たぶん放課後の魔術師は
実在の人物なんだ
え？
実在の人物？
まだ この旧校舎を使っていた頃
この学校に頭文字Ｍという
奇妙な教師がいたらしい
Ｍが夜ごと
おかしな儀式をしている
そんなウワサがたち
ある夜 好奇心に駆られた生徒が
ウワサを確かめに
この旧校舎に入ったそうなんです
すると…
すでにＭの姿はなく
｢我は永遠にこの校舎に棲み着く｣
それっきり
その男は消えうせたと？
それが放課後の魔術師の正体？
じゃあ 今もこの旧校舎に住んで…
バカバカしい
これは オカルトや迷信じゃない
現実の殺人事件なんだ
その魔術師とやらに
変装したやからが
死体を運び出したに決まっとる
たった数秒間にですか？
んん とにかく
問題の時刻 この旧校舎の
どこで何をしていたか
１人ずつ聞かせてもらおう
つまり警部さんは
僕たちの中に犯人がいると
おっしゃるわけですか？
おい あれは真壁誠じゃないか
ああ そうだよ
捜査のプロともあろう方なら
もう少し頭を使って
いただきたいものですね
真壁って何者だ
高校生推理作家だよ　賞を取った
僕の推理をご覧にいれましょうか
これは見ものだぞ
天才推理作家 本物の事件に挑戦
昨夜 金田一君と立花さんが
死の儀式を目撃したのは
９時40分でした
彼の大声で
僕 的場先生 七瀬君が駆けつけた
そして佐木君が来たのが ９時42分
40分だの 42分だの
なぜ そんな細かいことまで？
佐木君のビデオですよ
ゆうべの様子は全て
記録されていたんです
扉を開け 最後の尾ノ上君が
到着したのが ９時45分
つまり たった５分の間に
あの夜 旧校舎にいた全員が
そろっていた
おお…
わずか５分で死体 他全てを
運び去り 仮面を外して現れる
一体 可能でしょうか
この窓の鍵を見てください
これは？鍵の取っ手に傷
つまり これはワイヤーを使った
簡単なトリックですよ
ワイヤー？
ワイヤーを鍵の取っ手に結びます
その端を煙突穴から外へ垂らし
犯人は僕らがドアに
体当たりをしている間に
死体や ろうそくを外に出します
そして犯人も窓から外へ出ると
窓を閉め あとは煙突穴から
垂らしたワイヤーを引っ張る
そのまま引っ張れば密室の完成だ
なるほど
そして僕らが帰ったあと
犯人は元どおりに
セッティングした
警部　煙突穴を調べてください
今 付いたのとは別に もう１つ
ﾜｲﾔｰの跡があるんじゃないかな
おっ 警部　ありました
何だと？
ここです
こんな初歩的な密室トリックも
見破れないとはね
君のおじいさんは
名探偵だったかもしれないが
その才能は
君には遺伝しなかったようだ
ご覧のとおり
犯人は外部の人間だ
まあ 逮捕も時間の問題でしょう
さすが真壁君
天才推理作家
じゃあな
じゃあね
先輩
はじめちゃん　何考えてるの
ないんだ
えっ
見つからないんだ　会報が
会報？
ミステリー研究会の会報
10年前の
書庫で見つけたの
ひょっとしたら
これがカギを握ってる
可能性もあるのよ
あの会報がないの？
それとフロッピーもね
あの時 先輩は亡くなる間際まで
ワープロを打っていたはずだ
最後に何かをフロッピーに
書き残した可能性だってある
なのに消えてる　２つとも
はじめちゃんは真壁さんの推理
信じてないのね
あんな大掛かりな犯行を
やってのけた犯人が
ワイヤーなんて安っぽい
トリックを使うとは思えないんだ
あんな大きな傷を残すなんて
たぶん犯人は わざとトリックを
見つけてほしかったんだよ
なぜ あそこまで
七不思議を演出したんだ
なぜ脅迫状まで出して
旧校舎の取り壊しを
やめさせようとするんだ
美雪　犯人の狙いは
底知れないほど
深いところにあるんだよ
え？本当ですか？
ああ
10年前 やはり
七不思議を調べていて
行方不明になった女子生徒が
いるらしいんだ
10年前
青山ちひろ　やはり
ミステリー研究会の部員だった
青山ちひろ
知りたがりの彼女が
放課後の魔術師の餌食になった
当時 そうウワサになったそうだ
何だか似てる　今度の事件と
何か イヤな予感がするぜ
金田一の先を越してやったよ
この桜樹さんの
フロッピーを読めば
ひょっとして
犯人が分かるかもしれないよね
そうしたら僕の推理って
ことにして発表するんだ
真壁なんかよりスターになれるぞ
やっぱり彼女 書き残してるぞ
これだ
それは
暗号か？くそ 必ず解いてやる
くそ
待てよ　もしかしたら この暗号は
こうして こうすると
分かった 分かったぞ
解けた
まさか
死体の状況は？
死因は頭蓋骨骨折による脳挫傷
出血が少ないところから見て
布のような物を巻きつけた
ハンマーのような鈍器で
頭をめった打ちにしたものと
思われます
おっさん
２人目の犠牲者だ
尾ノ上さん
また七不思議に見立てた
殺人ですね
手首が はい回る印刷室
これは血じゃない　ペンキだ
警部　死体が
握りしめていたものです
ん？鍵だ　なぜこんなものを
それは開かずの生物室の鍵だ
ずっと前に
なくなっていたのに　なぜ
やはり放課後の魔術師だ
我々が旧校舎を壊そうとする限り
第２ 第３の殺人を続ける気なんだ
校長先生
これ以上ヤツに
いけにえを捧げるわけにはいかん
旧校舎の取り壊しは中止だ
尾ノ上さんまで あんな姿に
ひどい顔だぜ　拭けよ
はじめちゃん
これ ハンカチ？
幼なじみだろ
鼻水 付いてるぐらいでビビるなよ
鼻水？うわー
はじめちゃん
問題は尾ノ上さんが
殺された場所だ
印刷室じゃないの？
尾ノ上さんはたぶん
別の場所で殺されたはずだ
致命傷となった頭部からの出血が
ほとんど残ってなかった
犯人は尾ノ上さんを殺してから
印刷室に運び
そのあと 七不思議に見立てたんだ
殺害現場は そう遠くない場所
恐らく旧校舎の…
美雪　見ろ
ええ？
ああ
血だ
それじゃ…
尾ノ上さんは ここで殺されたんだ
まさか
え？
尾ノ上さんは
桜樹先輩のフロッピーを持ってて
それを このワープロで
読んでたんじゃ
桜樹先輩のフロッピーを？
その時 後ろから犯人に
やっぱりフロッピーは抜かれてる
じゃあ犯人にとって
絶対に知られたくないことが
書かれていたの？
誰だ？
美雪は そこにいろ
立花さん
立花さん　どうかしたんですか？
ああっ それは
桜樹先輩が持ってた会報
どうして立花さんが
彼女が亡くなった朝 見つけたんだ
君の役に立ててくれ
｢1987年 それは｣
｢我がミステリー研究会にとって
悲しい年になった｣
｢警察が手を尽くしているにも
かかわらず｣
｢失踪した青山ちひろの
手掛かりは何も見つからない｣
｢次の原稿は
彼女が残したものである｣
｢私 青山ちひろは
不動高校旧校舎にまつわる｣
｢六不思議の謎を
解き明かそうと調査してきた｣
ちょっと待て　六不思議？
七不思議じゃないのか？
ううん　六不思議って書いてある
六不思議？妙だな
｢調べを進めた私は
ある奇妙な事実を突き止めた｣
｢今 旧校舎がある場所には 昔｣
｢高畑製薬の研究所が
建っていたのだ｣
｢その高畑製薬こそが｣
どうした？美雪
ここで終わってるの
｢青山ちひろは
ここまで書いたところで｣
｢プツリと消息を絶った｣
何だって？
他には何か書いてないのか？
あっ 青山ちひろさんの写真
え？
これが… あっ
何だ？この紙は
この字 桜樹先輩のワープロの字だ
ええ？
｢ついに青山ちひろの
亡霊が現れた｣
｢彼女は教えてくれた
七不思議の７番目をその言葉は｣
何なの？これ
暗号だ
そうか そうだったんだ
恐らくあの夜
桜樹先輩は見つけたばかりの
七不思議の７番目を暗号にして
俺に読ませようとしたんだ
そして亡くなる前に印刷して
会報に挟んだ
犯人はフロッピーは処分しても
この紙までは気付かなかった
たぶん 今も
剣持のおっさんに
高畑製薬のことを調べてもらおう
待って　はじめちゃん
あっ
何だよ
ない
何が？
はじめちゃんのハンカチ
いいよ　あんなの
でも はじめちゃんが
ハンカチ貸してくれたなんて
幼稚園の時以来だし
あーらあらあら
たぶん部室だと思うから
一緒に来て
何で？
ああ ひょっとして怖いの？
だって
はじめちゃんの推理によると
尾ノ上さんは あそこで…
まったく美雪は
胸ばっかり大きくなって
臆病なのは子供の時と
一緒だかんなあ
はじめちゃん
ハンカチなんか放っとけよ
それより今は高畑製薬だ
剣持のおっさんに電話 電話
もう いいもん　何があっても
知りませんからね　ベーッ
もう はじめちゃんのバカ
ああっ　真壁さん
さっき金田一と何話してたの？
暗号とか…
真壁さんには関係ありません
教えてくれないの？
僕は金田一なんかより
ずっと君のこと…
やめて
何が言いたい
七瀬美雪が好きなの？
それでも俺にホレてるんだろ
お前は黙って 俺のｺﾞｰｽﾄﾗｲﾀｰを
やっていればいいんだ
どこいっちゃったんだろう
あっ
何だ
誰かに見られてると思ったら
ヤダヤダ　いやらしい目つき
こんなポスター 目の毒だわ
え？
誰かに似てるような
おっせーな　美雪のヤツ
はじめ… ちゃん
助けて…
美雪？
どこ行っちゃったんだ　あいつ
まさか 美雪
落ち着け　俺がもし犯人なら…
何です？血ですか
佐木　七不思議の
３番目って何だ？
え？
１つ目が開かずの生物室
２つ目が手首の はう印刷室
３つ目だよ
確か 血を吸う井戸
そこだ
美雪
しっかりしろ　美雪
美雪 美雪
神様 頼む　お願いです
美雪を助けてくれ
旧校舎に隠された恐ろしい秘密
放課後の魔術師 お前の正体は
俺が必ず暴いてやる
そうか 分かったぞ
桜樹先輩の残した暗号
七不思議の謎　それは…
金田一少年の事件簿
君にこの謎が解けるか
真犯人は この中にいる﻿１０年前　不動高校で
１人の女生徒が行方不明になった
忘れられかけていた彼女の失踪
だが次々と俺たちを襲った
恐ろしい事件の
これが序曲だったんだ
美雪！まさか
何です？血ですか？
開かずの生物室　手首のはう印刷室七不思議の３番目は？
確か血を吸う井戸
美雪　美雪！
娘は？
美雪は　美雪は？
一命は取り留めましたが
後頭部を
激しく打たれておりますので
予断は許せません
恐らく　今夜が峠でしょう
そんな
美雪　美雪
金田一
お前に頼まれた高畑製薬について
調べがついたぞ
お前が言った通り
不動高校の旧校舎なんだがな
３０年ほど前
高畑製薬のものだったよ
そんでな　調べていくうちに
驚くことが分かった
そこで新薬の実験を受けた人間が
全員　行方不明になっていたんだよ６人もな
これは俺の勘だがな
このことは今度の事件と
関係があると思うんだ
もういいんだよ　オッサン
えっ
俺はこの事件から手を引くよ
何を言う
美雪をあんな目に遭わせたのは
俺のミスなんだ
あの時　美雪と一緒に行っていれば
そもそも俺なんかが　この事件に
首を突っ込んだりしなけりゃ
お前の責任じゃないよ
頼む　１人にしておいてくれ
はじめちゃん
助けて…
ばかだ　俺は
美雪　気が付いたのか
さよなら　はじめちゃん
夢…
美雪　美雪！
まさか　冗談だろ
そんな
はじめちゃん
もう大丈夫ですよ　心配ありません
よかったね　美雪
お母さん
どうしたの　はじめちゃん
泣いてるの？
誰が泣いてんだ　ばか
心配させやがって
ったく　この
私　何も見てないの　犯人の顔も
ポスターをはがそうとしてたら
後ろから…
ごめんね
少しでも手掛かりがあれば
はじめちゃんの役に立てたのに
もういいんだ
えっ
真壁の言う通りさ
俺みたいなアホが
事件に首を
突っ込むべきじゃないんだよ
らしくないなあ
えっ？
ちっちゃい頃から負けず嫌いで
正しいと思ったことは
諦めたことなかったのに
はじめちゃん　負けないで
新しい犠牲者が出る前に
一刻も早く犯人を捕まえて
それができるのは
はじめちゃんだけなのよ
美雪
分かった　魔術師の正体は
俺が暴いてやる　必ず
約束よ
どうした？
カーテン閉めてくれる？
そこのビルに朝日が当たって
まぶしいの
ああ　あっ
どうしたの？
もしかして…
そうだったのか　こんなことに
気が付かなかったなんて
はじめちゃん？
分かったぞ　生物室のトリックが
後はこの暗号だ
桜樹先輩も尾ノ上さんも
殺された動機は恐らく
この暗号に関係あるはずだ
先輩は七不思議の謎を解いた
オッサン　調べてほしいことが
あるんだ
僕らに謎を解かせるつもりで
このワープロで暗号を作った
そうか　もう一度やる気になったか
尾ノ上さんは
ワープロに残っていた暗号を
解こうとして殺された
共通するのは暗号とワープロ
この２つを切り離して
考えていたからいけなかったんだ
そうか　これが暗号の意味なんだ
だがこれだけでは　一体…
ポスターをはがそうとしてたら
これだったんだ
桜樹先輩が見たものは
これで　すべてがつながったぜ
謎はすべて解けた
何なんだ
金田一が僕たちを集めるなんて
僕は忙しいんだぞ
私も今夜中に
論文をまとめたいんですが
その本人はまだ来てないんですか
さあ　新校舎のこの廊下に
集めてくれと言われただけで
俺もさっぱり分からんのだ
ったく
警部さん
えっ
あれは
あっ　あいつだ　あの時のあいつだ
金田一先輩
魔術師　くそっ
これは
消えた　何もかも
あの時と同じだ
キャー
きっ　貴様
待ちなよ　オッサン
何？
金田一先輩
どういうことだ
あの日　桜樹先輩を殺した犯人は
今と同じトリックを使って
死の儀式を俺たちに見せたのさ
そしてその犯人
放課後の魔術師は
この中にいる
何？
そいつが尾ノ上さんも殺害し
美雪にも重症を負わせたんだ
何をばかなことを
この中に犯人がいないことは
僕がすでに証明済みじゃないか
犯人がワイヤーの傷を
窓に残してたってやつかい
そうだ
とんでもない
あの夜の犯人も
そして今日の俺も
この生物室には
一歩も入ってないんだよ
死の儀式は
別の部屋で行われたんだ
別の部屋で？
来なよ
ここ　物理室じゃないか
さあ　これを見るんだ
うわあ
何だ　人形か
さっき見たのはこれか
なんと…
でも新校舎から
ここは見えないですよ
ああそう　そういえば
そのトリックのタネはこれさ
鏡
確かに新校舎から見ると
正面は生物室になり
物理室は全く見えない
だが　ここに
この鏡を斜めに置くとどうなるか
あっ
そう　鏡に映った物理室の光景は
あたかも突き当たりの生物室で
起こったことのように見えるんだ
事件の夜　犯人は廊下に鏡を設置し
生物室ではなくこの部屋に
儀式のセッティングをした
俺たちが目撃し
開かずの生物室へと走りだした時
犯人は急いで鏡を片づけ
行き過ぎるのを待った
後は何くわぬ顔で
俺たちの後ろから出てきたんだ
そしてみんなが帰った後
壊れた扉から堂々と入り
死体をつり上げ　さらに窓の鍵や
煙突の穴に傷をつけた
あたかも
ワイヤーを使ったトリックで
窓から逃げたと
見せかけるようにね
見せかけただと？
そうさ
あんたの推理は
犯人のシナリオ通りだったんだ
やつのアリバイ作りに
利用されちまったんだよ
あの夜　このトリックを使えた者は１人しかいない
放課後の魔術師に成り済まし
桜樹先輩を殺し
尾ノ上さんを殺し
美雪を襲った犯人
それは　あんただ
放課後の魔術師
それはあんただ
えっ
えっ
えっ
わっ　私が放課後の魔術師？
何？
そんな
的場先生が？
違う　私じゃない
でも先輩　犯人は
生物室の鍵を持っていたんでしょ
何で　わざわざそんなトリックを
それが証明されない限り　先生とは決めつけられないんじゃ
その鍵で本当に
生物室に入れたのかな
オッサン　持ってきてくれたかい？
立花さん
これは生物室の鍵ですよね？
間違いない
犯人がこの鍵を尾ノ上さんの
死体のそばに置いたのは
鍵を使って中に入り
窓から逃げたと思わせるためだ
だけど７年もの間
使われなかった鍵が
動くとは限らない
確かに
錆び付いたり　詰まっていたり
貸せ
回らない　くそ
ということさ
あの夜　蹴破られるまで
この扉は開かなかったんだ
なのに　なぜ
この扉が開いてるのが見えたんだ
中の儀式まで
鏡だ　それ以外にない
違う　違う　私じゃない
大体どうして　私が自分の教え子を殺さなきゃならないんだ
動機がないじゃないか
動機ならあるさ
とうとう明かす時が来たんだ
あんたが３０年間必死になって
隠し続けてきた過去を
あっ…
３０年ほど前　この場所には
高畑製薬という
薬品会社の研究所があったんだ
当時は危険な副作用のある薬が
まだまだ存在していた頃だ
この研究所でも
ある新薬が開発され
人体実験を行うため
６人の人間が雇われたんだ
人体実験？
しかし実験は失敗し
６人は全員死んでしまった
研究員たちは焦った
もし　こんなことが世間に知れたらおしまいだ
そこで彼らはこの研究所に
６つの死体を隠した
土台に塗り込めたり
コンクリートに詰めたり
そしてその建物をそっくり
不動高校に寄付したんだ
それがここ　旧校舎というわけさ
だが隠した死体が何かの偶然で
発見されないとも限らない
そこで研究員たちは
仲間をひそかに送り込んだんだ
そして死体を隠した場所に
六不思議の怪談話を流した
生徒が近づかないようにね
死体の番人
つまり送り込まれた研究員
それが的場先生だったんだよ
ちょっと待て　六不思議だって？
怪談は７つだぞ
７つ目は後で作られたのさ
後で？
１０年前にこの旧校舎に
６つの死体が
隠されているという事実を
知ってしまった生徒がいたんだ
青山ちひろ
彼女はこの事実を
発表しようとした矢先に失踪する
まっ　まさか
殺されたんだよ
えっ
的場先生は彼女を隠し
７つ目の怪談を流した
恐ろしいうわさのお陰で
この旧校舎は寂れ
埋められた７つの死体は
誰にも発見されないはずだった
旧校舎を壊すという話さえ
出なければね
そうか　それで校長宛てに脅迫状を
この校舎が壊されれば
中の死体が…
だから工事を
中止させようとしたんだ
だがあんたの誤算は
それだけじゃなかった
またしても　この事実を突き止めた生徒が出てきてしまったんだ
桜樹さん
先輩はそれを
暗号にして残していた
暗号？
この暗号を解くには
ワープロのローマ字入力モードで
打ち直すんだ
ローマ字入力
「の」の文字はローマ字入力では
「Ｋ」になる
「ち」の文字は「Ａ」だ
これを打ち込むと
「か」の文字が出てくる
この調子で打っていくんだ
のちこいみにくらみいきちの
ちのなとちすいかいにすな
「壁に骨が隠されている」
美雪はポスターをはがそうとして
襲われた
ポスターを？
これが７つ目の怪談の真実だ
的場先生　あんたが殺した
青山ちひろさんだよ
ああっ　ああ…
先生　先生　こんなこと
許されると思っているんですか
これは明らかな犯罪です
待ってくれ　青山くん
これは私のせいじゃないんだ
いくら過失でも
これは犯罪ですよ
すべてを警察へ話してきます
話を聞いてくれ
もう先生と話すことなんて
ありません　放して
あっ　ああ…
青山くん
殺す気なんかなかったんだ
あれは事故だったんだ
金田一くんの言う通り
私は社長の命令で
この学校に送り込まれた
だが　いつしか
死の番人だということを忘れ
教師として
平穏な日々を送っていたのに
もうおしまいだと思った
だから
このままでは旧校舎へのことは
私が疑われてしまう
そこで鏡のトリックを思いついた
アリバイを作るため
真壁くんを呼び出し
死の儀式を
尾ノ上と七瀬くんは
彼が暗号を解こうとしたから
七瀬くんは
ポスターをはがそうとしたから
なんてやつだ
自分の身を守るため
罪もない生徒を次々と
怖かったんだ　この３０年
死体を見つけられたらと
夜も眠れなかった
怖かった　不安だった
それなのに
どうして　そっとしておいて
くれなかったんだ
社長も仲間もみんな死んで
私も穏やかに暮らしていたのに
お前らが…　お前らが悪いんだぞ
お前らが勝手に首を突っ込むから
私は悪くなんかない
うわあ
立花さん
何をする
立花さん
やめろ
佐木　救急車だ
はい
放せ　こいつだけは…
やめるんだ　立花さん
いや　青山さん
青山？やはりそうか
違いますか？あなたは
ちひろさんのお父さんでしょ
こんなことしたって
娘さんは戻らないよ
青山さん
私はこの日のために　この学校に
ちひろが
蒸発なんてするわけがない
きっと何かあるに違いないと
それが…　ちひろ…
死にたくない…
先生
目が　目がかすんで
死ぬのは嫌だ…
助けて
１０分で来るそうです
いや　もうだめだ
放課後の魔術師は
もう二度と現れない
永遠にな
こうして七不思議殺人事件は
幕を下ろした
警察の調査の結果
旧校舎の中からは
６体の人骨が発見され　解体作業は予定通り行われることになった
そして数日後
父親のいない青山家で
ささやかな葬儀が行われた
桜樹先輩
ここには放課後の魔術師なんて
いなかったよ
いたのは過去におびえ
罪を重ね続けた
哀れな人間だけだったよ
そう何もかも終わったのね
ああ
ちゃんと果たしてくれたね　約束
んー　んー
しかし生物室の鍵が
壊れていたのかなあ
鑑識から聞いてなかったけど
お前よく知ってたなあ
別に壊れてなかったんじゃない？
あの鍵
なっ　何？でも　あの時…
あまいね　オッサン
こうしといたのさ
お前ってやつは
苦しい　苦しい
やかましい　参ったか
このお
逮捕するぞ
やめてくれ
よーし　美雪と高級リゾート村
悲恋湖へのランデブー
と思ったら
恐ろしいニュースだもんな
殺人鬼ジェイソンが脱獄？
場所だって俺たちのロッジの
すぐそばじゃないか
あっ　湖が血に染まっていく
金田一少年の事件簿
君にこの謎が解けるか
真犯人はこの中にいる
うわあ
はじめちゃん
ジェイソンにやられたんだ
ジェイソンだと？
冗談じゃないぞ
殺人鬼がこの近くにいるなんて
何がなんでも
俺が正体を暴き出してやる
終わった
ついに明日から連休だ
いいよなあ　学生は
こっちは　事件　事件で
１日の休みもねえってのによ
おお　剣持のオッサン
ったく　大人が働いてるってのに
ガキどもは連休にデートか
お前には
そんな相手もいねえだろうがな
あのなあ
俺だってデートの相手ぐらい…
どこにいるんだ？
うっ　それはその…
あっ　いた
ゴールデンウィークは
美雪と２人で…
あっ
なぬ？なっ　何なんだよ
あの男は…
あら？美雪と
前の生徒会長の遠野先輩
遠野？
あの２人　中学時代は
よくデートしてたってうわさよ
復活したんだ
遠野と復活？
いいのか？
きっちり自分のものに
しとかねえと　取られちまうぞ
俺はそんなんじゃ…
そうだよな　オッサン…
よーし　こうなりゃ名探偵と
言われたじっちゃんの名にかけて
夜ばいをかけてでも
美雪　お客さんよ
誰？
いとこの茂くんよ
リゾート村４泊５日の旅？
来年オープンの
悲恋湖リゾート村に
モニターとして
招待されたんだけど
大学の試験と重なっちゃってさあ
誰か男の子誘って
俺の代わりに行ってほしいんだよ
男の子と一緒に？
そう
俺の名前で参加してくれなきゃ
困るんだよ
いるんだろ？彼氏の１人くらい
彼氏って…　そんな人
ここにいまーす
はじめちゃん
なんでこんなところに？
それに何その格好？
橘川茂さん　その大役　喜んで
金田一一がお引き受けいたしやす
あっ…
ありがとう
にひひひ
翌日　俺と美雪は
長野県　悲恋湖リゾート
モニターツアーへと向かった
何か気になるのよね
あの茂さんが
こんないい話くれるなんて
いいじゃん　いいじゃん
まっ　楽しく行こうぜ
せっかくのチャンスだし
何のチャンス？
あっ　バスが来た
俺たちが最後の待ち合わせか
あれ　七瀬君じゃないか
えっ　遠野先輩
なぬ？
もしかして君もこのツアーに？
遠野先輩も？
偶然ですね
何でこうなるわけ？
良かったあ　若い人がおって
おっさんばっかりで
どないしよう思うてたんよ
おいおい　俺だってまだ二十歳だぜ
しつこいのは好かん
あんたは要らんの
おっ　かわいい
私　河西さゆり
あんたは？
えっと　僕は金田…
んっん
じゃなかった…　橘川茂
こう見えても大学生なんだ
へえ　若う見えるやないの
では　全員そろいましたので
出発いたします
私は皆様を
案内させていただきます
観月旅行社の
九条章太郎と申します
よろしくお願いいたします
やっと着いたぞ
皆様　ここから先は
自然保護のため車は入れません
申し訳ありませんが
徒歩でお願いいたします
そんな…
健康のためだ
この悲恋湖リゾートは
横浜市に匹敵する広さです
そんなに広いの？
はあ
何だ　このボロいつり橋は
オープンまでには架け替えますが
今のところ　キャンプ場へ行くにはこの橋しかないんです
いやあ　オープンしてから
来たかったあ
うわあ
はじめちゃん
大丈夫ですか
死ぬかと思った
よいしょ
ん？
不動高校　金田一一
バッグにプレートが
ついたままですよ
ああ…
七瀬様がはじめちゃんと呼ぶから
妙だとは思ってましたが…
すみません　橘川茂さんに
代役を頼まれたもので…
困りましたねえ
一緒に連れてってあげては
いかがですか
今から引き返しても
バスはないでしょうし
僕からもお願いします
そうや　歩いて帰れる距離やないし
皆様が
そこまでおっしゃるなら…
いいんですか
良かったあ
でも…　あの　代役じゃ
あの話は権利ないですよね？
そりゃそうよ
橘川さんは権利放棄よ
権利って何のこと？
聞いてなかったのか
このツアー参加者の中から
抽選で２名に
悲恋湖リゾート村の会員券が
当たることになってるんだ
そっかあ　あいつ
自分の名前で参加しろって
やっぱり裏があったんだわ
まっ　いいじゃないの
俺たちは楽しい休日さえ
過ごせればいいんだからさ
見えてきたわ
あれが悲恋湖キャンプ場か
すてきなところね　ロマンチック
ムードばっちしだぜ
この湖には
神秘の伝説があるんだってね
神秘の伝説？
そろそろだな
何が？何があんの？
あら
湖が赤く染まってくわ
決して結ばれない運命の男女が
激しく愛し合い
思い詰めた２人は
来世の約束を交わして
この湖に身を投げたんだ
それ以来
２人が身を投げた時間になると
湖は赤く染まるそうだ
悲恋湖という名も
その伝説から来ているらしいんだ
まあ　単なる自然現象らしいけどね
すてき　遠野先輩って
何でも知ってるんですね
ちっ　知ったかぶり野郎が
はじめちゃん　せっかく説明して
くれてるのによしなさいよ
遠野先輩
美雪…
まるで血の色やわ
では今日の
モニターツアーを祝って
乾杯
ほんと？
私　その子に似てるんですか？
うん　そっくりなんだ
やだ　恥ずかしい
早速　若いカップルができたようね
いや　そんなんじゃ
照れることないさ
私が妻と出会ったのも
キャンプ場なんだ
俺　何しに来たんだろうな
美雪さんのことなんか気にせんと
金田一君は　うちと盛り上がろうや
やっぱり
小林画伯じゃありませんか
じゃないかと思ってたんだが
いや　あなたに会えるなんて
光栄です
俺はフリーライターのいつき陽介
画家の方でしたか
で　どんな絵を？
まだ下描き中だ
こりゃどうも
この人の絵は食事中　見ないほうがいいかもしれませんよ
ねえ小林さん
ここで　臨時ニュースを
お伝えします
今日未明
長野県山下市の刑務所から
死刑囚が脱獄しました
このすぐ近くの刑務所じゃないか
死刑囚の名は刀丸猛人　３５才
１０年前　１３人の村人を殺害した
凶悪犯人です
脱獄死刑囚
なお　犯人の逃走経路は
よりによって　こんな時に
ほお　やつが脱獄とは
え？
１０年前に世間を震え上がらせた
とんでもねえ連続殺人鬼だ
こりゃ　とんだことに
なっちまったな
もし殺人鬼が
ここに逃げ込んじまったら
それこそ
キャンプどころじゃなくなるぜ
嫌やわあ
殺される前に　さっさと
帰ったほうが身のためかもな
じゃ　俺は先にコテージで
寝るとするか　グンナイ
何　あの人
ちょうどいいニュースだ
あれだけ脅かしときゃ
何人かは逃げ帰るぜ
会員券が当たる確率も増える
ふふふ…
早く
はいはい
みんな待ってるんだから
どうもどうも
あとは倉田様がまだですが…
寝てるんじゃないのか？
あんなやつ　ほっといて
早く食べようぜ
賛成
何よ
自分も遅れたくせに
ん？
やや　鳥のフンや
カラスがあんなに…
くそ　せっかくのメシの上に
そんなんじゃダメだ
いやあー
この服は…
顔がめちゃくちゃだ
ジェイソンだ
ジェイソンにやられたんだ
ジェイソンだと？
ジェイソンだと？
同じだ
１０年前に雑誌の取材で見た
ジェイソンの無差別殺人と
その死体も顔を斧で
ずたずたに潰されていた
どうやらこの凶器も
斧みたいですね
傷の深さや切り口を見れば
分かりますよ
じっとよく見ればね
この小林って男
なんでそんなことに詳しいんだ
ほんとにただの画家なのか？
ばかな…
殺人鬼がこの近くにいるなんて
君　早く警察に電話したまえ
はっ　はい
つながらない
電話線を切られちまったようだな
これもジェイソンの仕業なのか？
ダメだ
携帯電話もつながらない
ここは
電波が届かない地区なんです
そっ　そんなあ…
だったら何とかしろ
君は責任者だろうが
ですが　このツアー終了まで
こちらから連絡しない限り
バスも
来ないことになっているんです
ほんなら　うちら
迎えのバスが来るまで
あと４日も
ここにいてなあかんの？
とにかくここを離れましょう
つり橋を越えれば
車が見つかるかもしれません
待って　それじゃ
会員券の抽選の話はどうなるの？
せっかく　ここまで来たのに
おい　こんな時にそんな…
だって
私はそれが目当てで来たのよ
人が１人殺されてるんですよ
見て　あの煙
煙？
ほら　あそこ
あっちは
つり橋のあるほうじゃないか…
まさか
あっ　つり橋が
ああっ
この橋が唯一の脱出ルートなのに
これも犯人の仕業なのか？
たぶんね　見ろ
火はこっち側からつけられてる
そしたら　まさかジェイソンは…
ああ　やつは谷のこちら側にいる
俺たちは
完全に閉じ込められたってわけだ
そんな…
じゃあ一体どうすりゃいいんだ
ジェイソンは
すぐそばにいるかもしれんのだろ
この森を抜けて
助けを呼ぶわけには？
危険すぎます　それは
この原生林を地図もなく
歩き回るなんて自殺行為ですよ
そうよ　第一そんなところで
犯人と鉢合わせしたら…
ふふふ…
面白いことになってきたね
何が面白いんだ
私は
こんなずさんなツアーを企画した
観月旅行社を訴えてやるぞ
落ち着いてください　香山さん
これが
落ち着いていられる状況かね
おい　あんたこんな時に絵なんぞ…
あっ　これは
倉田さんの死体の絵だ
何で死体の絵なんか
ははは　これこそが彼の絵ですよ
小林画伯は日本画壇を騒がせた
天才画家だったが
１０年前のある時期から
死体の絵しか
描かなくなっちまった
あまりにも
生々しすぎる死体の絵に
本当に人を殺したんじゃないか
って噂されるほどだ
なんてやつだ
どいつもこいつも
俺は　こんなところで
殺されるのごめんだ
聖子
荷物をまとめて　ここを出るぞ
私は行かないわよ
何だと？
今　逃げたら会員券の権利が
なくなっちゃうもの
行くなら　あなた１人で行けば？
一緒に森で野垂れ死になんて嫌よ
お前ってやつは　私よりも
会員券のほうが大切なのか？
何よ　あなたこそ財産を餌に
後妻にしたくせに
結婚してみたら
財産はすべて子供に譲与済みで
私には何一つ…
それで　こんな時だけ
一緒に死ねって言いたいわけ？
分かった　勝手にしろ
何で犯人は
橋を燃やしたんだろう
うちらをこの森へ
閉じ込めるためやない？
だけど　俺たちを殺し終わったら
どうする気だ？
橋がなきゃ
自分だって逃げられないぜ
それは　異常者やから
なーんも考えんと…
しかし橋を壊すって行為は
用意周到だ
ジェイソンの目的は本当に
俺たちを殺すだけなんだろうか
悲恋湖が
また赤く染まってくわ
はじめちゃん　夕食の…
ん？あっ…
仲がいいのね
美雪待てよ　そんなんじゃ…
金田一くん
ずっと私のそばにおって
河西さん…
あんながめつい女とは
知らなかった
くそっ　私だけは
絶対ここから脱出してやる
ここから…
お前は…
ジェイソン
大変です
皆さん起きてください
ロッジが荒らされています
何？
誰がこんなことを
あれは
うわあ
きゃー
香山さん！
まただ　顔が潰されている
ああ　あなた…
しっかりしてください
奥さん　どんな心境ですか？
あなたに愛想をつかされ
顔をずたずたにされた旦那を
見た感想は？
ん？
おお　良かったじゃないですか
旦那のカバンには
万札と貯金通帳　印鑑が入ってる
これを頂いちゃえば
少しはあんたも潤うってわけだ
こんな時に何を言うんですか
いつきさん
いや　今回の貴重な体験を
スリラー小説にでもしてみようと
思ってね
いつまでも三文ライターじゃ
やってられんからな
あんた　人間の心を持ってないのか
おっ　おお
おいおい　暴力はよそうぜ好青年
一緒に殺されるかもしれねえ
仲間じゃねえか
泥か？
犯人は香山さんを外で殺し
わざわざこの冷蔵庫に
詰め込んだのか？
さすが異常者　ジェイソンだ
変ですね
食料を持ち出した形跡がない
とすると妙だな
２日前に脱獄した刑務所から
ここまで
大した食料もない道のりを
延々　歩いて来たはずの
ジェイソンが
食料に見向きもしなかったなんて
そういえばそうですね
本当にジェイソンは
この近くの森に潜んでるのか
それとも…
私　やっぱり食べられへん
これ　冷蔵庫に
死体と一緒に入ってたんやろ？
河西さん
ほっとけよ
食いたくねえやつに
無理に食わせる必要はねえ
あんた　その態度少し改めないと
もしもの時に孤立しちまうぜ
悪いけど　たとえこのメンバーの
参加者全員が殺されても
俺は生き残る自信があるぜ
いつきさん
いいから追いかけてあげたら？
うまくやるチャンスじゃないの？
美雪まで何言ってるんだ
外は危険なんだ
はじめちゃん　ごめん…
はじめちゃん　はじめちゃん
はじめちゃん
七瀬くん
こんなところへ来ちゃ
危ないじゃないか
一緒にロッジへ戻ろう
遠野先輩
私　そんなに似てますか？
ああ　怖いくらい
遠野先輩
いやっ
七瀬くん
危ない
１人で森の奥へ行っちゃダメだ
おーい　七瀬くん　どこにいるんだ
きゃー
あの声は美雪
どないしたん？金田一くん
美雪　どこだ
七瀬くん　どこにいる
美雪
はじめちゃん
はじめちゃん　助けて
美雪
七瀬くん
美雪
しっかりしろ　なぜ
なんで美雪までこんな目に
これもジェイソンの罠なのか
くそ　ジェイソンめ
何がなんでも
俺が正体を暴き出してやる
じっちゃんの名にかけて
もう２人も殺されてしまった
ジェイソンは狙っている
確実に俺たちを
だとすると
お前の本当の目的は何なんだ？
メンバーをつなぐ糸は？
最後に残された
血のダイイングメッセージ
何だって？
全員に共通する過去？
美雪　待ってろ
ジェイソンの仮面は
俺が必ずはがしてやる
金田一少年の事件簿
君にこの謎が解けるか
真犯人はこの中にいる﻿美しい悲恋湖をバックに
次々と起こる殺人事件
何だって
やっぱりあいつの
仕業なんですか
お前の仮面は
俺が引っぺがしてやる
出来る限りの手当てはしたよ
助かりました
参加者に医者がいて
いや
　
いずれにしても
早く病院で治療を受けないと
傷が化膿して発熱でもしたら
まずいことに
あと２日
　
迎えのバスが来るまで
彼女が持ちこたえてくれたら
すまない
　
僕がついていながら
目を離した隙に
どうして
　
もっと
気を付けてやらなかったんだよ
あんたのせいで
美雪は…
　
美雪は！
やめて
美雪
遠野先輩は悪くないわ　私が…
私が勝手に
どうした美雪
　
痛いのか
美雪
気分が悪いの
　
１人にして
美雪…
これで
ますます逃げ出せなくなったな
うっかり森へ出たら
彼女の二の舞だぜ
殺されるのを
このまま待つだけですか
そ
　
そんな
小林さん
　
何を描いてるんだ！
七瀬君は
　
七瀬君はまだ
死んじゃいない！
時間の問題なんじゃねえのか
助けが来るまで
　
あと２日
持ちそうにねえんだろ
やめないか
　
こば…
　
あっ
いやあああ
やめろって言ってんだよ
この変態野郎！
これは
この湖にボートがあったのか
えっ
九条さん
湖で…
　
遊ぶために一そう
なぜだ　なぜ小林も九条も
ボートの存在を知りながら
黙ってたんだ
あったわ！
これで森を通らずに湖を渡れる
湖の向こうに
建設中のホテルがあるはずです
そこまで行けば電話も…
さてと
猫の首に鈴を付けるのは誰かな
俺はごめんだぜ
ボートは苦手でね
私も嫌よ
１人でボートに乗るやなんて
何が起こるか
　
分からへんわ
私もボートは…
じゃあ
　
僕が行きます
七瀬君のけがは
　
僕の責任だし
それに
　
水木旅行者の親会社で
このリゾート村を作った
開発会社の社長は
僕の父なんだ
何？開発会社の御曹司？
ツアーに参加されるお客様の
正直な反応を調査するために
父の言いつけで
もぐりこんでいたんだ
僕は卑怯だった
責任を追及されるのが怖くて
ずっと黙ってたんだ
決まりね
俺も行くよ
え？
１人じゃ
　
危険だ
いや
　
君は
　
七瀬君のそばに
ついててあげてくれ
必ず助けを呼んでくる
好青年
ジェイソンに気を付けな
せいぜい死体にされないようにな
金田一君
後は頼んだよ
遠野さん…
そう…
　
遠野先輩が
助けを呼びに
ごめん
　
美雪　俺が必要以上に
遠野さんを責めたから
お前ら
　
中学ん時
付き合ってたんだって？
それに
　
この間も
ハンバーガーショップで…
一ちゃん？
ああ
　
ごめん
私と遠野先輩のこと
　
やいてたの
あ
　
いや…
この間は
　
遠野先輩が
私の落とし物
　
拾ってくれたから
それにね
　
先輩の昔の彼女
私にそっくりなんですって
きっと
　
そのうわさも
私とその子を間違えてるのよ
え
　
それだけ？
私の方こそ馬鹿だったわ
一ちゃんと河西さんが
仲良くしてるから
　
つい
美雪もやいてたのか？
あ
　
いや…
　
別に
でも
先輩が警察を連れてきてくれれば
ジェイソンも捕まるわ
本当に
　
そうかな
倉田さんや加山さんを殺したのは
本当にジェイソンなのかな
事件を思い返すと幾つもの
疑問点にぶつかるんだ
ジェイソンが橋を燃やして
俺たちを閉じ込めたんだとしたら
刑務所を出て
　
初めて
キャンプ場に来たジェイソンが
何でそこまで
ここの地理に詳しいんだ
冷蔵庫に
　
加山三郎の
死体を入れたジェイソンが
食料を
　
何一つ
持ち出さなかったのはなぜだ
刑務所からキャンプ場まで
民家も店もない道を逃げてきて
２日間も何も食べてないのに
俺は
　
犯人が
森に潜んでいるとは思えないんだ
そんな
　
まさか
このメンバーの中に？
だとしたら
連続殺人犯の動機は何だ？
動機ならあるかもしれませんよ
甲田さん
加山夫妻が言っていたでしょ
ツアー参加者から
抽選で２人に与えられる会員権
それが
　
とてつもない価値なのです
こんなキャンプ場の会員権に？
今はちっぽけですが
オープン時には
　
スキー場
ゴルフ場
　
テニスコートや
大型プールも整備される予定で
高速道路の乗り入れも
検討されている
そうなれば
　
会員権の価値は
５０００
万にも１億にもなると
言われています
えっ
　
１億
茂さんが
自分の名前で参加しろって
その価値を知ってたからなのね
じゃあ
　
この中の誰かが
会員権欲しさに…
ツアーメンバーが少なくなれば
会員権が当たる確率が高くなる
実際
　
２人が死んで
喜んでいる人もいるようです
ひどい…
人間なんて
　
いざとなれば
どんな素顔をさらけ出すことか
私にも経験があります
自分の恐ろしい素顔を
垣間見たことが
カルネアデスの板ですよ
カルネアデスの板？
皆さん
　
ボートが帰ってきました
やった
　
無事帰ってきたんだ
うちら
　
これで助かるんやね
遠野さん
遠野…
　
はっ
金田一君　後は頼んだよ
俺のせいだ
俺が
　
俺が遠野さんを
遠野さん！
一ちゃん
　
そんなに思い詰めないで
遠野先輩のことは
一ちゃんのせいじゃないわ
そうです
過去を悔いても何も始まりません
私も過去の過ちを取り返すために
このツアーに参加したのです
無医村に病院を開業して
治療に身を捧げることが
私の罪滅ぼしなのです
そのための資金に
会員権が欲しかったのです
彼女から聞いたが
　
おじいさんは
有名な探偵らしいね
この事件に出くわしたのも
天命かもしれません
君の力で
何としてもこの事件を
天命…
一ちゃん
これ
小林のやつ
　
遠野さんまで
手首のとこ
こ
　
これは
やっぱり
なぜ犯人は
　
遠野さんの時計を
外す必要があったのか
金田一君
大変だ！
美雪さんが
　
ひどい熱だ
氷を
　
ロッジから氷を
はい！
小林さん
　
何してるんです
こんな暗い所で
ちょっと
ニュースを聞いてたんだよ
でもラジオは
修理してみたんだ
それにね
面白いことが
面白いこと？
朝からニュース聞いてて
分かったんだ
僕の考え通りなら
　
ジェイソンは
ジェイソンは
やめとこう
明日の朝
　
皆の前で話す
それまで
　
このことは
２人だけの秘密だよ
　
ねえ
は
　
はい
まずいことになった
傷が化膿している
もっと冷やした方がいい
氷
　
取ってきます
もっと殺せ
　
ジェイソン
もっと死体を増やせ！
まさか
何で
　
あんたが
ああっ
体温の残り具合から考えて
死後２～
３０
分経過していると
考えられます
俺がロッジに氷を取りにきたのが
２時
１５
分　その後すぐ
２時半から
４０
分の間に
殺されたってことか
ジェイソンは
一体
　
何人殺せば…
いや
　
ジェイソンじゃない
何だと？
小林さんは
　
死に際に
犯人の名前を残そうとしている
ダイイングメッセージ
もし犯人がジェイソンなら
そんな当然のことを
死に際に
　
伝えようとするだろうか
ま
　
まさか
書き残したのは
ジェイソンではなく
俺たちがよく知っている人物だ
そんな
　
なんでやの？
会員権のため
だ
　
誰なのよ　犯人は
死亡推定時刻は２時半から
４０
分
全員のアリバイをチェックすりゃ
犯人が分かるってわけだ
待ってください
　
美雪さんが心配だ
続きはコテージで
まずは探偵坊やからだ
俺は
　
２時
１５
分ごろ
美雪のコテージに戻ってから
ずっとここにいたよ
私も一緒でした
私は倉庫にいて
インターホンで甲田先生と話を
常備薬を
調べてもらってたんですよ
この４人は
アリバイ成立ってわけか
そういうあんたはどうなんだ？
俺か
部屋で彼女と一緒だったぜ
えっ
いやや
　
そんなんやのうて
私
　
怖うて
　
いつきさんに
そばにいてもろたんや
さて
　
最後はあんただ
私は
　
ずっと部屋にいたわ
証人は？
何で？１人だったのに？
それじゃ
　
アリバイは成立しねえな
１人でいたのに
証人がいる方が変でしょう
ほんとです　私
窓の外をずっと見てました
香山さんのコテージから
ロッジに行くには
あの丸木橋を
渡らなくてはならないでしょう？
この窓から
あの丸木橋を見ていたけど
その時間に渡った人は
いなかったわ
ほなら
　
全員アリバイありってこと
では
　
誰が小林さんを
いや
　
香山聖子のアリバイには
穴があるぜ
もし橋を渡らずに
例えば
　
泳いで川を渡ったとしたら
冗談じゃないわ
髪を触ってみてよ
ドライヤーもないのに
こんなにすぐ
　
乾かせないわよ
確かに
　
ボートもないのに
髪を濡らさずに渡るのは
出来るんだよ　彼女の持ってる
旦那のバックを使えば
昔
　
旅行といえば船旅が主だったが
当時は沈没事故も多かった
そこでこいつらの持っている
バッグの有名メーカーでは
海難事故に備えて
バッグが水に浮くように
設計したんだ
その性能は俺が
　
かつて
身をもって体験してるから
よく知ってるぜ
バックにつかまって川を渡れば
髪は濡れないってわけだ
無理よ　出来っこないわ
私
　
水恐怖症なの
洗面器に顔も付けられないのよ
信用出来ねえな
あんたが
人一倍会員権に執着してたのは
皆も知ってるんだぜ
やめてよ　私じゃないわよ
犯人はあんただろ
おい
　
ロープだ
こいつを縛っとくんだ
よせ
まだ
　
犯人を
香山さんと決めつけるには早い
もし彼女が本当に犯人なら
やはり
あの丸木橋を渡るのが普通だ
泳いで川を渡るなんて
美雪が丸木橋を見ていたことを
あらかじめ知ってた上でなきゃ
取らない行動だ
だが
　
美雪が
窓から丸木橋を見ていたのは
ただの偶然に過ぎない
　
つまり
香山さんが美雪の視線を避けて
わざわざ川を泳いで渡ったという
推理には
無理があるんだ
じゃあ
　
犯人は誰なんだよ
探偵坊や
それはまだ分からない　だけど
この殺人は
　
会員権なんかが
目的じゃない気がするんだ
もし犯人が
会員権を手に入れたとしても
いずれ
本物のジェイソンが捕まれば
ジェイソンの犯行でないことは
発覚する
警察は会員権当選者を疑うだろう
これだけ用意周到な犯人が
そんな危ない橋を渡るだろうか
この連続殺人の犯人の動機は
会員権なんかじゃない
もっと深い
大きな何かを秘めてるように
思えてならないんだ
それは
　
一体
それをこれから探すんです
この事件の裏に隠された
やり場のない悲しみと
憎悪の原因を
でも
　
うちら
３日前に
　
知りおうたばっかりやん
もし
　
ここに来る以前から
　
何か
秘められた事情があったとしたら
例えば
　
この
悲恋湖モニターツアー自体が
メンバー殺害のために
用意された舞台だとしたら
皆さんにお願いがあります
１人ずつ
　
個別に
ここに来るまでの
経過を聞かせてほしいんです
ここにいるメンバー全員をつなぐ
糸を見つけたいんです
真の動機を見つけたいんです
出来るもんならやってみな
　
坊や
お手並み拝見させて
もらおうじゃないか
ああ
　
きっと
本当の動機を見つけてみせる
ジェイソンが次の獲物に
手を掛ける前に
九条さん
　
このツアーのメンバーは
どうやって選ばれたんですか
はい　過去に我が社を使って
旅行された方の中から
抽選で選んだはずですが
もう一つ
　
あなたは
　
入り江に
ボートがあるのを知りながら
ずっと黙っていましたね
それは
　
なぜですか
それは…
香山聖子さん
冗談じゃないわよ
前回は沈没事故で
　
今回は殺人鬼
もう頼まれたって
水木旅行社なんか
　
使うもんですか
沈没事故
私の水恐怖症は
あの事故から来てるのよ
いつき陽介さん
　
あなたは入り江で
ボートは苦手だと
言っていましたよね
ああ
　
昔船の事故に遭ったんだよ
３年前の
オリエンタル号沈没事故だ
オリエンタル号
出航してまもなくタンカーと激突
５００
人もの客が海に投げ出され
たくさんの人々が水死した
ひどい事故だった
俺はたまたま
　
近くに投げ出された
バッグにつかまって
　
助かったんだ
バッグの性能を
体験したっていうのは
そのことだったんですね
ああ
同じだ
　
香山聖子さんと
うん　私もあん時
オリエンタル号に乗ってたわ
ぎょうさん人が沈んでってな
あれ以来
　
私は水が怖うて
甲田征作さん
　
あなたは３年前
沈没したオリエンタル号に
乗っていましたね
どうしてそれを？
俺があなたに聞きたいことは
１つだけです
カルネアデスの板って
何のことですか？
３年前の
オリエンタル号の沈没事故
その船に乗り合わせた者が
９人のメンバーのうち
少なくても５人はいる
もしこの悲恋湖モニターツアーの
メンバーが
意図的に選ばれたものだとしたら
５００
人もの乗客の中から
この９人を選んだ理由は何だ？
香山さんの死体が発見された時
ロッジはむちゃくちゃに
荒らされていた
小林さんの時は
ステレオだけが壊されていた
一度壊したステレオを
また壊すなんて
よほどステレオを聞かれては
まずいことが
そ
　
そんな馬鹿な
２人だけの秘密だよ
直ったのを知っていたのは
俺と
小林さんだけだったはずなのに
犯人はどうして
　
ステレオが
直ったことを知っていたんだ
カーテンに閉ざされて
外からのぞくことが
出来なかったはずなのに
やっぱり
金田一君　美雪さんが
えっ
すごい汗だ　どなたかタオルを
美雪
　
しっかりしろ！
どうやら
　
少し落ち着いたようだ
ええ
ん？
樹村？
ああ
　
俺の本名だよ
いつき陽介はペンネーム
本名は樹村伸介っていうんだ
樹村伸介…
分かったぞ
９人の招待客をつなぐ
もう１つの糸が見つかったぞ
殺人鬼ジェイソン
お前の仮面は
俺が引っぺがしてやる
美雪
　
もうすぐここから
救い出してやるぞ
謎は
　
全て解けた！
次々と繰り返される殺人
血塗られたように
悲恋湖がまた
　
赤く染まる
ジェイソン！
お前の正体を暴く時がついに来た
お前にもう
　
誰も殺させやしない
そうだ
　
メンバーの中で
ただ１人だけ違う人物
それは
　
あんただ！
金田一少年の事件簿
君にこの謎が解けるか！
悲しい伝説の湖
　
悲恋湖
結ばれない２人の愛を悲しみ
赤く染まるという
待っていろよ
　
ジェイソン
貴様の血で塗られた仮面は
俺が必ず
　
剥がしてみせる
探偵坊や
事件の謎は解けたのかよ
それが
　
ますます
分からなくなってしまったんです
あ
　
そこで提案なんですが
提案？
今夜は皆で一緒に
　
このロッジで
眠る事にしませんか
え
　
このメンバー全員で
冗談じゃないわよ　ジェイソンは
この中にいるかもしれないのよ
寝てる間に殺されちゃ
たまらねえぜ
だから
　
皆で監視し合うんです
そうすれば犯人も
下手に動く事が出来ないはずです
けっ
　
息が詰まるぜ
それとも
一緒にいられない事情でも
あるんですか
例えば
　
あなたがジェイソンとか
何だと
やめてよ
けんかしてる場合やないと思うわ
じゃあ
　
皆は
　
このロッジに
泊まることに賛成なんだな
誰が犯人か分からないし
私は賛成ですが
コテージの美雪さんが
もちろん
　
ここに連れてきます
今夜はメンバー全員
　
このロッジで
寝ることにしましょう
あっ
　
どこ行く気や
もう我慢出来ない
自分のコテージへ戻るぜ
こんなとこで眠れるか
そんな
　
犯人って疑われるで
疑うなら疑え
　
俺はごめんだ
今だ
これで役者はそろったようだな
始めようぜ
　
ジェイソン
悲恋湖殺人事件の
　
最終章をな
ロッジを出たのは１人だけなのに
どうして皆がここにいるのか
知りたいか
あんたが
殺人に使っていたからくりを
逆に利用させてもらったのさ
小林さんがロッジで殺された時
犯人はカーテンの掛かった部屋を
外からのぞいていたとは思えない
それならば
　
見ていたのではなく
聞いていたのではないかと
俺はロッジの中を探してみた
案の定
　
額の裏から見つかったよ
この盗聴器がな
あんたはこれで
ロッジの様子をうかがい
殺しの機会を狙っていたんだ
だから今度は逆にこいつを使って
罠を仕掛けたんだよ
全員が
ロッジに集まったように見せかけ
俺１人だけがロッジに残り
皆は計画通り盗聴器を持ったまま
このコテージに
移動したってわけさ
そして
　
打ち合わせた時間に
いつきさんはこいつの前で
言い争いを始め
それを聞いたあんたは
ロッジでけんかが始まったと
思い込んだはずだ
だから
　
そのあと飛び出した俺を
仲間割れしたいつきさんと信じ
このコテージにやってきた
俺たちが仕掛けた罠の中へね
残念だったな
こいつが殺人鬼とはな
俺たちがここに来た最初の夜に
倉田さんを殺したこいつは
死体を
異常な形で登場させることで
臨時ニュースが伝えた
殺人鬼ジェイソンの仕業らしく
印象付けた
もちろん
　
メンバーの中に
かつてジェイソンの記事を書いた
ライターの
いつきさんがいることを
計算に入れた上での演出だった
更に
　
つり橋を落とし
キャンプ場に閉じ込めたことを
強調し
俺たちの恐怖心をあおり立て
互いに不信感を抱かせた
そして
　
１人で脱出を図った
香山さんを森で殺害し
ロッジの冷蔵庫まで運び
部屋を荒らした
これもジェイソンの猟奇性を
アピールするためにね
だが
　
俺は
ジェイソンの犯行に疑問を抱いた
刑務所を脱獄して
　
キャンプ場まで
何も食わずに来たはずの
ジェイソンが
冷蔵庫の食料に
何ひとつ手を付けなかったからだ
更に
小林さんの死体が発見された時
またひとつの疑問が出てきた
何だ
　
その疑問って
あの時
ロッジは荒らされてなかったのに
なぜ
ステレオだけが壊されていたのか
ステレオって
　
それがどないしたん
最初にロッジを荒らしたのは
ジェイソンの犯行に
見せかけるのと同時に
ステレオを壊したことを
カモフラージュするためで
こいつは
　
俺たちに
　
ラジオを
聞かせたくない事情があったんだ
なぜなら
　
あのステレオから流れた
ラジオのニュースが
こいつの仕掛けた
第１のトリックだったからさ
トリックだって
パーティーの夜聞いた
臨時ニュースは
　
こいつが
あらかじめ録音しておいた
テープを
再生しただけの
偽ニュースだったんだ
あのニュースが
　
偽物
ほな
　
脱獄囚も？
ああ
　
殺人鬼ジェイソンなんて
最初から存在しなかったんだ
俺たちはあのニュースで
　
まんまと
ジェイソンの脱獄を信じたが
ステレオを修理した小林さんは
ニュースのうそに
気付いたんだろう
慌てたこいつは
話される前に
　
小林さんを殺して
もう一度
　
ステレオを壊した
だが
　
ロッジ全体を
荒らす時間がなかったことが
俺にニュースのトリックと
盗聴器の存在を気付かせる
きっかけになってしまったんだ
しかしなぜだ　なぜ俺たちが
命を狙われなきゃならんのだ
やはり会員権か
いや
そもそも
　
この
悲恋湖リゾートツアーのメンバー
メンバーは
ある共通項に基づいて
意図的に集められた
メンバーなんだ
共通項だと
俺と美雪以外
ここにいるメンバー全員が
３年前の豪華客船
オリエンタル号に
乗り合わせていたんだ
あの時の沈没した船に
本当か？
あなたもその１人ですね
九条さん
ええ
　
ツアーコンダクターとして
でも
　
何で？私
そんな人に恨み買うようなこと
してへんわ
あの船には
５００
人も乗客がいたんだぜ
知り合いでもない俺たちが
どうして
もう一つ隠れた接点がある
こいつを見てくれ
俺のタオルじゃないか
それが何だっていうんだ
いつき陽介
この名前がペンネームで
本名が樹村信介だと分かった時に
全員をつなぐ糸が見えた
香山三郎
　
香山聖子
河西さゆり
　
倉田壮一
小林星一
　
甲田征作
九条章太郎
これらの名前に共通するものは
イニシャルが
全員Ｓ
・
Ｋだという事だ
そして俺に代理を頼んだ橘川茂も
イニシャルＳ
・
Ｋ
彼も
　
オリエンタル号の事故に
遭っている
その事実を発見した時
俺には
真犯人がはっきりと分かった
俺と美雪以外
イニシャルが
Ｓ
・
Ｋにならない人物は
ただ１人
この事件を仕組んだ
ジェイソンの正体は
こいつだ
ジェイソンの正体は
こいつだ
えっ
遠野英治
あんたがジェイソンの正体だ
そんな
　
遠野さんは殺されて
あの死体は誰だったの
どういうことだ
ボートで戻ってきた死体は
俺が代役を務めた
もう１人のＳ
・
Ｋ
美雪のいとこの橘川茂さんだ
ツアー初日
　
橘川本人が
来てないのを知ったこいつは
ロッジに到着すると
彼と連絡を取り
近くのどこかで会う約束をした
その時
　
既に
ボートで殺しにいく計画が
出来上がっていたはずだ
けど
その前に
　
誰かがボートを発見して
とんずらこいたら
どうする気だったんだ
こいつは計算に入れていたのさ
ここにいるメンバー全員が
３年前の事故以来
水に恐怖心を持っていることをね
だから
ボートの存在を知っていても
それを口にしようとはしなかった
そうですね
　
九条さん
はい
　
お恥ずかしい限りです
だが
　
思いがけず小林さんの絵から
ボートの存在が発覚すると
美雪のけがの責任を取り
悲壮な覚悟で
危険に臨む姿を演出した
まさか
　
あの時
あんたが
　
人を
殺しにいこうとしていたなんて
思いもしなかったぜ
まんまと
キャンプ場を抜け出したあんたは
橘川さんとの
待ち合わせ場所へ向かった
そして彼を殺した後
その死体に自分の服を着せ
顔を潰してボートに乗せた
第１
　
第２の殺人から
死体の顔を潰しておくことで
自分の死までも
見事に演出したんだ
だが
巧妙に仕組まれたトリックにも
ひとつ問題が生じた
服など無理に着せても
あんたの腕時計が
橘川の腕に合わなかった
使い込んだベルトの
穴の位置が変われば
気付かれると思い
死体には時計を着けなかった
それが
　
かえって俺に
疑いを持たせてしまったんだ
ふん
　
それは違う
えっ
たとえ
　
復讐のためでも
復讐？
はっ
あの時計だけは
手放すわけにはいかなかった
大切な螢子の形見だけはな
やはり
　
そうだったのか
君はあの時死んだ小泉螢子さんの
小泉螢子さんって？
誰だそりゃ
私が
　
殺した少女です
お前が？
まさか
カルネアデスの板だよ
カルネアデス
紀元前２世紀の
　
ギリシャの話さ
難波した船から投げ出された男が
ひとつの板切れにつかまったが
そこへもう１人
　
同じ板に
つかまろうとする者が現れた
しかし
　
２人ともつかまれば
板は沈んでしまうと考えた男は
後から来た男を突き飛ばして
溺れさせてしまった
助かった男は裁判にかけられたが
罪には問われなかった
これがカルネアデスの板と
言われている
刑法第
３７
条緊急避難ってやつだな
自分が助かるために
やむを得ん場合は
他人を犠牲にしても
罰せられんってことさ
３年前のオリエンタル号
沈没事故です
あの時
　
救命ボートで助かった
私のかばんに
必死でしがみついてくる
少女がおりました
その少女を引き上げようとすると
ボートが大きくきしみました
今
　
この少女を乗せたら
ボートは沈んでしまう
そう直感した私は
自分でも信じられないほど
冷酷な行動を取ったのです
少女がまだ
１５
歳だったことや
小泉螢子という名前は
後から新聞で知りました
それ以来
私はせめてもの罪滅ぼしに
へき地医療に力を注ぎ
出来るだけ多くの人命を
救おうとしてきましたが
貴様が螢子を
動くな
そんな事が
小泉螢子って
あんたの恋人か
俺と螢子は
同じ施設で育ってきたんだ
ずっと２人で
寄り添って生きてきた
でも
　１０
年前
それぞれ別の家に引き取られ
俺は遠野家で
　
社長の息子として
大切に育てられたが
螢子は小泉家で
メイド同然の暮らしだった
２人が会うことは許されず
養父母に隠れるように
螢子と会う日々が続いた
俺は
螢子のそばにいるだけでよかった
たとえ
あの悲恋湖伝説の２人のように
決して結ばれない運命だとしても
あの２人だけの
オリエンタル号の旅行も
養父母に見つかり
俺は船に乗れないまま
あの悲劇が起こってしまった
救命ボートにたどり着いた
螢子の手を振り払った者の
うわさを聞いた俺は
警察に捜査を依頼したが
法律上
　
罪にはならないと
何もしてくれなかった
最初で最後の口づけは
冷たい死の味がした
俺はこの時
悪魔に魂を売り渡す決意をした
法律で裁けないなら
俺が裁いてやる
螢子の命を奪ったやつを
必ずこの手で
そこで
　
イニシャルがＳ
・
Ｋの
乗客をピックアップしたが
誰がそのキーホルダーの持ち主か
分からなかった
ああ
　
そこで俺は考えたのさ
全員殺せばいいってね
この野郎
たった１人の復讐のために
俺たちを
巻き添えにしやがったのか
馬鹿げた茶番劇のために
茶番劇か
あんたらから見りゃそうだろうよ
だが俺にとって
　
螢子の命は
お前ら
５００
人分の命より
ずっと大切だったんだよ
きゃあ！
遠野
俺に近付くな　爆発するぞ
つり橋を燃やしたように
このスイッチを押せば
全員
　
木っ端みじんだ
へっ
　
押してみろよ
お前も死ぬんだぜ
よせ
　
こいつは本気だ
助けて
そ
　
そんな
ひとつだけ
生き延びるチャンスをやろう
金田一
　
そのおので甲田を殺せ
何
そうすりゃ
他の全員の命は助けてやる
そいつが螢子にしたように
自分が助かるためなら
他人を犠牲にしても
構わないんだろう
まさに
カルネアデスの板じゃないか
さあやれよ
　
金田一
そいつが螢子にしたようにな
いい加減にしやがれ
　
大馬鹿野郎
何だと
他人を突き飛ばして助かった男が
本当に幸せになれたとでも
思ってるのか
罪に問われなくたって
人殺しの十字架を背負った男が
苦しまずに生きてこれたとでも
思ってんのかよ
こんな事して
　
螢子さんが
本当に喜ぶとでも思って
黙れ
やめなさい
　
もういい
私が死ねば済むことだ
私もずっと逃げ出したかった
暗い海に沈んでゆく
少女の悪夢から
今こそ
　
手放そうと思う
カルネアデスの板をね
やめて
もうやめて
美雪
螢子
どうして
どうして
　
あの優しい遠野先輩が
こんな事するの
そんな目で見ないでくれ
　
螢子
もうやめて
俺は
　
お前のために自分の手を
血で染めたんだぞ
　
螢子
うわあ
遠野
くそっ
　
湖の方へ逃げるぜ
まさか
遠野さん
悲恋湖が
　
赤く染まっていく
悲しい恋人達の伝説を秘めた湖が
今
また繰り返された伝説を悲しんで
湖面を赤く染め上げたのか
こうして
　
５人もの死者を出した
悲恋湖殺人事件は
静かに幕を下ろした
足のけがは
ええ
　
もう大丈夫です
あれから
俺なりにいろいろ調べたんだが
ま
　
この写真を見てみなよ
これは
　
遠野と美雪
えっ
　
私こんな写真撮った覚えは
ああ
　
それは遠野が愛した
小泉螢子さ
こんなに似てたなんて
そうか
　
だからあの時
遠野は美雪を
錯乱した中で
螢子さんに見えたんだろうな
裏を見てみな
　
もっと驚くぜ
裏
鎌倉にて
妹と
妹
そういうこった
遠野英治の
血のつながった妹だったのさ
それじゃ
　
悲恋湖伝説の
結ばれぬ運命の２人っていうのは
ああ
　
兄妹だったのさ
ねえ
　
一ちゃんならどうする
私と２人でカルネアデスの板を
つかんだとしたら
考えるだろうな
考えるって何を
２人とも助かる方法をさ
うん
中世の城
　
アルト城
人は呼ぶ
死霊の住み家
　
蝋人形城と
俺
　
今
　
美雪と
この気味わりい城に来てるんだ
それも
　
ここで行なわれる
ミステリーナイトに
招待されてるんだよな
さあ
選ばれた世界の名探偵たちの
推理対決が始まる
えっ
あんた剣持のおっさんの上司
明智警視
この推理対決
俺が絶対勝ってやる
金田一少年の事件簿
君にこの謎が解けるか﻿当麻さん　どうして！
何だよ　明智さん
こんな間違いを犯した人物は
金田一君　君です
じゃあ　あんたには
本当の犯人が分かってんのかよ
何だって俺が
ミステリーナイトなんかに
参加しなくちゃならないんだよ
ん？興味ないのか
世界中から名探偵が
集まってくるんだぞ
３人分のハガキ出したのに
俺だけ落ちちまうなんて…
ううっ　泣けてくる
いいじゃない　その代わり
おっさんは温泉に行くんだろ
仕方ねえよ
４日分　休暇取っちまったんだから
しっかり使わねえとな
とか何とか言って　実は
１人で温泉へ行きたくて　俺たちをだしに使ったんじゃないの？
ま　まさか　アッハハハ…
フフフ
あっ　はじめちゃん　あれ
うっひょー　あれが
ミステリーナイトの会場か
バルト城っていうんでしょ　あれ
地元の連中は　そんなハイカラな
名前で呼んでないよ
えっ
それじゃあ何て？
死霊のすみか　蝋人形城さ
この城はドイツから
丸ごと運ばれてきたんだ
ここに中世ドイツの街を再現した
テーマパークを開く予定だったが
開発会社の倒産で
計画中止になった
で　残された城は
引き取り手もないまま
ずっとここに
放置されてたってわけだ
へえ
すごーい
ここで犯人当てゲームをするのね
優勝者は　こんなすごいお城を
もらえるんだもん
参加する人は　みんな
はりきっちゃうわよね
えっ　ちょっと待て　美雪
今　何て言った？
確か　優勝者は
この城をもらえるとか何とか…
あら　知らなかったの？
このパンフレットに書いてあるよ
い　行こう　早く行こう
ちょっと待ってよ　はじめちゃん
早く早く　置いてくぞ
はじめちゃん
あっ　ご　ごめんなさい
いいえ　大丈夫ですか　あなた？
いえ　とんでもない
ん　ん…
ふん！
誰も出ないぞ
とにかく入ってみましょうよ
ああ
ごめんください
誰もいないんですか？
わあー！
蝋人形だわ
えっ　蝋人形？
いや　ワクワクしますなあ
どうです
どうも　こんにちは
俺たちもミステリーナイトに
参加するんです　どうぞよろしく
ああっ　多岐川かほるだ
多岐川さんですよね
私　大ファンなんです
どうも
へえ…
女子供には人気があるようですな
ふん　私のファン層は幅広いのよ
坂東さん
ほう　それは知りませんでした
あなたも人の作品を
けなしてばかりいないで
ご自分でミステリーの１つでも
お書きになったらいかが？
どういう意味でしょう
評論も立派な創作活動ですよ
あの男　推理小説の評論家なのよ
昔　多岐川かほるの作品を
滅茶苦茶にけなしたことがあるの
へえ　詳しいんですね
ミステリーファンなの
よろしくね　金田一君
ど　どうして俺の名前を？
フフフ　私は探偵
あなたもあなたのおじい様も
うちの業界じゃ有名よ
あっ　そうっすか
で　皆さん　ここで何を？
あれよ
えっ　あれって？
ほら　あのドアの貼り紙
開かずの扉よ
ミステリーナイト
最初の関門ってわけだ
あんたが金田一耕助の孫かい
俺　犯罪ジャーナリストの真木目
よろしくな
は　はい
Ｎ・Ｏ・Ｏ・Ｗ…
何の暗号でしょうねえ
さすがの犯罪心理学の権威も
お手上げですか
ユーはどうですかね
コロンボ君
そうですねえ
ロス市警にいるおじさんなら
すぐ解けるんですけど
なあんだ
はじめちゃん　分かるの？
逆さまですね　それは
ＭＯＯＮ　つまり月です
月？でも
それってどんな意味があるの
ヒントは　この部屋の中にあるよ
部屋の中？
蝋人形ですよ
ええ？
うわあ　すごい
なかなかやるじゃん　あんたも
ミステリーナイトの参加者かい
ええ　私は明智健悟
警視庁捜査一課の警視です
えっ　じゃあ剣持のおっさんの…
剣持警部は…
あんた　おっさんの上司なの？
そんなに若いのに？
金田一君　君の活躍は
警視庁でも評判ですよ
いやあ　それほどでも
ミステリーナイトの参加者の皆様
バルト城に
ようこそいらっしゃいました
さ　どうぞこちらへ
レッドラム様がお待ちです
レッドラム？
この城の持ち主で
ミステリーナイトの発案者だよ
レッドラム…
この大暖炉の間で
レッドラム様がお待ちです
さ　お入りください
ああっ
こっ　これは…
俺たち　そっくりの
蝋人形じゃないか
ミステリーナイトの参加者の諸君
ようこそ　わが蝋人形城へ
私の心ばかりのプレゼントは
気に入っていただけたかな
ただ今より　このバルト城の所有権移築費用２億円を賭けて
バルト城ミステリーナイトを
開始する
世界中の応募者の中から選ばれた
１０名の名探偵諸君の健闘を祈る
な　何だ　あの音は？
ああ！
あっ
は　跳ね橋が！
うわあ…
跳ね橋が…
門が閉まったぞ　大変だ
どうなってんの
皆様には推理に集中して
いただくため　この４日間
城の外に出られないように
させていただきます
何？４日間も
この城に缶詰になるのか
外部との連絡も一切禁止です
携帯電話もお出しください
携帯電話も？
いくらミステリーゲーム
だからって　やりすぎじゃないの？
まったくだ！
俺たちは東の塔
俺の部屋は美雪の隣かあ
ひひひ　何か　いいことありそう
こちらでございます
ええ？
本当にこんな所に泊まるの？
まるで　オバケ屋敷みたい
夕食は７時です　お部屋の中に
衣装を用意してございますので
それをお召しになってください
衣装？
俺は２か
なんつー部屋だ
まるで刑務所だな
まずいことに　なったわね
このミステリーナイトに
警察の人間が参加してるなんて
だけど今さら　あとに引けないわ
どんなことをしても
この城を手に入れるのよ
そうすれば
すべてが闇に葬られるわ
私たちの過去もね
見れば見るほど
みんな　よく似合ってるわね
俺だけ　差つけられてるって感じ
いいじゃないの　はじめちゃん
ちっ　ひと事だと思って
でも　どうして蝋人形と
同じ格好をするんでしょうね
ミステリーナイトと
何か関係があるんでしょうか
あー　腹いっぱいになった
ねえねえ　さっきから
気になってたんだけど
あの絵　マリアさんに
よく似てるよね
本当　そう言われてみると…
さて　食後はビリヤードですね
何がビリヤードだ
俺たちは遊びにきたんじゃない
いつになったら
犯人当てのゲームが始まるんだ
いいじゃないですか　坂東さん
ゲームは　これからですよ
ごちそうさま
美雪　まだ食ってんのか？
ううん　ねえ　はじめちゃん
ビリヤード　先に行ってようか
俺は　いいや
ルールも分かんないし
面倒くさいから
風呂にでも入ってる
はじめちゃん
もうっ　勝手なんだから
あの　実は私もビリヤード
やったことないんです
大丈夫
私が教えて差し上げますよ
ナインボールをしましょうか？
ナインボール？
この９番のボールをポケットに
入れたプレーヤーが勝つという
単純なルールです
私にできるかしら
大丈夫　大丈夫
美雪　もう寝たのか
なあに　はじめちゃん
眠れないんだ
城の中を偵察しようぜ
イヤよ　怖いもん
大丈夫だよ
俺がついてるんだから
さっ　行こう
イヤだ　ちょっと　はじめちゃん
いいからいいから
こっちは何だろう
この先は地下室で
遊技場があるだけよ
ふうん　それにしても
このお城　徹底してるよな
何が？
電灯が１つもなくて
どこもかしこも
蝋燭だらけなんだから
本当ね
でも雰囲気ありすぎるわ
ぎゃあー
きゃー！
やめてよ！
きゃー！
当麻さん
どうして？
違う　死体じゃない
人形だ
に　人形…
大暖炉の間にあった人形さ
だ　誰だ
こんな悪ふざけをする奴は？
皆さん　さぞ驚かれたことと思う
さて　これからが
ミステリーナイトの問題だ
当麻恵の死体を検分し　犯人を
割り出してほしい　健闘を祈る
蝋人形殺人事件ですか
つまり我々の中に
犯人がいるってわけですね
でも事件のヒントって
この人形だけじゃ…
あら　人形の手に何か…
ビリヤードの球だ
何で　こんなものが
それは
ダイイングメッセージですね
ダイイングメッセージ？
犯人を教える
被害者からのメッセージさ
この謎を解けば
この城が手に入るってわけだ
しかしまあ
子供だましなゲームだな
なるほど
私　犯人分かりました
本当ですか　リチャードさん
はい
この球の色　見てください
球の色？緑と赤ですね
イエース　被害者がとっさに
犯人の服の色をつかんだとしたら
つまり犯人はグリーンとレッドの
服を着た人ということになります
ん？
俺を疑ってるのか？
そうです　ユーが犯人です
そいつは　ちょっと乱暴だね
え？
犯人は当麻さんを殺害したとき
すごい返り血を浴びてるはずだ
洋服なんて着替えてますよ
そ　そうだよ　俺は無実だよ
なるほど　それならユーは
誰が犯人だと？
もっと単純に考えれば
いいんですよ
見てください　これを
死体が握っている球の数字は
３番と９番です
それが何か？
坂東さん　あなたの名前は
確か九三郎さんでしたよね
つまり９番と３番の球は
九三郎　あなたの名前を
示しているんです
何だって！
犯人は　あなたですね　坂東さん
バ　バカな　私が犯人だなんて
ふはははは
何だよ　明智さん
数々の難事件を解決した
金田一君との対決を
楽しみにしていたんですが
だから？
金田一君の推理には
大きな矛盾がありますね
この被害者は
短剣で心臓を一突きされている
おそらく即死でしょう
ビリヤードの球を握る余裕は
なかったはずです
このビリヤードの球は犯行のあと
犯人が握らせたんですよ
つまりこれは犯人の
仕掛けた罠というわけです
坂東さんを罪に陥れるためにね
俺は　まんまと罠に
ハマッたと言いたいのか
ええ
じゃあ　あんたには
本当の犯人は分かってんのかよ
もちろんです
誰なんだよ　誰だ　それは
ハハハハ
あわてないでください
ビリヤードで使用する球は
１番から１５番
そして　これが９番です
ええっ　それじゃ被害者の
握ってた球は…
よく見てください
その球は９番ではなく６番です
おおっ
ミスター明智の言うとおりです
本当だわ
すると犯人は
６と３に関係ある人物ってことか
いいえ　このメッセージは
あくまでも坂東さんに
罪をなすりつけるための演出です
何だと？
では犯人は６番の球を…
簡単なことです
犯人が間違えたんですよ
間違えた？
ええ
そして　こんな間違いを犯した
人物は　金田一君　君です
お　俺が…
はじめちゃんが犯人？
俺に何の恨みがあるってんだ
君は！
人騒がせな
どういうつもりなの
夕食のあと　ビリヤード大会で
私たちはナインボールという
ゲームをしたんです
そのゲームに参加した私たちが
９番の球を間違えるはずがない
あのとき　いなかった
金田一君　君を除いてね
はじめちゃん？
俺は　いいや
ルールも分かんないし
面倒くさいから
風呂にでも入ってる
どうかね　金田一君
私の推理は？
ふっ　フフフ…
ハハハハ…
はじめちゃん？
ふっ
さすが警視庁捜査一課の警視
よくぞ見破った
まさしく犯人は　この私だよ
何だ　こいつ
ふざけやがって！
バカバカしい
あーああー
こんなチンケなトリック
すぐバレると思ったんだ
どういうことなの　はじめちゃん
どうもこうも　俺の部屋に
こんな手紙があってさ
俺は　この手紙の指示どおりに
やったまでよ
ひどい　じゃあ私を驚かすために
ここに連れてきたのね
ごめんよ　あんなに驚くなんて
思わなかったんだ
知らない！
これだけの証拠で
犯人を見つけるなんて
さすがはミスター明智ですね
ホント　すごいわ
誰かさんとは大違い
これも犯人役を演じた俺が
優秀だからさ
お　おい　ちょっと待て
ミステリーナイトって
これで終わりじゃなかろうな
さあ　そうなんじゃないんすか
ゲーム　終わっちゃったんだし
冗談じゃないぞ
こんなくだらないゲームで
終わりだなんて
こんなの納得いくか
おい　君
責任者を　責任者を出せ
フハハハ　ウォーミングアップは
楽しんでいただけたかな
優秀な探偵諸君には
少し物足りないだろう
だがミステリーナイトの
本番は　これからだ
このあと諸君の前に
本当の謎と恐怖が
次々と姿を現すだろう
フハハハ…
何だ　ビックリさせやがって
本当だよ
これくらいで終わられちゃ
信州くんだりまで来た
甲斐がないぜ
当麻さんだって被害者役だけじゃ
面白くないでしょう
そりゃそうでしょう
あれ　そういえば
殺された張本人の姿がないなあ
ん？
そういえば…
当麻女史もこのお芝居の
共犯者ですか？金田一君
いや　そんなことはないけど
私　当麻様を呼んでまいります
待ってください
みんなで行きましょう
当麻さん　何にも知らない
こっそりと行って驚かしましょう
くっ…
さあさあ…
ん？
ああっ
当麻さん！
それはゲームの終わりを
意味する光景だった
当麻恵の死体は　俺たちが
遊戯室で見たシーンを
そのままリプレイしたかのように
右手にビリヤードの球を握り締め
背中に短剣を突き立てられ
血の海に横たわっていた
これはゲームなんかじゃない
連続殺人事件だ
夜明けの光とともに
蝋人形と同じ姿で
次々と現れる惨殺死体
そして　その魔の手は
ついに明智警視へと伸びていく
ミスター・レッドラム
お前の目的は何なんだ
お前は一体　誰なんだ
俺は必ず
お前を目の前に
引きずり出してやる
じっちゃんの名にかけて
君に　この謎が解けるか？
ようこそ　わが蝋人形城へ
キャー！
これは死体じゃない　人形だ
あれ　本人は？
えっ？
南山さん
ミステリーナイトは中止です
ミスター・レッドラムを
呼んでください
いや　実はその…
レッドラム様は
この島に　おられません
ええ？でも何度も声が
聞こえたじゃないか
ようこそ　わが蝋人形城へ
ああ　あれは
私がセットしておいた
テープレコーダーから
流したものでして…
とにかく警察に連絡しましょう
南山さん　すぐ電話を
そ　それがこの城には
電話や通信機などは
一切置いてないのです
それじゃあ　どうやって外と
連絡取るんだよ
携帯電話があるわ
おかしいですね
皆様からお預かりした携帯電話は
確かに　ここに
入れておいたのですが
なくなっているのか？
そんな…
中庭の私の車で　ふもとの村まで
走っていって電話をかけましょう
はい　では
すぐ跳ね橋を下ろします
これでは跳ね橋は下ろせません
おお　誰が一体　こんなことを
明智さん　あれ
計画的な犯行ですね
私たちを外部から完全に
遮断したんです
なぜよ　なぜ
そんなことする必要があるの
それはミスター・レッドラムに
聞いてみるんですね
どうだった　はじめちゃん
ダメだ　城の外へ出られそうな
場所は　どこにもない
俺たちは完全に
閉じ込められちまったんだ
そんな…
城の中は　どうだった
秘密の部屋といったものは
どこにもありませんでしたね
すべて　この見取り図どおりです
ということは犯人は
俺たちの中にいるってことか
おい　それは一体
どういう意味だ！
当麻恵を殺した犯人が
この中にいるだと？
そう考えるのが自然だろう
この城自体が巨大な
密室みたいなもんなんだ
そして　その中にいるのは
ここにいる１０人だけなんだから
おお　だから
レッドラムなのですね
どういうことですか
コロンボさん
いやあ　レッドラムって
どこかで聞いたことがあると
思っていたんですが
「レッドラム」と…
こいつを逆に書くと
んん？
おお　マーダー
日本語で言うと殺人ですね
殺人？レッドラムって
殺人を意味する暗号だったの？
つまり　この１０人の中に
ミスター・レッドラムが
いるんですね
そうだ　南山さん
あんたなら知ってるだろ
ミスター・レッドラムの正体を！
い…　いえ　実は私も
レッドラム様に
お目にかかったことはないんです
そんな　主人の顔を
見たこともないって言うの？
どうやら私たちは
まんまとネズミ捕りの中に
飛び込んでしまったようですね
ミスター・レッドラムの
殺人ゲームの罠の中に
ああ　しかも　このイベントは
３泊４日
まだ３日も残っている
つまりミスター・レッドラム
自作自演の殺人劇は
まだ幕が
上がったばかりってことさ
はじめちゃん　のぞかないでよ
そんなことするかよ
心配だったら
俺を呼ばなきゃいいじゃん
だって暗くて怖いんだもん
チェッ　勝手な奴
アタッ…
ビクビクするな
当麻が死んだ以上
あの事件のことを知っているのは
俺たちだけだ
ミステリーナイトは
中止になったんだ
この城がどこかに
移される心配もない
分かったら
早く部屋に帰って寝ろ
へっ　臆病者め
それにしてもレッドラムの奴
どうして　こんな蝋人形を
作ったんだ
うん？警視庁の明智警視か
待てよ　明智…
思い出した！
俺の記憶に間違いがなければ
明智というのは…
この事件で一番の謎は
やっぱり　あの蝋人形だよな
え？
なぜ当麻恵は
自分の蝋人形そっくりのやり方で
殺されていたんだろう
ただ俺たちに恐怖を与えるのが
目的だったとは思えないし…
はじめちゃん
考え込むのはいいけど
こっちには　来ないでよね
そんなこと言うなら
俺　自分の部屋で寝るよ
ダメよ　怖いんだから
一緒にいてよ
チェッ　ホント　勝手なんだから
フハハハハ　おはよう
東の塔の名探偵諸君
平和な夜は　もう終わりだ
はじめちゃん？
恐怖の第２ステージは
すでに始まっている
今度の舞台は西の塔だ
クソッ　まさかまた
明智さん
とにかく西の塔へ急ごう
クソッ　開かない　中から
掛け金がかけられているんだ
明智さん
離れていたまえ
あっ！
リチャードさん
いや　これは
リチャードさんの蝋人形だ
何だ　ヒヤッとさせやがって
リチャードの部屋だ
え？
忘れたんですか
当麻恵が殺されたときも
こうして蝋人形が見つかって
そのあと…
あっ！
リチャードさん！あ…
キャー！
やはり　当麻恵のときと同じく
蝋人形と同じように殺されている
どうしたんですか
あの小暖炉の間の人形は一体…
うるせーなー
こんな時間に何だよ
ちょっと何よ
あのレッドラムの声は
ああっ
リチャードさん
皆殺しだあ
俺たちは　みんなレッドラムに
殺されるんだ　ああー
はじめちゃん　どうしたのよ
さっきから人形ばかり見て
いや　この人形
ちょっと変だなと思って
変って？
見ろよ　この杭
人形に刺さってるのかと
思ったら　先は真っ平ら
ただ胸の上に
置いてあるだけなんだ
ホントだ　でも人形が硬くて
刺さらなかったんじゃないの？
ところが　そうじゃないんだ
ほら
あっ
この人形　軽いと思ったら　蝋で
できているのは頭の部分だけで
体は発泡スチロールで
できてるんだ
どういうこと？
犯人は何らかの理由があって
まず蝋人形を殺し
それと同じ形で
本人も殺害しているに違いない
だとしたら
ここでリチャードの人形に
杭を打ち込まなかったのも
何か理由があるはずなんだ
その理由は
ミスター・レッドラムに
聞いてみるんですね
レッドラムの正体が
分かったような口ぶりだな
リチャード殺しに関しては
容疑者が浮かびましたよ
えっ　ホントですか？
３人いるんだろ　容疑者は
ほう　君にも分かりますか
まあね
伺いましょうか
その３人というのは？
いや　まず　あんたの推理を
聞かせてもらおうか
簡単なことですよ　今朝
私たちが西の塔に駆けつけたとき
小暖炉の間には内側から
掛け金がかかっていました
私たちはドアを蹴破り
まず人形を発見し
西の塔へ行って
リチャードさんの死体を発見した
つまり
リチャードさんが殺されたとき
西の塔は密室だった
そのとおりです
犯人は小暖炉の間に
カギをかけることのできた人物
つまり西の塔にいた
３人というわけです
俺は違う　俺はやってない
俺だって
私も　やってません
だけど　それって
単純すぎるんだよなあ
中からカギをかけて
閉じこもるなんて
自分が犯人だって
言ってるようなもんだ
まだまだ甘いですね　金田一君
何だよ
犯人は　まさかこんなことを
やるはずがない
そういう思い込みは
捜査には禁物です
思い込み？
とにかく事件があったとき
西の塔が密室だったことは
確かね
密室のトリックを暴かない限り
犯人　つまり
ミスター・レッドラムの正体は
分からないってことね
密室殺人か
分からないなあ
一体　どんなトリックを
使ったんだろう
それとも　やっぱり西の塔にいた
３人のうち
誰かが犯人なんだろうか
クソッ　考えてたら
ちっとも眠れない
しょうがないなあ
秘密の通路がないかどうか
もう一度　じっくり
調べてみるか
フハハハハ…
レッドラム！
諸君　お待たせした
第３の事件の幕開けだ
大暖炉の間に急ぎたまえ
さあ　今度は何が起こるかな
大暖炉の間だと
あ　あっちい
何だ　この暑さは
まるでサウナだ
明智さんの首が…
まさか　今度は明智さんが！
ヘイ　何があったんです
明智さん　明智さん
ダメだ　カギがかかってる
どうしたの　はじめちゃん
美雪　合鍵だ
南山さんを起こして
合鍵をもらってきてくれ
早く！
うん
何だよ　あの首
今度は警視庁の　あんちゃんか？
はじめちゃん　ダメよ
合鍵がどこにもないの
ねえ　ちょっと
あれでドアを破ったら　どう？
あっ…　あ！
明智さん！
明智さん　しっかりしてくれ
３人目の犠牲者か
明智さん！ああ？
金田一君…
よかった　無事だったんだ
ビックリさせるなよ
いくら呼んでも返事がないし
てっきりレッドラムに
やられちまったのかと思ったぜ
大きな声を出さないでくれ
頭がズキズキする
頭が？
この水差し　底に粉が…
睡眠薬？
たぶん…
ねえ　ちょっと変じゃない？
レッドラムは第３の事件が
起こるって言ってたのに
明智さんを眠らせただけなの？
そう言えば　そうですね
ありゃあ
坂東さんだけ　いないぞ
まさか！
うっ　あっちい！
見ろ！坂東さんの人形がない
さっきは確かに
ここに　あったのに
俺が通ったときも　あったよ
はじめちゃん
急ごう
坂東さん！
ああっ
ああ！
坂東さん…
何かのリモコンみたいですね
名探偵諸君
今までご苦労だった
レッドラム…
これがバルト城
ミステリーナイトの結末だ
今回のことは　すべて
ミスター・レッドラムこと
私　坂東九三郎が
当麻恵
リチャード・アンダーソンの両名を
殺害するために
計画したことである
私は最後に自らの命を絶つことで
事件の幕を下ろす
残念ながら　ミステリーナイトの
勝利者は　いなかったようだな
ハハハハ…
これで事件は終わったんですね
もう誰も死ぬことはない
何か　しっくりこねえなあ
えっ　でも…
だって　そうだろう
犯人が自白するなら
どうして
レッドラムの声を
流す必要があるんだ
確かにそうだなあ　自分の声を
そのまま流しゃいいんだ
当麻とリチャード殺しを
坂東に押し付けて
ケリをつけようとする
レッドラムの計略ですか
それじゃあ
この中に犯人がいるっていうの？
犯人は驚いてるふりをしながら
心の中で笑っているのよ
本格ミスエリーなら
さしずめ　そんなシーンね
マリアさん
わざわざドイツから来て
大変な目に遭っちゃいましたね
ミステリーナイトが中止になって
私とても悲しいです
優勝して　このお城を
ドイツに持って帰りたかったのに
そうか　バルト城って
ドイツのお城ですもんね
あら　炎が…
暖炉か
あっ
そうか　そうだったのか
どうしたの？はじめちゃん
美雪　ここにいてくれ
すぐに戻る
これは　これは金田一君
ふう　参った参った
一体どうしたんですか
ちょっと試したのさ
試す？
思ったとおりだったよ
リチャードさんが殺されたとき
西の塔は密室なんかじゃ
なかったんだ
ほう　どういうことですか
この東の塔の客室の中で
この部屋だけにあって
ほかの部屋にないものがある
それが何か分かるかい？
さあ
暖炉だよ
そして西の塔の客室にも
一部屋だけ暖炉のある部屋がある
殺された当麻恵の部屋だ
それで？
両方の暖炉は
１本の煙突でつながっている
犯人はリチャードさんを
殺しておいて
小暖炉の間に内側からカギをかけ
煙突を通って
こちら側に脱出したのさ
なるほど
だが坂東さんのときは　どうです？
あのときは全員に
アリバイがありましたねえ
そう　確かに俺が
ここに来てから
全員がそろうまで
３分とかからなかった
そのあとも俺たちは
ずっと一緒にいた
坂東さんの人形を
彼の部屋に運び
首をつらせる時間的余裕は
誰にもありませんでした
いや　それが１人だけ
余裕のある人間がいたんだ
ほう　それは誰ですか
それは　あんただよ
明智さん
俺たちがあんたの部屋のドアを
壊すまでの間
あんたは自由に行動できた
あのとき　あんたは
実際には西の塔にいたんだ
騒ぎが起こったとき　大暖炉の間の坂東さんの人形を運び出し
坂東さんの部屋で首をつらせた
そして　また当麻恵の部屋から
煙突を通って　ここに戻ってきた
つまり　このバルト城を
舞台にした殺人劇を仕組み
当麻恵　リチャード・アンダーソン
坂東九三郎の３人を殺したのは
あんただよ　明智さん
いや　ミスター・レッドラム！
明智さん　あんたは　やっぱり…
この写真は何なんだ
俺たちを　あざ笑うように
次々と仕組まれた殺人トリック
チクショウ　犯罪は
芸術なんかじゃないんだ
何か手がかりは？
何だ？蝋人形が泣いてる
そうか
この涙がミスター・レッドラム
お前の完全犯罪を崩すんだ
謎は　すべて解けた
君に　この謎が解けるか﻿レッドラムと名のる
謎の人物によって
次々と行われる密室殺人
自殺した坂東さんが犯人なのか
いや　ミスター・レッドラムは
この中にいる
当麻恵　リチャード・アンダーソン
坂東九三郎を殺したのは　あんただ
そうだろう明智さん　いや
ミスター・レッドラム
フフフ…
何だよ
その頭につけているものは
何です？
えっ　頭　あれ　何か
ねばねば　あ
ああ　クモの巣
皮肉ですね
犯人と　にらんだ私の無実を
君自身が証明して
くれたんですから
ちえ　クモの巣が
張っていたってことは
長い間　暖炉は使われて
いなかったっつうことだもんな
坂東さんが殺されていた時
私は　この部屋から一歩も
外に出てなかったんですよ
あっちゃあー　あーあー
明智さん犯人説ってのも
面白かったんだけどな
これで　振り出しか
まあ　しょうがねえ　あっ
これは？
うーん
今から３０年ほど前
犯罪史上　例のない
難事件が起こりました
１人の刑事がその事件を
追っていたんですが
あと一歩のところで
証拠を掴むことができず
時効を迎えてしまいましてね
まさか　この３人は
その事件でリストアップされてた
容疑者ですよ
じゃあ　あんたは
この３人を追うために
このミステリーツアーに？
何なんだよ　その事件って
この殺人と関係があるのか？
残念ながら
そこまでは教えられません
何？
君の言うとおり謎の解明は
振り出しに戻りました
レッドラムの仕組んだ
密室殺人とアリバイ
どうです　私とあなた
どちらが先にこの謎を解くか
勝負をして見ませんか
この状況で　明智さん
あんたも変な奴だな
いいぜ　受けて立とうじゃんか
この城は　ラムのつくった
アリバイの城だ
奴のトリックを暴き
必ずアリバイを崩してやる
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて
一ちゃん
美雪
大変よ　蝋人形が泣いてるの
マリアさん　あっ
ね
ああ
どうしたの？
何だ　びっくりさせやがって
えー
心配ないよ　これはね
ああ！
うっ　どうしたんです？
何だ　南山さんか
はあー　どうしたんですか
この人形は？
いや　大したことじゃないですよ
どういうことなの
これは　蝋人形の白目の部分が
溶ける流れたものさ
白目の
白い蝋は
色のついている蝋より
溶けるのが早いんです
けさ方　この部屋は
サウナみたいに暑かったんでしょ
そのせいですよ
サウナになっていたのは
カラスのせいなんです
カラス？
換気扇に飛び込んで
故障させてしまいまして
これから修理しようと思って
来たんですが
暖炉の火を絶やすなと
言われておりましたので
早く直さなければと
待てよ　確か…
やっぱり
どうしたの　一ちゃん
見てくれ　坂東さんの人形だけ
白目の蝋が溶けてないんだ
あら　ホント
でも　それがどうしたの？
けさ…
この人形も　ここにあったんだぜ
そう言えば
それなのに　この人形だけ
妙ですね
私も覚えてます
朝は　その椅子に確かに
うん？これは
あっ
どうしたんです？
うん？椅子の上に何かついてる
塩ですね
塩？
間違いないでしょう
塩？
一ちゃん
だから
あの人形だけが
涙を流してなかったのか
ええ？
そもそも
なぜ　俺達そっくりの人形が
用意されてるのか？
分かったぞ　全てのトリックが
ええ！
ええ？
一ちゃん　どうしたの？
証拠だ　俺の推理どおりなら
ここに何らかの証拠があるはず
これは
あら　それは
これ誰のか知っているのか？
うん　それは確か…
そうか　これで決まりだ
謎は全て解けた
探し物かい？
何を驚いているんだ
俺は　あんたと同じトリックを
使っただけだぜ　無駄だ！
部屋の外には
全員集まってるんだ
もう逃げられないよ
ミスター・レッドラム
この蝋人形には随分悩まされたよ
当麻恵が殺された時　人形と同じ
殺され方をしていたおかげで
俺達は変な先入観を
持ってしまった
犠牲者は　人形そっくりに
その人の部屋で殺害されると
思い込み
そう
明智さん　あんた言ってたよね
「捜査に思い込みは禁物だ」って
そのとおりだよね
リチャードの時も
頭に浮かんだのは
本人の死だった
犯人の思惑どおり　先入観を
持ってしまってた俺達は
すぐさま　部屋へ向かった
やられたよ
あんたに逃げる時を
与えてしまったんだからね
どういうこと？
あの時
人形の死体があった小暖炉の
間には　この犯人がいたんだ
ええ！
何だって　あそこに？
無理です　あそこには
人が隠れるような場所は…
隠れてなんかいないよ
堂々と目の前にいたのさ
私達の目の前に
人形か？
そのとおり
あの時　杭を胸に当てて
横たわっていた人形こそ
犯人そのものだったんだ
な…！
犯人はリチャードを殺し
小暖炉の間の鍵をかけ
用意しておいたマントと
蝋で作ったマスクをかぶり
人形になりすました
そして東の塔だけに
レッドラムの声を流した
人形を発見した俺達は　すぐさま
リチャードの部屋へと直行する
そして　誰もいなくなると犯人は
使った服などを
暖炉の中に放り込んだんだ
マントや手袋は布
マスクは蝋だから
火にくべちまえば
あっという間に証拠隠滅できる
後は物置に隠してあった
人形を引っ張り出し
テーブルの上に置いた
急げば１分たらずだろう
そして　自分も
声を聞いたふりをして
西の塔に駆けつければいい
あっ　じゃあ　あの杭はつまり
そう　いくら殺された人形に
化けているといっても
まさか自分の胸に杭を
挿すわけにはいかないからね
よく　考え抜いたものですね
そう　大したもんだよ
しかし　あんたは最後の最後で
ささいなミスを犯した
取るに足らない小さなミスだが
それが　この完全犯罪に
大きな穴を開けたんだ
どうだ　ミスター・レッドラム！
そうだろう　ミスター・レッドラム
いや　多岐川かほる
フン　黙って聞いてたら
随分　言いたいこと
言ってくれるじゃない
どうして　私が犯人なの？
リチャードの時はともかく
坂東さんの時には
ここにいる全員に
アリバイがあったじゃない
ああ　そのとおりだ
だが　俺達が明智さんの部屋に
集まるずっと前に
坂東さんの人形が
部屋に運ばれていたとしたら
何だって？
でも　あの時坂東さんの人形は
ここに　ちゃんと…
あれも人形じゃない
人形のふりをしていた人間
多岐川さん　あんた自身だったんだ
あんたは　昨日の夜
坂東さんを殺し　自殺に見せかけた
その後　人形を死体の横へ吊るし
この部屋に戻ってきて
明智さんの人形の首を切断し
坂東さんの人形になりすました
後は　朝になって
レッドラムの声を流すだけでいい
みんな明智さんを心配して
東の塔へ行ったが
明智さんは薬で
眠らされてるから出てこない
おかげで大騒ぎだ　その隙に
あんたは変装を解き
暖炉にくべた
その時だ　あんたが
小さなミスを犯したのは
変装用の服を脱いだ時
あんたは誤って
思わぬものまで暖炉の中へ
放り込んじまったのさ
指輪
これは　あんたのだろう？
多岐川さん
いつも着けてたことは
美雪が証言してくれたよ
ついさっきまであった人形が
姿を消し　離れた場所に現れる
あの状況では　明智さんの部屋に
集まっている間に
誰かが人形を運んだとしか
思えなかった
みごとなトリックだよ
でも　どうして
そのことに気づいたんですか？
人形の涙さ
この部屋にあった人形は
みんな涙を流していたのに
坂東さんの人形だけ
涙を流していなかった
ひょっとして　この部屋が
サウナみたいになる前に
運び出されたんじゃ
ないのかってね
ほー！みごとな推理です
フフフ…　駄目ね
あなたの言っているのは
状況証拠だけよ
物的な証拠がなければ
有罪にはできないわ
物的な証拠ならあるよ
あんたが人形のふりをして
座っていた椅子の上にね
何だ　この白い粉は？
塩だよ
この部屋は
サウナみたいだったからね
汗
そう　人形のふりをして
じっとしてたんだけど
汗だけは　こらえようがなかった
その時の汗が乾いて
塩の結晶になって残ったのさ
汗の成分から　血液型や
いろんなことが分かるってことは
推理作家のあんたなら
よく知っているよな
ミステリーナイトは終わりだ
ミスター・レッドラムの
敗北をもってね
まだよ　動かないで！
あっ！
おい！
そうよ　当麻も
リチャードも坂東も
私が殺したのよ　この手でね
あいつらは　かつて仲間だった
けど　あいつらは裏切った
だから　その復讐をしたのよ
復讐？
２９年前のね
私とあの人は
この場所で殺されたのよ
あの３人に
殺された？
多岐川さんが…
あの人って
狭山恭次　私の恋人だった人
ミステリーの好きな人だった
これは完璧な犯罪計画なんだ
誰１人傷つけることなく
狙った獲物だけ手に入れる
こいつはまさに芸術作品さ
四億円事件ですね
どうして　それを？
ええ
何です　それ？
昭和４３年の暮れ白バイに乗った
ニセ警察官が
現金輸送車から４億円を
強奪するという事件が起きました
何だよ　それじゃ
多岐川さん達が　あの犯人かよ
そうよ
やった
俺達は
犯罪現場に証拠品を
山ほど残してきた
ただし　絶対に出どころのバレないものばかりだ
どんなに調べても
俺達の元へ　たどり着けない
だが　警察は証拠の山を見て
こう思うだろ
この事件はすぐに解決できる
犯人を割り出すのは簡単だとね
その油断が
こっちの狙い目なのさ
捜査は　たちまち袋小路に入り
事件は迷宮入りしました
あの人の言うことは
何一つ間違っていなかったわ
なのに　あの３人は
何だって！
この金は
時効が来るまで
分けずに隠しておく
バカな！
完全犯罪を成立させるためだ
これは芸術なんだ
金は二の次だ　分かったな
今度　ここにドイツの城が建つんだ
その城を舞台にした
完全犯罪を考えついたよ
名づけて「蝋人形城殺人事件」
まあ
ハハ　俺ってこんな話ばっかだな
ううん
君にプレゼントがあるんだ
えっ
サイズが合うか分からないけど
恭次さん
将来について考えてみないか
恭次さん！
あの３人は私達を土に埋めた
でも　私は死ななかった
どうしてか分からないけど
気がついた時　ベッドの上にいたわ
ショックで半年ほど
記憶を失ってた私は
彼が埋められている
この場所へ駆けつけたけど
でも　その時には　もう
この城がそびえ立っていたわ
私に残されたのは
あの人のくれた指輪だけだった
その時　私は誓った
３人に復讐することを
そして　整形を受けて
多岐川かほるという別人に
なりすまし　チャンスを待った
彼の作った計画で
あいつらを殺す時を
そして　ついに　目的を
果たすことができたのよ
あっ！うわー！
ああ！
うおー
多岐川さん！
さあ　レッドラムからの
最後の問題よ
燃え盛る城から
いかにして逃げ延びるか
どうする　名探偵諸君
死ぬ気ですか？
私には　この計画を最後まで
完璧にやり遂げる義務があるのよ
この　すばらしい芸術を
違う　違うよ！
犯罪は芸術なんかじゃない
あんたの恋人の計画は
確かに　すごいものだった
だが　あんたらに　一体
何が残ったっていうんだ
仲間の裏切りと　恋人の無残な死と憎しみだけじゃないか
あんたに何が分かるっていうの！
分かんないよ！
けど　ずっと人を憎み続けて
あんた幸せだったのか？
復讐を遂げて　ホントに満足かよ
どんな　きれいごとで飾ったって
犯罪は悲劇しか生まないんだよ
遅いは　もう遅すぎるのよ
多岐川さん！
バイバイ　探偵さん
ああ！
うああ…
駄目だ　とても出口まで行けねえ
みなさん　こっちです
食堂の方へ　早く
ここにいれば　大丈夫です
この絵の一画は
絶対　火が来ないように
設計されているんです
空気の流れに遮られて
熱や煙は届きません
マリアさん
なぜ　そんなことを？
バルト城の主　フリードリッヒに
語り継がれていることです
あなたは　一体…
みなさん　伏せて！
よう　気がついたか
一ちゃん
ここは？
病院よ
驚いたぜ　４日目に迎えに
行ってみりゃ　城は瓦礫の山だ
そこに１枚の壁が　お前らを
守るように残ってたんだからな
ああ…　マリアさんは？
姿が見えないそうです
どこかに行ってしまったんですよ
はあ？
多岐川の死体だが
例の大暖炉の間から見つかったよ
そのちょうど真下から
もう１つ白骨もな
それは　狭山っていう人だね
たぶん　そうでしょう
当麻達は
狭山の死体が
見つかるのを恐れて
ミステリーナイトに
参加したんです
なあ　明智さん　四億円事件を
追ってた刑事って
あんたの親父さんだろう
さあーてね
もう　終わったことです
ああ？
私達　あの城で
多岐川さんとじゃなくて
狭山恭次という人と
戦ってたのね
そう考えると
すごいな　お前
あの四億円事件の犯人に
勝ったんだぜ
なあーに　軽ちん軽ちん
君が解決できたのは
偶然と運に助けられたからですよ
最初は　私を
犯人扱いしたんですからね
誰かさんが
眠らされたりするからさ
いずれ君とは
決着をつける時が来るでしょう
その時を楽しみにしてますよ
上等だよ
行きましょう　剣持くん
チェッ　嫌味な奴
一ちゃん　ドーナツでも
食べに行こう
あーいいね
じゃあ　美雪のおごりで…
今　話題の怪盗紳士
絵はもちろん
そのモチーフも奪っていく
剣持のおっさん
こいつを俺に捕まえろだって
まあ　怪盗紳士の予告状まで
もらっちゃあね
えっ？次の奴の獲物は
「我が愛するの娘の肖像」
わあ　きれいなモデルだなー！
待てよ
奴はモチーフも奪い去るって…
狙われたのは肖像画…
っということは
まさかモデルの命が…！
「金田一少年の事件簿」
君にこの謎が解けるか！
世間は　名画専門に狙う
謎の泥棒
「怪盗紳士」の話題で
持ちきりだった
絵のモチーフを奪うって？
殺すとか？
やられた！
あの警備の中どうやって？
さくらが危ない！
また怪盗紳士よ
ねえ　一ちゃん
何とかしてあげたら
ほら　おじいちゃん
二十面相とやり合ったんでしょう
なあ　美雪　二十面相は
じっちゃんじゃないんだけどな
あの困ります
ん？
そろそろ授業が始まりますし
だから　ちいっと貸してくれって…あれ　うちのクラスの和泉じゃん
かわいそうに　あの２人
相当の悪よ
ふーん
いいから　ほら　出すもん出して
楽になんなよ
えっ…　あ？
えへ　悪い悪い
生徒手帳落としちゃったよ
カツアゲの邪魔してゴメンな
何言っていんのよ　私たち別に…
行こうぜ
やるじゃない
エヘヘ…
金田一君
金田一君　あの…
なあに　たまたま
ああなっただけだよ
そうじゃないの
話したいことがあって
私　今日で転校するの
あの　だから…
金田一君に　私　私…
一ちゃん　お待たせ！
あっ　美雪　茶していくか？
それじゃ
えっ　おい　話ってなんだよ
どうしたの　和泉さん
さあ　あいつ転校するんだってさ
一年前
転校してきたばかりで　また？
おっさん　マジかよ
このままじゃ
警視庁の威信に関わるんだ
だからって　警視庁の
鬼警部ともあろうお方が
高校生の俺に頼むかよ
いや　まあ　そう言うなよ
今度は青森の
蒲生剛三画伯の元に
こんな予告状が届いたんだ
まっ　旅行のつもりでさ
見て見て　一ちゃん
立派なお屋敷
ん？
あれが蒲生剛三の屋敷だ
剣持警部でいらっしゃいますね
執事の小宮山と申します
今夜は蒲生画伯のご友人や
知人などをお招きして
ごく内輪の
パーティーがございます
ルノワール国際絵画展で
大賞に輝いた
「我が愛する娘の肖像」
でございます
いかがですかな？
ん？
私の最高傑作は
今日　お集まりいただいたのは
皆さんに娘を
紹介したかったからなのです
この絵のモデル
私の最愛の娘です
はーあ
すっげえ　美人！
ホント　絵から抜け出したみたい
あっ　金田一君
えっ　あっ…
あの　どこかでお会いしました？
うっふっふっふっ…
はあ？
私よ　和泉さくら
和泉さくら…
えっー！お前ホントに
あの　さくらか？
私　全然　知らなかったわ
さくらさんが蒲生画伯の
娘さんだったなんて
すべては
あの絵のお陰で分かったのよ
絵のお陰？
フン
あんたが本当の娘と
決まった訳じゃないさ
あの男は？
画家の吉良勘治郎様でございます
一時はご主人様の
ライバルとまで言われたのですが
最近は絵も描かず
お酒ばかり…
僕も　さくらさんのことは
疑問に思ってますよ
結婚もしてない蒲生おじさんに
娘がいたなんて初耳ですしね
叔父の財産目当てで
寄ってくる奴は多い
和久田さんまで…
気にすることないわ
あなたが羨ましいのよ
海津先生
気分直しにお友達に
お庭でも見せて差し上げたら
すごい
庭の中が１つの世界みたい
完成するのに
２年もかかったんですって
何だ　あれ？
ポアロ　いらっしゃい！
うわっ　かわいい
フフフ…
よかったわね
さくらさん　幸せそうで
ああ
あんな所にも建物が？
あれはラベンダー荘よ
ラベンダー荘
お父様のアトリエ　行ってみる
えっ　いいの？
アトリエといっても
新しい絵を描かなくなった頃から
ギャラリーのようにして絵を画商に
見せていらっしゃいまして
しっかし　車の中に
テレビや電話　冷蔵庫
よくぞ　ここまで
金かけたもんだね
ご主人様は乗り物と狭い所が
お嫌いで
飛行機はもちろん　船にも
お乗りにならないんです
車も乗れるのは
この特製のリムジンだけでして
ラベンダー荘に行くには
グルっと回って
橋を渡らなきゃならないの
歩くと
１０分ぐらいかかちゃうのよ
どうしたの　ポアロ？
ポアロったら
どうぞ
うわ！ポアロ
ここに来ると　いつもそうなの
ラベンダーの香りが苦手らしくて
ふーん
ラベンダー？
あっ　すっごい
これ全部ラベンダー
父が大好きなの
こちらです
あっ！
これは　一体？
あっ！
お父様の絵が…
入っちゃダメだ！
ないの　お父様の自画像がないわ
えっ！
なんてことかしら
困ったことになりましたな
警視庁の警部さんが
ついていながら　こんなことに
クッソー　怪盗紳士め
だいたい　高校生の
探偵気取りに　捜査協力を
依頼するところからして
どうかしてますよ
お言葉ですが　こいつは…
どうした　ポアロ　うん？
そうか…
犯人は　この中にいる
何？
この中の誰かが
蒲生氏の絵を盗んだんだ
何を根拠に？
一体誰なんだ　金田一？
それは　こいつが知ってるさ
わー　な…　何だ　この犬は
和久田さん
バカな…
犬に吠えられたぐらいで
なぜ　僕が犯人だと？
ラベンダーの香りさ
ラベンダー？
警官が玄関で見張っている
あのアトリエに入るには
犯人はラベンダー畑を通って
裏口から入らなくちゃならない
だから犯人にはラベンダーの香りが
染み付いていたはずだ
ポアロはラベンダーの香りが
苦手でね
あんたの香りに向かって
吠えてるのさ
つまり　和久田さん
あんたが犯人だ！
じゃあ　お前が怪盗紳士か？
ち…　違う！
僕は怪盗紳士じゃない！
確かに絵を盗んだのは僕だ
でも　それは
その女に　おじさんの絵を
全部持っていかれるのが
悔しくて！
信じてくれよ！
春彦！
お前という奴は！
あっ　ぶたないで！
お見事　さすがは高校生の
名探偵さんね
そこらのヘボ警部さんとは
大違いね
私　「芸術ジャーナル」の記者
醍醐真紀　よろしくね
ああ…
ホントに　ここに埋めたのか？
絵なんて出てこないじゃないか
そんな　僕は確かに…
大変です！
うん？
盗まれた絵が元の場所に！
何だって！
なんてこった
怪盗紳士の挑戦状　本物がついに…
面白いことになってきたわね
名探偵　対　怪盗の対決
うふっふ　わくわくするわ
上等だぜ　怪盗紳士
ここにある絵は１枚だって
お前に盗ませや　しないぜ
ねえ　金田一君
次に怪盗紳士が狙うのは
どの絵だと思う？
油断するな　必ず捕まえるんだ
はっ
さあ？まだ　そこまでは
そりゃ　この絵に決まってるさ
「我が愛する娘の肖像」
南十字星をバックに微笑む
長い髪の少女　この絵には
単なる美を通り越した何かがある
この絵なら２億…
いや５億出しても惜しくない
なるほどね
いえ　この絵が狙われることは
ありえませんよ
怪盗紳士は　この絵を一度盗んで
返してきてるんですから
一度盗んで返した？
この絵は怪盗紳士のお陰で
日の目を見たようなものなのよ
今から半年前
ルノワール国際絵画コンクールの
審査委員会に絵が送られてきたの
「この『我が愛する娘の肖像』と
題された絵は」
「蒲生画伯の
未発表の作品である」
「一度は我がコレクションに加えたが
あまりの素晴らしさゆえ」
「この絵に　ふさわしい名誉を
与えたいと考え」
「コンクールに出品する
怪盗紳士」
そして　この絵は
グランプリに輝いたの
へえー
記者会見で蒲生画伯は
昔　生き別れた幼い娘の
今の姿を想像して
この絵を描いたと告白したの
私が生まれた頃
父は　まだ売れない画家で
結婚もしていなかったんですって
私が５歳の時
母は別の人と結婚したの
母は　５年前に失踪した父は
本当の父親じゃないと
言い残して亡くなった
それで　あの絵を雑誌で見た時
ひょっとしたらと思って
名乗り出たんです
びっくりしたでしょう
自分　そっくりの絵が
「我が愛する娘の肖像」なーんて
タイトルで
雑誌に載ってたんですもの
でもさ　その頃のお前って　確か
それはね
あっ！
このアザ　絵と同じ
このアザを見るなり
私を娘と認めてくれたの
少し痩せたほうがいいな
それとメガネを
コンタクトに変えなさい
ああ
ある日　父に言われて
ドレスを着せられて
あっ！
鏡の中には
あの絵とそっくりの少女がいたの
さすが巨匠といわれる蒲生画伯ね
想像で　ここまで
そっくりに描けるなんて
ですから　この絵が再び
怪盗紳士に狙われるとは到底…
だが　こうは
考えられないだろうか
絵を返したのは
この絵のモチーフ
つまり　さくらさんを探すための
罠だったとしたら
私を探すための？
作品を世間にさらすことで
娘を探し出し
改めて絵と共に
モチーフの娘をも奪い去る
さくらさんを奪い去るって
殺すとか
ちょっと待てよ
あの絵が　まだ
盗まれたって訳じゃないだろう？
そうならないことを祈りますよ
あの絵が！
「我が愛する娘の肖像」が！
何だと！
あっ！
ああ！
ああ…
あの警備の中をどうやって
「約束通り本物登場」
クッソー！ふざけやがって
いけない！
どうした？金田一
さくらが危ない！
さくら！
さくら
うん
はあ…
さくら
さくらさん
「絵の中の髪の長い少女は
もういない」
「絵のモチーフ
たしかに　いただいた」
クッソー　怪盗紳士め
あっ　一ちゃん
外傷はないそうだ
よかった
まんまとやられたわね　名探偵さん
だけど　まだ奴は　あの絵を
完全に盗み出していないはずだ
ホントか？
あの割られたガラス窓が
まさに　その事実を物語っている
ほら　あのガラス
だけど　ガラスの破片が
内側に飛び散ってるってことは
奴は外から　このガラスを割って
侵入したんだろう？
ホントにそうかな
何？
ほら　この窓　格子の真ん中が
割れてるだろう
犯人が外から鍵を開けるために
ガラスを割るとしたら
真ん中より
鍵のすぐ脇を割るのが
普通じゃないか
なるほど
こっち側の窓は
はめ殺しで開かないだろう
これこそが
犯人が内部にいる証拠だ
どういうことなの？一ちゃん
つまり犯人は
こうして開く側の窓から
身を乗り出してガラスを割った
それで　こっちのガラスが
重なってしまう
鍵の近くは割れなかったんだ
しかし　何のために
そんなことを？
怪盗紳士は　まだ
この屋敷の中にいるからさ
じゃあ　怪盗紳士は
今も　どこかに潜んでいるの？
潜んでいるとは限らないぜ
パーティーの出席者の中に
怪盗紳士が　まぎれ込んでる
可能性もある
じゃあ　盗まれた絵は？
ああ　たぶん
この屋敷のどこかに
隠しているはずだ
よし　すぐに調べさせよう
部屋で寝てたら物音がして
目が覚めたら暗闇に
大きな男が立っていたんです
そのあと
すぐ何か嗅がされて意識が…
大きな男か
しかし　惜しい絵を
盗まれたもんですな
娘がこうして生きていれば十分だ
絵なんて　また描けばいい
フン　また描けばいいか
あんな素晴らしい絵が　ホントに
お前に描けるのか蒲生？
俺のモチーフを盗むような奴によ
バカバカしい　それは
吉良さんの思い込みでしょう
違う画家が　たまたま
似たようなモチーフを使うなんて
よくあることですわ
ケッ
おーう　俺の好みの芸術発見
一ちゃん！
あら　このモデル
あの付き添い医師の
海津さんじゃないの？
あっ　そういえば…
ええ　海津先生が
モデルをなさってたって
話は聞いたことがあります
へえー
何せ　ご主人様は
目で見たものしか
お描きにならない上に
乗り物嫌いで　めったに外へ
お出にならないので
そういえば　どの絵も
ここで見た風景ばっかりね
５年前から　屋敷の外で描かれた
絵は１枚もないそうです
プロのモデルを何ヶ月も
この山の中へ閉じ込める訳にも…
それで主治医の海津さんを
モデルに
娘が生きていただけで
満足ですって
あなたって演技も上手いのね
あの場合
ああ言うしかないだろう
でも　あの絵は
億の値がついてるのよ
いや　絵１枚で
騒ぎが収まれば安いもんだ
これ以上　警察に居座られては
いつ例のことがバレんとも限らん
ねえ　いっそう　さくらさんも
殺っちゃったら
どうせ
そのつもりだったんだから
いや　今はマズイ　今は…
…たく
ちょっと若くて可愛いからって
おい　どこ行くんだ！
あなたの大事な　お嬢さんの所よ
すみません　海津先生
私のためにわざわざ
綺麗だわ
えっ
ああ…
何か飲み物もらってくるわ
やっぱり蒲生は
殺すのが惜しくなったんだわ
このままじゃ私は　お払い箱…
誰にも渡さないわ
自分の手まで汚して
やっと私のものにしたのよ
それを今さら　あんな小娘に
これで　あの小娘に…
金田一　起きろ！
何だ　何だ　こんな夜中に
わあ！
一ちゃん
あっ痛い　何でこんなとこに水が？
ボケてる場合じゃないぞ　金田一
見ろ！
あっ
また　やられた
クソ！
一ちゃん　ここにあった絵って…
あっ　まさか！
ついに殺しまで
冗談じゃないぞ
蒲生作品には人物画も多いんだ
盗まれるたびに人が殺されたら
この先　何人　犠牲者が出るか
怪盗紳士　お前の正体は
この俺が暴いてやる！
じっちゃんの名にかけて
美雪　おっさん
奴は　今夜
ここに必ず現れるはずだ
絵を盗み　そのモデルも
殺してしまう残虐な怪盗
海津さん　そして
次の犠牲者の悲鳴が上がった
とうとう姿を現したな　怪盗紳士！
えっ…　嘘だろ　その声は
まさか　あんたが怪盗紳士？
君に　この謎が解けるか？﻿狙いを定めた名画の
モチーフまで奪い去る「怪盗紳士」
しかし　蒲生画伯の
屋敷で起こった事件は
ついに殺人にまで
発展してしまった
「怪盗紳士」の正体は
俺が必ず暴いてやる
じっちゃんの名にかけて
ここにいる連中の
身辺調査の結果だが
蒲生画伯の甥の和久田は
大学在籍の天文学者で
女子学生から　手切れ金を
要求されていたらしい
うーん　飲んだくれ画家の吉良も
借金が　かさんでるようだし
雑誌記者の醍醐真紀も
頼る身内も　いないせいか
生活は楽じゃなさそうだ
画商の羽沢は
絵を手に入れるためなら
どんな汚い事もやると
評判の男だし
執事の小宮山は１年前に
この屋敷に雇われるまで
１０年以上も住所不定の
状態が続いていた
みんな　怪しいってことか
やっと　本当のお父さんと
暮らし始めた
ばかりだっていうのに
なあ　５年前に失踪した
さくらの養父って
どんな人だったんだ？
お父様と同じ画家よ
才能はあるって言われたけど
絵は　ぜんぜん売れなくて
でも　才能がありゃ…
何も分かっとらんな　坊主
あ　吉良さん
この業界はな
コネがなきゃ
成功なんて無理なのさ
コネ？
はくのつく公募展など
ほとんどは審査員の弟子が
大賞を取ることになってんだよ
それって　何か
イカサマくさいですよね
この国は　そういう国なんだよ
画家だって　世渡り上手なら
才能は　そこそこでも出世できる
あの蒲生剛三のようにな
え…
吉良さん
蒲生さんと
昔　何かあったんですか？
１５年前の事だ　蒲生は
俺のモチーフを盗用して
コンクールに入賞し　画壇に
華々しくデビューしやがったんだ
だが　奴は　すぐに行き詰まった
元々　大した実力もなかったんだ
潰れるのも時間の問題と思ったさ
なのに奴は　５年前に突然
ガラッと画風を変えてきやがった
出す物出す物　皆
高い評価を受けて
今じゃ　大先生だ
だが　俺は信じねえ
蒲生みたいな腐った野郎に
あんな素晴らしい絵が
描けるもんか
きっと　あの絵は
他の誰かが…
よそう
酔いが　さめちまう
和久田さん　こんなとこで
何してるんですか？
かくれんぼ
性懲りもなく
また何か盗み出そうって
魂胆ですか？
黙れ！
知恵を使わなきゃ
盗みは成功しませんよ
何なら　俺が　ご教授しましょうか
まさか　里美が殺されるとはな
待てよ　それにしても
なぜ怪盗紳士は
さくらを殺さずに里美を？
ま…　まさか　あの男が
俺たちに復讐をするために？
バカな　そんなはずは…
あそこだ　あそこに電話を
死んだはずだ　あいつは
確かに死んだ
あ　もしも…
やっぱ　あんまり
眠れなかったなあ　もう　お？
ご主人様　どうなさったんですか？ご主人様！
何かあったんですか？
ああ　ご主人様の様子が変なんです
え？どうなさったんです？
蒲生さん
助けてくれ！殺される
怪盗紳士に殺される！
落ち着いて
どこにいるんですか？
分からん　何も見えな…
いや　ラベンダー荘だ
ラベンダー
ああ　うわああ
金田一さん
小宮山さん　車を！
ラベンダー荘だ
こ…　これは！
さっきの電話は　やっぱり
絵が！ご主人さまの
釣りをしている絵が！
またしても　絵に見立てて
お父様…
あ…　さくら！
マジかよ　おっさん
ああ　お前に言われた通り
警官たちに調べてもらった結果だ
あの時　本館から姿を消していた
人物は　一人もいなかったよ
全員にアリバイがあるってのか
しかし　あの時
全員が本館にいたとなると
誰が　どうやって
蒲生画伯を殺したんだ？
ああ！分からん
お？
おい　美雪
どうだ？さくらの様子は
ちょっと落ち着いたみたい
でも　こんなことに
なってしまうなんて
あ？
ああ！
和久田さん！
また　あんたかよ　待て！
くそっ！
ああ！
ああ　はじめちゃん　足元…
わああ！
それ　一億は　くだらない
とか言ってた
蒲生画伯の代表作
「ラベンダー」よ
い…　一億…
どうされました？
何だ？騒々しい
一億…
うーん
安心しろ
こいつは　複製画だ
複製？
ああ　非常にいい出来だがな
でも　何で　そんなもんが？
絵を売った後は　複製画を代わりに飾っていたのですか
でも　妙ですね　「ラベンダー」は
まだ売ってなかったはず
なぜ　和久田様が　この複製画を
うーん　そういうことか
さては　本物と複製画を
すり替え…
この屋敷に飾ってある複製画は
３枚ですね
この「黄昏」と「想い出」
それに　この「緑の館」ですね
ふーん　なるほどね
違う　今回は
僕一人で　したことじゃないんだ
羽沢さんに言われて…
私は知らないな　そんな話
何だと！
だが　和久田が持ってきた複製画は
あんたのトランクに
入ってたもんだろ？
だから　彼に盗まれたんですよ
私は本物と照合するつもりで
持っていただけだ
羽沢　貴様！
和久田！
お前には　大河内警部が
聞きたい事が　たくさんあるそうだ
僕には聞きたいことは
何もないんですけど
あやうく　泥棒に
されるところだったな
違う！俺は…
怪盗紳士じゃない！
違うんだ　違うんだよ
その疑い　俺が晴らしてやろうか
和久田さん
え？
俺の頼みを聞いてくれるならね
ああ　疑いが晴れるんなら
何でも
おっさんにも協力してもらうよ
え？
すべては　今夜だ
今夜　奴は必ず姿を現す
明日には帰っていいんですか？
なぜ　警察は　我々を
急に解放する気に？
いやあ　つまり　その
ここでは進展がないんで
全員を捜査本部で
取り調べ直すだけだろう
だったら　お嬢さん
複製画だけでも
持ち帰らせてもらえませんか
複製画といっても
おじさんが飾るだけあって
それなりの金には
なるでしょうからね
泥棒に失敗したら
今度は　お願いか
黙れ！さくらさえいなけりゃ
本当は本物の絵を
俺が相続するはずだったんだ
よしてください
ご主人様が亡くなられたばかりで
そのようなお話は
分かりました
は？
複製画は　お持ちください
お嬢様…
本当に怪盗紳士が来るの？
けど　何で複製画なんかを…
おっさん　押すなよ
押すなったって　お前
こんなところに入ろうとした…
しー！
素晴らしい
この声…
そこまでね　名探偵さん
あんたが怪盗紳士なのか
その通り
残念だったね　名探偵さん
しかし　絵の隠し場所を見抜き
和久田を使って　私を
おびき出したところは　さすがね
複製画の話を聞いて
ピンと来たのさ
その「黄昏」の複製画が　さくらの
絵と同じ５０号だったからね
しかも　横描きの絵の中に
縦描きの絵を隠す
俺たちの盲点をついた
見事な手口だったよ　怪盗紳士
いや　醍醐真紀
醍醐さんが
怪盗紳士だと？
もっとも　本物の醍醐真紀は
ただの雑誌記者
私は名前と顔を借りただけ
実在の人物に変装していたとは
身元を洗っても
分からなかったはずだ
しかも　女だったとはな
怪盗「紳士」ってのに　すっかり
惑わされちまってたよ
じゃあ　２人を殺したのも？
それは　濡れ衣よ
人殺しなんて
無粋なマネはしないわ
疑うんなら　メッセージカードを
よく調べてみるといいわ
私とニセモノの違いが
分かるよう
ちょっとした
仕掛けをしておいたの
言い逃れようったってな　そうは…いや
この人の言う通りかも
なぬ？
さくらは　大きな男に
襲われたって言ってたよな
ということは…
それに　そもそも　この絵を
国際絵画展に送りつけたのだって
私じゃないんだもの
私が　ここに来たのは
私をかたる誰かが
何を企んでいるのか
知りたかっただけ
この絵は　そのついでよ
でも　まさか
人殺しのダシに使われるとはね
ま　私の殺人容疑を晴らすのは
あなたに任せたわ　名探偵さん
あっ　やつは…
おっさん　外だ
なに？
いたぞ！こっちだ！
ヤツを川の方に追い詰めた
早くしろ！
え？
そこまでだ　観念しろ
なぜだ？
あのまま逃げようと思えば
ひとまず　ここは私の勝ちね
金田一くん
そんな負け惜しみは…
ん？
また会いましょう
名探偵の坊や
くそお！追え！追え！
はっ！
ああ　また　やられちまった
俺は　もう　おしまいだ
そう落ち込むことも
ないんじゃない
ん？
おお！お前　これ　いったい
ど…　ど…　どうしたんだ？
和久田の持ってた複製画の中に
この絵もあったから
ちょいと　取り替えといたのさ
はじめちゃん　君って人は！
あっ　おっさん　ゴリゴリして
痛いっつうの　痛てて…
なるほど　確かにな
怪盗紳士の言ってた
２枚のカードは
りっしんべんの下が
はねてるのに
その他のカードは
どれも　はねてない
怪盗紳士の言ってたことが
本当だとすると
俺が感じてた違和感も
解消するしな
違和感だと？
ああ
怪盗紳士の
これまでにない残虐性
人殺しにまで
エスカレートしている
それに　あの時　床が
濡れていたことから考えると
海津を殺した後
絵を盗んだようだ
名画を盗むことが第一の
目的であるはずの　怪盗紳士がね
しかし　ここに　ニセ者が
いたとなると
説明がつくってことか
じゃあ　そのニセ者が
まだ　この屋敷の中に？
ああ　そいつこそが
蒲生と海津を殺した犯人なのさ
ん？
剣持警部
怪盗紳士は　窃盗殺人犯として
指名手配した
屋敷の連中は
明日　午後３時には
全員　出てってもらう
何？
これで終わりだ　ご苦労だったね
どうすんだよ　殺人犯は
まだ　こん中にいるんだぜ
俺に言うな　ここでは立場が
とっても弱いんだ
くそっ！最大のなぞも
残ってるっていうのに
最大の謎って？
蒲生が殺された時
全員にあったアリバイの謎だよ
その件だがな　金田一
検視の結果
妙な事実が出てきたんだ
蒲生は目をガムテープで
ふさがれていたらしい
粘着剤が付着していた
目を？
目隠しされて
殺されたようだな
じゃあ　どうして　蒲生さんは
ラベンダー荘にいるって
分かったの？
匂いだよ　アトリエ周辺の
満開のラベンダーの
匂いだと思う
さくら
金田一くんも
明日　帰っちゃうのね
ああ　学校もあるしな
懐かしいな　不動高校を
転校して１ヵ月なのに
いろんなことが　ありすぎて
もう何十年も経ったみたい
戻りたい　できることなら
あの頃に　もう一度
戻ってくりゃいいじゃん　また
今のさくらなら　モテるぞ
金田一くん　あたし…
は？
さくら…
はじめちゃん！
ああ　美雪
じゃあ　私　これで
あ　おい　さくら！
何か　名残惜しそうね
何やってたの？
な　何って
２人で天体観測してただけだよ
南十字星は　どこかな？ってね
うわっ！
南十字星は　南半球で見える星だ
青森県の山奥で
見えるわけないだろ
わ　和久田さん　いきなり…
あ　あんた
また　何か　もらおうと思って
さくらをつけ回してたな
ああ　そう言えば　日本でも
南十字星を見られるところが
１カ所あるな
話をごまかすなよ
え？日本でも？
はい　いつき
おお　金田一か　久し…
何？沖縄へ飛べだと？
頼むよ　いつきさん
時間がないんだ
朝一で行ってほしいんだ
日本最南端の島　波照間島に
ん？あれは蒲生画伯の部屋
スケッチブックぐらいなら
持ち出しても
目立たないだろうって
ことですか？羽沢さん
こりゃ　参ったな
いつも　いいところにいるよ
ま　こんなもんでも
信じられないくらいの値がついて
取り引きされる世界なんでね
危ない橋でも渡ってないと
やってられないのさ
お前には　分からんだろうがな
ふーん
はっ…
こ　これは！
あ　いつきさん？
で　何か分かった？
ああ　面白いことが色々とな
岸和田病院ってとこでな…
はじめちゃん？
美雪　分かったぜ
もう一人の怪盗紳士の
正体が
ええ？
だけど　アリバイの謎が残ってる
時間がない
さくら…
さあ　金田一さん
出発します
金田一くん…
はじめちゃん
ん？
これは　金田一さんのですね
ああ　どうも
どうしたの？ポアロ
今まで　じゃれてたのに
待てよ　こいつ
俺たちのカバンに向かって…
あ！
どうしたの？
分かったぞ　蒲生殺しの
アリバイの　からくりが
犯人は　巧妙なトリックで
俺たちをペテンに　かけたんだ
謎は　すべて解けた！
いつきさん　あんたは
とんでもない情報を
つかんでくれたよ
さくらの肖像画と
怪しい糸で結ばれた人物が
ついに浮かび上がった
絵に隠された恐ろしい秘密
そして　ラベンダーの香り
この２つがクロスしたとき
すべてが　つながった
怪盗紳士の名をかたった殺人鬼
真実は俺が必ず暴く！
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
日本で唯一　南十字星が見える
沖縄最南端の島　波照間島
美雪　分かったぜ
もう一人の怪盗紳士の正体が
謎は　すべて解けた！
なんで戻ってくるんだ
もう　この事件は終わりだ
全員に帰れと
言ったはずだろうが
そんなに怒鳴らないでくださいよ
刑事さん
ポアロ
訳なら
あの名探偵に聞いてください
これは　奴が言い出したことだ
金田一くん…
小僧　これは一体　何のマネだ
これから　すべてを
明らかにするんですよ
この「怪盗紳士　殺人事件」の
真相をね
真相だと？
そもそも　この屋敷で起きた
様々な事件は
実は２人の人物の手によって
行われていたんだ
その事件の中で
本物の怪盗紳士がしたことは
最初に　和久田が
ラベンダー荘から盗んだ
蒲生の自画像を
元の場所に戻したことと
「我が愛する娘の肖像」を
盗んだことの
２つだけなんだ
もっとも　この絵は　俺が
複製画と取り替えておいたから
本物は無事だったけどね
それじゃ　他の絵を盗んだのは
すべて　ニセの怪盗紳士が
蒲生と海津を殺害するために
やったことだ
殺害するために？
盗んだ絵のモチーフをも
奪い去るという
怪盗紳士の仕業に
見せるためのトリック
２人の絵を盗むことで
蒲生・海津殺害の罪を
怪盗紳士に
なすりつけるためだったんだ
ところが　その計画の前に
一つ　予想外のことが
起こってしまった
本物の怪盗紳士が
この絵を盗んでしまったのさ
ニセの怪盗紳士は焦ったはずだ
自分の犯行の前に
盗まれた絵のモデルの
さくらの身に　何も起きずに
海津と蒲生だけ殺すのは
誰の目にも　不自然だからね
そこで　奴は急きょ
さくらを襲って
髪を切るという　むごい行為を
見せつけることで
その後の殺人に　つなぐことを
思いつき
怪盗紳士の残虐性が
エスカレートしたと思わせる
その心理トリックは
まんまと成功した
ちょ　ちょっと待て
じゃあ　真犯人は　まだ…
ああ　海津里美　蒲生剛三を
殺害した犯人
ニセの怪盗紳士は
この中にいる
この中に？
まず犯人は
この「我が愛する娘の肖像」を
怪盗紳士の名をかたって
コンクールに送りつけ
世間の注目を集めさせた
その結果　蒲生剛三は
自分に行方知れずの娘がいると
発表する羽目になった
そして　それが　きっかけで
さくらは　この蒲生の屋敷へ
娘として　やって来たんだよな
え…　ええ
この屋敷に　さくらを
迎え入れること
それが犯人の殺人計画の
第一歩だったんだ
だが　この計画に
決定的ミスが一つあった
決定的ミス…
それは？
犯人がコンクールに
送りつけた　この絵に
重要なヒントが隠されていたんだ
この絵のどこに　そんなもんが？
羽沢さんが前に言ってた
背景に描かれた南十字星だ
確かに言ったが　それが
何の手がかりだと言うんだ？
南十字星は　この青森からは
見えないはずですよね
和久田さん
ああ　この星は　赤道近くか
南半球でしか見られない星座だ
乗り物嫌いで　飛行機も船にも
乗らない蒲生画伯の絵に
なぜ　この南十字星が
描かれているのか
しかし　この絵は成長した
さくらお嬢様を
想像で描いたものですから
背景は写真を見て描いたとか
それは　どうかな
絵を描くためだけに　池や滝や
畑まで造るような画家が
大事な自分の娘の背景に
写真など使うと思えない
つまり　こうは考えられませんか
この絵は　蒲生画伯以外の
誰かが
南十字星の見える場所で
描いた物じゃないかって
何？
どういう意味だ？
俺は南十字星の疑問を
解明するために
ルポライターの　いつきさんに頼んで
ある場所に行ってもらった
ある場所って？
沖縄の最南端にある波照間島
日本で唯一　南十字星が見える
その島で分かったことは
１年前
岸和田病院という所に入院した
ある男のことなんだ
その男は記憶を失い
言葉も理解できず
口も　きけないほどの
ひどい病状だったが
一枚の油絵を描き上げた
まさか　その絵が…
ああ
その男の描いたという絵こそ
この「我が愛する娘の肖像」
だったんだ
バカを言うな　じゃあ　この絵が
贋作だとでも言うのか
この色使いや筆のタッチは
明らかに蒲生画伯の作品だ
いや　蒲生の絵を
真似たわけじゃない
その逆さ
逆？
今まで蒲生画伯の作品は
すべて　その男が描いていた
つまり　彼は蒲生の
ゴーストだったのさ
ゴーストって？
画家として
行き詰まっていた蒲生は
才能ある無名画家の
その男に目をつけ
自分に代わって
絵を描かせていたんだ
俺の睨んだ通りだ
あいつに　こんな絵が
描けるはずがない
蒲生は　そういう男なんだよ
そのゴーストに描かせた絵が
高い値で売れだし
調子に乗った蒲生は
この屋敷を手に入れ
その画家を監禁して
さらに多くの絵を描かせ
巨万の富と名声を得た
ところが　蒲生は　その画家を
薬物でボロボロの病人にして
放り出した
おそらく彼が　蒲生の卑怯な
やり方に反抗でもしたんだろう
じゃあ　蒲生が　その男を
波照間島に？
ああ　間違いない
彼の入院手続きを取ったのが
主治医の海津里美だったんだから
海津さんも共犯ってこと？
まったく　何て　ひでえ奴らだ
利用するだけ利用して
ヤバくなったら病院送り
けっ　あの男が
やりそうなことだぜ
すると　金田一　お前は　この中に
犯人がいると言ったが
ここにいる誰かが
その無名の画家ってことか？
そいつが正気に戻って
復讐したんだな？
それじゃ　沖縄県警に
その男の…
ちょっと待ってくれよ
犯人は　その男じゃない
彼は３ヵ月も前に
死んでるんだから
死んでるだと？
じゃあ　一体　誰が犯人なの？
その前に　羽沢さん
例のスケッチブックを
ああ
そ　それは…
羽沢さんが持ち出そうとした
スケッチブックだよ
いやあ　偶然　見つけて
どこに　そんな物が…
蒲生画伯の部屋を
どさくさに紛れて
物色していた羽沢さんが
偶然にも　手がかりを
発見してくれたってわけさ
この絵を見てくれ
あ…
おお　こ…　これは！
さくらさんの絵だわ
それも５年前
１２歳の頃のね
そして　この絵の中の
さくらの胸には
アザが…　蝶の形をした
アザがないわ
ホントだ
じゃあ　あのアザは？
それは　この絵が
想像で描かれたものじゃなく
アザのある　今のさくらを
実際に見て
描いたものだってことだよ
日本で唯一　南十字星が見える
波照間島でね
じゃあ　まさか
ああ
怪盗紳士の名をかたり
蒲生剛三　海津里美に
復讐した犯人は
お前だ！
犯人は　お前だ！
蒲生　いや　和泉さくら
お前が　この事件の真犯人
もう一人の怪盗紳士だ
まさか　そんな！
あの２人を殺害するために
さくら！すべて　お前自身が
やったことなんだよ
金田一さん　ひどすぎます
お嬢様が　ご主人様を殺すなんて
ラベンダー荘から　ご主人様の
助けを求める電話があった時
お嬢様は本館にいました
あの電話が切れて１分も
しないうちに現れた　お嬢様に
どうやって　ラベンダー荘にいた
ご主人様が殺せるんです？
確かに　アリバイは成立するが
はじめちゃん…
この本館から川の向こうの
ラベンダー荘までは
どんなに急いでも　５分は　かかる
不可能だよ
ああ　そこが今回の事件の
最大の謎だった
できれば
謎のままであってほしかったさ
そうすれば　さくらのことを
殺人犯などと呼ばずに済んだんだ
でも　謎は解けてしまった
蒲生の殺害現場は
この本館だったからね
何ですって！
そんな　無茶な
あの後　すぐ　ラベンダー荘で
発見されたんですよ
ええ　その通りです
だが　あの死体は本館から
運ばれたものだったのさ
本館から運んだって？
一体　どうやったんだ？
リムジンだよ　俺たちが
ラベンダー荘へ向かう時
本館から乗った　あの
大型リムジンのトランクの中に
死体が入っていたんだ
俺たちは知らない間に死体の
運搬を手伝わされたってわけさ
何ですって！
あの時　トランクに？
この殺人計画は　蒲生が殺される
数時間前から始まっていた
夜中のうちに　蒲生を
気絶させた彼女は
蒲生の自画像と同じ服を着せ
テープで目をふさぎ
ガレージのリムジンの
トランクに放り込んだ
その後　ラベンダー荘へ行き
あたかも　そこで　争いが
あったかのように部屋を荒らし
怪盗紳士の犯行に
見せかけるために絵を盗んだ
こうして　すべての準備を整えて
本館に戻った　さくらは
ラベンダーでトランクの中に
香りを満たし
ラベンダー荘の
コードレス電話を起き
気絶してる蒲生を起こしたんだ
じゃあ　あの時
お前が受けた電話は…
ああ　ラベンダー荘からではなく
この本館のガレージから
かけられたものだったんだ
助けてくれ！殺される！
早く　早く助けてくれ！
どうなさいました？もしもし？
殺される！助けてくれ！
どうなさったんですか？もしもし
早く　早くしろ！何やってるんだ！
ご主人様の様子が変なんです
助けてくれ！
怪盗紳士に殺される！
どこにいるんですか？
分からん　何も見えない
いや　ここはラベンダー荘だ
うわあ！
もしもし
もしもし　どうしたんです？
もしもし　蒲生さん　蒲生…
さくらさん…
しかし　金田一
お前　どうして　そのトリックを？
すべて　ポアロのお陰さ
ポアロの？
さっき　駅に着いた時
ポアロが吠えだしただろ
そう言えば　あの時　急に吠えて
あれは　リムジンのトランクから
出した俺たちのバッグに
ポアロの嫌いな
ラベンダーの匂いが
移り香してたからなんだ
恐らく　蒲生を殺害後
さくらは　急いでトランクの中を
片付けたはずだ
しかし　人間には分からない
その　かすかな匂いを
ポアロの嗅覚は感じ取ったんだ
それに気づいた時
バラバラだった数々の疑問が
１本の糸で　すべて　つながった
ラベンダーの匂いと
コードレス電話を使った
巧妙なアリバイ工作の全貌がね
リムジンが
ラベンダー荘に着いた時
さくらは一人で車に残ったよな
あの後　俺たちがラベンダー荘に
入ったのを見届けると
トランクから死体を引きずり出し
すぐ先の崖から投げ落としたんだ
もう一つ
お前は自分を襲った怪盗紳士は
大柄な男だと言ったよな
だけど　本物の怪盗紳士は
女だと分かり
俺が　お前に　疑いを抱く
きっかけになってしまったんだ
さくら　お前が今年の春
波照間島で　その絵描きを
世話していたことも
全部　いつきさんの調べで
分かってるんだ
だから　もう…
金田一くん　あなたの言う通りよ
お嬢様…
蒲生剛三と海津里美
あの２人を殺したのは私
この手で　殺したのよ
どうして　自分のお父さんを
殺さなきゃならなかったの？
あいつは父親なんかじゃないわ
私の本当の父の名は
和泉信彦
蒲生たちに利用されて
殺された無名の画家よ
蒲生さんのゴースト…
そうよ
ここにある絵は　すべて
私の父が描いた物よ
子供の頃
父は　よく　私を連れて
スケッチに出かけたわ
ラベンダーは
父の一番好きな花で
夏には　一面　咲き誇る
ラベンダー畑の中で
絵を描いていた
お父さん！見て見て
お花で作った指輪
いいでしょう　いい匂い
はい　お父さん
ホントだ
お父さんの大好きな匂いだ
お母さんに　お土産よ
そうか　きっと喜ぶぞ
貧しくても　幸せな日々だった
ところが　５年半ほど前から
父が家に戻らなくなり
もしもし　お父さん
まだ帰れないの？
すごいぞ　さくら
先生が
お父さんにアトリエを
作ってくれてね
頑張れば　画家として
デビューさせてくれるんだ
父の声は　弾んでいた
無理もないわ
初めて　つかんだチャンスだもの
こんな庭を　自分のために
用意されたら
誰だって　夢がかなうって
信じるわよ
その後　父の連絡は途絶え
４年後　母は父の帰りを
心待ちにしながら
病気で死んでしまい
私は東京の親戚に引き取られ
それでも
父からの連絡を待ち続けたわ
そして　父によく似た人を
見たという話に
波照間島の病院に行った
私の見たものは
あ…
幼い夏の日のラベンダー畑に
通じていた
お父さん…
自分の名前も　言葉すら
分からない状態の父は
私のことも分からなかった
私は　父に少しでも
昔のことを
思い出してもらいたくて
昔の自分に近づこうと
髪をとき
眼鏡を外し
父の好きだった
白いワンピース姿に
なってみたけれど
父の身体は　絵を描くことしか
覚えていなかった
いけない　私ったら
お父さん！
どうしたの？大丈夫？
さ…　く…　ら…
思い出してくれたの？お父さん
は！お父さん！
しっかりして　お父さん
いやあ！
そして　葬儀を済ませて
東京に戻った私は
抜け殻のようだった
生きる希望もなく
町をフラフラしていた時
画廊に飾られている
この絵を見つけてしまったのよ
なぜ　父の絵の作者が
蒲生剛三なのか？
父の入院手続きをしたのが
海津という女医だったこと
すべてが分かった時
私は誓ったの
父の絵ばかりか
命まで奪った　あいつらを
必ず　この手で裁いてやるって
さくら！
来ないで！
よせ　何をする気だ！
さようなら　金田一くん
さくら！
きゃあ
お嬢様！
さくら　しっかりしろ
金田一くん　覚えてる？
私　転校する日
言いたいことがあって
ああ　覚えてるさ
あのね　私　前から…
さくら
さくら！どうして
どうして　死んじまうんだよ
さくら…
アハハ…　ウフフ…
こうして　和泉さくらは
悲しい殺意と共に
自らの命を絶った
わずか２週間で散っていく
ラベンダーの花のように　儚く
はじめちゃん　アイスクリームでも…
ちょいと　学生さん
すまんが　手伝ってくれんかのう
え？
ああ　いいっすよ
やれやれ　助かった
どっこいしょっと
あ　何これ？
よろしく頼んます
頼んますって…
んわあ　重いよう…
ちょっと　おばあちゃん！
ばあさん　脱皮した！
金田一くん
私の容疑を晴らしてくれて
ありがとう
ああ！あんたは！
そのニセ物は　お返しするわ
怪盗紳士！
くそっ！
今回は　私の負けを
認めてあげるけど
次は　そうは　いかないわよ
じゃあね　名探偵の坊や
あ　待て！
くそ　ベルトが外れない
くそ！いつか必ず
とっ捕まえてやるからな！
埋蔵金が２億円？
といわれる伝説の島
悲報島にやってきた俺と美雪
よし！ここは
じっちゃんの名にかけて
お宝ちょうだいしてやるぜ
「鳴くや悲しき…」
何だ？このびょうぶは
それに
この不気味な山わらの像
そして　その前に並べられた
８体の日本人形
この島は一体　何なんだ？
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿きゃあああ
うわああ！ううう…
うっ
この和歌の謎を解いたもんが
財宝を手に入れるっちゅうわけか
人形が１体消える度に
人間が１人死ぬってことなのか
ちょっと　はじめ！
きてごらん　ほら
これよ　これ
何だよ母さん　こんな朝っぱらから
これよ　これ！
宝探しツアー？
ほら　よく読んでごらんよ
うん　なになに？
ふんふん　ほう
「この度　発見された暗号を解き
財宝を探し出した方には→
財宝の１０分の１を差し上げます」
おう　すっげえ！
１０分の１でも　推定２億円！
でしょう？それだけあれば
家のローンも返せるし
あんたの欲しがってた
バイクも買ってあげられるわよ
ばっちし目が覚めた
ようし！
じっちゃんの名にかけて
財宝を探し出してやるぜ！
でもねえ
その前に参加者テストに
合格しなくちゃならないんだけど
ああ　よしよし
俺は　やるぞ！おお！
うまくいきましたね
おばさん
もしも　これで　本当に財宝が
手に入ったら
初めての海外旅行！
その時は　私も
連れてってくださいね
もちろんよ！みんなで
世界一周しましょう
ギリシャ　ローマ
パリ　ロンドン　ああ
夢のようだわ
ああ　うまいこと母さんに
そそのかされて来ちゃったけど
財宝なんて
ホントにあんのか？
あるわよ　本当は
推定８０億円のお宝ですって
ほら　ここに書いてあるわ
ホントかよ
どこに？
ここ　ここ
おっ　マジ？
あ？
あのな　どうして　お前まで
ついて来てるわけ？
参加者テストに合格したのは
この俺なんだぞ
いいの　いいの
私は付き添いなんだから
付き添いって
小学生じゃあるまいし…　あ？
ん？
あっ　ど　どうも！
ツアーの参加者の方ですか？
いいえ　私は皆様をご招待した
美作の娘です
皆様の　身の回りのお世話を
させていただきます
そ　それは　どうも
あの…
もしや　碧様では？
はい
あなたは…
やはり　お嬢様でしたか！
執事の岩田でございます
まあ　岩田さん？
留学から
お帰りになっていたんですか
すっかり大きくなられて
これでは　町ですれ違っても
分かりませんな
もう１７ですもの
岩田さんは　ちっとも
変わっていませんね　懐かしいわ
ご主人様より１０年ぶりに
お手紙をいただきまして
お客様のお世話をさせて
いただくことになりました
まあ　そうでしたの
碧さんかあ　へへへへへ
来てよかったあ
何がよかったの？
え？あ　いやいやいや
こっちのこと　あっ？
あら　あんな小さな子どもも
参加してるのね
誰かが連れて
来たんじゃないの？
いいえ　僕一人で参加しました
うわっ！
日本語　分かるんだ
クリスです
よろしくお願いします
あ！
ちぇ　外国のガキは　ませてるよな
おーい　島が見えてきたぞ
ご主人様は　お元気でしょうか
私も１０年ぶりですから
あれが悲報島か
あそこに
時価数十億円が眠ってるのね
ああ　見て　あれ　ほら
鳥居じゃない？
ホントだ　何で　あんな所に
赤い鳥居なら分かるけど
緑の鳥居なんて
あれだけじゃないぜ
島の中にはな
いろんな色の鳥居が
あっちこっちにあるんだ
へえ
あの島には神を祭った遺跡がある
あの鳥居も　その名残だよ
詳しいんですね　皆さん
宝探しに来たんだぞ
前もって調べておくのは
常識ってもんだ
なるほど　そうですよね
恐れ入ります　招待状を
ああ
これですか？
ありがとうございました
はい　どうぞ
何だろう？あの箱
お嬢さん
あなた様の招待状は？
え？私？
ああ　これ　俺の妹なんすよ
どうしても連れて行けって
きかなくて
妹様ですか
いやあ　最近の女の子は
発育がよくってねえ
ほら　体だって　こんなに…
話　合わせて
バレたら　追い返されるぞ
そうね　ええ　そうなんです
お兄ちゃん一人じゃ心配で
そうですか
ま　いいでしょう
ありがとう　「お兄ちゃん」
さてと
これから　どうするんだ？
変だわ　お父様が出迎えに
来ているはずなのに
私も　そう伺っておりましたが
まあ　ええやないか
歩いて行こうや　狭い島や
すぐ着くやろ
あいつ　俺たちを出し抜く気だな
くそ　そうは　させるか！
どうしよう　はじ…　お兄ちゃん
俺たちも歩いて行こうか
じゃあ　私の荷物　お願いね
ええ？
私も　お願いしちゃって
いいかしら？
ああ　ははっ
いいですよ
その箱も一緒に
これは　いいのよ
あっ　白い鳥居だわ
きれいね
あれは　大理石でできていますね
大理石　すごいわあ
一体　誰が
こんな物を作ったのかしら
お…　重い…
それぐらいで何よ
男でしょ　お兄ちゃん
お　お兄ちゃん？
悪いわねえ
ど…　どういたしまして
あれ？降ってきましたなあ
あっ　雨だわ
急ぎましょう
ああ　待ってくれよ
うわあ
いやあ　とんだことで
やっと着いたわ
やっと着いたあ
ご苦労さま
サンキュー　お兄ちゃん
お前…
お父様
お父様　お父様！
変だわ　お父様は
どこへ行ったのかしら
おお　すっごい骨董趣味や
ご主人様は
お若い頃から　そうでした
へえ　アンティークね
俺には　よく分かんねえけど　お？
やだあ　何？
この気味悪い置物
これは人間じゃないな
半分獣で半分人間ってとこか
それに　日本人形
何や　この時計の音
壊れてるんかいな
ん？何だ
やっぱり　その時計壊れてるぞ
何だ？この匂いは
う…
臭い
何や？これ
まさか！
はっ…
時計の振りこが
うわあああ
ああ…
きゃあああ
な　何だ？これは
ああ！ご　ご主人様…
間違いありません
ご主人様です
お　お父様…　ああ…
あっ　碧さん！
あの腐乱状態から見て
死体は　死後１週間ぐらい
経ってますね
あなた　お医者様だったの？
ええ　専門は整形外科ですが
昔　嘱託で
検視をしてたことがありましてね
それで死体の匂いが
分かったんですね
一体　誰が　ご主人様を…
とにかく　早く警察に
知らせましょう
それがダメなんです
ご主人様は
極端な人間嫌いの方でして
この島には
電話や無線のような
外への連絡ができるようなものは
一切置いてないのです
ですから　皆様の携帯電話の
ご持参も　ご勘弁願ったのです
もちろん　船もありません
そんな…
それじゃ　定期便が来るまで
全員　ここで待つってことですか？
申し訳ありません
船は　さっき帰りましたから
今度　来るのは
１週間後ということで
まあ…
くっ！
気がついたようね
気分　大丈夫？
ええ　ありがとうございます
お客様に　こんなこと
していただいて
いいのよ　気にしないで
金田一さん
残念です　こんなことになって
やはり　あれは
お父様なのですね？
そうですか　私…
とうとう　独りぼっちに
なってしまったんだわ
え？
父は親戚も兄弟もない
天涯孤独な人でした
この島の財宝伝説に取りつかれ
母が亡くなると
益々　のめり込んで
見てください　この島
自給自足できるように
鶏を飼い　野菜を作り
牧場まで作ったんです
こうして　父は
この島に引きこもり
すべての人間を
遠ざけていきました
娘である　この私さえも
おっ　ここにおったんかいな
姉ちゃん
早いこと　屏風　見せてんか
え？
宝のありかを示す
暗号が書いてある屏風だよ
あれを見ないことには
宝探しができねえからな
どこにあるんだね？お嬢さん
あんたたち！
こんな時に　何だ！碧さんの
お父さんが殺されたんだぞ
それが　どないしたいうねや
誰が死のうが　俺らの
宝探しには関係あらへんがな
オーナーが死んだ以上
財宝は
発見した者が
独り占めってことだな
さあ　早く屏風を見せてくれ
分かりました　広間でお待ち
ください　すぐ　大お持ちします
早よしてくれや　待ってんで
何よ　あの人たち
碧さん　宝探しなんて
中止すべきだわ
いいえ　私　皆様に財宝を
探していただきます
碧さん…
ふうん
おう！
これが
財宝のありかを示した暗号か
百石の船漕ぐ浦の朱の鳥
鳴くや悲しき鵺鳥の
呻吟い居けり逝く水の
われこそ益さめ　魔の目
開きにけらしも月虹に
染まし道をたどりゆかむ
山童守りし玉の元へ
この和歌の謎を解いたもんが
財宝を手に入れるっちゅうわけか
何か　古文の授業みたい
分かる？はじめちゃん
聞くな　俺に
皆様
ん？
皆様には　１つずつ
コテージを用意してあります
金田一さんは　妹さんとご一緒の
コテージで　よろしいですよね？
えっ　ええ　もちろん！
いいよな？美雪
何よ　そのニヤけた顔
何考えてんだ！
お？別に
あの　お嬢様　一つ
気になることがあるんですが
何ですか？岩田さん
ここにおられる
招待状を持ったお客様は
７人ですが
確か　私が　ご主人様から
いただいた手紙には
お客様は６人と書いてありました
変ね　どういうことかしら？
あら　簡単ですわ
この中に　招待客を装った
７人目のお客様がいるんですわ
そして　その７人目のお客様が
美作オーナーを殺したんです
なぜ　そう言い切れるんですか？
だって　美作オーナーが死ねば
誰が招かれざる客なのか
分からなくなりますもの
招待客に化けるのも　簡単ですわ
ねえ　あなたもそう思うわよね
緑の鳥居　白の鳥居
百石の船漕ぐ浦の朱の鳥…
じゃなかった　朱の鳥
ねえ　はじめちゃん
ん？
犯人は美作オーナーを殺した時
どうやって　この島に来たのかな？
モーターボートか何かを
使ったのさ
５～６時間もあれば　往復できる
犯人はオーナーを殺害した後
島を出て　何食わぬ顔で
このツアーに参加したのさ
ああ
あ！
こっちに誰かがいたの？
ああ　間違いない
あ　待ってよ　はじめちゃ…
あっ　危ない！
ありがとう
気をつけろよ
きゃあ
何？
ああ…　これ　似てるな
ええ？
ほら　ログハウスの大広間にあった
赤い置き物さ
そう言えば　似てるわね
何だろう？これ
山童さ
ああ！
だ　誰だ！
鳥取県の民話に出てくる
山童という怪物さ
半分サルで　半分人間なんだ
矢荻さん
そして　この島の宝を守る
守り神でもある
島の宝？
そう　「山童守りし玉の元へ」
その昔　宝を求めて
数え切れないほどの男たちが
この島にやってきたが　宝に
近づいた者は皆　山童に殺され
死体を八つ裂きにされちまった
こうして　男たちは
秘密の宝の島から帰らず
やがて　この島は
「悲しい報せの来る島」
つまり　悲報島と
呼ばれるようになったのさ
お前たちも気をつけた方がいいぞ
うっかり宝に近づくと
山童に殺されるかもしれんからな
美作オーナーのようにな
ところで　あんたは　こんな場所で
何してるんですか？こんな時間に
宝探しに決まってるだろう
もし　今の話が本当だとして
あんたは怖くないんですか？
山童が
俺には山童より
人間の方が　もっと怖いねえ
宝を守る半獣人　山童…
そうか　そうやったんか
これで財宝は　みんな
俺のもんやな
さあ　皆様
お揃いになった方から
冷めないうちに
お召し上がりになってください
ああ　豪勢な朝飯
うちとは大違いだ
皆様に元気をつけていただこうと
思って頑張ったんです
朝っぱらから　こんな脂っこい物
食べられないよ
少しは考えてくれなくちゃ
すみません
美味しそうじゃん
いただきます！
はじめちゃん　みっともないわよ
そんなにガツガツと
柿本が　まだ来ていないようだな
今　岩田さんが
迎えに行ってますわ
朝飯抜きで宝探しか？
せっかちな奴だ
「山童守りし玉の元へ」か
あ…　あれ？
どうしたの？
あの日本人形
数が１つ足りないんだ
ええ？
１つ　２つ　３つ…
ああ　ホントだ
昨日は確か　８つあったのに
ああ　痛え！
どうしたの？
な　何かに　つつかれた
ん？ニワトリ？
うわああ
仲間を喰われて怒ってるのさ
そうよ　はじめちゃん
あ？
何なの？この赤いの
血じゃないのか？
いいえ　これは血じゃありません
ケチャップです
ケチャップだと？
まったく　人騒がせな！
た　大変です！
あっ？
ん？
か…　柿本様が！
何　柿本が？
同じだ
ええ？
あの美作オーナーの時と
同じように
人形が１体消える度に
人が１人死ぬってことなのか…
茅さん　あんたの言うとおり
この悲報島で
招かれざる客が
俺たちを狙っているとしたら…
その時　矢荻さんから
１０年前　ここで起こった
転落事故の話を聞いた
美雪　どうしたんだ？その髪留め
この山童の像は　もしかして…
そうか！和歌の意味が分かったぞ
謎は全て解けた！
金田一少年の事件簿
俺と美雪は　九州　日向灘の
悲報島に伝わる
財宝を探すツアーに参加した
ところが　悲報島で俺たちを
待ち受けていたものは
身の毛もよだつ
連続殺人事件だった
柿本さんには　大きな致命傷が
血が飛び散っていたのは
そのためでしょう
死亡推定時刻は
死後硬直の具合から
死後８時間　つまり
昨夜の１０時から１２時の
間と思われます
その時間なら　柿本さん以外は
全員ログハウスにいましたわね
全員にアリバイがあるってわけだ
そうとも言い切れませんよ
こっそり抜け出して
柿本さんを殺し
何食わぬ顔で
戻ってきたらいいんですから
そいつはムリだ
なぜです？
さっき　俺たちは
岩田さんの知らせを聞いて
ログハウスから
あのコテージまで走って行った
片道２０分ぐらい　かかったはずだ
どんなに急いでも
往復で３０分は　かかる
それが　どうかしましたか？
俺が覚えている限り
ゆうべ　１０分以上
席を外した人はいない
抜け出してっていうのはムリ…
死亡推定時刻が間違っていたら？
その時は　全員に
アリバイがないってことだ
今日で　この島に来て２日目
ああ
迎えの船が来るまで
まだ５日もあるのね
ああ
「ああ」ばっか
ああ
んもう
どうあがいても
３０分かかる距離を
犯人は　どうやって１０分で
移動できたんだ？
この島には　自転車も
バイクもないのにね
ああ　なのに　なぜ
みんなにアリバイが…
ああ　ダメだ
ちっとも考えが　まとまんねえ
温泉にでもつかって
気分転換したら？
温泉？そんなもんあんの？
ログハウスの裏に
露天風呂があるんだって
へえ
一緒に入ろうか
ああ　いい湯だなあ
ちっちゃい頃は
よく入ったじゃねえかよ
それにしても　柿本さんは
なぜ殺されたんだろう
和歌の謎を解いて
財宝のありかを知ったためか？
あれ？どんな歌だったっけ？
百石の
あっ　そうそう　それ…
船漕ぐ浦の朱の鳥
鳴くや悲しき鵺鳥の
呻吟い居けり逝く水の
われこそ益さめ魔の目
開きにけらしも月虹に
染めまし道をたどりゆかむ
山童守りし玉の元へ
茅さん…
この歌には「玉を詠む歌」という
題がつけられてるの
玉…　ですか
玉とは宝のことよ
や　やっぱし
この歌を訳すと　こうなるわ
豪華船が出航する港に
鵺が悲しげに鳴く頃には
海の水位が
干潟がなくなるまで増えて
私の気持ちも同じように
募ってしまいます
やがて魔の目が開いたら
月明かりで染め上げた道を
行きましょう
山童に守られている宝の元へ
その「魔の目」ってやつが
宝の隠し場所ですか？
そうよ　他に何か質問は？
ひいい…
いいえ　もう結構です！
あら
あ　ありがとうございました
いやあ　参った　参った
いかがでしたか？露天風呂の方は
ええ　結構な湯加減で
それはよかった
温泉があるなんて
思ってもいませんでしたよ
この島は温泉だけでなく
鉱物資源も豊富なんですよ
へえ
ほら　あれも　そうです
あの山童も　この島から採れた
赤い鉱石を使って
ご主人が作らせたものなんです
へえ
赤い鉱石…　ね
百石の…
この「朱の鳥」ってのが
よく分からないな
鳥じゃないですよ
あ？
クリス
朱の鳥というのは
赤い鳥居のことだと思うんです
赤い鳥居？
ああ　そうか
そういう考え方もあるな
けど　あれは白い鳥居だし
もう一つの鳥居も緑色だ
ログハウスの裏に
３つ目の鳥居がありますよ
３つ目の？
ホントだ
でも　ここからじゃ
色は　よく分かんねえな
行ってみますか？
そうだな
ああ　あそこ行く道
知ってるかい？
これは黒い鳥居だ
それにしても
ログハウスのすぐ裏手に
あったんだな
あ…　クリス
あっ　あれ？
クリス？おーい！
クリス！
さっきまで　ここにいたのに
何だ？この卵の
腐ったような臭いは
うわあああ
ちっ　運のいい奴
痛たたた…
ごめんなさい　しみます？
大丈夫ですよ　ああ…
かすり傷でよかったですわ
あそこには間歇泉があって
１２時ちょうどに　１２０度もの
熱泉が吹き上がってくるんですよ
ああ　いやあ
危ないところでした
あそこは危険なので
立入禁止の
立て札があるはずなんですけど
立て札？
ああ！くっ…　くっ
もう！心配させないでよね
何だよ　優しくないな
美雪ちゅわん
何よ！
そう　怒るなってば
さっきの泣きそうな顔の方が
可愛かったよん
な　何よ　バカ！
いってえ！
随分　仲がいいんですね
ああ　そ　そうなんです
いいんですよ
お２人が兄妹じゃないってことは
最初から気づいてましたわ
すいません
こうでも言わないと
島に入れてもらえないと思って
いいんですよ
え？
はあ…
え？あ…
ああ　これは父が初めて　この島に来た時に撮ったものですわ
碧さんは　いないんですね？
ええ　父は　私のことなど
構ってくれませんでしたから
仕送りだけよこして
私　父に捨てられたと思って
ずっと父のことを恨みながら
生きてきたんです
あっ…　ごめんなさい
この真ん中が父で
その隣が佐伯おじさまです
大学教授だったんですけど
この島で事故に遭って
亡くなったそうです
まあ
この子どもは？
ああ　おじさまの息子さんで
航一郎くんです
ハーフみたいね　この子
おじさまの奥さまは
アメリカ人なんです
でも　航一郎くんを産んで
すぐに亡くなられ
彼はアメリカの親戚に
引き取られたと聞きました
今は１５歳のはずです
まさか…
はじめちゃん？
この写真　ちょっとお借りします
誰だ？
金田一です
何か用か？
このことで
お話を伺いたいんですけど
ん？
帰ってくれ！
待ってください
ここに写ってるのは
殺された美作オーナーと
あなたと柿本さん
それに八十島さんですよね？
ああ　そうさ　それが　どうした？
あなたの仲間だった人が
２人も殺されてるんです
１０年前に　この島で
何か　あったんですか？
ん？何だ？こりゃ
おおっ！
もう１０年以上も前のことだ
俺たちは
佐伯教授をリーダーとして
日本の財宝伝説の
調査をしていたのさ
そして　１０年前
この島にやって来たんだ
その写真は　その時のもんさ
懐かしいな
財宝を求めて　何日も
この島を歩き回ったっけ
だが　手がかりも何も
つかめなかった
蒸し暑かったせいもあって
結構　苛立っていたっけな
そんな　ある時だった
佐伯教授が事故で死んだ
即死だったよ
俺たちは　この島の管理を
美作に任せて引き揚げた
それ以来　この島には
来なかったんだよ
柿本たちと会うのも
１０年ぶりだったんだが
まさか　こんな事件に
巻き込まれるとは
思ってもみなかったぜ
そうか　そういうことなのか
ついに突き止めたぞ　宝のありかを
これで１０年前の苦労が報われる
ありがとうございました
おい
え？
あのクリスとかいうガキには
気をつけた方がいいぞ
昼間　奴に
殺されそうになったんだろ？
見てたんですか？
あのガキは見た目と違う
得体の知れん奴だ
何　見てんですか？
あっ！
ああ　クリス
どうして　ここに？
宝探しですよ
佐伯教授…
もし　事故ではなく
あのメンバーの誰かに
殺されたのだとしたら
そして　その事実を知った息子が
復讐に乗り出したのだとしたら
クリスなのか…
はっ！
ああ　柿本様に続いて
今度は八十島様が…
なぜだ？なぜ　今度は殺した上に
火までつけたんだ？
１１時１０分
恐らく　この時間に
殺害されたんだ
１１時１０分？
その時間でしたら
私はログハウスにいましたわ
美雪さん　碧さん
岩田さんも　ご一緒に
はじめちゃんは？
俺のコテージに来てたよ
残念ながらな
僕のアリバイも
証明してくれますね？
あなたは？
わ　私は自分のコテージにいた
ということは　アリバイがないのはお前だけってことだな
ば　ばばば　ばかな
私が犯人のわけないじゃないか
そういう　おとぼけは
きかないぜ
そんなあ
ち　ちちち　違う
私は知らない　は　犯人じゃないぞ
私は違う　違うぞ！
火村さん
火村さん　待ってください！
まだ　あなたが犯人だと
決めつけたわけじゃないんです
はっ！
人形の数が減ってる！
何？
ああ…
人形が焼かれている
八十島と同じだ
ああ！
きゃああ
何してるんだ？
うるさい！近づくな！
火村さん
おおお　俺は
自分の身は　自分で守る
殺されてたまるもんか
火村さん　落ち着いて
うるさい！
いいか　俺に近づく奴は
容赦なく撃つからな
火村様
いいな！
火村さん　あのまま
コテージへこもっちゃったわね
ねえ　本当に火村さんが
犯人だと思う？
分かんない　生き残ってる人たち
みんなに犯人の可能性がある
でも　アリバイのことは？
それが　分かんないんだ
どんなトリックを使って
２人を殺したのか
あ…　み　美雪！
しっかりしてよ　はじめちゃん
あなたは　一体
誰のお孫さんだったっけ？
そうだよな　こんなことじゃ
じっちゃんに申し訳ないよな
そうさ　俺は必ず
この事件の謎を解いてみせるぜ
じっちゃんの名にかけて
午後になったから
潮が満ち始めたのね
ああ…　えっ？潮が満ちてきた？
ええ
何？今の音
あっ　はじめちゃん
きゃあああ
お嬢様！
岩田さん！
金田一様
碧さん！
お嬢様は大丈夫
気を失われてるだけです
それより…
ああ！
おい　何だ？
今のは銃声じゃないのか？ああ！
４人目の犠牲者は　こいつかよ
火村さん…
あたし　聞いたんです
火村さんの「お前が
犯人だったのか」って叫ぶ声を
そして　銃声が聞こえたんで
急いで来てみたら…
火村さんは　自分のコテージに
こもるために
食料を取りに来たんだ
そこで　恐らく
犯人と断定できる
何かを目撃したために　殺された
バカな奴！
ええ？
お前か！お前が殺したのか！
矢荻さん
お前　お前　佐伯の息子だろう
１０年前の復讐をするつもりだな？
佐伯？何のことだか
さっぱり分かんないねえ
あんた　１０年前に
そいつに
復讐されるようなことでも
したのかい？
クリスくん　怖い
別人みたい
クソ！あのガキ！
奴が犯人に決まってる
絶対に　しっぽを
つかんでやるからな
誰だ！
何だ？ん？
はじめちゃん　いる？
いるよ
ずっと　ここにいるから
何かあったら声かけろよ
ありがとう　ねえ
ん？
砂浜で何を思いついたの？
ほら　潮が満ちて来た時
ああ　あれ
「呻吟い居けり逝く水の」って
満潮のことだろ？
だから　その時
宝の隠し場所である
「魔の目が開く」ってことかなって
ふうん　ああ！
どうした？美雪　大丈夫か？
きゃあ　ダメ！
ちょっと　つまずいただけよ
そりゃねえだろ
ったく　何も　お湯かけなくたっていいじゃんかよ
あーあー
中まで　ぐっしょりだよ
いいいいい
いやー！
何してるんです？
い　いや　これは…
いやー
あ…　碧さん
まあ　いいや
ん？
へえ　潮が満ちてくると
あそこも海になっちまうんだ
あれ？どういうことだ？
はじめちゃん
もう　どこ行ってたの？
早く戻ろう
ん？
その髪留め
銀色じゃなかったっけ？
え？やだ　色変わっちゃった
お風呂前は銀色だったのに
お風呂　変色した髪留め
そうか！
きゃあ　何てことするのよ
碧さんに叱られるわよ
もう　はじめちゃん！
はじめ…　ちゃん？
見なよ　美雪
え？
ああ！何よ　これ
どういうこと？
ああ　謎は全て解けた！
謎は全て解けた！
赤い鳥居の下で　魔の目が開く時
温泉に沈んでいく山童の像が
お前の完璧なアリバイを
崩してくれたんだ
柿本さんのコテージを血で汚し
八十島さんのコテージを灰にして
火村さんまで　その手にかけた
招かれざる７人目の招待客は…
お前だ！
金田一少年の事件簿﻿あれが悲報島ね
あそこに　時価　数十億のお宝が！
アアーッ
ご主人様
人形が１体　消えるたびに
人が１人　死ぬってことなのか？
ああ…　ああっ
火村さん
一ちゃん？
見なよ　美雪
えっ？あっ　ああー
どんどん黒くなってくわ
一ちゃん　これって　一体？
これで分かったよ
赤い鳥居の場所が
謎は　すべて解けた！
なるほど　こいつが宝の隠し場所
魔の目か
潮が満ちてくると
開く仕掛けかい
どういう理屈か知らねえが
よく出来てやがるぜ
アアッ　美雪　今　何時だ？
１２時１０分よ
しまった　もう　そんな時間か
大至急　みんなを呼んでくれ
黒い鳥居の所へ行くんだ
一ちゃん
アッ　これが　魔の目　クソー
矢荻さーん　矢荻さーん
アアッ　アッ
矢荻さん！
ダメだ　もう死んでる
あ…？これは…
やっぱり
こいつのせいだったのか
一ちゃん　アッ…
矢荻さんは？
ひと足　遅かったよ
はあ…　グー
クリス様　犯人は　あなたですね？
そして　あなたは　死んだ
佐伯教授の息子
佐伯航一郎さんですね？
クリス君が？
航一郎君？
父親の死を逆恨みした　あなたは
ご主人様を殺し
ツアーに潜り込んだんだ
違う
僕は　航一郎なんて知らない
やめてください　岩田さん
ここにいる皆さんには
アリバイがあるんですよ
いや　あの時のアリバイは
あてにはならないよ
えっ？
あの時　犯人は
わずか１０分足らずで
犯行をやり遂げたんだ
それぐらいの時間なら
誰にでもあった
１０分足らず？
でも　ログハウスとコテージの間を往復すると　３０分は　かかります
ああ　確かに　そうだ
ただし　殺された２人が
俺たちが見たとおり
本当にコテージで
殺されたとしたらね
エエッ
本当にって　それ　どういうこと？
柿本も八十島も
自分のコテージで殺されたんじゃない
ログハウス裏手の海岸
つまり　ここで殺されたんだ
ここで？
ああ　ここからログハウスまでなら
ものの５分もあれば往復できる
１０分もあれば
犯行は　十分可能だ
柿本　八十島　矢荻の３人は
犯人に　ここへ
おびき出されたのさ
こいつでね
何なの？それ
さっき　矢荻さんが握ってた物だ
ああ
この島で　よく採れる
銅を含んだ鉱石だよ
表面だけ黒くて　中は赤いだろう？
恐らく　それは　黒の鳥居の一部が
欠け落ちた物なんだ
黒の鳥居？
そうです
あの黒の鳥居こそ
和歌に出てくる　「朱の鳥」
つまり　赤い鳥居だったんですよ
赤い鳥居？
そう　元々　あの鳥居は
赤かったんだ
ところが　いつしか　鳥居の近くに
間欠泉が沸きだすようになり
吹き上げる温泉に含まれる
硫化水素のガスが
何度も　かかるうちに
酸化して黒くなってしまった
あっ　あの山童と同じなのね？
そのとおり
犯人は　その小石を
さりげなく　柿本さんに見せ
あの和歌の朱の鳥の秘密を
気づかせたんだ
柿本さんは　満潮の時間に
こっそりと　ここへ来た
そして　犯人も後を追い
柿本さんを殺したあと
いったん　死体をそのままにして
すぐに大広間に戻り
アリバイを確保したんだ
犯人は
みんながコテージへ戻ったあと
ここへ戻り　死体を
柿本さんのコテージに運んだ
でも　金田一さん　それなら
柿本さんのコテージに残っていた
大量の血は　どう説明するんです？
あれは　人間ではなく
ニワトリの血ですよ
ニワトリ？
この島は　自給自足できるように
家畜やニワトリを
飼ってますからね
犯人は
柿本さんの死体を運び込んだあと
ニワトリの血で
壁や天井を血まみれにした
我々にコテージの中で
殺されたと思い込ませるためにね
だが　問題が１つ残っていた
警察が来て　あの部屋を調べれば
ニワトリの血だと
すぐバレてしまう
そこで　犯人がとった手段は
現場を燃やしてしまうことだった
あの時　俺たちは
隣の柿本さんのコテージは
たまたま　火が燃え移ったのだと
ばかり思っていた
ところが　犯人の狙いは
まったく逆だった
あの火は　初めから
柿本さんのコテージを
燃やすためのものだったんだ
これで　トリックに使った
ニワトリの血も灰になり
すべての証拠は消えた
何てことなの
あの火事に　そんな巧妙な
心理トリックが
隠されていたなんて
でも　一ちゃん　それが本当なら
全員　アリバイがなくなって
みんな　怪しいってことに…
いや　この殺人計画を
実行できた犯人は
この中に一人しかいない
この中に
一人だけ
柿本さんのコテージは
偶然　燃やされたんじゃない
初めから　そのつもりで
隣に八十島さんを割り振ったんだ
つまり　犯人は
俺たちの部屋割りを決めた人間
それって　まさか
ああ　真犯人
招かれざる７人目の客は
あんただ
真犯人　招かれざる７人目の客は
あんただ
美作　碧
お嬢様が招かれざる客ですって？
碧さんが
あんたは
見事に悲劇のヒロインを演じた
すっかり　ダマされたぜ
そ…　そんな　どうして　私が…
私は
お父様を殺されてるんですよ
その私を犯人だなんて
ひどすぎます
いいかげんにしろよ
芝居は　もう終わりだぜ
美作　碧　いや
佐伯航一郎！
佐伯航一郎？
碧さんが？
見てのとおり　１５歳の少年が
１７歳の女に化けていたのさ
碧様が佐伯教授の息子だなんて
たぶん　火村さんは
食べ物を取りに　ログハウスまで来て…
たまたま　こいつの
着替えているところを
見てしまったんだ
そうだろう？
なぜだ？
俺が男だと　なぜ分かった？
俺の演技は　完璧だったはずだ
ああ　完璧だったさ
舞台の上ではな
何だと！
だが　舞台から
楽屋裏に下りたとき
お前は　１７歳のヒロインから
１５歳の少年に戻っていたんだよ
どういうことだ？
トイレだよ
俺が洗面所で
ぬれたズボンを脱ごうとしたとき
お前は　トイレから出てきて
俺と鉢合わせした
あの時　俺は
お前が女でないと気づいたんだ
あれだけのことで　なぜ？
トイレの便座だよ
何？
お前がトイレから出たあと
トイレの便座が
上がったままになっていたのさ
女が用を足すのに
便座を上げる必要はない
あれを持ち上げるのは　男だけだ
お前を男だと考えたとき
今まで雑然と
並べていただけだった謎のパーツが
すべて１本に　つながったんだ
ハッ
さすがは　名探偵の孫だな
お前の言うとおり
俺は佐伯航一郎さ
お前は　最初から
この場所を知っていたんだな
１０年前から知ってたよ
この島の財宝を調べていた
俺のオヤジが　偶然　見つけたんだ
父さんは　柿本たちには内緒で
俺をここに案内してくれたよ
見ろ　航一郎
この　まがまがしいまでに美しい
黄金の光を
この輝きが人の心を狂わせ
たくさんの命を奪ってきた
これが　人の手に渡れば
きっと　多くの災いが起こる
そうならないためにも
父さんは　この財宝を
国に寄付しようと思う
だが　欲に目がくらんだ４人は
猛反対した
でも　父さんは　決して奴らに
財宝のありかを
教えようとはしなかった
それをあいつらは…
だから　俺は
この手で父さんのかたきを
そいつは　どうかな？
何？
確かに　その４人は
父親のかたきかもしれない
だが　無関係の火村まで殺し
すべての罪をクリスに
なすりつけようとしたのは
美作　碧のふりをして
美作家の財産を乗っ取り
財宝まで独り占めするため
なんじゃないのか？
違う
何が違う？
結局　お前も
佐伯教授を殺した４人と同じく
財宝に目がくらんだ人間の
一人なんだ
違う
アメリカに留学していた
本物の美作　碧も
すでに　お前が殺…
違う！
お前らに
お前らに　何が分かる
碧は…　碧は
ウッ
航一郎　岩田さん
おっと　動くなよ　名探偵
何！
ムハハハハッ　実は　私も
財宝に目がくらんだ一人でね
この日をずっと待っていたのさ
ハッ
貴様
一ちゃん
さあ　その殺人鬼なんか
ほっといて
みんなで拝みに行こうじゃないか
山童守りし　玉の元へな
こ…　これが　悲報島の財宝
オーホホホ…
こいつは　すごい
これなら　一生　遊んで暮らせるぞ
でも　一体　誰が　こんな…
そんなことは　どうだっていい
さっ　全員
そこに並んでもらおうか
俺たちを　どうする気だ？
決まってるだろう
あの世に行ってもらうのよ
まずは　金田一　一　お前からだ
一ちゃん
心配しなくても
後から　みんな送ってやるよ
ダーッ
茅さん
岩田英作
殺人未遂の現行犯　および
世田谷での保険金殺人の容疑で
逮捕する
警察？
何？
そう　私は　この岩田を追って
今回のツアーに潜り込んだの
岩田　もう逃げられないわよ
ち…　ちきしょう
捕まって　たまるか
この財宝は…　はあ　はあ…
お…　俺のもんだ
危ない！
エエッ
アアーッ　アーッ
な…　何だ？
そうか　あの和歌にあった
宝を守る山童っていうのは
このことだったんだ
財宝を動かそうとすると
山童の像が倒れて
この洞窟そのものを
崩してしまう仕組みなんだ
急いで出るんだ　早く
アアーッ
ちきしょう　あっ　出口だ　急げ
助かった
航一郎は？
しまった　あいつ
銃の傷で動けなくなってるんだ
やめて　今　行ったら
一ちゃんも死んじゃうわ
そうよ　金田一君
きっと　もう手遅れだわ
お前らに何が分かる
碧は…
一ちゃん
一ちゃーん
ここ…　ウッ
金田一
危ないところだったな
とっさに岩陰に逃げ込んでなきゃ
今ごろ　ぺっちゃんこだったぞ
お前…　ハハッ
バカじゃねえのか
正義感ぶりやがって
俺と心中するつもりかよ
そんな気は　ねえよ
ムダ　ムダ
どうせ　助かりっこねえよ
そんなことは　やってみなけりゃ
分かんねえだろう
アッ　キ…　アア…
ほーら　言わんこっちゃねえ
なあ　１つだけ　お前に
聞きたいことがあるんだけどさ
何だよ？
本物の美作　碧は
どうなったんだ？
やっぱり　お前が殺したのか？
そうなのか？
偶然だったんだ
えっ？
偶然　碧と出会ったんだ
１０年ぶりだったが
碧は　俺のことを覚えていた
もちろん　俺も忘れるはずがない
何しろ　オヤジを殺した男の
一人娘だったんだからな
俺は　何も知らないふりをして
碧と　つきあい
復讐の時をうかがっていた
でも　そのうち　俺は
彼女も俺と　よく似た孤独を
抱えていることを知ったんだ
以前　あんたに言ったよな
碧は　父親に捨てられたって
あれは　本当のことだったんだ
碧は　ドブネズミみたいな俺にも
優しかった
復讐するつもりで
近づいたはずだったのに
いつの間にか　俺は
彼女のことが好きになっていた
それじゃ
彼女は　生きてるのか？
死んだよ
えっ？
自殺したんだ
父親から来た手紙が原因だった
手紙には　こう書いてあったよ
「今度　財宝ツアーをやるが
財宝が見つかったら
ツアーに参加した連中を殺して
財宝を独り占めにするつもりだ」
ええ？
美作の野郎は
元々　財宝を分けてやる
つもりなんか　なかったんだ
さらに　手紙には
１０年前に俺のオヤジを
殺したことも書いてあった
「この先　何人　殺そうとも
必ず財宝は　手に入れる」
「だから　お前も戻ってきて
手伝いをしろ」と
碧は　絶望して
自ら　死を選んだんだ
死ぬことで
お前に謝りたかったんだな
冗談じゃねえ
誰が死んでほしいって言った？
俺は　碧に生きていてほしかった
俺のためにも…
俺は　この島の財宝が憎かった
俺と碧の人生は
あの財宝のために
めちゃめちゃにされたんだ
そして　最後には　このザマさ
ドブネズミは　ドブネズミらしく
暗闇の中で死んでいくんだ
アーッ　ウッ
あんたも悪あがきは
よしたら　どうだ
おとなしくしてたほうが
楽に死ねるぜ
生意気　言うんじゃねえよ
ガキのくせに
何？
自分の不幸を
他人のせいにするのは
ガキだって言ってんだよ
何だと
貴様に何が分かるって言うんだ
ああ　全然　分かんねえよ
俺は　お前みたいに
親をなくしたことも
恋人をなくしたこともない
でも　これだけは言えるぜ
どんなに　どん底でも
どんなに暗闇の中を生きてても
やり直しのきかない人生は
ないんだ
お前も自分の運命くらい
自分で切り開いてみせろ
ウッ　アアッ　ク…
航一郎
そうだ　闇の中で
もがいているように見えても
そこから抜け出そうと
必死に生きていけば
必ず光は差す
ンガーッ　ウッ！
光だ
なっ　俺の言ったとおりだろう
ハハハハッ　ハハハハッ
目に泥が入っちまったよ
バカみたいだ
フフンッ　ホントにな
フッ　フフフフッ
ハハハハハッ…
この島から
悲しい知らせが届くのも
これで最後ね
ああ
クリス　お前　ソロモン王の
末えいだったんだって？
王様の残した財宝が
手に入らなくて残念だったな
それって　ホントの話？
ああ　本人は　そう信じてるらしい
クリス君って　想像力が旺盛なのね
それにしても　茅さんが刑事で
その箱の中身が拳銃だなんてね
あら　拳銃は　あの時だけよ
本物は　こっち
えっ？
何だったのかしら？
あの箱の中身
ああ　謎が１つ　残っちまったな
隠された楽譜　「悪魔組曲」を
探すように頼まれた　俺
そこへ
見覚えのあるシルエットが！
明智警視　あんた　なんで　ここに？
「クラッシックは
私の専門分野でね」だと？
楽譜は　絶対　俺が見つけてやる
その時　激しい落雷とともに
悲鳴が　あがった
それは　悪魔に食らいつかれた
第一の犠牲者だった
金田一少年の事件簿
「悪魔組曲殺人事件」前編
有名作曲家　御堂周一郎の遺作
「悪魔組曲」の詩に見立てて
次々に殺されていく後継者たち
聖なる鍵？
犯人は…
そんなバカな
金田一君
君に　この謎が解けますか？
これで先生の富と名声は
すべて私のものだ
ムハハハッ　ハハハハッ
んっ？
何をする
よこせ
グッ　アアーッ
ひどい天気になっちゃったわね
台風が来てるんですよね
天気なんて関係ないっすよ
どうせ　山荘の中で
楽譜探しをするだけなんすから
優歌さん
本当に　その山荘に楽譜が？
間違いないわ
亡くなった御堂先生は
あの山荘を
仕事場にしてたんだから
「悪魔組曲」　世界的作曲家
御堂周一郎の幻の曲か
テープ　聞いてくれた？
はい
先生は　作曲する前
曲のイメージを
詩に書くのが習慣なの
分かってるのは　そのテープに
吹き込まれた詩だけなのよ
「悪魔組曲　第一の詩」
「ああ　雷光煌めき
闇さらに深まりて」
「魔界の宴の時来たり」
「今宵の犠牲と選ばれし」
「聖なる鍵をば手にせし　騎士は」
「悪魔の餌食となりはてぬ」
あー　はあ　ひどい目に遭った
ちょっと　ここで待っててね
へえー
遅いな　優歌さん
そうね
何やって…
キャー
停電
優歌さん？
優歌さん…
金田一…　君
ハアッ
マイケル
うちの作曲家の
マイケル・ヘンリーだわ
危ない　何か明かりを
どうなさいました？
うーん　ん…　うん
何だか　悪魔が
人を食べてるみたい
「悪魔組曲」第一の詩と
そっくりだわ
エエッ
まさか
ああ　雷光煌めき
闇さらに深まりて
魔界の宴の時来たり
明智さん？
今宵の犠牲と選ばれし
聖なる鍵をば手にせし　騎士は
悪魔の餌食となりはてぬ
悪魔の餌食…
一ちゃん
アアッ
聖なる鍵
ああ　頼む
うん…　このまま待ってるよ
なんで明智さんが
ここにいるわけ？
私の大学時代の知り合いなの
無理に　お願いして
来てもらったのよ
チェッ　明智さんが
来るのが分かってたら　俺
楽譜探しなんて
引き受けなかったよ
御堂周一郎の幻の名作とあっては
クラシックファンとして
放っておけませんからね
金田一君
私と張り合ってもムダですよ
何？
一ちゃん
美雪　知ってたろう
ごめんね　一ちゃん
山根君と七瀬君は
ピアノ教室で
知り合ったんですよね？
ええ
もう１０年くらい前のことですけど
何だよ　お前　ピアノやってたの？
うん　知らなかった？
はあん
はい　そうですか　山崩れ
はい　分かりました　よろしく
１時間ほど前　山崩れがあり
この山荘へ通じる道路が
塞がってしまいました
明日　復旧し次第
パトカーをよこすそうです
それまで我々は
ここを動けないということですか
さてと　もう一度　事情を伺います
死んだマイケル・ヘンリーさんは
東都フィルハーモニーオーケストラの
幹部の　お一人なんですね？
はい　先生が亡くなられたあと
マイケルと僕　風倉さん
紅さんの４人で運営してきました
皆さん　この山荘へは？
「悪魔組曲」の楽譜を
探すために来たんです
３日前から　あちこち
探しているんですが
まだ見つからないんです
ねえ　何度も同じこと
言わせないでよ
だいたい
どうして　警視庁の刑事や
訳の分からない高校生なんかが
ここにいるのよ？
優歌さん　あなた一体
何の権利があって…
いえ　それは　わたくしが
山根さんに　お願いしました
何としても　「悪魔組曲」の楽譜を
見つけたいと思いまして
出すぎたことをいたしました
申し訳ありません
フンッ
椿さん
私の前で　タバコは吸わないでって言ってるでしょう
オペラ歌手は　のどが命なのよ！
ったく
ああ　怖っ
わたくしも失礼して
よろしいかしら
バイオリンの練習があるの
ええ　どうぞ　構いませんよ
人が一人　死んだって言うのに
バイオリンの練習か…
それがプロというものですよ
ふーん
椿さん　さっきは　ありがとう
はあ？
私をかばってくれたでしょう
明智さんたちに
楽譜探しを頼もうって
言い出したのは　私なのに
御堂先生の後継者たちは
あまり仲が　よくないようですね
そ…　そうかしら
４人が後継者だったんだろう？
１人減って　あとの３人は
心の中で喜んでるってわけか
ちょっと　一ちゃん
寝室は２階です
部屋は　たくさんありますので
皆さん　お好きな部屋を
お使いください
御堂周一郎…　気難しそうな人ね
ええ　とても気分屋で
扱いにくい人だった
でも私は　先生の曲が
大好きだったわ
それで　大学を卒業して
すぐ押し掛けマネージャーに
してもらったの
御堂周一郎は
悪魔をモチーフにした
曲を作ることで有名でしたね
ええ
それで　書斎の床に
悪魔の絵が書いてあったのか
先生は　「悪魔組曲」を
自分の作曲人生の
集大成にするとおっしゃって
亡くなる半年前から
一人で　この山荘にこもって
「悪魔組曲」を作曲していたの
半年も！
家族は　さぞ大変だったろうな
うーん
結婚されたことはないのよ
兄弟や親類もいなかったし
そうでしたか
ええ　ねっ　椿さん
はい　ご主人様は
生涯独身でいらっしゃいました
御堂先生のことは
椿さんに聞けば　何でも分かるわ
椿さんは
４０年も先生に仕えてきたの
先生の分身みたいなものよ
いえ　私は　ただ　ご主人様が
お仕事に集中できるように
身の回りのお世話を
させていただいただけですから
それだけです
なあ　美雪
うん？
一人で寝るのが怖いだろう
一緒に寝てやろうか　うん？
結構です
一緒のが　よっぽど怖いわよ
チェッ　かわいくねえの
一ちゃん　その鍵
マイケルさんの握ってた鍵と
よく似てるわね
うん　ああ　これ？
この部屋の鍵だろう
テーブルの上に置いてあったぜ
マイケルさんが握っていたのは
自分の寝室の鍵だったんだろう？
うーん　でも　マイケルさん
なんで鍵なんか？
そこなんだ
階段から転げ落ちて死んだのに
鍵をちゃんと握っていたのは
不自然だ
じゃ　やっぱり
誰かがマイケルさんを殺して
鍵を握らせたのね
「悪魔組曲」の詩に
見立てるために
そう決めつけるのは　早いですよ
まったく　君たちの推理は
危なっかしいですね
明智さん　じゃ　あんたは
マイケルさんが
自分で鍵を握ったって言うのか？
何のために　そんなことを？
ダイイングメッセージか…
あくまで可能性の１つですがね
まっ　君は　外国語に暗そうだし
余計な　お世話だ
鍵は英語でキー　スペルは…
あれ　何だっけ？
Ｋ・Ｅ・Ｙよ　一ちゃん
あっ…　ああ…
それが　どうしたって言うんだよ？
さあ　そこから先は
まだ分かりませんが
キャー
何だ？
下か！
ハッ　フッフッ…
山根君
アアッ！
アーッ
風倉さん
何て姿に…
「駒は止まりて　兜落ち
騎士は苦しむ」ですか
「悪魔組曲　第二の詩」
「凛々しく　雄々しく
兜かぶりて」
「悪魔詩たんと
騎士は往く」
「されど悪魔は　呪われし
地獄の歌を口ずさむ」
「駒は止まりて　兜落ち」
「騎士は苦しむ」
私は　いいわ
とても食べる気になれない
明智さん　殺人鬼が
うろついてるって言うのに
こんな所で　食事をしている
場合ではないでしょう
早く犯人を捕まえないと
そのことですが　夏岡さん
風倉百合恵が殺された直後
私は　この山荘を
くまなく調べましたが
すべての扉や窓には
内側から鍵が　かかっていましたよ
ちょっと　一ちゃん
どういうこと？
犯人は
外部から侵入したんじゃない
この山荘は
完全な密室だったということさ
つまり　犯人は
この中にいるってことですよ
何ですって！
そんな…
そ…　それじゃ　マイケルも
それを調べるのが　私の仕事です
フッハハハハハッ
何を驚いてるの？夏岡さん
心の中では
喜んでるんじゃなくて？
後継者が
また１人減ったんですもの
紅君　何てことを
もしかして　二人を殺したのは…
違う　僕は　やってない！
フンッ　どうだか
何っ！
落ち着いてください
アリバイがないという点では
みんな一緒です
ここにいる全員が
容疑者なんですよ
ケッ
「悪魔組曲」の詩に
見立てた殺人かあ…
確かに　あの二人は
「悪魔組曲」の詩のとおりに
殺されていた
でも　どうして犯人は
あんな殺し方をしたんだろう
見立て殺人を行うには
それなりの理由が…
ああっ
「悪魔組曲」の詩は　三番まである
ってことは　３人目の犠牲者が！
一ちゃん
何だ？
どうしたの？お風呂　空いたわよ
フエッ　あっ
何だ　ビックリしたなあ
おっ？
御堂周一郎は　厳しい人だったわ
紅さん
才能のない者は　容赦なく
どんどん切り捨てていった
違う！
弓を落とすとは　何たることだ
これは
バイオリニストの命だろうが
なぜ先生が　悪魔を
モチーフにしたのか分かる？
先生の心には
悪魔が住んでいたからよ！
俺　音楽のこと
よく分かんないけど
そんなひどい人間が
人を感動させるような
すばらしい曲を
作れるもんなのかな？
作れるわ
芸術と人間性は　無関係なのよ
紅さん　金田一君
来てください
楽譜を見つけましたよ
残念ながら
「悪魔組曲」ではありませんね
先生の未発表の
曲ではありますが
そうですか
明智さん　この楽譜
どこにあったんですか？
書斎です
部屋の隅に落ちていました
書斎？変だな
事件の前　調べたときは
先生の楽譜は
１枚も見つかりませんでした
なぜ　今ごろ
おそらく
マイケル・ヘンリーが
持っていたのでしょう
それにしても　変ですね
なぜ　これだけ
残っていたのでしょう
ク…
紅様　お顔の色が優れませんが
あ…
そ…　そうかしら
そういえば　ちょっと頭痛がするの大したことないけど
それは　いけません
お部屋でお休みになってください
すぐに薬をお持ちいたします
ええ　そうね　お願いするわ
紅君も椿の言葉には
素直に従うんだな
あの二人　出来てるんじゃ…
夏岡さん！
明智さん
この楽譜は　もらっていきますよ
我々の財産ですから
嫌な奴　椿さんは
紅さんの親代わりなのに
親代わり？
ええ
紅さんは　小さい頃に
ご両親を亡くして
親戚中をたらい回しにされて
育ったんですって
バイオリンを習うのも
大変だったらしいわ
御堂先生に才能を見いだされて
弟子入りしたあと
事情を知った椿さんが
学費を援助してあげてたのよ
へえ　俺　亜理沙さんって
お金持ちのお嬢さんかと思った
では　失礼いたします
椿さん
はい？
何でもないわ
はい
ハア…
「悪魔組曲」の楽譜が
まだ残っていたとはな
フン　全部　僕のものだ
あっ
夏岡さんのだわ
これは　「悪魔組曲」の詩ですね
えっ？本当
ハッ　これ　先生の筆跡だわ
「悪魔組曲」に関する情報は
御堂周一郎の残したテープが
あるだけだという話でしたね
ええ　私も字で書かれたものを
見るのは　これが初めてです
そうですか　なるほどね
そういうことですか
金田一君　犯人は
マイケル・ヘンリーと
風倉百合恵を
「悪魔組曲」の詩に見立てて
殺した
なぜ犯人は
そんなことをしたのか？
君に　この謎が解けますか？
俺と勝負しようってのか？
上等だ　受けて立つぜ
じっちゃんの名に　かけて
この謎は　俺が解く
エエッ？マイケルが？
明智さん　あんた　捜査に
思い込みは　禁物だって言ったよな
風倉さんのそばに置かれた駒
マイケルの手に握られた鍵
この２つには
もう１つの意味があることになる
そうか　犯人の仕組んだ
巧妙な心理トリック
見立て殺人の本当の狙いは
ここにある
謎は　すべて解けた！
金田一少年の事件簿
「悪魔組曲殺人事件」後編
君に　この謎が解けるか？﻿世界的に有名な作曲家
御堂周一郎の残した
「悪魔組曲」の楽譜をめぐり
次々と起こる連続殺人事件
明智さん
この謎は　俺が解いてみせる
のんきに眠ってるな
さっきまで　一人じゃ怖いって
言ってたくせに
「悪魔組曲」か
明智さん
どうして　このメモを俺に…
君に　この謎が解けますか？
俺と勝負しようってのか？
ふん
ああっ
そうか！
紅さん
もうバイオリンの練習してるのね
さすがプロね…　やだ　一ちゃん
しゃきっとしなさいよ
あー　だって俺
ろくに眠ってないんだ　あーあー
もう　やめなさいって
朝からケンカですか？
あっ　おはようございます
どうしたんです？金田一君
その顔は
あんたのせいさ　寝ようとすると
あんたの嫌味な顔が
ちらついちまって
その様子では　メモの意味が
分かったようですね
まあね　おかげで容疑者が
１人減ったよ
どういうこと？一ちゃん
キャー
何？
アアッ…
どうしたんです？
亜里沙さん
大丈夫？亜里沙さん
バイオリンの練習をしていたら
突然　誰かが
ドアの隙間から弓矢で
また同じですね　「悪魔組曲」と
エエッ？
エッ？
地獄の歌に
弓をばとりて　弦をはり
放つ一矢が悪魔を射抜く
「悪魔組曲」　第三の詩です
何かあったんですか？皆さん…
紅様　どうしたんです？
そのケガは
また　「悪魔組曲」に見立てて
誰かが亜里沙さんを
「悪魔組曲」に…
椿さん　この矢は
コレクションルームにあったものですね？
はい　そうだと思います
それより傷の手当てを
大丈夫ですか？紅様
ありがとう
地獄の歌に
弓をばとりて　弦をはり
放つ一矢が悪魔を射抜く
その弓がありましたよ
どうして　これが　あなたの部屋に
あるのですか？夏岡さん
私の部屋に？
あなただったのね？
違う　私じゃない
マイケルと風倉さんを殺したのも
あなたがやったのね？
何を言うんだ　違う　私じゃない
ウソよ　あなた　私たちを殺して
東都フィルハーモニーオーケストラを
独り占めしたかったのよ
紅様　行きましょう
とにかく傷の手当てが先です
冗談じゃない
私には身に覚えのないことだ
ねえ　一ちゃん
本当に夏岡さんが真犯人なの？
うーん
風倉百合恵殺しに関しては
夏岡さんは
無関係のはずなんだけど
どうして？
このメモをよく見てくれ
これ　夏岡さんの手帳に
挟まっていた
「悪魔組曲」の詩でしょう？
されど悪魔は呪われし
地獄の歌を口ずさむ
駒は止まりて　兜落ち
確かに　この詩のとおり
殺された風倉百合恵は
兜をかぶり
死体のそばには　コマが
ところが　その詩に書かれている
「駒」の文字を見てくれ
ああっ　この字は
回すコマじゃないわ
その「悪魔組曲」の詩に
見立てるなら
死体のそばに
あのチェスの駒を置くべきだった
ところが犯人は
間違えて回すコマを置いた
なぜなの？
「悪魔組曲」の詩を
耳でしか聞いていなかったからさ
そうか　私たちも
テープに吹き込まれた詩しか
聞いてなかったものね
「悪魔組曲」の詩を
文字で知っていたのは
このメモを見つけた
夏岡さんだけだ
回すコマと間違えるはずがない
じゃ　誰が？
もう一度
紅さんの部屋を調べてくる
一ちゃん
バイオリンを弾く紅さんを
ドアのところから矢を射ると…
あっ
アッ！
昨日の嵐がウソみたいね
ホント
ごめんね　美雪ちゃん
妙な事件に巻き込んじゃって
優歌さんのせいじゃないし
一ちゃんがいるから大丈夫です
必ず犯人を捕まえてくれるから
そうね
そうか　そういうことだったのか
問題は　あと１つだ
なぜ犯人は
御堂周一郎の「悪魔組曲」に
見立てて　人を殺したのか
どうしたの？一ちゃん
あの絵
誰かに似てると思わないか？
ええ？御堂周一郎が？
あっ
はい　山根です
ああっ　ごめんね
色々　迷惑かけちゃって
大丈夫よ　もうすぐ道が復旧して
警察も来るし
うん　もう少し待って
マスコミはマズイわ
ああ　詳しいことは
また　あとでかけるから
ええ　マイケルのご両親には
連絡入れておいて
フランスの住所は　事務所にある
うん　よろしく
フランス？
東都フィルくらい大きくなると
色々と大変なのよ
マイケルは
フランスに住んでたんですか？
そうよ　彼は　フランス人だから
でも
マイケル・ヘンリーって名前は…
ああ　彼はアメリカでデビューしたから英語読みの名前になってたの
本名は　ミッシェル・アンリ
れっきとしたフランス人よ
エエッ！
どうしたのよ
フランス語で何が分かるの？
あっ
分かったぞ！
エエッ
謎は　すべて解けた
アッ
金田一さん　明智さんが
大広間に全員　集まるようにと
ハア…
明智さんが？
これを見てください
「悪魔組曲」の楽譜です
そうですね？夏岡さん
エエッ　いや…
これは　あなたの部屋に
あったものですよ
アア　それは…
この血は
マイケル・ヘンリーの血ですね？
ち…　違う　私じゃない
確かに　この楽譜は
マイケルから
いや　あのとき　マイケルは
すでに死んでたんだ　本当です
みんなに知らせようとしたとき
床に散らばった楽譜に気づき
もしや　「悪魔組曲」ではと思い
つい　自分のものにしたくて
急いで楽譜をかき集めて
書斎を飛び出したんです
僕は　誰も殺してない
楽譜を盗んだだけだ
ふん　やはり　そうですか
私は　それを　あなたの口から
聞きたかったのです
じゃ　殺人犯は　一体　誰なの？
君には　見当がついてるようですね金田一君
ええ　犯人は　分かりました
エエッ？
エエッ？
マイケルが握っていた　この鍵は
ダイイングメッセージだったのさ
俺は　マイケルが
アメリカ人だとばかり
思っていたので
鍵の意味が分からなかった
でも　フランス人だと聞いたとき
謎は解けた
この鍵が教えてくれたよ
犯人の名前をね
犯人は　あんただ
紅亜里沙
な…　何を言うの？
私が犯人ですって？
金田一さん　そんなバカな
マイケルが握っていた鍵が
教えてくれたんですよ
鍵が…
何のこと？明智さん
フランス語です
鍵のことを「クレ」と言うんですよ
クレ？
紅亜里沙
マイケルは　死ぬ間際
あんたのことを教えるために
鍵を握ったんだ
フフフッ　ずいぶん面白い推理ね
でも　それだけで
私が犯人だと決めつけられるの？
証拠は　まだある　こいつさ
アッ
あんたの部屋から持ってきた
テープさ
そんなものが
何の証拠になるって言うの？
紅さんの練習曲じゃないの
今朝　あんたは
このテープを流して
自分がバイオリンの
練習をしていることを印象づけ
自分で壁に矢を撃ち込んだのさ
そして　腕を傷つけ
襲われたふりをして悲鳴を上げた
でも　それじゃ
夏岡さんの部屋にあった
弓は　どう説明するの？
あの弓が
夏岡さんの部屋にあったことは
あんたが一番　驚いているんじゃ
ないのかな？紅さん
廊下に置いたはずの弓を
誰が夏岡さんの部屋へ運んだのか
あの騒ぎの中
それができたのは　ただ一人
あなたですね？椿さん
そ…　それは…
今朝　あなたは
紅さんに薬を届けようとして
ドアの外に弓を置く姿を
見てしまった
うん？
あっ　ああ…
キャー
ああっ…
どうしたの？
ど…　どうしたんです？
亜里沙さん
大丈夫？亜里沙さん
あなたは　紅さんをかばうため
とっさに夏岡さんの部屋に
弓を置くことを思いつき
そのあと
さりげなく部屋へやってきた
そうですね？椿さん
違います
私です
マイケルさんを殺したのも
風倉さんを殺したのも
みんな私です
椿さん
紅様を弓で射たのも私です
椿さん
あなたは　ウソを言っている！
ウソじゃありません
すべて私がやりました
紅様は　関係ありません
私です　私が犯人なんです
ウッウウ…
みんな私がやったことです
犯人は　この私です
申し訳ありません
椿さん　あなたは　犯人じゃない
なぜ　それほどまでに
紅さんをかばうんですか？
紅さんが
御堂周一郎の娘だからですか？
私が娘？
ウソよ　だって　あの人は
ひと言も　そんなことを…
椿さん
ウッウウ　ウッウウ…
おっしゃれなかったんです
ご主人様は
作曲家として成功するために
亜里沙様とお母様を捨て
アメリカに渡りました
そんな自分には
父として名乗る資格はないと
いつも
そう　おっしゃっておられました
もしかして　亜里沙さんの学費を
援助していたのも？
はい　ご主人様の申しつけです
エッ…
そうか　「悪魔組曲」　第一の詩が
「あ」から始まり
第二の詩は　「り」
第三の詩は　「さ」　ありさ
やはり　あなたのために作られた
曲だったのですね
ご主人様は　この「悪魔組曲」に
お嬢様への思いを
すべて託されたと
やめて　ウソよ　そんなこと…
ウソよ！
ああっ
待ちなさい
亜里沙さん
お…　お嬢様
亜里沙さーん
バカなマネは　おやめなさい
亜里沙さん　やめるんだ
来ないで
ハッ
何をする気なの？亜里沙さん
やめて！
お嬢様　おやめください
アアッ
それじゃ　最後に
１つだけ答えてくれ
明智さん
なぜ　２人を殺したのですか？
御堂周一郎の遺産と
東都フィルハーモニーオーケストラを
独り占めにするためですか？
違うわ　マイケルを殺すつもりは
なかったのよ
マイケルは
御堂周一郎の「悪魔組曲」を
自分の名前で発表するって
これで富と名声は
すべて私のものだ　フフフッ
それを聞いたとき
私は　カッとなって
何をする　よこせ　オー　アーッ
マイケル！
フフフ…
大丈夫よ　誰にも言わないわ
事故よ　これは
風倉さん
そんな男は　ほっとけばいいのよ
１人いなくなれば
遺産の分け前が多くなるわ
フン　そうでしょう？紅さん
フフフ…
笑いながら　私を脅したわ
マイケルの死体が発見されたとき
「悪魔組曲」　第一の詩と
そっくりだわ
マイケルの手に
鍵が見つかったときも
あの女は
黙って　私をゆすり続けた
一生　あんな女に
ゆすられ続けるくらいなら…
それで　「悪魔組曲」　第二の詩に
見立てて
風倉百合恵を殺したのですね？
そうよ　私は…　私は
２人の人間を殺してしまったの
ダメです　お嬢様
もう　いいのよ　椿さん
はっ…
ありがとう
お嬢様
アーッ
椿さん
アッ　アーッ
お嬢様
バカなマネは　おやめください
お父様が
おなげきになります
違うわ
あの男は　そんな人間じゃない
冷たい悪魔のような
心を持った人間よ
私は　御堂周一郎を憎むことで
バイオリンに打ち込んできたわ
「いつか見返してやる」
その思いだけで
つらい練習に耐えてきたのよ
そうかな
俺には　違うような気がする
マイケルを突き飛ばしたとき
あんたは　なぜカッとなったんだ？
マイケルが　御堂周一郎の業績を
汚そうとしていたからだろ？
それが
許せなかったんじゃないのか？
あんたも心の底では
御堂周一郎を尊敬していたんだ
生きるんだ
生きて罪の償いをして
またバイオリンを弾くんだ
それを御堂周一郎も
望んでるはずだ
さあ　つかまって
「悪魔組曲　第三の詩」
「されど最後の力にて
騎士は挑まん　地獄の歌に」
「弓をばとりて　弦をはり
放つ一矢が悪魔を射抜く」
「絶叫残して　悪魔は消える」
「呪いの歌の呪縛は解けて」
「騎士は心に光を得る」
「聖なる鍵は　己が胸にぞありき」
何だか暗い曲ね
これが娘にささげた曲なの？
夏岡さん　この転調した
バイオリンのところから
お願いできますか？
ええ
紅さん　バイオリンを
弾いてくれませんか？
えっ　私が？
もうすぐ
警察が到着すると思います
最後に　お父さんの曲を
聴かせてください
ありがとうございます　明智さん
ピアノで弾いたときと
違う曲みたい
美しい曲ね　まるで天使が
舞い降りてきたような
悪魔の仮面の下には
天使がいたのですね
ありがとう　椿さん
お嬢様
金田一君　１つ聞きたいんだが
何ですか？
紅亜里沙が御堂周一郎の娘だと
なぜ　分かったんですか？
勘ですよ　肖像画の御堂周一郎が
亜里沙さんに似ていると
思っただけですよ
勘…　ですか　アッハハッ
負けましたね
山々と深い霧に包まれた
奥飛騨の小さな村に
４００年前の怨念が
復讐の時を告げる
呪い武者の振り上げた刀に
月の光が　きらめくとき
からくり屋敷の扉が開き
連続殺人事件の幕が開く
俺は　どんな犯罪も許さない！
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて
金田一少年の事件簿
君に　この謎が解けるか？
な…　ない
よろいが…
武者様の　よろいが無くなっとる
おお　兼春様が
よみがえったんじゃ
とうとう果たされるときが
来たんじゃ
我が一族　４００年の悲願が…
おーい　金田一
何をもたもたしとる　おいてくぞ
ハア　少し休もうよ
バカもん　早くしないと
日が暮れちまうぞ　ねえ　仙田さん
何だよ　おっさんの頼みで
来てやったんだぜ
それとこれとは　別もんだ
一ちゃん　元気出して
はーい
俺は今　岐阜県奥飛騨の
くちなし村に向かっている
事の起こりは
おっさんの元に届いた
一通の手紙だった
手紙の主は　巽　紫乃
おっさんの幼なじみで
数年前　後妻として村の名家
巽家に入ったという女性だ
最近　夫を亡くして　それ以来
正体不明の人物から脅迫状を受け
そのことで　おっさんに
助けを求めてきたらしい
ああっ　一ちゃん　あれ
よろいを着たお地蔵様
変わってるわね
はあー…
武者神社
アッ　一ちゃん　あの人
うん？
ゲゲゲー　何だ？
この暑いのに
歌舞伎の黒子みたいな格好して
先を急ぎましょう
こちらが
巽家のお屋敷でございます
これが巽家
すっごいお屋敷ね
奥様　お客様を
お連れいたしました
ワアー　ンン…
剣持さん
し…　紫乃…
困ります　診察中に　いきなり
ああ　す…　すみません
イテテッ　なんで俺まで
剣持さん
ホントに来てくださったのね
うれしい
おっ　いや　その　なっ…　ハハハッ
何だよ　あれ
剣持さんってば
紫乃さん　それでは　私は　これで
くれぐれも無理しないように
彼は？
この村で　ただ一人のお医者様の
冬木さんですわ
近ごろ　体の具合が優れないので
定期的に診ていただいてるんです
母さん　また倒れたんだって？
大丈夫ですよ　征丸
母さん　脅迫状のせいで
気の休まる暇がないから
脅迫状…
「祭りの明ける日までに
巽家の次の当主の御命
頂戴しに
参上つかまつり候」
「我が名は呪い武者なり」
呪い武者か…
こんなことをする人間の
心当たりは？
龍之介ですよ
奴の仕業に決まってる
これ　征丸
龍之介？
死んだ主人と先妻の間の子
つまり　私の義理の息子なんです
私は最初　この家に
住み込みの使用人として
お仕えしていました
それが８年前に
前の奥様が亡くなり
主人に見初められて
この家の後妻となったんです
でも　先妻の綾子さんの
３人の子供たちは
私や征丸を巽家の人間とは
認めてくれず
でも　それだけで
こんな脅迫状なんか
出すでしょうか
ええ　実は　亡くなった主人が
とんでもない遺言を残しまして
そう　あれが開封されたとき
すべてが始まったんです
それでは　先代当主　巽　蔵之助様の遺言状を開封いたします
なんて顔してんですか　二人とも
これから晴れて
俺が新しい当主になるというのに
最も　そうなったら
あんたらには
出ていってもらいますけどね
お兄様　私語は　お慎みになって
巽家の品格に関わりますわ
フンッ
ふん　ふっ
おい　隼人　こんなときに
ビー玉遊びは　やめろ
早く始めてくれ
前置きは　いいから
新当主の誕生を宣言するんだ
それでは　遺言状を読み上げます
巽家の財産と家督は　すべて
征丸が相続するものとする
何だって　征丸に！
フッフフフフッ　ヘヘヘッ…
どうやら立場が逆転したようだね
龍之介兄さん
何？
この家を出ていくのは
あんたらのほうだよ
尚　この遺言は
今年の祭りが終わり次第
正式に執行されるものとします
テッハハハハッ…
クソー　こんな遺言　誰が認めるか
なんで　こんな奴に
お前なんか殺してやる
俺がこの手で
それからですわ
私たちの身の回りに
妙なことが
起こるようになったのは
じゃ　その龍之介が
そのことで嫌がらせを
絶対にそうです
奴は　僕に相続を放棄させて
この家から
追い出そうとしてるんだ
死んでしまえばいいんだわ
えっ
征丸を殺せなんて許せない
いっそ　龍之介なんか
そ…　その遺書にあった
祭りというのは？
武者祭りのことですよ
エエッ　武者祭り？
今　村で行われている
祭りのことです
２階へ上がれば　窓から
ちょうちんが見えるはずですよ
呪い武者に　武者祭りに
あの　お地蔵さん
何か武者だらけね　この村
ああ
祭りが終わるまで　あと５日
あの脅迫状が
単なる脅しならいいんだけど
奥様　お薬の時間でございます
ありがとう
んっ？何かしら？あの音
ハアッ　ハッ…
キャー
うん？あの声は
どうしました？紫乃さん
大丈夫ですか？
の…　呪い武者が…
アッ
アアッ…
呪い武者
紫乃さん　大丈夫ですか？
金田一　どうした？
あそこに呪い武者が
何だって！
誰もいないぞ
あっ　いない
でも　今　確かに
一体　何事だ？騒々しい
龍之介様
こいつが龍之介…
どうしたの？母さん
征丸　呪い武者が　今　あそこに
フン　今は　祭りの最中だぞ
大方　仮装した村の者が
迷い込んだんだろう
いや　それは違うな
何？
この傷を見ろよ
村の人が刀なんか　振り回すか？
何だ　あんたら
人の家で勝手なことを
お兄様　よして
もえぎ
お客様に失礼でしょう
ごめんなさい
兄は　このとおり　ぶしつけで
ああ　いえ
だが　紫乃さんを襲った
よろい武者は　一体…
呪い武者じゃよ
兼春様が　よみがえって
恨みを晴らされようと
しとるんじゃ
誰だ　あんた
母さん　よさないか
ああ　すみません
母には　私から言って聞かせます
離せ　倫太郎
巽家の人間は
みな呪われておるんじゃ
４００年も前からな
離せ　離せ　倫太郎
兼春様の呪い？
一ちゃん　これ
ああっ
これは　草履の跡だ
しかも　途中で消えてる
じゃ　あれは　やっぱり
呪い武者の亡霊？
亡霊なんかじゃない
泥の付いた草履を
そこで脱いだだけさ
何だ　驚かしやがって　ヘヘ
それじゃ　金田一
ああ　呪い武者は
この屋敷の中に
逃げ込んだことになる
一ちゃん　それじゃ
そう　紫乃さんを襲った
武者姿の人物は…
この屋敷にいる誰かかも
しれないってことですよ
この屋敷の誰かが犯人だと？
あの　奥様
奥様のお知り合いだと
おっしゃる方で
赤沼様という方が
赤沼…
す…　すぐに　お通しして
はい
赤沼様　どうぞ　こちらへ
あの人
武者神社の黒子男
こちらは　主人の古い友人で
赤沼三郎様です
すぐに　お部屋を用意して
でも　もう客間は　すべて塞がって
合わせ扉の間が空いているだろう
私は　あそこで構わん
でも　あそこは
構わんだろう？紫乃さん
あっ　はあ…
合わせ扉の間？
何だ　あの赤沼という男は
まだ眠っとるんですか
今　起こしてきます
母さん
フン　お盛んなことだ
オヤジが死んで
１年も　たたないうちに
もう　男を連れ込んだか
どういう意味だよ　龍之介
あいつが親父の友人なんて
見え透いた嘘だって言ってんだよ
あの女　この家を手に入れたら
あの男と
一緒になるつもりなんだろうよ
あの不気味な男が
お前の新しい父親ってわけだ
黙れ　黙れ　貴様
二人とも　やめないか
野郎　お前のような奴が
この家で　でかい面するのは
もう我慢できねえんだ
ちょうどいい機会だ
ここで殺してやるよ
やめろ　龍之介　銃を置くんだ
死んじまえ！
何してるの
やめなさい！
アッ
い…　嫌だな　マジになって
冗談ですよ　冗談
やっぱり　一番　引っ掛かるのは
あの赤沼って男だよな
夕べ　あの黒子男が
この家に姿を現したのは
紫乃さんの部屋に
呪い武者が現れた直後だった
まるでタイミングを計ったように
まさか奴が　呪い武者…
あっ
はい　金田一
君が　かの名探偵の孫かね？
私は　赤沼だが
ホントに赤沼さんが
そんなことを？
はあ　ええ
呪い武者の正体を知りたければ
夜中に紫乃さんと二人で来いと
奴は　どうして　そんなことを
言い出したんでしょう
紫乃さんに心当たりは？
さあ…
あっ　おっ　あれ？
ここ　行き止まり
こちらです
壁が
どんでん返しになってんのか
中には　鉄の扉
なるほど　２つの扉で
合わせ扉の間
赤沼さん　金田一です
ギャー　呪い武者だ
どうしたんですか？赤沼さん
助けてくれ
ダメだ　中から鍵が掛かってる
紫乃さん　鍵は　どこですか？
こっちです
紫乃さん　早く
はい
アッ　これは…
アッ　これは…　血の　におい
赤沼さん
一体　何があったんですか？
赤沼さん…
ハッ…
アーッ！
警部殿
鑑識作業　終了いたしました
ご苦労　やれやれ
まさか　こんなことになろうとはな
しかし　この部屋に赤沼が
泊まっていたのを
知っていた人間は　限られている
一人ずつ
夕べのアリバイを確認すれば
犯人は　すぐに特定できるだろう
いや　この事件は
そんなに簡単じゃない
何？
これは　密室殺人だ
密室殺人？
ああ　俺と紫乃さんが
赤沼に呼び出されて
合わせ扉の間に来たとき
ギャー　呪い武者だ
部屋の中から
赤沼の叫び声が聞こえてきたんだ
その時　扉の鍵は
確かに掛かっていた
それは　確かか？
ああ　間違いない
俺が　この手で
鍵を開けたんだから
でも　俺たちが
部屋に飛び込んだとき
室内に犯人の姿はなかった
外側から鍵を掛けるには
このキーを使うしかない
でも　このキーは
ちゃんと他の鍵と一緒に
鍵置き場に掛けてあったんだ
紫乃さん　そのキーの合鍵は？
ありません　それ１つだけです
じゃ　犯人は　どうやって外に？
残された出入り口は
窓しかないが
人間の出入りは　まず無理だ
万が一
ここから出られたとしても
川に真っ逆さまだ
つまり犯人は
この　ろう獄のような部屋から
赤沼の体だけを残して
こつ然と消えてしまったんだ
うん？
あっ　この格子は
回すと外れるようになってるのか
何だと！
他の２本は…
ダメだ　回るのは
真ん中の１本だけだ
でも　この隙間から…
ダメだ　俺でも肩が通らない
普通の体格の男じゃ
出られそうもねえや
警部　被害者の遺留品が
そろいました
分かった
ごついカバンの割には
大したもん入ってないな
あの…　本当に赤沼さんの荷物は
これだけなんでしょうか？
そうですが　何か不審な点でも？
いえ　何でもありませんわ
紫乃さん　あなた
何か隠してるんじゃありませんか
ああ…
紫乃さん　話してくれませんか？
我々は　少しでも
手がかりが必要なんです
お金です
私が赤沼さんに渡した
お金が無くなっているんです
お金？
どうして金なんか
それは　私から　お話ししましょう
冬木先生
奥様　場合が場合です
隠さず　すべて　お話ししましょう
あんた　何か知ってるのか？
はい　赤沼については
奥様に相談されまして
実は　赤沼は
亡くなった蔵之助様の
友人なんかではありません
えっ
彼は　一週間前
突然　奥様に電話を掛けてきて
自分は　奥様の子供だと
そう言ってきたんです
し…　紫乃さんの子供は
征丸君だけじゃなかったのか
実は　征丸は　双子だったんです
うう…　何だって！
でも　もう一方の赤ん坊は
生まれたとき
すでに死産だったと
聞かされました
じゃ　その双子の片方が
実は　生きていて
それが赤沼だったと
あの人は　その話をするために
この家に来たんです
いきなり　そんなこと言われても
困ります
それに　あなたがホントに
征丸の双子の兄弟なら
証拠…　そのずきんの下の
顔を見せてください
いいでしょう
アアッ　アーッ　そ…　その顔は
昔　火事で
大やけどを負ってしまいましてね
じゃ　赤沼が紫乃さんの
息子だという証拠はないんですね
はい
なら　どうして金なんか
私が　そうするように
申し上げたんです
私も奥様も　初めから
赤沼が奥様の子だなんて
信じてはおりませんでした
でも　今は征丸君が
巽家を継ぐ大事なとき
ここで彼に　妙なうわさを
流されでもしたら
やっかいなことに
なりかねません
なるほど
赤沼と征丸が双子ね
龍之介
刑事さん　俺には
もう犯人が分かりましたよ
分かったって　それは一体
犯人は　征丸ですよ
征丸君が？
征丸は　自分に兄弟がいたら
せっかくの財産が
半分になっちまうと思って
邪魔な赤沼を殺したんだ
バカなこと言わないで
征丸が　そんなこと
現に征丸は
どこにも　いないじゃないですか
追及されるのを察知して
いち早く逃げたんじゃ
征丸なら　今朝早く　出かけたわ
大事な用があるって
猿彦と一緒に
おおー　そりゃ変だな
猿彦なら
あそこに　いるじゃありませんか
エエッ？
エッ？
猿彦　お前
征丸と一緒じゃなかったの？
はああ　それが　征丸様が突然
一人で行くとおっしゃって
そんな…
そーれ見ろ
やっぱり逃げ出したんだ
征丸さんを犯人だと
決めつけるのは　まだ早いですよ
何だと！
もし　征丸さんが犯人なら
あの脅迫状は　どうなるんです？
征丸さんには
脅迫状なんか出す理由は
どこにもない
黙っていても　この家の財産は
彼のものになるんですからね
１つだけ分かっているのは
犯人が　この家の中の
誰かってことだけです
つまり　あなたが犯人だという
可能性もあるんですよ
龍之介さん
クッ　ぶ…　無礼な
よそ者のくせして
よくも　よくも…
呪われろ！
先ほどは　兄が　とんでもない
失礼をしたそうで　すみません
いや　俺のほうこそ
この　しぐさ
私たちの村では
他人を呪うときのものですのよ
殺したいほど　憎い相手をね
はあ…　何だよ　美雪　寒いのか？
そうじゃないけど　何か…
大丈夫だって
俺がついてるだろう
あっ　おい　何だよ
何だか怖いの
この霧に吸い込まれて
二度と帰れなくなりそうで
なっ　んっ…　大げさだな
あ？
あっ…
ニャアア　呪い武者
大丈夫
あれは　みんな　村の人です
ええっ…
武者祭りの　ならわしで
村人が武者姿で
村中を練り歩くんです
なあんだ　仮装行列かよ
アアーッ　アッ
一ちゃん　待って
ちょっと　一ちゃん
もう　こんな歩きにくいサンダル
履いてくるんじゃなかったわ
あーあ　ツイてないな　ホントに
呪い武者が美雪を？
夢なら覚めてくれ
猟銃　猫　庭の脚立
残された手がかりを
つなぎ合わせると
１つの真実が浮かび上がった
おっさん
呪い武者なんて　いないんだ
すべては　人が仕組んだ
恐ろしいわな
待っていろ
巽家の新しい後継者が決まる前に
お前の計画は　俺が崩す
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿おっさんの頼みで
巽家を訪れた俺たちは
呪い武者と名乗る者からの
脅迫状の存在を知った
そして完全な密室で
第１の殺人が行われたのだ
あーあ　ついてないな　ほんとに
美雪ー！どこだ？美雪－！
この道は　ずっと１本道だ
こんな所で道に迷うはずないのに
あ　あれは！美雪のサンダル
この足跡　呪い武者が
紫乃さんを襲ったとき
あのとき縁側に残っていたのと
同じ足跡だ
そんなばかな…
美雪－！どこにいるんだー？
美雪－！
どうして　どうして美雪が
呪い武者にさらわれるんだ？
この霧に吸い込まれて
２度と帰れなくなりそう
くそ！落ち着け　落ち着いて考えろ
やつは重いよろいを身につけた
上に　美雪を担いでるはずだ
となれば
そう遠くには行っていない
もしかしたら　まだ　この辺りに
呪い武者…　美雪！
美雪！どうする？おっさんを
呼びに行ってる暇はない
くそ！こうなりゃ
俺が行くっきゃない
美雪　待ってろよ　今　俺が…
警察の者ですが
高校生の男の子と
女の子の２人を
見かけませんでしたか？
その２人が
呪い武者を名乗る人物に
さらわれたかもしれないんです
呪い…　知りませんよ！
あ　ちょっと　あんた　けいさ…
警察！ひどい　非協力的な！
くそー！何だ　この村の連中は
もう　まったく
剣持警部
冬木さん　紫乃さんも
２人が行方不明というのは
本当ですか？
ああ…　どうやら呪い武者に…
はー
冬木先生　この村の連中は
何を隠してんだ？
あ？
呪い武者の名前を出しただけで
みんな何も言わずに逃げちまう
こっちは２人の命がかかってんだ
いいかげん話してくれ
呪い武者の伝説ってのは
何なんだ？
あっ　分かりました
お話ししましょう
先生　でも　その話は
今は　そんなことを言ってる
場合じゃありません
は　はい…
今から４００年前　関ヶ原の合戦が
あったころのことです
この村に戦に敗れた武将が
数十名の手勢を引き連れ
落ち延びて来ました
その武将の名は　柊兼春
兼春は自分たちを
かくまってほしいと
村長に遣いをやりました
ところが…
そうか
村長は　わしらを受け入れると？
はあ　しかし　それには１つ条件が
条件？何だ　それは？
申せ
御免！
ぎゃあ　な　何をする！
お許しくだされ　われらが
生き延びるためには　これしか…
むむ…　わしの命と引き換えに
家康に許しを請うつもりか
おのれ　外道ども
たとえ命絶えようとも
わしは　おん霊となって
この地にとどまり
子孫末代まで呪ってくれるわー！
はっ！呪い武者！
フフフフ…
あっ　くそう　手が…　み　美雪！
フフフフ…
お前たちに見せたい物がある
何？
はっ　征丸さん…
フフフ…
何で　こんな！
復しゅう　われは兼春　そして
われの命を奪ったは巽家の祖先
巽家に関わる者は皆殺しだ！
復しゅうの邪魔をする者には
死あるのみ　呪われろ！
うわー！はあっ！
金田一　気がついたか！
やれやれ
こ　ここは？
巽家だよ　冬木先生が
洞くつで倒れていたお前たちを
見つけてくれたんだ
ああっ…　み　美雪！美雪は？
大丈夫　ぐっすり眠っていますよ
ふー　そっか…
い　いったい何があったんだ？
金田一
呪い武者にさらわれた美雪を
助けようと　洞くつに入ったところ
後ろから襲われたんだ
何？
じゃ　じゃあ　お前
呪い武者を見たのか？
ああ　暗かったし　やつは
よろいを身につけていたから
背格好までは分からなかった
けど　これだけは言える
やはり犯人は
征丸さんじゃなかったよ
え？
ど　どういうことですか？
見たんです　暗闇の中で
呪い武者の足元に
置かれていた物を
まさか　それが…
はい　残念ながら　それは
征丸さんでした
え？
イヤー！ウッウッウッ…
し　紫乃さん！
紫乃さん
さ　お部屋へ戻りましょう
気をしっかり持って　紫乃さん
家臣たちに裏切られた
武将のおん念か…
呪い武者に
そんな伝説があったとはね
ああ　この村の連中は兼春の
たたりを　いまだに恐れているのさ
でも　なぜだろう？なぜ呪い武者は
巽家と関係ない美雪を
さらったんだ？
それに　わざわざ　さらっといて
なぜ俺たちを殺さなかった？
一ちゃん…
美雪　大丈夫か？
うん　助かったのね　私たち
ごめんな　あのとき
お前のこと　よく気をつけてりゃ
こんなことには
ううん　私　絶対助かるって
信じてた
だって　私には
金田一耕助の血を引く
名探偵が付いてるんですもの
美雪…
一ちゃん…　あ！ちょ　ちょっと
何してんのよ！
いやあ　もうちょっと
そばにいてやろうと…
く　来るな－！
ひえー！
うーん？この傷は…　やっぱりな
おっさん　事件が解決しそうだってほんとかよ？
金田一　悪いが　あのセリフ
今回は俺が言わせてもらうぜ
う　うん　謎は全て解けた！
犯人は　この中にいるー！
フン　決まったな
さて　まずは犯人が
いかに　この密室から逃走したか
すでに知ってのとおり
この窓の格子は
１本　外れるようになっている
何？
そして犯人は　こいつを使って
谷間を渡ったんだ
それは　お父様の…
ああ
あの大木の幹に矢のような
傷あとを見つけてなあ
もしやと思って
こいつを発見したんだ
どういうことだ？
まず犯人は
赤沼が部屋にいないときを
見計らって　ここに忍び込んだ
そして目立たなくて丈夫な
ナイロンの釣り糸を格子にひっかけ
その糸を輪にして
ボウガンの矢に結び
向こう岸の大木を狙って撃った
それから犯人は向こう岸に行って
糸を木に結びつけた
そして　その夜　犯行を済ませた
犯人は　用意してあった糸の端に
これも丈夫なロープを結びつけて
たぐり寄せた
これで　ロープの架け橋の
出来上がりだ
なるほど　即席のロープウエーを
作ったわけですね
待てよ　こんな狭い
格子の隙間から出られるのは
せいぜい小柄な女・子どもぐらい
そう　この犯行が出来るほど小柄で身軽な男は１人しかいない
案の定　そいつは１０年前まで
曲芸団で軽業師をしていたらしい
赤沼と征丸を殺害した犯人
呪い武者
それは　お前だ！仙田猿彦！
あ　ありゃ？仙田は　いない？
猿彦なら最初からいませんけど
え？
ウフ　どうやら　もう
逃げてしまったようですわね
なっ　おー　おい
まだ遠くへは行ってないはずだ
仙田猿彦を捕まえるんだ！
はっ！
大変です！
何ごとです？
銃が　お　大広間の銃が
無くなっているんです！
な　何だって？
え？
今のところ　こちらの方面に
逃走したと思われる形跡は
見当たりません　はい
まだ見つからんのか
おっさん　聞いてくれ
やつは　いつ　また人を殺すか
分からんぞ
さっきのおっさんの推理だけど
あれは…
銃だ！
まさか　仙田が…
警部！こっちに死体が
何！遅かったか
ウッ　こ　これは…
せ　仙田…
仙田猿彦の死因は
猟銃の暴発による
ショック死と思われます
暴発？じゃ　猿彦は
事故で死んだの？
そういうことですなあ
しかし　やつは　いったい
何のために　こんなことを？
それは　こいつを見てください
これは死んだ仙田のバッグに
入ってた物です
それは…
その家紋は柊家の
ど　どうして猿彦が　そんな物を？
まあ　こう考えれば　どうですかな
冬木先生　猿彦は　その昔
巽家の先祖に殺された戦国武将
柊兼春の子孫だったんですよ
何だって！猿彦が兼春の？
やつは　この家に潜り込んで
先祖の恨みを晴らすべく
機会を狙っていたんでしょう
そして
とうとう絶好のチャンスが訪れた
それが巽家の家督争いだったんだ
やつは呪い武者を名乗り
巽家の人間を
皆殺しにしようとたくらんだ
ところが　そこに赤沼三郎が現れた
恐らく赤沼は仙田が兼春の子孫で
あることを知っていたんだろう
そこで口封じのために
仙田は赤沼を殺害
邪魔者を始末した仙田は
翌朝　復しゅう第１号として
次期巽家当主である
征丸君を殺した
仙田にとって巽家の家督争いは
いい隠れみのだった
誰もが遺産がらみの殺人と考え
そうなれば疑いは
巽家の人間にかかりますからねえ
金田一たちをさらって
脅迫したのも
その犯行を邪魔させないためだ
しかし　オホン
俺に密室トリックを見破られた
仙田は　山に逃げ込み
恐らく　そこで
誰かを撃とうとして…
剣持警部！
何だ？
銃の暴発の原因が分かりました
何でも元から銃口には
鉛が詰めてあったそうです
鉛だと？
お　おい　もえぎ
あの銃に　そんな細工が
してあったのか？
お兄様がイギリス留学
なさってたころ
泥棒が入って　あの銃を
盗もうとしたのよ
それで危険だから
撃てないように細工を
なお　このことは家の者全員が
知っとったんですが
仙田は最近この家に来たので
知らんかったようです
はっ…　ちょっと待ってくれ
ん？
龍之介さんと猿彦以外は
全員　そのことを知ってたんですね
え　ええ…
どうした？金田一
何てこった　それじゃ
あのときの行動は…　まさか
フン　何はともあれ事件は解決だ
よし　祝杯を挙げようじゃないか
な　祝杯だと？貴様…
そうさ　この席で巽家の
新しい当主を決めるのさ
この家に最もふさわしい当主をな
鬼　あんた鬼よ　征丸が死んだのがそんなにうれしいの？
紫乃さん
あんたなんか　あんたなんか
龍之介さん
人が殺されてるっていうのに
祝杯はないでしょう　ちょっと
神経どうかしてますよ　あんた
フン　事件は解決したんだ
あとは　われわれで
片を付けますから
よその方々は
どうぞご遠慮ください
あしたにでも　早速お帰りを
ったく　後味悪すぎるぜ
結局　最後は　あの龍之介が
いちばん得しちまって
これじゃ何のために
事件を解決したんだか
いや　事件は解決なんかしてないよえ？
え？
きのう　おっさんが推理した
トリックだけど　実は俺も
１度は同じトリックを考えたんだ
仙田猿彦が
犯人じゃないかってこともね
でも　やつに　あのトリックは
実行不可能だと思うんだ
ど　どういうことだ？金田一
俺は必ず本当の答えを見つけて
もう１度この村に戻って来る
俺たちを欺き続けた真犯人を
明らかにするために
じっちゃんの名にかけて
やれやれ　今日は　とりあえず
このホテルに泊まるぞ
賛成！
いらっしゃいませ
あ？
黒猫…
ぶあ！何よ　急に立ち止まって
そうか　そういうことか！
え　何が？
謎は全て解けた
何だと？
武者祭りも今日で終わります
次期当主に指名された
征丸様が亡くなられた今
巽家の家督を相続するのは
長男の龍之介様が妥当であると
思われます
依存はないですね？紫乃さん
はい
それでは巽家の習わしに従い
当主となる者は
ご自分の名の下に血判を
お待ちになって
何だ？
血判を押す前に乾杯しません？
新しい巽家の門出を祝って
フン　いいだろう
紫乃さんは　お酒　だめでしたわね
ようし！それじゃ乾杯だ
巽家の前途を祝して
ちょーっと待った！
剣持さん！
何だ　お前ら　帰ったはずじゃ？
見りゃ分かるだろ
大急ぎで戻って来たんだよ
この事件の真実を
全員の前で明らかにするためにな
ばかばかしい
事件なら　そこのおっさんが
解決してくれたばかりじゃないか
う　うーん…
あの推理は
犯人が用意した虚構だったのさ
本当の答えは別のところにある
でたらめ言うな！
でたらめじゃない
そもそも剣持のおっさんが
推理した密室トリックには
盲点があったんだよ　犯人すら
気づかなかった盲点がね！
仙田猿彦は高所恐怖症だったんだ
え？
つまり　やつには
あの谷を渡ることは出来なかった
どうして　そんなことが分かる？
あれを見てくれ
あれは…
あの脚立は猿彦が使ったものだ
よーく見てくれ　あれは
この庭で　いちばん高い植木だけど
いかに猿彦が小柄でも
あの上に上って
普通の庭木用ばさみが
届かない高さじゃないだろ？
なのに脚立の上に上らず
わざわざ高枝ばさみを
使っていたのは　なぜか？
答えは　ただ一つ
やつは高所恐怖症で
それ以上高い所に上れなかった
もちろん　そんなやつが
ロープを使って　あの谷を
渡ることなど不可能だろう
しょせん　ただの臆測じゃないか
それを裏付ける根拠はあるのか？
あるさ　警察の調べによると
猿彦が軽業師を辞めたのは
綱渡りの最中の
転落事故のせいらしい
そのときの恐怖から　やつは
高所恐怖症になってしまった
でも　それなら　あの部屋の
対岸の木に残っていた矢の跡は？
犯人が真相から目をそらすために
こしらえたミスリードさ
ところが犯人は　猿彦が
高所恐怖症だとは知らなかった
そのせいで　うっかり　猿彦には
実行不可能なトリックを
あてがっちまったんだ
しかし　猿彦が犯人でないとしたら
そう　猿彦は確かに
この一連の犯行に関与してたが
ただの操り人形にすぎなかった
猿彦は主犯ではなかったと
いうことか？
ああ　この事件は２人の人間が
手を組んで行った犯罪なんだ
俺が
最初に　そのことに気づいたのは
呪い武者にさらわれた
美雪を助けようとしたときだ
あのとき俺は　やつを追って
洞くつに入った
でも俺を殴った人間は
俺の背後から現れたんだ
あの洞くつは狭く
ほかに横道や出入り口もない
そんな状況で
先に入ったはずの呪い武者が
俺の後ろに回り込むのは不可能
つまり
犯人は２人いたってことになる
じゃあ　まさか猿彦が死んだ　銃の
暴発も事故なんかじゃなくて…
そう　あれも真犯人の仕業さ
犯人は　あの銃に
鉛が詰められていて
発砲すれば確実に暴発するのを
知っていた
そこで　それを利用し
事故に見せかけ
猿彦を死に追いやったんだ
死体のそばにあった　かばんも
真犯人が置いていったものだろう
猿彦犯人説の裏付けとなる
証拠をそろえるためにね
犯人が呪い武者を名乗ったのも
実は　そのためさ
猿彦を柊兼春の子孫に仕立てて
４００年前の復しゅうという
見せかけの動機を
でっち上げたんだ
何？
え？
でも　金田一くん
犯人は　どうやって
猿彦を言いくるめたんだろう？
死んだ人間のことを
悪く言いたくはないが
彼には　ずる賢いところもあって
簡単に操り人形には
なりそうもないが
真犯人と猿彦の間には
ある重要な接点があったのさ
接点？
そして　その接点が
２人の間に
共通の目的を生んだんだ
共通の目的？
何だ　それは？
この巽家の莫大な財産だよ
ウッ
相続人である征丸さんを殺し
巽家の財産を
ある人物に相続させることが
犯人たちの共通の目的だったんだ
一ちゃん　じゃ　まさか…
ああ　この殺人計画を
練り上げた真犯人
呪い武者は　この中にいる！
ああ…
すまない
せっかくのおっさんの推理を
だけど呪い武者の正体は
どうしても暴かなくちゃ
ならないんだ
そう　飛騨からくり屋敷に
隠されていた最後のからくり
全ての謎が解けた今　真犯人の
呪われた過去を俺は見てしまった
だけど分からない　いったい何が
この人を獣に変えたんだ？
金田一少年の事件簿
君に　この謎が解けるか？
きゃー！
の　呪い武者が！
巽家は財産の相続争いで
お互いが憎しみ合っていた
やはり犯人は征丸さんじゃ
なかったよ
イヤー！征丸
ちょっと待った－！
呪い武者は　この中にいる！
くっ…
金田一　事件の動機が
巽家の財産であることは
間違いないんだな？
ああ
うーん
ということは　征丸君が死ねば
財産を相続できる人物
つまり　犯人は巽家の血を引く
この３人の中にいるってことか
えっ…
バカも休み休み言え
それに赤沼は　どうなる？俺たちの誰かが財産目当てにやったんなら
なぜ赤沼を殺す必要がある？
赤沼三郎は
殺されてなんかいないよ
いや　そもそも赤沼三郎なんて
人物は存在しないのさ
やつは猿彦と　もう１人の真犯人が協力して作り上げた
架空の人物なんだ
そして　あの夜　紫乃さんの部屋に
現れた呪い武者も
猿彦の変装だったんだ
やつは俺たちに呪い武者の姿を
見せつけたあと
駆けつけた人たちが　部屋に
来る前に　隣の部屋に逃げ込み
今度は赤沼に変装して
頃合いを見計らって
姿を現したというわけだ
その証拠に　紫乃さんの悲鳴を
聞いて駆けつけたとき
猿彦だけは
姿を見せなかっただろう？
でも　一ちゃん
私たちが　この家に来る途中
確か猿彦さんと赤沼さんは
同時にいたじゃない
そこが　このトリックの
巧妙なところさ
もし　猿彦１人が
赤沼を演じ続けていたら
赤沼がいる所に
猿彦は　いつも　いないことになる
そんなことが続けば
誰かが猿彦と赤沼は
同一人物じゃないかと
感づいてしまうだろう
しかし　２人の人間が
赤沼を演じることで
そういった不自然さを無くし
あたかも赤沼という人物が
実在してるように見せかけたんだ
ヘッ　赤沼が
でっちあげの人物だって？
おいおい　その推理　ちょっと
無理があるんじゃねえか？
それなら最初に見つかった
あの死体は誰だって言うんだよ？
そんなに簡単に
人間の死体が用意できるのか？
あれかい？あの死体こそ
２人目の犠牲者と思われていた
征丸さんだったんだ
何？
そっ　それは本当か？金田一
ああ
まず　真犯人と猿彦は　あの夜
征丸さんを合わせ扉の間に
呼び出して　彼を殺害した
そして　赤沼の服を
征丸さんの死体に着せ…
俺は　なぜ犯人が死体の一部を
持ち去ったのか　ずっと疑問だった
でも　この被害者入れ替えの
トリックに気づいたとき
伝説の裏に隠された
真の意図が見えてきたんだ
犯人が　あんなことをした
本当の理由は
被害者が誰であるか
誤認させるためだったんだ
ちょっと待て　鑑識の結果
あの死体の血液型はＡＢ型だった
Ｏ型の紫乃さんからＡＢ型の
子どもが生まれるということは
あり得ないぞ
そうれ見ろ
だが　あの死体が
征丸さんであるのも間違いない
本当に間違っているのは
征丸さんが紫乃さんの
息子だという思い込みなんだ
ええ？
そうじゃありませんか？紫乃さん
で　でたらめ言わないで
征丸は私の子よ
間違いなく私の血を分けた…
き　金田一　お前　いったい
どういうことなんだ？
思い出してくれ　おっさん
俺たちが村に着いた翌日
朝食の席で…
それが　どうしたって言うの？
一ちゃん
そ　そうよ　征丸が
撃たれると思って　私は夢中で…
そいつは　どうかな？
考えてみてくれ
もし　あのとき　龍之介が
銃の引き金を引いていたら
そうか　死んでいたのは
龍之介の方だ　猿彦みたいに
そう　何しろ　あの銃には　銃身に
鉛が詰めてあったんだからな
それじゃあ　紫乃さんが銃を
取り上げて　かばったのは
龍之介の方
しかし　なぜ紫乃さんは
憎んでいるはずの龍之介を…
それは　この龍之介こそが
巽紫乃の本当の息子だからだよ
え？
龍之介が？
紫乃さんの　ほんとの息子？
つまり　この事件は　実の
息子じゃない征丸さんを殺害し
巽家の財産を　本当の息子である
龍之介に相続させるための
殺人計画だったんだ
ま　まさか　真犯人は…
そう　巽紫乃　あんたこそ
この事件の真犯人　呪い武者だ！
ば　ばかな！俺が　この女の
息子だって？冗談じゃない
俺は正真正銘　巽家の血を引く
この家の正当な跡継ぎなんだ
でたらめ言うな！
でたらめじゃないさ
その証拠に　なぜ犯人は
巽家とは何の関係もない
美雪をさらったか？
ど　どういうこと？一ちゃん
いいかい　確かに征丸さんが死ねば
次の当主には
先代の長男であると思われている
龍之介が選ばれるだろう
しかし　征丸さんを殺すとなると
大きな問題が生じる
問題？
巽征丸の血液型だよ
何？
彼を　ただ殺害したのでは
後で警察が調べたとき
征丸さんが紫乃さんの
実の息子ではないと　ばれてしまう
これでは　警察が
不信感を抱くだろう
かといって　征丸さんの死体を
隠してしまうと
彼の死亡は確認されないまま
行方不明扱いとなり
いつまでも家督は龍之介に
回ってこない
そこで　第三者に
巽征丸の死を証言させるという
方法をとったんだ
そのために選ばれたのが美雪だ
え？
巽家とは何の関係もなく
警察から信用され
その上　非力で扱いやすいからな
でも征丸君の死体を出さずに
死亡確認をさせるだけなら
何も架空の人物の死体に
見せかけなくても
そこが犯人の
悪魔的な賢さなんですよ
犯人が犯行後　最も苦労することは何だと思います？
死体の始末か
そう
人間の死体を始末するってことは
考える以上に困難なんだ
しかし　この場合
合わせ扉の間の死体は
赤沼として警察が葬ってくれる
そのために　征丸がＯ型の
紫乃さんから生まれるはずのない
ＡＢ型だったのを
逆に利用したってわけですね
ちょっと待って
うん？
あなた　さっき言ったわよね？
「猿彦は合わせ扉の間の窓から
出てない」
「あれは真犯人が猿彦を犯人に
仕立てるための偽のトリックだ」って
でも　私と　あなたが
部屋の前まで来たとき
中から悲鳴が聞こえたじゃない？
あれは部屋の中に残っていた
共犯の猿彦の声ですよ
征丸さんは　すでに
殺されていたはずですから
でも　もし　あなたの言うとおり
猿彦が窓から出られないとしたら
あの男は　いったい
どこに消えてしまったのかしら？
そうか…　そこまで言い切るか
これから　あの夜のことを
ひとつひとつ再現します
あのとき部屋の中にいた
猿彦の役は俺がやります
美雪
お前は紫乃さんの役をやってくれ
うん
それから俺の役は
龍之介　あんたにやってもらおうか
フン　いいだろう
お前の茶番につきあってやるよ
あの夜　１１時ごろ　俺は赤沼からの
電話で　この部屋に呼び出された
そして　悲鳴を聞いて
部屋に入ろうとしたが
鍵がかかっていたんだ
確かに鍵がかかってるな
オーケーだ
それじゃ鍵を取りに行ってくれ
まず　紫乃さんが鍵の束を取り出しそして　すぐ部屋の前に戻って
俺が　どんでん返しをくぐり
続いて紫乃さんが入ってくる
扉には鍵がかかったままだ
何も変わったところはないぞ
じゃ　鍵を開けて
ったく　ばかばかしい
おい　金田一
こんなことで　本当に…
いっ　いない　金田一が消えてる
やつは　どこに？
どこ探してんだ？龍之介
何？
おれなら　ここにいるぜ
お前　いつの間に　どうやって
この部屋から出たんだ？
もちろん　この扉からさ
何だと？
このトリックで
最も重要なポイントは
この鍵は部屋の中にいた俺　つまり猿彦が持っていたことなんだ
じゃあ　さっき
俺たちが取りに行った鍵の束は？
あれは偽物さ
偽物？
あんたが美雪と
偽物の鍵の束を取りに行った後
俺は　この部屋を出て
本物の鍵で扉に鍵をかけ
そして　ホテルの回転扉のように
外に出た俺は
すばやく美雪に　その鍵を渡し
美雪が本物の鍵を　あんたに渡した
以上が　この密室トリックの真相
どうです？紫乃さん
これでも　まだ無実だと言うなら
ＤＮＡ鑑定でもして
龍之介と　あんたが親子かどうか
調べてもらってもかまわないぜ
し　紫乃さん…
でも　どうして？
いくら実の子どもの
龍之介さんのためだからって
今まで　わが子のように育てた
征丸さんを殺すなんて
だって　だって征丸は
やっぱり征丸は
私の子どもじゃなかったんだもの
そうよ
征丸は　あのおぞましい性悪女
巽綾子の子ども…
征丸が亡くなった母の子ども
私たちの兄弟ですって？
あ…　ど　どういうことだ？金田一
話してくれますね　紫乃さん
いったい何があったのかを
あれは　私が１５のときだった
父が多額の借金を抱えて
亡くなったんです
それからの私と母は　着る物すら
ままならない　惨めな生活でした
私は　その惨めな境遇から　何とか
抜け出したくて必死に勉強し
ついに県下でもトップの高校に
合格したんです
そこで私は
あの女　綾子と出会った
綾子は資産家の令嬢で
いつでも自分が中心でないと
気が済まないたちで
何かと目立つ私が
気にくわなかったんでしょうね
ありとあらゆる手で
私をいびり抜いたわ
そして　高２のとき
母は　ついに帰らぬ人となり
私は学校を辞めて
働かなければならなかったんです
誰かに　すがりたかった
でも　たまたま近づいてきた男は
私に子どもが出来たことを知ると
姿を消した
大きな　おなかを抱えて
私は途方に暮れたわ
出産のために訪れた病院で
綾子に出会ったのよ
何てことだろう
あの女が飛騨の旧家
巽家に嫁いだのは
うわさで聞いてたけど
それにしても　この差は何？
数日後　私は　ひっそりと
男の子を産んだわ
私なんかのところに
生まれたばかりに
お前は　もっと
いい家に生まれてたら　きっと…
いい家？
この子が巽家の子ならば…
私の耳元で悪魔がささやいた
えい児交換ってやつか
これは　私の　あの女に対する
復しゅうでもあったんです
あの女は何も知らずに
私の子どもを
育てることになるんですもの
この私の子どもを…
うそだ！
全部　でたらめに決まってる！
俺の幸せのために
俺と征丸を入れ替えただと？
だったら　何で　今頃
俺の前に現れたりしたんだ！
てめえが征丸なんぞ連れて
この家に来なけりゃ
俺は何の苦労もなく
この家を継ぐことができたんだ！
ええ　ええ…　分かってます　でも
でも　あなたは私の生きがいだった
大きくなった　あなたを
一目見たくて
とうとう我慢できずに
巽家の使用人になったのよ
それでも分からない
いくら実の息子に
莫大な財産を
継がせるためとはいえ
１８年も育ててきた征丸さんを
虫けらみたいに殺すなんて
いったい何が
あんたを獣に変えたんだ？
何も知らずに　あんたを母親と
慕っていた征丸さんを
無慈悲に殺させたものは　いったいそ　それは…
立場が逆転したようだね
龍之介兄さん
この家を出て行くのは
あんたらの方だよ！
あのとき龍之介を見下す
征丸の表情は
かつて私をさげすんだ
おぞましい　あの
綾子の顔そのものだった
あのとき　私は聞いたのよ
征丸を通して　あの女の声を
あんたの子どもは幸せになれない
運命には逆らえないんだ
ああ…　あの女が死んでも
今度は　その子どもが
邪魔をしようとしている
私の龍之介の幸せを…
征丸なんか
私の息子なんかじゃない
龍之介の幸せを奪おうとする
汚らわしい　あの女の子どもなんだ
母さん　こんなところで用って？
あんた！
クッ　か　母さん…
あんたが…
ヘッ　ったく気の毒なガキだぜ
お前みたいな無慈悲な女を
母親だと思ってよ
そう　それにしても
どうして猿彦が共犯に？
恐らく龍之介の本当の父親は
仙田猿彦なんじゃないのか？
ええっ？
ば　ばかな！
そうよ
あの男は　とんでもないクズだわ
なるほど
龍之介が俺の息子だったとはな
よーし
俺たちで　この巽家を乗っ取り
家族水入らずで
暮らそうじゃねえか
もうダメ　逃げられない
何を言ってやがる！
ねえ　あんた　一緒に死にましょう何？
そう言えば　あの男なら
必ず私だけ殺して
罪をなすりつけようとする
そう計算していたのよ
わ　分かった　俺もすぐ後を追うぜ
ギャアー！
で　でも紫乃さん
だったら　なぜ私を？
私には　あなたが　こんなことを
するなんて信じられない
剣持さん
私が　あなたを呼んだのも
あなたの好意を知った上で
利用しようとしたからなんです
ごめんなさい
あなたの知っている紫乃は
もう
あなたの思い出の中にしかないわ
こ　この女が俺の母親
俺のために征丸を…
長かったわ
なんて長い５日間だったのかしら
まるで１００年もたったみたいに
でも　これで　やっと終わり
あっ！よ　よせ！それを飲むな！
ハッ
あっ　ウッ　ウウ…
し　紫乃さん！
早く救急車を！
し　紫乃さん　水を　誰か水を！
龍之介！
お前　いったい何をしたんだ！
まさか　お前が毒を…
また毒を盛ったね　龍之介兄さん
隼人　お前！
兄さん　覚えてるかい？
６年前　５月の節句の会→
兄さんが台所で　僕が飲む祝い酒に何かを入れたのを
それが毒だと知ったのは
僕が倒れたあとだったけどね
何だって？
あのころ　兄さんは
日頃から
父さんに　かわいがられていた僕を
憎んでいた　でも
まさか　本当に殺そうとするとは
思わなかったよ
僕は　それ以来ずっと
毒で　おかしくなった
ふりをしていたんだよ
自分の命を守るためにね
な　何てやつだ
家督欲しさに自分の弟まで
殺そうとしていたのか
その上　今度は紫乃さんまで
ち　違うわ
え？
ち　違うのよ　剣持さん
ど　毒は私が自分を始末するため…
紫乃さん！まだ　こんなやつを
かばうのか？
こいつは　あんたを
りゅ　龍之介…
こ　こっちへ来て
私に　その顔を見せて
ごめんなさいね　龍之介
何もしてあげられなくて
わ　私は結局　この運命の
泥沼から抜け出せなかった
龍之介　あなたは　もっと幸せに…しあわ…
ああっ！
し　紫乃さん！
か　母さん　ああ　ああっー！
母さーん！
でも　やっぱり
まだ信じられないわ
あの紫乃さんが…
あれも　一つの
母の愛ってやつだったのかもな
憎まれて　ばとうされても
愛し続けて
毒を盛られても
かばおうとするなんてよ
剣持君
ウフフ　一緒に帰ろう　剣持君
恐ろしくも悲しい物語
オペラ座の怪人
今　孤島のオペラ座館でよみがえる
闇の中をさまよう影
正体不明の包帯男　歌月
「地獄の業火に焼かれよ」と
謎の言葉を残して消えてしまった
美雪　俺たち
とんでもないとこに来たんじゃ
そのとき
開幕のベルが洋館に鳴り響く
まさか　これが
惨劇の始まりを告げる知らせ？
金田一少年の事件簿
君に　この謎が解けるか？﻿私はオペラ座の怪人
ファントム
見よ　醜いこの顔を
最高だね　美雪
こんなとこで
１週間　合宿なんてさあ
演劇部に入ってて　よかったわ
うん　潮風が気持ちいいよね
ねえ　はじめちゃん
一緒に来てよかったでしょう
はじめちゃん？
気持ち悪い
イヤだ　船酔い？
情けなーい
七瀬君も　どうして
こんな落ちこぼれを
連れてきたんだい？
あ　いや
これでも　いざというときには
ウウッ
やー　もう　ヤダ　はじめちゃん
こらっ　こっちに来るな
どうしたの？
吐くなら海へ吐けよ
ダメよ　環境破壊にならない？
そうかな
そうよ
とにかく　船は汚すなよな
吐いたらくれよ
小道具にするから
あー　もうダメみたい　もう
あー　イヤイヤー
ほら
ちょっと静かにしてくれない？
台本に集中できないじゃない
言っておくけど
私は今回の合宿に賭けてるの
浮かれ気分で来た
誰かさんたちとは違うのよ
ごめんなさい
はあ　治った　治った
イエーイ！
こら　桐生
そう　気負うなよ
月島先生
だがな　桐生の言うことも
もっともだ
演劇コンクールは
いよいよ２週間後に迫った
この合宿で「オペラ座の怪人」を
完璧に仕上げるんだ
そして優勝を勝ち取るんだ
みんなで　夢を
かなえようじゃないか
月島先生
あ？
皆さん　着きましたよ
あれが歌島です
ん？
なーんか寂しいとこね
この島には誰も
人が住んでないんです
私がクルーザーで行き来する以外
連絡船もない
そんなとこに
ホテルなんかあんの？
ん？
ようこそ　我がオペラ座館へ
オペラ座館…
まるでオカルト映画に出てくる
洋館そのものじゃないか
はあ　こんな大層な
ホテルがあるとは
すごい　いかにもって感じ
ホント　雰囲気たっぷりね
はじめちゃーん
ほーお
こっち　すごいわよ
お？どれどれ
はあ　いい眺めだ
あ？
すごいでしょ
あっ…
おっかねえ
ここがラウンジか　お？
こいつは…
本物よ
あっ
ただの飾りじゃないのよ　それ
古いものだけど今でも使えるわ
あっ　ああ…
ああ　私？ここのシェフよ
緒方夏代
シェフ…　はあ　びっくりした
みんな　驚くのは早いぞ
こっちだ
ああ
劇場じゃないか
私の前のオーナーが
大の演劇好きだったとかで
わざわざ　劇場まで
作ってしまったんですよ
そのでっかいジャンデリアは
何なんですか？
この芝居のために
私が用意したものです
ねえ　知ってる？
この建物には　ホントに
オペラ座の怪人がいるのよ
闇の中から　じっと見てる
必ず恐ろしいことが起こるわ
誰？
キャー！
ちょっと待った　日高！
もっと恐怖を込めて
相手はオペラ座の怪人
ファントムなんだぞ
まったくセンスの
かけらもないのね
今のじゃ　痴漢に遭った
悲鳴じゃない
おっし　じゃあ
もう一回やってみろ
先生　いい加減
息が詰まっちゃいましたよ
ちょっと息抜き　いいですか？
ああ　すぐ戻れよ
二重のマスクとは…
よく出来てるわよね
わー
みんな　僕の作品だよ
仙道君
作品って…
ぞくぞくするだろう？この質感
まるで本物のように
見えるだろう？
仙道君は小道具係なの
すごい映画マニアなのよ
今度は　もっと
ディテールを細かくして
すんごいの作ってやるんだ
病気　入ってるよ　あいつ完璧に
なっ　そう思わない？
ん？
無愛想なヤツ
神矢君　人間嫌いみたいで
誰とも　口を利かないの
舞台や照明のこととか
いつも黙々と働いてるのよ
さっ　音響係君も
サボってばかりいられないわ
音響係君？
ええ？はじめちゃんのことに
決まってるじゃない
そのために来てもらったのに
えー　そうだったっけ？
そうよ　部員が一遍に
８人も辞めちゃって
人手不足で大変だって
言ったじゃない
うん　しかし　８人も辞めるなんて
何で　また？
それは…
ああ　例の事件のせいか
演劇部の子が自殺した
月島冬子っていったっけ
月島先生の妹だったよな
キラキラしててさ
学園のアイドルだったよなあ
何で自殺なんか…
その話はしないで
え？
みんな早く忘れたいと
思ってるのよ
忘れられないね
ん？
あんな最後を見せられちゃ
冬子は僕のすべてだった
お似合いのカップルって
ウワサだったのよ
あれは不幸な事故だった
キャー
冬子はファントムの恋人
クリスティーヌ役を
射止めた　その日
理科準備室で
硫酸を顔に被ってしまったんだ
その顔は　さながら
ファントムのように
醜く変わり果ててしまった
もうクリスティーヌを
演じることもできない冬子は
絶望したんだろう
見舞いに来た　みんなの目の前で
最後の舞台に立ったんだ
せ…　先生　あれ
冬子！
私はオペラ座の怪人　ファントム
見よ　醜いこの顔を
もだえ苦しみ
地獄の業火に焼かれ
それでも　私は天国に憧れる
冬子ー！
今でも　みんな　あの光景が
焼きついて離れないのさ
呪文のようにね
もう　いい加減にして
さっきから　トチってばっかり
主役の私の足を引っ張って
先生　日高さんを
この劇から外してよ
言い過ぎだぞ　早乙女
なら　私が辞めるわ
主役のクリスティーヌをね
フンッ
何があったんだ？
いつものことさ
先生　早乙女先輩が
クリスティーヌ役を
降りちゃったら
この劇は　どうなるんですか？
大丈夫よ　私がいるわ
ああ　ファントム
あなたは悪魔なの？
それとも神？
ああ？
あんな美人いたっけ？
桐生先輩よ
え？桐生って…
ああ　あの女！
舞台の上じゃ別人じゃないか
月島先生　セリフは覚えています
私がクリスティーヌを
演じてみせます
ムリだ　コンクールまで
あと２週間しかない
今から　役を変えていては
到底　間に合わんよ
そう　誰にも　この役は
こなせないのさ
クリスティーヌをやれるのは
ただ一人
月島冬子だけさ
それが　あんな死に方をして
この劇は呪われてるのさ
冬子の亡霊に
やめろ！妹を…
冬子をそんなふうに
この劇は必ず成功させる
冬子のためにも
もう　イヤ
どうせ才能ないの
私なんか
まさか
ああー！
オペラ座の怪人か
恐ろしくも悲しい恋物語よね
オペラ座の怪人
つまりファントムは
天から授かった
音楽の才能を持っていた
でも　その顔は
あまりにも醜く生まれついていた
ファントムは顔を隠すために
オペラ座の地下で暮らしていた
彼は美しいオペラ歌手
クリスティーヌを深く愛していた
でもクリスティーヌには
ラウルという恋人がいた
ファントムの愛は
受け入れられるはずもなく
もだえ苦しんだファントムは
残虐な殺人事件を起こしていく
来たわ　言われたとおりに
誰なの？あなた！
あっ
ねえ　許して
お願い
とりあえず飯だ　飯
おーおお
すてき
ああ…
あっ
何　つっ立ってるの
名前の所に座ってちょうだい
え？ああ…　はい
ええと…
あっ　これか
いいにおいだなあ
ああ　うまそうだ
さーて　皆さん
席にお着きになったところで
本日のディナーは
当オペラ座館のシェフによる
スペシャルメニューです
どうかじっくり　ご賞味ください
早く食べましょう
お腹　空いちゃったわ
あっ　待って
織絵ちゃんが　まだ
また　あの子なの？
私　呼んできます
ああー！
今の
織絵ちゃんの声だわ
日高！
織絵ちゃん　どこなの？
日高ー！
一体　何があったってんだ！
いたか？
どこにもいないわ　どうしよう
開幕ベルの音だわ
劇場だ！
真っ暗だ　美雪　ライト！
うん
あっ
何だ！
これは…
ああっ
何よ
ああ　何という…
日高…
あっ　ああ…
美雪！
ひ…　日高ー！
ああ…　何ということに
こ…　これは
重さに耐えられなくなって
ワイヤーが切れたのでしょうか
イヤ　違う　この切り口
明らかに鋭利な刃物で
切られた跡だ
つまり誰かが故意に
ワイヤーを切り
舞台の上の彼女に
シャンデリアを落としたんだ
そ…　それじゃあ
日高織絵は殺されたんだ！
しかし　日高の悲鳴が
聞こえたとき
俺たちは全員
食堂にいたじゃないか
そうよ　誰にも殺せないわ
そういえば
ん？
もう１人
お客様がいらっしゃるわ
私は会っていないけれど
あっ　確かに　昨日
チェックインされた
歌月様という方が
歌月？
確か　溜まっている仕事を
片付けたいから
部屋には誰も
近づけないでほしいと
食事も　すべて
部屋で済ますからと
何か変わったところは？
それが奇妙なことに…
顔に包帯？
ここです
あっ…
こ…　これは
もう逃げたあとか？
包帯にスーツケースだ
空っぽか
他に荷物らしき物はないのか
はじめちゃん
どうした？美雪
見て
地獄の業火に焼かれよ
私はオペラ座の怪人
ファントム
もだえ苦しみ
地獄の業火に焼かれ
それでも私は天国に憧れる
月島冬子だ
冬子が亡霊になって
よみがえったんだ
じょ…　冗談じゃねえ
殺人鬼がいるんだよ
このオペラ座館に
こんな島　１秒だっていられるか！
布施先輩！
ムチャよ　こんな　しけじゃ
クルーザーなんか　転覆しちゃう
構うか！
そ…　そんな
バカな…
クルーザーが流されてる
誰かがロープを切ったんだ
包帯男の仕業か
悪あがきは　やめたほうがいいぜ
金田一
もう　誰も　この島を
出ることは　できないんだ
この嵐が過ぎ去るまでは
突然　姿を消した歌月
お前は一体　何者なんだ？
そして　日高を殺した犯人
ヤツは誰なんだ？
この謎　必ず解いてみせる
じっちゃんの名にかけて！
激しい雨と風が
恐怖に包まれた俺たちを　あざ笑い
殺人劇の幕は次々と開いていく
犯人は歌月なのか？
そして　その正体は
月島冬子の亡霊？
早乙女先輩が語る
秘められていた事実
第２　第３の殺人の裏には
一体　演劇部で
何があったというんだ
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
演劇部の合宿中
部員の日高織絵が
無残な姿で発見された
犯人は姿を消した謎の男
歌月なのか？
月島冬子だ
嵐の夜　俺たちはオペラ座館に
閉じ込められてしまった
激しい暴風雨を伴った
台風１２号は
依然　勢力を持ったまま　北上し
最大瞬間風速２０メートルの風が
中部地方から沿岸にかけて
大きく吹き荒れるもようです
クソッ　この嵐じゃ　当分
島から出られないじゃないか
私たち　どうなるの？
知るかっ
あの歌月って男に聞けよ
ヤツが犯人に決まってるんだ！
顔を包帯で隠してたって
オーナーは言ってたわね
なんで　そんな格好を
してたのかしら
月島冬子だからさ
みんなだって　うすうす
そう思ってるんだろう？
ちょっと！
冬子の亡霊が現れたんだ
お…　おいっ
こんな映画の結末は
だいたい決まってる
僕らは１人ずつ
取り殺されていくんだ
やめろ！
冬子を化け物のように…
妹は　あれは誰より
純粋な子だったんだぞ
せ…　先生　別に　そんな
本気で言ってるわけじゃ
そうさ
幽霊に　人なんか殺せやしない
１つだけ確かなことは
日高織絵を殺した犯人が
まだ　この島にいるってことだ
今夜はカギを掛けて
誰も部屋に入れるな
これ以上　犠牲者を
出さないために
月島先生が怒るの　ムリないわ
心配で　恋人もできないって
笑ってたほど
妹思いだったんだもの
大体　演劇部の連中は
死んだ月島冬子に
こだわリすぎてねえか
それは…
そうかもしれない
あ？
でもね
彼女は私たちにとって
それほど特別な存在だったのよ
生まれついてのスター性とでも
いうのかしら
私のような凡人が
いくら　手を伸ばしても
届かないほど輝いていた
私ね　心から
冬子の亡霊に会いたいわ
会って言ってやるのよ
あなたの隣にいると
死ぬほど惨めだった
この悲しみが　あなたに　わかる？
ってね
おやすみ
夢…
これも夢なの？
はーい　はいはい
へい
はい　もしもし　何すか？
ああ　布施先輩
あ　はあ
何だって？
そんな…
桐生…　春美
美雪
何てこと…
なぜだ　なぜ自殺なんて
自殺じゃない
こんな高い所に
台も使わず　どうやって
桐生先輩は殺されたんです
ファントム　ファントムよ
美雪
見たの　ゆうべ
ファントムが窓に
夢じゃなかったんだわ
お…　おい
それじゃ　これも
歌月の仕業なのかよ
しかもストーリーに
なぞらえて殺している
そういえば…
何だって？
「オペラ座の怪人」の
ストーリーです
クリスティーヌに恋をした
ファントムは
彼女のライバルだった女優を
シャンデリアで
押しつぶしたんです
続いてファントムは
姿を見られた大道具係を
舞台の梁に　つるした
しかも　犯人は密室殺人で
それをやってのけた
密室殺人？
桐生は外で殺されてんだぞ
あれさ
え？
桐生先輩の部屋のドアには
内側からカギと
チェーンが掛かってる
先輩も犯人も
窓から出入りしたとしか
考えられないんだ
その証拠に
こ…　これは　足跡
よく見てくれ
足跡は１人分しかない
犯人のものじゃないのか？
ああ
靴に残ってた泥の具合といい
この足跡は桐生春美　本人のものだ
それじゃあ　桐生先輩は
自分から　この木に
もう　やめろ！
もう　やめろ
なぜ　うちの生徒を
ねえ　もしストーリーどおりなら
次の犠牲者は　どんな死に方を？
確か水路に引き込まれ…
まさか　この中の誰かが　もうじき
おーい　冗談じゃねえぞ
次は　お前さ
神矢　何で俺が
俺は恋人だったんだぞ
言いふらしてたでしょ
アイドルも落としてみれば
退屈な女だった
もう　飽きたと
だから何だ　そんなこと
殺される理由になるわけ…
ふざけるな！
あらあら
よせよ
それでね　先生が
歌月を捜し始めたの
何とか　引きずり出すって
はじめちゃん　聞いてる？
え？あ…　ああ
もう！聞いてないでしょ
歌月ねえ　それが　どうもなあ
一見　すべてが
ヤツの仕業のように見える
だが　ヤツはホントに
存在するのかな
どういうこと？
俺たちが見たのは
空のスーツケースと包帯だけ
誰１人　歌月を
見てないんだよな
たった１人を除いて
緒方君　すまないが
劇場の戸締りを
見てきてくれないか
用心に越したことはないんでね
ん？それは　お客様のでは？
また悪い病気か
どうして君は　いつもいつも
人の部屋を
あとで　ちゃんと返しときますわ
そういう問題では…　おい！
どこへ行く？
あーら
戸締りを見てくれって
言ってたじゃないですか
ん？
はい　金田一
どうした？美雪　何があった？
ああ？ったく
風呂の水漏れだ？
俺は水道局じゃねえっつうの
入るぞー　美雪
え？ちょ　ちょ…　ちょっと待って
ああ？お前が　す…　ぐ…　来い…
バカー！
うわー！
来るのが早すぎるのよ！
もういいわよ
お風呂に入ってたら
突然　水が
天井から漏れてきたの
ふーん
まあ　多分　２階で湯を
出しっぱなしにでも
してんだな
２階？
ああ
２階は空き部屋よ
え？
確か
お…　緒方君
第３の犠牲者　水死体
水死体じゃない
頭を割られてるんだ
変わりないさ
入浴中に殺されたんだ
服着たまま　風呂に入るかよ
それに　その手を見てみな
指の爪が…
つけ爪だよ
そんなもん付けたまま
風呂に入るわけがない
多分　別の場所で殺されたあと
この浴室に放り込まれたんだろう
おかしい
今までストーリーに見立てて
殺人を犯してきたのに
なぜだ？
なぜ　今回は　取って付けたような
偽装をしたんだ？
おそらく　これは
アクシデントだったんじゃ
何らかの理由で
殺さざるを得なくなったとか
イヤ　イヤ　イヤよー
やめて
先輩？
イヤ―
早乙女君
早乙女先輩
美雪！先生
ここは　よろしくお願いします
美雪
はじめちゃん
早乙女先輩
何か隠してることないですか？
月島冬子のことで
はじめちゃん！
話してください　本当のことを
でなければ　おそらく
次は　あなたが
狙われてしまうことになる
私のせいじゃなーい
私のせいじゃ…
あれは事故だったのよ
事故？
悔しかった
憎たらしかった
だから　ちょっと
脅かしてやるつもりだったのよ
ホントよ　それだけだったのよ
先輩　用事って何ですか？
あれ？先輩？
先輩！
キャー
しばらく美雪の部屋で
寝泊まりしてください
美雪　頼む
ええ
俺　何か冷たいものでも
持ってきてやるよ
ありがとう
月島冬子を自殺に追い込んだのは
早乙女　桐生　日高の３人
やはり　これが今回の殺人の
動機なんだろうか
だとしたら　犯人は
冬子に近かった人物…　か
例えば　恋人
冬子は僕のすべてだった
言いふらしてたでしょ
アイドルも落としてみれば
退屈な女だったって
えっと　何か飲みもんは…　っと
あ？
これは…
月島冬子の日記
何で　こんなもんがここに
「気がつくとＲの事ばかり
考えている」
「わたしが　わたしでなくなる位」
Ｒ？
「今日も一緒に海へ行った」
「ふたりだけの秘密の時間」
「こんなにも
人を好きになるなんて
私はＲを心の支えに生きている」
恋人の布施はＫＦだぞ
Ｒじゃない
神矢修一はＳＫ
仙道豊はＹＳ
月島亮二
Ｒ…　ＲＴ！
妹が心配で　恋人もできないって
笑ってたほどよ
あれは　誰より
純粋な子だったんだ
まさか
気分は　どうですか？先輩
心配ないですよ
はじめちゃんは　きっと
犯人を見つけてくれます
大丈夫ですよ
あんなふうに見えるけど
いざとなったら
すごく頼りになるんですから
ああー！
美雪！
美雪！はっ
貴様が歌月か
はじめちゃん
歌月！
はじめちゃん
逃がすかー！
うわー
痛たたた…
神矢
どうした？何があった？
今　こっちに歌月が
何？
はっ　おい　ライトだ
あれは…
追われてきた歌月は
反対側から私たちが来るのを
気づいて
窓から逃げようとしたんだろう
そして海に落ちた
この嵐だ
到底　助からないだろう
せ…　先生
ということは…
犯人は死んだ
オペラ座の怪人のラストと同様に
どうしたんです？
皆さん　おそろいで何を？
助かったんですよ　俺たち
あ？
歌月のヤツ
海へ落っこっちまったんです
ええ？
もう　これで終わったのね！
そうさ！
違う　ヤツは　まだ生きてる
あの目は
そう簡単に死ぬようなヤツの
目じゃない
あ？
やはり　トリックだ
だとしたら　犯人は
あいつが歌月の
ファントムの正体？
なぜ？なぜなんだ！
みんな　全員そろってるな
謎は　すべて解けたよ
連続殺人の犯人
歌月の正体を今
ここで明かしてやる！
俺が仕掛けたトリックによってね
犯人は自分から名乗り出る！
この殺人劇の決着は
必ず俺がつける！
動くな！
みんな　じっとしてるんだ！
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿孤島のオペラ座館を舞台に
月島冬子の亡霊が
ファントムとなって
次々と　俺たち演劇部員を襲う
嵐の海に身を投げて死んだ歌月
本当に　この事件は終わったのか？
まさか　あいつが歌月
ファントムだというのか？
んー
どうしたの？はじめちゃん
どうも引っかかるんだよ
この舞台
でも　犯人の歌月は死んじゃって
事件は　もう解決したんでしょ？
美雪　この殺人劇の幕は
まだ下りちゃいないんだよ
ええ？それじゃあ…
犯人は　まだ生きてる
今も感じる
この妙な違和感は　一体？
ん？美雪
どん帳を下ろしてくれないか？
はっ　そうだったのか
何かあったの？
美雪　見てみろよ
シャンデリアの破片が
ぴったり　どん帳の所で
止まってる
どういうこと？
日高織絵が殺されたとき
どん帳は下りてたってことさ
え？でも　私たちが来たとき
どん帳は…
ああ　なぜだ
なぜ　ヤツは
わざわざ　どん帳を？
ああー！
はっ
日高織絵の悲鳴
そして　開幕ベルの音で
俺たちは　ここに来た
ベル　ベル…
あ？
はじめちゃん　何してるの？
あ　うん　証拠さ
手掛かりでも何でもいい
音は全部　ここで
操作するんだろう？
ここに　何かあるはずだ
あっ
あったぜ　美雪
え？
緒方夏代のつけ爪だ
美雪　ちょっと実験に
付き合ってくれないか？
いいけど
しかし　あの３人の
復讐が目的なら
なぜ　早乙女を残したまま
歌月を殺したのか？
なぜだ？
おはようございます
金田一さん
あっ
聞きました？やっと　本土と
連絡がつきましてね
船が来ることになりましたよ
ええ？ホントですか？
朝食後　１０時頃になりますか
１０時
ということは
ヤツのタイムリミットも１０時
ん？黒沢さん
うん？
ボーガンは？
ボーガン？
ありましたよね　暖炉の上に
ああ　ホントだ
妙なこともあるもんですね
はっ　そうか
わかったぞ
謎は　すべて解けた
おい　何だよ　金田一
こんな早くから集合かけてさ
大事な話って　一体　何だ？
あ？あ…　ああ　月島先生
あれ　俺の席は？
ああ　いいから　いいから
みんな　バラバラに
座ってもらってんだ
まっ　空いてる所に座ってよ
黒沢さんにも座ってもらってんだ
ああ
さてと
これで全員そろったな
これから始まるのは
劇のフィナーレだ
この殺人劇の全貌と
犯人　歌月の正体を明らかにする
ああ？歌月は死んで
片は付いたんだろうが
何　朝っぱらから
寝ぼけたこと言ってるんだよ
歌月は死んでなんかいないさ
イヤ　そもそも　歌月なんて
どこにも存在しなかったんだ
ええ？
ど…　どういうことだ？
すべては　トリックだったんだよ
トリック？
まず　犯人は俺たちが
ここに来る前日
歌月と名乗って
オペラ座館にチェックインした
そして　部屋に
絶対　入ってこないようにって
こっそり　島を抜け出した
スーツケースに入れていた
モーター付きゴムボートでね
ゴムボート？
あのでかいスーツケースの中身は
ゴムボートだったというのか
あんなに大きな
スーツケースなのに
他の旅行用具が
全くなかったのも変だろ
そして歌月は翌日　何食わぬ顔で
この島を訪れたんだよ
俺たちと一緒に
ええ？
バ…　バカな！
ありえないぞ
日高が殺されたとき
俺たちは　みんな
この食堂にいたじゃないか
全員　アリバイがあるんだぞ
あのとき
確かに　俺たちは
彼女の悲鳴を聞いた
しかし　あの悲鳴は　あらかじめ
録音されたものだったのさ
あの日　ヤツは稽古中の
日高の悲鳴を録音してたんだ
そして　みんなが
食堂にいる時間を狙い
日高を舞台に　おびき出した
そして　タイマーで
ああー！
つまり　俺たちが悲鳴を聞いたとき日高織絵は　まだ生きていたんだ
ちょ…　ちょっと待って
だったら
その悲鳴は舞台にいた日高にも
確実に聞こえていたはずだぞ
どん帳ですよ
どん帳が下りてると
舞台の上にはスピーカーの音は
一切　聞こえないんだ
あの実験って
おーい　美雪　聞こえるか？
もしもーし　美雪ちゅわーん
聞こえま…
そう　あのとき
どん帳の中には
何も聞こえなかった
じゃあ　日高が殺されたときも…
そう
どん帳は下りていた
みんなと食堂を飛び出した犯人は
日高を捜すフリをして
急いで劇場に向かった
そして　日高の本当の悲鳴や
物音を消すために
開幕ベルを流したんだ
そして　シャンデリアを落とし
彼女を殺した
あとは　どん帳を上げ
今　来たかのように
みんなに紛れて現れたんだよ
ところが　そのとき使ったテープが
新たなる犯行を呼んでしまった
犯人は日高の悲鳴を録音した
テープを回収するために
音響室に忍び込んだ
それを偶然　緒方夏代に
見つけられてしまったんだよ
これを音響室で見つけた
じゃあ　桐生のときは？
あの密室殺人は　どうなるんだ？
あれは窓に残っていた
ワイヤーの傷から想像がついた
桐生春美の部屋の窓には
ワイヤーが巡らされてたのさ
あの夜　犯人は桐生春美に電話し
窓の下を見るよう　差し向けた
そして　彼女が顔を出すのを
見計らって
そのあと　犯人は
ワイヤーを伝って　下の階へ下り
桐生の靴を履いて彼女を担ぎ
木の下まで行った
そして　死体をつるしたのさ
こうして　犯人は実に巧妙に
異常な殺人鬼　歌月が
あたかも存在するように
演出していったんだ
でも歌月は海に落ちて
死んだんじゃ？
それもヤツのトリックさ
最後の殺人を完成させるためのね
最後の殺人？
ヤツのシナリオでは
死んだ歌月のワナにより
今　ここで最後の殺人が
行われることんなってる
ワナだと？
また　誰かが死ぬってことなのか？
どういうことなんだ！
動くな！時間が来れば
犯人は自分から名乗り出る
それまで　じっとしてるんだ
動くなよ
はじめちゃん
とうとう名乗り出たな
お前は自分で
証明してしまったんだよ
どうした　ボーガンの矢なんて
飛んでこないぜ
お前は自分で
証明してしまったんだよ
自分が　この連続殺人の犯人だとな
そうだろ？神矢！
お前は　朝食の７時きっかりに
ボーガンの矢が
放たれるように細工した
このホテルじゃ
座る席も決められてる
時限装置を使って
早乙女先輩を殺すには
おあつらえ向きの舞台だったんだ
だから　俺もワナを仕掛けた
お前以外のメンバーを早めに集め
わざと早乙女先輩の席に
座らせたのさ
で…　でも　なぜ　神矢が犯人だと？
あのとき　俺たちは
犯人を挟みうちにしていた
ところが　角を曲がった瞬間
犯人は消え去って
足跡だけが窓に続いていた
あたかも　海に落ちたかのようにな
だが　お前は　ここで
重大なミスを犯してたんだ
窓の手すりだよ
廊下の足跡は泥だらけだったのに
窓の手すりは
少しも泥がついていなかった
あの高さからして
手すりに足を掛けずに
外に出るのは難しい
つまり　犯人は
そのまま　廊下に残ってたんだ
そして　素早く
ファントムの扮装を解き
窓から投げ捨てた
そして　あたかも
逆方向から来たかのように
飛び出してきたんだよ
つまり犯人は俺が角を曲がって
最初に出会った人物
神矢　お前以外にはいないんだよ
何ということだ
神矢が？
神矢君
よせ　神矢
これ以上　罪を重ねるな
黙れ　黙れ！あの２人
そして　この早乙女は
死んで償うべきなんだ
冬子を…　彼女を
死に追いやった罪をな
何だと？
冬子の恋人だっただと？
デタラメなウワサ流しやがって
俺の気持ちを
わかってくれてたのは
冬子だけだったんだよ
俺たちは愛し合ってたんだ
他の誰も　手の届かない
世界にいたんだ
あの頃の俺は　すさみきってた
でも昔　相手に
重傷を負わせたときから
もう決して　手は出さないと
そう誓ってたんだ
だけど　周りは　そんな俺が
余計　気になるのか
そっとしといては　くれなかった
そんな日が何ヵ月も続いたよ
いつも　なされるがままさ
だけど　もう限界だった
いつも１人で自分と戦ってたのね
不思議　私　気がつくと
いつも　神矢君のこと考えてる
あなたのこと
何にも知らないのにね
月島
でも　神矢君は私のことなんか
迷惑？
そ…　そんな　俺なんか
もう１人で悩むのは　やめよう
これからは一緒だよ
クリスティーヌ
君を見つめる度に
僕の胸は苦しくなる
ああ　ラウル　ラウル
私を呼んでくれるの？
クリスティーヌと
もう独りぼっちじゃないよ
なのに　あの日
ねえねえ　月島さん
私たちが　あんな顔に
しちゃったこと
誰にも言う気ないみたい
やったね
ラッキーじゃない
あの子　あくまで
いい子ぶる気なのよ
おかげで　こっちは
助かっちゃったけど
クリスティーヌ役まで
私に転がり込んできたんですもの
あいつら
彼女が自殺したのは
翌日のことだ
「もがき苦しみ
地獄の業火に焼かれ」
冬子の最後の言葉を聞いて
俺は決心したんだ
復讐をな！
待て！神矢　違うんだ
月島冬子は復讐なんか
望んでや　しなかったんだよ
何だと？
彼女は　こう言ったんだ
「地獄の業火に焼かれながら
それでも　天国に憧れる」って
月島さんは３人を憎むまいと
したんじゃないのか？
心まで醜く焼かれる前に
天国に行きたかったんだよ
天使のような心のまま
もだえ苦しみ
地獄の業火に焼かれ
それでも　私は天国に憧れる
もう遅いんだ
いたか？
いえ　どこにも
神矢！
バカなマネは　やめろ！
下りてくるんだー！
神矢君
地獄の業火に焼かれ
それでも　それでも…
神矢ー！
早く手当てを
いいんだ
このまま　冬子の所へ行かせてくれ
でも　俺は天国に行けやしないな
関係のない緒方さんまで
巻き込んでしまって
復讐の炎に身を焼いてた
俺こそ　醜い素顔を隠す
ファントムそのものだったんだな
確かに…　確かに
ファントムのしたことは
決して許されることじゃなかった
でも　神矢
ファントムの
クリスティーヌに対する思いは
純粋な愛そのものだったんだろ？
そうだろ？神矢
金田一
ありがとう
何で…　何でだよ
こんな終わり方しか
なかったのかよ
神矢！
神矢ー！
ねえ　はじめちゃん　私
１つだけ　わからないことが
あるんだけど
ん？
月島さんの日記にあったＲ
あれは　どういう
意味だったのかしら？
あれは　多分
クリスティーヌの恋人
ラウルの
頭文字だったんじゃないかな
あっ
彼女と神矢が最初に交わした言葉
それが２人の暗号だったんだよ
ラウルとクリスティーヌ
実はな　昨日
神矢が１人暮らししてた
アパートに行ってきたんだ
あいつ　冬子が死んでからは
復讐以外　何も頭になかったらしい
新聞や手紙が
ポストに溜まってたよ
その中に　これが
妹が神矢に宛てた遺書だ
遺書？
神矢は気づかなかったんだ
封も開けてなかった
あいつは永遠に
これを読むことなく
死んでしまったんだよ
「神矢君　この手紙を
あなたが読む頃
わたしは　もう
生きてはいないでしょう」
「昨日　あの三人の話を聞いてから
わたしの心は　この顔と同じくらい醜くなりつつあります」
「心まで変わり果てる前に
命を絶つつもりです」
「不思議ね　今は悲しいことも
後悔もないの」
「手を伸ばせば　天国に
触れられるような気がするから」
「そこは　きっと優しい場所」
「あなたと過ごした時間のように」
「お願い　神矢君も
あの三人を恨まないで」
「いつか　また二人
あの日のように寄り添って
天国で暮らせるように」
もし　神矢が　これを読んでいれば
あんな事件を起こすことも
なかったろうな
あっ　美雪　遅れちゃうよ
さりなちゃん
早くしろよー！
はーい
月島先生も始まりますよ
はい　今　行きます
先生　この手紙もらえないかな？
え？
はじめちゃん　授業　始まるわよ
どこ行くの？
墓参りだよ
この手紙　神矢に
届けてやろうと思ってな
あ…　あっ
美雪　お前も来るか？
んもう
うん
その日　私は生まれて初めて
学校をサボりました
神様に召された２人の思い出を
はじめちゃんと　たどりながら
いつきさんに頼まれて
軽井沢にいます
有名作家　橘　五柳の
暗号解読の助っ人ってことで
何？殺人事件？
犯人は俺？そんなバカな！
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
ベストセラー作家
橘　五柳の別荘で
優雅なバカンス
橘さん！
先生？人殺しー！
違う　俺は　やってない
俺じゃない
いたぞ
こっちだ
追え　追えー！
金田一君　もう逃げられませんよ
殺人容疑で逮捕する
違う　俺じゃない
俺は　やってなーい！
俺は　やってなーい！
ほう　それじゃ
誰が　やってくれるんだ？
え？
バカもん　ったく
この問１の６だ
補習中　居眠りしてるんじゃない
早く　そのポケベルを止めんか
え？ポケベル？
俺　ポケベルなんて
あれ　いつの間に
「１７ジ　ドリーズデ」
あっ　はじめちゃーん
こっち　こっち
あっ　美雪
何だ　お前かよ
俺のポケットにポケベル入れたの
だって　はじめちゃん
すぐ　どっか行っちゃうでしょ
それがあれば　いつでも
すぐに呼び出せるし
ちぇっ　俺は飼い犬かっつうの
ねえ　何の用？
それがね
よう　青少年
赤点補習は　どうだった？
ああっ…
いつきさん
お前に　どうしても
会いたいってヤツを
連れてきたのさ
音羽出版の鴨下といいます
ああ
実は
ある暗号を
解読していただきたいんです
暗号？
橘　五柳って知ってるよな？
ああ　日本ノンフィクション界の
超大物だろ？
そう　出す本すべて
ベストセラーになるって
あの人だよ
橘先生の新作の出版権を巡って
多数の出版社が争ったため
出版が延び延びになってまして
で　橘先生がゲームをしようって
言い出してさ
橘先生の軽井沢の別荘で行われる
誕生パーティーで発表する暗号を
真っ先に解読した者に
新作の出版権を渡すと
ぶち上げたわけだ
我が音羽出版としては
何としても
新作の出版権がほしいんです
ふーん
もちろん謝礼のほうは
弾ませていただきますから
そうは言ってもね
まっ　ムリにとは言わねえよ
何しろ　橘先生　曰く
かの金田一耕介でも
解けない暗号だそうだし
何？じっちゃんには解けない
暗号だって？
ああ
で　いつやるの？それ
なーんで　お前が
ついてくるんだよ
なーに言ってんのよ
来週の追試で点取れなかったら
落第なんでしょ？
週末は私が　みっちり
勉強を教えてあげるからね
覚悟しなさい
せっかくの休みに勉強？
そうよ
それに４日後は私の…
わー　あれです
あれが橘先生の別荘ですよ
ひええ　でっけえ
くどいぞ！
わあ　でも先生
この橘を金で釣って
動かせると思ってるのか！
おーっと　都築さん
極東テレビの
都築さんじゃないすか
ああ　いつき君
ん？よう　いつき君
君も　わしのパーティーに
来てくれたのか？
先生　ご無沙汰してます
そちらの坊やは？
暗号解読の助っ人
あの金田一耕介の孫
金田一　一君です
ふーん
まあ　せいぜい頑張りたまえ
おじいさんの名を
汚さぬようにな
ちぇっ　感じ悪いおっさん
皆さん　もうすぐ
パーティーが始まりますよ
こちらへ　どうぞ
おー　いるいる
出版権狙いのハイエナどもが
うじゃうじゃ
みんな一見　仲良さそうに
振る舞ってるけど
心ん中では　いかに
相手を出し抜くか
手の内　探り合ってんのさ
すてき！こんな所で
誕生パーティーなんて
ねえ　はじめちゃん
忘れてないわよね　私の誕生…
おーい　見てみろよ
うまそうなもんが　いっぱい
さあ　食うぞー
わあ　うまそー
ああ？
殺人容疑で逮捕する
先輩！
あ？
佐木？お前　佐木か？
佐木君　どうして　ここに？
父の会社が知り合いの
出版社との縁で
このパーティーの撮影の
注文を受けまして
ほら　僕は助手ってわけっすよ
脅かしやがって
やな夢　思い出したぜ
お待たせいたしました
これより　橘　五柳先生の
５０回目の誕生日を祝う会を
開かせていただきます
えー　わたくし　本日の
司会を務めさせていただきます
桂　横平と申します
あれ？なあ　今日の司会ってさ
確か　笑福亭　春楽だって
聞いてたけど？
ああ　何でも橘先生が
突然　春楽をキャンセルして
桂　横平さんを
希望したらしいですよ
なんや　春楽はんより
売れてない分
ギャラが安いってわけでっか？
センセも意外に…
ええ　本日は私のために
こんなに集まってもらって
うれしいかぎりです
それでは早速
皆さん　お待ちかねの
推理ごっこを
始めるとしましょう
完成した原稿は　これと同じ
フロッピーディスクに収めて
ある場所に隠してあります
これから発表する暗号を
最初に解いた人が
私の原稿を手に入れられる
というわけです
それと　今日の新作には
１つ仕掛けがあります
ある社会悪を暴いた
ノンフィクションなんですが
その中には　このパーティーに
参加している人間が
１人　実名で登場します
つまり　今度の新作が公になれば
この中の誰かが困るってわけか
それでは暗号を発表します
「裏川辺　奇々なる藻を」
だって？
何のことや？
さっぱり　わかりませんね
おい　金田一
そういや
この裏に小さな川があったんじゃ
それだ！
はじめちゃん　行かないの？
行ったって　なーんにも
出てきやしないぜ
だって「裏川辺」って
じっちゃんにも解けねえ
暗号だっていうから
ちっとは期待してたのに
あんなもん
暗号の内に入んないよ
はじめちゃん　解けたの？
ったりまえだろ
ある変換方法を使えば
こんな暗号　一発さ
変換方法？
いいか
その方法で変換するとさ
「アキ」は「イカ」になるんだけど
意味は変わんないんだぜ
でも　アキとイカじゃ
意味は違うじゃない
おう　金田一
あ　いつきさん　おはよう
ああ　どうしたんすか？その格好
決まってんだろ
昨日は暗かったから
もう１度　裏の川を
徹底的に探すんだよ
裏の川なんて探しても
ムダだと思うけど
なにい？
いつきさん
実は　はじめちゃん
もう暗号　解いちゃったんです
なーにい　だったら
とっとと教えろよ
そうは　いくかよ
せっかく　豪華な別荘へ来たのに
教えちゃったら　そこで
バカンス終わりじゃねえかよ
こっのー
ねえ　先生　あの暗号
裏の川とか何とか
ぜんぜん　関係ないんでしょ
さすが　敏腕編集者の野中君だな
もう　暗号は解けたのかね？
やだ　先生　わかってたら
先生に　ヒントを
おねだりなんかしませんわ
ねっ　センセ
やー　朝っぱらから
んじゃ　１つだけ
ヒントをあげよう
もし　誰かが訪ねてきたら
こう言うんだな
「私で終わりよ」ってね
何それ？
そこから先は
えー　教えてあげない
ちょっと　「私で終わりよ」って
どういうこと？
そう簡単にペラペラ
しゃべられて　たまるかよ
んじゃ　俺は
もう一杯　コーヒーでも
私がお持ちしましょうか
かわいい
ちょっと葵
何　こんな所で油売ってんのよ
あ？
でも　姉さん　この方が…
そんなの　私たちの
仕事じゃないでしょ
セルフサービスなんだから
相変わらずだな　棗ちゃん
あ　いつきさん
紹介するよ
泣きぼくろの子が葵ちゃん
後ろで怒鳴ってたのが棗ちゃん
双子で　姿かたちは
ソックリなんだが
性格は全然　違うんだ
どうせ私は葵みたいに
おしとやかじゃないわよ
さっ　行くわよ
仕事　仕事
よっしゃ　俺も仕事だ
川になければ屋敷を探す
ったく　もったいねえ
体力の無駄遣いだぜ
いやー　今日も豪勢な夕食で
結構　結構
おーい　金田一
あ？
もう降参するから
あの暗号の答えを教えてくれよ
ああ　あの暗号ね
ローマ字に置き換えてみれば
簡単に…
キャー
ああ？
やめてください
大声出すな
わしは大作家　橘　五柳じゃ！
ちょっと　やめなよ　大人げない
はじめちゃん
なーんだ　お前は
わしは橘　五柳だぞ
わかってんのか
こっちへ来い
ちょっと　おっさん
危なっ…
んん…　このっ
こんな侮辱は初めてだ
鴨下！このガキは
お前が　つれてきたんだったな
音羽出版とは　今後　一切
取り引きをせん！
出版権も　すべて
引き揚げさせてもらうから
そのつもりでいろ
このバカもんが！
そ…　そんなっ
痛え…
大丈夫？はじめちゃん
金田一さん
先生に謝ってください
やだよ　悪いのは　あっちだぜ
お願いします
このことがバレたら僕はクビだ
金田一　すまんな
ここは謝るしかなさそうですね
ごめんね　はじめちゃん
私のせいで
わかったよ
何か納得いかないけど
葵さん　先生どこだっけ？
この時間ですと
離れの書斎だと思います
あ　雨上がったみたいだな
ああ　ひっでえ　ぬかるみ
遅いわね　はじめちゃん
まさか　また先生を
怒らせてるんじゃ
ええっ？
私　様子を見てきます
どうせ　夜食を
持ってかなくちゃいけないし
棗さん　僕も
面白い絵が撮れそうですし
やっぱり先輩は
まだ書斎の中ですね
先生　お夜食　お持ちしました
先生？
先輩　何やって…
ああっ…
あっ
キャー
人殺しー！
先輩…
違う　俺は　やってない
近寄らないで
その手に持ってるのは
え？
何なのよ！
ああ
どうした？
橘先生
ダメだ　死んでる
金田一さん
まさか
橘先生を
あなたがやったの？
違う　俺の話を聞いてくれ！
聞いてくれー！
それじゃあ　お前が
部屋に入ったとき
すでに　ガイシャの橘　五柳は
殺されとったと
そう言うんだな？
あ　はい
いくら呼んでも返事がなくて
ドアにカギが
掛かってなかったから
橘さん！
橘さん　どうしたんです？
それから　棗さんが
ドアをノックするまで
俺は気を失っていたんです
それじゃあ　お前が
書斎に入ったとき
部屋には橘氏を殺した
誰かがいたってことか？
ウソよ　私　見たわ
棗姉さん
この人が凶器を持ってたの
それに私が部屋に入ったとき
この人と先生以外
誰もいなかったわ
棗さんたちが来たのは
俺が書斎に行った２０分も後だ
犯人には逃げる時間が
あったはずだ
ほーお　で
どこから逃げたんだね
ドアからに決まってるでしょう
俺を気絶させたあと
犯人は　あのドアから…
デタラメ言うんじゃない！
犯人は　お前だよ
まだシラを切るなら
証拠を見せてやる
証拠だって？
たまたま　このビデオには
佐木君が棗さんと一緒に
応接間を出て
あの殺人現場へ行くまでの様子が
収められていた
お前が橘氏の部屋に行く
数分前までは
外は激しい雨だった
だが　お前が書斎に行った
９時４５分には
雨は　すでに上がっていて
地面は　ぬかるんでいた
仮に　お前より先に
別の犯人が書斎にいて
お前を気絶させたあと
部屋から逃げ出したんなら
犯人はドアの外の　ぬかるんだ道を
歩いて逃げたことになる
ああ
棗さんたちが書斎に行ったあと
犯人の帰りの足跡が
残ってなきゃならないわけだ
足跡が　ひと組しかない
書斎には出入り口は１つしかない
窓は　すべて飾り用の
はめ殺し窓で　開閉は　できない
換気用の窓から
出入りすることも不可能だ
つまり書斎から逃げ出すためには
あのドアしかないんだよ
ところが　ドアの外の　ぬかるみには
お前の靴跡しか残ってない
これをどう説明するつもりだ？
もう１つ　お前のウソを
裏付ける証言がある
菊さーん　話してくれ
菊さーん！
おばあちゃん
うん？
橘氏から電話を受けた話ですよ
電話の話よ　で・ん・わ
ああ　はいはい
あんときは　先生からの
内線電話で起こされましてね
はあ？
エアコンが壊れてるんだよ
はあ　エアコンが
換気するんでございますね
はいはい
１０時ちょうどでございました
そんなバカな！
お前が書斎に行った９時４５分に
すでに死んでいた人間が
どうして　１０時に電話できるんだ
まだシラを切るなら
俺が代わりに話してやるよ
お前は９時４５分に
橘氏の書斎に謝りに行った
だが　いくら謝っても
取り合ってもらえなかった
風通しをよくしといてくれ
何だ　まだいたのか
何度　謝られても
許す気はない　出て行け
でも…
出て行けと言ってるんだ！
くそっ　この　くそおやじ！
そこへ棗さんと佐木君が現れ
焦ったお前は架空の犯人を
でっち上げたというわけさ
違う　でっち上げなんかじゃない
何と言おうとすべての状況が
お前が犯人だと示してるんだよ
そんな！はじめちゃんは
人殺しなんてしません
もう１度　調べてください
もちろん調べるとも
署で　ゆっくりとな
金田一　一
お前を橘　五柳　殺害容疑で
逮捕する
スクープだ　橘　五柳が殺された！
容疑者は１７歳　高校生
急いで原稿　書かなくちゃ
やけに騒がしいな
新聞社の連中ですよ
軽井沢で　橘　五柳が
殺されたんだそうですよ
犯人は　まだ１７歳の
高校生ですって
世も末だな
確か金田一　一とか
何？
はじめちゃん
大丈夫　すぐ戻れるよ
心配すんな
そんなバカな話があるか！
金田一は今まで
いくつもの事件解決に
協力してきた功労者だぞ
話ぐらい聞いたって　おいっ
もしもし　もしもし
切りやがった
ったく
本庁の警部だか何だかしらんが
バカな話さ
犯人は　お前以外
考えられないんだからな
剣持のおっさんか
本庁の名前を出せば
言うことを聞くと思ってやがる
ああっ　止めてくれ
なにい？
ああ　ちょっとトイレ
ったく　少し我慢すりゃ
署に着くっていうのに
こんなことで
時間　食わせやがって
おーい　まだか！
おいっ
手錠のカギ　いつの間に
誰か来てくれ
金田一が逃げた！
あっ　これは
はじめちゃんにあげたポケベル
いつの間に？
はじめちゃん
石頭の長島刑事じゃ
この事件は解決できない
このままじゃ　俺は殺人犯だ
俺がやるしかない
自分の　ぬれぎぬは
この俺が自分で晴らしてやる
真犯人を見つけるまで　絶対
捕まるわけには　いかないんだ
例え　明智さん
あんたが出てきても
事件の動機が　橘の新作に
関係ありと考えた俺は
まず　あの暗号が示す人物に
会いに行った
そこで見たものは…
は…　早く
このことを知らせないと
俺の　ぬれぎぬは俺が晴らす
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿いつきさんの頼みで
大ベストセラー作家
橘 五柳の誕生パーティーに
出席した俺は 何者かの企みで
橘殺害の犯人に仕立て上げられ
警察に捕まってしまった
この事件は
俺が解決するしかない
自分の容疑は
自分で晴らすしかないんだ！
いたか？
だめです　見当たりません
バカ野郎！
奴が遠くへ行かないうちに
何が何でも今夜中に
見つけ出すんだ
くっそー
先輩 何で逃げたりなんか
これじゃ ますます
容疑が深まっちまうよ
ハジメちゃんは 自分で
犯人を捕まえる気なんです
皆さん お願いします
ハジメちゃんを助けてください
殺人犯の手助けをしろって
言うんですか
ハジメちゃんは
人殺しなんて絶対しません
俺も金田一という男を
よく知ってるつもりだ
奴は殺人なんぞ する男じゃねえ
しかし 警察に任せたほうが…
その警察が当てにならねえから
こうして頼んでんじゃねえか！
頼む この通りだ
いつきさん
奴の力になってくれ
ったく わかったよ
古い付き合いのあんたが
そこまで言うんじゃしょうがねえ
本当 いつきさんに
そこまでやられたんじゃ
協力しないわけには
いきませんね
そのようだな
みんな…
良かったですね 先輩
ありがとうございます 皆さん
でも いつきさん 何をすれば？
情報だ　この事件に少しでも
関係ある情報をかき集めるんだ
それで 金田一を
無実の罪から救おうじゃねえか
ハジメちゃんからだわ
ハジメちゃん！
美雪か
無事だったのね
ああ 平気さ
俺のほうこそ
心配かけて すまない
ハジメちゃん
待っててくれ
真犯人は俺が必ず見つけ出す
うん 待ってる
待ってるから
ハジメちゃんも気をつけて
ありがとうございました
いつきさん そこにいるかい？
俺だ いつきだ
金田一 これから どうする気だ？
それだけど 今そっちに
大村さんいる？
大村さん？あの人なら事情聴取が
終わって東京に帰ったぞ
えっ 住所と電話番号？
どうして？
例の橘の暗号さ
そこにメモ用紙あるかい？
｢アキはイカで
意味は変わらない｣
｢アキ｣と｢イミ｣という字を
ローマ字にして 逆さから読むんだ
｢アキ｣は逆さから読むと
｢イカ｣になるけど
｢イミ｣は
｢イミ｣のまま 変わらない
そのやり方で あの暗号を解くと
大村さんの名前に たどり着くんだ
けど どういうことだ？原稿は
大村が持っているって言うのか
それは まだわからない
でも 大村さんに聞けば
手がかりが つかめるはずなんだ
今回の新作には
１つ 仕掛けがあります
ある社会悪を暴いた
ノンフィクションなんですが
その中には このパーティーに
参加している人間が１人
実名で登場します
あの時 橘が言ってた
実名の人物が
原稿を手に入れようとして
橘に詰め寄り
争いになって
奴を殺したんだとしたら
真犯人は 何としてでも
原稿を探し出すはずだ
よし わかった
大村の住所と電話番号だな
まいど ありがとうございました
食った 食ったー
電話のほうは？
東京までは お前の運転だぞ
へいへい わかってますよ
いつきさん また連絡する
いや それにしても えらい事件に
巻き込まれてしもたわ
ああ？
はい 大村ですけど
警視庁の剣持という者だが
刑事はん？
橘 五柳さんの事件について
ちょっと お尋ねしたいことが
ありましてね
わてに？何です？
実は橘さんの暗号を
解読したところ
あなたが橘 五柳の原稿の所在を
知ってるかもしれない
ということになりましてな
はあ？わてが先生の原稿を？
いいですか あの暗号
｢裏川辺 奇々なる藻を｣という
言葉をローマ字にするんです
ローマ字でっか
ちょっと待ってな
そしたら それを
逆から読んでみてください
逆から？ああ
｢大村に聞けば わかる｣
ほんまや
わての名前が出てきよった
どうです？
何か思い出しませんか
わてに聞けば わかる…
そういえば パーティーの前日
先生が わてを呼んで
こう言わはったんです
誰かに妙なこと聞かれたら
｢時任に聞けば わかる｣と言えて
時任に聞けば わかる？
何すんねや！
大村さん？大村さん！
あー！
大村さん どうしたんですか？
何かあったんですか？
大村さん！大村さん！
くそ どうなってんだ
大村さん！
次のニュースです
今日３時頃 北区で
殺人事件がありました
被害者は 出版社社長
大村 紺さん40歳で
現場に残された指紋などから
犯人は 作家の橘 五柳さん
殺害容疑で手配中の
17歳の少年と見られます
ハジメちゃん…
現在 警察では
非常線を張るなどして
少年の行方を追っています
はめられた　真犯人め
大村殺しの罪まで
まんまと着せやがって
でも これで 真犯人も まだ
橘の原稿を探してるってことが
わかった
となると 大村が言った
時任に聞けっていう言葉を
犯人も聞いていたとしたら…
まずい！次は時任さんが！
はい いつきです
金田一か お前 今どこにいる？
大丈夫なのか？
大村の事件のニュース聞いたぞ
ああ 真犯人は どうやら
俺の行動が見えてるらしい
俺が大村さんの所に現れたのを
見届けて110番したんだろう
こうしている間にも 俺を
監視しているかもしれないんだ
こっちは犯人の見当もつかない
見えない敵に
追い詰められてる心境さ
見えない敵か　ところで
いろいろ わかったことがある
鴨下の話だと
橘の今度の新作は
医学界について
書かれたものらしい
医学界？
ああ
しかも 針生の調べじゃ
密輸業者とも接触してたんだとさ
医学界と密輸業者か
だとすると 見えない敵は
この２つのキーワードを結ぶ
線上にいる人間ってことか
おそらくな　野中も仕事で
軽井沢に行くついでに
情報を
集めてくれることになってる
お前のほうは何かあるか？
時任の会社？
時任なら神田川出版だが
さて どうやって
時任さんを呼び出すか
あれは 時任さん
工事現場か
こんな所に何の用だろう？
時任さん
ちょっと お話が
お… お前は！
ぼ… 僕をこんな所に
呼び出したのは お… お前か？
呼び出した？
警察の名をかたって
人を呼び出しやがって
いや 俺は…
来るな
俺は 大村のようには
簡単には殺されないぞ
ちょっと！俺は ただあることを
教えてほしいだけで
そんな言葉に だまされるか！
教えてください 時任さん
あなたは死んだ橘から
何か預かったり
伝言のようなものを
聞いたりしませんでしたか？
何のことだか
よく考えてください
これは重要なことなんです
事件を解く
鍵になるかもしれないんです
そういえば 一つ思い出したよ
言うから 殺さないでくれ
パーティーの前に 先生に
呼び出されて言われたんだ
このパーティーに出た者が
僕を訪ねてきたら
｢桂に聞けば わかる｣と言えって
今度は桂か
危ない！
時任さーん！
時任さん
だめだ　死んでる
キャー！人殺し！
誰か来て！あっちへ逃げたわ
また見えない敵の仕業か
これじゃ 俺は連続殺人鬼だぜ
まずい
付近の捜索 開始いたしました
目撃者の話から 犯人は例の
金田一という少年と思われますが
まだ そうとは決まっとらん
どうして決めつけるんだ！
剣持のおっさん…
とにかく 駅などに警官を配備して
怪しい奴をひっとらえろ
わかったか！
よし 計算通り
あとは警察がいなくなったのを
見計らって…
待ちたまえ　犯人は必ずしも
ここから離れようとしているとは
限りませんよ
犯行直後の犯人は現場から
少しでも遠くへ逃げるという
常識の裏をかき
この付近に隠れている
あの小賢しい金田一ハジメなら
やりかねません
この嫌みな声は…
これはリターンマッチなのです
彼が逃げ切るか
私が彼を捕まえるかのね
どしえー！明智 登場
行ってきます
明智警視
おはようございます 七瀬君
何か ご用でしょうか？
実は 例の事件が録画されてる
このビデオテープなんですが
君から佐木君に
返していただこうと思いましてね
ってことらしいんだが
どうする？金田一
事件の状況を収めたビデオか
これがあれば お前の推理の
手がかりになるんじゃないのか
よし わかった
今から取りに行くよ
やはり ビデオを持って
出てきましたね
金田一 今 出てきたら
確実に捕まる
頼むから出てくるなよ
佐木がトンネルに入った
２号車 トンネルの外で
待機してください
ビデオがありません！
何！しまった あの原付だ
Ｕターンして追うんだ！
金田一君
最後まで
手こずらせてくれましたね
いやあ！
あなたは…
すいません
スピード出し過ぎでしたか
なかなかやりますね
金田一君
作戦成功
いやあ 残念でしたな
明智警視
見事に してやられましたね
全く…
ここまで こちらの思い通りに
行くとは思いませんでしたね
はあ？
すべては計画通りですよ
剣持君
計画通り？
最新の追跡システムです
あのビデオテープには
発信器が付いてましてね
これで 彼は
どこにも逃げられない
ここまで来りゃ 大丈夫だろう
このテープさえあれば
この辺だぞ！
なんで？
近いぞ この辺りだ
くそ どうなってんだ
どうして こうも
先回りされてんだ？
まるで…
発信器！こいつが原因か
くっそー
いたぞ！
しまった 行き止まりだ
こっちへ行ったぞ
くっそー ここまでか
助かりました
でも いいんですか？
俺をかくまったりして 都築さん
ああ
いつきくんと約束したからね
コーヒー ここに置いとくよ
それにしても君も災難だね
ええ あの夜 降った雨も
俺がその後 書斎に行ったのも
すべては たまたま起きた
偶然だったはずです
そして 書斎の外には俺が来た時の
足跡しか残っていなかった
犯人は偶然を
まんまと味方に つけて
すべての罪を俺に着せ
足跡も残さず消えちまったんです
気のせいかな？今 一瞬
違和感みたいなものを感じたけど
だめだ 疲れてて
集中できねえや
この子 都築さんの娘さんですか？
ああ 瑞穂というんだ
かわいい子ですね
ちょっと体が弱くてね
じゃあ これ
瑞穂ちゃんにプレゼントだ
もうすぐ 瑞穂の誕生日なんだ
かわいそうに病院で誕生祝いさ
だから せめて…
喜びますよ 絶対
な 瑞穂ちゃん
金田一君
そっか 今日は…
都築さん
ちょっと出かけてきます
おい 金田一君
11時に中央公園で？
ハジメちゃん
ハジメちゃん どこにいるの？
ハジメちゃん！
私に？
ケーキ
ハジメちゃん
バカね 誕生日のことなんて
私でも忘れてたのに
無理してケーキまで買って
ありがとう
ありがとう ハジメちゃん
金田一に会えるかもしれねえぜ
桂 横平の事務所から
電話があってな
誰かが 俺の名を使って
今日のスケジュールを
問い合わせたっていうんだ
ハジメちゃん？
ああ たぶんな
私も行きます
ここか
金田一は必ず ここへ来ます
やべ
この辺りで
人が隠れそうな所を
すべてチェックしてください
まずいな このままじゃ
確実に見つかっちまう
やべ こんな時にポケベルが
あれ？そういや ポケベルは
美雪に渡したはず
なんだ 明智のか
俺のと同じやつじゃん
びびったぜ
桂さん あなたに危害を
加えるつもりはありません
お前は金田一
お願いです　ただ 暗号の件で
橘から言われたことを
思い出すだけでいいんです
わかった 言うよ
言うから殺さんといてくれ
た… 確か
パーティーの打ち合わせの時
先生が｢妙なことを聞かれたら
野中に聞けって言え｣と
野中に聞け？
それは本当ですか？
ほんまや
だから 殺さんといて…
桂さん？どうしたんですか？
桂さん…
桂さん お茶が…
人殺し！
許さない！絶対に許さない
犯人の正体は
この俺が必ず暴き出してやる
じっちゃんの名にかけて
しまった！囲まれた　俺じゃない
信じてくれるよな？おっさん
俺が 橘さんや桂さんたちを殺した
脅迫犯に見えるか？
真犯人が 次々と
俺に仕掛けてくる恐ろしい罠
分かった　伝言ゲームの
本当の答えを今から話す
冗談だろ？待ってくれ 明智さん
俺じゃない！撃つな！
金田一少年の事件簿…
君に この謎が解けるか？
それでは 暗号を発表します
橘 五柳の新作出版権を巡る
暗号ゲームで 俺は
殺人事件に巻き込まれた
警察から逃れた俺は さらに
第２ 第３の殺人現場に
遭遇してしまった
犯人の正体は この俺が
必ず暴き出してやる
いたぞ 金田一だ
金田一 殺人が起こる度に
必ずお前がいる
そんなバカなことないよな
くそ もうだめか
金田一君！
俺の車へ隠れろ
針生さん
助かった
ありがとうございました
いつきの頼みだからな
それより これを持ってけ
殺人現場の写真と
別荘の設計図だ
どうも
それと これを着な
スタッフジャンパーだ
スタッフ専用口から出られるぞ
恩に着ます
針生！
いつき
金田一なら もう逃げたよ
くっそー
間に合わなかったか
ハジメちゃん
もしもし 金田一か！
野中の行方だと？
ああ
橘の暗号をたどったら 桂は
野中に聞けって言ったんだ
あの人 軽井沢にいるんだろ？
どこか わからないか？
調べてみるが時間がかかるぞ
待ってる時間はないんだ
俺は軽井沢に行ってる
また向こうから電話するよ
なるほど 今度は軽井沢ですか
さっきのビデオを見た時も感じた
この違和感は何だ？
単なる 気のせい？
なんで回送電車が止まるんだ？
警察 どうして俺が
軽井沢へ向かってるのが？
そうか あの電話
盗聴されてたんだ
いいか よーく捜せ
何としても金田一を捕まえるんだ
この列車には いないようです
そうか
よーし 出発させろ
おい！ちょっと
あのバカ
誰か 助けて！
お前は金田一！
すまん
いた！金田一だ
警部！
くそ 軽井沢まで
あと少しだっていうのに
もう逃がさんぞ 金田一
くっそー 行き止まりか
川だ
こうなりゃ 一か八かだ
くっそー
こういう男ですが
年は17歳です
もし 見かけたら
警察へ連絡してください
はい わかりました
ご苦労様です
気がつきました？
君は 確か橘五柳の所にいた…
花村葵 妹のほうよ
犬の散歩に行って
近くの土手で
あなたが倒れているのを
見つけたんです
警察には あなたのことは
内緒にしておきました
警察が来たんですか？
ええ さっき
ありがとう　そうだ
電話貸してもらえませんか
金田一か？今 どこにいるんだ？
軽井沢の近くだけど
詳しくは言えないよ
その電話 盗聴されてるからね
何？
ところで 野中さんの
居場所わかった？
それが まだだ
軽井沢にいることは確かなんだが
そっか ということは
犯人が野中さんを見つけるのにも
時間が かかるってことか
そういうことだな
じゃあ
居場所が わかったら連絡 頼むよ
連絡って どこに？
ったく 切っちまいやがった
この音は？
ポケベルよ
連絡は0279－4321
なるほど
ポケベルなら
盗聴の心配もないですね
よーし 俺たちも行くぞ
軽井沢へ！
うん
俺も仕事が片付き次第
向かうよ
わかりました
本当に助かります
実は あの夜から
ろくに食べてなかったんです
大変だったんですね
ところでお姉さんは？
棗姉さんは用事があって東京
明日の昼まで帰ってこないわ
そっか
ごめんなさい
あなたが犯人とされたのも
姉の証言が もとでしょ？
姉は はなから あなたが犯人と
信じ込んでいるから
あの状況を見ちゃ
しかたないさ
それより 葵さん
橘さんが殺された日のことで
何か気づいたことないですか？
そういえば 先生は いつも 別荘の
全室の鍵束を持ってるんですけど
あの夜は寝室に
忘れたままになってたわ
それと あの夜
寝室のエアコンが壊れたって
先生から電話があったらしいの
いつもなら 電話で用事 頼む時は
私か棗姉さんに かけるのに
おばあちゃん
耳が ちょっと遠いから
鍵の束と
耳の遠いおばあちゃんか
待てよ
この写真
橘の死体をどけた後に
ガラスのかけらがない
どういうことだ？
橘と絡み合って 水槽が
割れたんじゃなかったのか
俺が あの部屋に入った時
床は水浸しで…
いや 待てよ
思い違いだったんだ
俺が部屋に入った時には
まだ床は濡れてなかった！
ってことは犯人は橘と もみ合って
水槽を壊したんじゃない
俺を気絶させた後 わざと
水槽を叩き割ったっていうことだ
なぜだ？何のために そんな…
いい加減にしてくださいよ
桂 横平を殺害したナイフからも
金田一ハジメの指紋が
検出されたんですよ
おまけに 奴は走っている列車から
警官を突き落としたんだ
この凶悪な やり口は
追い込まれている証拠です
奴は犯人に間違いありません
長島さん
そのことなんですが 本当に
金田一がやったんでしょうか？
もちろんです
この目で見たんですから
あ… あの
絶対 許せることじゃありませんぞ
金田一 どうして？
やっぱり 本当に お前が…
あの… 実は
金田一は 私を列車から
突き落としてなんかないんです
彼は私を助けてくれたんです
ベルトの銃が電車のドアに
挟まれていた私を
懸命にドアをこじ開けてくれて
どうして それを早く言わないんだ
すいません
まいったな 葵さん
どこ行ったんだよ？
いつきだ 金田一 いるか？
俺です 今どこ？
軽井沢へ向かってる
野中の居場所が わかったぞ
湯ノ沢ホテルだ
湯ノ沢ホテルか
俺も すぐ行くよ
葵さん 俺もう行きます
かくまってくれて ありがとう
じゃあ 急ぐから
どうもありがとう！
あら 棗姉さん
もう帰ってたの？
うん
金田一君
どこ行ったのかしら？
もしもし 警察ですか？
連続殺人犯 金田一ハジメの
行方が わかりました
湯ノ沢ホテルです
さあ いつでも いらっしゃい
金田一君 このワナの中に
まずい このままじゃ
金田一が捕まっちまう
そうなれば 奴は
真犯人にされちまう
何とか できないのか
来るな 金田一
まずい
確か 電源は
切ってあったはずなのに
明智のポケベル？
剣持警部
どうやら 金田一の奴
警察の配備に
気づいてくれたみてえだな
｢誰にも会わぬよう
裏の林で待て　いつき｣
いつきさん どうして ここが？
金田一の奴
なかなか現れませんな
奴のことです　この警備に
気づいたのかもしれませんよ
ここは長島刑事に任せて
我々は 野中の様子でも
うかがうとしますか
そうですね
まあ 警察が保護してくれりゃ
とりあえず安全だな　あ？
非常口？
野中さん
なんで あんな所から
どこへ行くんだ？
やっと着いたぜ
早く 野中さんと
金田一先輩を捜さなきゃ
急ぎましょう
野中さん？野中ともみさん
いないなあ
まずいぞ
ホテル内と その周辺を
徹底捜査させるんだ
野中さん
金田一君 どうして ここに？
朝から警察が うろついてるのよ
こんな所にいたら
捕まっちゃうじゃない
実は 真犯人が
あなたを狙ってるんです
それを伝えようと思って
何を言い出すかと思ったら
あたしが狙われてるですって？
どうして？
あなたが橘から
何かのメッセージを
受け取っているからです
メッセージって… ああ あのこと
誰かが君のところに暗号のことで
尋ねてきたら こう言うんだ
｢私で終わりよ｣ってね
私で終わり…
それだけですか？
誰かに会えとか
どこかを探せとかは？
いいえ それだけよ
そんな… あの暗号
このゲームに…
いったい どういう意味が
あったっていうんだ？
金田一は この辺りに
きっと潜んでる！
何としても捜し出せ！
とにかく 野中さんは部屋に戻って
警察の保護を受けてください
でないと…
わかったから あなた 早く逃げて
じゃあ
人騒がせな坊やね
わざわざ いつきさんの名前を
使って 私を呼び出したりして
私で終わり？
何だよ 野中さん
せっかく ここまで来たのに
大村 時任 桂 野中…
これは！
大村 時任 桂 野中…
わかったぞ
この伝言ゲームの意図が
重要なのはメッセージの
内容じゃない
それを伝えた人間の
名前だったんだ
キャー！
野中さん！
野中さん
だめだ 死んでる
野中さんが ここにいることは
いつきさんたちと
警察しか知らないはずなのに
どうして 真犯人は そのことを！
まさか 見えざる敵は身近に…
悲鳴があったのは こっちだ！
しまった！警察に囲まれたか
くっそー　そうだ
気づいてくれよ
名刑事 明智さん
いたぞ 金田一だ！
追え！奴は
ホテルのほうへ逃げたぞ
231365…
だめ！ハジメちゃん
見つからない
野中も いない
警察も捜してるらしい
あっ
徹底的に捜せ！
助けて！
今の悲鳴
食堂のほうからですよ
ハジメちゃん
何やってんだ？お前！
金田一
バカなまねは やめるんだ
おっさん 俺は まだ
捕まるわけには いかねえんだよ
さあ そこ どけ！
何…
日本の警察は
生ぬるくて いけませんね
凶悪犯の制圧は
こうするんですよ
まさか！
うそ…
警視 やめるんだ！
金田一！まだ息がある
救急車を呼べ！
ハジメちゃん
やっと会えたのに
こんなことになっちゃうなんて
やだよ ハジメちゃん
死なないで
あんた どうして
金田一を撃ったんだ？
こいつが人殺しなんかする
人間じゃないのは
あんただって
よく知ってるだろ！
確かに彼は人殺しなんかできる
タマじゃないでしょう
人をだますことは できてもね
何？
あ痛てて…
ハジメちゃん
金田一…
ヘヘ… みんな みんな
わりい わりい わりい
この血はトマトジュース
こいつを明智さんの
空砲に合わせて破ったってわけ
どうして そんな…
真犯人を捕まえるには
どうしても こうする必要が
あったんだ　ごめんよ 美雪
ハジメちゃん… バカバカ…
痛て わりい わりい
彼が野中ともみの そばに
落としていったメモが これです
23は｢ク｣ 13は｢ウ｣
65は｢ホ｣というように
この数字を
ポケベル暗号で解読すると
｢空砲で撃て｣とありましてね
しかも ご丁寧に
｢そうすれば 必ず犯人は捕まる｣
と付け加えてあった
さすが 明智名刑事
あんたなら きっと
わかってくれると思ったぜ
それより 本当に解決の糸口は
見つかったんでしょうね？
ああ
まずは 橘の所へ急行だ
室内は事件当日のままだ
水槽の水は すっかり
乾いちまってるな
どうした？
そうか 間違いない
ビデオや写真を見て感じた
違和感は これだ！
何言ってんだ？金田一
この５日間の逃亡生活も まんざら
むだじゃなかったようだぜ
わかったよ 見えない敵
真犯人の正体がね
何？
だが まだ最大の謎が残ってる
犯人が ぬかるみに足跡をつけずに
ここから消えたトリックの謎がな
この離れの書斎から
あの橘の寝室まで
足跡をつけずに たどり着く方法を
発見できなければ
犯人の犯行を
証明することは できない
先生の寝室の
エアコンが壊れてるから
風通しをよくしといてくれって
先生は いつも 別荘の全室の
鍵束を持ってるんですけど
あの夜は寝室に
忘れたままになってたわ
橘の寝室も見せてください
なんだ？この窓は
はめ殺しで開かないぞ
気をつけて　あっ
ああ
エアコンが
エアコンは確か
壊れてるはずじゃ…
ですよね　ということは！
エアコンが壊れてるから
風通しをよくしといてくれ？
わかったぞ　犯人が書斎から
足跡を残さずに脱出した謎が
謎は すべて解けた！
とうとう現れたな
見えざる敵
俺と明智さんが仕組んだ芝居は
上出来だったようだな
あんたは この原稿で
自分の恐ろしい過ちが
明るみに出るのを恐れ
５人も 罪のない人たちを
殺した殺人鬼だ
さあ 観念してもらおうか
その仮面の下の 邪悪な正体を
今こそ暴いてやる！
そう 真犯人は お前だ！
金田一少年の事件簿…
君に この謎が解けるか？﻿ノンフィクション作家
橘　五柳が殺された
俺は　事件を解くため
暗号に従って
パーティー参加者を訪ね歩いたが
彼らは　次々と殺され
連続殺人犯の
汚名を着せられた俺は
再び　橘の別荘に戻った
そこで　行き着いた結論は…
はじめちゃん　大丈夫なの？
ホントに犯人が来るのかよ？
まあ　もう少し待ってなって
で…　でも　この体勢では
きついですね
まったくだ
剣持君
もう少し　離れてくれないか
むさ苦しいのは　苦手なんだ
なっ…
シッ！
やっぱり　現れたか
待ってたぜ
アンタを　おびき出すために
明智刑事と仕組んだ狂言は
上出来だったようだな
容疑者の俺が　病院行きとなりゃ
この別荘の警備も解かれる
そう考えたアンタが
ここにくると思ってたよ
もう逃げられないぜ
真犯人さんよ！
待て
逃がすか
観念しろ
ついに　追いつめたな　金田一
こ…　こいつが　橘先生たちを
でも　金田一センパイ
この人が犯人だとしても
どうして　ここに？
この部屋に隠された
橘　五柳の原稿を手に入れるためさ
ええっ！
この部屋に？
ああ　この連続殺人事件の
すべての始まりは
橘が残した原稿の在りかを示す
あの暗号だった
暗号の答えが
「大村に聞けば分かる」だと
知ったアンタは　東京へ戻り
「時任に聞け」
「桂に聞け」　「野中に聞け」の
伝言を知ると
次々と殺人を犯した
すべては　自分以外の人間が
伝言の意図を　たどるのを
阻止するためさ
だが　野中さんから「私で終わりよ」という伝言を聞いたとき
アンタは　伝言ゲームの
真の意味に気づいたんだ
誰から誰へ
伝言が伝わっていくのか
その順番こそが
暗号の答えになっていたとね
順番？
思い出してくれ
パーティーの司会が
笑福亭春楽の予定から
急きょ　桂さんに　かわったことを
それが　最大のヒントだった
どういう意味ですか？センパイ
名前だよ
名前？
この新聞を見てくれ
え？
原稿の隠し場所の答えは
殺された４人の名前に
隠されていたんだ
ど…　どういうことだ？
サッパリ分からんぞ
本当に　君は鈍いな
大村の大を
そのまま「おお」と
時任の時を「と」　桂は「けい」
続けて言ってみたまえ
おお…　と…　けい…
そういうことだろ？
金田一君
さっすが　明智先生
そして　最後に
「のなか」と　つけば？
おお…
とけい
のなか
ああっ！
あったぞ！
橘先生の新作が入った
フロッピーディスクだ
アンタは　この原稿が出版され
自分の犯罪が
明るみに出るのを防ぐために
５人もの人間を殺害したんだ
橘は　この原稿は
ある社会犯罪を告発する
ノンフィクションだと言っていた
パーティーの参加メンバーの
１人が　実名で登場し
犯罪を暴かれているともね
その人物こそが　真犯人なんだ！
それが　こいつか
大村さんが殺されたとき
俺も伝言を　たどっていると
気づいた犯人は
俺に　すべての罪を
着せることを思いつき
俺が被害者に近づくときを狙って
殺していった
おい！だとしたら　橘を殺した
夜の書斎からの脱出は
どう説明するんだ？
確かに　あの夜
雨で　ぬかるんだ地面には
俺の足跡しかなかった
それが　最大の謎だった
しかし　俺は見つけた！
足跡を残さずに
書斎から逃げ出す
見えないルートをね
何！
こんな夜更けに
何をするんだね？
ふわー
さてと
このトリックには
重要なポイントが２つある
１つは　１０時ちょうどに
菊さんが受けた電話
もう１つは　事件後
鍵の束が書斎じゃなく
寝室にあったってことだ
鍵の束？
先生は　別荘全室の鍵を
いつも持ち歩いてらしたんです
ところが　あの夜に限って
鍵が先生の寝室に
「電話と鍵」
この２つのキーワードから
導き出された答えは
このドアが
見えないルートの正体さ！
そのドアが？
犯人は　あの夜
橘を殺し
俺を気絶させたあとで
この鍵を手にして
それは　先生の…
よっ！
セ…　センパイ
こうして　ドアに　つかまって
ドアの動きを利用して
隣のドアに近づき
ドアの鍵を開け
隣のドアに移ったあと
書斎のドアを閉めた
あとは　同じ要領で
３つ目のドアに近づき
どうだい　こうやって
ドア伝いに移動すれば
見てのとおり
１つの足跡もつけずに
ここまで来れるんだ
な…　なんてこった
し…　しかし
それだけじゃ　不完全だ
そこから本館まで
２メートルもあるぞ
確かに
ドアに　つかまっていたんじゃ
助走をつけて飛ぶこともできない
だけど　犯人は　この問題を
電話１本で解決したんだ
電話？
菊さん！
あの夜と同じことを
もう一度　お願いできますか？
あ？
ああ　ハイハイ
あんときは　先生からの電話で
寝室の風通しを良くしろと
言われたんじゃが
なにぶん　年で
高い天窓を開けられんでのう
あたしゃ　こうやって
な…
何！
犯人は
本館と別館との架け橋を作って
見事　足跡を残さずに
移動できたのさ
耳の遠い菊さんなら
電話の主が橘でないことを
悟られる心配は　ないからね
長島警部　アンタは
頭から　俺を犯人と決めつけ
ロクに　他の人間を
調べようともしなかった
だから　俺は
アンタから逃げ出し
自分で犯人を捕まえるしか
なかったんだ
しかし　金田一
こいつは　お前が
被害者のところに現れるのを
待ってたって言ったが
お前の動きは警察だって
なかなか　把握できなかったんだぞ
それを　どうやって　こいつは
犯人は
俺の行動を知ることが
できるところにいたんだよ
いつきさんを通してね
何だって！
いつきさんは　俺の行き先を
仲間内だけには
知らせてたんだろ？
あ…　ああ　いや　まさか
俺が　お前を助けるために
集めたメンバーの中に
真犯人が？
残念ながらね
だからこそ　俺の行く先々に
まるで
タイミングを計ったかのように
犯人は現れた
暗号が解けるまで　俺を泳がし
自分が原稿を手に入れたときには
俺が　すべての罪をかぶって
捕まっている
それが　アンタのシナリオだったんだろま　待てよ
それだけで　こいつを
真犯人と決めつけていいのか？
そう
もし　今までの殺人から
暗号に気づいた人間がいたら
犯人じゃなくとも
原稿を奪いに来るとも考えられる
お…　おい…
確かにね
けど　こいつが真犯人だって
とっておきの証拠がある
何？
それは
書斎に　くだけて散乱した
水槽の破片だよ
橘の死体があった場所には
ガラスの破片は残っていない
つまり
あの水槽は　橘を殺害し
俺を気絶させたあとに
犯人が　わざわざ破壊したんだ
あるモノを　隠すためにね
分かったぞ　水だ
犯人は　水槽の水で
何かを紛らわそうとして
いや　違う
それは　小さなガラスの破片
メガネのレンズの破片だ
アンタは　橘に原稿の在りかを
聞きに行って口論となり
殺してしまったときに
メガネを壊した
もし　メガネの破片が発見されたら
メガネをかけている者の
１人として　自分に疑いがかかる
そこでアンタは　他のガラス製品を壊すことによって
メガネの破片を　紛れ込ませたんだ
いかにも　橘と　もみ合って
割ったかのように見せかけてね
見事な手口だったよ
さあ　観念してもらおうか
俺に罪を　かぶせそこねた
連続殺人事件の　真犯人さんよ！
まさか
そ…　そんな…
さあ　大人しく
罪を認めてもらおうか
都築哲雄さん！
ホントに　都築さんが？
僕には　信じられません
フロッピーの中の原稿を見れば
ハッキリするでしょう
そこに暴露された
都築さんの犯罪記述を見ればね
そうなのか？都築さん
フフフフ　フッフフ
確かに　ヤツの原稿に
俺の犯した社会的罪が
暴かれているのかもしれん
だが　そうだとしても
それだけで
この一連の事件の犯人が
俺だと言い切れるもんかね
都築　往生際が悪いぞ
見えないルートも
立証されたっていうのに
あれは　金田一以外の人間も
橘を殺せた可能性を
証明したに　すぎん
じゃ…　じゃあ　メガネを
カモフラージュした件については
どう説明する気だ？
メガネをかけているのは
俺だけじゃない
そこにいる針生だって
いや　アンタは　あのとき
メガネを壊したんだ
何を証拠に
証拠は　これだ
これは　事件の前と後に
佐木が撮ったビデオを
ビデオプリンターで映し出したものだ
うん？
あっ！
都築のメガネが　かわってるぞ
そう
アンタが事件前に　かけていた
メガネは
事件の際に壊してしまって
事件後には
かけられなかったからさ
都築さん
罪を認めるな？
そうじゃない
何？
俺は　いつも　予備のメガネを
持ち歩いているんだ
たまに気分を変えるために
メガネを　かけかえるんだよ
ええ？
あの夜も
たまたま
別のメガネに　かえてたのさ
じゃあ　ほんの気まぐれで
予備のメガネに
かえたって言うんだな？
そうだ！
その言葉を聞きたかった
何だと？
アンタは　今の言葉で
証明しちまったんだよ
自分が犯人だということを！
はじめちゃん
何を始めようっていうの？
都築さんは　ほんの気まぐれで
メガネを　かえたって言ってたけど
そんなことは
ありえないってことを証明する
何！
はい　出ます
うん？
これは
右側が　事件前
左側が事件後の都築さんの顔を
拡大したものだ
事件前のメガネは　レンズを通して顔の輪郭が　へこんで見えるだろ
ところが　事件後のメガネでは
輪郭が　ふくらんで見える
これが　何を意味するか
分かるかい？
老眼鏡　ですか？
そのとおり！
事件前に　かけているのは
度の弱い近視用メガネだが
事件後に　かけているのは
遠視用の老眼鏡なんだ
え？
つまり
２つのメガネは
まったく別の性質のもので
気分で　かえるものじゃない
近視用メガネを
書斎で壊しちまったアンタは
棗さんの悲鳴で
かけつけたとき
メガネなしじゃ
あやしまれると思った
しかし　手元には
老眼鏡しか　なかったんだ
もう言い逃れはできない
アンタの罪は　暴かれたんだ！
君の言うとおりだ
橘も他の４人も
皆　俺が殺したのさ
俺が　この手で
どうして？
どうしてだよ？都築さん！
アンタ　優れたテレビマンとして
すばらしい　ドキュメンタリーを
何本も　作ってきたじゃねえか
俺は　ジャーナリストとして
アンタを尊敬さえしてた
なのに　どうして？
娘の…　瑞穂のためだった
瑞穂ちゃんの…
いつき君
え？
これが　何の傷か分かるか？
それは？
手術の跡だよ
移植に使う腎臓を　摘出したのさ
瑞穂は　重度の腎臓障害なんだ
腎臓障害？
腎臓が何らかの原因で
機能しなくなる病気です
機能が低下すると
尿として排泄されるはずの毒素が
血液内に　たまり　尿毒症を起こし
最悪の場合
死に　いたることもある
４年前　妻を亡くした俺は
忙しさに　かまけて
たった一人の娘のことを
なおざりにしすぎた
気がついたときには　もう
瑞穂は　腎臓移植を受けるしか
助かる道は残されていなかった
だから　俺は
２つある自分の腎臓の１つを
娘に提供することを　願い出た
パパ
ん？どうした？
夏休みまでに　病気治ったら
瑞穂は　あれに乗りたいな
ああ
うん　必ず良くなるさ
そしたら　毎週
あの遊園地に遊びに行こうか
ホント？パパ　大好き
だが　信じられないことに
手術は　病院側のミスで
失敗に終わった
病院からは　わずかな見舞金が
渡されただけだった
こんなもの！
ウソつき
パパのウソつき！
夏休みになったら
遊園地に行けるって
言ってたくせに
瑞穂
そんなときだった
あの男が現れたのは
な…　何ですって？
娘に合う腎臓を？
本当ですか？マエダ先生
ええ
力を尽くさせてもらいますよ
ただ
それには　是非
あなたの協力がいるんですよ
だが　それは
悪魔のささやきだった
え？
そいつから　何を協力しろと？
密輸さ
しかも　人間の臓器のね
な…
マエダは
海外から移植用の臓器を
密輸していたんだ
密輸した臓器の中に
娘に合うものがあれば
優先的にくれる約束で
ヤツは　俺に
臓器密輸の手伝いを
させたんだよ
ひどい…　人間の臓器を
売り物にするなんて
ああ　最低の行為さ
言い訳する気もない　しかし
瑞穂のことを考えると
俺は　ヤツに従うしかなかった
そんなときだ　橘から
臓器密輸に関するノンフィクションを
出版すると言われたのは
俺は　出版を
思いとどまらせるために
何度も　橘のところへ足を運んだ
そして　あの日
いいかげんにしろ！
きさまもジャーナリストの端くれなら
自分のしてることが
どんなに汚いことか分かるだろう
しかし…
うるさい！
お前のように堕落した男の
言葉なぞ　聞く耳はない
帰れ！
お前なんかに　何が分かるー！
あとは　君が推理したとおりさ
金田一君
都築さん…
俺は　娘を救いたいがために
臓器密輸という
許しがたい社会犯罪を犯し
そのうえ　５人もの人間を
殺してしまった殺人鬼
ハッハハ　最低な男
心底　ダメな人間なのさ
だが　今　気づいたよ
こんなダメな男でも
１つだけ　マシなことが
できるってことに
きさま
何を！
やめろ！
ああっ！
キャーッ！
都築さん
何てこった
は　早く　救急車を
はい！
しっかりしろ　都築さん
都築さん　なぜ…
すまなかった　金田一君
行きずりの君に　すべての罪を
なすりつけようとして
俺は　生きる資格もない男
もういい　何も言うな
いつき君　頼む
瑞穂に　俺の体に残された
もう１つの腎臓を
移植してくれないか
えっ…
バカな話だな
最初から　こうしてりゃ
殺しなんてせずに
すんだのにな
都築さん　アンタ
ああ…
不思議なもんだな　いつき君
娘の体の
一部になれると思うと
死ぬのも怖くない
都築さん
お…　おい　都築さん
都築さん！都築さん…
ダメだ　彼は　もう
目を開けてくれ
死んじゃダメだ　都築さ…
ちくしょう…　ちくしょう
おい！救急車は　どうした？
まだ来ないのか
彼の遺志を　無駄にするな
腎臓移植が可能な病院に
早く運び込むんだ！
それでは間に合わない
え？
警察のヘリを使おう
今度こそ
手術が成功するといいわね
失敗なんてしてたまるか
あの人が　命を懸けてまで
娘に残した希望だ
必ず成功するとも
そうだね
すごいね
橘さんの本　ベストセラーよ
ああ　でも
瑞穂ちゃんのために
都築さんの名前は
伏せてもらったってさ
よかったね
よっ　ご両人！
都築さんの娘さん　覚えてるか？
瑞穂ちゃん？
手術は成功したって聞いたけど
都築さんのことは
話ししたのかい？
いや　１０歳の子には
つらすぎる事実だからな
今は　そっとしてあげたいんだ
でも　退院したら　どうするの？
そのことなんだが
俺　あの子のこと
引き取ろうかと思ってんだ
ええー！いつきさんが？
ま　男独りの
ガサツな生活だが
女の子１人
養えないわけじゃない
へえー　ヘヘヘヘヘヘ
おっと！
そろそろ　お見舞いに行かなきゃ
じゃ　またな
いつきさん　何かカッコイイわね
ああ
ガラにもなく　照れちゃってさ
そうだ　はじめちゃん
ポケベル返すね
おう　サンキュ
あ　これ
俺のポケベルじゃないぞ
え…　そう？
だって　これ
番号違ってるじゃんかよ
あー　いいじゃない
気にしない　気にしなーい
行こっ
お前な　気にしないったって
あれ？あれれ？
だって　消したくないんだもん
あのときのハッピーバースデー
もう少しだけ　このまま
いやー　オッサン
俺たちに
沖縄旅行プレゼントなんて
ナイスすぎるぜ
こりゃあ　美雪とチューできる
チャンスってか？
なーんて思ってたら
何だよ？この船
この航海を最後に　スクラップ？
しかも　謎の予告状つき？
その差出人は　幽霊船長？
乗った者は　次々と消えていく
まさか　これが
死の航海の始まりなのか？
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
「死の航海が始まった」
「後戻りは　できない」
「ひとりずつ　消えてゆくだろう」
「幽霊船長」
うーん
おかしいですね
まるで
誰も舵をとってないような
信号弾にも応答ありません
何か　あったのかもしれん
１８７３年１２月
大西洋を横断中のイギリス船
デイ・グラティア号は
海上を　さまよう
１隻の帆船を発見した
船の名前は
「マリー・セレスト号」
どういうことだ
人っ子一人　いないぞ
船長室へ行ってみよう
き…　きっと　朝食の途中で
嵐か何かに遭って
全員　逃げ出したんじゃ…
いや違う
だったら　コーヒーは
こぼれているはずだ
船長は　優雅に
朝食をとっている途中で
こつ然と　姿を消したんだ
後に発見された航海日誌は
１０日前で終わっていた
つまり
誰１人いない　この船は
１０日間　航路を守って
航海を続けていたことになる
一体　誰が　かじを　とっていたのか
その謎は
いまだ　解明されていない
ワア　見て見て　おっきい船！
オー
ありがとうございます　剣持警部
沖縄って
行ってみたかったんですよ
それも　豪華客船に乗って！
豪華客船に乗って！
フフ　ハハハハ
お前たちには　いつも
協力してもらってるからな
ま　ほんの気持ちだ　ヘヘ
ワアー
すてき
私　豪華船って初めて
へえ
オーケー　オーケー
いいムードだぜ
今度こそ　絶対
ファーストキスってやつを
オッサン　ナーイス…
ぶつくさ言ってねえで
荷物　運ばんか
お前の寝坊の　おかげで
出港ギリギリなんだぞ
七瀬君のも　お前が持って
あげるぐらいしろって
珍しく　ほめてあげたのに
この仕打ちかい
ウフフ
コバルト・マリン号へ
お乗りのお客様でしょうか？
あ　はい
本日は　ようこそ
いらっしゃいました
失礼ですが　チケットの拝見を
ああ　私が持ってます
ハイ　３人分
３名様？
おーら　早く　来んか！
何で　こんな目に
お荷物は　私が…　さあ　どうぞ
これも　お願いね
じゃあ　よろしく　さあ　美雪
こらっ　金田一
行こうぜ！
ちょっと　引っ張らないでよ
大丈夫だよ　ほら　早く来いって
危ないってば　もう
早く！
もう　信じらんない！
子供みたいに
いいじゃんかよ　客船に乗るなんて滅多にないんだぜ
おおっ　高っけえなー
もう
あれ？サビだらけ
変だな
何か　妙に汚いっつうか
結構　傷んでないかい？この船
そうね…
あまり
豪華客船という感じしないわね
豪華客船でございますか？
ギクッ
あ　いや…
聞いた話じゃ
毎晩　大パーティーが開かれ
フランス料理に舌づつみをって…
カジノにプール　ビリヤード
何かの　お聞き違いでは？
当船は
貨物用の船を改造したもので
空いている部屋を
格安クルーズで扱っているんです
エエーッ！
アハハハハ
しかも　この航海を最後に
引退する船じゃよ
終わったら　スクラップなのよ
スクラップ？
ちょっと　オッサン！
あれ…　いない
オッサン
こら！出てこい
どういうことだよ　オヤジー！
許せ
俺の給料じゃ
これが　精一杯だったのよ
何だと！まだ
チェックをしてなかったのか？
す　すみません
定時には　必ず　出港するんだぞ
うすのろめ
５分で　全て終わらせておけ！
キャー！
あーあ　ああ
何やっとるか！
すみません　若王子航海士
あ…　イエ
若王子一等航海士
ぼんやりしてないで
さっさと片づけろ　役立たず
若王子君
少し　言葉が過ぎやしないかね
大槻機関長
間もなく　出港の時間ですよ
そろそろ　部署へ
お戻りいただきたいですね
フン
やつを殺せたら
どんなに胸が　スッとするか
そうだよなあ
ん？
加納君
安心しなよ
あの疫病神は
この航海で　死ぬだろうからよ
はあ？
見なよ
顔に死相が出てるじゃねえか
出港準備　オーケーです
よし　出港だ
いやあ　なりはボロだけど
なかなか　快適じゃんか
何で　こんなカッコせにゃ
ならんのだ
ヘッヘーンだ　大富豪の集う
パーティーなんだろ？
くそ！とんだ仕返しだぜ
ウフフ
それにしても
乗客は少ないと聞いていたが
まさか　全部で
７人しか　おらんとはな
ヒュー　彼女！
かわいい
ねえねえ　どっから来たの？
かわいいドレスだね
あ　あの…
そんな隅に　いないでさ
あっち　行こうぜ
あ　あの…　ちょっと
何だ　お前らは
あ？
あれ　お父さんと一緒？
お父…
この人　ピエロかと思ってたよ
ピッ　ヒャッヒャハハ　アハハ
こ　この…
はじめちゃん
何だよ
弟まで　くっついてるよ
ダメダメ　パス
あっち行こうぜ
何だ　アイツら！
何だ　アイツら！
おっ　おい
おー　ナイス
彼女！
どうしたの　退屈してるわけ？
俺らとラウンジで話ししない？
あ　ひょっとしてさ
彼女　暗いタイプ？
男にフラれて
身投げしに来てたり…　して
図星だぜ
身投げの前に
デートしてね
イヒヒヒヒ
あー　あんなやつらと一緒かよ
わ…　わしは
お父さんじゃないぞ
何をする？
失礼　お父さん
お父…　だから　わしは！
あなたは？
しがない海洋雑誌の記者さ
この船も
今回が最後だって聞いてね
なるほど
ま　いろいろと
いわくつきの船だったからな
やれ　幽霊が出るとか
やれ　無人のはずなのに
動き出すとか
楽しい話が多い船なのさ
妙な予告状も来てるらしいし
いいネタが　とれそうだ
ご乗船のお客様
本日は　当船をご利用いただき
まことに　ありがとうございます
皆様が　快適な旅を
お楽しみいただきますように…
おいおい
乗組員まで　寂しいなあ
お飲み物は　いかがですか？
あ　こりゃ　どうも
あの…
乗務員さんって
これで全員なんですか？
あと　コックと数名の乗員だけですおいおい
では　皆様
この船の船長をご紹介します
鷹守船長です
何だ？あの船長
えー　船長の鷹守です
皆さん　ご存じの方も
いらっしゃるようですが
当船には　楽しい航海に
似つかわしくないうわさが
いろいろとございます
そして　本日
まことに面白い
手紙も届いております
「死の航海が始まった
後戻りは　できない」
「ひとりずつ　消えてゆくだろう」
「幽霊船長」
幽霊船長？
ひとりずつ　消えてゆく…
私には分かってます
犯人は　この中にいる
私の部下は
そろいもそろって　卑劣ですからね
特に　若王子
コイツは　悪魔のような卑劣漢だ
いちばん怪しい
やつのせいで
わしも引退することに
これでもエリートだった
なのに　なのに…
こんなボロ船で終わるなんて
ああ…
アアー　ウウ…
船長
皆さん　不愉快な発言を
お許しください
船長は　最後の任務に
感傷的になっておられるのです
手紙は単なる　いたずらでしょう
どうか
この船と乗組員を信頼し
快適な旅を　お楽しみください
なんつう　パーティーだ
あの予告状
ホントに　いたずらかしら？
フッフフフ
面白くなってきたじゃないか
お？
幽霊船長ってか？
ん？
くそ！鷹守のやつ
またしても
客の前で恥をかかせやがって
加納　何の用だ？
若王子さんよ
あんた　知ってんじゃないの？
あの予告状の主
俺は知らん
変な言いがかりは　やめろ
ヒッヒヒヒ
何だ　その笑いは！
いいか　もし　ひと言でも
あの秘密を漏らすようなら
分かってるだろうな
おー　怖い怖い
分かってるよ　一等航海士さん
くそ！どいつも　こいつも
まだ　いたのか？
これ以上　無用な会話は
するつもりはないぞ
ああ…　ああ…　ああ…　ああ…
誰？
美雪…
はじめちゃん？
ああ…　美雪
はじめちゃん？
腹が…
何？
腹が痛え
ちょっと
まさか　盲腸とかじゃ！
食い過ぎた
は？
もう　パーティーで
あんなに　がっついて食べるからよ
まだ５時半よ
医務室やってるのかしら
どうなさいました？
食べ過ぎですか
胃薬か何か　もらえれば
それじゃ　私の部屋に
洋子
丈二さん
ちょうどいい　君の部屋に
牛乳があっただろ？
ホットミルクを作って
部屋に持ってきてくれないか
え？あ　はい
牛乳を人肌に温めて飲むと
胃の痛みを　やわらげるそうですよ
ありがとうございます
どうしたの？
あ　いや
はい　どうぞ
どうも
すみません
これで　少しは
腹痛も治まるでしょう
あの　１つ質問しても
いいですか？
はい　何か？
なぜ　洋子さんの部屋に
牛乳があるって知ってるんです？
えっ！
ひょっとして　お２人は
でしょう！ア　フフフ
いや　その…
ダメよ　丈二さん
すぐ　赤くなっちゃうの
別に
隠してるわけではないんですが
私には　もったいない
ハンサムでしょ
そんな　洋子こそ
冗談よ
お似合いのカップルですね
うらやましい
あら　美雪さんこそ
優しそうな　お父さんで
うらやましいわ
あ　あの人は　お父さんじゃ…
アハハハハ
何をやってるんだ　お前たち！
若王子一等航海士
部屋に　お客様を入れるとは
何事だ
あ　これは…
私たち
ちょっと具合が悪かったんで
それで　お世話になって
この階は　従業員専用で
お客様は
立ち入り禁止となっております
どうか　お引き取りを
分かったよ
美雪　行こうぜ
ええ
機関長！
お？
すみません
船長を見かけませんでしたか？
船長？いいや
おかしいな
定時になっても　勤務に
出ていらっしゃらないんです
部屋をノックしても
お返事がないし
酔いつぶれてんじゃ
ないんですか？
いや　ここに船長の葉巻がある
毎朝　日の出を見ながら吸うんだ
今朝も　このとおり
ちゃんと起きて吸っとるな
お客様に　ご案内いたします
レストランに
朝食のご用意が　できております
見つかった？
いや　どこにも
加納君
ボイラー室や機関室は？
船長　一体　どこへ？
船長　鷹守船長
いらっしゃるんですか？
船長！
若王子一等航海士
船内を
くまなく捜しましたが
やはり　ここしか考えられません
チッ！
中で倒れてるかもしれんな
どうかしたんですか？
船長に　何か　あったんですか？
それが　中に入ったまま
応答がないもので
マスターキーを
使っちゃどうだ？
大したことでは　ありませんよ
緊急事態の可能性も
あるだろうが
どうか　お引き取りを
私は　こういう者だ
おい　マスターキーだ
はい
おらんではないか
船長…
つい　さっきまでは
いたという感じだが
船長が消えた
船長のか？
ええ
毎朝　７時半に鳴らすのが
習慣なんです
「マリー・セレスト号」だ
こりゃあ　マリー・セレスト号と
同じ現場じゃないか
マリー・セレスト号？
１８７３年に発見された
幽霊船だよ
船長を初め　全員が
こつ然と消えていたんだ
朝食の支度も　そのままに
そう　まるで
今　見ている光景のようにね
船長が行方不明になったって
ホント？
幽霊船長とかってやつの
予告どおりじゃんかよ
この船の者は消えていくって
そんなの　ありなの？
おい　黙ってないで　何か言えよ！
落ち着いてください
単なる事故でしょう
恐らく　過ってデッキから落下を
船長なしで
どうやって航海すんの！
船を実際に動かすのは
我々　航海士です
運航には　何の支障もありません
若王子航海士！
何！
何もかも温かかった
つい　さっきまで
船長は　ここにいたんだ
一体　どこへ
ホントに海へ転落を？
いや　何か引っかかる
あの予告状といい
殺人？
朝食の支度のあと　数分間で？
死体は海に？
何なんだ　この違和感は…
金田一！
オッサン
大変なことになったぞ
ダメです　回復不能です
くそ！何てことだ
未明のうちに
何者かが破壊したらしい
それじゃあ…
助けを呼ぶことも　できないんだ
「死の航海が始まった」
「後戻りは　できない」
「ひとりずつ　消えてゆくだろう」
「幽霊船長」
マリー・セレスト号と同じだ
「ひとりずつ　消えてゆくだろう」
「ひとりずつ」
鷹守さん　ここにいたんですね
捜しましたよ
俺は　てっきり
幽霊船長からの予告状どおり
一人一人が
消されていくのかと思いましたよ
あ　ところで　３年前の
オリエンタル号の衝突事故に
何か関係が？
あの　鷹守さん…
船長　まさか　あなたは！
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか﻿豪華客船コバルトマリン号
沖縄旅行だ！
どこが豪華なんだよ　おっさん
これが最後の航海
船長が消えた？
幽霊船か？
１８７３年　大西洋で発見された
幽霊船マリーセレスト号
どういうことだ？
人っ子一人いないぞ
その謎は　いまだ解明されていない
この霧　幽霊船マリーセレスト号が今にも現れそうだ
ねえ　はじめちゃん
私たち　１人ずつ消えていくの？
幽霊船長の手で…
「死の航海が始まった
後戻りはできない」
「１人ずつ消えていくだろう」
そんなバカなこと…
美雪　美雪　どこだ？
美雪…
おっさん　剣持のおっさん
美雪が…
おっさんもかよ
どこだよ　美雪　おっさん
おっさん
みんな　どこ行ったんだ？
鷹守船長
奴のせいで　わしも引退することに
こんなボロ船で終わるなんて
うわあ！
はじめちゃん！
はじめちゃん
どうした　金田一？
大丈夫　はじめちゃん？
大丈夫　今　開ける
何だ　今の叫び声は？
どうしたの？
いや　ちょっと悪い夢　見てね
夢か
よかった
くそっ　夢ならともかく
人が　こつ然と消えるなんて
やっぱり納得できないんだ
同感だ　幽霊船長なんて
そんなものが
この世にいて　たまるか
もう一度　船長が消えた部屋を
調べさせてくれ
この部屋のどこかに
きっと真実が隠されているはずだ
電気のスイッチは　どこだ？
怖い
何だ　そっちか
これは…
どうしたの？はじめちゃん
血だ
血だと？
スイッチに　ついてたんだ
朝は見落としていたのかなあ
ああ　やはり
この部屋で争いがあったんだ
船長は消えたんじゃない
恐らく争ったとき残った血痕を
犯人は丁寧に　ふき取ったつもりがここだけ見落としたんだ
朝は　スイッチが下がっていたから気が付かなかったのか
ということは　つまり
争いが起こったとき
電気は　ついていて
夜だったということだ
じゃあ　朝　デッキに残っていた
船長の葉巻は？
犯人の偽装さ　船長が朝まで
生きていたと思わせるための
この朝食を用意したのも…
犯人が今朝　ここへ忍び込んで
整えたんだろう
あたかも船長が朝食の途中に
こつ然と消えたかのように
見せかけるために
おっさん　俺たちが朝
この部屋に
駆けつけたのは
７時半だったよな
間違いない
あのとき　船長の時計が鳴ったんだ
毎朝　必ず７時半に鳴らすのが
船長の習慣です
そして部屋に来て　すぐ
トースターのパンが焼き上がった
パンが焼けるのは
２～３分とすると
犯人が　トースターの
スイッチを入れたのが…
５分は　かかるぞ
あの香ばしい焼き具合ならなあ
俺は詳しいぞ　何たって　毎朝
寝ぼすけ女房の代わりに
焼いとるからなあ
やっぱ尻に敷かれてるんだ
じゃあ　５分前
犯人は７時２５分に
トースターのスイッチを入れて
この部屋を出た
そうなるわよね
よーし
明日の朝からは７時２５分前後の
アリバイを中心に
片っ端から事情聴取するか
頼むぜ　おっさん
えっ　本当に
船長は殺されたんですか？
いやあ　間違いない
人間が消えるなんて
バカなことがあって　たまるか
そこで　あんたが昨日の朝
７時２５分前後　何をしていたか
聞かせてもらいたいんだ
はい　放送室にいました
何で　また
そんなに　すぐ分かるんだね
仕事ですから
毎朝　きっかり７時２５分に
朝食の案内放送をしています
地下１階にある　ここが
放送室です
地下か…
昨日の朝も　ここで
お客様に　ご案内いたします
レストランに
朝食のご用意ができております
放送の後　船長を捜している
水崎さんと加納さんも一緒でした
ええ　洋子の言うとおりです
そうですか
僕たちは一緒に船長を
捜していました
三等航海士の加納君も
ずっと　そこにいました
加納君に聞いてもらえば
分かります
３人同時に
アリバイ成立というわけか
へえ　水崎の奴　そんなことを
じゃあ　そういうことに
しとけば？あいつは優等生だし
お前　いいかげんな！
居眠りしてたから
よく覚えてないんだ
居眠りだと？
ナルコレプシーなんだよ　俺
ナ…　ナルト　コレ　コレ…
ナルコレプシー
睡眠障害の一種だよ
夜昼構わず眠気が押し寄せて
どこでも　つい眠ってしまう
たまに目覚ましが鳴っても
起きられなくてね
この持病のせいで　勤務時間に
遅刻することもあるんだ
ま　この船には遅刻ぐらいで
ガタガタ言う奴は　いないけどね
ええっ
船長も若王子も
俺のこと買ってくれてるからね
それじゃ　勤務があるから
しっかし　どう見ても
そんな優秀な人材には見えんがな
えっ　昨日の朝食の放送が
あったときですか？
一応　全員に
聞かせてもらっとるんで　ご協力を
はい　昨日の朝は　このサロンに
７時ごろからいました
１人じゃアリバイには…
いえ　１０分くらい１人でしたが
そのあとから彼らが来て…
ねえ　彼女　いいじゃん
俺たちとメイクラブしようよ
やめてください
おお　怖い
しつこい人たちで
あの朝食の放送に助けられました
失恋なんか忘れて
俺と付き合ってよ
悪いようにはしないからさ
レストランに
朝食のご用意が…
腹減ったなあ　メシ行こうぜ
たく　何を考えてんだか　おい
間違いないんだな　大沢君
確かに　その時間には
サロンにいましたけど
「７時１０分から２５分まで
サロンでナンパ」と
ナンパなんて人聞きの悪い
はい　次　吉田君
あれ　お父さん　刑事だったの？
そんな　くだらんこと言ってないで質問に答えればいいの　質問に！
はい　その時間は
大沢と一緒にいましたよ
おお　怖いお父さん
どうぞ　何でも聞いてくださいよ
現役の刑事さんの
取調べなんて　最高のネタだ
昨日の朝の行動を
お聞きしたいんですがね
昨日の朝は６時から７時半まで
写真を撮っていましたよ
機関士の大槻じいさんに
聞いてください
「デッキで朝日の写真」
ねえ　取り引きしませんか？
取り引き？
そちらの捜査状況を
教えてくれれば　幽霊船長の…
断る！
幽霊船長など　いるわけがない
なぜ　この私が　尋問に
答えなければならないんだね
この船の上で
あなたに何の権限があるのかな？
運航の邪魔です
操舵室から出てください
くそっ
ははは…
それは　若王子が犯人だからじゃよ
何？証拠はあるのか
わしが　そう思うからだ
えっ　いや　それは…
あの悪魔は　自分より優秀な人間は
１人残らず
この世から消すつもりなのさ
優等生の水崎も
奴に殺されかねんね
若王子が水崎を？
自分よりも出世しそうなのが
気に入らんのさ
船長のことも心底　憎んでいた
そもそも２人の因縁は
オリエンタル号が始まりだ
何？オリエンタル号？
３年前　タンカーと衝突して
沈没した豪華客船だ
あの悲劇の豪華客船
オリエンタル号か…
ええっ
何だって　オリエンタル号？
３年前　タンカーと衝突して
沈没した豪華客船だ
鷹守船長と若王子も
あの船に関係している
オリエンタル号に？
もう一度
その名前を聞くなんて…
あの大惨事で遠野先輩の
妹さんがなくなって
復しゅうをするために
次々と殺人を犯していった
悲恋湖殺人事件
そのオリエンタル号の船長に
推薦されていたエリートの
若王子の座を奪ったのが
鷹守船長だ
それで恨みを？
まあ　結局　あの事故のせいで
２人ともエリートコースから転落
スクラップ同然の　この船に
飛ばされてしまったらしいがな
とにかく若王子には
動機が見つかったわけだ
アリバイも奴以外は完璧だった
事件の解決は早そうだなあ
よかった
うーん
どうしたの？はじめちゃん
この事件の背景に
あのオリエンタル号が
絡んでいるとしたら
想像以上に深い闇が
潜んでいるような気がする
設備も性能も最先端ですなあ
いや全く　すごいものだ
ゴージャスよねえ
白亜のリゾートホテルね
見て　船長よ
鷹守船長ね　ステキよねえ
お集まりの皆様　オリエンタル号の船長　鷹守郷三です
東洋随一　いや　世界屈指の
豪華客船　オリエンタル号の
デビューを祝して　皆様　乾杯
乾杯！
社運を懸けた豪華客船の
初代船長とは…
次期重役の座は
間違いないですな
くそっ　パーティーが始まったのに俺たちは勤務か
ご存じですか？若王子さん
この時間に
勤務につかされているのは
皆　あなたに船長に
なってほしかったメンバーです
鷹守船長が仕組んだことです
分かっている　奴は
私を徹底的に　潰す気なんだ
楽しんでください
今日は　ありがとう
鷹守の奴　よし
自動制御に切り替えろ
自動に？
了解
コンピューター制御に
切り替えます
さあ　パーティーに行くぞ
船舶業界の名士に
顔を売るチャンスだ
お前たちも来い
自動制御　オーケー
待ってください　若王子さん
船乗りってステキですわ
今度　操舵室へご招待します
船長は　お年ですから
若王子
右舷に舵を取れ
こちら　タンカー竜王丸
どうした？聞こえないのか
右舷に舵を取れ
何だ　貴様
任務は　どうした？若王子
メーデー　メーデー
どうしたのかしら？
さっさと操舵室へ戻れ　負け犬め
邪魔だ　どけ
助けて！
おい　しっかりしろ
あの悪夢から　ちょうど３年か
あの事故さえ　あの事故さえ
起きていなければ
こんなボロ船に…
事実がバレたら
お前は終わりだぞ
私だけでしょうかねえ
何だと？
あなたは　あの夜
こいつを監視台の見張りから
パーティーに呼び出したそうだな
こいつが監視台を離れなければ
タンカーとの衝突は避けられた
あなたの致命的なミスだ
貴様…
お互い口をつぐんでいるかぎり
真実は闇の中
永遠に葬られる
ほとぼりが冷めるまで長かったが
まだ　本社に戻る望みを
捨てたわけじゃない
何だ　お前か
気が利くな
き　貴様！毒を…
どうした？
何があったんだ
大変よ　はじめちゃん
若王子さんが
こ　これは…
自殺ですよ
この襟章は一等航海士の
若王子の上着に間違いない
写真は　やめろ
自殺かどうか　調べてみなくては
おっさん　何だ　これ？
何だ　これって…
何だ　これ　モールス信号かな
俺　読めますけど
ええっ　お前が？
ガキんとき　ボーイスカウト
入ってますから
人は見かけに　よらんもんだなあ
本当…
「私　若王子幹彦は」
「末期がんに侵されている」
「がんで死ぬ前に
自らの命を絶つことにした」
「だが　その前に
復しゅうを果たす」
「私を陥れた鷹守船長と…」
大丈夫？時原さん
ごめんなさい
ちょっと　めまいが…
部屋で休んだ方がいい
いえ　大丈夫です
続けてください
「私を陥れた鷹守船長と
水崎を殺して」
「私も海の藻くずとなる」
水崎を殺した？くそっ
金田一！
水崎さん　水崎さん
どうした　いないのか？
どこで殺されたんだ
おっさん　今　何時だ
６時５０分だ
水崎　水崎…
勤務表か
午前６時から　操舵室勤務だ
水崎さん！
くそっ　遅かったか
若王子の遺書どおりだな
水崎さん
ん？水崎じゃないぞ
えっ　何だって？
こいつは三等航海士の加納だ
加納さんが　なぜ？
若王子が　水崎と加納を
間違えるわけもないし
どういうことなんだ
おっさん　これだ
恐らくこれが凶器だ
毒が仕込んであるんだろう
かじを取れば刺さるように
仕掛けてあったんだ
それでは　加納は身代わりに…
確かに針のあとがある
でも　どうして　水崎さんの
勤務時間に加納さんが…
何があったんですか？
一体　どうしたんですか？
水崎さん
あんたこそ　一体　どこにいたんだ
やめろ　なんで死ぬんだ
マジかよ
あんた　やめなさい
来ないで
へへっ
何か　おかしい
航路から外れている！
何だって？
航路から外れてる？
大変だ　進路が逆方向だ
すぐに船を止めなければ
もしもし　機関室
はじめちゃん　早く来て
時原さんが死んじゃう
なぜだ　なぜ死ぬんだ
やめろ！
幽霊船長に　よろしく
ダメだ　死ぬな！
時原さん！
どうして　どうして時原さんが？
金田一！
バカ野郎が
はじめちゃん！
すまない　美雪
俺　このまま　ここで死ぬのか
真犯人の正体も知らずに
ダメだ　考えるんだ
幽霊船長は　オリエンタル号事件に関係ある人物に違いないんだ
太陽の光か
そうだ　赤井さんの写真
分かった　犯人の仕掛けた
トリックが…
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
剣持のおっさんに招待された
沖縄　船の旅
だが　そこで
俺たちを待っていたのは
動く密室の中で起こる
奇妙な連続殺人事件だった
犯人は幽霊船長なのか？
この謎　必ず解いてみせる
じっちゃんの　名にかけて！
幽霊船長に　よろしく
ダメだ　死ぬな
時原さん！
どうして…
どうして　時原さんが？
金田一
ああ！
はじめちゃん！
時原さーん
くそ
はじめちゃん
待ってろ　金田一
水崎さん！
丈二さん！
金田一君　これを
やったぞ！
助かった
丈二さん
よかった…
はじめちゃん！
お前が溺れて　どうするんだ
金田一！
おっさんじゃない…
何しに来たのさ？
ばか野郎！
お前を死なせてたまるか
剣持警部
よかった…　よかった　無事で
もう　ダメかと思ったよ
ヘッ
お前みたいな　小憎らしいガキが
そう簡単に　くたばって
たまるか
おっさん
あ？
ありがとな
何　言っとる　今更
でも　俺　結局
何にも役に立たなかった
ううん
はじめちゃん　勇敢だったよ
とっても
ヘッ　一生やってろ
よし　もう大丈夫だ
そうですか
時原さん　よかった
うん
しかし　時原　優は
なぜ　自殺しようとしたんだ？
ひょっとすると　水崎に関係が…
え？
水崎さんに？
どうだ　気分は？
もう　死のうなんて
考えるんじゃないぞ
水崎君が　命を懸けて
お前さんを助けてくれたんだ
水崎さんが…
少し　水を飲んだだけです
大丈夫ですよ
俺の勘だが
あの２人　水崎と時原　優は
元　恋人同士だったんじゃ
ないのか？
えっ？
でも　水崎さんは洋子さんと
とにかく　今は
そっとしておいてやることだよ
な…　何をするんだ　あんた！
あ？
やめろよ　あんた　こんなときに
やめろ！
何しやがる　貴様！
あんた
最低のジャーナリストだな
人を傷つけるようなもんばかり
撮って　恥ずかしくないのかよ！
フン　俺たちの商売は
スクープを撮って
何ぼの世界なんだよ
それに　俺が　こんなゴミみたいな
仕事だけしてると思ったら
大間違いだぜ
見ろ！
この記事は　俺が書いたんだ
「オリエンタル号
大惨事の真実を暴く」？
「豪華客船オリエンタル号は
なぜ沈没し」
「多数の死者を出したのか？」
「衝突したタンカーに残った
ただ一人の生存者が」
「隠された真実を告白してくれた」
見覚えがあるぞ　この記事
３年前　この俺の記事は
一大センセーションを
巻き起こしたんだ
社会に正義と真実を訴えた
この記事は　あんたが書いたのか
私も　読んだことあるわ
そうよ
ピュリツァー賞を
もらっても　いいくらいさ
だからって　あんな写真を
撮っていいことには　ならないぜ
フン
あ　どこ行くの　丈二さん？
ん？
丈二さん！
疲れてるのに無理よ
水崎さん　あなた船の操縦を？
私が　やるほか　ないんです
鷹守船長　若王子さん
加納君の３人が
亡くなってしまった今
この船を操縦できる技術を
持っているのは
私だけなんです
でも　丈二さんが倒れちゃうわ
早く航路を戻さないと
この船は遭難してしまうんだ
でも…
ああ　どうしたらいいの
無線も壊されてるんじゃ
手の打ちようがないわ！
あっ　あれは
え？
島だ！
はじめちゃん　島よ
ああ　島だ
ああっ　人だ
崖のところに　人がいるぞ
何？
ああ　霧で見えなくなっちまった
本当に　いたのか？
本当だ！
もしかしたら　幽霊船長
幽霊船長…
まさか
そんな　ばかな
助かったな
助かったんだ　俺たち
だって　人がいたんだ
俺　見たんだ！
そうか　ＳＯＳを頼もう
はじめちゃん
確かに
もし　本当に
あの島に人がいるなら
無線で　近くの船や港に
連絡が取れるかもしれない
あの崖だな
人が見えたっていうのは
よし　上陸したら
二手に分かれて捜そう
ホントに　人だったのかよ
まるっきり
無人島にしか見えないぜ
やっぱり　幽霊船長だったんだ
そして　俺たちは
この島で　全員　皆殺しに
ビクビクするなら　帰れ！
ウワーッ！
吉田
どうしたんですか？
か　かまれた…
何だ　脅かしやがって
あれ　赤井さんは？
え？
あれ…　さっきまで
後ろ　歩いてたんだけど
すいません
少しだけ　休ませてください
だから　船で休んでいろと
言ったんだ
すいません
ちょうどいい
君に１つだけ　聞きたいことがある
加納が　君の身代わりになって
死んだのは間違いない
犯人の若王子は　君が　朝６時から
勤務することを知っていて
かじに毒を仕込んだんだ
しかし　君ではなく
加納が　かじを握ったため
やつが犠牲になった
そこで　謎が残った
あの時間
君は勤務をすっぽかして
どこに　いたのかということだ
つい…　寝坊を
自分の部屋でか？
ええ
そいつは　うそだ！
あのとき　俺と金田一は
君の部屋に行ったが
もぬけの殻だった
本当は　どこにいたんだ？
じゃあ
勤務時間でもない加納が
なぜ　朝６時に
かじを取ったんだ？
すいません…　分からない
剣持さん　若王子さんは
本当に犯人なんでしょうか？
それ以外　考えられんね
若王子の自殺で
事件は　全て決着したんだ
君が　うそをつき　何かを
隠しているという点以外はな
何だったんだ　さっきのは？
やっぱり　誰も　いやしねえ
この島は　正真正銘の無人島だ
あ？
ん？
何だ　くそ！
ばかにしやがって
誰だ　こんな
いたずらをしやがったのは！
ん？
あれ
あんた　何で　ここに？
ギャアー！
あの声は！
くそ！
一体　どういうことなんだよ
犯人は
若王子じゃなかったのか？
やつが自殺したってのに
何で　また殺人事件が起こるんだ？
幽霊船長だ
あの島には
誰も　人なんかいなかった
やっぱり　幽霊船長なんだ！
落ち着かんか
赤井さんは
きっと　足を滑らせて
崖から落ちたんだ
おおかた　夕日でも撮ろうと
シャッターチャンスを
狙ってたんだろう
なあ　刑事さん
うーん
多分　そういうことだと思うが
違う　幽霊船長だ！
今夜も　きっと　１人消えるんだ
そして　明日も　また１人
そして　最後は誰もいなくなって
この船は
本物の幽霊船になるんだ！
とにかく　一刻も早く　この船を
いちばん近い港につけます
そこで　救助を頼むしかない
うん　そうだな
間違いない
幽霊船長は　まだ生きている
この船の中に　いるんだ
そして　俺の推理が正しければ
幽霊船長の正体は
オリエンタル号　大惨事の関係者
やつは　若王子の自殺を演出し
事件を
締めくくったつもりでいたはずだ
ところが　そのあとに
思いがけないことが起こった
見ろ！
この記事は　俺が書いたんだ
あのとき　この記事を書いたのが
赤井だったと初めて知ったんだ
だから
予定外だった赤井まで殺した
そうだ
俺が　この記事を読んだとき
この船に乗っている全員が
あの場所にいた
「豪華客船オリエンタル号は
なぜ沈没し」
「多数の死者を出したのか？」
「衝突したタンカーに残った
ただ一人の生存者が」
「隠された真実を告白してくれた」
タンカーに残った
ただ一人の生存者
ただ　一人の…
ただ　一人の…
くそ！どんなことでもいい
糸口さえ見つかれば…
あ　停電？
はじめちゃん　はじめちゃん！
美雪！
はじめちゃん　怖い
全然　眠れなくて　怖いから
電気を全部つけっぱなしで
シャワーを浴びたの
出てドライヤーをつけた途端に
真っ暗になっちゃって
私　また　何か起こるのかって…
ばかだな　美雪は
ブレーカーが落ちて
停電しただけだよ
停電？
でも　廊下の電気は　ついてるわよ
え？
どうしたの　はじめちゃん？
そうか　俺は　ばかだ
何で　今まで
思いつかなかったんだ
美雪　ここで待ってろ
はじめちゃん！
おっさん　起きてくれ　おっさん！
何だよ　金田一　こんな夜中に
あれ　停電か？
おい　どうしたんだ　金田一！
吉田さん　起きてください
吉田さん！
こ…　今度は　誰が死んだの？
やっぱり　そうか
おっさん　船の見取り図
用意しといてくれ！
はじめちゃん
何なんだ？
思ったとおりだ
ということは
サンキュー　おっさん
これで
鷹守船長が消えた謎は解けた
残る謎は　１つ
金田一
はじめちゃん
わりい　わりい
目覚まし止めるの　忘れてた
おっさん　加納が殺された朝
加納の部屋の目覚まし時計も
６時にセットされてたって
言ってたよね？
ああ　そうだが
ということは…
ちょうど　今と同じ
朝日か
おっさん　赤井が撮った
ポラロイド写真　持ってる？
ああ　持ってるぞ
写真が　どうかしたのか？
そうか　そうだったのか
だから　水崎さんじゃなく
加納が殺されていたのか
分かったのか　金田一？
おっさん　美雪
とうとう　分かったよ
幽霊船長の正体が
謎は　全て解けた
ホントに　もう大丈夫？
この船の全員の運命が
僕に　かかってるんだ
頑張るよ
君の命を守るためにも
丈二さん
いいねえ　若いもんは
お前たち
もう　結婚の約束は　したのかい？
そんな…
好き同士は
一緒になるのが　一番だぞ
大槻さんも
祈っていてください
この辺りは　特に岩礁が多くて
操縦が難しいんです
細心の注意を払わないと
あっという間に
遭難してしまいますから
せめて　この老いぼれが
船を操縦できたらな
お前さん１人に
こんな負担は　かけさせないものを
大槻健太郎！
鷹守船長
若王子一等航海士ら
４人を殺害した容疑により
逮捕する
大槻さんが？
もう　謎は
全て解けてるんですよ　大槻さん！
まさか…
大槻！
丈二さん
来るな！
こいつを殺せば
俺の復しゅうは終わるんだ
それまで捕まるわけにはいかん
この船を操縦できるのは
水崎１人なんだぞ
水崎を殺したら
貴様まで遭難するんだ
そんなことは覚悟のうえよ
お前ら全員
道連れにしてやるわ！
いかん　岩礁だ
岩礁に　ぶつかる
何だって！
このままでは
船は　木っ端みじんだ
どうした？
何事だ
全員　死んでしまう
さすが　見事なもんだ
その慣れた手さばき
かじなんか
握ったこともないはずのあんたが
なぜ　水を得た魚のように
操縦できるんだい？
とうとう　わなにかかったな
鷹守船長
若王子一等航海士ら４人を
次々と殺害した真犯人
幽霊船長は
お前だ
そう　確かに　あんたには
完全なアリバイがある
船長室に
朝食が用意された時間にはね
でも　あんたが
その時間にいた場所からなら
７時２５分のトリックを
可能にすることができるんだよ
幽霊船長　そろそろ
死の航海に　いかりを下ろそうか
お前の殺人計画は　俺が崩す
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？﻿コバルトマリン号での
連続殺人事件も
若王子の自殺で
全て決着がついたように見えた
だが　無人島で　新たな殺人が…
これも
幽霊船長の仕業だというのか？
いや　犯人は　この中にいる
謎は　全て解けた
この事件の真犯人
幽霊船長は
お前だ
あんただろ？香取洋子！
すまんな
ど…　どういうこと？
全ては
俺が仕組んだ　お芝居だったんだよ
剣持のおっさんと　大槻さんにも
協力してもらったんだ
あんたは　今　見せた
船を動かす技術を使って
実に巧妙な
殺人トリックを仕組んだんだ
何よ　わ…　私は
なんとかして
船を止めようと思っただけよ
なのに…　犯人は
若王子さんじゃなかったの？
遺書にだって　そう…
この遺書は　あんたが書いたものだ
モールス信号を使えば
筆跡鑑定が　できないと計算してね
私
モールス信号なんて知らないわ
うそだ！洋子が人を殺すなんて
私は　信じない！
彼女の人柄は
私が誰よりも知っています
第一　彼女には動機がない
そうでしょ？
動機は　あるさ
鷹守船長　若王子　加納　赤井
殺された　この４人は
３年前に沈没した豪華客船
オリエンタル号と
深くつながっているんだ
そして　洋子さんは
その犠牲者の遺族なんだよ
洋子が…
オリエンタル号の遺族？
ちなみに　この船には
あの大惨事の遺族が
もう１人　乗っていた
え？
うん？
時原　優さん　あなただ
な…　なぜ　それを？
これ
赤井の記事が載ってる雑誌です
ここに　オリエンタル号の
犠牲者名簿がある
時原昌樹
時原なんていう名字は
そうはないからね
恐らく　あなたの…
主人です
え？
あなたが　この船に乗った訳が
何となく分かるような気がするよ
私は…　私は
復しゅうするために
だから…
私たちの
新婚旅行だったんですもの！
邪魔だ　どけ！
あなた！
大丈夫だ　すぐに僕も降りるから
できるだけ
船から離れるんだ
大丈夫ですか？
よければ　これを使ってください
あなた
あなた！
あなたー！
最愛の主人を死に追いやった
悪魔のような男
それが　若王子でした
若王子を殺して　自分も死のう
私は　そう決心し
この船に乗ったんです
でも　できなかった
どうしても
若王子が自殺したと知ったとき
私には　もう
生きている理由は　なくなった
だから…
そうだったのか
あの大惨事は
さまざまな因縁を生み出した
だが　忘れてはいけないのは
あの事故の遺族は
オリエンタル号にだけ
いたわけじゃないということだ
オリエンタル号に　ぶつかって
沈んだタンカー　竜王丸にも
深い因縁が残ったんだ
どういうこと？
これを見てくれ
「オリエンタル号大惨事の
真実を暴く」？
赤井の記事か
「本誌は　沈没したタンカー
竜王丸の乗組員で」
「ただ一人生き残った
Ｔ・Ｋさんにインタビューした」
Ｔ・Ｋ？
そう　加納達也さ
な…　何だって！
彼が　その
ただ一人の生き残りだったんだよ
あの事故の夜　鹿島船長は
浴びるように酒を飲んで
フラフラだったよ
いつも　そうなんだ
あの人は酒癖が悪くてね
オリエンタル号に　ぶつかっても
しばらくは眠り込んでて
気が付かないぐらいだった
２５１人もの犠牲者は
鹿島船長に殺されたようなもんだ
このスクープは
一大センセーションを巻き起こした
竜王丸の船長が
泥酔していたという証言は
裁判でも　もっとも重視され
事故の責任は　一方的に
タンカー側にあったという
判決が下されたんだ
違う　違うわ
全て　でたらめよ！
父は　お酒なんか飲んでいなかった
そうよ　調べれば　すぐ分かる
私は　竜王丸の船長
鹿島伸吾の娘よ
き…　君が？
でも　だからって
なぜ　私が殺人を？
加納さんを殺す動機が
あったとでも言いたいの？
そ…　そうだ　金田一
ちょっと　おかしいぞ
あの朝　加納は　水崎の
身代わりになって殺されたんだ
水崎が　たまたま寝過ごして
勤務を　すっぽかさなければ
水崎が毒を仕込んだ　かじを握り
犠牲になっていたんだぞ
なぜ　私が
水崎さんを殺そうとするの？
私たちは愛し合ってるのよ
それも
全て　あんたの計算だったんだ！
もし　捜査が入れば
オリエンタル号事件とのつながりから
あんたが疑われるのは　明白だ
だから　オリエンタル号に
関係のない水崎さんが
狙われたように見せかけ
捜査の目を
オリエンタル号から
そらそうとしたのさ
水崎さん
あんたは　恐らく
寝過ごすように
睡眠薬を飲まされたんだ
心当たりがあるんじゃないか？
そ　それは…
そうね　そうしようと思えば
できたでしょうね
だって　私たち　あの朝
同じ部屋で
眠っていたんですもの
な…
洋子
でも　もし仮に　そうだとしても
水崎さんの勤務時間に　加納さんがかじを取りに行くなんて
どうして分かるわけ？
加納さんの勤務時間は
夕方だったのよ
いや　あんたは知っていたんだ
加納が
６時に操舵室に来ることを
大槻さん
これは　赤井が甲板で撮った写真だ
何時の夕日だか　分かりますか？
こりゃあ
５時ごろの夕日だろう
ありがとう　今ので　更に
俺の推理が明確になったよ
実は　これは
午前５時の朝日なんだ
朝日？
ベテランの機関士の
大槻さんでさえ
夕日と言われて
夕方と思い込んでしまったんだよ
あんたの仕組んだ
絶妙なトリックにかかってね！
い…　一体　どういうことだ？
あの夜
あんたは　操舵室で
かじを取っていた若王子を
殺害した
そして
鷹守船長のときと同様に
死体を海に放り込み
自ら　かじを取り
船の進路を　正反対の
北向きに変えて固定したんだ
それから　操舵輪に毒を仕込み
急いで自分の部屋に帰って
水崎さんを呼んだ
もちろん
寝過ごすようにするためにね
一方　加納は目覚まし時計が鳴って６時に目を覚ました
そして　気付いたんだ
水平線近くの太陽に
加納は　それを見て　船が逆方向に
向かっているとは思わなかった
「しまった　また寝過ごした」
「もう　夕方の６時だ」と
思い込んだんだ
なぜなら　加納は
ナルコレプシーといって
いつまでも眠り込んでしまう
持病を持っていたからだ
そのせいで　しばしば
勤務に遅刻していた加納は
またしても遅刻したと思い込み
操舵室に　かけ込んだんだよ
水崎さん
何だい？
覚えてるかい？あのとき
船は正反対に向かっていた
あんたは　確か　こう叫んだよね
たいへんだ
進路が逆方向だ！
何もかも　想像にすぎないわ
忘れてない？
私には
アリバイがあるんじゃなかった？
船長が　いなくなった朝のことは
覚えてるでしょ？
そ…　そうだ
犯人が
船長室の朝食を用意したのは
７時２５分ごろなんだ！
７時２５分
私が　船長室にいなかったことは
誰もが知ってるわ
そのとおり！あんたは
地下１階の放送室にいたよ
だが　あんたは
船長室には　一歩も入らずに
あの朝食の支度ができたんだ
何だって！
そんなことが…
あの夜　船長を殺害し　始末した後
あんたは　船長室で
朝食の用意をした
コンロやコーヒーメーカーなどの
スイッチは
すべて　ＯＦＦにしたまま
卵を落としたフライパンを置き
コーヒーをセットし　同様に
トースターをセットした後で
テーブルの上のものを
いかにも朝食の前で
あるかのように並べたんだ
そのまま　地下１階の
電源室に行ったあんたは
あらかじめ位置を確認してあった
船長室のブレーカーを
いったん切った　そして　再び
船長室に戻ったあんたは
トースターやコンロのスイッチを
ＯＮにした
そして　翌朝　７時２５分
お客様に　ご案内いたします
レストランに
朝食のご用意ができております
見つかった　船長？
いや　どこにも
そして　あんたは　水崎が
その場を立ち去るのを待って
素早く　電源室に向かった
放送室の隣の電源室に行くのに
手間は　かからない
あんたは船長室のブレーカーを
素早く入れたんだ
こうすれば
遠く離れた３階の船長室で
無人のまま　コーヒーが沸き
パンや　目玉焼きが
焼けるってわけだ
俺は　偶然起きた停電から
このトリックに気付いた
この船のブレーカーが
どこも４部屋ごとに
まとめられていたことに
覚えてるかい？あの朝
あんたは　俺のために
ホットミルクを作ってくれたよな
あのとき　なぜか
あんたは　わざわざ遠い厨房まで
ミルクを温めに行った
変だなと思ったんだよ
自分の部屋に戻って
コンロを使えば早いのにってね
でも　それには訳があったんだ
あの朝　５時半
あんたの部屋には
電気が通じず
コンロが使えなかったんだ
なぜなら　あんたの部屋は
この船で　ただ一部屋
船長室と同じブレーカーを
使っていたからなんだよ
この事実に気付いたとき
俺は確信したよ
あんたが　幽霊船長だとね！
洋子…　知らなかったんだ
君が　あの鹿島船長の娘だなんて
許してくれー！
え？
丈二さん
僕も乗っていたんだ
あの　オリエンタル号に
ええっ！
僕の　せいなんだ
監視要員だった僕が
監視台を離れたせいで…
うそ…　うそよ
あの日
あの日　僕は浮かれていた
だから　鷹守船長に
監視台を離れて　パーティーに
参加するように言われたときも
感激するばかりで
まさか
あんな事故が起きるなんて
あの事故は
鷹守船長と若王子さんの
醜い対立が原因で起こったのです
２人は　それを隠し通すために
あらゆる手を尽くした
監視台には　死亡した他の船員が
出ていたと報告書を偽造し
僕の記録は抹消された
そして
うその証言をマスコミに流せと
裏金で加納君を買収したんだ
裁判を有利に導くために！
そ　そんな…
まさか　本当に
そんなことをしたんですか？
そんな卑劣なことを
どこが卑劣なんだね？
亡くなった犠牲者への補償は
保険会社がしてるんだ
ほかに　何が必要だ
君が事件の真相を蒸し返しても
何一つ　いいことはないんだぞ
会社は　立ち直らないほどの
大打撃を受けることになり
当然　我々３人は　船舶業界から
永遠に追放されるだろう
僕は　怖かった
二度と船に乗れなくなるのが
怖かった
どんな罪に問われようと
当然の報いだ
でも　船に乗れなくなるのだけは
耐えられなかった
広く自由な海原を行く
あの感動を奪われるくらいなら
卑怯者にでも何でも　なってやる！そう　思ったんです
すべては因果の報いです
私たち４人は　罪を償うために
見えざる神の手で
この船に乗せられたのです
お願い！自分を責めないで
あなたは償った
もう十分　償ったわ
あなたー！
しっかり！
駄目だ　もう息がない
あなた…
すいません　すいません
すいません　すいません…
あなたは　二度も
命を懸けて罪を償おうとした
神様は
あなたを許していらっしゃる
きっと
私の負けだわ　金田一君
洋子！
私ね　幼いとき　母と死別したの
父が航海に出るたび
私は　親戚に預けられて育った
あっ！
ワアーッ！
誕生日　クリスマス
父は　いつも遠い国にいた
でも　私は幸せだった
父が海から戻る日が
最高の記念日だった
でも　そんな幸せが
壊れる日が来たのよ
スクープに気をよくした赤井は
うそ八百を書き続けた
父を　大惨事の悪役
悪魔に仕立て上げることで
遺族や世間の憎しみを
あおり続けたのよ
人殺し！
２５１人が
お前の父親に殺されたんだ
分かる？
何千何万という人が
最愛の父に　唾を吐くのが
どんな気持ちか
来る日も来る日も　私は
息を　ひそめて
暮らさなければならなかった
殺してやる　父の誇りを
泥まみれにしたやつらを
私から生きる望みすら
奪ったやつらを！
私は　復しゅうを誓った
そう　私には確信があった
加納の証言は
１００パーセント　うそだって
だから
鹿島の娘だということは伏せ
加納に近づいた
私ね　あの事故の
本当の原因を知ってるの
あんなことが
秘密にされてるなんてね
へえ　あんなことって？
なーんだ　あなた知らないんだ
教えてあげましょうか？
ヘン
そんなこと
言われなくたって知ってるぜ
まんまと引っかかった加納は
秘密を漏らしたわ
私は知った
全ては　鷹守　若王子
そして　加納のせいだってことを
後は計画どおり
父から教わった船の技術に
磨きをかけ　水崎さんに近づいて
この船に乗れるよう
取り計らってもらった
そして　何食わぬ顔で
この船に入り込んだのよ
そう　全て　あなたの言うとおりよ
これで　長い復しゅう劇を
終わりにすることができたわ
あなたの　おかげね
洋子
私は復しゅうのために
あなたを利用しただけ　さよなら
もう　幽霊船長が出ることは
なくなったな
もう二度と
その後　水崎さんは
オリエンタル号の元乗組員として
ついに　あの惨事の真実を
発表しました
彼の告白は
センセーショナルな話題となり
事故の再検証を促し
ついに　タンカー竜王丸の船長
洋子さんの　お父さんの
名誉回復にまで至ったのです
そう　これが
その　何て言うかな
洋子さん　まだ許せない？
水崎さんのこと
名探偵にも
分からないことがあるのね
私ね　彼を許せないなんて
思ったことないのよ
父も同じだったから
え？
父も　船を降りることなんて
できない人だった
私が泣いても叫んでも
ヤダヤダ
お父さん　お船に乗らないで！
洋子を置いてかないで！
ごめんよ　洋子
だけど
どんなに遠く離れていても
父さんの心の中には
洋子がいるんだよ
いつも思ってる
この青く深い海のようにね
私には分かるの
彼の中には
父と同じ
海への愛があふれてる
これ　頼まれたんだ
水崎さんに
あ…　これは！
いつまでも　待ってるってさ
なあ　美雪
また　海に行こうな
今度は　幽霊船の出る
霧の海じゃなくってさ
青空みたいに　でっかーい海に
うん
白い雲のような船に乗って
今年のクリスマスは
美雪と一緒に　スキーだぜ
外は　マイナス１５度
とても寒いけど
２人で過ごす夜は　あったかいね
窓の外には
ほら　サンタクロース
じゃない　赤いスキーウエアか
何で　あんな所に？
え　先輩がいない？
まさか！
恋人たちの聖なる夜
純白のゲレンデが赤く血に染まる
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
渋沢さんのビンディングを
いじったのは　ヤツだ！
し…　白峰さん
犯人は　防犯カメラがあるのを
知ってるうえで
わざと　犯行をやってみせた
それは　なぜか？
今年の冬休み
私と　はじめちゃんは
不動高校スキー部の
合宿に参加して
スキーの指導を
受けることになりました
わー　あああー
あらあら　あらら…
くー…　いってえ
ダメねえ　はじめちゃん
どうせ　俺は　運動オンチだよ
だから　俺　スキーなんか
したくなかったんだ
美雪！
お前が　無理に誘うから
でも　はじめちゃん
乗り気だったじゃない？
新しいスキーウエア
買ったりして
よく似合うわよ
ヘン　どうせ　バーゲン品だ
あら　まあ
ずいぶん派手に転んだわね
デッヘヘヘヘ
ビンディングが
合ってないんじゃないの？
かもな　おい　白峰
ちょっと　見てやってくれよ
おい　スキー履いてみろよ
あっ　はい
ん　何だ？こりゃ
ゆるすぎるぜ
そうすか？
あら？
白峰さんの
スキーウエアの色が！
あ！
ああっ
これは温度によって
色が変わる新素材のウエアだ
こいつは気温が下がると
赤くなるタイプさ
ヘエ
お前　こんなウエア持ってたっけ？
着るのは　今日が初めてだけどね
ほら　どうだ？
あ…　あれ？
何か　いい感じっす
さすがだなー
チューンナップの名人
だけど　俺のスキーには
手を触れないでくださいよね
ケガして試合に出られないと
困るから
チッ
おい　雪岡
俺は　ごめんなんですよ
渋沢先輩の　二の舞だけはね
渋沢？
雪岡！
お前　言っていいことと悪いことがやめなさい　赤穂君！
ヘッ！
風呂にでも入って　あったまるか
美雪　行くぞ
ウン　ちょっと待って
寒いからさ　やっぱ
シチューとかがいいよな
おつかれさま
飲み物　用意してありますから
さ　どうぞ
ウッヒョー
こいつは　ありがたいや
大丈夫かよ？鈴森
熱があるんだろ
無理せず　寝てろよ
いえ　もう大丈夫です
鈴森さん
ちゃんと寝てなきゃダメ
あなたが無理して
風邪を長引かせると
スキー部全体が迷惑するんだから
あ…　はい
それにしても
合宿所に着くなり　熱出して
一歩も外に出られないなんて
マネジャー失格ね
すみません
だいたい　スキーも滑れないヤツが
マネジャーなんて
無理なのさ
第一　スキーも
持ってないんだから
雪岡君
ナイタースキー　７時集合よ
ナイタースキー
夜も滑るんですか？
もちろんよ
インターハイも近いし
みっちり　滑り込んでおかないとねひょっとして　俺たちも？
あなたたちは
ホテルで休んでていいわ
ですよね　よかった
白峰さん！
デザートが　まだですけど
俺は　いいよ
あの足　スキーで？
去年　練習中に
太ももを複雑骨折したの
復帰してきてからは
スキーのチューンナップ専門よ
彼の気持ちは
おだやかじゃないと思うけど
あっ　そうか！
俺　やっと思い出しましたよ
渋沢さんって
２ヵ月前　競技中に
転倒事故を
起こした人ですよね？
そうだ
あれは　滑降の決勝だった
競技中で
突然　ビンディングが外れた
渋沢は　転倒し
コースの外の大木に
激突したんだ
今も意識が戻らず　入院したままさ
そうそう　渋沢さんって
長野オリンピックにも
出場予定だったんでしょ？
スキー部のチューンナップは
白峰さんが　やってたんですよね？
だとしたら
渋沢先輩の外れたビンディングを
調整したのは…
もちろん　白峰君よ
競技中に
ビンディングが外れる
そんな初歩的なミスを
白峰がするなんて
まだ信じられない
わざとだよ　わざと
決まってるでしょ
雪岡！
だって　そうでしょうが
白峰さんだって
渋沢さんと　１・２を争うほどの
スキーヤーだったんだ
ケガさえしなけりゃ
オリンピックにだって
行けたかもしれない
どんどん登りつめてゆく
元ライバルに　むかつく　白峰さんは
魔が差して
渋沢さんのビンディングを
やめろ！
白峰は　そんなヤツじゃない
フン
白峰は
絶対　そんなことしない
ただ…　ただ　あいつは
意地っ張りで
自分の殻に
閉じこもり過ぎるんだ
だから　今度のことだって
みんなに誤解されちまうんだ
ナイタースキーか
おお　寒っ
こりゃ　氷点下だぜ
このクソ寒いのに
よくやるよ　スキーなんて
ん？
何だ？
し…　白峰さん
先生　白峰は？
大丈夫　命に別状はないわ
そうですか　よかった
誰かが　後ろから殴って
雪の中に埋めたんだろう
もし　金田一が発見してくれなきゃ白峰は　今頃　凍死してたぞ
一体　誰が白峰君を？
白峰先輩を憎んでるヤツなら
この中に　いっぱい
いるんじゃねえの？
雪岡　お前
俺たちの中に
犯人がいるって言うのか？
その可能性は　ありますね
このホテルの
玄関の防犯カメラが
犯行現場を
偶然　映していたんだ
何？
犯行現場を？
防犯カメラが捕らえた
犯行現場です
犯人のものと思われる足跡が
白峰さんを埋めた地点から
まっすぐ　乾燥室の入り口に
向かって続いてましたよ
犯行に使われた
血のついたスキーカバーも
乾燥室にありました
犯行に使われたと思われる
ゴムカッパは
ここから持ち出したんでしょう
だからって　このホテルの中に
犯人がいる証拠には
ならないでしょ？
いえ　問題は
凶器として使われた
スキーなんです
スキーですって？
それ　どういうこと？金田一君
スキー部員のスキーは　すべて
スキーロッカーに入っていて
全部　鍵がかかっていました
鍵は　チェクインした客にしか
渡さないシステムでしょ
そうか　犯人は
乾燥室にあるスキーを使って
白峰君を襲った　つまり
スキーロッカーの鍵を持った人物が
犯人ということになるわ
ええっ！
そんな
バカなことを
やっぱり
警察に連絡すべきかしら
先生
コーヒーをいれたわ
どう？犯人の検討は　ついた？
あ…　いえ　全然
そうですか
いただきまーす
あ　そうだ　鈴森さん
どうして　白峰さんは
あんな時間に
外に出たんでしょうね？
雪質のチェックじゃないかしら
雪質のチェック？
夜のうちに雪の性質を見て
それに合わせて
スキーをチューニングするのよ
毎晩やってるんですか？
ええ　午後９時ごろにね
スキー部員なら　みんな知ってるわそうか…　すると
白峰さんを襲おうと思ったら
その時間
外で待ってれば　いいわけだ
そういうことね
白峰さんを殺したいほど
憎んでいる犯人は
殺したいほど憎む？
どうして　白峰さんを？
えっ
まあ　そういう人がいたとして
もし　ミステリードラマの
犯人だったら…
ゴムカッパで顔を隠し
スキーカバーを
自分のスキーに被せて外に出る
そして　そのまま
ホテルの外で待ち伏せする
やがて　憎き男
白峰の赤いスキーウエアが！
彼は　後ろから忍び寄ると
白峰さんの後頭部めがけて
スキーを！
や…　やめてくださいよ
鈴森さん
エッヘヘヘ
調子に乗り過ぎちゃったかな
白峰さんの　赤いスキーウエアか
でも　凶器のスキーは
一体　どこから？
それなのよね…　あっ
ヤダ　はじめちゃん
こんな寒いときに
タオル　外に干したりして！
ほら　こんなに
カチンカチンに凍っちゃって
はじめちゃん　どうしたの？
あっ　そうか…
そういうことだったのか
謎は　すべて解けた
オイオイ　何のマネだよ？
俺らを　こんなところに
呼び出したりして！
雪岡さん　そう　カッカしないで
これから　白峰さんが
襲われたときの状況を
そのまま　みんなの前で
リプレイしてみようと思ってね
何だって？
何のために　そんなことをするの？
この事件の犯人を　みんなの前で
明らかにするためですよ
そう　白峰さんを襲った犯人は
この中に　いるんだ
白峰さんを襲った犯人が？
冗談じゃないぜ
まさか
犯人が　待ち伏せていると
ゲレンデへ白峰さんが現れ
犯人の追跡が始まった
だが　犯人は　どういうわけか
この辺りにある
立ち木が多くて　人目につきにくい
犯行には
絶好の場所を　やり過ごし
防犯カメラのある玄関前に
差しかかったときになって
やっと　飛び出し
白峰さんをスキーで
殴り倒した！
そして　気絶した白峰さんを
雪に埋めたあと
凶器のスキーをかついで
まっすぐ　乾燥室へ戻ってきた
入ってる
あるわ
俺のも
あたしのも
ほら！
七瀬さんと金田一君のも
オイ　金田一！
ロッカーに　俺らのスキーは
全部あるじゃねえか
これは　どういうこと？
その持ってるスキーは
誰のなんだ？
このスキーこそ　犯人が
容疑を逃れるために仕組んだ
トリックなんだ
さあ　よく見ててくれ
このスキーの正体が
一体　何なのか
ああ…
それは！
何だよ？それ
白峰さんを殴った凶器は
スキーなんかじゃなくて
このスキーそっくりに凍らせた
ホテルのタオルだったんだよ
え？
タオル？
犯人は　犯行前
この　リネン置き場にあった
タオルを　洗い場の水で濡らして
そのまま　氷点下の屋外に
並べておいたのさ
すると　瞬く間に濡れタオルは
こんなカチカチの棒になる
こいつに
スキーカバーを被せれば
もう　誰が見ても
立派なスキーだ
犯行後は　こうして
ここに放り込んでおけば
室温で　たちまち濡れタオルに戻り証拠隠滅ってわけだ
でも　犯人は　どうして
こんな　手の込んだマネを？
もちろん　容疑を逃れるためさ
犯人はホテルの玄関に
防犯カメラがあるのを
知ってたんだ
知ってるうえで
犯行を　わざわざ
カメラの前で　やってみせた
それは　なぜか？
犯行の凶器が　スキーであり
犯人は　スキーを持った人物だと
俺たちに印象づけたかったからさ
犯人は　このトリックによって
容疑から外れる
ただ１人の
スキーを持っていない人物
それは…
鈴森笑美　君だよ
君が　白峰さんを襲った犯人だ
鈴森が白峰を？
まじかよ
鈴森さんが？
冗談やめてよ　金田一君
スキーを持ってないだけで
私を犯人扱いするなんて
まるで　子どもの推理じゃない
それに　何の証拠もないのに
ひどいわ
もちろん
証拠は　ほかにもあるさ
今　美雪が着ている
白峰さんのスキーウエアだ
それが　どうしたのよ？
こいつは
見てのとおり
氷点下では赤くなり
温度が上がると青くなる
新素材で出来ているんだ
白峰さんは　今日初めて
このスキーウエアを着た
君は　合宿が始まってから
ホテルの外に　一歩も出ていない
だから
これが青から赤になる瞬間は
見ていないはずだ
でも　君は
犯人の犯行を
ドラマ仕立てで話したとき
確か　こう言ったよな
憎き男　白峰の
「赤いスキーウエア」ってね！
そうね　確かに　そう言ったの
私も覚えてる
やあねえ
スキーウエアのことは
防犯カメラの犯行シーンを見て
分かったのよ
鈴森さん　君は　今の証言で
完全に墓穴を掘ったよ
何ですって？
君も　あのとき
俺たちと一緒に
防犯カメラで撮ったビデオを
見たように
あれは　モノクロだ！
スキーウエアの色なんて
絶対に分かりっこないのさ
ホテルに
こもりっきりのはずの君が
どうして　氷点下での
白峰さんのスキーウエアの色を
知ってるのか？
それは　君が白峰さんを襲った
本人だからさ！
鈴森さん　あなた…
鈴森
お前が　俺をやったのか？
どうして　お前が俺を！
アンタが　圭介を
あんな目に遭わせたからよ
え？圭介？
あたしと圭介は
中学のころから　ずっと…
滑れもしないで　スキー部の
マネジャーになったのも
いつも　圭介と
一緒にいたかったからよ
圭介のビンディングが
レース中に外れたのは
アンタが　わざと仕組んだせいに
決まってる
アンタだけは　絶対に許せない
許さないわ！
ねえねえねえ
そう決めつけるのは
ちょっと　早い気が
するんだけどな
こういうことは
当の本人に聞いてみたら？
ほ…　本人に？
も…　もしもし
もしもし　笑美？
俺だよ　俺
け…　圭介？
渋沢君から？
あいつ　意識が戻ったのか？
さっき
フロントに電話があったんだ
渋沢？
今　集中治療室から普通の病室に
やっと落ち着いたところ
あれから　２ヵ月
たってたんだって？
心配かけて　すまなかった
もう大丈夫だから
うん　うん
あ　それから　悪いんだけど
お前のほうから　ちょっと
白峰に謝っといてくれない？
え　謝るって　どういうこと？
例の　外れたビンディングだけど
あのとき　競技前で
俺　神経質になってて
ビンディングが
ぐらついてるような気がしてさ
それで…
じ…　自分でビンディングを
締め直した？
つ…　つまり　それって
渋沢さんが　自分でビンディングをいじったのが原因で
事故っちゃったってこと？
そ…　そんな…　だって
自分でビンディングをいじった？
そんな　アホなことで
俺は殺されかけたってワケか？
あ…　あたし　その…
勝手に思い込んでたみたいで
アアー！
俺だ
そ…　その声は　白峰？
バカヤロー！
イヤア
貴様のスキーの調整は　特に
細心の注意を払ってやったんだぞ
それを勝手に　いじって
自爆だと？
何考えてんだ？コノヤロー！
すげえ大声
迷惑かけて　すまなかったよ
白峰　もう二度と
あんなマネしないからさ
練習始めたら　また俺のスキー
ビシッと調整してくれよ
お前のチューンナップでないと
調子　出ないんだ
まったく
勝手なことを　ぬかしやがって
やっぱり
白峰も　あの事故のこと
自分なりに
責任を感じてたんだな
でも　渋沢のスキーは
特に念入りにチェックして
完ぺきに仕上げてるって
自信があったから
あの事故が
自分のせいだとは　絶対
口が裂けても
言えなかったんだよ
ライバルであっても
白峰君　彼なりに
渋沢君のこと　心配してたのね
白峰さん　ごめんなさい
ごめんなさい！
よかったな
圭介の意識が戻って
し…　白峰さん
あーあ　それにしても
俺もドジだぜ
勝手に転んで
頭を打つなんてよ
ウウー！
まったく　そそっかしいな　白峰は
気をつけてくれよ
もうすぐ　オリンピック候補が
復帰してくるんだ
不動高校スキー部を　全面的に
バックアップしなくちゃな
うん
頼んだわよ　白峰君
よーし　がんばるぞ
がんばろう
不動高校スキー部　オー！
エイエイ　オー！
さあ　鈴森さん
これからは
先生にも相談してね
でも　大変なことにならなくて
よかったわ
先生！
よかったね　はじめちゃん
ああ
というわけで　この事件は
ハッピーエンドで解決しました
私たちは　スキーを
目一杯　楽しむことができたけど
はじめちゃんの腕前は
ちっとも上がりませんでした
俺たちのもとに
「地獄の傀儡師」と名乗る者から
奇妙な脅迫状が届いた
北海道　死骨ヶ原行きの列車に
魔術をかけたって？
ふざけやがって！
ただ　不気味なのは
一緒に送られてきた
この　ねじれたマリオネット
何か　胸騒ぎがする
おっさん　明智さん　行こう！
東京発　特急銀流星号に乗って
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿地獄の傀儡師が仕掛けた
戦りつの殺人マジック
死と恐怖に彩られた
マジックショーの操り糸が切れるまで
死の列車は止まらない
ようこそ　魔術列車へ
函館　旭川経由
死骨ヶ原行き　寝台特急
銀流星１号は
間もなく　発車いたします
はじめちゃん　早く！
あ？
美雪　もう
ちょっと　待ってくれよ
早く　早く！
先輩
ワア　私　寝台車って初めて！
僕も　僕も
ああ　あのなあ　お前ら
遊びに来たわけじゃ　ないんだぞ
これから　何が起こるか
分かんないんだからな
そういう　お前こそ
その本は　何だ？
あ…　いやー
せっかくの北海道だし
いや　ハハハハハ
遊びに来たわけじゃないんだ
てな　ルンルン気分も
台なしだぜ
何だよ　この
狭っ苦しい　寝台はよ
我慢しろ！
これしか取れなかったんだ
こういうのも情緒があって
いいじゃない
じゃなーい？
もう　手足も伸ばせないとこで
一晩　過ごせっちゅうの？
あーあ
血のように
赤いバラをどうぞ
何　これ？
ヘヘッ　マジックか　誰　誰？
こんな　シャレたことすんの
ニャアー！
バラを　どうぞ
ど…　どうも
ああ　びっくりした
すてき
きっと幻想魔術団の人ね
げ…　幻想　何それ？
この列車は　プロのマジシャンが
車内で
マジックを見せてくれることに
なってるんですって
客寄せのための企画ですよ
ワアー　すてき！
ブラボー　じゃない？
すてき！
魔術列車か
そう　俺たちが　この列車に
乗り込むことになったのは
剣持のおっさんのもとに届いた
脅迫状が　きっかけだった
脅迫状在中？
ああ
おととい
警視庁宛に届いたものなんだが
どうも　そいつは
からくり箱らしいんだ
からくり箱って？
ああ
箱根とかの土産でもあるだろ
ちゃんとした手順を踏まないと
絶対に開かない箱のことだ
これは見かけは　ただの箱だが
相当　凝った造りでな
科学警察研究所に回しても
開け方が分からんかった
んで　お前なら
もしやと思ってな
こんなの　あの明智警視に
任しときゃいいじゃん
ところが　やっこさん
今日から休暇取って
どっか行っちまってよ　全く
うーん…
だから　なあ　頼むよ　金田一
うまく開いたら　何でも好きなもんおごっちゃるから
あ…　おっさん　開いたよ
何！
どういうことだー！
科学警察研究所のメンツは
一体…
何が入ってるんですかねえ
ちょ…　ちょっと待って
何か　引っ掛かって…
な！
何だ？
気持ち悪い…
ねじれたマリオネット
見ろ　金田一！
箱の底に　何か書いてあるぞ
「来たる３日後　北海道は」
「死骨ヶ原湿原を通る列車に
魔法をかけた」
「死と恐怖の魔術を堪能されたし
地獄の傀儡師」
はじめちゃん　起きて
起きてってば
あ…　何？
見て見て　ほら！
まぶしい…　あ
おおっ　すっげえ！
いやあ　ゆうべは
寝心地悪くて　さんざんだったけど
こーんな
ゴージャスな食堂車なら
朝食は期待できそう！
ホント
北斗星の
グランシャリオ並みですね
剣持様ですね？
お　おう
先ほど　ご注文いただいた
バラのサラダでございます
はあ？
バラのサラダ？
おっさん
こんな　顔に似合わないもん…
ばか言え　俺は
こんなもん　頼んだ覚えはないぞ
えー　お食事中　失礼します
お客様方に
朝の　ご挨拶をしたいと
ロバートが申しております
ロバート？
よいっしょ
おはよう　よく眠れた？
ワア　かわいい
これ
どうやって　操ってるんですか？
どうも　お騒がせしてすみません
これから　私たち
幻想魔術団のメンバーによる
マジックショーが始まります
最後まで　ゆっくり
ご覧になってくださいね
エヘヘ
あの子も魔術団の一員なんだ
何か楽しみだなあ
あの若さで
一流魔術団に入れるなんて
よほど　才能があるんですよ
おい　佐木
そんなに　すげえのか？
その　何とか魔術団って
ええ　そりゃ　もう！
５年前に結成されて　海外でも
高い評価を受けてる魔術団ですよ
特に
「生きたマリオネット」っていう
オリジナルのマジックが
すごいらしいんです
生きたマリオネット
皆様　ようこそ　魔術列車へ
私は　幻想魔術団の団長
ジェントル山神こと
山神文雄で　ございます
では　我が幻想魔術団のマジックを
心ゆくまで　お楽しみください
ウフ
ワアー！
ウフフ　どうも
いやあ　ハハハ
さあ　お客さん
このカードには　タネも仕掛けも
やーん　そんなとこ
のぞいちゃ駄目
ネタが　バレまんがな
ワハハハハ
霊の力で
このケースの中のグラスは
粉々に　ウーン
ヤアッ！
えー　僕　そんなこと　できないよ
できないじゃない
お前　人形のくせに
生意気だぞ　ロバート
自分だって
ろくなマジック　できないくせに
こいつ！
わあ　人形虐待…
アッハハハハ
ウフフフ
しつこいぞ　高遠
やるなあ　あの子
ただ見　同然の客相手に
この俺がマジックなんぞ　できるか
そこを　なんとか
お願いしますよ　由良間さん
だいたい　団長は　どうしたんだ？
最初　ちょこっと挨拶しただけで
もう１時間も
出てこないじゃないか
そ　それが　さっきから
列車中　捜してるんですけど
どこにもいなくて…
ですから　ここは
ナンバー２の　由良間さんに
締めていただかないと…
チッ
さ　それでは　最後は
我が幻想魔術団のトップスター
ノーブル由良間です
盛大な拍手を！
そちらの　お嬢さん
ご協力いただけますか？
あ…　私が？
じゃあ
先輩　頑張って
大丈夫か？
では　まず
あら？私の髪留め
いつの間に…
これしきのことで
驚いてもらっては困ります
本番は　これからですよ
ところでお嬢さん
何か　さっきより
スッキリしてませんか？
はあ？
あ…　そういえば
何か　胸元が妙に…
うわっ！
でしょう
キャアー！
返してください　返して！
駄目駄目
まだ　マジックの途中ですよ
では　この下着を　こうやって
手の中に入れてしまいます
すんませーん
グラスを　落としちゃって
ヘヘヘ
フン
この　下着を入れた手に
ギュッと力を入れると
痛ーっ！
あれは
サラダに載ってたバラ？
おお
あれ　バラが…
くそ！どうなってるんだ！
いやあ　すっごいなあ
ブラを　バラに変えちまうなんて
おちゃめじゃん
ワハハハハ
アハハハ
まさか　このガキが　これを？
くそ！覚えてろよ！
はじめちゃん　ありがとう
なーに　これぐらい
チョロイチョロイ
でも
え？
このブラは　返してね
わ…　忘れてたよ
ん？
携帯　鳴ってるぜ　おっさん
いや　俺のは　こんな音じゃ…
な…　何だ　これは？
ポケットに
もう１つ　別の携帯が入ってた
おっさん　貸してくれ
もしもし？
ようこそ　魔術列車へ
旅は　楽しんでいただけてますか？誰だ　あんた？
「地獄の傀儡師」と言えば
分かっていただけますか？
地獄の傀儡師！
あの　脅迫状の？
実は　そろそろ
私が仕掛けた爆弾が
爆発する時刻だってことを
お知らせしたくてね
ば…　爆弾だと？
ええっ？
お…　おい　金田一
ひょっとして　それも
アトラクションの何かじゃ？
な…　何だ？
今の　でっかい音
爆弾じゃねえの？
バラのサラダが爆発した
分かっていただけましたか？
私が　本気だってこと
次の花火は　もっと大きいですよ
何！
次の爆発まで　あと２０分
さあ　早く何か手を打たないと
この列車ごと
吹っ飛んでしまいますよ
はい
失礼します　あの…
先ほど　この列車に
爆弾が仕掛けられたと
電話がありまして
５分後に　貨物駅に緊急停車します
大至急　準備してください！
爆弾？
それは　また
随分と物騒な話ですね
さあ　皆さん　どうぞ落ち着いて
車両から離れてください
押さないで　押さないでください！何が　あったんだ？
ロバート
ちょっと　何やってんの？
邪魔よ　さとみ
あ…　すみません！
こんなところで
爆発に巻き込まれたら
どうする気よ！
まあまあ　夕海さん
怒んない　怒んない
あんまり怒ると　シワが増えて
早くババアになっちゃうよ
何ですって　左近寺！
あんた　私に向かって
そんなことを
何やってんですか　２人とも！
早く行ってくださいよ　もう
団長　どこ行ったのかな？全く
大変なことになっちゃいましたね
先輩
はじめちゃん
早く　私たちも列車から離れないと
はじめちゃん？
どこ行っちゃったんだろう
あの人
どうしたんすか　高遠さん？
団長が
どこにも見当たらないんですよ
こんなときに…
えっ　うちの人が？
フン　爆弾にビビッて
１人だけ遠くに
逃げたんじゃないのか？
え？
よし　全員　避難したな
爆発時刻まで　あと５分か
地元の警察にも連絡を…
待ってくれ　おっさん
ん？
この騒ぎは　恐らく…
ただの　から騒ぎになりそうですよ
アアーッ！
明智警視！
ど…　どうして警視官　ここに？
話は車掌から聞きましたよ
剣持君
は…　はあ
困った人ですね
ありもしない爆弾騒ぎに
踊らされて
な…　何ですと！
おっさん　俺も　そう思うぜ
恐らく　この列車に
爆弾なんて仕掛けられてないよ
金田一　お前まで
でも　はじめちゃん
あのとき　確かに
バラのサラダが爆発して
そもそも
あの　バラのサラダが問題なんだ
犯人は　いつ
あのサラダに細工をしたのか
食堂車の食事は　全て
車内のキッチンで作られるはず
それに　やつから
電話が　かかってから
あのサラダが爆発する
タイミングの良さ
まるで　やつは
俺たちの行動や反応を
間近で見ながら
操作していたみたいじゃないか
それじゃあ
まさか…
ああ
地獄の傀儡師を名乗る人物は
この列車に乗り込んでた可能性が
高いってことさ
ということですよ　剣持君
まさか　自分の乗っている列車に
爆弾を仕掛ける人も
いないでしょう
そ…　それじゃあ
あの電話は　ただのいたずら？
しかし　ここまで
大騒ぎになってしまっては
しかたありません
ここは　犯人の思惑どおり
避難してあげようじゃ
ありませんか
そろそろ　時間だ
何だ？おい
バラの花吹雪とは
なかなか　気の利いたことを
してくれるじゃありませんか
地獄の傀儡師という人は
どういうことだ？
やつは　俺たちが慌てふためくのを
楽しんで見てやがるのか？
それとも…
へえー　幻想魔術団のショーを
見にいらしたんですか
明智さん？
ええ　毎年　今ごろになると
終点の死骨ヶ原ホテルで
恒例となってる
彼らのマジックショーが
見られるんですよ
こう見えても　私は
大の奇術ファンでしてね
ハアー　何か意外
明智警視がねえ
金田一君
完成されたマジックは
完全犯罪のようなものなんです
まさに　一分の隙もない
ある意味
芸術の域に達しているといっても
いいでしょう
もっとも
そんな　すばらしいマジシャンには
日本では　１人しか
めぐりあってませんがね
ん？あっ　明智さん　それは？
今回のマジックショーの
パンフですよ
ふーん
このおばさん　さっきの
魔術団のメンバーの中には
いなかったな
花火の贈り主からですね
いかがでした？
私からのプレゼント
真紅のバラの花吹雪は？
あんた　一体？
さて　次は　お待ちかね
死のマジックショーの
始まりですよ
舞台は　コンパートメント５号室
何だって！
タイトルは　「天外消失」
モチーフは　赤いバラと
色とりどりの風船
キャー！
さとみさん
どうした？
さとみちゃん
あ　あれ…
キャー！
だ…　団長
し…　死んでる
地獄の傀儡師の野郎
今度は　ホントに
イテッ！
くっそう　邪魔くさいバラだ
何だ　これは？
ま…　まさか　爆弾！
みんな　逃げろ
早く　早く伏せろ！
ワアー！
あれ？
もう　終わりか？
みたい　だね
あれ？
これは…
ない…　山神団長の死体が
消えている
あっ　はじめちゃん　　見えてきたわあれが終点の死骨ヶ原駅ね
死骨ヶ原　死骨ヶ原
終点でございます
フン　乗客全員の荷物検査だと？
ふざけやがって
大体
死体が消えるわけねえだろうが
でも　私　見たんです
団長がバラの中で死んでるのを
ハハ　なるほど　そういうことか
何が　おかしいのよ！
うちの人が
死んだかもしれないってのに
いや　山神団長の
新しいマジックなんじゃないか？
これは
え…　あの人の　マジック？
そう　なかなか　やるやおまへんか
あんたの旦那も
刑事さん　早く検査
終わらせてくださいよ
分かった　分かったよ
アアー　もう
ほら　見てくださいよ
タイムスケジュール
こんなに　ビッチリ
入ってんですよ
ですから　なんとか
分かったから　すっこんどれ！
は…　はい
ふーん
このホテルの別館で
マジックをするわけね
おっさん　明智さんは？
先に部屋に行ってるだろ
何か　妙だな
何が？
だってさ　いつもなら
こんなケッタイな事件が起きると
金田一君　私と推理合戦だ
なーんて言うのに
今回は　いつになく
無関心っていうかさ
あれが　例の事件の舞台か
あ　俺たちより
先に泊まってる人がいたんだ
おい　金田一！
あ…　ああ
あ…　これは　都津根様
何か？
あ　あの…
チェックアウトでございますか？
フフフ
フッフフフフフ
もしもし？
ようこそ　死骨ヶ原へ
地獄の傀儡師だな？
貴様　山神団長を　どこに！
ハハ　慌てない　慌てない
山神団長なら
たった今　お返ししたよ
何だって？
ワアー！
廊下だ！
だ…　誰か！だ…　団長が…
キャー！
これは…
ねじれた　マリオネット
沼地に囲まれた巨大な密室
死骨ヶ原
地獄の傀儡師
あいつは　まだ　ここにいる
謎の人物　都津根毬夫
彼の正体は？
おっさん　あいつの予告した
死のマジックショーは
まだ　終わっていないんだ
恐ろしい殺人の操り糸で
また　次のターゲットを狙っている
待て！
美雪を　どこへ連れていくんだ
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
「地獄の傀儡師」と名乗る人物から
奇妙な脅迫状が届き
俺たちは　死骨ヶ原行きの列車に
乗り込んだ
その中で　魔術団の団長が殺され
しかも　その死体は
ほんの一瞬のうちに
煙のごとく消えてしまう
だが　その後
こ…　これは
人殺しだって？
幻想魔術団の団長が
殺されてたんだとよ
ええー！
じゃあ
今夜のマジックショーは中止？
ど　どうして…
うちの人が　こんな目に
さあ　夕海さん
やだ　怖い
ねえ　帰りましょうよ
だって　もう電車ないぜ
検視官に見せたわけじゃないから
はっきりとは言えんが
山神の死因は　恐らく刺殺
死亡推定時刻は
今朝の９時から１２時の間と見て
ほぼ　間違いないだろう
その時間は　まだ　列車の中ね
じゃあ　僕らが
コンパートメントで見たのは
やっぱり…
ああ　山神団長の死体だったんだ
それにしても　そっくりだったぜ
この　ねじれたマリオネットにな
では　死体があった部屋には
都津根という人物が
泊まっとったんですな？
ええ　２日前の列車でいらした
お客様でして
白いゴムマスクを
つけていらしたので
顔は分かりませんでした
ゴムマスクを？
はい
この２日間
ずっと　こもりっきりで
つい　先ほど
突然　チェックアウトされまして
次の列車が来るのは　２日後ですし妙だとは思ったんですが…
ああっ！
先輩　この都津根って人の名前
名前？
都津根…　毬夫…
ああっ　マリオネット！
何？
偽名ですか？
くそ！ふざけたまねしやがって
列車以外に
ここを出る方法は　あるんですか？
いいえ　ご覧のとおり
ここは
沼や湿地帯に囲まれています
隣町に通じる一本道も
先月の大雨で崩れたままでして
な…　何だか　とんでもない所に
来ちゃったな　僕たち
いいや　全く
昔は　こういったものも採れて
ここも結構　栄えていたんですが
へえ
漬物石の産地だったんですか
もう　違うわよ！
それは　ヒスイの原石ですよ
ヒスイ　宝石の？
かなりの大きさですね
え…
いくらぐらい　すんのかなあ？
それは　あまり価値のない
くずヒスイですよ
お客様の部屋にも
飾ってあったでしょ？
も…　もう
採り尽くされたとはいえ
この死骨ヶ原の
数少ない特産品ですからね
インテリアとして　各部屋に
１つずつ飾ってあるんですよ
ふーん　なるほどね
分からない
どうやって
犯人は　列車の死体を消して
どうやって　ホテルに運んだんだ？やだ！
ん？
何よ　この人
何　見てんだよ　美雪？
幻想魔術団のパンフよ
明智警視に借りたの
見て　はじめちゃん
「スタンダップ・マジックの貴公子
ノーブル由良間」
なーにが貴公子よ
ただ　エッチなだけじゃない
実物は　全然違うわ
しかし
しかし彼は　この種のマジックでは世界的にも有名です
まっ　気位が高すぎて
少々　根性曲がりなようですが
あんたも　そうだろう…
そして　ウォーターマジックの
マーメイド夕海
殺された　ジェントル山神の妻
このいつも笑っているのが
カードマジックの道化師
ピエロ左近寺
おどけてはいますが
彼のカードテクニックは
かなりのものだと聞いています
そして
サイコマジック専門で
主に　催眠術や
超能力マジックなどを得意とする
チャネラー桜庭
あ？
あ！そういえば　この人
列車の中で
聞こうと思ったんだけど…
近宮玲子
この幻想魔術団の前身である
近宮マジック団の団長です
そして　彼女こそが
私が言った　日本が生んだ
唯一　本物のマジシャンです
ふーん　この人が
彼女が生み出すマジックは
本当に　どれも奇想天外で
見事なものばかりでした
舞台の上の彼女は
他のマジシャンとは
明らかに違う輝きを
持っていました
彼女が５年前
マジックのリハーサル中に
亡くなったと聞いたときは
本当に残念でしたよ
彼女が繰り出す　あの輝きが
もう二度と
見られなくなったんですからね
今　幻想魔術団でやってる
大がかりなマジックの　ほとんどは
彼女が作り出したものなんですよ
それじゃあ　あの有名な
「生きたマリオネット」も
その人が？
いや　それは　彼女の死後
幻想魔術団によって作られた
オリジナルです
と言われてますけどね
あの…　マジックショーは
予定どおり行いますので
劇場へ　お越しください
え？
ショーは　中止じゃなかったの？
いやあ　どおりで
他のお客さんが　いないと思った
ちょっと　どういうことよ
団長が死んだのに　ショーなんて！そ　それは…
だからこそ　やるんですよ
夕海さん
新しい幻想魔術団の団長の
お披露目には　ちょうどいい
由良間　あんた
当然でしょ
団の人気ナンバーワンは　この俺
幻想魔術団は　俺で
もっているようなもんでしょうが
ま　お局様は
せいぜい邪魔をしないように
俺の前座に励んでください
あ…　あの　夕海さん
覚えときな　由良間
このままじゃ
絶対　済まさないからね！
おおー　怖…
女は怒ると怖いねえ
何やってんの　はじめちゃん？
シェー　これが劇場かあ
池の真ん中にあるんだ
早く　置いてくわよー！
おうー！
いてえ
うわっ　アー　アア
ああ　やっちゃった
はじめちゃん　早く早く！
知らないっと
さーて　次は　お待ちかね
我が幻想魔術団が誇る
「生きたマリオネット」だよ
ワア　残間さんだ
あの人　なかなかザンマすね
うん　キュートなナイスバディー
僕は　マリオネット
操り糸で動かされるだけの
悲しいマリオネット
でも　僕は　自由になりたーい
あ　わっ
バンザーイ　僕は自由だ！
もう　誰も
僕を操ることはできない
すっごーい
全部　糸が切れてるのに
どうやって操ってるのかしら？
ヘン
あれは　もともと黒い糸で操って
でも　縄跳びしてますよ
じゃあ　両サイドから糸で…
すごい！
二重跳びしてますよ
今度は　Ｘ跳びだ！
あれ　どうして？
ランラランララン　楽しいな
ランラランララ…　ああっ！
早く元に戻らないと
ハア　あれ　何か変だぞ？
アハハハハ
ハア　僕もう　疲れたよ
やっぱり
普通のマリオネットに戻りたい
いかがですか？
幻想魔術団のマジックショーは
地獄の傀儡師だな？
おや　生きたマリオネットは
もう　終わりのようですね
一休み　一休み
でも　本当のお楽しみは
これからですよ
最後に私が
めったに　お目にかかれない
大マジックを
皆さんに　お見せしましょう
何だって！
こ…　これは？
地獄の傀儡師だ
やつが
ど…　どういうことだ　これは？
ワアー！
キャー！
くっそう
ま　また…
また　ここで　惨劇が！
また？
由良間さん
由良間！
し…　死んでる
一体　どうなってやがるんだ？
天井をご覧なさい　剣持君
明智警視
お？
死体に　絡んだひもの先に
さっきの人形が　引っ掛かってる
死体が
天井から落とされたとき
その重みで
持ち上げられたんですよ
ちょうど　シーソーのようにね
死体が　天井から…
てえことは　犯人は
くそ！
待ってくれ　おっさん
金田一
話があるんだ
ちょっと劇場の外へ来てくれ
一体　何だってんだ？
早くしないと　犯人が…　お？
は…　橋が　跳ね上がっちまってる
ああ
俺が橋を渡ったとき
慌てて　こけた拍子に
こいつを　折っちまったんだ
この劇場は　池に囲まれ
外に出るには
この橋を渡るしかない
ということは…
そう
つまり
マジックショーをやっている間
この劇場は
巨大な密室だったんだ
そして　犯人は　今も
この　劇場内にいる
どうだった　おっさん？
駄目だ
劇場中　捜したが　あやしい人物は
どこにも見当たらん
それに　客の中には
照明が消えてから
死体が現れるまで
席を外した人物は１人もいない
てことは　やっぱり
由良間を殺した犯人は
魔術団のメンバーの中に
いるってことだ
そんな！
私たちの中に　犯人が？
まあまあ　刑事さん
そう　決めつけないでくださいよ
僕らには全員　ちゃーんとした
アリバイがあるんですから
何だと？
だって
舞台のマリオネットが
由良間の死体に化けちまったのは
天井の　はりを使った
シーソーの原理でしょ？
つまり　犯人は
天井裏に　いたってことだ
でも　あそこから舞台まで
結構　時間かかるんだよね
でもさ　由良間のやつが死んでるの見たとき
俺たち　ものの数秒で
かけつけてたんすよ
いや
舞台に降りるだけなら
一瞬で済むぜ
劇場が暗転した瞬間に
天井から舞台に　飛び降りればいい
由良間の死体に絡まった
ロープにつかまってね
あれだけ大きな人形だ
重さも相当なもんだろう
犯人は　その重さを利用して
エレベーターに乗ったように
スルスルと
舞台に降りてきたってわけさ
そ　そうか　分かったぞ
謎は　全て解けた！
おい　お前ら　全員
自分の体重を言ってみろ
え　体重すか？
わ…　私は　その…
５５キロですけど
８１キロ
ご…　５３キロよ
それが　どうしたって言うのよ！
わ…　私は　確か　５０キロぐらいで
７２キロだったと思いますけど
それが　何か？
うーん　で　人形の重さは？
えっと　７０キロですね
以前　飛行機に積み込むとき
チェックしましたので
７０キロか　よーし！
犯人は　絞れたぞ
犯人らは　桜庭と左近寺の
２人のうちの
どちらかだ
アー？
あの人形より重い人物でなければ
舞台には　降りられないからな
お…　おっさん…
そうじゃないって
高遠さん！由良間さんの体重は
どのぐらいだったんですか？
えー　６０キロですね
去年の身体検査では
犯人は　由良間さんの死体と
一緒に降りたんだろ？
なら　犯人に
由良間さんの体重を足して
人形より重くなれば　いいわけだ
あっ
この中に
由良間さんの体重を足しても
人形より軽いって人は
いないだろ？
てことは　誰でも
このトリックは使えたってことさ
そ…　そうか
いやあ　面白いシーンが撮れました
全く　あなたといると
退屈しませんよ
はじめちゃん　何か分かった？
いや　何も
ん　そういやあ
飯も　まだだったっけ？
あっ　私
お菓子持ってるけど　食べる？
高遠さんと　さとみさんも
一緒に　どうですか？
あ　どうも
ワア　ありがとう
いやあ　実は　私たちも
ご飯　まだでして
あ！これ　もらい
お　これも　いいなー！
少しは遠慮したら　どう？
はじめちゃん
いいじゃんかよ
もう　ホントに卑しいんだから
また　お腹壊しても知らないからねアン　大丈夫　大丈夫
このぐらい　カルチン　カルチン
仲いいね　君たち　恋人同士？
やだあ　こんなやつ
ただの幼なじみですよ！
あの…　高遠さん
はい
１つ　聞きたいことが
あるんだけど　いいすか？
ええ
ホテルの支配人さんが
ちらっと言ってたんだけど
昔　このホテルで
何か　よくないことでも
起きたんですか？
あ　いや　それは…　ですね
５年前
近宮先生が亡くなったのよ
この劇場で
近宮って
近宮マジック団の団長だった
あのおばさん？
ええ
さとみちゃん　まずいよ
いいじゃないですか！
いずれ調べれば　分かることですよ
もっと詳しく教えてください
どうして　その近宮さんって人は
亡くなったんですか？
ハア　僕らが入団する前の
出来事なので
詳しいことは分かりませんが
何でも
リハーサル中の事故だそうで
リハーサル中の事故か
地獄の傀儡師が　このホテルにいる誰かだってことは
まず　間違いない
そいつは　一体　誰なんだ？
それに　あの
列車の中で起きた死体消失
何か　見落としてる気がする
何か…
ワアアッ！せ…　先輩
じ…　地獄の傀儡師
み…　美雪
美雪！
佐木　お前は
おっさん　呼んで来い
俺は　やつを追う！
分かりました
くそ！
剣持警部　大変です　剣持警部！
どうしたんだ？
大変なんです　七瀬さんが
私が　どうしたの？
佐木君
七瀬先輩…
何か　あったの？
そんな…
まさか…　じゃあ　犯人の目的は
待てー！
さあ　おいで
哀れな　いけにえ
暗く冷たい　死の祭壇へ
どこに行った　地獄の傀儡師！
み…　美雪　くそ！
大丈夫か？美雪
美雪？
ウワーッ！
フフフフ　ハハハ
ようこそ　名探偵君
暗く冷たい　死の祭壇へ
じ…　地獄の傀儡師
何だ　ここは？
あまり動かない方がいいよ
ここは　底なし沼だからね
君からは　嫌な臭いがする
私の　一世一代のマジックショーを台なしにしてしまうかもしれない
だからね　君には
死んでもらうことにしたんだ
名探偵君に　安らかな死を
金田一！
先輩！
はじめちゃーん
明智さん　天才マジシャン
近宮玲子の事故に
おかしな点があるって
本当なのか？
今回の事件と彼女の死に
何か関係が？
団長の死体消失の謎は解けた！
あとは　次の魔の手が伸びる前に
何か手がかりを
あ？
この部屋　何か…
そうか　分かったぞ！
犯人の重大ミス
地獄の傀儡師は　あいつだ！
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？﻿警視庁宛てに　地獄の傀儡師から
奇妙な脅迫状が届いた
真偽を確かめるために
俺たちは　銀流星号に
し…　死んでる
死体が消えた？
そして　第二の殺人が
はじめちゃーん
金田一　どこだー！
先輩！
気を付けろ
この辺りは　底なし沼があるらしい
まさか　金田一先輩は…
お願い　はじめちゃん
無事でいて
ん　あれは！
バラの花？
おいで　おいで
苦しい…　息ができない
早く…　上げて
二度と　はい上がれない死の世界
はじめちゃん　よかった
金田一
発見が早くて　よかったわ
冷たい沼の中に
随分　長いこといたから
かなり体力を消耗しているけど
そっか　助かったんだな　俺
夢ん中でも
まだ　泥ん中にいてさ
何か　生きてるって感じしねえや
はじめちゃん
美雪
ん？
アー　この存在感のある胸
生きてるって実感！
ギャア　痛っ！
やれやれ　早速　痴話げんかですか
明智警視
全く
君の生命力ときたら
ゴキブリ並みですね
あんたは　人を見舞いに来たの？
それとも　嫌みを言いに来たのかよ
その　どちらでもありませんよ
地獄の傀儡師に近づくヒントを
いくつか君に
教えてあげようと思いましてね
ヒントだって？
第一のヒントは
死んだ由良間の出血状況ですが
発見されたとき
彼の死体の傷からの出血は
完全に止まっていたんです
何だって！
それじゃあ…
由良間は死体となって
舞台に現れる　だいぶ前
恐らく　１５分から２０分前には
殺されてたってことですよ
それじゃあ　生きたマリオネットが演じられる前に　由良間は…
死んでいたことになります
じゃあ　俺たちが
あのマジックを見てたとき
天井裏で
マリオネットを操っていたのは
地獄の傀儡師ってことになります
つまり　犯人は　魔術団の中でも
生きたマリオネットのトリックを
知っていた人物ということです
そして　第二のヒントは　これです
「近宮玲子に関する資料」？
近宮って　確か　５年前に
このホテルの劇場で事故死した…
事故じゃありませんよ
近宮玲子は殺されたんです
何だって？
当時　人気絶頂だった
近宮マジック団の主宰者
近宮玲子４５才が
死体となって　ホテルの舞台の上で発見されたのは　５年前のことです
傍らには　天井裏で使われている
渡し板が落ちていたそうです
そして
渡し板に使われていたクギが
あらかじめ緩められていた
形跡があったんです
でも　それが　もし殺人だとして
今回の事件とのつながりは？
バラの花です
天井から落ちた彼女は
舞台に飾られた　花瓶に激突した
赤いバラは　さながら
彼女の血のようだったと
血のように　赤いバラをどうぞ
赤いバラ
あんたらに集まってもらったのは
他でもない
今までの調査で
重大な事実が分かったからだ
重大な事実？
舞台の上で殺された由良間は
彼が人形を操るはずだった
「生きたマリオネット」が
始まる前に殺されていた
何ですって！
天井裏で
マリオネットを操っていたのは
地獄の傀儡師だったんだよ
じゃあ　犯人は
あのマジックのタネを
知ってる人物ってことになる
「生きたマリオネット」のタネを
知ってる人物といえば…
ほう
あんたたち　２人だけですか
左近寺さん　夕海さん
ま　そういうことに　なりますかね
「生きたマリオネット」は
もともと　団長と夕海さん
由良間と僕の４人で考え出した
マジックですから
でもね　だからといって
イコール犯人っていうのは
短絡的すぎますよ
そうよ！
由良間は　ともかく
どうして　私が　うちの人を？
それにね　剣持さん
まだ解けてない　大きな謎が
あるじゃないですか
何？
ほら　山神団長の死体ですよ
殺された山神団長の死体が
列車の中で突然消えて
このホテルに
現れたじゃないですか
あの列車の窓から
死体を出すなんて
いくら　僕がマジシャンでも
そんなことは不可能だな
他に用がないんなら
僕は　失礼しますよ
アー　アッ！
アー　ウッ　ウン
何だ　風船か　取ってやるよ
よっと　うっ　あれ？
よっと　あ！
はい
ありがとう！
君も　何かスポーツくらい
やった方が　いいんじゃないか？
大きなお世話だ　チェッ
そういえば　列車の個室で
山神の周りに漂ってた風船
あれは　何だったんだろう？
どういうこと　はじめちゃん？
部屋中に詰め込まれていた
赤いバラは
事件の
象徴みたいなもんだとしても
浮かんでた風船には
何の意味があったのかってことさ
考え過ぎじゃないのか？
まともじゃない人間のやることに
別に意味なんか…
そいつは　どうかな
確かに　やつは　まともじゃないが
頭は　恐ろしくいい
これほど　綿密な計画を
作り上げた犯人が
意味のないことをするだろうか？
どうしたの　はじめちゃん？
ここだ
手が…　山神の手が浮いてる
この風船の意味は…
分かったぞ
死体消失のトリックが
ほ…　本当か　金田一？
ああ　おっさん
旭川の警察に連絡してくれ
今日　到着する列車に
載せておいてほしい物があるんだ
分かった
佐木！
はい
例の　幻想魔術団のマリオネットをこっそり
調達してもらえないかな？
はい
一体　どういうことなんだ？
こんな所に呼び出して
死体消失のトリックが
分かったって言ってたけど
ちょっと　何よ　これ？
山神団長のときと　そっくりだわ
そう
現場は
あの日と同じ状況にしてある
死体が
人形になってるってこと以外はね
あの事件は
１本の電話で幕を開けた
地獄の傀儡師に呼び出されて
この個室に来た俺たちは
バラに囲まれて横たわる
山神の死体を発見
トゲだらけのバラに阻まれて
入れずにいると
突然　発炎筒の煙が流れてきて
驚いた俺たちは　いったん　退却
この音
風船の割れる音？
あのときと同じだわ
時間にして　１～２分
音が　やんだのを見計らって
俺たちは　再び　ドアを開けた
人形が消えた
ちょっと　どこへ　やったのよ
おい　金田一
慌てない　慌てない
人形なら　ほら
アロハー　ヘッヘヘヘ
どうして？
不可能だ　トイレの窓は
これだけしか開かないのに
これじゃあ
人形を外に出せませんよ
それじゃあ　どうやって？
確かに　列車の窓から
体　全部を出すことはできない
だけど　頭とマントだけなら
あの窓でも通るんだよ
ええっ　だって…　僕らが
山神団長を見つけたときには
ちゃんと　体もありましたよ
これを見てくれ
よーく見てくれ
妙なところは　ないか
妙なところ…
あっ　手が！
団長の手が浮いてる
人間の手が　こんな小さな風船で
宙に浮くわけがない
マントの下にあったのは
これさ
風船？
犯人は　こんな感じで
マントの中に
人間の形に似せた風船を
詰め込んだ
あとは　隣のトイレの窓から
ひもで　頭とマントを
手繰り寄せれば　体の部分の風船は
部屋中に敷き詰められた
バラのトゲが刺さって
割れてしまう
要するに
部屋中に浮かんでいた風船は
カモフラージュに　なるわけですね
ああ　もし　マントの中の
風船だけを割ったら
音と残がいで
トリックがバレちまう
でも　他に
たくさんの風船を浮かべておけば
音も残がいも　他の風船に
まぎれてしまうことになる
いやあ　すごい　全く　感心するよ
でもさ　名探偵君　それじゃあ
もし　誰かが
山神団長の体に触ったら
一発で　バレちゃうじゃない
そうよ　どう説明するつもり？
だからこそ
あの個室には
バラのツタが張ってあったんだよ
んなもん　引きちぎっちゃえば
それまでじゃん
だが　一瞬の足止めにはなる
それで　十分だったんだ
なぜなら　そのすぐ後に
犯人は　もっと効果のある
心理的バリケードを
用意してたからさ
心理的バリケード…
例の爆弾さわぎ
山神の死体が発見される少し前
列車は　一度
犯人の爆破予告のために
大さわぎになった
その直後に　本物の死体を
見せられて煙が噴き出し始める
みんなが
爆弾を連想したのも無理はない
俺たちは　誰も
山神に触れることはできなかった
あれ？で　その後は？
その後って？
いやだなあ　刑事さん
団長の体ですよ
ホテルで発見されたとき
団長の体は
ちゃーんと　あったでしょ？
何しろ
俺たちは列車から降りるとき
厳重に
荷物検査を受けてるんですよ
あの状況で　団長の体を
ホテルに持ち込むなんて
不可能ですよ
お…　おい　金田一
その謎も　解けてるんじゃないの
名探偵君？
まあ　でも　素人にしちゃ
上出来ですよ
将来は　マジシャン？
なーんてね　フフ　ハハハハ
くそ！左近寺のやつ
でかい態度　取りやがって
やつが犯人なのは　分かってんだ
もしかしたら
夕海と共犯ってことも
そうとばかりは言えないでしょう
ひょっとしたら
事件の真相は　思わぬところから
出てくるかもしれません
思わぬところ？
例えば
左近寺たちが
４人で作ったという
「生きたマリオネット」の
マジックですが
実は５年前に死んだ　彼らの師
近宮玲子が作ったものだとしたら
何だって？
なぜ警視が　そんなことを
本人の口から　聞いたんですよ
近宮玲子　本人の口から
マジック好きの私は
近宮玲子のショーに
足しげく通ううちに
彼女と
口を利くようになりましてね
あれは　私が研修で
ロス市警に赴く日
空港のロビーで
偶然　会ったときのことです
そう　ロスに行かれるの
私は　今　イギリスから
帰ってきたところよ
お仕事ですか？
ええ　半分はね
あとの半分は…　ちょっと私用で
あ　そうそう
これ　見てくれる？
マリオネット
また　新しいマジックですか？
そう
こいつが　突然　糸を切って
勝手に動きだしたら
面白いと思わない？
ええ
そんなマジックは見たことがない
でしょ？
人形が　縄跳びしたり
ボールを投げたり
自転車に乗ったり
自転車？
それいい！それ　頂きね
手帳？
ええ
彼女は
奇術のトリックが浮かんだとき
すぐメモできるように
持ち歩いている
トリックノートだと
言っていました
このノートに書いてある
マジックは　自分が演じるのでなく
全て　ある人に
プレゼントするためのものだと
いつか　あの人が
舞台に立つことになったとき
これが役立てばと思ってね
私が　あの人に
してやれることといったら
これぐらいしかないのよ
それから　数週間後です
ロスで
彼女の死の知らせを聞いたのは
彼女の死に　疑問を感じた私は
帰国後　彼女の転落事故について
調べました
案の定　彼女が
常に持ち歩いていたはずの
トリックノートが
なくなっていたんです
それじゃあ　近宮の弟子たちが
彼女を殺して
トリックノートを奪ったと？
間違いないでしょう
下手をすると　幻想魔術団の
名誉に関わることですからね
今まで黙ってたんですが
とすると　この犯行の動機は
５年前　近宮玲子を殺した
やつらへの復しゅう
しかし　一体　誰が？
気を付けて運べよ
えっと　これで全部ですね？
はい
さっさと
まとめちゃいましょうよ
ちょっと　あんたら　何してんだ？
何って
この荷物を
宅配便で送るんですよ
団員５人じゃ
この荷物　多すぎますからね
ええ　お願いします
シールは全部　貼ってあります
まずいぞ　金田一　もし　あの中に
犯人を示す
重要な証拠があるとしたら
先輩！列車が来ちゃいました
佐木
もう一度　ビデオを見せてくれ
でも　荷物が…
いいから　ビデオを！
やっぱり　思ったとおりだ
やっぱりって
これで　一体　何が分かるんだ？
ギャー！
夕海さん？
夕海さん　夕海さーん
どうしたんです？
夕海さーん！
中で音がしますよ
おっさん
よし　ぶち破るぞ
誰も　いない
地獄の傀儡師め
でも　犯人はどこに？
さっき　確かに
中で物音を聞きましたよ
もしかしたら
はじめちゃん？
ここは　真下の部屋？
どうしたのよ　急に？
やっぱりだ
分かったぜ
地獄の傀儡師の正体が
本当か　金田一？
ああ　やつは重大なミスを犯した
謎は　全て解けた！
金田一君　団長たちを殺した犯人が分かったって
本当なの？
ああ
面白い　で…　誰なのさ　犯人は？
その前に　言っとかなきゃ
ならないことがある
今回の事件は
５年前　このホテルの劇場で起きた
近宮玲子の転落死と
深い関わりがあるってことです
な…　あの事故と？
事故じゃない
近宮玲子は　殺されたんだ
フフハハ　な…　何を証拠に？
彼女の弟子だった　４人の人物
山神　夕海　由良間
そして　左近寺
あんたたちが　殺したんだ
いいかげんにしてくれよ
団長殺しの次は
近宮先生殺しかよ
俺たちが　どうして先生を？
トリックノートですよ
トリックノート？
近宮玲子が
いつも身につけていた
トリックの
アイデア帳みたいなものです
すばらしいマジックは
マジシャンに　名誉と富をもたらします
まして　天才マジシャン近宮玲子の秘蔵のトリックであれば
それは　ばく大な遺産を
手に入れるのと同じことです
そのトリックノートを奪うために
あんたたちは
彼女を天井裏に　おびき出した
そして　転落死に見せかけて
彼女を殺害した
ご冗談を　俺たちが
近宮先生を殺したっていう
証拠はあるのかよ？
証拠は！
証拠は　ありますよ
あなたたちが作ったという
生きたマリオネットのアイデアを
私は　生前
彼女の口から聞いています
な…　そ　そ　そんなの
近宮玲子の死は
警察でも事故として片づけられた
あんたは　うまくいった
つもりだったろうが
この卑劣な犯罪に
気付いた者がいた！
その人物は　近宮玲子を殺した
連中に復しゅうするために
彼女が殺された
この死骨ヶ原ホテルを舞台にして
血まみれの殺人劇を作り上げた
そして　その殺人劇を実行した人物地獄の傀儡師は
この中に　いる！
あるときは
ホテルの客を装った都津根毬夫
また　あるときは
死のプロローグを告げる仮面の男
そして
幻想魔術団のマジックを超える
巧妙なトリックを企てた
殺人者の本当の正体は？
近宮玲子のトリックノートを
本来　持つべき人物
殺された彼女の復しゅうを誓った
地獄の傀儡師
それは
お前しか　いないんだよ！
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
分かったぜ
地獄の傀儡師の正体が
この死骨ヶ原ホテルを舞台にして
血まみれの殺人劇を作り上げ
そして　その殺人劇を実行した人物
地獄の傀儡師は　この中に　いる！
地獄の傀儡師が　私たちの中に？
ああ　思いも寄らぬものが
俺に　犯人の正体を
教えてくれたんだ
それが…
よっと
この　ヒスイさ
これは
各お部屋に置いてある…
こんなもので　犯人が分かるの？
このヒスイは　もともと
殺された山神夕海の部屋に
あったものだ
ところが　彼女が殺された直後
このヒスイは　部屋から消えて
どういうわけか
その　真下の
１階の部屋から発見されたんだ
つまり　ヒスイを
真下の部屋に運んだのは
犯人ということになる
犯人が　ヒスイを？
何で　そんなことを？
夕海の部屋から
逃げ出すためさ
ええっ？
ギャー！
犯人にとって　夕海が悲鳴を上げ
俺たちが　いち早く
かけつけたのは誤算だった
一刻も早く　部屋から逃げなければならなくなった犯人は
由良間殺害のときと同じ
シーソーの原理で
部屋から脱出することを思いつく
やつは　夕海の死体をロープで縛りいったん　窓から地面に下ろし
張り出した枝に
ロープを引っ掛けて
夕海の体重を利用して　安全に
地面へ飛び降りようとしたんだ
ところが
いざ　脱出ってときに犯人は
自分が
このトリックに必要な条件を
クリアしていないことに気付いた
条件？
体重ですね
そう　やつの体重は
夕海より軽かったんだ
そこで　やつが目を付けたのが
重さ５キロは　あるかという
このヒスイだ
こうして
夕海の部屋から脱出した犯人は
ヒスイを　いちばん近くの部屋
つまり　現場の真下の部屋に置いて
逃げたんだ
じゃあ　犯人は
女の夕海さんより
軽い人間ってことに
違います！私　そんな
待ってください　その前に
佐木
はい
皆さんに
見てほしいものがあります
何を見せる気なんだ？
思い出してください
由良間が殺されたとき
おっさんが
みんなの体重を聞いたでしょ？
そのときの映像ですよ
８１キロ
７２キロだったと思いますけど
私は　その…　５５キロですけど
ご…　５３キロよ
それが　どうしたって言うのよ！
５３キロ？
さとみさんは　夕海さんより重いわ
それじゃあ　犯人は？
この中で　夕海より軽い人間は
１人しかいない
わ…　私は　確か　５０キロぐらいだと
そう　高遠遙一
あんたが　山神　由良間
そして　夕海の
３人を殺害した真犯人
地獄の傀儡師だ！
高遠さんが？
地獄の傀儡師…
やはり　そうでしたか
あ　待ってくださいよ
確かに　僕は　５０キロそこそこしか
ありませんけど
だから犯人だなんて　そんな…
それに　列車から消えた
山神団長の死体は
どうやって
ホテルに運ばれたんです？
列車から降りるとき
僕も厳重に荷物検査を受けました
あの状況で死体を運ぶなんて
不可能ですよ
高遠さん　言ったはずだぜ
この事件の謎は　全て解けてるって
当然　その死体移動トリックも
解決済みだよ
あんたは　列車から降ろした死体を
ある方法で
自らは　指１本触れずに
遠く離れた　このホテルの１室に
運び込んだんだ
そんなバカな
この死骨ヶ原ステーションには
２日に１本の　あの列車でしか
来られないんだぞ
その大マジックのタネが　これさ
それは　トレイン急便の伝票だわ
ああ
あんたは
死体消失トリックに必要な
山神の頭部だけを残し
首から下を宅配便の荷物として
ホテルに送ってしまったんだよ！
ハン　真面目な顔して
何を言うかと思ったら
宅配便なんて　列車の中から
いつ　どうやって
出しに行くんですか？それに
団長の死体が発見されたのは
僕らが　ホテルに着いた
すぐ後でしょ
出した　その日のうちに届く
宅配便なんて
聞いたことないですよ
ところが　あるんだよ
その秘密は　あの日
マジックショーの後に起こった
爆弾騒ぎさ
何　あの爆弾騒ぎか？
ああ　一見
犯人の　お遊びのように見えた
あの爆弾騒ぎは
実は　死体消失トリックの
ある重要な役割を担ってたんだ
あの日　マジックショーの後
俺たちのもとへ
犯人からの爆破予告電話があり
乗客を避難させるべく
列車は　近くの貨物駅で
緊急停車した
ここからが　問題だ
よく見てくれよ
このとき
ホームの反対側に止まっている
この列車を！
これは
トレイン急便だわ
そう
そして
この宅配便の荷物専用の列車は
俺たちが　死骨ヶ原駅に
到着したときにも映ってるんだ
ホントだ
高遠さん
あんたは　俺たちの乗った列車が
あの貨物駅に差しかかるころを
見計らって
爆破予告の電話をかけてきた
トレイン急便が
止まっている貨物駅に
緊急停車させるためにね
恐らく　あんたは　このトレイン急便に
積まれるように計算して
死体を詰めたバッグと同じものを
前もって送っておいたんだろう
そして　それを見つけると
自分の持ってたバッグと
そっくり取り替えたんだ
俺たちより先に　死骨ヶ原駅に
着いたトレイン急便は
何も知らない
係員やボーイの手によって
指定の部屋に運ばれていく
ホテルに泊まる旅行者が
自宅から送った
ただの荷物としてね
うーん　何て巧妙な
でも　はじめちゃん
荷物の送り先は？
そう　このトリックを
完成させるためには
荷物の送り先が必要だ
それも
幻想魔術団以外の送り先が
それが　都津根毬夫さ
都津根毬夫って
支配人が言ってた
白いゴムマスクの男か？
あの都津根様が高遠様の変装？
ああ　俺たちが
このホテルに着く２日前に
あんたは　ホテルにやってきた
白いゴムマスクで顔を隠した
都津根毬夫としてね
列車が　この駅に停車している間に部屋に入ったあんたは
急いで別人に変装し
東京に戻る列車に
飛び乗ったんだ
チェックインのとき　誰も部屋に
入れるなと言っておいて
２日間　空の部屋を
見られないようにしておき
あとは　その部屋に死体が届くようバッグを送れば
こうして
ホテルに到着したあんたは
急いで　都津根の部屋へ行き
届いた死体を　天井から吊るした
この　ねじれたマリオネット
そっくりにね
まだ　何か言うことはあるかい？
高遠さん
やれやれ　予感　的中だ
せっかく　あと一息で
僕の一世一代の大魔術が
完成するはずだったのに
やっぱり　君のことを　ちゃんと
殺してあげるべきだったね
金田一一君
君の言うとおり
山神たちを殺した犯人
地獄の傀儡師とは
僕のことですよ
ほう　随分　あっけなく認めたな
フン
マジシャンは自分のマジックを
客に見破られたら
速やかに　幕を下ろせってね
高遠さん　１つ聞かせてくれ
なぜ　あんたは
こんな　やり方を選んだんだ？
これほどの
計画を立てられるあんただ
もっと　すんなりと
やつらを殺す方法は
いくらでもあったはずだ
それなのに　あんたは
わざわざ警察に　脅迫状を送ったりリスクが　ありすぎるぜ
まるで　わざと自分を
追い詰めてるみたいじゃないか
だって　つまらないでしょ？
ただ　殺すだけじゃ
な…　何だと！
完成されたマジックさながらの
美しく　謎と怪奇に満ちた
芸術犯罪を演じ上げ
並み居る観客たちを
あっと言わせてみたいんです
そう
マジシャンとして
ハン！
マジシャンだと？
高遠！貴様　一体　何者だ？
僕ですか？僕は
あなたたちが　近宮玲子から
奪ったトリックノートの
正当な継承者ですよ
何だと？
やはり　そうか
君は　近宮さんの…
そう
僕は　左近寺たちに殺された
天才マジシャン
近宮玲子の　たった一人の息子です
あんたが　近宮玲子の？
先生の息子？
でたらめ言うな！
近宮先生に　子どもがいたなんて
聞いたことないぞ
皆さんが　ご存じないのも
無理はありません
僕だって
母は　僕が小さいころ死んだと
父に聞かされてましたから
僕自身　彼女に会ったのは
ほんの２回しかありません
物心ついたころ　僕は　既に
父と２人で　イギリスに住んでいました
そう
あれは　僕が７才のときでした
ある日　父が　ロンドン公演中の
マジックショーに
連れていってくれたんです
それが　近宮玲子との
最初の出会いとなりました
その華やかさに魅せられて
僕は　いつの間にか
マジックの練習を
するようになったんです
血は争えないってわけか
フフフフ
君と同じですよ　金田一君
ただ　僕は　人を欺くことに
快感を覚え
君は　それを見抜くことに
使命感を感じているようですがね
次に　彼女に会ったのは
それから３年後
ハハハハ
アハハハハ
私の１０才の誕生日でした
いつものように　公園で
マジックの練習をしていると
あっ
あ？
坊や
マジックの練習をしてるの？
あ　うん
じゃ　見てて
ほら
ワア　すごい！
どうやったの？あっ　思い出した
おばさん　もしかして
前にロンドンで見た
日本人のマジックの人？
えっ！
あのときのマジック
とても面白かったよ
だからね　僕も今から練習して
すごいマジシャンになりたいんだ
おばさんみたいに
そう…　そうなの
マジシャンになりたいんだ　僕
うん
そうだ　もし君がマジックの練習をずっと続けていたら
おばさんが　とっておきの
マジックのトリックを
君だけに教えてあげちゃお
えっ　ホント！
きっとだよ　きっとだよ！
それ以後
僕は彼女に会っていません
１７才のとき
父が死んだのを機に
僕は　本格的な
マジック修行に出ようと
遺品を整理していました
すると　偶然
父の日記を見つけたんです
そこには　父と近宮玲子の思い出がつづられていました
そして　彼女が
僕の母親だってことも
彼女の死を知ったのは
それから１年後
イタリアで
修行をしていたときです
正直言って
かなりショックでしたよ
僕が　一流のマジシャンになる前に
彼女に
死なれてしまったんですから
その後　修行を終えて
イギリスの実家へ帰ったとき
たまりに　たまった郵便の中に
それは　埋もれていました
これは…
そこには天才マジシャン
近宮玲子の選りすぐりの
マジックの数々が
惜しげもなく記されていました
僕は　そのトリックのすばらしさに身震いしたほどですよ
これが　そのとき送られてきた
トリックノートです
彼女のトリックノートは
２冊あったのか
ええ
左近寺たちが奪ったのは
恐らく　彼女が
自分用に書き写したものでしょう
そして　僕は日本に向かいました
近宮玲子の弟子たちが
作ったという
幻想魔術団の舞台に
足を運んだのです
ところが　そこで見たのは
僕は自由だ！
驚きました
幻想魔術団のオリジナルとしての
評判のマジックの　ほとんどが
近宮玲子のトリックノートに
記されたものと
全く　同じなんですから
こ　これは…
どういうことですか？お母さん
まさか　お母さん
まさか　あなたは
あなたの弟子たちに
殺されたんですか？
僕は　その事実を確かめるために
マネージャーとして
幻想魔術団に潜り込み
そして…
しかし　あんときは驚いたぜ
俺たちは　ちょいと脅かすつもりであの人を天井まで呼んだのに
偶然　渡し板が外れちまうなんて
それが　偶然でもないみたいよ
え？
昨日　桜庭が言ってたんだけど
左近寺のやつ
私たちが行く前に
天井裏で細工してたんだって
じゃ　まさか　やつが？
おいおい　いつまで　そんな
殺人鬼に　しゃべらせとくわけ？
早く　しょっ引いてくださいよ
刑事さん
ほらよ　あんたが言ってた
トリックノートだ
貴様　やっぱり！
もらったんですよ　先生から
大体　天井裏に行ったからって
どうして　僕が
近宮先生を殺したことに
なるんですか？
それだけじゃ
証拠に　なんないでしょ？
貴様！
もういいですよ　刑事さん
何？
それより　左近寺さん
このノート　いただけませんか？
母の形見ですので
ああ　持ってくがいいさ
中身は　もう全部
頭の中に　たたき込んであるんでね
そうですか
高遠さん
さ　行きましょう　刑事さん
私はノートを取り返しただけで
満足です
何なんだ？さっきの嫌な笑いは
さて　東京まで　ひと眠り　ヘヘ
何か　悔しいわね　こんなのって
こんなにハッキリしてるのに
証拠が　ないなんて
高遠さーん！
あんた　一体？
僕の　やるべきことは
全て　終わったんですよ　金田一君
左近寺には　近宮玲子本人が
裁きを下すでしょう
燃え盛る炎の鉄ついをもってね
グッドラック　名探偵君
また　いつか
どこかで　お会いしましょ
すっごい人ね
おい　金田一！
こっちだ　こっち
何だ
おっさんたちも来てたの？
ああ
左近寺のやつが独立して
ショーをやるっていうんだな
別に俺は見たくなかったんだが
警視が　どうしてもって言うから
え　明智さんが？
別に　左近寺のマジックを
見に来たわけじゃありません
ただ　何か…
何かが起こりそうな気がして
看守さん
ん？
今日は　何日でしたっけ？
２月１日だが
それが　どうかしたのか？
いえ
皆様　本日は　ピエロ左近寺
ソロマジックショーへ　ようこそ！
さて　今から　この岩に
僕が入ります
すると　岩は　フワリと浮かび
ひとりでに炎に包まれて
燃え尽きてしまうのです
名付けて　「無重力岩　天外消失」
きっと　これも
近宮さんのノートから盗んだのね
え　僕？僕は　大丈夫
何しろ　マジシャンですからね
マジシャンは
消えるのが商売なんです
ハハハハハ
ウフフフフフ
さあさあ　消えるときに
僕が　ちょっと戸惑って
アチーとか言ってしまうかも
しれませんけれども
慌てて
水をかけたりしないでくださいね
岩が！
本当に浮いた
アアッ　おい　事故だ
開けろ！熱い！
やだ…　何か
本当に助けを求めてるみたい
看守さん　今日は
ステキな日になりそうですね
おっさん
駄目だ　もう　手遅れだ
左近寺には　近宮玲子本人が
裁きを下すでしょう
燃え盛る炎の鉄ついをもってね
私だ
何　高遠が消えた？
ええっ！
看守が目を離した　ほんの５分
ほどの間のことだったそうです
まるで　マジックのように
高遠は消えた
たく！警察の面目　丸潰れだぜ
自分がマジシャンであることに
心底こだわる
高遠らしいやり方だよ
ま
高遠の脱出方法こそ
分からずじまいですが
左近寺殺害マジックの
からくりは分かりましたよ
ええっ！
左近寺殺害って
じゃ　やっぱり　あれは
事故じゃなかったんですか？
ええ
あの岩の形をした箱には
発火材のリンが
使われていたんですよ
リン？
あのマジックでは
左近寺が脱出する際
箱の中のリンに火をつける
手はずだったんです
だが　リハーサルでは
何ともなかったリンが
本番では　左近寺が脱出する前に
火がついてしまった
スポットライトか！
そのとおり
リンは種類によっては
簡単に発火します
ライトの熱で　箱の中が
リンの発火温度を超えていたのか
でも　妙だな
あのマジックも
例のトリックノートから
使われたものだろ？
近宮玲子が
そんな欠陥マジックを？
これを見てください
これは
近宮玲子のトリックノート
何！
高遠が
留置場に残していったんです
それを見れば分かりますよ
近宮玲子が
自分のトリックノートに仕掛けた
呪いの意味がね
そういうことだったのか
左近寺が死んだ
「無重力岩　天外消失」のトリックが
高遠に送ったノートには
載っていない！
何だって！
やられたよ
これが高遠が言ってた
「炎の鉄つい」か！
近宮さんは　殺される以前から
このトリックノートが
弟子たちに狙われているのを
感じ取っていたんでしょう
そこで　彼女はノートを奪った者が死の制裁を受けるよう
最後に　この欠陥トリックを
書き加えた
高遠は　この
奪われたノートを見たとき
それに気付いたんでしょう
だからこそ
彼は　あっさりと
捕まって見せたんです
この恐ろしい
死のマジックショーの華々しい
最後のトリを
彼の母親に譲るためにね
あの高遠という男は
天性の犯罪者です
このまま　野放しにすれば
いずれ　また何かを
しでかすかもしれません
地獄の傀儡師としてね
上等だぜ　そんときは　また
俺が捕まえてやるさ
じっちゃんの　名にかけて！
俺は　今　テレビ局のバイトで
北海道　背氷村に来てるんだ
寒いし　人使いは荒いし
とんでもねえこと
引き受けちゃったなあって
思ってたら　なんと！あのスーパーアイドル
速水玲香ちゃんと一緒
超ラッキー
早速　モニターで　お姿　拝見っと
え…　何だ　この映像は？
伝説の雪夜叉が　何で　ここに？
いけない
こいつは　彼女を殺す気だ！
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？﻿うわー　うがっ　ぶっ
きゃー
ここ　背氷村に伝わる伝説の雪夜叉
誰か来て　きゃー
ええっ
あっ
誰なの？あんた
キャメラの位置は　ここ
それから　響
隠しマイクのセッティングは
うまく頼むぜ
任しといてください
いや　よく寝るな　バイト野郎
うわー
俺は美雪に誘われて
テレビ局のバイトで
北海道の背氷村という所に来た
そこで　俺たちを
待ち構えていたのは
雪夜叉の伝説に彩られた
恐ろしい殺人計画であった
ひっ　うう…
私を　この私を殺して
この女と一緒になりたいなら
私を殺してからにして
カット　はい　オーケー
じゃあ　今日は
ここまでにしとこうか
お疲れさまです
コーヒーをどうぞ
おー　気が利くな　バイト
俺は　こっち
僕は彼女から　もらおう
ふんっ　女好き
でも　大門先輩には負けますよ
玲香さん　どうぞ
ありがとう
玲香さんって　歌だけじゃなくて
お芝居も　メチャメチャ上手なんで
驚いちゃいましたよ
そう？うれしいわ
はじめちゃん　他の皆さんにも
お勧めして　お疲れさまでした
私の演技は
だーれも褒めてくれないのね
そりゃ　もう　言うまでもなく…
見え透いた　お世辞は　いいのよ
えっ？
うん？
ん？
うん？あ　美雪
俺たちもコーヒー　もらおうか
そうね
あー　あったまる
はっ　うぐ…
はじめちゃん
はあ…
ぶっ
きゃー
どうした？バイト
ち…　血だ
はじめちゃん
しっかりして　金田一君
死んじゃ　嫌
誰か　コーヒーに毒を…
毒を？
名演技　名演技
ここの大根連中より
よっぽど　上手だわ
ああ
うふふ…
さあ　起きなさいよ
血のりね
ああ…
ドッキリなんでしょ？
カメラは　あそこ
マイクは　このソファの下
昨日から　おかしいと思ってたのよ
ふざけんじゃないわよ　ふん
ああ…　おっそろしい
あの人　テレビで見るのと大違い
女は２つの顔を持ってるのよ
ええっ？
おい　バイト　お前のせいで
番組がパーだ
そんな…
そんなもこんなも
ないんじゃないの？
ええっ
どうして俺が　こんな北海道の
クソ寒い所まで来て
つるし上げられなきゃ
なんないわけ？
いいじゃないの
速水玲香と　あんな近くで
夢の共演できたんだから
別に　俺は彼女のファンでも
何でもないんだし
感激は薄いけどね
ウソばっかり
東京へ帰ったら
学校中　自慢しまくるくせに
あっ
これは…
氷室画伯よ
この山荘の持ち主にして
日本を代表する偉大なる画家
変だな
何がよ？
若い頃の画伯ね
そりゃ　今とは全然違うわよ
違うよ　なんか変なんだ　この絵
えっ　どこが？
なんか分かんないけど…
おい　バイト
本館へ移動だ
やっと寝られる
バカ　仕事だよ
えっ？
りえ一人残して　全員移動だ
な…
そっとやれよ　そっと
今頃から何やんすか？
本館へ着いてからのお楽しみ
いいもの見せっからよ
よっこらしょ
ごめん　遅くなっちゃって
ああ　玲香さん
僕　後ろへ乗るから
いいのよ　金田一君
本館まで２０分でしょ　すぐよ
僕は　いいけど…
替わってあげようか？
ファンじゃないんでしょ？
な…　何が？
きつくないですか？
ううん　ちっとも
撮影に借りた氷室画伯の山荘は
川を挟んで
本館と別館に分かれている
２つの建物をつないでいた橋は
夏に川の増水で流されたため
今は上流にある橋を
渡って行かなければならない
だいたい　車で２０分は　かかる
おい　バイト
早く電気　つけてくれ
はい　電気のスイッチ　スイッチと
ああ　あった
うわー
ああ…
あっ　んっ　わー
雪夜叉だよ
雪夜叉？
ここ背氷村に伝わる伝説の雪夜叉
氷室画伯ですか？
おい　金田一
こっちへ来て火に当たれ
おっさん　何で…
何で　おっさんが　こんな所に？
妙な所で会いましたね　金田一君
げっ　明智さん
明智警視と２人で
出張で来たんだが
道警で借りたジープが故障してな
迷い込んだのが　ここってわけだ
私は氷室画伯の絵を
１枚持ってるんです
こうして　画伯と
お話しできるなんて
夢にも思わなかったですよ
あの　サインしてもらえませんか？
俺　絵なんか
とても買えないから
氷室画伯のなら
サインだけでも値がつく
そんなとこだろう
おっさんも欲しいくせに
もらってやろうか？
お…　俺は　ちゃんと買うよ
そのうちにな
おい　バイト
は…　はい
へへ　見てみろよ
どうも　どうも
一体　何を始めようってんだ？
えー　こんな仕掛けがあるんなら
早く教えてくださいよ
皆さん　眠気覚ましに　どうぞ
あっ　綾辻さん　私たちがやるのに
いいのよ　これぐらい　どうぞ
あ　どうも　ん？
これが　あの高慢ちきな女優を
恐怖の　どん底に陥れる
明石さんが開発した
リモコンであーる
面白そう
早くやりましょうよ
僕　眠くて…
明石
あれ？あいつ
また食堂で　盗み酒でも
してんじゃないんですか
うーん　ちっ
綾辻　そろそろ　別館のほうへ
行ってくれ
２０分は　かかるからな
はい　じゃあ　行ってきます
相棒　そろそろ始めるか
こっちはオーケーです
よーし　いくぞ
ん？ひゃー　何？これ
ハハ…　何だよ？あのザマは
お　廊下へ出るぞ
誰か
よーし　今度は俺だ
助けて　誰もいないの？
誰か　誰か来て　きゃー
ハハハ…　ヘヘヘ…
誰か　助けて
ざまあ見ろだ
じゃ　俺は先に寝るぜ
棟方　あの野郎
俺より先に寝るなんざ
１２５年早い
ウフフ…
誰もいないの？
くだらねえ
私たちも寝ますか
あ　出た　雪夜叉よ
さすがプロ　手が込んでる
知らん　誰だ？ありゃ
綾辻さんでしょ
さっき別館へ行ったから
いや　それはないな
彼女が出たのが１時５０分
今は２時２分
別館へは確か　車で…
２０分は　かかる
出発してから１０分ちょっとじゃ
まだ　あの橋あたりだよ
じゃあ　あの雪夜叉は
誰なんですか？
ええっ
何よ？そのわざとらしい格好
どうせ　またドッキリなんでしょ
いい加減にしなさいよ
誰？誰なの？あんた
きゃー
だ…　誰？
早く　その気味悪い　お面を
取りなさいよ
はっ
違う　本気だ
本気で彼女を殺す気だ
違う　本気だ
本気で彼女を殺す気だ
何？
響　綾辻を急がせろ
オーケー
もしもし　もしもし
何かの陰に入ったのか通じません
ムダだ　連絡が取れても
着くまで１０分かかる
イヤ　イヤ…
やめて
きゃー
はっ
は…
ああ
カメラがやられた
綾辻の車が来るぞ
響　綾辻に連絡しろ
はい
もしもし　こちら　響
えっ　りえさんが襲われた？
どういうことですか？
すぐ中へ入って　りえさんを
なっ…
そのまま　Ｕターンして
本館へ　すぐに引き返してください
何なんですか？あんたたちは
ああ　俺の知り合い
偶然　ここで会ったんです
警視庁のもんだ
警視庁？
たった今　目の前で殺人事件が
起こったんです
これからは我々の仕事です
ううっ…　どうして　りえさんが？
ここで　こう振り返った
はじめちゃん
もう　あっち行こうよ
あっ
びっくりさせないでよ
うん
なんか変
何が？
昨日も　なんか変だ　変だって
あっ　そうそう
なんか　昨日と違ってない？
えーっ
別に変わったように見えないけど
ふーん　そうかなあ
こんな天気じゃ　どこにも逃げ出すことができないでしょうね
犯人も　そうじゃない人も
これも密室って言うのかしら
雪に閉じ込められた密室
なんか　ちょっとロマンチックね
そんな気分になれるかよ
刑事さん　もしかして　この中に
犯人がいるなんて　言い出すんじゃ
犯人は明石で決まりですよ
あいつ　ずっと　姿を
見せてないんだから
明石さん　昨日のお昼
こっそり　お酒飲んでて
りえさんに叱られてた
玲香ちゃん
それって動機ってこと？
動機なら　こいつだって
あれ？聞き捨てなりませんね
昔　随分　可愛がって
もらったんだろ　りえ姉さんに
生命保険　入る入らないで
もめて　別れたとか
それ　大門先輩
バカ　違うよ
保険金殺人ですか？
おっ　まさか
お前も駆け出しの頃
りえに　相当
現場で
いじめられてたそうじゃねえか
そうそう　響みたいなのも
内に　ためるタイプだもんね
そういや　ディレクターだって
何だよ？
やめとこう
言ってみろよ　役者ふぜいに
ごちゃごちゃ言われる覚えはねえ
りえ姉さんに　同じタンカ切って
番組　降ろされたんだろ
あん時は飛び込みの仕事が入って
俺のほうから降りたんだ
俺の聞き違いだったかな
何？
まあまあまあ　動機は　ともかく
後で皆さんの
殺害時のアリバイをお伺いします
あの時　一緒にモニターを見ていた比留田さん　響さん　速水さん
それに我々と
金田一君と七瀬君は
とりあえず除外しますが
あとの方は…
刑事さん
俺は録画中に　あそこを出た後
部屋に帰って寝ちまったよ
僕も同じ　バカ騒ぎなんか
付き合ってられないからね
何？バカとは何だ？バカとは
ちゃんとした
テレビの仕事なんだぞ
な…　失礼
私は
別館へ向かう途中だったから
そうよ　綾辻さんは関係ないわ
車を運転してたわけだし
だとしても　あらゆる可能性を
探るのが推理の鉄則
ですよね？
そのとおりですね
恐縮ですが氷室画伯にも
アリバイを
お聞きすることになると
うん
私は　あの時
綾辻さんが持ってきてくれた
コーヒーを持って
自分の部屋で飲みました
まもなく眠くなって…
あら？
コーヒー飲んだら
目が　さえるんじゃないの？普通
えっ？
あっ
えっ　あら何か　どうかしたの？
いやいや
やっぱり北海道ですな
すごい降り
ご苦労さん
少し　村の人に
聞き込みに回ったんですが
ちょいと面白い証言が
得られました
えっ
ん？
お…　鬼火です
鬼火ですか？
間違いない
ああ　あれは確かに鬼火じゃった
ちょうど夜中の２時過ぎ
小便に起きて
ふっと窓の外を見たら
背氷川の谷間に
鬼火が見えたんじゃ
もしかして　雪夜叉か？
ああ　かもしれん
雪夜叉の灯籠か？
またまた恐ろしいことに
なったもんじゃ
雪夜叉
雪夜叉というのが何か？
聞かせてください
その雪夜叉伝説を
おお　金田一か
ちょうど　よかった　入れ
いいですよね？警視
構いませんよ
はあ　どうも
この背氷村は明治以後
入植した開拓民で作った村でな
当時は大変貧しかったそうじゃ
北国では　よくある話じゃが
当然のように
身売りも行われておったそうじゃ
ある冬の吹雪の夜に
売られた娘が赤ん坊を抱いて
村へ逃げ帰ってきたんじゃ
だが　村のもんは
人買いの仕返しを恐れて
誰も家に入れんかった
まして　家族も食いぶち減らしの
ために売った娘を
今さら
家に入れるわけには　いかん
入れたら　家族共倒れ
みんな死んでしまう
そのうち　赤ん坊は
飢えと寒さで死んだ
むごい話だ
娘は呪いの言葉を残して
吹雪の中に消えた
それ以来　この村では
ひどい吹雪になると
夜叉に姿を変えた女が
村人を殺しに来ると
言われるようになった
うわー…
な…
雪夜叉は吹雪が収まるまで
人を殺し続けると言われておる
イヤー
ん？
えっ　ああ
綾辻さん
どうしたんですか？綾辻さん
私　車に忘れ物を
取りに行ったんです
そうしたら…
えっ
誰かいたのか？車に
いいえ　雪だるまの中に…
雪だるま？
はっ…
こ…　これは
明石さん
ひょっとして　この事件
この吹雪が　やまないかぎり…
山荘に届いた１枚のファクスから
殺された加納と明石たちに
意外な共通点が浮かび上がった
犯人の動機　そして　トリック
これで　全ての謎が解けたのかな
明智さん　あんたの推理で
だけど　俺は気になるんだ
窓に映った炎　伝説の鬼火
事件は終わっていない
雪夜叉は　まだ…
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
北海道の背氷村に　テレビ局の
バイトで出掛けた　おれと美雪は
不気味な連続殺人事件に
巻き込まれた
吹雪で閉じこめられ
密室と化した村で
伝説の人物　雪夜叉になりすまして殺人を続ける犯人は
きっと　この中にいるに違いない
明石さん　ああ
私　車に忘れ物を取りに行ったら
雪だるまから
何か　のぞいて見えたので
雪を払ってみたら
これは枯れ草？
飼い葉じゃ
えっ？
牛とか馬とかのエサじゃ
じゃあ　明石は馬小屋で
殺されたのか？
自殺じゃないのか？りえを
殺しては　みたけど　怖くなって
だったら　その辺に遺書か何か
違います　少なくとも
加納りえ殺しの犯人は
彼じゃない
死後硬直が全身に及んでいます
死後１２時間以上は　たっている
現在　１２時１０分
すなわち　彼は加納りえより前に
死んだことになります
えー！
あーあー　雪夜叉じゃ
雪夜叉が現れたんじゃ
雪夜叉じゃあ　雪夜叉じゃあ
雪夜叉じゃ
雪夜叉　雪夜叉じゃあ
雪夜叉じゃ
雪夜叉じゃ　雪夜叉じゃ
雪夜叉じゃ　雪夜叉じゃあ
雪夜叉じゃ　雪夜叉じゃ
雪夜叉じゃあ
ヒエ　エッ
ヒヒヒ　ヒエッ
エー　エッ　エッ　エッ
ヒエー
加納りえが殺された
昨夜午前２時２分の
あなたのアリバイをお聞きします
ええ　疲れてたもんで
自分の部屋に戻って　グーグーと
本当ですよ
部屋で　次の仕事の台本チェック
今度　主役なもんで
私はドッキリの看板持って
加納りえさんの前に
現れる役だったんで
別館に向かって
車を走らせてる途中でした
次は　氷室画伯ですね
呼んできてください
何か気になることでも
あるの？はじめちゃん
カメラに撮られてるのが　わかってカメラを壊したんじゃないの？
ヤツは夜叉の面で
顔を隠していたんだ
犯行を終えた後で
カメラを壊す必要があんのかな？
そうだ　カメラを壊す
手際から　みても
ヤツはカメラで撮られてることを
知ってたんだ
それより　おれは
この動きが気になるんだよ
何かに気がついて
立ち止まったって感じだな
カメラのこと　思い出したんじゃ？
うん？
わかったの？
ううん　ションベン我慢してたら
頭が働かん
もう
ああ　あっ　氷室さん
ごめんなさい
ちょっと　急いでたもんですから
あー？
ずいぶん早いトイレね
美雪　氷室画伯って
どうしてあんな格好してんの？
あのマスクとサングラス
ああ　知らないんだっけ？
事故よ
１０年前の飛行機事故
あの時　奇跡的に助かった人が
何人かいて
その中に　氷室画伯もいたの
あっ　あっ　何か聞いたことある
その時のヤケドがひどくて
あんな格好してるんでしょう？
それもそうだけど
もともと　人間嫌いみたい
氷室一聖は若いころから
天才画家って　騒がれたけど
極端な人嫌いで
人前に出ることもしないし
自分の写真を雑誌に載せることも
拒否してたそうよ
画商とも　直接会わなかったって
話だし
氷室画伯の素顔を知ってる人は
少ないの
だから　私　昨日　氷室画伯の
自画像見て　驚いちゃった
結構　二枚目で
カッコいいんだもん
美雪　それだ！
なっ　どれ？
ああ　違うよ
加納りえが殺された後
みんなで別館へ行ったろ
あの時　廊下の様子が変だって
うん　言ってた
自画像だよ
自画像が別の絵に
掛け替えられてたんだ
自画像って…
えっ？
これ？
あっそう　これ
雪夜叉に化けた犯人は
加納りえを殺した後
氷室一聖の貴重な自画像を
どこかで高く売ろうと思って
持ち去ったのかしら？
違うよ　この絵に犯人を示す
重要な手がかりがあるんだと思う
だから…
うん？
他に自画像が映ってるところ
ないかな？
あ？響さん　止めて
何も映ってないじゃない
廊下の奥の窓さ
あっ　これは
鬼火だ
鬼火？
村の人が見たっていう鬼火だ
やっぱり　目の錯覚なんかじゃ
なかったんだ
何の灯りだろう？
とにかく　現場に行ってみよう
確かめなきゃならないことが
たくさんある
けど　その前に
ああ？何？
さあ？
う　うっ　漏れちゃう
ここに　氷室画伯の
自画像が掛けられてあった
あの時　変だと思ったのは
この絵のせいだったんだ
自画像は　この絵より
一回り　小さかったのさ
なるほど
うん？
さすが　金田一君
あはっ　どうも
確か　こっちの方じゃった
鬼火が見えたのは
あっちは背氷川か
ということは
氷室邸別館の廊下の窓に映った
灯りの方向と考え合わせると
ここで　急に谷が狭くなっている
向こうまで
約５メートルってところね
下に降りられないかな？
危険よ　こんな所から落ちたら
ひとたまりもないわ
これ　そこのガードレールに
縛り付ければ？
ああ　響さん
おっさん　行くぞ
よっしゃあ
あー
うっ　うん　言っとくがな
おれは　おまえの
部下でも何でもないんだぞ
おっ　うん
こりゃ　思ったより
流れが激しいな
ああ
キャー！
助けてー
何やってんだか　わかんねえな
最近のアイドルときた日にゃ
女の顔は一つじゃないってことさ
何よ　せっかく協力して
あげようと思って来たのに
ああー！
ああ…　重い…
ごめんなさい
やあ　どういたしまして
ちょっとー
何やってんのよー
はじめちゃん
まじめにやりなさいよー
まじめにやってるさ
美雪のやつ　焼いてんのか　ムフフ
ナハー
ぐずぐずしないで　さっさと
終わらせて上がってくれば？
まったく　マジで焼いてんのか？
あっ　あれは…
何だ　ただのロープじゃない
ううっ　うっ…　うっ…
ウッハハハハ　でかした
でかしたぞ　金田一
大収穫だ
このロープが　加納りえ殺しの
アリバイ崩しの切り札だ
犯人は　あそこにロープを
くくり付けていたんだ
伝って渡れば　別館へは
５分で　たどり着けるからな
刑事さん　ロープの回収は
どうするんですか？
両方ともガードレールに
結んであるんでしょう？
そりゃ　その…　犯人が
犯行後　隙を見て
車でも使って
その　行ったり来たりと
簡単だよ　ロープを最初から
輪っかにしておけば
一ヵ所　切るだけで　回収は　できる
あっ　そうか！
そうなんだ
おれも今　そう言おうと思って
おっさん
でも　それには…
ずいぶん低レベルな話だ
にゃにを？
フフ
おっ　明智警視
いやー　その…　重大な証拠物件を
探し当てましてな
こっちも重要な情報が入りました
来てください
はっ　はあ
金田一君　君も　どうですか？
えっ？
知りたくないですか？
雪夜叉の正体を
金田一君の話を聞いてから
私もこの消えた自画像に
興味を持ちました
確かに　この絵には
妙な違和感を覚える
何か引っかかる
ずっと　この絵を見ていて
やっと　わかったんです
えっ？
鏡ですよ
鏡？
どういう意味ですか？明智警視
そうか　この絵は鏡を使って
描いたんだ
だから　変な感じがしたんだ
さすがは　金田一君
警視　私には何が何やら　あの…
おう？
どうぞ
明智さん
明智さん宛にファクスが
来ましたか
ありがとう
首を長くして待ってたんだ
本庁に　１０年前　氷室画伯が
遭遇した
飛行機事故の資料を
請求してたんです
飛行機事故と関係が？
思ったとおりだ
見てごらんなさい
これは…
カメラマンの明石に
ディレクターの比留田
その横は加納りえか
待てよ　ということは
しまった！
明智警視！
まったく
何が　どうなってんだよ？
もし　明智さんの推理が正しければ次に狙われるのは
これは
ああ
遅かったか
なっ　何で比留田が
明智警視　これは一体…
剣持君　全員を居間に
集めてください
警視　本当に氷室画伯は
お呼びしなくても
よろしいんですか？
ええ　この山荘には
氷室画伯は　いませんから
ええ！ですが　アトリエに
いえ　あの氷室一聖は
偽物なんです
そんな
まさか
警視
そのヒントは
あの消えた自画像にあります
あの絵の服のボタンは
掛け方が逆になっています
普通　男性服は左前に
ボタンを掛けますが
あの絵は　女性服のように
右前でボタンを掛けている
すなわち　氷室画伯は
鏡を見ながら　自画像を描いた
そう考えてみると　絵筆を右手に
持っていることから考えて
本物の氷室一聖は
左利き？
そう　しかし実際　われわれの
前にいた人物は
そうだ　おれ　サインもらった時
おー　確かに右手で書いてた
それに　最初の加納りえ殺しの時
彼にはアリバイがなかった
ああ
ああ　あー
いや　いやー　あーっ！
恐らく彼は　窓ガラスに映った
自分の姿を見て
自画像の鏡の秘密に
気づいたんだろう
動機は　動機は何なんですか？
１０年前の飛行機事故で
本物の氷室一聖は死んだ
取材に駆けつけた
比留田たちが　それを知り
誰かが身代わりになって
氷室一聖になりすまし
氷室の絵画を手に入れ
その売買で
一生遊んで暮らそうと企てた
でも　どうして　ニセ氷室は
仲間だった比留田さんたちを？
仲間割れでしょう　よくある話よ
そう言えば
比留田さんも明石さんも
大して仕事してないのに
金回り良かったもんな
後は　本人に
詳しく聞いてみましょう
いいですね　金田一君
明智さん　いつから
あの氷室一聖が怪しいと？
会って　絵の話をしても
彼が自分の絵の話を
したがらないのが
ずっと引っかかっていてね
そんなに早く
ヒントを見つけられてちゃ
勝負にならないや
氷室さん　ここを開けてください
応答なしか
しょうがないですね
やりますか
おお
ああ
ああっ
あー
あっ
ああ
死んでます
刑事さん
うん？
あれ
この部屋の鍵ですか
だが　内側から
鍵が掛かっていたとすると
自殺ですか？
薬を飲んだ形跡がありますが
明智さん
遺書か
「皆さん　ご迷惑をおかけしました
この山荘で起きた
３件の殺人の犯人は
この私です
私の本当の名前は
水沼といいます
かつては比留田たちと一緒に
メイク係として働いていました
そう　あの１０年前の
忌まわしい事故の前までは
あの日　私と明石　比留田
それに　当時　まだ無名の
レポーターだった加納の４人は
事故現場のすぐ近くの民宿に
偶然　別の取材で滞在していました
この事故の映像を　テレビ局に
高く売りつけてやろうと
軽い気持ちで
現場にやって来たことが
すべての始まりだったのです
ねえ　この人
画家の氷室一聖じゃない？
誰が言い出したのか
もう忘れてしまいましたが
氷室一聖になりすまし
その巨額の資産を
手に入れようということになり
４人の中で　一番　背格好の
似ていた私が
ニセ氷室になることになり
本物の氷室は
近くの雑木林に埋めました
幸か不幸か　私は特殊メイクの
技術を持っており
それで　顔にヤケドの跡を作り
カツラとサングラスで
氷室になりすましたのです
私は人目を避けるため
氷室の山荘に移り住み
絵を売った金を
仲間たちに分け与えながら
自分も時折　変装を解いて
町に繰り出し　豪遊するという
二重生活を楽しんでいました
しかし　ある時
私は思ったのです
この金を独り占めに
できないものかと
そして　私は　今回の殺人劇を
計画したのです」
雪夜叉の衣装か
われわれが自画像に
注目したのを知って
だまし通せないと
思ったようですね
「一度も座ったことのない
キャンバスの前に座って
一度も握ったことのない
絵筆を握って死にます
この世の最後の瞬間に
本物になれるかもしれないと
信じて
水沼貴雄」
至急　道警本部に
連絡を取ってください
はあ
この雪じゃ　しばらく　こっちに
来られないかもしれませんが
はじめちゃん　何で　また　ここに？
美雪　雪夜叉は吹雪が収まるまで
人を殺し続けるって言ったろ？
でも　犯人が自殺して
すべて終わったんじゃないの？
いや　まだ鬼火の謎が解けてない
あれは　車のヘッドライトか
何かじゃ…
おれの勘だけどさ
今回の事件の鍵は
あの鬼火じゃないかと思うんだ
はじめちゃん　ここを調べても
何も出てこないんじゃない？
行きましょうよ
この箱は…
ハサミか
うーん
どうしたの？はじめちゃん
これだよ　美雪
あっ　何よ？
おっさん
道警が来る前に　もう一度
加納りえの現場を
見ておきたいんだ
そのチョキチョキは
やめろっつうの
それにな　今さら　現場見たって
現場１００回　捜査の基本でしょ
それにしても
よく降りやがんな　まったく
くもって　前が　よく見えねえよ
そんなの
こうすりゃいいんじゃない？
バカ！
うう…　こらー
この寒さで　水なんか出したら
フロントガラスが凍りついて
聞いてんのか？金田一
死ぬかと思ったぞ
あっ　そうか
わかったよ　おっさん
雪夜叉のアリバイトリックが
何だって？
謎は　すべて解けた
そうか　わかったぞ
鬼火の正体が
明石が握っていた飼い葉
谷底に残っていたロープ
すべては１本に　つながった
明智さん　あんたの　その推理力を
逆に犯人が利用していたんだ
人に裏切られ　復讐の鬼に変わった悲しい雪夜叉の素顔を
今　ここで暴く
謎は　すべて解けた
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿テレビ局のバイトで来た
北海道背氷村の山荘で
連続殺人事件が起こった
犯人は自殺し　事件は解決したと
明智さんは言ったが
俺は納得できない
真犯人は他にいるに違いないんだ
お母さん
お母さん
謎が解けただと？
おい　金田一
そりゃ　どういうことだ？
水をかければ凍る
この寒さで水は　すぐに凍るんだ
はあ？
オッサン　ロープとスコップとバケツだ
な…　何？
それと警視庁に連絡してくれ
調べてもらいたいことがあるんだ
そりゃあ構わんが　なんで…
真犯人を挙げるんだよ
やめんか　金田一
この吹雪がやむ前に　俺たちで
雪夜叉のトリックを暴くんだ
金田一君って
いつも　あんな風なの？
そうですよ　ドジで間抜けで
品がなくて　それから…
でも　推理を始めると
がぜんカッコよくなる
そうかなあ　全然思わないけど
同級生なんでしょう？
っていうか　幼なじみです
いいよねえ　とても　うらやましい
速水さんこそ　いつも周り
すてきな人ばかりに囲まれて…
みんなカッコばっかり
本当の友達なんていないのよ
ボーイフレンドとかも？
全然
わあ　信じらんない
だから　あたし
あなたと金田一君の関係が
とっても…
みなさーん　起きてくださーい
何？
起きてくださーい　みなさーん
げっ…
まだ事件は解決しておりませーん
これから　この金田一君が
見事　真犯人の正体を
暴いてみせます
えっ？
真犯人の正体？
加納りえ　明石道夫　比留田雅志
水沼貴雄
この４人を殺した犯人　雪夜叉は
まだ死んでなんかいない
あの水沼が犯人なんじゃ…
罪を認めて死んだんだろ？
いや　あれは自殺じゃない
彼も　また真犯人に殺されたんだ
ええ？
はじめちゃん？
まさか
ほう　面白い
私の推理をくつがえそうって
いうんですね
そうなりますね
聞かせてもらいましょう
金田一君
水沼さんは絵筆を右手に
死んでいましたよね
どこが変なの？
彼は右利きなんでしょう？
これを見てくれ
ハサミじゃないか
これは水沼さんの部屋で
見つけたんだけど
誰か　このハサミで
紙を切ってくれませんか？
はい　あたしやる
玲香ちゃんは右利きだよね
そうよ
じゃあ　切るわね　あら？
このハサミ　なんか変
貸してみたまえ
はい
これは　左利き用ですか
その通り
左利き用と右利き用とでは
刃の合わせ方が逆なんだ
本物の氷室一聖は
左利きだったんでしょ？
このハサミケースの裏に
「消費税込み」と表示した
５パーセントの消費税を乗せた
値札が貼ってある
５パーセントの消費税は
去年の４月からだ
１０年前に死んだ氷室一聖が
買えるわけがない
ハサミは水沼自身が買ったんだ
それって　水沼さんも
左利きだったってこと？
ええ？
ビンゴ　正解だ　美雪
本庁からのファクス
届いたぞ　金田一
何ですか？
水沼貴雄の写真です
彼が高校時代の頃のものです
水沼さんは右手に
グローブをしてますよね
すなわち　彼は左利きだった
あの自画像を氷室一聖が
鏡に映して描いたものとは知らず
水沼さんは単純に
右利きだと思いこみ
左利きなのに　人前では
右利きのふりをしていた
そして　真犯人も　また　水沼さんを右利きだと思いこんでしまい
右手に絵筆を握らせて　自殺に
見せかけるというミスを犯した
俺たちは密室のアトリエで
自殺をしたと信じていた
その直前に　明智さんが　偽者の
氷室一聖の正体を暴いてたから
この場にいる誰もが　水沼さんが
罪を悔いて自殺したと信じ込んだ
どうも　私に非があったようですね
反省すべきかは
まだ判断つきかねますが
いや
明智さんは　その鋭い推理力を
真犯人に利用されたんだ
真犯人は　まず　睡眠薬入りの
コーヒーを渡し
水沼さんの加納りえ殺しの
アリバイをなくした
あの雪夜叉の不自然な動きも
自画像の真実に気付かせ
我々の目をニセ氷室である
水沼さんへ向けさせるために
真犯人が最初から仕組んだ
巧妙なワナだった
そして　加納りえ殺しの犯人が
行方不明になった明石さんに
傾きかけた時に
雪だるまの中の死体を
タイミング良く出したんだ
水沼さん犯人説に
ミスリードするための
真犯人の大きな布石だったんだ
じゃあ　何もかも
犯人の計画通りって…
今まではね
俺たち　ずっと犯人に
見張られてるって感じだな
もしかして　この中に真犯人が？
何？
よーく思い出してください
水沼さんが死んだ時のこと
明石さんが雪だるまから
発見された時のこと
犯人は水沼さんに毒入りコーヒーを
飲ませて殺したんだと思う
みんなの目が水沼さんに
向いていたから
単純なトリックでも通用したんだ
明石さんは　加納りえの後に
殺すはずだったが
アクシデントがあり
先に殺さなければならなくなった
アクシデント？
これは氷室一聖が死に
水沼さんたちに黒い夢を描かせた
１０年前の飛行機事故の記事です
ここに奇跡的に生き残った
乗客の名前が載っている
その中に　クゼマリナという
名前がある
クゼ？誰だ？そりゃ
この中に　そんなやつはいないぞ
オッサン
当時１０歳の少女だったクゼマリナは
この事故で両親を失い
親戚の家に養女となり
現在に至っている
それが　どうしたの？
クゼマリナ　彼女は名字を変え
冷酷な殺人鬼　雪夜叉となって
今　ここにいる
クゼマリナは養女となり
名前を変えた
綾辻真理奈とね
え？
何？
綾辻さんが？
まさか
あ…　あの時
刑事さん　あれ
この部屋の鍵ですか
きゃー！
私　車に忘れ物を
取りに行ったんです　そしたら
雪だるまから何か　のぞいて
見えたので　雪をはらってみたら…
みなさん　眠気覚ましに　どうぞ
「女の顔は１つじゃない」って
言ってたのは　あなただ
あなたのもう１つの顔は
雪夜叉だった
違いますか？綾辻さん
確かに　私は１０年前の
飛行機事故で生き残った１人よ
偶然にもね
でも　どうして　あたしが
人を４人も
殺さなきゃならないの？
鍵を見つけ　雪だるまの雪を
はらったっていうだけで
殺人鬼扱いされる覚えは…
金田一君
解けない謎が１つ残っている
加納りえ殺しの時のアリバイです
はじめちゃん　加納さんが
殺された時
綾辻さんは車で　殺人現場の
別館に向かってたんでしょ？
彼女が　ここを出たのが１時５０分
犯行は１２分後の２時２分
本館から別館まで
車を飛ばしても２０分かかる
聞かせて　金田一君
一体どうやって　私に
加納さんが殺せたって言うの？
あの谷の一番狭くなった所を
車でピョ－ンと
飛び越えちゃったりしなきゃ
無理よね
んな　むちゃな
その通りだよ
えっ？
とびっきりのトリックを使ってね
金田一君　ここは？
例の
谷が一番狭くなってる所だよ
一体　何をしようと…
それじゃ　みなさん
俺は　ここから向こう岸へ
行ってきます
え？はじめちゃん？
おい　そっちは崖じゃねえか
やめなさいよ　川に落ちちゃう
金田一君
彼のことだ　何か計算があるはず
黙って見ていよう
でも…
危ない！
ええ？
宙を歩いてる！
はじめちゃん
どうなってるんだ？
よーく見てくれ　これが
犯人が使ったトリックの正体だ
何？
これは…
氷の橋だ
こんなものが　いつの間に？
そう　この橋を渡れば
たったの３分で
別館まで行けるんだ
そうか　これが…
この季節　この地方でしかできないとびっきりのトリックなのさ
そうでしょう？綾辻さん
でも　金田一君
どうして分かったの？
こんな橋ができてるってこと
玲香ちゃん　「できる」じゃない
「作る」だ
ええ？
加納さんが殺される前日の深夜
この谷に何本もロープを渡し
結びつける
そして
あらかじめ　用意してあった
飼い葉や小枝を
ロープの上に置き
さらに雪をかぶせて　水をかけると
マイナス２０度の
すさまじい寒さの中で凍りつき
硬い氷となる
この作業を延々と繰り返し
やがて　氷が向こう岸に達したら
結んでいたロープを切る
そうして完成したのが
この氷の橋だ
明石の握っていた飼い葉が
ヒントだったわけですね
明石さんの行動は
綾辻さんにとって
計算外のアクシデントだった
何じゃい？この橋
恐らく　綾辻さんが
外へ行くのを見て不審に思い
追って出てきたんだろう
こと切れる寸前に　つかんだ
数本の飼い葉
それが彼の
ダイイング・メッセージとなったんだ
なるほど
そして　死体は雪だるまの中に？
その後　こっそりと　別館に戻り
何食わぬ顔で最後のドッキリ撮影
つまり　雪夜叉伝説殺人事件を
実行したんだ
綾辻さん…
金田一君　１つ疑問がある
こんな即席の氷の橋の上を
２トン近くもあるワゴン車が
渡ることができるのかどうか
うん　それを今から
実験してみるんだよ
なあ　オッサン
俺がか？
オーライオーライ　オーライ
金田一　大丈夫なんだろうな？
大丈夫　大丈夫
おいおい
頼むぜ　オッサン
ったくもう　落ちたら
化けて出てやる
行くぞ　もう
すごい！ワゴン車が乗っても
びくともしないわ
ほう　氷橋か
スガバシ？
おお　スガっちゅうのは
こっちの言葉で氷のことじゃ
わしのじい様が開拓を始めた頃
冬場に川を越えて荷物を
運ぶのに考えられたのが
この氷橋じゃよ
今は　もう　土地の者でも知る者は
１人もいねえ幻の橋じゃよ
なるほどね　幻か
ちょうど　よかった　最後の謎を
一緒に見てもらおう
ほう？何をするんじゃ？
金田一　こんなもんでいいだろう？
うん　そうだな
おお　こわ
よーし　準備オッケーだ
オッサン　火　貸してくれ
おお
みんな　少し下がってて
すげえ炎だ
みんな　よーく見てろよ
見て　橋が火の熱で溶けてく
重みで崩れる
これが　あの夜に見えた
鬼火の正体だ
鬼火…
橋が消えちゃった！
なんと　まあ
見事だ　金田一君　負けましたよ
明智さん
綾辻さん
彼女は幼い頃　この地方で育ち
雪夜叉伝説と氷橋を利用して
復讐することを思いついたんだ
何があったの？１０年前
それは彼女にしか分からない
なぜ　復讐なんて
七瀬さん　地獄の夢って
見たことある？
あたしは１度
１０年前　あの雪山でね
あの地獄のような光景
今でも脳裏に焼き付いてるわ
お母さん　おかあ…
お母さん　どこ？お母さん
真理奈
お母さん！
よかった　無事だったのね
お母さん　お母さん！
真理奈
真理奈
お母さん
お父さんは？
今　助けてあげる
ごめんなさい　痛かった？
足が挟まって動けないの
真理奈
もういいわ　やめて
いやよ　頑張って　お母さん
真理奈
おーい　こっちだ　早く来い
人が来た！助かるよ　お母さん
待ってて
お前が氷室一聖に成りすましゃ
俺たち４人は
一生　楽に暮らせるんだよ
水沼さん　お願い　決心して
俺たち４人は一生仲間だ
絶対悪いようにはしねえよ
な？頼むよ
助けて！お母さん　助けて
行くぞ
待って　助けて
手伝ってくれたら　お母さん
きっと助かるの　助けて！
うるさい！
待って　お願い
どうして　どうして
助けてくれないの？
真理奈
お母さん　頑張って
あたしが　あたしが絶対
助けてあげる
真理奈　手を放しなさい
あなたも一緒に　つぶれてしまう
いや　絶対　放さない
絶対　お母さん　助けるの
もういいの　真理奈
私は　もういいから
あなただけでも生き延びて
生き延びて！
許さない　あの人たち絶対
許さない！
剣持警部　道警に
連絡をお願いします
わかりました
彼女は　いまだに
母親が機体を押しのけて
出てくると
信じているのかもしれませんね
信じて　かなうものなら
あたしも一緒に信じてあげたい
綾辻さん　死んだ　お母さんは
こんな綾辻さんの姿を
望んでなかったんじゃないか？
生き延びて　幸せに
なってほしかったんだと思う
綾辻さん　今からでも遅くないよ
お説教なんて　ごめんだわ
金田一君　ありがとう
綾辻さん　聞こえたよ
あなたの声
お待たせしました　今日のアイドルゲストは速水玲香ちゃんです
見て見て　玲香ちゃんよ
ん？ああ！
今回の事件は大変でしたね
はい
どうも　ご心配おかけしました
やっぱ　きゃわいいなー
今日はバレンタインデーだけど
玲香ちゃん　いくつチョコあげたの？
ええ？あたし　義理チョコって
やだから　１個しか　あげてません
おおっと　爆弾発言だ
それって　本命チョコってわけ？
え？いや…
またまた
誰？誰？
しーらない
聞いてなかったのかよ
玲香ちゃんと　しみじみ
話し込んでただろ？
ボーイフレンドいないって言ってたよ
だって今…
金田一さん　お届け物です
ん？
バレンタインチョコだぜ　ひゃっほう
誰からかしら？あっ
誰から誰から？
うーん
あの子も　隅に置けないわね
うっひょー
Ｒ・Ｈって　だーれ？照れるな
あの玲香ちゃんが失踪？
ただ１つの手掛かりは
彼女からの手紙に書かれていた
タロット山荘
そこへ向かった俺を
待っていたのは
玲香ちゃんを追っかける
芸能レポーターとか
熱狂的なファンとか
変な連中ばかり
そして　そこに飾られているのは
いわくありげなタロットカード
何だって？これは
死を暗示するカードだって？
まさか　狙われているのは…
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
「人気絶頂アイドルの
速水玲香ちゃんが
失踪してることが
明らかになりました」
玲香ちゃんが？
じゃあ　この手紙は…
この時　俺は　想像もしなかった
この手紙が　これから起こる
忌まわしい連続殺人事件の
招待状になろうとは
ねえ　一ちゃん　あの人たちも
うん？
玲香ちゃんのいる
ペンションに行くのかしら
さあ　スキー客には
見えねえけどな
ねえねえ　お宅も玲香ちゃんのとこ行くんでしょう？
はあ？あん　まっ　まあ
分っかるんだよな
追っかけ仲間は
僕　滝下　よろしく
うはあ…
でっ　お宅は　どうやって
玲香ちゃんのこと調べたの？
僕はね　パソ通で
旅行社の端末にハッキングしたんだ
そしたら　玲香ちゃんのカードで
ここまでの列車の切符が
買われてたんだよ
ヒエー　そこまでやるかあ？
一ちゃん　見て見て　あれ
うん？
あれが玲香ちゃんの
お父さんが経営してる
タロット山荘かあ
やっと着いたわね
ふう
うん？あれは…
どうか　お引き取りください
何度　お越しになられても
玲香は　誰にも会いません
そんなこと言わないで
お願いしますよ　お父さん
全国のファンが
玲香ちゃんの失踪について
知りたがってるんですよ
あの二人　芸能レポーターの
伊丹五郎と北条アンヌよ
ええ？アッ
お引き取りください
そこを何とか
速水さん　こんな奴ら
相手にせんでいい
赤間社長
まったくレポーターどもが
これはこれは
赤間プロダクションの社長さんに
マネージャーの小城さんまで
やー　やっぱり
玲香ちゃんを連れ戻しに？
あんたらに
しゃべることなどない
出てきなさい　玲香
一緒に東京に帰るんだ
みんな　お前の　わがままに
迷惑してんだぞ
玲香　玲香！
もうすぐ会える　金田一君に
金田一君
んっ？ハッ
だ…　誰か　いる？
ハアッ　キャー
玲香ちゃん
玲香
玲香は　今　風呂に
玲香ちゃん
金田一君
あー
で…　あ…
玲香ちゃん
ちょ　ちょ　ちょっとマズイよ
みんな見てるのに
そっ　そこに　誰かいるの
えっ？アーッ！
入れてくれ
中に入れてえなあ
いやー　助かりましたわ
スキーで遭難なんて
たまりませんわ
この雪の中　大変だったでしょう
井上さん　コーヒーをお出しして
はーい　はい
また　変な人が増えちゃったわね
とんだ飛び入りで
えろう　すんませんな　オーナー
いえいえ　それにしても
隣の山から　こちらに戻るのは
スキーでも大変だったでしょう
いやー　そらもう
大変なんてもんやないで
だども　お客さん
どうやって　あの山さ　入っただ？
普通　あの山には　こっち側から
連絡リフト使って
行かねばなんねけど
あのリフト　今の時期は
運休中のはずだべ
そう　それで　ちょっと
リフトのスイッチ押したら
勝手に…
あのリフトを無断で
えろうすんません
ところが５時半ごろやったかな
帰ろう思ってスイッチ押しても
リフトが動かへんやないか
５時半じゃ無理ですよ
この辺のリフトは
みんな　朝８時から
夕方５時までしか動かないんです
この時間しか
発電所から電気が来ないんでね
でも　あんた　ツイてるよ
あそこは　これまで
スキー客が何人も死んでんだ
地元のもんでも
まんず冬に近寄らねえ
あの風車山にはよ
うん？風車山？
山の頂上に
発電用の風車があるんで
そう呼ばれてるのよ
ほれ　あの絵
もっとも　冬の間は
凍って動かないけんどよ
へえー　まるで　「運命の輪」ね
「運命の輪」？
タロットカードよ
ほら　暖炉の上の
タロットカード　これが
ここの前のオーナーが
タロット占いに凝ってましてね
私は　興味ないのですが
せっかくだから　額に入れて
飾っておくことにしたんです
へえー　初めて見た
お待たせ　金田一君
うん？
ジャジャーン
玲香　アイドルメイクアップ
ドヒャー　テレビで見たまんまの
玲香ちゃん
ねえ　金田一君　私　きれい？
あん　もうキラキラしちゃって
まぶしいぐらい
うれしい
私　金田一君に
じかに見てほしかったんだ
私の最後の晴れ姿
えっえっ　「最後」って？
ウン　ウウー　ちょっと何よ
人を押しのけて！
あら　あなた　確か…
七瀬いずみさん
美雪です！
ごめんあそばせ　美鈴さん
だから！
玲香　いいかげんにしなさい
うん？
そろそろ　夕食の時間だ
こっちに来て　手伝いなさい
はーい
仲のいい親子だな
そう？
あの頑固オヤジじゃ
取材も手間がかかりそうだ
でも　あのオーナー
どっかで見たようなツラだな
んん？
まさか　あの時の…
このカード　入れ方が間違ってる
速水オーナー
どうしたのかしら　北条さん
あんた　もしかして
金田一　一君でしょう
数々の難事件を解決した
高校生名探偵の
ええ　まあ
俺も記者の端くれだからね
「飛騨からくり屋敷殺人事件」を
取材したとき
裏情報で　あんたの写真
見たことがあるんだよ
しかし　ありゃ　すごい事件だった
俺が取材した中でも
話題性といい
異常性といい　ベスト１０に入る
ほな　ベスト１は
どんな事件なんや？
うーん　そうだな
やっぱり　あれかな
１５年前の　「幼児２人誘拐事件」
現金引き渡し現場で
警察がヘマやってね
子供２人のうち
１人は　助かったけど
父親が
絞め殺されちゃったんだよね
しかも　子供たちの目の前で
やだ…
結局　残った　もう１人の子供は
救出できず　行方不明
犯人にも逃げられて
警察の面目　丸つぶれだったね
ありゃ　フッハハハハハッ
こいつ
なんで　こんな話してんだ？
あっ　そうそう
警察のヘマといや　６年前
警官が銀行強盗を撃とうとして
間違って
通行人を撃ち殺してしまった
なーんてこともあったな
ごめんね
こんな部屋しか残ってなくて
ここ　団体客用の部屋なんだけど
急にお客さん　増えちゃったから
別に普通の部屋みたいだけど？
ほら　あのドア
うん？
両隣の部屋と　つながってんのよ
なるほど
じゃ　ゆっくりしてね
さてと　小城さん
はい？
あなたの部屋
七瀬さんの隣にしたんだから
頑張って　仲良くするのよ
何だったら
夜ばいでも　かけちゃいなさい
部屋と部屋の間の鍵は
お父さんが持ってるから！
はっ　はあ…
フッフフッ　やっぱり　そうか
脚　引きずってんのは
あの時のケガのせいだろう？
俺　あん時
偶然　現場にいたんだよ
いやー　世間は　狭いねえ
私に　どうしろって言うんだね
まっ　とりあえず
１億ってとこで　どうでしょう
そんな…　そんな大金　とても
まあ　何だったら
まけてもいいよ
その代わり　玲香ちゃんと
仲良くしたいな
なんせ　相手は
ナンバー１　アイドルだ
男なら　誰だって…
冗談じゃない！
え？
貴様なんかに玲香を！
グアッ
ハア…　ハア…　ハア…
ハッ！
おい
し…　死んでる
こっ　こいつが悪いんだ
あの事件をネタに
私をゆすったりするから
どうする？自首するか
いや　ダメだ
そんなことをしたら　昔の事件まで
それに　玲香だって破滅だ
小城さんも大変ね
あの社長と
わがままアイドルのおもりじゃ
まあ　仕事ですから
まったく　お互い因果な商売よね
んっ？
どうしたの？
ああ　いえ　何でも
これで　よしっと
指紋は　すべて拭き取ったし
あとは　この灰か
どういうことだ？
あのタロットカードが
１枚残らず無くなってる
今朝　井上さんが見たときには
もう無くなってたんですって
いったい誰が…
速水オーナー
ちょっと来てください
これは…
なぜ　このカードが
伊丹さんの部屋のドアに？
「運命の輪」ね
えっ？
このカードの名前よ
突然の出会い
運命を回転させる出会いを
意味するんだけど
いない　伊丹さんは　どこへ？
フン　おおかた　宿代を踏み倒して
東京に帰ったんだろうよ
でも　ロープウェイが動くまで
あと１時間あります
風車か
えっ？
この　「運命の輪」というカードは
風車山の風車を表しているんじゃ
ないんでしょうか
なんで　奴が　そんな所に？
それは分かりませんが
とにかく
風車山に行ってみましょう
速水オーナー
はい
風車山への連絡リフトを
動かしてください
はい　分かりました
嫌な霧やなあ
こういうのが出ると
必ず天気が崩れるんや
もうすぐですよ　皆さん　ほら
あそこに
うっすらと見えるでしょう
あれが風車山の風車…
い…　伊丹さん？
あかん　半分　凍っとるわ
い…　一体　誰が伊丹さんを？
そんなことは
警察が調べるこった
俺たちには　関係ねえ
関係ないってことは　ないですよ
伊丹さんを殺した犯人は
どうやら　この中に
いるみたいですから
わ…　私らの中に犯人が？
タロット山荘まで来るルートは
今は　まだ動いていない
ロープウェイだけだ
かといって
昨日来て　この雪の中
外で夜を明かしたとは
考えにくい
でも　どうして犯人は
伊丹さんをこんな所に？
見立てじゃないでしょうか
見立て？
タロットカードの
「運命の輪」に見立てて
この風車に伊丹さんを
くくりつけたのかもしれない
ふーん　そやけど
なんで犯人は　そないなことを
それは　まだ分からないけど
おかげで　犯人は
自分の正体をさらしかねない
重大なヒントを俺たちに
与えちまったことになる
重大なヒント？
ああ
この風車山とタロット山荘を結ぶ
連絡リフトは
朝８時から夕方５時までしか
動いていない
そして　伊丹さんが夕べ
夕食後の７時ごろまで
生きていたのは
ここにいる何人もが確認している
ということは
犯人が伊丹さんを殺して
ここに運んだのは
今朝の８時以降ってことになる
つまり　今朝８時から
全員が顔を合わせた
９時までの１時間に
アリバイのない人間が
犯人ってことになる
何か雲行きが怪しくなってきたで
ふぶかんうちに　遺体を運んで
警察に連絡や
なっ　何だって？
電話が通じない？
それが　部屋と部屋をつなぐ
内線は　通じるんだども
電話線が切られてる
まさか　犯人が
どっ　どういうことなんだ？
とにかくロープウェイで
下のスキー場に連絡しましょう
こっ　これは！
めちゃくちゃに壊されとる
い…　一体　誰がこんな
俺たちは　この山に
閉じ込められてしまったんだ
正体不明の殺人者と一緒に
どうしよう　金田一君
こんなことになるなんて　私…
心配ないよ　七瀬さん
すぐに助けが来るさ
小城さん
それに　僕は見たんだ
夕べ　犯人の姿をね
それ　本当なの？
ええ　ほら　夕べ　あなたと一緒に
ベランダで
話をしていたときですよ
外を走っていく人影を見たんです
そう　彼ですよ　私が見たのは
わ…　私は…
ちっ　違う！ぼっ　僕じゃない
僕は…　僕は　何にも
確かに見ました
滝下君がロープウェイのほうから
戻ってくるのをね
こんなことになるなんて
思っても　みなかったんだよ
ただロープウェイが壊れちゃえば
それだけ長く　玲香ちゃんと一緒にいられると思ったんだもん
じゃあ　あんたなのね？
伊丹さんを殺したり
電話線　切ったりしたのも
ちっ　ちっ　違うよ
それは　僕じゃない
そんなこと　信じられるか！
本当だよ
ぼっ　僕には　アリバイがある
今朝は　８時から
玲香ちゃんと一緒に
朝ごはんの手伝いをしてたんだ
少しでも
玲香ちゃんのそばにいたくて
本当か？玲香
えっ　ええ　確かに
速水オーナー
はっ　はい
お願いしたいことがあるんです
どうしたんですか？
伊丹さんの部屋を見たいなんて
ちょっと調べたいことが
うん？
ハッ！
そうか　そういうことか
やっぱり
速水オーナー
は…　はい
伊丹さんは
たぶん　この部屋で殺されて
そのあと　犯人によって
外へ運ばれたんです
エッ？
思い出してください
風車山で発見された伊丹さんは
セーター１枚しか着ていなかった
この寒さの中　外に出るには
ちょっと寒すぎる
格好じゃありませんか？
つまり　彼が殺されたとき
厚着をする必要のない所に
いたんです
なぜ　そんなことまで
殺人に使った凶器があるからです
この部屋に
なっ！そんな物が　どこに？
こいつですよ
犯人は　たぶん　この灰皿で
彼を殴り殺したんです
これを見てください
この灰皿には
吸い殻が山盛りになっているのに
灰が　ほとんどないんです
妙だとは思いませんか？
い…　言われてみれば
しまった　あの時
つまり　こういうことじゃ
ないんでしょうか
犯人が灰皿で
伊丹さんを殴り殺したとき
灰や吸い殻が
床に散らばってしまった
慌てた犯人は
吸い殻を拾って　灰皿に戻したが
灰までは拾えず
しかたなく掃除機で吸い取った
なっ　なんで　そんなことまで
この時計を見てください
今　この時計は
５分ほど遅れています
それは　犯人が
掃除機をかけるため
この電気時計のコンセントを
抜いたからですよ
あとは
小型録音機さえ見つかれば
小型録音機
ベッドの下で見つけました
恐らく　もみ合いになって
飛んだんでしょう
ベッドの下？
伊丹さんは　雑誌記者だ
たぶんポケットにでも入れて
犯人との会話を
こっそり録音してたんでしよう
だから
小型録音機さえ見つかれば
その中に犯人の声が
な…　何だと
こんな所で　何してるんですか？
オーナー
きっ　金田一さん
いや　ゴミを埋める
穴を掘ってたんですよ
金田一さんこそ　何か？
ハッ！
これ　俺のだったんですよ
エエッ！
このヘッドホン
俺が落としたらしいんですよ
こういうのって
みんな似ているでしょう
こ…　こいつ　わざと
自分のヘッドホンを落として　俺を
じゃあ　用事っていうのは
それだけですから
それから　俺　犯人の目星が
だいたい付きました
ただ　この人には
アリバイがあるんですよ
でも　この人が　どうやって
死体を風車山まで運んだのか
俺が　必ず突き止めてみせます
こいつは　俺が伊丹を殺したことに完全に気づいている
どうする　今なら誰も見ていない
お父さん
玲香
何してるの？こんな所で
ああ　いや　ちょっと話を
金田一さん　寒いでしょう
さあ　このマフラーを巻いてください
それより
どうして　お前たち　ここに
窓から　一ちゃんが
外に出ていくのが見えて
クシュン
ああ　寒いだろう　玲香ちゃん
これ
キャー
あっ…
ごめん　玲香ちゃん
寒そうだと思って
ああ　私は　大丈夫よ
だから　それは
金田一君がしてて
えっ　あっ　ああ
とにかく　早く中へ入りましょう
こんなとこにいたんじゃ
雪だるまになっちゃう
待ってよ　一ちゃん
クソーッ！
どうやって
死体を運んだか分かれば
私を犯人として　告発するだと！
それを教えてほしいのは
こっちだ
一体　誰が死体を掘り起こして
風車山に運び
あんなタロットカードを
残したりしたんだ？
一体　誰が？
犯人は　あの人に間違いない
ただ　俺は　今度の事件
無理に暴きたくないんだ
悲しむ人が　そばにいるからね
それにしても
朝のアリバイの謎は奇妙だ
そして　どうして
タロットカードに見立てた殺人なんか
何だって？このカードに
２つの意味があるって？
まさか　この事件の裏には
俺たちも知らない
大きな運命の力が
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿玲香ちゃんの招待で
タロット山荘に　やってきた俺たちは
奇妙な殺人事件に巻き込まれた
テレビレポーターの伊丹が
タロットカードの　「運命の輪」に
見立てて　殺されたのだ
一体　誰が死体を掘り起こして
風車山に運び
あんなタロットカードを
残したんだ？一体　誰が
何だか　どんどん
吹雪が　ひどくなるみたい
私たち　いつになったら
ここから出られるのかしら
一ちゃん？
タロット山荘…
ううっ
はい…　ええ　速水です
あなたの正体を知っている者です
あんた　一体　何者なんだ？
伊丹の死体を風車山へ
運んだ者ですよ
なぜだ？
何の目的があって　そんなことを
実は　あなたに
お願いがありましてね
簡単なことですよ
伊丹さんを殺した　あなたには
いやあ　もっと以前にも
あなたには
人殺しの経験があるはずだ
なぜ　そのことを
フフッ　フッ
どうでもいいじゃないですか
でっ　その　お願いなんですが
社長　用って何ですか？
見に覚えがあるだろう？
私　忙しいんで
手短にお願いします
手短にときたら　じゃ　言うがね
お前　ウチの事務所を
辞めるつもりなんだろう？
えっ
別に構わんよ
お前の代わりなど
いくらでもいるんだ　だが
辞めるんなら　俺の金は
全額　耳をそろえて返してもらうぞ
お金って
とぼけんじゃねえや
このペンションの購入資金
５０００万だよ
そんなあ
もう　お金は　返したはずです
利子があるんだよ　利子が
俺の言うとおりやってりゃ
芸能界でトップになれる
給料だって
うーんとアップしてやるんだ
やめて
うんにゃ　そう言わずに　アーッ
誰なんだ？奴は　なぜ
あのことを知っているんだ？
いよー　うー　てえ　ってくりゃ
よいしょ
てえ　うーん　うん　あっ
よっこらしょっと
やるしかないか
奴の言うとおりに
この平穏な生活を守るため
玲香の父親で
あり続けるために
んう　うう　うう…
うう　うぐう　うう…
ウワアー　アアーッ
ちょっと　どうしたの？
て…　停電？
今の声は…
何や　風呂のほうからみたいやで
行ってみよう
今の悲鳴は？
分からないわ
こっちからやと思うんやけど
どうしました？
何かありましたか？赤間さん
んん？
誰や？
赤間さんだ
一ちゃん！
これは…
「落雷の塔」
予期せぬ災い
まーた見立てかい
とっ　ともかく
ここは　このままにして
皆さんは　部屋にお戻りください
オーナー　なぜ　さっきの悲鳴が
赤間さんだって
知ってたんですか？
えっ？
さっき　あなたは
浴室に駆け込むとき
「何かあったんですか？赤間さん」
って呼びかけましたよね
あっ　ええ　声の感じで
そう思ったのですが
そうですか　ところでオーナー
どうして　左右違うスリッパを？
えっ　ええっ
あっ　お恥ずかしい
よくやるんですよ
部屋に　いくつもの
スリッパがあるんで　つい
じゃ　これは　偶然の一致かな？
えっ？
青いのが５つ　白いのが５つ
こうして　そろえていくと
ほら　１足
左右　色の違う組み合わせが
出来るんです
じゃあ　もっと前に
他の人が履き違えていたとか
ありえますね　あの停電の時なら
しまった　あの時
速水オーナー
俺は　今度の事件の犯人を
無理に暴くことは
したくありません
できれば　名乗り出てほしい
悲しむ人が身近にいるなら
なおさらです
ハッ
もしもし
よくやってくれました
それどころじゃない
金田一は　気づいてるぞ
どうしてくれるんだ！
そうですか
それなら　私が　あなたを
容疑者から外してあげましょう
そんな　どうやって…
うわー　死に神
じゃあ　次に殺されるのは　僕？
フフフッ　大丈夫よ
このカードは
逆さまに出てるでしょう？
これは　逆位置といって
正位置とは　反対の意味を持つのよ
例えば　この　「死に神」なら
正位置の死の訪れや
殺害の意味が逆になって
出産や誕生ってことになるのよ
はあ　よかった
へえー
「よかった」じゃねえよ
こいつの誕生や出産なんて
考えたくもねえぜ
そう　こっちのカードは
「吊るされた男」よ…
借金のことなら
気にしなくていいんだよ
君は　もう十分に働いたんだ
次　わいや
あの　辻さん　すみませんが
えっ？
３時まで　ここで暖炉の番を
していただけませんか？
定期的に
まきをくめないと　いけないので
ああ　構わんで
すみません　私は
２時間ほど仮眠をしますので
火の番を辻さんに頼んだら
あなたは　時間まで
部屋を出ないでください
どうする気だ？
今夜中に　もう一人　殺すんです
金田一を
彼に恨みがあるわけじゃないが
しかたあるまい
眠い
何だ？この眠気は
体が石みたいだ
どうしただ？
それが変なんや
アアッ
一ちゃん　あっ…
一ちゃん？一ちゃん　一ちゃん！
んっ　美雪かあ　俺　寝ちまって
それどころじゃないのよ
速水さんが！
速水オーナー…
なんでオーナーが　こないなことにわあっ　わあっ
あっ　これは　「吊るされた男」
ハングドマンのカードだ
また見立てかい
自殺…　そうだとしたら
このカードは不自然だ
そうか　犯人は　もう一人
ウソよ
お父さん　イヤー
無くなった例のタロットカードが
速水オーナーの机の引き出しから
見つかったわ
速水さん　自殺したんですかね？
でしょうね　ドアには
鍵がかけられていましたから
殺人を苦にしての自殺
やりきれん話やな
いや　違う
速水オーナーは自殺じゃない
ええっ？
何ですって！
伊丹さんを殺した犯人は
間違いなくオーナー自身でしょう
それは　早くから確信してたし
根拠となる事実も
いくつか出てきた
でも　どうしてオーナーは
伊丹さんを？
そのことなんだけど
伊丹さんが殺された夜の事を
思い出してください
彼は
突然　過去の悲惨な話を始めた
俺は　なぜ　あんな話を始めたのか
疑問に思った
しかし　今から考えれば
あの話こそが　伊丹殺害の動機
だったんではないんでしょうか
１５年前の　「幼児２人誘拐事件」
子供のうち
１人は　助かったけど
父親が殺されちゃったんだよね
結局　残った　もう１人の子供は
行方不明
ああ　そうそう
警官が銀行強盗を撃とうとして
間違って
通行人を撃ってしまった
なーんてのもあったよな
どちらの事件に　オーナーが
関わっていたのかは分からない
でも　伊丹は　それをネタに
速水オーナーを
脅迫したんじゃないんだろうか
そして　カッとなったオーナーは
伊丹を殺害した
じゃあ　赤間さんも　どっちかの
事件に関わっとったんか？
いえ　社長殺しの動機は
別でしょう
赤間社長は　その…
借金のことで　玲香ちゃんを
脅迫していたんですから
そうだったの
違うわ！
玲香ちゃん
お父さん
そんなこと知らなかったもの
私は　お父さんに
脅迫のことなんて
ひと言も言ってない！
お父さんは
犯人なんかじゃないわ！
玲香ちゃん　落ち着いて
玲香ちゃんの言うとおりだ
本当に赤間さんを
殺したいと思っていたのは
速水オーナーを操っていた
もう一人の犯人だったんだ
もう一人の犯人？
もう一人？
オーナーに　朝のアリバイがあったのは分かっている
その時間
朝食の支度をしてたはずよね
伊丹さんの死体を
風車山に運んだのは
オーナーを陰で操っていた
陰の脅迫者だったのさ
そして　これこそが
死体をタロットカードに見立てた
第一の理由だったんだ
どういうこっちゃ？
赤間さんを殺させるには
オーナーに容疑が掛かっちゃ
具合が悪い
そこで　オーナーに
アリバイを作ってやるために
朝の８時まで動かない
連絡リフトを利用したのさ
しかし　ただ運んだだけでは
なぜ　そんな面倒なことをしたのか疑われてしまう
じゃあ　あのタロットカードは…
うん　伊丹さんの部屋のドアに
「運命の輪」のタロットカードを
残しておくことで
カードの絵柄に合わせ
死体を風車山に運んだと
思わせようとしたのさ
つまり
見立て殺人を装ったわけさ
ちょっ　ちょっと待て　名探偵
お前は　オーナーは
自殺やないって言うたな
ああ　赤間殺しをやり終えて
用済みになったオーナーは
陰の脅迫者に…　殺されたんだ
そ…　そんな
けど　妙やな
俺は　昨日　ずっと　ここで
暖炉の番をしてたんやで
オーナーが部屋に入ってから
死体が発見されるまで
誰も彼の部屋には
入らへんかったで
だってな　ここからは
オーナーの部屋は　もちろん
１階の客室のドアは
すべて見渡せるんや
もし誰かが
オーナーの部屋に行けば
俺が気づかんはずないんや
そんなバカな
じゃ　陰の脅迫者は
どうやってオーナーを
タロットカードのことから見て
陰の脅迫者は　恐らく　あいつだ
でも　どうやって？
部屋と部屋は
ドアで　つながっている
もし　犯人が　部屋どうしをつなぐ
鍵を手に入れたら…
いや　ダメだ
オーナーの部屋の隣は　俺の部屋だ
それに　オーナーの赤間殺しが
真犯人の命令に
よるものだとすると
せっかく他人を利用して
目的を果たしたのに
あえて　自分の手を汚して
オーナーを殺したのは　なぜだ？
金田一君　本当なの？
お父さんが
誰かに殺されたっていうのは
ああ　でも
犯人の動機が分からない
それを探るためには
オーナーの過去を
知る必要があるのかもしれない
んっ？玲香ちゃん
写真は　これで全部？
えっ　ええ
妙だな　一番古い写真は
３歳ぐらいからで
それ以前の写真が
１枚もないのか…
玲香ちゃんのお母さんは？
私が小さな頃
病気で死んだんですって
じゃ　それ以来　オーナーは
一人で玲香ちゃんを？
ええ
えっ　どういうことだ？これは
待てよ　そういえば　あの時
何てことだ
このタロット山荘にいる
ほんの数人の中に
こんな奇妙な
異常ともいえる性質の人間が
２人もいるなんて
つながったぜ　すべてが　１本に
えっ　夕べのこと？
謎が解けそうなんだ
あとは　犯人がオーナーの部屋に
どうやって侵入したかだけなんだ
別に変わったことは…
あれから　みんな寝ちゃって
じゃあ　おやすみ
じゃ　僕らも
そろそろ部屋に戻るかな
もう２時になる
はい
これ
どこに片付ければいいのかな？
ああ　いいです　私　やりますから
悪いね　じゃ　お先に
それで　コーヒーカップを
台所に運んで
私もすぐ　部屋に戻ったけど
でっ　そのあと　ずっと部屋に？
ううん　それがね
３時ごろかな
小城さんから電話があったの
話したいことがあるから
部屋に来てくれって
それで？
それがね　「東京に帰ったら
真剣に　つきあってくれませんか」
ええっ　何！お前　まさか！
やだ　一ちゃん
もちろん断ったわよ
そっ　うん　そうか
小城さんの部屋を出たのが
３時過ぎだったかしら
その直後に
オーナーの死体を発見して
３時過ぎに　美雪は　部屋に戻った
となると　やっぱり　犯人は
ホールに面した
ドアからは　もちろん
部屋どうしをつなぐドアからも
オーナーの部屋には
行けそうもないな
となると　あとは窓か
でも　あの時
オーナーの部屋の窓には
鍵がかかっていたわよ
あそこが　オーナーの部屋か
よし
一ちゃん　何を？
実際にオーナーの部屋まで
行ってみるのさ
ひょっとして
何か　見落としてるものが
あるかもしれない
ちょっと待ってよ
一ちゃんたら　推理しだしたら
他のこと　全然
気にしなくなっちゃうんだから
そんな格好じゃ　風邪ひくわよ
せめて　これ着てって
お前が編んだのか？
嫌なら無理に着なくてもいいのよ
アクリルだから
結構　温かいと思うけど
いや　ありがとう
うん
ん…　やっぱ足跡が
もろに残っちまうよな
はあ…
ハッ　ここは！
どこだ？
ハッ　風車山？
一体　どこへ消えたんや
名探偵君は
荷物も　そのままよ
んっ？
これは…
あーれ？
１階の部屋どおしをつなぐ鍵だわ
その鍵が　なんで　ここに？
一ちゃん
クソー　どんどん冷え込んでくる
今の時間じゃ
リフトも　もう動かない
犯人が　俺を殺す気で
こんなことをしたってことは
俺の推理が真相に…
ぬあ　ダメだ　眠っちゃ
眠ったら　冷凍人間だ
そういや　あの時も
ものすごい眠気に襲われて
まるで　眠り薬でも
飲まされたように
んっ　眠り薬？
そうか　分かったぞ
犯人の使ったトリックが
謎は　すべて解けた
待ってろよ　陰の脅迫者
絶対　生きて帰って
てめえの化けの皮をはいでやるぜ
さあ　考えるんだ　金田一
この風車山から脱出する方法を
風車？そうだ　確か　あの風車は
発電用だったはずだ
風車が凍りつく冬の間は
ふもとから
夏の間は　あの風車の電気で
リフトは動くんだ
だったら
この風車を回すことができれば
よし　あとは　このセーターに
身近にある物で種火を燃やすには
ポケットのゴミがいいって
テレビで見たことがある
燃えた！
このアクリルのセーターの原料は
石油だから
よく燃えるはずだ
動いてくれ　頼む
動け　動いてくれ
動け！
そんな！
一ちゃんが犯人ですって？
彼が　この鍵で
自分の部屋からオーナーの部屋に
直接　行けたのなら
辻さんがオーナーの部屋に
出入りした人を見てない
説明がつくわ
現に　彼は　いなくなってるしね
あ…
七瀬君
おーい　どこ行くんや？
一ちゃんは
逃げたりなんてしません
きっと何かあったんだわ
捜してきます
むちゃだよ　七瀬君
そうや　朝まで待ったほうがええ
んっ？一ちゃん？
気のせい…
あっ
よかった　一ちゃん
無事だったのね
戻ってきたぜ　陰の脅迫者
貴様の正体は　俺が必ず暴く
じっちゃんの名に　かけて
玲香ちゃん　まさか　君が！
いやー　とにかく　皆さんの
手元のカードを並べてください
今から　速水オーナーを操り
殺害した人物
そして
この見立て殺人を計画した真犯人
陰の脅迫者を占ってみせましょう
用意　出来ましたね
では
運命のタロットカードを開けます
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
タロット山荘に招かれた俺たちは
恐ろしい事件に巻き込まれる
芸能レポーターの伊丹五郎と
プロダクションの社長が
タロットに見立てて
殺されたのだ
さらに真犯人は　俺までも
陰の脅迫者の正体は　俺が暴く
じっちゃんの名に　かけて
陰の脅迫者が　一ちゃんを？
ああ　奴は　オーナーの殺害を
俺に見破られて
今度は　俺を犯人に仕立てて
凍死させようとしたんだ
じゃ　あんたの部屋で見つかった
あの鍵も
俺を陥れるために
犯人が置いていったのさ
見てろよ　陰の脅迫者
これから俺が
貴様の仮面をはぎ取ってやる
なっ　何や
タロットカードなんか配って
これから　事件の真相を解決して
くれるんじゃなかったの？
その前に　このタロットカードで
事件の犯人を
占ってみようと思うんです
ふざけないで　こんな時に
ふざけてなんか　いませんよ
俺の推理が正しければ
このタロットカードが
真犯人の正体を
教えてくれるはずなんです
ええっ？
犯人の正体？
じゃあ　始めましょうか
みんなの前に
配られたカードを見てください
これは　今回の事件で
見立てに使われた
「運命の輪」　「ザ・タワー」
「ハングドマン」というカードです
このカードを
それぞれ他の人に見られずに
正位置で
左から順に並べてほしいんです
正位置
それって　自分から見て
カードの絵が正しく出るように
置くことだよね？
ええ　そうです
並べるときは
カードを裏返しにしてください
まったく　何なのよ
こんなことで
何か分かるのかしら
みんな　並べ終わりましたか？
オーケー　では
これから事件のカギを握る
殺人現場に残されていた
タロットカードの謎を
解き明かしていこうと思います
まず　最初の殺人
伊丹さんが殺されたとき
使われたのが
この　「運命の輪」だった
伊丹さんの死体は
このタロットそっくりな風車に
くくりつけられていた
それは　オーナーを
容疑者からそらすための
アリバイ工作だった
でも　それじゃ
赤間社長のときは　どうなるの？
それは　この事件を単独犯による
連続殺人だと思わせるためさ
陰の脅迫者は
元々　ある重大な動機から
速水オーナーに殺意を抱いていた
だから最初から奴は
オーナーに赤間を殺させたあと
すべての罪をオーナーに着せ
自殺に見せかけて
殺すつもりだった
しかし　そのためには
動機の曖昧な赤間殺しや
遺書も残っていない
オーナーの自殺も
オーナー　１人が実行したと
思わせる必要があった
そこで奴は　このタロットカードをまたしても利用して
心理トリックを仕組んだ
３つの事件　すべてが
タロットに見立てられるという
共通点を持たせることで
１人の人間による
連続殺人だと
思わせようとしたんだ
ああ…　あのタロットに
そんな意図が…
確かに　ここまでは
犯人の計画は　完璧だった
しかし　最後に奴は
大きなミスを犯した
ミス？
ああ
このペンションに
俺たちが来たとき
北条さんが　オーナーを呼び止め
タロットの前で
何か話し込んでたのを
覚えてるかい？
ええっ？
あの時のままに
カードを額に収めてみたんだ
玲香ちゃん
北条さんとオーナーは
この額を見て
何を話していたんだい？
１枚　入れ方が間違ってる
カードがあるって
それ　どのカードか覚えてる？
ええ
これよ
そう
このカードの名前は
「ハングドマン」
「吊るされた男」
あたかも　首つりの絵に見える
でも本当は　足を縛られて
逆さづりにされた男の絵なんだ
つまり　このカードじゃ
首つりの見立てにはならない
北条さんに教えられたオーナーは
当然　このことを知っていた
もし　オーナーの死が
自殺であったのなら
このカードを首つりの
見立てに使うのは　不自然だ
それじゃ　誰がオーナーを？
このカードの正位置を知らない者
その人物こそが
この事件の真犯人
陰の脅迫者だ
まず　玲香ちゃんは
オーナーと一緒に
北条さんの話を聞いていた
だから
カードの意味は　知っている
当然　北条さんも
そして　滝下さん
あんたも　このカードについては
知っているはずだ
夕食後
北条さんに占ってもらったとき
カードの意味を聞いていたからね
同じ理由で　あの場にいた
美雪　井上さん　辻さんも
この中で　たった１人
「ハングドマン」の
正位置を知らなかった人物
それは…
あんただよ！
あんただよ！
小城卓也！
あんたが　この事件を陰で操り
速水オーナーを殺害した張本人
陰の脅迫者だ！
小城さんが
陰の脅迫者？
ん…　うっ　ふん
何を言い出すのかと思えば
こんなカードの
上下を知らなかったぐらいで
犯人呼ばわりされちゃ
たまんないな
だいたい　僕が　どうやって
部屋にこもっていた
速水オーナーを殺せたんだい？
名探偵君
そう　あんたは
オーナーに命令して
辻さんに暖炉の番をさせ
オーナーの部屋に
人の出入りがなかったことを
証言させ
鉄壁のアリバイを手に入れた
だが　思い出してほしい
１階の部屋は　元々　団体客用で
６つの部屋は
すべて室内扉で　つながっている
あんたは　そのドアを通って
オーナーの殺害を実行したんだ
ハハハハッ　バカな
僕の部屋から
オーナーの部屋までの間は
君と七瀬君の部屋が
立ち塞がっているんだよ
部屋にいた
君たち２人に気づかれず
僕が自室とオーナーの部屋を
往復するなんて　絶対　不可能さ
いや　あんたは
巧妙な時間差トリックで
その不可能を可能にしたんだ！
時間差トリック？
まず　あんたは
オーナーに命令して
俺に出すコーヒーに
睡眠薬を入れさせた
薬で眠らされた俺は
あんたが俺の部屋を通っても
気づかない
フン
それでも　まだオーナーの部屋にはたどり着けないな
まだ七瀬君が残っている
そこで　あの時　あんたは
美雪にカップを片づけさせたのさ
本来　客である　あんたや美雪は
飲み終えたカップを
そのままにして　部屋に戻っても
差し支えなかったはずだ
なのに美雪　お前は　なんで
カップを片付けたりしたんだ？
それは
小城さんが片づけようとしたから
それだよ！そうやって
さりげなく美雪に
カップを片づけるように
仕向けることで
あんたは　数十秒の
空白の時間を手に入れたんだ
その間に　あんたは
盗んでおいた鍵を使って
室内扉を開け
一気に美雪の部屋を通り抜けて
隣の部屋まで移動したんだ
そして　油断している
オーナーの部屋に忍び込み
なんちゅうこっちゃ
フン
仮に君の推理どおりだったとして
そのあと　どうやって僕は
自分の部屋に戻ればいいんだい
この時点で七瀬君は
すでに自室に戻っているんだよ
美雪　お前　夕べ３時ごろ
オーナーの死体が発見される直前
小城から電話があったって
言ってたよな？
うん　「話があるから
部屋に来てくれ」って
それで　私…
そうとも
これで僕の無実は　証明される
七瀬君が僕の部屋に来たとき
僕は　ちゃんと部屋にいたろ？
ええ　ノックしたら
すぐに出てきてくれました
どうだい　僕は　部屋にいて
七瀬君を
電話で呼び出しているんだ
そいつは　どうかな？
美雪が受けた　その電話が
あんたの部屋から
掛けられたのではなく
実は　隣の空き部屋から
掛けられたものだとしたら
オーナーを殺害したあと
あんたは　俺の部屋を通り抜け
いったん空き部屋まで戻った
そして
そこから美雪に電話を掛け
美雪が自分に会いに
部屋を出たのを見計らって
素早く　室内扉から
美雪の部屋を通り抜け
自室に戻り
何食わぬ顔で　美雪を迎え入れた
ウソだ！
ぼ…　僕じゃない　僕は…
人殺し…
ああっ
人殺し　私のお父さんを返して！
玲香ちゃん
返してよ
私の　たった一人のお父さんを
ち…　違う　玲香
私のお父さん　お父さんを返して
違う！あの男は
君の父親なんかじゃない
俺が殺したのは…
ええっ
げっ…
ほ…　ほんまなんやな
あんたが　ほんまにオーナーを
フン　そうさ
すべては　こいつの言うとおり
俺が仕組んで　やったことさ
あの罪人をこの手で裁くためにね
ど…　どういうこと？
私がお父さんの子供じゃないって
まずは
玲香ちゃんの写真を見てくれ
これらの写真に写っている
小城を見て
俺は　妙なことに気づいたんだ
妙なこと？
ネクタイさ
こんな改まった席なのに
小城は　いつもノーネクタイだ
そういえば　小城さんの
ネクタイ姿って　見たことないわ
そこで俺は　こう考えたんだ
小城にとって
ネクタイを巻くことは
耐え難い
苦痛だったんじゃないかって
この小城の
奇妙な性質に気づいたとき
首に何かを巻きつけるという
キーワードと
深いつながりのある出来事が
伊丹さんが話してた
あの事件の中にあることに
思い当たったんだ
例の父親が
子供の前で絞殺された
幼児２人の誘拐事件かいな
まったく　大した坊やだよ
僕には　８歳以前の記憶が
ほとんどなかった
気づいたら　親戚の家で
養子として育てられていた
これが実に　居心地の悪い家でね
孤児になった　かわいそうな僕を
しかたなく
引き取ってやったって感じで
ところが
このタロット山荘に来て
玲香の父親という男を見た瞬間
僕が子供の頃　閉ざしてしまった
忌まわしい過去が
突然　よみがえってきたんだ
言われたものは　用意した
こ…　子供たちは？
取り引きが済めば
約束どおり返してやる
貴様　警察に！クソー　乗れ！
エエッ　オオッ
貴様　何を　コノーッ！
ワアッ
今だ　逃げろ　卓也！
貴様！
お父さん！お父さん　お父さん
お父さーん！アアッ…
その時　僕が見た
覆面の下の顔こそ
あの男　速水雄一郎だったのさ
奴は　俺と妹の目の前で
父さんを殺した
おぞましい犯罪者なんだよ！
ウエ…　イテテッ　イテッ　おっ？
あずさ
お兄ちゃん　助けて
お兄ちゃーん
あずさ
過去を取り戻した僕は
すべてを理解した
なぜ　自分が
親戚の家で育ったのか
なぜ　ネクタイが
できないのかもね
フフ…　笑っちゃう話だよ
僕の一生を
めちゃくちゃにした男が
よりによって　僕が
マネジャーをやってるアイドル
速水玲香の父親として
生きてやがるんだからな
それから僕は　考え抜いたのさ
この最低の男にふさわしい
死に方を
でも　どうして赤間社長まで
殺させたの？
あの人も１５年前の事件に
関係しているとでも？
それは　あのスケベジジイが
玲香を脅迫していたからさ
そやけど　いくら
マネジャーやからって　そこまで
小城と玲香ちゃんは
単なるマネジャーと
タレントじゃないよ
エッ？
玲香ちゃん　以前　俺が君に
マフラーをかけようとしたら
ものすごく嫌がって
振り払ったことがあったろう？
玲香ちゃんも小城と同じように
首に何かを巻きつけることを
嫌悪してるんじゃないか？
つまり
小城と同じトラウマを持つ者
それは　彼と同じく
目の前で父親を殺された
当時２歳の
小城の妹じゃないのか？
私が　小城さんの妹？
それじゃ
私の本当のお父さんは…
そうさ　玲香
君が親だと思っていた　あの男に
１５年前に殺されたんだよ
そうとも　君だけは
分かってくれるよな？玲香
僕が殺したのは
君の父親なんかじゃない
君と僕の父親を殺したうえに
君を自分の娘と偽り
金もうけまでさせた極悪人さ
やめて　やめてえ！
玲香ちゃん
どうして
こんなことになっちゃうの？
一体　誰を信じたらいいの？
分からない…
私　もう分からない
私　どうしたら…
玲香ちゃーん
玲香ちゃーん
アカン　あの音　雪崩や
エッ？
キャー
玲香ちゃーん！
お待たせ
なっ　よっ　よう！
さあ　行きましょう
あっ　私　あれ乗りたーい
げー…
まだ気分悪い？
でも　天下のアイドル
玲香ちゃんの膝枕なんて　グヒヒ
金田一君ってば　大げさね
あっ　そういえば　七瀬さん
今日のこと　知ってるの？
えっ！あんん…　まあね
あら　美雪ちゃん
今日は　一と一緒じゃ…
えっ　いいえ
変ね　女の子と遊園地だって
言ってたのに
アアッ
言っちゃマズかったかしら
いえ　いいんです
今日は…
七瀬さん　二人きりで話があるの
あなた　金田一君のこと
好きなんでしょう？
エエッ　何よ　突然
しらばっくれてもダメよ
あなたを初めて見たときから
だいたい分かってたんだから
私　あなたが金田一君を
どんなに好きでも
絶対　負けないって思ってた
でも　あの時…
彼のことを捜すって　吹雪の中に
飛び出していった　あなたを見て
勝てないなあって思ったの
あなたと金田一君の間には
きっと　私の知らない
長い時間があるんだろうなって
好きなんでしょう？
金田一君のこと
今ここで　はっきり言って
そしたら私　諦めてあげる
えっ…　あっ　あの…　私は…
私は…
実は　今日のこと言い出したの
美雪のほうなんだ
ええっ？
玲香ちゃんと
一日ゆっくり
遊んできてあげてくれってさ
ふーん　そういうことか
えっ？そういうこと？
ううん　いいの
でも　玲香ちゃんが
元気になって　よかったよ
あの雪崩で悲鳴が聞こえたときは
もうダメかと思ったぜ
あの人が…
小城さんが来てくれなかったら
私　死んでたと思う
あの時ね　私　思わず叫んでたの
叫んだ？
「お兄ちゃん　助けて」って
その時…
エ…　小城さん
アッ！
お兄ちゃん　助けて
お兄ちゃーん
お　にい　ちゃん
お兄ちゃーん！
ねえ　金田一君
おん？
私　あれから　ずっと考えてたの
どうして　お父さんは
人質の私を殺さなかったか
うん　そういや　なんでだろう
実はね
一つ思い当たることがあるの
えっ？
夢よ
小さな頃　よく見た夢
夢の中では
私は　赤ずきんになって
怖い顔したオオカミに
さらわれちゃうの
あっ　私　このままじゃ
食べられちゃうって
思ったんだけど　オオカミは
いつまでも
私をにらんでるだけなの
どうしたのかなって思って
見ると
そのオオカミは
左足にケガをしてたのよ
あんまり痛そうで
何だか　かわいそうになっちゃって
私　そのケガをなでて
こう言ってあげたわ
「痛いの　痛いの　飛んでけ」って
そうしたら　今まで
怖い顔をしてたオオカミが
急に優しくなって
私に　すり寄ってきたの
お父さん　やっぱり私のこと
一度は
殺そうとしたんじゃないかな
でも　私が覚えている　お父さんは
いつも優しく笑い掛けてくれた
そう　玲香ちゃんが　そんな夢を
そういや　ごめんな
せっかく編んでもらったセーター
燃やしちゃってさ
いいのよ　セーターなんて
いつでも編めるし
それに　もらってくれる人が
いなくなっちゃったら
編むかいが　なくなっちゃうもん
美雪
さあ　今日の
スペシャルゲストは
帰ってきたアイドル
速水玲香ちゃんでーす
玲香ちゃん　今度の新曲は
君が作詞したんだってね
はい　これは
私のライバルに向けての
メッセージなんですよ
だから　どうしても自分で
作詞したかったんです
タイトルは？
「諦めないわ」です
エエッ！
あいつが生きてる？
それを確かめに
金沢に向かった俺たちは
そこで　とんでもない奴に
出会ってしまった
とても他人とは思えない
その　まゆ毛
お前は　二三？
遠い親戚の　金田一　二三か？
そして　ついに姿を現した　あいつ
あんた　あの遠野なのか？
それは
蝶屋敷を舞台に起こる
美しくも恐ろしい出来事の
始まりだった
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿いらっしゃい！
ラーメン　餃子
ええと　ビール１本
はい　ラーメン　餃子　ビール！
はい　お待ち
こっ…
そ　そんな　バカな！
どうしたんだよ　いつきさん？
急に　こんなところへ
呼び出してさ
それがなあ…
とにかく　こいつを見てくれ
絶滅した蝶を　甦らせた男？
こっ　こいつは…　遠野英治
あのジェイソン　遠野英治！
そんな…
遠野先輩は　私たちの目の前で
死んだはずじゃ？
あのとき　長野県の
悲恋湖湖畔を舞台に起きた
連続殺人事件
真犯人　遠野英治は
客船沈没事故で死んだ
たった１人の妹のために
４人もの人間を殺害し
俺たちの目の前で
爆死したと思っていたんだけど
彼の死体が
湖から上がることはなかった
その斑目紫紋って　じいさんは
有名な蝶マニアでな
ちかぢか「幻の蝶」とやらの
お披露目パーティーを　やるらしい
だから　取材と称して
見に行ってやろうってわけだ
そいつが　本当に
遠野英治なのかどうか
金沢か
金沢　金沢
終点で　ございます
ワアー　やっぱり春だわ
そうだな
これが　仕事でなきゃ
いいんだけどな
まあね
フーンフーン
ご機嫌だなあ
今回の旅行　もしかして…
クフフフ
はじめちゃん　私
ずっと　はじめちゃんのこと
好きだった！
わ　分かってるよ　美雪
当然のことだ
んふふふふ
な…　何よ？
ヤダ！
あ！
ここが　私たちの泊まるところ？
な…　何だ？こりゃ
よう！
久しぶりだな
え？
ヘッヘヘ
丙助叔父さん
おじさん？
何で　お前が
うちのコテージに？
うちのコテージって…
叔父さん
北海道で猟師やってたんじゃ？
ハッハハハ　それが
今じゃ　一国一城の
主ってやつだ
あいかわらず　フーテンだなあ
前は　沖縄で海の家
その前は　九州で焼き鳥屋
ちょうど　いいや
さ　手伝ってくれ
え？
ホラ！
な…　で　手伝うって？
見れば分かるだろう
コテージを買ったのはいいが
あちこち傷んでてなあ
現在　改築中
人手が足りんというわけだ
ま　しっかり頼むぞ
いらっしゃいませ！
ウフフ
あら　かわいい
叔父さん　この子は？
お前も４年前に会ってるだろ
ま　そんときから
だいぶ育っちまってるが
娘の二三だよ
え　二三？
こんにちは
こんにちは　金田一　二三です
こんにちは
エヘヘ
しっかし　驚いたなあ
予約したところが　金田一の
叔父さんのコテージだったとはな
そっか　フミちゃん
お父さんのお手伝いしてるんだ
エライねえ
学校が春休みだから
フミちゃん
はじめちゃんの親戚だけあって
何となく似てるわよね
遠い親戚だからな
とうちゃーく　ハイ
ここが　おじさんのお部屋
そして　こっちが
美雪おねえちゃんのお部屋でーす
ありがと　フミちゃん
じゃあ　金田一　あとでな
ああ
オイ　はじめ！
え？
あれ　お前の彼女だろ？
マヌケな　お前には
もったいねーな
フミ　お前やっぱり
猫かぶって　やがったな
うちは　客商売だもーん
お客様に猫かぶるのは
当然だろ
あいかわらず
かわいくねえ性格だぜ
５歳のころから
ちっとも　変わってねえや
フミちゃん　お部屋の鍵は？
あ　スイマセン
すぐにお持ちしまーす
エヘ
ヨッ　いてて　腰…
オイ　軟弱男！
え…　あ？
風呂の時間だぜ
うちは　男女交代制だから
長湯するなよ
それから　その汚い体
よく洗ってから
湯船に入ってくれよ
お湯が汚れちまうからな
何で　お前が
一緒に　ついてくるんだよ
だって　お客様を放っておく
わけには　いかないでしょ
地元のことなら
あたしが案内しちゃう
それに　斑目さんの蝶屋敷
一度　行ってみたかったんだ
有名だもんね　この辺でも
分かった　分かった
いいか
大人しくしてるんだぞ
ちょっとでも余計なマネしたら
その場で
たたき帰してやるからな
ヒドイ…
フミ　そんな悪い子じゃないのに！そうよ　はじめちゃん
そんな言い方すること
ないじゃない
フミちゃんが　かわいそうでしょ
美雪おねえちゃん　優しい！
二重人格か　お前は
さあ　着いたぞ　あれが斑目邸
通称　「蝶屋敷」だ
うわあ　キレイ
蝶の放し飼いか
こいつはスゴイや
それにしても　ずいぶん厳重な
セキュリティーだな
まるで　刑務所だぜ
見て見て　はじめちゃん
キレイなチョウチョ
いけません！
ああ　ダメだよ　竹蔵さん
せっかく
かわいい女の子と蝶の
ツーショットだったのに
六波羅！
え？
ありゃあ　いつきじゃねえの
お前　こんなとこで
何してるわけ？
知り合いの人？
ああ　フリーカメラマンで
昔　一緒に仕事したヤツだよ
だいたい
そんなに蝶が大事なら
放し飼いなんかに
しなきゃいいのにさ
わ　私は…
ただ　ご主人様の
言いつけどおりに
竹蔵　もういい
六波羅さん
竹蔵が何か失礼でも？
え…　あ　イエイエ
別に　たいしたことでは
あ
うん？
おお
るりか
見て　はじめちゃん　あの子
片方の目だけ　緑色だわ
るり
まりつきは　池のそばで
するんじゃない
はい　お父さま
じゃ　皆さん
後程　パーティーで
ああ　るり様　何を？
あんなヤツが触った　まりなんて
もう　いらない！
あんなヤツ…
これだから
パーティーは　いいよなあ
はじめちゃん
もう少し上品にできないの？
そうよ
フミだって　はずかしいよ
な！
テメー　何だ　それは
おーおー　壁という壁に
蝶の標本　飾りまくって
それにしても　あの写真の男
遠野英治は　どこに？
でも　すっごい人の数ね
蝶のお披露目って
そんなに　たいしたことなのかしらそりゃあ　ただの蝶じゃ
ありませんからねえ
え？
遺存種といって
たいへん貴重な蝶なんですよ
遺存種？
ええ
絶滅したと思われていた
生き物が
たまに　辺境地で
発見されることがあるんです
それを　遺存種というんですが
皆さんが　これから見られる
２００年前に
絶滅したと思われていたものを
斑目さんが探し出して
２５年もかけて
繁殖に成功したんですよ
２５年も
ずいぶん　蝶について
お詳しい方ですね
ああ　失礼しました　私
山野といいます
大学で　蝶類の研究をしておりますああ　こりゃ　どうも
へえ　２５年かあ
あの　じいさんがねえ　ん？
スッゲー　美人
はじめちゃん　あの人も
ホラ
昼間会った女の子と同じで
左目だけ　緑色だわ
あの方は　緑さんといって
斑目さんの奥さんですよ
お父様がロシアの方でしてね
なるほど　じゃあ
あの　るりとかいう女の子の
お母さんってことか
さて　皆様に
幻の蝶を　お目にかける前に
もう１つ　愛すべき蝶たち
すなわち　わが娘たちを
ご紹介しましょう
オオー！
ウワー　こりゃ見事だ！
美しい
お人形のようね
ホウ　これは見事な
ウッソー　あの妖怪じいさんの娘がこんな美人ぞろい？
遺伝子が　どうか
しちゃったんじゃないの？
はじめちゃん
それ　言い過ぎよ
ウワー　こりゃ　マイッタな！
夢みたいだわ
こんばんは　山野のオジサマ
いやあ　こんばんは　揚羽さん
今日は　一段とキレイですな
ウフフ　オジサマに
そう言っていただけると
うれしいわ
こちらの方は
オジサマのお知り合い？
あ　東京から取材に来た
いつきといいます
で　こっちが
金田一です
七瀬です　よろしく
フミでーす
揚羽！
こんなところで
何をしているの？
まったく　揚羽ったら
いつまでも
落ち着きがないんだから
仕方ないですよ
舘羽さんと違って
まだ　子どもなんだから
あ　舘羽さん
このパーティーが終わったら
式の日取りのお話しを
キャー！
あの声は
こっちかな？
るり　どうしたの　るり？
揚羽お姉さま！
どうしたの　るり？
あ　あれ！
ああっ！
うわっ…　気持ち悪い
何だ　この不気味な蝶は？
こっ　黒死蝶
黒死蝶？
し…　死の予告じゃ
だっ　誰かが
この中の誰かが　死ぬ
死の　予告
お姉さま
まだ　生きておるじゃないか
かわいそうに
今　楽にしてやるからな
竹蔵　いつものように
蝶塚に手厚く葬ってやってくれ
はい
蝶の墓まであるのかよ
異常だね　こりゃあ
蝶屋敷に　蝶塚か
ったく　何なんだよ　このうちは？
それにしても
死の予告って　一体？
さて　皆さん
いよいよ　皆さんに
ご覧いただきましょう
私が生涯をかけて
よみがえらせた幻の蝶
夜光蝶を
ワア　蛍かなあ？
ちょ　蝶が光ってる
ワア　キレイ
こいつはスゲーや
スッゴーイ　欲しいなあ
と…　遠野英治
オイ　金田一
何　見て・・・
ああっ！
遠野…　先輩
初めまして
東京から　先生の取材に
いらした方ですよね？
僕は　斑目先生のもとで
蝶の飼育の
お手伝いをさせていただいている
深山といいます
どうぞ　よろしく
あ　こちらこそ
アンタは　あのときの
遠野なのか？
どう思う　金田一　あの深山って男
どうって…
確かに姿も声も
遠野と　うりふたつだったけど
何か　ピンとこないんだよな
そうね
私も　よく分かんない
あ？
黒死蝶だ
うえっ　いやだよ
そのチョウチョの柄
人間の　ろっ骨みたいで
そういえば…
死の　死の予告じゃ！
この蝶を見て
竹蔵さんが言った
「死の予告」って
どういう意味だろう？
ま　どうせ
この辺りに伝わる迷信だろう
迷信なんかじゃないもん！
え？
私　知ってるもん
あれで本当に死んじゃった人
いっぱい　いるんだから！
だから…
るりちゃん
るり　死んじゃうかもしれない
るりちゃん　るりちゃーん！
待って　るりちゃん
危ない！
おケガは　ありませんか
お姫さま？
バーカ　お前が突っ込むほうが
よっぽど危ねえぜ！
痛えじゃねえか　こんのお…
ウフフ
あ
変な　おにいちゃん
えー　まず
あの夜光蝶ですが
斑目先生が　あれを発見されたのは２５年前でしたよね？
ああ　立山の山頂近くにある
万年雪の古い層から
仮死状態のサナギを
見つけたんだ
ヘエ　仮死状態のサナギを
何　見てんだよ？
はじめ
深山日影　３ヵ月ほど前に
紫紋が　この屋敷に
連れてきたんだそうだ
それまでの経歴は　よく分からん
身寄りも　ないらしい
これ以上　ヤツについては
聞き出せなかった
やっぱ　あいつ
遠野とは別人かもな
遠野って　どなた？
私も　皆さんのお話の仲間に
入れていただけません？
あ　どうも
アラ！
あなた
立派な頭脳線してるのねえ
私　手相見るの得意なの
ちょっと　いいかしら？
ああ　は　はい…
舘羽さん！
何をしているんですか
こんなところで
何って　見れば分かるでしょ？
そんな得体の知れない
貧相なガキの手相なんか
見る必要ないでしょ！
貧相？
クッシシシ
貧相で悪かったな！
アンタこそ
カルシウム不足なんじゃないのか
あ？
何を失礼な
僕は舘羽さんの婚約者だぞ！
やめてください　小野寺さん
そんな大きな声で
一体　どうなさったんですか？
フン
もう　あの人の　しっと深さには
やんなっちゃう
式なんて　取りやめちゃおうかしらウフフ
小野寺さんには
何でも　わがまま言えるって
舘羽姉さん
いつも　ノロケてたじゃない
何よ　揚羽
そういうアンタこそ
幸せボケしてるくせに
え？
あたしが知らないとでも
思ってるの？
深山さんとのこと
私は　別に…
いいわよ
分かってんだから
でも　いい？
このことは
あいつに
バレないようにしなさいよ
もしバレたら
深山さん　あいつに何をされるか
う…　うん
何で　今日は
はじめと一緒の部屋なんだよ？
アホが　うつるぜ
それは　こっちのセリフだ
あっちで　夕べ　寝小便でも
したんじゃねえのか！
あ？
ん？
るりちゃん
どうしたの　こんな時間に？
私　あの男　だいっきらい！
え　あの男って
君のお父さんのこと？
あんなヤツ
お父さんなんかじゃない！
いつも　お母さんに
ヒドイことして
お母さんに？
すばらしい
お前と娘たちは　私にとって
最高のコレクションだ
お　お　お許しください
いかんな
蝶が　そんなこと言っては
お前は　その美しい羽を
黙って　私に
見せていればいいのだ
あ…　るりちゃん
何とか言ってやれよ　はじめ
男だろ
お…　おう
あ　何か
よく分かんないけど
明日　フミと　おにいちゃんが
遊んでやるから　な？
ゴムとびでも　まりつきでも
ゲームでも
ホントに　ホントに
るりと一緒に遊んでくれる？
ああ　マジで約束するよ
うん
あ…　ああ
た…　たいへんです！
ま…　また　蝶が！
え？
だ…　誰が　こんなイタズラを
「地獄より　死の翅もて参上す
不死蝶」
不死蝶？
この蝶は　オオルリシジミですね
オオルリシジミ？
パーティーで
るりさんの着物の柄になってた
着物の柄…
まさか！
あ　オイ　どこ行くんだよ
はじ…　あっ！
ちょっと　るりちゃんの部屋に
あれは
るりちゃんの　まり
どうして　るりちゃんの　まりが
ここに？
どうしたんだよ？はじめ
はじめ
来るな！
ダメだ　見ちゃダメだ
る…　るりちゃん
るりちゃんが
蝶に見立てて殺された
警察の調べで
容疑者に上がったのは
俺たちも
よく知っている人物だった
確かに　あいつは
蝶に深く関わっているが　でも…
そんなとき　フミのヤツ
こっそり見てしまったんだ
深山日影の体に隠された
恐ろしい秘密を
そして　再び届く　死の予告
冷血な殺人者　不死蝶は
まだ　いけにえが欲しいというのか
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
ある雑誌に載っていた
悲恋湖殺人事件で死んだはずの
遠野英治　そっくりの男
この男の正体を確かめるために
俺たちは
蝶屋敷こと
斑目紫紋邸にやってきた
そこで見たものは　何やら
いわくありげな斑目家の人々と
世界でも珍しい
夜光蝶の　あやしい光
そして
その光に誘われたかのように
第１の殺人事件は起きた
殺人事件発生　殺人事件発生
場所は金沢市　イソノ町
斑目紫紋宅
猪川警部
誰も　この屋敷から
出しとらんだろうな？
はあ
イヤーッ！
るりが死んだなんて嘘よ！るり！
あの女は？
斑目緑
殺された斑目るりの　母親です
ああいうのは
絶対に現場に近づけるな
残された手掛かりを
踏みにじられたら　たまらんからな
はあ…
踏みにじってんのは　どっちだよ？
何？
何だ　きさまは？
死体の第一発見者の
金田一という少年です
フン
こいつには　ここで話を聞こう
ほかの関係者は
屋敷の広間にでも集めておけ
はじめちゃん
お前も
フミと一緒に
広間に行っててくれ
さ　行きましょう　フミちゃん
るりちゃん…
フミちゃん
どうした　美雪ちゃん？
ああ　イエ
別に　たいしたことじゃ
あ？
帯の中に　枯れ葉？
簡単な現場検証の結果
被害者
斑目るりさんの死亡時刻は
昨夜１２時から１時の間という
ことが分かりました
ついては　ここにいる皆さんの
アリバイを調べさせていただきます
オイオイ　刑事さん
それじゃ　まるで
俺たちの中に
犯人がいるみたいじゃない
そのとおりですよ
何だって？
それは　どういうことだよ？
われわれの調べでは
昨夜のパーティーが終わってから
今朝　死体が見つかるまで
外部の人間が出入りした形跡は
まったくない
この屋敷の　万全の
セキュリティーシステムなら
外からの
あやしい侵入者がいれば
一発で分かってしまうはずだ
となれば
もともと中にいた人物の犯行と
考えるのが当然でしょ
そ　そんな…
るりを殺した犯人が
この中に？
で　でも
深夜１２時から１時までの
アリバイなんて
あるほうが　かえって不自然ですよ夜中よりも
今朝のアリバイを
調べるべきなんじゃないのか？
何？
犯人は　るりちゃんの死体を
今朝　あの蝶塚に運んだ形跡がある何だと？
竹蔵さん　あなたは　今朝
屋敷内の見回りで
例の蝶塚のそばを
通ったんですよね？
あ　ああ・・・　いつものように
ほかの使用人と２人で
見回っとった
７時ごろ　あの蝶塚の前を
通ったときには
るりさまの死体など
なかったんじゃ
あの派手に飾られた
死体の状況から考えても
２人の人間が見落とすなんてこと
まず考えられない
つまり犯人は　この７時から
俺が　るりちゃんを発見する
８時までの間に
彼女の死体を
蝶塚に運んだってことになる
それと　刑事さん
るりちゃんの死体が運ばれるとき
帯が　ほどけたよな
ああ　それが　どうした？
あのとき　帯の間から
枯れ葉が何枚か落ちたんだ
何？
もし　これが
犯人の犯した
小さなミスだとしたら
犯人は　枯れ葉の積もった
あの蝶塚の前で
るりちゃんの死体に
着物を着せたってことになる
これだけのことをするには
どう考えたって
１０分や１５分は　かかる
つまり
今朝７時から８時までの間に
１０分以上
アリバイのない人間に絞れば
捜査も　だいぶ
楽になるんじゃないの？
刑事さん
なるほど
というわけらしい
それでは　皆さん
今朝７時から８時までの間
何をしていたか
話してもらいましょうか
私と揚羽は　朝食の支度で
６時から　ずっと台所にいたわ
それと
小野寺さんも６時半ごろから
ずっと食堂にいました
そうとも
僕には　アリバイがある
俺も　だいたい
６時５０分ごろには
食堂で　コーヒー飲んでたぜ
そこの　山野教授と
話ししてたんだよ
彼とは
蝶について　いろいろと
お話ししていたんですよ
７時半ごろ　トイレに立ちましたがそれも　ほんの３～４分です
私は　起きてから７時まで
ずっと庭の手入れをしていた
それは
竹蔵が証明してくれるはずだ
はい　私と　だんなさまは
７時まで　ずっと一緒でした
７時になる直前に
だんなさまは　食堂に
私は　見回りに出ましたが
私は　今朝は
気分が　さえませんで
７時すぎまで　自分の部屋で
横になっておりました
ほう　７時すぎ
それは　正確には
何分ごろでしたか？
お母さまは　私が７時５分ごろ
お部屋に　お電話したとき
すぐ出ました
それから５分ほどで
食堂に　いらしたんです
ほう　５分ね
ここまでは　全員シロだ
残る１人は
深山君だったね？
ぼ　僕は…　朝　起きてからずっと
地下の標本室で
標本の整理をしてました
で　それは
証明できるのかね？
いえ　ずっと独りでしたから
よーく分かりました
どうやら　君には
署で　詳しく話を聞く
必要がありそうだ
ねえ　はじめちゃん
どうなの？
やっぱり　あの深山さんって人が
るりちゃんを？
まだ　分からない
アリバイがないってだけじゃな
警察だって
どうせ　すぐ釈放するよ
許せない
るりちゃんを殺したヤツ
絶対に許せない
フミちゃん
あの子　きっと
いつも独りぼっちだったんだよ
こんな　おっきな　お屋敷で
だから　あんなふうに…
あ　何か
よく分かんないけど
明日　フミと　おにいちゃんが
遊んでやるから　な？
ホ　ホントに　るりと一緒に
遊んでくれる？
ああ　マジで約束するよ
うん
もしかしたら
これから　本当の友達に
なれたかもしれないのに
あの子との約束
守ってやれなかった
あの子の苦しみ
聞いてやれなかった
はじめちゃん
あの子の命を奪ったヤツは
俺が　必ず捕まえてやる！
じっちゃんの　名にかけて！
ダアー！
竹蔵さんの声だ
アア…
どうしたんです　竹蔵さん？
こいつが　この黒死蝶が
わしの肩に　とまろうとしたんじゃあ　別に
どうってこと…
この蝶は特別じゃ！
こいつは　死を招く蝶なんじゃ！
死を招く蝶？
ああ
この辺りに
古くから伝わる伝説じゃ
昔　この辺りの村に
たいそう仲のええ夫婦が
おったんじゃが
その村の庄屋の息子が
その女房に　横恋慕しおってのう
夫を殺して　その女房を無理やり
自分のものに　しおったそうな
最初は　その女房も観念した様子で大人しく暮らしとったそうじゃが
庄屋の息子との間に
３人の娘が出来
その娘らが　美しく育つと
ある日　突然
呪いの言葉を残して
娘ともども
自ら命を絶ってしもうたんじゃ
ヤダ…
それから　数日後
４頭の黒死蝶が
庄屋の家の回りを飛ぶようになり
庄屋の家の者や
見て見ぬ振りをした村の者が
次々に　恐ろしい疫病にかかって
倒れ始めたんじゃ
そして　村人のほとんどが
死に絶えたとき
何千　何万という黒死蝶の群れが
死体の山を覆い隠すように
群れ集まっていたそうな
蝶って　キレイなものだと
思ってたけど
あんな話　聞いたら
怖くなっちゃう
そういえば　るりちゃんの死体が
見つかったときも
見たことのない蝶が
飛んでたっけ
見たことのない蝶？
確か　青い羽に
オレンジの模様が入った
カリマイナチウスだよ　それは
小野寺さん
金田一君って　いったね
ちょっと　君に
聞きたいことがあるんだ
君は深山を見て
「遠野」と口走ったそうだね？
あ…
知ってるなら教えてくれないかな
あの　深山日影って男が
本当は誰なのか
やっと帰ったか　深山
せ　先生
急に見たくなってのう
お前の美しい蝶が
うう…　夕ご飯
食べ過ぎちゃったかなあ
お腹の具合　おかしい
フッフフフフ
火が　怖いか？
本当に　お前は蝶のようじゃ
さ　早くしなさい
おお　美しい
まるで　真っ赤に燃え上がる
炎の蝶じゃ
うわあ…
オイ　はじめ！
何だよ　うるっせえな
今　おぞましいモン
見ちまったんだよ
あの紫紋って　じいさんが
深山ってヤツを裸に　ひんむいて
笑ってやがったよ
深山さんを裸に？
ありゃ　普通じゃないぜ　絶対
うわあ　気持ちワリイ
一体　誰が　るりに
あんなヒドイことをしたの？
不死蝶って　誰なの？
何で　私たちを？
揚羽さん　もう泣かないで
元気を出してください
深山さん
あの　揚羽さん
あ　イヤ…
じゃ　揚羽さん　また
あ　何つうか　その…
おじゃまでしたか
何か　ご用ですか？
金田一さん
アー　イヤア　その…
深山さんって　何か
こう　神秘的な人ですよね
この屋敷に来る前は
どうしてたんでしょうね？
あの人は
蝶なんですわ
蝶？
深山さんだけじゃないわ
私も　お母さまも
お姉さまも　るりも
お父さまのコレクションの
蝶の１つに　すぎないんです
いや　斑目さん　るりさんのことは
何と言ったらいいか
あのキレイな緑色の目は
惜しかった
え？
娘たちの中で
妻の目を受け継いだのは
るりだけだったのに
惜しいことをしたよ　山野君
大切なコレクションが１つ
減ってしまった
それにしても　一体　誰が
わしの大切な蝶を？
不死蝶
まさか　２５年前の？
まさかな
るり　何で　アンタが
るり
夜光蝶が飛んでるわ
初めて見たときは
キレイだと思ったけど
今は　何だか
ヒトダマみたいで気味が悪い
あんなことがあったあとじゃな
ん？
何か　あの辺
やたら　夜光蝶が集まってないか？
何だか
どんどん増えてくみたい
お　おいっ　あれは！
巨大な　光る蝶
まさか！
くそっ　エイ　エイッ！
散れ　散れー！
ワアッ！
これは…
た…　舘羽さん
さて　ここにいる
皆さんに　お聞きします
このワイシャツは
どなたのですか？
それは　僕のです
ほう　このワイシャツ
第３ボタンが　取れていますが
いつ　どこで取れたか
覚えていますか？
いえ　わ　分かりません
なるほど　では
このシャツと
まったく同じボタンを
被害者　斑目舘羽さんが
握っていたとしたら
どうします？
えっ！
深山
やっぱり　お前か！
お前が　僕の舘羽さんを
ち　違う…
待てよ
そいつは　ちょっと妙だぜ
何だと？
例えば
確かに
被害者が犯人と　もみ合って
ボタンが取れるというのは
よくある話だ
でも　その場合　こんなふうに
ちぎれ飛んでしまうのが
普通じゃないのか？
つまり
こんな小さなボタンを
舘羽さんが握ってたってこと自体
すでに　不自然なんだよ
そのとおり
確かに　君の言うとおり
そうした遺留品は
現場に落ちているのが普通だ
だが　自分の容疑を晴らすために
ワザと手掛かりを残した
とも考えられるがな
まったく　とんでもないことに
巻き込まれちまったぜ
一頭３００万もする夜光蝶に
つられて来たのが
運のつきってか？
３００万！
何だ　おめえら
何にも知らねえんだな
世界中で
この庭にしか　いない蝶なんだ
それくらいの値がついて
当然だろ
お前ら　蝶屋敷に来たんなら
少しは　蝶のことぐれえ
勉強しろよ
あ　あれ　フミは？
あ！
え？
待てー　３００万！
フミちゃんとこ　おいでー！
ホラホラ
どうしたんだよ？はじめ
いきなり
蝶の図鑑なんか調べ出して
確かに
六波羅さんの言うとおり
俺たちは
蝶について知らなすぎる
この事件は
何から何まで蝶づくしだ
ひょっとしたら
蝶の習性で　何か重要なことが
分かるかもと思って
ケッ　今さら
そんなことしたって
仕方ねえだろ
ったく　頼りになんねえな
ま　もっとも
最初っから　お前のことなんざ
あてには　してねーけどな
警察もチンタラしてやがるし
いつになったら
犯人が分かるんだよ
あ　そうだ！
いいこと思いついたぜ　はじめ
何だよ？
探偵を雇うんだよ
テレビに出てくるような
名探偵をさ！
お前なあ
何やってるの？こんなところで
あ　美雪おねえちゃん
はじめおにいちゃんが
調べものしてるから
フミ　横で応援してたの
エヘヘ
まあ　エライのね　フミちゃん
エヘ　それほどでも
何とかなんねえのか
こいつの性格
ん？
こ　これは…
金田一さん　僕に何か？
単刀直入に言います
深山さん
深山日影というのは
本名では　ありませんね？
はじめちゃん
それ　どういうこと？
これを見てください
「ミヤマ」も「ヒカゲ」も
どちらも
蝶の名前の中に入っています
揚羽さんたちの名前が
すべて蝶から
取ってあるところから見ても
おそらく　深山日影という名前も
紫紋さんがつけた
名前じゃないんですか？
深山さん
どうか正直に答えてください
あなたの本当の名前は？
分からないんです
ええっ！
僕には　半年より前の記憶が
まったくない
記憶喪失なんです
この屋敷に来る前
僕は　ずっと金沢の病院にいました
病院の人の話だと
僕は　金沢の外れの山林で
全身に　ひどい火傷と打撲を負って倒れていたんだそうです
斑目先生に
目をかけていただかなかったら
今頃は…
でも
どこの誰とも分からない
あなたを
どうして　紫紋さんは
引き取る気になったんです？
それは
この火傷の跡のためですよ
この蝶の形をした火傷の跡を
病院で先生は
たまたま　ご覧になり
たいそう　気に入られて
僕を引き取ると
おっしゃったんです
だーから　言ったじゃねえかよ
あのじいさん　普通じゃねえって
あのとき　揚羽さんが言ったのは
あの人　蝶なんですわ
こういうことだったのか
おっと　時間だ
え？
蝶にかけた麻酔が
そろそろ切れるんですよ
ワア　すっごーい
時間ピッタリ
遠野だ　間違いない
やっぱり　深山イコール
遠野だったんだよ！
ってことは
今回の殺人事件もヤツが
動機は？
へ？
もし　彼が遠野だったとしても
るりちゃんや
舘羽さんを殺す動機がない
いや　それは…
とにかく
まだ犯人を断定するには
早すぎるよ
それより
この屋敷のメンバーについて
何か分かった？
ああ　それそれ　それだ！
まずは　この屋敷の主人
斑目紫紋だが
ヤツは　もともと
ただの蝶マニアで
研究者でも何でもなかったんだ
しかし　２５年前から　突然
いくつもの論文を発表しだしてな
その論文が
すばらしい出来だったんで
いちやく
脚光を浴びるようになったんだ
２５年前っていったら　確か
紫紋さんが
夜光蝶を発見したころだったよね
ああ　緑さんが紫紋と結婚したのもちょうど　そのころだ
彼女は　もともと
八重島大学の医学部にいたんだが
それまで　つきあっていた
恋人が自殺してから
人が変わっちまったらしい
恋人が自殺
それは　また　どうして？
さあなあ　ただ　その男は
山野教授と同じ
八重島大学の研究室に勤めててな
どうやら
蝶の研究をしていたらしいんだ
緑さんの自殺した恋人が
蝶の研究を？
どうやら見えてきたぜ
この殺人事件の動機が
大人の舘羽さんなら　まだしも
幼い　るりちゃんに
殺される動機があるとは
考えにくい
だが　真犯人
不死蝶が殺そうとしているのが
彼女たち自身ではなく
斑目家　そのものだとしたら？
そこまで　人を
殺人に駆り立てるものが
単なる欲望とは思えない
やはり
不死蝶の殺人動機は
斑目家の財産などじゃなく
２５年前に起きた
いくつかの出来事にあるんだ
斑目家を根絶やしにしたいほど
憎んでいる不死蝶とは
一体　何者なんだ？
そして
何があったら　そこまで
人が人を
憎むことができるんだ？
あ？
キャア！
ク　クモ…
キャアー！
この声は　揚羽さんだわ
まさか
今度は揚羽さんに何か？
今度は　揚羽さんまで
この蝶屋敷の住人を
執ように狙う殺人鬼の
本当の目的は
一体　何なんだ？
深山さん　アンタは
本当に何も覚えていないのか？
この蝶屋敷に　うず巻く
ゆがんだ憎しみの訳と
黒死蝶が発見されたとき
隠された真実
すべての手掛かりは
そこにあるかもしれないんだ
逃げないでくれ
死んだ　るりちゃんたちのためにも
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿こっ　こいつは…
遠野英治？
悲恋湖で死んだはずの殺人犯
遠野英治そっくりの男の
正体を確かめるために
俺たちが　やってきた斑目邸
その蝶屋敷と呼ばれる
斑目家の娘たちが
次々と殺害されていく
すべて蝶に見立てた　この事件
不死蝶の名をかたる真犯人は
一体　誰なのか？
この謎は
必ず俺が解いてみせる！
キャアー！
まさか
今度は揚羽さんに何か…
何だよ？今の悲鳴は
揚羽！
くっそ　間に合ってくれ
どうか
間に合ってくれ　揚羽さん
揚羽！
どうしたんだ　揚羽さん
深山さん
揚羽！
深山　きさま　揚羽さんに何を？
ご　誤解です
揚羽　しっかりして！
揚羽！
お母さま…
この野郎
やめてください　小野寺さん
それより　早く救急車を！
一体　風呂場で　何が？
いつきさん　ダメだ
入っちゃダメです！
うわっ！
クモだ　気持ち悪い…
何なの？このクモ
こ　これは
シドニージョウゴグモ
オーストラリアに住む
猛毒の殺人グモですよ
殺人グモ？
どうして　こんなものが　ここに？
不死蝶だ！
ヤツは　毒グモを使って
今度は
揚羽さんを殺そうとしたんだ
腕の傷は　逃げるときに割った
ガラスによるもので
出血は　ひどいですが
毒グモに刺された様子は
ありませんね
はい
よかった　揚羽さん
ただ　輸血の必要が
あるかもしれません
お嬢さんの血液型は？
Ｂ型です
待って　違うわ
え？
この子は　Ａ型よ
でも　私はＢ型だって
お母さまから聞いたのよ
違うのよ
あなたは　本当はＡ型なのよ！
本当ですね？
悲鳴を聞いて駆けつけると
血まみれになって倒れている
揚羽さんがいた
はい
嘘だ！犯人は　こいつに決まってる
こいつは
自分の容疑を晴らすために
自作自演の救出劇を
でっち上げたんだ
そいつは　どうかな
何？
血清も手に入らない
刺されたら　あの世行きの
猛毒グモの群れに　深山さんは
ハダシで飛び込んだんだぞ
芝居で　そんなマネが
できると思うか？
フフン　それだけ手の込んだ
芝居ってことも
ありうるかな
フッフフフ
まだ　終わりじゃない
まだ　揚羽がいるわ
これは　確かなんだね
いつきさん？
ああ　俺が調べたんだ
間違いない
緑さんの血液型はＯ型で
紫紋の血液型は　Ｂ型になってる
揚羽さんがＡ型だとすると
そうか！
それって　どういうこと？
Ｏ型とＢ型の親から
Ａ型の子どもは生まれないの
揚羽さんは　紫紋と緑さんの
子どもじゃない
どういうことなんだ？金田一
私　帰りたくない
え？
あの家に戻ったら
私　今度こそ
本当に死ぬかもしれない
揚羽さん
るりや　舘羽姉さまと同じ
蝶のように
殺されてしまうかもしれない
あなたは僕が守ります
自分の命に　かえても
深山さん
オイ　はじめ
何するつもりなんだよ？
あ　ちょっと
確かめたいことがあってさ
コラ！何しとるんじゃ
な　ああ…　ワアッ！
デヘヘ　アイテ…
何？夜光蝶が逃げ出さないわけを
知りたいじゃと？
ええ　世界的に貴重な蝶が
庭で放し飼いされてるもんで
ひょっとして
この塀の上に何か
工夫が　されてるのかな？
なんて
手を出してみろ　小僧
え　手ですか？
この液体　何か匂うか？
え…　いえ　全然
あっ！
何じゃ　こりゃ？
ど　どうして　こんなに　蝶が？
うっ　うわあ
今つけた　液体のせいじゃよ
蝶というのは　非常に
きゅう覚が発達した生物でな
その種類によって
好きな匂いと嫌いな匂いがある
今　お前に　つけたのは
その蝶が大好きな
フェロモンなんじゃよ
この屋敷の塀の上には
パイプが張り巡らされてあって
夜光蝶が嫌う匂いが
出てるんじゃ
だから　逃げるどころか
この塀には近づこうともせん
揚羽は　私の子ではないのか
緑のヤツ　一体　誰と？
待てよ　ヤツは　確か
Ａ型だったはず
いや　そんなバカな
２５年前に死んだヤツが
１８才の揚羽の
父親になれるはずが…
フワー　ああ　腹へった
あれ　紫紋さん　まだ来てないの？
めずらしいですね
時間に　うるさい斑目さんが
朝食に遅れるなんて
はじめちゃん　ちょっと
あの窓に　蝶が
あれは　黒死蝶よ！
何だって？
あ　黒死蝶が　いっぱい
あの部屋は先生の
まさか！
先生！
これは…
紫紋までが？
どうする？金田一
ああ
俺は　今回の
一連の殺人事件の元凶は
２５年前に　あるんじゃないかと
思うんだ
２５年前？
夜光蝶の発見
緑さんの恋人の自殺
そして　緑さんと紫紋の結婚
この屋敷の住人に関わる
大きな出来事は
すべて　２５年前に集中している
２５年前ですか
私は　まだ
八重島大学の助教授で
小さな研究室で
細々と蝶の研究をしていました
そのころ
私の助手をしていたのが
緑さんの恋人だった
須賀　実君です
当時　２７才だったと思います
なかなか頭もよく
すぐれた助手でした
山野先生　おじゃましてます
おや　緑さんも来てたのかね
蝶の羽化を
見たいと言うもんで
今日は君に
大事な　お客様を紹介するよ
斑目紫紋さん
このたび　家督を継いで
私の蝶の研究のために
多額の寄付をしてくださった方だ
先生から
お話は伺っています
ホントに
何とお礼を言っていいのか
いいや　蝶の研究は
私の若いころからの夢で
それに少しでも
参加できればと思ってね
はい　もちろんです
で　そちらの
緑色の左目がキレイな女性も
この研究室の？
え　イエ
ああ　緑さんは
医学部の学生でして
須賀君の恋人なんですよ
ほう
君とは　そのうち
ゆっくり　蝶の話でもしたいな
須賀君
はい　よろこんで
それから
紫紋さんは　ちょくちょく
研究室に
来られるようになりました
須賀君とも　個人的に
会ったりしていたようです
紫紋さんの援助のおかげで
研究も順調に進み
須賀君と緑さんも
６月の予定だった結婚式を
事情があって早めたいって
うれしそうに話してくれました
え　式を早める？
ええ　今から思えば
あのときの２人が
幸せの絶頂でした
それが　あんなことに
なってしまうなんて
須賀君が　プッツリと研究室に
来なくなってしまったんです
私は　心配になって
緑さんと
彼の下宿へ行ってみたのですが
須賀君
イ　イヤー！
それから
大学内に妙な噂が流れ出しました
緑さんが　心変わりをして
結婚の約束までした
須賀君を捨てて
資産家の紫紋さんに
乗り換えたと
それで　須賀君が…
それから
１０ヵ月ぐらいしてからです
突然　緑さんと紫紋さんの結婚が
決まったと聞いたのは
紫紋さんが
夜光蝶のサナギを発見したのは
いつごろですか？
うーん　確か
須賀君が亡くなる
少し前だったと思います
だいぶ昔のことなんで
正確には…
私も　ボケたな
ハッハハハハ
あやしいな
蝶の研究者だった
緑さんの恋人が自殺する直前に
紫紋が蝶研究者として
華々しくデビューする
これは　絶対　何かあるぜ
金田一
ああ
小野寺さん
るりちゃんや舘羽さんだけでなく
お父様まで…
心中　お察しします
何か　ご用でしょうか？
揚羽さんに
僕の気持ちを知ってもらいたくて
キャア！
何だ？
揚羽さんの声よ
何を　するんですか？
僕は
本当は　舘羽さんより
あなたが好きだった
この屋敷にきたときから　ずっと
やめて　放して！
オイ　ちょっとアンタ！
深山さん
き　きさま　何をする
何をするって…　アンタねえ
それは　こっちが聞きたいよ！
なぜだ　何のために？
シッ　シッ
コラ　あっち行け！
何してるの？フミちゃん
この気持ち悪い蝶が　いけないんだ
こいつのせいで
みんな　殺されちゃったんだよ
だから　あたしが
やっつけてやるの！
ったく　不気味な蝶だぜ
トカゲの死骸に群がっていやがる
あっち行けったら！
オイオイ
もう　いいんじゃないの
お嬢さん　この前も言っただろ
１頭　３００万円もする蝶を
たたき殺すつもり？
え？
世界中で
この庭にしか　いない蝶なんだぜ
そ　それって　まさか
どういうこった？これは
夜光蝶の名前で
黒死蝶が載ってる
ねえ　ねえ　何で？
夜光蝶と黒死蝶は
同じ蝶だったんだよ
あまりにもイメージの違う
昼と夜の２つの顔に
俺たちは
勘違いさせられていたんだ
だが　こうなると
奇妙なことが１つ出てくる
奇妙なこと？
思い出してくれ
紫紋さんや舘羽さんの死体には
黒死蝶が群がっていた
さっきの
トカゲの死骸のことも考えると
この蝶には　動物の死体に集まる
習性があるらしい
ところが
るりちゃんのときには
黒死蝶は１匹もいなかった
そういや…　でも　どうして？
どうしてなの？はじめちゃん
匂いだよ
匂い？
そっか　昨日
竹蔵さんに
教えてもらったやつね
その　黒死蝶の嫌いな匂いが
るりちゃんの死体には
つけられていたんだと思う
一体　何のために？
まだ
そこまでは分からないけど
あら　この名前
ヤマトシモンチウス
発見した紫紋さんの
名前から取ったのね
でも　どうして
名前が２つもあるのかしら？
そいつは学名さ　学者とかが使う
世界共通の正式名称だ
ああ　そっか
小野寺さんの言ってた
「カリマイナチウス」って
学名だったのね
え　何だ
カリマイナ　チウスって　え？
るりちゃんの死体が
見つかったときに見かけた蝶で
あ　これだわ
ええっ　な　何だって！
これは
どうやら
少しずつ見えてきたぜ
犯人が作り上げた
あの朝のアリバイトリックが
カリマイナチウスが
どうしたっていうの？
あの蝶が
すべての鍵を握っている
すべての鍵？
ああ
るりちゃんの殺害に
仕掛けられた
前代未聞の
アリバイトリックの鍵さ
るりちゃんの死体が
蝶塚の前に置かれた理由も
死体に黒死蝶が
寄って来ないように
匂いをつけた理由も
カリマイナチウスで
すべて　理解できる
謎は　すべて解けた
さ　早く
これは　これは
２人して　夜の散歩ですか？
猪川警部…
こんな時間に　君は揚羽さんを
どこに連れて行くつもりだね？
深山君？
どこだって構わない！
揚羽さんの身が
安全なところなら　どこでも
いつ　また殺人犯に襲われる
かもしれない　この屋敷に
彼女を置いとくのは
危険すぎる！
そう言って
揚羽さんを言いくるめて
本当は彼女を人質にして
逃亡しようとしたんじゃないのか
逃亡？
違います　刑事さん
深山さんは
本当に　私のことを心配して
揚羽さん　あなたは
だまされているんですよ
その男に！
その男は　斑目家の財産目当てで
自分に好意を寄せてる
あなたに近づき
あげくの果てに
財産を独り占めしようと
あなたの父上や姉妹まで殺した
極悪人ですよ
誤解です
僕は　財産なんて！
言い訳は
署で　じっくり伺いましょう
深山日影
斑目るり　舘羽　および
紫紋殺害の容疑で逮捕する！
深山さん
フッフフフ
待ってくれ！
ん？
ちょっと　お粗末すぎやしませんか猪川警部
うん？
どうしたんじゃ？一体
揚羽！
何してるの　あなた
何だよ　この警官たちは？
どうしたんですか　刑事さん
何が　あったんだ？
刑事さん　これは　一体？
深山さんが犯人だっていう
証拠は　あるんですか？
ロクに証拠も裏づけもないのに
逮捕は　乱暴じゃないですか
猪川さん
フン　君は　どこまでも
俺の　じゃまをしたいようだな
名探偵君　ちょうどいい
役者も　そろったことだし
聞かせてもらおうじゃないか
深山日影が犯人でない
裏づけとやらをな
金田一さん
フッフフフフ
いいでしょう
まず　俺が疑問に思ったのは
あなたの深山犯人説の
根拠でもある
死体移動の朝のアリバイです
仮に深山さんが犯人だとしたら
一体　どうして
わざわざ　自分にアリバイのない
時間帯を狙って
るりちゃんの死体を
運んだんですか？
ハア？
アリバイなんて
深山はハナから　そんなもの
考えてやしなかったんだよ！
ただ　自分の都合のいい時間に
動いただけだ
ところが　あの朝にかぎって
自分以外は　全員
アリバイが成立してしまった
あせった深山は
今度は　その状況を
逆に利用することを
思いついた
つまり　彼は　真犯人によって
罪を着せられそうになっている
無実の人間を
演じることにしたんだよ
第２の犯行
舘羽さん殺害のとき
彼女の手に
自分のボタンを握らせたのも
真犯人が
自分に罪を着せるために仕組んだ
偽装工作と思わせるためだ
君が探偵気取りで　その状況の
不自然さを指摘したとき
深山は　内心「うまくいった」と
ほくそえんでいたんだよ
そして
自分が容疑者から外れるための
ダメ押しのパフォーマンスが
揚羽さんを助けるという
自作自演のシナリオだ
でも
深山さんは
毒グモのいる　お風呂場に
ハダシで
飛び込んできてくれたのよ
そんな危ないこと
演技なんかじゃありません！
確かに　あの猛毒の
シドニージョウゴグモ
日本に血清すらないんです
あんなのに刺されたら
ひとたまりもありませんよ
毒グモを　わざわざ凶器として
仕入れてくる犯人ですよ
血清も手に入れて　あらかじめ
打ってたんじゃないんですか
深山さん？
やっぱり　お前か　深山！
嘘よ　そんなの嘘だわ
深山さんは
犯人なんかじゃない
深山さんは…
そう　犯人ではありませんよ
揚羽さん
金田一さん
深山さんは　あなたのことを
本当に大切に思っているから
あんな危険な状況で
あなたを助けることができたんだ
それに　犯人の不死蝶は
猪川警部の言うような
行き当たりばったりの計画を
立てるような人物ではないし
ましてや　財産目当てで
これほどの冷こくな犯罪を
計画するハズもない
フン
まだ　君は　そんなことを
殺しの動機は財産だ
それ以外　見当たらんだろうが！
それが　あるんだよ
この一連の殺人事件には
もっと根深く
そして　ゆがんだ憎悪が
込められているんだ
何？
ゆがんだ
憎悪？
不死蝶が　この斑目家の人間に
いだいている
異常なまでに激しい憎しみは
２５年前の
ある事件をキッカケに
この世に生み出されたんだ
２５年前？
猪川警部
あなたは　この一連の事件が
すべて蝶づくしであることを
どう考えてますか？
それは
おそらく　蝶屋敷に忍び込んだ
蝶マニアの変質者の犯行にでも
見せかけるつもりで
それは
少し妙じゃありませんか？
この屋敷の
セキュリティーシステムは万全で
変質者が　ヒョイヒョイ忍び込むなんて
まず　ありえない
この厳重さは　屋敷の人間なら
みんな知っているはずだ
この屋敷で何かあったら
当然　疑いの目は
内部の者に向くんです
それを　あえて
外部の変質者の犯行に
見せかける必要が
どこにあるというんです？
それに　あなたは　さっき
犯人が　るりちゃんの死体を
朝に移動させたのは
ただ　それが
犯人にとって都合がいい
時間だったからと言いましたが
誰もが動き出して
人目に　つきやすくなってる
朝の７時から８時の時間帯が
死体を運ぶのに　はたして
都合のいい時間なんでしょうか？
どう考えたって
真夜中に死体を運ぶほうが
はるかに　都合がいいはずだ！
言われてみりゃあ
確かに　そうだよな
どうして犯人は　そんなことを？
その答えは　ただ１つ
犯人が　朝の　あの時間に
死体を運んだと
俺たちに思わせること
それ自体が　真犯人の
巧妙なアリバイ工作のための
必要条件だったからさ
そして　この不死蝶の
異常なまでの憎悪の矛先は
ここにいる　ある１人の人物に
向けられている
２５年前の復しゅうのために
悪魔に魂を売り渡し
斑目家の人間を
次々に殺害した人物
不死蝶は　この中にいる！
不死蝶は　蝶に見立てて
次々と殺人を行った
そして　あるものに
ソックリな蝶を使い
空白の犯行時間を生み出した
今回の事件は
すべて蝶が鍵を握っている
でも　皮肉にも
お前が利用した　その蝶に
犯行を暴かれることになるとはね
見てくれ！
これが　不死蝶の使った
時間差トリックだ
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
遠野英治ソックリの男の正体を
確かめるために
俺たちは蝶屋敷に　やってきた
ところが　紫紋の娘たち
そして　紫紋自身までもが
斑目家の人間を
次々に殺害した人物
不死蝶は　この中にいる！
おい　マジかよ
紫紋さんたちを殺した犯人が
この中に？
フン　おもしろい
この中にいる真犯人とやらが
どんな工作をしたのか
ぜひ　詳しく話してもらおうか
いいでしょう
まず　るりちゃんが発見された朝
７時ごろ　竹蔵さんたちが
蝶塚の辺りを見回ったときに
死体が　なかったことから
犯人は７時から８時までの間に
るりちゃんを蝶塚に運んだと
俺たちは考えた
そして　深山さんを除く
屋敷のメンバー全員に
完ぺきなアリバイがあった
ああ　だから
そのアリバイを保ちつつ
死体を運ぶ方法を
そう考えているうちは
まだ犯人の手の平の上さ
何？
逆転の発想さ
そもそも　犯人は
あの朝　死体を運んでなかった
死体は最初から
あそこに　あったんだ
犯人は　奇想天外な魔法を使って
死体を一時的に消していたんだよ
そんな　バカな
明日の夕方まで待ってくれ
やってみせるさ
バカバカしい
死体を一時的に消す方法だと？
できるんだよ
この蝶屋敷に　ふさわしい
大胆な魔法を使って
これが　その魔法のタネだ
そんな枯れ葉が？
こんなモンで　どうやって？
枯れ葉が飛んだ！
どうして？
こいつは　枯れ葉なんかじゃない
何だ　木の葉蝶か
そう　カリマイナチウス
和名は　木の葉蝶
この蝶は羽を閉じると
枯れ葉ソックリになる
擬態という能力を持つ蝶なんだ
擬態？
そろそろ　魔法が解ける時間だ
蝶塚の枯れ葉の山が
これが　不死蝶が使った
死体隠しのトリックだ
だが　これだけの蝶が
どうして　そろって大人しく？
麻酔だよ
麻酔？
おそらく　あの夜
犯人は殺害した　るりちゃんを
すぐさま　蝶塚に運び
着物を着がえさせてから
麻酔をかけた木の葉蝶で覆った
朝の７時半ごろ目覚めるように
麻酔の量を調節してね
そして　見回りの竹蔵さんたちが
立ち去ったあと
その間　犯人は　みんなと同じ
行動を取っていればいい
竹蔵さんたちの証言で
犯人の死体移動の時間が注目され
容疑は　ただ１人
朝のアリバイのない
深山さんに向かう
こう考えると
犯人が　なぜ
るりちゃんの着物を
茶色から派手な青に
着替えさせたのかも説明できる
そんなことに意味があるの？
ああ　木の葉蝶が飛び去ったあと
なるべく早く誰かに
死体を発見してほしかったからさ
るりちゃんが着ていた
あの茶色っぽい着物では
枯れ葉の色と混ざって
発見が遅れる可能性がある
深山さんに疑惑の目を
向けさせるためには
彼にだけ　アリバイのない時間
全員の朝食が済んで
散り散りになるまでには
死体を発見してほしかったんだ
何ということだ
そこまで　犯人は
考えていやがったのか
だが　このアリバイトリックを
実行するためには
逆に　蝶屋敷ならではの問題点も
クリアする必要があった
それが　世界中で
ここにしかいない幻の蝶
この　黒死蝶の存在だ
思い出してほしい
舘羽さんと紫紋の死体が
発見されたときのことを
２人の死体には
びっしりと黒死蝶が群がっていた
黒死蝶は　死体に群がる習性を
持っているんだ
死体に群がる習性だと？
そう
蝶というのは
匂いに非常に敏感で
人間が気づきもしないような
匂いでも反応します
黒死蝶　つまり　夜光蝶の場合
確かに匂いに反応して
死んで
それほど　たたない死体でも
すぐさま　かぎつけて
飛んできますよ
そう　この蝶は
その奇妙な習性ゆえ
死の蝶として恐れられた
もし　この
死臭に敏感な蝶が
木の葉蝶に隠された
るりちゃんの体に
無数に群がってたとしたら？
それじゃあ　いくらなんでも
死体は竹蔵さんに
見つかっちまうじゃないか
第一　あのとき
蝶塚の上には　黒死蝶は１匹も
たかっていなかった
なぜ？
その答えも匂いにあるのさ
何だって？
この屋敷の塀には
黒死蝶を逃がさないために
塀の上に小さな穴の開いた
パイプを　めぐらして
そこから　黒死蝶が嫌いな匂いを
少しずつ出している
犯人は　その匂いを
るりちゃんの身につけることで
蝶が群がらないように
細工したんだ
おそらく犯人は
塀に　よじ登り
るりちゃんの着物に　その匂いを
タップリつけたんだろう
いったん　匂いが体についたら
風呂に入ろうが何をしようが
黒死蝶は１週間以上近づかないと
竹蔵さんは教えてくれた
つまり　犯人の体には
塀をよじ登ったときの匂いが
まだ　残っているはずなんだ
るりちゃん　舘羽さん
紫紋を殺害し
揚羽さんを
毒グモで襲った人物
それは　アンタだよ！
それは　アンタだよ！
小野寺将之
アンタこそ　この斑目家に
災いを　もたらしにきた
死の使い　不死蝶だ！
小野寺さんが？
不死蝶だ？
ふざけるな
バカも　休み休み言えよ
そんな蝶がバタついたぐらいで
殺人犯だと？
なら聞くが　以前　美雪が
るりちゃんの遺体発見現場にいた
見たことのない蝶のことを
知りたがっていたとき
なぜ　一般に知られている
木の葉蝶という和名ではなく
カリマイナチウスという
学名を教えたんだ？
アンタは　木の葉そっくりに
擬態する
この蝶の特徴を　あからさまに表す
「木の葉蝶」という名前を
知られたくなかったんだ
るりちゃんの死体を隠した
トリックを
俺たちに
気づかせないためにね！
フン　バカバカしい
こう見えても　僕は
蝶については
結構　勉強してるんだぜ
紫紋先生に
話を合わせるためにね
あのときだって
ちょっと前に読んだ本に
木の葉蝶のことが載ってたから
学名が頭に浮かんだだけさ
それに　この殺人の動機は
２５年前にあると言っていたが
それじゃ
僕が生まれる前じゃないか
そんな大昔に　一体　どんな恨みを
斑目家に持つって言うんだい？
この惨劇の元凶となった
２５年前の事件
それは　１人の青年が
ある貴重な蝶のサナギを発見し
それを
横取りされたことに始まる
青年の名は　須賀実
当時　山野教授の助手だった
その人物こそ
幻の夜光蝶の　本当の発見者だよ
そして
彼の発見を横取りした人物は
斑目紫紋
斑目先生が？
じゃあ　やっぱり　この事件は
自殺した須賀実の
復しゅうのために？
いや　それだけじゃない
この殺人の裏には
もっと激しい憎悪が渦巻いている
その憎悪の
本当のターゲットは
緑さん　あなたですよ
わ…　私が？
そう　でなければ
るりちゃんや　舘羽さんまで
殺される理由はなかった
ええっ？
あなたが斑目家にいる
そのこと自体が　彼にとって
もっとも耐え難い
裏切りだったんですよ
裏切り？
緑さん
あなたと須賀さんは　ある事情で
結婚を急いでいたそうですね
結婚の決まっているカップルが
式を急ぐ理由なんて
家の事情でなければ
妊娠か！
まさか…
小野寺将之は
緑さんと須賀さんの間に生まれた
子どもだったんだよ
そんな…
バカな
何を証拠に
証拠なら
ほら
コンタクトレンズ？
許せない　この殺人鬼！
るりちゃんを返してよ
まいったな
まさか　こんなガキに
ここまで見破られるとは
お前の言うとおりさ　俺は
須賀実と　そこにいる緑って女の
子どもだよ
徹
あなた　本当に徹なの？
やめてくれ
俺の本名は　小野寺将之だ
１２年前　育ててくれた
父方の祖母が亡くなって
俺は小野寺家に養子に入った
そして　２年前
名前を将之に改めた
それまでの自分と
決別するために！
俺は　富山県の山奥にある
須賀の家で
祖母と２人で暮らしてきた
祖母は控えめで
親父のことは　よく話してくれたが
ねえ　おばあちゃん
僕のお母さんは？
お母さんなんて…
お前に母親なんていないんだよ！
普段は穏やかな　祖母の顔が
このときばかりは
鬼のように変わり
俺は　ひと言も
言い返せなかった
祖母は新月の夜になると
必ず家を抜け出した
俺は　一度だけ　こっそり
後をつけてみたことがある
死ねーっ！
死ね　緑め　死ねー！
死んでしまえー！
緑…
緑って　誰？
緑
お母…　さん？
子どもながらに
うすうす　感づいちゃ　いたよ
祖母が呪っていたのは
自分の母親なんじゃないかってね
だが　なぜ祖母が
そこまで憎むのか分からなかった
３年前に
親父の遺書を読むまでは
実さんの　遺書？
３年前
空き家になっていた須賀の家に
俺は９年ぶりに訪れた
そこで　祖母の遺品の中にあった
親父の遺書を見つけたんだ
もう　おしまいだ
私が全身全霊をかけて
研究しつづけてきた
夜光蝶のサナギと研究そのものを
斑目紫紋に奪われた
ヤツは　この蝶の研究を
自分自身のものとして
学会発表の手続きを
取ってしまった
いや　それよりも
秘密にしてあった夜光蝶のことを
なぜ　ヤツが知っていたのか？
私が　このことを話したのは
ただ１人
緑だ
サナギが盗まれる少し前
私は　緑と斑目が
こっそり会っているのを
見てしまった
あの男は資産家だし
緑の実家は　借金を抱えている
何という　ひどい裏切りだ
そして俺は決心したんだ
何年かかっても
この　おぞましい蝶屋敷を
この手で抹殺してやる
親父から盗んだ研究の上に
あぐらをかいて生きてやがる
妖怪ジジイと
そのジジイの財産目当てに
親父と俺を裏切った　この女を！
違うわ！
私は　実さんの研究のことを
ひと言だって
紫紋に　しゃべりはしなかった
私が斑目家に嫁いだのは
実さんの研究を奪った斑目紫紋に
復しゅうをするため
そのために　私は
あの子たちを産んだのよ
私たちを産むことが復しゅう？
いいかげんにしろ
今さら　そんな言い訳を！
聞いてちょうだい
私が本当に愛した男は
須賀実　ただ１人
実さんとの間に生まれた
あなたのことだって
この２５年間
片時も忘れたことはなかったわ
実さんとは　私が八重島大の
医学部にいたときに知り合ったの
蝶のことを話すとき
彼は　まるで子どものように
屈託なく　楽しそうで
そんな彼を見るのが
私は　とても好きだった
そして　大学３年の夏
ほら　見てくれよ　緑
立山の万年雪の中から
この夜光蝶のサナギを
発見したんだ
うまくいけば
２００年前　絶滅した夜光蝶を
復活させることが
できるかもしれない
幻の蝶？
すごい…　信じられないわ
こーんな　うれしいことが
２つも重なるなんて
２つ？
この前　産婦人科に行ってきたの
そしたら　もう　３ヵ月ですって
３ヵ月って
たいへんだ
結婚式を早めなきゃ
来年まで待っていたら
子どもが産まれちまう
それから実さんは
とても張り切って
夜光蝶の研究に打ち込んだわ
私は　じゃましては悪いと
連絡を控えていたの
ところが…
幻の　夜光蝶のサナギを発見された
斑目紫紋さんです
いやあ
立山で　サナギを見つけたときは
驚きました
どうして…　そんなバカな
そんな　バカな！
その直後だったわ
実さんが　自殺したのは
私は　すぐ察しがついた
援助と称して
実さんに近づいた　あの男
斑目紫紋が
夜光蝶の研究を奪い
自殺に追いやったんだって
徹　母さんはね
あの人と２人で　紫紋に
復しゅうしてやるつもりだったの
私は　あなたを産んで
彼の実家に預けたあと
医学部の研究室に
こっそり戻ったわ
医学部の研究室？
私は　大学を辞める前に
研究室で
人工授精の研究をしていたのよ
人工授精？
以前　私は研究のために
実さんに
協力してもらったことがあるの
ある意味で
実さんは死んではいなかったのよ
そうか　だから血液型が
Ｂ型の紫紋から
Ａ型の揚羽さんは
絶対に生まれない
そんな…
それじゃ　俺が
殺したのは…
私　紫紋が死ぬとき
耳元で
ささやいてやるつもりだった
あの子たちは
アンタの子どもじゃない
アンタが殺した
須賀実の子どもよっ！って
それが…　それが
こんな
こんなことに
なってしまうなんて！
バカみたいだ　俺
ひとりで　勘違いして
あげく　自分の実の妹まで
手にかけて
俺　俺は…
さ　もういいだろう
とりあえず　署に来てもらおうか
小野寺！
徹！
徹…
やめてー！
小野寺
徹
救急車を！
その必要はないわ
みんな　徹のそばから離れて！
緑さん
徹を　こんなふうにしたのも
すべて　私のせい　私が
何もしてあげられなかったから
だから
この子の望んだことを
せめて　最後ぐらいは
かなえてあげたいのよ
お母さま
危ない！
徹が死んで罪を償うつもりなら
私も　この子と一緒に行くわ
ダメだ　緑さん！
そんなことしたって　誰も
何も　元に戻りはしないよ
でもね
生きることが死ぬことより
はるかに辛いこともあるわ
金田一君
でも…
いかん　火の回りが速すぎる
みんな　外へ！
イヤ　お母さま！
放して　お母さまが
揚羽さん
揚羽！
ごめんなさいね　せめて
せめて　あなただけでも幸せに
舘羽や　るりの分まで
そんなの　間違ってる
金田一　早く！
徹　もう　これからは一緒よ
ずっと　一緒よ
母さんが　一緒よ
私のせいだ
私は　知っていたんです
夜光蝶を発見したのが
本当は　須賀君だったのを
何だって！
あの日　私は用事があって
研究室に行った
そして
彼の発見した夜光蝶のサナギを
見てしまったんです
まさか…
紫紋さんに　須賀君の発見を
話してしまったのは
この私です
何で　あんな野郎に
悪気は　なかったんです
ただ　興奮して思わず
それが　こんな悲劇を…
チェッ
やり切れねえよ　ったく
あっ　見て！
夜光蝶が　火事で起きた
上昇気流に乗って
外へ逃げてく
そっか　結婚したんだ
揚羽さんと深山さん
あの２人なら
きっと　うまくやってくさ
でも　いいの？
だって　深山さんは
遠野さん…
遠野英治は悲恋湖で死んだの
そこにいるのは
まったく新しい人生を
踏み出そうとしている
深山日影と揚羽の２人
だろ？
そ　そうよね
そういえば
いつきさんが言ってたけど
夜光蝶の発見者が正式に
須賀実に改訂されたんですって
え？
学名も　ヤマトシモンチウスから
ヤマトスガチウスに
変更されるそうよ
山野教授が　あちこち駆け回って
実現させたらしいの
せめてもの罪滅ぼし　か
あ？
ハイ　あ！
よっ！
お前　どうして？
それがよお　コテージの改装が
予定より大掛かりに
なっちまってよ
しばらく　お前んとこに
やっかいになるわ
え？
な　お前よ
ちょっとばっか
事件を解決したからって
いい気になんなよ
どーせ　美雪と
まだ　チューもしてねえんだろ？
ほ　ほっとけ
ま　あたしが　いろいろ
女の子の心理を教えてやるよ
お前の　どこが　女の子なんだよ
はじめちゃん
アラ？
あ　美雪おねえちゃん！
これから　しばらく
はじめおにいちゃんの　おうちに
お世話になりまーす
どうぞよろしくお願いしまーす
ヘヘッ
最近　物騒な事件が多いよなあ
トップニュースはと
誘拐事件か
さらわれたのは　ナニナニ…
玲香ちゃんだって？
ウッソだろー
あ　驚いてる場合じゃない
犯人が身代金受け渡しに
指名してきたのが
この俺？
一体　どうなってんだ？
そして　次々と
難解な指示を出す誘拐犯
道化人形の正体は？
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿ええ　そうです
私の計画どおりに実行すれば
あなたの望みは全て　かなう
ただし　私は
直接は手を貸しません
ただ計画を立てて　さしあげるのみ
それが私の身上
では　ご健闘を祈ります
さて　いよいよだな
めくるめく
スリリングなショーの幕開けだ
玲香　玲香　玲香　玲香
玲香　玲香　玲香　玲香
玲香ちゃん　出てきてよ
ああ　玲香ちゃんだ
玲香ちゃん　玲香ちゃん
ごめんなさい　速水玲香ちゃんは
「はやみ」だけに
「はやみ」に帰りました
なーんちってえ…
ふざけんな！
うえ！フミ
このヤロウ
ちょっと　おい
痛え！
男の子でしょ　我慢しなさい
ごめんね　バイトとはいえ
私の身代わりなんか　させちゃって
安岡さん　もうちょっと
マシな仕事なかったの？
んなこと　言ってもねえ
いいんですよ
全然　気になさらなくて
この人　丈夫ですから
って　お前　まだ　いたワケ？
ハジメちゃん
新しい家族に
その言い方は　ないでしょう？
そうよ
私　玲香さんのファンなのよ
でも　知らなかったわ
ハジメ兄ちゃんが
知り合いだったなんて
ハジメ？
ひょっとして　君が金田一君？
え？ええ　そうすけど
君の噂は玲香ちゃんから
耳にタコができるくらい
聞かされてたぞ
や　やだ　成美さんてば
へ？いやあ　そうすかあ？
玲香ちゃんが俺のことを？
そんなに　うれしい？
し…　し…　しみる！
バカっぽい
よーい　スタート！
そなた　まだ
そのような所に　おったのか？
はよう　この屋敷から出て行け
イヤでございます
強情な
行けと言っておるのじゃ
やっぱ　玲香ちゃん
何着てもカワイイな
「そこで密偵の侍女がやって来る」
姫さま　姫さま！
大変で　ございます
あ　美雪
急にエキストラ役
頼まれたんだって
安岡ちゃん
いいじゃない　あの子
そうすね　監督
スカウトしちゃいましょうか？
美雪
いつの間にあんな　色っぽく…
金田一君
きゃ　やだあ！
カット　カーット
んもう
着物のスソが濡れちゃったわ
ああ！玲香ちゃんのナマ足
ああ
ああ…
いい加減になさい
素人相手に張り合ってどうするの
あんたのワガママが
どれだけスタッフに
迷惑かけるか分かってんの？
何よ
ブツことないじゃないの
口答えする気？大体　あんたの
その子供じみたところが
そんなに
いきり立つことないでしょ？
三田村さん
そこがウチの玲香の
いいところでも　あるんだから
ああ　社長！
社長って
誰？あのオバサン
鏑木葉子　玲香ちゃんが所属する
事務所の社長よ
どおりで　すげえ貫録
鏑木さん　あんた
その子　甘やかし過ぎじゃないの？
あら　そう？
そういう　あんただって
昔は　相当なもんだったわよ
まいったな
今日の撮影は
これくらいにして
明日にしましょ　ね？
速水さん　あんた
そんな
ワガママばかり　やってると
いつか　この世界で
やってけなくなるわよ
こわ
テレビで見るのと　えらい違いだな
ふーんだ　やなオバさん
三田村圭子ってキビシイ人なのね
玲香さん
ファンの方から　これを
わあ　きれいなバラ！
社長　あと　例の話を
そうそう　玲香　明日２時
弁護士と打ち合わせよ
いいわね？
はい！
じゃ　また明日
お疲れさまでした
玲香ちゃん　例の話って何？
実は私
「タロット山荘事件」のとき
いっぺんに身寄り
なくしちゃったでしょう
それで　鏑木社長が
「私の養女にならないか？」って
言ってくれたの
ええ！
玲香さんの
お母さんになるってこと？
社長は独身で子供もいないし
玲香ちゃんは　それでいいの？
私　お母さんなんて
ずっと　いなかったから
だから　うれしくて
一緒に暮らすのが楽しみで
ああ　そうか
玲香ちゃん？
明日の衣装合わせ　向こうで
衣装さんがお待ちかねだよ
はーい
あの鏑木って社長　見かけは
怖いけど　案外いい人だったのね
それは　どうかしら？
逆井さん
私は　この話
あまり賛成できないな
どうしてです？
玲香ちゃんは
あんなに喜んでるのに
彼女は　このプロダクションに移って
日が浅いから　まだ知らないのよ
知らないって…　何を
でも　彼女が鏑木社長の
数十億もの財産目当てで
養女になるんだったら
それも自業自得って
ことでしょうけどね
何言ってんすか
玲香ちゃんは　そんな子じゃない！
あら　気に障った？
ま　おかしな事件にでも
ならなきゃいいけど
事件て　どういうことです？
なーんか　やな感じね
ああ
考えすぎよ
それより　玲香ちゃんのサイン
ちゃんと　もらっといてね
玲香さん　どうもありがとう
何か悪いな　サインもらった上に
車で送って　もらっちゃって
いいの　金田一君たちと一緒で
楽しかったんだから
私こそ　ありがとう
これ　今日の　お礼
どうも
じゃ　また電話してね
どうしたの？ハジメちゃん
ん？
あ　いや　何でもない
じゃ　お休みなさい　安岡さん
お休み　玲香ちゃん
だ…　誰だ？あんた　何をする！
安岡さん！
玲香ちゃん　逃げるんだ　早く！
ああ！
早く　早く来て！
一体　何が起きたっていうの？
とにかく　落ち着かなきゃ
まず
部屋に帰ったら
警察と救急車を呼んで　それから…
金田一君
ああ？
気がついたかい　玲香ちゃん
安岡さん！
ここは？
ど…　どうして　こんな所に？
君たちは誘拐されたんだよ
この僕にね
誘拐？
だ…　誰なの？
「道化人形」
とでも呼んでもらおうか
道化人形？
ケケ…　よく撮れてる
この写真を見れば社長さんも
金を出す気になるだろう
ケケケ　逃げようなんて気を
起こさないでね
でないと
殺しちゃうよ
無精ひげ！ウゲゲ
僕は
こんな汚い感じが大嫌いなんだ
これで毎朝　必ず剃れ
分かったな？
ああ　はい　分かりました
でも　このママじゃ…
後で解いてやる
それまで　ここで
二人仲良く
いい子にしているんだな
二人一緒？そ…　それは困ります
なぜだ？
彼女のようなアイドルは
イメージが命なんです
たとえ誘拐事件でも
男と同じ部屋に監禁されたなんて
マスコミにバレたら
清純派のイメージが
安岡さん
ケケ　こんな時まで
タレントの人気の気配りとは
君はマネージャーの鏡だね
ああ！
君の　ご要望どおり彼女には
別の部屋をあてがってやろう
乱暴は　やめてくれ
さあ　来い！
怖い
私　どうなっちゃうの？
助けて　金田一君
ええ！何だって？
玲香ちゃんが誘拐された？
ええ
実は今朝　事務所のポストに
「道化人形」と名乗る人物から
手紙が届いてまして
道化人形？
玲香さんと
安岡マネージャーの身代金として
１億円を要求してきたんです
１億
手紙には
この写真も同封されていました
これは玲香ちゃんと安岡さん
どうしたの？ハジメちゃん
ピエロだ
ええ？
ほら
見てみろ　窓ガラスのとこ
ああ！
気持ち悪い
じゃあ　金田一君　コイツが
ええ　恐らく
玲香ちゃんたちを誘拐した犯人
道化人形なんだ
警察には知らせたんですか？
それが　警察に知らせたら
二人を殺すと
手紙に書いてありまして
じゃあ　犯人との交渉は？
これを　ご覧ください
これは…
俺に　現金の受け渡しを？
どうしてハジメちゃんが？
とにかく　お願いします
金田一さん
安岡は私の主人なんです
どうか助けてください
真奈美さん
私からも　お願いするわ
保之は
私の甥でもあり
たった一人の親族なんです
その上　一番大切な玲香まで
金田一さん
どうか　力になってください
お願いします
分かりました　玲香ちゃんは
俺にとっても大切な友達です
俺に出来ることなら何でも
私も行くわ！
むむ…
だって　ハジメ兄ちゃん一人じゃ
心細いもん
私が付いてて　あげなきゃ
あのな　遊びじゃないんだぞ
金田一さん
え？
お金は　すでに用意してあります
すごーい
あ？
さあ　金田一さんに
それを　お渡しして
はい
な…　何を
え？
うわあ
何をするんです？
ハジメちゃん？
何やってんのよ　アンタ
ほら　拾いなさいよ
まったく　しょうがないわねえ
お金を粗末に扱っちゃ
ダメでしょうが
え？あ…　あれ？
これは
新聞紙
そんな…
本物は上の１枚だけで
あとは新聞紙だ！
何？これ
札束の帯封に
黒い指紋が付いていたんで
まさかと思ったが
コイツは新聞紙を
切り揃えるときに付いた
インクだらけの手で封をしたから
指紋で汚れてしまったんだろ？
どういうつもりなんだよ？
社長さん
こんなの　犯人に渡したら
玲香ちゃんや安岡さんの命は
だって　もったいないじゃない
しゃ…　社長
どうか　お願いします！
ダメダメ
いくらウチの
稼ぎ頭の玲香のためでも
１億なんて大金　払えるわけないわ
何言ってんだよ　彼女が
殺されるかもしれないって時に
アンタ　玲香ちゃんを
養女にするんじゃなかったのかよ
養女？
ソレとコレとは話は別よ
ふざけるな！このヤロウ
お待ちなさい
あの子が急病で
撮影中止だって聞いたから
イヤミの一つでも
言ってやろうと思って来たら
三田村さん
その１億円
私が出そうじゃないの
で…　でも　いいんですか
１億もの大金を
もちろん　二人が無事　戻ったら
ちゃんと働いて返してもらうわよ
万一　死んでも　生命保険ぐらい
入ってるんでしょう
あ　ありがとうございます
確かに　ありがたいけど
ドラマの共演者ってだけで
何で　そんな大金を？
このことが美談として広まれば
そのうち　５千万クラスのＣＭが
何本も入るわ
そう考えたら
悪い話でもないでしょ
はあ　そこまで計算するとは
あ？
宅配便です
だ…　誰　あなたたち
お静かに
我々は　こういう者です
誘拐事件の通報を受けて
まいりました
け…　剣持のオッサン！
ありゃ　金田一？
どうして　ここに
誰なの？警察を呼んだのは
私よ
そんな
このことが犯人に知られたら
玲香ちゃんたちは
いいじゃないの
だから　こうして
運送業者に化けて
来てもらったんだから
でもですね
警部
録音装置の接続が完了しました
受話器を取った途端に作動します
よし　ご安心ください
我々がいることを犯人に
さとらせるようなことは
決して　ありませんから
本当に大丈夫なんでしょうね？
はい　ええ？
道化人形？
ええ　お金は用意してあります
はい　はい
あなたに話が　あるそうよ
もしもし
やあ　わざわざ　ご苦労
君が金田一君だね？
玲香ちゃんと安岡さんは
無事なんだろうな？
それは信用して　もらわないとね
それより　身代金の
受け渡し場所と方法だが
明日５月１９日午前７時
中原駅北口の公衆電話の所で待て
その時　お前は目印として
バラの花束を持って来るんだ
バラ？
そう　血のように赤いバラをね
全て計画どおりだったのに
まさか　あんなジャマが入るとは
なあに　ショーの本番に
アクシデントは付き物です
大丈夫　私の言うとおりに　やれば
一緒に　このアクシデントを
楽しもうじゃありませんか
はい　分かりました
ああ！
たとえ身代金をもらっても
犯人が
私たちを助けるとは限らない
何とか　今夜のうちに逃げないと
ああ！
何をしている？
言った　はずだよ
逃げたら殺すって
これが最後の警告だ
明日５月１９日午前７時
中原駅北口の公衆電話の所で待て
うまく　やれよ　金田一
あと２分で約束の７時ね
ハジメちゃん　頑張って
落ち着け　落ち着くんだ
俺がヘマをしたら　玲香ちゃんは
玲香ちゃんは
殺される！
そんなこと　絶対させるもんか
玲香ちゃんは　俺が必ず助け出す
ハジメちゃん
もしもし
金田一君だね
道化人形か　どこにいる？
その前に
一つナゾナゾに答えてもらおう
ナゾナゾだって？
「親」の隣は「人」
では「中」と「小」の間は何？
ふざけてる場合か
それより
身代金の受け渡しは
どうするんだ！
ふざけてなんか　ないよ
今のナゾナゾの答えが分かれば
僕の居場所が分かる仕組みさ
何だって？
そう簡単には　教えられないよ
その公衆電話に
盗聴器でも仕掛けられてたら
面倒だしね
それじゃ５分後　答えの場所で
くそ！
「親」の隣は「人」
では「中」と「小」の間は？
一体　何のことなんだ？
俺たちをあざ笑うかのように
次々と
取り引き場所を変える道化人形
お前の目的の身代金は
俺の　この手にあるんだぞ
それなのに　どうして　取り引きを
ジャマするようなマネをするんだ
考えるんだ　金田一ハジメ
指定の場所に　たどり着く方法を
玲香ちゃん　待っててくれ
必ず俺が君を助ける
ジッチャンの名に　かけて
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
速水玲香ちゃんと
所属する鏑木プロの
マネージャー
安岡さんが誘拐された
犯人は「道化人形」を名乗り
身代金１億円を要求
受け渡し人に俺を指定した
身代金を持って　俺は指示どおり
午前７時　中原駅前
公衆電話で待っていた
ナゾナゾに答えてもらおう
「親」の隣は「人」
では
「中」と「小」の間は　なあに？
ふざけてる場合か？
それより
身代金の受け渡しは　どうするんだ
５分後　答えの場所で
くそ！
うん？どうした
一体　何のことなんだよ
答えは
「親」の隣が
「人」だって？
もしかして「中」と「小」の間
「中原銀座」
そして
分かったぞ　あそこか！
犯人が身代金の
受け渡し場所を変更してきた？
まさか
警察を呼んだことを知って
そ…　そんな　それじゃ
人質の主人や玲香ちゃんは
ご心配なく　見てください
金田一君が今どこに　いるかは
彼に付けてもらった発信器で
手に取るように分かります
で…　でも
大丈夫ですよ　真奈美さん
ハジメちゃんなら　きっと
何とかしてくれます　きっと
間に合ったか？
「お客様で　金田一様」
「レジにお電話が入っております」
俺です
どうぞ
もしもし
「親指」の隣は「人差し指」
「中指」と「小指」の間は「薬指」
つまり　この「薬屋」だ
この程度のナゾナゾじゃ
君には簡単過ぎたかな？
そんなことより　早く　取り引きを
僕に指図するな！
全てを決めるのは　この僕だ
口答えするなら　二人は殺す
分かった
次は　どうすれば　いいんだ
目の前の通りを右に折れて
北へ２キロほど行くと
バスターミナルがある
そこで７時２０分発の
「宮ノ沢高原」行きのバスに乗れ
車内では　ずっと
進行方向　右手を見ていろ
いい景色が拝めるはずだ　フフ
さあ　急いだ方がいいよ
乗り遅れたら　後はない
あ！おい
７時２０分なんて
すぐじゃねえかよ！
北って
こっちか
今度は　どこへ
向かわせようってんだ？ったく
あれか？
「宮ノ沢高原」行き
どうやら　間に合いそうだ
ああ　くそ！こんな時に
ええい
こら　君！危ないじゃないか
何をやってるんだ？
ええい　放してくれ
ダメだと言ってるだろうが！
あのバスに乗らないと
ああ！乗らないと
全てが終わってしまうんだ
たー！
な…　何？
痛いな
フミ！
世話　焼かすなよな
何で　ここに
昨日　言っただろ　私も行くって
ほら！早く来いよ
おい！
うわー
フミ
危ない！
まさか…　そんな
生きとった！
助かった
うわー
金田一！
寿命　縮んだ
大丈夫か？フミ
ああ！そのバス
待ってくれえ
乗せてくれ！
ああ
心臓に悪いぜ　ったく
ああ　なんとか
間に合った
間に合った
え？うわー
お前　まだ　いたのか？
当り前だろ
私がいなきゃ　このバス
乗れなかったんだぞ
ハイ？
剣持警部
ん？
金田一君の発信電波が
突然切れました
故障したようです
何？
さっき　電車を避けたハズミで
発信器が壊れたんだ
くそ！
警察だ
さっき行ったバスを追ってくれ
でも遮断機が
ん　ええい！
頑張ってくれよ　金田一
人質二人を助けられるのは
お前しか　いないんだ
何　見てんの？
道化人形が
進行方向　右手を見てろって
言ってたんだ
ああ？
けど　一体
何のつもりで
あ？あれは
「今すぐ　バスをおりろ」
くそ！そういうことか
すいません
バスを止めてください
今すぐ　降ろしてほしいんです
ああ？ダメダメ
停留所でも　ない所に
止められないよ！
お願いします
緊急事態なんです
ハジメ！
ここに非常ドアがあるよ
お客さん
こらあ！
うわー
何てこと　すんだあ
バカ野郎！
だけど　こんな所に
何があるって言うんだ
ちゃんと　目　開けてる？
ああ？
山道を登ると
オオタキ川に吊り橋がある
そこに　８時３０分までに来い
あと１時間
あの道だな
この先は　俺一人で行く
お前は　ここにいて
後で追ってくる
剣持のオッサンに
この手紙を渡してくれ
イヤだ　私も行く
遊びじゃないんだ
オッサンたちの助けも
必要なんだよ
頼む　これが終わったら
ケーキおごってやっからさ
な？
チョコパも付けてくれる？
わ…　分かったよ
サクランボ　のせたヤツね
分かったよ
ケーキはイチゴがタップリ入ったヤツだよ
分かった　分かった
何でも付けてやる　だから
頼んだぞ　フミ
ハンバーグもね！
足が重くて上がらねえ
自分の足じゃねえみてえだ
吊り橋まで　あと３キロか
約束の８時３０分まで　あと…
間に合うのか？
いや　間に合わせるんだ
絶対に
ああ？うわー！
あ…　あ…　足が
ダメだ
とても　３キロの山道
歩き通せないよ
ごめん　玲香ちゃん
俺…
金田一君
ああ　玲香ちゃん
バカ野郎
こんな　とこで
あきらめて　どうすんだ
俺が行かなきゃ　玲香ちゃんは
足が使えないなら頭を使え
どうしたら指定された時間までに
吊り橋に
たどり着けるか考えるんだ
お前はジッチャンの孫だろ
川？そうか　よし！
イチかバチかだ
遅い　遅いぞ　金田一
後から来た俺たちが
先に着いちまったなんて
もしかして　何かあったのかな
まさか！
いや　金田一は　たとえ
何があっても　やって来る
必ず！
剣持警部
川を…
川だと？
ハジメ
おお　金田一！
な…　何てヤツだ
川の流れに乗って来やがった
何してたんだよ　ったく
ちょうど時間だ
何とか間に合ったな
来…　来たぞ
道化人形　出て来い
俺は来たぞ
約束の金は　ここにある
玲香ちゃんたちを返してもらうぜ
どこに　いるんだ？道化人形
出て来い！
姿を見せろ
うわー！
金田一！
うわー
金田一君
ハジメちゃん　ハジメちゃん
気がついたのね
美雪　ここは…
病院よ
一ちゃんが橋から落ちたところを
剣持警部に助けられたの
え？
やっぱり
私が付いてってやれば　よかった
ホントにドジなんだから
そうか
ど…　道化人形との取り引きは？
残念だが　身代金は
全部
川に　ぶちまけちまったんでな
今　鏑木プロに　みんな待機して
犯人からの再連絡を
待っているんだが
今のところ何も
なんてこった
警察に知らせたら
人質は殺すって言われてるのに
しかも　オッサンが
俺を助けるところを
道化人形に見られてたとしたら
くそ！玲香ちゃん
くそお
この音は
１２時のサイレンね
出るんだ
ああ　玲香ちゃん
大丈夫だったかい？
安岡さん
今日の取り引きは終了した
取り引き？
じゃ　じゃあ　取り引きは
うまくいったんだな？
それで俺たちを
帰してくれるんだな？
いや　取り引きは失敗した
何だって？
金の受け渡し場所に
警察が来ていたんだ
警察に通報したら
人質は殺すと脅してやったのに
あの鏑木葉子という女
お前らの命より
金の方が大事らしいな
ウソよ
そんなハズないわ！
社長は　そんな人じゃない！
いや
叔母さんは　そういう人だよ
安岡さんまで
俺は昔から　あの人のやり口を
イヤってほど見て来たから
分かるんだ
君を養女にする話も
ドル箱アイドルを逃がさないため
売れなくなったら　すぐ切り捨てるつもりだったに違いないんだ
そ…　そんな
まったく　残念だよ
せっかく　君たちを
無傷で帰すつもりだったのに
ああ
な…　何をする気だ
君たちに　もう用は　ない
恨むなら警察を呼んだ
鏑木社長を恨むんだな
ああ！
ま…　まさか
ああ…
さあ
次は君の番だよ
おいしい
まったく！
ここに　いると息がつまるわ
ホント
外の空気　吸ってくるわ
ハジメちゃん　大丈夫？
昨日から寝てないんじゃ？
寝てる場合じゃないさ
俺が橋から落ちて　まる１日以上
犯人から何の連絡も　ないなんて
まさか　玲香ちゃんたちの身に
ご…　ごめんなさい
よしましょう
悪いこと考え出したら
キリがないわ
どうぞ
もしもし
やあ　金田一君　元気そうだね
昨日は　どうなるかと思ったよ
そんなことより　次の取り引きを
残念だけど　次は　ない
何？
あの二人は　昨日　殺した
死体は捨てたよ
一人は森の奥
もう一人は
近くの橋の上からね
僕の言うことを聞かずに
警察を呼んだ罰だ
今頃　一人は　森で野犬のエサ
もう一人は暗く　よどんだ水の底で魚のエサになってるだろう
逆探知　出来たか？
ダメでした
ちょっと…
ハジメちゃん？
どうしたんですか？
やられたよ
人質は　すでに殺したそうだ
ええ！
ウソよ　あの人が死んだなんて
そんな
いやあ！
先ほど　アイドルタレントの
速水玲香さんが
何らかの刑事事件に巻き込まれた
という情報が流れてまいりました
ただ今　玲香さんの所属する
鏑木プロの前には
たくさんの報道陣が
つめかけております
うう　玲香
最悪の結果になりましたが
外にいるマスコミの対応　どうします？
しっ！分かってるわ
そのことは後で
あ　はい
ああ　玲香
ああ　どうして？
真奈美さん
せめて　あのお金が
犯人に渡せてたら　二人は
死なずに済んだんでしょうにね
そうよ　あんたのせいだわ
あんたが主人を殺したのよ
奥さん　落ち着いて
あれは事故で
事故ですって？
橋の踏み板が外れたなんて
言い訳になんか　ならないわ
ギャーギャー騒がないでよ
外の記者連中に聞こえるでしょう
あんたが
真奈美さん　少し奥で休みましょ
あんたのせいよ！あんたが…
主人を返してよ！
ハジメちゃん
すまん　金田一
俺がお前を助けるとき
ウカツに犯人に姿を見せなけりゃ
オッサンのせいじゃないよ
全部　俺のせいだ
俺が　あんな…
今にも落ちそうな吊り橋に
勇んで足を踏み入れなければ
俺のせいで
玲香ちゃんは…
もう　やめて！ハジメちゃんは
一生懸命　頑張ったじゃない
あんなにボロボロになるまで
よく頑張ったよ
だから　だから　もう
自分を責めないで　お願い
美雪　そうだ
そうだよな　危なく
あきらめちまうトコだった
誓うぜ
この目で確かめるまでは
玲香ちゃんのこと　あきらめない
玲香ちゃんたちは
まだ生きてるってな
ハジメちゃん
そして
道化人形は
必ず　この手で捕まえる
ジッチャンの名に　かけて！
金田一　お前って
何て　すごいヤツだ
だったら
いつまでも　くっついてないで
とっとと　手掛かり
調べ直したら　どうなのよ
ああ！
よっしゃあ　金田一
どうだ　金田一
犯人からの電話のテープを聞いて
何か手掛かりは　あるか？
ああ
ここんとこ　聞いてくれ
もう一人は近くの橋の上からね
野犬のエサ
もう一人は
暗く　よどんだ水の底で
魚の餌になってるだろう
近くの橋って
犯人のアジトは川の　そばか
いや　川なら「暗く　よどんだ
水の底」なんて言い方するかな
川は流れるってイメージが強くて
よどんでは　いないと思うぜ
と　なると
死体を捨てたと言っている場所は
湖なんじゃないか
湖？
送られてきた
脅迫状の中の写真には
よく見ると太陽の光が
写ってるんだ　つまり
玲香ちゃんが誘拐された翌日
５月１８日の日の出のあと
５時半以降に撮られたんだ
そして
脅迫状は同じ日の
朝８時半には届けられていた
てことは　犯人のアジトは
都内から片道３時間以内で行ける
橋のかかった湖ってことか？
ああ　それに該当する湖は
警部！分かりました
該当する湖は
山梨県の河口湖です
河口湖なら　高速を使えば
３時間弱で行けるぞ
今は地元警察が辺りを
大々的に捜索しているからな
大丈夫　絶対見つかる
玲香ちゃんたちは必ず生きてる
必ず！
あの二人は昨日　殺した
玲香ちゃん
生きていてくれ　生きて
オッサン　止めてくれ！
何だ？おい
どうした？金田一！
玲香ちゃん
目を開けてくれ
玲香ちゃん　玲香ちゃん！
玲香ちゃ―ん
玲香ちゃんを
あんな目に遭わせた道化人形
俺は絶対　許さない
それにしても　この誘拐
本当に身代金が目的なのか？
イツキさんの調べに　よれば
鏑木プロの人間には
かなり複雑な裏がある
この事件には　もっと別の
目的が隠されているんじゃ…
オッサン　今のテープ
道化人形　お前の正体が見えたぜ
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿もしもし
やあ　金田一君
元気そうだね
なに？
あの２人は昨日　殺した
玲香ちゃんと安岡マネージャーを
誘拐した道化人形は
２人の殺害を告げてきた
俺たちは生存を信じて
犯人のアジトを追跡し
河口湖へ向かったが
頭頂部から後頭部にかけて
激しく強打した跡が見られます
ですが　幸い
急所も外れてましたし
命には別条ありません
まっ　疲労により体力が
著しく低下していますが
ああ　それも点滴と
十分な睡眠を取れば
問題ないでしょう
ありがとうございます
じゃ　お大事に
ありがとうございました
よかったあ
はじめちゃんのおかげだよ
だって　あんなに頑張ったんだもの
きっと　はじめちゃんの思いが
通じたんだわ
何言ってんだよ
俺は身代金の受け渡しに
失敗してんだぞ
そうよ
あのとき失敗しなかったら
玲香さんは　もーっと早く
助かってたんだから
お前なあ　たまには
優しいこと言えないのか？
大変だったのね
え？
三田村さん
はい　差し入れ
ありがとう
あー　おいしそうな　おにぎり
三田村さん　何で
玲香ちゃんのことを　そこまで
きゃー
ああ？
どうした　玲香ちゃん
金田一君　ここは？
病院だよ
玲香ちゃん
道で倒れているところを
発見されたんだ
私　助かったの？
ずっと怖い夢　見てたの
夢の中でも道化人形に撃たれて
大丈夫
もう心配しなくても大丈夫よ
それもこれも　みーんな
はじめ兄ちゃんのおかげなのよ
え
これで満足？
ありがとう　金田一君
うん？
わりと元気そうで安心したわ
じゃ　私は　これで帰るわ
どうして三田村さんが　ここに？
玲香ちゃん　あとで
あの人にお礼　言っときなよ
玲香ちゃんたちの身代金の１億円
鏑木社長が出し惜しみしたんで
全額　三田村さんが
用意してくれたんだ
ええ？
あの人が社長の代わりに
身代金を？
おにぎりまで
作ってきてくれたのよ
玲香さんも　どうぞ
ありがとう
おいしい
とっても優しい味がする
おっさん
気分は　どうですか？速水さん
よかったら　お話を
伺いたいんですが
５月１７日の夜
マンションで襲われた私は
目覚めると安岡さんと一緒に
山荘の中にいました
窓から朝日が見えたので
次の１８日の
午前５時半ぐらいだと思います
無精ひげ　うえー
僕は　こんな汚い感じが
大嫌いなんだ
道化人形は異常な潔癖症で
安岡さんのひげを毎日そるよう
命じていたのが印象的でした
私　怖くて　その日の午後に
逃げ出そうとして
道化人形に見つかって
そして１９日の昼１２時に
目覚めると
犯人は身代金　受け渡しの
失敗を告げ
安岡さんに銃を突きつけました
そして　私にも
くっそお　弾切れか
それからあとは
何も覚えてなくて
きっと犯人は
君が死んだと勘違いして
森の中に放置したんだ
もうろうとした意識の君は
助かりたいという本能だけで
山中を　さまよったんだろう
そして犯人は
丸１日経った２０日の午後
電話で人質の殺害を告げてきた
それにしても　よく頑張ったよ
こんな　やわな靴で
２４時間以上も山の中を
この３日間　さぞ怖かったろうにな
ううん　私　平気でした
ええ？
あ？
絶対　金田一君が
何とかしてくれるって
信じてましたから
剣持さん　ちょっと外で　お話が
はじめちゃん
玲香ちゃんをお願いね
え？
ああ　いやあ
まだ　話が済んでないんだ
剣持さん
玲香ちゃん　今日だけ特別よ
何だあ？美雪のやつ
でも　思ったより
玲香ちゃんが元気で
ホントによかった…　え？
怖かった
本当は殺されるかと思った
玲香ちゃん
金田一君　そのケガ
ああ　いや　大したことないよ
身代金　受け渡しのときに
犯人に振り回されてさあ
金田一君　ありがとう
れ…　玲香ちゃん
泣きたいほど怖かったくせに
みんなの前では元気に振る舞って
金田一君　私のために
こんな傷だらけになって
ごめんね
あ　いや　俺
ありがとう
玲香　意識は戻ったのかい？
社長
よかったわ
どんなに心配したことか
警察に通報したの
社長なんですか？
そ…　それは
私たちだけじゃ
どうしようもないでしょ
だから
そうですとも
社長は玲香さんのことが
心配だからこそ警察を
じゃあ身代金の１億円を
社長じゃなく
三田村さんが出したのは
どうして？
どうしたのよ　玲香
私の話も聞いてちょうだい
寄らないで
あなたのせいで
安岡さんは殺されたのよ
あなたの顔なんか見たくないわ
帰ってよ
玲香
そうか
しかし　玲香ちゃんも色々あるよな
事務所社長の
養女になるかと思えば
今度は誘拐
養女の話なら　きっと　ご破算だぜ
ええ？そりゃ　本当か？
随分おいしい話を
蹴っちまったなあ
鏑木社長の何十億って
資産の他にも
年収１０億と言われる
鏑木プロ　社長の座も
転がり込んでくるってえのによ
社長の座か
まっ　あの　ごうつく社長のことだ
なーんか裏が
あったんだろうけどな
ところで俺に用って一体？
ああ　そうだ　いつきさん
大至急
調べてほしいことがあるんだ
またか？
この事件に関わった全員の
裏の人間関係について
出来る限り知りたいんだ
裏の人間関係…
おお　金田一
あ　おっさん
安岡保之の死体が発見されたぞ
やはり河口湖だ
ええ？
あなた
安岡さんの死体には
至近距離から
５発　弾丸が撃ち込まれていた
恐らく即死だろう
誘拐に失敗したからって
こんな無残な殺し方しなくても
いいだろうによ
さ　行きましょう
あとは警察がやってくれるわ
鏑木社長
たった１人の親戚の
安岡さんの死体を見ても
顔色ひとつ変えないなんて
さっき　玲香さんには
あんなに心配そうにしてたのに
それは　お芝居
今のが本当の社長の姿なのよ
逆井さん
社長
昔から甥っ子の安岡さんには
手を焼いていたしね
厄介者がいなくなって
せいせいしたって
思ってるんじゃないかしら
手を焼くって
安岡さんが一体　何を？
まあ　色々あったのよ
昔も今もね
そんな…　厄介者なんて言ったら
奥さんの真奈美さんが可哀想だわ
それもどうかしら
え？
とにかく玲香ちゃんが
鏑木社長の養女話を蹴ったのは
正解よ
あの人の娘になったら
この先ずっと　こき使われて
いずれポイだもの
あの人　何か　やな感じ
よーし　分かった
金田一　犯人のアジトも
見つかったぞ
ええ？
おっさん　変だと思わないか？
何が？
安岡さんには５発も撃ち込んで
わざわざ　この湖にまで
捨てに来たのに
玲香ちゃんについては
生死の確認すらしなかったんだぜ
そう言われれば確かに
本当に　この事件は身代金目的の
誘拐事件だったんだろうか
なに？
だって
本当に身代金が欲しいなら
取引場所を　なぞなぞで
指定したりするだろうか
親の隣は人
では中と小の間は　なあに？
ぎりぎりで間に合わなかった
かもしれないバスに
乗せようとしたり　ガードレールに書いたメッセージで
指示を出したりするだろうか
考えてもみてくれ　もし俺が
なぞなぞを解けなかったら？
指定のバスに乗り遅れたら？
メッセージを見逃したら？
犯人は　どうする
つもりだったんだ？
取り引きが失敗したら
犯人は１円の得にもならないのに
まるで俺が失敗するように
仕向けていたみたいじゃないか
ホントだ　確かに　それって変よ
お金が欲しくて誘拐したのに
しかし
犯人の目的が
身代金じゃないとすると
ヤツは一体　何を考えて
こんな…
分からない　けど
この誘拐事件の裏には
きっと別の大きな目的が
あるんじゃないのか
一見　身代金誘拐が
失敗したように見せかけて
実は　すべて
犯人の仕組んだ計画どおりに
進んでいるように
思えてならないんだよ
もう１度　最初から洗い直すって
１度聞いた犯人からの
電話なんか聞いて
意味あるの？
ダメだあ
何度聞いても
何も浮かんでこないや
剣持さんから　ここだと聞いてな
色々　分かったぜ
まず　殺された
安岡マネージャーだが
こいつ　とんでもねえ　たらしだぜ
たらし？
あんな美人の奥さんがいながら
浮気ばかりして
女のトラブルが
絶えなかったんだと
三田村圭子とも
ウワサんなってたしな
え？三田村さんと安岡さんが？
写真週刊誌のスクープ記事だ
三田村の密会相手の
某芸能プロマネージャーってのが
安岡のことだったんだな
何をしてたか　はっきりしねえが
その後も２人は隠れて
何回か会ってたらしい
真奈美さんは
そのこと知ってたの？
ああ　だが　彼女は
安岡に恩を感じてたんで
責めることができなかったらしい
恩って？
彼女は７年前のタレント時代に
暴漢に襲われたことがあるんだ
そのとき　失意のどん底にいた
彼女の力となってやったのが
安岡らしくてな
へえ　あの人　女優さんだったんだ
まっ　浮気されて
平気なヤツはいねえ
内心　腹に据え兼ねてたかも
しれねえがな
安岡のヤツは
事務所でも評判が悪くて
１年前　鏑木プロの株を買い占めて
会社乗っ取りを
画策したことまであるそうだ
乗っ取り？
それまで　おいっ子だと思って
大目に見ていた鏑木社長も
カンカンだったそうだ
逆井さんは？
ああ　ヘアメイクの逆井成美か？
彼女の身内が
去年　事故に遭ったらしくてな
その入院費とかで
相当　金に困ってたようだ
鏑木社長にも
借金を申し込んだらしいが
断られて随分もめたらしい
うーん
それと社長秘書の小渕沢だが
実は２年前　大手プロダクションに勤めてたとき
失踪してる
え　失踪？
詳しい事情は
誰も知らねえみてえだがな
それが３ヵ月前に
ひょっこり　鏑木プロに現れて
社長に気に入られたらしい
とまあ　俺が調べたのは
こんなとこだ
ありがとう　いつきさん
どうだ？
何か解明されそうか？
あ　いや　もう少し
もう少し　手掛かりがないと
奥さん　落ち着いて
あれは事故で
事故ですって？
何だ？これ
ほら
事務所で　はじめちゃんが
真奈美さんに突き飛ばされたとき
あのとき　電話機が落ちた拍子に
事務所の中の会話が
録音されてたのか
なっ…　何だって？
まさか
こいつは
あああ　こんな傷んだロープじゃ
切れたのもムリないわな
金田一　何で　そんな板なんか
調べてんだ？
何でって？
ダメだ…　あ？
やっぱり　そうか
あ？
なに？
思ったとおりだ
何が分かったの？はじめちゃん
おっさん
やはり　これは　ただの
営利誘拐事件じゃなかった
裏に　もっと複雑な筋書きが
張り巡らされていたんだ
複雑な筋書きだと？
玲香ちゃんたちを誘拐し
安岡さんを殺害した犯人
道化人形は　この事件の
関係者の中にいるんだ
だがな　金田一
安岡は５月１９日の昼には
殺されてるんだ
え？
その５月１９日には
関係者全員が
東京の鏑木プロ事務所にいた
しかも　朝の６時から午後３時まで
誰１人　事務所から
出ていないんだ
つまり　全員にアリバイが
成立しているんだ
それなのに　関係者の中に
犯人がいるって言うのか？
高速でも片道３時間以内
１００キロ近くも離れた
山荘にいた安岡を
どうやって殺せるって言うんだ？
そうだよ
こんな所まで　みんなを
引っ張ってきてさ
はじめちゃん　ホントに
犯人の目星がついたの？
１００キロ近くの距離を
一瞬でゼロにしてしまう
そんな悪魔のようなトリックが
あるはずなんだ
玲香ちゃん　もう１度
よく思い出してほしいんだ
犯人が安岡さんを殺したのは
本当に１９日の
お昼の１２時頃だった？
ええ　外は明るかったし
お昼のサイレンも聞こえてたわ
それに
今日の取り引きは終了した
取り引きがあったのは
１９日でしょ？
くそお　じゃ　どうやって　犯人は
山荘の安岡さんを
殺すことができたんだ？
ねえ　これ　玲香さんが
誘拐されたとき履いてた靴？
え？ええ　泥だらけだったのを
付き人の方が
きれいに磨いてくれたのよ
ふみちゃん
それが　どうかしたの？
だって　おかしいよ
丸１日　山を歩いたから
あんな泥だらけん
なったはずなのに
ほら　１つも傷がついてないよ
ああ？あ…
はじめちゃん
これは
確かに　お昼のサイレンが
聞こえるわね
１２時きっかりよ
ダメダメ
そこらじゅう聞いて回ったが
ここのサイレンは
毎日　昼１２時きっかりだ
他の時間に鳴ったことは
１度もないってよ
くそっ
道化人形の正体は
もう分かってるのに
どうやったら　このアリバイを
崩すことができるんだよ
そう焦んなって　金田一
とりあえず戻ろう
昨日は家へ帰っとらんのだろ？
顔でも洗えば
さっぱりして　いい考えが
出てくるかもしれんしな　うん？
ん？
そういう　おっさんだって
ヒゲぼうぼうで泥棒みてえだぜ
しょうがねえだろ
捜査本部に詰めっきりだったんだ
無精ヒゲぐらい
あ…　あっ
何だよ？
はっ
どうした？金田一
どうしたの？はじめちゃん
おっさん　確か犯人は
安岡さんにヒゲをそるように
電気カミソリを渡したって
言ってたよな？
ああ　極度の
潔癖症だったらしいな
そのヒゲ　もちろん
残ってるよな？
これが安岡が使った
電気カミソリと
この中に入っていたヒゲだ
おっさん　虫メガネねえかな？
虫メガネ？どうしようってんだ
虫メガネなんかで
ほら
ありがと
やっぱり　そうか
やっぱりって？
何か分かったのか？金田一
ああ
俺たちは道化人形の
仕掛けた巧妙なワナに
まんまとハマってたんだ
犯人が俺を引きずり回した理由も
安岡さんの死体だけ
湖に捨てたことも
玲香ちゃんの傷のない靴も
安岡さんのヒゲのことも
これで　すべてが
１つに　つながった
はじめちゃん　それじゃ
謎は　すべて解けた！
どういうことなの？私たちを
こんな所に集めたりして
皆さんに集まってもらったのは
他でもありません
この誘拐事件の真実を
知ってもらうためです
真実？どういうこと？
つまり　この事件は
単なる営利誘拐なんかじゃ
なかったってことです
ええ？
犯人の目的は　もっと別のところにあったんだ
な…
そう
この事件は犯人の
悪魔の知恵が生んだ
巧妙な計画犯罪だったんだ
そして　玲香ちゃんたちを誘拐し
安岡さんを殺した犯人
道化人形は
この中にいる
謎は　すべて解けた
身代金　受け渡しに
ムリな条件で
俺を引きずり回した道化人形
お前の正体も
完璧だったアリバイ工作の手口も
この小さな証拠で
明らかになったんだ
でも　この犯罪の裏に潜む
もう１つの影
あいつが　この誘拐に
絡んでるとしたら
この事件　まだ終わっていない！
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
玲香ちゃんと安岡マネージャーを
誘拐した道化人形は
身代金の受け渡しに
失敗したことを理由に
安岡さんを殺害した
だが　俺には　この事件が
ただの営利誘拐とは思えなかった
そう　この事件の裏には
巧妙に計算された
別の目的が隠されていたんだ
道化人形は　この中にいる
え？
この中に道化人形が？
ふん　バカバカしい
思い出してちょうだい
身代金受け渡しの日のことを
あなたが中原駅で
犯人と電話している時
私たちは全員ここに
待機していたのよ
この中に犯人がいるなんて
不可能だわ
確かに不可能だ　でも
犯人がもう１人いたとしたら？
もう１人の犯人？
共犯者がいたって言うの？
その共犯者こそ　玲香ちゃんと
一緒に誘拐され
道化人形に殺された被害者
マネージャーの安岡保之本人さ
何ですって？
保之が共犯者？
そんな　安岡さんが犯人だなんて
「ハヤミレイカ」
道化人形の声！
そう　こうやって
ボイスチェンジャーを使えば
１人が動けない時でも
もう１人が道化人形となって
電話をかけることができる
「１億円用意しろ」
つまり　この事件は
安岡と道化人形が２人で
仕組んだ狂言誘拐だったんだ
どうして　保之は
そんなバカなことを
あなたと玲香ちゃんの養子縁組を
ぶち壊すためですよ
何ですって？
安岡は
鏑木社長のたった１人の親戚だ
ゆくゆくは社長の座も財産も
全部自分が受け継ぐもんだと
思っていたんだろう
ところが　鏑木社長が玲香ちゃんを養女にすると言いだしたんで
やつは焦った　ヘタに口出しすれば会社乗っ取り未遂事件以来
ただでさえ
よく思われていない自分は
鏑木プロから追い出されかねない
そこで自分の仕業と気付かれずに
養子縁組を壊す方法を考えた
それが今回の狂言誘拐なのね
そう　恐らく安岡は
鏑木社長が身代金を
出し惜しみすると確信していた
多分　偽の札束を用意することまで予想していたんだろう
そこで
わざと　その偽金を受け取り
それを玲香ちゃんに見せることで
社長の冷酷な守銭奴ぶりを
彼女に思い知らせ
玲香ちゃん自身が
養女の話を蹴るように
仕向けるつもりだったんだ
ところが　ここで
ハプニングが起きた
身代金のことを
たまたま知った三田村さんが
本当に１億円を
用意してしまったんだ
そこで安岡たちは計画を変更し
俺が身代金運搬に
失敗するように仕組んだ
そうだったのか　それで
あんな無茶な要求を次々と
ああ　結果的にその計画は成功し
俺は　つり橋から落ちて
取り引きは中止になり
社長が警察を呼んでいたことを
玲香ちゃんに教え
彼女の社長に対する信頼を
ぐらつかせることにも成功した
うまく行った　後は解放された後
偽金のことを玲香が知れば
養女の話は…
だが　ここで安岡自身にも
思いもよらぬ展開が待っていた
おい　何をする気だ？
君たちに　もう用はない
まさか…
じゃあ　安岡さんは共犯者に
裏切られて…
恐らく共犯者は最初から安岡を
殺すつもりだった
一見　取り引きの失敗を理由に
犯人に
殺されたように見えた安岡の死は
本当は　ここにいる共犯者
道化人形によって
二重に仕組まれた
計画殺人だったんだよ
でも待って　安岡さんが山荘で
殺された５月１９日のお昼にも
ここにいる全員が鏑木プロに
いたはずじゃ…
そうよ　なのに　どうやって
山荘の安岡さんを殺せるの？
それに　ここから河口湖までは
高速でも片道３時間は
かかるんじゃ…
ここにいる人間が保之を
殺せるわけないじゃないの
どうやら　ここまでのようですね
さすがの金田一君も
私のアリバイトリックは
見抜けなかったようだ
そのアリバイトリックも崩したよ
ええ？
これは玲香ちゃんの証言を
元に作った
今回の事件のタイムテーブルだ
玲香ちゃん　悪いけど
事件のおさらいをしてくれないか
ええと　あたしは５月１７日の夜
マンションに帰った時
犯人に襲われて
１８日の明け方まで気を失ってたの
その日の夕方　逃げ出そうとしたら
道化人形に見つかって
また気絶してしまって
次の日のお昼のサイレンで
目覚めた後
安岡さんが道化人形に…
そして次の日　５月２０日の昼に
犯人から
玲香ちゃんと安岡を殺したと
電話が入り
夕方　玲香ちゃんが発見された
確かに　安岡さんが殺された１９日のみんなのアリバイは完ぺきだ
だが　もし　このタイムテーブルが
間違いだとしたら？
どういうこと？はじめちゃん
例えば　１８日の夕方に山荘から
逃げ出そうとした玲香ちゃんが
犯人に気絶させられてから
次にお昼のサイレンで
目覚めるまでの間に
本当は　もう１日
あったのだとしたら？
それじゃあ　金田一
ああ
玲香ちゃんが目覚めたのは　身代金取り引きのあった１９日じゃなく
それから更に１日たった
２０日の昼だったんだ
ええ？
恐らく気絶した玲香ちゃんに
薬でも嗅がせていたんだろう
でも　玲香ちゃんは
１９日に目覚めたって
ああ　しかし玲香ちゃんの記憶が
道化人形によって
ねじ曲げられたものだとしたら
ええ？
そういえば…
今日の取り引きは終了した
あたしが１９日だと思ってたのは
道化人形が「今日が
取り引きの日だ」と言ってたから
そう　それこそ　犯人の
狙いだったんだ
安岡を殺した日を
玲香ちゃんに１９日と思わせ
後で　そう証言してもらう
犯人自身は　その１９日に
警察や　みんなと一緒に
過ごしていたわけだから
完ぺきなアリバイが
成立するってわけだ
じゃあ　２０日に玲香ちゃんが
見つかった時って
ああ　本当は安岡が殺されてから
６時間か　そこらしか
たってなかったはずだ
そんな…　じゃあ　彼女の
あのボロボロの格好は？
玲香ちゃんが丸一日
歩きまわったと
俺たちに思わせるために
犯人がやったことさ
犯人は安岡に５発も撃ちこんで
弾を減らした後
残った１発をわざと外して
弾切れと称して　彼女を
殴って気絶させた
そして　彼女の体中に
泥や　ひっかき傷をつけ
丸一日　森をさまよったかのように偽装し　山道に置き去りにした
こうして　犯人は　玲香ちゃんの
記憶のタイムテーブルを狂わせることで
安岡殺害の鉄ぺきのアリバイを
手に入れたんだ
フミが発見した玲香ちゃんの靴が
泥を落とすと　傷一つなかったのもその証明さ
お手柄ね
えへへ
しかし　靴に傷がないことは
玲香さんが森の中を
歩いていない証明にはなっても
君の言うトリックが行われたという
証拠にはならないんじゃないのか
そうよ　アリバイトリックが
行われたという
確実な証拠は何もないわ
証拠なら　ある
オッサン
ほらよ
この電気カミソリの中にね
その中に証拠があるですって？
どういうこと？
なぜ道化人形は安岡に
ヒゲをそるように命じて
わざわざ電気カミソリを渡すなんて
不自然なことをしたんだ？
そうか　言われてみれば
潔癖症だってだけじゃ
どうも納得いかないよね
あっ　もしかして
ヒゲをそらせることがトリックを
成立させるカギだったの？
その通り　もし安岡が
ヒゲをそらなかったら
丸一日たった２０日に
目を覚ました玲香ちゃんに
２日分伸びたヒゲを
さらすことになる
ああ！
２日も　そらなければ
ヒゲの濃さで時間のずれに
気付かれる可能性があったんだ
なるほど　だから　やつは
ヒゲソリなんかを
ところで　このトリックでは
１９日に道化人形は事務所で
みんなと一緒だったため
その日　安岡は　一日中
薬で眠らされていた玲香ちゃんと
一緒に山荘にいたことになる
はたして　安岡は　この日の朝も
きちんとヒゲをそっただろうか？
そう　山荘で１人っきりの安岡は
誰にも会わない　その日ばかりは
ヒゲをそるのをサボっちまったのさ
そのため　１日分伸びたヒゲと
２日分伸びたヒゲの長短２種類の
ヒゲが残っちまったんだ
これが玲香ちゃんに空白の１日を
証言させるためのアリバイトリックを
崩す証拠になるとも気付かずにね
ほんとだわ　長いヒゲと
短いヒゲが　ちゃんとある
でも　これだけじゃ　まだ　この中に
犯人がいるっていう
証明にはならないわ
そうね　私たちも犯人の可能性が
あるってだけで
他に犯人がいても　おかしくないわ
確かに　今までの推理だけじゃ
犯人の顔は浮かんでこない
そこで　もう１枚カードが
必要になってくる
その切り札は　これだ
このカセットテープが　この中にいる
道化人形の正体を教えてくれる
これは身代金受け渡しが
失敗した翌日
道化人形から「人質を殺した」と
告げられた後の様子が
偶然　録音されたものだ
あの時の会話の中で　犯人は
思わぬところで
ボロを出していたんだ
あれは事故で…
事故ですって？
橋の踏み板が外れたなんて
言い訳になんかならないわ！
ギャーギャー騒がないでよ
外の記者連中に聞こえるでしょ
あんたが…
真奈美さん　少し奥で休みましょう
あんたのせいよ　あんたが…
すみませんでした
あの時は気が動転してて
分からないわ　こんなやり取りの
どこに犯人の手掛かりが…
あるんですよ　今の会話の中で
犯人しか知らない事実を
口走った人物がいる
その人物こそ　今回の
誘拐殺人事件の犯人
道化人形　それは
殺された安岡保之の妻
安岡真奈美　あんただ
何ですって？真奈美さんが？
安岡さんを殺した犯人？
ええ？
バカなこと言わないで
どうして私が主人を
さっきのカセットの中で
あんたは　こう言ってたんだ
橋の踏み板が外れたなんて
言い訳になんかならないわ！
それが何なの？あなたが
つり橋から落ちたことなんて
みんな知ってたじゃない
じゃあ　聞くけど
俺がつり橋から落ちた原因が　橋の踏み板が外れたからだってことを
何で知ってたんだ？
それは…
警察の人が　そう言ってるのを
たまたま聞いたのよ
あなたが　つり橋を渡ろうとして
踏み板が外れたって
今の言葉で完全に墓穴を掘ったな
ええ？
警察が　そんなことを
言うはずがない
なぜなら　俺が落ちたのは
踏み板が外れたからじゃなく
古くなって朽ちかけてた
つり橋のロープが
俺の重さで切れたのが
原因だったんだ
鑑識の結果　落ちたつり橋の
踏み板の中に
明らかに人の手によって
加えられた切れ込みが見つかった
この踏み板の仕掛けこそ
取り引きの失敗を狙って
あんたと安岡が
俺に仕組んだワナだったんだ
取り引き当日の１９日
俺が　つり橋から
落ちたと聞いたあんたは
てっきり　自分のワナが
うまく働いたのだと思い込み
つい「踏み板が外れた」なんて
口走ってしまったんだ
もう言い逃れはできないぜ
これでも　まだシラを切る気かい
真奈美さん
ちっ　バカめが
こんなつまらないミスで
私の完ぺきな芸術的犯罪に
傷をつけてくれるとは
何てことかしら
ヒゲといい　踏み板といい
最後まであの男に
足を引っ張られるなんて
真奈美さん　どうして
ご主人の安岡さんを？
ご主人ですって？あのクズ男が
私に何をしたのか
話してあげましょうか
７年前　鏑木プロダクション所属のアイドル歌手だった私に
社長の甥の安岡は
しつこく言い寄っていた
もちろん　私は
相手にする気なんてなかった
連続ドラマの主演も決まって
やっと今までの苦労が
報われるはずだったんだもの
なのに…
何なの？あなたたち　きゃー！
私は暴漢に襲われ　事件が
面白おかしく報道されると
連続ドラマからは降ろされ
仕事は全てなくなって
私は　あっと言う間に　どん底に
叩き落とされてしまった
死んだほうがマシ
私は本気で　そう思っていた
真奈美ちゃん！バカなまねは　よせ安岡さん
僕が　僕がついてるじゃないか
失意の　どん底にいる女ほど
口説きやすいものはないって
本当ね
私は安岡との結婚を承諾したわ
ところが半年前
あの報酬は７年前に払ったはずだ
いいじゃねえか　困ってんだよ
あんたが奥さんに取り入るために
俺たちに襲わせたこと
バラされてもいいのかよ
これで　もう最後にしてくれよ
わかってるって
あの男　自分の手で私を
ボロ雑巾のようにしておいて
結婚してやったんだって
恩着せがましい顔で今の今まで
許せなかった　この半年
どうやって復讐してやろうかって
そればかり考えてたわ
そして　この手でやつを
地獄に　たたき込んでやったのよ
醜い　何という醜さだ
この醜さは死に値する
終わったのね　何もかも
玲香ちゃんが養女の話を断って
安岡が死ねば
いずれ鏑木プロも私のものに
できると思っていたのに
真奈美さん！
しまった　毒か
自殺を図ったな
救急車を　早く！
違うわ　自殺なんかじゃない
毒なんか誰が…
あいつ　あいつが…
真奈美さん！
ダメだ　道化人形　安岡真奈美は
最後の幕を自分の手で
下ろしてしまった
そなた　まだ　そのような所に
おったのか
はよう　この屋敷から出て行け
いえ　嫌でございます
ええい　強情な
出て行けと言うておるのじゃ
分かっておくれ
そなたに　もしものことがあったら母は　母は…
そなただけでも生き延びておくれ
母上！
はい　オーケー！
あの　三田村さん？
今日の演技は　まあまあだったわ
これからも　この調子で　お願いね
迫真の演技でしたね　三田村さん
金田一君
まるで本当の親子みたいでしたよ
そう　ありがとう
俺　三田村さんに
聞きたいことがあるんです
なあに？
身代金の１億円
どうして
出す気になったんですか？
それに　あのおにぎりの差し入れ
大女優の三田村さんが
わざわざ山梨の病院まで
手作りのおにぎりを
持ってくるなんて
それで俺　分かったんです…
あなたが　どう考えようと自由よ
でも　そんな話
マスコミが嗅ぎつけたら
アイドルの　あの子には
つらい結果が待ってるだけ
分かってくれるわね　金田一君
金田一君
ああ　玲香ちゃん
三田村さんと何話してたの？
いや　さっきの三田村さんの演技
すごかったからさ
ほんとね　やっぱり大女優は
格が違うわ
あたしも　つい引き込まれちゃって本当のお母さんかと思っちゃった
本当のお母さんか
よかったね　玲香さん元気になってああ
でも　真奈美さんもなんだか
可哀想だわ
何も自殺なんてすること
なかったのに
そのことなんだけど
どうも引っかかるんだ
引っかかるって？
あの時
真奈美さんは毒入り紅茶を
飲む前に　砂糖を入れてただろ？
妙だと思わないか？
これから死のうって人間が
砂糖で味を調えるなんて
ひょっとして　真奈美さんは
自殺じゃなく…
何だ？
あっ　はじめ　あれ！
あ？
「金田一様へ」って書いてあるよ
え？俺あて？
これは　ピエロのマリオネット
もしもし
やあ　金田一君
私のプレゼントは
気に入ってもらえましたか？
あんた一体　誰だよ？
鏑木プロの小渕沢ですよ
小渕沢？
そして　もう１つの名は
「地獄の傀儡師」と言いましてね
目印としてバラの花束を
持ってくるんだ　そう
血のように赤いバラをね
そうか　だから　俺に身代金を
あんたが真奈美さんを
そそのかした張本人だったのか
彼女の紅茶に毒を入れたのも
道化人形は全く出来の悪い
マリオネットでした
だが　勘違いしないでください
何？
トリックを見破ったからといって
君が勝ったわけじゃない
僕が作った犯罪計画は
完ぺきだった
不出来なマリオネットのヘマに
助けられなければ　君は…
ふざけるな　勝ち負けなんて
関係あるか
どこに隠れていやがる？
隠れる？
一体誰が隠れてるって
言うんですか？
まもなく３番線に急行が
通過します
危ないですから　白線の内側まで
お下がりください
地獄の傀儡師
高遠遙一！
僕は人を欺くことに快感を覚える
君は　それを見抜くことに
使命感を感じている
また　いつか　どこかで
お会いしましょう
グッド・ラック　名探偵君
くそっ！
はじめちゃん
許せねえ
人の憎しみを利用して
人形のように操り
自分の作った犯罪劇のシナリオを
演じさせて楽しんでやがる
あいつだけは絶対許せねえ
地獄の傀儡師　貴様は必ず
この手で捕まえてやる
じっちゃんの名に　かけて！
ええ　いま　わたくし金田一は
ファッション界の行方を決める極秘の
ブライダルショーに招待されています
まあ　それというのも　俺が
トップモデル　高森ますみの
知り合いということで
邪魔なやつもいないし
リッチなホテルで美雪と…
と思ってたら
会場に差出人不明の
ウエディングドレスが届いた
それも　死を意味する
１枚の銀貨と一緒に
まさか　これが殺意の予告状なんて
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿ほら　遅いぞ　ふみ　１・２　１・２
もっとゆっくり走ってよ
１・２　１・２…
頑張って　ふみちゃん
はあ　疲れた
何か飲み物　買ってくるわね
おう　わりいな　美雪
何で　体育祭で　三人四脚なんて
たるいもんやるんだよ
もうちょっと付き合ってくれよ
俺　体育祭の委員だから
勝ちたいんだ
なーにが勝ちたいだよ
おめえの考えなんて読めてるぜ
え？
さ…　さすが　ふみ
ズバリ当てやがって
そういえば　はじめちゃん
ん？ああ　サンキュー　はい
昔から三人四脚　好きなのよね
小学校のときもやったじゃない
へえ　そうなんだ
そうだっけ？
ほら　私と　はじめちゃんと
ますみちゃんで
ますみか　元気でやってるかなあ
誰それ？
同級生よ
高森ますみ　有名なトップモデルなの
よくテレビにも出てるわよ
うわあ　その人　紹介して
ふみね　モデルになるのが
夢だったの
春　それは　最もしなやかで
華やいだ季節
キミサワの新たな春のテーマは
「しなやかな風」
おお
しなやかで柔らかなシルクの風が
あなたを優しく包みます
ほんと　ますみは
ステージ映えするわね
でも　ちょっとメークきつくない？
日本モード界の女王
ユリエ・キミサワに
今　盛大なる拍手を
みんな　ご苦労さま
今日のステージは
まずまずの出来だったわ
それから　ますみ
はい
中盤　少しダレていたわね
風のイメージなんだから
もっと軽やかにね
すみません　先生
あなたは
うちのショーの顔でもあるんだから
しっかり自覚を持ちなさい
はい
よう　ますみ
なかなかいい所に
住んでるじゃねえか　ああ？
ヒロシ
いやあ
人間　変われば変わるもんだ
薬漬けの不良娘でも
トップモデルになると
こんなゴージャスな暮らしが
できんのかよ
で　いくら欲しいのよ？
そうだな　５００万ぐらいあると
ありがたいな
５００万？バカ言わないでよ
そんな大金
ケチケチすんなよ
天下のキミサワのトップモデルなら
すぐ集められるだろ
それとも　お前の過去を洗いざらい週刊誌に　ぶちまけてもいいんだぜ
もう　お前は
俺から一生　逃れられないのさ
ほら　早くしねえと５００万が
１０００万に
いやあ！
ヒ…　ヒロシ？
ど…　どうしよう
君沢先生に拾われて　やっと
どん底の生活から
はい上がれたのに
でも　そうよ　この男
死んで当然だわ
こいつが消えても
探す人なんて誰もいない
このまま死体を始末してしまえば
何か　何かないかしら
そうだわ　デパートに行って
大きなスーツケースを買えば
おい　まだかよ
こんなに買い物して
あと　何　買うんだよ
もうちょっと待っててよ　あと
ふみちゃんのお洋服　買うんだから
ふみちゃん　これよく似合うわよ
ああ　こっちの方もいいわね
うわあ　かわいい！
あいつ　ほんと美雪の前では
猫かぶるよな　あーあ　やだやだ
美雪
俺　ちょっとトイレ行ってくるぞ
ごめんなさい
あっ　い…　いえ　大丈夫です
あれ　ますみか？
え？
俺だよ　金田一　一
ほら　小学校のときの
あっ　はじめちゃん？
あっ　思い出した？
お前　モデルやってんだろ？
時々　テレビで見てるぜ
すっげえよなあ
そう？
あっ　あっちに美雪がいるんだ
覚えてるだろ？
え？美雪ちゃん？懐かしい
今　洋服選んでんだ　すぐそこだよ
あ…　あの…
ん？
私　これから
出かけなくちゃいけないの
そうだ　これ
はじめちゃんにあげる
何これ？
長野でやるファッションショーのチケットよ
このホテル　とってもステキなの
昔の大金持ちが建てた
フランス風の別荘なの
よかったら　美雪ちゃんと
２人で来て
じゃあ　私は　これで
ああ　ますみ…
ああ　疲れた
まさか　あんな所で
はじめちゃんに会うなんて
はじめちゃんか
何だか
昔と　ちっとも変わってなかったな
それに引き換え　私は…
そんな　目が開いてる？
さっきは　確かに閉じてたのに
そんな目で　私を見ないで
何？これ
フランスの銀貨？
ますみちゃんに会った？
ああ
どうして引きとめて
くれなかったのよ
彼女　急いでるみたいだったから
おうち近くなの？
これから行こうよ
お友達になりたいなあ
それが　どこに住んでるか
聞けなかったんだよ
なーんだ　がっかり
こんにゃろ…
ええ？２人で
ファッションショーに行った？
よくも　私をのけ者にしたな
うう！
どうしたの？
いや…
ちょっと胸やけが
大丈夫？
今日の新聞にも載ってないわ
あれだけ重しを詰めて
沈めたんだもの
見つかりっこないわ
よう　ますみじゃねえか
うわあ　ますみちゃん　久しぶり！
はじめちゃん　それに美雪ちゃん？
チケットありがとう　私　一度
ファッションショー　見てみたかったんだ
ああ　ますみさん
小夜子
へえ　３人は
幼なじみだったんですか
ええ　小学校時代のね
何よ　この２人　私の言葉
真に受けて　ここまで来たの？
弱ったな　今さら追い返せないし
ねえ　ますみちゃん
こうして３人で並んでると
小学校の運動会のときのこと
思い出さない？
え？
そういや　この並び方
あのときの三人四脚と同じじゃん
ねえ　聞いてよ　ますみちゃん
はじめちゃんたらね
今度の体育祭のときも
三人四脚やろうって言いだしてさ
スケベ心　丸出し
ちっとも進歩ないんだから
そういうお前こそ　小言癖は
昔から変わってねえじゃん
何よ
何だよ
何が何よ
何が何で何なんだよ
やあね　２人とも　そうやって
ムキになるところも
昔と同じじゃない
いいなあ　楽しそうで
あっ　見えてきましたよ
ああ
ああ
これが仏蘭西館か
どっひゃー
すごーい
このホテル　会員制で一般の人は
ほとんど泊まれないんだって
何だか私たち　すごく場違いな所に来ちゃったみたいね
お２人とも　あちらのカウンターで受け付けを済ませてください
はい
遅いじゃない　ますみ
奈緒子さん
もうステージのリハーサル
始まってるのよ
すみません　あの
今日は友達が来ていて
どうも
あなたは今回のコンペが
キミサワにとって　どれほど
重要なのかが分かってないのね
まあまあ　奈緒子さん
そういきり立たなくても
ますみちゃん　お友達は
僕がエスコートしておくから
君はリハーサルに行ってよ
はい　ごめん　また後でね
ああ
ああ　小夜子
はい
あなた　鍵を持って外出したでしょあっ！
あなたの部屋から
アクセサリーを出すのに
フロントでスペアキー借りたのよ
出かけるときは　ちゃんと
フロントに鍵を戻してちょうだい
はい　すみません
おっかねえなあ　あの人
やあ　すまないね　君たち
今日は　みんなピリピリしてるんだ
何しろ　明日の
ブライダルドレス・コンペは
日本のファッション業界の二大勢力
キミサワと六条の一騎打ちだからね
勝った方が　ミツトモ物産の
バックアップを受けられるんだ
すんません　忙しいのに
いや　メンズ部門の方は暇なのさ
奈緒子　そろそろ答えを
出してくれないか
何の答え？
あれ　さっきの人だ
一緒にいるのは
六条光彦じゃないか
うそ　六条ブランドの社長で
デザイナーもやってる人でしょ
君だって　あのばあさんに
こき使われるだけで
終わりたくはないだろう
それに　僕は
君に　モデルだったころの美しさを忘れてほしくないんだ
モデルなんて　もう遠い昔のことよ
これって引き抜きってやつですか
そうらしいね
これはこれは　六条さん
君沢先生！
うちの奈緒子に　何かご用？
いやあ　ちょっとした世間話ですよ
そう　ならいいけど
お互い下手な小細工なしに
正々堂々　デザインで決着
つけましょうね　六条さん
もちろんですよ　君沢先生
さあ　行くわよ　奈緒子
本気なの？
あの奈緒子ってデザイナー
うちに引き抜くって
あんな女
君沢に　こき使われているだけの
二流デザイナーじゃん
お前は何も知らないんだな
あの奈緒子って女がいなくなれば
キミサワなんて　一ひねりで
つぶせるんだ
あんなこと言ってますけど
さすが六条光彦　よく見てるな
え？
いや　これ以上は企業秘密なんでね
ここが　君たちの部屋だよ
ありがとうございます
うわあ　ステキな部屋
あれ　このドア
オートロックじゃないんだ
よかったじゃない　はじめちゃん
よく鍵を持たずに廊下に出て
閉め出されちゃうもんね
そうなんだよ　よくパンツ一丁で
外に出ちゃってさ
っておい　俺　そんなに
そそっかしくないぞ
何かしら？
これは…
はい
写真は見ていただけましたか？
あなた　誰？
あなたが殺した男の
目を開けた者です
そうですね　「葬送銀貨」とでも
名乗っておきますか
葬送銀貨
すっげえなあ
ますます俺たち　場違いって感じ
ほんと
何だ　これは？
ウエディングドレス？
黒いリボンなんて
葬式じゃ　あるまいし
しかし　このさえないデザイン
うちで作ったものじゃ
ありませんね
何だ　これ？フランスのコイン？
それは葬送銀貨じゃないかな
葬送銀貨？
古代ヨーロッパでは
死と結婚は　密接な関係にあると
考えられてきたんだ
今でも　フランスの一部の村では
死者に婚礼衣装を着せて
埋葬する習わしが残っている
そのとき　着飾った死者の胸元に
置かれるのが　その葬送銀貨さ
え？っていうことは
そのウエディングドレスは…
死装束ってことになるね
死装束？縁起でもない
誰かのいたずらか？
奈緒子
こんなもの　さっさと片付けろ
はい
私の頼みを聞いてくれたら
あなたが　人を殺したことは
黙っていてあげましょう
何　簡単なことですよ
手紙に同封したカプセルの中身を
ある人のワイングラスに
入れてくれればいいんです
その「ある人」というのは…
やるしかないのよ　ますみ
でないと　私は…
これでいいわ　後は
このカプセルを始末して
お前　こんなとこで何やってんだ？
私　ちょっと
飲み物もらおうと思って
俺もなんだよ
もう　のどカラカラでさ
あ！ダメよ　はじめちゃん
せっかくきれいに
並んでるんだから
ああ
はじめちゃん　飲み物なら
こっちにあるわよ
ああ　なんだ
指紋ついちゃったじゃない
ったく　余計なことして
お客様　どうかなさいましたか？
すいません　俺　ジュース飲むのに勝手に　グラス使おうとして
どうしたの？今の声
弓削君　この子たち
何か　しでかしたの？
いや　そんなんじゃないんだ
奈緒ちゃん
奈緒ちゃん？
お２人は知り合いなんすか？
奈緒子さんと弓削君は
昔　恋人同士だったんだよ
鍵谷さん！弓削君は
私の幼なじみです
奈緒子さんとは同じ広島出身で
小学校まで一緒だったんです
へえ
本日は　キミサワ・六条
両ブランドによる
ブライダルコンペに
ようこそ　いらっしゃいました
今宵は　その前夜祭ということで
まずは　皆様に
ワインで乾杯をして頂きます
今夜　皆様に
お楽しみいただくワインは
フランスはブルゴーニュ地方産の
ロマネ・コンティです
ロマネ・コンティって
すごく高いワインなんでしょ？
ほんとか？楽しみ
お２人は高校生でしたよね
はい　これ
ちぇっ
皆様　準備は　よろしいでしょうか
では　乾杯の音頭は
君沢ユリエ様に　お願いいたします
ごめんなさい
あなたに恨みはないの
それでは　お集まりの皆さま
六条・キミサワ両ブランドの
更なる発展を願って
でも　こうしないと　私は…
ごめんなさい
本当に　ごめんなさい
奈緒子さん
乾杯！
乾杯！
飲まない　どうして？
奈緒子君
君は　アルコール　ダメなのかい？
いえ　お酒は平気だけど
ワインは　ちょっとね
でも　何か　もったいないわね
すごく高いワインなのに
よし　じゃあ
このワインは　僕が頂こう
被害者は　六条光彦　３３歳
有名な六条ブランドの社長です
六条ブランドかよ
去年　娘から父の日に
六条のネクタイもらったな
それで？
はい　死因は毒殺です
ワインに毒が入っていたようです
剣持の　おっさん
おっ　金田一
長野県で研修？
ああ
この殺人事件の連絡が入ったんで
とりあえず同行してみたんだが
まさか　お前らがいたとはな
あんたよ
あんたが六条先生を殺したんだ
今回のコンペで　六条先生に
勝つ自信がなかったから
言いがかりは　やめたまえ
六条社長の飲んだワインは
うちの鳥丸君のものだったんだ
狙われたのは　六条社長じゃない
じゃあ　この女が　わざと先生に
毒入りワインを飲ませたんだ
いえ　私は
奈緒子さんは
ワインが飲めない体質なんですよ
小学校時代から
ぶどうアレルギーなんです
ぶどうアレルギー？
そうか　ワインは　ぶどうから作る
ぶどうアレルギーじゃ
ワインは飲めないね
ええ　「ワインはダメだ」と言ったら
六条さんが「じゃあ　僕が代わりに
飲む」と言って
じゃあ　あれは偶然だって言うの
いや　ただ結果は　どうあれ
気になることが１つある
一体　どういうことよ？
これさ
それは
送られてきた
ウエディングドレスじゃないか
確か　死装束だという話だが
奈緒子さん　ちょっと
これを着てみてくれませんか？
え？
このカプセル　早く始末しなくちゃ
もし身体検査でもされたら
まあ　ぴったりだわ
こういう場合
犯人からの殺人予告とも
考えられる
ということは　狙われたのは
鳥丸奈緒子
ようし　とにかく
すぐ非常線を張ろう
犯人は　まだ　この近くに
潜んでるかもしれん
いや　その必要はないよ
何？
犯人は　まだ　このホテルの中
それも　このディナー会場にいる
ほんとか？金田一
ああ　その可能性は高いね
その証拠は　あれさ
犯人は　まだ　この中にいる
ある証拠で　そう確信した俺は
おっさんに
コンペ関係者を調べてもらう
しかし　犯人の足取りも
つかめないまま
キミサワ・六条が火花を散らす
ファッションショーが始まった
華やかな舞台の裏で　うごめく陰謀
鍵谷さんの言う
「キミサワの企業秘密」って？
そのとき　また葬送銀貨と
タキシードが届いた
待ってくれ　犯人は…
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
幼なじみのトップモデル
高森ますみに招待されて
俺たちは　仏蘭西館にやってきた
豪華な部屋
ほら　あれ　六条さんよ
ハアー！
すっげえな　ますます　俺たち
場違いって感じ
ホント
何だ　これは？黒いリボンなんて
葬式じゃあるまいし
フランスのコイン？
それは　葬送銀貨じゃないかな
葬送銀貨？
それでは　お集まりの皆様
六条・キミサワ
両ブランドの更なる発展を願って
乾杯！
犯人は　まだ　このホテルの…
中にいる！
本当なのか？金田一
六条光彦を殺した犯人が
まだ　このホテルの中にいるって
ああ　その可能性は極めて高い
その証拠となるのが
あの水槽だよ
何だ　ただの水槽だろ？
よく見てくれ
変だと思わないか？
魚が　いないわ
そう
ろ過装置が動いてるのに
魚が１匹も　いないなんて
そういえば　変だな
おい　君！
この水槽には
前から魚が　いないのか？
あ…　いえ
そんな　はずは…　ああっ！
死んでる　熱帯魚が全部！
どうして　こんなことに？
毒だよ
毒？
恐らく犯人は　犯行に使う毒を
水溶性のカプセルに入れて
持ち込んだ
そして　奈緒子さんのグラスに
毒を入れた後
いらなくなったカプセルを
その水槽に入れて始末した
カプセルは溶けてなくなったが
わずかに残っていた毒が
熱帯魚を死に追いやったんだ
でも　はじめちゃん
それで　どうして
犯人が逃げてないって分かるの？
弓削さん
はい
この熱帯魚を
最後に見たのは　いつですか？
確か　お客様に　ワインを
おつぎして回ったときには
泳いでいるのを見ましたが
何ですって？
じゃあ　犯人は
ディナーが始まったとき
まだ　毒入りカプセルを
隠し持っていたの？
何で　そんなもん　さっさと
捨ててしまわなかったんだろう？
捨てなかったんじゃなくて
捨てられなかったのさ
なぜなら犯人は　このディナーに
関係者として参加していて
そして　今も
この会場の中にいるからさ
犯人は
グラスに毒を盛ったあと
カプセルを始末する
暇がなかったんだ
だから
毒を飲んで六条さんが死んだとき
騒ぎに紛れて
カプセルを捨てたのさ
どうして…
どうして　はじめちゃんは
そんなことまで分かるの？
まさか
私が
あの水槽にカプセルを捨てたのを
見られたんじゃ？
よし　それじゃあ
とにかく　ホテルにいる人たちは
全て　足止めさせる
手配をお願いします
分かりました
ところで　奈緒子さん　あんたは
ぶどうアレルギーのことを
誰にも言ってなかったんですか？
ええ　キミサワのメンバーは
誰も知らないと思います
やはり　犯人は
間違って六条を殺したのか
あの　刑事さん　このドレス
もう脱いでもいいでしょうか？
ええ　どうぞ
ちょ…　ちょっと待って
失礼　うーん　見事な出来だ
どうしたんすか　鍵谷さん？
いや　このドレスが
とても　よく出来てるんでね
へえ
肩幅　胸　胴　腰回りに
袖や　スカートのライン
無駄な　よれや　しわが１つもない
ここまで仕上げるには
プロの技術と
正確で詳しいデータが必要だ
奈緒子さん
今まで自分のサイズを詳しく
人に教えたこと　ありますか？
いいえ　一度も
サイズだって　人のを測ることは
あっても　自分では…
じゃあ　犯人は　一体　どこで
正確で詳しいデータを
手に入れたんだ？
奈緒子の詳しいサイズなら
測らなくても　すぐ調べられるわ
君沢先生
え？
キミサワでは　年に一度
全ての社員の身体検査をするの
そのデータは
フロッピーに入れて
京都のキミサワ本社に
保管されているわ
じゃあ　犯人は
そのデータを盗んだのか
その可能性はあるな
よし　京都に人をやって
データを盗まれた形跡がないか
調べさせよう
ますみちゃん　大丈夫？
真っ青よ
え　ええ…
ちょっと　疲れちゃって
やれやれ
奈緒子さんには　今夜から
護衛をつけてもらわなくっちゃ
これが六条の仕業なら
また　いつ狙われることか
でも　私の代わりに
あの女ったらしが死んでくれて
ミツトモの仕事は
もらったも同然よ
およしなさいな　２人とも
そんな露骨な話しは
いつも言っているでしょ
本音は　心に秘めるもの
今は　不幸な死を遂げた好敵手
六条光彦先生に
同じデザイナーとして
お悔やみを申し上げましょう
毒は　あらかじめ
グラスに入っていた
まあ　そうだろうな
ん？
どういうことだ　これは？
え？
六条の連中
コンペを決行するって？
ええ
死んだ六条の
弔い合戦のつもりらしいわ
フン　バカな連中だ
六条がいなくなったら
何も　できないくせに
いずれにしても
コンペが終わって一段落ついたら
あなたを副社長にしてあげるわ
そして
いずれ　私が引退するときには
あなたが　社長
いい香りだな
ウフフ
特注品よ　フランスで作って
送らせているの
さすが　売れっ子デザイナーだ
フフフ
この中にいることだけは
間違いないわ
私に　奈緒子さんを
殺させようとした葬送銀貨が
霧山小夜子
彼女はデザイナーの卵だけど
よく奈緒子さんに
辛く当たられてたし
それに　彼女なら
本社のデータを盗んで
奈緒子さんに　ぴったりの
ドレスを作れるわ
でも　奈緒子さんが死んでも
彼女に得になることなんて
ないか
それを言うなら
六条の人間の方が
でも　あの人たちに
キミサワ本社のフロッピーは
盗めないわ
鍵谷善司
どうして　メンズの鍵谷さんが
このコンペに参加してるのかしら
犬飼要介
会社の方針について
よく奈緒子さんと衝突してたわ
君沢先生
まさかね　そんなわけないわ
先生が　私に
あんなことさせるなんて
おはよう
はじめちゃん　美雪ちゃん
おはよう
ここ　座っていいか？
どうぞ
ごめんなさいね
昨日は　せっかく来てくれたのに
大変なことになっちゃって
あーあー　平気　平気
気にすんなよ
それにしても分かんないんだよ
犯人は　一体
いつグラスに毒を入れたのか
実は　昨日
俺が　ジュース飲もうとしたグラス
あれ
奈緒子さんの席のだったんだ
何…　何　言ってるの？
じゃあ　あのグラスを使ってたら
はじめちゃん
危なかったんじゃない！
ああ　あんとき
ますみが俺の手から
グラスを奪い取ってなかったらと
思うと
ぞっとするよ
何なの…
いきなり　何　言いだすの？
はじめちゃん
それでさ　警察が調べた
毒入りグラスの報告で
妙なことが分かったんだ
妙なこと？
ああ　あのグラスからは
奈緒子さんと
死んだ六条さんの指紋以外
検出されなかったんだ
何だ　そんなの当たり前よ
犯人が指紋残すはずないもん
いや　俺が言ってるのは
犯人の指紋のことじゃない
俺と　お前の指紋のことさ
しまった！グラスについた
自分の指紋が気になって
こっそり　拭いてしまったんだわ
不思議だよな
何で残ってなかったんだろう？
あ…　その
私　こうやって
グラスの脚んとこ持ってたから
こんな細いとこじゃ
なかなか　うまく指紋取れないし
ね？
それは変だよ
だったら
ますみの指紋は　ともかく
俺の指紋は
一体　どこへ行ったんだ？
俺は　こうやって
グラスを持ったんだぜ
見てみろよ　なっ　こんなに
はっきり指紋が残ってるだろう
ホント　おかしいわね
どうしよう…
何か　何か言い訳をしないと
でも　何て？
そうよ！
犯人は私たちより　後から来て
毒を入れたのよ　そして
そのときに
グラスについた指紋を拭き取った
ね！
これなら指紋は残らないじゃない
確かにね
それは　ありうるな
ねえ
気にするほどのことじゃないわ
はじめちゃん　私のこと疑ってる
だから　あんな話を
どうして　はじめちゃんに
チケットあげたりしたんだろう
このままじゃ　私…　私
はっ
もしもし
困ったことになりましたね
あなた　葬送銀貨ね！
奈緒子を殺すはずが
別の人間を殺してしまうとは
そんなの　私のせいじゃないわ！
あんたが　奈緒子さんの
ぶどうアレルギーのこと
知らなかったから！
これは手厳しい
奈緒子は
今　警察が厳重にガードしている
だから　あなたには
次の獲物を狙ってもらいます
まだ　私に
あんなことをさせる気なの？
あなたは　既に２人を殺している
今さら　後戻りはできませんよ
嫌よ
私のお願いが
聞いてもらえなければ
あなたは　全てを失いますよ
それでも　いいんですか？
ご心配なく
あなたが捕まれば　私も困るんです
そこで　とっておきの手を
お教えしましょう
とっておきの手？
殺人現場から離れた
別の場所にいたまま
ターゲットを消すことができる
方法ですよ
これなら　あなたは
完璧なアリバイを手に入れ
容疑者から外れることができる
何も心配することは　ありません
何にもね
葬送銀貨の言うとおりにやれば
私に疑いは　かからなくなる
でも　そのために
私は　また今夜　人を…
一体　どうしたらいいの？
おーい　ますみ！
今夜のファッションショー
予定どおりに　やるんだって？
え　ええ…　ここまできたら
やらないわけには　いかないでしょ六条側も望んでるみたいだし
そっか　大変だな
それにしても
あ…　あの　はじめちゃん
私　忙しいの　また　後でね
あ　ごめん
何か　ますみちゃん
顔色　悪かったわね
え？　ますみが
うちに来る前のこと？
ええ　奈緒子さん
何か知ってますか？
何で　そんなこと
私に聞くわけ？
あの子に直接聞いたら？
あ　いや…　それは　あの…
もっとも　あの子に聞いても
ホントのところは
答えちゃくれないでしょうけど
あなたの知らない　ますみの過去が辛いものであればあるほど
あの子は口を閉ざすでしょうね
あ…　じゃあ
最近のことで　何か
気付いたこととかありませんか？
ああ　さあ？あ　私　ここだから
そういえば
あの子　最近
デザインの勉強してるみたいね
え？
モデルなんて　そんなに長いこと
やってられる仕事じゃないし
将来　デザイナーにでも
なるつもりなんじゃないかしら
デザイナー
今から　そんなこと考えてるなんて
ますみちゃん
しっかりしてるのね
はじめちゃん？
これで　よし
もしもし　ますみです
ちょっと　お話ししたいことが
どう　おっさん？
今のところ　異常なしだ
この会場も　楽屋も
ホテルの厨房も
人の出入りは
厳しくチェックしとるからなあ
怪しいやつが来たら
すぐに分かる
犬飼さん？
はじめちゃん
ん？
ほら　見て　このカナリア
卵を抱いてるわ
あ　ホントだ
お気に召しましたか？
このカナリア
実は　僕のペットなんですよ
独り暮らしのアパートに
置いておくのも忍びなくて
そうなんですか
ここも　人の出入りが激しくて
かわいそうなんですけどね
皆様　キミサワ・六条
ブライダルコンペティションへ
ようこそ
日本を代表する２大ブランドの
美の競演を　お楽しみください
ミツヒコ六条は
幸せな２人の新しき人生の門出に
彩を添えることでしょう
六条のソワレは　花の洪水です
ステキ
晴れやかな喜びの中に
ひとときの恥じらい
ほのかに色めく純白が
キミサワの…
ワアー！
ますみちゃん　きれい
はじめちゃん？
まさか　楽屋で何か？
ひどい…　ウエディングドレスが
ズタズタに
ショーのトリを飾る
いちばん大事なドレスだったのに
六条のやつらだわ
そうだ　あいつらが　逆恨みして
こんなことを
みんな！
テーブルクロスを
できるだけ　たくさん集めて
え…　テーブルクロスですか？
いいから　早く！
僕に任せて
お客様　失礼いたします
ちょっと余興を
おおー！
ハッハハハハ
いいかい　こうやって
僕が　どんどん引き抜くから
奈緒ちゃんのところへ
持っていって
はい
できた
エエー！
これが　あのテーブルクロス？
あとは　ポイントに
コサージュをつけて
全体に　いちばん光る
７０番のクリスタルビーズを使えば
それが…　奈緒子さん
今回　ビーズやスパンコールは
持ってきてないんです
もう　使わないと思って
何ですって！
すみません…
テーブルクロスの布だけじゃ
光沢が足りないわ
このままじゃ
六条のドレスに見劣りしちゃう
どうしたら…
はじめちゃん　何してんのよ？
いいから
美雪も　やれ！
そうか！その手があったわ
おい　どうしたんだ？
もう　ショーは終わりですか？
いいえ
おかしいわね
あと１着　残っているはずなのに
おあいにくさま
あんたのトリのドレスは
私がズタズタにしてやったわ
いい気味　ウフフフ
ワア　ステキ！
まるで　星を散りばめたみたい
何なの　一体？
どうやら　うまくいったみたいだなホント
あれが　ガラスのかけらとは
思えないわ
それにしても
あの奈緒子って人　すっごいよな
あんな短時間で
こんな　すげえドレスを
作っちゃうんだから
でも　どうして
あんな才能のある人が
キミサワの
アシスタントデザイナーに
とどまってるんだろう？
それは　キミサワじゃ　禁句だよ
金田一君
鍵谷さん
彼女が　いなくなったら
キミサワは　大混乱になる
何しろ　彼女は
君沢先生のゴーストなんだから
キミサワレディースで
売れている服は
ほとんど奈緒子さんが
デザインして作ったものなんだ
先生のデザインじゃ
古くて使い物にならないのさ
そうか　それで　六条光彦は
彼女を引き抜こうとして
でも　待てよ
彼女が狙われた理由は
君沢ユリエの
ゴーストだったからなのか？
大変です
楽屋に　また黒いリボンの箱が！
おお　葬送銀貨！
今度は　タキシードか！
一体　誰の？
え…　見せて
このサイズは　まさか！
心当たりが　あるんですか？
うちの犬飼じゃ…
おい　犬飼は　どこ行った？
はい　犬飼さんなら
コンペティションが始まる前に
出ていかれました
いけない！
犬飼さん　犬飼さん！
スペアキーです
ダメだ　部屋には　いないぞ
ウワーッ！
犬飼さん
犬飼さんが殺された
葬送銀貨の予告どおりに
俺たちを　欺いたアリバイも
巧妙な心理トリックを使った毒殺も
お前の計画どおりなのか？
全て　お前１人で仕組んだ
待てよ
それじゃあ　あの荷物
一体　誰が　ここに運んだんだ？
まさか…
やめろ　ますみ　これ以上
お前の手を血で汚すんじゃない！
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？﻿幼なじみの高森ますみの招待で
俺と美雪は
仏蘭西館で行われる
ファッションショーを見にきた
だが　そこでは　連続殺人事件が
俺たちを待っていた
「葬送銀貨」と名乗る
姿なき殺人者とは一体　誰なんだ！
犬飼さん
犬飼要介の死因は毒殺
ワイングラスから
毒が検出された
飲みかけのワイングラスが
２つあることから
空き部屋で　犯人とワインを
飲み交わしているうちに
毒を盛られたらしい
やあねえ
こんな大事なときに　たびたび
でも　刑事さん
犬飼副社長の死亡推定時刻は
午後７時ごろでしたね
その時間は
パーティーの真っ最中ですよ
関係者全員
ここにいたはずです
そのとおりだ　犬飼要介以外
会場を出た者は
１人もいなかった
ということは
ここにいる　みんなに
アリバイがあったということね
いや　違うね
パーティー会場にいた人間にも
犬飼さんを殺害するチャンスは
十分にあったはずだ
何だって！
ど　どうやって？
ねえ　はじめちゃん
一体　どこに行くの？
ああ　ちょっと
引っかかるところがあって
どうしたの？
ひょっとして　これは
そうか　そういうことか
カナリアが　あんなに暴れてる
殺人事件が続いて
みんな　ピリピリしてるから
落ち着いて卵も産めないわね
美雪　先に
部屋に戻っててくれないか
どうしたの？
ますみに
どうしても　話さなくちゃいけないことがあるんだ
ますみちゃんに？
そう　じゃあ　おやすみ
どうぞ
悪いな　もう寝る時間だろ
いいのよ
それより　話って何？
実は
犬飼さんが殺された事件について
俺なりの答えが
見えてきたもんでね
本当？
犬飼さん殺しは
巧妙に仕組まれた
心理トリックだったのさ
犯人は　パーティーが始まる前に
空き部屋に忍び込み
テーブルの上に
ワイングラスを２つ用意して
片方のグラスに毒を入れた
そして　下準備が終わると
犯人は　犬飼さんに
立食パーティーの最中に
２人で　こっそり会おうと約束した
パーティーが始まると
犬飼さんは会場を抜け出し
あの部屋に行った
犯人は　タイミングを見計らって
会場から電話をかけ
あの部屋にいる犬飼さんに
こう言った
さっきまで
部屋で　あなたを待っていたが
呼び出されてしまった
すぐ戻るから
そこのワインでも飲んで
待っていてほしいってね
そして　犬飼さんは
毒の入ったグラスで
ワインを飲んで死んだ
つまり　この殺人は
パーティー会場にいて
アリバイを作りながら
離れた空き部屋で
犬飼さんを殺害する
遠隔操作殺人だったのさ
で　でも
遠隔操作なんて
そんなに　うまくいくのかしら？
用意された２つのグラスの
どっちを犬飼さんが使うかは
犯人だって
予想がつかなかったはずでしょ？
もし　毒が入ってないグラスを
選んだら？
確かに　両方とも
空のグラスだったらね
え？
もし　片方のグラスに
ワインが半分
いかにも飲みかけって感じで
入ってたとしたら　どうだ？
このトリックのうまいところは
ここさ
もし　グラスが
２つとも空だったら
犬飼さんも乾杯でもしようとして
相手を待ったかもしれない
だが
片方のグラスにワインを入れ
飲みかけに見えるように
仕組むことで
犬飼さんに　自分も飲もうって
気にさせることができるうえに
確実に空の方　つまり
毒入りのグラスを
手に取らせることができる
実に　巧妙なトリックさ
でも…
でも　私　納得できないな
だって　そうでしょ
六条さんが
あんな死に方した後なのに
空き部屋なんかに呼び出されて
置いてあったワインを
飲んだりする？
私なら　怖くてできないわ
俺も　そう思うよ
でも　あの部屋は
空き部屋なんかじゃなかったんだ
え？
少なくとも犬飼さんは
そう思ってなかった
呼び出した人物の部屋だと
思ってたんだ
ますみ　お前が　ここを
俺の部屋だと思ったようにな
え　それって
どういうこと？
こういうことさ
ああっ！
ドアプレートの文字が
消えてる…
さっきは　確かにあったのに
これは
犬飼さんが死んでいた部屋の
ドアプレートに使われていた
紙だ
このとおり　濡れると黒く変色し
乾くと消えてしまう
さっき　お前が見た俺の名前も
水で書いてあったのさ
ここは　俺の部屋なんかじゃない
ただの空き部屋さ
犬飼さんも
同じトリックに引っかかった
自分の部屋で　人殺しなんか
するはずがない　そう思った
犬飼さんは　ためらわずに
ワインに口をつけた
それが　犯人の
心理的な　わなだとも知らずにね
すごいわ　はじめちゃん
ほんの　ちょっとしたことから
思いも寄らない答えを
出してしまう
意外なところで
頭の回転が速いのは
昔と　ちっとも変わってないわ
ますみ
ねえ　１つだけ聞かせて
何で　私にだけ
今の推理　聞かせてくれたの
単なる思いつき？
それとも
変わったな　お前
私が変わったって？
そりゃ　当然でしょ
私は　もう　母親に捨てられ
酔っ払いの父親におびえて
暮らしてた子どもじゃないのよ
小学生のころ　よく
はじめちゃんに泣きついてたけど
でも　今は違うわ
私は１人で何でもできる
だから　はじめちゃんに
泣きつく必要なんてないの
話って　これだけ？
なら　私　部屋に戻るわね
強くなったな　ますみ
今のお前なら　きっと
どんな困難が起こっても
なんとかするだろうな
でも　お前　ホントは
１人で泣いてたんじゃないのか？
おやすみ　はじめちゃん
どうして　どうして
こんなことになっちゃうの？
よりによって　はじめちゃんに
どうだった？
こんな夜遅くまで
初恋の人と　２人っきりで会ってさ何だよ　それ？
私　知ってるもんね
ますみちゃんは　はじめちゃんの
初恋の人なんでしょ？
全く　お前は
どこから　そういう話に…
はじめちゃん
お願い
ますみちゃんを助けてあげて
美雪
しらばっくれないでよ
分かってるのよ
あんたが要介を殺したのよ！
あんたの秘密を　要介が
私に　ばらしたからでしょ？
ええ　よく知ってるわ
だって　私と要介は
愛し合ってたんですもの
でも　もう　どうなってもいいわ！
明日になったら　みんなに話すから
あんたは破滅よ　覚えておいて！
そろそろ　こいつの出番だな
も　もしもし？
だいぶ　お疲れのようですね
ますみさん
葬送銀貨ね
どうしてくれる気？
私　このままじゃ　警察に…
心配いらない
証拠は　何もないんだ
それに　もう　これ以上
あなたに人殺しは　させる気もない
本当？
ええ　その代わり
最後に１つだけ
やってほしいことがあります
最後に？
ねえ　私　ますみよ
もう寝ちゃったの？
まだ　起きてるはずだから
あなたに会いに行けって
言われたんだけど
あ…　何なの　この匂い？
香水の匂いね
この匂いは…
何だ　朝っぱらから？
ブライダルコンペの決着がついたのね
やっぱり　キミサワの勝利だわ
ミツトモは　こんなに死者が
出たようなコンペで決まった
ウエディングドレスなんか
作るのかよ？
ライバルの六条さんは
死んじゃったし
これからは
キミサワの天下ってわけね
おー　嫌だ　嫌だ
あれ？
ますみちゃんが　いないわね
まだ　寝てるのかしら？
いやだ　カナリアの卵が
全部　下に落ちて割れてるわ
あ　ホントだ
すみません
また　やっちゃいましたか
また？
この雌は　結構　神経質で
自分の産んだ卵を
わざと落とすんです
自分で産んだ卵を　自分で？
むごいことするのね　カナリアってやあね　縁起でもない
すぐ　片づけてちょうだい！
あ　はい
申し訳ありません
どうかしたの　はじめちゃん？
あ　いや…
ただ　何か前にも　こんなことが
あったような気がして
おーい　金田一！
あ？
キミサワ本社から
例のデータが届いたぞ
これだ
五十音順に
５０枚のフロッピーがあるんだが
やっぱり　苗字が
「い」と「と」で始まる社員の
フロッピーが盗まれていた
「い」が　犬飼要介
「と」が　鳥丸奈緒子か
それだけじゃないんだ
「き」で始まるフロッピーも
盗まれていたんだ
えっ　何だって！
それじゃあ　犯人は
「き」で始まる誰かを
狙ってるってことか？
「き」　それって　まさか
君沢先生
私？
まさか！
剣持警部！
ん？
また　葬送銀貨から
殺人予告が！
何！
ええっ…
ウエディングドレス
今度は　女か？
「き」？
「き」のつく女性で
このホテルに来ているスタッフは
私の他に　もう１人いるわ
霧山小夜子
そういえば　今朝は
小夜子君の姿を見ていないぞ
ええっ？
おっさん
うん
小夜子さん　いますか？
小夜子さーん
ええっ…　何？これ！
小夜子…
小夜子さん　開けてください
小夜子さん　いるんでしょ？
小夜子さん　小夜子さん！
はじめちゃん
ダメだ　開かない
誰か　フロントに行って
スペアキーを　もらってきて！
私　行ってきます
急いでよ
はい！
早く　早く逃げ出さなきゃ！
こんなところを見られたら
私が小夜子を殺したって
疑われちゃう
ダメだわ　窓は
これ以上開かないようになってる
あ　この匂いは…
そういえば　眠らされる直前
香水の匂いがしてた
この手にも　かすかに残ってる
この香水は！
あの人が使ってたフランス製の
まさか
あの人が葬送銀貨なの？
小夜子さん　開けてください
はい　これ　スペアキー
ああっ！
ああっ！
ますみ…
小夜子！
小夜子！
触っちゃダメだ
し…　死んでる
まさか
ますみちゃんが　小夜子君を？
違う　私じゃない
ますみ　あなた　何てことを！
あなたが！
親鳥が自分で産んだ卵
全部　落としちゃったんだ
ええ？
でも親鳥は
ほら　平気な顔してるよ
一体　何があったの？
あんたなんかに
何ですって？
よせ　ますみ！
うわーっ！
君沢先生！
これは　えらいことに…
救急車を
早く救急車を呼ぶんだ！
ますみ
あのとき
君沢先生の顔を見たとき
文鳥の卵のことを思い出したの
文鳥の卵？
小学校４年のとき
クラスで飼ってた
あの文鳥のことを思い出したの
あ　卵が全部　割れてる
ホントだ
親鳥が自分で産んだ卵
全部　落としちゃったんだ
ええ…　かわいそう
何すんだよ　ますみ！
ますみ
ますみ
どうしたんだよ　お前？
いくらなんでも　あんなことしたら文鳥が　かわいそうだろ！
かわいそうじゃないもん
自分の卵　捨てちゃう鳥なんて
全然　かわいそうじゃないよ！
あのとき　私
ちょうど　母親が
家を出ちゃったころで
割れた卵に
自分を重ねてしまったの
自分の卵を捨てて
平然としてる親鳥が
憎らしくて　たまらなかった
君沢先生を撃ったときも
あのときと
同じ気持ちだったわ
そうか　さっきロビーで見た
カナリアの卵
小学校のときの
文鳥と同じだったんだ
ますみ　正直に答えてくれ
お前は　葬送銀貨なのか？
はじめちゃん
私　神様なんて信じないけど
もし　神に誓うとしたら
それは違うわ
確かに　私は　奈緒子さんと
犬飼さんを狙ったけど
やらせたのは　他の人よ
他の人？
誰なんだ　それは？
分からない
電話で指示されただけだから
なぜ　お前が　そんなやつに
従わなくちゃならないんだ？
はじめちゃん　本当のこと
本当のこと知ったら
私のこと嫌いになっちゃうよ
ますみ
はじめちゃんと再会した
あの日のことよ
あの日　私
人を殺して　海に沈めたの
えっ…
ますみは　犯人に
君沢さんの使っていた
フランス製の香水をかがされ
君沢さんを
犯人だと思い込んだんだ
本当の母親以上に思っていた
君沢さんに裏切られたと思い
拳銃を撃ったというわけか
全ては　葬送銀貨が仕組んだ
心理的な　わななのさ
そう言うがな　金田一
霧山小夜子殺しは
完全に　高森ますみの犯行だぞ
ええ？
犯行があった部屋の窓は
人が通れるほどは開かないし
鍵は　死んだ小夜子が握っていた
あの部屋のドアは
オートロックじゃない
部屋の中に
鍵があったということは
中から鍵をかけたってことだ
つまり　犯行があったとき
あの部屋は密室だったんだ
そうは言い切れないよ
真犯人が　こっそり
合鍵を作っていたかもしれない！
いや　あの鍵は
一見　普通の鍵に見えるがな
実は　複製不可能な
電子キーなんだ
フロントにあった
スペアキー以外に
合鍵は　ないんだ
そんな…
幼なじみを
かばいたい気持ちは分かるが
今度の連続殺人事件は
高森ますみが
単独でやったことだと思うな
違う　違うよ！
き　金田一
ますみ　お前を陥れた真犯人
葬送銀貨は
俺が必ず捕まえてやる
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて！
こんなところで何やってるの
はじめちゃん？
ああ　何か　犯人の手掛かりが
ないかと思ってさ
どうだ　何か出てきたか？
これも　調べてみるか？
おっさん　これは？
盗まれた３枚のフロッピーだ
高森ますみの部屋から見つかった
え？
これ　殺された
霧山小夜子さんのデータね
ああ
ん　あれ…
どうしたの？
ないんだ
何が？
どうしたんだ　金田一？
おっさん　ここに書いてある住所は何て読むんだ？
京都市下京区…
ああ　それは
あっ！
美雪　そこから
「か」のフロッピーを取ってくれ
うん
はい　これよ
やっぱり
やっぱりって
何が　やっぱりなんだ？
とうとう　見つけたぜ
葬送銀貨の正体を示す
決定的な証拠をな
何！
ホント　はじめちゃん？
ああ　残った謎は　あと１つ
殺された小夜子さんの部屋の
密室崩しだけだ
ん？
何ですか？このワインは
どうかしましたか？お客様
君　ソムリエかね？
はい
これを飲んでみたまえ
このホテルでは　これを
ロマネ・コンティと呼ぶのかね！
ちょっと　失礼します
ん？
こっ　これは…
これも　これも違う！
何してるんですか？弓削さん！
こ　これは
みんな…　みんな
ロマネ・コンティじゃありません！
ロマネのボトルに
安物のワインを詰めた
偽物なんです！
えー！じゃあ
パーティーで飲んだロマネも？
きちんと確認しときゃよかった
こんなラベルに　だまされるなんて
これじゃ　ソムリエ失格だ
ああ　もったいねえな…
でも　おかしな話ね　パーティーに
あれだけの人がいたのに
誰も　偽物に
気付かなかったなんて
ふん　日本人は
ブランド品が好きだからな
ボトルがロマネなら
中身なんて　何でもいいんだよ
ボトルに　だまされた？
そうか
ん？
そういうことだったのか…
はじめちゃん？
分かったぞ
密室殺人のトリックが
何だと
謎は　全て解けた！
美雪
ますみが葬送銀貨のはずがない
なぜなら　これから
俺の仕掛けた　わなによって
その姿を現すことに
なるんだからな
この華やかな
ファッションショーを利用し
お前が　起こした数々の惨劇
その幕は
俺が　この手で下ろしてやる
待ってろよ　ますみ
卑劣な　わなにかけて
お前を利用した真犯人は
俺が　必ず捕らえてみせる
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？
幼なじみの高森ますみの招待で
俺と美雪は
ホテル仏蘭西館にやってきた
だが　そこに待っていたのは
連続殺人事件だった
ますみは　真犯人　葬送銀貨の
卑劣な　わなに落ち
犯行の手助けをしてしまったのだ
しかし　今　全ての謎は解けた
姿なき殺人者　葬送銀貨の正体は…
あいつだ！
金田一　君沢さんの入院している
病院から連絡が入ったぞ
どうだって？
しばらく様子をみるために
集中治療室に移すそうだ
よくないんですか？先生
いや　そんなことはない
今夜が山らしいが
まず大丈夫だろうという話だ
じゃ　先生は　助かるんですね？
よかったね　奈緒ちゃん
これで　もう安心ですね
祝杯をあげましょう
本物のロマネ・コンティを持ってきます
僕のおごりです
フフフフフッ…
待ってたぜ　葬送銀貨
生命維持装置を切って
君沢さんを事故死に
見せかけようとしたんだろうが
残念だったな
そいつは　ただのマネキンさ
それと　もう一つ
君沢さんが　今夜が山っていうのも真っ赤な　うそさ
あんたをおびき出すために
みんなに
一芝居　打ってもらったんだ
もう逃げられないぜ　葬送銀貨
今から　あんたが仕組んだ
殺人劇のからくりを
全て　明らかにしてやるよ
ちょっと待ってよ　六条社長や
キミサワの人たちを殺したのは
ここにいる高森ますみでしょう？
ああ　確かに
六条さんが飲んだワイングラスに
毒を入れたのも
遠隔操作のトリックを使って
空き部屋にいた犬飼さんに
毒入りワインを飲ませたのも
全て　ますみが　やったことさ
だが　ますみの弱みを握って脅迫し
一連の殺人計画を
ますみに強要した
この事件の黒幕ともいうべき
真犯人が
そこにいる葬送銀貨なのさ
何ですって？
じゃ　霧山小夜子を殺したのも
真犯人に命令されて
やったことだって言うの？
いや　ますみは　ただ
あの部屋に呼び出されて
薬で眠らされただけだ
何で　そんなこと
する必要があるのよ
ますみに　この事件の
フィナーレを演じさせるためさ
密室で　死体と一緒にいるところを俺たちに発見され
言い逃れできない状況に
追い込まれた　ますみが逆上して
君沢さんを殺すようにね
何だって！
でも　あの部屋は
完全に密室だったんでしょう？
ルームキーは
殺された霧山小夜子が
握ってたって聞いたわ
どうやったら　他の人間が
殺人の後
外から鍵をかけられるのよ
俺も　その謎解きには　苦労したよ
偽物のロマネ・コンティを
見るまではね
あのロマネ・コンティが？
これも違う　これも！
何してるんですか？弓削さん
みんな…　みんな
ロマネ・コンティじゃありません
ロマネ・コンティのボトルに
安物のワインを詰めた
偽物なんです　クーッ
こんなラベルに
だまされるなんて
ラベルに　だまされて
中身の違いに気が付かない
あの密室でも　これと同じ原理の
トリックが使われていたのさ
ワインボトルの代わりに
これを使ってね
それは
仏蘭西館のルームキーだろう？
おっさん　どうして　これが
ホテルのルームキーだと思うんだ
「どうして？」って
そのキーホルダーは…
おや？ちょっと待て　その鍵は…
そう　このホテルのキーホルダーにくっついてるのは　俺んちの鍵さ
本物のルームキーは　こっちだ
キーホルダー　イコール
ルームキーと思い込んでしまう
この錯覚こそが
真犯人の仕組んだ
密室トリックのタネだったんだよ
犯人は　前もってフロントから
小夜子さんの部屋の
スペアキーを借りた
そして　キーホルダーから
スペアキーを外し
代わりに自分の部屋の
ルームキーを付けて
フロントに返したんだ
何だと？
ということは　あの部屋は
密室なんかじゃなく
真犯人は　犯行の後
部屋の外から
鍵をかけることができたのか
じゃ　ますみちゃんが
小夜子さんを
殺したんじゃないのね
ちょっと待ってよ
金田一君の推理だと
本物のスペアキーは　犯人が
ずっと持ってたってことになる
でも　小夜子君が殺されたとき
あの部屋の鍵は
フロントから持ってきた
スペアキーで開いたんだぜ
そういえば　そうだな
犯人が　こっそり
フロントに鍵を戻したのか
それは無理ですよ
スペアキーは　フロントで
厳重に管理してあるはずです
じゃ　犯人は　スペアキーを
持ってなかったってことに
いや　持ってたのさ
ええっ？
そして　犯行を終えた後
フロントに返した
たった一度のチャンスを使ってね
たった一度のチャンス？
それは　一体　いつだ
密室になっていた小夜子さんの
部屋のドアを開けようとして
フロントにスペアキーを取りに行った
まさに　あの時だよ
そうだろう？葬送銀貨
あの時　あんたは
真っ先に　フロントに向かって
走っていったよな？
あんたは　スペアキーを…　いや
実は　すり替えておいた
自分の部屋の鍵を受け取り
俺たちのところへ戻るまでに
元どおり　本物のスペアキーと
入れ替えたんだ
つまり真犯人は
小夜子さんの部屋のスペアキーを
借り出したことがあり
そのスペアキーを取りに
真っ先に
フロントへ駆けつけた人物
葬送銀貨は　あんただ！
葬送銀貨は　あんただ！
鳥丸奈緒子！
奈緒子君が犯人？
この女が六条先生を！
な…　奈緒ちゃん
そんな…
もう言い逃れはできないぞ
鳥丸奈緒子
お前は　この病室に
君沢さんを殺すために
忍び込んだんだからな
ふん　私が先生を？
冗談じゃないわ
私は　先生の容体が気になって
様子を見に来ただけよ
だが　お前は
生命維持装置のコードを
あら　ホント　つまずいただけよ
ただの事故だわ
それに　さっきから
密室トリックが　どうのって
みんな　本気にしちゃってるわけ？
ところが　密室トリックには
ちゃんと証拠があるのさ
えっ？
昨日　俺は
部屋に戻る　あんたを捕まえて
話をしたよな？
あの時　あんたは
自分の部屋のドアを鍵も使わず
いきなり開けた
そういえば　確かに
鍵をかけ忘れただけよ
いや　それなら
鍵を差し込もうとするはずだ
あんたは　鍵をかけたくても
かけられなかったんだよ
なぜなら
あんたの部屋のルームキーは
小夜子さんの部屋の
スペアキーとして
フロントに置かれていたからだ
ふん
そんなのただの推理じゃない
私は　ますみに
殺されかかってるのよ
もちろん　それも
あんたの計算のうちさ
あんたは　犯人に殺されかかった
被害者を演じることで
ますみや俺たちの疑いを
晴らそうとしたんだ
それじゃ　六条先生が飲んだ
毒入りワインも？
偶然じゃないってことさ
彼女は最初から
六条さんに飲ませるつもりで
自分のワイングラスに
毒を入れさせたんだ
六条光彦殺害の筋書きは
ざっと　こんなところだ
乾杯の後　あんたは
隣の六条さんに　こう言った
「自分は　ワインだけは　飲めない」
ってね　そう言えば　以前から
あんたの気を引こうとしてた
六条さんが
そのワインに　手をつけるだろう
という読みがあった
そして　更に　あんたは
こう言ったのかもしれない
「高価なワインだから
もったいない」ってね
これらの心理操作が
見えざる手となって
六条さんに　毒入りワインを
飲ませてしまったんだ
あんたが　この殺人劇の舞台に
仏蘭西館を選んだのも
自分が　ぶどうアレルギーだと
証言してくれる人物
幼なじみの弓削さんが
ソムリエとして
働いていたからじゃないのか？
奈緒ちゃん　君は
僕を利用するつもりで
ここに　やってきたのか？
奈緒ちゃん
君は　ホントに　こんな…
確かに
確かに　筋は　通ってるわね
でも　それは
ただの推論に過ぎないわ
証拠を見せてよ
私が犯人だという物的証拠を！
物的証拠か…
物的証拠なら
ここに…　あるぜ！
んん？
それは！
殺人予告として送られてきた
ウエディングドレスじゃないか！
このウエディングドレスが
皮肉にも　あんたの足元を
すくうことになったのさ
そんなドレスが
何だって言うのよ！
何　言ってんだか
さっぱり分からないわ
こいつを見てくれ　こいつは
キミサワ本社から盗まれた
社員のデータ入りフロッピーだ
この中には
社員の体のサイズのデータが
細かくインプットされている
犯人は　このフロッピーから
被害者のデータを読み
ドレスやタキシードを作った
それが　どうしたのよ
だが　犯人は
ここで重大なミスを犯したんだ
今　美雪が呼び出しているデータは盗まれた３枚のフロッピーのうち
「イ」の項のフロッピーだ
はじめちゃん　出たわ
これは　２番目に殺された
犬飼のデータだ
そう　同じように
この　「キ」の項のフロッピーには
霧山さんの
「ト」の項のフロッピーには
奈緒子さん
あんたのデータが
入ってるはずだな？
そんなの当たり前でしょう
それが　どうしたって言うのよ
さあ　見てくれ　どこに
鳥丸奈緒子のデータがあるんだ？
そんな　私のデータがないなんて
おかしいな　このフロッピーには
全社員のデータが
入っているはずなのに
誰かが間違えて
消したんじゃないの？
いや　彼女のデータは
ちゃんとフロッピーに入ってるよ
ただし　こっちのフロッピーにね
あっ　奈緒子さんのデータが
こんなところに
よく見てくれ　奈緒子の名字を
ああっ　ち…　違う
これは　「鳥」じゃない
「カラス」という文字になってる
そう
「鳥」と　「カラス」は
棒１本の違いだ
つまり　彼女のデータは
「ト」のフロッピーではなく
誤って　「カ」のフロッピーに
「カラスマ」として
インプットされてしまったんだ
でも　どうして　こんな間違えが
鍵谷さん
キミサワ本社の住所は？
キミサワ本社の住所？
京都市下京区烏丸通り綾辻西入…
あっ
そう　このデータを入力した
キミサワ本社の人は
「鳥丸」の名を
いつも見慣れている
「烏丸」に読み間違えて
入力してしまったんだ
そ…　そんな…
これでは
盗まれた３枚のフロッピーから
他の２人のサイズは　分かっても
あんたのサイズは　分かりっこない
だが　犯人は　まるで測ったように
ぴったりのドレスを
作り上げることができた　なぜか
それは　ドレスを作ったのが
他ならぬ
あんた自身だったからだよ
ツイてないわね
あなたの言うとおりよ
名探偵さん
この事件を計画したのも
ますみを使って人殺しさせたのも
みんな　私がやったことよ
奈緒子さん…
ついでに言うなら　ますみ
あんたのマンションに
ヒロシとかいう男を差し向けて
脅迫させたのも　私よ
えっ？
あんたを脅して
私の操り人形にするためにね
私を操り人形に？
小夜子さんの部屋で
君沢さんの香水の匂いを
かがせたのも
ますみを操るためだな？
そうよ
君沢先生を犯人と思わせれば
ますみは
必ず拳銃を撃つと思ったわ
バカな　そんなことまで
計算づくでやったと言うのか！
ああ　そうだよ
奈緒子さんには　分かっていたんだ
ますみの心理状態や行動が
手に取るようにね
なぜだ？
似ていたからだよ
似ていた？
奈緒子さんと　ますみ
二人の生き方が
あまりにも似過ぎていたんだ
だから　奈緒子さんには
ますみが　次に
どう動くか
全て　分かっていたんだ
フン
見てきたようなこと言うのね
俺に　そう思わせたのは
カナリアの卵のことが
あったからだ
カナリアの卵？
ホテルで飼っていた
カナリアの卵が割れたよな
親鳥が自分の卵を
捨ててしまったのを見た
奈緒子さんは
嫌悪感をあらわにしていた
自分で産んだ卵を自分で？
むごいことするのね
カナリアって
あの言葉を聞いたとき
俺は　これとそっくりな場面を
思い出した
あー　卵が全部　割れてる
親鳥が自分で産んだ卵
全部　落としちゃったんだ
えー　かわいそう
あーあ　何すんだよ　ますみ
それが　奈緒子さんと同じように
卵を捨てた親鳥を激しく憎んだ
小学校のころの
ますみだったんだ
その時　俺は　ふと気付いたんだ
奈緒子さんと　ますみ
この二人の行動や考え方には
奇妙なくらい共通するところが
多いってね
奈緒子さん
君沢さんから聞いたよ
あんた　小学校４年生のとき
母親に捨てられて
その後　親戚中を回り歩いて
生きてきたんだろう？
ええっ　奈緒子さんも？
ますみと　そっくりだよな
驚いた　鳥の卵から
そこまで　推理してしまうなんてね
あなたの言うとおりよ
ますみが　ヒロシという
チンピラと　つきあっていたように
私の過去にも　そんな男がいたわ
９年前の　あの夜が
全ての泥沼の始まりだった
そのころ　私は　キミサワの
トップモデルに　大抜てきされて
有頂天だったわ
もう　これで
今までの惨めな生活は終わった
私は　生まれ変わったんだって
そんな解放感に酔いしれていたわ
あの男が現れるまではね
よう　奈緒子
アキオ
あいつとは　犯罪まがいのことを
いろいろ　やってきたわ
あいつは
ばく大な口止め料を要求し
そして…
気が付くと
私　アキオを殴り殺していたのよ
私と同じ
もちろん
警察へ自首することも考えたわ
でも　あんなクズのために
やっとつかんだ成功を
めちゃめちゃにされたくなかった
考えたあげく　死体を　こっそり
捨てることにしたわ　ところが…
ちょっと奈緒子　いる？
君沢先生！
一体　何をやってるの？奈緒子！
何だって？君沢先生は
奈緒子君の殺人を知ってたのか
私は　すっかり諦め
先生に　全てを話した
すると先生の口から
思いもよらぬ言葉が返ってきたわ
奈緒子　この死体を
私の車に運び込むのよ
ええっ？
早くしなさい
この時間なら　人目に付かないわ
先生　私…
いいのよ　これで
あんな男のために　あなたの人生を棒に振ることはないわ
先生…
私は　先生に救われた
この人に
一生ついていこうと思った
そして　モデルを辞め
デザイナーとして先生を支えてきた
先生のゴーストでも
私は満足だった　ところが…
それにしても　あの奈緒子が
何食わぬ顔して人殺しとは
女は　怖いね
えっ？
そんな話は
どうでもいいでしょう
それより　あなたは
キミサワの次期社長なんだから
君沢先生…
先生は　社内で私と対立している
あの最低な男に
キミサワを譲ろうとするばかりか
私の過去の犯罪まで
教えてしまったのよ
信じてたのに…
私　先生のこと
本当の母親以上に
でも
私は　会社の業績を上げるための
飼い犬にしか過ぎなかったのよ
冗談じゃない
こんなことで
泣き寝入りなんて　ごめんだわ
先生は　私を利用するだけ利用してゴミのように捨てようとしている
だったら　私もゴミにふさわしい
最低の手を使って
キミサワを手に入れてみせる
そう決心したのよ
そう　キミサワを
私のものにするためなら
何人　殺したって平気だった
だって　私は
既に　人殺しなんだもの
君沢先生
何てバカなことを
あと少しで　あと少しで
全て　うまくいくはずだったのに
うまくいく？
私は　はなっから　犬飼に
気を許してなんかなかったわ
あの男はね
私を脅迫しに来たんだよ！
えっ？
あの男は　私たちが
アキオの死体を始末するところを
見ていたんだよ
だから　私は　奈緒子を守るために
言いなりになるしかなかった
だったら　キミサワなんて
犬飼に　くれてやって
あなたを
独立させるつもりだったのよ
今回のコンペの契約書も
もう作ってあるわ
そのブランド名は　ロワゾ
代表取締役　兼
チーフデザイナーは　鳥丸奈緒子
ロワゾは
あなたのブランドなのよ
君沢さん　あなたは
キミサワを捨ててまで
奈緒子さんのことを
あの時　奈緒子を自首させていればこんなことには　ならなかった
私が　この子の才能を
惜しんだばっかりに…
私　先生に
裏切られたと思ったとき
私を捨てた
母親のことを思い出した
だから先生も
私のことを捨てるのかと思ったら
憎くて　憎くて…
でも　そうじゃなかったんですね
ごめんなさい　先生
ごめんなさい
私…　私…
奈緒子
みんな　いつまでも
待ってるからね
鳥丸奈緒子が
ヒロシ殺しを自供したぞ
ええっ？
お前が頭に
花瓶をたたき付けたとき
ヒロシは　死んじゃいなかったんだ
お前がスーツケースを
買いに行ってる間に
奈緒子が部屋に入り
気絶しているヒロシに
とどめを刺した
ヒロシの死体を海から引き上げて
司法解剖した結果
鳥丸奈緒子の
自供どおりの結果が出たよ
だが　お前が　やったことは
やったことだ
きちんと罪の償いをするんだぞ
はい
来た　来た
えへ
はじめちゃん！
ほら　急いで　急いで
えっ？
えへ
あっ
ますみちゃん
こっち　こっち
美雪ちゃん
こっちよ
いいんですか？警部
３０分だけだ
明智警視には　黙ってろよ
おっ…
ふふふっ
それっ
君沢先生
さあ　ますみ　舞台に立つのよ
ええーっ　あっ　あっ
ますみちゃん　ほら　見て
えっ？
覚えてる？
みんな　小学校のときの同級生よ
今日は　不動小学校の同窓会さ
はじめちゃん
ますみ　行きなさい
はい！
うわあ　すごくきれい
ますみ
うわあ　すてき
私　やっぱり大きくなったら
モデルになろうっと
俺
ますみに　何をしてやれたんだろう
もっと早く
あいつの苦しみに気付いて
力になってやればよかった
はじめちゃん
力になってあげるのは　これからよそうでしょう　はじめちゃん
美雪…
ああ　そうだな
うーん　さやかさーん
よう　佐木
げっ　先輩
ついに　お前もストーカーか？
ああー　憧れの　あの人は
美術部のマドンナ　僕のヴィーナス
ところが彼女に殺人未遂の容疑が
そんな　あの人が
そんなことするわけない！
僕が　さやかさんの無実を
証明します
あっ　先輩　何でしょう？　これ
分かった　謎は　全て解けて
真犯人は　この中にいる　ですね
う…　うん
「金田一少年の事件簿」…
君に　この謎が解けるか？﻿こちらは　創立祭　運営委員会です
魔術部の　みなさん
危険なので　窓から…
さやかさん
サヤカサン…
えっ…　セ　センパイ！
創立祭の日に　恋が芽生えるか？
え…
あ　イエ　その…
アン
これが　青春なんだろうか？
クフフ
デヘハハハ　相手は　何と
美術部のマドンナ　神津さやか
マードンナ人ってか？
ちょっと　センパイ
あ　はじめちゃん
よう　美雪
七瀬センパイ
どうしたの？
はじめちゃんが　美術鑑賞？
実は　この　かわいい後輩
佐木竜太君が
美術部のマドンナに…
ちょ　センパイ！
アラ　美雪ちゃん
あ　さやちゃん
いらっしゃいませ
美術鑑賞喫茶　アトリエに　ようこそ
だはは　さやかさん…
どうしたの？
あ　紹介するわね
あたしの友達　神津さやかさん
こんにちは
はじめちゃんは　知ってるわよね
どうも
で　後輩の　佐木竜太君
初めまして
アレ　初めましてだっけ？
ブルルル…
ヘンなの
あ！そうそう　さやちゃん
おいしいスパゲティ屋さん
見つけたの
そこのカルボナーラが
絶品なのよ！
学校終わったら　行かない？
うん　行く行く
そうだ　２人も行く？
え？
ええっ！
そ　それって　ダブルデート？
ハ　ハイ　お供しやす
４時から
美術部の交代式があるから
５時に校門のところで　どう？
交代式って？
３年生は　創立祭が終わったら
部を引退して
２年生の新しい部長に
美術準備室のカギを渡す
恒例の引継ぎ式があるの
ふーん
新しい部長って誰？
それが…
私なの
ワアー　さやちゃんが？
私　とろいから　とっても不安で
あ　あの…
そんなことはない　ですよ
ちょっと！
何やってんのよ　さやか
もう　とっくに　オーダー
出来上がってるのよ
さっさと持ってってよ
す…　すいません　轟センパイ
ったく　とろいんだから
おっかねえ
許せん
謝んなさいよ！
言いがかりは　やめて
確かに
ここに運ぶときに　あなたの絵に
私の額が　ぶつかったわ
でも　あれは傷じゃない
違うわ！
あたしは目がいいの
ここからでも
傷がハッキリ見えるんだから
ホラ　あそこよ
おあいにくさま
私は　両目とも１．５よ
あれは絵筆の跡！くどい人ね
あのねえ
うるさいわね！
ケンカなら外で　やんなさい
そうです
ええー！
これは失礼　君たち　ここは
美術作品を　ゆっくりと
鑑賞してもらうところですよ
みんな　そろそろ店を閉めて
大掃除を
先生　しばらく　お待ちを
私の美術部生活
最後の作品が未完成なんです
え？
いまいち　バランスが取れなくて
あちこち
糸ノコで削っては　いるんですが
アハ…　それで　十分　傑作だよ
え？
ホントですか？
ぼ…　僕は　美術準備室で
いつものように
絵を描いているから
お褒めの言葉
ありがとうございまーす
さあ　始めましょう
じゃ　美雪ちゃん
５時にね
やったあ
でーと
えっ！佐木君が　さやちゃんを？
ああ
こいつ　一目ボレしちゃってから
彼女の姿が頭ん中で
リピート再生モードに
なってるんだとさ
頭の中の
ストップボタンを押しても
彼女の映像は　止まらないんです
ワーオ
電源　切っちゃえば？
あ！
ごめんなさーい　待たせちゃって
さーやかさーん
創立祭も無事に終わりましたね
教頭先生
やれやれですな
お？
どうしました？
え…　な　何だ　これは？
せ…　石こう像のようですな
ん？
いや　カギは閉まってるな
な　中津川先生！
アー　食った食った
おいしかったでしょう？
とても！
今度は　イカ墨スパに
チャレンジよ
うん
女神だ
天使　ビーナスだ
そして　お前は　ストーカーだ
アラ　うちの前に誰か来てる
あ　剣持のオッサン！
おお　金田一
何か　あったのか？
ああ
そちらのお嬢さんに用があってな
え？
神津さやか君　中津川教諭
殺害未遂の重要参考人として
署まで　ご同行願いたい
ええっ？
さあ　ハッキリ説明してください！
どうして　さやかさんが
犯人扱いされなきゃ
ならないんですか？
お…　お前
ここを　どこだと思ってんだ！
まあ　落ち着け
しかし…
説明してください！
わ…　分かった　分かった
そう　熱くなるな
ヨシヨシヨシ
あー　午後６時ごろ
見回りの警備員と教頭が
美術室で
石こう像が壊されていたのを発見
えー　続いて
美術準備室のカギを開けてみると
中には　後頭部を殴られた
中津川教諭が倒れていて
その周りには　凶器と思われる
ビーナスの石こう像の破片が
飛び散っていた
ひどい…
中津川先生は？
うん　幸い　命に別状はない
ああ　よかった
だが
そのショックで　肝心の記憶が
すっ飛んじまったらしいんだ
ええ？
だ　だからって
なぜ　さやかさんが
さやかさんが容疑者なんですか！
最後まで聞け
問題は　準備室のカギだ
中津川教諭が１つ　警備員が１つ
それと　美術部の部長が１つ
それぞれ持っている
そうだね？
あ　はい
事件のあと　中津川教諭の
ポケットから１つ見つかった
警備員は教頭と一緒で
アリバイもある
そして　犯行時
確認が取れていないのは　神津君
君が持っているカギだけなんだ
で　でも
私が　カギを預かったのは
交代式が終わった４時半です
それまでは
カギは美術室にありました
うん　４時半以降は
君が持っていたことは認めるね？
はい
では　美術室の石こう像は
全部で　いくつあるか
教えてくれないか？
はい　７体です
そのうち　ビーナスとアドリアネは２体ずつです
オッサン　石こう像の数に
何の意味があるんだ？
それが　大有りなんだ
写真？
不動高校写真部が
卒業アルバム用に
今日　撮ったものを
警察で　急ぎ　現像したんだが
石こう像は　７体
すべてそろっている　つまり
この写真が
撮られたときまでは
事件は起きていない
ああ
問題は写真を撮った時刻だ
これは　交代式のあと
５時に撮られたものだ
５時？
つまり　犯行は５時すぎってことかその時間
カギを自由に使えたのは
神津君だけだ
何！
私は…
５時から
金田一たちに会うまでの３０分間
君は　どこに？
ゴミを出しに　ゴミ置き場へ
途中　誰かに会ったかね？
いえ
つまり　アリバイなしということだそんな
言いがかりだ　警察の横暴だ！
何っ！
はじめちゃん
どうにか　ならないの？
うーん…
さやかさん
佐木君？
現場１００回
警察は　何か見逃しています
さやかさんは　犯人じゃない
僕が　真犯人を捜し出す！
ワーオ
オッサン　佐木　マジだぜ
一般人に現場を荒らされちゃ
かなわんな
行くぞ
アアー
うっひゃあ！
ひどい…
オッサン　ヘンだと思わないか？
ん　何がだ？
なぜ　犯人は
石こう像　全部を
跡形もなく砕いたんだろう
ここで中津川教諭が　倒れとった
凶器となったビーナス像の破片も
そのときのままだ
石こう像の壊れ方が違うな
美術室のは粉々なのに
こっちは　ワリと形が残ってる
ワア！
きれい
先生が描いていたのは
これだったのね
道理で
道理でって？
近頃　先生は　放課後になると
ビーナス像を
ここに持ち込んでいたの
え？
ビーナス像の１つは
事件の前から　ここにあったのか
だとしたら　誰が？
僕が　さやかさんを守ってみせる
あ…　何でしょう　これ？
え？
ん？
ガラスか？
薄いコンタクトレンズのような
念のために　鑑識に回しておくか
ちょっと何のマネよ！
ちょっと何のマネよ！
創立祭の代休日に呼び出しといて
尋問ですって？
いわゆる　ひとつの
僕たちを疑ってるってことかい？
最低！
あ…　イヤ　そういうわけでは
ああっ！
やっぱり　これ　絵筆の跡じゃない
初音　アンタ　またケンカ売る気？
あたしも　目には自信があるの
頭きた！
コラコラ　始めるぞ
こっちに来てくれ
フン
交代式のあと　特に５時以降の
行動を聞かせてくれないか
私は　交代式が終わった
その帰りに　本屋に寄ったわ
瀬名君も　いたわよね？
ええ
僕も　轟さんを見ました
あたしは
友達とゲーセンに行ってたわ
誰かさんのことで
ムシャクシャしてたから
発散したくってね
私は　まっすぐ　うちに帰りました
ゲーセンで遊んでるほど
暇じゃなかったので
５時半には　「笑点」を見てたわ
もう　いいでしょ？
あたし　用があるの
いま　何時？
時計　忘れちゃったんだ
ああ　２時半です
たいへん！
３時に待ち合わせしてるの
悪いけど　失礼するわ
あたしも帰ろ
それじゃ　僕も
ホントに　さやかが犯人なの？
それは　まだ
神津さんじゃありません！
私も　そう思う
え？
さやかは　鈍くて　とろいけど
悪い子じゃない
先生に　あんなこと
するわけないわ
じゃ
いい人だ
やはり　５時以降
学校に残っていたのは
神津君だけか
ちょ　ちょっと！
さやかさんのアリバイを
確認してたんですか？
く…　センパイ
うーん
ん…　ヘンだな
センパイ？
オッサン
佐木の見つけた　例のカケラ
何だか　分かったかい？
ああ　あれなら
昨日　お前が言ってたとおり…
そうか
佐木　どうやら分かったよ
え？
真犯人の正体がな
何？
じらさないで教えてくださいよ
誰ですか？
誰が犯人なんですか　センパイ！
アイタ！
何やってんのよ
スイマセン
これは　瀬名さんの…　あ？
そうか　そういうことか！
謎は　すべて解けた
頭きちゃう！
仕方ないでしょ
警察が来いって言うんだから
まるで　犯人扱いじゃない
ああっ！
あれー？
石こう像が　元に戻ってる
それは　警察で用意したものだ
えっ？
さやか
神津君
みなさん　真犯人が分かりました
ええっ！
中津川先生を襲った犯人は
いま　ここにいる！
これから
事件のトリックの説明をしながら
犯人の正体を明らかにします
まず　犯行は　掃除が終わってから
交代式までの間
つまり　中津川先生が
準備室に　こもっていた
４時から４時半の間に
行われていた
何！
凶器は
準備室にあったビーナスの像
でも　ビーナス像は
ほかのと一緒に　写真部が５時に
そう　確かに写真には
２つのビーナス像が写ってる
中津川先生は　毎日遅くまで
ビーナスをモチーフに
絵を描いていた
創立祭の日もね
当然
ビーナス像も準備室にあった
片づけた人　いる？
いいえ
そりゃ　そうさ　この写真に写った２体のビーナス像は
本当は　１体しかないんだからね
え？
何だと？
ええ？
よいしょ…
つまり　こういうことだ
もったいなーい
セ　センパイ？
よいしょ
写真と同じだ
ビーナス像が２体に…
犯人は　このトリックを使って
犯行時刻を　交代式のあとに
見せかけようとしたんだ
５時以降にね
犯行に使われた　この糸ノコは
佐木が　偶然見つけたんだけど
そのとき
糸ノコは　きれいに洗ってあった
石こう像を切ると　見てのとおり
歯には切りくずがついている
そうだ　大掃除のあと
うっかり　糸ノコを洗わずに
置きっぱなしだったな
だが犯人は　切りくずを洗い流して証拠を消そうとしたが
かえって　それが
あだとなってしまった
警察で回収した破片を調べれば
糸ノコの傷が見つかるはずだ
砕かれた石こう像の破片に
そんな意味があったのか
でも　何で　それで
犯人が分かるのかな？
オッサン　あれを
おお
犯人は分かってるよ
その落し物の　おかげでね
あ…
さやかさんの疑いは　僕が晴らす
佐木君？
これは　犯行現場から
私が見つけました
何よ？それ
ハードコンタクトレンズの
カケラです
ハードコンタクト？
恐らく　犯人が殴りかかったときに
落としてしまったんでしょう
じゃあ　犯人は近眼ってこと？
いっ…
そのとおり！
だが　さやかさんは
コンタクトしてます
ええーっ！
ったく…
センパイ！
どうしよう
ハイハイ
犯人は
コンタクトしてるんでしょ？
私は　メガネよ！
僕も
そう　あなたたちでも
さやかちゃんでもない
真犯人は　アンタだよ
汐見初音！
初音が？
で　でも　初音
目がいいって自慢してた
いや
アンタは　本当は近視で
普段はコンタクトをしていたんだ
しかし　いまは
１メートル先も見えないはずだ
それに　あのときも
あのとき？
アリバイを聞いてたとき
時間は何時かと尋ねたよね
それは　腕時計を忘れてきたから
違う
あのとき　コンタクトをしていたらその必要は　なかったはずだ
なぜなら
俺の　すぐ後ろには
デジタル時計が　あったからさ
視力１．５の人が　２メートル先の
大きなデジタル時計を
時計であることすら
気がつかないはずがない
そして　アンタは不自然なくらい
俺たちの前で
目がいいことを強調した
やっぱり　これ　絵筆の跡じゃない
それは
コンタクトを落としたことを
知られたくなかったからさ
何しろ
アンタが
コンタクトを落とした場所が
先生を殴り倒した
犯行現場だったんだからね
な…
そうなの？初音
そんな…
あの日
創立祭の後片づけが終わって
偶然　誰もいなくなったの
私は　準備室にいる
先生のところに
汐見です
おお　入れ
失礼します
先生
先生は　絵に夢中で
私に顔も向けてくれなかった
何が　あったんだ？
あたしは　先生に
ずっとずっと胸にしまっていた
思いを打ち明けたかった
だって　交代式が終われば
あたしたち３年生は
もう　美術部から離れるんだから
先生の　そばに
いられなくなっちゃう
お別れなのよ！
初音
でも…　でも　先生は
汐見君
君の気持ちは嬉しい
だけど　僕には　もう
心に決めた人がいるんだ
そう　心のビーナスがね
その言葉で　体中　熱くなったわ
自分が　とても　みじめに感じて
先生
分かってくれ
君は高校生で　まだ心は幼い
先生
残酷なことを言うけど
一時の憧れと思ってくれないかな
先生…
僕には　ビーナスしかいないんだ
先生　こんなもの！
あっ！
何度　呼びかけても
動かなかった
死んでしまったと思ったの
なぜ　偽装工作なんか？
だって　怖かったのよ
先生を…　大好きな先生を
殺してしまったなんて
汐見さん
あたしが
そんな恐ろしいことするなんて
信じられなかった
認めたくなかった
あたしが望んで
やったわけじゃないのに　なぜ？
何かの間違い
そうよ　間違いなのよ
そう思い込んで　あとは夢中で
あたしは　取り返しの
つかないことをしてしまった
汐見君
先生！
中津川さん！
先生…
あ…　アンタ　寝てなきゃ
刑事さん
あれは　事故だったんです
記憶　戻ったんですか？
僕が立ち上がったときに
つまずいて
そこに像が落ちてきた
ただ　それだけの
事故だったんです
た　ただ　それだけって　アンタ…
汐見君
あの絵は　僕には
とても大きな意味があって
無性に　心の中に宿ったビーナスを描きたかった
君を傷つけるつもりは
なかったんだ
ゆるしてくれ
そんな　優しいこと言わないで
ホントは　あたしのこと
怒ってるんでしょ？
ええっ　何を言ってるんだ
君も　みんなも
僕にとっては　大切な生徒たちだ
先生！
事件解決だな　佐木
はい
そうか？
先生！ごめんなさい
ごめんなさい　あたし
あ…　オイオイ
こんなところを
僕のビーナスに見られたら
怒られちゃうよ
せ　先生のビーナスって？
僕のフィアンセだよ
オウ！
すっばらしい
あのビーナスの絵は
フィアンセの方だったんですね
ステキ！
そんな…
ええっ？
結局　この事件で殺されたのは
女神だけだったわけか
何！
お前　美術部入るってか？
はい　それで　僕
さやかさんの肖像画を
描いてみました
へえー
佐木君が？
見せてみろよ
ジャーン
どうですか？
さやかさんの美しさが
僕の筆で
完ぺきに表現されてるでしょ？
おはよう
えっ！
さーやかさーん
これ　見てもらえますか？
あー　ダメだよ
佐木君　絵を描いたの？
はい！
さやかさんの肖像…
ワー！
見ちゃダメー！
見ちゃダメー！
日本古来の言い伝え
神「凶鳥の命」に捧げるため
祭器　魔神具が４体　作られた
その　すべてを　そろえた者に
望みのままの富と名誉を与えん
さらには　災いを呼ぶ呪いを
受けるのが運命
ええ？
そんな魔力を鎮める封印の村へ
俺たち　向かってるんですか？
宗像センパイ
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
ええー　磨陣村？
何　それー
日本海だって言うから
おいしいモン食べるのかと思って
ついてきたのにー
しかも　山奥の村なんかさー
お前に　一緒に来てくれなんて
誰が言ったよ
ね　こんなヤツ
その磨陣村ってとこにさ
ひとりで行かせて
あたしたちだけでさ
おいしいもの食べに行きましょう
ええ？
ね　決まりー！
そうじゃなくて
そうしたほうが　いいかもな
え？
磨陣村には
俺　ひとりで行ってもいいよ
はじめちゃん
でも　そう思うのも無理ないわね
だって　あの事件は
あまりにも哀しくて
やり切れないものだったから
事件…　その磨陣村で？
あのとき　俺と美雪は
宗像センパイから　遺跡の発掘の
アルバイトを頼まれて
出雲地方の山あいの村
磨陣村へと向かった
宗像センパイ　まだー？
もうすぐよ
さっきから
もうすぐ　もうすぐって
もう１時間も歩いてますよ
大丈夫　もう半分は来てるわ
がんばって　金田一君
えっ！
あと１時間もあるんですか？
ああ　まいった　まいった
さあ
このトンネルを抜けると　すぐよ
えっ　ここを通るんですか？
そうよ　ここを通らなければ
村に入ることも
出ることもできないの
センパイ…　ということは
このトンネルが崩れたら
私たち　村に
閉じ込められちゃうんですか？
まあ　そういうことね
ところで　宗像センパイ
なあに？
遺跡の発掘なんて
センパイの　お父さんって
考古学に関係ある仕事でも
してるんですか？
ええ
でも　父は死んだの
え？
１年前　大雨の中
ひとりで発掘をしていた父を
土砂崩れが襲ったの
それで　ちょうど１周忌に
中断していた発掘を
再開することになったの
そうだったんですか
これが　あたしの生まれた
磨陣村よ
これが　磨陣村…
残念ね
え？
あなたたち　まがどり様に
あまり歓迎されてないみたい
まがどりって？
我の意を継ぎ　我を崇めよ
凶鳥をうたえ
富と災いの呪いを
金田一君
はい
後ろにある綱を引いてくれない？
綱？
ああ　これのこと　あ？
あれは？
村に入るときは
あの鐘を鳴らすことになってるの
へえ
いま　磨陣村には
あの３軒の家しかないの
たった　３軒？
宝玉の館　矛の館
そして　私の実家が
あの七鏡の館
昔は　ほかに　もうひとつ
銅鐸の館があったけど
１０年前
火事で燃えてしまったわ
銅鐸って　確か
日本の古代の道具だったよな？
そう
釣鐘のような形をしているのよね
かつては　それも含めて
この村の４つの館は
すべて　宗像家のものだった
へえー　すごいですね
さあ　行きましょう
ステキ！まるで
ヨーロッパの古いお屋敷みたい
あ？
何だ？
あの人は　あたしのお母さまよ
えっ！お母さまって
あの人が？
ええ
お母さまは人前に出るのを
極端に嫌っていて
いつも　あの服を着て
ヴェールを被ってるの
気を悪くしないでね
特に　いまは
お父さまの１周忌だから
つらいのよ
でも
センパイのお母さまですもの
スゴイ美人なんでしょうね！
それが　あたし
一度も素顔を見たことがないの
え？
さつきちゃん
あ？
やっぱり　さつきちゃんね
明日香おばさま
去年のお父さまの葬儀以来ね
元気にしていた？
ええ
おばさまも元気そうで
宗像センパイ　この人は？
港屋明日香さん
宝玉の館に住んでる方よ
さつきちゃん
ひょっとして　この人が？
そう…　お父さまが亡くなって
もう　１年たつものね
マアマアマア！
さつきお嬢様さま
お帰りなさいまし！
弥生さん
金田一君　こちら家政婦の
村西弥生さん
長旅で　お疲れになったでしょ
さあ　どうぞ　こちらへ
うわあ…　バ　バケモノ！
ウワアー！
やあね　２人とも
これは　うちで祀っている
神様の像よ
え…　神様　これが？
ええ　この磨陣村の守り神
凶鳥の命よ
凶鳥の命…
お嬢さま　部屋の空気の入れ替えの途中でしたので
あたくし　ちょっと失礼します
はい
じゃあ　この館の中を案内するわねあ　はい
何を　なさってるんですか！
あ？
あれほど　陳列されたものには
触れないでくださいと
やだなあ　これは
この家の鏡じゃありませんよ
ホラ　この三ノ鏡は　以前
奥様が割ってしまったって
言ってたでしょう
こないだ町で
よく似た鏡を手に入れたんで
ここに　かけてあげようと思ってね
どうかした？
いやあ　お嬢さん
お久し振りです
何でもないですよ
それより　発掘の手伝いを
してくれる人たちが
２階に集まってますよ
まあ　あいさつに伺わなきゃ
僕ら　先に行ってますから
じゃ
あの人たちは？
大和様と蘇我様は
亡くなられた　ご主人様の
助手でございます
父が亡くなったあとも
宝玉の館と　矛の館に残って
遺跡の研究を続けているの
それより　あたしたちも
２階に　あいさつに行きましょう
あ…　はい
じゃあ　弥生さん
あたしたちのバッグ
玄関にあるので　よろしくね
はい　かしこまりました
こんにちは　みなさん
おお　さつき君
あいかわらず　美しい
お久し振りです
国守さん
こちら　金田一君と七瀬さんです
よろしくお願いします
力仕事しかできないスけど
ほう　君が
え？
私は　今回の発掘の
指揮を執らせていただく
東城大学の　国守です
さつき君の父上とは
古くからの考古学仲間でね
しかし　バイトなんかじゃ
かえって足手まといになるのでは
神具を壊されたりしたら
かなわんぞ
そんなことをしたら…
とんでもないことになるぞ
え？
あなた　失礼ですよ
気にしないでくださいね
どうぞ　適当なところに
腰かけてくださいな
ああ
あ　ところで
その　じんぐって何なんです？
神様の道具と書いて「神具」
古代日本の宗教行事で
使われていた道具のことさ
今回の発掘の目的は
この村の　どこかに埋まっている
４つの神具を
捜し出すことなんだ
４つの神具？
この磨陣村では　大量の遺跡や
出土品が発掘されている
えー　ただし
今回発掘する４つの神具は
ただの出土品ではない
凶鳥の命に捧げられたという
呪われた魔神具なのさ
呪われた　魔神具？
でも　そんな
呪われたものを発掘するなんて
フン　何にも知らんのだね
魔神具は
４つ　すべてを　そろえた者に
富と名誉をもたらすと
言われているんだ
例えば　ミカン船で有名な
あの紀伊国屋文左衛門も若いころ
偶然に　４つの魔神具を手にして
いたという記録が残っている
その後　文左衛門の手を離れて
４つバラバラになり
所在が不明になった魔神具を
すべて　そろえた者がいた
その人物の名は　宗像吉衛門
さつき君の
ひいおじいさんにあたる人物だ
ええーっ！
センパイの　ひいじーちゃんが？
そうよ　落ちぶれた商人だった
ひいおじいさまは
魔神具を手に入れた途端
一代で巨万の富を築き
帝国議会の議員にまで
のしあがったわ
へえー
だが　魔神具には
富と力と災いを与えるという
言い伝えがある
その後　宗像吉衛門の家族は
次々と奇怪な死を遂げたんじゃ
それに恐れをなした吉衛門は
この村の遺跡群のどこかに
魔神具を埋めてしまった
まったく
余計なことをしてくれたもんだ
でも　多くの人が
恐ろしい死に方をしたのは事実よ
だから　ひいおじいさまは
呪いを鎮めるために
一族全員で　この村に移り住み
魔神具を
凶鳥の命の元に戻して
代々　崇めることにしたのよ
じゃあ　この村は…
この磨陣村は
魔神具の恐ろしい魔力を
封じるために作られた
封印の村なのよ
封印の村
まあ　そういう　まがまがしい
伝説のある魔神具ですが
考古学的価値は計り知れない
鳥辺野君　あれを
お　そうだ　申し遅れましたが
彼は　私の助手でしてね
さて　さつきくんの父上
宗像志郎氏が亡くなった
いまとなっては
魔神具発掘の手がかりは
この七鏡の館に
隠されているという暗号と
９０年前　吉衛門が作らせたという
この４つの魔神具の
レプリカだけなのです
呪いの魔神具か
そんなヤバイもん
掘り出そうなんて
とんでもないトコ
来ちまったなー
あ？
誰か入って来たのかな
金田一君
ええっ！あ…
む　宗像センパイ…
い　いや　その…　セ　センパイ
俺　すぐ　出ます…　から
金田一君
あなたに来てもらったのには
わけがあるの
あたしのこと　どう思う？
あ　あの…　セ　センパイ
お　俺…　あ…
出直してきまーす！
ああっ！
キャアー！
センパイ
センパイ　どうしたんです？
凶鳥様が！
何も　いませんよ
ホントよ　さっきは　いたのよ！
凶鳥の命が？
お嬢さま　どうなさいました？
オイオイ
いったい　何があったんだよ？
凶鳥の命が現れた？
そんな　バカな！
ここにいる　誰かのイタズラに
決まってるよ
今まで何をしてたか
ひとりひとりに
聞いてみようじゃないか
ちなみに　俺は
部屋で本を読んでた
私は　部屋で鳥辺野君と
資料の整理をしていた
私は　妻と
食堂で茶を飲んどったよ
その　お茶を　お出ししたのが
あたくしですから
俺は　部屋でテレビを見てたよ
私も　部屋に　ひとりで
俺は　風呂上がりで
部屋に戻る途中だった
俺も　部屋で
原稿を書いていたよ
だいたい　夜のこんな時間は
ひとりでいるのが　普通だろ！
こんな　あいまいな
アリバイ証言から
犯人を割り出せるものか！
それが　できちゃうんだな
な…　何だって？
ホントかよ？
ああ
この中に　ひとりだけ
ウソをついている人物がいる
おそらく　そいつが
凶鳥の命の格好をして
宗像センパイを脅かした
張本人さ！
凶鳥の命の格好をして
さつきさんを驚かしたヤツが
この中にいるって？
ああ　さっきの証言で　ひとりだけ
ウソをついている人物が犯人さ
そして　その人物は
大和さん　あなたですよ
大和君　君が？
バ…　バカ言うなよ
俺は　部屋で
テレビを見ていたって言ったろ
なら聞くけど　大和さん
その胸のポケットの
メガネは
どうかしたんですか？
こ　これは…
つい　さっきまで
テレビを見てたのに
昼間　メガネをしていた　あなたが
どうして　いまは
メガネを外してるんですか？
そ　それは…
メガネを　かけたままじゃ　自分が
犯人だとバレてしまうからさ
メガネで犯人だと分かるって
どういうことだ　小僧？
おそらく　大和さんは
宗像センパイを脅かすつもりで
露天風呂で待っていたんだろう
そして　センパイが
ひとりになったところで
凶鳥の命の格好をして現れ
騒ぎになったところで　変装を解き
何食わぬ顔で
みんなと一緒に姿を現そうとした
だが　ここで　ちょっとした
ハプニングが起きた
２月の山奥じゃ
外は凍るように寒い
隠れて待っている間に
冷えてしまったメガネは
暖かい室内に入った途端
真っ白に
くもってしまったんですよ
暖房の効いた部屋から来たんなら
メガネは　くもったりしないだろ？
あ…　あ　チッ　ったく
ああ　そうさ　俺がやったさ
ハン　ほんのジョークさ
ちょっと脅かしてやろうと
思っただけだよ
貴重な凶鳥の面を
そんな　くだらないことに使うとは
きさま　呪いが降りかかるぞ
フン
これが　今回
みなさんに発掘してもらう
凶鳥の座です
亡くなった宗像君は
この中のどこかに
魔神具が埋まっていると
考えていたんだ
え　この中って
どっから入るんスか？
こっちだ
この鏡岩を開いて入るのさ
へえー
この岩だけ　ツルピカなんだ
なるほど　このくぼみに手をかけて横に動かせば　いいんだな
ビクともしないぞ
これは　２人がかりじゃないと
動かないのよ
え？
でも　取っ手は１つしかないし
ほかは　ツルツルで
とっかかりになるところなんか
このカギを
ここに差し込んで　ひねると
あ　はずれた！
この鏡岩は
元々あった　２つの取っ手のうち
１つを　こうして隠すことで
開けられないように
工夫されているの
へえー
そっちを持ってくれ
あ　ハイ
２人がかりで　同時に引けば
わあ…　カビくせえ
当たり前だ
１年振りに開けたんだからな
では　発掘作業に
とりかかりましょう
あっ　やっべえ…　割れちまった
ああ…　何てことを
バカ野郎！
これは古墳時代の埴輪だ
そんなこと言ったって…
イテッ！
誰だ　通気孔から
こんなもの突き出したヤツは！
あっ　ゴメンなさい！
小僧　やっぱり　きさまか！
土器なんかは　結構出たけど
肝心の魔神具は見つかりませんね
まあ　仕方ないさ
そう簡単に
見つかるものじゃないよ
国守教授　これで最後です
おう　蘇我君
もう中には　誰も残ってないか？
はい　俺が確認しました
よし　入り口を閉めて　館に帰ろう
はい
オイ
ハイ　このカギは
金田一君が預かってね
え　でも…
あたし　あなたのこと
いちばん信用してるんだから
フン！
何だよ　美雪？
別にー
何だよ？
その態度は
別に
お風呂上がりなのに
なーんか　サッパリしないな
あ　何だ　この臭いは？
ああっ　ガス漏れだ！
プロパンガスの臭いだ
家中の　窓や戸を開けろ！
新鮮な空気を入れるんだ
窓を開けて！
お台所でガス漏れですって？
ガス管が　ゆるんでたってさ
たいへんだったわね
ホントに　お騒がせして
申し訳ありません
そんな…　台所も　弥生さん
ひとりで切り盛りしてるんだもの
特に今回は　お客様も多くて
たいへんでしょ？
あたしも手伝うわ
いいえ
港屋の奥様が
そんなこと　なさらなくても
いいのよ　どれ？
今夜のメニューは…
あら　ローストビーフなんて
たいへんじゃない
いえ　昼間のうちに
全部作っておきましたから
あたくし　ひとりでも
遠慮しないで
何でも手伝うから
それじゃあ
盛りつけのほう　お願いします
おいしいわね
フン　もっと温かいものが
食べたかったなあ
江戸川さん
せっかく
弥生さんが作ってくれたのに
なかなか
イケてる味だと思うがな
そういえば
大和君の姿が見えないが
部屋で寝てるんじゃないですか
ごちそうさま
ホントに　おいしかったわ
それじゃ　お先に
さて
私も　資料の整理に戻るとするか
俺も　そろそろ部屋に戻るか
お休みなさーい　はじめちゃん
いつまで食べてんのよ
あ　もしかして　それ…
大和さんの分
もう！大和さんが来たら
どうすんのよ
俺のカップめんで
勘弁してもらうさ
あ…　あ？
キャアー！
どうした？美雪
凶鳥の座に　凶鳥の命が
え　何だって？
何も　いないじゃないか
そ　そんな…
どうしたんだ？
昼間の作業で疲れてるんだよ
あとで　お茶でも　いれて
部屋に持ってってやるからさ
おっかしいな
どうしたの？
あ　センパイ　火がつかないんスよ
え？
そんなハズないけど…
ホラ
あれ　ヘンだな
何だ　あれは！
どうしたんです？
見てみろ
凶鳥の座に　カラスが？
暗いな
私はペンライトを持ってる
あっ！
や…　大和
ど…　どういうことだ？
鏡岩には
カギが　かかっていたはずだ
開けられるはずがない
カギは　ずっと
俺が持ってましたから
われわれが引き上げるときには
誰も　いなかったはずだろ？
そ　そうです　俺が確認したときは
誰も　いなかったんだ
魔神具の祟りじゃ
凶鳥様が
お怒りになったんじゃ
違う　祟りなんかじゃない
何？
これは　完全な密室殺人だよ
凶鳥の座で見つかった
大和さんの死体
そして　そこに残されていたのは
宝玉のレプリカ
どうして　こんなところに？
待てよ　消えてしまった
魔神具のレプリカは
鏡と矛　そして
ひとつだけ残された銅鐸
魔神具には
いったい　どんな秘密が？
教えてください　宗像センパイ
えっ！
でも　その話が本当だとしたら…
ダメだ　みんな　戻れ！
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿君に　この謎が解けるか
これで　すべては
丸く　おさまるのよ
自分で割ったのよ
自分で割った？
ええ
今日子さん　あのね
あ…　今日子さん？
ああ！
ちょっと　何してるの！
いいのよ　これで
ね？
最初に来たとき
鏡が１枚だけ割れてましたよね
「丸く　おさまる」か
どういう意味なのかしら？
ワア
はじめちゃん　雨上がったわよ
まだ　風はあるけど
アラ？
ねえ　見て　変なものが
あ？
あ　ホントだ　何だろう　アレ
ええ　あれは
今日子さんが結婚して　すぐのころ
そして　割られた鏡
石燈籠？
ほかにもあるよ
釣り鐘を落としたのかしら？
いや　あの状況で
大和さんを殺したあと
犯人はどうやって
石室の扉を閉めたんだろう？
石室の入り口をふさぐ鏡岩は
大人２人がかりでなけりゃ
動かない
犯人ひとりで閉めることは
不可能だ
第２の事件
犯人は　どうやって
港屋さんの上に
港屋さんだけを狙って
釣り鐘を落とすなんて不可能だ
蘇我さんが残した
ダイイングメッセージ
犯人にとっても　あれは
予期せぬ
出来事だったんじゃないかな
どういうこと？
犯人の狙いは
俺たち全員を磨陣村に
閉じ込めることだったんだ
釣り鐘が落ちてくることまでは
予想してなかったんじゃ
ないんだろうか
凶鳥の命は　予想外の死をも
魔神具の呪いに結びつけたんだ
そして　第３の殺人
ああ　石燈籠だよ
歴史的な遺跡や石像なんかを
まねて造ったものだ
そして　犯人は
まだ　どこかに潜んでる
もしかして
俺たちは　今まで
危ないなあ
何か　引っかけてあったのかしら？
あ…　そうか　分かったぞ
このクギには
蘇我さんが握っていた
日めくりカレンダーの本体が
かけてあったんだ
えっ　じゃあ
本体は　どうしたの？
おそらく犯人が持ち去ったんだ
犯人が？
とんでもない
思い違いをしてたのか…
何か関係が…　アイッテ！
何だ？
どういうこと？
蘇我さんの部屋だ
おそらく蘇我さんは見たんだ！
ちょっと　待ってよ
はじめちゃん
さっきから黙ってるけど
蘇我さんの部屋で
何を見つけたの？
ヤダ　こんな
カビ臭いところじゃ
息が詰まっちゃうわ
あー　いい空気
うん？
どうしたの？
あ　こんなところにクギが
そして　おそらく
あの５つのモニュメントとも
ほら　あれが　まが玉の池
あれ？鳥辺野さんだ
ホント　何してるのかしら？
あの真ん中の玉は
ヒスイだそうだよ
それから　こっちは
魔閻地蔵
へえ
面白い
あっちにもあるよ
あ　これ見たことあるぞ
東北なんかにも　あるんだろう
環石群
全部で５つある
うん？
ああ…　どうも
これでラスト
この図の中に
何かヒントがあるはずなんだ
え？
５つ目のモニュメントだ
ヘエー　でけえ！
酒石　オリジナルは何に使われたのか
定かではないけれども
いずれも　この館が
できたときから　あるものだよ
へえ
うーん
どうしたのよ　はじめちゃん？
宗像センパイの　お父さんは
この図を暗号だと言っていた
第１の事件
鏡岩を開けることができたとして
だけど　本物の魔神具は
まだ見つかっちゃいない
はじめちゃん　急ぎましょう
また　一雨きそうよ
事件だよ
早く先　教えろよ
はじめちゃん　何か飲まない？
私　ノド　かわいちゃった
ん…　ああ　そうだな
フミちゃんは？
何でも　美雪おねえちゃんに任せる
待っててね
うん
はじめ
もったいぶってんじゃねーぞ
何が？
お待たせ
ありがとー
まだ　話の途中なんだからよ
あなたが金田一君ね
あ　はい
これを
これを　明日の朝
さつきに　お渡しいただけますか？
あ　はあ…　でも
それなら　ご自分で渡したほうが
お願いします
あ　はい
さつきに伝えてください
チェッ　ケチ
そうでしょ？
うっせーな
私が　すべて背負っていくからと
すべて背負う？
我の意を継ぎ　我を崇めよ
本物の魔神具の
ありかを見つけること
それが　すべてを明らかにする
カギなんだ
そのためにも　この七鏡の館の
暗号を解かなければ！
待てよ…　矛のレプリカが
まだ見つかっていない？
ということは　まさか…
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
宗像センパイの依頼で
俺と美雪は　磨陣村にやってきた
ね　ね
そいつって　絶対　怪しいもん
だが　この村に伝わる
「凶鳥の命」の伝説は
連続殺人へと　発展していった
わしらが　魔神具を
勝手に掘り出そうとした呪いだ
あな…　た
これは　呪いなんかじゃない
ん？
あなたが　金田一さん？
分かった　その今日子さんって人が犯人でしょ？
もう　凶鳥様の呪いに
おびえることはない
これからも
さつきを　よろしくお願いします
すべて　殺人というかたちで
実現された
あっ！センパイ
さつきセンパイ！
フッフハハハハ…
これで　４つの魔神具の
すべての呪いが出そろったわけだ
魔神具の呪いは　もう消えた！
俺たちは助かったんだ
ハッハハハ
お…　お母さま
うん？
宗像センパイ
あの　さつきセンパイは
どうした　何があった？
今は　落ち着いて
眠ってらっしゃいます
そうですか
さつきセンパイ　お気の毒に
あの　これを
宗像センパイに渡してください
センパイの　お母さんからだって
はい
本当に　これで終わりなんだろうかえ？
なくなった４つの魔神具の呪いは
これは
あれは　さつきセンパイの
お母さまのベール！
あ…　あのー
やっぱり　話しておいたほうが
いいよね
どうなってんだ？
我が姿を暴く者
いにしえより　時を越えて
凶鳥の裁きに　あわん
凶鳥の名を
宗像センパイ　宗像センパイ
寝てるみたいだな
お母さんのこと
アアッ！
ああ　これは…
ええ？
下だ
まさか
第４の魔神具の呪いが…？
今度は　誰が？
あっ！
凶鳥の命！
くそっ
どこだ　凶鳥の命！
そうか
そういうことだったのか
寒いわね
うわっ！
宗像センパイ　この事件
絶対　魔神具の呪いなんかじゃない
あたかも凶鳥の命の呪いに
見せかけるためにね
プロパンガスのボンベから
ホースで中にガスを注入した
プロパンガスは
少量でも強い臭いがする
大和さんは　まんまと
犯人の罠にハマったんだ
さっきの江戸川さんのようにね
そして　盗んでおいた
宝玉のレプリカを首に巻いて
力いっぱい
大和さんを突き放した
では
その犯人が　ほかの２人も？
中では　大和さんが
ひとりで盗掘をしていたんだろう
金田一君　さっき君は
すべての謎は解けたと
言ってたよね
じゃあ
犯人は　いったい　誰なんだ
それも分かってるんだろ？
犯人の正体を知る手がかりは
ここにある
バカな！そんな２枚の紙切れが
何の証拠に？
それを確認した犯人は
あらかじめ運び込んでおいた
犯人は
こっそり凶鳥の座にやってきた
しかし
重要なのは　これ以外の部分だ
大和さんを絞殺したんだ
では　もし　ここに
危険なガスが注入されたら
どうなる？
そう　例えばプロパンガスとか
中毒死してしまうに決まっておる
いや　俺なら
こうして　生き延びるね
なっ…
こ…　これは
そう　犯人は
おそらく　これと同じ手を使って
魔神具に強い執念を持っていた
大和さんと蘇我さんは
俺たちが
凶鳥の座を発掘した日の夜
宗像教授の１周忌に
１年ぶりで
凶鳥の座が開けられるのを知った
そして　発掘のあと
大和さんは石室に残り
夜になって蘇我さんと合流し
２人で先に
魔神具を掘り出そうと計画した
何らかの事情で
そのことを知った犯人は
逆に　この企みを利用した
殺人計画を作り上げたんだ
確かに
これは普通のカレンダーだ
それ以外の部分？
どう見ても
入り口は　ひとつしかない
そこに
犯人を示すヒントがあったんだ！
いや　むしろ　その逆なんですよ
え？
最初のうちは
この２枚の紙　そのものに
ダイイングメッセージが
隠されていると考えていた
でも
彼のメッセージの本当の意味は
この２枚の破り取られた
カレンダーの本体にあったんだ
何だって？
そんな
この事件　本当に凶鳥の命に
呪われていたかもしれない
カレンダー本体を持ち去っても
みなさん
犯人の正体を知る前に
今から魔神具の
隠された場所に案内します
手がかりは　この館の７つの鏡を
すべて元通りにすること
そうすれば　俺たちは
魔神具の　もとへと導かれる
この真実に気づいた人物
それは　俺と犯人のアンタだ
謎は　すべて解けた
金田一少年の事件簿
肝心のダイイングメッセージは
残ったままじゃないか
な　何だって！
何を言っているんだ
どういうことなの？
事件の日
そういえば　かかってたわね
でも
犯人は　何か理由をつけて
蘇我さんを
この資料室に呼び出した
おそらく　最初の一撃で
致命傷を負った蘇我さんは
同時に犯人の正体を知った
その彼の目に飛び込んできたのは
見たことのあるカレンダーだった
日めくりカレンダーは
このクギに　かかっていたんだ
何だって！
私たちが　かけつけたときは
もう　なかったわ
そこで　日めくりカレンダーの
本体だけを持ち去った
ああ　おそらく
この日めくりカレンダーは
犯人が持ち去ったんだ
蘇我さんは最後の力を振り絞って
カレンダーを破った
だが　犯人は
蘇我さんが破いたカレンダーが
ダイイングメッセージだと
気がついた
しかし
蘇我さんの手は硬直していて
どうしても取れなかった
そう　この鏡岩が閉まると
完全な密室になる
今から
そのトリックを再現して見せます
あっ…
なーんだ　野ウサギか
もう　たくさん
４つの魔神具に触れし者
富と力と災いを与えん
我が凶鳥の命の名において
魔神具の呪いを受けた
宗像吉衛門
その末裔である私が
残っているかぎり
呪いは終わらない
この村は　何も変わらないのよ！
センパイ
呪いで死ぬ人を見るのは
お母さまが鎮めていくから
もう何も心配することはないと
私が　この村で一生を終えれば
それで…
それで　いいのよ
大和さん殺害事件
犯人は　どうやって
凶鳥の座の中にいる大和さんを？
あの日　事件の最初の日
ああ…　そうか！
そういうわけだったのか
何か分かったの？
ああ
書かれていた
でも　私が残っているかぎり
お母さまの手紙には
凶鳥様の怒りは
あとは　暗号の謎だけが…
あの…　何を捕るんですか？
コラーッ！
キャア！
ああ　江戸川さん
鳥辺野さんも
ったく　せっかくの獲物が
逃げちまったじゃないか
え…　獲物　あれが？
そろそろ食料が
尽きかけてるって言うからな
これを使って
夕食の　おかずを捕ってるんだよ
ま　期待しててくれ
行こう
みなさん　よろこんでください
え？
磨陣村の呪いは
何も終わってないんですもの
さっき　テレビでやってたわ
磨陣村のトンネルの土砂崩れ
明日にも救助隊が来るって
これで　すべて　おしまい
めでたし　めでたしね
ヤレヤレだな
お母さまの手紙にも書いてあった
もう心配することはないって
私も安心して　この村に残れるわ
え？
さつきセンパイ
この村に残るんですか？
そう
大和さん殺しの
密室トリックは分かったぜ
うん？
ええっ？
２枚の日めくりカレンダーが
示している
紛らわしてしまうことを
思いついた
何てことだ
魔神具の呪いの裏に
そんな計算が　あったなんて
今までの殺人は
呪いなんかじゃない
すべて人間の手によるものだ
誰が　そんなことを？
犯人の正体は
それじゃあ
そう　この事件の真犯人
そこで　犯人は
これから実行する予定の殺人を
凶鳥の命は　この中にいる
金田一君　第１の殺人は
大和君は　どうやって？
そうだ
その謎も解けているのか？
ええ
犯人は　実は凶鳥の座に
入っては　いなかったんです
何だって！
じゃあ　いったい？
外から殺したんですよ
魔神具の呪いに見立てることで
鏡を割る本当の理由を
しかし　いきなり割っては
かえって悟られてしまう
そうか！
ちょ…　ちょっと　はじめちゃん？
この館と割られた７枚の鏡が
魔神具の　ありかを示す
急に　どうしたのよ？
解けたぜ
この館に隠された暗号が
え？
謎は　すべて解けた
何！
本当かね　金田一君？
ええ　やっと分かったんですよ
魔神具の　ありかが
暗号が解けたのか？
実は
この七鏡の館
そのものが暗号だったんです
重要な道しるべに
なっていたんです
七鏡を割ろうとした
そして　ある偶然から
その事実に　われわれより
早く気づいた人物
その人物こそ　凶鳥の命
魔神遺跡連続殺人事件の犯人さ
えっ？
ええ？
七鏡の謎を知った犯人は
魔神具の　ありかを
誰にも悟られないために
蘇我さんが残した
ダイイングメッセージ　そして
センパイに渡してくれって
この手紙　まさか！
だからって
何で大和が殺されるんだよ！
この鏡岩を開ける方法が
分かったのさ
中と外で　２人
力を合わせて押せば　鏡岩は開く
カギを使わずに
鏡岩を開けるためです
なぜ　そんなことを？
共謀者と示し合わせて
大和さんは　ひとりで
石室の中に潜んでいたんだ
誰も　大和さんの姿を
見てはいません
それじゃ　中に誰かいたのか？
今日　発掘が終わったあと
え…　外側からだけ？
ええ
外側からだけでは無理です
取っ手が　ひとつでは
絶対　無理ですよ
鏡岩は　文字通りツルツルで
フン　まさか
そんなことが　できるワケがない
カギを使わずに
鏡岩を開ける方法が分かったのさ
何？凶鳥の座のトリックが？
え？
そして　カギを使わずに
内側は　ゴツゴツしてて
取っ手の必要はない
大和さんの死体が
どうして　この石室内にあったのか
やっぱりって　何よ？
あたし　気味悪いわ
やっぱりな
何が分かったの？はじめちゃん
そうか　中の空気が
ちょっと　お台所をお借りします
はい　どうぞ
開けやすくなるわよ
そうか　じゃ
そういうときは　少し温めてやると中の空気が膨張して
あ…　開かなくなっちゃった
大丈夫よ
ヤダ　あたしったら　ごめんなさい
あら　フタが
おじさままで
亡くなられてしまって
そう…
大丈夫かしら　おばさま
少し落ち着かれて
横になっておられます
明日香おばさまは？
はい
手をかけるところのない
鏡岩も
その共謀者は誰だ？
発掘が終わったあと
きっと
どこかに答えがあるはずだ
蘇我さんが　ウソをついてるとは
どうも思えない
えっ　三つ目の戒め？
凶鳥様の
三つ目の戒めなんだから
仕方ないのよ
これが　宗像家に課せられた
何か　ヘンすよ　センパイ
お願いです　あたしは…
えー　ちょ…　ちょっと　待って
あー　イヤイヤイヤ！
そういう問題じゃなくて
そんな　センパイ　ダ…
あたしじゃ　ダメなの？
アアッ！な　何を…
金田一君
あ　ハイ…
あれ　宗像センパイ
どうしたんですか？
まだ　俺の知らない秘密があるんだこの磨陣村には
宗像教授の名を口にしたときの
あの表情
それに　１年前に亡くなった
犯人は　ほかにいる
中に誰もいないのを確認したのは
あなたでしたよね？
え？
イヤ　な…　何でもない
ま…　まさか　宗像教授の？
そんな…　あ
そんなもの…　俺も大和も
殺されるような恨みなんて
何か　命を狙われるような
心当たりは？
あなたが　金田一さん？
私たちを出し抜いて
魔神具を掘り出そうなんて
いくら声をかけても
何の反応もなかったんだ！
でも
食事のあと　俺が行ったときは
こいつの言ったやり方で
鏡岩を開けようとした
確かに　俺は
違う　俺じゃない！
大和君を殺したのは　君なのか？
蘇我さん
あ…　イヤ　それは…
みなさん　お紅茶でも
あ　私　お手伝いします
違う
呪いなんか　あるはずがない
七鏡の館から
一歩も出てはいけない
それじゃ　外部との連絡は？
えっ　ここを通るんですか？
トンネルが見えてきたぞ
大丈夫　あなた？
イヤな予感がする
犯人は　まだ
誰かを殺すつもりでいるはずだ
はじめちゃん
もし　本当に見立て殺人なら
あなた　待って！
明日香おばさま
ああ…　明日香　早くするんだ
逃げるんだよ　早く
待ってくれ　私も行く
あ　あなた！
決まってるじゃないですか
自力で脱出するんですよ！
殺されちまう
蘇我君　どこへ行くんだ？
冗談じゃない！
こんなところにいちゃ
どうやって　助けを？
警察も呼べないのか…
ここは携帯も通じないところよ
電話が　電話が通じないんです
何だって！
村に入ることも
出ることもできないの
た　た　たいへんです！
そして　三つ目の戒め
我を崇めよ
二つ　魔神具になぞらえた
四つの館を建て
怪しき者から遠ざけよ
一つ
魔神具は出雲の磨陣村に埋め
銅鐸の呪いから逃れたくば
三つの戒めを守れ
凶鳥の命が現れて
こう言ったそうよ
残るは　銅鐸
ひいおじいさまの夢の中に
そんな…
呪いなんて信じられん！
矛　鏡　宝玉
三つの魔神具の呪いだ
死の間際まで
「宝玉が　宝玉が」と言いながら
原因不明の病気で苦しみながら
亡くなったそうよ
そして　ひいおばあさまは
そうよ　ここを通らなければ
まさか…
だとしたら　トンネルは
凶鳥様が　お怒りになったのよ
俺たちは…
そういうことだな
私が
三つ目の戒めを守らないから
呪われてるのかもしれないぞ
どうやら本当に　この村は
凶鳥の命に
さっきまであった銅鐸も
消えている
銅鐸だ
港屋さんは銅鐸の呪いで…
あ　明日香奥様！
おばさま！
あ　あな…　た
アア…
本当に　凶鳥様を
怒らせてしまったんだ
凶鳥の命の怒りに触れて
あなた…
私たちは　みんな死んでしまうんだ
凶鳥の祟りさ
もう…　もう　おしまいだ
このトンネル以外
村から出る道はない
どうやら　この村に
閉じ込められちまったみたいだな
ここを抜ければ　殺されなくてすむあ…　あなた
トンネルの中は
完全に埋まってる
はじめちゃん
俺なら　大丈夫さ
はじめちゃん　しっかりして
はじめちゃん！
オーイ　どうした！
何が　あったんだ？
大丈夫だ　金田一君は？
大丈夫か　蘇我君？
美雪
キャアー！
早く戻るんだ
ひょっとしたら　犯人…
みんな　引き返すんだ
な　なぜだ？
はじめちゃん
戻れ　行っちゃいけない！
くそっ！このまま簡単に
村から逃げられるとは思えない
待ってくれ
行くぞ　早く　この村を出るんだ！
宗像家に生まれた長女は
１７歳になるとき　家にこもり
センパイのお母さんのように
そう
ひいおじいさまの長女が
胸を突かれ
バカらしいわね
え？
そのことなら　思い当たるフシが
ないでもありませんわ
余程　無計画に
掘り進めたりでもしないかぎりは
土砂崩れを起こすなんて
考えられない
なぜ　あんなことが起こったのか
分かりません
あの辺りは　頑丈な地質で
ええ　凶鳥の座で土砂崩れなんて
起こりえない事故でした
考えられないって
１年前の事故がですか？
あんな考えられない
死に方しなくて　すんだのよ！
本当のことでしょ！
欲に目がくらまなければ
今日子さんと結婚したんじゃない
明日香さん
宗像先生だって　魔神具の
正当な所有者になりたくて
そうすれば
何も起こらなかったんだわ！
初めから魔神具なんて
なければよかったのよ
魔神具の鏡の呪いに見立てて
殺害された
よく　宗像先生の目を盗んで
七鏡の館…　蘇我さんは
「この見取り図が暗号だ」って
「魔神具は
この館の　どこかにあるはずだ」
宗像先生が生前
よく　その額の前で考え込みながら
これが　どうして暗号だと？
鏡の位置は　この館が建てられた
ときから決まっていたそうだ
専門の設計士に描かせた
ものだから　正確に描かれている
さっき割られていた鏡の位置も
きちんと描かれてますね
でも…
へえー
まだ　誰にも解けていない
暗号なんだから
国守教授
いいじゃないですか　明日香さん
暗号だと言うんだが
暗号？
その見取り図が
魔神具の　ありかを示す
宗像君が結婚したときに
作らせたものだ
殺された大和さんも蘇我さんも
特に魔神具に　ご執心で
凶鳥の座の周りを
掘っていたようですし
国守さん　この図面は？
寂しくないと言ったら
ウソになるわ
ん？
さつき先輩？
じっちゃんの名に　かけて
この謎は　俺が解いてみせる
必ず犯人は　いるんだ
これは呪いなんかじゃない
三つの戒めとか
分かってる
かわいそうすぎるわ
凶鳥の命の呪いとか
はじめちゃん
このままじゃ　センパイ
ごめんなさい
それが　宗像家に生まれた者の
運命なの
そんなの哀しすぎます
でも
また呪いを生み出して
私も
三つの戒めを守らなくては
でも　私は
宗像家に生まれたんですもの
センパイ
それで　寂しくないんですか？
え　復しゅう？
私が生まれたときから
一度も素顔を見たことないの
１７歳から　部屋に　こもって
ええ
宗像センパイ
お母さんは　三つの戒めを守って
ねえ　金田一君
分かってるわ　美雪ちゃん
そう考えるのは当たり前よ
私と　お母様よね
あ…　あたし　そんなつもりで
お父さまの復しゅうなら
真っ先に疑われるのは
アハ　私　コーヒー大好き
全然　じゃまじゃないっスよ
どうも
コーヒーでも　どう？
あ…　宗像センパイ
復しゅうってことは　まさか…
おじゃまかしら
じゃあ
港屋さんも　かかわっていたの？
復しゅうなの？
大和さんと蘇我さんが？
さつきセンパイのお父さんが
事故死したことへの
この七鏡の館の
１階の見取り図だよ
凶鳥の命の？
そして　凶鳥の命に
お仕えする巫女になる
チェッ
トンネルが崩れたとき　かすかに
火薬のような臭いがしたんだ
ダイナマイト？
おそらく　ダイナマイトの一部だ
何？それ
あ？
こいつを見てみろ　美雪
この事件は　もっと
別な何かが潜んでいるんだ
ああ　呪いなんかじゃない
呪いだか何だか知らないけど
おかしいわよ！
さつきセンパイ　かわいそうよ
三つ目の戒めって　ひどすぎるわ
あ…　アンタは
ったく　何　考えてんだか
人を　こんな時間に
呼び出しておいて
何だ　まだ来てないのか
俺たちを
村に閉じ込めたようだな
蘇我ですけど
我を崇める者に富を与えん
何も恐れることはない
我に従え　凶鳥の意に
違う　ご…　誤解だよ　美雪
違うんだって　ハ　ハハハ
み　美雪…
はじめちゃん
ヘンな音がした…
宗像センパイ？
金田一君！
あ…　そんな　嫌いなんて
私のこと　嫌いですか？
まさか…
そ　それを　俺に？
えー！あ…　イタッ
決めなくてはならないの
金田一君
そのときまでに
将来　夫になる者を
どうやら犯人は　こいつを使って
じゃあ　犯人は
真犯人…
日めくりカレンダーか
重要な
手がかりになるからですよ！
真犯人
「凶鳥の命」の正体を指し示す
それは　おそらく
その２枚の日めくりカレンダーが
なぜ　こんなものを
持ち去ろうとしたんだ？
犯人は　どうして
そこまでして　こんな紙切れを？
握り締められていたため
ちぎれたんだ
しかし　慌てていたのと
彼の手が　あまりに固く
おそらく犯人は
無理やり　取ろうとしたんでしょう
はみ出していた部分なんです
何？
そこが蘇我さんの手から
よく見てください
変なトコが破れてるでしょ？
ダイイングメッセージだと？
蘇我さんが俺たちに残した
ダイイングメッセージですよ
ああ　おそらく　これは
見せてみろ
まだ　この磨陣村に潜んで
誰かを狙っているんだ
死んだ蘇我さんが
握っていたんだ
金田一君　何だね　それは？
今度は　鏡か
鏡の呪い
どうしたんですか？
蘇我君　これは…
どうして　蘇我さんが？
蘇我さん
キャアー！
弥生さん　どうしたの？
資料室で　ひ…　人が
朝起きてみたら　こんなことに
お嬢さま！
いったい　誰が　こんなことを？
分からない
全部　割られてるのか？
あっ！
どうしたんだ　これは
鏡が！
たいへんなの　すぐに来て
金田一君！
あ　センパイ？
続いて長男が階段から落ち
壁の鏡に当たって死亡
これが…
あたしの生まれた　磨陣村よ
宗像センパイに
遺跡発掘のアルバイトを頼まれて
俺と美雪は
磨陣村に　やってきた
そこで起きた密室殺人
しかし
それは　富と災いをもたらす
魔神具の呪いに見立てた
連続殺人の始まりに　すぎなかった
ああっ！
キャアー！
大和さん！
魔神具の祟りじゃ
凶鳥様が
お怒りになったんじゃ
違う　祟りなんかじゃない
これは完全な密室殺人だよ
密室殺人？
この凶鳥の座に入るためには
大人が　２人がかりで
開けなければならない
だが　鏡岩にカギがかかっていた
つまり　完全な密室の中で
大和さんは殺されたんだ
その　首の宝玉は？
魔神具の宝玉か？
そんな　まさか
レプリカ…
これは魔神具のレプリカだ
レプリカは
資料室にあったハズじゃ？
ない　盗まれてる
銅鐸だけ残っている
なるほど　そういうことか
レプリカの宝玉で
首を絞めて殺された
これは「見立て殺人」ってやつだ
推理小説で　よく使われる
見立て殺人？
いいか
宝玉と矛と鏡が消えている
大和は宝玉で殺され
盗まれたレプリカは　あと２つ
待ってくれ！
ということは　矛と鏡で
誰か　あと２人
殺されるとでも？
そうかもしれない
でも
なぜ　銅鐸だけ残して
どうして　３つだけ
３つの死だわ！
３つの死？
凶鳥の命の呪い
あの魔神具は
宗像家に　富と同時に
呪われた３つの死を
もたらしたのよ
ええっ！
この中の　誰か
あと２人殺されるんだ
それよりも
とにかく警察に電話だ！
あ　ハイ！
ああ…　凶鳥の命の呪いだ
あなた
わしらが　魔神具を
勝手に掘り出そうとした呪いだ
呪いなんて　そんなバカな！
いいえ
魔神具の呪いは　確かに存在したのホントよ
富も名声も手に入れた
宗像吉衛門
私の　ひいおじいさまに
不幸は突然やってきたの
48
00:03:40,452 --> 00:00:00,000
ある日　欄間に　かけてあった槍が
突然落ちて﻿出雲地方　磨陣村で起こった
連続殺人事件
七鏡の館に伝わる　魔神具の呪いは
４人もの犠牲者を出す
大事件となった
ああ
ああ
これは呪いなんかじゃない
犯人は　この中にいる
そう　犯人は　この中にいる
彼のメッセージの本当の意味は
この２枚のカレンダーではなく
破り取られたカレンダー
本体にあったんだ
ええ？
そこに書いてあったのさ
犯人の名前がね
何だって？だが　君
残りのカレンダーは
犯人が処分してしまってるんじゃ
ところが　あったんですよ
えっ？
ほら
あっ
蘇我さんの部屋に
掛かっていた物です
全く同じ物
蘇我さんは　そこに掛けてあった
カレンダーが
自分の部屋のと
同じ物だったからこそ
このダイイングメッセージを
思い付いた
しかし　君　見たところ
別に犯人の名前など
見当たらないが
確かに　このカレンダーは
日付と曜日しか載っていない
美雪
えっ？
１月は古い日本の呼び名で
何て言う？
え？えーと確か　睦月
２月は？
２月は如月だったかしら
蘇我さんも　それは知っていた
そして　このカレンダーの
先のページも知っていたから
消えゆく意識の中で
ページをめくったんだ
おい　それって　まさか…
そう
ここには犯人の名を示す
３月の古い呼び名が
書かれているんだ
村西弥生　あんたの名前が
な…　何だって？
そんな…
魔神具の呪いに見せかけ
大和さんたちを殺害したのは
あなたですね
冗談は　やめてよ
何で弥生さんが　お母様を？
そんなっ
小僧！
こんなカレンダーだけで
いい加減なことを言うな！
他に証拠があるのか！
もちろんありますよ
え？
これは台所にあった
村西さんが作った
この３日間の献立です
何か気付きませんか？
ああ
夕食のメニューです
何か…　と言われても
１日目がライスで他はパンかな
そういえば２日目だけ
全部冷たい料理ですね
そのとおり
２月の寒い日にしては
温かい食べ物は１つもない
思い出した
それで俺は文句を言ったんだ
仕方なかったんですよ
この夜ばかりは
夕食の支度時にガスレンジの火が
全く使えなかったんだから
私が手伝おうとした日？
そして例の
ガスを使ったトリックで
大和さんが殺された日です
それじゃあ
このとき　すでにプロパンガスは
凶鳥の座の近くに
運んであったんだ
そんなっ
盗掘の共謀者の蘇我さんが
遺跡に絶対に来ないのは
夕食の時だけ
そのわずかな時間に　すべてを
終えなければならなかった
あんたは　あらかじめ
プロパンガスを
凶鳥の座に移動させた
だから夕食の時間
ガスが使えなかったのは
当然なんだ
それで　あの日のメニューだけが？
でも　あの日　食事のあと
ほら　美雪ちゃんに
紅茶をいれたときは
あっ…
まさに　あのとき村西さんは
犯行を終えてプロパンガスを
つないでいたんです
おかしいなあ
はっ
あれー？
どうしたの？
ああ　先輩
火が　つかないんすよ
ええ？そんなはずは
ほらね
あっ　あれ？変だなあ
ぎりぎりに間に合って
ホッとしたことだろう
しかし献立を
不自然にしてしまったことが
かえって手掛かりを
残してしまった
献立を自由に決められるのは
あなただけなんだからね
何か言ってよ
違うって　どうして言わないの？
あなたの頭の回転の速さには
驚きました
港屋さんのときも
偶然の事故を銅鐸の
見立て殺人と思わせるために
倒れた明日香さんを
連れて先に帰り
銅鐸のレプリカを
どこかに隠したりしてね
それだけじゃない
あなたは魔神具の在りかを示す
７枚の鏡を割るために
急きょ予定を変更して
殺人計画を呪いに見立てるという
離れ業をやってのけたんだ
在りかだと？そういえば　お前
魔神具の在りかが
分かったって言ってたな
江戸川さん　こんなときに
何言ってるんですか
あ　いや　この事件の
すべての災いは
魔神具にあります
この際はっきりさせて
しまいましょう
決して呪いなんかじゃないってね
やっぱり凶鳥の座か
そんな所にありませんよ
なに？
ん？
あ…
宗像教授は　この図面が
暗号と言っていた
この館の７つの鏡こそが
館へ足を踏み入れし者を導く
道しるべだったんだ
そして魔神具は
館の周りに配置された
いくつもの庭石や池
そのどこかにある
おい　分かっているなら
早く教えろ！
気が付いたのは
２つの偶然からだった
１つは宗像夫人が割った鏡が
新しい物に掛け替えられたこと
そして　もう１つは
２日目の夕方に起きた
あのガス漏れ事故だ
ガス漏れ事故？
皆さん　他の館の鏡を
７枚　持ってきてくれませんか
金田一君　何を？
ここから先は
口で説明するより
見てもらったほうが
早いと思いまして
おい　小僧！
お前の言うとおり
７枚全部　掛け替えてきたぞ
どうも
さあ　どうしようってんだ？
はじめちゃん
館の扉　全部開けてきたわ
サンキュー　それでは
実演する前に　もう１度
この七鏡の館の図面を見てくだい
まず今　俺たちが集まっているのがこの玄関前だ
そして　そのまま入っていくと
壱ノ鏡にぶつかるわけだが
どういうわけか　この鏡だけが
他のとは違って
妙な角度になっています
なぜだと思います？
なぜって…
これが暗号にでも？
ひょっとして鏡の反射角度
そのとおり　この７枚の鏡は
ある所から見ると７枚すべてが
重なって見えるように
計算されているんだ
ある場所って…
館に足を踏み入れし者
つまり玄関さ
ああ…
あ…　あれは！
さあ　俺たちも行きましょう
おい　小僧！これが　そうか？
そうです　まさしく　それこそが
魔神具の隠されている場所
まえん地蔵です
そして　この石像の腹ん中に
眠る物こそ
お…　おい　君
ああ
こ…　こ…　これが
そう　これが宗像教授が
探し求めていた
魔神具さ
あっ
魔神具…
ひいおじい様が凶鳥の命の
呪いを怖れて隠した
こんな物のために
こんな物のために
そう　こんな物のために
どうして　あなたが
あんなことをしたのか
そろそろ話してくれませんか
もう２０年近く前になるわ
今日から家政婦に来た
村西弥生です
よろしくお願いします
あら
もっと年を取ってる方かと
思ったら
可愛らしい子じゃない
へえ
あっ
宗像シロウです　よろしく
宗像家の一人娘と
若手の歴史学者の新婚所帯は
幸せに満ちあふれていました
初めのうちは
でも段々　分かってきたんです
何てことするんだ　今日子！
それは僕の発掘資料だぞ
あら　ごめんなさい　あなた
私にはゴミにしか見えなかったの
研究者だったシロウ様に
魔神具の所有権を　ちらつかせて
結婚なさった奥様は
発掘されてしまうと
シロウ様が離れてしまうと
考えたのでしょう
ことごとく研究の邪魔を
していたんです
それで　あのとき
七鏡の１つを　わざと割ったのね
シロウ様の心は　さいなまれ
ずたずたでした
あっ　あの…　コーヒーを
ああ　ありがとう
そこに置いといてくれ
はっ　この資料
もうダメですか？
ひどいわ　大事な資料を
こんなふうにしてしまうなんて
はっ
シロウ様
弥生君
しばらく僕のそばに
いてくれないか？
君といると心が休まるんだ
それからシロウ様と私は
奥様の目を盗んで…
そして半年ほど経った　ある日
はっ　まさかこれは…
誰の子？
奥様！
あの人なのね
奥様！
い…　やめて
やめてください！ああっ
お黙り　この泥棒猫！
よくも　よくも　こんなイモ娘と！
死になさい！
あっ　いや！
いやーっ！
やめなさい！
今日子！
今日子！
死んだ？今日子さんが
２０年近くも前に？
すぐに警察に行くつもりだった
ダメだ　そんなことしたら
お腹の子は　どうなる？
これは事故だ　事故なんだ
でも奥様が　いなくなったことは
すぐに…
大丈夫だ　今日から　君が
宗像今日子になればいいんだよ
え？
じゃあ　あの黒いベールの人は
俺たちが今日子さんと
思っていたのは…
村西さんの　もう１つの姿ですよ
何だって？
え？
本物の宗像今日子が死んでから
彼女は１人２役を
演じ続けてきたんだ
最後の矛に見立てた殺人は
長年　演じ続けてきた
虚像を消すための
偽装殺人だったのさ
じゃあ　あのとき私たちが見たのは
おそらく人形だろう
しばらくして
私は宗像今日子として
１人の女の子を産んだわ
母親として名乗ることもできず
せめて名前だけでも
つながりがあるようにと
シロウさんが名前を
付けてくれたわ
私の名前が弥生だから
５月に生まれた子供の名は
さつきと
ひどい
ひどすぎるわよ　そんなこと
いまさら言われたって
どうして　もっと早く
言ってくれなかったの？
私を　こんなに苦しめて！
ごめんなさい　さつき
どんなに名乗りたかったことか
苦しかった
殺した女の影を演じ続けることも
だけど　こんな生活も
あの人が…　シロウさんが
いてくれたから
なのに　あの人は死んでしまった
あの２人のせいで
え？
いつかは崩れると思ってたけどな
よりによって宗像教授が
見回りに来るとは
思ってもみなかったぜ
あの土砂崩れ
俺たちが勝手に
掘ったからだぜ　きっと
ああ　だろうな
絶対言うなよ　誰にも
言わねえよ
そういえばよ　今度　娘が
そのあとを継いで
発掘に来るんだってよ
あいつか
結構　可愛いんだよな
３つの戒めとやらで
男を作んなくちゃ
いけないんだそうだ
そりゃいい　おい　蘇我
どっちが先か競争だな
そのときよ　私の体の中に
激しい怒りに羽を震わせた
凶鳥様が舞い降りたのは
汚れし　やからの汚れし手から
魔神具を守るべしと
金田一さん
さっき私に言いましたよね
短時間で　よく
これだけの計画を立てたって
でも　それは間違いよ
え？
なぜなら私は凶鳥様の
言い付けどおりに
動いただけなんだから
そして私は　まだ　その言い付けを
果たしていないのよ
あっ
わー
はじめちゃん
村西さん
バカなマネは　やめろ！
魔神具は呪われた宝
今度も多くの血を吸ってきた
宝玉は大和猛　銅鐸は港屋寛一
そして銅鏡は
蘇我豊広の命を奪った
でも凶鳥様は　まだ怒りを
鎮めてはいないわ
まだ血が足りないと
おっしゃってる
なに？
この矛が　まだ血を吸ってない
あと１人　この中の誰かが
これで死ななければならないのよ
やめろ！もうやめるんだ
魔神具の呪いだと？
そんなもののために
命を落とすヤツは
ここには１人もいない！
俺には分かる
あんたは娘を救い出したいんだ
この村から！
この村を支配する凶鳥からな！
でもな　でも血を流すことなんかで
愛する者を救うことなんか
できやしないんだ！
村西さん
近寄るんじゃない！
村西さん
私には　あと半年の命しか
残っていない
えっ？
時間がないのよ　私には
あの２人を葬り去るしか
さつきを守る方法がなかったのよ
このまま私が死んだら
蘇我のやつらは
さつきに何をするか
シロウさんを死なせたばかりか
さつきにまで手を出すなんて
絶対に許せなかった
短い命　たとえ　呪いの神に
魂を売り渡してでも
生きているうちに
あいつらを葬ってやりたかった！
それしかなかったのよ
さつきを守るには
もう　それしか…
凶鳥様　ありがとうございました
あっ
これで最後です
ダメだ　村西さーん！
やめてー！
そのとき　１つの影が
飛び去るのを見た気がした
あれは稲妻の閃光が見せた
幻だったのだろうか
金田一君
あ？先輩！
久しぶりね　迎えに来たわ
こんにちは　先輩
こんにちは
あら？こんにちは
宗像さつきです
そう　金田一君の遠い親戚？
生意気なヤツなんすよ
まあ
どうしたの？さっきから黙ってて
お姉さん　怖い？
あ…　あの…　お母さん
死んじゃったんでしょ？
えっ
金田一君から聞いたのね
亡くなったわ
１０日ほど前　病院で
あっ　雷に打たれたんじゃないの？
母は…　村西弥生は
あの雷のせいで
記憶喪失になったの
魔神具のこと　凶鳥のこと
一切　忘れてしまったわ
でも　どんな理由があっても
罪は罪
母は警察の病院で
亡くなるまでの半年を過ごしたの
それでも母は…　いいえ
私たちは幸せだった
短い間だったけど　ホントに
本当の母と娘として
一緒の時を過ごすことが
できたから
磨陣村にね　お墓を作るの
１０代の頃からお父さんと
過ごしてきた村ですもの
ゴメン　私のわがままで
また来てもらって
でも　ホントの磨陣村も
見てほしかったから
え？
本当の磨陣村？
このトンネルも復旧したのは
つい　この間のことよ
やっぱり
この道しかないんですか？
ええ　磨陣村は磨陣村よ
ああー
すてき
はじめちゃん！
あ？
きれー
あっ
こ…　これが　あの…
ええ
本当の磨陣村へ　ようこそ
「夏の海　美雪と過ごす甘い夜」
はじめ
…　なんて　近頃
一向に進展のない俺たち
だが　やっと来た
ラブラブチャーンス
２人きりの南の島　邪魔者は…
なぬ？亡霊兵士？
その姿を見た者は
呪い殺されるって？
確か　この島の名って…
墓場島
まさか幽霊なんているはずが…
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？
熱い　熱い　熱いー！
ええ？マジマジ？
じゃあ　今度の休みは
彼と　いよいよ？
いやーだ　もう
そういうんじゃないんだってば
南の島か
なるほど　女は南国に弱い
なになに？南の島で
開放的になる彼女？
ええ？南の島？
そうなのよ　千絵の実家ってさ
そこで旅館やってんだって
でも　うち　旅館ていったって
ホント大したもんじゃ
いいのいいの　今度の連休
彼女　実家に帰るっていうから
ついでに私たちも
安く泊めてもらおうってわけよ
でも　それじゃあ　平嶋さんの
里帰りの邪魔してるみたいで
悪いわ
大丈夫
千絵は構わないって
言ってんだからさ
ね？
え？ええ
私は別にいいのよ
本当？
それなら　私も行ってみよっかな
やったー！じゃ　美雪も
男の子１人誘ってね
えっ？私たちだけで
行くんじゃなかったの？
やーねー　せっかくリゾートに
行くんだから
男と女３対３よ　当然でしょ
私は剛史を連れていくつもり
えっ　剛史って
Ａ組の陣馬君のこと？
そうよ　彼と向こうで
思いっきりアウトドアするの
キャンプ場でテント張って
海岸でバーベキューして
あ　もう１人は剛史のクラスの
岡崎君になると思うから
あと１人　頼むね
でも…
男の子なんて　私…
あ　剛史！
お？よお！
じゃ　頼んだわよ
ああ　麗美ちゃん
陣馬君かあ
いいなあ　麗美は積極的で
でも　どうしよう
男の子と一緒だなんて　親が…
あら　美雪ちゃんは
大丈夫じゃない
ええ？
幼なじみの彼と一緒なら
ハ…　ハロー
あーあ　結局あれか
わー　平嶋さんちの旅館って
あら？
南国リゾートっていうより
素泊まり２千円って感じだな
ゴメンなさい
あはは…　でも　みんな
きっと海は　きれいだぜ
青い海に白い砂浜
というよりも…
寂れた漁村だな　これは
どうすんだよ　麗美
こんなとこで
５日間も過ごすのか？
わ…　私　こっちって
全部　白い砂浜だと思ってた
あ　観光の方ですか？
え？はあ
あ　わたくし　地元の
観光会社の者ですが
実は今　当社で
無人島探検ツアーを
お勧めしてまして
無人島ツアー？
島にはキャンプ場もございますし
え　テントや食料などは
当方でご用意いたします
これ全部で　たったの５千円
えー？安いなあ
それいい　みんなで
そこ行きましょう
麗美ちゃん
でも　それじゃ平嶋さんが
美雪　行こう
２人で　その無人島へ
うっ…
わー　きれいな海
見て見て　魚が泳いでる
おじさん　これから行く島って
どんなとこ？
そりゃあ　いい所ですよ
周りはサンゴ礁で
囲まれてましてねえ
海もきれいだし
へえ　何て島なんですか？
それが…　あまりいい名前とは
言えないんですがね
墓場島　この辺りの漁師は
みんな　そう呼んでいます
ええ？
墓場島
ほーら　見えてきましたよ
あの島です
それじゃ　４日後に
お迎えに上がります
必要な物は　すべて
リュックの中に入ってますから
それと　いざというときには
この無線機で呼んでいただければ
飛んで参りますので
分かりました
よーし　みんな行こうぜ
おう！
どうぞ　お気を付けて
楽しみだな
ホントー
テントは　どっちかしら？
フフフフ
わあ　何だ　こりゃ
うわー　すっげえ
これ　戦闘機の残骸だぜ
ねえ　こっちに変な穴が
いっぱいあるわよ
何だ？この穴
防空壕跡か何かかな
よーし　入ってみようぜ
やめてよ　気持ち悪い
平気だって　俺がついてるぜ
はっ　ははっ　あの
じゃあ俺は　あの
ここで皆さまの　お帰りを…
さっ　行くわよ
あーれー
なーんだ　別に何もないじゃんか
何だよ　期待して損しちゃったぜ
あ？ん？何だ　こりゃ
丸いもんが…
うわー
キャー
うわー
みんな　早く　ここから出て
でないと私たち
亡霊兵士に殺されちゃう
亡霊兵士？
とにかく出ようぜ
ああ　やだー　置いてかないでよ
はっ
キャー
亡霊兵士
フン
バン！
ああっ　くっ　ああ…
や…　やられた
はじめちゃん！
ああ　もうダメだー
うわー　わー！
ハッハッハッハッ
いやー　いやー　すまんすまん
いやー　せやけど
口でバンって言うただけやで
こっちのほうが驚いたわ
ちょっと調子に
乗り過ぎだぞ　難波
あっはははは
もう　さっきの金田一君　最高
いい味　出してる
もう　はじめちゃんてば
恥ずかしいんだから
フハハ　なかなか
迫真の演技だったぜ
すまないね　君たち
僕は岩野ってんだ
大学４年で
このサークルのリーダーさ
で　隣の関西弁が難波
フン
それと
僕　萩元って言います
東大３年です
とーだいっ！
東大の人が戦争ごっこなんて
するんですか？
いやあ　こうしたゲームは
最近ではスポーツとしても
認められてるんですよ
なかなか　いい気分転換にも
なりますしね
そして彼が檜山だ
何で　あの人だけ
あんな後ろに？
いやあ　１年前に
入ってきたんだけど
彼　ちょっと変わっててさ
ホンマ　協調性が
無いっちゅうか何ちゅうか
ああいうのがいるから
僕たち
オタクって
言われちゃうんですよね
ところで　どうして　この島に？
私たち無人島探検ツアーで
ここに来たんです
この島でツアー？初耳だなあ
僕らはサバイバルゲームの
強化合宿で
昨日から　この島に来てるんだ
サバイバルゲーム？
兵隊のカッコしてドンパチする
まっ　早い話が戦争ごっこやな
今度　大きな大会があってね
僕らも参加する予定なんだよ
あっ　敵注意！
ええ？
ああ…
米村チームの待ち伏せや
撃たれたヤツは戦死
ゲーム脱落やで
痛たた　あたたた
ねえねえ　すっごいスリル
おもしろかったね
私たちもさ　岩野さんに頼んで
サバイバルゲームに
入れてもらいましょうよ
よせよ　ああいうのって
世間じゃ
結構　評判わりいんだぞ
勝手に人の土地を荒らしたり
関係ない人まで撃つヤツもいるし
見ろよ　このツラ
仰せのとおりで
あっ　それよりさ
白骨のあった　あの洞窟に
明日　また行ってみねえ？
なーんか　おもしろそうじゃん
やめて　岡崎君
え？
平嶋さん？
あんなとこ行ったら　私たち
亡霊兵士に呪い殺されちゃうわ
亡霊兵士　亡霊兵士って
さっきから　お前　一体
ここは戦争中　何万人という
日本兵が死んだ島なのよ
戦争末期に　この島にあった
日本軍の基地が
敵軍の総攻撃を受けたの
多くの日本兵が
ここで爆撃や銃弾を浴びて
死んでいったわ
そして終戦後
この島を訪れた人々は
あまりの悲惨な状態に
この島自体を
墓場として封印してしまった
それで墓場島か
ええ　でも　話は
それだけじゃないの
それから　しばらくして
島で日本兵の亡霊を見たって
漁師の人が何人も出てきたわ
そして
亡霊兵士を見た人は
必ず何か不幸な目に遭うのよ
千絵ったら　どうして
それを早く言わないのよ
ゴメンなさい　でも　みんな
すごく楽しそうだったから
水を差すようで悪いと思って
何だか　とんでもない所に
来ちゃったみたいね
はじめちゃん
墓場島の亡霊兵士か
はっ　ちょ…　ちょっと
なに？あの音
あ？
ほら
まるで悲鳴のような声が
か…　風の音さ　この島には
洞窟が　あちこちに
あるみたいだからな
そこを通り抜ける風の音が
人の悲鳴みたいに聞こえるんだ
ええ　でも
死んでいった日本兵たちの
怨念の声
…　と言う人もいるわ
いやあ　さっきの奇襲は
惜しかったなあ
そういや岩野たちと一緒だった
高校生っぽいヤツら
何だろ　観光客かな
まさか　こんな所に
観光に来るかよ　普通
誰も来ないとこ選んでるはずだぜ
前に　あんなことがあって以来さ
おい　やなこと思い出させんなよ
あ　俺　小便行ってくるわ
あ？おお
ふーん　ふふふん…
はあ
おっせえなあ　米村のヤツ
なーにやってんだ？
何だ？
ああ…
わー
あ？
どうした？金田一
ああ　今　何か聞こえなかった？
花火が上がったみたいな音
別に　気のせいじゃないの？
んー　そーかなあ
あー…
おはよう　はじめちゃん
あっ
いいにおい　何作ってんだ？
あ　うん？
どうしたんですか？皆さーん
金田一君　それが…
山頂におるはずの米村チームを
トランシーバーで
呼んどるんやけど
応答あらへんのや
何か事故にでも
遭ってなきゃいいんだが
最後に連絡を取ったのは
いつ頃なんですか？
ゆうべ寝る前１２時頃に
呼び出したときは
普通に応答あったんですけど
夜の１２時？
おい　見ろよ
ん？
これ　米村のメガネじゃないか
ん？この　においは
はっ
こ…　これは
あー
こ…　これは
あー
どうしたっていうんだ？
一体　ここで何が？
ぜ…　全滅だ
米村チームの全員が
ああ　そうか
ゆうべ聞いた花火のような音
あれは　ここで何かが
爆発する音だったんだ
アホな　わしら火薬のたぐいは
これっぽっちも持ってへんで
待てよ　ここは戦争中
激戦地だったんだろ？
ひょっとしたら地雷とか
不発弾が爆発したのかも
いや　そのどちらでもないようだぜ
見ろよ　この地面
これだけの爆発があったのに
ほとんど　えぐれてない
それが　どうしたってんだよ？
金田一
地雷ってのは
地面に埋まってるんだろ？
不発弾にしたって　重たい爆弾を
高い所から落とすんだから
やっぱり　埋まってるもん
なんじゃないか？
地中に埋まってるもんが
爆発したのなら
もっと　地面に
大きな穴が開くはずだぜ
じゃ…　じゃあ　一体　何が？
ねっ　ねえ　あれ
ちょうど地面が　えぐれている所に狙いが　ついてるみたい
バカな　あれは太平洋戦争時の
スクラップですよ
使えるはずないです
で…　でも
も…　もしも犯人が亡霊兵士なら
とにかく警察に！
外部と連絡を取らないと
そうだわ　観光会社の人から
もらった無線機が
さっきから　やってんだけど
何だよ　これ
電池　切れてんじゃねえか
ええ？
よし　ボートだ
入り江に僕たちが乗ってきた
ボートがある
あっ
僕たちのボートが無くなってる
そんなっ
ロープがほどけて
流されちゃったの？
そうじゃない　見ろよ　あの足跡
こ…　この足跡は
旧日本軍で使用されてた
軍靴やないか
亡霊兵士だわ
平嶋さん？
もうダメよ　私たち
私たち　みんな
亡霊兵士に殺されちゃうんだわ
なるほどな
亡霊兵士か
この島には　ふさわしいぜ
とにかく　敵が何者であれ
ボートが無くなった以上
脱出のすべはない
ううー　だから　僕
やだって言ったんだよ
いくら　雰囲気　出るからって
こんな　いわく付きの島で
ゲームすんの
どうして　僕いつも
こんな目に
遭わなきゃなんないの？
２年前のときだって
じゃーかあしい　萩元！
しょーもないこと　蒸し返すな！
２年前？
うわー　こんな小さな穴に
１人で泊まるのかよ
仕方ないさ　みんな一緒じゃ
爆弾１つで全滅だ
フン　あんたの言う
亡霊兵士さんとやらは
爆弾のエキスパートらしいからな
まっ　仮に１人やられても
みんな　バラバラなら
他の連中は逃げることができる
これを見てくれ
この入り口の一本道と
すべての壕が見渡せる
ここに見張りを置く
私は　いやよ
こんな気味の悪い所で
寝泊まりなんて
昨日　見つけた防空壕なんか
白骨だらけだった
ああっ
口答えするな！
これは戦争だ
この戦場から生きて帰りたければ
俺たちを上官だと思って
言われたとおりにするんだ！
何だ？この男
テントの中も窮屈だったけど
こんな穴よりマシだったなあ
まっ　とにかく見張りの番が
来るまで寝よっと
おーい
ん？
お前　金田一とか言ったな？
どうだ　怖いか？
ああ　まあ
フン　俺はワクワクしてるぜ
何しろ今度の敵は
本当に殺意を持った敵だからな
相手は４人を殺した
本物の殺人鬼ですよ
戦争ごっことは訳が違う
心配するな
俺が　ここで
こうして見張っている
ここからなら　すべての防空壕が
見渡せるし
その上　あそこの小屋では
岩野さんと難波さんが
詰めているんだ
どんな敵だろうと
近づけはしない
たとえ相手が亡霊兵士でもな
それによ　見ろよ　この銃
ただの電動ガンだと思って
甘く見るなよ
俺が特別に
チューンナップした…
この銃オタク
俺を寝かせん気か
うう…
熱い
ん？
熱い　体が燃える
なに？
もう交代なの？
大体　近頃の
サバイバルゲームをやってる
連中と　きたら…
さっきから延々４０分
こいつは酔っ払いのオヤジか
おい　聞いてるのか
はーい　聞いてます
そういえば　あの七瀬とかいう女
あれ　お前らの中の誰かと
できてんのか？
あ？そんなの　あんたには
関係ねえだろ
いやあ　彼女　高校生にしちゃ
胸でかいなあ
顔も俺好みだし
この島　出る前に
１度お相手　願いたいもんだぜ
おい　こら！亡霊兵士だろうが
あんただろうが
美雪には指１本　触れさせねえぞ
何だ？お前
あの女にホレてんのか？
え？そうなのかよ　おい
ああ　そうだよ　文句あっか
いやあ　おもしれえ
ガキは　からかいがいがあるぜ
この野郎　黙って聞い…
見張りの交代の時間だ
萩元を起こしてこい
あの野郎　ふざけやがって
そのうちギッタンギッタンに
してやる
萩元さーん　起きてください
交代の時間ですよ
萩…
ちくしょう　亡霊兵士め
一体　いつの間に
どうやって　この穴の中に
入り込んだんだ？
俺たちは墓場島に
取り残されてしまった
次々と殺されていくメンバーたち
サバイバルゲーム
という名の戦争が
兵士の霊を呼び起こしたのか？
そのとき突然　亡霊兵士が現れた
そして　俺に　ある謎を残す
防空壕の人骨の山
逆さまに書かれた辞世の句
待てよ　この文字　どこかで
そうか
金田一少年の事件簿…
君に　この謎が解けるか？﻿南海の孤島　墓場島
このいわく付きの島で俺たちは
恐ろしい事件に巻き込まれた
俺たちとは別のルートで　この島にサバイバルゲームに来ていた
学生グループの一団４名が
何者かによって
爆死させられたのだ
そしてまた１人
亡霊兵士の犠牲者が
くそっ　亡霊兵士め
「墓場島殺人事件」
僕と難波で見張っていた　ここに
近づくためのたった１つの道は
誰も通った気配はなかった
さらに全ての壕が見渡せる
この見張り場では
檜山が見張っていた
なのにどうして
防空壕の中にいた
萩元が殺されちまったんだ
とにかく朝になったら
すぐに場所を移動しましょう
二重の警戒網を亡霊兵士が
いとも簡単に破ったとなると
ここにいるのは　かえって危険だ
どう　一ちゃん？
こんなものを見つけたよ
え？
これきっと辞世の句ね
辞世の句？
よし　着いたぞ
今日はここでテントを張る
あれ？ここは確か
１日目に来た飛行場跡じゃ？
嫌だ
てことはあの白骨の穴も近くに？
ここなら視界が利く　外から
敵が来てもすぐ分かるからね
そうや　周囲の森の中にも
敵が近寄ったら分かるように
トラップ張っとこうや
ああ　そうですね
この鳴子を森の中に
張り巡らせるんだ
誰かがワイヤーに引っかかると
カランカランと音が出る
へえ　なるほど
金田一君　何作ってるの？
罠だよ
音だけのトラップじゃ
不安だからね
岡崎　ちょっとこれ持っててくれ
ええ？これで何すんだよ
もし侵入者がこの糸に
足を引っかけたりすれば
すごい
こんなの食らったらノックアウトだ
こいつを鳴子と同じように
森の中に仕掛けとくのさ
ねえ　これもやっぱり
美雪のため？
指一本触れさせないんでしょ？
聞いちゃったよ　昨日の話
お前　あの女にほれてんのか
ああ　そうだよ　文句あっか？
森下　お前
私　金田一君の
隣の防空壕だったからね
嫌でも聞こえちゃうわよ
てことは逆隣りだった美雪にも
檜山との会話は丸聞こえ
そ　そんな…
まず今夜の見張りだが　この大木の根元の３ヵ所にしようと思う
見張りに就いた者は
お互いにモールス信号で
定期的に連絡を取る
モールス信号？
短い点滅と長い点滅
この２つを使って言葉を作り
相手に意思表示する方法だ
例えば短く３回点滅させると「Ｓ」
長いのが３回で「Ｏ」
もう一度「Ｓ」を
発信すれば「ＳＯＳ」
つまり「助けてくれ」って
意味になる
ここにアルファベットと
５０音表記があるから
書き写しといてくれ　今夜から
連絡は全てこいつで取り合う
静かだ
人影！
ど　どくろ！
どくろ兵士なんているわけない
こいつは全て幻覚だ…　幻覚だ
幻覚なんて初めてだ
こんな強烈なもん見るなんて
な　何だ？今度は本当に
美雪の声　美雪！
美雪！美雪　どこだ？
美雪！
一ちゃん
どうしたんだ
あれ
どうした　今の悲鳴は
亡霊兵士
とうとう現れやがったか
逃がすな　殺せ
待て
よせ　深追いするな
やつの罠かもしれん
とにかくみんな無事だったんだ
難波さんがいません
何？
難波さん
何だ　まだ寝てたのか
のんきなやつだな
難波　おい　難波
寝てる場合じゃないんだぞ
難波さん
また１人…
ねえ　どうなっちゃうの
私たち　一体…
こりゃ本当の
サバイバルゲームだな
はたして誰が生き残るか
何だ　お前か
一ちゃん　どこ行ってたの？
ちょっと森の中を見回りにね
何か分かったか　金田一
ああ　奇妙なことがね
鳴子とは別に俺の作った
数個の罠が
全部　壊されていた
何だって
そりゃ亡霊兵士が来る時に
壊していったんじゃ…
いや　罠はキャンプの周りを
取り囲むように作ってあったんだ
侵入するためなら　通り道にある
柵を１つ壊せば済むはずだ
何かあるぜ　この殺人の裏には
俺たちの知らない何かが
これ以上　亡霊兵士の好きには
させないぞ
じっちゃんの名にかけて
待ってよ
こんな朝早くから
どこ行くの　一ちゃん？
どうしても調べなくちゃ
いけないことがあってさ
調べるって？
考えてみろよ　美雪
萩元さんが殺された時も
難波さんが殺された時も
犯人は多くの罠や
見張りを突破して
俺たちの内部へ侵入している
だが　みんなの注意が
外に向けられてた分
内部の人間が犯行を犯すのは
簡単だったはずだ
何ですって　じゃあ私たちの中に
亡霊兵士が？
でも　一ちゃん
ゆうべ私たちが見た
あの兵隊の格好をした人は
誰なの？
あの時は殺された難波さん以外
全員　そろっていたじゃない
そいつをこれから
確かめに行くのさ
もし亡霊兵士なる第三者が
存在するなら
この島に潜み続けている
痕跡があるはずだろう？
どうした　美雪
何かそこで動いたの
何だ　ネズミじゃないか
ネズミがパンを…
ネズミ？
どうしたんだ？
倒れちゃった
死んじゃってるよ
これは…　見ろよ　美雪
パンの中にカプセルが入ってる
それって…
これをかじったんだ
このネズミ
一体どこからこのパンを…
ねえ　一ちゃん　ここ確か
白骨がごろごろしてた穴じゃ？
ああ　確か　そうだ
一ちゃん
これは…
何？
パンくずが落ちてる
でも　どうしてパンが
こんな所にあったのかしら
それだよ　美雪
こいつは他に何か
見ろよ　こんな所にも
辞世の句があるぜ
あれ？前に入った時には
全然　気づかなかったわね
俺たちが２日目に泊まった防空壕
あそこにも
こんな句が書かれてたよな？
うん　そういえば
ということは　あそこで日本兵が
自決したってことだ
でも変だな　あそこの防空壕には
白骨が１つもなかっただろ？
言われてみればそうね
もしかしたらここの白骨は
俺たちが泊まった　あの防空壕から
運び込まれたものも
混じってるのかも
ほら　見てみろよ　この白骨の数
でもわざわざここへ
白骨を運ぶなんて　何のために？
おそらく俺たちを
あの防空壕に泊まらせるためだ
前の夜　米村チームが
爆死したのを知った俺たちが
爆弾から身を守るのに
一番安全な　あの防空壕へ
行くだろうってことは
きっと犯人にも予測できたはずだ
だから白骨を
ここに運んできたのさ
でも　どうしてそこまで
あの防空壕こそが犯人が用意した
密室殺人の舞台だったからさ
密室殺人？
そして
さらにこんな大量の白骨を
この穴１ヵ所に集めたのも
もう１つ犯人の別の意図が
あったんだろう
別の意図ですって？
ここを隠れ家にするためさ
俺たちは１日目
この穴の白骨を見て
近づこうとしなかっただろ？
そこが犯人の狙いだったんだ
それじゃあ…
ああ
おそらく　ちょっと前まで
この洞窟には
誰かが隠れていたんだ
でも一体　誰が？
何だ？
あれ？ここに書かれた文章だけが
逆さまだ
ねえ　一ちゃん
よく見て　この句だけ
ずいぶん文字がきれいだわ
ほんとだ
そうか　分かったぞ　美雪
これは辞世の句なんかじゃない
ええ？
つい最近までここに
監禁されていた人物が
残したメッセージだ
どういうこと　一ちゃん？
いいか　見てみろ
こういう状態で
壁に字を書こうとすると
字が逆さま
そう　この辞世の句を書いた人は
なぜこんな不自然なポーズで字を
書かなければならなかったのか
その答えはこの人物が
後ろ手に縛られてた
つまり監禁されていたからさ
では　なぜこの人物は辞世の句に
見せかけてこんな文を残したのか
それは彼が誰かの監視下にあって
大っぴらに自分のメッセージを
書けなかったからなんだ
そうまでして残したかった
メッセージとは
これはおそらく
この連続殺人の真犯人
亡霊兵士の正体に　ほかならない
一ちゃん　あの白骨壕に
監禁されてた人って誰なんだろう
さあな　ただ俺の推理が
間違っていないとすれば
ゆうべ現れたボロボロの日本兵
彼こそがあの壕に監禁されていた
人物じゃないのか？
ええ？
おそらく犯人は
監禁してたその人物に
あらかじめ日本兵の格好をさせ
そして例のカプセル入りのパンを
食べさせた後　解放したんだ
俺たちに亡霊兵士の存在を
アピールするためにね
そして役目を終えた彼は
やがてカプセルの中身が回って
ジャングルで死ぬ
でもそれじゃあ　どうして
あの人は逃げたりしたの？
監禁されてたんなら
むしろ私たちに
助けを求めてくるんじゃ？
そうか　やっぱり俺が感じてた
違和感は気のせいじゃなかった
真犯人　亡霊兵士は
俺たちの中にいる
きっといるはずだ
この中に亡霊兵士が
さて見張りの番が来るまで
ひと眠りすっか
岩野さん
金田一君
ちょっと頼みたいことがあるんだ
僕は今夜１番目の
見張りなんだけど
代わってくれないかな
見張りを？
いや　ここんとこずっと
神経張ってて眠れなくてね
いったん　仮眠を取りたいんだ
ええ　俺は別にいいっすよ
そうか　助かった
じゃ　頼むよ　さてと…
ああ　そうだ　岩野さん
何だい？
ついでに岩野さんのその服も
貸してもらえませんか？
ああ　いいよ
どうも　すんません
この暗号が犯人を示す
重要な手がかりであることは
確かなんだが
「最愛なる我が恋人
君とは永遠に　もう会えない」
「今思い出すこと
君と遊びし　あの日」
手を上げろ　亡霊兵士
予想どおりだったな
犯人が外からじゃなく
内側から来るって分かってりゃ
待ち伏せするのは簡単さ
さあ　正体を見せてもらおう
あんたは一体…
待て！
そんなバカな
一ちゃん？そこにいるの？
一ちゃん
一ちゃん　一ちゃん！
大丈夫　一ちゃん？
大したことはない
それよりみんなは？
一ちゃんが襲われたの聞いて
見張りを増やすって
今　男の人全員で出てるわ
違う　違うんだ　美雪
犯人は内部にいるんだ
そいつを突きとめるには
あの暗号を
暗号って洞窟のこれ？
ああ　それそれ
何だ　お前　妙な書き方して
文章が意味もないところで
切れてるじゃないか
違う　間違っていたのは俺の方だ
俺はただ文字を写しただけ
几帳面な美雪は途切れた所まで
忠実に書き写してたんだ
待てよ　この字の並び方
どこかで見たことがあるような
そうか
一ちゃん　何か？
そうだったのか
この暗号の正体は
分かるぞ　これなら
どういうことだ？こいつが
真犯人だって言うのか？
そんなバカな　こいつに
萩元さんが殺せるわけがない
それとも俺の解読法が
間違ってるのか？
どうしたの　一ちゃん
おっかない顔して
いや　別に
あの　ねえ
聞いていいかな？
何だよ
２日目に防空壕で寝た時
一ちゃん　檜山さんに
それは売り言葉に
買い言葉ってやつであの…
あの場限りの口から出まかせを
何よ　びくついて
やっぱり一ちゃんてば
また私の悪口言ってたのね
お前　あの時　俺が言ってたこと
聞こえてなかったのかよ
聞こえるわけないでしょ
檜山さんの声は
嫌でも聞こえたけど
何だ　それならいいんです
よくない
ったく　びくびくして損したぜ
どういうことだ　それって
一ちゃん　どうかしたの？
そうか　そうだったのか
美雪　謎は全て解けた！
この事件の真相が分かったって？
おい　もう探偵ごっこはいいよ
今日は迎えの船が来るんだ
あとは警察に任せときゃ
そうよ　いくら亡霊兵士でも
島狩りをすれば…
そんなやつは
最初からこの島にはいないぜ
ええ？
亡霊兵士なんかいやしない
俺たちは真犯人がでっち上げた
幻の兵士の影におびえ
真犯人の思いどおりに
動かされていたんだ
幻の兵士？
でも僕らは現に
森の中で日本兵に
遭遇したじゃないか
１日目の夜
山頂で野営した連中が爆死した
俺たちが見た兵士姿の男は
あの４人のメンバーの１人さ
何？米村チームの誰かだって？
犯人は計画どおりに前もって
１人を拉致した後
亡霊兵士の存在を
印象付けるために
残った３人をキャンプごと
手製の爆弾で爆死させたんだ
何人死んだか
分からなくするためにね
そして犯人は拉致したその人物を
俺たちが１日目に見た
白骨壕に監禁し　その後
日本兵の格好をさせた彼を
解放した
俺たちと彼を遭遇させるためにね
そう考えれば
あの晩　俺が作った罠が
全部　壊されていた理由も
説明がつく
彼がキャンプに助けを求めに
来ることを計算に入れた犯人は
彼があの強力な罠にかかって
俺たちに捕らえられるリスクを
恐れたに違いない
難波さんを殺した
犯人が来る時には
引っかからなかった鳴子に
後になって
引っかかったと思えたのも
犯人と鳴子を鳴らした人物が
別人とすれば納得がいく
でも金田一　もしあの男が
米村チームの誰かだとしたら
なぜ俺たちを見て
逃げ出したりしたんだ
ほら　思い出してくれ
あの爆発現場で見つかった
遺留品の中に
分厚いメガネがあったろ？
確か米村という人のだと
岩野さんが言っていた
おそらく　その米村という人こそが犯人に拉致され
日本兵に仕立てられた人物だ
何だと？
あの男が米村だって？
ということは
あの米村って人には
僕たちの姿がはっきりと
見えてなかったってことか
そうだ　それにもう１つ
あの時　犯人は
ある方法で確実に米村さんが
逃げ出すように仕向けたんだ
ある方法？
つまり
あの時よく目が見えなかった
米村さんにとって
突然　現れた相手が
敵か味方か判別するには
耳に頼るしかない
そこで戸惑っている彼に
誰かがこう叫んだ
「殺せ」ってね
でもそれじゃまるで　犯人がいつも
私たちのそばに
いるみたいじゃない
まさか金田一　お前
そうだよ
この墓場島を舞台に
殺人劇を演じた真犯人
亡霊兵士は　この中にいる
真犯人は　この中にいる
俺の仕掛けた罠が教えてくれたよ
犯人は誰の目にも触れず
萩元さんの防空壕に侵入し
殺害した
この犯行を可能にした方法は
ただ１つ
答えはこの辞世の句の中にある
墓場島を舞台に亡霊兵士を
演じてきた犯人　それはあんただ
金田一少年の事件簿
「墓場島殺人事件」ファイル３
君にこの謎が解けるか
クラスの連中と一緒に
連休をアウトドアしに行った
南海の孤島　墓場島
そこで俺たちは
恐ろしい殺人事件に巻き込まれた
サバイバルゲームに来ていた
学生グループが
何者かによって爆死させられ
さらに厳重な警戒をかいくぐり
新たに２人の犠牲者が出た
まっ…　まさか金田一　お前…
そうだよ
この墓場島を舞台に
殺人劇を演じた真犯人
亡霊兵士は　この中にいる！
「墓場島殺人事件」
俺たちの中に
難波さんたちを殺した…
真犯人が？
ああ
亡霊兵士は　この中にいる
おい　ふざけるな！
どうして俺たちの中に
人殺しがいるんだよ
そうだよ　冗談はよせよ　金田一
冗談なんかじゃないさ
残念ながらね
この島での犯人の行動は
多分こんな感じだろう
まず犯人は
俺たちが島に来た最初の夜
第１ステージとなった山頂で
３人を爆死させた後
拉致した米村さんを
白骨壕に監禁した
おそらく犯人は
その時　何らかの方法で
彼の　のどを潰したはずだ
洞窟内で助けを呼ばれても困るし
何より彼には　亡霊兵士として
俺たちの前に現れる
役割があったからね
だから　あの時
あの日本兵の格好をした人は…
ああ　声を出したくても
出せなかったのさ
そして２日目の
キャンプ地となった防空壕で
犯人は　あるトリックを使って
萩元さんを殺害
俺たちは３日目の朝　キャンプ地を
今いる　この場所に移動
ここが殺しの第３ステージとなる
３日目の夜　犯人は
見張りの目を盗んで白骨壕へ行き
監禁していた米村さんに
日本兵の格好をさせて解放した
そして急いで
キャンプに戻った犯人は
テント内の難波さんを殺害
幻の殺人鬼をでっちあげて
俺たちの警戒を外に向け
最後には全ての罪を
亡霊兵士に着せて
自分は逃げおおせる
真犯人の意図は
こんなところだったんだろうよ
まったく…　恐ろしいほど周到に
計算されたシナリオだよ
だが　ここで犯人は
大きな見落としをしていた
大きな見落とし？
死んだ米村さんが残した
このダイイング・メッセージだよ
ダイイング・メッセージ？
これは彼が監禁されていた
白骨壕の壁に辞世の句に交じって
刻まれていたものさ
それの　どこが
メッセージなの？
ただ恋人に宛てた
遺言にしか見えないけど
いや　こいつは
文章の内容自体は
何の意味も持たないんだ
重要なのは文字の並び方さ
文字の並び？
この文章　あちこちが
妙なところで途切れてるだろ
これがヒントになった
つまり　この文章は
漢字とカタカナという
２種類の記号の
並び方がポイントなのさ
２種類の異なった記号を
組み合わせて文章を作る
何かに似てると思わないか？
モールス信号か
そのとおり
米村さんも岩野さんたちと一緒に
サバイバルゲームをしてたからには
モールス信号は知ってたはずだ
彼は漢字を線に
カタカナを点に見立てて
モールス信号に置き換えたんだ
つまり　この信号が解けた時
真犯人の名前が明らかになる
それじゃ解読してみよう
例えば　この「會」という
漢字１文字
これをモールス信号に
置き換えると
線が１本
つまり「ム」を意味する
次のブロックは
カタカナ３文字だから
点が３つ　つまり「ラ」だ
同じ要領で解読していくと
「村の生き残り」
何だよ　それ　村の生き残りが
どうしたってんだ
岩野さん　あなたなら分かるでしょ
この言葉の意味が
以前　取り乱した萩元さんが
「２年前」という言葉を口走った時
あなたや難波さんは
ひどく落ち着かない様子を見せた
２年前　あなたたちの
サバイバルゲームのメンバーが
何をしたのか　それは分からない
だが　その２年前の出来事と
今回の事件の関連に
あなたは薄々　気付いていたはずだ
それ以外に自分たちが
命を狙われる理由はないってね
だからこそ　あなたは
１人きりになる見張りを恐れて
自分のヘルメットを
つけさせた俺に
身代わりをさせようと
したんじゃないんですか？
何てやつだ
信じらんない
じゃあ　岩野さんは
犯人じゃないってこと？
そう　真犯人の名は
残りの暗号を解けばハッキリする
最初のブロックは「ヒ」
次のブロックが「ヤ」
次が「マ」　そして最後は「ハ」
今の４文字に　さっきの文章を
足して最初から読むと
「檜山は村の生き残り」
そう　この事件の真犯人
亡霊兵士は
檜山達之　あんたのことさ
檜山さんが亡霊兵士？
ひ…　檜山
お前があの時の村の…
けっ　冗談じゃねえ
暗号だか何だか知らないが
そんなんで犯人にされちゃ
たまんねえぜ
それによ　２日目の
萩元殺しはどうなんだよ
やつが殺された時
俺が見張り場から
一歩も離れちゃいないってことは
俺としゃべってたテメエが
一番よく知ってんだろ
そうよ　やっぱり
檜山さんには無理よ
いや　あの状況で
萩元さんを殺す方法が
たった１つあるんだよ
何？
俺がそのことに気付いたのは
ゆうべ犯人に襲われた時だった
あの時　俺は
犯人を取り逃がしたが
そのすぐ後に
妙なことが起こった
犯人が走りさった方向とは
全く逆の
俺の背後から　誰かが現れて
首をしめられたんだ
どういうことよ　それって
聞いてのとおりさ
考えられることは１つしかない
亡霊兵士は１人じゃなく
２人いたんだ！
何だって？
そして　その共犯者
もう１人の亡霊兵士は
俺たち不動高校の
メンバーの中にいる
僕たちの中にも犯人が？
そっ…　そんな
だって　そもそも俺たちが
この島に来たのだって
観光会社のおっさんに
勧められて　偶然…
それが偶然じゃ
なかったとしたら？
ええ？
あのおっさんは
ありもしない無人島ツアーを
俺たちに勧めるよう
前もって犯人に依頼されてた
のかもしれないってことさ
どうして　そんなことを
する必要があるんだ？
１つは偶然を装って
共犯者がこの島に入り込むため
もう１つは俺たちを
この事件の目撃者にするためさ
目撃者？
ああ
そもそも　この殺人計画は
俺たちがこの島に来る
ずっと前から始まっていたんだ
檜山と共犯者は
２年前に起こった何らかの理由で
岩野たちのサバイバルチームに
強い恨みを持ち
復讐を企んでいたんだ
そして　その下準備として
檜山は岩野たちのチームに
もぐりこんだ
サバイバルゲームに熱中している
後輩という芝居を演じながらね
それから２年　チャンスは訪れた
檜山と共犯者は
この墓場島を徹底的に調べ上げ
島にまつわる亡霊兵士の怪談を
利用することを考えついた
檜山さん　まったく
あんたの芝居は見事だったよ
例えば　防空壕で
萩元さんが殺された夜
見張りについた　あんたは
俺を相手に無駄話を始めた
だが　こいつがすでに
罠だったんだ
あんたが俺に話しかけている間
共犯者はこっそり
自分の防空壕から抜け出し
萩元さんの防空壕に忍び込んで
彼を殺害
そして再び　檜山の横を
堂々と通って
自分の防空壕に戻った
つまり　あんたは
外を警戒するフリをしながら
実は共犯者が犯行を
遂げられるように見張る
犯人側の監視者だったってわけさ
そもそも　このトリックは
檜山と共犯者の関係が
少しでも疑われては成立しない
だから　あんたは
幾重にも予防線を張り巡らせて
２人の共犯関係を
巧妙に隠しとおした
檜山は岩野さんたちの仲間として
共犯者は不動高校の
普通の高校生として生活する
いつか復讐の時が来たら
お互いが　まるで初対面で
あるかのように見せるためにね
ウ…　ウソでしょ？
俺たちの中に…
檜山の共犯者が？
そんな　まさか…
一ちゃん　本当に私たちの中に？
ああ　檜山の共犯者
もう１人の亡霊兵士は…
お前だよ
檜山の共犯者
もう１人の亡霊兵士は…
お前だよ　森下麗美
れっ…　麗美が？
もう１人の亡霊兵士
ウソだろ　麗美？
お前がどうして？
ははは…　まったくだ
さっきから聞いてりゃ
デタラメばかり言いやがって
大体　俺とこの女が
いつどこで知り合うってんだ？
証拠はあるのかよ　証拠は？
森下　俺たちが
今のキャンプに移って
俺が罠を作っていた時
お前は　前の晩に
俺と檜山が話してたことを
全部聞こえたって言ったよな
指一本触れさせないんでしょ？
聞いちゃったよ
そうよ　そうだわ
それこそ私が
共犯者じゃない　立派な証拠よ
あの時　私が萩元さんを
殺しに行ってたら
あなたたちの話を
全部聞けるはずないわ
私　話の内容
全部覚えているもの
金田一君が言ったことも　全部
本当か？俺の言葉も全部？
ええ　何だったら
今ここで言ってあげましょうか？
金田一君が言ったこと　全部
美雪　お前もあの夜
俺と檜山が話している時
起きてたんだよな？
ええ
その時　お前
俺の言ってたこと聞こえてたか？
ううん　全然
そんな　何言ってんのよ　美雪
それが…　確かに檜山さんの声は
聞こえたけど
一ちゃんの声は
何も聞こえなかったの
そういうことさ
あの防空壕の中にいる人間には
見張り台の　檜山の声は聞こえても隣の防空壕の中にいる者
つまり　俺の声までは
分厚い土の壁に遮られて
全く聞こえなかったんだ
なのに　どうして森下は
俺の言葉の
一言一句まで知っていたか
それは檜山　あんたが彼女に
俺たちの会話を教えたからさ
あんたは森下が
ずっと自分の防空壕の中に
いたように印象付けようとして
彼女に俺たちの会話の内容を
こと細かに伝えて
それを俺に話させた
だが皮肉にも
その念の入った小細工が
裏目に出てしまった
森下のアリバイを
作るどころか　逆に
あんたら２人の
秘められた共犯関係を
証明することになっちまったんだ
さあ　まだ何か
言うことがあるか？
亡霊兵士の仮面は
完全に　はぎ取られたぜ
くっ…
達之　逃げて！
きゃあ！
森下！
来るな！
とんだ迷推理だぜ
俺がこんなガキと共犯だって？
笑わせるにも程があるぜ
名探偵さんよ
いいぜ　教えてやるよ
そうさ　亡霊兵士はこの俺だよ
一ちゃん…
村の生き残り？復讐？
何だよ　それ
俺はただアーミー気取りの
お坊ちゃま連中に
心底ムカついただけさ
俺にとっちゃ
最高のゲームだったぜ
ちゃちな遊びじゃなく
生の殺しを体験できたんだからな
さて　お楽しみも
そろそろフィナーレだ
岩野　そのフィナーレを飾るのが
お前の死だよ
金田一…
これ以上　人を殺して何になる？
もうバカなマネはよせ
はっ　バカはオメエだろ？名探偵
そいつはお前を
身代わりにしようとした男だぞ
そんなやつを
貴様は　かばうってのか？
そうじゃない
俺が助けたいのは
あんたらのほうだよ
何？
２年前　この岩野たちが
どんなひどいことをしたのか
俺は知らない
だが岩野たちに復讐したって
あんたらが失った大切なものは
絶対　元には戻らないぜ
復讐のために人を殺して
何か取り戻せたか？
目の前で人が死んでいくのを見て
それでよかったって
心底思えたのかよ
本当はもう
分かっているはずだぜ　檜山
こんなムチャしてまで　１人で罪をかぶろうとしている　あんたなら
これ以上　罪を重ねるな
あんた自身のためにも
あんたがそこまでして
守ろうとしている　森下のためにも
けっ　言いたいことは
それだけかよ　名探偵
てめえの説教は　うんざりだぜ
檜山　そのカプセルは…
どう…　これなら文句ねえだろ
自分のやったこと
自分でケリを…
檜山！
達之！
なれなれしく呼ぶんじゃねえよ
俺は　おめえなんて知らねえ
亡霊兵士…　俺１人だ
なあ　名探偵　お前の言ってたこと１つだけ同感だぜ
復讐なんてロクなもんじゃねえ
もしそんなこと
考えてるやつがいたら
言ってやりてえよ
もっと　てめえの人生を大切に…
生きて…
麗美…
何よ　こんなやつ
死んで清々したわ
こんなやつ　死んで当然よ
森下
こんなやつ…
ええ？米村の死体が見つかった？
ええ　君の推理どおりでしたよ
金田一君
彼は日本兵の格好のまま
死んでいたそうです
死因は例のネズミの時と
同じ薬物でした
君たちを島に連れていった男も
大金を積まれて頼まれたことを
白状しましたよ
そうか　で　森下は？
まだ黙秘を？
それがですね…
急に気が変わって　全部話すって？
久しぶり　金田一君
元気してた？
あっ…　ああ
何かお前も　元気そうだな
そう？これでもご飯なんか
のど通んないのよ
話してくれるんだろ？全部
私と達之はね　長野県の
黒坂村ってところで育ったの
人口　４０人ちょっとの
自然に囲まれた
山奥の小さな村でね
みんなが家族のように助け合って
私　あの村が大好きだった
私たちは家もすぐ近くで
小さい頃から
兄妹みたいに育ったの
この時間が止まったような
静かな村で　ひっそり暮らしたい
それが私の願いだったわ
でも　そんなささやかな願いも
永遠に　かなわなくなってしまった
あれは私と達之が
高校と大学の受験を終えた
２年前のことだったわ
そっか　達兄ちゃん　大学
受かっちゃったんだ
何だよ　こいつ
まるで落ちたほうが
よかったみたいに
だってさ　東京に行ったら
もう村には帰ってこないじゃん
バカだなあ　そんなわけないだろ
ウソばっか
みんなそう言うけど　結局は…
俺は帰るよ　絶対に
だって　俺は村に帰ってお前と…
達之
早くジープに乗り込め
逃げるぞ
急げ
何？あの人たち
また戦争ごっこ？
まったく
どうしようもない連中だな
この間だって山下さんとこの
苗木が踏み荒らされてさ
うん？
何か　辺りがキナくさくないか？
そういえば…
達兄ちゃん　あれ！
まさか…
村が！俺たちの村が！
生き残ったのは私と達之を含めて
ほんの数人
火元が風上の林で
村の人が火事に気付いた頃には
もう村全体が火に…
私の家族も達之の家族も
逃げ遅れて
それから私は親戚を頼って
東京の高校に通うことにしたの
東京なら達之といつだって会える
でも私たちはそこで
もう一度あいつらに
出会ってしまったのよ
麗美のほうは
元気にやっていたか？
うん　おじさんもおばさんも
とっても　いい人だし
たっちゃんには　こうして
毎週おごってもらえんだもん
ったく　相変わらずだな
お前ってやつは
でも２人とも
東京に出てきたのは正解だったな
ここでは何もかもが
めまぐるしくて
余計なことは考えずに済む
黒坂村ゆうたっけかな？
あの村
ああ
丸焼けだってさ
村人もほとんど
焼け死んじまったと
えれえことになっちまったな　岩野うん
たっちゃん　あれ
あいつら…　あの時の…
萩元　お前があの時
水かけ忘れたからやど
そんなこと言われても…
僕はてっきり火は消えたのかと
でも　どうすんだよ？
このことが警察にバレたら
大丈夫だって　ニュースでも
何も言ってなかったし
バレやしないさ
こっ…　こいつらが…
私の村を焼いた張本人
よせ！
でも　たっちゃん
あいつらを警察に！
無駄だよ　そんなことしたって
あの状況じゃ　証拠不十分で
すぐに釈放さ
それより　やつらの顔
全員しっかり覚えとけ
え？
生きながらに焼かれて
死んでいった
父さんや母さんたちの苦しみを
やつら全員に味わわせてやるんだ
たとえ何年かかっても
必ず裁いてやろう
俺たちの手で！
あとは金田一君の
推理したとおりよ
私たちは　それぞれの生活を
続けながら
綿密な計画を
練り上げていったの
もう１つ聞いていいか？
何？
今までお前は
全ての罪をかぶって死んだ檜山の
意志を守ろうとして
ずっと黙ってたんだろ？
なのに　何で今頃になって
全部　話す気になったんだ？
私ね　おなかの中に
赤ちゃんがいるの
達之の子供が
ええ？
昨日　検査でハッキリしたわ
もう４ヵ月ですって
私ね　達之があんな死に方をして
本当　どうしていいか
分からなかった
私が何かしゃべったら
あの人の死が無駄になるみたいで
何も言えなかった　でも今は違う
私　この子のためにも
全てを話して
ちゃんと罪を償うつもりよ
私と達之の間にできた　この子に
母親として胸を張れるように
「母親として」か…
何つうか　女って
すげえ生き物だな
なあ　明智警視　森下の証言で
岩野たちがやったこと
何とか　できないの？
ええ　今度のことで彼も
だいぶ参っているようですから
自白も時間の問題でしょう
でも　すごいな　麗美ちゃん
何か強くなったって感じで
私も赤ちゃんできたら
あんなふうに　しゃんと
なれるのかな？
えっ？
ん？どうしたの？
美雪…　お前まさか…
赤ちゃん欲しいのか？ん？
俺でよければ相談乗るぜ
なっ…　何考えてんのよ
いてえ…
金田一君
君は女心が分かっていませんね
表現がストレートすぎます
だって　赤ちゃん作るにはまず…
まだ言うか　このドスケベ
だって　赤ちゃん作るにはまず…
だろ？
出せ！ここから出してくれ！
犯人は犯人らしく
おとなしくしてなさい
だから俺じゃないんだってば
しかし　電車の中での殺人事件
しかも目撃されてるんですよ
ここは一発　この俺が…
そういうわけには　いきません
え？
私が解決してみせます
そう　名探偵と言われた
あなたのおじい様の名にかけてね
人のセリフ取んな！
金田一少年の事件簿
「明智警視の華麗なる推理」
謎は全て解けましたよ﻿やあ　よく来てくれたね
警視庁きってのエリート警視
明智健悟
フフッ
思ったより元気そうですね
殺人容疑で逮捕された人とは
思えませんよ
金田一君
まさか　お２人さん
目の前にいる愛と正義の少年が
ホントに人を殺したとは…
じゃ　ということで
ああ　そういうことじゃないのよ
まっ　元気そうで
よかった　よかった
おっさんまで見捨てないでよ
俺は無実なんだってばー
寝たいだけ寝られ
怠けられる
君に　うってつけの
場所じゃないですか
試験も何にもないしな
聞いてくれよ
こういうことなんだよー
昨日の夜　俺は
双子山遊園地駅から
不動山行きの快速に乗って
家に帰る途中だった
丸１日　遊園地のレストランで
バイトして　くたくただったんだ
３両編成の３両目に乗った途端
眠っちまった
そしたら
あー！
あ？
ひ…　人殺しー！
え？人殺…
ああっ
その車両には俺と
その死んだおっさんしかいなくて
たまたま乗ってたっつう刑事に
即効　逮捕されちまったんだ
何だよー　信じないのかよー
まっ　君に人殺しなんて
度胸はないでしょうけどね
とにかく手錠付きでもいいから
出してくれよ
俺をハメたヤツを
俺自身の手で
捕まえたいんだよー
ダメです
あーら　きっぱり
そんなー
そう簡単に
出せるわけないでしょう
しかし　真実を突き止めるのが
私の役目です
大丈夫
君が本当の犯人でないのなら
私が　それを証明してあげましょう
そう　それこそ
名探偵と言われた
君のおじい様の名に
かけてもいいですよ
人が下手に出てりゃ
いい気になりやがって
こらー！勝手に
じっちゃんの名を使うなー！
問題の電車は
双子山遊園地　始発の
快速２２時１０分発
不動山行きです
この電車は途中
３つの駅に停車しますが
始発駅と終点以外
改札はありません
死体が発見されたのは
三津川から　からすヶ丘の間を
走っていた最中です
被害者は江熊忠夫　５５歳
都内の金融業者
いわゆるカネ貸しです
現場には被害者のコートや帽子
アタッシュケースなどが
バラバラに散らばっていました
おそらく犯人との間で
乱闘があったのでしょう
凶器は　その傘
鋭い先で盆のくぼ
つまり　延髄を　ひと突きされ
ほとんど即死に近い状態でした
この凶器の傘は
やはり被害者の物なんだね？
ええ　身内も証言しています
付いてた指紋も
すべて彼のものでした
なるほどね　それにしても
この江熊という男
この暑い中　えんじのコートに
帽子とは
随分　変わり者ですね
この男　あくどいまでの守銭奴で
有名だったらしいですなあ
カネを貸した相手に
日本刀で切りつけられたことも
あったそうで
その傷跡が頭と腕に残っていて
それを隠すために
真夏でもコートと帽子を
ほう　で　住吉君　君ですね
あの少年を現行犯で逮捕したのは
はあ　私は　ゆうべ
本庁から出向いて
別件の聞き込みを終え
双子山遊園地駅から
あの電車に乗りました
酔っぱらったサラリーマンが
１両目に
私と女子高生が２両目に
そして例の少年が
３両目に乗ったのを覚えています
２つ目の双葉駅を過ぎ
次の三津川駅を出て　すぐでした
１両目から　えんじのコートと
帽子をつけた被害者が現れ
目の前を横切って
３両目に入って行ったんです
すぐ入れ違いに
３両目から車掌が
乗り越し精算にやってきました
そのあと　ちょっとしてから
今度は
女子高生が３両目に行きました
そしたら
わー
人殺しー！
女子高生は３両目に入って
すぐに悲鳴を上げて出てきたので
犯行は不可能
３両目に入った被害者と
すぐ入れ違いで出てきた車掌も
当然ムリです
走行中の車両は密室同然で
外部からの侵入は　ありえません
となると　犯人は同じ車両にいた
あの金田一という
少年しかいません
以上です
うん
住吉君　確かに君の言うことは
筋が通っているね
でも　面白みに欠けていると
思わないか？
私が　じかに聞いてみましょ
け…　警部　私　何か
いけないことでも
言ったんでしょうか
あんな流し目ぐらいでビビるな
あ　でも　あんな目で
見つめられたら
何かあると思っちゃいますよ
ねえ
あのな　ああいう顔なんだよ
本人は　あれでカッコいいと
思ってんだから
誰がですか？
誰がって　あ…
ああ…　ううっ
だーかーらー
何度も言ってるでしょう
あたしは友達んちから帰るとこで
双子山遊園地から
例の快速の２両目に乗ったの
あの刑事だっつう人も
同じ車両だったの
冷房の効き過ぎで冷えちゃって
他の車両に移ろっかなーって
思ってたら
あの変なコートのオヤジが
１両目から出てきて
３両目に入ってったの
そして入れ違いに
車掌が入ってきて
ほんで寒くて我慢できなくて
３両目に行ったの
そしたら　あのオヤジが死んでて
そう　刑事さんの言うとおり
あたしゃあ　始発駅の
双子山遊園地で
あの電車に乗りました
周りに誰がいたのか
とんと記憶に…　え　何せ
脳ミソとろけるくらい
飲んでましたから
え　確か１両目に乗って
すぐ寝込んじまって
あっ　でも　あいつ
殺された男のことは覚えてますよ
とんでもないヤツで
寝てる　あたしの足を
ふんずけてったんですからね
それで気が付いたんですけど
しまった！降りるはずの
三津川駅を乗り過ごした！
おーい　止めてくれよ
頼むよ　俺を降ろしてくれよ
止めてったら　ちょっと
ああ　お客さん　お客さん
止めてくれよ
そしたら
後ろの車両のほうから
悲鳴が聞こえてきて
なあなあ　止めて！
あの　落ち着いて
ああ　ゆうべはバイトの帰りだった
２つ目の双葉駅から
例の電車に乗ったんだ
何両目だった？
１両目
他に双葉駅で乗り降りした者は？
ないね
あのふざけた酔っ払いが
イビキかいてて
俺は離れた所に座ってた
あの　えんじのコートの男が
乗ってきたのは
次の駅　三津川だった
あいつは酔っ払いの足を踏んで
２両目に行っちまった
くそオヤジは目を覚まして
運転席のドアを　たたきだした
車掌が来て止めに入ったら
女の悲鳴が聞こえてきたんだ
俺が見たのは　それだけさ
私は始発駅から
ずっと３両目の車掌ボックスに
乗り込んでまして
電車が三津川駅を出た頃
乗り越しの清算に出ました
３両目には例の少年が
眠りこけてて
あのコートの方が入ってきました
乗り越しはありませんか？
と聞いたんですが
彼は黙ってイスに座り
私は　そのまま３両目を出ました
２両目には　女子高生と
あの刑事さんがいて
乗り越しもなかったようなので
そのまま１両目に
そしたら　酔って眠っていた
中年の男性が起きていて
運転席のドアを
たたいていたんです
ちょっと落ち着いて　お客さん
私は何も知りませんよ
何も見てません
ずっと運転席にいたんですから
ああ　ただ　三津川駅を
出たところで
突然　後ろのドアを
ドンドン　たたかれて
ん？
頼むよ　おい　止めてくれ
止めてくれってば　おいおい
俺のこと降ろして…
もちろん　運転席を
離れたりはしませんでしたよ
うーん　マズイことんなったな
このままじゃ　金田一は
マジでブタ箱入りだぞ
そうとも限りませんよ
お？
あれだけ全員の証言が
一致してるんですぞ
スキ１つなく
ホントに　そう思いますか？
うん？
１人だけボロを出した
人物がいました
明らかに矛盾を言った
ええ？
やはり犯人は　あの中にいました
はい　もしもし　そうか　で？
分かりました　ご苦労さま
明智警視
どうやら　つじつまもあった
まっ　あえて言うなら
謎は　すべて解けましたよ
凶器となった傘は
被害者の江熊さん自身の物でした
鑑識によりますと
傘に付いていた指紋は
江熊さんだけのもので
警察では
なお一層の調査を進めています
そうか　見えてきたぞ
犯人の正体が
明智警視に伝えなきゃ
なーんで誰も
面会に来ないんだよー
美雪　何やってんだよ？
美雪ー！
えー？何で？
ずーっと外泊中だよ
外泊って　どこに？
知らない
おばさん　言ってたけど
３食昼寝付きの極楽してんだって
どーせ　どっかでデレデレ
女の子と遊んでんじゃない？
もう　はじめちゃんたら
約束したのに
何だよ　刑事さん　こんな所に
俺たちを呼び出したりして
皆さんを呼んだのは他でもない
この事件の真犯人を
明らかにするためです
な…　何ですって？
ご冗談でしょ
犯人は　あの金田一とかいう
ガキじゃねえのかよ
いいえ　江熊忠夫を殺害し
巧妙なトリックを使って
金田一君に罪をなすりつけた人物
真犯人は　この中にいます
ええ？
そんなバカな！
あの夜　始発駅を出たとき
皆さんは　おおむね
この位置にいました
１両目には能代さんと
運転席の金子さん
２両目には住吉君と鹿沢さん
そして　この３両目には
能天気に眠りこけてた金田一君と
車掌室の八木さん
やがて　電車は２つ目の駅
双葉駅に停車
この駅で乗車してきたのが…
俺だ
そう　国東さん
そして　もう一人
言っただろ？
俺だけだったぜ
この駅で乗ったのは
いいえ　実は
発車ぎりぎりに飛び乗った
もう１人の人物がいたのです
その男こそ
あっ
江熊？
まさか
幽霊ではありません
被害者を演じてもらう
剣持警部です
バカな　あいつは次の
三津川駅から乗ってきたんだ
それも　この３両目からじゃなく
先頭の１両目に
顔を見ましたか？
えっ？
帽子の中に隠れていた顔です
被害者の江熊は双葉駅から乗った
その時刻　この駅に
住んでいる客から
借金を取り立てた
帰りだったことは
すでに裏を取ってあります
それじゃあ　俺が見たのは
あの夜　江熊は発車ぎりぎりに
３両目に飛び乗った
車内にいた犯人は
偶然その姿を見た
おそらく　かねてから江熊に
憎しみを抱いていたのでしょう
犯人は　すぐに近づき口論となった
そして　もみ合い
カッとなって彼の傘を奪い取り
これは衝動殺人です
凶器が被害者自身の
傘だったのは　そのためです
もし　これが計画殺人なら
あらかじめ凶器は
用意されていたはずです
江熊の床に張り付いた体を
見下ろしながら
犯人は自分のしたことに焦った
そのとき　犯人の心に
悪魔が　ささやいたはずです
この少年に　すべての罪を
着せてしまえば
そして次の三津川駅に着くまでに
あるトリックを考えた
うーん…　ん？
何やってるんですか　早く死んで
ええ？そこまでやるんですか？
何のために　そんな格好を
してると思ってるんです
くっそー　覚えてろよ
ったく
こうして　とっさに
江熊になりすました犯人は
この三津川駅に着くと
ホームに出る
ああ？
犯人は１両目から入り直し
あたかも三津川駅から
乗ってきたかのように思わせる
あとは今　私がやったように
入り口のそばにある
開閉スイッチでドアを閉め
悠然と車内を通って
この３両目に戻る
寝ている人の足を踏んだりして
コートの男の存在を
印象付けながらね
案の定　顔よりも
真夏に着ている
えんじのコートのほうが
みんなの記憶に残った
さて　ここからだ
剣持君　ストップウォッチを
では　スタート
３両目に戻った犯人は急いで
さも　乱闘があったかのように
見せかけ
すぐ３両目を出る
ストップ
約６秒ですなあ
そう　この間わずか６秒
つまり　あの夜たったの６秒で
犯行が行われたように
見せかけた
このトリックが使えた人物は
ただ１人
八木さん　あなたしかいません
ええ？
車掌が？
八木が犯人？
ま…　待ってください　刑事さん
それって　ただの推論でしょう？
証拠もないのに
証拠なら　ありますよ
あなたは　こう言いましたね
あの夜　１両目に入ったとき
酔って居眠りしていた
中年の男性が騒いでいたと
い…　言いましたよ
見たまま言っただけだ
酔っぱらって寝てた
この人が　わめいてたんだ
運転席のドアを　たたいてた
ほら　決定的なボロを
出しましたね
あの夜　始発駅を出てから
ずっと３両目の車掌室に
いたはずの　あなたが
なぜ１両目で暴れていた
男のことを
さっきまで寝ていた人間だと
知っていたんでしょう？
あなたは彼が居眠りしていたのを
知っていた
自分の目で見たからです
えんじのコートを着て
被害者になりすましたときにね
ちなみにドアの開閉スイッチは
鍵を使って操作しますね
私も　そうさせてもらいましたから
車掌のあなたには
造作もないことだ
あっ…
２０年間　こつこつと
血のにじむような思いで
貯めたカネだった
そ…　それを　あいつは
殺されて当然だったんだ
殺されて…
八木
確かに江熊は下劣な人間
だったかもしれません
だが自分の罪を無関係の人間に
押しつけようとしたのは
あなた自身の弱さですよ
全く皮肉な運命というわけですな
江熊が　たまたま
あの電車に乗ってこなかったら
ヤツも殺人を犯すことは
なかったろうに
いやー　しかし驚きました
まさか　あんな小さな
証言の矛盾だけで
犯人が分かるとは
私には尋問する前から
犯人は分かっていましたよ
えっ？
いいですか　凶器の傘に
犯人の指紋は残っていなかった
衝動殺人だから
指紋は残るはずなのに
なぜだと思います？
指紋をあとで　ふき取ったからじゃ
それなら　被害者の指紋も一緒に
ふき取られているはずでしょ
あっ　だったら　なぜ？
可能性は１つ
犯人は　こんな暑い季節でも
常に手袋をつける人物
つまり車掌
ということになるんですよ
な…　なるほど
推理の初歩ですよ　剣持さん
何で風まで吹くんだ　この野郎
警部！
例の連続放火魔が捕まりました
なに？
たった今　連絡が
やったな！
ついに執念の捜査が実ったわけだ
よーし！お？
何か忘れてるような
警部　早く早く！
まっ　いいか
よーし　今夜は徹夜で尋問だ！
そうっすね
お前　徹夜　好きか？
大っ嫌いっす
ねえ　今日は一緒じゃないの？
金田一君
誰？それ
え…
はじめちゃんの
バカー！
犯人は車掌だってばー！
凶器に指紋がないのが証拠だよ
だから　ここから
俺を出してくれー！
死んでも死にきれない
恨みを持った魂が
集まる島　鬼火島
ドアを開けると何もなかった
でも俺は確かに見たんだ
鍵穴から
生徒も殺人現場も
煙のように消えていた
孤島の受験セミナー合宿所で
起こった奇怪な事件
午前０時　それは
恐ろしい事件の序章だった
金田一少年の事件簿…
美雪　お前が
この手紙を読む頃には
俺はもう　この世には
いないだろう
お前とは本当に
長い付き合いだよな
幼稚園　小学校　中学　高校と
いつも同じクラスだった
こうして　死を前にしてみると
走馬灯のように
色々なシーンが思い出される
走馬灯って見たことないけどな
死ぬ前に言っておきたいんだ
俺の気持ち
お前に対する俺の気持ちを
ゴメン　ゴメン　はじめちゃん
ん？
待った？
あっ　よ…　よう
演劇部の練習が
なかなか終わらなくてさ
どうだっていいさ　そんなこと
もう　何　暗い顔してんのよ
はじめちゃん
胃の検査に引っ掛かったぐらいで
うちのお父さんなんか
しょっちゅうなんだから
私も　ついてってあげるんだし
気楽にやろうよ　ね！
あーあ　慰めは　やめてくれ
俺には分かる　俺は死ぬんだ
あー　こんなことなら
ちょっと痛いからって
胃の検査なんか
最初からするんじゃなかった
我が愛する妻　和枝
お前が　これを読む頃には
俺はもう　この世にはいないだろう
お前とは本当に
長い付き合いだった
今　死を前にしてみると
様々な思い出が走馬灯のように
よみがえってくる
あれ？おっさん
え？
あっ　お前ら　どうして　ここに？
俺は　その…
胃の再検査ってやつで
かー　お前もか　俺は直腸だ
何でも　ポリープとかいうもんが
あるのかもしれんのだと
ははー　それでビビってるわけね
バカ言ってんじゃない
俺の体は筋金入りなんだ
そう簡単にだな
はははははっ
警視庁捜査一課の鬼警部も
やっぱ　病気は怖いんだ
なーに　威張ってんのよ
はじめちゃんだって　さっきまで
ビビりまくってたくせして
バーカ言うな　いい年こいた
おっさんじゃあるまいし
俺の　この若さで病気になんか！
分からんぞ　金田一
逆に若いうちに
ぽっくり逝くってのが
最近　多いらしいからな
なーに言ってんだよ
おっさんこそ！
いいや　お前こそ！
金田一さん　お入りください
ただの胃炎だよ
気休め言ったりしませんよね？
そう思うんなら自分で見てみる？
あ　自分で？
そう
これファイバースコープ
っていってね
ま　言ってみりゃあ
細いガラスの繊維みたいなもんを
束ねて作ったコードなわけ
ほら　このレンズから　のぞくと
先のほうの映像が見えるんだよ
え？ホントだ
これが俺の胃の中かあ　スゲー
ねっ　見るからに
大したことないでしょう
胃炎だよ　胃炎
あの　でも先生
胃の中って意外と
きれいなんですねえ
食ったら　うまそー
君　医者にだけはならないでね
ほら見なさい　騒ぎ過ぎなのよ
はじめちゃんたら
ははははー　ワリいワリい
あ　ところで剣持のおっさんは
まだ出てきてないの？
さあ　はじめちゃんより
少しあとに
向こうの診察室に
入ったっきりだけど
うーん　もしかしたら深刻かな
あとで慰めてやらにゃー
またあ
不安になるようなことばっか
言っちゃダメよ
でも　はじめちゃん
これで安心して旅行に行けるね
え　旅行？
何よ　忘れたの？
夏休みのうちに　どっか行こうって約束したじゃない
ゴメン
えっ？
その…　どうせ死ぬならと思って
寿司屋でトロとイクラと
ウニを食いまくって
バイトで貯めたカネ
使っちゃったんだ
ええ？な…　何よ　それ
信じらんない
はじめちゃんが
どっか行こうって言うから
この夏休み　今まで
遊ぶのを我慢して
バイトしてきたのに
あ…　なあ
あっ　これだ！
ちょっと話をそらさないでよ！
違うよ　これ見てみろよ
何よ
医大専門予備校の
夏期合宿セミナー　アルバイト募集
場所は南房総の小島だって
南国だぜ
下手な旅行よか
よっぽど楽しく
なりそうじゃないか
その上　小遣いも稼げれば
一石二鳥ってやつだぜ
ふーん　考えてみよっかな
いーから　いーから　決まり決まり
あ　何か飲むだろう？
よーし　今日は俺が　おごっちゃう
ああっ
ああ　ったく
どこまで行きやがんだよ
あ？
あ　あのー　すいません
あっ
はじめちゃん　ダメよ
勝手に人の病室に入っちゃ
ああ　行くよ　すぐ
俺と同じぐらいの年かな
あー　何かすごいね　はじめちゃん
私　漁船て初めてよ
うう…　俺は
この手の船は　ちょっと…
うう…　胃炎も
まだ治ってないのに
ウフフ　ねえ　彼氏
そんなんで大丈夫なの？
これから２週間　結構ハードよ
え？ええ　多分
ねえ　はじめちゃん
しっかりしてよ
わざわざ迎えに来てもらったのに
立つ瀬がないじゃない
うん　だってえ
そうだ　確かコックさんて
言ってましたよね
えっと…
新谷百合　百合でいいわ
これからしばらくは
仕事仲間だもんね
あ　はい　あの　それで百合さんは
いつからセミナーハウスで
働いてるんですか？
私も１週間前に来たばっかりよ
あのセミナーハウス
栄光寮っていうんだけど
高校が休みに入る
夏と冬と春しか
使わないみたいなの
だから合宿講習の季節になると
その都度　従業員を募集して
雇うんだって
ほら　見えてきたわ
ああ！
あれが栄光寮のある不知火島
ここらの漁師たちは鬼火島って
呼んでるみたいだけど
鬼火島？
死んでも死にきれない
恨みを持った魂が集まる島
なんて伝説があるんだって
でも　本当に鬼火を見たって人も
多いらしいわ
いやいやいや　お疲れさん
私が寮長の塚原です
ハッハッハッ
あっはは　どうも
金田一です
七瀬美雪です
ハッハッハッ
早速　今日から働いてもらうよ
明日には生徒さんが
どどっと来るから
その前に他の従業員さんも
紹介しとこうか
まずは　こちら　君たちと同じ
学生アルバイトの
大野公平です
一応　大学生だけど
同じバイトだから
年上も年下もなしで
気楽にやりましょう
それから
うちの担当の講師で
英語の花村先生
その　お隣が川崎先生だ
どうも
あっ　川崎さんて
もしかしたら　大手門病院の
え？
ほら　俺ですよ
胃の中を見てもらった
ああ　あのときの高校生ね
覚えてるよ
金田一なんて　珍しい名前だからね
あ　でも先生　医者でしょ？
なんで予備校の講師なんか
川崎先生は　お医者様でありながら
受験数学では何冊も
本を書かれている方なのよ
私も普段は
高校の教師をしているの
この合宿の講師は　みんな
そういう一時雇いの
スペシャリストばかりなのよ
あなたも医大を目指すなら
ここに来るといいわ
例年　受講者のほぼ全員が
志望校に合格しているから
ほら　この２階の部屋が
受講者たちの泊まる所なんだ
部屋は６つ　馬酔木の間
紅梅の間　銀杏の間
白樺の間　無花果の間
金木犀の間
すべて南向きに作られている
この西館の本棟で
南側に窓がないのは
西向きの紅葉の間と
東向きの百日紅の間だけなんだよ
俺たちが泊まっている１階と
同じ造りですよね
ああ　つまり　この建物は
何よりも日当たりを重視して
作られているんだ
何でだか分かる？
え？
昔　ホテルだったとか…
惜しい
実は　ここは
サナトリウムだったんだ
サナトリウム？
もう恥ずかしいわね
結核の患者さんが
療養する病院のことよ
今は結核って　あんまり
怖いイメージないけど
昔は長いこと入院する
大変な病気だったんだって
ですよね？大野さん
よーく知ってるね　七瀬さん
もしかして　君の家も医者か何か？
まさか！私の家は
ただのボンビーです
ほっといて
仲いいな　君たち
もしかして恋人同士？
あ？ははっ　まさか　そんなんじゃ
とんでもない！
ただの幼なじみです
とんでもないって
何だよ　もうちょっと
ちゃんと言ってくれたって
いいじゃねえかよ　もう
あっはははっ　まあ
そういうことなら
楽しくなりそうだな
せっかく女の子と一緒に働くのに
彼氏がいちゃ　つまんないからね
あっ
なっ　何だ　このキザ野郎
じゃあ　とりあえず　君たちには
この部屋を掃除してもらおうかな
「ひゃくにちべに」って何すか？
あのね　はじめちゃん
それは　「さるすべり」って読むの
もう　やんなっちゃう
お前なあ
よーし　クイズだ
馬酔木の間　紅梅の間　銀杏の間
白樺の間　無花果の間
金木犀の間の中で
１つだけ仲間外れの
部屋があります
さーて　どーれだ？
ええ？
ウソー　分かんないのー？
何よ！
馬酔木の間さ
漢字で書くとそれだけ
色がないだろ？
無花果だって　ないじゃない
無色って色があるじゃんか
もう　やんなっちゃうー
はっはっはっ
じゃあ僕からもクイズだ
この部屋は毎年　空いたままでね
夏期講習が
開かれるようになってから
ほんの２・３度しか
使われたことがありません
なぜだか分かる？
何でですか？
お前　んなことも分かんないの？
「さるすべり」じゃあ
試験も　つるっと滑っちまいそうで
縁起　悪いからだろ？
ご明答！
でも　大野さん　何で使わない
部屋まで掃除するんですか？
まあ　いざってときのためにね
それに何でも　その部屋
いわく付きらしいんだ
掃除しなかったりすると
よくないことが起きるんだって
えっ　よくないこと？
やだ　何ですか？それ
まあ明日　８月１５日になったら
教えてあげるよ
何なら試しに
掃除　手を抜いてみたら？
８月１５日？
何かあるんですか？その日
まあね　ちょっとした伝統行事がね
なーんだ　別に
何ちゅうことない部屋じゃんか
美雪　何やってんの？
このドア
隣の金木犀の間に
つながってるんだけど
開かないのよ
そりゃムリだよ
ええ？
よーく見てみろよ
あっ　クギが打ってあったんだ
しっかし
これって　もう何ヵ月も
掃除してないんじゃない？
しっかり掃除しなきゃね
ああ　やめやめ
どーせ使わない部屋だろ？
掃除なんかしたって
しょーがねえよ
え？でも怒られるよー
だからさ　さっき大野さんが
言ってただろ？
掃除しないでおくと
よくないことが起こるって
あれ　試してみようぜ
もう　はじめちゃん
また　うまいこと言って
あれ　怖いの？美雪
そんなんじゃないけど
またまた　柄にもない
さあ　いよいよ　受講生の到着だ
受講生の方々の多くは
有名病院の　ご子息だからな
くれぐれも　粗相のないように
さっ　スマイル　スマイル
ハッハッハッハッ…
わあー！
平気かよ　スゲー音したけど
大丈夫だよ　あっち行け
な…　何だよ　俺は助けてやろうと
どうかしたのかい？椎名君
あーあ　コケちゃって
情けないな　君は
テメエ　俺のバッグ
落としてんじゃねえよ
ご…　ゴメン　加藤君
君　何か文句でもあるのかな？
え　俺？いや　別に
なーんか受講生って
意外と少ないんだなーと思って
ふざけるなよ！
君はバイトなんだろ？
ああ　バイトだけど？
バイトは余計なこと言ってないで
僕らの世話だけ
してればいいんだよ
森村　こいつ　やっちまうか
何だ　こいつら
すみません！
はじめちゃんが何かしたなら
私が謝ります
ごめんなさい
やあ　さっきは大変だったね
とんでもない所に
バイトしに来ちまった
って思ったんじゃないの？
でも　もう逃げられないよ
３日後に後発グループの
受講生を乗せた船が来るまでは
余程のことがない限り
帰れないことになってるんだ
俺たち受講生は
電話も禁止なんだぜ
まさしくスパルタ式の
合宿講習ってわけ
あのー　どなたですか？
ああ　悪い悪い
俺　川島豊　受講生だよ
豊とかユウタとか
好きに呼んでちょんまげ
いやー　ちょっと安心しちゃったな川島さんみたいな人がいて
何か変わった連中ばっか
みたいだしね
このセミナーの受講生って
そうそう　特に君に絡んだ３人組
パシリが椎名真木男で
ナンバーツーが　あの加藤さ
そいでもって
一番偉そうにしてた　つり目が
森村圭一っていってさ
はっきり言って
ムカつくヤツらなんだよ
中でも森村は大手門総合病院の
理事長の息子でさ
この寮を所有する
大手門セミナーと
うちの大手門高校まで
経営していてさ
誰がムカつくって？川島君
えっ？
太田
森村君の耳に入ったら
あんた学校にいられなくなるよ
冗談だよ　綾ちゃん
俺は　ただ…
なれなれしく綾ちゃんなんて
呼ばないでよ
あんたの　その調子いいとこ
私いっちばんムカつくのよね
な…　なあ　まさか森村に
チクったりしないよな
そんなことされたら
俺まで海老沢みたく…
あっ…
海老沢？
確か　その名前どこかで
はいはい　そこまで　そこまで
頼むから仲よく　やってくれよ
これから２週間　共同生活を
送るんだから　君たちは
ねっ　頼むよ
大野さん
あ　こっちへ来てくれる？
金田一君と七瀬さんに
紹介しておこう
こちら受講生の白石さん
ちょうどよかった　実は今
みんなに連絡して
回ってるところでね
今日は８月１５日
栄光寮　恒例の
真夜中の肝試しを開催する
肝試し？あ　もしかして
それが大野さんの言ってた
伝統行事ですか？
ああ　ここでは
毎年やってるんだよ
明日からは　つらい受験勉強だ
その前に　まっ
思い出作りってわけでね
ど…　どんな
肝試しなんですか？それ
あっ　そうか　君たちは
まだ知らないんだったな
実は　この栄光寮には
ちょっとした怪談があるんだよ
怪談？
そう
出るのさ　幽霊が
ここの関係者たちの間では
有名な話なんだ
みんな　こう呼んでる
午前０時の悪霊
じゃあ　金田一君と七瀬さんに
この栄光寮に伝わる
恐ろしい伝説を教えてあげよう
あの　まだ森村君と椎名君
川島君が来てませんけど
森村と椎名は参加しねえよ
今夜から勉強だとさ
ああ　川島君は参加するが
別の形でと言っていたな
別の形？
さて　この栄光寮が
元々はサナトリウムだったことは
みんな知ってるよね
ま　だからといって
ここを予備校の寮として
使っちゃいけない
ってことはない
ただ　あの部屋　百日紅の間だけは
人を泊めるべきじゃないと思う
なぜなら　あの部屋は
悪霊の通り道なんだから
百日紅の間に幽霊が出る
っていうウワサが立ち始めたのは
ちょうど１０年前のことだった
その年　志望校に落ちた受講生が
自宅で自ら命を絶った
その彼がセミナーに参加したとき
泊まっていたのが
百日紅の間だったんだよ
えっ？
そして　その年の夏８月１５日に
初めて幽霊が目撃された
ある受講生が深夜０時に
トイレに起きて
百日紅の間の前を
通りかかったとき
誰もいないはずの部屋から
物音がした
気になった受講生が
鍵穴から中をのぞいてみると
駆け付けた関係者が
鍵を開けてみると
中には何もなかったし
誰もいなかった
結局　見間違えってことに
なったんだけど
鍵穴から鬼火と　その様子を見た
その受講生は
翌朝　百日紅の間の
すぐ下の池で
死体となって浮いていたんだ
やめて　もう聞きたくない
あっ　ゴメン　ゴメン
話はこれで　おしまいだ
じゃっ　そろそろ始めますか
栄光寮名物　午前０時の肝試しを
えー　俺から？
君は新米で　しかも男だろ？
一番手って決まってるんだよ
それが昔っからのルールなんだ
そんな　やですよ　俺
毒味役じゃないですか　それじゃあ
情けないわね　あんた
それでも男なの？
そんなこと言ったって
さあ　急がないと
午前０時を過ぎてしまうよ
えーい　やればいいんだろ　やれば
な…　何だ　何も見えませんよ
もう　いいすか？
まだまだ
午前０時まで　あと１０秒あるわよ
６・５・４
３・２・１・０
あっ
あー！
何だ？何か見えるのか？
わあっ　し…　死んでる
森村が
な…　何ですって？
だ…　誰かいるのか？中に
何だ　こんな夜中に大騒ぎして
塚原さん　鍵を！
こ…　これは
一体　どういうことなんだ？
死体も犯人も
こつぜんと消えるなんて
翌朝　森村さんの姿が
どこにも見えない
悪霊の仕業とおびえる椎名さんが
思わず口走った
海老沢って…　セミナーの連中
何か知ってるはずだ
そのとき　真夏の鬼火島に
白い雪が降り始めた
そして　雪の上に残された謎の足跡
その先で俺が見たのは
金田一少年の事件簿…﻿夏休みを利用して
　
俺と美雪は
医大専門の予備校の
バイトをするため
不知火島
　
セミナーハウスを訪れた
絶海の孤島にそびえる
白亜の殿堂に
６人の受講生がやってきた
　
その夜
恒例の肝試し大会が行われた
そこで俺が見たものは
うわー
ない
　
何もない
そんな
　
馬鹿な
うわー！
うわうわー
　
わわ…
椎名君
君
　
部屋で勉強してたんじゃ…
見たんです
　
窓の外に
鬼…
　
鬼火を
え？
や
　
やっぱり
鬼火は本物だったんだ
森村が殺されたのも
はあ？
何を言ってるんだ
　
馬鹿馬鹿しい
この部屋が殺人現場？
だとしたら
死体はどこにあるんだね？
犯人はどこに消えたんだね
森村の部屋は
　
馬酔木か
通路の反対側だな
おい
　
どこへ行く？
確かめるんですよ
森村が無事かどうか
冗談じゃない
　
彼は寸暇を惜しんで
勉学に励んでるんだよ
こんな馬鹿騒ぎのせいで
邪魔するなど
栄光寮の寮長として
許すわけにはいかん
でも見たんだよ
　
俺
幻想だよ
肝試し大会の雰囲気にのまれて
幻を見たんだ
でも
現場に何もない以上
騒いでも仕方がないだろうな
ともかく
　
皆
　
部屋に戻って
森村君が無事かどうかは
明日になれば
　
分かるだろう
はあ
　
はあ
　
はあ…
はあ
　
はあ
　
はあ…
うわああっ
一ちゃん
　
一ちゃん
美雪か
一ちゃん
寝てる場合じゃないの
馬酔木の間の森村さん
行方不明なのよ
ええ
　
何？
朝のミーティングに現れないんで
塚原さんに
部屋を開けてもらったんだけど
今
　
皆で手分けして
捜してもらってるところなんだよ
はあ
　
たった１日で
こそこそ逃げ出すとは
先が思いやられますな
全くだ
　
これだから
先発グループの連中は…
いや
　
そうじゃない
寮長
　
川崎先生
森村は逃げたんじゃない
昨日
　
俺が見た光景が
本当だとすれば
森村はあの部屋で…
黙らっしゃい
怪談ごっこも
いいかげんにしたまえ
ゆうべ我々が鍵を開けて入った時
部屋には何もなかったじゃないか
うちは
スパルタ式の予備校だからね
こういう脱走事件は
毎年のようにある
余計なことを言いふらして
騒ぎを大きくするようなまねは
やめたまえ
ちょっと
　
一ちゃん
どうするの？
決まってんだろ　もう一度
百日紅の間を調べんだよ
でも…
　
いつの間に
鍵は食堂の壁に掛けてあって
誰でも自由に持ち出せる
幽霊でなくても
　
この部屋に
自由に入れたってことだよ
でも
　
鬼火は？
そうなんだよなあ
一ちゃん
　
やめなよ
また何か見えたら
ああ
何もない
やだ
　
びっくりしちゃった
やっぱり何もないね
ああ
　
もし
　
ここで
殺人が行われたとしたら
犯人は一体
どうやって姿を消したのか
しかも死体と一緒に
窓かしら？
隣の部屋とのドアは
釘で固定してあるし
残りは窓しか…
あっ
窓から死体を担いで
下の池に飛び降りる
あんな短時間で
そんなことが可能だろうか
あ
　
何てこった
一ちゃん？
こいつは
　
いよいよ怪談だぜ
ええ？
ゆうべ
もし
　
ここに誰かがいたとしたら
その人物は少なくとも
窓から外には出ていない
えっ
　
何で分かるの？
レールのほこりさ
ほこり？
うん
　
俺たち
昨日
　
この部屋の掃除さぼったろ
だから
　
この窓のレールには
ほこりが
たまりっぱなしになっていたんだ
今もこの通りね
どういうこと？
この窓には
開けられた形跡なんてないんだ
もし
　
犯行が実際に
ここで行われたんなら
犯人は完全な密室状態から
まさしく煙か幽霊みたいに
姿を消したことになる
あ？
大野さん
ああ
　
金田一君か
礼拝堂ですか？
そう
　
栄光寮は元々
サナトリウムだったからね
こういうものも必要だったんだろ
サナトリウムにしては
随分しゃれてますよね
この礼拝堂といい
西館や東館の造りなんかも
そりゃね　イタリアの
有名な建築家が造った物だからね
僕が毎年ここに来るのも
この建物が好きだからなんだよ
へええ
　
大野さん
もう一つ聞いてもいいですか？
さっきの川崎先生が言ってた言葉
先発グループが
どうのこうのって…
ああ
　
それはね
君も気付いているだろうけど
今回の合宿受講者の数
少ないと思わないかい？
ええ
今いる受講生たちは
あまり成績のよくない方なんだよ
優秀な連中はあさって来て
寮の東館に泊まることになってる
先発グループはそれまでに
遅れを
取り戻さなきゃいけないのさ
随分厳しいんですね
何か
　
もろ
成績で分けられてるって感じで
それがこのセミナーの
やり方なんだよ
西館と東館の選別はもちろん
それぞれの部屋割りまでが
成績で分けられるんだ
そんなわけだから今いる連中は
皆
　
少し
　
屈折してるんだろうな
金田一君
はい
庭の木に立て掛けてあった梯子
片付けた？
あっ
　
すいません
まだ使うのかと思って
使うんだよ
そうか
　
君じゃないのか
　
変だな
ま
　
後で捜しといて
あ
　
はい
ごちそうさま
　
バイト君
金田一君だっけ？
あんた
　
本当は圭一の居場所を
知ってるんじゃないの？
ええ
　
あ
ねえ
　
悪ふざけはよしてよ
加藤君もよ
圭一とあんたたち２人で
私のこと
驚かそうとしてるんでしょ
なあ
　
バイト
　
言ってやれよ
お前も見たよな
森村が殺されるとこ
あ
　
ええ
　
確かに
太田さんでしたっけ？
おたく
　
あの
　
森村と
どういう関係なんすか
あんたには関係ないわよ
バイトのくせに
ううっ
あの
　
何かあるんでしたら
話してみたらどうですか？
一ちゃん
　
こういう事件では
頼りになるんですよ
一ちゃんのおじいちゃん
有名な探偵だったんです
あは
　
そう
　
でもこのバイト君に
おじい様の血が流れてるとも
思えないけど
何？
ああああっ
どうした？
おい
　
椎名
次は俺だよ
次は俺が殺されるんだ
あいつに
　
悪霊
午前０時の悪霊に
海老沢に
海老沢邦明に！
俺
　
俺見たんだ
　
窓の外の鬼火を
あれは海老沢だ
海老沢が午前０時の悪霊になって
３人を
俺と森村と…
やめろ
　
てめえっ
やだよ
　
俺死にたくない
俺が一番恨まれてる
分かってるんだ
海老沢
　
俺が悪かった
許してくれよー
　
ああ
　
あああ
や
　
やめろ
いいかげんにしろよ
あ
　
悪霊なんているわけねえだろ
第一
　
海老沢だって
まだ死んだってわけじゃねえ
悪霊になんてなるわけねえよ
だって
　
悪霊が入院着を着てたって
そこのバイトも
言ってたじゃねえか
加藤
　
お前も見たろう
あいつが
　
海老沢が
体中にチューブいっぱい
巻きつけて　入院着着て
海老沢？海老沢邦明
何てことだ　あの時の
ううっ
　
ううっ
　
うっうっうっ
ねえ
　
ちょっと聞いていいかしら？
椎名君だっけ？
その悪霊さんに狙われてるのは
３人て言ってたわよね
君と森村君と
　
あと誰なわけ？
俺っすよ
　
ていうか
俺だって言いたいんでしょ
　
椎名は
俺と森村と椎名の３人で
海老沢のことをおちょくってて
そのあと
　
あいつ
たまたま自殺図っちゃって
だけど俺たち関係ないっすよ
いじめとか
そんなんじゃ
　
なかったすから
あくまで遊びっすよ
　
遊び
あいつも笑ってたしね
それに海老沢の入院費から何から
全部病院持ちなんですよ
俺と森村の同級生だっていうんで
森村のおやじさんが
口利いてくれて
感謝されるならともかく
恨まれるなんて
なあ
　
皆
何とか言えよ
何をやっているんです
　
皆さん
授業が始まりますよ
川崎先生
　
こんな時に
授業なんてするんですか？
人が１人行方不明なってるのに
当然でしょ
森村君のお父さんは
大手門総合病院や大手門高校
そしてこの予備校も造られた
立派な方です
しかし圭一君は問題児だ
彼１人が脱走したからといって
授業を
中止するわけにはいきません
それと
　
大野君
あ
　
はい
君も医大の先輩として
後輩の受験指導をする立場でしょ
それなのに
こんな騒ぎを引き起こすなんて
もっての外だ
すみません
風が強くなってきましたね
午後には台風が接近するらしいし
どこかで隠れている森村君も
帰ってこざるを得ないでしょう
川崎先生
すぐに電話で連絡を
どこに？
セミナーの本部か
　
いや
　
警察に
警察？冗談じゃないよ
そんな大騒ぎをしたら
　
私が責任を
そんなことより授業です
皆さん
　
教室に
ちょっと
　
川崎先生
風
　
本当に強くなってきたわね
ええ
　
また何か変なことでも
起こらないといいけど
やっぱり
　
電話しといた方がいいな
剣持のおっさんに
ゆりさん
電話ってどこにあるんですか？
寮長の部屋だけど
しょうがないわね
それで気が済むんなら
私から頼んであげるわ
あ
　
俺も一緒に…
金田一君
あの
　
ちょっとお話が
ああ
　
俺
　
今…
いいわよ
　
私が電話しとくから
あ
　
あの
ああ
　
どうぞ
あの
それで
森村君
　
見つかりました？
いいえ
　
まだなんですよ
白石さん
　
授業は？
ええ
　
今
午前の部が終わったところよ
それより私
　
分かったんです
え
　
分かった？
あなたが見たのって
海老沢君の生霊なんですよ
ええ？
い…
　
生霊ですか？
ええ
　
私
　
心霊には詳しいんです
オカルト研究会とか入って
いろいろ調べたり
同人誌出したり
　
ね
ああ
　
はあ…
いいご趣味をお持ちで
今回の事件は
　
いじめを苦にして
自殺を図った海老沢君がですね
体を抜け出して
森村君たちに復讐を…
ああ…
ね
　
これならつじつまが合うわ
つじつま…
　
ね
白石さん
　
ここにいたの？
捜したわ
太田さん
はあ
　
はあ
　
はあ
あんたね
あんたが圭一を隠したのね
ええ？
あんたは
圭一に思いを寄せてたでしょ
あんたが私と圭一を
引き離そうとして
やめときなよ
　
気持ちは分かるけど
あんたも医者を志す人間だろ
だったら
　
どんな時でも
冷静でいるべきなんじゃないの
余計なお世話よ
　
あんたみたいに
何の苦労も
努力もしていない人間に
何が分かるのよ
私は毎日毎日ストレスと戦って
受験のために頑張ってるのよ
あっ
　
そこまで言う…
金田一君
大変なの
　
電話が
電話がつながらないの
ええっ
誰がこんなことを
直せないんですか
　
これ？
とても無理だ
私はこういうものは分からんし
分かったとしても道具がない
あさってまでは
何があっても連絡も出来ないし
この島から出ることも出来ん
じゃ
　
せめてボートとか
いや
　
手こぎのボートとゴムボート
そんなもんで沖に出たら
あっという間に転覆しちまう
ああ
　
すごい
　
何あれ？
竜巻だ
大丈夫
　
この島ではよくあることだ
心配しなくても
　
寮のある
辺りまではやってこないよ
と
　
ともかく
　
寮へ戻りましょう
うわっ
どうしました？
うわ
　
あああ…
ああ…
森村
何てことだ
この栄光寮で殺人だなんて
やはり
　
ゆうべ
金田一君と加藤君が見たのは
だからあの部屋に森村の…
あんたね
あんたが圭一を
違う
　
俺じゃない
だったら何であんただけ
肝試しに来なかったのよ？
自分１人で参加するって
一体何してたのよ？
そ
　
それは…
　
とと
　
ともかく
俺じゃないよ
殺してやる
　
圭一のかたきを…
太田君
　
落ち着いて
うーん
　
やっぱりだ
何か感じが違うんだよな
　
ゆうべと
でも
　
それが何なのか
一ちゃん
ああ
　
何だよ
　
でかい声出して
雪よ
何言ってんだよ　今は８月…
ほんとだ
雪
馬鹿な
奇麗…
ああ
　
一ちゃん
　
どこへ？
確かめるんだよ
夏の雪なんて納得出来るか
ああ
　
待って
これは
砂みたいだな
ええ？
多分
　
竜巻のせいね
竜巻が巻き上げた白い砂が
雪みたいに降り注いだのね
竜巻が多いアメリカ南部では
よくあるらしいわよ
時には
海の魚が降ることもあるらしいわ
おかえり
あ
　
皆は？
部屋に戻ったよ
さすがに今日の授業は
中止ってことになってね
でしょうね
あ
　
そういえば
川崎先生が言ってたけど
大野さんて医大生なんですよね
もしかして
この大手門セミナーの
出身なんですか？
だったらどうだって言うんだ！
え？
ご
　
ごめん
　
つい…
金田一君の言う通り
俺もここの出身なんだ
高校も今回の受講生たちと同じ
大手門高校でね
でもどっちも
あんまりいい思い出がなくて
それでね…
はあ
　
奇麗だな
真夏に雪景色が見られるなんて
思いもしなかったよ
実はさっき
雪景色の礼拝堂を見てきたんだ
すごかったよ
　
優れた建築物は
どんな景色にも
とけ込めるものだって
実感したよ
椎名君がまだのようだね
５時からのミーティングのことは
知ってるはずだが
まだ部屋で休んでいるのかな？
どうかしたんですか？彼
いや
　
朝の授業中に
気分が悪いと言って
部屋に戻ったんですが
あ
　
俺
　
呼んできますよ
椎名さん
　
５時です
皆
　
集まってますよ
椎名さん
　
開けますよ
椎名さん？
あ
次は俺だよ
　
俺が殺されるんだ
まさか
一ちゃん
　
椎名さんは？
一ちゃん？ちょっと待って
俺と美雪
　
花村先生の足跡と
残る１本が大野さんのか
どうしたの？一ちゃん
この足跡が
　
どこまで続いてるのか
確かめるんだ
ここから礼拝堂を見て
それで戻ったのかな
とすると
　
大野さんの言う通りか
一ちゃん
ん？
礼拝堂に明かりが
ああ
　
ほんとだ
誰かいるのかなあ
ああ！
一ちゃん？
来るな
ああ
ついに第２の犠牲者が
出てしまった
あんな高い所になぜ椎名さんが
それに俺が見た時
礼拝堂につながっていた足跡は
一つもなかった
　
だとすれば
この犯行が行われたのは
そして午前０時の悪霊に
異常に怯える加藤さん
何を知ってるんだ
その時
　
部屋に忍び寄る黒い影を
俺たちは見てしまった
まさかあんたが犯人なのか？
金田一少年の事件簿
医大専門の予備校の
夏季合宿セミナーで
バイトをするため
通称鬼火島を訪れた俺たちは
恒例の肝試し大会で
殺人現場を目撃した
しかし次の瞬間
部屋のドアを開けて
俺が見たものは
そして第２の殺人が
果たして
午前０時の悪霊の正体とは
うっ
　
何てこった
森村に続いて椎名までが
悪霊よ
　
そうよ
午前０時の悪霊の仕業なのよ
そ
　
それにしても何でまた
あんな所で首をつったんだ
首をつったって
どういう意味ですか
決まってるだろ
　
森村君を殺した
犯人が椎名君だったんだよ
その責任の重さに耐えかねて
彼は自殺したんだ
いや
これは自殺じゃありませんよ
殺人です
んなっ
えっ
さ
　
殺人
そうよ
　
あんな所で首をつるなんて
自分で出来るわけがないわ
仮に出来たとしても
はしごが必要ですよ
見ての通り
そんなものどこにもない
つまり誰か新谷さんを殺して
その後でロープを投げて
はりに引っ掛け
死体を引っ張り上げた
そうしておいてからはしごで
死体の所まで登って
ロープを結び付けた後
はしごを片付けた
今のところそれしか考えられない
誰がそんな馬鹿な事を
人の命を救うために
医者を目指して
勉強してきた人間がよりによって
それって受講生の誰かが
やったって意味ですか
もちろんだ
　
この島には我々以外に
誰もおらんのだから
それしか考えられんだろ
そうでしょうか
何
この島にいるのは
受講生だけじゃありませんよ
俺たちバイトもいるし
川崎先生たちだって
いるじゃないですか
馬鹿馬鹿しい
　
なぜ私が受講生を
殺さなくちゃならんのだ
先生が殺したなんて
言ってませんよ
でも受講生の誰かってことも
今は断言出来ないはずです
そうね
　
金田一君の言う通りだわ
あ
　
あのー
とにかく寮に戻りませんか
いつまでも
ここにいるのも耐えられなくて
そ
　
そうしましょ
うん
　
とりあえず
全員を食堂に集めて
話はそれからだ
はい
ちょ
　
ちょっと待ってくださいよ
椎名さんを放っとくつもりですか
可哀想ですよ
　
あのままじゃ
仕方ないだろうが
あんな所につるされてるんじゃ
どうしようもない
はしごを使えば何とかなりますよ
そのはしごが
今朝から見当たらないんだよ
庭の植木に立てかけてあったのが
なくなっていたんだ
え
　
はしごが
　
なくなった
ともかく下手に素人の私たちが
死体を下ろしたりして
現場をいじるのはまずいんじゃ
その通りだ
行こう行こう
俺が下ろします
お
　
おい金田一君
やめなさい無茶しないで
大丈夫です
　
ガキのころは
よく木登りしてたんですから
このくらい
あっ
ああっあー
もう馬鹿なんだから
ああ
　
が
　
ぎ
　
効くー
はしごもなしにあんな上まで
登れるわけないでしょう
　
はい
だー！
ちゃんとズボンはいてよね
　
もう
でもよ
　
いくら死んでるからって
人間なんだぜ
それを放っといて
さっさと帰ろうってやつらの
気が知れねえよ
　
いってー
気持ちは分かるけど
　
でもね
仕方ないよ
死体を下ろすなんて
やっぱり怖いし
　
とても出来ないよ
大体なんで犯人はあんな所に
そうだよ美雪
　
変だと思わないか
何が？
どうして犯人はわざわざ
あんな所に
椎名さんの死体をつるしたんだ
もっと簡単な場所は
いくらでもあるのに
そういえば
あっちょっといいかな
大丈夫かい
　
金田一君
え
　
ええ
食堂に皆集まってるんだけど
君らも来てくれないかな
あ　はい
金田一君
　
君期待されてるよ
え？
太田さんから聞いたんだが
君のおじいさん
有名な探偵だったんだってね
金田一君
その血を引いてるせいか
せん索好きのようだしね
そんな
君はうちのセミナーとは
関係ない人間で
誰にとっても中立の立場にいる
それでとりあえず君にこの場を
任せてみようということに
なったんだが
　
どうかね
別に構わないっすよ
　
俺は
うん
　
じゃあ
君の考えを聞かせてくれたまえ
うーん
　
まだ考えってほどの
もんじゃないけど
　
昨日の事で
分かった事が１つあります
昨日って言うと鍵穴から死体と
犯人が見えたっていうあれ？
ええ
　
あの時
　
俺は
確かに犯人と思われる
入院着を着た人物と
既に死んでいたと思われる
森村圭一を見た
加藤さんも見たよね
あ
　
ああ
　
見た
　
見たよ俺も
そこへ塚原寮長がやってきて
ドアを開けた　ところが
部屋の中には誰もいなかった
これが最初の謎です
窓の鍵はどうだったんだい
金田一君
え
　
ああ開いてましたよ
俺が確認しました
だったらそこから
逃げたんじゃないかな
　
ほら
あの部屋下に池があるでしょ
あそこに死体を放り込んで
自分も飛び降りたとか
んー
　
不可能なんですよ
　
それが
え
実は俺
　
あの部屋だけ
掃除してなかったんです
何
だから窓のレールにはほこりが
たまったままだったんです
で分かっちゃったんです
あの窓
　
少なくとも
俺と美雪がここに来て以来
一度も開けられてないってことが
悪霊の仕業よ
午前０時の悪霊なんだわ
馬鹿じゃないあんた
そんな事ばっかり言ってるから
彼氏も出来ないのよ
う
　
うっ
　
悪霊
何よ気味悪い
ともかく
昨日起こった事に関しては
全然考えがまとまってないんです
でもさっきの事件に関しては
結構重要な事実をつかんでます
え
それは
足跡ですよ
足跡？
俺と美雪が椎名さんの死体を
発見したのが５時半
　
その時点で
俺たちのいるこの建物から
礼拝堂までのルートは
全て白砂の雪で覆われていた
そしてその上には大野さんの
足跡だけがしっかりと残っていた
俺は雪景色の礼拝堂を見たくて
近くまで行っただけだよ
中には入らなかった
確かにそれ以外の足跡は
全くなかった
砂が降り始めたのは午後４時ごろ
それ以降に誰かが歩けば
必ず足跡は残る　ということは
犯人は４時より前に
あの礼拝堂に行って椎名さんを
つるしたって事になる
なるほど
　
だったら犯人は絞れるぞ
だって椎名が
気分が悪いとか言って
教室を出たのは
確か川崎先生の授業中で
ああ
　
午前中だったかな
それから塚原寮長が
森村君の死体を見つけたって
教室に駆け込んできたのが
確か３時半
その間
　
私と新谷さんはここで
お茶を飲んでたわ
そうしたら死体が見つかったって
皆集まってきたのよ
川崎先生以外は
　
ね
んんっ
あ
ああっ
川崎先生
わ
　
私は森村君の死体の
確認に行ってたんだ
医者としての務めだからね
でもそれを
証明することは出来ませんよね
んあああ
　
ふ
　
ふざけるな！
私が犯人だとでも言うのか
なぜ私が生徒を殺す必要がある
不愉快だ！
か
　
川崎先生
川島君
　
失礼じゃないか
だって
呪われてる
　
皆呪われてるのよ
金田一君
　
やっぱりあれ？
え
アリバイがないってことは
川崎先生が怪しいわけ？
さあ
　
まだ何とも
　
とにかく
分からない事が多過ぎますから
何だか皆
　
怪しいって感じ
わあ
　
すごい
　
本格的ですね
うふ
　
一応ね
あー
ん
　
もしかして百合さん
結婚してるんですか
え
　
ええ２年前にね
　
なぜ？
ああ
　
いえ
海老沢
　
まさか
金田一君
ん
ちょっといいかな
話しておきたい事があるんだけど
あ
　
あ
　
はい
もしかしたら犯人を探る
手掛かりになるかもしれなくて
え
受講生を守るのが
教師としての務めだし
うかつなことは言えないと思って
今まで黙っていたんだけど
怪しい行動を取った受講生が
いたのよ
怪しい行動？
ええ
　
まあ
証拠があるわけじゃないんだけど
川島君がね
　
昨日の夜
あなたたちが
肝試しをやっているころ
あ
　
そういえば肝試しには
来なかったわよね
　
川島さん
自分なりに参加するって
私
　
コーヒーを飲みに部屋を出てね
何気なく廊下の窓から外を見たら
彼がはしごをどこかに
運んでいくところだったのよ
はしごを？
一ちゃん
　
はしごって
あーいでーいでででででででで
はあーいでー
確かに椎名さんの死体を
つるすには
　
はしごが必要だ
そして犯人がそのために
使ったはしごを隠した
川島さんが昨日の夜に
はしごを運んでいたという話が
本当なら
　
あの時点で
何にはしごを使ったんだろう
ああー
　
あいだー
く
　
くっそー
　
ますます
分かんなくなってきやがった
ん
　
何だよこんな時間に
　
美雪か
ん
　
あれ
こっちよ
　
一ちゃん
ん
　
何だよ
びっくりするじゃねえか
やだー
　
何よその格好
ズボンくらいはいててよ
え
　
何で分かんだ
鍵穴よ鍵穴
あ
　
なるほど
　
あっが
　
あ
　
いった
大丈夫？
いった
　
い
ねえ
　
一ちゃん
このドア開けばいいのにね
何で？
だって
あんなことあったばかりじゃない
一人ぼっちだとやっぱり怖いよ
大丈夫だって
　
お前に何かあったら
俺がこのドアをぶち破って
助けに行ってやるさ
ふふ
　
無理しちゃって
な
　
何だよ
ううん
　
助けに来てね
ああ
きっとだよ
ああ
うっあ
　
う
　
ううう
うう
　
う
　
ぐ
　
うっ
　
う
　
うう
来るな
うっううっう
　
うっうっ
　
うっ
ふっあっ
　
ふう
　
ふうっ
　
ふうっ
ふあっ
　
ふ
　
ふああああ
がは
　
分かってんだ
　
犯人は
海老沢だ
やつが
　
やつがこの島の
どこかに潜んでるんだ
　
ぐっ
次は俺だ
　
俺が殺される番だ
新谷です
ああ
　
鍵開いてるよ
　
入りたまえ
コーヒーをお持ちしました
すまんね
　
そこに置いといてくれ
まったく
　
仕事でもして
気を紛らわせにゃやってられんよ
よりによって殺人事件なんて
恐ろしい事が起こるなんてね
ええ
　
ほんとに
うっ
　
眠らないぞ
　
やつが来る
眠ったら殺される
ひっ
　
だ
　
誰だ
窓から明かりが見えたの
もし必要なら眠気覚ましの
コーヒーを持ってきたけど
そこに置いておけ
がーがーがー
眠ってたまるか
　
眠って
ごほっごほっ
　
眠るもんか
　
うっ
うっうう
　
う
ん
　
何だ？加藤さんの部屋か
ぐおおお
殺してやる
やられてたまるか
うわっ
あっ
だ
　
誰か
　
犯人が！
はっ
ゆ
　
百合さん
はあはあはあ
な
　
何だ何だ
どうしたの
は
　
犯人に襲われて
し
　
信じられん
まさか
　
まさか
新谷君が犯人だったとは
で
　
でもどうして一体何のために
新谷さん
　
なぜ
答えろよ
新谷さんの結婚前の名前
海老沢百合ですよね
え
　
海老沢
ええ
百合さんが
ま
　
まさか
そう
　
自殺未遂した
海老沢邦明君のお姉さん
そうですよね
　
百合さん
森村に椎名
　
後は加藤が死ねば
復しゅうは終わるはずだったのに
うっ
　
う
あの子は
　
邦明は
私と違って母さんの言うことを
よく聞く子でね
母さんは何が何でも邦明を
医者にするつもりだった
けどあの子
　
全然医者になんか
向いてなかったのよ
本当は
小説家になりたかったみたい
でも母さんの期待を
裏切れなかったのでしょうね
言われる通りよく勉強してた
そんな優しい邦明をいじめて
追い詰めて
母さんは自分の全てを投げ売って
邦明の看病を続けて
私はそんな目に合わせたやつらを
許すことが出来なかった
だから…
百合さん
と
　
とにかく
明日の船が来るまで君の身柄は
拘束させてもらうからね
ちょ
　
ちょっと待ってください
俺には百合さんが
犯人とは思えない
あなたが犯人なら
森村さんと椎名さん殺害には
どんなトリックを使ったんです？
百合さんが加藤さんを
殺そうとしたのは事実だ
でも他の２人まで百合さんが？
んん
　
まだ謎は解けてない
はーい
あ
や
　
やあ
何の用すか
　
こんな時間に
た
　
頼みがあるんだ
話なら
　
ここで聞きますよ
お
　
おう
実は今夜だけでもいいから
この部屋にいさせてくれねえかな
俺の部屋に？何で
だってよ
　
危うく
殺されそうになったんだぜ
そんな夜に独りでいたかねえよ
分かんだろ
分かりませんね
　
あんた自分には
恨まれるような事はないって
言ってたじゃないすか
　
だったら
堂々としてればいいでしょ
な
　
なあ
　
頼むよバイト君
俺は金田一っすよ
き
　
金田一君
　
頼む
　
なあ
ほ
　
他に頼めるやついねえんだよ
金田一君
　
頼むよ
　
お願いだ
　
なあ
もー！しょうがねえな
一ちゃん
ああ美雪
　
今夜は上で寝るわ
あー
　
うにゃあ
　
腰が
何やってんのよ
すまん
　
恩に着るよ
　
ほんと
どう致しまして
普通
　
腰痛めてる俺に
ベッド譲るんじゃねえの
なあ
　
ちっとばかし
気になってる事があってよ
あの百合って女が
犯人だったとしても
どんなトリック使ったんだ
ほら
　
俺とお前で見たじゃねえか
鍵穴の殺人シーン
窓の外に鬼火まで飛んでてよ
はっ
　
そうだ
鬼火まで飛んでたんだっけ
待てよ
　
あれが
本物の鬼火じゃなくて
　
しかも
犯人が仕組んだものでもないと
仮定したら
あれは肝試しの最中に
起こった事なんだよな
うちの近くの商店街の肝試しでも
鬼火ぐらい飛ぶぞ
あのさ
何すか
俺
　
ほんとはずっとびびってたんだ
びびってたって
　
何に
あいつが
　
海老沢が
あんなに
なっちまったってことだよ
まさか本当に自殺なんてするとは
思わなかったんだ
その海老沢って人に
何したの
　
あんた
お
　
俺は森村に言われて
やっただけなんだ
それに直接いろいろやったのは
椎名なんだぜ
森村が考えて
　
俺が
それを椎名にやらせたって感じで
椎名はもともと
　
海老沢とは
すげえ仲がよかったんだ
つるんでたんだよ
　
あの２人は
だから俺が思うに海老沢が
死にたいと思ったのは椎名に
裏切られたからじゃねえかな
大体
　
海老沢のやつも悪いんだよ
あのころあいつ
すげえ成績上がってよ
調子に乗ってやがったんだ
しかも
医者になんかなりたくねえなんて
カッコつけやがって
それで身の程を教えてやろうって
森村が言い…
　
出して…
ん？
ふー
　
くー
んっ
　
何だ？急に眠気が
この音…
こ
　
これは
　
まずい
　
くそ…
一ちゃん
　
一ちゃん
ねえいるんでしょ
　
一ちゃん
一ちゃん
み
　
美雪
一ちゃん
　
大丈夫？
何だよ美雪
　
どうした
どうしたじゃないわよ
何か物音が聞こえたから
はあっ
はっ
何てこった
　
くそ！
一体
　
誰がこんな事を
誰が…
何て事だ
　
百合さんは部屋にいた
だけど加藤さんは俺の前で
犯人は別にいる
　
思い出せ
最初の事件
百日紅の部屋で起こった事全てを
窓の鬼火
　
開けられたドア
はしごはなぜ消えた
　
そうか！
あの時のトリック
　
もし午前０時の
悪霊が本当にいるとしたら
謎は全て解けた
金田一少年の事件簿﻿医大専門の予備校の
夏期合宿セミナーでバイトをするため
通称「鬼火島」を訪れた俺たちは
恒例の肝試し大会で
殺人現場を目撃した
しかし次の瞬間　部屋のドアを
開けた俺が見たものは…
そして第二　第三の殺人が…
果たして
午前０時の悪霊の正体とは
誰が一体
何てバカなんだ　俺は
俺の…　俺の目の前で加藤が
もう一度…
もう一度　最初から考えるんだ
あの時　最初の殺人を鍵穴から見てドアを開けるまでの間
な…　何ですって？
そうか
あの違和感はこれだったんだ
でも　あれを動かしたのが
犯人だとすると一体　何のために？
あの時　その窓の外に
鬼火が浮かんでいたんだよな
多分あの鬼火は…　いや　待てよ
それは無理だ
何ブツブツ言ってるの
一ちゃん？
ああ　いや　肝試しの時
俺が見た鬼火だけど
あれは事件とは関係ない
ただのいたずらじゃないかって
考えてたんだよ
どういう意味？
誰かがやったんじゃないかと
思ったんだ
誰かって？
ああいうイベントに
一番参加しそうなのに
なぜか来なかった人
川島豊さ
これは俺の想像だけどね
川島は別の形で肝試しに
参加するとかって
大野さんに言ってたらしい
例えば　その言葉どおりに
あの人が脅かし役に回って
肝試しを盛り上げようとして
それが　あの鬼火だとしたら
そうか　花村先生の話も
それなら納得がいくわ
夜中にはしごを運んでたって
言ってたけど
それを使って窓の近くまで登って
鬼火を飛ばしたのね
いや　それがそうでもないんだよ
どうして？
ドアの鍵穴から
鬼火が見えたってことは
川島が鬼火を飛ばしたのは
この窓の外ってことになるだろ？
ところが…
見てのとおり下には
でっかい池が広がってる
とてもじゃないが
はしごなんか立てられないよ
本当だ
な？つまりは　また振り出しさ
まったく分かんねえな
どうなってんだ　こりゃ
あ　痛っ
どうしたの　一ちゃん？
いや　また胃が痛え
クソ！こういうイライラが
一番いけねえんだよな
また胃カメラ飲まなきゃ
なんねえのかよ
痛ててててて…
ん　待てよ？
大丈夫　一ちゃん？
そうか　そうだったのか！
だから　はしごは
消えなくちゃならなかったんだ
はしごが？どういうこと？
でも　だとすると犯人は今頃…
やばい！
美雪　お前はみんなを起こして
礼拝堂に連れてきてくれ
あ　待ってよ！
一体何が分かったの？
胃の痛みが俺に教えてくれたんだ
謎はすべて解けた
やめろ！
もう　やめろ
そんなことをして何になる
あんたのやったことは　すべて
この俺が見抜いたよ
もう分かってるんだ　あんたが
仕組んだトリックも何もかも
さあ　そのライターを捨ててくれ
ライターを
一ちゃん
ど…　どういうことだ　これは
な…　何で？
金田一君　これは…　これは
どういうことなんだ
見てのとおりですよ　彼こそが
森村と加藤を殺した真犯人
午前０時の悪霊なんです
し…　真犯人？
あ！
き…　君は！
真犯人　椎名真木男
そんなバカな
椎名は確かに首をつって
あそこのはりから
ぶら下がっていたのに
どうして？
芝居だったんですよ
テレビドラマとかで
俳優がよくやるようにね
まず上半身裸になって体に
しっかりとロープを結び付ける
こいつは
実際に体重を支えるやつだ
そうやっておいて
ちゃんと首つりに見えるように
首に別の短い見せかけのロープを
巻き付けるのさ
それから体に結んだロープの端に
重りを付けて
投げ上げ　はりに引っ掛けるんだ
そして
下りてきた重りを外して
そのロープを引っ張ればいい
自分の体を
引っ張り上げるんだから
結構　力がいると思うけど
椎名さんは体重も軽そうだし
あとは上着を着てロープを隠せば
首つり死体の出来上がりさ
まったく大胆なトリックだよ
椎名さん
すべて　あんたが自分で仕組んだ
一人芝居だと考えると
砂の雪の足跡がなかったことも
説明がつく
アリバイもクソもない
最初からこの礼拝堂に行ったのは
あんた　１人だったんだからね
でも何のために　あんな高い場所にぶら下がる必要があったんだ？
それはもちろん誰かに
下ろされたりしないためですよ
彼が死んでないってことが
ばれますからね
そうか！
じゃ　はしごがなくなったのは…
そう　自分の偽物の首つり死体に
触れることが
できないようにするために
彼がどこかに隠したんです
じゃあ　何だって新谷さんは
やってもいない罪を
認めたりしたんだ？
ある意味で今回の殺人事件で
一番驚いたのは
百合さん
あなたじゃないんですか？
何しろ弟の敵を討つために
この島にやってきたはずが
誰かの手によって
憎むべき連中が殺されていく
最後の加藤だけは
自分の手で殺そうと思ったものの
それも失敗に終わった
百合さん
あなたはせめて　この一連の殺人を自分のものにしたかったんだ
弟の敵は討たなければ
ならないという気持ちを込めてね
それから川島さん
は…　はい
あんた　肝試しの最中に
はしごを使って
２階の椎名さんの部屋の窓の外に
鬼火を飛ばしたでしょう
え　いや…
あんたがはしごを運んでるところ
花村先生が見てたんですよ
あ…　ああ　そのとおりだよ
懐中電灯に靴下をかぶせて
棒切れに糸でつるして見せたんだ
本当は百日紅の間の窓に
鬼火が見えるのが
一番盛り上がるとは
思ったんだけど窓の下は池だしさ
仕方なく隣の椎名の部屋の
外に飛ばしたんだ
肝試しに参加しない椎名は
きっと　ぶったまげて飛び出し
大騒ぎになると思ってさ
でも　その後で
本当に殺人事件が起こって
俺が疑われるんじゃないかって
ずっと言い出せなかったんだ
金田一君　今の話
ちょっと変じゃないのか
だって鍵穴からのぞいた
百日紅の間の
窓にも鬼火が見えたんだろう？
それを見たのは
他ならぬ君自身じゃないか
そう　その事実こそが
この事件の真犯人が
椎名さんだってことを
教えてくれたんだよ
つまり　あの時
俺や加藤が鍵穴から見たのは
百日紅の間じゃなく
隣の金木犀の間
つまり　椎名さん
あんたの部屋の光景だったんだ
椎名の部屋の光景？
あの時　見た入院着の人影は
椎名さん　あなた自身だ
森村の死体も百日紅の間じゃなく
あんたの部屋にあったんだ
でも　一ちゃん　鍵穴から
隣の部屋の様子が見えるなんて
いいか　よく思い出してくれ
百日紅の間と金木犀の間は
他の部屋と同様
内扉とつながっていた
あの内扉は
くぎで固定されていたけど
鍵穴から隣の部屋の様子を
見ることができる
だから　どうだって言うんだ
まさか百日紅の間のドアと内扉が
つながってたとでも言うのか？
そのとおり
つながっていたんですよ
あの２つの鍵穴は
内視鏡とかいう不思議な道具でね
内視鏡？
医療器具のファイバースコープのことかね？
そうです　先生
そのファイバースコープで内扉と
入り口のドアの
鍵穴同士をつなげば
隣の部屋の様子を
百日紅の間の光景のように
見せることも
できるんじゃないんですか
うーん　なるほど
十分可能だろう
しかしだな　金田一君
君も一度見てると思うが
ファイバースコープには
小型のマイクぐらいの
光学スコープが付いているんだよ
たとえ鍵穴へファイバースコープを
通せたとしても
それはどうなったんだね？
それが百日紅の間のドアを
開ける前の音の正体ですよ
それから　ごみ箱の位置
ごみ箱の？
ええ　鍵が開けられて
部屋に飛び込んだ時
内扉の下にあったごみ箱が
翌朝には　もともとあった場所
机の脇に戻されていた
つまり椎名さん　あんたは
このトリックのネタを隠すために
ごみ箱を使ったんだ
あんたは自分の部屋から
鍵穴越しに手繰り寄せた
ファイバースコープを
鍵穴を通らない
スコープの手前で切断した
そうか　あの時の奇妙な音は
そのために…
でも　椎名さん
まずかったのは　その後さ
あんたは後からスコープを
回収する際に
ごみ箱を　もともとあった机の脇に戻しちまった
それが　かえって不自然さを
際立たせたってわけさ
さあ　すべての謎は解けた
もう終わったんだよ　椎名さん
そのライターを渡すんだ
寄るな　何で…　何で
邪魔をしたんだ　金田一
俺はもう死んだ人間なんだぞ
いや　あんたは生きてるよ
海老沢って人と同じくね
もし　あんたが死んだとして
何が残るって言うんだ
うるさい！お前に…
お前なんかに何が分かる！
そうかな？死んで謝るなんて
ひきょうだよ
謝りたいなら生きて彼に
面と向かって謝るべきじゃないか
親友だったのに
あいつだけが中学の頃からずっと
あいつ　「エラリー・クイーンみたいに２人でミステリー小説を書かないか」って
誘ってくれて予備校の帰りに
喫茶店に寄って
一緒にトリックを考えたりとか
すごく楽しかった
なのに俺は裏切っちまった
親友のあいつを
怖かったんだ
俺が海老沢をいじめなかったら
今度は森村や加藤に
俺がいじめられるんじゃないかと
思って
でも　あいつの遺書を見た時
俺は気付いたんだ
取り返しのつかないことを
しちまったって
遺書！あの子が遺書を？
海老沢が学校の裏で
自殺を図った時
俺もまだ学校にいたんだ
駆けつけた体育の先生が
あいつを木から下ろした時
俺もその場にいて
もし遺書に俺の名前が
書かれていたりしたらと
思うと怖くて
あいつのポケットから
封筒を抜き取ったんだ
遺書には俺に対する恨みとか
一言も書いてなかった
母親に謝ってばかりいて
俺だけじゃなく
森村や加藤のことも
何も書いてなかったんだ
それから「小説の続きは椎名に
書いてもらってください」って
やつのその言葉を見た時
俺は決めた
一番最低なのは俺だけど
海老沢のために復讐しよう
森村や加藤を殺して　それから
自分のことも殺そうって
でも残された俺の家族のことを
考えると
殺人犯になるには抵抗があった
自分勝手かもしれないけど
だから考えたんだ
まず森村を殺したら
いったん俺も殺されようって
その後で加藤を殺して
俺も本当に死ぬ
そうすれば
俺が疑われることはないから
椎名さん
１つだけ教えてほしいんだ
ファイバースコープを使った
消失トリックのことですよ
犯人のあんたが
完全なアリバイを
手にできるっていう
メリットがあるにせよ
あそこまで凝ったトリックを
使う必然性はなかったと俺は思う
あのトリックを考えたのは
俺じゃない
海老沢なんだ
え！
そうか　そういうことか
どういうこと　一ちゃん？
つまり　このトリックは
それ自体がメッセージだったんだよ
もし海老沢が目を覚ました時
この連続殺人の犯人が
自分だったことを伝えるためにね
何でもお見通しなんだね　君は
俺たちの小説に出てくる
名探偵よりずっとすごいよ
そうさ　せめて知って
ほしかったんだ　海老沢にだけは
俺があいつの敵を討ったって
あいつだけには
でも　もうそんな必要はない
金田一
せめて君の口から
あいつに俺の気持ちを伝えてくれ
復讐は終わったって
森村も加藤も　そして
椎名も死んだって
やめなさい！
あなたが邦明を
思ってくれたように
邦明もあなたのことを
本当の友達だと思っていたはずよ
あなたが死んでも
邦明は喜ばないわ
私には分かるの　あなたの気持ちが
あなたと同じ思いで
この島に来たから
でも　あなたも私も
大事なことを忘れていたわ
邦明は死んではいないのよ
邦明はいつの日か目を覚ますわ
いえ　きっと目を覚まして
帰ってくるわ
昔のままの邦明が
その時に　また書いてあげて
書きかけの小説を邦明と一緒に
はい　どなた？
すいません　俺　お見舞いに…
海老沢君のお母さんですか？
ええ　邦明の母です
あら　ひょっとして以前
ずっとそのバラを
生けてくれた方かしら
今は私が生けてるんですよ
でも　やっとお会いできたわ
何度も
来ていただいたみたいなのに
一度もお顔を拝見できなくて
本当にありがとうございます
いえ　違うんです
以前いつも　これを持ってきた人に頼まれて来たんです
自分は行けそうにないから
代わりに行ってくれって
あら　残念ねえ
おばさん　１つ伺ってもいいですかえ　何かしら？
海老沢君が目を覚ましたら
まず最初に
何をさせてあげたいですか
え　そうねえ
この小説の続きを書かせたいわ
だって　このお話
とっても面白いのよ
ファイバースコープを使った密室殺人の
探偵小説なんだけど
肝心の探偵の推理が
まだ書いてないの
何てことだ　小説　まさか…
あ…　あの…　すみません
最初にここに迷い込んだ時から
答えはここにあったんだ
え　何？
ああ　いや…
その小説が書き上がったら
ぜひ俺にも読ませてください
じゃあ　これを
ちーす！
遅い
どこ寄り道してたの？
まあ　ちょっとね
それより　おっさん　調子どう？
手術　うまくいったのかよ
おお　まあな
しかし直腸の検査に来て
痔の手術を受けることに
なるとはなあ
いやあ　参った
でも　良かったね
痔ならどうってことないもんね
本当に痔ならな
本当にってどういう意味だ　金田一
お前まさか
女房から何か聞いてるんじゃ
冗談だよ　冗談
まったく　小せえんだから
ほら　見舞いの花だよ
おお　バラか
１輪だけ？ケチ臭い
１輪だって要は心だよ　心
なあ　おっさん　美雪
はい
金田一君
え？あ　川崎先生
やっぱり君だったのか
で　君　剣持警部と知り合い？
はあ　まあ　腐れ縁で
一言余計だよ
ああ　まあ…
ああ　そうそう
例のファイバースコープだが
調べてみたら　やっぱり　うちの
病院から１つ盗まれていたよ
椎名君の自白どおりだった
ああ　それから
以前　君を診察した時
医者にだけはならないでくれと
言ったように思うが
そうでしたっけ？
あれは撤回しよう
鬼火島の礼拝堂で
君は椎名君の偽装死体を
必死で下ろしてやろうとした
そういう人間の尊厳に対する
無差別な敬意が
医者には大切なのだよ
学力なんかよりずっとね
いやあ　そんなことないっすよ
俺なんか医者には…
すっかりその気になってんだから
金田一
少しは病人をいたわらんか
しょうがないわねえ
悪い悪い
やっぱり無理かな
え？
もう　単純なんだから
美雪　お前
花言葉とか詳しそうだよな
うん　任しといて　これでも
フラワーアレンジメントとか習ってるのよ
じゃあ　そのバラの花言葉は？
これは多分
「我が心　君のみぞ知る」
「我が心　君のみぞ知る」
「我が心　君のみぞ知る」
超高層ツインタワーのホテルで
殺人事件？
目撃者って…
なあ　剣持のおっさん
あれは確か深夜２時
何でおっさん　そんな時間に
ホテルにいるんだよ？
犯人と思われる女が
非常階段からヒマワリ…
もしかして泊まってたとか？
だが非常扉の指紋は…
１人？それとも誰かと？
ああっ　うるせえ　金田一！
お前は黙って推理してろ
はい
ま…　待ってくれ
話せば分かる
ヒマワリ
女
いやあ　本庁の警部さんが
宿泊されていて
しかも目撃者とは驚きました
被害者は無月流　生け花の家元で
桐沢香四郎　５４才
昨夜この２６階のスイートルーム
２６１５号室に泊まっていて
事件に巻き込まれた模様です
死因は？
死因は出血多量による失血死
凶器はまだ発見されていませんが
後頭部を鋭利な刃物で
刺されています
死亡推定時刻は昨夜　深夜３時頃
３時？
俺が女性を目撃したのは２時だぞ
はい　恐らく…
被害者は２時頃この踊り場で
何者かに刺されたのですが
わずかに急所を外れていたので
即死にはならず
階段下の踊り場まで
逃げてきたところで倒れ
１時間後に出血多量で
死亡したものと思われます
剣持警部
どうかなさったんですか？
いや　何でもない　続けてくれ
ああ　ヒマワリですか
何ですかねえ　このヒマワリ
ヒマワリ
犯人はあの女
は？何か？
いやあ　何でもない
それより　この非常口の鍵は
いつも開いているのか？
いえ　このホテルの非常口は
通常は閉まっていて
非常時には自動的に鍵が
開くようになっているそうです
じゃあ　ゆうべは
何で開いていたんだ？
支配人の話ですと
被害者の桐沢さんは
非常口の鍵が閉まっていると
寝られないたちだそうで
特別に頼み込まれたと
で　ドアノブの指紋は？
内側のドアノブは
奇麗に拭き取られていまして
外側には従業員の指紋しか
付いておりませんでした
なぜ犯人は内側だけ…
主任
何だ？
従業員の１人が昨夜２時過ぎに
不審な女性を目撃したと
証言しております
え？
何？
よし　間違いない
その女を捕まえれば事件は解決だ
一ちゃん　大丈夫なの？
何が？
何がじゃないわよ
明日　試験だっていうのに
しょうがねえだろ
剣持のおっさんが
どうしてもって言うんだから
剣持警部のどうしてもは
いつものことじゃない
奇麗
何じゃ　こりゃ
無月流よ　前衛的な生け花で
すごく有名なのよ
へえ　こんなのがねえ
今日は無月流の師範が
集まってるのね
それでホテル中に生け花が
その会合　今日は中止だ
おっさん
待ってたぜ　金田一
うーん　じゃあ
おっさんも目撃者ってわけか
ああ　ホテルの従業員と同じ女性を犯行現場で見ている
しかし　その女性はこつぜんと
姿を消してしまったというわけだ
いや　このホテルに宿泊しとる
何だよ　じゃ　事件は
解決してんじゃんか
ところが　そうもいかんのだ
これが　その女性の写真なんだが
被害者は桐沢香四郎の娘で
姉の桐沢紅子と妹の桐沢緑子だ
おっさん　これって…
そう　双子だ
しかも一卵性双生児のな
この２人のうちのどちらかが
桐沢香四郎を殺した
犯人というわけだ
彼女たちは２年前に亡くなった
桐沢さんの奥さんの連れ子でな
娘といっても
血のつながりはないんだ
２人の本当の父親は
桐沢さんの友人で
８年前に既に死亡している
動機は多分　財産だ
桐沢香四郎の資産は
数十億とも言われている
しかも近々
弟子の冬堂という女性と
再婚することになっていた
もし　その女性が子供を産めば
財産の半分は
その子に持っていかれる
それどころか
血のつながっていない自分たちは
桐沢家から無一文で
追い出されるかもしれない
それなら　いっそのことと
２人のうち　どちらかが
思ったとしても　おかしくはない
夜中の２時頃でしたら
もう自分の部屋で寝てましたから
アリバイなんてありません
紅子さんは２階の２０５号室に
泊まってらしたんですよねえ
はい　あの…
私　疑われているのでしょうか
いや　関係者の方は
全員にお聞きしてるんですよ
私　殺人なんてやってません
妹の緑子だって
そんなことするはずありませんわ
その緑子さんですけど
お二人とも双子だけあって
本当にそっくりですよね
いいえ
妹と私はまるで正反対なんです
妹はスポーツ万能で
活動的なんですけど
私はそういうの苦手で
じゃあ　紅子さんは
生け花のほうを
はい　私はヒマワリが好きで
ずっとやってますけど
ヒマワリ？
冗談じゃないわよ
生け花なんて　かったるい
おやじがうるさいから
ちょっとは付き合ってやったけど
だいたい紅子は
あんなの　うじうじやってるから
余計　性格が暗くなんのよ
言っとくけどね
私も紅子も何もしちゃいないよ
ゆうべの２時頃は
どうしてましたか
アリバイなら私もないよ
夕べは寝付けなくて
１人で海を見に行ってたんだもの
１階へはエレベーターを使って？
当たり前でしょう
私は２４階に泊まってるのよ
２４階
私には信じられません
紅子さんか緑子さんの
どちらかが先生を殺したなんて
冬堂さんは桐沢さんの
お隣の部屋でしたよね
ゆうべ何か
思い当たるようなことは？
いいえ　特にありませんでした
ゆうべは９時頃に私と先生
紅子さん　緑子さんの４人で
夕食を済ませた後
先生は雑誌の連載記事を
お書きになるために
お部屋に戻られました
それが生きている先生を見た
最後になるなんて
あの　ヒマワリなんですけど
無月流では何か特別な意味でも？
はい　常に太陽に向かって咲く
ヒマワリの鮮やかな黄色い花は
無月流の象徴なのです
無月流の象徴
何か分かったか　金田一
いや　まだ全然
とにかく一度
２６階の現場を見てみないと
割と風が強いんだな
いくら柵が付いてても
この高さはちょっと怖いわね
ここにヒマワリが散乱していた
あ！
どうしたの　一ちゃん？
おっさん　桐沢さんは
ここで刺されてから
この階段を逃げ下りたんだよな
ああ　そうだな　よな？
はい
瀕死の状態で階段を下りて
この踊り場に
たどり着いたところで倒れた
やっぱり見えない
ああ
この非常階段は
らせんになっているから
踊り場は死角なんだ
踊り場は死角
桐沢さんは
それから１時間は生きていた
ドアノブの指紋は
内側だけ　拭き取られている
どういうことだ　なぜ犯人は
そんな不自然な行動を取ったんだ
くそっ　何かが足りない
すべてを１つにつなげる何かが
うわー　奇麗な夜景
やっぱりこのホテルは
夜景を楽しまなきゃ
来た意味ないわよね　一ちゃん
あ…　ああ
夜景なんか見て何が楽しいんだ
あー　もしかして剣持警部
高い所　苦手だったりして
バカなことを言うな
そんなわけあるか
まあ　怪しい
違う！
俺はな高い所なんか全然…
もしかしたら…
どしたの　一ちゃん？
そうか　そうだったのか
だから犯人は…
分かったぜ　犯人の正体が
そしてヒマワリの意味も
それじゃ　金田一
ああ
謎はすべて解けた
犯人が分かった？
本当ですか？
ええ　これから
事件の再現をしながら
桐沢香四郎さんを殺害した犯人を
明らかにします
皆さん　一緒に来てください
２６階の殺人現場へ
事件当日　桐沢さんは９時頃
レストランから
原稿書きがあると言って
この部屋に戻った
恐らく夜中の２時頃は
まだ起きていたんだろう
おっさん　桐沢さんの役を
やってくれないか
あ…　ああ
そして犯人は桐沢さんを
部屋の外に呼び出し
隙を見て刃物で切り付けた
しかし刃物は急所を外れ
桐沢さんは非常口へ逃げた
そして非常扉を開けたところで
彼は後頭部を刺されてしまう
致命傷を負った桐沢さんは
それでも何とか逃げようと
階段を下りていき…
おい　うそだろう？
おっさん　ごめん
ああ　助けてくれえ！
そして踊り場で倒れてしまい
１時間後に息を引き取った
ここからの犯人の行動が
不自然なんだ
不自然？
ああ
桐沢さんは
大けがを負っているものの
あの時点では　まだ生きていた
しかし犯人は　とどめを刺さずに
この扉の所で
立ち去っているんだ
どうして
そんなことが分かるんだよ
ドアノブの指紋さ
このドアノブは
内側は奇麗に拭き取られ
外側には従業員の指紋しか
付いていなかった
もし犯人が桐沢さんの後を
追ったとしたら
この非常扉は
自動的に閉まってしまうから
戻ってきてドアを開ける時に
必ず外側のドアノブに
指紋が付いてしまう
それを
拭き取っていないってことは…
なるほど　でも金田一
なぜ内側は
指紋を拭き取ってあったんだ
犯人は再びここに戻ってきて
もう一度ドアを開ける必要が
あったんだ
ヒマワリの花をまくためにね
そうか
でも　一ちゃん
犯人はどうして桐沢さんの後を
追わずにヒマワリなんか
あの時　犯人は外に出たくても
出られなかったんだよ
なぜなら犯人は
高所恐怖症だったからさ
何だって？
本当か　金田一
そう　犯人はあんただよ
桐沢紅子
そ…　そんな
てめえ　何でお姉ちゃんが
高所恐怖症だって分かるんだよ！
１つはホテルの従業員の証言だ
何？
２４階で下りた女性は腰を
抜かしたように座っていたらしい
何をそんなに脅えていたんだ
このホテルのエレベーターは
ガラス張りで外が丸見えだわ
そう　急いで１階まで
行かなければならなかった犯人は
それでもエレベーターに
乗らなければならなかったんだ
エレベーターぐらい乗ったからって…
もう一つは部屋割りだ
部屋割り？
このホテルは見事な眺めを
売り物にしている
予約の時　何も指定しなければ
部屋は上の方から
埋めていくそうだ
ましてや昨日はホテルの客の
大部分が無月流関係の人だった
にも関わらず　あんたはわざわざ
２階に部屋を取った
なぜだ
ち…　違う
私は高所恐怖症なんかじゃ…
じゃあ　証明してもらおうか
高所恐怖症じゃないのなら
ここまで来てみてくれ
あんな男　大嫌いだった
私の本当の父さんが
生きていた時からそうだった
あいつが母さんに
気があったのなんて
子供の頃から分かってたわ
だから父さんが死んで
あいつがまんまと
母さんをものにした時
私は心に誓ったわ
あの男が父さんから
母さんを奪ったように
私も桐沢の娘として
あいつの財産も何もかも
奪ってやるって
だから勝手気ままに好きなことを
やって生きている緑子とは違って
私はあいつの言うことを
何でも聞くいい娘を
演じてきたのよ
だけど何？母さんが死んで
２年も経たないうちに
今度は冬堂さんと
結婚するですって？
許せない　許せない！
冬堂さんに子供ができれば
私１人　この家から追い出される
だったら　あいつが再婚する前に
この手で…
紅子姉ちゃん　何言ってるのよ
緑子　私は聞かされていたのよ
あの男から
あんたの生け花は天才的だって
あんたになら無月流の家元を
譲ってもいいって
そうよ　私はいつも貧乏くじ
やめて！先生があなたたちを
見捨てるはずないわ
だって　あなたたちは
先生の血を分けた
実の娘なんですから
え？
先生と先生の親友の妻だった
あなたたちのお母様は
密かに愛し合い
あなたたちを身ごもった
その親友が亡くなり
お二人が結婚なさって
あなたたちと一緒に
暮らすようになっても
先生は親友を裏切った
罪の報いだと言って
そのことを口にしなかった
本当の父親と名乗れない分
精いっぱい
愛情を傾けていらしたのに
あなたたちは
それすらも分からなかったの？
あ…　あの男が本当の父さん？
べ…　紅子姉ちゃん
うそよ　うそよ
うそよ！うそよ！
いやあ！
何か　やりきれない話ね
憎んでいた男が
実のお父さんだったなんて
ああ　ところで金田一
あのヒマワリは何だったんだ
踊り場にぶちまけてあった
あれは目印だったんじゃないかな
目印？
あの時　桐沢さんに
とどめを刺せなかった紅子さんが
どうしても彼の生死を
確認する必要があったろ？
恐らく彼女はホテルの隣のタワー
俺の泊まってた方だ
そう　その屋上の展望台から
望遠鏡か何かで
見届けようとしたんだ
でも高所恐怖症の彼女は長いこと
高い所から見ていられない
そこで彼女は踊り場に
ヒマワリをばらまき
桐沢さんを素早く見つけるための
目印にしたんだ
でも何でヒマワリなんだ？
単純な話さ
ヒマワリは無月流の象徴だ
このホテルのいたる所に
生けてあった
あの大きな黄色い花なら
夜でも目立つし
重いから
風に飛ばされる恐れも少ない
なるほど
でも　もしかしたら…
え？
ヒマワリの花言葉は
「尊敬し慕う」なの
桐沢香四郎さんを
実の父親とは知らずに
ただ憎んでいたと言っていた
紅子さんだけど
本当は心のどこかで
血のつながりを
感じ取っていたんじゃないかしら
美雪
あのヒマワリは自ら
命を奪ってしまった実の父親に
紅子さんが
無意識のうちに手向けた
弔いの花だったのかもしれないわ
そうかもな
なんて…　ちょっと
そんな感じがしただけ
しっかし　おっさんも
高所恐怖症だったとはね
い…　いや　あれはだな…
まあ　お陰で
犯人を割り出すヒントを
手に入れることが
できたんだけどね
実は子供の頃
ターザンごっこをしていてな
ターザン？
そう
格好いいところを見せようとして
高い所から…
ところが綱が長すぎて
あれは痛かったな
それで高所恐怖症？
お前ら！人の悲惨な過去を
笑いやがって
まあ　いっか
事件も無事解決したことだしな
いや　謎はまだ残ってるよ
え？
おっさんが　なぜこのホテルに
泊まっているのか
紅子さんがヒマワリを
踊り場でまいたのが
窓から見えたとすれば　おっさんも
スイートルームに
泊まっているってことになる
そして　おっさんの頬にある
ばんそうこう
さあ　おっさん
自白してもらおうか
悪い　今度ごちそうするから
それだけは黙秘させてくれ
こら　逃げるな！
この謎　必ず解いてやる
じっちゃんの名にかけて
おっさん　一体　何隠してんだよ
大人にはいろいろ事情ってもんが
事情って何だよ？
この前のホテルの件といい
夜中に１人でどっか出掛けてると
明智さんも言ってたぜ
金田一　それより
この交換殺人なんだが
動機を隠すために
憎んでもない相手を
代わりに殺すなんて絶対許せない
そうだ　金田一
ああ　でも
おっさんの謎も俺が必ず解く
じっちゃんの名にかけて
え？﻿あー　交換殺人？
交換殺人って　殺したい相手を
お互いに交換して
殺すってやつだよな？
ああ　そうだ
自分の殺したい相手を　動機のない共犯者に殺させるわけだから
共犯者同士の　つながりが薄ければ
動機の線から容疑者を絞るのが
難しくなる
で　その捕まった女の人
交換殺人で人を殺したの？
ああ　憎んでもいない相手をな
交換殺人なら　もう１人
犠牲者が出るってことだよな？
うん
それらしい事件は起こっとる
犯人の三島由里絵が
殺したいほど憎んでいた女が
行方不明になった
なんでも　恋敵だったという話だ
じゃあ　その女の人も？
いや
え？
殺されてなかったんだ
三島由里絵が捕まったあと
すぐに　ふらっと出てきた
薬を　かがされて
監禁されていたらしい
もしかして　その共犯者は
最初から　由里絵って人に
殺人をさせて
自分は手を汚さない
つもりだったのかしら？
まあ　そんなとこだろうな
三島由里絵は
共犯者に利用されたんだ
相手の名前も知らずにな
相手の名前も知らずに？
それって
どういうことだよ？
事の起こりは　三島由里絵が
机に書いた落書きだった
通っていたパソコン教室の机に
ほんの暇つぶしで落書きしたのが
この事件の共犯者
仮にＸとしておくが
そのＸと知り合う
キッカケだったんだ
誰かが由里絵の落書きに
返事を書いた
こうして
２人の奇妙な文通が始まった
そうよ　あんな女
消えてなくなればいいのよ
ええ　あたしは本気よ
え…　この世から消すって
まさか　それって
交換殺人を言い出したのは
Ｘのほうだったらしい
交換殺人？
そして　約束どおり
恋敵が行方不明になった
なるほどね
それで　三島由里絵は
Ｘとの約束を守るために
人殺しをしたってわけだ
共犯の容疑者は
絞り込まれているんだが
決め手に欠けるんでなあ
この前みたいに
協力してほしいんだ
この前…
この前って言えば　オッサン！
あのとき　どうして　ブランカホテルに
泊まってたんだよ？
そうよね　まだ　理由を
聞かせてもらってないわ
オイオイ
妙な話　蒸し返さんでくれよ
だってヘンですよ
剣持さん
高所恐怖症だっていうのに
あんな高層ホテルの
２６階に泊まってたなんて
オッサン　何でだよ？
話せよお
うわっ！
よし　着いたぞ
ここだ　ここだ
共犯の容疑者が絞り込まれてる
って言ってたよな？
ああ
ここは　クラスが４つあってな
生徒たちは卒業まで　ずっと
同じパソコンを使うらしいんだ
つまり
三島由里絵と同じ席だったのは
ほかのクラスの３人だけ
その３人が容疑者なの？
あれが　３人のうちの１人だ
殺された瀬川奈々子とは
同じクラスだったが
それほど親しくはなかったそうだ
あれが２人目の容疑者
ま　見るからに
コギャルタイプだな
あれが　３人目の容疑者だ
被害者とは　何のつながりもない
見たとおり　平凡で目立たない子だ
あの子が中島留美といって
共犯者Ｘに監禁されていた子だ
あの人が…
三島由里絵の恋敵ね
一緒にいる人が彼氏なの？
恋敵が　いなくなって
ただいま　独占状態ってワケだ
はじめちゃん！
授業が終わったようだな
とりあえず
落書きがあった机を見てみるか
浜岡先生
おや　剣持さん
いま　教室に伺おうと
思っていたところです
そうですか　そちらは？
こないだ　お話しした
ああ　例の名探偵君ですか？
お話は　よく
剣持さんから伺ってますよ
え？
まあ　ともかく
教室に行きましょう
ちょっと　何ですって？
ん？
あたしが犯人だって言うの？
別に　そうは言ってないでしょ
ただ　可能性があるっていうことよ
そんなの
そう言ってるのと同じじゃない
丸山君　何か言ってよ！
あ…　ああ
だいたい　考えてみてよ
今度の事件で
いちばん得をしたのは誰かしら？
そうね
恋敵が殺人犯になっちゃったから
誰かさんは
すごく　ラッキーだったわよね
何ですって！
やめろよ
みんなも
ちょっと冷静になってくれよ
あの丸山君に　ホレてる女の子
結構　多いんですよ
カッコイイもんね　あの人
誰かさんとは大違い
誰かさんて　誰さ？
ただの噂だけで
人を傷つけるようなこと
言うもんじゃない
ご立派ですねえ
丸山さん
でもねえ　キレイごとは
それぐらいにしたらどうスか
どういう意味だよ？有吉
アンタ
三島由里絵に言い寄られて
困ってるって
言ってたじゃないスか
喫茶店で仲間と話してるの
聞きましたよ
うまいこと　三島由里絵を
犯人に仕立て上げたんじゃ
ないスか？
お前　何てこと言うんだよ！
そういえば　中島留美って女にも
興味はないって
言ってましたよね
な…
ウソでしょ…　ウソよね？
当たり前だろ　こいつのウソに
決まってるじゃんか
俺が　そんなこと…
ああ　アチャー
あの中島留美って子が
拉致されたのは
狂言だってこともあるよな
あの子が
共犯者Ｘだって言うの？
単なる　可能性さ
ところで　剣持さん
今夜は　どうします？
今夜ですか？
事件も　まだ未解決ですからね
たぶん　ダメだと思うんですが…
オッサン　何がダメなんだ？
ああ　イヤイヤ　ちょっとな
このごろ　オッサン　ヘンだよな
何が？
何か隠してるみたいなんだ
明智警視に聞いたんだけど
剣持のオッサン
勤務時間が終わると　イソイソと
どこかに出かけるんだってさ
へえ
この前のブランカホテルだって
あんなところに
オッサンひとりで
泊まると思うか？
じゃあ　誰と泊まるのよ？
だからさ
ええー！剣持さんが？
そんな　何かの間違いよ！
でもなあ…
オッサンも男だからな
浮気ぐらい
廊下側の　いちばん奥が
三島由里絵が使っていた机だ
ほかの机にも
落書き　いっぱい書いてあるわね
ああ
どうした？金田一
あ　いや
インターネットでも　やってみる？
いいんですか？
どうぞ
わあ　見たいトコ　あったんですよ
なあ　オッサン
容疑をかけられてる
３人のアリバイは　どうなんだ？
うん
ちゃんと調べてあるぞ
大塚茉莉と島本美和は
瀬川奈々子殺し当時の
アリバイはないな
この文字をクリックして
ワアー　これ面白い！
大塚茉莉は　夜遊びをしたあと
帰宅途中だった
島本美和は自宅で
ひとりきりだったそうだ
有吉って男は？
こいつだけは　アリバイがある
犯行当日　友人の家で
夜中までゲームをしていた
これは　友人の家族も認めている
共犯者Ｘが　中島留美を
監禁したと思われる時間の
アリバイは？
事件があったのは日曜だが
３人ともアリバイはない
ひとりで買い物に出かけたり
部屋に　こもったりしてるからな
そうか　３人とも
アリバイはないってわけか
指紋は　どう？
机に指紋が残ってたんだろ？
もちろんだ
９人分の指紋が検出されたよ
この教室に出入りする
全員の指紋を採らせてもらった
ほら　これが　その９人だ
容疑者３人の指紋も検出された
やっぱり　そうか
だったら　間違いなさそうだな
何だ？
犯人が　分かったってことさ
ホントか！
はじめちゃん？
謎は　すべて解けた！
あ　オイ　何だよ？
飛び降り自殺だってよ！
え？
留美！
バカな真似　やめろ
うるさいわね　来ないでよ！
人を犯人扱いして　頭くる
飛び降りてやるから！
留美
よせ！下手に声をかけると
本当に飛び降りるぞ
俺に任せておけ
来ないでったら！
君　中島君といったな
君は今年で　いくつになった？
こんなことで　自分の人生を
終わりにしていいのか？
もったいないとは　思わないのか？
やりたいことが
まだまだ　たくさんあるだろう
何のために　パソコンスクールに
通っているんだ？
自分の夢を
かなえるためじゃないのか！
だって…　だって　あたし
さあ　何も心配は　いらない
私に任せなさい
刑事さん！
さあ　こっちへ
うわっ…
あ　オッサン！
ワアワアワア…
ごめんなさい
飛び降りるつもりなんか
なかったんです
あたし　悔しくて
アア…
大丈夫かよ？オッサン
ああ
さすが　だてに長年
刑事やってるわけじゃないよな
見直したぜ
な　なあ　金田一
さっき　「謎は　すべて解けた」と
言ってたが
ああ　交換殺人の犯人は
この中にいるよ
何！
誰だ　いったい　誰が？
三島由里絵が中島留美を
憎んでいることを知り
交換殺人を持ちかけて
瀬川奈々子を殺させた
卑劣な真犯人
共犯者Ｘは　お前だ！
浜岡先生
先生が！
共犯者Ｘ？
ぼ　僕が　真犯人？
オイオイ　冗談じゃないよ
何だって僕が　そんなことを
いったい
何の証拠があるんだい？
証拠は　机に残っていた指紋さ
おい　金田一
指紋は全部
生徒のものばかりで
浜岡先生のものなんか
なかったんだぞ
それが不自然なんだよ
浜岡先生は
あの教室を担当していて
授業中は生徒の周りを回って
いろいろ指導してるんだろ？
さっき　美雪にやったみたいに
なのに　なぜ　あの机に
ひとつも指紋が
ついてなかったんだ？
そういえば　妙だな
浜岡先生
おそらく　アンタは
三島由里絵が
捕まったときのことを考えたんだ
捕まれば　三島由里絵は
これが交換殺人だと
警察に話すだろうし
当然　机の指紋も採られる
そこで
自分の指紋が出てしまうことに
アンタは
心理的な不安感をいだいた
だから　普段から　この机には
指紋が　つかないように
注意していたんだ
ち…　違う　デタラメを言うな！
だったら
ほかの机を調べてみようか？
アンタの指紋が
ベタベタ出てくるはずだ
それなのに
なぜ　三島由里絵の机にだけ
アンタの指紋がなかったのか
アンタは言い訳できるかい？
あ…
俺は　この事件のことを
聞いたときから
妙だと思っていた
教室には　たくさんの生徒が
出入りするはずなのに
交換殺人みたいな
危ない内容の落書きが
誰の目にも留まらないなんて
不自然だ
共犯者Ｘは　授業の始まる直前に
机に書き込みをして
終わった直後に
相手のメッセージを読んで
すぐに消したに違いない
そんなことが　できるのは…
金田一　お前　最初から
浜岡先生が怪しいと？
まあね
３人の容疑者が犯人じゃないって
ことも　分かってたよ
なぜだ？
アリバイが　なかったからさ
交換殺人ってのは
殺人が起こったとき　共犯者は
しっかりとした自分のアリバイを
作っておくもんなんだ
そうでなければ
交換殺人の意味がないだろ？
なるほど
オッサン
鑑識を呼んで　ほかの机も
調べてもらってくれよ
あ…　ああ
いいですよ　剣持さん
そんなこと　しなくても
金田一君の言ったとおり
僕の指紋だらけのハズですから
浜岡先生　アンタ…
殺された瀬川奈々子はね
勤めていた会社の金を
横領してたんですよ
証拠を消すために
会社のコンピューターに
不正にアクセスして
帳簿を書き換えてたんです
アンタが手を貸したんだな？
会社の金を使い込んだと言って
奈々子に泣きつかれたのが
最初だった
しかし　そのうち　奈々子は
調子に乗って　金を使い始め
それが　５０万　１００万
１千万とエスカレートして
とうとう
僕は　怖くなって
やめようとしたが
奈々子は　ゆるさなかった
だから　アンタは
瀬川奈々子に　すべての罪を被せて殺そうと思った
そのとき
偶然　机の落書きを見て
交換殺人を思いついた
絶対に　うまくいくと思ったのに
指紋か…
人は見かけに寄らないって
いうけど
あんな優しそうな人が
犯人だなんて…
マイッタな
これで　ひとりになっちまったか
え？
ああ　いや
あれ　オッサン
一緒に行かなくていいのかよ？
ああ　ちょっと　これから
用事があるんでな
ん！
剣持さん
考え直してくれませんか？
まだ　間に合うぜ
家庭が崩壊しても　いいのか？
な　何だよ
いったい　何のことだ？
相手は　誰なんだよ？
あ　相手？
え　料理教室？
オッサン　ここに通ってたのかよ
浜岡とは　ここで知り合ったんだ
男の生徒は
俺と浜岡　２人だけだったんだが
これで　俺ひとりになっちまった
でも　どうして料理教室なんかに？
きっかけは
あのブランカホテルだ
あのホテルに
一緒に泊まっていたのはだな
実は　俺のカミサンなんだ
え？
剣持さんの奥さん？
あの日は　結婚記念日だったんだ
いつも仕事が忙しくて
ほったらかしだったんで
１泊して　うまい飯でも
食わせてやろうと思ったんだが
うちの女房が　こともあろうに
２６階の部屋を予約しちまったんだ
俺が　高所恐怖症だってことを
忘れてな
俺は　もう耐え切れなくなって
家に帰ろうと言いだしたら
女房が怒りだしてな
ま　待ってくれ
しかも　殺人事件が起こって
結婚記念日は　メチャクチャに
なっちまったんだ
で　その埋め合わせに　俺が
手料理で　もてなすことにしたんだ
もうすぐ　女房の誕生日でな
へえ
さっすが　剣持警部ですね
お！ちょうどよかった
きょうは　本格的な料理を作るんだ
お前たち　食ってけ！
ああ　イヤ…
遠慮するなって
意見を聞きたいんだよ
アラ　剣ちゃん　きょうは
どんな発明料理　作ってくれるの？
あ　あの…　オッサン
発明料理って？
お　俺の　オリジナル料理だ
アッハハハ
イヤな予感…
失礼します！
お　おい　待て！
この中の　誰かが死ぬとしたら！
俺たちが
劇団アフロディアの推理劇
「鏡の中の殺人鬼」に呼ばれたのは
舞台に届いた
このクリスマスカード
「今宵　劇のさなか
この中の誰かが死ぬ」
「赤髭のサンタクロース」
これって　殺人予告？
雪の函館
殺人劇の幕が切って落とされた
金田一少年の事件簿…
１０年前　北海道釧路沖で
女性の水死体が上がった
身元不明の自殺者として
処理された　この死体こそ
１０年後に起こる
悲劇の序幕だったことを
そのとき　誰が予想しただろうか
すてきね
ああ
函館で　ホワイトクリスマスなんて夢みたい
ねえ　はじめちゃん
そう…
そこで　劇団アフロディアの
最新作が見られるなんて
知ってる？今　大人気なのよ
ふーん
はじめちゃん　聞いてるの？
聞いてるよ　けど　俺たち
遊びに行くんじゃないんだぜ
おっさんに
捜査協力を頼まれてだな
「解決すれば　カニ食べ放題」
な…
そんな言葉に　つられてさ
二つ返事でホイホイ来たくせに
何　偉そーに
やっかましいわ！佐木　ふみ
何で　お前らまで
ついてきたんだよ
いつものことじゃないですか
お供のサル　イヌ　キジだよ
くう…
俺は桃太郎かっつうの！
何　言ってんの
桃太郎は　私
あんたは　サル！
ロマンの地
函館で　難事件にアタック
先輩の大活躍を記録に残すのが
僕の役目ですから
二人っきりの夜は　また今度
確かに　いつものことね
あ　見て見て　あれじゃない？
坂の上の方の建物
うわあ
あれが　推理劇の舞台
「異人館ホテル」か
ワアー
豪華…
ここで推理劇　「鏡の中の殺人鬼」が上演されるのね
あ　何だ　こいつら？
よう　来たな！
おっさん
こんにちは
今夜の推理劇の客だよ
解答編の上演の前に　犯人を
当てるって趣向なんだそうだ
暇なやつら
でもって
そこに殺人の予告状が届いたと
そうだ
説明してくれる？
その前に　紹介しておこう
あ…
アフロディアの看板女優
文月花蓮さんだ
花蓮さん…
演技派で話題の　あの？
こんにちは
わあ…
あは　こちらこそ
女房に　せがまれて
舞台を見たことがあってな
花束を渡したのが縁で…
おい　聞いてるのか？
まあ　それでな
連絡をくれたんだ
こんなものが届いてるってな
「聖なる夜　我が異人館を
汚さんとする者どもに」
「死をもって制裁とする」
「赤髪のサンタクロース」
赤髭！
ああ…　でも
ただのいたずらじゃないですか？
はあ…　でも　何か
嫌なことが起こるような
気がして…
ちょっと　あなた
警視庁の剣持さんとか言ったわね
ああ…　確か　北海道警の警部
警部じゃなくて「警視」よ
不破鳴美
剣持警部　遠いところから
わざわざ　例の脅迫状のことで
乗り込んできたそうね
余計な　お世話よ
ここは　北海道警の私たちが
監視してるわ
こんなことで
警視庁に出てこられたら
道警の恥もいいとこよ
何が起こっても
私の指示に従っていただきます
はあ　やな女
ベロベロベロベー
その　お連れさんたちも
分かったわね？
エ…
あなた…　ひょっとして
あの金田一一？
ハヒ
警察幹部の中で
聞いたことがあるわ
そう　素人探偵まで来てるの
まあ　いいわ　来なさい
いらっしゃいませ
あの子たちに
３階の部屋を用意して
私の隣が空いてたわよね？
えっ！
あの部屋をですか？
なあに
ホテルの人間まで
本気にしてるの？例のうわさ
はあ…
あ　あの…　不破様
申し訳ありませんが
あの部屋だけは…
オーナー　言ったはずよ
警備のため
部屋割りは警察が管理するって
あ…　はい
３１５号室に案内して
もう一度　念を押しとくけど
くれぐれも
捜査の邪魔は　しないようにね
はあー　何なんだ　あの女！
明智さんといい　あの女といい
警視っつうのは
みんな　あんなに嫌みなのかね！
はじめちゃん
あー　はいはい
でも
例のうわさって　何ですかね？
ねえ　その部屋
幽霊でも出るわけ？
３１５号室でございます
金田一様と　佐木様は
こちらにお泊りを
あ…
何じゃ　こりゃあ？
ああ…　部屋中
真っ赤っか
鍵は　こちらでございます
防犯のため　毎日０時になりますと
データが変わるように
なっておりますので　０時以降は
フロントで　新しいカードを
お受け取りになってください
それまでのじゃ　開け閉めが
できなくなるんですか？
さようでございます　では
あ　待ってください
雪村オーナー
一体　なぜ　この部屋は　こんな…
失礼します　さあ　こちらへ
この部屋には
奇妙なうわさが　あるらしいんです
以前　ここに
長いこと住んでいた男がいて
その方の名が
赤髭のサンタクロース？
ところが　ある日　この部屋で
無残な死体となって発見されて
殺された…
それ以来
この部屋で赤い影を見たとか
うめき声を聞いたとか
マ…　マジで
ここに泊まるんすか？
花蓮！
先生
どこにいるの？
あ　はい！
花蓮　花蓮！
万代先生
どこ　うろついてたんだい！
すみません
本当に　あんたって子は　いつも…
誰だ　あのいじわるばあさん？
すごい！万代鈴江だ
誰？
戦後最大の映画スターって
言われてた大女優ですよ
ふーん
今は　映画から引退して
アフロディアの団長として
活躍中ってことです
もう　そこらへんで
いいじゃないですか
十分　反省してるって　なあ？
本　できあがってますよ
お望みどおり　派手な出番を
満載しときましたぜ
フン　あとで読むわ
今夜　本番だってのに
初めて台本読むのかよ
あの人　１回読むだけで
全部　暗記しちゃうそうよ
さすがよね
え…　何ですって！
あっ？
何なの　これは
一体　どういうことよ！
こ　これは…
誰が　こんなことしたの？
今夜の上演を　どうするの？
悪ふざけにも　程があるわ！
あ　はじめちゃん
ん？
あっ！
「今宵　劇のさなか
このなかの誰かが死ぬ」
「赤髭のサンタクロース」
フッヘヘヘヘ　どうやら
死んだ赤髭のサンタさんとやらが
今夜　何か　起こす気のようだ
上演は中止にしますか？
冗談じゃないわよ！
ここで引き下がったら
その赤髭何とかの
思うつぼじゃないの
しかし　犠牲者が出てからでは
遅いですぞ
劇は　予定どおり上演してください
不破警視
ただし　楽屋は　もちろん
衣装部屋と舞台裏にも
警官を配備します
よろしいですね？
何でもしてちょうだい
犯人は　私のことを
知らないようね
邪魔されるほど燃えるのよ　私は
さあ　みんな！
立ち稽古　始めるわよ
ホントかよ
「赤髭のサンタクロース」か
亡霊が現れたんだよ　きっと
復しゅうしようとしてるんだよ
まさか
復しゅうって　誰に？
え　それは…
あっ…
どうしたの　はじめちゃん？
あ　何か　声がしなかったか？
別に
変なこと言うなよ
そう　これは復しゅうよ
憎い…　憎い
あなたを呪い続けてきた
花蓮さん！
あなたの死だけが
私を自由にするのよ！
ウワーッ！
ウワーッ！
やめろ！
花蓮さん！
何てことを…
いくら自己チューで
ごう慢な　鬼ばばあだからって
金田一さん？
こんな　こんなナイフ…　で
こんな…　あれ？
あ…
あ　あれ　れれれ…
誰が　自己チューで
ごう慢な鬼ばばあですって？
すいましぇーん
ハッハハハ
フッフフフ　ハハハ
金田一君とやら
稽古中なんだがね
ごめんなさい
これ　小道具なの
あ…
子供だって知ってるぞ
さあ　どいてもらおうかな
続きをしたいんでね
はい…
花蓮　今の　よかったぞ
気にすることないですよ
名探偵というのは　古今東西
非常識なものですから
おめえに　言われたかねえよ
なかなかだったわね
憎しみに
切実な何かが　こもってたわ
あ　はあ
いや　ホント　うまくなったな
お前の　おかげで　ラストシーンは
ほぼ完璧だ
俺も　うれしいぜ
何だ　あいつ
あの虹川って人
しつこく花蓮さんを口説くので
有名なの
じゃあ　もう一度
一幕のラスト　いってみよう
死よ　死の臭いが
この館に立ち込めている
お前たちの心の中にも
醜い　殺しの欲望が映っている
さあ　乾杯よ　漆黒の闇に！
この中の誰かが死ぬとしたら
今夜ほど
おあつらえ向きの夜はないわ
うめえもんだ
さすが　大女優ね
あれ…　あっ　バッ…　佐木
ええっ？
え　ああっ！
私を撮るんじゃない！
ああ　ビデオが…
どうかしましたか？
この男が　私を
ビデオに撮ろうとしたのよ！
よかった　壊れてない
そういう問題じゃないだろ
やれやれ　稽古は　これまでだな
おい！
あとは　今夜　本番で集中するんだ
いいな
あ　花蓮さん
よかったですよ　お芝居
あ…　そうですか？
男と見れば
すぐ　すり寄っていくんだね
そんな　私
口答え　するんじゃない！
申し訳ありませんでした
そんなもの
さっさと　捨ててきなさい
それより　薬の用意よ
薬の時間だろうが！
ふだんは優しい方なんですけど
舞台前は　気が立ってるから
それじゃ
いらだってるのよ
シワだらけの顔を
ビデオに撮られたもんだから
映画やめて
舞台の仕事しかしなくなったのも
年老いて　醜くたるんだ顔を
大映しにされるのが
耐えられないからじゃないかしら
かつて演じていた役どころは
美しい花蓮さんに取られ
何だい　あの演技は！
あんな演技しか
できないようだから
借金が雪だるまみたいに
膨れあがるのよ　フン！
お前もだよ
何だ　気持ち悪い人形だね
このストーリーは
この劇団の人間関係
そのままに作られてるの
誰もが　あの女を憎み
死を願っている
ホント　誰かが死ぬとしたら
今夜ほど
おあつらえ向きの夜はないわ
そして　小雪のちらつく中
７時ちょうどに
舞台の幕は開かれました
オオー！
この話は　ある旧家で起こる
遺産相続をめぐって展開する
登場人物は　６人
一族の頂点に君臨し
ばく大な財産を持つ老女
そして　彼女の
身の回りを世話するメイド
彼女は　その若さと美しさゆえ
老女の嫉妬を受けている
老女の一人娘は　いったんは
勘当されて出て行ったものの
財産欲しさに　家に戻っている
そして　老女に利用され
事業に失敗したピエロ
老女に　いじめ抜かれている
人形使い
小説家は
メイドと　ばく大な財産を
自分のものにしようと狙っている
つまり　登場人物　全員が
老女が　いなくなることを
望んでいる
あ…　はじめちゃん
ん？
もうすぐ終わっちゃうわよ
ん　ああ…
もう　そんな時間？
ん…　まぶしい
結局　何も起きなかったわね
たちの悪い
いたずらだったんでしょうか？
死よ　死の臭いが
この館に立ち込めている
お前たちの心の中にも
醜い殺しの欲望が映ってる
さあ　乾杯よ　漆黒の闇に！
この中の誰かが死ぬとしたら
今夜ほど
おあつらえ向きの夜はないわ
ハハハ
乾杯
乾杯！
ん？
ウワーッ！
ブラボー！
すっごい　まさに迫真の演技ね
あっ！
どうしたの　はじめちゃん？
ワインを飲んで死ぬのは
ピエロだったはずだ！
あっ
花蓮さん！万代…
死んだわ
何だと！
死亡したのは
女優の万代鈴江　６０歳
劇団アフロディアの団長
死因は　グラスから検出された
薬物によるものと思われます
薬物が付着していたのは
万代のグラスのみでした
他からは　何も
グラスを載せたワゴンを
運んできたのは
あなたでしたね？
は　はい
それまで　あのグラスは　どこに？
あ　確か
舞台のそでに
スタンバイしてありました
劇の最中
舞台そでを通った人物は？
全員だよ　ここにいる全員は
一度は　そでに引っ込んでる
他に　スタッフも
…てことは
ここにいる　みんなに
チャンスがあったってこと？
うん…　まず　動機だ
この中で
万代と仲の悪かった者とかは？
待って　おっさん
ん？
万代さんを狙ってたかどうか
まだ　分かんないぜ
どういうことだ？
虹川さん
誰が　どのグラスを取るかは
決まっていたんですか？
そんな演出は　した覚えがないね
台本にも「グラスを取る」としか
書かれていない
つまり　５つのワイングラスのうちたった１つの
薬物の入ったグラスを
誰が取るかは
予測不可能だったことになる
そ　それじゃあ！
無差別殺人
の可能性もある
無差別！
劇団員の　誰でも
よかったってことか
じゃあ　一歩　間違っていたら
僕が死んでたかも
しれないんですか？
榎戸さん！
だ…　だから
よそうって言ったんだよ
やつが　赤髭のサンタクロースが
僕たち全員を
殺そうとしてるんだ
きっと…
きっと　やつは生きていて
この館の　どこかに…
落ち着かんか！
赤髭のサンタについて
知ってる者は　いるのか？
おい　あんた
何か心当たりがあるのか？
さてと
殺された人間が変わったことだし
早速　台本を書き直さなきゃ
な　何言ってるんだ　お前は！
殺人編だけやって
解答編を　やらないんじゃ
客が納得しないだろ
不破警視
解答編は予定どおり
あさって　２４日の夜
上演してもらうことにしたわ
な…　そんな　むちゃな！
この犯行は
警察の厳しい監視下で起きたのよ
外部の者が
舞台裏に侵入するのは　不可能
つまり　犯人は　この劇団の中に
いるってことになるわ
この中…
舞台が上演される以上
誰も　このホテルから
逃れることはできない
幸い　観客は
この事件に気付いてないし
私たちは
容疑者全員を監視しながら
捜査できるってわけよ
万が一　また犠牲者が出たら？
言ったはずよ
ここにいる以上
私の指示は　絶対って
せ…
はい
お前か　心配するな
実はな
俺には想像ついてるんだ
赤髭のサンタの正体がな
何？
やっと　その気になったか？
フフ
呼び出すにしても
何も　こんなとこじゃなくったって
まあいい
ヘッヘヘ　ヘッヘヘ
すぐに　あったかいベッドに
連れてってやるぜ
その夜
俺たちを　あざ笑うかのように
第２の犠牲者が発見された
赤髭のサンタクロース！
赤髭のサンタクロースの
本当の目的は
復しゅう　それとも…
何だって！万代殺しのトリックが
分かったって？
お前　どこで　それを？
そのとき
殺意の予告が　俺のもとに届く
まさか　死のプレゼントの
贈り先が　お前だったなんて！
俺は　かけがえのないものを
失ってしまうのか？
「金田一少年の事件簿」…﻿異人館ホテルの舞台上で
大女優
　
万代鈴江が死んだ
かつて
赤い部屋に住んでいたという
赤髭のサンタクロースの
犯行なのか
やつの第２の標的
　
虹川幸雄が
変わり果てた姿となって
発見された
赤髭のサンタクロース！
赤髭のサンタクロースは
本気で劇団員を皆殺しに
する気なんでしょうか
　
先輩
じょ…
　
冗談じゃない！
え？
僕は何もしてないのに
何で殺されなきゃならないんだ
な…
　
何とかしてくださいよ
雪村オーナー
本当のことを教えてください
あの赤い部屋に住んでいたという
赤髭のサンタクロースのことを
これ以上犠牲者を
増やさないためにも
　
ご協力を
分かりました　お話しましょう
あの方が
ここに始めていらしたのは
今から
１０
年前
小雪のちらつく
クリスマスイブの夜でした
いらっしゃいませ
あの方は
　
上から下まで
全身
　
真っ赤な服をまとい
髪の毛やひげまで
真っ赤に染めておられました
ボーイたちはあの方を見て
イブの夜に現れた
赤髭のサンタクロースだと
うわさし合ったのです
そしてお金をフロントに置いて
仰いました
向こう
１０
年間
３１５
号室を貸し切りにしてくれと
向こう
１０
年？
はい
　
その日からあの部屋に
じゃあ部屋を真っ赤にしたのも？
あの方です　いつの間にか
壁からカーテンに至るまで
真っ赤に…
法外な大金の支払いがあったので
苦情も言えませんでした
それから９年間
あの方はほとんど外出もせず
閉じこもって暮らしていました
話し声といえば
　
よくどこかへ
電話をかけていた声を
ちらりと耳に挟むくらいで
電話を？
はい
　
そして１年前のある日…
お部屋のお掃除にまいりました
失礼します
ああ
　
お休み中でしたか　失礼を…
あっ！
死因は薬物死でした
薬物死？
腕に注射をした痕があり
鍵は中から掛かっていたことから
警察は自殺と断定して
事件はそれっきりに…
不思議なものですね
あの方に
３１５
号室をお貸ししてから
あさってで
ちょうど
１０
年目にあたるんですよ
あさって
　２４
日
クリスマスイブって
そう
　
この推理劇の最終日
解答編がこのホテルで
上演されることになっていた夜さ
その日まで
　
あの方の魂が
赤い部屋に住み続けている
そんな気がしてならないのです
どういうことなんだよ
全く本当に
説明もなく
　
いきなりなんて
どういうことなのかしら
誠に申し訳ありません
朝食がお済みでない方は
食堂にモーニングサービスを
用意してありますので
どうかご利用ください
あーあ
ゆうべは眠れませんでしたよ
自分の寝てる
この赤い部屋のベットで
赤髭のサンタが死んだんだと
思ったら
気の毒にな　空き部屋が
ないばっかりにお前と金田一だけ
あの部屋に押し込まれちまって
本当
　
あんな部屋で
眠れる人がいたら
二三
　
今ここで裸踊りしちゃう
してください
　
裸踊り　思う存分
あーあ
　
よく寝た
寝過ぎてとろけちゃいそうだぜ
お？
花蓮さん
ここ
　
いいすか？
金田一さん
ええ
　
どうぞ
大丈夫ですか？顔色が…
えっ？ええ
万代さんと虹川さんが
あんなことになって
　
大変ですね
でも
人気女優の花蓮さんがいるんだし
まだまだこの劇団も大丈夫ですよ
いいえ
　
私
　
もう女優は…
え？
元から人前に立つのは
苦手だったんです
えっ
　
じゃあどうしてこの劇団に？
あっ
大切な人のため
　
だったわ
でも歳月がその人を
変えてしまった
えっ？
私
　
孤児だったんですよ
万代先生に拾われ
それ以来ずっと
　
先生を
母のように思ってきたんです
先生のことを
悪く言う人もいますけど
普段はとても優しい人でした
金田一さん
はい
あなたはいろんな難事件を
解決しているそうですね
絶対に先生を殺した犯人を
捕まえてください
お願いします
あっ
花蓮さん
信用しない方がいいよ
何だ？
彼女は女優だ
心の中で笑ってても
涙ぐらい流せるさ
あの女が普段
どこで何をしてるか
劇団員の誰も知らないんだからね
何なんだよ
　
あんた！
市川君といったね
君とお姉さんの魔子さんは
子どもの頃
万代鈴江に引き取られ
養子として育ったそうだね
君たちなら
知ってるんじゃないか
万代や虹川がいなくなって
得するような人物を
知ってるよ　でも僕は人形
何も見ない
　
なーんにも聞かない
なーんにも言わない
同じ劇団の仲間が殺されたのに
何てやつなんだ
なぜ自分でしゃべらずに
人形にしゃべらせるんでしょう
気味悪い
しょうがないのよ
えっ
私と弟はね
子どもの頃
万代にひどくいじめられたのよ
それはもう
　
無残なまでにね
弟はまだ小さかったから
ショックで心を閉ざし
以来
　
人形を通してしか
しゃべらなくなってしまったの
台本に書かれていること以外はね
それじゃあ
　
あんたは
あら
疑ってるの？私と弟を
私たちだけじゃないわよ
あの女を憎んでたのは
ええ？
あっはははは
　
嫌だなあ
教えてくださいよ
捜査は進んでるんでしょう？
赤髭のサンタクロースは
いつ捕まるんですか？
榎戸はね
　
万代と虹川に
多額の借金をしていたの
その弱みで
　
万代に
いいようにこき使われていたわ
つまり
　
劇団員のほとんどが
万代や虹川を殺害する動機を
持っていたことになるわけか
まったく
　
この劇団の人間関係は
出口のない闇みたいだ
あの…
え…
あ
　
オーナー
　
どうかしました？
もう一つ
お話ししなければならないことが
あったのです
え？
こんなことを申し上げてよいのか
迷ったのですが
何です？
実はあの方が
赤髭のサンタクロースが
あの赤い部屋にいらした頃
万代様と虹川様も
よくここに
お泊まりにいらしていたんです
ええっ
　
何だって！
それも
　
なぜかいつも
赤い部屋の隣の
３１６
号室を指定されていました
それじゃあ
赤髭のサンタクロースと何か
いえいえ
　
話をするとか
そういった様子は
全くございませんしたが
とにかく私の知っていることは
これで全てお話致しましたので
失礼致します
ああ…
うん…
万代と虹川が
赤い部屋の隣に？
どういうことだ
知りたいでしょう？
あっ
万代たちと
赤髭のサンタクロースの関係
どうしてもっていうなら
教えてあげてもいいわよ
素人探偵さん
不破刑事
これは警察の中でも
　
ごく一部の
人間しか知らないことだけど
赤髭のサンタクロースという男は
私がずっと追ってた
麻薬の売人だったのよ
ええ？麻薬の売人？
あの男が部屋を真っ赤にしたのは
多分
　
そのせいね
どういうことです？
異常なまでに
１つの色に執着するのは
麻薬の常習者に
よくあることだそうよ
やつは赤い部屋にこもって
電話で連絡を取っていたと
我々は考えているの
そこまで分かってて
どうして
逮捕しなかったんですか？
証拠がなかったのよ
証拠が？
やつが
客と取り引きしている現場を
どうしても
押さえられなかったの
私はやつの客と見られる人物を
徹底的にマークしたわ
万代や虹川もその中の一員だった
じゃあ
　
万代と虹川は
赤髭のサンタクロースから
麻薬を？
多分ね
でも
　
万代も虹川も
食事以外は
ほとんど部屋にこもったままで
赤髭のサンタクロースと
接触した形跡はまるでなく
決定的な証拠をつかむことが
出来なかった
そんな矢先
赤髭のサンタクロースが
死んでしまい
捜査は完全に行き詰まった
じゃあ
　
ひょっとしたら
万代と虹川が
やつを殺した可能性も
あり得るわね
他に何か質問は？
でも
　
いいんですか？
俺なんかに
　
こんな極秘情報を
ふっ
　
ちょっと
試してみたくなっただけよ
警視庁きっての切れ者
明智警視をねじ伏せたという
かの名探偵のお孫さんの
お手並みをね
なるほど
　
あんたも明智さんと
同じ人種ってわけかあ
ふっ
　
楽しみにしてるわよ
名探偵さん
おやすみ
あっ！
こうなると
万代は狙われて殺された
可能性が高くなってくる
問題は
　
犯人がどうやって万代に
あのグラスのワインを
飲ませたのか
あ？
あれ？
変ね
花蓮さん
あ
それ昨日のキーじゃないですか？
ええ？
あ
ねえ
これ
　
昨日のキーだったんですね
開かないはずだわ
こっちが今日の…
でも毎日
　
夜中の
１２
時に
新しいキーに替わるなんて
面倒くさいですよねえ
あ
　
あと
２０
分で
１２
時だ
フロントで
新しいキーをもらわなきゃ
花蓮さんも一緒に…
　
んだあ！
メリークリスマース！
佐木
　
脅かすなよ！
ははっ
ついに分かったんですよ
犯人がどうやって
万代を殺したのか
何だって？
今
　
お見せしますよ
よっしゃ！
おい
　
佐木
そのトリックってどういうんだよ
まあ
　
そんな慌てなくても
あ
　
何だよ
　
こんな時に
はい
　
もしもし
私の部屋で何をしているのかね
金田一君
だ
　
誰だ
死の闇からよみがえり
今
　
君の後ろにいる
何？
赤髭のサンタクロースなのか？
もうじき３番目の犠牲者が出る
君の大事な友人を
守らなくていいのかな
はっ
ふっふふふふふ
おっ
　
おい
　
待て！
どうしました？
くそっ！
先輩
美雪
美雪
　
美雪！
一ちゃん？
駄目よ
　
入ってこないで
美雪
　
待ってろ
　
今
　
助けてやる
あっ！
ちょっと！
あれっ
　
赤髭サンタさん…
くうう
そんなのいるわけないでしょ！
エッチ！
あー
　
どぉー
くそー
　
どうなってんだ
　
こりゃ
君の大事な友人を
守らなくていいのかな？
まさか！佐木！
なんだあ
いるなら
　
返事ぐらいしろよ
おい
　
佐木
　
佐…
さ
　
佐木？
おい
　
どうした？
しっかりしろ
　
佐木
　
佐木！
あっ！
お前は…
ああ…
あ
　１２
時の鐘か
もう
　
そんな時間
剣持のおじさん
たばこ
　
買ってきたよ
あれ
　
いないのかなあ
ヘックション！ああ寒い　うう…
１２
時の鐘
　
鳴り終わりしとき
井戸の中に我が影を見よ
うーん
　
やつめ
ここに現れるとでもいうのか
あっ
　
もっ
　
もしもし
お待たせしたね
　
剣持君
あっ
　
赤髭のサンタクロースか
そこから３階の窓が見えるだろ？
何？
さあ見るがいい
殺人劇第３幕の幕開けだ
ははははは
おい
　
ちょっと待て
　
おーい
くそっ　ううん
あ
　
あれは
赤い部屋
あっ
あの部屋には金田一と佐木が
あっ
　
まさか
金田一！そこにいるのだろ
金田一！佐木！
赤髭のサンタクロースですって？
そんなあ
見たんだ
　
確かにこの部屋の窓に
３１５
号室のキーです
貸してくれ
電気を
ああ
ああっ
金田一
　
おい
　
しっかりしろ！
一ちゃん
うう…
おっさん…
生きとったか
一ちゃん
ったく
　
心配させんなよ
俺
　
一体…
赤髭のサンタクロースに
襲われたんだ
赤髭のサンタクロース…
あっ
　
佐木！
佐木はどこだ
不破刑事
ん？
ここに
あっ！こ
　
これは
あっ
　
ああ
ど
　
どうしてこんなことに…
と
　
とにかく救急車だ
金田一
俺が…
俺があんな電話に引っ掛かって
部屋を出ていったから
先輩の大活躍を記録に残すのが
僕の役目ですから
二人っきりの夜はまた今度
佐木…
こんなに警官がいて
どうして殺人が起こるんだ
あと何人
　
人が死ねば
やつを捕まえられるんだよ
大丈夫
　
犯人は確定したわ
えっ
ええっ
だ
　
誰なんです
この部屋の窓は全部内側から
鍵が掛かってたのよ？
ここは３階だし
犯人が窓から逃げたとしても
内側から鍵を掛けることは不可能
そして私たちが来るまで
ドアにも鍵が掛かっていた
この部屋は
完全な密室だったというわけ
密室？
つまり
この部屋を密室に出来たのは
中から
鍵を掛けることの出来た人物
それは
　
金田一君　あなたね
ええっ？
ば
　
馬鹿な
金田一が殺人犯だと？
おい
　
金田一
カードキーはどうした？
なっ
　
ない！
ポケットに入れてたはずなのに
やっぱりな
つまりこういうことだ
犯人は
　
金田一を気絶させた後
キーを奪い
　
俺に電話をかけた
そしてすぐ外に出て奪ったキーで
ドアに鍵を
それでよく刑事が務まるわね
何？
あなたは重要な点を忘れてるわ
犯人らしき人影を見た時間を
思い出してご覧なさい
時間だと？
時計台の
１２
時の鐘が鳴り終わって
確か
　１２
時５分だったが
忘れたの？
このホテルでは夜の
１２
時に
全ての部屋の
ドアロックのデータが変更され
古いキーは
使えなくなってしまうのよ
ああ
犯行時刻
外からこの部屋に鍵を掛けるには
新しいカードキーが必要だった
でも
　
この新しいカードキーは
手付かずのまま
フロントにあったわ
つまり
　
この密室は
中からしか作れなかった
金田一一は佐木竜太を襲った後で
キーを始末し
中からドアに鍵を掛け
剣持警部に電話をかけた
そして窓際で
赤髭のサンタクロースを
演じて見せた後
　
床に倒れて
自分も襲われたように偽装した
ところが
　
彼もキーが
１２
時に替わるのを忘れていた
下手な偽装工作が
裏目に出たってわけよ
俺が…
　
佐木を…
　
殺した…
そんな
　
金田一さんが佐木さんを？
あっ　ああ…
金田一君
　
犯人はあなたよ
俺が
　
佐木を…
はははははっ
　
はは
はは
　
ははは
　
はは
　
ははは
は
　
ははははは
　
はは
　
はは
はははは
　
ははは
ははは
　
はは
　
はは
　
ははは
はは
　
ははは
　
はは
ははは
　
ははは…
いいかげんにして！
どうして
　
一ちゃんが
佐木君を
殺さなきゃいけないんです
そんなでたらめ
　
よく言えますね
そうだ
　
金田一に
佐木を殺す動機はないぞ
動機は調べれば分かるわよ
佐木竜太
　
及び万代
　
虹川
殺害容疑で
金田一一
あなたを逮捕します
佐木が俺を呼んでいる
お前は俺に
何を伝えようとしたんだ
しっかりしろ
　
金田一一
赤髭のサンタクロースに
惨劇を
このまま続けさせていいのか
待てよ
　
佐木の撮った
ビデオテープが
１本だけ抜き取られている
まさか
　
そこに
トリックを暴く鍵が…
思い出せ
その時
　
何が起こっていたのか
佐木
　
この謎
必ず俺が解いてやる
金田一少年の事件簿
聖なる夜
我が異人館を
汚さんとする者どもに
死をもって制裁とする
赤髭のサンタクロース
謎の赤い部屋
深夜
１２
時
ついに赤髭のサンタクロースが
姿を現した
だがやつは
　
こつぜんと消え失せ
代わりにこの俺が
佐木を手に掛けた犯人として
逮捕された
目を覚まして佐木君
お願い
佐木さん
　
死なないで
何で
何でこんなことになったのかな
佐木…
へへ
　
ついに分かったんですよ
犯人がどうやって
万代を殺したのか
どっちにしろ俺が
佐木をあんな目に遭わせたんだ
俺が…
うう…
どうした
　
しっかりしろ
こいつは犯人のわなだぞ
佐木は万代殺しのトリックを
俺に知らせようとして
襲われたんだ
このまま
　
おめおめ捕まってたら
犯人の思うつぼだぜ
佐木を襲った犯人を
見つけ出すんだ
考えろ
　
考えるんだ
あの時の状況はどうだった
佐木がビデオを出そうとして
電話が鳴って
そうだ
　
電話！
な
　
何だね
剣持のおっさんを
呼んでくれませんか
大至急
　
調べてもらいたいことが
あるんだ
金田一
　
お前の赤い部屋の
電話使用記録なんか調べて
どうすんだ
犯人は
　
あの赤い部屋から
おっさんに電話をかけてきた
そうだったよな
ああ
　
確かに
やつが窓から見下ろしているのが
はっきり見えた
それにしちゃあ
　
妙なんだ
あん？
あの時
　
俺は
　
受話器に
コードを挟んで飛び出していった
ところがずっと受話器は
そのままだった
てことは…
おい
　
金田一
もし犯人があの部屋の
電話を使わなかったとして
一体それが何の証明になるんだ
うん…
　
ん？
あ…
不破警視
この子の手錠を外してあげなさい
え？
もう外へ出てもいいわ
ど…
　
どういうことですか？
真犯人が名乗り出たのよ
真犯人が！
会わせてあげるわ
もっとも
　
話はもう出来ないけどね
話が出来ない？
ああ
花蓮さん
この臭い
　
万代を殺した時と
同じ物を使ったのね
不破警視
携帯電話が机の下に
それとこんな物が
やっぱりね
赤い部屋の電話が
使われていなかったのも
　
当然よ
携帯電話を使ってたんだわ
さらにこのボイスチェンジャーで
声を変えていたってわけね
花蓮さんが？
万代殺しのトリックも
明らかになったわ
花蓮の遺書に全てが
劇団所有のワープロを使って
書かれていたの
呼んでごらんなさい
遺書だと！
私はずっと万代に
こき使われてきました
万代を殺し自由を手に入れたい
この殺人のシナリオは
私の復しゅう劇だったのです
あの日
　
私は
万代が舞台に上がる直前
持病の薬のカプセルの中に
こっそり致死量の薬物を
混ぜておきました
カプセルは飲んだあと
何分で溶けるか
正確に分かるようになっています
万代がワインを飲むシーンで
カプセルが溶けるよう
逆算して飲ませたのです
そしてこっそり
床にこぼれたワインへ
カプセルに仕込んだ薬物と
同じ物を混ぜ
　
偽装したのです
しかし
　
その時
虹川に見られてしまったのです
虹川は私を脅し
私を自分の女にしようとしました
そこでプールに虹川を誘い出し
殺したのです
あ
　
あの女
　
しゃあしゃあと
そして２人を殺した後
　
私は
全ての罪を金田一さんに
着せてしまう計画を立てました
そのためには
　
犯人が
金田一さんだとしか思えない
密室状況を作って
　
もう１人
殺してしまう必要があったのです
うわ
　
ぐぐ…
何て女だ
　
それだけのために
佐木って高校生を
しかし
　
だったら花蓮さんは
あの密室を
どうやって作ったっていうんだ
その答えはこれよ
うん？
こ
　
これは抜け穴
赤髭のサンタクロースは
この通路を使って
　
隣の部屋に行き
麻薬を取り引きしていたのよ
万代や虹川が
いつもこの赤い部屋の隣
３１６
号室に泊まっていたわけも
これで分かったわ
どうりで外で張ってた私たちが
現場を抑えられないはずだわ
花蓮は万代の近くにいたから
この通路の存在に
気付いていたのね
この他に秘密の通路は？
発見出来なかったわ
つまり
　
この赤い部屋を
密室に仕立てて
殺人を実行出来たのは
隣の
３１６
号室に泊まっていた
花蓮１人だったってことよ
ええ？
やはり花蓮が犯人だったか
しかし
　
そこまで
仕組んでおきながら
なぜ自殺など
彼女は恐れていたのよ
ＤＮＡ鑑定を
ＤＮＡ鑑定？
そう
　
ＤＮＡ鑑定をね
佐木さんと
　
もみあった時
私は顔を見られることだけは
避けたものの
腕を引っかかれました
佐木さんの爪に
犯人の皮膚が残っている
警察の人が
そう話しているのを聞いて
覚悟を決めたのです
佐木の爪に犯人の皮膚が？
ほんとですか
　
不破警視
もう鑑定の結果が出るはずよ
細胞の中にあるＤＮＡが
同一の人間は
２人といないといわれてるわ
親子でも全く違うの
鑑定すればすぐ分かるわ
不破警視
　
結果が出ました
鑑識からの報告よ
佐木の爪に付着していた皮膚から
検出されたＤＮＡと血液型は
文月花蓮のものと一致したそうよ
え…
あっ…
ああ
まったく！可愛い顔して心の中は
醜い化け物のような女ね
さあ
　
もううちへ帰っていいのよ
素人探偵さん
事件は解決
真犯人
　
文月花蓮の自殺をもってね
あ
　
一ちゃん
佐木は
　
意識は戻ったか？
まだ…
そうか
佐木君
今日はクリスマスイブなのね
いろいろありすぎて
何ヶ月も経ったみたい
まさか
　
あの花蓮さんが
犯人だったなんて
いや
　
花蓮さんは犯人じゃない
ええ？
俺には
　
あの遺書の内容が
矛盾してるように
思えてならないんだ
遺書の矛盾？
まずカプセルのトリックだが
カプセルが溶ける時間を
逆算することは可能だろう
しかし
　
ちょっとでも
劇の進行が遅れたら
万代はワインを飲む前に
死んでしまう
そうね
　
劇が時間通り
進まないことはよくあるし
あの携帯電話
　
あの時犯人は
赤い部屋から電話してることを
隠す必要はなかったはずだ
なのに
　
なぜ部屋の電話を使わず
携帯電話を使ったんだ
この事件には
　
あの遺書とは別の
もう一つのシナリオが
展開されている気がするんだ
タイムリミットは
推理劇の解答編が
上演されることになっていた
今夜いっぱいだ
それまでに真犯人を暴いてみせる
ジッチャンの名に懸けて！
証拠は
　
このビデオの中に
あるはずだ
ん
　
うわー
何
　
びくついてんだよ
手伝うよ
　
私も
ニ三
美雪お姉ちゃんは
佐木さんにつきっきりだもん
今回は私が事件解決を
手伝ってやるよ
お前なんかいたって役に立つ…
立つ！佐木さんの
かたきを討ちたいんだ
　
絶対
ふ…
　
ニ三
知ってるよ
佐木さんが襲われたのは
佐木さんが万代殺しのトリックを
知っちゃったためなんだろ
ああ
５つあるグラスのうち
なぜ万代だけが
あのグラスのワインを飲んだのか
その謎の答えが
佐木の撮ったこのビデオに
映ってたはずなんだ
でもこんなにあると
全部見るだけで大変だよ
全部見る必要はないさ
ん
犯人にとって
佐木を殺そうとまでして
見せたくなかったビデオだ
そのまま残しとくはずはない
思った通りだ
見ろ
　
ニ三
ナンバー９のテープが
なくなってる
ほんとだ！だけど
肝心のテープがなくちゃ
どうしようもないじゃん
いや
　
なくなった
ナンバー９の前後のテープに
何が録画されてるかを見れば
持ち去られたテープに
映っているものも
おおよそ見当がつく
まずナンバー８のテープの
ラストだ
おお？
へえ
　
ここが今夜
劇が行われる舞台かあ
すごい立派なセットね
ここで終わってる
次はナンバー
１０
のテープだ
オッケー
今度はどの辺りだ
あ…
舞台の稽古だ
こんなんでどのシーンが
欠けてるのか分かるの？
ああ
　
大体な
まじかよ
思い出してみろよ
俺たちが稽古を見てた時
あ
　
佐木さんがあの鬼ばばあに
大目玉食らった
私を撮るんじゃない！
そう
　
あの時の場面が
なくなってるんだ
でもその時
　
一体何が
ビデオに映ってたんだ
待て待て
　
これは
この中の誰かが死ぬとしたら
今夜ほど
おあつらえ向きの夜はないわ
ああっ
　
ニ三
この稽古と同じシーンを
探してくれ
本番の舞台の時だ
　
早く！
んん
　
待てよ
ああ
　
これかな？
この中の誰かが死ぬとしたら
今夜ほど
おあつらえ向きの夜はないわ
そうか
　
分かったぞ
万代殺しのトリックが！
ああん
　
どこ行くんだ
　
一
一！
何
　
捜してるんだよ
ゴミ箱なんかあさって
万代の台本さ
佐木が偶然撮ってしまったものは
万代の台本なんだ
おそらく万代が
ワインを飲むシーンのはずだ
あった！
本当？
何だこりゃ
　
書き込みだらけ
じゃないか
　
この台本
ん？これは
ワインを飲むシーンのページが
切り取られてる
犯人が先回りしたんだ
ああ
　
でも犯人がこのページだけ
切り取ったってことは
俺の考えは
間違ってないってことだぜ
うわ
あ痛て
　
ああ
馬鹿
　
何やってんだよ
ああ
　
足がつっちゃったんだよ
あ
　
壊しちゃったかポット
　
ああ
あ？何だ
　
このポット
銀紙なんか貼って
ああそうなんだ　私もこの前
変だと思ったんだ
　
この小道具
舞台には照明の光を
反射する物は置けないから
こんなふうに銀紙でくるんで
あるんだってさ
舞台には照明の光を
反射する物は置かない？
ニ三
　
それほんとか？
美雪お姉ちゃんが言ってた
だったら妙だな
あの時
　
何が光ってたんだ
あった
　
ほらこれだ
まじで光ってるなあ
わああ！
やめろ！
花蓮さん！何てことを
でも変だよな
そういうのって普通は
光らないようにしとくんだって
美雪お姉ちゃんが言ってたのに
あの時
　
なぜ剣は光ったのか
ああ
　
あなたまだいたの
いまだに推理ごっこを
続けてるわけ？
俺には花蓮さんが
人を殺したなんて
信じられないんだ
ふん
　
男って
奇麗な女の肩を持ちたがるのね
無駄な悪あがきはやめなさい
ふんだ
　
ブス警視
光る剣か…
ニ三
　
万代が殺されてなかったら
今夜の解答編
どんな結末になってたんだっけ
だからさ
あれがラストシーンだって
犯人の花蓮さんが万代のばばあを
ドスって刺す
そうか
　
あのシーン
そういうことだったのか
あの光った剣の正体
うん
　
間違いない
でも待てよ
ってことは…
ほ？
そうか
　
それなら全てが
一本につながる
光る剣も密室トリックも
佐木の爪から出た
花蓮さんの皮膚も
やっぱりな
　
思った通りだぜ
金田一！
おっさん
出たぞ
　
例の鑑識結果が
　
ほら
どうもこうも
お前の言った通りだぞ
一体どうなってんだよ
俺にはもう何が何だか
　
さっぱり
やっぱり
俺の思った通りだったんだ
謎は全て解けた
それから明智警視から
電話があったんだ
今こっちに向かっていると
どういうことだ？
こんなところへ
　
皆を集めて
あの金田一って子ね
一体何をする気なの？
ちょっと！
この舞台は立ち入り禁止のはずよ
誰の許可を得て
ここに集まってるわけ
な
　
何だ？
はっ
ああ
ああっ
皆さん
　
こよいの舞台へようこそ
金田一君！
一体何を始めようっていうの
いいかげんに悪ふざけの
探偵ごっこなんか
　
やめなさい！
悪ふざけなんかじゃありませんよ
不破警視
これから事件の解答編を
上演するんです
この異人館ホテル殺人事件の
真相編をね
何だって？
でも犯人は死んだ
花蓮だったはずじゃ
花蓮さんは真犯人に
罪を着せられて
　
殺されたんだ
自殺に見せかけてね
そう
　
この連続殺人事件の真犯人
赤髭のサンタクロースは
この中にいる！
こ
　
この中に？
犯人が
ふん
　
何を寝ぼけたことを
事件はとっくに解決してるのよ
こんな馬鹿げた茶番を
許可した覚えはないわ
これは命令よ
　
私は
捜査主任者として即刻中止を…
待ちたまえ
誰？
ああ
明智警視
不破警視
　
でしたね
東京の明智です
今からこの事件の指揮は
この私が執ります
な
　
何ですって…
実は前々から追っていた
麻薬ルートをたどっていくうちに
この劇団の万代と虹川に
たどり着いたんです
北海道警にも了解を取り
この異人館ホテルの事件を
私の管轄にしてもらいました
これは私の命令です
金田一君の言うことに
従ってください
うっ…
ふん
どうやら頼もしい
味方が出来たようだな
私は自分の仕事を
しに来ただけですよ
明智警視
　
切れ者と名高いあなたが
こんな子どもの言うことを
真に受けるつもりですの
全ては金田一君の手腕を
見せてもらってからの話です
よし
　
じゃあ皆さんに
今度の殺人事件の解答編を
上演していただきます
何？解答編をやるだと？
そんな
これは
鏡の中の殺人鬼
僕たちの最初の劇の
台本じゃないか
その通り
全て台本通り演じてください
そんなことして
　
どうするの？
第一
　
お姉様に万代
虹川も死んでしまって
３人も穴があるのよ
それはご心配なく
雪村オーナー
　
虹川の役
小説家をお願いします
ええっ
　
私がでございますか？
台本を見ながら
やればいいんですから
それから万代のやった
女主人の役は
不破警視
　
あなたにお願いします
わ
　
私が？警視の私が
何でそんな馬鹿馬鹿しい
お芝居やらなきゃならないわけ
不破さん
　
金田一君の
言う通りにしてください
ええ？
くっ
花蓮さんの役は美雪がやるんだ
う
　
うん
これで配役は完了
　
劇を始める前に
一つ確認しておくことがある
この大広間は
万代が殺された夜から
ずっと鍵が掛かっていて
警察の監視の下
誰一人出入り出来なかった
つまり舞台の上は
万代が殺されたあの夜のまま
何ひとつ
変わってないということだ
一体それが何だっていうんだ
答えは今に分かる
えっ
ああ
うっ
それじゃあ上演を始めてください
憎い…
　
憎いのよ
　
お母様が
殺してしまいたいほど
ほほう
　
穏やかじゃないですな
知ってるのよ
あなただって同じでしょ
おい金田一
　
こんなことで
本当に犯人が分かるのか
ずるくて賢い君のことだから
どうせ
　
ひきょうなわなの一つでも
仕掛けてあるんでしょうね
ああ
　
だけどそれは
俺が仕掛けたわなじゃない
犯人が仕掛けたわななんだ
犯人は
　
自分が仕掛けた
わなに掛かって
自ら犯人であることを
証明してしまうのさ
犯人は彼女だ
メイドのサツキだ
何ですって？
事件の夜ワインを
飲まなかったのは
　
サツキだけだ
毒ワインを恐れ
　
彼女だけグラスを
と
　
と
　
取らなかった
違う！違うよ！
サツキがそんなこと
僕は彼女を思い続けてきたんだよ
彼女を愛する時だけ
僕は人形じゃなくなる
普通の男に戻れるんだ
いいえ！真犯人は私よ
お母様を殺そうと思ったのよ
やめて
皆
　
うそよ
ワインに毒を入れたのは
　
私よ
お前
　
それじゃあ
私は
　
あなたに生きる喜びの全てを
奪われてきた
憎い
　
呪い続けてきた
あなたの死だけが
　
私を
私を自由にするのよ！
私を殺そうっていうの
あんたを
１０
年も育ててやった
この私を
サツキさん！
私がやるわ
やめろ！サツキ！
私は自由になるのよ
ああっ
ああ　うっ　ああ
うっ
　
はっ
ああ…
　
はっ
ああ…
えい！
ああ…
やはり正体を現したな
たった今
　
証明されたよ
万代鈴江
　
虹川幸雄
佐木竜太
　
そして文月花蓮
４人を殺傷した
異人館ホテル殺人事件の真犯人
あんたが
赤髭のサンタクロースだ！
赤髭のサンタクロース
あんたは皮肉にも
自分の仕掛けたわなに掛かって
自らを犯人だと証明してしまった
これから
　
あんたの作り上げた
殺人のシナリオを
一つ一つ暴き出してやるよ
そして
１０
年前のある殺人事件と
あんたのつながりもね
イブの夜に全てを明かす
佐木のために！
金田一少年の事件簿﻿私は自由になるのよ！
やはり正体を現したな
たった今　証明されたよ
万代鈴江　虹川幸雄　佐木竜太
そして文月花蓮
４人を殺傷した異人館ホテル
殺人事件の真犯人
赤髭のサンタクロースは　あんただ
不破鳴美
どうしたんだい？不破さん
なぜ慌てて剣を払った？
台本じゃ　あんたは
メイドに刺されて倒れるはずだろ
まるで　この剣に毒でも
塗ってあるみたいだったぜ
安心しなよ
毒を塗った本物の剣は
俺がすり替えておいたよ
剣に毒を？
どういうこと？
不破さんは　小道具の剣を
本物の剣に　すり替えて
毒を塗っておいたんだ
どうして　そんなことを
保険だよ
保険？
あの舞台のとき　万代が　万が一
あのワインを飲まずに
生き残ってしまった場合
ラストシーンで　剣によって
確実に　万代を殺すためのね
結局　使われなかった本物の剣は
警察の厳重な警備のせいで
回収できずに
ここに残ってたってわけさ
だが不破さんは
この剣を　すり替えるとき
あるミスをした
ミス？
ああ　本物の剣に付いていた
光る宝石を
気にも留めなかったことさ
照明の光を反射するものは
舞台の上には置かないという
劇団員の常識を
知らなかった　あんたは
本物の剣を
舞台に置いてしまったんだ
皮肉にも
自分で仕掛けた　わなに掛かって
自らが犯人だと
名乗り出てしまったってわけさ
フッ　笑わせないで
さっきのは警官の習性で
とっさに刃物を
払ってしまっただけじゃない
まさか　それだけで　私を　赤髭の
サンタクロース呼ばわりする気？
そこまで言うなら
ちゃんとした証拠が
他にあるんでしょうね？
悪いが　これからが本番さ
あんたの作り上げた
殺人劇のシナリオを
これから
１つ１つ暴き出してやるよ
まずは　万代殺しのトリックからだ
５つあるグラスの中から
あんたが　どうやって
万代に　あのグラスを取らせたか
あら　そんなことができるの？
私が魔法の呪文でも
使ったと言うのかしら？
そう　あんたは呪文を使ったんだ
彼女が自分から
あのワインを飲んでしまう
悪魔の呪文をね
俺は　佐木のビデオを
見ているうちに
妙なことに気付いた
稽古のときも本番も　万代だけが
まるで操られたかのように
中央のグラスを取ってたんだ
そして　彼女は　そのグラスの
ワインを飲んで死んだ
つまり　あんたは　万代の台本に
こっそりト書きを書き足したんだ
中央のグラスを取るってね
ああ
なるほど
万代は　そのト書きの指示を守って死のグラスを取った
しかし　そのトリックに
気付いた者がいた
それが佐木だった
稽古中　佐木は偶然　万代の台本を
ビデオに撮ってしまったんだ
そのために　佐木は…
そうよ　佐木殺しは　どうなるの？
佐木が倒れていた赤い部屋は
完全な密室だったのよ
抜け穴を使った花蓮以外に
誰が佐木を襲えたっていうの？
残念だけど　不破さん
その密室トリックも解決済みだぜ
あの夜　おっさんは赤い部屋
つまり　３１５号室の窓に
犯人の姿を見た
そうだったよな？
ああ　確かにそうだ
でも　おっさんは
なぜ　やつが立っているのが
３１５号室だって分かったんだ？
あ　そりゃあ　部屋の中が
真っ赤だったからさ
あんな部屋は他に…
その赤い部屋が
もう１つあったとしたら
赤い部屋が　もう１つ？
そう　犯人は　あるトリックを使い
わずか数秒で　もう１つ
赤い部屋を作り上げたんだ
まさか！
わずか数秒で？
そんなむちゃな
今から見せてやるよ
これが赤い部屋のトリックだ！
これは…
舞台照明ですね
そう　舞台で
火事や夕焼けのときに使う効果さ
照明に　赤いセロハンをはめて
舞台を赤く染め上げるんだ
不破さん　あんたも部屋の電灯に
赤いセロハンを貼ったんだ
ただし　自分の部屋　３１４号室にね
あの夜　あんたは
俺が美雪の部屋に行っている間に
佐木を襲い
証拠のテープを奪ったあと
戻ってきて　俺を薬で眠らせた
この時点では
まだ１２時前だったんだ
俺のカードキーは　まだ使える
ドアに
外から鍵を掛けたあんたは
隣のあんたの部屋
３１４号室に戻って
電灯に赤いセロハンを
巻きつけたんだ
そして　１２時過ぎに
おっさんに電話して
窓際に立った自分を
目撃させたんだよ
夜　外から赤い部屋を見れば
誰だって３１５号室だと思い込む
つまり　自分のいた時間と場所を
目撃者に誤認させることで
心理的な密室を作り上げたのさ
心理的密室…
いずれにせよ
この密室殺人の真の目的は
犯人を花蓮さんに
仕立て上げることにあったんだ
花蓮さんを自殺に見せかけて殺す
それが　あんたの
完全犯罪のシナリオだったんだよ
なかなか面白い推理ね　金田一君
でも重要なことを
１つ忘れてない？
佐木竜太の爪から検出された
花蓮の皮膚は
どう説明するつもり？
あの皮膚はＤＮＡ鑑定で
花蓮のものと断定されたのよ
フッ　これまでのような
チンケな推理じゃ
覆すことのできない
科学的証拠だわ
あれは　花蓮さんの皮膚じゃない
あんたの皮膚だ
何ですって？
そんなバカな！
ＤＮＡ鑑定に
間違いがあったって言うの？
いいえ　ＤＮＡ鑑定に
間違いはありません
１つだけ例外がありますけどね
例外？
双子だよ
同一の精子と卵子から生まれる
一卵性双生児は
血液型もＤＮＡも
全く同一になるんだ
じゃ　まさか…
そう
あんたの本名は
不破鳴美なんかじゃない
殺された文月花蓮の双子の姉
北見蓮子だ
不破さんと花蓮さんが
双子の姉妹？
全然　似てないじゃない
恐らく整形手術で　顔を変えたんだ
しかし　細胞の中のＤＮＡまでは
変えられない
このことに気付いた俺は
食堂で　すれ違いざま
あんたの髪の毛を
１本　失敬して
それを
ＤＮＡ鑑定してもらったんだ
その結果　間違いなく
あんたの血液型やＤＮＡは
花蓮さんと　全く
同じだということが分かったよ
そう
ＤＮＡ鑑定までされてたんじゃ
もう言い逃れは　できないわね
その声は…
花蓮さんに　そっくり
あんたは　その声で
花蓮さんの声を　うまくマネて
虹川を
プールに　おびき出したんだろ
そうよ　あのスケベ男
疑いもせずに
のこのこ　やってきたわ
自分が殺されるとも知らずにね
金田一君　１つだけ教えて
どうして
私たちが　双子だって分かったの？
スプーンの持ち方だよ
スプーン？
以前１度だけ
花蓮さんと一緒に食事をしたとき
花蓮さんは　スプーンを
ナイフのように握っていた
そのときは　ちょっと変わった
癖だなぐらいにしか思わなかった
ところが
今日の昼間　食堂で　あんたも
同じ握り方をしていたんだ
こんな少人数の中に
同じ癖を持った人間が２人もいる
これは単なる偶然なのだろうか
って考えたのさ
それで
明智警視に調べてもらったんだ
金田一君の推理どおり
文月花蓮
本名　北見花江には
双子の姉がいました
殺人事件で指名手配中の
行方不明の姉がね
殺人事件で指名手配？
ああ　この事件にまつわる
全ての謎を解くには
１０年前に
さかのぼらなければならない
これは　高校時代の花蓮さん？
いいえ　違います　これは１０年前
札幌で起きた殺人事件の
容疑者の指名手配写真です
そう　この少女の名は
北見蓮子
１０年前の　あんたの写真さ
ええっ？
北見蓮子と双子の妹
文月花蓮こと北見花江は
釧路に生まれた
彼女らが７歳のとき
両親が事故で亡くなり
２人は　別々の家に
引き取られていったんだ
花江も　決して
幸福とは言えない生活だったが
ことに蓮子の方は
実の子ではないからと
随分いじめられていた
もう　いいわ
もう　いいわ　やめてちょうだい
そうよ　札幌での殺人も
この異人館ホテルでの殺人も
みんな私がやったことよ
１０年前
私は　養父母から逃げ出した
そして　札幌で　あの男と出会った
あいつは　私に白い粉をくれたわ
嫌なことは　みんな忘れられる
気分転換の薬だと言ってね
それが　麻薬だって気付いたときはもう　どうしようもない状態に
なってた　鏡の中の私は
変わり果ててたわ
このままじゃ
どんどん駄目になってしまう
思い切って　私は　あの男に
別れ話を持ちかけたの
バカ野郎！甘えんだよ
俺が
お前を手放すと思ってんのか？
せっかく　これから　その顔と体で
稼がせようってときによ
うわー
それから逃げて逃げて
とうとう釧路の岬まで来たわ
自分の惨めな人生に
ピリオドを打つためにね
私の前に　ここから誰かが…
その遺書によると
私より１つ年上の　その人は
身寄りがなく
大学受験に失敗して
死を決意したということだった
不破鳴美
これはチャンスかもしれない
そのとき決心したのよ
不破鳴美として
第２の人生を歩もうってね
整形して顔を変えた私は
麻薬の禁断症状を克服し
バイトをしながら
死に物狂いで勉強して
東大に受かった
戸籍乗っ取りというわけか
警察の記録では　ほぼ同時期に
釧路沖で身元不明の
若い女性の水死体が
発見されています
恐らく　それが
本物の不破鳴美でしょう
でも　だからって
なぜ指名手配中の人が
よりによって刑事に
赤髭のサンタクロースを
捕まえるためですよ
ええ？
そう
私が殺した　あの男に
麻薬を売っていたのは
赤髭のサンタクロースだったのよ
許せなかった
私をどん底に突き落とした麻薬を
商売にしている男を
私は　やつを徹底的にマークしたわ
ところが
やつは　この異人館ホテルで
変死体で発見された
仲間に殺されたんだ
私は　そう直感したわ
私は単独調査を始めた
何日も何日も
自分の足で調べ回った
そして　ついに　あの万代と虹川の
２人に突き当たったのよ
証拠は　全て　そろってるのよ
あなたたちが
赤髭のサンタクロースを殺した
動かぬ証拠がね
あーあ
だから　俺は
やめようって言ったんだよ
しかたないでしょ　あの場合は！
勝った　今までの不幸を
とうとう自分の力で
ねじ伏せたんだ
そう思ったときだったわ
お待たせしました
花江…
しまった
姉さん？蓮子姉さんなの？
何言ってるの　人違いよ
姉さん
まさか　こんな所に花江が…
北見蓮子　確か　花蓮には
殺人で指名手配中の
双子の姉がいたはずだなあ
いやあ　偶然って怖いねえ
整形して
別人に成り済ましてたってわけ？
殺人犯が刑事だなんて　お笑いね
万代たちは
私に　取り引きを持ちかけた
私の正体を黙ってる代わりに
自分たちを見逃せってね
私が取り引きに応じると
図に乗って警察で押収した麻薬を
自分たちに横流ししろとまで
言ってきたわ
この私に麻薬の売人をしろと
被害者とはいえ　何ちゅう連中じゃ
それで万代と虹川を殺す計画を？
そう　ちょうど万代の劇団が
このホテルで上演すると聞いて
絶好のチャンスだと思ったわ
そして
全ては　計画どおりにいった
でも　なぜなんだ
なぜ双子の妹の花蓮さんまで
殺す必要があったんだ
双子の妹だからこそ
許せなかったのよ
私は見てしまったのよ
のぞいてはならない禁断の鏡を
札幌で　あの男を殺したあと
私は無我夢中で逃げ回ったわ
そして…
はーい　どちら様？
蓮子姉さん！
私は顔を上げられなかった
花江の哀れむような目が
惨めで　たまらなかった
でも　同じ命を分け合った双子
必ず助けてくれるって信じてた
そしたら…
姉さん　警察へ行きましょう
もう　これ以上　逃げ切れないわ
何ですって？
今からだって遅くない
自首すれば
少しは罪が軽くなるはずよ
古川さん　古川さん
いらっしゃいますか？
開けてください
花江　あんた…
こういうことだったのね
姉さん　私　知らないわ
本当よ
あんた
私をハメたんだね
蓮子姉さん　待ってー！
蓮子ね
大きくなったら女優になるんだ
うわあ
花江は何になるの？
うんとね　私はデザイナー
そうだ　じゃあ　いつか
花江がデザインした服を
私が着て舞台に立つわ
うわー　すてき
約束よ
うん　約束
結局　私は夢を捨て
自分の名前すら捨てた
ボロボロになって
やっと今の地位を築き上げた
でも　そんなとき私の目の前に
あの子が現れたのよ
人気女優として　まばゆいほど
美しくなった花江が
私は
不破鳴美になった　あの日から
１度だって
鏡をのぞいた日はなかった
仕事に打ち込むことで
全てを忘れようとしていた
失った美しい顔のことも
北見蓮子だったころの夢も
ところが　花江は
私の夢をそっくり手に入れたのよ
私を警察に売った　あの子が
私にとって花江は
決して　のぞいてはならない
禁断の鏡そのものだったのよ
さあ　とっとと
幕を下ろしたら　どう？
もう茶番劇は終わったのよ
はじめちゃん
あ？
いつの間にか　１２時になってたのね
イブの夜は終わったんだ
これで　あの赤い部屋も
１０年前の約束どおり
赤髭のサンタクロースのものでは
なくなったんですね
神様　今日はクリスマスですよ
けちらないで奇跡を起こして
お願い
ふみ…　ちゃん
あっ？
メリークリスマス
わっ　ああ
あ…　あっ
電話…　電話だ
はじめー！
こうして
呪われた赤い部屋の惨劇は
静かに幕を閉じた
それから数ヵ月後の春
俺は　再び北見蓮子に
会いに行くことになった
どういう風の吹き回し？金田一君
私に会いに来るなんて
あなたは
花江の味方じゃなかったの？
その花江さんが
一緒に食事したとき
俺に言ったことがあった
いいえ
私　もう女優は…
え？
元から人前に立つのは
苦手だったんです
じゃあ　どうして　この劇団に？
大切な人のため…　だったわ
でも
歳月が　その人を変えてしまった
あのとき分からなかった
寂しげな顔の意味が
やっと分かったんだ
それを伝えに来たんだよ
デザイン事務所の社員証じゃない
こんなもんが
どうしたって言うのよ
花江さんは　劇団以外の私生活を
誰にも話そうとしなかった
これが　その理由だよ
彼女は　東京に来てからの７年間
誰にも　ないしょで
二重生活を送ってたんだ
女優　文月花蓮としての生活と
小さなデザイン事務所の
デザイナー
北見花江としての生活をね
ん　なぜ？あの子が　そんなことを
花江さんの日記帳だよ
あんたが
不破鳴美になってたなんて
まだ夢にも知らなかったときのね
「蓮子姉さん
今　どこにいるの？」
「この１０年間
姉さんに再び会える日を
ずっと待ち続けてきた」
「覚えてるかしら　２人の約束を」
「姉さんは女優に
私はデザイナーに」
「その夢を　かなえようねって
独りぼっちの私には
その約束だけが支えだった」
「姉さんが
今度　私に会いにきてくれたら
いつでも　私と入れ替わって
女優　文月花蓮になってもらおう」
「そしたら　私はデザイナー
北見花江になって
姉さんの舞台衣装を作るの」
「いつか必ず
かなう日が来るわよね？」
「今は離れ離れでも
いつか　きっと
あの日のように笑い合える
そう信じて」
「蓮子ねえさん…
この世でたったひとり
私の信じる人…」
約束よ
うん　約束
分かっただろ　花蓮という芸名が
花江の「花」と蓮子の「蓮」を
合わせたものだってことが
うそよ…　そんなのうそよ
私
花江のこと　殺し…
殺しちゃった
結局　蓮子さんは
誤解とすれ違いの果てに
自分を
いちばん愛してくれてた人を
自分の手で…
ああ
彼女が　もし花江さんを
信じ続けることができたら
こんな悲劇が
起きなかったろうにな
そうね
待って！
この古い写真の中には
幼い蓮子と花江の顔があった
夢を胸いっぱいに膨らませ
お互いを鏡の中の自分のように
信じていた笑顔が
おーい　美雪　一体　何だよ
ん？チャット？ハンドルネーム？
あ？パソコン通信のサークル？
お互いの本名も知らずに
こんな山奥のロッジに集まって
パソコンで会話なんて
変わってるよな
そんなとき俺に　トロイの木馬と
名乗る人物から謎の電話が
このメンバーの中に
殺人犯がいる？
その犠牲者は！
「金田一少年の事件簿」…
おいおい　何があったんだ？
この公園の池から
水死体が上がったんですって
ええ？
この寒い　さなかに
ハックション　うう　寒い
せっかくの風呂上がりだってのに
こりゃあ　完全に風邪ひいたな
ご苦労さまです
本庁の方ですか？
ああ　捜査１課の剣持だ
で　ガイシャは？
はっ　あちらに
とにかく　ひどいありさまでして
うーん
女か　身元は分かりそうか？
鑑識官の話ですと
遺体は　だいぶ傷んでて
遺留品も見つかりませんので
時間がかかると
やれやれ
これで　金田一とのスキー旅行は
お流れだな
しっかりしろ　美雪！
うわー
あっ　はじめちゃん
わっ　大丈夫だ　くそー
どうしよう　こんな雪じゃ
とてもペンションまで
行けないんじゃ
心配すんな　もうすぐ
別のロッジが見えるはずだ
パンフの地図にあっただろう？
うん
それにしても剣持のおっさん
ドタキャンして正解だったぜ
今回の旅行
はじめちゃん！
え？
ほら　あそこ
何？
あれ　明かりじゃない？
え？
わっ　ああー
我らがミステリーサークル
電脳山荘のメンバーの
初顔合わせを祝して　乾杯！
乾杯！
でも　いいんですか？
あとの２人が来る前に
乾杯なんかしちゃって
アガサさんこそ　いいんですか？
高校生なのに
堂々と　お酒なんて飲んで
堅いねえ　お医者様は
いいじゃねえの
今日は　特別な日だぜ
ねえ　アガサちゃん
しょうがないな
ウフッ　でも　みんなで
こうして実際に会うのは
今日が初めてなのよね
何か不思議
全然そんな感じしないもん
そりゃそうさ　パソ通の中では
俺たちは
もう１年以上のつきあいなんだ
その間　いろいろあったしね
あっ
あっ
ヘッ　それにしても
よくも　まあ　こんな山荘
見つけたもんだぜ
周りにはペンション１つ　ねえしよ
スキー場までバスで来て
さらに四輪駆動のタクシー使って
４０分近く走ったんじゃねえか？
でも　ぴったりじゃない？私たち
電脳山荘のメンバーが集まるには
雪に閉ざされた
孤立無援の山荘なんてさ
ホントに　ミステリーの世界に
迷い込んだみたい
ね　ユウタ
ヘッ
しっかし　遅えなあ
あの２人は
道にでも迷ってんのか？
待ち遠しいでしょう　アガサちゃん乱歩さんの到着が
そうそう　昨日も　お前ら
パソ通で長い間
２人っきりで話してたもんな
いっつも
２人の世界に入りやがって
アンビリーバブルなやつらだぜ
やめなよ　シド君
かわいそうじゃん
２人は盛り上がってんだから
パソ通で生まれた恋なんて
近未来っぽくて　いいと思うよ
面白い漫画になりそう
頑張れ　アガサちゃん
そんなんじゃないんですったら
ちぇっ　乱歩のやつ
うまいことやりやがったな
全くですよ　アガサさんが
こんなに　かわいい人なら
僕も立候補しとけば　よかった
おいおい　２人とも
ねえ　みんなさ
スペンサー君のこと
忘れてない？
かわいそうだよ　彼のことも
話題にしてあげないと
あっ　うわさをすれば影かな？
ということは
きっと　スペンサー君ね
はいはいはい　今　開けるってば
あっ　ああ？
こんばんは
こんばんは
きゃー！
あー
いやあ　すいませんねえ
何か俺ら　スキーしてて
迷っちゃったみたいで
ええ？迷ったって…　じゃあ　君
スペンサー君でも
乱歩君でもないのか？
え？何すか　それ
ああ　俺　金田一一っす
で　こいつは　その…
友達の七瀬美雪です
金田一？
でも　助かった
山頂から隣のスキー場に行く
ツアーコースを下ってたら
途中で
道　間違えちゃったらしくて
辺りは暗くなるし
ひどい吹雪になってくるし
もう　ホントに
遭難したかと思いましたよ
だから　よそうって言ったのに
はじめちゃんたら強引に
ツアーコースに
下りてっちゃうんだもん
き…　君たち
あの鹿越峠のツアーコースから
ここまで下りてきたの？
え？ええ
よく無事で下りてきたな
あそこは　春スキーでも
よく遭難者が出る難所なんだぜ
えっ？
えっ？
俺も美雪も　悪運だけは超人的で
ウフッ…　面白い人
あ…　それはそうと
さっき言ってた
スペンサーとか乱歩とか
それ　何すか？
名前にしちゃあ　変わってるけど
もちろん本名じゃないわ
ハンドルネーム
ハンドルネーム？
あなたたち　パソコン通信って
知ってる？
ええ　名前ぐらいは
パソコンを電話回線につないで
画面の上で
話したりするんですよね？
ちょっとだけ　やったことあります
ええ？お前　そんなの
いつ　やったんだ？
お父さんが　最近
パソコンを買ったのよ　それでね
だったら
七瀬さんは知ってるわね？
パソ通には
電子会議とかチャットとかいって
パソコンの画面上で
電話みたいに
リアルタイムで
会話を楽しむ機能があるの
はあ
で　そこで使うのが
ハンドルネーム
まっ　ペンネームみたいなものね
ちなみに　私は　ぱとりしあ
この子は　ユウタ　よろしく
うっ…　ぱとりしあさんに
ユウタ…　ね
俺は僧正
一応ここでは　そう呼ばれている
あちらが　アガサさん
で　シド君に
ヘッ　適当によろしく
ワトソン君
やあ
ワトソン？
俺たちは　パソ通の中で
電脳山荘っていう
ミステリーサークルを
作っているんだ
みんな
熱烈なミステリーファンでね
それぞれのハンドルネーム
ミステリー作品の登場人物や
小説家から借りたもんなんだよ
ああ　それで
シャーロックホームズの助手が
確か　ワトソン博士っていう
お医者さんだったわ
ご名答　実際　彼も医者でね
ぴったりのハンドルネームだろ？
まだ医者の卵ですよ
一介の医大生なんですから
また　ご謙遜を
学生の身でありながら
心臓移植に関する論文が
機関誌に載るなんて
将来を
約束されたようなもんでしょうが
わあ
そういう僧正さんこそ
その若さで
年商５００億を超す会社の
社長さんじゃないですか
参りますよ
ご…　５００億？
すごーっ
父の会社を継いだだけさ
一応　世界各国のゴルフ場建設を
請け負っててね
世界中のエグゼクティブが
僧正さんの作ったゴルフ場で
プレーしてるんでしょ？
すごいよ　やっぱり
わあー
あの　ぱとりしあさんは
何をしてらっしゃるんですか？
私？
ヘッ
今のうちにサイン
もらっといた方がいいぜ
サイン？
漫画家だよ　漫画家
もうすぐ連載始まるって言うから
一気に有名人ってことだって
あるぜ
あーら　シド君だって
ミュージシャンとして
デビューが決まってるんでしょ？
サインもらうんだったら
シド君の方が
値打ちが出るわよ　きっと
すごいんですねえ　皆さん
何か俺ら　肩身狭いなあ
そんなことないわよ
私は　ごく普通の高校生だから
安心して
あれあれ　普通じゃねえだろう
恋する女子高生だろ？
やめてください
違うんですってば
シド君！
わっ　かわいい
ムッ
それにしても　遅いなあ
乱歩もスペンサーも
楽しみね　どんな人たちなのか
でも　きっと
私のイメージどおりだと思うな
みんなも　そうだもん
パソ通の中と全然変わらない
何だかパソコンの世界の中に
入っちゃったみたいだなあって
ヘッ
そう…　かもね
あ…　あのー
ちょっと聞いてもいいですか？
何だ？少年
あ…　今の話　聞くと
皆さん
今日　初めて会ったんですか？
ああ　俺たちは　もう１年以上も
パソ通で
サークル活動を続けてきたんだが
実際に会うのは　今日が初めてだ
じゃあ　もしかして
お互いの本名とか
知らないとか？
そうとも
本名も含めて
お互い　どこの誰なのか
パソ通の中で　自己申告したこと
以外は何も知らない
え？何か　気持ち悪くないっすか？そういうの
知らないからこそ
楽しいってこともあるんだ
君も　ここにいる間は
メンバーの名前とか経歴は
絶対に聞かないでくれ　いいね
は…　はじめちゃん
そろそろ私たち
そ…　そうだな　帰んなきゃな
あ…　タクシー呼びたいんですけど電話　借りていいすか？
帰っちゃうの？
せっかく人が増えて
楽しくなるかと思ったのに
ね　ユウタ
そうだわ　どうせなら
このまま泊まっていきなさいよ
えっ？
それ以外ないだろうな
この雪じゃ
タクシーも来れないだろうし
あ…　はあ　言われてみれば
あ　じゃあ
お言葉に甘えますか　美雪
う…　うん
よろしくお願いします
やったー
と言っても
ロクな　おもてなしは
できないけどね
あ　いえいえ
お構いなく
俺たちの
タイムスケジュールによれば
９時まではゲームを楽しみ
その後は
それぞれ自分のコテージに戻って
携帯パソコンで　今日の感想を
言い合うことになっているんだ
え？ああ　それは楽しそうで
美雪　やっぱ変だよ　こいつら
目の前にいる相手と話すのに
わざわざパソコン使うなんてさ
うん…
あん　もう　ツイてないなー
ヘッ　俺の番だな
フン　よーし
カモン　カモン　カモン　カモン
カモン　カモン　カモン！
イエス！ぶっちぎりのトップだぜ
すごーい
やれやれ
今日は　シドの一人勝ちかな
僕はパスさせてもらうよ
勝てない勝負は
しない性分なんでね
ほら　金田一君の番よ
え？
頑張って
あっ
あ　えっと　どれだっけ
ううん
そこじゃなくて　ここよ
あー　残念
ああ　どうもすいません
はじめちゃん
何回　間違えれば気が済むのよ
べ…　別に　わざとじゃ
こら　金田一
彼女を怒らせるな　エッへへ
な…　何だ　フロッグボイスか
脅かすなよ　ぱとりしあ
エッヘへへ
フロッグボイスって？
あの缶の中のガスを吸い込むと
声が変わるってやつさ
だっせえの　今どき
んなもん持ってくっかあ？普通
何よ　みんな驚いたくせに
やっぱ変わってるよなあ
でも　かわいい子もいるけど
おい　少年　アガサちゃんに
手を出そうとしても
無駄だぜ
はい？
彼女は　後から来る乱歩って
やつと　デキてんだからよ
シドさん
もっとも
会ったこともない
パソ通だけの恋だけどな
んもう
べ…　別に俺は…　あっ
そういえば金田一君たち
どうします？
え？
宿泊用のコテージは
たくさん余ってるんだけど
２人　一緒でいいですか？
あーん　そりゃあ　もう
なあ　美雪
何か　はじめちゃんの顔
やらしい
変なこと考えてない？
バ…　バカなこと言うな
俺たちは
タダで泊めてもらうんだぞ
それなのにコテージを
２つも占領しちゃ悪いだろ
はーい
少年　頑張れよ
何をですか？
よし　みんな
そろそろ予定どおり
部屋に戻ろうか
後で　いつものように
ネットワークの中で会おう
でも誰か残っていないとね
後から来る乱歩君と
スペンサー君に悪いしさ
それなら私が残ってます
そうだよね
アガサさんは
乱歩君に早く会いたいんだよね
フー！
シド君　しつこい！
さっ　戻ろう
行こう　行こう
フッ　年商５００億の若き社長か
何だ？休暇が欲しいだと？
お前な　そういうことは
もっと成績を上げてから
言ったらどうだ　え？
分かってんのか？
お前の今月の営業成績
ほれ　よく見ろ　これだよ　これ
あ？まっ　いいけどね
お前なんか
いてもいなくても同じだし
休暇でも何でも
好きにしてちょうだいよ
何だったら　もう
帰ってこなくてもいいけどね
ん？
フッ　最高だよ
今夜は
最高さ
アガサ…　だね？
アガサ
会いたかった
そう　僕が乱歩だ
アガサ
ん？はい　今　行くよ
誰か来たみたいだ
スペンサーあたりかもな
ちょっと待っててくれ
分かったよ　今　開けるから
やあ　あ？
あっ…
はい　上がり
なっ…　くそー
美雪　あと１回
ええ　また？
ああ　もう１回だけ　なっ？
あ？何だ　こんな夜遅くに
もしもし　あ？
どうしたの？
もしもーし
誰っすか？
ハハハ…
失礼　お休みだったかな？
誰？あんた
そうだね
トロイの木馬とでも
名乗っておこうか
木馬？
ハハハ
私のハンドルネームだと
思ってくれたまえ
またハンドルネームか
あんた　ここにいるメンバーの
誰かなんだろ？
くだらない　いたずらは…
ナンバーツーのコテージで
人が死んでるよ
何だって？
はじめちゃん？
僧正が誰かに殺されたと
言ってるんだよ　坊や
犯人は
ワトソンか乱歩のどちらかだ
おい　あんた　何を言ってるのか
分かってんのか
遊びにしちゃ　タチが悪すぎるぜ
遊び？ハハハ
そう思うなら行ってみるといい
コテージは大変だよ
僧正の薄汚い血で真っ赤だ
ハハハ
あ…　おい！
なあに？どうしたの　今の電話
妙な電話だった
トロイの木馬とか名乗って
僧正さんが殺されたって
ええっ？
ここだ
多分　いたずらだと思うけど
窓から　のぞいてみよう
うん
何をしてる！
わー
金田一君
ワ…　ワトソンさん
ど…　どうしたの？こんな所で
ああ　ええ
変な電話が　かかってきて
君もか？
え？じゃあ　ワトソンさんも？
ああ　トロイの木馬とかいうやつに電話で呼び出されて
僧正さんが
乱歩君に殺されたって
ええ？
はじめちゃん　見て！
誰か倒れてる
ええ？
し…　死んでる
僧正さんが死んでる！
死んでるよ！
一体　誰が僧正さんを
やはり　あの電話の主
トロイの木馬の犯行なのか？
吹雪の中　巧妙なアリバイ工作で
第２の殺人が
そして　犠牲者が残した
最後のメッセージ
人が殺されたってのに
本名を名乗りたくないって
まだ　そんなこと言ってるのかよ！
「金田一少年の事件簿」…﻿二人っきりでスキー旅行に
出かけた俺と美雪は
「電脳山荘」という
ミステリーサークルの
メンバーたちと巡り会った
パソコン通信で知り合った彼らは
ハンドルネームで互いを呼び合い
誰も互いの本名すら
知らないと言う
そして…
し…　死んでる　僧正さんが
本当だったんだ　あの電話は
け…　けけ…　け…　警察
警察を呼ばなくちゃ
アアーッ
待ってください　ワトソンさん
警察も大事ですが
今のうちに
調べておきたいことがあるんです
よっ　よせよ
そんな探偵のまね事みたいな
僕なんかが調べたって
何も分かりっこない
ワトソンさん　いいですか？
まず　コテージの周りを
よく観察しながら一周します
あんたにも　よく見てほしい
足跡がないかどうか
いくら大吹雪でも
ほんの１０分か２０分前に
人が近づいていれば
何となく　跡が残っているはずだ
それと　今　俺たちが残した足跡が
何分で　どのぐらい消えるかを
観察したい
それによって　犯行時刻が
ある程度　特定できるかもしれない
そっ　そんなこと　警察に任せれば
いくら警察でも　この雪じゃ
すぐには来られない
俺たちが　やるしかないんです
分かりますね？
わっ　分かったよ
よし　じゃあ　美雪も
よく目を凝らして見てくれ
どんな痕跡も見逃さないように
いいな？
うん
なかったよね？足跡なんて
うん　なかった
僕も　そう証言する
アア　アアーッ　ちょっと
けっ　警察にも
アッ…　ア…
おい
ウウッ　だっ　誰です？
俺は…
乱歩　そう　乱歩だ
乱歩？
あんたらは？
俺　金田一　一っていいます
どうして　ここへ？
ああ　俺は　さっき
待て！こいつは人殺しだ
電話の声が言ってた
「僧正を殺したのは乱歩だ」って
何だと　何だって？
まっ　まさか　本当に僧正が
こっ　これは　本当だったのか
あの電話…
俺は　冗談だとばかり
電話？乱歩さんのところにも
電話がかかってきたんですか？
ああ　君もか
「トロイの木馬」とかいう
奴からの電話で
サークルの余興かと思って
来てみたんだが
それがまさか　本当に　こんな…
参ったな
ウソだ　そいつがやったんだ
そのあと　この近くに隠れていて
今　ここに来たふりを
そういうあんたは
どこの誰なんだ？
僕は　ワトソンですよ
あなたが本当に乱歩なら
分かるはずです
ワトソン？だったら人殺しは
あんたのほうだろう！
どういう意味です？それ
俺に電話してきた奴は言ってたぜ
「僧正が
ワトソンに殺された」ってね
何だって？そっ　そんなバカな
どういうことだ？
何か訳があるはずだ　そうか
まあ　そう　いきり立つなよ
俺だって　本気で　あんたが
犯人だとは思っちゃいないって
よく考えてみりゃ　あの電話の主
トロイの木馬が一番怪しいに
決まっている　そうだろう？
でも　あなたが　その
トロイの木馬だということもある
トロイの木馬　それは
コンピューターウイルスの
別称です
コンピューターウイルス？
正常なプログラムに侵入して
めちゃくちゃにする
破壊プログラムですよ
犯人は　自分が
コンピューターウイルスと
同じだって言いたいんです
だとしたら　犯人は　乱歩さん
君かもしれない
コンピューターウイルスは
正常なプログラムに化けて
コンピューターに侵入したとたん
正体を現して暴れ出すんですから
まだ言ってんのかよ　あんたこそ
トロイの木馬じゃないっていう
保証は　どこにもないんだぞ
二人とも…　それより
パソコン通信って
何もしないで放っておくと
何分ぐらいで
切れちゃうものなのかな？
えっ　それは
ネットワークの種類にもよるけど
僕たちが　いつも
つないでいるところだったら
１０分で切れるはずですよ
だったら
僧正さんが殺されたのは　ずばり
１２時４３分ってことになりますね
なっ　何だって？どうして
そんな正確に分かるんですか？
ちょっと
こっちに来てもらえます？
ハッ　アア…
簡単ですよ　ほら
画面の下のほうに書いてある時間
夜中の
１２時５３分ってことですよね？
皆さん　コテージに戻って
いつもみたいに
パソコン通信やるとかって
言ってたでしょう？
だったら　この画面の時刻って
もしかして　そのパソコン通信が
終わった時間なんじゃないかって
思ったんです
なるほど　僧正が
パソ通の最中に殺されたなら
画面が切れた１２時５３分から
１０分を引いて
１２時４３分か　簡単だな
ワトソンさん
画面のもう少し上のほうを
見れませんか？
ハア　これなら指紋が付かないね
どうやら　この誰かに
僧正さんは　殺されたらしいな
待てよ　だったら僕は
完璧なアリバイがあります
ほら　見てくださいよ
ねっ　僕も　この時
僧正さんたちと一緒に
話していたんです
この時　僧正さんが
いなくなったことも覚えています
誰か来たって言ってたから
その人と
話し込んじゃったんだろうと
思って
その時　パソコン通信で
話してたメンバーは誰です？
ぱとりしあさんとシド君です
シド君は
僧正さんがいなくなったあと
１～２分で抜けましたけど
僕と　ぱとりしあさんは
１時１０分ぐらいまで話してました
乱歩さんは　これには
参加してなかったんですよね？
ああ　でも　その時間なら
俺は　ずっとメインロッジにいたよ
アガサと一緒だった
アガサさんと？
そうさ
１０時２０分ごろだったかな？
この山荘に着いてから　ずっと
１時半ごろ　ぱとりしあから
電話が　かかってくるまで
ラウンジで一緒にいたんだ
なんなら
アガサに電話してみてくれ
アッ
はい　アガサですけど
あっ　俺　金田一です
落ち着いて聞いてほしいんだけど
実は…
エッ　僧正さんが殺された？
待ってください
何言ってるんですか？
どうして　そんな…
ホントなんですか？
冗談とか　悪ふざけじゃ
あの　アガサさん
実は　君に聞きたいことがあって
電話したんだ
君は　一人でロッジに残ったあと
どこで何をしていました？
あのあと
１０時２０分くらいだったかしら
乱歩さんが来て　それからあとは
つい１時間くらい前まで
ずっと一緒でした
あの　乱歩さんに
代わってもらえますか？
俺だよ　乱歩
大丈夫　ごめん　夜中に
うん　分かった　じゃあ　あとで
どうだ　これで俺も
アリバイ成立ってわけだ
そう　これで
ワトソンさんも乱歩さんも
僧正殺しについては
アリバイがあることになる
いや　あんたたちだけじゃない
乱歩さんと一緒だった
アガサさんも
ワトソンさんと
パソコン通信で会話していた
ぱとりしあさんとシドさんも
つまり
この山荘にいるメンバーには
全員　アリバイが
成立することになるんだ
全員にアリバイが
そうさ　しかも
この山荘は　猛吹雪で
外界から完全に孤立している
つまり　俺たち以外の誰かが
このロッジの周りを
うろついてるってことは
考えにくい
つまり　この殺人は
ミステリーでよくある
不可能犯罪ってことですか？
金田一君
ええ　まあ
でも　僕に言わせれば
君は１つ　大事なことを
見逃してますよ
えっ？
犯人は　スペンサー君ですよ
スペンサー？
彼も　このロッジに
来てるはずです
乱歩君　会いましたか？彼に
いや　会ってないが
本当に来てるのか？あいつも
ええ　たぶんね
そして　何らかの
トラブルがあって
僧正を殺してしまった
きっと　そうですよ
バカな　そんなこと　あいつが
するわけないじゃないか！
いいかげんなことを言うな
アッ　しかし　そう考えれば
すべて説明がつくでしょう
スペンサー君には　今のところ
アリバイだってないわけだし
ねえ　金田一君も
そう思うでしょう？
さあ　まだ分からないな
誰も会ったことないし
この山荘に来てるかどうかも
分からない人なわけでしょう？
とっ　とにかく
ロッジに集合しよう
俺が警察に連絡しておくから
ワトソンと金田一君たちは
先に行っててくれ
クソッ　警察の事情聴取なんか
受けたら　すべてがパーだ
今まで築き上げてきたウソが
全部　バレちまうじゃないか
ああ　子供の頃からの夢が
かなったよ
向こうは　すぐに大学を辞めて
プロになれって言うんだけど
大学のサッカー部の連中に
恨まれちゃうからね
一応　卒業してからって
思ってるんだ
何とかしなきゃ　何とか
プロサッカーどころか
就職だって　まだアテなんか…
でも　一体　どうして
殺されたんだ？僧正の奴は
まさか
あのことが関係してるんじゃ…
いや　まさか　そんな　まさか…
んっ？
アーッ　アッアーッ
遅いですね　乱歩さん
警察に
電話してるからじゃないかしら
電話もいいけど
どの道　この雪じゃ
すぐには
来てくれそうもないですよ
それより　そろそろ皆さん
本名を名乗ってくれませんか？
どこの誰で
本当は何をしている人なのかも
ちょっと待ってよ　金田一君
まるで私たちが
何もかもウソをついてるみたいな
言い方じゃない
確かに本名は　使ってないけど
それは
このサークルのメンバーが
これまで育ててきた関係を
続けていきたいからなのよ
私は　反対よ
絶対に本名は　名乗りたくないし
他の人のことも聞きたくないわ
でも　人が殺されたんですよ
そんなことを言ってる
場合じゃないでしょう？
それに　どうせ　警察が来たら
本当のことを言わされるんだ
今　言ったって
俺も嫌だぜ
お前は　警察かよ
エエッ　金田一少年
私も嫌です　そういうの
僕も　まだ…　警察に聞かれたら
しかたないけど
そんなことより　あとの２人
乱歩君とスペンサー君は？
まだ来ないのかな？
ずいぶん遅いよね
まさか何かあったんじゃ
ないだろうね
よしっ　俺らで捜してくる
おい　少年　ワトソン先生
男３人で行こうぜ　なっ！
ガッハハッ　でも　俺
乱歩にもスペンサーにも
会ったことないんだよな　ハハハ
乱歩って　どんな奴？
どんな格好してんの？
確か茶色の
ジャケットを着てましたね
背が高くて…
あっ　あと
赤いマフラーしてました
スペンサー君のコテージも
のぞいてきてね
顔も格好も分からない人だけど
それは　やめたほうがいいですよ
彼が犯人なんだ
そうに決まってる
彼がトロイの木馬と名乗って
電話を
いや　俺は
そのスペンサーって人が
犯人だとは思いませんね
えっ　なんでです？
君は　会ったこともない人のことをどうして？
会ったことがないからですよ
何？どういう意味だ？それ
俺は　そのスペンサーという人に
会ったことがない
他の皆さんも同じだ
そして　もし彼が犯人だとすれば
今　ここに
姿を現していないことからみて
今後　目的を果たすまで
ここにいるメンバーの
仲間に加わって
行動するつもりはないらしい
にもかかわらず
恐らく犯人に間違いない
トロイの木馬を名乗る人物は
パーティーグッズか何かを使って
完璧に声を変えて電話をしてきた
もし彼が犯人なら
そんな必要はないはずだ
だって　そうでしょう？
俺たちは
スペンサーの声を知らないし
今後も彼の声と顔を一致させる
機会はないはずなんだからね
まあ　そういうわけですから
乱歩さんだけじゃなく
そのスペンサーって人の部屋も
一応　確かめたほうが
いいと思いますよ
さっ　行きましょうか
ワトソンさん　シドさん
ハア…
ねえ　七瀬さん
金田一君ってすごいですね
本当　本当　私　感動しちゃった
さっきの推理
本物の探偵みたい
ホント
私　少しホッとしちゃった
こんなとこで殺人事件なんて
どうなるかと思ったけど
金田一君が　何とか
してくれるんじゃないかって
思ったわよ　さっきは
ええ　きっと何とかしてくれますよぱとりしあさん
一ちゃんが　きっと
アアーッ
あっ　あっちだ
ワトソンさん
アア　アアーッ　あれ…
乱歩さん　乱歩さん
どうしたんだ？
誰にやられたんだ？
しっかりしてくれ
アッ　アアッ
乱歩さん　聞こえるか？乱歩さん
ぱ…　と…　アアッ
乱歩さん　もう一度　言ってくれ
乱歩さん！
ダメだ…
そんな…　ウソよ　乱歩さんが…
乱歩さんが　そんな…　イヤー
アガサさん
大変なことになったよ
なっ　何なんですか？
警察は　どうしたんですか？
すぐに来てくれるんでしょう？
つながらなかったんだ
中の公衆電話も　厨房の電話も
全部ダメだった
切れてるんだ　回線が！
いや　切られたんだよ　犯人に！
トロイの木馬に！
アッアア　アアーッ
どうなっちゃうのよ　私たち
なんで私が　こんな目に
遭わなきゃいけないのよ
この中に必ず犯人が
だから　違うって言ってるでしょう
私が乱歩君を殺したなんて
そんな
でも僕たちは　聞いたんですよ
死に際に乱歩君が言った言葉を
彼は　確かに言ったんだ
「ぱとりしあ」って
そうだよな？金田一君
いや　俺が聞いたのは
「ぱと」って言葉ですよ
はっきり　ぱとりしあさんの
名前を聞いたわけじゃない
俺も同じだ
「ぱと」から始まる言葉なんて
ぱとりしあさんだけ
じゃないですか
他に誰がいるって言うんです？
それに僕たちのところに
かかってきた　あの電話の声
あれ　ぱとりしあさんが持ってきた
フロッグボイスを
使ったんじゃないんですか？
決めつけないでよ
あんなおもちゃ
どこにだって売ってるわ
それに私には　アリバイがあるのよ
確かに　乱歩さんが
口にした言葉だけで
何もかも決めつけるってのは
危ないんじゃないかな
ぱとりしあさんが言うとおり
彼女には　アリバイだってある
じゃあ　誰が犯人だって
言うんですか？金田一君
まず　全員のアリバイを
しっかり確かめてみましょう
最初に僧正殺しのアリバイだけど
これは　ずっと一緒だった
俺と美雪は　もちろん
全員のアリバイが
一応　成立してるんだ
何ですって？どういうことなの？
ええ　実は　僧正さんの殺害現場に
俺たちが駆けつけたとき
ワトソンさんと乱歩さんから
全員のアリバイについて
話を聞かされてるんですよ
それによると
乱歩さんとアガサさんは
僧正さんの殺害時刻に
一緒に　このラウンジにいたし
ワトソンさんとシドさんと
ぱとりしあさんは
パソコン通信で会話してたらしい
そうですよね？皆さん
ちょっと待ってくださいよ
ということは
誰も僧正さんを殺せなかった
もしかしたら
彼は　自殺したのかも
誰か来たなんて一人芝居を打って
それから自分の心臓をナイフで
そんなんじゃない
うん…　じゃあ　何なんです？
トリックですよ
犯人は　巧妙なトリックを使って
自分のアリバイを
作り上げたんです
へっ　アリバイトリックか
まさにミステリーだな
じゃあ　次に　乱歩さん殺しの
アリバイを整理してみましょう
あの時　全員で　このラウンジに
集まることになったわけだけど
ぱとりしあさんが
ここに現れたのは
俺と美雪が着いた
ほんの２～３分あとです
乱歩さんは　腹部を刺され
出血もひどかったし
即死に近かったはずです
俺は　常に時間を気にしながら
行動してたんで
はっきり覚えてるんだけど
ぱとりしあさんが来てから
俺たちが乱歩さんを発見するまで
確実に２０分は　たっていた
となると　ぱとりしあさんが
乱歩さんを殺すのは
時間的に不可能だったって
ことになる
そうよ　だから言ったじゃない
私には　アリバイがあるって
次は　シドさんだけど　あなたも
ぱとりしあさんが来たあと
５～６分で現れましたね
お宅が　そう言うのなら
そうなんだろう
となると　刺された
乱歩さんが見つかる
１０分ちょっと前にシドさんは
ここに　やってきてることになる
まあ　微妙な線だけど
一応　アリバイ成立です
ハア
次に　やってきたのが
アガサさん　君だ
君は　シドさんのあと
きっかり４分遅れで現れた
そうなると　君には
アリバイがないことになる
どうかな？
ええ　そうね　しかたないですね
そして　アガサさんのあとから来たワトソンさんにも
同じ理由でアリバイは
成立しない
となれば　簡単じゃないか！
犯人は　アガサかワトソンの
どっちかだ！そうだろう？
バ…　バカバカしい
ぼっ　僕は　心臓外科医として
将来を約束されてるエリートだぞ
何だって　そんなこと
しなきゃいけないんだ！
そう　第一　第二の殺人に　おいて
アリバイがあること　イコール
容疑者から外れることになるとは
俺にも思えない
犯人は巧妙に　アリバイ工作を
施しながら　犯行を行っている
それに　この事件は
もっと別の角度から
考えていかないと
とんでもないことになる
気がするんです
とんでもないこと？
どういうことですか？それ
つまり　まだ　この殺人は
続くんじゃないかってことさ
だが　これ以上
お前の好きにはさせないぜ
トロイの木馬！
俺が必ず
お前の正体を暴いてやる
じっちゃんの名に懸けて
何てことだ！僧正さん
乱歩さんを殺したトロイの木馬は
俺たちをあざ笑うかのように
犯行を重ねていく
パソコン通信以外に接点のない
彼らを結びつけているものとは？
そして　第三の犠牲者が明かす
封印された　その過去
トロイの木馬の動機とは　一体？
この謎　必ず俺が解いてみせる
じっちゃんの名に懸けて
金田一少年の事件簿…
２人っきりで　スキー旅行に
出掛けた俺と美雪は
電脳山荘という
ミステリーサークルの
メンバーたちと巡り会った
パソコン通信で知り合った彼らは
ハンドルネームで互いを呼び合い
誰も本名すら知らないという
そして　雪に閉ざされた山荘の中で
トロイの木馬と名乗る
謎の犯人によって
第１　第２の殺人が…
トロイの木馬
必ず俺が正体を暴いてやる
じっちゃんの名に　かけて
雪　やまないわね
でも　もう遅いし
みんなもコテージに
戻っちゃったから
私もそろそろ
アガサさん　ちょっとだけ
話があるんだけど　いいかな
何かしら？金田一君
あっ　怖いなあ
その…　ジトーってして
俺を疑ってるんすか？
それとも　実は目が悪いのかな？
そんなことないですよ
両方とも１．５です
私　目だけはいいんですから
あっ　目だけだなんて
そんなアイドル顔して　よく言うよ
目も鼻も口も　そんで　ここも…
わー　みんなイイッスよー
あっ　痛てて
なーにすんだよ　美雪！
はじめちゃん　セクハラよ　それ
違うって
違わないでしょ！
はい
仲いいですね　羨ましい
私　そういう人いないから
あ…　で　何ですか？話って
ああ　いや　実は
パソコン通信のことなんだけど
ええ？パソ通のことって…
あれ　面白そうだねえ
俺もやってみようかなーなんてさ
どういうパソコン買えばいいのか
教えてくんない？
別に　いいけど…
変わった人ね　金田一君て
こんなときに　のんびり
パソコンの話なんか
あはっ　いや　コンピューターも
勉強しとかなくちゃ
コンピューターなんて簡単よ
こんなところかしらね
大体　これだけあれば
パソコン通信は　できるわ
おっ　サンキュー
モデム　プロバイダー
これで　いくらぐらい掛かるの？
そうね
大体　２０万くらいかしら
えっ？
最初から　ある程度のものを
そろえておいたほうが
そんなに？２０万あったら
ラーメン３００杯は食えるよな
アガサさんて金持ちなんだね
ここに持ってきてるパソコン
もっと高いんだろ？
ええ　まあ…　でも
自分でアルバイトして買ったのよ
へえ　そんなにお給料のいい
バイトだったら
私もしたいなあ
どんなバイトなの？
あっ　でもアガサさん　可愛いから
モデルだったりして
え　だったら　私にはムリか
あ　モデルなんて　まさか
コンピューターのバイトよ
ソフトのプログラムとかって
結構いい　おカネになるの
何だ　それも私にはムリか
コンピューターのプログラムか
スッゲエな　それは
でも　高校とかに行きながらじゃ
大変じゃない？
大丈夫よ
うちの高校　出席甘いから
休校も多いしね
え？休校？
どんどんバイトして
また最新のパソコン
買わなくっちゃね
へえ　すごいなあ
七瀬さんだって　できるわよ
アガサさん　君ってホントは
大学生なんじゃないのか？
急に何の話よ　金田一君
君　今　休校って言ったよな
高校生なら自習って言うのが
普通じゃないかな
それに　君の右手の指輪にしても
高校生がするものにしては
ちょっと豪華すぎるしね
だったら　どうだって
言うんですか？金田一君
話してくれよ
君が　どこの誰なのか
いや　それを話したくないなら
せめて　君たち
電脳山荘のメンバーが
過去に何をしてきたのかを　は…
お断りします
私が高校生じゃないから
どうだって言うの？
他のみんなだって
ウソついてることぐらい
あなたなら分かるでしょう？
でも　私たちは
それでバランスが取れてるの
これからも　この関係を
保ちたいのよ
部外者のあなたに　これ以上
かき回されたくないわ
ねえ　はじめちゃん
どうして　みんな　あんな必死に
自分の名前とか
隠そうとするのかな？
やっぱりアガサさんが言うとおり
これからも今の関係を
保ちたいってことなのかしら？
そんなことはないさ
連中は殺人事件に
巻き込まれたんだぜ
この先もパソコン通信で
楽しくサークル活動なんてこと
できるはずないよ
むしろ　あの連中は今はもう
縁を切りたがっているのさ
どういうこと？
多分　あの連中は
過去に　とんでもないことを
やらかしてるんだ
とんでもないこと？
ああ　そうさ
それも多分　警察ざたになったら
ヤバいようなことだと思う
そして　今のところ　その事実は
あの電脳山荘のメンバーの
間だけの秘密になっている
だから　あの連中は
お互いの身分を
明かそうとしないんじゃないかな
このまま散り散りになれば
連中の過去も闇から闇に
葬むられちまうからね
そんな…　あの人たちが犯罪を？
そして　俺の勘が正しけりゃあ
その過去の何かこそが
今回の連続殺人の動機に
つながってるんだ
まだ事件は終わってないぜ　美雪
きっと　まだ何かが起こる
何か　とんでもないことがな
あれは天罰
そうさ　俺はミュージシャン
俺はミュージシャンさ
おい　どこに行ってたんだ！
練習だよ　バンドの
高校を出て仕事にも就かず
いつまで　そんなくだらないこと
やってるんだ！
でも　父さん
これは俺の夢なんだよ
お前は家の仕事を
継げばいいんだ！
それがイヤなら
すぐ家を出て行け！いいな！
俺はミュージシャンさ
風は収まったけど
雪は　やみそうもないわ
もう　うんざりよ
金田一君も
ミルク入れましょうか？
ちょっと待った
ミルクを入れないでくれ
え？
やっぱり　ブラックで飲みたいんで
ちょっと換えてくれねえか？
金田一少年
ああ　いいですよ　別に
すまないねえ
何です！
僕が毒でも入れたと
思ってるんですか？
ああ　そうだよ　なにせ
乱歩殺しのアリバイが
ねえからな　あんたには
まだ　そんなことを！
いい加減にしてくれ
とにかく　この中の誰かが
犯人のトロイの木馬に
違いねえんだ
これ以上　耐えられねえぜ
人殺し野郎と
一緒の部屋にいるのはよ
金田一君
シドは　ああ言ってますが
僕としては　この中に
犯人がいると決めつけるのは
どうかと思いますけどねえ
というと？
スペンサー君のことですよ
引っ掛かるのは
スペンサー…
彼は　この山荘に
来るはずだったんだ
いや　来てると思う
そして　どこかに潜んで
殺人を続けている
そのことについては金田一君が
説明してくれたじゃない
私たちは彼に
会ったことがないのよ
スペンサー君が犯人なら
わざわざ　声を変えて
電話してくるはずがないじゃない
私たちは犯人の声を
知らないんだから
ねえ　ユウタ
そこですよ
スペンサー君は我々に
そう思わせるために
声を変えたんじゃないですか？
ええ？
まっ　そういう可能性も
あるってことですよ
僕もコテージに戻ります
昨日は　あまり眠れなくて
これは…
ゴホッ　ゴホッ
ワトソンのヤツ　あっ…
ちぇっ　マズイ
あ？
シド…
ねえ　はじめちゃん
ホントにスペンサーって人が
ここに来ていて
どこかに隠れてるのかしら
ねえ　ぱとりしあさん
聞き忘れてたことがあるんだけど
なあに？
僧正さんが殺されたあと
あの現場で　俺たちは
みんなのアリバイについて
話をしたんだ
僧正さんが殺された１２時４０分頃
あなたはワトソンさんと
通信していて
アリバイは成立しています
そのあと
１時半頃　乱歩さんの話では
あなたから電話があったと
聞きましたが
そのとき　ぱとりしあ…
ちょっと待って
私が？知らないわよ
乱歩さんに電話なんて
掛けてないわ
えっ　それ確かですか？
ホントよ
そんなことウソついたって
仕方ないでしょ
アリバイには関係ないわけだし
んー　でも　だったら
なぜ　乱歩さんは　そんなことを？
怖いわ　誰が私のフリして
乱歩さんに電話を
気持ち悪いわね
なぜだ？
乱歩さんがウソをつく理由も
見つからないし
トロイの木馬…
どうして電脳山荘のメンバーを
狙うのかしら？
美雪さんは少しは
パソコンできるのよね？
ええ　まあ　少しなら
金田一君　私たちの過去を
知りたがっているようだけど
あ…　話してくれるんですか？
ぱとりしあさん
今はイヤ　でも
もし　私に何かあったら
私のパソコンの
シークレット文書を読んで
シークレット文書？
でも　ぱとりしあさん
それって　読むためには
パスワードが必要なんでしょ？
ええ　簡単なパスワードよ
あっ
来るなっ！
どうしたの？何があったの？
分からない
とにかく行ってみよう
シドさん　大丈夫ですか？
一体　何が？
ト…　トロイの木馬だ
トロイの木馬？
今　そこから　こっちを
俺を殺しに来たんだ
ヤツは俺を殺す気なんだ
助けてくれ
もうやだ　こんな所！
大変だー！みんな　来てくれ！
ん？
ワトソンさん
人が…　人が死んでる！
女の人…　ね
誰なの？この人
知らない　僕は知らないよ
こんな女の人
遭難したんじゃないかしら
ほら　金田一君たちみたいに
違う　これは殺されたんだ
何でよ　何で　そう断言できるの？
この死体は倒れて
雪が積もっただけじゃない
掘った跡がある　それに見てくれ
首に絞められた跡がある
事故死なんかじゃない
そうだ　ヤツに殺されたんだ
トロイの木馬に
トロイの木馬…
とにかく　何か身元が分かるものがあるかもしれない
着替えのセーターと化粧品でしょ
タオルに…
ノートパソコンがあるわ！
通信用のカードモデムと本が１冊
あっ　この本
スペンサーシリーズだ
え？何ですか？それ
スペンサー君が大ファンだった
アメリカのハードボイルド小説の
傑作シリーズですよ
まさか殺された　あの女性が…
スペンサーだ
スペンサーは女だったんだ
ええ？
あの人がスペンサー？
でも　そんなことが
できるんですか？
男のフリをして
パソコン通信するなんて
もちろんできるさ　名前すら
分からないくらいなんだから
性別だって　ごまかせる
でも
全然　気が付かなかったわ
まさかスペンサーさんが
乱歩さんと親友っぽくて
男らしい感じの人だったのに
ということは　トロイの木馬は
スペンサーさんじゃ
なかったってこと？
ああ　どうやら　そうみたいだな
つまり犯人は…
もういいわ　冗談じゃない
こうなったら　自分の身は
自分で守るしかないもんね
私　コテージに戻ります
そのとおりだ
信用できねえヤツといるのは
ゴメンだね
こっちのセリフですよ！
私もコテージに戻ります
あ…　アガサさんまで…
こういうときは
みんな一緒のほうが
誰も一緒にいたいなんて
思いませんよ
ワトソンさん
みんな　バラバラよ
どうするの？はじめちゃん
イヤな雪
この雪さえ　やんでくれれば
また元の生活に戻れるのに
そうよ　こんな所に
いるくらいだったら
まだ　あっちの生活のほうが
ウフフ　お上手ね
やーだ　もうダメよ
こんな所に来たのが
間違いだったのよ
トロイの木馬？来るなら来なさい
逆に　こっちが
ねえ　はじめちゃん
スペンサーさんが
死んでいたということは
ワトソンさんの言ってた犯人説は
違っていたのよね？
ん？
あっ　電話？
あ　はい　もしもし？
ロッジの金田一ですけど
もしもし？
誰から？
どうしたんですか？もしもし？
ぱとりしあさん？大丈夫ですか？
何があったんです？
もしもし　ぱとりしあさん
ぱとりしあさん
どうしたんだ！大丈夫か？
ぱとりしあさん
どうしたの？
来るな　美雪！
何なの？はじめちゃん
毒ガスかもしれない
変なにおいがしたんだ
ドアの所で
毒ガス？
大丈夫なの？はじめちゃん
ぱとりしあさん
私　感動しちゃった
金田一君て本物の探偵みたい
もし　私に何かあったら
私のパソコンの
シークレット文書を読んで
美雪　少し離れてろ
どうするの？はじめちゃん
ぱとりしあさんのパソコンを
そうか
何かあったらシークレット文書を
読んでほしいって言ってたわね
気を付けて　はじめちゃん
ユウタ？
とにかく急いで
パソコンを調べよう
電脳山荘のメンバーの
通信内容も残ってるわ
これは去年の６月のものね
ワトソン　「あの小説では
右腕に注射の跡が
あったというのが
捜査の決め手になっているけど
予防注射を利き腕にする
奴なんかいますかね」
シド　「同感！俺は左腕にあるぜ」
アガサ　「私は右腕にあるけど…」
どういうことだ？これは
ね　何なの？はじめちゃん
ぱとりしあさんが言ってた
シークレット文書は
開けないのか？
さっきもやってみたけど
パスワードがないとムリよ
パスワードか
簡単なパスワードだって
言ってたけど
分からないわ
ええ　簡単なパスワードよ
そうか　コードに縫いぐるみが
引っ掛かっているなんて
おかしいとは思っていたけど
あれは
ダイイングメッセージだったんだ
じゃあ　パスワードは
ユウタ…
あ　開いたわ
俺たちに約束した
シークレット文書を
読んでほしくて　死ぬ間際に
パスワードを知らせようとして
ユウタを…
ぱとりしあさん
はじめちゃん！
どうした？何が書いてあるんだ？
信じられないわ
あの人たちが　こんなことを
何てことを！
本当なの？
え？ぱとりしあさんが殺された？
金田一君　ホントなの？
ああ　残念だけど
ぱとりしあさんまで…
ああ　きっと…
きっと　僕たち全員
トロイの木馬に殺されるんだ
いや　この連続殺人事件は
これで終わりだ
えっ？終わり？
どういうことなの？
残っているのは殺人ゲームの
最終ステージだけさ
おい　何を始めるつもりなんだ？
事件の真相を解き明かすんだよ
今　この場でね
何だって？じゃあ
犯人　分かったのか？
そうさ　真犯人は　もちろん
そいつが仕組んだ
緻密なアリバイトリックも
すべて分かった　あんたら
電脳山荘のメンバー７人が
７ヵ月前に　やらかした
とんでもない犯罪もだ
あっ　犯罪だなんて
知らないよ　僕は
僕は何もしてない
死んだ　ぱとりしあさんの
パソコンに全部　残ってたんだよ
あんたらの卑劣な　たくらみがね
電脳山荘のメンバー７人は
かつて　ある完全犯罪を計画し
そして１人の男を殺害した
男の名前は榊原秋男
だいぶ前に体罰教師ってことで
週刊誌ネタになった人物だ
その教師が　いいか悪いか
そんなことは俺には分からない
ただ　あんたらのしたことは
最低だぜ
勝手に１人の教師を
犯罪者と決めつけ
面白半分に考えた
完全犯罪を試したんだ！
殺人ゲームを見抜き
実行犯である電脳山荘の７人を
１人１人　断罪していった者がいた
それが　この連続殺人の真犯人だ
そして　その真犯人
トロイの木馬は
この中にいる
アガサ　シド　ワトソン
ハンドルネームを偽って
紛れ込んだ連続殺人犯
トロイの木馬　それが　お前だ
スペンサーのカバンの中身が
巧妙なアリバイトリックを
崩してくれたぜ　そして
この山荘に集まった７人の過去
７ヵ月前の　もう１つの犯罪が
今　明らかにされる
でもこんな形じゃ　お前の悲しみは決して癒やされないぜ
金田一少年の事件簿…﻿２人っきりで　スキー旅行に
出かけた　俺と美雪は
電脳山荘というミステリーサークルの
メンバーたちと巡りあった
パソコン通信で知り合った彼らは
ハンドルネームで互いを呼び合い
誰も互いの本名すら
知らないという
そして　「トロイの木馬」と名乗る
謎の犯人によって
僧正　乱歩　さらに　ぱとりしあ
までが殺されてしまった
この連続殺人の真犯人
「トロイの木馬」は　この中にいる
僧正　乱歩　ぱとりしあ
そしてスペンサー
４人もの男女を殺害した
冷徹な殺人者
「トロイの木馬」の正体は
アガサ　君だ
何だって！
アガサさんが？
そ　そんな！
あたしがあの人たちを？
まして　ずっと会いたかった
乱歩さんを殺すなんて
そう　君が本当のアガサならね
え？本当のアガサって？
このアガサは　かつて
電脳山荘のメンバーとして
犯罪に加担した頃の
アガサとは別人ってことさ
そんなバカな
じゃあ　ここにいるアガサさんは…
恐らく復讐するために
電脳山荘のメンバーに入り込んだ
もう一人のアガサだったんだよ
冗談は　やめて　どういう
根拠があって　そんなことを？
根拠なら　あるぜ
電脳山荘メンバーの会話文だ
日付は去年の
６月１４日となってる
それが　どうしたのよ？
この時
何を話したか覚えてるかい？
忘れちゃったわ
半年以上も前のことですもの
いや　君は忘れたんじゃない
初めて見たんだよ　これを
この時のアガサは　君じゃなかった
この会話に出てくるアガサこそ
最初から　ずっと　電脳山荘の
メンバーだった
本物のアガサなんだ
だから　根拠を言ってよ
覚えてるかい？
君は前に俺たちの前で
右手で文字を書いていたよな
そりゃそうよ　右利きだもの
何の不思議があるの？
あるさ
だって　俺の想像じゃ
本当のアガサは左利きなんだから
え…　どういうこと？それ
ほら　ここの会話さ
あの小説は　右腕に注射の痕が
あったっていうのが
捜査の決め手になってるけど
予防注射を利き腕にする奴なんか
いますかね？
同感　俺は左腕にあるぜ
この次のアガサの台詞
「私は右腕にあるけど…」
そう言っている
普通　注射は利き腕にはしない
つまり　右腕に注射の痕がある
アガサは左利きだったんだ
それが根拠？笑わせないでよ
左腕にケガをしていたから
右腕に注射をしたことがあるのよ
それに　忘れたの？
シドくんが襲われた時
あたしは　みんなと一緒にいたのよ
それは　あなたも知ってるでしょ
シドさんを
襲ったのが「トロイの木馬」
じゃないとしたら？
な　何だって？どういう意味だい？
単純な引き算だ　あの時
俺と美雪　ぱとりしあさんと
アガサが
シドさんのコテージに駆けつけた
その後　スペンサーさんの
死体が発見され
ぱとりしあさんが殺された
以上の人たちを差し引くと
残っているのは
ワトソンさんしかいない
ワトソン　お前は
お前が悪いんだ　シド
何？
見ただろ？僕の秘密を！
秘密？
へっ　大層な秘密だよな
ああ　確かに見たよ
予備校の学生証をな
こいつは
医大生なんかじゃないんだよ
お前はルールを破ったんだ
互いの正体は探り合わないと
決めていたはずだ
そんなことでシドさんを…
怖かったんだ
僕が作った世界を壊されるのが
何回も受験に失敗して
親からも見放されて
そういう現実を
突きつけられるのが
怖かったんだよ
そんな言い訳　通らないわ
彼が犯人よ
この人殺し野郎！
違うな
何？
僧正さんが殺された時
ワトソンさんにはパソコンで会話
していたというアリバイがある
それなら　あたしにだって
あの時　あたしは乱歩さんと
このラウンジにいたんだもの
そのアリバイなら　もう破れたよ
何ですって？
君が犯行を行っている間
乱歩と一緒にいたのは
あのスペンサーだったんだ
バカ言わないで！
乱歩さんは言ったはずよ
一緒にいたのは　アガサ
あたしだって！
ああ　確かに　そう言ったよ
だが　乱歩と一緒にいたのは
君じゃない
アガサと名乗っていた
スペンサーだったのさ
乱歩は彼女をアガサだと
思い込んでいただけなんだ
以前から　乱歩と本物のアガサが
親密であることに
注目していた君は
スペンサーを利用して
君に有利な状況を作ったんだ
パソコン通信の中では
スペンサーは乱歩の
親友みたいな存在だった
そうでしたよね？
あ…　ああ
女性であるスペンサーが
乱歩に抱いていた感情は
もしかしたら　友情というより
恋愛感情に近いもの
だったんじゃないのかな？
そして　電脳山荘のメンバーが
この山荘に集まることになって
事情は一変した
名前や経歴は
外見だけじゃ分からないけど
性別は一目瞭然だ
彼女は困りながらも　その一方で
乱歩に一度でいいから
会ってみたいと
思い悩んだに違いない
そして　スペンサーは君に
パーティーの間だけでいいから
ハンドルネームを交換してほしいとでも
頼んできたんだろう
君は　このチャンスを
逃がさなかった
スペンサーにも乱歩にも
パーティーには
遅れてくるように
指示を出したんだ
たぶん　２人きりの時間を作るためという名目のもとにね
２人は言われた通りの時刻に
ここに　やってきて
すぐに意気投合する
この時点で乱歩は
スペンサーでなく
アガサと
一緒にいるつもりのはずだし
俺たちは
アガサは君だと思っていた
このズレが　君に
完璧なアリバイを与えたんだ
スペンサーが自分の代わりに
アリバイを作ってくれてるうちに
君は第一の僧正殺しを
実行に移した
その後で　ぱとりしあのふりをしてロッジに電話をかけ
適当な理由をつけて２人に
自分のコテージに
戻るように言ったんだろう
乱歩が僧正の殺害現場に現れた時
確か深夜の１時半頃に
ぱとりしあから電話があるまで
アガサと一緒にロッジにいたと
言っていた
だが今朝　ぱとりしあさんに
そのことを聞いてみたら
自分は電話なんかしていないって
断言していたよ
そりゃそうさ　電話をしたのは
アガサ　君だったんだから
乱歩とスペンサーは
君からの電話を受けて
自分のコテージに戻って行った
ここで　君は再び行動を起こす
第二の犯行
スペンサー殺しに向けてね
じゃあ　僧正の死体が発見された時スペンサーは？
ああ　既に殺されていたんだ
急ぐ必要があったのさ
アガサとしてやってきた
スペンサーが
ほんの気まぐれで
誰かに電話でもしたら
それでハンドルネームの
入れ替えというトリックが
ばれてしまうからね
大した想像力ね
乱歩さんが　あたしと
一緒にいたと
たまたま　証言しただけで
よくそんな　でたらめな話を
あの時　乱歩が
アガサと一緒にいたと
証言したのは　たまたまじゃないぜ
ええ？
君の書いたシナリオ通りに
彼は踊らされたんだ
何ですって？
君は僧正を殺した後
あのフロッグボイスで声を変えて
俺たちに電話をかけた
ワトソンさん　あんたのところに
かかって来たのは
どんな電話だった？
え　ああ…
僕のところにかかって来たのは
乱歩くんが
僧正さんを殺したという内容で
それから　乱歩くんに
かかって来たのは
ワトソンが僧正を殺したという
内容だった
あ…　ああ
なぜ「トロイの木馬」は
こんな
回りくどいことをしたのか？
答えは簡単さ　犯人は俺たちに
互いのアリバイ検証を
させたかったんだ
そして　事は
君の思惑通りに運んだ
自分のアリバイを立証するために
乱歩は　こう言った
自分はアガサと一緒にいた
電話で確かめてくれとね
すぐに俺が電話をかけると
君は乱歩と　ずっと一緒にいたと
証言することで
見事に君自身のアリバイも
成立させたのさ
つまり　俺たちは　君の書いた
シナリオ通りに
動かされてたってわけだ
その後　全員が
集まることになったんだが
ここで君にとって　一番まずいのは
ロッジではなく　コテージに集まろう
という話になった場合だ
乱歩と君が俺たちの前で
顔を合わせるのは
どうしても
避けなくちゃならないわけだ
俺が君に電話をして
乱歩に代わった時
こう言ったんじゃないのか？
怖いから
殺人現場には行きたくない
ロッジに集まりましょうってね
あの時　君は乱歩に他の
メンバーへの電話連絡を
託すことで
彼が少しの間　殺人現場に
とどまるように仕向けたはずだ
そして　電話連絡を終え
コテージから出てきた乱歩を
殺害した
冗談じゃないわ！
あ…
そうだ　忘れてたけど
あの後　乱歩さんが
口にした言葉は？
パ…　ト…
そう言ったんでしょ　あの人
そうよ　やっぱり犯人は
ぱとりしあさんなんだわ
３人を殺して
自殺したんじゃないかしら？
ぱとりしあさんには
あの３人を殺す動機もなければ
自殺する理由もないさ
でも　それなら
乱歩さんは何て言おうとしたの？
ぱとりしあさ
ほーら　ごらんなさい
違うな
乱歩は殺される瞬間に
目撃した君を
ぱとりしあさんだと思ったのさ
どういうことだ？
乱歩はスペンサーを
男だと思っていた
すなわち　彼は男５人に
女２人がこの山荘に来ていると
考えていたはずだ
となれば　自分を刺したのは
さっきまで一緒にいた
アガサ以外の女
つまり　ぱとりしあってことになるな…　なるほど
何？何なのよ？
話は　まだ終わってないよ　アガサ
ふざけないでよ　証拠もないのに
人を犯人扱いして
証拠よ　証拠　証拠　証拠
証拠を見せてよ！
ああ　今　見せてやるよ
証拠は　ここにある
これだよ
乱歩さんのマフラー？
それが　どうしたのよ？
君は
俺たちが乱歩を捜しに
出て行く時に
こんなことを言ったよな
乱歩は背が高くて
赤いマフラーをしていたってね
でも　何でマフラーのことまで
知ってたんだい？
そ　それは…　最初に　ここで
乱歩さんと会った時
彼がしていたから
いや　それは違うな
君がこのマフラーを見たのは
乱歩を殺した時だ
な　何よ　それ？どうして
そんなことが言えるの？
じゃあ　ひとつ聞かせてくれ
このマフラーは
君が乱歩にあげた物かい？
し　知らないわよ　そんなマフラー
あげた覚えなんか…
じゃあ　この山荘にいた９人のうち一体　誰があげたんだろう
な　何よ　どういうこと？
そのマフラー　手編みみたいだし
もらい物ってことは
何となく分かるけど
もともと　乱歩さんが
してきたものでしょ？
もともとしてきたってことは
ないと思うぜ
乱歩はアガサと恋人同士みたいな
仲だったそうじゃないか
なのに　初めて会える日に
他の誰かから　もらった
手編みのマフラーなんか
してくるはずがない
想像よ　そんなの
勝手な思い込みだわ！
違うさ
だったら誰があげたって言うのよ
スペンサーだよ
えっ？
このマフラーはアガサの
ふりをしていたスペンサーが
乱歩に
プレゼントしたものだったんだ
君が僧正を殺しに行ってた
空白の時間にね
違うわ！
それは　あたしがあげたの
ごめんなさい　つい…
ウソを言っちゃって
だって　そのすぐ後に
彼　殺されちゃったし
マフラーも　そんなに血まみれだし
わかるでしょう？そういう気持ち
君が編んだ物だって？
そうよ
いいぜ　美雪
はじめちゃん　これでいいのよね？ああ　サンキュー
何よ？それ
覚えてるだろ
スペンサーのバッグだよ
見てくれ
毛糸玉…
そう　乱歩のマフラーを
編んだ残りのね
えっ…
おそらく　行きの電車の中でも
編み続けたんだろう
この毛糸玉と
乱歩のマフラーを調べれば
同じものだってことが
分かるはずさ
動かぬ物的証拠になると思う
自分が編んだっていう
君の証言と合わせてね
降参よ
え…
ア　アガサさん　本当に
君が　あの４人を殺したの？
そうよ　あいつらを殺したのは
このあたし
それと　もう一人
本物のアガサもね
え？君は　あの榊原秋男と
どういう関係が？
婚約してたの　あの人と　あたし
出会ったのは　あたしが生徒で
あの人が新任の先生だった頃
あたし　あの頃　メチャクチャでね
盗みでもケンカでも
何でもやってた
あの人　あたしを
何とかしようと思ったみたいで
しつこいくらいに説教くれてさ
高校中退したあたしが
大検受けて　国立大学に入れたのも
みんな　あの人のおかげ
幸せだった
あの事件が起こる前は
あの人の教え子が　彼が殴った後で脳内出血で死んだの
学校を辞めてからの　あの人は
ひどい生活だったわ
もう　心も体もボロボロで
それが　１本の電話がきっかけで
立ち直ることができたの
自殺志願の女子高生からの
電話だったわ
必ず彼女を救ってみせるって
あの人　燃えてた
過去を悔いるより　これからの
自分にできることをするって
まさか　その電話が
卑劣な殺人ゲームの
始まりだとは
夢にも思わなかった！
ここから先は　ぱとりしあの
文章に書いてあった通りよ
ああ　その自殺志願の
女子高生っていうのは
もともと　電脳山荘のメンバー
だった本物のアガサだった
そして　その電話は殺人ゲームを
実行するための
大事なステップだったんだ
あんたらの計画は
一見　関係なさそうな
行動を７人それぞれが取ることで
結果として　一人の人間を
死に至らしめるという
卑劣で冷酷なものだった
まず　僧正が計画を練り
それに　ふさわしい場所を選んだ
すぐそばに電話ボックスと
ゴミ捨て場がある喫茶店だ
そして犯行の数週間前
乱歩が　そこでバイトを始めたんだ
次にアガサが　ターゲットに
選ばれた榊原秋男に電話をかける
自殺志願の女子高生を装ってね
アガサは翌朝
乱歩の働く喫茶店に
来てほしいと言って
電話を切った
そして同じ日の夜　スペンサーは
その喫茶店の前の道路に
落書きをし
シドが電話ボックスのガラスに
穴を開け
翌朝今度は　ぱとりしあが喫茶店の向かいにあるゴミ捨て場に
まだ中身の入った漂白剤を捨てる
この時　ゴミ捨て場の
すぐそばには
ワトソンの止めた自転車があった
そして　榊原秋男が
喫茶店に姿を現す
同時に　バイトをしていた乱歩が
店の外の落書きを
消してくると言って
洗剤を持って外に出ていく
この洗剤は予め
乱歩が買っておいた物で
ぱとりしあが捨てた漂白剤と
混ぜ合わせると
有毒ガスを発生するようなやつだ
やがて　喫茶店で待つ榊原の元に
アガサからの電話がかかり
やっぱり会うのが怖いので
電話で話がしたいと告げられる
榊原は店の電話を
占領することを嫌って
公衆電話から
かけ直すことにしたのさ
僧正が選んだ　この店には
すぐ外に
電話ボックスがあるせいか
公衆電話は置いていない
榊原は外の電話ボックスに
駆け込み
アガサが伝えた電話番号を
プッシュした
最後にゴミ捨て場の
脇に置いてあった
自転車を　ワトソンが取りに来て…
倒れた容器から流れ出た漂白剤は
すぐ溝を伝っていき
乱歩が使用した洗剤と混ざり合い
有毒ガスが発生して…
やめろ！やめてくれ　もう…
その後　榊原の死は
不幸な偶然が重なった
事故として処理された
何しろ　この犯罪に関わった人間は
何の面識もなく
互いの名前さえ知らないんだ
これは恐るべき犯罪だよ
文字通りの　完全犯罪だ
あの人　身寄りがなかったから
遺品は全部あたしが引き取ったわ
その中から電話番号の書かれた
紙ナプキンが出てきたの
あたしは自殺を
思いとどまらせるつもりで
番号を頼りに
その女子高校生を見つけたわ
でも　会ってみると相手は
とても　そんな人間には
見えなかった
問い詰めると　すぐに
ペラペラと喋ってくれたわ
後は…
分かるでしょ？
あたしは　その女
本物のアガサを殺し
アガサとして電脳山荘に
入り込んだの
復讐のためにね
アガサ！
動かないで！
この袋を切り裂くと
有毒ガスが発生するわ
ちょっとでも吸ったら　おしまいよああ…
よせ　もう十分
君の気持ちは伝わったんだ
君の死んだ恋人にも
この連中にも
終わったんだよ　何もかも
まだ終わってないわ！
許せないの！こいつらは
殺さなくっちゃ
あたしが　この手で
やめろ！そんなことをしても
君の恋人は帰ってこない
それに榊原秋男が
今の君の姿を見て
喜ぶと思うのか！
ごめんなさい…　秋男
ああ！
ああ！
そこまでだ
あ…　おっさん
間一髪だったな　金田一
でも　どうして
おっさんが　ここに？
ああ　とりあえず一日だけ
休みをもらって来たんだが
お前らが山の反対側の
山荘に行ったきり
帰ってこないって聞いてな
電話も通じねえし
嫌な予感がしたんで
地元の警察に
車を出してもらったのさ
しかし　妙だな
何が？
あの女　アガサっていうのか？
ああ
でも　それは…
アガサって名前で
パソコン通信を
していたらしいんだが
ええ？
俺が担当してる事件の
ガイ者の話なんだけどな
それが…
本物のアガサだよ
ええ？
何だ？それは
待って　待ってください！
何だ　君は
開けてください
彼女に話があるんです
開けてやれ
お…　俺　自首します
今さら　こんなこと言っても
とても許してもらえない
だろうけど　俺…
後悔してるんです
君の恋人を殺してしまった
せめて　ここで謝りたいんだ
ごめんなさい！
俺を…　許してください
考えとくわ
え…？
行くか　金田一
美雪　バレンタインは
２人でコテージに行こうぜ
そこで　あの時の返事をするからさ
俺たちも　ついに…　と思ったら
何だよ　あの３兄弟
大病院の跡取りだか何だか
知らないけど　美雪に
ちょっかい　出しやがって
しかし　あいつらの元に
届いた「死の天使」からの小包が
事態を一変させる
これは　殺人予告！
雪のコテージが　血に染まる
金田一少年の事件簿…
きゃあ　見て見て　かわいい
超かわいい
こっちも
こっちは？
気に入ってくれるかな
かわいい
あ　それもいいね
今年もバレンタインデーが
やってくる
毎年２月１４日が近づくたびに
あたしは思い出すの
５年前のこと
はじめちゃん　あの…　これ
え？何だよ　美雪
げー　手作りチョコだぜ
ヒューヒュー　お礼は？
お礼は言わないの？はじめちゃん
僕も君が　だーいちゅきでちゅー
ハハハ
バカ野郎！こんな　まずい物
もらって　礼なんか言えるか！
ああ　まずい！こんなまずいモン
もう二度と　くれんなよ
はじめちゃんのバカ
最悪のバレンタインデー
あれ以来　あたしは一度も
はじめちゃんに
チョコをあげてなかったのだけど
美雪！
お前　来週のバレンタインデー
空いてる？
えっ？
あ　実は剣持のおっさんから
長野のコテージの
宿泊券をもらったんだ
２人分
２人分？
おっさんの大学の後輩が
やってるコテージでさ
スキーもできるんだ
そこで…　美雪と２人で
バレンタインデーを
迎えようと思って
あの時の返事　長野で言うからさ
はじめちゃん…
今年のバレンタインデーは
これまでと　ちょっと違う気がする
そろそろだな　美雪
うん
やだ　ドキドキしてきちゃった
はじめちゃんと２人の
バレンタインデー
ひゃー　やだ　あたしったら
何　考えてるの？
はじめちゃんに
気づかれなかったかしら
こっちも何か想像してるな
ここだ　コテージ
スノーキャンドル
うわあ　ステキ
あ　ほら見ろよ　美雪
ここが本館で
周りに１０棟のコテージがあるんだ
さ　行こう
うん
ようこそ　コテージ
スノーキャンドル　へ
あなたが剣持のおっさんの
後輩の…
青山だよ　よろしく
金田一　一くん　七瀬美雪さん
金田一くんは１０７号室
はい
七瀬さんは隣の１０８号室だ
はい
じゃ　これがキーと
はい
金田一くんには
エプロンとナタだ
え？
荷物を置いたら
裏口に来てくれるかな
こんなの聞いてないよ
ハハハ　剣持先輩から
タダで泊める代わりに
思いっきり　こき使っていいと
言われているんだ
くそ！おっさんの奴　騙したな
七瀬さん　うちの名物を
ご覧に入れよう
あれだよ
うわあ
大きなツリー
毎年　クリスマスと
バレンタインデーには
飾りつけをするんだ
５時には
自動的にスイッチが
入るようになっている
きれいでしょうね
夜に　あのコテージの窓から見たらきっと最高ね
残念ながら　あの１０４号室は
ストーブの故障で
今日は泊まれないんだ
まあ　本当に残念ですね
おっ　お客様だ
金田一くん
今度は荷物運びを頼むよ
え…　へーい
はじめちゃん　頑張って
いらっしゃいませ
また　世話になりますよ
荷物は車の中だ
お？
はじめちゃん　手伝おっか？
ひょっとして　君が「白い天使」？
イケてるじゃん
え？
あ…　あの
おい　その子は俺の連れ
ささ　入ろう　入ろう
何なんだ　あいつら
あの３人　毎年のように
この時期に泊まりに来るんだ
違う女の子を
とっかえひっかえ連れてね
何だって！
京極３兄弟　有名な
京極大病院の御曹司さ
悪どい病院経営で巨万の富を
築いたといわれる父親が
甘やかし放題に
育てた結果が奴らだ
一番上が優介
京極病院の跡取りだ
財力に加え　あのルックス
あいつの行くところ
吸い寄せられるように
女が群がるが
いつも冷めた目で適当にあしらう
いけすかない奴だよ
二番目が浩二郎
これもハーバード大学を
首席で出たエリート内科医さ
長男の優介に比べたら
いかにも地味だがな
三男の拓弥は　まだ医大生だ
上の２人よりグッと
出来は落ちるらしい
父親の力で裏口入学したと
もっぱらの噂だ
要するに　超金持ちの
ナンパ軍団ってわけか
蹴飛ばしてやりたいような連中だ
でも　相手は？
今年は趣向を変えたそうだ
え？
つまり　ブラインドデートって
やつさ
今年は相手の女の子たちの
顔も名前も謎なんだ
はあ
分かってるのは
インターネットのハンドルネーム
「白い天使」と
その友だち２人ってことだけ
ここで初めて会って　３対３の
バレンタインデートってわけさ
そうですか
「白い天使」か
どうせまた　京極の名に　つられて
アクセスしてきた女だろう
ところが　お互いの情報はゼロ
こっちの身分を明かしちまったら
つまんねえだろ
俺たち　京極の名に
すり寄ってくる
女に飽き飽きしてるからな
はあ　ハズレの時は拓弥
お前が責任　取れよ
俺は降りるぞ
え？
え…　今　何て言った？
今回は　俺は降りる
一人で　したいことがあるんだ
何だよ　兄貴　冗談だろ？
あの　ひょっとして
あなたたちが？
あ？
初めまして　「白い天使」さんに
インターネットで誘われて
来ました
二宮水穂です
こっちにもいるわよ
あんたたちが探してる　もう一人が
島崎薫よ
感動のご対面ってやつだな
でも　さっきから話　聞いてりゃ
最低の男たちね
女は　みんな　あんたたちに
夢中だと思ったら大間違いよ
うん
やっぱり
来るんじゃなかった
ブラインドデートなんて
まあ　そう言わずに
で　「白い天使」は　どこに？
さあ　先月　偶然
インターネットの
伝言板で知り合っただけだから
顔も知らないわ
水穂ちゃんは？
私も　彼女のことは
何も分からないの
ここに来るのも初めてだし
つまり　ここにいる５人は
顔も名前も知らない　謎の女の子に
この場所に
集められたというわけか
なかなか　じらして
くれるじゃねえか
早く正体を現してほしいもんだね
おお　そう言えば　これ
その謎の女の子からじゃないか？
今朝　届いたんだけど
誰のいたずらだ　こりゃ
「白い天使」が
「死の天使」に書き直してある
「死の天使」？
「死の天使」だと？
どこのどいつだ？
こんな　ふざけたマネを
こ…　これは　如月静歌！
何？
何だって？
「今宵　バレンタイン
お前を死の国に連れて行く
死の天使」
バ　バカな
あの女は　とっくに死んだはず
死んだ？
ああ
このコテージの裏の丘で
自殺したんだ
雪の中で凍死していた
凍死…
く…　一体　何のマネなんだ！
誰なんだ？「死の天使」ってのは
知るか　俺は何も
あたしたちだって　知らないわ
くそっ　気分悪いぜ
今さら　あの女の名前を
思い出すとはな
あんたたち兄弟
何か　やな思い出があるみたいだな
その亡くなった　如月静歌っていう人と　何かあったのか？
ふん　兄貴に聞けよ　兄貴は
静歌のストーカーだったんだ
それは　あの女の方さ
天使みたいな顔して
ゾッとするような
しつこい女だったね
ねえねえ　金田一くんと
美雪ちゃんてさ
まだなの？
ええ？
そんな…
やっぱり　分かる　分かる
彼ってさ　恋愛って雰囲気
全然ないもんね
何か　ボンビーくさくって
そこへいくと　あの優介さんって人
リッチでゴージャスって
感じよねえ
あ　いたいた
優介さん
何で別行動してるんですか？
つまんない
誰か探してるんですか？
ああ
ここに来れば　会えるんだ
いや　何でもない
気にしないでくれ
スキー　教えてくれません？
あ　ああ　いいけど
やった！
水穂さん　やるう
何　あれ
男に媚びちゃって　水穂とか
言ったっけ？一番嫌いなタイプ
兄貴はね
ああいう　どこにでもいる
タイプは３日で飽きるのさ
そこへいくと　僕は君みたいな
真面目なタイプの方がいいね
真面目？
ハーバードでも
お目にかからなかったタイプだ
ふん
はじめちゃん　早く
ああ
ああ…　っと
はじめちゃん！
美雪ちゃん　お待たせ
え…　あの
この野郎
はじめちゃん！
これで３対３の
デート　成立ってわけだ
待てえ！何で俺が余るんだよ！
くそ…　何で俺が…
今回は　俺と美雪の記念の
バレンタインデーじゃ
なかったのかよ
くう　こうなったら
ドカンと挽回するっきゃないぞ
あ…
キレイでしょうね
夜に　あのコテージから見たら
きっと最高ね
ふふん　いいこと考えた
もう少し　ん？
青山さん　うわ…
金田一くんか　驚かせて　すまん
どうかしたんですか？
頭から離れないんだ
あの丘に眠っていた
如月静歌の死に顔が
彼女は　このコテージに
バイトに来ていたんだ
彼女の笑顔に　誰もが癒やされる
そんな優しい子だった
肉親が一人もいない
孤独な身だったが
そんな悲しみが
横顔に聖母の美しさを
与えていたのかもしれない
だが　２年前のバレンタインデー
例年通りやって来た　あの３人が
そんな彼女に目をつけない
わけがなかった
奴らは　しつこく
彼女を口説いていた
連れの女たちが怒って
帰ってしまったほどだった
そして　その冬を最後に
彼女から連絡がなくなった
そして　次の年の冬
電話をしてみると
もしもし
私
如月静歌は　死の旅に出ます
何？
私をこんなにしたのは
京極３兄弟の中の誰かでーす
なぜ　留守番電話に　京極拓弥の
声が吹き込まれていたのか？
それは今も分からない
京極拓弥の声…
答えはコテージ
スノーキャンドル
雪の中の静歌に聞け
静歌！
静歌！
静歌！
静歌！
やはり　ただのいたずらか
ん？
静歌…
静歌は　まるで
白い天使のようだった
白い天使…
警察は自殺と断定した
しかし　遺書など
一切　残されていなかった
本当に自殺だったのかしら
あなたは…
彼女　殺されたのよ　男に
遊びのつもりが
しつこく　つきまとわれて
邪魔になったんでしょうね
問題は　その男の名前
お久しぶりね　青山さん
あの人は？
笹本美華
京極優介の元婚約者よ
ふん　あそこか
静歌が死んでた場所は
ん？
やめて　お願い
あたし　あなたのためなら
どんなことでもする　だから
お願いよ
ふーん
はじめちゃん　ごめん！
ふーん
だって　拓弥さんに強引にリフトに乗せられちゃったんだもの
ふん
何でも言うこと聞くから
許して！
ん？何でも？
何でも？
バカだな　俺は　ちっとも
怒ってなんかいないさ
ホント？よかった
じゃ　あたしも　お手伝いするね
もう　みんな　ゲレンデから
戻って来てんのかい？
うん　ロビーに　全員いたわ
あ　美雪　今　何時？
えっと　４時半よ
じゃあ
冷凍室にアイスクリームの
デコレーションケーキがあるから
取ってきてくれるかい？
アイスクリームのデコレーション
ケーキがあるの？やった！
つまみ食いすんなよ
はじめちゃんと一緒にしないでよ
もう
わあ　寒い
ひゃあ　きゃあ！
はあ　怖かった
は…？
きゃああ！
美雪　どうした？
はじめちゃん！
こ…　これは！
何だ　今の叫び声は？
拓弥…
凍死してる
如月静歌と同じだ
死の…　天使
「死の天使」　それは如月静歌の
亡霊なのか
周到に準備された
アリバイトリックの中
新たな犯行が
意外な人物の思わぬひと言が
さらに謎を深めていく
そして　雪山で美雪を襲う黒い影
美雪　どこに行っちまったんだ？
この謎　必ず解いてみせる
じっちゃんの名に　かけて！
金田一少年の事件簿…﻿凍死？
一体　何のまねなんだ？
バレンタインを迎えるコテージで
京極三兄弟の末の弟　拓弥が
変わり果てた姿となって
発見された
自殺したという如月静歌の
亡霊が現れたのか
それとも死の天使が
舞い降りたのか
拓弥
警察だ　おい
何　ボケっとしてるんだ
早く警察へ連絡しろ
あ　はい
あ　もしもし　警察ですか？
やはり
やはり？
優介　心当たりでもあるわけ？
死の天使とやらに
美雪さん　だったね
は　はい
みんなに伝えてくれないか
拓弥を殺したのは俺だ
え？
俺は警察に自首すると
早く
は　はい
死の天使
やはり　そうだったか
分かった　すぐ行く
京極さんは？
どこに行ったのかしら？
そろそろ　警察の人が着くころね
時計　どこで落としたのかしら？
あ　あ
あ
はじめちゃん
長島さん　終わりましたか？
現場検証
ああ　しかし　お前と　また
こんな所で会うとはな
今日　このコテージに居たのは
これで全員ですかな？
後ほど１人ずつ
事情をうかがうことになります
ここから絶対
出ないようにしてください
美雪は…　美雪が居ない
そういえば　さっきから
もう１人居ないわよ
あ　そうね　優介さんが
あなた　優介の新しい取り巻き？
美華さんでしたね
優介さんの元婚約者だった
気になるの？
もしかしたら　コテージに
戻ったのかもしれない
これ　コテージに
つながるんでしたよね
もしもし
すぐ来てくれ　早く
京極さん？京極さん
どうかしたんですか？
あ…　い…　今　監禁されている
何ですって？
そこは　どこなんですか？
ここ…　ここは１０４号室だ
１０４号？
貸して
優介さん　大丈夫ですか？優介さん
どうしたんだ？
切れちゃった
今　優介さんの悲鳴が聞こえて
そのまま
何？１０４号室ってのは　どこだ？
こ…　ここです
ツリーがある所よ　ほら　チカチカ光る
よし　急ごう
ええ
あ　ダメだ　女の人は
みんな　ここに居てくれ
どうしてよ？
金田一君の言うとおりだ
これ以上　面倒が
起こらんためにもな
京極さん
こ…　これは
誰が　こんな事を
待てよ　ちょっと変だ
どうした？金田一
外のぬかるみには　はっきりと
犯人の足跡が付いているのに
室内にはない
俺たちの付けた足跡だけだ
それは犯人が靴を脱いだからに
決まっとるだろう
え？あ　まあ　そうですけど
これは美雪のだ
こっちに何か引きずったような
跡があるぞ
ここから京極さんを連れ
どこかへ
よし　追いかけよう　今なら
犯人は遠くには行ってないはずだ
美雪
美雪　美雪
美雪　美雪
兄貴
七瀬さん
クッソー　もう足跡が
見えなくなってる
金田一君　手分けして捜そう
はい
京極さん　七瀬さん
兄貴
美雪
美雪
兄貴
おーい　七瀬君　京極君
七瀬さーん
美雪
美雪　美雪
美雪　大丈夫か？
しっかりしろ　美雪
は…　はじめちゃん
来てくれたんだ
ああ　もう大丈夫だからな
ごめん　私　犯人の顔
分からなかった
そんな事　いいんだ
美雪が無事なら
さ　行くぞ
しっかり　つかまってろ
しめた　コテージだ
１０６号室だ
誰も居ないはずなのに
美雪　ここで　ちょっと
待っててくれ
どうしたってんだ？これは
きょ…　京極優介
死の天使
なんて事だ　何人殺せば
気が済むんだ　死の天使は
自殺した静歌さんとやらに
聞いてみたら？
彼女に気があった男は
１人　また１人　殺されていくのよ
どうだね？七瀬君は
え？
あ　ええ　幸い
ケガはありませんでした
どうやら犯人は　顔を見られそうになって七瀬君を襲ったようだ
ま　彼女には
殺意がなかったということだ
おそらくそうですね
それで　長島さん
京極優介の死因は
分かりましたか？
あ？何で　お前に　そんな事
報告せにゃならん
そうですけど
こんな事件は早くケリをつけたい
ま　捜査に協力する気なら
話してやらんでもないぞ
素人探偵の力なんか
借りたかないが
そこそこの推理力と
実績がある事だけは認めてやろう
それは　どうも
うん
まず　ゆうべ　冷凍室で発見
された京極拓弥についてだが
死因は凍死ではなく撲殺だった
つまり　死の天使を名乗る犯人は
自殺した如月静歌との因縁を
印象づけるために
わざと遺体を冷凍室に運び
凍死に見せかけたんだろう
俺が最後に冷凍室を見たのは
４時ちょうどぐらいで
その時は何の異変もなかった
美雪が死体を発見したのは
その３０分後だ
ということは
死体が運び込まれたのは
４時から４時３０分の間と
いうことか
取り調べの結果によると
その時刻　オーナーの青山と
島崎薫にはアリバイが成立するな
え　アリバイ？
青山さんと薫さんに？
ああ　青山のバンが
ぬかるみにハマって
島崎薫が
車を出すのを手伝っていた
残る二宮水穂　笹本美華
京極浩二郎
この３人には
その時刻のアリバイはない
しかし　間違いなくシロだ
というと？
京極兄弟を殺した犯人は
残したメッセージを見ても
筆跡や　その手口からして
まず　同一人物だろうし
となると　今のところ
彼らは全員
優介殺しに関して
アリバイがあるからな
あの５人は　全員
本館のロビーに居た
そのあと　我々がこの１０４号室に
駆けつけるまでの　わずかな間に
犯人は京極優介を連れて
逃げ出している
あの５人に　そんな事が
できるはずもない
あの異常な飾りつけから見ても
犯人は京極家に
怨念を抱いた変質者だ
それと　殺された拓弥の荷物の中にこれが隠してあった
手紙ですか？
驚くな
自殺した如月静歌が書いた
手紙だよ
ええ？
まったく意外と言うほかないよ
如月静歌には　誰にも想像
しえなかった秘密があったんだ
秘密？
ま　読んでみろよ
ああ　はい
長島警部
ん？あ　どうだった？
いやいや
ああいうレベルの人間の
考える事は分かりませんね　警部
どうしたんだ？
あの三兄弟の父親
京極病院の院長が
長男の優介の遺体だけ
引き取りを拒否したんです
そりゃ　どういう事だ？
優介は自分の方から
父親と絶縁したんで　京極病院の
跡取りの座を失っていたようです
と同時に　笹本美華との婚約を
破談にしたんです
ところが　笹本美華は　どうしても
京極大病院の院長夫人の座が
欲しかった
それで　望みのなくなった優介から
ちゃっかりと　浩二郎に
くら替えしたとか
とにかく　長男の優介と
三男の拓弥が亡くなった今
跡取りは自動的に　次男の
浩二郎に決まったってわけですよ
そうか　浩二郎が
京極病院の跡取りに
あの時　確かに５人とも
このロビーに居た
確かこれは　コテージから
電話を受ける親機ってやつだよな
ん？モジュラージャックが
抜けてる
という事は
はじめちゃん
美雪　大丈夫なのか？起きてて
心配かけちゃったね
本当だぞ
１人で優介さんの後　つけたりしてごめん
ねえ　これ見て
え？腕時計　これ　美雪のだろ？
そう
それが不思議なの
昨日　優介さんの後をつけた時
林の中に落としたと思ってたのに
なのに今朝　枕元に置いてあったの
枕元に？
誰が置いたのか分からないの
あの時　林に居たのは
私を襲った犯人でしょ
まさか犯人が拾って　わざわざ
届けてくれたってわけはないし
そうか　もしかしたら
いや　そうだ　たぶん
どうしたの？はじめちゃん
私の時計が何かヒントに？
ああ　分からないのは
あと１つだけだ
京極優介は　なぜ自分が
監禁されている場所が
１０４号室だと分かったんだろう？
あら　それなら簡単よ
あのツリーよ
ツリー？
窓の外にバレンタインの
ツリーが見えたからだわ
あのツリーが見えるのは
１０４号室だけでしょ
だから　すぐに分かったのよ
そうか　そうだったのか
分かったぞ　犯人の仕組んだ
アリバイ・トリックが
死の天使の正体もな
死の天使の？
謎は　すべて解けた
これから　ここ　京極優介さんの
遺体が発見された１０６号室で
この事件の犯人を明らかにする
ええ？
何だって
あ　兄を殺した犯人を？
何よ　それ　あの兄弟を殺したのは死の天使を名乗る変質者でしょ？
変質者なんかじゃないよ
長い時間をかけてワナを仕組み
それをやり遂げた頭のいい人物だ
そして　その人物は
意外なほど身近に居たんだ
え？
み　身近に？
本当か　お前？
ああ　京極拓弥　優介
２人を殺害した犯人
死の天使は　この中に居る
何だって？
死の天使が
あたしたちの中に
そんなバカな
少なくとも　兄の件に関して
俺たちは全員　犯人ではあり得ない
そうとも　犯人が京極優介さんを
１０４号室から連れ出した時
俺たちは皆　一緒に居た
完璧なアリバイがある
確かに　あの状態で
この中の誰かが
優介さんを連れて逃げるのは
不可能だろう
本当に　あの時　優介さんが
連れ出されていたとしたらね
それは　どういう事だ？
優介さんが監禁されていたのは
実は　モミの木にツリーを飾った
１０４号室なんかじゃ
なかったのさ
彼の死体が発見された
この１０６号室だったんだ
つまり優介さんは　最初から　この
１０６号室に
監禁されていたんだよ
な　何ですって？
そりゃ変だよ　金田一君
１０４号室には　彼が監禁されて
いたらしい跡や　犯人の足跡も
それは　私や長島警部さんたちと
一緒だった君は
よく知っているはずじゃないか
確かに　そのとおりだ
しかし　すべては
昼間のうちに　犯人が
やっておいた工作さ
１０４号室内部に犯人の足跡が
なかった事が　それを証明している
どういう事だ？
よく思い出してくださいよ
外の　ぬかるみには
堂々と足跡を残していた犯人が
室内で　わざわざ靴を脱いで
足跡を残していなかった　なぜか
室内へ昼間のうちに
足跡を付けておいたら
時間がたつと白く乾いてしまう
たった今　部屋を出た犯人の
足跡にしちゃ
これほど不自然なものはない
だから　犯人は
室内では靴を脱いで
作業するしかなかったんだ
じゃ　この中の誰かが優介さんを？
おい　金田一とやら
お前は肝心な事を忘れているぞ
兄貴は確かに自分で「１０４号室に
監禁されている」と言ったはずだ
そうよ　そう言ったわ
ここ…
ここは１０４号室だ
彼は　あるトリックによって
そう思い込まされていたんだよ
あるトリック？
ここのコテージの内装は
どれもほとんど同じで
中からは区別できない
だが　しかし　１０４号室だけは
窓から名物のツリーが
見られるので
バレンタインシーズンには
人気の部屋なんだ
バレンタインに何回も　よく
来ている　京極さんたち兄弟は
この事をよく知っていたはずだ
あ！
犯人に襲われた優介さんが
昨日の夕方６時ごろ目を覚ますと
ああ
な　何だ
どうしようってんだ　金田一
これですよ　まあ　見てください
ああ
こ　これは
そんなバカな　なんで
この１０６号室の前にツリーが
そう　優介さんも
ツリーだと思ったんだ
だから　自分の居場所を
ツリーのある１０４号室だと
錯覚してしまったんだ
でも　こいつは
ツリーなんかじゃない
あ
あ
電柱
犯人は　夜になると
この電柱の電飾が光るように
タイマーをセットしておいた
そして
窓に　こうやって
白いスプレーを吹きつけ
すりガラス状にして
光を乱反射させ
本物のツリーがそこに
あるかのように見せかけたのさ
つまり　この京極優介殺害事件の
全貌は　こうだ
昼間のうちに１０４号室を
荒らしておいた犯人は
夕方　麻酔を嗅がせた優介さんを
１０６号室に手足を縛って監禁
目を覚ました優介さんは
犯人が仕組んだ偽のツリーを見て
自分は１０４号室に居ると
錯覚した
そして犯人の思惑どおり
優介さんは
俺たちに電話で連絡した
「１０４号室に居る」とね
そうやって　自分のアリバイを
完璧に作り上げたあと
犯人は騒ぎが収まった深夜
１０６号室に戻って
優介さんを殺害したんだ
犯人が　わざと室内をモールや
金銀のラメで　メチャクチャに
飾りつけをしたのは
白いスプレーが窓や壁に付いて
汚れたように見えても
不自然ではない状況を
作り上げるためだったんだ
それに　偽のツリーに使った電飾も
優介さんの体に巻きつけて
始末できるからね
しかも　この異常な飾りつけに
よって　この事件の犯行は
外部の変質者のものであると
印象づける事に成功したのさ
なんてこった　あの
メチャクチャなデコレーションが
それじゃ　ここに居る全員に
アリバイがなくなったって事か
そういう事です
そ　それで金田一
お前には犯人が
分かっているのか？
ああ　ここまで周到な
準備をしてきた犯人だが
思わぬ一言でボロを出した
昨日　あの混乱した状況の中で
矛盾した発言をした人物がいる
この中で　たった１人だけね
ええ
この中に
たった１人
それは　あんただよ
京極優介　そして拓弥を
殺害した真犯人
あんたが死の天使だ
抜けていた電話のコード
荒らされた１０４号室
優介の体に巻きつけられた
異常なデコレーション
死の天使　あんたの仕組んだ
トリックは確かに巧妙だったよ
しかし　その巧妙さが
墓穴を掘ったぜ
そして　如月静歌の
手紙に残された
京極三兄弟との秘められた過去
今　明かされる
死の天使の犯行の動機
金田一少年の事件簿…
めっちゃ素敵な
バレンタインデーを過ごすため
美雪と２人でやってきたコテージ
「スノーキャンドル」
しかし　聖なる夜に舞い降りたのは
死の天使だった
お前は一体　誰だ？
如月静歌の名を利用して
宿泊客を恐怖に陥れていく
死の天使
お前は　きっと　この中にいる
それを　これから
この俺が暴いてやる
じっちゃんの名に　かけて
昨日　あの混乱した状況の中で
矛盾した発言をした人物がいる
この中で　たった１人だけね
たった１人…
それは　あんただよ
京極優介　そして拓弥を
殺害した真犯人
あんたが死の天使だ
なに？二宮水穂
水穂さんが？でも　どうして…
昨日５時頃　あんたは
優介さんを呼び出し　気絶させた
そして　偽ツリーのある
この１０６号室に監禁し
薬を嗅がせて暗くなってから
気付くようにしておいた
そして６時頃　あんたの思惑どおり目を覚ました優介さんは
電話を掛けてきた
そして彼が俺に
１０４号室にいると告げたのを
見計らって
優介さん　大丈夫ですか？
優介さん
それ以上　優介さんが余計なことをしゃべれないようにしてしまった
そして抜けやすく細工してあった
コードを引き抜き
優介さんが再び電話を
掛けられないようにしたのさ
ヤダ　そんなの偶然
抜けたのかもしれないでしょ
そんなことで　私が犯人なの？
それだけじゃない
あんたは昨日　うっかり
口にしてしまったんだよ
こ…　ここです
ツリーがある所よ
ほら　チカチカ光る
ここのツリーのライトは
夕方５時から
光りだすようになってる
ところが昨日は　あんたも俺たちも全員４時半から
ずっと本館で警察を待ってて
外に出なかった
つまり　誰もツリーが光るのを
見てなかったんだ
なのに　なぜ　このコテージに
初めて来たはずのあんたが
ツリーのライトがチカチカ光ると
さも　見てきたかのように
言えたんだ？
点滅しない　ただ光るだけの
ライトだってあるはずさ
あのとき　私　トイレのついでに
ちょっと外の空気を吸いに行って
そのとき見たのよ
あのツリーがチカチカ光ってるの
墓穴を掘ったね
え？
今の言葉が完全に証明したぜ
あんたが犯人だと
あんたは昨日　ここのツリーが
光ってるとこを
絶対に見ることは
できなかったんだ
なぜなら　あのツリーのライトは
ある理由で俺が昼間のうちに
全部　外しちまったんだからね
えっ？
そういえば京極優介を
助けに行ったとき
１０４号室のツリーが
光っていた覚えはないぞ
ツリーは消えてたんだ
あんたは　おそらく
下見に　やってきたんだ
そのとき見たツリーのイメージを
つい　口にしてしまったのさ
そんな　人の揚げ足ばかり
証拠もある
え？
その靴の中にね
靴の中って…
死体が発見された
ここ　１０６号室で犯人は
靴を脱いで作業していた
考えてみてくれ
部屋の飾り付けには金銀のラメが
たくさん使われていた
１度　使ってみれば分かるけど
あのラメってやつは
よく払い落したつもりでも
残ってたりするものなんだ
つまり犯人のソックスや
ストッキングに　くっついて
入り込んだままになってたラメが
靴の中に残っている可能性は
十分あるってことさ
水穂さん　今ここで
靴を脱いでみてくれませんか？
あんたが犯人でないなら
ラメなんて入ってるわけがない
もし　ラメが入ってたら
入っていないようね
次は反対の靴を
見ればいいのかしら
ラメだ
ということは…
姉の償いを
あの２人にさせただけよ
姉？
じゃ　あなたは…
如月静歌は私の最愛の姉よ
この子は…　水穂は
何にも悪くない！
悪いのは　あいつらよ
あいつらが…　あの兄弟が
薫さん？
君たちは一体…
薫さんと彼女は初対面じゃない
ええ？
俺が最初に　そう感じたのは
あのときだ
誰なんだ？死の天使ってのは
し…　知るか　俺は何も
ああ…　私たちだって知らないわ
水穂さんのことは
何も知らないはずなのに
なぜ「私たち」って断言するのか
２人は知り合いなんじゃないか
その疑いを確信に変えたものは
これだ
これは美雪の時計だ
美雪のイニシャル
ＭＮが付いてる
京極拓弥の遺体を発見したとき
美雪は　これを冷凍室に
落としてしまったんだ
冷凍室に？
ところが　あのとき
これを見つけた薫さんは焦った
イニシャルＭＮは
二宮水穂だと思い込んだんだ
薫さんは水穂さんが
京極拓弥を運んだとき
時計を落としたと勘違いし
彼女をかばうため
急いで拾って隠したんだよ
それじゃあ　２人は共犯
京極兄弟殺害は
２人でやったことだと言うのか
いや　少なくとも　拓弥が
冷凍室に運び込まれたとき
薫さんは青山さんといて
アリバイがある
それに　この時計は
美雪のものだと
あとで気付いた薫さんが
わざわざ返してくれたものだ
これは俺の想像だけど　薫さんは
彼女を懸命に止めようと
していたんじゃないのかな
そうよ　全部　私が
１人でしたことよ
水穂
薫さんは姉の親友だったの
１２年前　両親を亡くした私たちは
ある施設で暮らしてた
そこに薫さんもいたの
あれも２月１４日　私の誕生日
バレンタインデーだった
その日　私だけ
引き取られることになって
どうして泣くの？みっちゃん
このほうがいいの
幸せになれるの
みっちゃんが幸せなら
お姉ちゃんも幸せなの
いや　お姉ちゃんと
一緒じゃなきゃ　いや
水穂　お姉ちゃんと一緒がいい
いつか大人になったら
一緒に暮らそう
約束するから
１０年間　私は夢見てた
高校を卒業したら
２人で一緒に暮らそうって
なのに　あれは卒業を
目前にした冬だった
えっ？自殺？
静歌…　静歌が
薫さんは受話器の向こうで
しきりに　京極の名を口にしてた
私は姉を自殺に追い込んだ男が
どうしても許せなかった
見た？さっき　姉さんの写真を
見たときの３人の顔
もっと追い詰めてやる
そして計画を
水穂
殺すなんて　やめて　お願い
私　あなたのためなら
どんなことでもする
本当の妹だと思ってる
だから　お願い
帰って
薫さんまで巻き込みたくない
帰って
お？すいません
ちょっと手伝って　もらえませんかタイヤがハマっちまって
兄貴を殺す計画ねえ
なかなかユニークだ
しかし　残念だったな
あと一歩のところでバレちまって
何なら俺が手伝ってやろうか？
本気なの？
ああ　本気さ
１つ聞いていい？
何だ
姉さんの留守電　なぜ　あなたが？
ああ　お前も聞いたのか？
暇つぶしの　いたずらだよ
俺は欲しいものは何でも
手に入れるタチでね
多少のことならオヤジが
もみ消してくれる
あの日　俺は静歌の部屋に
忍び込んで待ち伏せしてた
だが　あんたの姉さんは
とうとう帰ってこなかったんだな
そのまま死んじまったってわけさ
何て人なの
いやあ
偶然ってのは恐ろしいね
多分　そんなことだろうとは
思ってたけど
俺の言ったとおりに
なってるなんてな
お前のたくらみは
バラさないでいてやる
その代わり一生
俺の言いなりになるんだな
あなた　自分の兄弟の命が
狙われてるっていうのに
よく　そんな…
それが　どうした？
あんなヤツ
それを聞いて安心したわ
希望どおり手伝ってもらうわ
あとは　あなたの推理したとおりよ拓弥を冷凍室に押し込んで
気絶させた優介を
１０６号室に運んだ
１年掛かりで計画したことを
実行に移した
水穂さん　この遺書も
あんたのものだよな
そうよ　荷物が荒らされてた
あの拓弥っていうヤツ
ただのお調子者だけど
勘は鋭いわね
それをネタにゆすってきたのね
しかし　どうして
こんなことまでして
その遺書を読む限りじゃ
姉は　もともと　そんなに
体が丈夫なほうではなかったの
以前　こんなことも言ってたわ
夜中に突然　苦しくなって
とにかく大きな病院へ
行ったことがあるんだって
何だよ　こんな夜中に
何か理由付けて
よそへ行ってもらえよ
診療拒否か
でも　その日は
どこにも行かなかったの
すぐに　また元通りの生活に
戻っていった
いいえ　さらに無理を続けたの
そして　気が付いたときには　もう
取り返しのつかない
体になっていた
京極優介に出会ったのも
そんなときだったと思うわ
「みっちゃん　１０年以上も
あなたと一緒に暮らす日を
夢見てきました」
「でも　すべては運命なのです」
「私に死の病を与えたのは
神様なのだから」
死の病？
「優介さんと出会ったのも
バレンタインデーだった」
何を考えてたの？
妹のこと
今日バレンタインは妹の誕生日
１０年間会えなかった
でも心は１日も離れなかった
来年こそはバレンタインの日に
妹と２人で
誕生日を祝ってあげようと
小さな頃の約束だから
「２人の出会いは
まるで奇跡のようだった」
「私と優介さんの心は
急速に寄り添っていったの」
「どちらからともなく
今までの生き方や
これからを語り合っていた」
「それからは残された日々を
いとおしむように
私たちは過ごした」
「優介さんは美華さんとの
婚約を解消し
お父さんとも絶縁した」
「でも　段々　怖くなっていった」
「これ以上　一緒にいたら
優介さんは何もかも捨ててしまう」
「輝かしい未来も
やがて誰かと築くはずの幸せも」
「そして　私の死期も
そこまで迫ってきていた」
「だから　旅立つことにしました」
「さよなら　みっちゃん」
「結局　約束は果たせそうに
ないけど…　ごめんね」
「でも　私は忘れない
あなたがいたから
私は　ここまで
生きてこれたってことを」
「そして　あなたの誕生日
２月１４日
聖バレンタインの日を」
でも　薫さんの電話で
京極の名を聞いて以来
ずっと引っ掛かることがあった
そう　あの夜　姉さんを
追い返した病院
それが京極病院だった
何だって？
私は姉さんが京極病院に
行った日のことを調べて回った
何だか何もしていないと
毎日が　とてもつらくて
耐えられなくて
患者の家族のフリをしてみたり
関係者を装ってみたり
受付で記録を見せてもらったり
ナースステーションにも
顔を出したりもした
無理やり自分で
そんな仕事を作って
やり場のない気持ちを
落ち着かせようとしていたの
でも　何でもいいから
やってみるものね
それで　あることが分かった
あの夜　姉さんを
追っ払った当直医は
他でもない　京極優介だったのよ
皮肉なものね　京極優介が
熱を上げてた女性は
以前　自分が顔も見ないで
追い返した姉さんだったのよ
あのとき　あの夜　姉さんを
診ててくれてさえいれば
少しは…　少しは
違ってたんじゃないかって
悔しかった
命を削るようにして妹を愛して
目の前にいる男を愛して
どうして姉さんだけが…
この違いは　なあに？
地位や色んなものに守られて
今も　のうのうと生きてる
京極優介との違いは
一体　何なの？
体が焼けるような悔しさだった
悔しくて悔しくて自分が
別の何かに変わっていったわ
死の天使になって
恨みを晴らしてやる
そして　こいつら全員に
思い知らせてやる
そう思ったのよ
京極優介が如月静歌の
診察を拒否した夜から
この事件は　すでに
始まっていたということか
そうさ　そのとおりだ
確かに兄貴は…　いや
俺たち兄弟は似た者同士さ
兄貴だって軽い気持ちで
静歌に近づいていったのさ
飽きたら別の子を探す
はー　またやってるなんて
俺も思ったよ
だから　静歌のことでオヤジから
縁を切られる話になったとき
もうやめときゃ　よかったのさ
ただ…
ただ　何だ？
兄貴は静歌が死ぬ直前まで
病気のことは知らなかったのさ
静歌の体を気遣って
検査を受けさせたのは
兄貴だったんだよ
兄貴
それって？
兄貴は
静歌が助からないと
分かったからこそ
指輪を渡しに行ったんだよ
それが兄貴にとっては
精一杯の…
精一杯の…
君を決して忘れない
これからも君とずっと一緒だ
何にもできない　この僕を
無力な　この僕を許してくれ
来てくれたんだね
やっと　一緒に…
こ…　これで　やっと
水穂
ほら　優介さんが美雪に言った言葉
え？
みんなに伝えてくれないか
拓弥を殺したのは俺だ
優介さんは水穂さんが
静歌さんの妹だって
きっと気付いてたんだよ
だから　自分が
罪をかぶろうと思って
俺たちに助けを求めたのも
水穂さんに罪を重ねさせたく
なかったんじゃないのかなって
優介さんなりに
償い方を悩んでたのね
ああ
でも　はじめちゃん　靴の中から
たまたまラメが出てきたから
よかったけど
もし　出てこなかったら
どうしてたの？
ああ？マグレなわけねえじゃん
へ？
これを　ちょいちょいーってね
わっ　あ…　あきれた
優介さん　静歌さんに
きっと会えるわよね
さあな
はじめちゃんも
いつか　そんな人に
巡り会うのかな
あ？
ううん　何でもない
なーに１人で赤くなってんだよ
知らなーい　はじめちゃんなんか
小学生のとき私のチョコレート
マズイって言ったくせに
２度と　こんなものくれるなーって
違うよ　あのときホントは
別のこと言おうと思ってたんだよ
ええ？ウソ！
まあ　来てみなって
ほら
あ…　ああ
なっ
ったく　あいつら
どこ行っちまったんだよ？
おーい　金田一…
ん？
かーっ　若いねえ
あ…　ヤボ　ヤボとやら
こんな簡単なこと
もっと早く言えばよかったのにな
何となく　その…
ううん
はじめちゃん　忘れないで
今日のバレンタイン
大人になっても
あ…　ああ
ありがとう　はじめちゃん
フミ　フリーマーケットで
そんなに稼いで　どうすんだよ？
貯金？しっかりしてんなあ　フミ
フミ？フミ！
なに？銀行強盗が逃げた？
現場に片方だけ残ったフミの靴？
大変だ　おっさん
フミが強盗に誘拐されちまった
ええ？カーテン？クイズ？
一体　何を？
そうか　分かったぞ
これはフミからのメッセージだ
金田一少年の事件簿…﻿さあ　いらはい　いらはい
安いよ　安いよ
とってもお買い得
ねえねえ　ちょいと見てって
見てって　買ってって
とってもステキなお姉ちゃんたち
まあ
可愛らしい売り子さんね
ありがとうございました
おありがとうございます
さあ　寄ってらっしゃい
見てらっしゃい
掘り出し物がそろってますよ
いらっしゃいませ
これ見せて
イッツ　サプライズ
なんてお目が高い
フフフ…　お上手ね
ふふん
よかったね　フミちゃん
お父さんのコテージで使ってた
備品　ほとんど売れたじゃない
うん　美雪お姉ちゃんが
手伝ってくれたおかげよ
ありがとう
俺も手伝ったんだけど
あんがと
じゃ　手伝い料として半分…
誰がやるか
やっぱり
これは貯金に回す分
ちゃんと後で手伝った分
メシおごってやるよ
おほっ　やった
てなわけで…
銀行にお金預けに行ってきます
じゃ　私たち　ここで待ってるわね
何かあったらさ　じゃん
このフミちゃんの
ノラエホンに電話してね
電話番号は…
分かってるって
さっさと行ってこいよ
はーい　じゃねー
ホント　フミちゃん
しっかりしてるわね
しっかりしてると言うか
ちゃっかりしてると言うか
まったく
ふんふんふんふん　ふふふふん
ここが銀行への近道なんだよね
ふふふふん…
うっ　くっ…　チッ　クソッ
ひゃっ…
はっ？
見たな
うん？
フミちゃん　遅いわね
あんにゃろ
どこ　ほっつき歩いてんだか
どうしたんだろう
あっ
警察は　どうしたんだ
まだ来ないんですか？
何だろう
銀行の前に人だかり…
何かあったんすか？
ついさっき
銀行強盗があったんですって
ええっ
犯人は裏口から逃げたってさ
銀行…　強盗…
はじめちゃん　こっち　見て
あれはフミの靴
やっぱり　これ…
片方だけ残ったフミの靴
何か引きずったような跡
そして裏口から逃げた銀行強盗
はじめちゃん
まさか…
うう…　ここは？
うっ　口が…　何？
どうなってんの？んっ
あっ　あのオヤジ
そうか　私　あの時　銀行の
裏口から出てきたこのオヤジに
いきなり口をふさがれて…
ちょっと待って
銀行の裏口から逃げるように
出てくる　やばそうな人って
もしかして　もしかして…
あー　やっぱり
お札がぎっしり詰まってるよ
私　銀行強盗の顔
見ちゃったんだ
このままじゃ
口封じに殺されちまう
何だって？
フミちゃんが銀行強盗に？
ああ　フミの靴が銀行の裏口に
転がってた
恐らく偶然　犯人の顔を
見てしまったんだ
早く見つけねえとフミが危ない
全捜査員に人質のことを伝えろ
犯人を刺激しすぎないように
気をつけろとな
はっ
それと　おっさん
フミを追跡する方法があるんだ
何？
フミちゃん
ノラエホンを持ってるんです
ノラエホン？何だ　そりゃ
新しいＰＨＳさ
あちこちに設置された
基地局を利用して
半径１００メートルまで居場所を
特定できる機能が付いてるんだ
なるほど
電波発信機みたいなもんだろう
ああ　迷子になった時
見つけられるように
親が子どもに持たせたりするんだ
よーし　そいつは使える
それで犯人の足どりを
追いかけよう
さっきからビルとか
アパートとかばっかだ
何か場所を特定できそうな物は…
あっ　この車
カーナビ付いてんじゃん
よっしゃ　これをばっちり
チェックしてれば犯人のアジト…
あっ…
ああっ
ノラエホンの動きが止まりました
天元町２丁目付近です
フミはこの町のどこかに…
でも　どうやって調べるの？
この地図で見ると
結構　建て込んでるみたいだけど
うーん　しらみ潰しに
調べるしかないな
警官とパトカーを総動員して…
うん？
私のピッチだわ
もしかして…
ええっ
もしもし
美雪お姉ちゃん　私
フミちゃん
何？
無事だったのね
はじめちゃんに代わるね
フミ　今どこにいるんだ
ここは２階建ての
木造ボロアパートの２階だよ
私をさらった男の車の
カーナビ見てたから
場所は　だいたい分かるんだ
どこだ？
ここは…　あっ　やばい
あいつ戻ってきた
おい　どうした　フミ
はじめちゃん
お嬢ちゃん　あんまり
窓のほうには近づくなよ
うん
金田一
フミちゃんは　どうしたんだ？
悪いが
しばらく　おとなしくしてもらうよお嬢ちゃん
もし騒いだら死んでもらうからね
うん　分かった
言うとおりにするよ
よーし　いい子だ
おい　金田一
フミちゃん
どうして電話に出ないの？
まさか…
いや　まだ無事だ
どうやら自分のノラエホンを
通話状態のまま
部屋のどこかに隠しているらしい
うーん　よーし
こうしちゃいられないぞ
とにかく一刻も早く
犯人のアジトの
２階建て木造ボロアパートを
捜すんだ
はっ
ヘリも飛ばせ　大至急だ
はい
剣持警部　犯人の妻だという女性が
出頭してきました
何だと？
テレビで流された銀行内の
ビデオカメラの映像を見て
自分の夫に間違いないと
緊急情報　緊急情報
誘拐犯人の名は相馬敦士
繰り返す　犯人の名は相馬敦士
もう夕日が差してきてる
一体いつになったら助けが…
あっ　そうだ
ねえねえ　おじさん
何だ？
カーテン閉めてよ
私　まぶしいの嫌いなんだ
ええっ　しょうのないやつだな
おじさん　退屈だから
私とクイズしない？
クイズ？
今　学校で　はやってるんだ
じゃあ　私から問題出すね
あ…　ああ
えっとね　ほかほか温かくて
とてもおいしいんだけど
コレを取ると冷たくて
味がしなくなるもの　なーんだ？
えっ？おいしくて
味がしなくなるもの…
同じパターンで　全身毛だらけで
走り回るのが好きなものが
コレを取ると大きくなっちゃうの
こんな時にクイズ？
フミちゃん　何考えてんの？
いや　さっきのカーテンといい
クイズの答えであるコレといい
フミの俺たちへのメッセージに違いないメッセージ？
フミなりに自分の居場所を
教えようとしてるんだ
警部　ヘリから連絡が来ました
天元町２丁目周辺で
木造２階建ての古いアパートは
４棟ありました
よし
Ａの１２番地の木造アパートは
３０階建ての赤坂ビルの
真ん前にあり　窓は西向き
２階は４部屋あり　左２つだけ
カーテンが掛かっています
Ｂは５番地　サテライトタワービル近くの木造アパートは２階が塾で
窓はすべて南向き
暗幕が下りてます
Ｃは６番地　天元病院そばの
木造アパートは西向き
２階は３部屋
すべてカーテンは掛かってません
Ｄの９番地の木造アパートは
マックスビル　最近できた
鏡張りの１２階建てのビル近く
窓は東向きで２階の真ん中の
部屋のみ　カーテンが掛かってます
Ａ　Ｂ　Ｃ　Ｄ
この４つのアパートのどれかに
フミと犯人がいる
どうやら　その相馬って犯人はな
この不況で借金がかさんで
３千万の不渡りを
出しそうになったらしいんだ
奥さんの話では
普段は責任感があって
従業員からも慕われている
優しい男だったそうです
よほど切羽詰まってたんだろう
取り返しのつかないことに
ならなきゃいいが
うーん　毛むくじゃらで
大きくなるもの
うーん　シーモンキーかな？
ブー　違いまーす
うん？それじゃあ…
あっ
何だ　これは？
しまった
気づかれたか？
お前　まさか
これを使って警察に？
もう殺すしかないのか…
は…　早く来てよ　バカ
クッソー
はじめちゃん
フミちゃん　大丈夫だよね
連絡が途切れたからって
まだきっと…
菅原　各捜査班に連絡だ
ああ
人質の少女は
極めて危険な状態にある
犯人を刺激せぬよう
早期発見を請うとな
はっ
「カーテン閉めてよ」
「私　まぶしいの嫌いなんだ」
まぶしい？
「ほかほか温かくて
とてもおいしいんだけど」
「コレを取ると冷たくて
味がしなくなるもの　なーんだ？」
コレを取る？
そうか　そういうことか
えっ
はじめちゃん
分かったぜ　フミの居場所が
何だと？
謎は　すべて解けた
ど…　どこだ？金田一
フミちゃんは
どのアパートに監禁されてるの？
フミが犯人に　いや俺たちに送ったクイズのメッセージ
その答えが監禁されてるアパートの
地図上の位置を知らせてるんだ
ええっ
クイズの答え
それは丼の点さ
丼の点？
何のことだ
丼という字の点を取ると井戸の井
水は冷たくて味なんかしないだろ
ほかほか温かくて
とてもおいしいけど
コレを取ると冷たくて
味がしなくなる
なるほど
同じ原理で
走るのが好きな犬は点を取ると
大という字になってしまうんだ
ああ
全身毛だらけで
走り回るのが好きなものが
コレを取ると大きくなる
確かに点に間違いない
だが　その答えで
なぜアパートの場所が分かる？
カーナビさ
カーナビ？
フミは犯人の車の
カーナビの地図を見て
自分が連れてこられた道の形から
丼の点に当たる場所だと
知ったんだ
あっ
道の形？
その条件に当てはまるのは
赤坂ビルの近くにある
Ａアパートと
マックスビルの近くにある
Ｄアパートの２つに絞られる
ホントだ
そしてフミはもう１つ
俺たちにメッセージを送った
「カーテン閉めてよ」
「私　まぶしいの嫌いなの」
あっ　西日が差してるってことね
つまり窓は西側にあるんだわ
そうか
Ｄのアパートの窓は東向きだから
フミちゃんがいるのは　窓が
西向きにある　このＡのアパートか
違うんだ　フミが監禁されてるのはＡのアパートじゃない
東向きのＤのアパートなんだ
何？
で…　でも東向きじゃ
夕日なんて見えませんよ
はじめちゃん
本当にＤのアパートでいいの？
もし間違ってたら
フミちゃんの命は…
おっさん　もうこれ以上
説明してる暇はない
俺の推理を信じてくれ
ああっ　うーん
よし　分かった
大至急　Ｄのアパートへ向かうぞ
はっ
全車　天元町２丁目９番地
マックスビル近くの
Ｄのアパートに急行せよ
おっさん　犯人の奥さんたちに
連絡を取ってくれ
分かった
ああっ　やばい　やばすぎる
おっさんの目がマジだ
こんな大ピンチの時
マンガだったら
カッコよくヒーローが
助けに来てくれるのに
た…　助けに来て
は…　はじめー
警察だ　開けろ　相馬敦士　貴様が
そこにいるのは分かってるんだ
フミ　無事か？
フミちゃん
ここにいるよ
フミちゃん
フミ
フミちゃん
間に合った
開けるんだ
相馬敦士
ムダな抵抗は　やめて出てこい
うるさい
ああ…
フミ　どうした？
動くな
いいか
そのドアを少しでも開けてみろ
この子どもの命はないぞ
フミちゃん
この金は　どうしても必要なんだ
こいつがないと　うちの会社は…
あなた　お願い
これ以上　罪を重ねるのは　やめて
た…　妙子
どうして　お前が　ここに？
あたしだけじゃないわ
会社の人たちも　みんな来てるのよ
何だって？
社長　俺たちのために
社長が　こんなことするなんて
やめてください　社長
帰れ
お前たちが　こんな所に来るな
あなた…
社長　聞いてくれよ
俺たちが今まで何をしていたか
３千万の不渡りが
出るかもしれないって聞いて
みんなで資金調達に
走り回ってたんです
何？
みんな会社のために
一生懸命　頑張ってるんですよ
俺たち　社長や奥さんが好きだから
みんな
今まで　つらいことがあっても
励まし合ってきたじゃないですか
分かってくれよ
あなた　みんなの気持ちを
大事にして　だから…
社長　もうこれ以上　無茶は…
社長
社長
警部　合い鍵です
遅いぞ
すみません
相馬　子どもを放せ…
フミ
うあああ…
すまない　お嬢ちゃん
みんな　すまない
俺は…　俺は…
あなた　またやり直しましょう
そうだよ
頑張ろうよ　社長
す…　すまない　すまん
よく頑張ったな　フミ
ホント　よく頑張ったわ
ああ
バカ　お前が来るのが遅かったから
私のお気に入りのノラエホン
壊れちゃったじゃないか
ああっ　あんなもん
フリーマーケットで儲けたんだから
また買えばいいじゃんか
ったく…
何があったんだ　ええっ
何があったんだ　捕まってるよ
すみません　下がってください
何したんだろう
社員の人たちに説得してもらう
アイデア　うまくいったわね
だが犯人が
もっと凶暴なやつだったら
逆上して　とんでもないことに
なってたぞ
けど　あの奥さんの話じゃ
そんなに悪い人には思えなくてさ
うん
本当に凶暴なやつだったら
とっくの昔にフミは…
はじめちゃん
どうしてフミちゃんの居場所が
このアパートって分かったの？
そうだ
フミちゃんのメッセージだと　窓から
夕日が差し込んでるはずだが
このアパートは東向きに窓がある
夕日なんて差し込むはずがない
そうよね　だから西向きの
Ａアパートに
フミちゃんがいると思ったわ
いや　Ａのアパートからじゃ
夕日は絶対　見えないんだ
えっ？
どういうことだ
ほら　地図をよく思い出してみてよ地図？
Ａのアパートの西側に
何があった？
何って…
確か赤坂ビルが…　あっ
そう　Ａのアパートの西側
真ん前には
３０階建ての高層ビルが
立ちふさがっていて
夕日なんて見えるはずないんだ
それじゃ　どうして　この東向きの
アパートから夕日が？
それは　フミが「まぶしいから
カーテン閉めてよ」って
言ってたことから推理したら
すぐ分かったよ
そもそも人質を監禁している
部屋のカーテンを
開けっ放しにするなんて
犯人の心理からすれば
不自然じゃないか
ああ　そう言われれば…
となると考えられるのは
そのアパートの窓が
カーテンが開いてても
外から見られる心配のない
曇りガラスってことさ
ああっ
そして　曇りガラスの向こうには
沈みゆく夕日を映した鏡張りの
マックスビルが　そびえ立っていた
ああ
これは…
フミは曇りガラス越しに
差し込んでくるビルの反射光を
夕日そのものと勘違いしたのさ
うわっ　ああ…
なるほどな
こりゃ勘違いするわけだ
ま　それにしても　よかったな
金田一が　いなかったら
お前　殺されてたぞ
殺されるって何のこと？
フミ　知らないよ
ええっ？何言ってんだ　お前
さっきまで
殺されかけてたじゃないか
えー　フミは自分で
あのおじさんに　ついていったのよ
別に人質じゃなかったもんねー
でね　なぞなぞごっこで遊んだんだフミちゃん
お…　お前　まさか
あのオヤジをかばって…
まあまあ　おっさん　いいじゃん
フミ本人が　こう言ってんだから
そうそう
チッ　分かったよ
犯人の逮捕状は強盗の件のみ
それでいいだろ　チビ金
チ…
チビ金？
ミニサイズの金田一だから
チビ金だ
ニャハハハ…　こりゃいい
おっさん　いい
レ…　レディーに対して
なんちゅうことを
そろそろ帰るぞ　チビ金
チビ金　チビ金って言うな
はじめ　笑うな
フミ　次　どれに乗るんだよ
絶叫マシン
えっ　怖いのはヤダ
じゃ　あれは？
ミラーラビリンス
ああ　鏡の迷路か
出口は　どこだよ？
はっ　これは…
わあ　人が倒れてる
あっ　この人　さっきの…
よーし　この謎を私が…
そうか
おっさん　関係者を集めてくれ
だから私が…
金田一少年の事件簿﻿さあ　いらはい　いらはい
安いよ　安いよ
とってもお買い得
ねえねえ　ちょいと見てって
見てって　買ってって
とってもステキなお姉ちゃんたち
まあ
可愛らしい売り子さんね
ありがとうございました
おありがとうございます
さあ　寄ってらっしゃい
見てらっしゃい
掘り出し物がそろってますよ
いらっしゃいませ
これ見せて
イッツ　サプライズ
なんてお目が高い
フフフ…　お上手ね
ふふん
よかったね　フミちゃん
お父さんのコテージで使ってた
備品　ほとんど売れたじゃない
うん　美雪お姉ちゃんが
手伝ってくれたおかげよ
ありがとう
俺も手伝ったんだけど
あんがと
じゃ　手伝い料として半分…
誰がやるか
やっぱり
これは貯金に回す分
ちゃんと後で手伝った分
メシおごってやるよ
おほっ　やった
てなわけで…
銀行にお金預けに行ってきます
じゃ　私たち　ここで待ってるわね
何かあったらさ　じゃん
このフミちゃんの
ノラエホンに電話してね
電話番号は…
分かってるって
さっさと行ってこいよ
はーい　じゃねー
ホント　フミちゃん
しっかりしてるわね
しっかりしてると言うか
ちゃっかりしてると言うか
まったく
ふんふんふんふん　ふふふふん
ここが銀行への近道なんだよね
ふふふふん…
うっ　くっ…　チッ　クソッ
ひゃっ…
はっ？
見たな
うん？
フミちゃん　遅いわね
あんにゃろ
どこ　ほっつき歩いてんだか
どうしたんだろう
あっ
警察は　どうしたんだ
まだ来ないんですか？
何だろう
銀行の前に人だかり…
何かあったんすか？
ついさっき
銀行強盗があったんですって
ええっ
犯人は裏口から逃げたってさ
銀行…　強盗…
はじめちゃん　こっち　見て
あれはフミの靴
やっぱり　これ…
片方だけ残ったフミの靴
何か引きずったような跡
そして裏口から逃げた銀行強盗
はじめちゃん
まさか…
うう…　ここは？
うっ　口が…　何？
どうなってんの？んっ
あっ　あのオヤジ
そうか　私　あの時　銀行の
裏口から出てきたこのオヤジに
いきなり口をふさがれて…
ちょっと待って
銀行の裏口から逃げるように
出てくる　やばそうな人って
もしかして　もしかして…
あー　やっぱり
お札がぎっしり詰まってるよ
私　銀行強盗の顔
見ちゃったんだ
このままじゃ
口封じに殺されちまう
何だって？
フミちゃんが銀行強盗に？
ああ　フミの靴が銀行の裏口に
転がってた
恐らく偶然　犯人の顔を
見てしまったんだ
早く見つけねえとフミが危ない
全捜査員に人質のことを伝えろ
犯人を刺激しすぎないように
気をつけろとな
はっ
それと　おっさん
フミを追跡する方法があるんだ
何？
フミちゃん
ノラエホンを持ってるんです
ノラエホン？何だ　そりゃ
新しいＰＨＳさ
あちこちに設置された
基地局を利用して
半径１００メートルまで居場所を
特定できる機能が付いてるんだ
なるほど
電波発信機みたいなもんだろう
ああ　迷子になった時
見つけられるように
親が子どもに持たせたりするんだ
よーし　そいつは使える
それで犯人の足どりを
追いかけよう
さっきからビルとか
アパートとかばっかだ
何か場所を特定できそうな物は…
あっ　この車
カーナビ付いてんじゃん
よっしゃ　これをばっちり
チェックしてれば犯人のアジト…
あっ…
ああっ
ノラエホンの動きが止まりました
天元町２丁目付近です
フミはこの町のどこかに…
でも　どうやって調べるの？
この地図で見ると
結構　建て込んでるみたいだけど
うーん　しらみ潰しに
調べるしかないな
警官とパトカーを総動員して…
うん？
私のピッチだわ
もしかして…
ええっ
もしもし
美雪お姉ちゃん　私
フミちゃん
何？
無事だったのね
はじめちゃんに代わるね
フミ　今どこにいるんだ
ここは２階建ての
木造ボロアパートの２階だよ
私をさらった男の車の
カーナビ見てたから
場所は　だいたい分かるんだ
どこだ？
ここは…　あっ　やばい
あいつ戻ってきた
おい　どうした　フミ
はじめちゃん
お嬢ちゃん　あんまり
窓のほうには近づくなよ
うん
金田一
フミちゃんは　どうしたんだ？
悪いが
しばらく　おとなしくしてもらうよお嬢ちゃん
もし騒いだら死んでもらうからね
うん　分かった
言うとおりにするよ
よーし　いい子だ
おい　金田一
フミちゃん
どうして電話に出ないの？
まさか…
いや　まだ無事だ
どうやら自分のノラエホンを
通話状態のまま
部屋のどこかに隠しているらしい
うーん　よーし
こうしちゃいられないぞ
とにかく一刻も早く
犯人のアジトの
２階建て木造ボロアパートを
捜すんだ
はっ
ヘリも飛ばせ　大至急だ
はい
剣持警部　犯人の妻だという女性が
出頭してきました
何だと？
テレビで流された銀行内の
ビデオカメラの映像を見て
自分の夫に間違いないと
緊急情報　緊急情報
誘拐犯人の名は相馬敦士
繰り返す　犯人の名は相馬敦士
もう夕日が差してきてる
一体いつになったら助けが…
あっ　そうだ
ねえねえ　おじさん
何だ？
カーテン閉めてよ
私　まぶしいの嫌いなんだ
ええっ　しょうのないやつだな
おじさん　退屈だから
私とクイズしない？
クイズ？
今　学校で　はやってるんだ
じゃあ　私から問題出すね
あ…　ああ
えっとね　ほかほか温かくて
とてもおいしいんだけど
コレを取ると冷たくて
味がしなくなるもの　なーんだ？
えっ？おいしくて
味がしなくなるもの…
同じパターンで　全身毛だらけで
走り回るのが好きなものが
コレを取ると大きくなっちゃうの
こんな時にクイズ？
フミちゃん　何考えてんの？
いや　さっきのカーテンといい
クイズの答えであるコレといい
フミの俺たちへのメッセージに違いないメッセージ？
フミなりに自分の居場所を
教えようとしてるんだ
警部　ヘリから連絡が来ました
天元町２丁目周辺で
木造２階建ての古いアパートは
４棟ありました
よし
Ａの１２番地の木造アパートは
３０階建ての赤坂ビルの
真ん前にあり　窓は西向き
２階は４部屋あり　左２つだけ
カーテンが掛かっています
Ｂは５番地　サテライトタワービル近くの木造アパートは２階が塾で
窓はすべて南向き
暗幕が下りてます
Ｃは６番地　天元病院そばの
木造アパートは西向き
２階は３部屋
すべてカーテンは掛かってません
Ｄの９番地の木造アパートは
マックスビル　最近できた
鏡張りの１２階建てのビル近く
窓は東向きで２階の真ん中の
部屋のみ　カーテンが掛かってます
Ａ　Ｂ　Ｃ　Ｄ
この４つのアパートのどれかに
フミと犯人がいる
どうやら　その相馬って犯人はな
この不況で借金がかさんで
３千万の不渡りを
出しそうになったらしいんだ
奥さんの話では
普段は責任感があって
従業員からも慕われている
優しい男だったそうです
よほど切羽詰まってたんだろう
取り返しのつかないことに
ならなきゃいいが
うーん　毛むくじゃらで
大きくなるもの
うーん　シーモンキーかな？
ブー　違いまーす
うん？それじゃあ…
あっ
何だ　これは？
しまった
気づかれたか？
お前　まさか
これを使って警察に？
もう殺すしかないのか…
は…　早く来てよ　バカ
クッソー
はじめちゃん
フミちゃん　大丈夫だよね
連絡が途切れたからって
まだきっと…
菅原　各捜査班に連絡だ
ああ
人質の少女は
極めて危険な状態にある
犯人を刺激せぬよう
早期発見を請うとな
はっ
「カーテン閉めてよ」
「私　まぶしいの嫌いなんだ」
まぶしい？
「ほかほか温かくて
とてもおいしいんだけど」
「コレを取ると冷たくて
味がしなくなるもの　なーんだ？」
コレを取る？
そうか　そういうことか
えっ
はじめちゃん
分かったぜ　フミの居場所が
何だと？
謎は　すべて解けた
ど…　どこだ？金田一
フミちゃんは
どのアパートに監禁されてるの？
フミが犯人に　いや俺たちに送ったクイズのメッセージ
その答えが監禁されてるアパートの
地図上の位置を知らせてるんだ
ええっ
クイズの答え
それは丼の点さ
丼の点？
何のことだ
丼という字の点を取ると井戸の井
水は冷たくて味なんかしないだろ
ほかほか温かくて
とてもおいしいけど
コレを取ると冷たくて
味がしなくなる
なるほど
同じ原理で
走るのが好きな犬は点を取ると
大という字になってしまうんだ
ああ
全身毛だらけで
走り回るのが好きなものが
コレを取ると大きくなる
確かに点に間違いない
だが　その答えで
なぜアパートの場所が分かる？
カーナビさ
カーナビ？
フミは犯人の車の
カーナビの地図を見て
自分が連れてこられた道の形から
丼の点に当たる場所だと
知ったんだ
あっ
道の形？
その条件に当てはまるのは
赤坂ビルの近くにある
Ａアパートと
マックスビルの近くにある
Ｄアパートの２つに絞られる
ホントだ
そしてフミはもう１つ
俺たちにメッセージを送った
「カーテン閉めてよ」
「私　まぶしいの嫌いなの」
あっ　西日が差してるってことね
つまり窓は西側にあるんだわ
そうか
Ｄのアパートの窓は東向きだから
フミちゃんがいるのは　窓が
西向きにある　このＡのアパートか
違うんだ　フミが監禁されてるのはＡのアパートじゃない
東向きのＤのアパートなんだ
何？
で…　でも東向きじゃ
夕日なんて見えませんよ
はじめちゃん
本当にＤのアパートでいいの？
もし間違ってたら
フミちゃんの命は…
おっさん　もうこれ以上
説明してる暇はない
俺の推理を信じてくれ
ああっ　うーん
よし　分かった
大至急　Ｄのアパートへ向かうぞ
はっ
全車　天元町２丁目９番地
マックスビル近くの
Ｄのアパートに急行せよ
おっさん　犯人の奥さんたちに
連絡を取ってくれ
分かった
ああっ　やばい　やばすぎる
おっさんの目がマジだ
こんな大ピンチの時
マンガだったら
カッコよくヒーローが
助けに来てくれるのに
た…　助けに来て
は…　はじめー
警察だ　開けろ　相馬敦士　貴様が
そこにいるのは分かってるんだ
フミ　無事か？
フミちゃん
ここにいるよ
フミちゃん
フミ
フミちゃん
間に合った
開けるんだ
相馬敦士
ムダな抵抗は　やめて出てこい
うるさい
ああ…
フミ　どうした？
動くな
いいか
そのドアを少しでも開けてみろ
この子どもの命はないぞ
フミちゃん
この金は　どうしても必要なんだ
こいつがないと　うちの会社は…
あなた　お願い
これ以上　罪を重ねるのは　やめて
た…　妙子
どうして　お前が　ここに？
あたしだけじゃないわ
会社の人たちも　みんな来てるのよ
何だって？
社長　俺たちのために
社長が　こんなことするなんて
やめてください　社長
帰れ
お前たちが　こんな所に来るな
あなた…
社長　聞いてくれよ
俺たちが今まで何をしていたか
３千万の不渡りが
出るかもしれないって聞いて
みんなで資金調達に
走り回ってたんです
何？
みんな会社のために
一生懸命　頑張ってるんですよ
俺たち　社長や奥さんが好きだから
みんな
今まで　つらいことがあっても
励まし合ってきたじゃないですか
分かってくれよ
あなた　みんなの気持ちを
大事にして　だから…
社長　もうこれ以上　無茶は…
社長
社長
警部　合い鍵です
遅いぞ
すみません
相馬　子どもを放せ…
フミ
うあああ…
すまない　お嬢ちゃん
みんな　すまない
俺は…　俺は…
あなた　またやり直しましょう
そうだよ
頑張ろうよ　社長
す…　すまない　すまん
よく頑張ったな　フミ
ホント　よく頑張ったわ
ああ
バカ　お前が来るのが遅かったから
私のお気に入りのノラエホン
壊れちゃったじゃないか
ああっ　あんなもん
フリーマーケットで儲けたんだから
また買えばいいじゃんか
ったく…
何があったんだ　ええっ
何があったんだ　捕まってるよ
すみません　下がってください
何したんだろう
社員の人たちに説得してもらう
アイデア　うまくいったわね
だが犯人が
もっと凶暴なやつだったら
逆上して　とんでもないことに
なってたぞ
けど　あの奥さんの話じゃ
そんなに悪い人には思えなくてさ
うん
本当に凶暴なやつだったら
とっくの昔にフミは…
はじめちゃん
どうしてフミちゃんの居場所が
このアパートって分かったの？
そうだ
フミちゃんのメッセージだと　窓から
夕日が差し込んでるはずだが
このアパートは東向きに窓がある
夕日なんて差し込むはずがない
そうよね　だから西向きの
Ａアパートに
フミちゃんがいると思ったわ
いや　Ａのアパートからじゃ
夕日は絶対　見えないんだ
えっ？
どういうことだ
ほら　地図をよく思い出してみてよ地図？
Ａのアパートの西側に
何があった？
何って…
確か赤坂ビルが…　あっ
そう　Ａのアパートの西側
真ん前には
３０階建ての高層ビルが
立ちふさがっていて
夕日なんて見えるはずないんだ
それじゃ　どうして　この東向きの
アパートから夕日が？
それは　フミが「まぶしいから
カーテン閉めてよ」って
言ってたことから推理したら
すぐ分かったよ
そもそも人質を監禁している
部屋のカーテンを
開けっ放しにするなんて
犯人の心理からすれば
不自然じゃないか
ああ　そう言われれば…
となると考えられるのは
そのアパートの窓が
カーテンが開いてても
外から見られる心配のない
曇りガラスってことさ
ああっ
そして　曇りガラスの向こうには
沈みゆく夕日を映した鏡張りの
マックスビルが　そびえ立っていた
ああ
これは…
フミは曇りガラス越しに
差し込んでくるビルの反射光を
夕日そのものと勘違いしたのさ
うわっ　ああ…
なるほどな
こりゃ勘違いするわけだ
ま　それにしても　よかったな
金田一が　いなかったら
お前　殺されてたぞ
殺されるって何のこと？
フミ　知らないよ
ええっ？何言ってんだ　お前
さっきまで
殺されかけてたじゃないか
えー　フミは自分で
あのおじさんに　ついていったのよ
別に人質じゃなかったもんねー
でね　なぞなぞごっこで遊んだんだフミちゃん
お…　お前　まさか
あのオヤジをかばって…
まあまあ　おっさん　いいじゃん
フミ本人が　こう言ってんだから
そうそう
チッ　分かったよ
犯人の逮捕状は強盗の件のみ
それでいいだろ　チビ金
チ…
チビ金？
ミニサイズの金田一だから
チビ金だ
ニャハハハ…　こりゃいい
おっさん　いい
レ…　レディーに対して
なんちゅうことを
そろそろ帰るぞ　チビ金
チビ金　チビ金って言うな
はじめ　笑うな
フミ　次　どれに乗るんだよ
絶叫マシン
えっ　怖いのはヤダ
じゃ　あれは？
ミラーラビリンス
ああ　鏡の迷路か
出口は　どこだよ？
はっ　これは…
わあ　人が倒れてる
あっ　この人　さっきの…
よーし　この謎を私が…
そうか
おっさん　関係者を集めてくれ
だから私が…
金田一少年の事件簿
ぜーったい　お化け屋敷だ！
最初は　お化け屋敷に入って
その遊園地のレベルを測るのが
正しい楽しみかたなんだ
ジェットコースターなんか
乗らんでも　じゅうぶん！
そんなの聞いたことないよ
ゆうこと聞かんと
金　出してやらんぞ
いいもーん
こないだ　稼いだ
自分のお金で乗るもーん
もう　はじめちゃん　そんなことで
張り合ってどうすんのよ
今日は　こないだの事件で活躍したごほうびで来てるんだから
そうだ　そうだ
ん…　あれ
それとも　何？
何か　ジェットコースターには
乗れないわけでも
あるのかな？
うわーっ！
お化け屋敷が　いいなー
ブイ
誰に向かって　Ｖサインしとんじゃ
すいませーん
あ？
あの　シャッター押して
ほしいんですけど
お願いできます？
ああ…
キレイドコロが　４人も
ハイハイ
シャッターでも何でも　ハイ
ごめんね
イヤイヤイヤ　こんなことぐらい
いくらでも
でも彼女　すごい目で見てるよ
ああ　あれが
地の顔なんですよ
いきますよ　はーい
ありがとう
あ　そのまま　もう１枚
コラッ！
えへへ
すいません
こいつ　カメラ買ったばっかりで
だって　おねえさんたち
キレイなんだもん
テレビに出てる人みたい
おっ　なかなか　鋭いぞ
私たち　みんなアナウンサー志望でそれで仲良くなったの
とりあえず　３人は就職が決まってホッとしてるとこ
もうじき　お目にかかれるわ
その写真に　プレミアがつくようにがんばっちゃうからね
あーあ　内定もらってないのは
私だけなんだよね
いっけない！
ヤマト放送に電話しなきゃだった
マキちゃん　電話？
ゴメーン　みんな　先　行ってて
すぐ行く
マキちゃんてば　ホント
のんびりしてんだから
だから　この時期になっても
まだ決まんないのよ
円
とりあえず　先　行こう
そうね
じゃあね　君たち
はーい
応援してね
はあい　女子アナ志望か
しかも　美人ぞろい
整形じゃねえの
いいねえ　あのイロケ
何　すんだよお
行きましょう　フミちゃん
あ…　どこ行くんだよ？
ジェットコースターよ
あ…
やったあ！
うわーっ！
私が　わるうございます
ああ　楽しかった
ホント　スリルがあって　いいよね
また乗りたいな
そうね
その人に聞いてみたら
おーい　しっかりしろ
ホラホラ　へばってないで
このフミちゃんを　撮らんかい
かわいくねー！
ハイハイ　ったく
いい気になりやがって
ヤッホーイ！
あ？
フミの後ろの建物　何だ？
ああ　あれ？
鏡迷宮だって
へえ
行ってみる？
あれなら　おにいちゃんでも
大丈夫だもんね
フン！
あ　そっちは出口だよ
入口は　裏っ側だよーん
わかってますよ
謎と恐怖の迷宮
鏡迷宮へ　ようこそ
この館へ　足を踏み入れたら最後
あなたは　二度と
おーお　脅かす　脅かす
外へは出ることは　できないかも…
だけど　何だかねえ
近くで見ると
結構　ボロだったりして
でも　かえって怖い感じがして
いいんじゃない？
あら
あ　さっきの　おねえさん
どうも
ほかのお友だちは？
ちょっと別行動
ここで待ち合わせしたの
はい　お１人　どうぞ
お先に
どうぞ　どうぞ
うれしそうね
あっ　あの…　１人ずつしか
入れないんすか？
はい　６人までの
入場制限になってるんです
あ　どうぞ
あたし入る
ああ　ちょっと待って
お嬢ちゃんは
おねえさんと入ってね
迷子になったら　困るから
プフフー　迷子にならないでね
お・じょ・う・ちゃ・ん
じゃあねー
あら
あ　どうも　どうも
次の方
あ　ハイハイハイハイ　お先に
えー　どうして？
いやん　何これ
あら　行き止まり
あらヤダ　ここも鏡？
もう　やだあ
おーおー　迷っとる　迷っとる
しっかし　ま　よくよく
ボロッちい鏡迷宮だな　こりゃ
鏡の立てつけは悪いわ
天井と壁の間に　隙間はあるわ
フッ　ちゃっちい造り
これならラクショーだぜ
あれえ
アッハハハハ
なーに　やってんだよ…
大丈夫？すごい音したけど
だいじょうぶ…
キャー！
ちょっと何よ　今の？
ヤダ　どうしたの？
どうかしましたか？
きゃあ！
すいません
あなたは…
さっきの
こっちから来たってことは
向こうか
この音は？
円よ　円の護身用ブザーの音なの
何だって！
円　円　あっ！
どうしたの？
来るな！
何　何？
ねえ　ちょっと　この音
イヤーッ！
護身用ブザー
衝撃を受けると　鳴るタイプさ
なるほどなあ
助かったぞ　金田一
お前が現場にいてくれて
何か　わかったことは？
ああ　まず　あの迷宮だが
一度に６人までしか
入れないことになっている
事件当時　中にいたのは
おミソのフミを入れて７人
入口と出口には　係員がいて
客の出入りをチェックしとってな
悲鳴が聞こえてから
死体が見つかるまで
あの建物に出入りした者は
いなかったそうだ
それに目撃者の証言で
係員も持ち場を離れていない
ことが　確認されとるんだ
じゃあ　犯人は
俺と美雪　フミを除いた
あの３人の中に？
ところが
そう簡単には　いかないんだ
え？
これは　見取り図だ
犯行は　この
どん詰まりで行われた
ここだ　まず
現場に道順で
いちばん近いところにいて
Ａ地点で　お前と　ぶつかった
真紀村朱実
彼女が殺害したとすると
悲鳴が上がってから
係員のいる出口より
丸見えの　ここを通り
Ａ地点でぶつかるのは
距離的に不可能
この時点で
彼女は　一応シロだ
ちなみに　彼女の証言は…
円とは　高校からの親友でした
ヒドイです　私が　円を殺すわけ
ないじゃないですか
そういえば　たしか
美佳は　彼氏を取られて
すごく恨んでたから　ひょっとして
その花輪美佳が　悲鳴を聞いたのは
この　どん詰まりにぶつかり
戻る途中だったそうだ
音を頼りに
現場へ向かった彼女は
このＢ地点で
七瀬君たちに会ってる
彼女が犯人の場合
現場からＢ地点に戻る途中で
お前や真紀村に
必ず　ぶつかるはずだ
第一　距離的にも　Ｂ地点で
七瀬君たちに　ぶつかるのは
ムリだろう
つまり　花輪にも犯行はムリ
そういうことだ
そして　その
花輪の証言なんだが…
ええっ　そんな…
私じゃありません
そりゃ　たしかに昔は
いろいろとありましたけど
今は　もう　私も
ほかに彼氏がいますから
そんな前のことなんて
それより
和那のことを調べたら　どうです？
あの子　アナウンサー採用試験で
円に　汚い妨害されたって
うわさがありましたから
冗談じゃないわ！
妨害は事実だけど
試験は　ちゃんと合格したんだし
そんなこと言うなら
朱実を調べてよ
あの子　親友なんて言ってるけど
ホントは　銀行の支店長の
娘だった円の　腰巾着で
ずっとコケにされてたんだから
と　まあ　こんな具合だ
罪の　なすり合いか
それで　この
秋元和那の位置だが
いちばん最後に入った彼女は
ここだ
現場までは
いちばん遠い道のりになる
どこから来るかわからん
５人をやり過ごして
ラストに現れるなんて芸当は
できっこない
これも　犯行不可能
つまり　犯人は
この中にいたはずなのに
全員にアリバイが
そうだ
フフ　謎は　すべて解けた
あ？
この迷宮には　係員にすら
知らされていない隠し扉が！
くまなく調べたけど
そんなものは　なかったよ
だったら　どっかに隠し穴が
ない！
じゃあ…　保護色か何かで
人類に　そんなこと
できないんだよ！
オッサン　ストップウォッチない？え　ああ
これでいいか？
ＯＫ　おっさんも来てくれ
ああ
あ　待って　じゃ　こんなのは？
後でな　チビ金
何だよ
普段　グウタラなくせに
こんなときは
イッチョマエな顔してさ
美雪おねえちゃんも
あんなオバカと
いつまでも
つるんでちゃダメだよ
もう…
何度　計ってみても　現場から
このＡ地点まで　走って３０秒
俺が悲鳴を聞いてから
１０秒だったから…
うーん
な　オッサン　もう一度走ってくれ
ええっ！
いいかげんにしろ
年寄りばっかり　働かせやがって
貸せ！俺が計る　お前が走れ
え…　肉体労働は
オッサン向きなんだ
けど…
まだ　肌寒いからかな
近いな…
最近　肌あれも気になるし
年かしら
ん？
あーあ
俺は　頭脳派なんだけどな
あ？
なるへそ
たしかに　こっからだと
出口は丸見えだ
ん…　出口？
たしか…
そうか　そういうことか
犯人は…　うわっ　何だ？
ハハハハ
いきなりビックリするだろうが！
よく似合ってるよ
何だ　これ　買ったのか？
トイレのゴミ箱に
捨ててあったんだよ
まだ新しいから
フリーマーケットで売れるかと思ってさ
このお　捨ててあった物をな
アハハハ
あっ…　この帽子
あ　どうしたん？
この帽子を
拾ったゴミ箱はどこだ？
すぐ　そこのトイレの中だよ
どした？
でかしたぞ
これで　すべて　そろったぜ
そろったって？
証拠がさ
何　それじゃ
謎は　すべて解けた
犯人がわかったって　本当？
誰が　いったい誰が？
誰が　円を？
事件が起こる１０分ほど前
俺は　この迷宮から
コートと帽子で身を隠した人物が
出てくるのを見たんだ
この人物こそ
小峰円を殺害した犯人さ
コートに帽子の人物？
でも　事件の起こる前って
そんなの
犯人なわけ　ないじゃない
そのことについては
詳しく説明しますよ
この鏡迷宮の中でね
ねえ　君　どこへ行くの？
犯人の行動を追ってるんですよ
行動？
犯人は
この迷宮の順路を
調べてあったから
迷わず　ある地点へと向かった
そして　この建物に２つある
構造上の欠陥を利用して
トリックを仕組んだのさ
欠陥？
そう　その１つが　ここさ
ここは…
死体のあった　袋小路の入口
ここからあっちに　何が見える？
何がって　出口が見えるだけだが
そう
ここまで来れば　もう
誰も迷わず出口まで行ける
つまり　死体のあった袋小路は
まったく　人が立ち入らない
デッドスペースになっていたんだ
犯人は　ここで
円さんを待ちぶせして
そっちの袋小路へ誘い込み
殺害したんだ
ちょっと待て
コートの人物が　事件発生前に
ここを出たのを見たのは
お前自身なんだろ？
殺害されたのは
悲鳴が聞こえる　ずっと前さ
何だって！
人が入ってくる心配がない
この袋小路は
一時的に死体を隠すには
もってこいの場所だ
死体を　そのままにして
出口から出た犯人は　変装をとき
今度は　友人である
３人の女子大生の１人として
この入口に並んだんだ
ちょっと待ってよ
この中に　犯人がいる？
私たちには　全員アリバイが
あるって…
たしかに　アンタたちのアリバイは一見　完ぺきに見える
とりあえず
続きを聞いてください
もう一度　迷宮に入った犯人は
今度は出口には向かわず
まっすぐ　ある場所に向かった
ある場所？
ここだよ
ただの　行き止まりじゃん
何だって　こんなところに？
たしかに　ここには何もない
しかし　この鏡の向こう側は
死体があった袋小路なんだ
何！
犯人は　ここで
今　犯行が行われたかのように
細工した
もう１つの構造上の欠陥を
利用してね
あれさ
鏡と天井に隙間があるだろ
ええ
犯人は　円さんのバッグから
抜き取っておいた
このブザーを
この隙間から　投げ込んだんだ
そうして　さも
悲鳴を聞きつけたかのように
現場に駆けつけた
ま　そんなとこだろう
ここは　死体のあった現場までは
もっとも遠い
つまり　犯人は
現場に最後尾から向かった
秋元和那　アンタだ
アンタが　小峰円を殺した犯人だ
言いがかりよ　私が
犯人だっていう証拠はあるの？
だいたい
そのコートの人物とやらだって
本当に　いたかどうか
証拠なら　ちゃんとある
え？
偶然　撮ったインスタント写真が
その人物を写していたのさ
それから　もう１つ
この近くのトイレのゴミ箱から
変装に使われたコートと帽子
革の手袋が見つかってる
警察で　その手袋の内側を調べて
アンタの指紋が出てきたら
もう言い逃れは　できなくなるぜ
死体の第一発見者に　容疑を
かけさせるつもりだった
アンタにとって
偶然にも　全員に
アリバイが　できちまったのは
誤算だったな
か　和那…
うそでしょ？
あたしが殺したの
あなた　やっぱり
あの採用試験のことを恨んで
どうして？
結局　合格して
採用も決まって…
あの女だけは　許せなかったのよ！
円のこと
最初っから好きじゃなかったわ
あの子の父親が
支店長をやってる銀行は
うちのお父さんと
取引があったから
一応　つき合ってたって
感じだった
うっそー　私もトウヨウテレビ
最終面接　残ったのに
何　言ってんのよ
私こそ円がいるからドッキドキよ
とか何とか言っちゃって
ホントは２人とも　自信満々？
んなことないって
もう
自信はあったわ
１名採用の　超難関だったけど
ほかは　円以外
たいしたことなかったし
円に対しても　英語とフランス語という武器があったから
フンフンフン
和那
ああ　お父さん
戦闘準備　できたか？
準備完了
あら　顔色よくないわよ
また寝てないの？
どこも不景気だからな
時間　大丈夫か？
平気よ
和那
ん？
なあに？
がんばれよ
うん！
それが　最期の言葉だった
資金繰りの悪化で　会社は…
でも　その原因を聞いて
ビックリしたわ
銀行が融資を断わってきた？
このことは
試験を失敗させたくないからって
最後まで社長に
口止めされてたんだけど
実は　小峰支店長　直々に
条件をつけてきたんだ
君に面接を受けさせるなと
けど　社長は
わかりました　もう　結構です
娘の夢をつぶすような融資は
こちらとしても受けられません
円　ブンテレ採用決定だって？
サンキュ　ねえ
これから　お祝いディナーさ
パパが予約してくれたんだけど
どう？
ナイスパパ　行く行く
パパは私の言うことなら
なーんでも
聞いてくれるんだから
バカだよ…　アンタ　バカだ
お父さんが命と引き換えに守った
娘の将来を
アンタ自身で
つぶしちまって　どうすんだよ
何だか　やり切れないね
就職ひとつで　そこまで
やんなきゃなんないのかね
今は就職難だから
ちょっと身に　つまされちゃうな
大丈夫　いざとなったら
いつでも永久就職させて
やっからさ
あ！
え？
ど　どこに？
それは　その…
わかってないよね
あ？
おねえちゃんよりも
あの　バカが定職につくほうが
よっぽど…
難しいな
それよりさ
あたし　天プラがいいな
え？
あたしが証拠を見つけたから
事件が解決したんだもん
当然よね
ええっ
お…　おい　金田一！
金　貸してくれよ
チビ金がな　天プラ食いたいって
お前の　親せきだろうが
あ　回ってないお寿司でもいいよ
寿司って…　じゃあ　たこ焼き
ダメ！
金融業　美術ブローカー　宝石商
トラック運送業と警備員
そして　キザな名刑事
突然の通り雨
偶然　集まった６人の男たち
見ず知らずの彼らをつなぐ
時効目前の１億円強盗殺人事件
そして　カードゲームが引き起こす新たな惨劇
犯人は　この中にいる
この謎を解くのは　明智さん
アンタだ！
金田一少年の事件簿﻿ぜーったい　お化け屋敷だ！
最初は　お化け屋敷に入って
その遊園地のレベルを測るのが
正しい楽しみかたなんだ
ジェットコースターなんか
乗らんでも　じゅうぶん！
そんなの聞いたことないよ
ゆうこと聞かんと
金　出してやらんぞ
いいもーん
こないだ　稼いだ
自分のお金で乗るもーん
もう　はじめちゃん　そんなことで
張り合ってどうすんのよ
今日は　こないだの事件で活躍したごほうびで来てるんだから
そうだ　そうだ
ん…　あれ
それとも　何？
何か　ジェットコースターには
乗れないわけでも
あるのかな？
うわーっ！
お化け屋敷が　いいなー
ブイ
誰に向かって　Ｖサインしとんじゃ
すいませーん
あ？
あの　シャッター押して
ほしいんですけど
お願いできます？
ああ…
キレイドコロが　４人も
ハイハイ
シャッターでも何でも　ハイ
ごめんね
イヤイヤイヤ　こんなことぐらい
いくらでも
でも彼女　すごい目で見てるよ
ああ　あれが
地の顔なんですよ
いきますよ　はーい
ありがとう
あ　そのまま　もう１枚
コラッ！
えへへ
すいません
こいつ　カメラ買ったばっかりで
だって　おねえさんたち
キレイなんだもん
テレビに出てる人みたい
おっ　なかなか　鋭いぞ
私たち　みんなアナウンサー志望でそれで仲良くなったの
とりあえず　３人は就職が決まってホッとしてるとこ
もうじき　お目にかかれるわ
その写真に　プレミアがつくようにがんばっちゃうからね
あーあ　内定もらってないのは
私だけなんだよね
いっけない！
ヤマト放送に電話しなきゃだった
マキちゃん　電話？
ゴメーン　みんな　先　行ってて
すぐ行く
マキちゃんてば　ホント
のんびりしてんだから
だから　この時期になっても
まだ決まんないのよ
円
とりあえず　先　行こう
そうね
じゃあね　君たち
はーい
応援してね
はあい　女子アナ志望か
しかも　美人ぞろい
整形じゃねえの
いいねえ　あのイロケ
何　すんだよお
行きましょう　フミちゃん
あ…　どこ行くんだよ？
ジェットコースターよ
あ…
やったあ！
うわーっ！
私が　わるうございます
ああ　楽しかった
ホント　スリルがあって　いいよね
また乗りたいな
そうね
その人に聞いてみたら
おーい　しっかりしろ
ホラホラ　へばってないで
このフミちゃんを　撮らんかい
かわいくねー！
ハイハイ　ったく
いい気になりやがって
ヤッホーイ！
あ？
フミの後ろの建物　何だ？
ああ　あれ？
鏡迷宮だって
へえ
行ってみる？
あれなら　おにいちゃんでも
大丈夫だもんね
フン！
あ　そっちは出口だよ
入口は　裏っ側だよーん
わかってますよ
謎と恐怖の迷宮
鏡迷宮へ　ようこそ
この館へ　足を踏み入れたら最後
あなたは　二度と
おーお　脅かす　脅かす
外へは出ることは　できないかも…
だけど　何だかねえ
近くで見ると
結構　ボロだったりして
でも　かえって怖い感じがして
いいんじゃない？
あら
あ　さっきの　おねえさん
どうも
ほかのお友だちは？
ちょっと別行動
ここで待ち合わせしたの
はい　お１人　どうぞ
お先に
どうぞ　どうぞ
うれしそうね
あっ　あの…　１人ずつしか
入れないんすか？
はい　６人までの
入場制限になってるんです
あ　どうぞ
あたし入る
ああ　ちょっと待って
お嬢ちゃんは
おねえさんと入ってね
迷子になったら　困るから
プフフー　迷子にならないでね
お・じょ・う・ちゃ・ん
じゃあねー
あら
あ　どうも　どうも
次の方
あ　ハイハイハイハイ　お先に
えー　どうして？
いやん　何これ
あら　行き止まり
あらヤダ　ここも鏡？
もう　やだあ
おーおー　迷っとる　迷っとる
しっかし　ま　よくよく
ボロッちい鏡迷宮だな　こりゃ
鏡の立てつけは悪いわ
天井と壁の間に　隙間はあるわ
フッ　ちゃっちい造り
これならラクショーだぜ
あれえ
アッハハハハ
なーに　やってんだよ…
大丈夫？すごい音したけど
だいじょうぶ…
キャー！
ちょっと何よ　今の？
ヤダ　どうしたの？
どうかしましたか？
きゃあ！
すいません
あなたは…
さっきの
こっちから来たってことは
向こうか
この音は？
円よ　円の護身用ブザーの音なの
何だって！
円　円　あっ！
どうしたの？
来るな！
何　何？
ねえ　ちょっと　この音
イヤーッ！
護身用ブザー
衝撃を受けると　鳴るタイプさ
なるほどなあ
助かったぞ　金田一
お前が現場にいてくれて
何か　わかったことは？
ああ　まず　あの迷宮だが
一度に６人までしか
入れないことになっている
事件当時　中にいたのは
おミソのフミを入れて７人
入口と出口には　係員がいて
客の出入りをチェックしとってな
悲鳴が聞こえてから
死体が見つかるまで
あの建物に出入りした者は
いなかったそうだ
それに目撃者の証言で
係員も持ち場を離れていない
ことが　確認されとるんだ
じゃあ　犯人は
俺と美雪　フミを除いた
あの３人の中に？
ところが
そう簡単には　いかないんだ
え？
これは　見取り図だ
犯行は　この
どん詰まりで行われた
ここだ　まず
現場に道順で
いちばん近いところにいて
Ａ地点で　お前と　ぶつかった
真紀村朱実
彼女が殺害したとすると
悲鳴が上がってから
係員のいる出口より
丸見えの　ここを通り
Ａ地点でぶつかるのは
距離的に不可能
この時点で
彼女は　一応シロだ
ちなみに　彼女の証言は…
円とは　高校からの親友でした
ヒドイです　私が　円を殺すわけ
ないじゃないですか
そういえば　たしか
美佳は　彼氏を取られて
すごく恨んでたから　ひょっとして
その花輪美佳が　悲鳴を聞いたのは
この　どん詰まりにぶつかり
戻る途中だったそうだ
音を頼りに
現場へ向かった彼女は
このＢ地点で
七瀬君たちに会ってる
彼女が犯人の場合
現場からＢ地点に戻る途中で
お前や真紀村に
必ず　ぶつかるはずだ
第一　距離的にも　Ｂ地点で
七瀬君たちに　ぶつかるのは
ムリだろう
つまり　花輪にも犯行はムリ
そういうことだ
そして　その
花輪の証言なんだが…
ええっ　そんな…
私じゃありません
そりゃ　たしかに昔は
いろいろとありましたけど
今は　もう　私も
ほかに彼氏がいますから
そんな前のことなんて
それより
和那のことを調べたら　どうです？
あの子　アナウンサー採用試験で
円に　汚い妨害されたって
うわさがありましたから
冗談じゃないわ！
妨害は事実だけど
試験は　ちゃんと合格したんだし
そんなこと言うなら
朱実を調べてよ
あの子　親友なんて言ってるけど
ホントは　銀行の支店長の
娘だった円の　腰巾着で
ずっとコケにされてたんだから
と　まあ　こんな具合だ
罪の　なすり合いか
それで　この
秋元和那の位置だが
いちばん最後に入った彼女は
ここだ
現場までは
いちばん遠い道のりになる
どこから来るかわからん
５人をやり過ごして
ラストに現れるなんて芸当は
できっこない
これも　犯行不可能
つまり　犯人は
この中にいたはずなのに
全員にアリバイが
そうだ
フフ　謎は　すべて解けた
あ？
この迷宮には　係員にすら
知らされていない隠し扉が！
くまなく調べたけど
そんなものは　なかったよ
だったら　どっかに隠し穴が
ない！
じゃあ…　保護色か何かで
人類に　そんなこと
できないんだよ！
オッサン　ストップウォッチない？え　ああ
これでいいか？
ＯＫ　おっさんも来てくれ
ああ
あ　待って　じゃ　こんなのは？
後でな　チビ金
何だよ
普段　グウタラなくせに
こんなときは
イッチョマエな顔してさ
美雪おねえちゃんも
あんなオバカと
いつまでも
つるんでちゃダメだよ
もう…
何度　計ってみても　現場から
このＡ地点まで　走って３０秒
俺が悲鳴を聞いてから
１０秒だったから…
うーん
な　オッサン　もう一度走ってくれ
ええっ！
いいかげんにしろ
年寄りばっかり　働かせやがって
貸せ！俺が計る　お前が走れ
え…　肉体労働は
オッサン向きなんだ
けど…
まだ　肌寒いからかな
近いな…
最近　肌あれも気になるし
年かしら
ん？
あーあ
俺は　頭脳派なんだけどな
あ？
なるへそ
たしかに　こっからだと
出口は丸見えだ
ん…　出口？
たしか…
そうか　そういうことか
犯人は…　うわっ　何だ？
ハハハハ
いきなりビックリするだろうが！
よく似合ってるよ
何だ　これ　買ったのか？
トイレのゴミ箱に
捨ててあったんだよ
まだ新しいから
フリーマーケットで売れるかと思ってさ
このお　捨ててあった物をな
アハハハ
あっ…　この帽子
あ　どうしたん？
この帽子を
拾ったゴミ箱はどこだ？
すぐ　そこのトイレの中だよ
どした？
でかしたぞ
これで　すべて　そろったぜ
そろったって？
証拠がさ
何　それじゃ
謎は　すべて解けた
犯人がわかったって　本当？
誰が　いったい誰が？
誰が　円を？
事件が起こる１０分ほど前
俺は　この迷宮から
コートと帽子で身を隠した人物が
出てくるのを見たんだ
この人物こそ
小峰円を殺害した犯人さ
コートに帽子の人物？
でも　事件の起こる前って
そんなの
犯人なわけ　ないじゃない
そのことについては
詳しく説明しますよ
この鏡迷宮の中でね
ねえ　君　どこへ行くの？
犯人の行動を追ってるんですよ
行動？
犯人は
この迷宮の順路を
調べてあったから
迷わず　ある地点へと向かった
そして　この建物に２つある
構造上の欠陥を利用して
トリックを仕組んだのさ
欠陥？
そう　その１つが　ここさ
ここは…
死体のあった　袋小路の入口
ここからあっちに　何が見える？
何がって　出口が見えるだけだが
そう
ここまで来れば　もう
誰も迷わず出口まで行ける
つまり　死体のあった袋小路は
まったく　人が立ち入らない
デッドスペースになっていたんだ
犯人は　ここで
円さんを待ちぶせして
そっちの袋小路へ誘い込み
殺害したんだ
ちょっと待て
コートの人物が　事件発生前に
ここを出たのを見たのは
お前自身なんだろ？
殺害されたのは
悲鳴が聞こえる　ずっと前さ
何だって！
人が入ってくる心配がない
この袋小路は
一時的に死体を隠すには
もってこいの場所だ
死体を　そのままにして
出口から出た犯人は　変装をとき
今度は　友人である
３人の女子大生の１人として
この入口に並んだんだ
ちょっと待ってよ
この中に　犯人がいる？
私たちには　全員アリバイが
あるって…
たしかに　アンタたちのアリバイは一見　完ぺきに見える
とりあえず
続きを聞いてください
もう一度　迷宮に入った犯人は
今度は出口には向かわず
まっすぐ　ある場所に向かった
ある場所？
ここだよ
ただの　行き止まりじゃん
何だって　こんなところに？
たしかに　ここには何もない
しかし　この鏡の向こう側は
死体があった袋小路なんだ
何！
犯人は　ここで
今　犯行が行われたかのように
細工した
もう１つの構造上の欠陥を
利用してね
あれさ
鏡と天井に隙間があるだろ
ええ
犯人は　円さんのバッグから
抜き取っておいた
このブザーを
この隙間から　投げ込んだんだ
そうして　さも
悲鳴を聞きつけたかのように
現場に駆けつけた
ま　そんなとこだろう
ここは　死体のあった現場までは
もっとも遠い
つまり　犯人は
現場に最後尾から向かった
秋元和那　アンタだ
アンタが　小峰円を殺した犯人だ
言いがかりよ　私が
犯人だっていう証拠はあるの？
だいたい
そのコートの人物とやらだって
本当に　いたかどうか
証拠なら　ちゃんとある
え？
偶然　撮ったインスタント写真が
その人物を写していたのさ
それから　もう１つ
この近くのトイレのゴミ箱から
変装に使われたコートと帽子
革の手袋が見つかってる
警察で　その手袋の内側を調べて
アンタの指紋が出てきたら
もう言い逃れは　できなくなるぜ
死体の第一発見者に　容疑を
かけさせるつもりだった
アンタにとって
偶然にも　全員に
アリバイが　できちまったのは
誤算だったな
か　和那…
うそでしょ？
あたしが殺したの
あなた　やっぱり
あの採用試験のことを恨んで
どうして？
結局　合格して
採用も決まって…
あの女だけは　許せなかったのよ！
円のこと
最初っから好きじゃなかったわ
あの子の父親が
支店長をやってる銀行は
うちのお父さんと
取引があったから
一応　つき合ってたって
感じだった
うっそー　私もトウヨウテレビ
最終面接　残ったのに
何　言ってんのよ
私こそ円がいるからドッキドキよ
とか何とか言っちゃって
ホントは２人とも　自信満々？
んなことないって
もう
自信はあったわ
１名採用の　超難関だったけど
ほかは　円以外
たいしたことなかったし
円に対しても　英語とフランス語という武器があったから
フンフンフン
和那
ああ　お父さん
戦闘準備　できたか？
準備完了
あら　顔色よくないわよ
また寝てないの？
どこも不景気だからな
時間　大丈夫か？
平気よ
和那
ん？
なあに？
がんばれよ
うん！
それが　最期の言葉だった
資金繰りの悪化で　会社は…
でも　その原因を聞いて
ビックリしたわ
銀行が融資を断わってきた？
このことは
試験を失敗させたくないからって
最後まで社長に
口止めされてたんだけど
実は　小峰支店長　直々に
条件をつけてきたんだ
君に面接を受けさせるなと
けど　社長は
わかりました　もう　結構です
娘の夢をつぶすような融資は
こちらとしても受けられません
円　ブンテレ採用決定だって？
サンキュ　ねえ
これから　お祝いディナーさ
パパが予約してくれたんだけど
どう？
ナイスパパ　行く行く
パパは私の言うことなら
なーんでも
聞いてくれるんだから
バカだよ…　アンタ　バカだ
お父さんが命と引き換えに守った
娘の将来を
アンタ自身で
つぶしちまって　どうすんだよ
何だか　やり切れないね
就職ひとつで　そこまで
やんなきゃなんないのかね
今は就職難だから
ちょっと身に　つまされちゃうな
大丈夫　いざとなったら
いつでも永久就職させて
やっからさ
あ！
え？
ど　どこに？
それは　その…
わかってないよね
あ？
おねえちゃんよりも
あの　バカが定職につくほうが
よっぽど…
難しいな
それよりさ
あたし　天プラがいいな
え？
あたしが証拠を見つけたから
事件が解決したんだもん
当然よね
ええっ
お…　おい　金田一！
金　貸してくれよ
チビ金がな　天プラ食いたいって
お前の　親せきだろうが
あ　回ってないお寿司でもいいよ
寿司って…　じゃあ　たこ焼き
ダメ！
金融業　美術ブローカー　宝石商
トラック運送業と警備員
そして　キザな名刑事
突然の通り雨
偶然　集まった６人の男たち
見ず知らずの彼らをつなぐ
時効目前の１億円強盗殺人事件
そして　カードゲームが引き起こす新たな惨劇
犯人は　この中にいる
この謎を解くのは　明智さん
アンタだ！
金田一少年の事件簿﻿よーし
これでいっかな
さあー　それでは
今日の占い　ワーストワンは？
あ？
射手座のあなた
えー？
今のあなたの恋人は
ちょーっと　いい加減
デートの待ち合わせを
すっぽかされちゃうかもね
そんなあ
でも安心
ん？
新しいアバンチュールの予感
意外な所から白馬の王子様が
出現するかもしれません
あー　何か複雑
あーあ　とうとう降ってきた
もう　はじめちゃんてば
いつまで待たせる気？
今度はケーキセットぐらいじゃ
許さないから
今のあなたの恋人は
ちょーっと　いい加減
デートの待ち合わせを
すっぽかされちゃうかもね
まさか…　ね
ん？あっ　明智さん！
ああ　誰かと思えば
なるほど　約束の時間に
４０分も遅刻とは
いかにも金田一君らしい
そうなんです
はじめちゃんてば　いっつ…
あっ…　ああ　すいません
ヤダ　私ったら
だいぶ雨脚が
強くなってきましたね
まあ　通り雨でしょうから
じき　やむでしょう
でも明智さんって間近で見ても
きれいな顔してるなあ
まつげだって　あんなに長くて
新しいアバンチュールの予感
意外な所から白馬の王子様が
出現するかもしれません
あー　私って何考えてんだろ
ええっ？
あっ　失礼
ちょっと昔のことを思い出して
昔のこと？
ええ　今日みたいな
突然の通り雨に
運命を左右された
気の毒な男たちの話ですよ
はあ
あの日の空も
こんなふうに暗い雨雲に
覆われていました
あれは私が　まだ警部だった頃の
ある秋の日
私は休暇を利用して
長野の山に登ったんです
参ったな
こんな天気の日に限って
雨具を忘れるなんて
雷雨になるかもしれないぞ
これは
あれは
やむをえん　この山小屋で
雨宿りさせてもらおう
さっさと入って戸を閉めなよ
あんちゃん
ああ　失礼
あんたも雨宿りに来たんだろう？
何だか雨　ますます
ひどくなってきましたねえ
いつまでも　こんな山小屋に
閉じ込められてちゃ
退屈でたまらんわ
ああ　皆さん　どうです
私のトランプで
ポーカーでもやりませんか
マッチをコイン代わりに
ジョーカーは抜きで
ああ　よろしゅうおまんな
わてらが　ここで偶然
知りおうたのも何かの縁や
いっちょ
楽しゅうやりましょうや
ジョーカー抜きなら
一番強い手は
ロイヤルストレート
フラッシュですよね
始める前に念のため
ポーカーの役を説明して
おいたほうがいいでしょう
２番目に強いのが
同じスーツで数字が５枚連続した
ストレートフラッシュ
続いて同じ数字を４枚集めた
フォアカード
まあ　ここまでは
そう　めったに出ませんけどね
その次に強いのがフルハウスで
次はフラッシュや
それから
ストレートやったかいなあ
まっ　とにかく
やってみようじゃねえか
なあ　若いの
いや
私は賭け事はちょっと弱くて
何　固いこと言ってんの
強いも弱いも　やってみなきゃ
分かんねえだろ
そうですね
ストレート
あー
また　あんさんの勝ちかいな
何が賭け事が弱いだよ
とんだポーカーフェイスだぜ
マグレですよ
そんなマグレはないって
よーし　今度は勝てそうだ
レイズさせてもらいますよ
あ　フォールド
ああ　自分も
降ろさせてもらいます
俺も
わいもや
じゃあ
レイズ
ん？
どうしました？三矢さん
レイズですよ
ダメだあ　降ります
わあ　４のワンペアかいな
よう　そんな手で
レイズしやはりましたな
いやあ　ひと芝居
打とうとしたんですがね
まさか　ここで明智さんが
レイズするとは
で　あんさんの手は？
や…　役なし
ブタかよ
やりますね　明智さん
いえ　ただ皆さん
さっきからゲームを見ていると
色々な癖が出ているもので
癖？
ええ　三矢さんの場合
悪い手なのに
勝負を賭けようとするとき
鼻をかく癖があります
え？
分かりやすいヤツだな
そういう猫田さんは
いい手が来ると
唇をなめる癖がありますが
かなわんな
ああ　何だこりゃ　ツイてねえな
しかしツイてないといえば
去年の私は散々でしたね
ほう　何かあったんですか？
実は私は銀座で
画廊をやってるんですが
有名画家の　がん作を
つかまされてしまいましてね
おかげで何千万もの損害ですよ
ところで雲間さん
カードの交換は？
ああ　失礼　３枚換えます
そりゃあ　大変やったな
ああ　私は１枚換えね
しかし私も　つい最近
ひどい目におうた
ばかりなんですわ
ほう　赤菱さんも？
私は金融会社を
経営しとるんですが
以前　カネを貸した客が
突然　凶器を持って
事務所に殴り込んできよって
いやもう　散々でしたわ
ああ　皆さん
結構　苦労してますよね
え？ああ　私は交換なしで
まあ　私も宝石商なんて
商売やってる関係上
結構　危ない目に
遭ったもんですよ
買い付けに行ったインドで
強盗に銃を突き付けられたり
社員に原石を持ち逃げされたり
なるほどね
うーん　自分は全部　換えます
自分は警備会社へ勤めてるんで
何度も危ない目に
遭ったことがありますよ
若い頃　呉服店の警備中
泥棒と格闘になって
重傷を負ってしまい
半年間まともに動けなくって
あんときは　さすがに参りました
明智はん　あんたはどうや？
見たところ　ただの勤め人や
ないようやな
私は
刑事ですよ
刑事？
私は
皆さんのように
劇的な人生は送ってませんが
劇的な人生を送った
犯罪者たちなら
この目で何人も見てきました
刑事さんか　こりゃおもしれえ
いやあ　自慢じゃないが
俺の人生はホントに
ツイてねえことだらけだった
死に物狂いで起こした会社は
経理に通帳を持ち逃げされて
借金地獄
女房は　よそに
男を作って駆け落ち
だが　そんな俺にも
ちょいと　いいことが
起こりそうな気がしてきた
刑事さん　実は私　１５年前
殺人現場を見ちまったんですよ
１５年前　仕事帰りに
銀行の裏手に止めた
トラックの中で寝ていた俺は
悲鳴を聞いて飛び起きた
すると　どうだい
今まさに凶器を投げ捨てた犯人が
バイクに乗って
逃げるところじゃねえか
あの顔は今でも
はっきり覚えてるよ
あの事件　銀行員２人が殺された
第３銀行　１億円強盗事件は
確か　まだ解決してないはずだ
あんとき俺は警察嫌いで
通報しなかったが
あんたになら
話してもいい気がしてきた
どうだ　刑事さん
あ？
話の続きはゲームのあとに
聞きましょ
猫田さん　あなたの番ですよ
それじゃあ　俺は２枚
今の近かったな
ああ　真っ暗で何にも見えない
ライターか何か…
ね…　猫田さん
し…　死んでる！殺されたんや！
な…　ナイフが胸に
どういうことです
この小屋の中には私たちしか
そ…　それじゃあ
この中の誰かが猫田さんを
これは　ダイヤのフラッシュ
で…　でもどうして猫田さんは
わざわざ自分のカードを
隠すようにして
そうか　ダイイング・メッセージだ
猫田さんは
犯人を知らせようとして
このカードを
しっかり握ってたんだ
赤いダイヤが５枚
ああ　赤いダイヤ　赤い菱形…
まさか
ええ？
赤菱さん　あんたが犯人か
何やて？
そ…　そうだ
赤菱さんの名前　確か五郎って
赤い菱形が５つ
まさにダイヤのフラッシュだ
違う　そんなの　ただの偶然や
偶然にしちゃ出来すぎてますね
あんた一体　何の恨みで…
待ってください
え？
皆さん　床に置いた
手持ちのカードには手を触れず
速やかに輪の外へ出てください
な…　何をする気だ　君
どうか私の言うとおりに
してください
赤菱さんのカードは
８とジャックのツーペア
三矢さんはエースのスリーカード
雲間さんはクイーンのワンペア
緑川さんは役なし
なるほど
猫田さんを殺した犯人が
はっきりと分かりましたよ
ええ？
ホントか
だ…　誰です？そいつは
すべての謎を解く鍵は
猫田さんが握っていた
このカードにありました
犯人は　この中にいます
そ…　そのカードが
犯人を示す鍵なら
やっぱり赤菱さんが…
慌てないでください
ここで１つ
はっきりさせたいことがあります
つまり　このダイヤのフラッシュは
猫田さんのダイイング・
メッセージではない
ということです
何だって？
ど…　どういうことだ
考えてもみてください
猫田さんが殺されたのは
彼がカードを引く直前
落雷による停電の
最中だったんですよ
電気が消えて
真っ暗な山小屋の中で
私たちには猫田さんが誰に
殺されたのかも分からなかった
そんな暗がりの中で
カードの山から
ダイヤのフラッシュを
選び出すなんて
どう考えても不可能でしょ
た…　確かに言われてみれば
じゃあ猫田さんの手は
配られたときから
ダイヤのフラッシュが
完成してたのか
いいえ　それも違います
猫田さんは停電前に
カードを２枚
交換しようとしていました
もし最初からフラッシュが
出来ていたのなら
カードを取り換える必要はない
しかし　それが猫田さんの
手札じゃないのなら
そうか　分かったで
犯人は　わてに
罪をなすりつけようとして
わざと　わての名前に
なぞらえたカードを
猫田さんに握らせたんや
でも　どうやって犯人は
カードをそろえたんですか
あの暗闇の中で
それは簡単なことですよ
犯人は最初から
このフラッシュを
自分の手持ちカードとして
持っていたんです
犯人は　ある理由から
猫田さんに殺意を抱いた
そして　そのとき
たまたま　そろっていた
このダイヤのフラッシュが
偶然にも赤菱さんの名を
なぞらえているのに気付き
猫田さんを殺害後
自分と彼のカードを
すり替えることで
疑いが赤菱さんに
かかるように仕向けた
つまり　このダイヤのフラッシュの本来の持ち主が
猫田さんを殺害した
犯人ということになります
し…　しかしゲームのとき
誰がダイヤの
フラッシュだったかなんて
今となっちゃ
分かりっこないですよ
そうだ　カードのすり替えなんて
誰にだって出来たはずだ
いいえ　違いますよ
誰が犯人なのかは
今残っている皆さんの
カードを見れば明らかです
ではゲームの最中
誰が何枚　交換し
その結果どうなったか
検証してみましょう
まず雲間さんのカードは
３枚　交換して
クイーンのワンペア
そして次の赤菱さんは
１枚　交換して
８とジャックのツーペア
３番目の三矢さんは交換なしの
エースのスリーカード
緑川さんは全部交換して　役なし
この中で理論的に矛盾した
カードの換え方をした人物が
１人います　その人物とは
あなたですよ
三矢さん
ええ？
そして　あなたこそ
猫田さんを殺害した犯人です
バカな　私はスリーカードという
役が完成してたから
交換しなかっただけだよ
それのどこが矛盾してるんだ
鼻が　かゆいんですか？三矢さん
あ？ああ
では聞きますが　三矢さん
エースのスリーカード以外の
不要な２枚を
換えなかったのは　なぜです？
この２枚を交換して
もしペアが来たら
さらに高い役のフルハウス
スペードのエースが来れば
めったに出ないフォアカードが
出来たのに
ポーカーを知っている者なら
スリーカードで
２枚　交換するのは常識です
ところが人に説明できるほど
ポーカーを知っているあなたが
スリーカードなのに交換せず
フラッシュが完成していたはずの
猫田さんが２枚交換しようとした
なぜでしょうか
それは　あのとき
猫田さんが持っていたのは
本当はスリーカードで
あなたのカードこそ
完成されたダイヤの
フラッシュだったからだ
猫田さんを殺し　彼の手持ちの
カードをすり替えたのは
三矢さん
あなたしかいないんですよ
ここからは私の推測ですが
１５年前　猫田さんが目撃した
銀行強盗とは
三矢さん
あなたのことじゃないですか？
猫田さんは雨宿りで　たまたま
転がり込んだ　この山小屋で
奇遇にも１５年前に見た
犯人と遭遇した
しかも　その強盗が
奪ったカネを元に
宝石商として
成功しているのを知り
いいカネづるになると思い
あなたに脅しをかけるつもりで
刑事である私に
話したいことがあると言い出した
ああ　ああ
あんたの言うとおりだよ
刑事さん
だが　あの事件以来
私は必死に働いて
やっと事業家として成功して
時効も目前だったのに
ああ　こんな所で雨宿りなんか
しなければよかった
ぬれたまま　さっさと
山を下りればよかったんだ
こんな所で目撃者に
出会っちまうなんて
最後の最後で…
なんてツイてないんだ
ツイてなかったのは何も
三矢さんだけじゃありませんよ
猫田さんも　あなたに出会って
妙な気を起こさなければ
ここで命を亡くすこともなかった
ああ　何てことだ
え？
猫田さんは自分は
ツイてないことだらけの人生だと
言ってましたが
そんな彼に　せめて
このカードを
引かせてあげたかったですね
残念です
ホントに雨が運命を
変えちゃったんですね
ええ　でも　この２人の
不運の根っこにあるのは
やはり彼らの過ちに
他なりませんよ
そもそも１５年前　人を殺すという
最悪の選択をした
三矢さんの運命は
その時点で　すでに破滅に向かって歩み出していたのかもしれません
そして猫田さんもまた
脅迫という犯罪行為を
選択してしまったことで
無残な死を自らの手で
手繰り寄せてしまった
おっと　雨もほとんど
上がったみたいですね
退屈な話は　もう終わったの？
明智先生
はじめちゃん
ったく
つまんねえ話をぐだぐだと
金田一君
遅刻の上に盗み聞きとは
相変わらず礼儀知らずですね
あー？
俺が来たのに気付かないで
自慢話　吹かしてる誰かさんは
礼儀を知ってるのかなー
あー　もう　やめてよ
はじめちゃん　こんな所で！
美雪！お前も　お前だ
こんなキザ野郎の隣で
ポーッと　ほほ染めやがって
どういう了見だ！
な…　何ですって？
雨の中　４０分以上も待たせて
よくそんなこと言えるわね
もう今日という今日は
完ペキ怒った
明智さん
行きましょう
お…　おい　美雪
あんなの放っといて
２人で　お茶しません？
そうそう　この辺に
すっごいオシャレな
オープンカフェが
出来たんですよー
通り雨のあとって
空気もすがすがしいし
そうですね
青空の下でのティータイムも
たまには　いいかもしれませんね
やった　決まり！
美雪ー！
さっ　行きましょー
あー　ちょっと待ってよ
美雪ちゃん
１人にしないでよー
あ？美雪がスカウト？
映画のヒロイン？
ダメダメダメ　断れ　美雪
相手が天才高校生監督だか
何だか知らんが　ダメー！
へえ　なかなかプロ並みじゃん
うん？こ…　これは
まさか死のメッセージ？
校内で起こる第１の殺人　そして
昔の部員だけが知っている
「サソリ座の惨劇」とは
美雪　危ない！
金田一少年の事件簿
ああ　これだ
玲香ちゃんの最新作映画
キンキンキッズの剛君と
共演なんだよね
フミ　楽しみ
でも玲香ちゃん
どうして　この映画のチケットを
送ってくれなかったんだろう
いつもなら　ちゃーんと
忙しかったのよ　きっと
どーだかなあ
相手は超売れっ子アイドルの
速水玲香だもんなあ
ぼんくら男に
飽きちゃったんじゃないの？
なーに言ってんだよ　悪いけどね
玲香ちゃんは俺に超ベタぼれ
れ…　玲香ちゃん
うわー
そういや剛君　玲香ちゃんと
ウワサになってたもんな
ちぇっ　私の剛君を
れ…　玲香ちゃんがキス
映画の中とはいえ　そんな…
相当ショックってんな　こりゃあ
金田一君
え？
見ちゃったのね　この映画
れ…　玲香ちゃん
見てほしくなかった
いくら演技でも　あんなシーン
金田一君にだけは
見てほしくなかったのに
どうして　どうしてなの？
玲香ちゃん
だから今回はチケットを
可愛い
玲香ちゃん
こんなとこにいたの？
探しちゃったよ
玲香ちゃん　サイン会だから
さっ　早く
おい　分かるか　フミ
何だよ　なれなれしく
ああいうのが　ホントの女の
可愛さっていうんだ
痛い痛い痛い　やめろ　バカ
舞い上がってんじゃねえ
てめえのようなクソガキには
１億年　早えがな
なあ　美雪
あれ　美雪のヤツは？
先行っちまったよ
お前が　あんまりデレデレすっから
え？俺…
はあ　すごいな　玲香ちゃん
ますます女に
磨きがかかってるって感じ
それに比べて私は…
きれいだ
しかし彼女は何を悲しんでる
自分の美しさに気付かず
どこに行ったんだろう
あの顔　怒ってたぞ
知らねえからな
あれ　美雪お姉ちゃん
男と話してるぜ
え？
ナンパか？くそっ
俺の美雪に
金田一君
玲香ちゃん
あれ？あの人
知り合い？
僕は不動芸術高校の
蔵沢っていう者なんですけど
僕の映画のヒロインに
なってくれませんか？
映画のヒロイン？
あの人　確か蔵沢光
日本映画界の巨匠のお孫さんよ
去年　学校の部活で作った
自主映画が
日本アマチュアシネマ祭で
準グランプリを取って以来
将来を嘱望されている
スーパー高校生よ
わー　すっごーい　美雪お姉ちゃん
そんな人にスカウトされるなんて
映画がグランプリでも取ったら
芸能界デビューも
夢じゃないじゃん
でも　そんな　あの…
いきなり
そんなことを言われても
ま…　まさか美雪が
そんなのオーケーするはずがない
そりゃあ　突然だけど
断れ　美雪
そんな男の話なんか
き…　金田一君
君をおいて今回のヒロインは
他にいない
今　急にそんなこと
こ…　困ります
ちょっと考えさせてください
あっ　はじめちゃ…
あ？
あ…
分かりました　そのお話
もう少し詳しく聞かせてください
ありがとう
そ…　そんなっ
美雪
金田一君
なーんて　あのときは
その場の勢いで
ついオーケーしちゃったけど
やっぱり　ちょっと不安かも
すいません
あのー　私　蔵沢さんに
ああ　あなたが七瀬さん？
話は蔵沢部長から聞いてるわ
どうぞ　入って入って
じゃ　失礼します
あ…　あの　後ろの人たちは？
え？あー
私　七瀬美雪のマネジャーで
金田一と申します
同じく付き人のフミちゃんでーす
どうして　ここに
はじめちゃんたちがいるのよー
なーに言ってるの
タレントの仕事を手伝うのが
マネジャーの仕事でーすよ
七瀬さんの友達？
でも困っちゃったな
部長は…
どうしたんです？星野先輩
すみません
ああ　この子が例の
ふーん　部長の趣味って
分かんない
こら　つまんないこと言ってないでお茶でも入れて
あ　ごめんね　あの子　今回
大した役もらえなくてさ
ひがんじゃってるのよ
はあ
蔵沢　どうして黒河を
主役から降ろしたんだ
俺はこの脚本を黒河のイメージで
書き上げたんだぞ
それを　お前は
いいや　彼女は
やあ　来てくれたんだね　七瀬君
はっ　ああ　その…
ちぇっ　勝手にしろ
ふーん　これが
お前の見つけた新人さんか
ああ　そうだ
あっ　初めまして
まあ胸はでっかいけど　他は
並より　ちょっと上ってとこかな
特上の黒河と比べちゃあ
ちょっと厳しいんじゃない
あんの黒焦げ男
ドスケベな目して何ちゅうことを
まあ　何とかなるよ
どんな素材でも
この僕がキャメラを回すんだから
ちゃんと絵にして見せてやるよ
頼むよ　門脇
何だ　君たちは
ああ　私の友達です
私１人じゃ心細かったので
どうも　不動高校の金田一です
まっ　いいけど　ただし
勝手に　そこらへん
いじらないでくれよ
うちは高い機材が多いからね
チッ　感じワル
七瀬君　君にはこれから
昨年　準グランプリを取った
「大追跡」を見てもらうよ
そのほうが僕らが
どんなものを作ってるか
よく分かるだろうからね
あ　はい
あ？何だ
香水のにおい
おはようございます
黒河先輩
探してたんですよ
ウッソー
こ…　この美人が美雪のために
主役を降ろされたっていうのー？
黒河君　紹介するよ
彼女が七瀬君
あなたの誕生日は何月何日？
え？あ…　あ　はい
１１月２４日ですけど
そう　射手座ね
あなたの星は
これから火星が止まって
冥王星と凶角を成すわ
災いの暗示ね
は？ああ
彼女はホロスコープを見るのが
得意なんだよ
僕もたまに見てもらってるんだ
俺もちょーっと占ってほしいな
麗しのお姉様との相性を
へえ　何ちゅうアホ面
ほとんどプロの仕事じゃん
当然さ
この作品は何と言っても
このスリルとアクションが
高く評価されてね
そして極めつけは次のシーン
すごーい　ホントに
ビルからビルへ飛んでるよ
この映画のアクションシーンは
スタントマンなしで全部
うちの真田がやっているんだ
ヤツは元陸上の選手だったからね
ふーん　ただのお焦げじゃ
なかったんだ　あいつ
確かに見事だけど
何だ？さっき感じた違和感は
ん？
あれ？
門脇　また機械のトラブルか？
い…　いやあ
映写機は正常に動いてる
それじゃ一体
ん？スクリーンに文字が…
の…　呪いのフィルムだと？
何よ　これ
誰だ　フィルムに
こんな細工したの
死？
こ…　これは　サソリ座
うわ　あちち
フィ…　フィルムが
なーにやってんだ　早く消せ！
だ…　ダメだ
お前か　門脇
こんな　いたずらしたのは！
バーカ言うな
何で俺がこんなこと
スコーピオン
何？
スコーピオンだ
え？
「サソリ座の惨劇」…
「サソリ座の惨劇」？それって…
「サソリ座の惨劇」のことを
知りたい？
あ　はい
ぜひ聞かせてください
あれは「大追跡」の前に
映研で作った
お蔵入りの作品よ
確か映画の中の殺人鬼
スコーピオンが画面から抜け出し
次々に人を殺していく
ホラーアクション物だって
聞いたわ
え？じゃあ
星野さんは見てないの？
ええ
だって私が映研に入る前の
作品だもん
私　中途入部だから
でも「サソリ座の惨劇」のことは
先輩の前では　しゃべっちゃダメよ
みんな　すっごく
険悪になっちゃうから
ふーん　お蔵入りの作品か
先輩　何ですか？私に話って
あっ
あなたのせいよ
あなたが現れなければ
すべてはうまくいったのに
そんな　私…
あ…　あれ？
カット　カット　どうしたんだ
素人にもやりやすいように
セリフを直してやってるだろう
すいません
あがっちゃって　つい
ちゃんとやれよ
これで３回目だぜ
なーんだよ　３回ぐらい
失敗したらフィルム巻き戻して
撮り直せばいいじゃん
あのね　君
これはビデオじゃないんだよ
フィルムなんだ
１度　撮ったらそれっきり
撮り直しはきかないんだ
え？しっつれい
いやあ　すみませんね　監督さん
美雪お姉ちゃん　今日は
どうも調子が出ないようで
あの何だったら　この私が
代わってもいいですけど
あっ　麦茶飲みます？
いや　僕は
ちょっとどいて　蔵沢部長は
マイカップでしか飲まないのよ
どうぞ　部長
ああ
フンッ　好かんヤツ
うん
よーし　今のシーンは後回しにして
日が陰る前に
手洗い場のシーンを撮ろう
七瀬君　衣装替えしてくれ
あ…　あ　はい
あ？わあ！
お待たせしました
ピチピチ　レオタード
この辺に誰か…
君　ちょっと
こっちへ来てくれないか
え？お…　俺？
よし　ここで決まりだ
ここで　こうやって
手洗ってりゃいいんすか？
そう　そんな感じだ
じゃ　いくよ　七瀬君
あ　はい
カット　６－１
ボールドお願いしまーす
はい　ボールド入った
本番　用意　はい！
カーット　カット
ああ　わりいわりい　美雪
やーん　びしょびしょ
なーにやってんだ　あのバカ
手…　あ　手がつい滑って
どうすんのよ
あ　せっけんが　あっ…
せっけんの中にカッターの刃が
はじめちゃん
このことに気付いて　わざと水を
金田一君
はーっ　はい！
君は役者には
どうも向いてないようだ
こっちはいいから　そこのダミーを部室に持ってってくれないか
あ　ダミーって？
あれだ
え　これ何に使うんすか？
高い所から飛び降りたり
車にひかれたりする大事な役者さ
ふーん　これがねー
ところで金田一君
君のおじいさんって
有名な探偵だったそうだね
え？
七瀬君から聞いたよ
僕も映画界の巨匠の孫でね
お互い偉大な祖父を持つと
苦労するね
別に　そんなことないっすよ
ほう？
じっちゃんのことは
誇りに思うけど
俺は俺だからさ
僕も君みたいに
ハナから諦められたら
どんなに楽か
なーにが巨匠の孫だ　バーロー
あー　疲れた疲れた
なーんだ　あの蔵沢っての
変なヤツ
はじめちゃんは悩みがなさそうで
羨ましいってことじゃない？
見かけで判断してもらっちゃ
困るぜ
俺だって悩みの１つや２つ
うわっ　す…　すいません
黒河さん　俺　べ…
出てって
怖かった
何だよー
そんなに怒るんなら
鍵ぐらい掛けとけっつうの
バカね
遊佐さん
黒河先輩は着替えを
人に見られるのが
すごく嫌いなのよ
男はもちろん女にもね
女にも？
なぜかは知らないけどさ
でも　あの人きれいでしょ
女の私でもポーッとしちゃうわ
はあ
ああ　そうそう　この部屋は
内側からもキーを使わないと
閉められないの
え？でも
普通ドアの内側には
回して開け閉めができる
ノブが付いてるんじゃ
このドアには　そういうノブは
付いてないわ
中に人を閉じ込められるようにね
この建物にある部屋は
全部　懲罰房だったんだから
懲罰房？
そっ
悪いことをした生徒を
ここに閉じ込めるのよ
おまけに　うちの部室は
校内でも有名な幽霊スポットでさ
夜中に女のすすり泣きが
聞こえるとか
変な老人が部屋の隅に
座ってるとか
うわっ
黒河先輩
あ…　あの　さっきはすいません
俺　ホントに…
いいのよ　気にしないで
私こそ　カッとなって
ごめんなさいね
ど…　どうも
遊佐さん　ちょっと
あ…　はい
よかった
もう怒ってないみたい
懲罰房か
く…　黒河先輩
分かってるのよ　あなたね
せっけんの中に
カッターを仕込んだのは
余計なことを
ご…　ごめんなさい
でも許せなかったんです
あんな子のために
先輩が主役を降ろされて
可愛い子
でも心配することないのよ
あなたが動かなくても星は動く
すべての運命は
天上の星座が決めてくれる
たとえ　それが
血の凍るような悲劇でもね
あいつ　こんな時間に
俺を呼び出すなんて
どういうことだよ
サソリ座か
チッ　やな星座だぜ
それにしても　あの呪いの
フィルムに出てきた
サソリ座の絵が
俺たちの作った映画
「サソリ座の惨劇」に
絡めたことだとしたら
まさか　あいつのことで
フッ　バカバカしい
おいおい　泉谷はどうしたんだ？
時間にうるさい　あいつが
遅刻なんて珍しいな
しかたがない　あいつ抜きで
ここのシーンを撮ろう
いいんですか？部長
そんなことしたら
また泉谷さん　カンカンですよ
セリフに一番
こだわってるんですから
構うことない
遅れてくるほうが悪いんだから
あ？な…　何だ
あれは　サソリ座
まさか
こ…　これは
い…　泉谷が
さ…　「サソリ座の惨劇」だ
あの映画にそっくりだよ
これじゃ俺たちみんな
殺されちまう
映画の中の殺人鬼　スコーピオンに
殺人鬼　スコーピオン
幻の映画「サソリ座の惨劇」に
見立てて行われた第１の犯行
スコーピオンが次に狙うのは
一体　誰だ
そして　ついに第２の犠牲者が
そうか　あの映画で感じた
違和感は　これだったのか
剣持のおっさん
これから　この映研部に隠された
誰もが触れたがらない
過去の秘密を暴いてみせるぜ
じっちゃんの名にかけて
金田一少年の事件簿﻿ある日　ひょんなことから美雪は
不動芸術高校の若き映画監督
蔵沢光に
映画出演を依頼された
だが　映画の撮影中に
俺たちが見たものは
それは
以前　蔵沢たちが撮った映画
「サソリ座の惨劇」になぞらえて
謎の殺人者スコーピオンが
振り下ろした　猛毒の一撃だった
見立て殺人だと？
ああ
以前　ここの映研で作られた
「サソリ座の惨劇」という
映画の殺人シーン　そっくりに
泉谷は殺されたらしいんだ
な…
だが　どうして
犯人は　そんなマネを？
それより　オッサン
犯人の手がかりは？
うーん
泉谷は殺される前
顔見知りに　ここに呼び出された
可能性があるんだ
そう
映研の連中は
一応　全員　事情聴取したが
泉谷の死亡時刻に
アリバイのある者は　いなかった
つまり
あの中の誰もが　泉谷を殺すことができたってわけだ
そっか
「サソリ座の惨劇」は
映画の中の殺人鬼スコーピオンが
画面から抜け出し
次々に人を殺していく
ホラーアクションものだって
次々に人を殺していく
映画の中の殺人鬼
スコーピオン…　くそっ
嫌な予感が
当たらなきゃいいんだが
ウワーッ！あ？
ポワロ！
お前　どうして　ここに？
おいで
あたしが連れてきたんだよ
お前が？
何で　ポワロを？
だって　あのロン毛が
撮影に使うからって
でも　こんなときに
撮影なんかできんの？
え　撮影だって？
まさか　それじゃあ…
もちろん　撮影は続行する
ここで中断したら　シネマ祭に
間に合わなくなってしまう
でも　泉谷さんが殺されたのに
撮影なんて！
友の死を　いたむのは
個人的な感情だ
そんなものに左右されていては
名作は作れない
なあ
お前も撮影続行に賛成だろ？
門脇
ああ…
そ　そんな
真田　お前は　どうだ？
さあ…
アンタの好きにすれば
これで決まりだな
じゃあ　今日の撮影は
予定どおり…
ちょっと　待ってくれ　蔵沢さん！
「サソリ座の惨劇」っていう
あなたたちが作った映画
もし　よかったら
俺に見せてもらえませんか？
は…　はじめちゃん
金田一君
ああ　あの駄作
あいにく　あんなものは
とっくの昔に
シナリオともども
処分してしまったよ
部外者には　一回も見せずに
処分してしまったんですか？
そうだ
あの映画は　当時から部員だった
泉谷　真田　門脇と
僕しか見てないハズさ
それなら　なお　妙ですね
門脇さんは　泉谷さんの死体が
あの映画のシーン
そっくりだと言ってましたが
彼の死体を　映画のシーン
そっくりに仕立てられた犯人は
「サソリ座の惨劇」を見た人物しか
考えられないんですよ！
フン　冗談だよ
駄作とは言っても
苦労して撮った作品を
捨てるハズがないじゃないか
ただ　どこにしまったかは
忘れたけどね
あ…　何なワケ　あの男？
感じワルー
月が　冥王星と重なったわ
え…
え？
何ごとも　起こらなければ
いいのだけれど
ああ…
あ　門脇さん
どうしたんですか
その　指のバンソウコウ？
ん？
ああ　これ
フィルムの編集中に
切ってしまったんだよ
よくあることさ
フィルムってのは
カミソリみたいに
鋭いものだからね
撮影　続行だと？
くそっ　蔵沢のヤツ
あの冷血人間め！
どこまで勝手なことを
ぬかしやがる
俺は降りる！
こんなクラブ　やってられっか
だいたい
あの映画のときだって
そうだ　泉谷が
「サソリ座の惨劇」に見立てて
殺されたんだとしたら
誰かが　本多の復しゅうを
してるとしか
考えられないじゃないか
いや　ひょっとしたら
あいつの亡霊が
あの映画から抜け出して
本物のスコーピオンに…
うわっ！
ス　スコーピオンか？
お　お前…
どういうことだ
まさか　泉谷も　お前が？
お前が　あいつを？
だ…　あれは俺のせいじゃ
た　助けて
助けてくれー！
信じらんないですよ　あの人
泉谷センパイが
あんな死に方をしても
撮影続行だなんて！
遊佐ちゃん
私　もう　このクラブ
やめちゃおうかな
そんな
いま　あなたに　やめられたら
困っちゃうわ
それに　ホラ
蔵沢部長って天才肌だから
私たちには　理解できないところもあったりするのよ
ハハーン
ひょっとして　おねえちゃん
蔵沢おにいちゃんに
ラブラブだな？
イヒ
ホラ　フミ　余計なことを
言うんじゃねえっつの
何すんだよ　レディーに対して！
あ　あの…
ナハッ　星野さん
このダミー人形
持っていくんでしたよね？
え…　ええ
お願いね　金田一君
ハイハイ
ま　まさか　このダミー人形
真田センパイ
何てこった
体育館のほうでは
まだ　警察が前の殺人を
調べてるっちゅうのに
あの門脇とかいうヤツが
こいつも　また
「サソリ座の惨劇」の殺人シーンに
そっくりだと言っとった
おまけに　死体の胸には
また例のサソリ座のマークと
きてやがる
あの映画は　当時から部員だった
泉谷　真田　門脇と
僕しか見てないハズさ
あの　門脇さん
くそっ！
え？
左右　逆転してるじゃねえか
何だって　こんなところで
つまんねえミス　しやがるんだ
どうしたんですか？
ああ　お前か
こいつを見てみろよ
同じシーンのハズなのに
真田の包帯が逆になってやがんだ
え…　ホントだ
でも　何で　こんな？
映画ってのは
ワンカットごとに撮影した
フィルムをカットし
いらないシーンを除いて
編集して　つなぎ合わせて
１本の作品にしていくんだが
同じシーンでも
カットごとに休憩が入ったり
違う日に撮ったりするから
ときどき　服とか
間違えたりすることがあるんだ
この場合は　休憩中　一度ほどいた
包帯を巻き直したとき
間違えて
逆の手に巻いちまってるんだよ
へえ
ったく
記録の星野が
しっかりしてねえから　こんな…
映画って　たいへんなんスね
うっかりすると
そんな　チグハグなこと…
門脇さん！
あの「大追跡」って映画
もう一度　見せてくれませんか？
どうしたんだよ　はじめ？
いきなり　こんな…
いいから
黙って見てろ
もし　俺の考えが
間違っていなかったら
ヤアッ！
やっぱり　そうか
はじめちゃん
何が　「やっぱり」なの？
分かったぞ
あのとき感じた違和感の正体が
はじめちゃん　違和感って？
門脇さん　すいません
いまのシーンを
もう一度　お願いします
門脇さん　どうしたんですか？
あ…　ごめん　ごめん
影…
大きな影が　ビルの上を通ってく
アドバルーンかしら？
いや
それなら
あんな動きはしないハズだ
それじゃあ　いったい…
そうか
ひょっとして
これから時間と場所が
特定できるかもしれない
美雪
え？
剣持のオッサンを
呼んできてくれ
まだ校内にいるハズだ　早く！
分かった
うん　あっ　ああ…
フィルムが
ここは　俺が片づけるから
早く行け！
あ　ごめん
あーあ　フィルムがバラバラだ
さてと　次は…
こいつを使わせてもらうか
芳香剤なんかで　何を？
あっ　門脇さん　どうしたの？
こんなところで
そ　そんなことは
どうだっていいんだ
僕には分かったんだよ　犯人が
スコーピオンの正体が
え？
僕たち映研には
いままで隠してきた事故が
２つ　あったのは知ってるよね
２つ？
１つは　本多の　あの事故
本多さんの事故？
もう一つは　撮影中ライトが
き…　君の上に落ちてきて
あっ　アアー！
あのとき
ショートしたライトのせいで
君の服が燃え上がって
君は　大きなヤケドを
背中に負った
それが？
最後まで言わせないでくれよ！
本多の復しゅうを演出して
本当は　君が
あのときの恨みを晴らすために
何を言ってるの？
第一　どういうことなの
本多さんの事故って？
ん　どうした　もめ事か？
おい　ちょっと　君！
あ　何でもないです
学校の友人で…
あ　そう
もう嫌　泉谷センパイの次は
真田センパイまで
うちのクラブって
いったい　どうなってるの？
あら？
どうしたの　黒河さん？
ラベンダーの香り
あっ　何よ　これ？
クサッ！
誰？こんなところに
芳香剤　ぶちまけたの
あー　俺です　スンマセン
何とか　よけて
入ってきてくれませんか？
ったく…
何だ　何だ　今度は？
スンマセン
そこ　よけて　入ってください
おっと
金田一　何だ　この水？
ああ　ちょっとね
実は　お前に頼まれてた
調べもんだが
それにしても
ここは　ちょっと蒸すな
うちの部室は　風通しが悪いんで
おい　遊佐！
何か冷たいもん　入れろよ
ったく　気が利かねえな
す…　すいません
ったく
ごっつあん
さて　金田一君
そろそろ話してくれないか？
われわれを　ここに集めたわけを
実は　みなさんに
ちょっとした実験に
協力してもらいたいんです
実験？
ここから　ここまで
１人ずつ
跳んでみてくれませんか？
そんなことで
何が分かるっていうんだ？
いいから早く
言われたとおり跳んでみろ
では
はい　ありがとうございました
じゃあ　次に　これを見てくれ
問題の部分だけ　ビデオに
移させてもらったんですが
まず　１つ目のシーンは
追われる主人公の真田さんが
コンクリートの土手を
ジャンプして逃げる場面
そして　２つ目が
この映画の見せ場でもある
主人公が　ビルからビルへ
飛び移る場面
この２つのシーンを見比べて
何か気づかないですか？
何かって　別に
どこも
ヘンじゃないと思うけど…
あっ　そういえば
踏み切ってる足が　左右逆ね
そのとおり
土手をジャンプする真田さんは
右足で踏み切っているのに
ビルを飛び移るときは
左足で踏み切っているんだ
本当だわ
そういえば　確かに
別に　そんなの　たまたま
違ってただけじゃないか？
たまたま？
いいえ　とんでもない
さっき　みんなに
飛んでもらったとき
門脇さんは左足
星野さんも左足
遊佐さんは右足
黒河さんも右足
蔵沢さんも右足
そして　これが　部室に入るとき
こぼれた芳香剤を
よけて飛んだ場面
え　いつの間に？
同じだわ
全員　さっきと同じ足で
踏み切ってる
そう　人には利き腕と同じように
利き足というのがあって
特別に意識しなければ
普通は　利き足で
踏み切るものなんだ
そのほうが　力も出るしね
真田さんは　顔の見えるシーンではすべて右足で踏み切っていたのに
いちばん力のいる
この見せ場のシーンでは
左足で　踏み切っていた
なぜか
それは
あのシーンで飛んでる男は
右が利き足の真田さんじゃなく
左が利き足の
別の誰かだったからですよ
別の誰かですって
誰よ　それ？
真田さん以外に
あんなシーンのできる人が？
確かに　この映画は
蔵沢　門脇　泉谷　真田の４人の
スタッフで作ったといわれている
だが　もう一人　ここに
危険なシーンを専門に演じる
スタントマンが
５人目のスタッフとして
参加していたとしたら？
さすが　名探偵の孫
目ざといというか…
確かに　君の言うとおり
スタントは使っていたよ
だけど　それは
どこでも　よく　やってることさ
別に珍しいことじゃない
俺が妙に思ったのは
そんなことじゃありませんよ
何？
あなたたちが
どうして
この５人目のスタッフを
まるで　初めから
いなかったかのように
扱っていたかってことですよ！
まして　この映画は
激しいアクションが売りだ
その　一大貢献者でもある
スタントマンを
映画にクレジットしないばかりか
４人で口裏を合わせて
その存在すら
もみ消そうとしなければ
ならなかったのは　なぜですか？
蔵沢さん　ひょっとして
アンタたちは
アクションに　こだわって
スタントマンに
次々と　むちゃな要求をし
そして　例の見せ場の
ビルを飛び移るシーンの撮影中
ついに　彼を殺してしまったんじゃないんですか？
ええっ！
何ですって？
殺した？
バカな
よくも　そんなデタラメを
デタラメか　どうかは
この影を調べれば　分かることさ
こんな影で
何が分かるっていうの？
ビルの屋上に移動する影なんて
そうそう　あるもんじゃない
こいつは　おそらく
広告用の飛行船か何かの影だろう
となると　飛行記録から
ルートや時間が
特定できるかもって思ったのさ
案の定　オッサンに調べて
もらったら　いろいろ分かったよ
去年の６月２５日に
不動山市一帯を飛行船が飛んでた
影の形や位置から考えて
時間は正午
この時間　飛行船は不動山市
タオカ２丁目の
不動産団地の上の辺りにいた
そのとき　取り壊し間近で
人けのない　この団地の屋上で
撮影中に　アンタたちは
スタント役の男を死なせたんだ
目撃証言も出てるんだよ
アンタたちが
グッタリした男を車に乗せ
ついにボロが出たな　ヘボ探偵！
あのとき　僕たちは
車なんか使っちゃ　あ…
も　もうダメだ
隠し切れないよ
蔵沢！
黙れ
そいつの言うとおりだよ
僕たちは　あのとき…
黙れって言ってんだ！
アンタ　何を？
え？
な　何だ　この強烈な眠気は？
はじめちゃん…
まさか
蔵沢がウーロン茶に薬を？
く　蔵沢…
何？
スコーピオンが死んだ？
俺たちが目覚めたときには
すでに　第３の犯行が
現場に残された
サソリ座を示すロウソク
カラカラ回るフィルム
密室が作り上げた完全犯罪
そして
フィルムに刻まれた謎の映像
トリックを解き明かすカギは
この名犬ポワロが教えてくれた
謎は　すべて解けた
真犯人は　お前だ！
金田一少年の事件簿…
ある日　ひょんなことから美雪は
不動芸術高校の若き映画監督
蔵沢光に
映画出演を依頼された
だが　その映画の撮影中に
次々と部員たちが殺されていく
殺人鬼スコーピオン
これは
以前　蔵沢たちが撮った
「サソリ座の惨劇」に
なぞらえた殺人なのか
な　何だ　この強烈な眠気は？
はじめちゃん…
まさか
蔵沢がウーロン茶に薬を？
く　蔵沢…
もう　どうして
声かけてくれないのよ
くそっ　バカはじめ
あたし１人　のけ者にして
みんな集めやがって
見てろよ　バラしてやる
アンタがベッドの下に隠してる
エロ本　ぜーんぶ
どうしたんだよ　ポアロ？
そんなに　ほえて
あ？
ウワアー！
は　はじめー！
フミ？
何だ　いまの悲鳴は？
どうなってるのよ？
私たち　いったい…
フミちゃん
あれ　あれ・・・
大丈夫か　フミ！
くそっ　カギが　かかってる
どいてろ　金田一　ブチやぶるぞ
どうした　フミ？
あれ…
あれは
か　門脇さん
このロウソクは？
スコーピオン
ロウソクで作られた　サソリ座だわ
スコーピオン…　あ　蔵沢は？
そういえば　部長
どこに行ったのかしら？
はじめちゃん
映写室から何か聞こえるけど
映写機の音か
くそっ
ここにもカギが　かかってやがる
下の　すきまから
中が見えるかも
中に誰かいるよ　足が見える
よーし　どいてろ
蔵沢
ウワア…　ポアロ！
どうした　ポアロ？
あの…　蔵沢部長は？
ダメだ　死んでる
おそらく　このカップで
毒物でも飲んだんだろう
死んだ…　蔵沢部長まで？
そんな　そんな…
イヤーッ！
剣持警部が　おっしゃるとおり
蔵沢のカップから
毒物が検出されました
われわれが飲まされた
睡眠薬入りのウーロン茶は
どうだ？
はい　薬はボトルではなく
紙コップのほうに
仕込まれていたようで
残されていた
６つの紙コップから
睡眠薬が検出されました
なるほど
蔵沢は　自分のカップでしか
飲まなかったそうだから
睡眠薬を飲まずに　すんだわけか
蔵沢が握っていた　カギの１つは
われわれが閉じ込められていた
部室のもので
もう一つは　この映写室のカギだ
この映写室の出入り口は
１つだけ
ということは
つまり　俺たちが入るまで
ここは　完全な密室だったんだよ
そうなると
答えは簡単だな　金田一
この時計　ずいぶんブカブカだな
ん　この傷は…
おい　聞いてるのか　金田一？
なあ　オッサン
蔵沢が死ぬ前に見てた
このフィルムを見たいんだけど
誰か　つないでくれないか？
私が　やるわ
すまんが　頼む
あ　その切れた先についてる
テープは？
これは
スプライシングテープよ
スプライシングテープ？
編集のとき
バラバラにしたフィルムを
つなぎ合わせる粘着テープよ
貼り方が不十分だったりすると
こんなふうに
映写機を回している最中に
取れてしまうこともあるの
ほら　これで大丈夫よ
あ　サソリ座
スコーピオン！
何か　書いてあるぞ
「これまでの殺人は
私　スコーピオンこと」
「蔵沢光の犯行である」
これは　蔵沢センパイの遺書？
「泉谷も真田も門脇も
そして私も」
「あの時の罪を
死んで償わねばならない」
あ…
「隣のビルに着地後」
「私たちは
彼を殺してしまった」
「私は自分の死をラストに」
「この殺人劇を　サソリ座の惨劇の
主役であった　彼」
これは　なくなったとか
言われてた　例の映画か
「サソリ座の惨劇」
やっぱり　ちゃんと　あったのね
確かに
死んだ門脇が言ったとおり
今回の事件の殺され方は
映画の中の殺人と
ソックリそのままのようだな
金田一　どうやら　これで
事件のカタがついたな
まず　睡眠薬入りの紙コップで
われわれを眠らせた蔵沢は
門脇を廊下に引きずり出して
ドアにカギをかけて
われわれを閉じ込め
映画のシーンのように
サソリ座の形にロウソクを並べ
門脇を殺害
そして　映写室の内側から
カギをかけた蔵沢は
あらかじめ用意しておいた
遺書の　このフィルムを眺めつつ
みずから　毒をあおって
殺人劇の幕を下ろした
そんな
蔵沢部長が犯人だったなんて
く　蔵沢さんが…
泣かないで　星野さん
彼は　暗い星の運命に負けたのよ
占星術では　蔵沢センパイは
天才的才能に恵まれながらも
自滅的運命の暗示も強いと
出ていたわ
最後の審判のときには
てんびん座が天を支配し
人々の罪の重さを量るという
でも　まだ　てんびん座は
傾いていない
あ　あれ？マンガだ
全然　違う話になったみたい
何でかな？
フフ　ヘンなマンガ
部屋の明かりを
あ　はい
遺書のフィルムに
どうして　こんな？
おかしいですね
このアニメーションは　確か…
あら？
これ　蔵沢部長が
この前　注文したフィルムが
届いちゃってる
え　フィルムって？
撮影前の未使用フィルムです
買い置きがなくなったので　部長がそれって
いつ注文したんですか？
ホラ
泉谷センパイが
フィルムを巻きつけられたとき
あれで　フィルムのストックが
全部なくなっちゃったから
そうか　やっぱり
何だって　蔵沢は自殺じゃない？
ああ　もし蔵沢が
最初から死ぬつもりなら
泉谷が殺された時点で
フィルムを大量に注文するのは
不自然だ
そうだね
死んじゃったら
フィルムは　いらないもんね
それに
あの蔵沢の告白フィルム
本多というスタントマンを
死なせたのは認めたけれど
彼の遺体を　どこに埋めたのか
一言も触れていない
罪の告白をするはずなのに
罪の証でもある
肝心の遺体の場所を
教えないなんて
かなり妙だと思わないか？
だが
あのフィルムを作った人物が
遺体の場所を
知らなかったのならば説明はつく
金田一　それじゃあ　蔵沢は…
ああ
ほかの３人同様　殺されたんだよ
誰に？
この事件の真犯人
スコーピオンにね
あれ？
大そうじ　してるんですか？
金田一君
いまのうちに整理しとけって
顧問の先生が
うちは　もう
つぶれたも同然だから
そりゃあ　うちは
人殺しのあった部ですからね
遊佐ちゃん
悪いけど　私
最後まで　蔵沢部長には
ついていけませんでしたから
まったく　３人も殺して
あんな自殺の仕方をして
映画の主人公にでも
なったつもりかしら
そんな…　部長は
自分で過去を償おうとして
巻き込まれた私たちは
いい迷惑よ！
やめなさい　遊佐さん
黒河センパイ
死んで反論のできない
人間の悪口は
言うもんじゃないわ
まして　星野さんが
蔵沢部長のこと好きだったのは
あなたも知ってるはずでしょ？
ゴミ捨ててきます
ああ…
彼女は　第１のハウスに
火星と冥王星が
コンジャンクションしてるから
自分の感情が
抑えられないことがあるのよ
手伝えよ　はじめ
ゴミ　まだ　いっぱいあるんだから
あ？ああ…
ったく
あら　紙コップが
こんなに　いっぱいある
これ　どうします？
それは　まだ使えるから
そこに置いといて
そうよね
１ダースそろってるものね
あ…　１ダース？
ほーら
ちゃんと持てよ
分かった　分かった
ボケッとしてんなよ
なあ　フミ
あ？
１２引く７は　いくつだ？
何　言ってんの
アンタ　高校生だろ
１２引く７は…　えーと
５に決まってんじゃん
１２引く７は　５…
だよな
これが
今回の事件で押収された品々です
何か　これで分かりそう？
はじめちゃん
俺たちが眠らされた　お茶は
ボトルのほうではなく
この紙コップに
薬が仕込まれていたんですよね？
そのとおり　お茶のほうからは
睡眠薬は検出されず
残っていた紙コップのほうから
検出されました
これは自分のカップしか使わない
蔵沢に罪を着せるための
犯人の細工の１つだろう
ハア？
だが　実際は　蔵沢のカップにも
遅効性の毒が仕込まれていて
みんなが倒れたあと
彼も毒が回って死んだ
確かに　このカップから
毒物を検出しました
でも　そうなると問題は
犯人が　どうやって
自分だけ睡眠薬を飲まずに
いられたかってことね
あのとき　紙コップは
みんな無差別に取ったし
もし　薬の入っていない
紙コップがあったとしても
選んで取るなんて　できなかったわ
そんなの簡単じゃん
きっと　飲むフリしたんだよ
そんなことしたら目立つわ
そういう不自然さって
分かるものよ
え…　うーん
それじゃ　どうして
この残った６個の紙コップにも
薬が入っていた
待てよ
ひょっとして　これは…
分かんないわ　やっぱり
薬を飲まずにすむ方法なんて
あった！
ホント　はじめちゃん？
あったぜ　ごく自然に
紙コップの睡眠薬を
飲まずにすむ方法が
このトリックを使えば
誰にも不自然に思われず
自分だけ
確実に　薬を飲まずにすむ
そして　それができる人間は
金田一
オッサン
意外なことが分かったぞ
そうか　どうやら
事件の真相が見えてきたぜ
しかし　まだ１つ
最大の謎が残っている
あのとき　密室だったのは
映写室だけじゃなかった
俺たちが閉じ込められていた
部室も　完全な密室だった
映写室同様
外側からは　もちろん
内側からもカギがないと
ロックできない
そして
部室の　たった一つのカギは
映写室のカギと一緒に
死んだ蔵沢が握っていた
つまり
あのとき　殺人現場では
二重の密室が
出来上がっていたんだ
二重密室…
この二重密室の謎さえ解ければ
よし　もう一度　現場だ
ねえ　はじめちゃん　そろそろ
アッ！
く　く…　蔵沢さん
ハッハハ
何　ビビッてんだよ
これは　ここのダミー人形だよ
何だ　ビックリした
はじめ
ロウソクも　あのときと同じに
サソリ座の形に立てといたぞ
サンキュー　フミ
金田一　これは　どうするんだ？
あ　オッサン
持ってきてくれた？
例のもん
ああ　ほれ　蔵沢の腕時計だ
ありがとう　オッサン
しかし
現場を再現するのは分かるが
何で　ヤツの時計に
こだわるんだ？
このベルトの穴を見てくれ
内側から３つ目の穴に
跡がついてるだろ？
蔵沢は　いつも
この穴に引っかけていたんだ
ところが　あのときの
蔵沢の腕時計のベルトは
いちばん端っこの穴で
留めてあったんだ
見た目にもユルユルの状態で
どうも引っかかってたんだよ
これで　よし
さて　再現を始めるぞ
俺たちが蔵沢を発見したとき
映写機は回っていた
いっけねえ
また　フィルムが切れちまった
スプライシングテープが
取れちゃったのかしら？
あら？これって　ちょうど
マンガに変わったところの
フィルムじゃない？
ほら　マンガよ　これ
こっちは確かに
「サソリ座の惨劇」のフィルムだ
あれ…
これって　ひょっとして
どうした？
こら　ポアロ
私が　なでようとしたら
いきなり　ほえられて
星野さん　何かラベンダーの
香りのするもの持ってない？
ラベンダー？
昨日　金田一君が部室でこぼした
ラベンダーの芳香剤を
ぞうきんで　ふいたわ
まだ　香りが残ってるのかしら？
きっと　それですよ
こいつ　ラベンダーの香りが
すっごく嫌いで
メチャメチャ　ほえるんですよ
そういえば　部室の入り口は
まだ　ラベンダーの香りがするから
ポアロ近づけたら　たいへんね
あのとき　ポアロが蔵沢の手に
ほえついたのは…
そうか　分かったぞ
金田一
何が分かったんだよ？
はじめちゃん？
映写室と部室
二重密室のカラクリが
分かったのさ
星野さん
あ　はい
黒河さんと遊佐さんにも
部室へ集まるように
伝えてください
え…　分かりました
謎は　すべて解けた
何なの　こんなところに
私たちを呼び出して
あ…
まあ　もうちょっと　待って
何か　暑くないっすか？
冷たいものでも飲みましょうか
そういえば　まだ
冷蔵庫に何かあったわね
あ　はい
私も手伝うわ
この紙コップで　いいですよね
どうぞ　黒河センパイ
ありがとう
あら　何もないわ
水だけ
ああ　すまん　すまん
冷蔵庫の飲み物は
調べさせてもらいました
今日は
その水でガマンしてください
ああ　ありがとう
星野センパイも
ああ　どうも
みんなに　紙コップが
行き渡りましたね
え　はい
何なの　これは　金田一君？
実は　これから　不動芸術高校の
映研部４人を殺害した犯人
スコーピオンの正体を
明らかにしようと思う
スコーピオンですって？
で　でも　犯人は蔵沢部長じゃ？
いや　彼も　また
スコーピオンの犠牲者さ
そして　いま　みんなが手に取った
この紙コップが
真犯人
スコーピオンの正体を
俺たちに教えてくれるはずだ
この　紙コップが？
ああ
そして
さまざまな状況から考えて
蔵沢たちを殺した真犯人
スコーピオンは
映研の女子部員である
君ら３人の中にいる
え…　私たち３人の中に？
犯人が？
そうだ　君たちの中にいる
アンタは狙いどおり
すべての計画を実行した
睡眠薬を
全員に飲ませたカラクリ
蔵沢の手に握られたカギが示す
密室トリック
しかけは　完ぺきだったよ
「大追跡」を撮影中のあの日
いったい　何があったのか
本多さんとアンタの接点は
何なのか　教えてくれ
君が　スコーピオンだね？
いま　すべての事件が
１つにつながる
金田一少年の事件簿…﻿不動芸術高校の映研部員たちが
謎の暗殺者スコーピオンによって
次々と殺されていった
さらに　蔵沢を犯人に仕立てて
彼を自殺に見せかけて殺害
真犯人スコーピオンは
映研の女子部員である
君ら３人の中にいる
私たち３人の中に
蔵沢部長たちを殺した犯人が？
そう　真犯人は
さまざまなトリックを使って
蔵沢さんに罪を着せようとした
俺たちと同じ　睡眠薬入りの
紙コップを使ったはずの犯人が
薬を飲まずにいられたのも
その１つさ
しかし　金田一
あのときは　蔵沢以外の全員が
同じ袋から　適当に紙コップを
ぬき取っていたじゃないか
犯人だけが薬を飲まないなんて
不可能だぞ
いや　不可能じゃない
えっ？
真犯人は
あるトリックを使ったんだ
その証拠が　あのとき余った
この薬入りの紙コップだよ
そ　その紙コップの余りが？
ああ　あのとき
この紙コップを使ったのは
俺　美雪　門脇さん　黒河さん
星野さん　遊佐さん
そして　オッサンを含めて７人
で　この余った紙コップだけど
ちょっと妙なことがあるんだ
妙なこと？
あれ　１個多い？
そう　１ダースは　１２個
１２引く７は　５
７人が紙コップを取ったのに
袋の中に６個残っていたなんて
ヘンだろ？
どういうことだ？
これは
ちょっとした
アクシデントの結果だ
え？
それは　みんなが集まったあと
部室に　やってきた
剣持のオッサンだった
俺が　アクシデント？
そもそも
この１ダースの紙コップ全部に
睡眠薬が仕込んであった
わけじゃない
犯人は自分が使うであろう
上から６つ目の紙コップには
薬は入れてなかったんだ
何だって
犯人の計画では
ここに集まる人数は
マグカップを使う
蔵沢さんを除いて６人
オッサンが来ることは
まるで予定外だった
だから　睡眠薬入りの
パックの準備を終えていた犯人は
かなり　あせったハズだぜ
予定外の人物が
増えちまったんだからな
おそらく　犯人は　とっさに
捨ててあった紙コップのうち
比較的キレイなのを１つ拾い
睡眠薬を入れると
封を開けたあとの
紙コップの束の上に
さりげなく重ねたんだ
こうして
１２引く７は　６という
奇妙な図式が
出来上がってしまった
つまり　あのとき　実際は
１ダースより１個多い
１３個の紙コップが入っていたのさ
分からないわ
いくら薬の入ってない紙コップを
１つ入れておいたとしても
コップを取る順番なんて
決まってないし
ヘタに選んで取ろうとすると
不自然にならないかしら？
いや　この中で　それを
ごく自然に取れる人物が
１人だけいる
そして　そのことは
みんなが取った
その紙コップが証明してくれる
睡眠薬の入っていない紙コップは
オッサンの紙コップを追加されて
上から７番目にあった
７人のうち　最後に
紙コップを取った人物だけが
薬を飲まずにいられたのさ
つまり　犯人は
意図的に最後のコップを取っても
まったく不自然に思われない
紙コップを配る側の人物
それは
あっ　アアー！
紙コップの水が血の色に
この事件の犯人は　アンタだよ！
遊佐チエミ
アンタこそ　泉谷　真田　門脇
蔵沢の４人を殺害し
すべての罪を　蔵沢さんに
なすりつけようとした張本人
スコーピオンだ
そ…　そんな！
遊佐ちゃんが？
アンタが　あのとき使った
トリックを　マネさせてもらったよ
あらかじめ配る人数に合わせて
アンタが取った
ラストの紙コップに水を入れると
赤く反応する
薬を塗っておいたんだ
アンタは映研で
いちばん下の後輩
お茶くみなどの雑用は
当然のように　やらされる立場だ
そして　紙コップを配る側として
当たり前のように
ラストの紙コップを
取ることができた
でも　どうして遊佐ちゃんが？
復しゅうだよ
自分の兄のためにね
兄？
剣持のオッサンに調べてもらって
分かったんだ
蔵沢さんたちに殺された
本多影行の両親は
５年前に離婚していた
本多は父方　２つ年下の妹は母方にそれぞれ引き取られた
その母方の姓は「遊佐」
それじゃあ…
そう　遊佐チエミは
死んだ本多影行の血を分けた
実の妹なんだ
な　何ですって！
ゆ　遊佐さんが？
そうよ
確かに私は本多影行の妹よ
でも　それが何だって言うの？
ただの偶然じゃない
第一　仮に
アンタの言うとおりに
私が薬を飲まずに　すんだとしても
そのあと　蔵沢センパイたちを
殺したりすることなんか
絶対　不可能だったわ
そうよ　部長は
密室だった映写室で死んでたのよ
同じ密室だった　この部室に
閉じこめられていた私に
何が　できるって言うの？
しかも　カギは２つとも
自殺した部長が握ってたのよ
それが　できるんだよ！
え？
アンタは　この部屋にいながら
あの二重密室を作り上げたんだ
何？
でも　カギがなければ
この部室も映写室も
ドアをロックできないはずよ
ああ　そのカギは　ここにある
いまから　このカギを
二重密室の壁を　すり抜けて
死体発見現場の映写室に
送り込んでみせよう
ええっ？
このトリックの最大のポイントは
一連の殺人事件の
見立てにも使われ
蔵沢さんが　死の直前に
見ていたと思われていた映画
「サソリ座の惨劇」にある
そして　そのフィルムを
映写機にかけるという行為
そのものが
二重密室を作り上げるうえで
必要不可欠だったからさ
何だと！
どういうこと？
これを見てくれ
それは？
蔵沢さんの死体の横で回っていた
フィルムの切れ端だよ
見てのとおり　先っぽには
カットしたフィルムをつなぐ
スプライシングテープが
ついている
そのテープが
映写機が回っている最中に
切れたように思われるが
実際には
このフィルムの先についていた
ものは　フィルムじゃない
これだ
フィルムに　カギが！
ああ　あとは　こうして
このカギを床に置く
ああっ！
カ　カギが
フィルムに引っ張られて
ドアの下を　くぐっていくわ
金田一　これは？
さあ　見てくれ
これが　二重密室のトリックだ
な…
ああっ！
ロウソクで作ったサソリ座が
滑車代わりに
映写室のほうに向かっていくわ
それじゃあ
あのとき回ってた映写機は
そうさ
映画を映すためじゃない
部室まで伸ばした
フィルムの先につけたカギを
巻き取るための動力源として
使われていたんだ
これだけ大がかりなトリックだ
アンタは　きっと
何回も試してみたはずだ
だが　単に映写機を使っただけじゃ途中で引っかかったりして
うまくいかなかったんだろう
そこで　アンタは
「サソリ座の惨劇」の中に出てくる
ロウソクのサソリ座を
利用することを思いついた
ロウソクを
滑車代わりにすることで
廊下の角に引っかからず
確実にカギが
映写室に行くようにした
つまり　この一連の殺人が
「サソリ座の惨劇」に見立てられた
本当の理由は
最後のトリックに使われた
あのロウソクの滑車を
カモフラージュするための
ものだった
そして　映写室に運ばれたカギは
自動的に死体の手に握らされる
自動的に？
ああ
お　おい　金田一
お…　こ　これは
腕時計のベルトの中に
フィルムが
やがて　スプライシングテープで
留めてあったフィルムの輪が
ベルトに　つっかかると
軽く留めてあったテープがはがれ
カギは死体の手の中に落ちる
蔵沢さんの時計のベルトが
ユルユルに留めてあったのは
このフィルムを通すため
だったんだ
こうして　うまいぐあいに
死体の手の中に落ちたカギは
死後硬直が進むにつれ
指が閉じて
カギを握った状態になる
どうだい？
アンタは　こうやって
二重密室を完成させたんだ！
フッ　まいったな
どうして
このトリックに気づいたの？
キッカケは２つあった
１つは
途切れた「サソリ座の惨劇」の
続きが
まるで違う映画になってたことだ
アンタは　ちゃんと
「サソリ座の惨劇」の続きを
用意していた
おそらく
すぐ分かるように　フィルムの箱にしるしでも　つけてね
だが　それを　美雪が倒して
俺が中身と箱を
バラバラに入れちまったんだ
そんなこととは知らない　アンタは
フィルムの確認もせずに
映写機にセットしてしまった
おかげで　あんな
チグハグな映画の　つぎ合わせが
できちまったってわけだ
そして　もう１つが
蔵沢さんの死体にほえたポアロさ
ポアロが？
あのとき　ポアロは
何か教えようとしてる
みたいだったけど
本当は手の中にあった
カギに向かって　ほえていたんだ
ポアロはラベンダーの匂いが
大嫌いだから
俺が部室にまいた
ラベンダーの芳香剤の上を
引きずられたカギに
その匂いがついてて
怒って　ほえたのさ
そう考えれば　蔵沢さんの
手首の傷にも納得がいく
あれは　カギを運ぶ
フィルムによって　ついた傷だった
そう…　そんなことで
バレちゃうなんてね
遊佐ちゃん　あなた…
私が　やったの
私が　蔵沢たちを殺したの
え…
どうして？
あなたのお兄さんは
事故で亡くなったんでしょ？
なのに　蔵沢センパイを…
事故？
冗談じゃないわ
あんなの絶対　事故じゃない
そうよ　お兄ちゃんは
蔵沢たちに　だまされて
無理やり奈落の底に
突き落とされたの！
だ　だまされたって…
どういうこと？
お兄ちゃんは
ちっちゃなころから
アクション俳優になるのが
夢だった
両親が離婚したときから
一人暮らしを始めた　お兄ちゃんは
本気で夢を実現しようと
役者の勉強をしていたわ
私は　そんな　お兄ちゃんに
ちょくちょく会いに行ってた
だって…
だって　私は　世界で一番
お兄ちゃんが
好きだったんだもの
ヤッホー　お兄ちゃんの大好きな
栗ようかん持ってきたよ
よお　チエ
あれ　出かけんの？
オウ　今日は　これから撮影だ
なーんだ
あっ
今日は　どんなことすんの？
１２階のビルからビルへ
飛び移る？
そんなのやめてよ　お兄ちゃん
落ちたら死んじゃうよ！
ったく　これだから　チエは
こういうのは　たいてい
下にマットが敷いてあって
落ちても大丈夫なように
なってんの
だって
チエ！
俺は　これでも
アクション俳優志望だぜ
命がけのアクションに
やりがい感じてんだ
たとえ　アマチュア映画でも
俺は手を抜きたくないんだよ
お兄ちゃん
あ　アハ…
ああっ　やべえ
もうこんな時間だ！
じゃあな　チエ
あ…
よっと
お兄ちゃん！
こ　これ！
お兄ちゃんを見たのは
それが最後だった
警察にも連絡して
思い当たるところは
全部　調べたけど
何も手がかりはなくって
お兄ちゃんが
一緒に映画を作ってた仲間すら
どこの誰かも分からなくて
捜査は打ち切られたわ
でも　私
何となくピンときたの
その映画仲間が　きっと
何かを知ってるんじゃないかって
それから　私は
自主映画という映画を
片っぱしからチェックしたわ
多いときには　１日１０本
頭がガンガンして　立ってるのが
やっとなときもあった
そして　あの日　ここの学園祭で
あの映画を見つけたのよ
スリリングなアクション？
こ　これは！
間違いない
顔の見えないアクションシーンは
全部　お兄ちゃんだ
じゃあ…
お兄ちゃんは
スタントマンで　この映画に？
でも　ヘンだわ
パンフレットにもテロップにも
お兄ちゃんの名前が
どこにもない
ハハハハ…
いやあ　準グランプリ取ったなんて夢のようだぜ
ホント
これで俺らも業界入りってか？
ヘッヘヘヘヘヘ
それにしてもさ
本多のビル飛びのシーンには
ビビッたよな
門脇がカメラに映るからって
マットはずさなきゃ
あいつだって　いまごろ…
あのアングルじゃねえと
迫力出ねえって言い張ったのは
泉谷　お前だろ！
よっしゃあ
あのとき
いきなり突風が吹いて…
あれは　俺たちのせいじゃねえよ
あのくらい
俺だったら楽勝だったぜ
あいつは　ビビッちまったから
落ちたんだ　あんなヤツより
そこのダミー人形のほうが
よっぽど　役に立つぜ
ま　いずれにしろ
あんまり危険なシーンは
ダミー人形を使ったほうが
いいだろう
なあ　蔵沢
ああ　分かってるよ
ダミー人形なら
ビビッて　とちったり
死んだりすることもないしな
ダミー人形なら
死なないですって？
お兄ちゃんは
人形以下だとでも言うの？
お兄ちゃんは　マットが
敷いてあるから安全だって
言ってたのに…
あいつら　そう言っといて
スタントを引き受けた
お兄ちゃんを　だましたのよ
きっと　本番になってから
理由つけて　マットをはずして
嫌がるお兄ちゃんは　無理やり
ジャンプさせられたんだわ
しかも　お兄ちゃんが
命がけで演じたおかげで
準グランプリを取れたのに
あいつら　お兄ちゃんを
名前すら出ることのない
スタントマンとして
まるで
いなかったもののように扱った
許せると思う　そんなの？
あたしは後悔なんかしてない
そうよ　あたしは
みじめな思いで死んでいった
お兄ちゃんの恨みを晴らすために
復しゅう鬼
スコーピオンになったんだから
優しい人だったわ　本多さん
「大追跡」の撮影のとき
私は入院中で
本多さんが死んだことは
知らなかったわ
でも彼の優しさに
ふれたことがあった
撮影中に事故に遭ったのは
本多さんだけじゃないわ
私も
アアー！
あのとき　私を心配して
かけよってきてくれたのは
本多さんだけだった
蔵沢部長や　ほかの人たちは
ただ立ちつくしているだけで
それどころか
このことが学校側に知られると
これからの活動に支障を
きたしてしまうって　動揺してた
本多さんは
そんな人たちに構わず
私を病院に運んでくれたわ
あんな優しい本多さんが
喜ぶかしら？
あなたのしたことを
そうよ
お兄ちゃんは優しい人だった
そんな　お兄ちゃんを
ヤツらは殺したのよ
その事実は変わらないわ
黒河さん
あなたが事故に遭ったとき
本多さん以外の人は
何もしてくれなかったって
言ってたけど
なぜ　そんな連中と
ずっと一緒に？
そうね
映画　好きだから
オッサン　遊佐チエミは
あれからどうなんだ？
それがな　母親が面会に来ても
ロクに会話もせんし
食事も　ほとんど
手をつけんらしい
自暴自棄っていうか　自分なんか
どうでもいいって感じだな
そんな…
よっ！
あ　アンタは…　何しに来たのよ？
アンタに
こいつを渡そうと思ってさ
その時計！
昨日　例の現場になった
無人の団地近くの排水溝で
発見されたんだ
じゃあ　お兄ちゃんは…
ああ
その時計　私が去年
お兄ちゃんのバースデーに
プレゼントしたものよ
お兄ちゃん
とても気に入ってくれて
行方不明になったあの日も
身に着けてた
かわいそうな　お兄ちゃん
スタントマンとして
日の当たらない危険な役を
無理やり　やらされて
死んで用済みになったら
ゴミのように捨てられて
みじめすぎるじゃない　そんなの！それは違うよ
えっ？
これを見てくれ
それ　撮影のスケジュール表？
ああ　「大追跡」のね
これを見て
俺　妙なことに気づいたんだ
妙なこと？
監督としての蔵沢さんは　普段
映画のストーリーに　そって
最初から撮影してたんだってね
ええ
ところが　映画の中盤である
例のビルを飛ぶシーンを
撮ったあとに
映画の前半部　主役の真田さんが
出てくるシーンだけを
あとから突然　スケジュールに
割り込ませて撮っている
リテイクだとしても
かなり不自然だ
でも　主役を事故で失った
蔵沢さんたちが
急きょ　真田さんを代役に
撮り直したんだとしたら
そ　それじゃあ…
ああ　スタントマンじゃなく
主役だったんだ　本多影行こそが
お兄ちゃんが　主役？
アンタのお兄さんは
無理やりアクションを
やらされたんじゃない
映画の主役として　誇りを持って
挑んだんじゃないかな
あの映画の　一番の見せ場である
あのアクションシーンに
彼以外のヤツなら　誰だって
二の足を踏んでいただろう
でも　彼は
恐れてなんかなかったと思うぜ
だって　彼が飛ぼうとする
その先には
彼が求めて　やまなかった
光り輝くアクションスターへの
道が開けてたんだから
お兄ちゃん…
見てみたかったな
アンタのお兄さんが主役だった
「大追跡」
真田さんの主役は
準グランプリだったけど
アンタのお兄さんが主役だったら
どうだったかな？
そんなの決まってるわ
間違いなく　グランプリよ
主役かあ
遊佐さんのお兄さん
命がけで演じてたのね
うん
でも　映画作るのって
ホントに　たいへんなのね
出演者も裏方さんも
みんな　必死になって
そう思って見ると
どんな映画も　なんか
みんなステキに思えそう
美雪
ん　なあに？
あのさ
映画　見に行くか
うん！
行こう　行こう！
ああ　おい…
早く　早く！
引っ張るなって　慌てなくたって
大丈夫だよ
俺も　カミさんと
久しぶりに行ってみるか
秀央高校のホームズ？
誰がよ
どうせ　高校時代の
自慢話だろうけど聞いてやるよ
え　明智さんを悩ませてる
１０年越しの謎だって？
誰も　いないはずの図書室
散らかった本の中に
突如　現れた死体
黒く塗りつぶされた物理全集
姿なき殺人者
よーし　秀央のホームズさん
アンタの謎は
俺が解いてみせる
金田一少年の事件簿
あれ　警視どちらへ？
ちょっと出掛けてきますよ
高校時代の友人との
大事な約束でね
高校時代の友人？
そういや警視は
どこの高校出身だっけ？
ほら秀央だろう
都内の私立の
秀央っつったら只野
お前と一緒か
全然一緒じゃないっす
俺は万年Ｄクラス
明智警視は特Ａクラスですからね
何だよ　その特Ａっていうのは？
秀央はＡからＥまで能力別に
クラス分けされているんです
へえ
その中でも
特Ａクラスっていうのは
英才教育の
超エリートコースなんですよ
何しろ特Ａの文系は
８割が東大法学部へ行き
その９割が
高級官僚になるんですから
すごいな　おい
じゃあ　あの人は高級官僚の椅子
蹴って刑事になったってわけ？
態度も嫌味だけど
存在自体が嫌味なんだよ
でも　何で刑事になんて
人をいたぶるのが
趣味なんじゃねえの
おい
あ？
ほう　人をいたぶるのが趣味で
存在自体が嫌味ねえ
それって誰のことです？
なあ　おい
例の件どうしたっけ？
ああ　そうそう　あれね
わお　これが秀央高校っすか
さすが都内の名門校
一ちゃんやめてよ
恥ずかしいよ
だって　すごいんだぜ
ＩＤカード式の電子ロックに
パソコン教室にエアコン完備
学食にはフランス料理や
イタ飯まであるんだぜ
一ちゃん　あたしたちは
模試を受けに来たのよ
おばさんに言われてるんでしょ
このテストが悪かったら
学校辞めろって
平気平気　準備はバッチリだぜ
さっ　行くか
一ちゃん
まだ４５分もあるわよ
１分でも早く準備しないとな
珍しい
ええっと　俺の席は７２番だから
ああ　窓際の一番後ろか
最高の場所だな
さっ　準備準備と
必殺裏技カンニングペーパー
テストが始まる前に
これを机にっと
ん？ああ
落書きだらけじゃん
秀央って進学校で有名だけど
俺らと大して違わねえな
まずは　これをきれいに消して
ええと１時間目は日本史か
１４６７年応仁の乱
１９０４年にっしん戦争
にっしんってどう書くんだ
おや　違ってますよ
１９０４年は日露戦争ですよ
え　そうだっけ
あ　ほんとだ　サンキュー
常識です
へ？
その自らの知識を鼻にかけた
嫌味な口調はもしかして
机の上に答えを書き込むなんて
工夫も何もない
カンニング方法ですね
明智警視　まさか
カンニングで逮捕しに来たとか
残念ながらテスト中の不正行為は
私たちの管轄ではありませんよ
だったら何でこんな所に？
はい　そこまで
結局　机には半分しか
答えが書き込めず
テストはボロボロ
学校辞めさせられたら
あんたのせいだぞ
自業自得でしょ　一ちゃん
ところで金田一君
この机に
何か書き込みのようなものは
ありませんでしたか
あったよ
なんか　わけ分かんない
詩みたいなのが
それだけですか
ああ
そんなはずないです
消してしまったんじゃないですか
しつこいねえ　あんたも
だったらどうだっての
私は１０年前
この秀央高校に通ってたんです
今　君が座っている席は
当時の私の席
そして今日　この机には
私が１０年間抱えていた謎の答えが
書き込まれているはず
だったんです
１０年間抱えていた謎？
ええ　それが友人との約束でした
なんか遠い目しちゃって
らしくないぜ
いったいどんな謎なんですか？
へえ　面白そうじゃねえか
その謎　俺が解いてやるぜ
君が？
ああ　じっちゃんの名にかけてな
１０年前の春
私とその友人は
青春時代のさなかにいました
Ａ　Ｂ　Ｃ
ない　ないぞ
ほら
Ｄクラスにあるぜ　お前の名前
やっべえ２ランク落ちかよ
やったあ
滑り込みセーフ　Ａクラス
良かった　一緒だわ
見てみて
特Ａの人たちよ
ちっ　いいよなあ　あいつら
良かったあ　ギリギリで
クラス落ちは免れた
悔しい　また２位だわ
今度もあいつに勝てなかった
２位でもご不満とは
理想が高いねえ
どう思う　ホームズ？
５教科５００点満点　３年連続トップ
別に大したことじゃないよ
ワトソンくん
すごいなあ
大して
ガリ勉してるわけでもないのに
次は負けないわよ
ねえ　ほら　見て見て
秀央のホームズ様よ
エリートグループの中でも
超トップ
素敵よねえ
容姿端麗　頭脳明晰
天は二物を与えずって　嘘よね
ああ　ムカつく
なんかこれって
単なる自慢話じゃねえのか
大体その秀央のホームズって
聞いてて恥ずかしくなるような
ネーミングは何？
高校時代は
ミステリーマニアでね
いつの間にか
そう呼ばれていたんです
なんか明智さんの高校時代って
どんなだったか
想像しにくいですね
ごく普通の高校生でしたよ
ほら　あそこに
小高い丘があるでしょ
あ？ああ
あのでっかい木のある
ニレの木ですよ
私たちはあの場所を
会議室と名付けて
よく集まって謎解きを
競い合ったものでした
いい空だなあ
ああ
いつも私の傍らにいた和島は
ホームズの相棒の
ワトソンと呼ばれていました
推理作家志望の赤沢
いい気持ちだな
生徒会長のかおる
それで今日の問題は何なの？
じゃあ今日は俺から
近頃　携帯電話とか
持ってるやつ増えてきただろ
電波が絶対届かない地下室で
１人の男が携帯を
握りしめて死んでいた
殺されたその男は
地下室では役に立たない
携帯電話で
何をしようとしてたのか？
地下でねえ　うーん
どうかな　この謎
今日こそホームズ明智も
お手上げと願いたいね
そうだな
待って　あたしが解くわ
殺された男は
犯人の名前を残そうとしたのよ
電話は英語で
テレフォンだから
犯人は「てるあき」とか
「てるよ」とか
そんな名前　でしょ？
０点
君はどう　ワトソン君？
ううん
ホームズのベストパートナー
ワトソン和島としてはだな
この謎の答えは
ホームズ　君に任せるよ
何それ
ワトソンは変に出しゃばったりは
しないものなんだ
ホームズの活躍を待つのが
ワトソンの役目　だろ？
相変わらず調子がいいね
ワトソン君
じゃあ　ホームズ
君の意見を聞かせてくれ
携帯電話には
リダイヤル機能が付いていて
かけた電話が通じなくても
メモリーに電話番号が残ってる
それを知っていた被害者は
電波が通じていないのを承知で
犯人の電話番号を
ダイヤルしておいたんだよ
ああ
被害者は
そうやって少しでも犯人の
手がかりを残したかったのさ
ついでに言うなら犯人は
被害者と非常に親しい人物だ
死に際のわずかな時間に
ダイヤルできたってことは
犯人の電話番号を
暗記してたってことだからね
ああ　これで１２連敗かあ
すごいよ　ホームズ
お前やっぱり
警視庁に入るしかないよ
お前が刑事になるんなら
俺　監察医になるよ
監察医か　和島はもともと
医者志望だったもんな
２人で難事件を
バンバン解決ってわけね
おいおい　人の将来を
勝手に決めないでくれよ
未来はまだ
あの空のように遠いんだ
未来か
絶対　推理作家になってやるぜ
あたしの夢は卒業試験で
明智君に勝つことかな
ちょっと　どうしたの　道子？
ほら　あれ
ああ　３ランク落ちの
３Ｅの内田寛
なんか去年の夏休みあたりから
急に悪くなったやつでしょ
放課後まで勉強ってわけじゃ
ないわよね
あんなやつが
うろちょろしてるなんて
物騒よね
げ　目合ったかも
あ　４時半か
そろそろ行かなきゃ
あたし　予備校行かなきゃ
俺　バイト
僕は日誌を書かないと
誰かこの本戻してくれないかな
一番上だから
あたし届かないのよ
そこの木の台使えば？
だって…
あ　そうか　高所恐怖症か
よっと
ちょ　ちょっと
メキメキ言ってるわよ
平気平気
俺は軽いからね
うらやましいよ　俺なんて
テストのストレスで
また５キロも太ったのに
あれ　明智
僕は少し遊んでくから
遊び？
ああ　あれね
最近コンピューター室で
プログラム組むのに
凝ってるんだって
へえ
導入されたばかりで先生だって
ろくにいじれないっていうのに
さすが　明智君ね
ホームズ明智は
僕らとは出来が違うもの
なあ赤沢
ああ　かおるお嬢は恋する乙女か
やあね　そんなんじゃないわ
赤沢君だって
もう少し努力すれば
明智君みたいになれるかもよ
元は意外といいんだから
これが俺なんだよ
明智と比べるなよ
あたし生徒会室に寄ってくから
かおるはやっぱり明智のこと…
俺たちの友情は
明智を中心に回ってる
３人とも明智を
尊敬してる　心から
明智にはかなわない
だけど俺４人で
友達ごっこしてるのが
近頃つらくなってきたんだ
俺　かおるのこと…
赤沢
これで全部？
ええ
じゃあ　そろそろ
ここも閉めましょうか
もう５時半だわ
よう　来たな
いいな
このことは誰にも言うなよ
もし言えば優等生ヅラした
お前のやったことを
全部バラしてやる
ふふふ…
こちらも異常なしです
了解
ここも異常なし
オーケー
あれ　コンピューター室に誰かいる
ああ　きっとまた彼ですよ
また君か
ああ　こんばんは
いい加減に帰りなさい
７時半には電子ロックが働いて
出られなくなるぞ
あ　ほんとだ
早く片付けて帰りなさいよ
はい　ご苦労様です
やれやれ　あと少しなのに
おはよう
宿題やった？
うん　バッチリ
あたし　図書室寄ってから行くわ
じゃあ　教室でね
ええ
あ　もう誰よ
こんなに本を散らかしたの
なになに　ちょっとどうしたの？
図書室で人が殺されたんだって
３Ｅの内田だろ
ほら　３ランク落ちの
ああ　あの不良
死体は本に埋まるようにして
見つかったんですって
ふうん　ミステリーだな
何かの見立てかな
さあ
内田って不良のくせに
本の虫だって話だけど
それと何か関係あるのかしら
赤沢　かおる
どうした　和島
大変だ
明智が警察に
え？
何ですって？
さあ　洗いざらい
正直に話すんだ
言ってしまえば気が楽になるぞ
どうやら僕は今回の事件の
重要参考人のようですね
でもなぜ僕が
最も重要な参考人なのか
差し支えなければ
聞かせていただきたいのですが
いいだろう
図書室で死体が発見されたのは
今朝８時３０分だ
死体は死後１０時間以上
経過していて
動かされた形跡はなかった
秀央は夜７時３０分に
すべての出入口の
自動ロックシステムが作動し
ロックが解除される翌朝まで
ネズミ１匹出入りできない
つまり犯行は
ゆうべの７時３０分以前に
図書室で行われたと
いうことですね
正確には
７時から７時３０分の間だ
いつも通り７時に
図書室の見回りをした時には
死体はありませんでした
死体のあった位置から考えて
２人同時に見落とすなんて
ありえませんよ
この校舎は
５時以降は正面玄関から
ＩＤカードとなっている学生証を
使わなければ
出ることができない
誰が何時に校舎を出たか
すべてＩＤカードを通じて
記録に残っているんだ
調べた結果
犯行があった７時以降に
校舎を出たのは　ただ１人
君だよ　明智君
仮に僕が内田という男に
何らかの理由で
殺意を持っていたとしましょう
でもね　権堂刑事
僕ならこれほど真っ先に
自分に疑いのかかる状況では
絶対に彼をやったりしませんよ
明智君
おい明智　大丈夫なのかよ
さあ　あんまり大丈夫じゃ
ないみたいだよ　今の状況では
ひとごとみたいに言うなよ
俺ら　すっげえ心配してたんだぜ
明智君　警察はあなたが
犯人と決めつけてるんでしょ
このままじゃ　マジでやべえぞ
もちろん　このままで
済ますつもりはないよ
え？
この事件は
僕に対する姿なき挑戦だ
僕をこんな目に遭わせた真犯人は
必ずこの手で捕まえてみせる
秀央のホームズ
明智健吾の名にかけてね
そう来なくっちゃ
よおし　とうとう来たぞ
ホームズが
本物の事件に乗り出す時が
本に埋もれた死体の謎ってとこか
あたしも協力するわ
みんな
さあ　とりあえず現場検証だ
よし　やろう
まず本に埋もれた
死体の謎を解くことだ
あの奥よね　発見されたのは
まだ片付いてないわ
大量の本は何のために
和島
はい　見取り図だろ
できてるよ
さすがワトソンね
内田が発見された時の
状況通りに書いたつもりだ
７時の見回りの時
警備員が死体を
見落としてたとしたら？
そしたら犯行時間は
７時以前でも可能になるでしょ
いや　それはないだろ
出入口から真正面の本棚の奥に
ぶちまけられた本の山と
それに埋もれた内田を
２人そろって見落とすなんて
いくら暗くても　ありえないよ
ったく　誰よ
こんないたずらしたの
これってあのぶちまけられた
本の一部でしょ
君たち　何してるの？
え
あ　あの…
誰かが本の背に
マジックでいたずらを
タイトルを
黒く塗りつぶしちゃったんです
それで２人で拭いてるところです
タイトルをマジックで？
それ内田のそばに
散らばってた本だよね？
はい
それ全部を？
いえ　物理全集だけです
どうしたの　明智君？
そうか
何か分かったのか
ああ　どうやら分かったよ
犯人が仕組んだトリックが
え？
死体の上に大量の本が
ぶちまけられてた理由は
見立てなんかじゃない
犯人が自らのアリバイを
作り出すためだったんだ
ゆうべ警備員が校舎を見回った
夜７時　死体は既に
あの場所にあったんだ
犯人はこの本を巧妙に使って
一時的に死体を
見えなくしていたんだ
え？
そ　その物理全集で？
え？
そんな
どういうことなの　明智君？
ふうん
黒く塗りつぶされた物理全集
魔法のようなトリック
金田一君　私の１０年越しの謎は
ひとまず　とっておきましょう
金田一君には犯人の
アリバイ・トリックが分かりましたか？
ああ　分かったぜ
間違いない　真犯人は
明智さん
あんたのすぐそばにいたんだ
私には　すぐにトリックの
意味するところが分かりましたよ
そして犯人…
明智さん　自慢話はいいから
早く１０年越しの謎を
教えてくれよ
最後まで人の話を聞きなさい
つまり１０年越し…
なんだ
そんなの簡単じゃん
これだからエリートは困るよな
ほお
君なら分かると言うんですか
あったりまえじゃん
じっちゃんの名にかけて
金田一少年の事件簿
金田一少年のかわら版﻿あれ　警視どちらへ？
ちょっと出掛けてきますよ
高校時代の友人との
大事な約束でね
高校時代の友人？
そういや警視は
どこの高校出身だっけ？
ほら秀央だろう
都内の私立の
秀央っつったら只野
お前と一緒か
全然一緒じゃないっす
俺は万年Ｄクラス
明智警視は特Ａクラスですからね
何だよ　その特Ａっていうのは？
秀央はＡからＥまで能力別に
クラス分けされているんです
へえ
その中でも
特Ａクラスっていうのは
英才教育の
超エリートコースなんですよ
何しろ特Ａの文系は
８割が東大法学部へ行き
その９割が
高級官僚になるんですから
すごいな　おい
じゃあ　あの人は高級官僚の椅子
蹴って刑事になったってわけ？
態度も嫌味だけど
存在自体が嫌味なんだよ
でも　何で刑事になんて
人をいたぶるのが
趣味なんじゃねえの
おい
あ？
ほう　人をいたぶるのが趣味で
存在自体が嫌味ねえ
それって誰のことです？
なあ　おい
例の件どうしたっけ？
ああ　そうそう　あれね
わお　これが秀央高校っすか
さすが都内の名門校
一ちゃんやめてよ
恥ずかしいよ
だって　すごいんだぜ
ＩＤカード式の電子ロックに
パソコン教室にエアコン完備
学食にはフランス料理や
イタ飯まであるんだぜ
一ちゃん　あたしたちは
模試を受けに来たのよ
おばさんに言われてるんでしょ
このテストが悪かったら
学校辞めろって
平気平気　準備はバッチリだぜ
さっ　行くか
一ちゃん
まだ４５分もあるわよ
１分でも早く準備しないとな
珍しい
ええっと　俺の席は７２番だから
ああ　窓際の一番後ろか
最高の場所だな
さっ　準備準備と
必殺裏技カンニングペーパー
テストが始まる前に
これを机にっと
ん？ああ
落書きだらけじゃん
秀央って進学校で有名だけど
俺らと大して違わねえな
まずは　これをきれいに消して
ええと１時間目は日本史か
１４６７年応仁の乱
１９０４年にっしん戦争
にっしんってどう書くんだ
おや　違ってますよ
１９０４年は日露戦争ですよ
え　そうだっけ
あ　ほんとだ　サンキュー
常識です
へ？
その自らの知識を鼻にかけた
嫌味な口調はもしかして
机の上に答えを書き込むなんて
工夫も何もない
カンニング方法ですね
明智警視　まさか
カンニングで逮捕しに来たとか
残念ながらテスト中の不正行為は
私たちの管轄ではありませんよ
だったら何でこんな所に？
はい　そこまで
結局　机には半分しか
答えが書き込めず
テストはボロボロ
学校辞めさせられたら
あんたのせいだぞ
自業自得でしょ　一ちゃん
ところで金田一君
この机に
何か書き込みのようなものは
ありませんでしたか
あったよ
なんか　わけ分かんない
詩みたいなのが
それだけですか
ああ
そんなはずないです
消してしまったんじゃないですか
しつこいねえ　あんたも
だったらどうだっての
私は１０年前
この秀央高校に通ってたんです
今　君が座っている席は
当時の私の席
そして今日　この机には
私が１０年間抱えていた謎の答えが
書き込まれているはず
だったんです
１０年間抱えていた謎？
ええ　それが友人との約束でした
なんか遠い目しちゃって
らしくないぜ
いったいどんな謎なんですか？
へえ　面白そうじゃねえか
その謎　俺が解いてやるぜ
君が？
ああ　じっちゃんの名にかけてな
１０年前の春
私とその友人は
青春時代のさなかにいました
Ａ　Ｂ　Ｃ
ない　ないぞ
ほら
Ｄクラスにあるぜ　お前の名前
やっべえ２ランク落ちかよ
やったあ
滑り込みセーフ　Ａクラス
良かった　一緒だわ
見てみて
特Ａの人たちよ
ちっ　いいよなあ　あいつら
良かったあ　ギリギリで
クラス落ちは免れた
悔しい　また２位だわ
今度もあいつに勝てなかった
２位でもご不満とは
理想が高いねえ
どう思う　ホームズ？
５教科５００点満点　３年連続トップ
別に大したことじゃないよ
ワトソンくん
すごいなあ
大して
ガリ勉してるわけでもないのに
次は負けないわよ
ねえ　ほら　見て見て
秀央のホームズ様よ
エリートグループの中でも
超トップ
素敵よねえ
容姿端麗　頭脳明晰
天は二物を与えずって　嘘よね
ああ　ムカつく
なんかこれって
単なる自慢話じゃねえのか
大体その秀央のホームズって
聞いてて恥ずかしくなるような
ネーミングは何？
高校時代は
ミステリーマニアでね
いつの間にか
そう呼ばれていたんです
なんか明智さんの高校時代って
どんなだったか
想像しにくいですね
ごく普通の高校生でしたよ
ほら　あそこに
小高い丘があるでしょ
あ？ああ
あのでっかい木のある
ニレの木ですよ
私たちはあの場所を
会議室と名付けて
よく集まって謎解きを
競い合ったものでした
いい空だなあ
ああ
いつも私の傍らにいた和島は
ホームズの相棒の
ワトソンと呼ばれていました
推理作家志望の赤沢
いい気持ちだな
生徒会長のかおる
それで今日の問題は何なの？
じゃあ今日は俺から
近頃　携帯電話とか
持ってるやつ増えてきただろ
電波が絶対届かない地下室で
１人の男が携帯を
握りしめて死んでいた
殺されたその男は
地下室では役に立たない
携帯電話で
何をしようとしてたのか？
地下でねえ　うーん
どうかな　この謎
今日こそホームズ明智も
お手上げと願いたいね
そうだな
待って　あたしが解くわ
殺された男は
犯人の名前を残そうとしたのよ
電話は英語で
テレフォンだから
犯人は「てるあき」とか
「てるよ」とか
そんな名前　でしょ？
０点
君はどう　ワトソン君？
ううん
ホームズのベストパートナー
ワトソン和島としてはだな
この謎の答えは
ホームズ　君に任せるよ
何それ
ワトソンは変に出しゃばったりは
しないものなんだ
ホームズの活躍を待つのが
ワトソンの役目　だろ？
相変わらず調子がいいね
ワトソン君
じゃあ　ホームズ
君の意見を聞かせてくれ
携帯電話には
リダイヤル機能が付いていて
かけた電話が通じなくても
メモリーに電話番号が残ってる
それを知っていた被害者は
電波が通じていないのを承知で
犯人の電話番号を
ダイヤルしておいたんだよ
ああ
被害者は
そうやって少しでも犯人の
手がかりを残したかったのさ
ついでに言うなら犯人は
被害者と非常に親しい人物だ
死に際のわずかな時間に
ダイヤルできたってことは
犯人の電話番号を
暗記してたってことだからね
ああ　これで１２連敗かあ
すごいよ　ホームズ
お前やっぱり
警視庁に入るしかないよ
お前が刑事になるんなら
俺　監察医になるよ
監察医か　和島はもともと
医者志望だったもんな
２人で難事件を
バンバン解決ってわけね
おいおい　人の将来を
勝手に決めないでくれよ
未来はまだ
あの空のように遠いんだ
未来か
絶対　推理作家になってやるぜ
あたしの夢は卒業試験で
明智君に勝つことかな
ちょっと　どうしたの　道子？
ほら　あれ
ああ　３ランク落ちの
３Ｅの内田寛
なんか去年の夏休みあたりから
急に悪くなったやつでしょ
放課後まで勉強ってわけじゃ
ないわよね
あんなやつが
うろちょろしてるなんて
物騒よね
げ　目合ったかも
あ　４時半か
そろそろ行かなきゃ
あたし　予備校行かなきゃ
俺　バイト
僕は日誌を書かないと
誰かこの本戻してくれないかな
一番上だから
あたし届かないのよ
そこの木の台使えば？
だって…
あ　そうか　高所恐怖症か
よっと
ちょ　ちょっと
メキメキ言ってるわよ
平気平気
俺は軽いからね
うらやましいよ　俺なんて
テストのストレスで
また５キロも太ったのに
あれ　明智
僕は少し遊んでくから
遊び？
ああ　あれね
最近コンピューター室で
プログラム組むのに
凝ってるんだって
へえ
導入されたばかりで先生だって
ろくにいじれないっていうのに
さすが　明智君ね
ホームズ明智は
僕らとは出来が違うもの
なあ赤沢
ああ　かおるお嬢は恋する乙女か
やあね　そんなんじゃないわ
赤沢君だって
もう少し努力すれば
明智君みたいになれるかもよ
元は意外といいんだから
これが俺なんだよ
明智と比べるなよ
あたし生徒会室に寄ってくから
かおるはやっぱり明智のこと…
俺たちの友情は
明智を中心に回ってる
３人とも明智を
尊敬してる　心から
明智にはかなわない
だけど俺４人で
友達ごっこしてるのが
近頃つらくなってきたんだ
俺　かおるのこと…
赤沢
これで全部？
ええ
じゃあ　そろそろ
ここも閉めましょうか
もう５時半だわ
よう　来たな
いいな
このことは誰にも言うなよ
もし言えば優等生ヅラした
お前のやったことを
全部バラしてやる
ふふふ…
こちらも異常なしです
了解
ここも異常なし
オーケー
あれ　コンピューター室に誰かいる
ああ　きっとまた彼ですよ
また君か
ああ　こんばんは
いい加減に帰りなさい
７時半には電子ロックが働いて
出られなくなるぞ
あ　ほんとだ
早く片付けて帰りなさいよ
はい　ご苦労様です
やれやれ　あと少しなのに
おはよう
宿題やった？
うん　バッチリ
あたし　図書室寄ってから行くわ
じゃあ　教室でね
ええ
あ　もう誰よ
こんなに本を散らかしたの
なになに　ちょっとどうしたの？
図書室で人が殺されたんだって
３Ｅの内田だろ
ほら　３ランク落ちの
ああ　あの不良
死体は本に埋まるようにして
見つかったんですって
ふうん　ミステリーだな
何かの見立てかな
さあ
内田って不良のくせに
本の虫だって話だけど
それと何か関係あるのかしら
赤沢　かおる
どうした　和島
大変だ
明智が警察に
え？
何ですって？
さあ　洗いざらい
正直に話すんだ
言ってしまえば気が楽になるぞ
どうやら僕は今回の事件の
重要参考人のようですね
でもなぜ僕が
最も重要な参考人なのか
差し支えなければ
聞かせていただきたいのですが
いいだろう
図書室で死体が発見されたのは
今朝８時３０分だ
死体は死後１０時間以上
経過していて
動かされた形跡はなかった
秀央は夜７時３０分に
すべての出入口の
自動ロックシステムが作動し
ロックが解除される翌朝まで
ネズミ１匹出入りできない
つまり犯行は
ゆうべの７時３０分以前に
図書室で行われたと
いうことですね
正確には
７時から７時３０分の間だ
いつも通り７時に
図書室の見回りをした時には
死体はありませんでした
死体のあった位置から考えて
２人同時に見落とすなんて
ありえませんよ
この校舎は
５時以降は正面玄関から
ＩＤカードとなっている学生証を
使わなければ
出ることができない
誰が何時に校舎を出たか
すべてＩＤカードを通じて
記録に残っているんだ
調べた結果
犯行があった７時以降に
校舎を出たのは　ただ１人
君だよ　明智君
仮に僕が内田という男に
何らかの理由で
殺意を持っていたとしましょう
でもね　権堂刑事
僕ならこれほど真っ先に
自分に疑いのかかる状況では
絶対に彼をやったりしませんよ
明智君
おい明智　大丈夫なのかよ
さあ　あんまり大丈夫じゃ
ないみたいだよ　今の状況では
ひとごとみたいに言うなよ
俺ら　すっげえ心配してたんだぜ
明智君　警察はあなたが
犯人と決めつけてるんでしょ
このままじゃ　マジでやべえぞ
もちろん　このままで
済ますつもりはないよ
え？
この事件は
僕に対する姿なき挑戦だ
僕をこんな目に遭わせた真犯人は
必ずこの手で捕まえてみせる
秀央のホームズ
明智健吾の名にかけてね
そう来なくっちゃ
よおし　とうとう来たぞ
ホームズが
本物の事件に乗り出す時が
本に埋もれた死体の謎ってとこか
あたしも協力するわ
みんな
さあ　とりあえず現場検証だ
よし　やろう
まず本に埋もれた
死体の謎を解くことだ
あの奥よね　発見されたのは
まだ片付いてないわ
大量の本は何のために
和島
はい　見取り図だろ
できてるよ
さすがワトソンね
内田が発見された時の
状況通りに書いたつもりだ
７時の見回りの時
警備員が死体を
見落としてたとしたら？
そしたら犯行時間は
７時以前でも可能になるでしょ
いや　それはないだろ
出入口から真正面の本棚の奥に
ぶちまけられた本の山と
それに埋もれた内田を
２人そろって見落とすなんて
いくら暗くても　ありえないよ
ったく　誰よ
こんないたずらしたの
これってあのぶちまけられた
本の一部でしょ
君たち　何してるの？
え
あ　あの…
誰かが本の背に
マジックでいたずらを
タイトルを
黒く塗りつぶしちゃったんです
それで２人で拭いてるところです
タイトルをマジックで？
それ内田のそばに
散らばってた本だよね？
はい
それ全部を？
いえ　物理全集だけです
どうしたの　明智君？
そうか
何か分かったのか
ああ　どうやら分かったよ
犯人が仕組んだトリックが
え？
死体の上に大量の本が
ぶちまけられてた理由は
見立てなんかじゃない
犯人が自らのアリバイを
作り出すためだったんだ
ゆうべ警備員が校舎を見回った
夜７時　死体は既に
あの場所にあったんだ
犯人はこの本を巧妙に使って
一時的に死体を
見えなくしていたんだ
え？
そ　その物理全集で？
え？
そんな
どういうことなの　明智君？
ふうん
黒く塗りつぶされた物理全集
魔法のようなトリック
金田一君　私の１０年越しの謎は
ひとまず　とっておきましょう
金田一君には犯人の
アリバイ・トリックが分かりましたか？
ああ　分かったぜ
間違いない　真犯人は
明智さん
あんたのすぐそばにいたんだ
私には　すぐにトリックの
意味するところが分かりましたよ
そして犯人…
明智さん　自慢話はいいから
早く１０年越しの謎を
教えてくれよ
最後まで人の話を聞きなさい
つまり１０年越し…
なんだ
そんなの簡単じゃん
これだからエリートは困るよな
ほお
君なら分かると言うんですか
あったりまえじゃん
じっちゃんの名にかけて
金田一少年の事件簿
金田一少年のかわら版﻿１０年前　秀央高校の図書室で
１人の生徒が殺された
そして当時のその高校に
通っていた明智さんが
重要参考人として
警察の取調べを
受けることになってしまった
果たして真犯人は誰なのか
真犯人は必ず
この手で捕まえてみせる
秀央のホームズ
明智健吾の名にかけてね
え？
そ…　その物理全集で？
え？
一体どういうこと　明智君？
このトリックを
解き明かすポイントは３つ
１つめは　事件のあと
物理全集の背表紙の文字が
すべて黒く
塗りつぶされていたということ
２つめは
内田がこの黒い本を含めた
大量の本に埋もれていたこと
３つめは　遺体が三方を
本棚に囲まれた
奥にあったってことだ
どうだい　和島
ワトソンとしてどう推理する？
う…　うーん
明智君　じらさないで教えて
うん　つまり最大のヒントは
この図書館の本棚は
すべて黒いってことさ
君　ちょっとこのマジック
落としてない本　貸してくれる？
は？あ　はい
この本は１冊１冊バラバラでは
何の意味も持たない
しかし塗り潰した黒い本を
横にして
その上に普通の本を縦に乗せて
両脇を黒い本で挟み
更にその上に黒い本を横に並べる
これを繰り返しながら
積み上げていくと
何に見える？
これは本棚
インスタントの本棚だわ
そうか分かったぜ　明智
つまり犯人はこの部分に
偽の本棚を作り
入り口から見えないように
カムフラージュしたんだ
あっ
そのとおり
警備員が図書室を見回った
夜７時頃
室内はかなり暗かったはずだ
遠目には普段どおり本棚が
あるようにしか見えなかったろう
だが偽の本棚の裏には
既にこと切れた内田が
横たわっていたんだよ
犯人は見回りが来る前に
急いでこの偽本棚のトリックを
作り終えると
ＩＤカードの学生証で
帰宅記録を残して
学校をあとにした
そして自動ロックが解かれた
翌朝１番に来て
遺体を隠してる本の壁を
崩したんだ
じゃあ　内田が
本に埋もれてたのは…
ああ　本の壁を崩したそのあとさ
犯人は計算していた
遺体には死後
動かされた形跡が無く
検視で死後１０時間以上
経っていると明らかになることも
警備員がゆうべ７時には
異常は無かったと証言したのも
すべて思惑どおりだったんだ
こうして犯行時刻は夜７時から
７時半の間になり
７時以前に帰った真犯人は
アリバイを手に入れることが
できたんだ
なんてこった
なかなか頭のきれる奴じゃねえか
そんなトリックを思いつくなんて
この犯人　犯罪に関しては
特Ａクラスものね
君たちは昨日の夕方も
当番だったの？
あっ　はい
昨日は
５時半まで　ここで一緒に
片付けをしていました
５時半までここにいたってことは
犯行があったのは５時半以降
つまり犯人は
午後５時半から７時の間に
校舎にいて
アリバイの無い人物だ
おーい　明智
これから容疑者探しだろ？
手伝ってくれるのかい
ワトソン君？
無論だよ　ホームズ
この事件は
ワトソンとホームズの事件簿の
記念すべき最初の１ページに
なるんだからな
あのー
えっ
やめなさいよ
そんな告げ口みたいなこと
でも　もしかしたら
事件に関係あるかも
私　見たんです
何をだい？
昨日　教室を出て
帰ろうとした時…
ん？
かおる先輩
もう１人は誰だか
分かりませんでしたけど
それは何時頃だった？
６時近くです
間違いありません
なんだって
和島　確か　かおるは…
ああ　とっくに予備校に
行ってたはずの時間だ
かおるのわけないよ
かおるはその時間　僕が
日直で残ってることを知ってた
もしかおるなら
僕のとこに顔を出してたはずだ
お？おい　何やってんだ？
学校の事務室のデータを
ハッキングしてるのさ
ハッキングって
コンピューターに
侵入するっていうあれか？
ああ　昨日の午後５時以降に
帰った人物は
ＩＤカードキーで
すべてデータに記録されている
事務室でいちいち説明して
頼むのも面倒だしね
はー　お前って奴は
そんなことまでできるのかよ
よし　出たぞ
あっ
かおる　何かの間違いだろ？
いや　５時半以降に帰ったのは
この６人だけだ
そんなあ
しかも赤沢とかおるは
同じ時間に下校してる
じゃあ　争っていたのは
かおると赤沢？
そんなあ
確かに
さっきの証言と照らし合わせると
つじつまが合うが
目撃者の堀口啓子も
また容疑者の１人なんだ
そうだな　午後５時半から
７時の間に学校を出たのが
他に俺たちと図書委員の
２人だけだとすると
犯人は　この６人の中にいる
何か分かったか　明智？
高いな
え？
だめだ　上の棚まで全然届かない
１８０センチ近くあるお前が
届かないんなら
俺なんか　なおさら無理だな
もちろん
１６５センチしかない赤沢や
かおるにも無理だろうね
図書委員の２人にもな
おそらく犯人は
例の偽の本棚を作るために
台の上に乗って作業したはずだ
ああ　あれか？
この木の台だろ？
いや　見ろよ
この引きずったような跡
あの鉄の台か
こ…　これ結構重いぜ
これは血だ
おそらく被害者のものだろう
犯人の靴の裏に付いた
わずかな血痕が
のぼった時に付いたんだ
それじゃあ　犯人はこの台を使って
ああ　しかし
なぜ犯人は…
お？明智？
そうか　分かったぞ　犯人が
なんだって？
俺たちの中に
犯人がいるってどういうことだ
ああ
ここに集まってもらったのは
それを説明するためさ
和島から聞いたと思うが
犯行時刻に学校にいたのは
ここにいる６人だけなんだ
それは…
とにかく事件の真相を
明らかにする
犯人割り出しの決め手は
犯行時刻にアリバイが無いのは
この６人だけだということ
そしてもう１つ　犯行の際の
犯人のある不可解な行動なんだ
不可解な行動？
まず６人の中で
真っ先に容疑から外れたのは
かおるだ
え？
犯人が偽の本棚を組み上げるには
棚の１番上の高さまで届くために
どうしても台が必要になる
だが　かおるは筋金入りの
高所恐怖症だ
組み上げるのに時間のかかる
台の上での作業に
彼女が耐えられるはずがない
ここで残る容疑者は
僕を除くと４人になるわけだが
最後の決め手になったのは
あの鉄の台だ
付着していた血痕
その鉄の台が
犯行に使われたことは
間違いない
でも　どうしてあんな遠くから
わざわざ重い台を？
こっちの木の台の方が軽いし
現場の近くにあったのに
そう　その不自然さこそが
犯人が誰なのかを
証明しているんだ
犯人はその木の台を
使いたくても使えなかったのさ
え？
赤沢
お？
ちょっと
この台に乗ってみてくれないか
え？
赤沢　ちょっと
この台に乗ってみてくれないか
ああ
前に見た時もそうだが
赤沢ならこの木の台でトリックを
実行するのは十分可能だ
無論　小柄な君たちにも
可能だと思う
だが赤沢以上に
重い人物が乗ると…
このとおり壊れてしまうんだ
つまり犯人は
わざわざ遠い所にある鉄の台を
ひきずって来なければ
ならなかった
体重の重い人物
和島
君しかいないってことになる
君がこの事件の犯人だ
残念だよ　本当に
和島？お前が？
これ以上僕からは追及しないよ
物的証拠が見つかるまで粘るか
自首するかは君の意思に任せる
ただ　僕としては
月並みだけど
自首することを勧めるよ
それが君にとっても
１番いい選択だと思う
いやあ　俺の負けだ
まったく見事な推理だったよ
ホームズ
和島
君の言うとおり
内田を殺したのは俺だ
俺　あいつに脅迫されてたんだ
脅迫？
ああ
この間のクラス編成テストで
カンニングやっちまってさ
カンニング？
どうして？和島君なら
そんなことしなくたって
十分に…
背伸びしてたんだよ　俺
俺の頭じゃ
本当は特Ａクラスなんて
もう
ついていけなくなってたんだ
ところが　そのカンニングを
あの内田ってやつに見られてさ
あいつに金とか
しつこくせびられてたんだ
へへっ　いいな
このことは誰にも言うなよ
もし言えば　優等生ヅラした
お前のやったことを
全部ばらしてやる
ふふふ…
次はこれより
もっといいものを頼むぜ
な…　何を
なあに
ひとけの無い所に
呼び出してくれればいいんだ
生徒会長のかおるをな
か…　かおるを？
あとはこっちで
うまくやるからさあ
な　何をする気だ　かおるに？
嫌とは言わねえよな　優等生
や　やめろ…　かおるは関係無い
かおるには手を出すな
なんだ　お前もかおるに
ほれてたのか？
だったら余計あの女を
ズタズタにしてやりたくなったぜ
ふふふ…
やめろ　やめろー
あとは君の推理したとおりさ
明智
偽本棚のトリックは
いつか君に出そうと思ってた
とっておきの推理クイズの
ネタだったんだ
和島　お前　かおるのこと…
告白はここまでだ
俺　自首するよ
待ってくれ　和島
最後に１つだけ教えてくれ
君には分かっていたはずだ
あのトリックを使えば
僕が容疑者になることを
それを知っていて　なぜ？
その謎は君が解けよ
え？
これはワトソンからホームズへの
最後の挑戦だ
答えは１０年後
今の君の席の机に書いておくよ
じゃあな　ホームズ明智
さようなら　ワトソン
それが明智さんが１０年間も
解けなかった謎ってわけ？
ええ
かーっ　やだやだ
こんな簡単なことに
１０年も頭抱えてるなんて
君には分かるっていうんですか？
金田一君
ちっちっちっ　簡単簡単
ま　あんたみたいなタイプにゃ
１００年かけても
分かんねーだろうけどよ
和島ってやつは
別に罪から逃げたくて
そんなトリックを
使ったんじゃない
あんたに謎を解かれるのを
計算済みで
あんたに容疑がかかるトリックを
わざと使ったんだよ
なぜ？
その和島ってやつも
言ってたんだろ？
ホームズの活躍を待つのが
ワトソンの役目だって
殺人を犯した自分は
もうあんたと同じ道は歩めない
だから最後に自分で作った
とっておきの謎を
あんたに吹っかけて
その謎を解き明かす
ホームズ明智の姿を
自分の中に
記憶しておきたかったんだろう
分かるかよ　明智さん
あんたの活躍を
心底待ち望んでいたのは
他ならぬ　犯人の
和島自身だったんだよ
ああ　すいません
え？何？
君　その机は？
さっきちょっと
ここから借りたんです
借りた？
それじゃあ
１０年前の明智さんの席って
ちょっと失礼
あっ　はあ？
会議室にて待つ？
和島
やっぱり１０年前の約束を
忘れていなかったんですね
会議室って明智さんたち４人が
そう呼んでた場所だろ？
あそこです
やあ
やっぱり来てくれたのね
ホームズ
かおる
赤沢
あはははは…
こーら　タカシ
パパ
ほーら　この人が
パパとママがいつも自慢してる
ホームズ明智だよ
それじゃあ
うん　１０年前の
あの事件のあった日
俺は図書室で初めて
かおるに告白したんだよ
こいつ怒って泣き出してね
友達の関係を
突然壊されて動揺したのよ
それが今じゃあ…
私　今は女医なの
この人は雑誌の編集者
この間　俺のミステリーが
入選したんだ
作家デビュー目指して
毎晩書いてる
今もしぶとく夢を諦めないのよ
ホームズ明智警視の活躍は
よく知ってるよ
それで和島は？
あいつも来てるんだろ？
ああ　来てるさ　ここに
え？
和島の遺品だ
それじゃ　和島は
私たちにも突然だった
先月だったわ　外国から
小さな小包みが届いたのは
中にはこのスクラップブックと
メモ帳が入っていたの
今となっては
詳しいことは分からない
途切れ途切れのメモから
想像できるのは
和島君が通信教育を経て
必死で医師の免許を取ったこと
外国の無医村に渡ったこと
そして去年の秋
その村を洪水が襲って
あいつは
覚悟していたように思える
人ひとりの命を奪った償いを
いつかしたいと願っていたんだ
彼が亡くなったあと
ボランティアの人が
医師のつてをたどって
私に遺品を送ってくれたのよ
あいつ　この春　一時帰国するのを
楽しみにしていたそうだ
この文をお前の机の上に
書くつもりだったのさ
明智　最後の謎は解けたかい？
和島…
覚えているかい？
未来がまだ
遠い彼方だった頃のことを
すごいや　ホームズ
お前やっぱり
警視庁に入るしかないよ
お前が刑事になるんなら
俺　監察医になるよ
監察医か　和島はもともと
医者志望だったもんな
２人で難事件を
バンバン解決ってわけね
おいおい　人の将来を
勝手に決めないでくれよ
未来はまだ
あの空のように遠いんだ
未来かあ
でも　すごいのね　一ちゃん
何が？
明智さんの１０年越しの謎
スラスラ解いちゃって
気持ちが分かるのさ
え？
俺もじっちゃんっていう
ホームズの活躍を
ワクワクしながら見てた
いたずらガキんちょの
ワトソンだったからさ
あれからお互い歩む道は
遠く離れてしまったけど
俺はいつまでも
君の活躍を待ち望んでいる
お前は俺にとって
永遠のホームズなんだから
はい　ニーハオ　ニーハオ
上海ガニ　シェイシェイ　上海ガニ
なんだよ　美雪
恥ずかしいのかよ
そもそもお前が
心細いって言うから
わざわざ中国まで
ついて来てやったんだぞ？
でも来てよかった
レイリーちゃんって
ムチャムチャかわいいし
しかもショーの主役じゃん
今の悲鳴は？
魚人遊戯の呪い？
ヤン雑技団に伝わる
死の伝説って一体何だ？
金田一少年の事件簿﻿１０年前　秀央高校の図書室で
１人の生徒が殺された
そして当時のその高校に
通っていた明智さんが
重要参考人として
警察の取調べを
受けることになってしまった
果たして真犯人は誰なのか
真犯人は必ず
この手で捕まえてみせる
秀央のホームズ
明智健吾の名にかけてね
え？
そ…　その物理全集で？
え？
一体どういうこと　明智君？
このトリックを
解き明かすポイントは３つ
１つめは　事件のあと
物理全集の背表紙の文字が
すべて黒く
塗りつぶされていたということ
２つめは
内田がこの黒い本を含めた
大量の本に埋もれていたこと
３つめは　遺体が三方を
本棚に囲まれた
奥にあったってことだ
どうだい　和島
ワトソンとしてどう推理する？
う…　うーん
明智君　じらさないで教えて
うん　つまり最大のヒントは
この図書館の本棚は
すべて黒いってことさ
君　ちょっとこのマジック
落としてない本　貸してくれる？
は？あ　はい
この本は１冊１冊バラバラでは
何の意味も持たない
しかし塗り潰した黒い本を
横にして
その上に普通の本を縦に乗せて
両脇を黒い本で挟み
更にその上に黒い本を横に並べる
これを繰り返しながら
積み上げていくと
何に見える？
これは本棚
インスタントの本棚だわ
そうか分かったぜ　明智
つまり犯人はこの部分に
偽の本棚を作り
入り口から見えないように
カムフラージュしたんだ
あっ
そのとおり
警備員が図書室を見回った
夜７時頃
室内はかなり暗かったはずだ
遠目には普段どおり本棚が
あるようにしか見えなかったろう
だが偽の本棚の裏には
既にこと切れた内田が
横たわっていたんだよ
犯人は見回りが来る前に
急いでこの偽本棚のトリックを
作り終えると
ＩＤカードの学生証で
帰宅記録を残して
学校をあとにした
そして自動ロックが解かれた
翌朝１番に来て
遺体を隠してる本の壁を
崩したんだ
じゃあ　内田が
本に埋もれてたのは…
ああ　本の壁を崩したそのあとさ
犯人は計算していた
遺体には死後
動かされた形跡が無く
検視で死後１０時間以上
経っていると明らかになることも
警備員がゆうべ７時には
異常は無かったと証言したのも
すべて思惑どおりだったんだ
こうして犯行時刻は夜７時から
７時半の間になり
７時以前に帰った真犯人は
アリバイを手に入れることが
できたんだ
なんてこった
なかなか頭のきれる奴じゃねえか
そんなトリックを思いつくなんて
この犯人　犯罪に関しては
特Ａクラスものね
君たちは昨日の夕方も
当番だったの？
あっ　はい
昨日は
５時半まで　ここで一緒に
片付けをしていました
５時半までここにいたってことは
犯行があったのは５時半以降
つまり犯人は
午後５時半から７時の間に
校舎にいて
アリバイの無い人物だ
おーい　明智
これから容疑者探しだろ？
手伝ってくれるのかい
ワトソン君？
無論だよ　ホームズ
この事件は
ワトソンとホームズの事件簿の
記念すべき最初の１ページに
なるんだからな
あのー
えっ
やめなさいよ
そんな告げ口みたいなこと
でも　もしかしたら
事件に関係あるかも
私　見たんです
何をだい？
昨日　教室を出て
帰ろうとした時…
ん？
かおる先輩
もう１人は誰だか
分かりませんでしたけど
それは何時頃だった？
６時近くです
間違いありません
なんだって
和島　確か　かおるは…
ああ　とっくに予備校に
行ってたはずの時間だ
かおるのわけないよ
かおるはその時間　僕が
日直で残ってることを知ってた
もしかおるなら
僕のとこに顔を出してたはずだ
お？おい　何やってんだ？
学校の事務室のデータを
ハッキングしてるのさ
ハッキングって
コンピューターに
侵入するっていうあれか？
ああ　昨日の午後５時以降に
帰った人物は
ＩＤカードキーで
すべてデータに記録されている
事務室でいちいち説明して
頼むのも面倒だしね
はー　お前って奴は
そんなことまでできるのかよ
よし　出たぞ
あっ
かおる　何かの間違いだろ？
いや　５時半以降に帰ったのは
この６人だけだ
そんなあ
しかも赤沢とかおるは
同じ時間に下校してる
じゃあ　争っていたのは
かおると赤沢？
そんなあ
確かに
さっきの証言と照らし合わせると
つじつまが合うが
目撃者の堀口啓子も
また容疑者の１人なんだ
そうだな　午後５時半から
７時の間に学校を出たのが
他に俺たちと図書委員の
２人だけだとすると
犯人は　この６人の中にいる
何か分かったか　明智？
高いな
え？
だめだ　上の棚まで全然届かない
１８０センチ近くあるお前が
届かないんなら
俺なんか　なおさら無理だな
もちろん
１６５センチしかない赤沢や
かおるにも無理だろうね
図書委員の２人にもな
おそらく犯人は
例の偽の本棚を作るために
台の上に乗って作業したはずだ
ああ　あれか？
この木の台だろ？
いや　見ろよ
この引きずったような跡
あの鉄の台か
こ…　これ結構重いぜ
これは血だ
おそらく被害者のものだろう
犯人の靴の裏に付いた
わずかな血痕が
のぼった時に付いたんだ
それじゃあ　犯人はこの台を使って
ああ　しかし
なぜ犯人は…
お？明智？
そうか　分かったぞ　犯人が
なんだって？
俺たちの中に
犯人がいるってどういうことだ
ああ
ここに集まってもらったのは
それを説明するためさ
和島から聞いたと思うが
犯行時刻に学校にいたのは
ここにいる６人だけなんだ
それは…
とにかく事件の真相を
明らかにする
犯人割り出しの決め手は
犯行時刻にアリバイが無いのは
この６人だけだということ
そしてもう１つ　犯行の際の
犯人のある不可解な行動なんだ
不可解な行動？
まず６人の中で
真っ先に容疑から外れたのは
かおるだ
え？
犯人が偽の本棚を組み上げるには
棚の１番上の高さまで届くために
どうしても台が必要になる
だが　かおるは筋金入りの
高所恐怖症だ
組み上げるのに時間のかかる
台の上での作業に
彼女が耐えられるはずがない
ここで残る容疑者は
僕を除くと４人になるわけだが
最後の決め手になったのは
あの鉄の台だ
付着していた血痕
その鉄の台が
犯行に使われたことは
間違いない
でも　どうしてあんな遠くから
わざわざ重い台を？
こっちの木の台の方が軽いし
現場の近くにあったのに
そう　その不自然さこそが
犯人が誰なのかを
証明しているんだ
犯人はその木の台を
使いたくても使えなかったのさ
え？
赤沢
お？
ちょっと
この台に乗ってみてくれないか
え？
赤沢　ちょっと
この台に乗ってみてくれないか
ああ
前に見た時もそうだが
赤沢ならこの木の台でトリックを
実行するのは十分可能だ
無論　小柄な君たちにも
可能だと思う
だが赤沢以上に
重い人物が乗ると…
このとおり壊れてしまうんだ
つまり犯人は
わざわざ遠い所にある鉄の台を
ひきずって来なければ
ならなかった
体重の重い人物
和島
君しかいないってことになる
君がこの事件の犯人だ
残念だよ　本当に
和島？お前が？
これ以上僕からは追及しないよ
物的証拠が見つかるまで粘るか
自首するかは君の意思に任せる
ただ　僕としては
月並みだけど
自首することを勧めるよ
それが君にとっても
１番いい選択だと思う
いやあ　俺の負けだ
まったく見事な推理だったよ
ホームズ
和島
君の言うとおり
内田を殺したのは俺だ
俺　あいつに脅迫されてたんだ
脅迫？
ああ
この間のクラス編成テストで
カンニングやっちまってさ
カンニング？
どうして？和島君なら
そんなことしなくたって
十分に…
背伸びしてたんだよ　俺
俺の頭じゃ
本当は特Ａクラスなんて
もう
ついていけなくなってたんだ
ところが　そのカンニングを
あの内田ってやつに見られてさ
あいつに金とか
しつこくせびられてたんだ
へへっ　いいな
このことは誰にも言うなよ
もし言えば　優等生ヅラした
お前のやったことを
全部ばらしてやる
ふふふ…
次はこれより
もっといいものを頼むぜ
な…　何を
なあに
ひとけの無い所に
呼び出してくれればいいんだ
生徒会長のかおるをな
か…　かおるを？
あとはこっちで
うまくやるからさあ
な　何をする気だ　かおるに？
嫌とは言わねえよな　優等生
や　やめろ…　かおるは関係無い
かおるには手を出すな
なんだ　お前もかおるに
ほれてたのか？
だったら余計あの女を
ズタズタにしてやりたくなったぜ
ふふふ…
やめろ　やめろー
あとは君の推理したとおりさ
明智
偽本棚のトリックは
いつか君に出そうと思ってた
とっておきの推理クイズの
ネタだったんだ
和島　お前　かおるのこと…
告白はここまでだ
俺　自首するよ
待ってくれ　和島
最後に１つだけ教えてくれ
君には分かっていたはずだ
あのトリックを使えば
僕が容疑者になることを
それを知っていて　なぜ？
その謎は君が解けよ
え？
これはワトソンからホームズへの
最後の挑戦だ
答えは１０年後
今の君の席の机に書いておくよ
じゃあな　ホームズ明智
さようなら　ワトソン
それが明智さんが１０年間も
解けなかった謎ってわけ？
ええ
かーっ　やだやだ
こんな簡単なことに
１０年も頭抱えてるなんて
君には分かるっていうんですか？
金田一君
ちっちっちっ　簡単簡単
ま　あんたみたいなタイプにゃ
１００年かけても
分かんねーだろうけどよ
和島ってやつは
別に罪から逃げたくて
そんなトリックを
使ったんじゃない
あんたに謎を解かれるのを
計算済みで
あんたに容疑がかかるトリックを
わざと使ったんだよ
なぜ？
その和島ってやつも
言ってたんだろ？
ホームズの活躍を待つのが
ワトソンの役目だって
殺人を犯した自分は
もうあんたと同じ道は歩めない
だから最後に自分で作った
とっておきの謎を
あんたに吹っかけて
その謎を解き明かす
ホームズ明智の姿を
自分の中に
記憶しておきたかったんだろう
分かるかよ　明智さん
あんたの活躍を
心底待ち望んでいたのは
他ならぬ　犯人の
和島自身だったんだよ
ああ　すいません
え？何？
君　その机は？
さっきちょっと
ここから借りたんです
借りた？
それじゃあ
１０年前の明智さんの席って
ちょっと失礼
あっ　はあ？
会議室にて待つ？
和島
やっぱり１０年前の約束を
忘れていなかったんですね
会議室って明智さんたち４人が
そう呼んでた場所だろ？
あそこです
やあ
やっぱり来てくれたのね
ホームズ
かおる
赤沢
あはははは…
こーら　タカシ
パパ
ほーら　この人が
パパとママがいつも自慢してる
ホームズ明智だよ
それじゃあ
うん　１０年前の
あの事件のあった日
俺は図書室で初めて
かおるに告白したんだよ
こいつ怒って泣き出してね
友達の関係を
突然壊されて動揺したのよ
それが今じゃあ…
私　今は女医なの
この人は雑誌の編集者
この間　俺のミステリーが
入選したんだ
作家デビュー目指して
毎晩書いてる
今もしぶとく夢を諦めないのよ
ホームズ明智警視の活躍は
よく知ってるよ
それで和島は？
あいつも来てるんだろ？
ああ　来てるさ　ここに
え？
和島の遺品だ
それじゃ　和島は
私たちにも突然だった
先月だったわ　外国から
小さな小包みが届いたのは
中にはこのスクラップブックと
メモ帳が入っていたの
今となっては
詳しいことは分からない
途切れ途切れのメモから
想像できるのは
和島君が通信教育を経て
必死で医師の免許を取ったこと
外国の無医村に渡ったこと
そして去年の秋
その村を洪水が襲って
あいつは
覚悟していたように思える
人ひとりの命を奪った償いを
いつかしたいと願っていたんだ
彼が亡くなったあと
ボランティアの人が
医師のつてをたどって
私に遺品を送ってくれたのよ
あいつ　この春　一時帰国するのを
楽しみにしていたそうだ
この文をお前の机の上に
書くつもりだったのさ
明智　最後の謎は解けたかい？
和島…
覚えているかい？
未来がまだ
遠い彼方だった頃のことを
すごいや　ホームズ
お前やっぱり
警視庁に入るしかないよ
お前が刑事になるんなら
俺　監察医になるよ
監察医か　和島はもともと
医者志望だったもんな
２人で難事件を
バンバン解決ってわけね
おいおい　人の将来を
勝手に決めないでくれよ
未来はまだ
あの空のように遠いんだ
未来かあ
でも　すごいのね　一ちゃん
何が？
明智さんの１０年越しの謎
スラスラ解いちゃって
気持ちが分かるのさ
え？
俺もじっちゃんっていう
ホームズの活躍を
ワクワクしながら見てた
いたずらガキんちょの
ワトソンだったからさ
あれからお互い歩む道は
遠く離れてしまったけど
俺はいつまでも
君の活躍を待ち望んでいる
お前は俺にとって
永遠のホームズなんだから
はい　ニーハオ　ニーハオ
上海ガニ　シェイシェイ　上海ガニ
なんだよ　美雪
恥ずかしいのかよ
そもそもお前が
心細いって言うから
わざわざ中国まで
ついて来てやったんだぞ？
でも来てよかった
レイリーちゃんって
ムチャムチャかわいいし
しかもショーの主役じゃん
今の悲鳴は？
魚人遊戯の呪い？
ヤン雑技団に伝わる
死の伝説って一体何だ？
金田一少年の事件簿
春　舟は水に浸り
夏　川は紫に濁る
秋　旅人は腐った水を
飲まねばならず
冬　魚は泳ぐのをやめ眠りにつく
呪われろ　呪われろ
呪われろ
シェイシェイ
おい美雪　聞いたか今の　聞いた？
「シェイシェイ」って言ったぞ
すっげー　中国の人って本当に
「シェイシェイ」って言うんだな
もう　恥ずかしいからやめてよ
俺　ちゃんと聞き取れたと思わん？すっげーな　俺
そんくらい小学生でも分かります
いやー　初めての海外旅行が
中国ってのも乙なものだよな
何てったってカニ　カニ　カニ
上海ガニ？
そうそれ
上海って飯うまいんだろ
待ち遠しいな　カニ
一ちゃん　そればっか
あーあ　こんなことならやっぱり
１人で来ればよかったかな
何だよ　美雪　そりゃねえだろ
「中国の友達に
会いに行くんだけど」
「１人じゃ心細いわ」って
誘ったのお前の方じゃないか
そりゃ　そうだけど
頼むからレイリーさんの前で
あんまり恥ずかしいマネしないでね
うんうん　分かってる　分かってる
任せとけって
すごい　見て見て
あの建物とかヨーロッパみたい
ねっねっ　すごいね
ここがバンドっていう場所よ
昔ね　いろんな国が
占領みたくしてたんだって
共同租界っていうのよ
知ってる？
知らないっての
あれ　どうしたの？
何か暗い
どうしたも　こうしたも
２時間以上も歩かされてんだぞ
何よ　だらしないわね
言うたな
じゃあ美雪　お前も２人分の
特大荷物　担いで歩いてみるか
えー　やっぱ
レディーファーストってやつだし
私　箸より重いもん
持てないし　ハハ
ごめんね
よろしい
こんなに距離があるなら
普通はバスとかタクシーとか
大体　お前のその文通相手…
何だっけ？
レイリー　ヤン・レイリーよ
そのレイリーちゃんに
迎えに来てもらえばいいじゃんか
それは無理よ
向こうだって忙しいだろうし
それに近いうち行きますって
手紙は出しておいたけど
返事もらう前に来ちゃったし
はあ？
ほら　突然　行って
びっくりさせようなんてね
お前　ガキか
いきなり行ったってなあ
平気よ　レイリーってね
同い年で　すごくいい子なの
そんなん分かんねえだろうがよ
会ったことあるもん
え？どこで？
東京で
それがキッカケで文通　始めたの
ねえねえ　それよりさあ
写真　撮ろ　上海上陸記念
はい　チーズ
待って　上海ガーニ
マーメイドホール
こんなとこにいるのかよ　その…
レイリー　言わなかったっけ？
ここでショーに出てる人なの
え？
このヤン雑技団の団員
サーカスみてえなやつ？
そう　知り合ったのは
日本公演の時なの
へえ
早く会いたいよ
行こ　行こ　一ちゃん
ああ…
あれ　真っ暗
結構　大きいのね
おい　誰もいないぜ
楽屋の方　入ってみようか
え？いいのか？
本当に誰もいないわね
変ねえ…
ほら見ろ
返事待たずに来るから
こうなるんだよ
控え室にでもいるのかな
どこだか分かる？
俺が知るか
思ったより広いんだもん
客船か何かを改造して
作ったんだろうな
何か薄暗くて怖いな　何か出そう
幽霊が出たら　俺があいさつ
してやるよ　ニーハオってね
ほんと？
ほんと　ほんと
どさくさに紛れて
どこ触ってんのよ
美雪さん？
ごめんなさい
別に怪しい者じゃ…
レイリー？
やっぱり美雪さんですか
レイリー
久しぶりです　美雪
本当に来てくれたんですね
ごめんね　急に会いに来ちゃって
ううん　大丈夫です
うれしい　とても
僕もです　初めまして　金田一です日本語とてもお上手…
なれなれしく触らないでくれる？
私の友達が　けがれちゃうでしょ
何　言ってんだよ　お前
セクハラ男
あれは　たまたまというか
恥ずかしいマネしないでって
言ったのに
よかった　手紙届いてたんだ
はい　今朝届きました　ありがとう
でも　もう返事間に合わない思って
本当は空港に
迎え行きたかったけど
ううん　全然大丈夫だったわ
ガイドブック見たり
人に聞いたりで
怪しげなオヤジにひょこひょこ
付いて行きそうになったの誰よ
何よ　いい人そうだったじゃない
ああいうのは
白タクっていってなあ
危ねえインチキタクシーなんだよ
へたすりゃ
とんでもない所に連れてかれて
身ぐるみはがされちまうって
ガイドブックにも書いてあったぞ
そうなの？そんなに
危ないとこには見えないけどな
そうです　上海　安全な所
でも危ない所もあります
最近　特にお金持ちの人
増えた分だけ
貧乏な人との差　大きくなった
お金ある人近くにいると
みんな　お金欲しくなる
そして日本人
お金ある思われている
そっか　あんまり
ウロウロしない方がいいのか
バカたれ　お前は極端なんだよ
普通にしてりゃいいの　普通に
美雪　一　紹介します
私の兄　ヤン・シャオロンと
ニーハオ　ウォシイ…　「私は
美雪です」って何て言うんだっけ
確かウォシイチー…　えーっと
自己紹介　必要ない
私　何か変なこと言った？
ごめんなさい　悪いの兄の方
少し気難しい　だから
ニーハオ　シェイシェイ
アイライク上海ガニ
初めまして　ようこそ上海へ
あら　日本語　上手ですね
私　日本人ですよ
このヤン雑技団に
雑技を習いに来てる留学生なの
西村志保です　よろしく
日本人　どうりで日本語
うますぎると思ったよ　いやあ
でも志保さんって美人ですねえ
テレビに出てる人みたいだなあ
いや　案外本当に　うん
そういえば見たことあるような
どうして初対面の人に
そんなこと言えるのよ
もう　ごめんなさい
ほんと　なれなれしいやつだもんで
あら　でも何か本当に
テレビで見たことあるような
志保さん　日本では有名な
体操の選手だったそうですから
体操…　あー　そうだ！
新体操の西村志保
昔　オリンピック選手だった
うれしいわ　まだ
覚えててくれた人がいたなんて
もう２１だから３年も前なのに
レイリー
団長
お父様
レイリーのお父様？あの…
シャオロンから聞いた
日本の方だとか
はい　レイリーさんとは
ペンフレンドで
私たちには時間ない
レイリー　志保
ハオラ！
ハオラ
ごめんなさい　明日からの公演
私たち　今までになかった
新しいショーを始める
それで神経質なってるの　お父様
ほれ見い　やっぱ迷惑だったろうがうん
大丈夫　心配ない
２人とも練習見てればいい
終わったら２人の歓迎会やるから
レイリー
おー　やったー！上海ガニ！
うおー
わーお
かっこいー
すごいねー
ああ
何だ　あの衣装
魚のうろこみたいだな
ほんと　きれいねえ
あれ魚人ね　魚人の模様
はあ…　あの　あなたは？
私　ここの団員
でも　もうあまり演技しないね
半分引退
はあ
レイリーに聞いた
日本の友達　来ている
レイリーに言ってください
友達なら
魚人遊戯やめた方がいいと
私　言っても誰も聞かない
魚人遊戯ってレイリーが言ってた
新しいショーのことですか？
そう　よくない
魚人の呪い　かかってる
魚人の呪い？
昔　越の国に
ツァンクンという男がいた
この男　毎日　川のほとりで
難しい国の試験目指して
勉学に励んでいたね
ある日　川に住む美しい魚人の女がツァンクンに恋をした
魚人は
自分と夫婦になることを条件に
試験に合格する知恵
ツァンクンに授けた
試験に合格したツァンクンは
夫婦になる代わりに魚人に
うろこはがして
人間になるよう頼んだ
魚人の女
四季を通じて１２ヵ月　苦しみながら
うろこはがした　でも川の色が
血で真っ赤になるだけで
決して人間にはなれなかった
それがツァンクンの卑劣な企みであると気付いた魚人の女
恨みを歌に残して
ツァンクンとその一族を呪った
以来　ツァンクンの一族
春夏秋冬　訪れるたび
災厄に見舞われ　やがて滅んだ
なんて悲しい伝説
でもそれって
大昔の言い伝えだろう
それとこのショーと　どんな関係が
言い伝え違う　魚人　本当にいる
魚人遊戯よくない
よくないこと起こるよ　必ず
何でそう
お約束どおりなのよ　あんたは
少しは恥ずかしいってことを
覚えてよ
遠慮しないで
たくさん食べてください
２人の歓迎会ですから
いや　しかし驚いたな
レイリーに日本の友達がいたなんて
紹介します　この人　藤堂壮介さん
日本から来て
私が１０歳になる前から
ずっと一緒にいる　団の顧問の人
よろしく
ゆっくり楽しんでってください
ああ　そうそう　ホテルはどちらかな
車で送りましょう
ああ　タアミン
俺の車使って　この子たちを
いえ　そんなお構いなく
そして　こっちがうちの若手団員で
力自慢のスー・タアミン
少しだけ頭薄いけどまだ１９歳ね
ひどいよ　レイリー　僕　ハゲ違う
これ額　少し広いだけ　ひどい誤解
ごめんね
それからタオ・レンメイさん
私のショーの先生
日本語は彼女から学んだの
日本に留学したことあって
ペラペラね
よろしく
いやあ　しかし
レイリーさんに志保さんに
レンメイさん
美人ぞろいっすね　ヤン雑技団って
まあ　それがうちの売りだからね
おっと　そういえば
付き合いの悪いシャオロンは
別として　ワン団長はどうした？
まだ明日の準備残ってるって
ホールにいます
とてもピリピリしてて
まあ分からんでもないが
なにしろ
あの魚人遊戯が始まるんだからな
ねえ　あの子　レイリー
魚人遊戯から降ろしてくれない
ん？何か問題あるのか？
あの子の演技　ちょっと違うのよね
私の邪魔をしてるみたいで
鼻につくのよ
焼きもちか？レイリーの若さに
バカなこと言わないで
誰があんな小娘に
分かってるさ　お前が一番だよ
お前が一番きれいだ
あれ本物の剣だろ？
どうなってんだ　あいつの体
げっ　レイリーちゃん
あれって本物の虎じゃん
大丈夫よ
やっべーよ　あぶねーって
あの虎を使った雑技が
レイリーの一番の得意技なの
ワン団長の直伝　これだけは
他の団員にはできないんですって
すごい　すごい　すごい
わーお
おい　何だ？
さあ
ありゃ…
分かった　魚人遊戯よ
え？あんな水槽でやるんだ
すごい　すてき
いやー　大成功だったな
ねえ
こいつはぜひ一言レイリーに
お祝いを言わなくっちゃな
ねえ　一ちゃん　花束くらい
持っていった方がいいのかな？
あー　いいって　いいって
その代わりに俺がお祝いのキスを
お父様　お父様
あら
どうも　あの　レイリーは？
ああ　団長室に行ったわよ
今日の演技の感想を聞きたいって
感想？最高に決まってるよ
特にレイリー　よかった
最高　きれいだった
あー！
レイリー
何？
一ちゃん
レイリーさん
あれは
春
呪いだ
春　舟は水に浸り…　魚人の歌
これは呪いだ
魚人の呪いだ
ワン団長の部屋に残された
「春」の文字
呪われた伝説の４行詩
そして雑技団の暗い過去
何てこった
魚人遊戯のステージの真っ最中に
第２の犯行が…
２つの事件が起きた時
アリバイのなかった人間が
１人だけいる
ありゃ
剣持のおっさんがどうして上海に
日本の事件とヤン雑技団の間に
一体　何があったんだ
金田一少年の事件簿﻿美雪のペンフレンド
楊雑技団の団員である
麗俐を訪ねて俺たちは
上海へ旅立った
そして公演の目玉である
「魚人遊戯」のショーが終わった時
俺たちが見たものは…
キャー！
麗俐！
これは呪いだ　魚人の呪いだ
ああ　何てこった
よりによって魚人遊戯の初日に
殺人事件とは…　しかも
団長の王が殺されるなんて
ウチにとって
こんな大きな打撃は初めてだ
刑事さん　お願いしますよ
一刻も早く犯人を
確か日本の方でしたね
この雑技団の顧問をしている
は…　はい
ご安心ください
我が国の警察は
日本の警察より優秀です
日本の警察は犯人を特定するのに
やや優柔不断なところがある
ん？
ん？
どうしたの　はじめちゃん？
いや　何でもない
まず　鑑識によれば
犯行時刻は　午後７時１０分頃
つまり　あなたたちのショーの
最中に行われたことになる
凶器は拳銃
頭部の一発が致命傷となった
ちょっと待ってください　一つ
分からないことがあるんですが
ん？
ショーの最中に
なぜ　王さんは
控え室にいたんです？
団長なら　楽屋にいてみんなの
指揮を執るのが普通なんじゃ
お父様は控え室のモニターで
ショーの様子を見ていたはずです
何か問題があったら
インターフォンで
この楽屋に連絡を取るのが
お父様のやり方でしたから
団長の姿見えると
団員たち　緊張して
返って　思わぬ事故につながると
いつも言ってました
ということだ
続けてよろしいかな
どうぞ
さて　７時１０分頃
つまり　犯行時刻における
皆さんの
アリバイをお聞きしたい
アリバイも何も
その時間に
私もこの部屋にいたし
他のメンバーだって　ステージか
楽屋のどちらかにいたはずです
何しろ　ショーの最中ですからね
全員にアリバイがある
それは奇妙だ
我々の調べによると　この楽屋の
唯一の出入り口のあるドアには
ショーの間　ずっと
鍵が掛けられていたとか
あ？
はい　ショーが終わった後
私がドアの鍵を開けました
なるほど　この劇場は　元は船
楽屋から控え室にかけて
開くようになっているドアは
一つしかないってわけか
まさか…
ショーの最中に誰かが
ステージから
侵入したとも考えられない
ちょっと待ってよ！
それじゃあ
私たちの中に
犯人がいるって言うの？
まさか　そんな…
ん？君　その足はどうした
あ　そういえばお前
ショーの最中に　足を挫いたとか
言って　楽屋を抜けたな
あれは　魚人遊戯が始まる前
確か７時頃だ
ほう
どのぐらいの時間かな
え　ああ　覚えてますよ
自分で手当てをするとかで
１０分ぐらいで戻ってきましたよ
１０分か…　楽屋から出て
通路は一本だ
団長控え室で犯行を犯す
不可能ではない
君には　色々と聞かねば
ならないことがありそうだ
ちょっと待ってください
ん？また君か
アリバイがないっていうだけで
彼を犯人扱いするのは…
第一　凶器の拳銃は
発見されたんですか？
それに　現場に残された
「春」の文字
そして　なぜ団長の死体は
濡れていたのか
いたずらさ　我々の捜査を
かく乱するためにね
ニーハオ　ニーハオ
ん？
シェイシェイ　シェイシェイ
いやあ　遅れてすいませんな
李刑事
ああ？
東京の本署から連絡があって…
おっさん
剣持警部！
どうして　お前がこんなとこに！
おっさんの方こそ
ん？知り合いですか　剣持警部の
ええ　まあ
ほら昨日　話したじゃないですか
例の　金田一　一
こいつが　その本人ですよ
ほう　これは偶然だ
日本で数々の難事件を解決した
名探偵にお会いできるとは
いやあ　そんなことありますけど
しかし　それは日本での話
我々は素人の助けを
必要としない
まあ　いずれにせよ今回の事件は
解決したも同然だからね
ん？
違う　違うよ
犯行は　まだ終わってない
張さん
春　終わっただけ
まだ　夏　秋　冬　残ってる
ん？夏　秋　冬？
どうした？
何か目星がついたのか？金田一
いやあ　まだ
そんな段階じゃないよ
ただ　張老人の言葉が
気になってね
まだ　夏　秋　冬が残ってる
っていう　あれか？
ああ　なあ美雪
張老人から聞いた
魚人伝説のこと覚えてるだろ
うん　恋人に騙された魚人が
呪いの詩を残し　彼の一族は
春夏秋冬に災厄に見舞われて
滅んだっていう
ああ　もしかしたら殺人現場に
残された「春」の文字は
あの伝説と
何か関係があるのかもな
じゃあ　何か
見立て殺人だって言うのか
あるいは…　あ　それより何で
おっさん　上海なんかに来たんだ？
あ…　おお　それが１０年前
東京で起きた事件のことでな
ん？１０年前の事件？
ああ　東京湾のゴミ捨て場で
ビニール袋に詰められた
男の遺体が見つかってな
その頃　まだ警部補だった俺が
陣頭指揮を執ることになった
こいつが　なかなか
やっかいな事件でな
ところがひょんなことから
出てきやがったんだよ
容疑者が
誰だよ
藤堂壮介さ
藤堂…？
きっかけはテレビで
警察の科学捜査についての
特番をやったことだった　金田一
お前　復顔って知ってるか？
ああ　何か　頭蓋骨に粘土とかで
肉付けして
元の顔を再現するやつだろ
そうだ　番組で
実例が欲しいってんで
その事件の被害者の
実際に復顔した顔を
放送に使わせてやった
そしたら　来たのさ
視聴者から情報提供が
何と　新潟で行方不明になってた
会社員だったんだ
それからが大変よ
新潟県警にも協力を仰いで
徹底的に聞き込みをしてな
で　捜査線上に上がったのが
あの藤堂って男なんだ
その藤堂が殺して東京まで
運んで捨てたってわけ？
いや　そこまではまだ分からん
ただ　被害者を藤堂らしき人物が
車に乗せるところを見たという
目撃証言が出てきただけだ
それも　１０年前のことだからな
確たる証拠は何もないし
このままじゃ　らちがあかない
そこで　こうやって藤堂のいる
上海に足を運んだってわけよ
幸い　あの李刑事とは
彼が日本に研修に
来た際　親しくしていたしな
でも驚いただろ　その藤堂が
顧問をやってる雑技団で
いきなり殺人事件だもんな
ああ　まったくだぜ
それにお前にまで
バッタリ会うしな
それは　こっちのセリフだよ
まさか上海まで来て
おっさんの顔を拝むことに
なるなんて　なあ？
ハハ　まあな　ん？
はい　ええ
分かりました　はあ
どうも　ありがとうございます
例の団長殺しに使われた拳銃
とうとう
見つからなかったらしいぞ
金属探知機まで持ちだして
調べたらしいけどな
ん？
何だ　こりゃ
おお　金田一！
あれ　おっさん
これ　金属探知機ゲートに
レントゲン装置だろ
まるで　空港並みじゃねえか
ああ
藤堂の依頼もあってな
これ以上の犯行を防ぐためにも
こういうことになったわけだ
そりゃそうと　昨日の犯行に
使われた　凶器の拳銃は
デリンジャーだったそうだ
デリンジャー？
ああ　弾丸から特定したんだが
あのリンカーン大統領の暗殺に
使われた
呪われた拳銃だよ
犯人は団長を殺した後
銃をトイレか川に捨てたと
李刑事は考えている
何しろ　手のひらに収まるような
小型の拳銃だからな
（中国語の会話）
あー　うまいねえ　このお茶
ホント　いい香り
ありがとう
高いお茶ではないけど
私もこのお茶　好きです
私たち　村にいた頃
よく　このお茶飲んだ
懐かしい味
村にいた頃って？
雑技の村です　ずっと昔から
村全体で雑技を習ってました
村のあたりは　土が塩
たくさん含んでいて
農作物が育たない
だから　選ばれた人たち
あちこち回って　雑技見せて
村の生活　支えてきた
あたし　子どもの頃
あざだらけになるまで
練習させられたことばかり
覚えています
あたし　芸とてもヘタだった
よくお父様に叱られた
その度に兄の小龍
あたしかばって　お父様と
ひどくケンカしてた
あの２人　とても仲悪い
周りから思われてました
だから刑事さんも　小龍
お父様殺したと思ってる
でも　それ違う　違うよ
お父様　他の団員に対してと
同じくらい
あたしや小龍も　厳しくしてただけ
そうするのが団長の務め
仕事なのです
小龍もそのこと
よく分かってたはず
殺したりするはずないよ　絶対に
麗俐…
ああ　どうも　ああいう雰囲気は
苦手なんだよなあ
ん？
ホントに昔の船のまんまだ
これじゃ　外から出入りするのは
まずムリだ
あ…　ん？
何をしている！
ト…　トラだ
気をつけて
あなた食べたら　このトラ
芸しなくなる
今日一日　寝てるだけ
冗談やめてよ　達民さん
そう冗談　冗談　心配いらない
そのトラ　麗俐以外の人間から
エサもらっても食べない
そう仕込まれてる
へえ　ご主人様からの物しか
食べないんだ
でもこのトラ　僕と同じ芸やれば
きっと　すごいことできる
達民さんと同じ芸…
ああ！
あの　剣を飲み込む？
何しろ　こいつデカイ肉の塊
噛まずに　ひと飲みよ
だろうな
こいつなら剣の１０本や２０本…
達民！
ん？
何している
そろそろショーが始まるぞ
帰れ！日本に
お前たち来てから
ロクなことが起こらない
悪運を運んできたんだ！
はあ…
どうしたの　顔色が
悪いみたいだけど
うるさいな！
さっさと着替えて
ショーの準備をしろ！
はっ！ビビってるのね　魚人に
そうでしょ？
ばかばかしい　呪いなんて
あるわけないだろ
だいたい　大昔の伝説の
化け物とやらが
何でピストルで人を
撃ち殺したりするんだ　ええ？
あら　魚人伝説は
もう一つあるんじゃない？
それも　この雑技団だけに
伝わる恐ろしいお話
そのお話にはピストルも
ちゃんと出てくるわ
私も　そしてあなたもね
何？く…
はっ！
どこ行ってたのよ　はじめちゃん
もうショーが始まっちゃうわよ
おお　悪い　悪い
魚人遊戯…　これ
クライマックスのショーだろ
どうして　これが最初に？
変更になったのよ
出演者の一人　人美さんが
いなくなっちゃったんだって
残った３人じゃ
半端なショーしかできないから
今回は魚人遊戯を
最初に持ってきて
猛虎ショーを最終演目に
するんですって
人美さんが行方不明？
あれ　２人っきり？小龍さんは？
どうしたのかしら　変ね
さっき　廊下で会ったんだけどな
あれは…！
キャー！
人美さん…
よく分かった　詳しいことは
後で一人ずつ聞くことにするから
みんな　そのつもりでいてくれ
何　書いてるんですか　張さん
詩だよ
詩って？
もしかして
例の魚人が残したっていう
うん
どういう意味ですか　これ
春　船は水に浸り
夏　河の水は紫に濁る
秋　旅人は腐った水を
飲まねばならぬ
冬　魚は泳ぐのをやめ
眠りにつく
夏　河の水は紫色に…
どうして…　何で犯人は
こんな詩に見立てて殺人を？
そんなことをやって
何の意味があるってんだ
ある　犯人はきっと王美魚
美魚？誰です　それ
あれは　１０年ぐらい前の話
この雑技団に
とても泳ぎのうまい女いた
とても綺麗な女
でも　少し変わっていた
変わってた？
そう　ビックリするほど
泳ぎ　うまかった
それに食べ物も
水草や川魚しか食べない
藤堂さん　美魚の泳ぎに
目をつけて
団長と２人で
魚人遊戯の演目を考えた
信じられない泳ぎだったよ
ホント　魚みたい
美魚　他の皆にも泳ぎ教えた
その頃　ここへ入ったばかりの
人美にも
でも　そのうち変な噂　立ち始めた
噂？
美魚が魚人ではないか　いう噂
みんな　気味悪がって
美魚に近づかなくなった
それで　団長
美魚をショーから外した
美魚　とても悲しんだ
とてもとても悲しんだね
そして死んだ
死んだって　どうして？
小さなピストル
デリンジャーで頭を撃った
壁には春夏秋冬の文字
自分の血で書いて残して
いい加減にしろ！
どこだ　どこに凶器を隠した？
お前が犯人だということは
分かっている
ちょっと待ってよ　刑事さん
金田一
この殺人事件には
まだ　いくつもの謎が残ってる
それを解決するまで小龍を
犯人扱いするのは早すぎるよ
関係ないな
最初の事件も今日の事件も
この小龍だけ
アリバイがなかったのだ
え？
鑑識によれば　人美が
殺されたショーの
始まる１時間のアリバイは
この団員のほとんどが
ないと言っていい
だったら…
しかし
死体を水槽に投げ落とした時の
アリバイがなかったのは
藤堂さんが勝手にプログラムを
変更したのが気に入らず
ショーをボイコットした
小龍だけだ
なるほど　じゃあ犯人は
いったい　どうやって
凶器の拳銃を持ち込み
そして　どこに消したんです？
それなら恐らく…
トイレか川に
流したっていうんでしょ
それは変ですよ
もし　俺の勘が正しければ
最初の事件と今回の事件は
まったく同じデリンジャーが
使われてるはずですから
いい加減なことを言うのはよせ！
確かに今回も凶器は
デリンジャーだと思われるが
別な物のはずだ
何？そんなバカな！
鑑識からの報告ですね
どうでした？
デリンジャーは同じ物だった
金田一くん
なぜ　それが分かったのだ
簡単な理屈ですよ
別の銃を用意しているなら
最初の事件で　わざわざ銃を
どこかに消してみせる
必要はないんです
そこらに放っておけばいい
犯人が銃を消したのは
何らかの方法で
それを　また回収して
次の犯行で使うためだった
そう考えるのが
一番自然なんです
くっ…
だいたい
凶器も見つかってないのに
小龍を
犯人扱いするなんて
乱暴過ぎませんか
そんなへ理屈は聞きたくない
既に逮捕状は取ってある
あとは
公安本部で話を聞くだけだ
そんな無茶な！
口出しは無用だ
我々公安は　国に選ばれた
エリートなのだ
素人の知恵を必要としない
小龍…
シェイシェイ
小龍！小龍！
何だ　あいつ…
おーい　乗れ！早く乗れ！
こら　開けろ！小龍！
走るんだ　小龍
脱走までしたからには
真実を明らかにして
無実を証明するしかない
さあ　急ごうぜ
まだ魚人の呪いが
秋と冬の２つ残っている
小龍　お前の故郷の村に
残っていた物が
きっと事件の鍵を握るはずだ
真犯人は必ず暴いてみせる
じっちゃんの名にかけて！
金田一少年の事件簿…
美雪のペンフレンド
楊雑技団の麗俐を訪ねて
俺たちは上海へ　やって来た
だが　魚人遊戯のショーの最中に
次々と起こる殺人事件
魚人伝説の悲しい復讐なのか
この殺人事件には
まだ　いくつもの謎が残ってる
それを解決するまで小龍を
犯人扱いするのは早すぎるよ
関係ないな
最初の事件も今日の事件も
この小龍だけ
アリバイがなかったのだ
小龍…
そして　中国の公安は
アリバイのない小龍を
逮捕しようとするが…
小龍！くそっ！
逃がさないぞ！
さ　早く
ああ　すまない
あいつら…
船で逃げたぞ　追え！
はっ！
逃がすな！
シェイシェイ　シェイシェイ
ありがとう　船長
すっかり世話になっちゃって
あ…
へへへ　多謝
小龍！
さあ　行くぞ　はじめ
大丈夫だよ
船から降りるぐらい一人で…
ああ　いてて　ああ
だから　手を貸したんだ
意地を張るからさ
やっぱり　お前　性格悪いな
助けてやるんじゃなかったよ
ヤベ…
逃げるぞ
ああ
どこまで我々の邪魔をする気だ
金田一　一
もう大丈夫だな　小龍
安心するのは早い　行くぞ
え…　待てよ
おい　俺　道知らないんだからさ
もう
ああ　ったくもう！
ああ　あ…　やっちゃった
おばあちゃん　ごめんね
あ　ホントホント　ごめんね
おばあちゃん
うわあ　うまそうな桃だなあ
はじめ…
ああ　これ買うよ
いくらって何て言うんだっけ？
ニーハオ…　は違うよな
えっと…　ハウマッチじゃ
英語だもんな
急げ　何をしている
まあ　そう慌てるなって
ほら　お前も腹減ってるんだろ
これ　いくらか聞いてくれよ
変わってるな　お前
こんな時に
俺も腹減っちゃってさ　ヘヘヘ
うまいな　これ
はじめ　なぜ俺を助けた
一つは　あの刑事のやり方に
納得いかなかったからかな
だってそうだろ？
凶器はどっかに消えちまってるし
他にも分かんないこと
だらけなんだぜ
なのにアリバイがないだけで
手錠は　ないよ
それだけか？
もう一つは
お前が　美雪の友達の
兄貴だからさ
そうか
そういうお前は
何で俺の連れてきた船に
あっさり乗ったんだよ
普通は　ちょっと
戸惑うもんだと思うけど
お前が妹の　麗俐の友達の
恋人だからさ
恋人って…　美雪は
そんなんじゃねえよ
あれは　ただの
幼なじみっていうか
俺と麗俐みたいなもんだろ
分かるよ　何となく
え…　全然違うぜ
麗俐はお前の妹じゃんか
そうだけど
血はつながっていない
え？本当の兄妹じゃないのか？
麗俐が村へ来たのは
１０年くらい前だった
親父がどこからか連れてきたんだ
記憶喪失だったらしくて
最初は何もしゃべらなかったよ
記憶喪失？
だから麗俐は自分が養女だと
いうことを知らないはずだ
あいつは俺を本当の兄だと
思っている
俺は　それが少しつらい
お前　麗俐が好きなのか
ああ　好きだ
この世の中の誰よりも
そうか
このことを話したのは
お前が初めてだよ
何で俺に？
もし　俺　捕まって
二度と外に出られなくなったら
お前に頼みたいんだ
このことを麗俐に伝えてほしい
分かった　でも俺は
お前が犯人だとは思ってないぜ
俺が真犯人を暴いてみせる
心配すんなって
はじめ…
なあ　ところで聞きたいことが
あるんだけどなあ
何だ？
お前　あの藤堂が勝手に
プログラムを変えたのが
気に食わなくて
ショーをボイコットしたって
聞いたけど
いつも　もめてんのか？あの男と
何でそんなことを聞く？
ああ　いや　剣持のおっさんから
ちょっと気になることを
聞いたもんでさ
俺はあいつが嫌いだ
藤堂が１０年前
俺の村へ来てから
親父は変わってしまった
１０年前？
あいつが来てから
親父は俺に　何か隠しごとを
するようになった
麗俐が村へ来たのも
１０年ぐらい前って言ってたよな
ああ
他に何か気づいたことないか
そういえば　あいつが来た頃から
高級自動車を見かけること
多くなった
高級自動車って…　それが
妙なことなのか？
中国　まだ自家用車
持ってる人は少ない
政府の連中なら高級車
乗ってるかもしれないけど
そうか…　なあ　小龍
何だ？
今から　お前の村に行かないか
親父さんの住んでたところを
見てみたいんだ
俺の村を？
着いたぞ　はじめ
ここは以前　暮らしていた家だが
まだ　親父が書斎として
使っていたところだ
この辺りは昔の村の名残で
最近は　ずい分豊かになって
ほら　向こうに
新しい家が見えるだろう
あれが現在の村だ
はじめ　こっちが書斎だ
ああ
へえ　親父さんってずい分
几帳面な人だったんだな
すっげー
きれいに片付いてんじゃん
いや　こんなに片付いた部屋は
俺も初めて見た
ふうん　そうなのか
いつもは　机の上も本で
いっぱいだったのに
小龍
ん？
この時計　壊れてんのか
何か　針の位置が妙だけど
え？
壊れてないと思うけど
その時計は
親父が大切にしていた物だから
短針がちょうど９時を
指してるのに
長針が３０分のところにあるのは
妙だと思わないか
確かに　なぜだろう
おかしいな　短針が動かない
ん？
こんなところが開くぞ　何だ？
知らない　何だろう
あっ　これは！
何だ？
どうして　こんな物が
はじめちゃんたち
今頃どこにいるのかしら
さあなあ　李刑事の話だと
小龍と一緒に　トラックで
上海を脱出したようだ
輸送会社の奴が
見てたらしいんだが
はじめちゃんのバカ！
心配ないって
あいつの　しぶとさは
ゴキブリ並みだし
小龍も一緒なら大丈夫だろう
兄が見つかったのですか？
金田一さん　どうなりましたか？
あ…　いやあ
上海を出たところまでしか
分かってない
そうですか…
２人とも
無事でいてくれればいいんだけど
心配です
小龍は強い男
え？
小龍　とてもとても強いから
大丈夫
達民
こんなことで負けないよ
小龍　これからは
雑技団の中心になる人
心配かけて　ごめんなさいね
麗俐　君もだよ
こんなことで負けてほしくないよ
僕　これからは何も恐れない
だから　何でも言って
僕　君を守ってあげられる
ありがとう　達民
麗俐　麗俐
はじめ
俺は裏切られたよ　親父に
すべて　この日記に書いてあった
その大金は　いったい　どうして
親父は窃盗をしていたんだ
窃盗？
ああ　日本で自動車を盗んで
この国に密輸して
売りさばいていたんだよ
犯罪者だったんだ　俺の親父は…
くそっ
小龍…
１０年前　初めて行った
日本公演で
藤堂と知り合い　そして
車の窃盗の話を持ちかけられた
藤堂は日本で盗んだ車を
高く売れる中国で
さばこうとしたんだ
だが　中国に持ち込むのは
日本人では難しい
だから　雑技団の親父を
利用したんだ
そうか　藤堂に利用されて…
いや
親父も藤堂を利用して
悪事を働いたんだ
同罪だよ　親父の罪は
それだけではない
昔　団員だった女性を
自殺に追い込んだことも
この日記に書かれていた
それって
美魚とかいう人の話か
知っているのか　はじめ
その話を
ああ　張さんに聞いたよ
魚人だって噂が立って
魚人遊戯のショーから外され
デリンジャーで自殺したんだろ
その美魚の自殺も　すべて
団長である親父がやったことだ
あの女　人美のために
えっ　人美のため？
そうだ　人美を口止めするため
雑技団にとどめておく
必要があった
自動車を盗んでいることも
藤堂が人をひき殺したことも
知っている　あの女をな
何だって？
盗んだ車で逃げようとした藤堂が
車の持ち主を　思わず
ひき殺してしまった時
親父も人美も　その場にいたんだ
だから　すべてを知ってる
あの女の居場所を作るために
藤堂の奴と親父は
美魚を雑技団から追い出したんだ
誰よりも信頼していた団長の
親父に裏切られたんだ　美魚は
そのショックで自殺した
みんな親父のせいだ
許せないよ
自分の体が病気がちで
気が弱くなったとか
今さら後悔しているとか
俺や麗俐まで　欺き続けて
今さらなんだ！
よせよ　小龍
もう親父さんは死んだんだぜ
これ以上　責めてどうする
お前が傷つくだけだろうが
卑劣で小心で
薄汚い男だったんだよ
俺が尊敬していた父…
いや　王は
情けなくて　情けなくて
涙が出るよ
はじめ　本当にこんな簡単な
変装で正面から入る気か？
大丈夫だって　公安の連中も
まさか　俺たちがここに
戻ってくるとは思ってないさ
そうかな
こういうのを　日本の諺で
「灯台もと暗し」って言うんだぜ
まったく　いい度胸してるよ
お前は
ふふん　とにかく
もう一度　中へ入ろう
事件の鍵を握ってるのは
藤堂だ
はじめ　お前といると
何とかなる気がするから
不思議だよ
ちっ！もうカラか！
何の用だ？分かった　分かった
今開けるよ
あ　ああ　何だお前か
小龍は　まだ
捕まってないそうだな
ったくもう
公安は何をやってるんだか
あ　ビールはないな　ちっ
まったくもう
ああ　酒でも飲んでなきゃ
やってられんよ　あ？
うわっ　お前！
もう　こんな変装いらないだろ
そうだな
あ　トイレで取ろうぜ
鼻の下がムズムズ…　うっ
うおっ
ニーハ…　あら…
俺に任せろ　はじめ
小龍
あ　小龍　何だよ今の
酔拳だ
中国の古流拳法の一つだ
すっげー
張さんに教わったんだ
彼は中国では十指に入る
酔拳の達人だ
へえ　あのじいさんが
拳法の達人か
はい　ＯＫ
はじめ　藤堂の部屋はこの奥だ
ん？見ろ　はじめ！
え　何だ？
あれは！
秋　旅人は腐った水を
飲まねばならぬ
魚人の仕業だ
魚人の…
どうした　はじめ
小龍
舞台で使うスモークは？
ドライアイスだ
それがどうかしたのか
しまった！
金田一　心配したぞ
おっさん
逃げるぞ　はじめ！
待て　小龍！
やめるんだ　小龍！
あっ…
李刑事
自分から戻ってきてくれるとは
ありがたいな
くそっ
小龍　やめろ！
放せ！俺は誰も殺していない
分かってる　俺を信じろ
今日　お前と一緒に
過ごして　俺は
いくつかの手がかりをつかんだ
もう少しで　真相に
たどり着けるかもしれないんだ
いや　必ず　たどり着いてみせる
はじめ…
小龍！
麗俐…
はじめちゃん！
連行しろ
金田一
小龍　俺が必ずお前を助けてやる
じっちゃんの名にかけて
本来なら　君も容疑者の
逃亡をほう助した罪に
問われるところだが
抵抗する容疑者を説得し
逮捕に協力したことで
それを免じる
ただし　君にはこのまま
日本へ帰ってもらいたい
これ以上の捜査妨害は
許すわけには　いかない
ひどいわよ！今からすぐ
日本に帰れなんて
そう思いませんか　剣持警部
うーん　仕方あるまい
李刑事も俺の手前
金田一をしょっ引く
わけにもいかないし
これ以上
かき回されないためにも
早く帰ってくれというのは
同じ刑事として
分からんでもないからな
でも　犯人じゃない小龍が
逮捕されちゃうなんて
そうだ　さっき連絡が入って
小龍が特別に　今夜の
ショーだけには出るそうだ
本当か　おっさん！
ああ　間違いない
今夜は北京の政府筋の
大物のお嬢様が来るそうで
そのお嬢様が小龍の
大ファンなんだとかで
今夜のショーだけ　特別に
監視つきで小龍を出すそうだ
ショーが終わるのは８時半だよな
な　何だよ　金田一
ショーが終わるまで
まだ１時間以上ある
それまでに答えを
見つけることができれば
おい　お前　まだ本気で…
当たり前さ　もう少しで
答えが分かりそうなんだ
本当か　金田一
ああ
こういう絡み合った謎は
１個分かれば
芋づる式に
分かるもんなんだけど
くそっ
せめて凶器の行方だけでも…
うーん　凶器か…　藤堂殺しの
凶器も　前の２件と同じ
デリンジャーだったということは
消したり　出したり
いったい犯人の野郎は
どんなマジックを使ったんだ
マジック？消したり　出したり
消したり　出し…
消えたり　出たり…
搭乗手続きが始まったみたいよ
はじめちゃん
分かってる
ムリだ　金田一　日本へ帰るぞ
はじめちゃん
出たり　消えたり…
分かったぞ！
ええ？
本当か？
ああ　謎は　すべて解けた！
小龍　約束通り　帰って来たぜ
やっぱりお前は
犯人じゃなかったよ
絶対に見つからず
凶器を持ち込める隠し場所
真犯人だけが　そいつを使って
自由にデリンジャーを
出し入れできたのさ
すべては　１０年前の
日本の事件から始まっていた
魚人の呪いに見せかけて
殺害計画を
実行したのはあんただ！
金田一少年の事件簿…﻿美雪のペンフレンドの
楊雑技団の団員である
麗俐を訪ねて
俺たちは上海へ旅立った
だが
　
魚人伝説の詩になぞらえ
そこで次々と人が殺されていく
そして
　
アリバイのなかった
麗俐の兄
　
小龍が
容疑者として逮捕されたが
謎は
　
全て解けた！
一…
いい舞台だった
俺は
　
これで最後かもしれないが
皆で頑張ってくれ
　
これからも
小龍…
何を言う小龍
最後なんて
　
そんな…
そう
そんなことはないぜ
は
　
一…
約束通り
　
帰ってきたぜ
　
小龍
一
　
お前…
何だよ
　
約束したろ？
俺が真犯人を暴いてみせるって
そ
　
それじゃあ
ああ
　
しっかり
謎は解き明かしてやったぜ
やっぱりお前は犯人じゃなかった
それを
　
今から証明してみせる
真犯人は
　
この中にいる！
どういうことですか
　
剣持警部！
うるせえ！
李刑事
　
とにかく金田一を…
　
いや
この俺を一度だけ
信用してくれませんか
この金田一の推理を聞いて
それで納得いかんかったら
俺が責任を取ります！
いいでしょう
そこまで
　
あなたが言うのなら
それでは
　
まず
一番説明の簡単な２人目の殺人
唐人美さん殺害の際に用いられた
アリバイトリックから
解決していきたいと思います
小龍
何だ
　
一
例の魚人遊戯の時に使う
ドライアイス
　
残ってたら
少し持ってきてくれないかなあ
僕が持ってくるよ
それでは
　
まずこのトリックの前に
行われた準備についてお話します
犯人は
　
ある方法で
この事件の鍵となる凶器
デリンジャーを
このホールに持ち込み
それを使って人美さんを殺害した
そして
　
彼女をリフトに乗せて
舞台上部の
キャットウォークまで運んだ
ここまでは異論ありませんね
李刑事
あ
　
ああ…
　
しかし問題は
この時のアリバイなのだ
あの時
アリバイが証明出来なかったのは
小龍だけだ
そうでしょうか
　
俺は
なぜ犯人は
　
そんな厄介な場所に
彼女を運ばなくては
ならなかったのかってことの方が
問題に思えますけどね
それは犯行を魚人の詩の
夏の呪いに
　
なぞらえるために
夏
　
川の水は紫に濁る
ってやつですね
それだけの目的なら
控え室のバスタブにでも
放り込めばいい
では
　
君には
その理由が分かるというのかね
分かるさ
　
まず第一に犯人は
ある理由で
　
あの日のショーを
中止にさせる
必要があったんだ
ああやって舞台の水槽に
遺体を放り込めば
パニックは間違いない
そして
　
もう１つ
犯人は自分のアリバイが
完璧に成立するタイミングで
遺体を出現させようとしたんだ
そうすれば
殺害時刻にアリバイがなくても
彼女を舞台に落とした時の
アリバイが成立し
罪を逃れられるからね
では犯人は
　
どうやって
彼女を落としたというのかね
ある方法を用いてね
これでいいか
そう
　
このドライアイスでね
志保さん
　
これは
人美さんの着ていた衣装と
同じ物ですよね？
え…
　
ええ
何をする気？
実演ですよ
　
時限トリックのね
達民さん
　
来てくれ
見てくれ
　
まず犯人は
人美さんを舞台の上まで運び
魚人遊戯の水槽が下に来るように
計って固定したんだ
ドライアイスで凍らせた水を
のり代わりにしてね
もちろん
　
凍った衣装が溶ければ
彼女は落ちることになる
馬鹿馬鹿しい
それでは彼女が
　
いつ落ちるか
分からないではないか
タイミングは
ばっちりで落ちる
仕組みになっていたんですよ
その仕掛けは
こちらにありますよ
この青いスポットライトさ
魚人遊戯の時にしか使わない
　
ね
スポットライト？
そうさ
　
舞台ではいろんな色の
ライトが使われていたが
あの青いライトだけは
魚人遊戯の時にしか
使われていなかった
そうだったよな
　
小龍
ああ
　
あれは
水の底を表現するためのもので
他の演目では使われない
という訳だ
あの青いライトの熱くなる部分に
濡らした背びれを巻きつけて
ドライアイスで凍らせておく
魚人遊戯が始まれば
必ず
　
あの青いライトが使われる
そして
　
ライトの熱が氷を溶かし
衣装を解く　彼女は水槽にドボン
これが
人美さんを水槽に放り込んだ
時限トリックです
何ということだ…
君は
　
すでに犯人が誰なのか
見抜いているのだね…
もちろんです
それは凶器の行方に
気づいた時に分かりました
デリンジャーの行方…
どういう意味だ
　
金田一
さっき俺は
　
犯人がショーを
中止にさせなくちゃならない
事情があったからだ
って言ったけど
実は
　
その事情ってのも
凶器消失トリックと
関わりがあるんだ
どんな事情？それは
藤堂が行った
プログラムの変更ですよ
あの日
　
藤堂は
人美さんの出演出来なくなった
魚人遊戯をクライマックスに
ふさわしくないからという理由で
ショーの最初に持ってきた
そして代わりに猛虎ショーを
最終演目にしようと言い出した
これが犯人にとっては
非常に都合の悪いことだったんだ
どういうことなの？
そのままだと
凶器のデリンジャーを
ショーが終わるまで隠すことが
出来なくなってしまうからですよ
絶対に見つからない
　
そして
全く疑われずに
この劇場から
凶器を持ち去ることも
逆に持ち込むことも出来る
隠し場所にね
どこですか
　
それは
体内
　
身体の中ですよ
じゃあ犯人は
銃を飲み込んだってえのか
そ
　
そんなことが出来るのは…
あ…
　
ち
　
違う！僕知らないよ！
そう
　
達民さんじゃない
そんなことをしても
金属探知ゲートをくぐれば
すぐにバレてしまう
で
　
では一体誰が…
銃を飲むことが出来て
その上
　
探知ゲートを
くぐらなくても済む者
犯人は凶器のデリンジャーを
ショーに出ている
あのでっかいトラの
腹の中に隠したんです
何かに包んだ小形拳銃を
エサに混ぜて食わせることでね
ト
　
トラの
　
腹の中だと？
全く奇妙なことを考えたものさ
でも
　
だからこそ
誰も思いつかなかった
犯人はトラに銃を食わせることで
凶器を自由自在に
出したり消したりしていたんです
もちろん
　
人美さん殺しの時もね
しかし
　
この時
ちょっとしたトラブルがあった
それが
あのプログラムの変更だったんだ
達民さん
な
　
何
あの時
俺が控え室でトラを見つけた時
言ってましたよね
トラは
　
腹が減っていないと
芸をしないって
だから犯人は困り果てた
すでに人美さんを
殺害していた犯人は一刻も早く
デリンジャーを
始末する必要があった
しかし
　
ここでトラに
エサをあげてしまっては
トラは最後のショーの時に
満腹で芸をしなくなってしまう
かと言って
　
ショーの最後まで
ピストルをどこか別の場所に
隠しておくのは危険極まりない
そこで犯人は考えたんだ
人美さんの遺体を
派手に舞台に登場させ
ショーを中止させようってね
とっさに
　
そこまで…
誰なの？その犯人って…
達民さんは俺に
　
こうも言った
トラは主人からしか
エサを食べないってね！
そう
　
凶器をトラのエサに混ぜて
食べさせることが出来た人物は
たった１人しかいない
あのトラの主人である
楊麗俐
　
君こそが
この事件の真犯人
　
魚人だ！
うそでしょ
　
一ちゃん…
そんな
　
麗俐が犯人だなんて
まさか！
そ
　
そうだ
麗俐が
　
う
　
うそだ
そんなこと！
ひどいです
　
一
なぜ
　
私がお父様を
仲間たちを殺したりしなくては
ならないのですか？第一
　
私には
お父様が殺された時にも
アリバイがあるのですよ
そうだ！あの時麗俐は
ずっとショーに出ていたんだ
王団長を殺すことは
絶対に不可能だ！
いいや
楊王団長は殺されたんじゃない
おそらく自殺したんだ
な
　
何だって？
小龍
　
お前の村に行って
おやじさんの部屋を見た時
お前言ってたよな
こんなに片付いている部屋は
初めて見たって
人は死を覚悟した時
身辺整理をしたりするものらしい
お前のおやじさんも
そうだったんじゃないのか
おやじさんの日記には
自分のやってきたことを
後悔しているらしいことが
書かれてたんだよな
　
それに
病気だったらしいこともだ
致命的な病気だったかどうかは
分からないが
　
それをきっかけに
過去を激しく悔い
自ら命を絶つ決心をしたんだろう
しかし
　
万が一にも
罪のない他の団員たちに
容疑が掛かる事態は避けたかった
だから
　
おやじさんは
団員の誰にも
疑いが掛からない時間を選んで
あのデリンジャーで
自殺を図ったんだ
だが
　
そのことが
たまたま足をくじいて
１人で治療していた
小龍
　
お前を
容疑者として窮地に追い込み
しかも
　
ショーを終えて
あの団長控え室にやってきた
第一発見者
　
麗俐に
恐るべき連続殺人計画を
思いつかせてしまったんだ！
連続殺人計画…
そうです
　
彼女は考えたんですよ
この自殺を
殺人に見せ掛けることで
これから
自分が実行しようとしている
連続殺人の容疑から
自分を完全に除外させることが
出来るかもしれないと
なにしろ
アリバイがある訳ですからね
麗俐は
　
まず凶器の拳銃と
おそらく
　
どこかに残されていた
遺書を奪い去った
そして
　
その拳銃を次の犯行でも
用いることを考えたんです
同じ銃で人美さんが殺されれば
同一犯人の犯行と
考えるのが普通です
そうなれば麗俐は容疑から外れる
ところがここで
ピストルを打った時の
火薬の臭いという
問題が残されたはずだ
硝煙臭かあ…
ああ
　
自殺ならきっと
手に火薬の臭いが残ってたと思う
そうか！
だから遺体が水浸しだったのか
そういうことですよ
水をぶっ掛けて
臭いを洗い流そうとしたんだ
すぐそばの金魚鉢の生臭い水でね
これは実にうまい手だった…
なにしろ
例の魚人伝説の呪いの詩の
春に
　
なぞらえることが
出来たんだからね
麗俐
　
団長の死が自殺だとすれば
こういった偽装が出来たのは
第一発見者の君しかいないんだよ
もちろん証拠もある
そう
　
さっき藤堂を
殺したばかりの
凶器のデリンジャーだ
あの
　
でっかいトラの
腹の中にね
なんなら金属探知機を
くぐらせてみるかい？
その必要はないわ
そうよ
　
私がやったの
人美も藤堂もね
全く
　
ついてないわ
　
一
あなたが上海に来なければ
美雪が連れて来なければ
きっと何もかも
うまくいったのにね
どういうこと麗俐
あなた
　
日本語
いつからそんなにうまく…
いつから？
最初からよ美雪
だって
　
私日本人だもの
麗俐
　
どういうことだ
来ないで小龍！
私は麗俐なんかじゃない
楊麗俐は記憶喪失の
フリをしていた
　
私に
楊王がつけた名前よ
その名前で呼ばれる度に
私は思い出していたのよ
あの
１０
年前の悪夢を
１０
年前？お前が村に来る前の話か
何があったんだ
　
麗俐！
お前は一体
　
どこの誰なんだ！
私は日本の新潟という場所に住む
ほんと普通の子だったわ
父は
　
私が
まだ小さい頃に離婚していたから
父と２人暮らしではあったけど
何にも不満なんかなかった
私は父が大好きだったわ
優しくて
　
いつも
私のことを見ててくれて
そのお父さんを殺したのよ
あいつらが
藤堂と人美と楊王の３人が
盗んだお父さんの車で
虫ケラみたいに
　
ひき殺して！
藤堂に？まさか…
それじゃあ君は
１０
年前の被害者の
小林哲治の娘なのか？
今でも
　
ありありと思い出せるわ
あの日は
　
とても寒くてね…
私はお父さんに車で学校まで
送ってもらうことになった
お父さんは寒がる私のために
温かいココアを
買ってきてくれるって
買い物に寄ったの
私は後ろの荷台に隠れた
お父さんを
驚かしてやろうと思って
そしたら
　
いきなり
誰か知らない人が入ってきた
私は声も出せずに
そのまま隠れていたわ
その直後に
　
車が急発進して
そして
　
お父さんの
叫び声が聞こえて…
私
　
我慢が出来なくなって
外をのぞいてみたわ
男２人と女１人が
お父さんを抱えて
運んで行くのが見えた
その時
　
女の人が
こっちを振り返ったので
私は
　
また慌てて
荷台の中で息を潜めたの
すぐにまた車は動き出したわ
私
　
怖くて怖くて…
いろんなことを考えてるうちに
気を失ったみたい…
気がついた時には
目の前にお父さんを
運んで行った男がいたの
それが楊王だった
おやじが？
そこは
　
もう中国だった
楊は
　
私を見て
すぐに事態を悟ったみたいだった
でも
　
私がお父さんをひいた現場を
見たことを知らなかったみたい
私は中国人として
生きるように命令され
雑技を仕込まれるようになった
私も楊も
　
いつしか昔のことを
忘れ始めたみたいだった
そのうちに
私は雑技団の一員として
舞台に立つようになり
そして日本公演の時
私はこっそり団を抜け出したわ
もう戻るつもりはなかった
お父さんのところに帰るんだ
そう決心していたんだもの
ところが食事するつもりで入った
お店の雑誌に
お父さんのことが載っていたのよ
１０
年前の死体遺棄事件
被害者判明って…
私は涙が枯れるまで
泣いて泣いて…
落ち着く頃には
　
今度は憎しみで
胸が張り裂けそうになっていたわ
お父さんを殺した連中が
許せなかった
このまま日本に残るより
まず
　
やることがある
あいつらに復讐するんだ
そのために
私はもう一度雑技団に戻ろう
そう決心したのよ！
そうか…
君が最後に殺そうとしていた
冬とは
　
楊麗俐だったんだな
そうよ
　
私の最後の復讐の相手は
私を
１０
年もの間閉じ込め続けた
楊麗俐という中国人の少女
麗俐は凶器のピストルを残し
全ての殺人を遺書で告白して
川に身を投げて自殺する
そう
　
偽装するつもりだった
そして日本に帰れば
　
私には
別の名前が待っていてくれる
冬が終わって
春が訪れるように
　
自然に
日本の生活に溶け込めるように
いろいろ準備もしていたのよ
美雪との文通もその１つだったの
麗俐…でも
でも私は楽しかった
ほんとに
さあ
　
捕まえてよ刑事さん
どうせ
　
私には
何も残っていないんだから
馬鹿！何も残ってないなんて
言わせないわよ
　
麗俐！
いえ
　
千恵！
志保さん…
私の母は
　
私がまだ小学生の頃に
離婚しているの　父の元に
まだ２つになったばかりの
私の妹を残してね
母が別れた父親の名前は小林哲治
あなたのお父さんよ！
え？
じゃあ
　
麗俐と志保さんは…
そう
　
１年前あなたが日本に来た時
私は偶然
雑技団のショーを見ていたの
私も体操をやっていたから
興味があって
舞台に立っているあなたを見た時
ほんとにびっくりしたわ
だってあなた
　
母の若い頃に
そっくりなんですもの
だから舞台であなたを見た時に
きっと妹だって思ったの
もっとも何で中国の雑技団に
いるのか全然分からなかったけど
それで
　
麗俐の
身元を探るために雑技団に？
千恵
　
帰りましょう
　
日本に
私待ってるから
　
だから
一人きりなんて思わないで
何も残ってないだなんて…
わ
　
私は…
麗俐
　
俺は
　
お前が
　
ずっと…
ごめんなさい
　
小龍
私のせいで疑われてしまって
行きましょう
麗俐！何もないなんてこと
全然ないよ！
君はたくさんの人に愛されている
そうだろ？
俺だけじゃない皆待っている
皆
　
皆待っている…
その後
　
お元気ですか
　
美雪
今は
　
ともかく自分の罪を
償うことだけを考えています
小龍も姉も暇さえあれば
面会に来てくれます
こんな私でも
　
ようやく
人の優しさを信じることが
出来るようになった気がします
いつか
　
私にも本当に救われる日が
来るのでしょうか
そういえば
　
楊王の日記には
私に自分の娘
楊麗俐として生きてほしいと
書いてあったそうです
私もまた
　
楊王を父として
慕っていたのかもしれません
だからこそ楊王の自殺を知った時
私の中で何かがぷっつりと
切れてしまったのかもしれません
最後になりますが
　
一に
ありがとうとお伝えください
俺に？何で？
おかげで
　
もう１人の自分
楊麗俐を
殺さないで済みましたって
よかったね
　
一ちゃん
きっと小龍も同じ気持ちだよ
そうかなあ
　
そうかあ？
や
　
絶対あいつ怒ってるってー
そんなことないよ
え？
ほら
　
一ちゃんにも手紙来てるよ
小龍から
開けてみなよ
　
一ちゃん
え
　
あ…
自分で確かめて？
小龍の気持ち
ああ…
フミが出掛けた鵜飼村で
祭りの夜に起こった殺人事件
口の中に
魚を詰め込まれていた被害者
鵜飼いに見立てた
犯人のトリックなのか
そして
フミが電話で伝えてきた事実
え？犯人が現場に？
被害者と犯人の間に
隠されていた過去とは
フミ
お前が事件を解決するんだ！
金田一少年の事件簿
ぜーっこうちょーう！ははー！
先生まだ歩くのー？
疲れちゃったよー
何だ何だ
だらしがないぞ
　
みんな
金田一を見てみろ
あんなに元気じゃないか
そんなこと言ったって…
　
あれ？
どうした？
フミちゃん
　
消えちゃったあ…
え？き
　
金田一
せんせー！
ど
　
どうした！
どこだ
　
金田一
おおー
あ
　
こら！
すっごくいい景色
こっからの風景描こうよ先生
き
　
金田一！危ないじゃないか
だーいじょうぶー
だ
　
大丈夫じゃない！それに
団体行動を乱しちゃ駄目だろう！
はーい
じゃなくて
悪いと思った時は？
ごめんなさい
そう
　
ほら
よいしょ
ねえ先生
あれが先生の生まれた村？
ああ
　
そうだ
先生の故郷
　
鵜飼村だ
もう少しだから
　
頑張れー！
はーい…
フミは元気だなあ
いっつも鍛えてるもん
こんな山道
　
楽勝よーん
ついでに
　
おつむの方も鍛えれば？
あっおやっぎ君
ん？
大丈夫？荷物持ってあげようか？
あ
　
いやあ…
ちょっとー
青柳君はスミレの彼氏よ
なれなれしくしないで！
えー？
あーら
　
青柳君みたいに
かっこいい男の子には
ライバルが多くてよ
　
スミレさん
何ですってー！
俺が彼氏だなんて
　
別に…
ん？危ない！
うわああ
わりいわりい
すみませーん
この人
　
無免許なんですう
ばーか言ってんじゃねえよ
何だよあの態度！
近頃
　
ああいう連中が増えて
困ったもんだ
ったく
　
ん？
分かってるってー
コーラを３本だろ？
何が間違ってコーヒー
買ったりしないでねーだ
一家のあるじを
馬鹿にすんなっちゅーの
剣持のおじさん
　
何してんの？
ん？げ！チビ金
チビ金ってゆーな
はい…
で
　
何でここに？
ん？ああ
　
ほれ
家族そろって鵜飼祭を見にだが？
お前こそ何で…
ああ
いや！言わんでいい
あ？
わしは
　
やっと取れた
休暇で来ているのだ
今日だけは
　
ゆっくり
家族団らんしたい
だから？
ん？いいか？
この先どこかで出会っても
お互い
　
まったく知らない
他人だからなあ
どうして？
んー
　
頼む
　
お願いフミちゃん
チョコパフェ２つ
分かりました…
じゃあねー
こんなとこまで来て
あいつに会うなんて…
早く
　
早く
　
早く
　
パパー！
くわばらくわばら…
コーラ
　
コーラ
　
コーラ
コーラ
　
コーラ
　
コーラ
　
コーラ
ああ…
まあまあ！いらっしゃい
お世話になります
お久しぶりです
　
おばさん
英夫さん
　
よく来たねえ
アサコさんも
来れるとよかったのに
おばさん
　
それは…
そうだね
今回は教え子たちが一緒だし
鵜飼祭の話をしたら
　
この子たち
どうしてもここで絵を描きたい
ってことになっちゃって
あらそうかね
　
皆疲れたろ
ささ
　
入って入って！
はーい
青柳君
　
荷物
部屋に置いといてあげる
ええ？
青柳君
　
後でお散歩しなーい？
ああ？
野人
こらー！とっとと入らんか！
はーい
荷物置いたら
鵜飼祭
　
見に行くぞー
はーい
げ…
すげー！
鳥が魚をくわえてるぜ
あれが鵜飼漁っていうやつだ
あの鳥すごいねえ！
ほら
　
あの
かがり火で鮎をおびき寄せて
鵜が飲み込んだ鮎を
吐き出させるんだ
どうやって？
見てごらん
ああして首を縄で絞めて
魚を完全に飲み込ませないように
してるんだよ
へえ…
でもちょっと残酷かも…
うーかい
　
うーかい…
やーだ
　
マキオったら
あ…
　
あいつら昼間の
つまんなーい
　
ねえユキト
鵜飼なんてもう飽きちゃった
何それ
お前が見たいって言ったから
来たんだぜ？
やっぱ魚は
竿で釣って
　
なんぼでしょ
ちょっとマキオ
また私を放っておいて
夜釣りに行く気？
へへへ
もう
まあまあ
コテージで飲みなおしましょ
そうすっか
むかつくう
ひどいやつらだよな
あ
　
青柳君
おい待てよ亜弓
けっ
　
鵜飼の鵜にでもなりやがれ
え
　
何か言った？
ああ！え
　
やだ何かしら
妖精のささやきよ
　
きっと
あ？チャーンス
スミレが青柳君から離れてる隙に
青柳君
　
あのね…
ん？
ったく
　
カミさんたちは
どこへ行ったんだ？お？
あのね
あのね…
何？
あのね…
何だよ
ルーンルルンルンルーン
ルーンルルンルンルーン　んふ
あ
・
お
・
や
・
ぎ君
あれ？ねえ
　
青柳君は？
さあね
俺知らなーい
私も
せっかく
お気にのワンピで決めたのに
奇麗な夜空ねえ
うん
やったね
　
とうとう
ツーショットになれたぜえ
青柳君は
ルックスも成績もグーだし
何より家がお金持ち
やっぱ男は経済力だよなあ
何？
あ
　
ううん
　
ただ…
ただ？
おっしゃ！ここは
ロマンチックに演出だい
虫の声が奇麗だなあって
そうか？俺何か
虫に食われたみたいで
ケツかゆくってさ
ハラホロヒレハレ
ん？何だろう
あ
ん？
あ…
あ
　
やばい！
逃げろー！
ちょっと
もっと速く走れないの？
んなこと言ったって…
もう！
捕まったら殺されちゃうわよ！
こっちよ！
え？
ここに隠れるのよ
で
　
でも…
早く
うん
ひいいいい
しっ！
来た
見つかる
　
誰か助けて
一！
フミー！
俺のＭＤ
黙って持って行きやがったなあ
あんにゃろー！
こらー！
きゃー！
何やってんだ？お前
あ
　
お巡りさん…
どこの子だ？
助かった…
よかったねえ
　
青柳く…
いない
か弱き乙女を置き去りにして
トンズラこきやがったなあ
何をブツブツと…
あ
　
いやあ
あ
　
それより
　
お巡りさん
大変だよ
あ？
川の近くで人が殺されたんだ
何だって！
こっちよ！
あー！
いやあ
　
助かりますー
本庁の警部殿が
偶然いらっしゃるなんて
ま
　
待ってください
私は
　
たまたま休暇で…
はいはい
　
えー被害者の名前は
香取マキオ
　２１
歳
観光に来ていたようです
死因は絞殺
犯行に使われた縄は
鵜飼用の物です
かなり汚れていますから
その辺に落ちていたもんでしょう
鑑識からの報告では
指紋の確認は…
なるほど
凶器から犯人を特定することは
出来ないということですなあ？
ええ
　
しかし何で犯人は
遺体の口に
鮎をねじ込んだんでしょう
鮎か…
鵜飼の見立てじゃないかなあ
うん…
首に縄を巻かれて
口に鮎をくわえてるなんて
お祭りの時に見た
鵜飼そのものだよ
なるほどなあ
っておい！お前まだいたのか
何よ
　
私は事件の
第一発見者なんだからね
あー
　
もう第一発見者の事情聴取は
済んでおるんですな？
あ
　
はい
ご協力ありがとうございました
お子様はとっととお帰りください
お前に会ったばっかりに
俺の休暇は…
　
うう…
あー
　
よしよし
　
いい子いい子
あのー
　
私
　
絵画塾をやっている
猪熊と申しますが
今ここにうちの生徒が２人
保護されてると連絡が…
あ
　
金田一！
い
　
猪熊先生…
びっくりしたぞ！どうしたんだ
あ
　
いや
　
その…
何だ
　
やっぱり
先生に怒られるのは怖いか
怒りはしないよ
　
無事でよかった
彦根刑事
被害者の友人を連れてきました
よし
何で
こんなことになっちゃったのよ
俺たちは何も知らねえよ…
そうよ
最後に彼を見たのはいつですか？
８時半頃
　
やつが夜釣りに行くって
部屋に顔出して
　
それっきりだよ
うん…
　
おや
　
それは？
あ
　
これ部屋に戻る時
すっ転んでさ…
私はワインの酔いがまわって
部屋に帰ると
すぐに寝込んじゃって
マキオが外に出てったのは
気づかなかった…
私も部屋に戻ったら
テレビつけてたし
あなたもけがですか
あ…
　
ええ
コテージの階段で
　
つまづいて
階段ね…
ところで皆さん
このライターに
見覚えありませんか？
被害者のそばに落ちていたんだが
そ
　
それ！
マイが昨日
コンビニで買ってたやつじゃあ…
え…
何？
うそお！私のは
　
ここに…
ない…
まさか…
マイ
　
あんた…
ちょ
　
ちょっと違うわ！
私じゃない！
だが
　
このライターは
君の物なんだろ？
違う
　
違うよ
真犯人は…
　
どうしよう
そうだ！
ん？
フミー！お前
　
人のＭＤ
勝手に持って…
　
あ？
鵜飼の鵜に見立てた殺人事件？
何だそりゃあ
分かんないんだよ
だから鵜飼の使う縄でさ…
口の中に魚がねえ…
大体分かったぜ
　
フミ
お前の言う真犯人って
どっか
　
けがしてなかったか？
けが？けがってどこの…
　
あ
そっか…
　
そういうことか…
謎は
　
全て解けた…
ん？それ
　
俺のせりふだろ
違う
　
私じゃない！
私はマキオを殺してなんか…
まあまあ落ち着いて
あんなライター
どこでだって買えるもんです
ただ詳しいことを警察で
話していただきたいだけで…
そう
待って！その人
　
犯人じゃないよ
こ
　
こら金田一
　
邪魔しちゃあ…
だから犯人と言ったわけじゃあ…
犯人は…
真犯人は
この中にいる別の人なの！
何？
何を言ってる
現に彼女のライターが…
ライターは関係ないよ
殺された人が勝手に
持って行ったのかもしれない
それよりも犯人は
現場に残しちゃった
決定的な証拠をごまかすために
あんな見立てをしたのよ
決定的証拠？
犯人は
　
あの人ともみ合い
見つかれば言い逃れの出来ない
証拠を現場に残してしまった
だから
　
とっさの思いつきで
あの人の釣った魚を口に突っ込み
この村のお祭りの鵜飼のように
見立てることで
　
その証拠から
警察の目をそらそうと思った
で
　
何だ
　
その証拠ってのは
血よ
　
犯人の血
血？
犯人は
　
きっと
あの人に抵抗されて
体のどこかを
血が出るほど
　
かみつかれた
その血を調べれば犯人なんて
すぐ分かっちゃうもの
犯人が鮎をくわえさせた
本当の理由は
口の中を鮎の血でいっぱいにして
自分の血を紛らわせてしまう
ことだったのよ！
犯人はけがをしてる人物…
そうか…
　
分かったぞ！
犯人は滑川ユキト
　
お前だな？
お
　
俺？冗談じゃないぜ！
よく見ろよ
　
これが
かみ痕に見えっかよ！
これが！
あ
　
あれ
す
　
擦り傷…
だろ？
それじゃあ…
　
やっぱり
片倉マイ
　
お前か！
ま
　
待ってよ！見てよ
私だって…
　
捻挫よ
　
ほら！
そ
　
そんな…
見える場所に
けがしてるとは限らないよ
あ…
それから警察に
言ってなかったことがあるの
あ？
殺人現場見たの
私１人じゃなかったんだ
な…
なぜそれを早く言わん！
クラスメイトの青柳君と
こっそりデートしてたの
で
　
私たち
犯人に追っ掛けられて
公園まで逃げ込んで隠れたの
そしたら
お巡りさんに見つけられる前に
あの子１人で逃げちゃって
だから…
　
私たちが
２人だったってこと知ってるのは
ただ１人
あの時
現場にいた犯人しかいないんだ
え？
だから…
だから犯人は
犯人は…
猪熊先生！
先生なんでしょ？犯人は…
ま
　
まさか…
な
　
何を言うんだ？
だって先生
　
私を迎えに来た時
こう言ったよ？
あのー
　
私
　
絵画塾をやっている
猪熊と申しますが
今ここにうちの生徒が２人
保護されてると連絡が…
あ…
警察が２人なんて
言うはずないもん
私
　
ちゃんと聞いてたんだもん
だから
　
だから…
もういい
　
金田一
ああ
　
それは…
決定的だな
お前の言う通りだ
俺があの男を…
ひどい…
おっさん
　
何でマキオを…
何で？
お父さん！お母さん！
見て見て
　
魚捕まえたよ！
まあ！
すごいなあ
　
英之！
でも
　
鵜飼祭が終わるまで
禁猟なんだ
放してやりなさい！
はーい
じゃあ先に戻ってますね
ああ
お母さん
　
帰ったら…
スイカを冷やしておくんでしょ
頼んだよー！
英之
　
向こうの急流には入るなよー
オッケー！
３年前の夏
ああの
の男
男は
は俺の１人息子を
英之を殺したも同然なんだ！
わあああー！
おとうさーん！
英之！
おとうさーん！
英之！
助けてー！
英之は
　
既に急流近くに流されて
飛び込んでも
間に合いそうにもなかった
そこに…
おい！そこの人
その竿を差し伸べてやってくれ！
早く！
ちっ
うわあ！待ってくれ
　
おい！
くそー
英之！英之ー！
うわあああ！
英之が変わり果てた姿で
上がったのは半日後だった
泳ぎが得意だった英之
その冷たくなった体には
釣り糸が絡まっていた
その時初めてあの男が釣竿を
投げ捨てた理由が分かったよ
あの男は自分の釣り糸を
英之に絡ませて溺れさせたんだ
そして
面倒は御免とばかりに逃げた
もちろん
　
その男のことを
警察に話したよ
でも
　
ありふれた釣り糸１本じゃ
調べようもなく
　
結局
事故として処理されてしまった
俺にしても
捕まえたところで
英之が生き返るわけでもなし
あの男のことは忘れようと
努めることにしていたんだ
英之を見捨てて
逃げ去った男の顔が
目の前に現れた瞬間までは…
あの男の
　
にやけた顔を見た時
俺は…
先生…
　
私
先生が犯人だって気付いた時
迷ったんだ
私先生のこと好きだし
このまま黙っていようかって…
でも…
先生いつも言ってたじゃない
悪いことしたのがバレて
ぶたれるのは痛いけど
誰にも気付かれないままに
なっちゃった時の罪悪感の方が
ずっとずっと痛いんだって！
だから
　
だから…
　
私
金田一…
嫌だよお…
大好きな先生が犯人なんて
やだよお…
金田一
　
もう泣くな
お前に泣かれると調子が狂う
お前は悪くない
悪いことをしたのは
先生なんだから
お前はいつもの
勝ち気なフミでいてくれよ
先生…
優しくしてあげなきゃ駄目よ
一ちゃん
さすがのフミちゃんも
落ち込んでるに違いないわ
大好きな先生を犯人として
暴いちゃったんだから…
分かってるって
　
あ
あ
　
来たわ
フミちゃん…
ほら！
あ
　
ああ
　
えっと…
な
　
なあフミ
　
俺のＭＤだけどさあ
お
　
お前にやってもいいぜ？
だから
　
その
　
元気出せよ
ほんと？
え？
やったー！
このＭＤ私のもんだー！
約束だかんねー！
うそつきっこ
　
なしだよー
え…
　
どうなってんだ？
さ
　
さあ…
あのー
　
フミちゃん？
そのＭＤやっぱ…
嫌だよ
てめえ
　
俺はなあ
お前のこと心配してたんだぞ
やれやれ
じゃ
　
チビ金の荷物頼むなあ
はい
事件で徹夜明けだというのに
家族を連れてドライブだ…
せっかくの休暇が台なしだ
父親はつらいよ…
　
ったく…
私のですー
あっ
フミちゃん…
分かってるのか
　
フミー！
ふんっ
フリーライターの
いつきさんが持ち掛けてきた
埋蔵金伝説
天草四郎が残したばく大な財宝が
この地
　
天草に眠っている
財宝発掘に集まってきた
ひと癖ありそうなメンバーたちと
ロザリオに刻まれた謎の文章
そして引き起こされた第一の殺人
それは財宝に近づく人間を
惨殺する白髪鬼の仕業なのか
金田一少年の事件簿﻿というわけで厳正なる投票の結果
新部長は七瀬美雪さんに
決定しました
こんないかがわしい
クラブの部長なんかになって
どうすんだあいつ
では新部長
まず新任の挨拶をお願いします
はい
未熟者ですが
　
皆さんの期待に
精一杯応えようと思います
よろしくお願いします
それでは早速
　
新部長として
今日付けで入部した
１年生を紹介します
さあ
　
どうぞ入って
美浦エミリです
皆さんよろしくお願いします
かわいい
グット
　
エレガント
お見事
一瞬にして男子全員の気を引いて
同時に女子全員から
嫌われてみせるとは
はじめまして
　
金田一先輩
何で俺の名前を？
ある人から聞いたんです
ある人？
これからミーティングを始めます
金田一君
　
私語はやめてください
天草財宝伝説殺人事件
おーい
　
おーい
何を怒ってるんだよ
　
美雪
別に
ああそうだ
そういえば
　
はじめちゃん
ミス研の本棚にエッチな小説
隠してたでしょう
カバーだけ変えて
知らねえよ
あれ佐木だって
うそ
　
じゃどうしてあの本が
佐木君のだってわかったのよ
それは
　
つまり…
よう
いつきさん
ああそうですか
　
じゃすぐ
カメラマンをそちらへ飛ばします
はい
　
どうも
天草四郎？
ああ
　
そうだ
天草四郎か
　
で何それ？
もう
　
はじめちゃんたら
冗談うまいんだから
今日授業でやったでしょう
知るかよ
　
そんなの
島原の乱ですよ
そう
　
それそれ
　
島原の乱闘
とにかく
　
その
圧政を強いる領主に対して
島原
　
天草の
隠れキリシタンの農民軍が
決起し幕府軍と戦った
有名な反乱です
しかし実は
その背景にあった目的が
かつての領主であり
キリシタン大名だった
小西一族と有馬一族のお家再興で
はじめちゃん
すいません
　
俺
　
こういう話って
授業思い出しちゃって
　
つい
あとは俺が簡単に話すよ
要するにそのお家再興のための
軍資金というのが今回の企画で
つまり隠れキリシタンの財宝発掘
おいおい
　
いつきさん
どうでもいいけどさ
いきなり
有無も言わさず車に乗せて来て
何を言い出すかと思ったら
埋蔵金だ？
全く夢みたいな話をよ
どうせそんな軍資金なんか
とっくに使われて
すっからかんに
決まってるじゃんか
ところがどっこい
こいつが違うんだなあ
え？
全滅を覚悟した一揆軍と
天草四郎が行軍途中で通った
天草下島か上島のどちらかに
財宝を隠したんじゃないか
ってことがわかったんだ
財宝の中身は重さ
６０
キロに近い
黄金の十字架
２０
基はあったとされる
金銀のしょく台と
宝石を散りばめた王冠
そして
　
大判小判
しめて数十億円
すごい
でもよ
　
そんな伝説だけじゃ
どこに宝を隠したかなんて
調べようがないじゃん
ところがあるのさ
でっかいヒントが
え？
なっ！
実は明治
２０
年頃
　
天草上島の
老嶽山麓であったことなんですが
地元の子供達が岩場で
遊んでいた時のことだった
一人の少年が飛び乗った岩が
ふと見ると
　
崩れた岩の後に
ぽっかりと穴が開き
　
中から
光を放つ物が見えたんだ
そこには
３０
センチ程度の
女の姿をした石像と
ロザリオを
模して作られたと思われる
鎖の先につけられた
一寸半
　
約４．５センチ程度の
黄金色に輝く十字架が
置かれていたそうです
そして話は昭和
１０
年に飛ぶんだが
長崎に住んでいたある男が
天草上島でその黄金の十字架を
ふとしたことから手に入れた
彼はこれを指輪にするために
宝飾業者に加工を依頼したんです
お預かりしたこの十字架ですがね
純金ということでしたが
実は
　
ほら
中から鉄の芯が
出てまいりましてね
何と
　
せっかくのお宝が
これは文字だ
確かに文字が彫ってある
そして鉄の棒を引き出してみると
これは
さんしゃる二
　
こんたろす五
くさぐさのでうすの宝沈め沈む
謎の言葉が
記されてあったそうです
でうすの宝？
でうすは隠れキリシタンの
言うところの
　
神だ
ざっと言うなら
様々の神の宝をどっかに埋めるか
沈めるかしたってとこか
なるほど　財宝のありかを示す
謎の言葉ってわけか
誰かその謎を解いた人は
いるんですか
いや
　
数多くの
トレジャーハンターが
この謎に挑み天草に足を運んだが
一人として解けた者はいない
つまり
　
時価数十億円の財宝は
今も天草の地のどこかに
眠っているってわけだ
天草に眠る財宝
今回は伝説の
天草財宝発掘同行ルポに
ご参加いただき
ありがとうございます
では
　
まず取材陣の紹介から
私
　
週刊けんたい編集部の
和田守男と
フリールポライターのいつきっす
なんて今更自己紹介もないっすね
いつきくんも相変わらずだね
立山の佐々成政財宝発掘以来
１年ぶりってとこか
矢木沢さん
　
そのロレックス
ダイヤ入りでしょ
古美術商で
そこまでもうけてるなら
宝なんて掘らなくてもねえ
この時計ですか
いわば商売道具ですよ
私どもは不動産屋同様
それなりに振る舞わないと
信用されませんからね
それに天草財宝にはあの幻の
天正菱大判が含まれてるかも
しれないんだ
古美術商としては商売抜きでも
拝んでみたい
あんたは自分が
見つけられなくても
仲介でもうけられる立場だからね
言っとくけど私が見つけたら
あんたみたいなキザ野郎の
遊び人には
　
売らないからね
やれやれ絹代さん
　
５年前のこと
まだ根に持ってるんですか
まあまあお二人とも
ちょっと赤峰さん
何撮ってんのよ
何って？
何で私達を
撮らなきゃなんないわけ？
私は自分の仕事をしているだけよ
我こそは財宝をと狙う
参加者同士の小競り合い
早くも火花ってね
何かみんな知り合いみたいだな
いつきさん
宝探し業界っていうのは
狭い世界だからな
俺も宝探し企画物を扱うのは
これで２度目なんだけど
俺と和田ちゃんを含めて７人は
前回と同じメンバーだ
今の３人と
　
ほら東大中退して
宝探しに命かけてる変わり者の
トレジャーハンター赤門秀明
高校生か
このツアーも落ちたもんだ
何あれ
　
感じ悪
あとは
　
大学で考古学の
助教授をやっている最上葉月
あれも前回からの参加だな
　
一応
相変わらずクソ生意気な女だぜ
あれあれ
　
あと一人足りない
まさか乗り遅れたんじゃ
偉いこっちゃ
　
偉いこっちゃだ
しっかりしてくれよ
　
和田ちゃん
あの子がいなかったら
話になんないよ
あの子？
やっと着いた
お待ちしておりました皆さま
天草四郎？
あまりの美形に
びっくりしただろう
彼
　
天堂四郎君
うちのツアーの案内役なんだ
本当はお父さんに頼んだんだけど
足けがしてこられなくなって
どうも
　
天堂四郎です
見てはじめちゃん
観音様があるわ
切支丹館なのに
本当だ
何かで紛れ込んだのかな
それはマリア観音です
マリア観音
ええ
　
弾圧から逃れるために
踏み絵等の背信行為を
余儀なくされていたキリシタンは
その罪の意識から母なるマリアの
慈愛によって救われたいと
願ったんです
そしてマリアに見立てた
観音像を作り
ひそかに信仰を続けたんです
悲しいと思いませんか
隠れキリシタンは
信仰の自由を奪われ
墓石に十字架を刻むことすら
許されなかった
信じることさえ許されないなんて
悲し過ぎますよね
早く早く
この寺は当時キリシタンが集まる
南蛮寺の後に作られたとされる
寺院です
では
　
こちらへ
また名所かよ
こんな所ばっか回って
宝なんて見つかんのかね
同感よ
　
坊や
あなたは
トレジャーハンターの…
中田絹代
うわさは聞いてるわよ金田一君
あの秘宝島の財宝を見つけた
業界じゃ有名な高校生
でもその割に貧乏そうね
あれは結局俺らには
一銭も入らなかったんですから
ねえちょっと
金田一君
　
私と組まない？
実はね
　
私は事前に得た情報から
宝のありかを
正覚寺周辺じゃないかと
にらんでるの
あなたの頭脳と
私の情報が合わされば
絶対宝は見つかるわ
それはどうすかね
どうして？
さんしゃるニ
　
こんたろす五
でうすの宝沈め沈むる
このロザリオ秘文の
謎を解かなければ
結局何もわからないような気が
するんですけどね
ロザリオの謎
いたいた
　
金田一先輩！
あれ君は
あの子
ミス研１年の美浦エミリです
うれしい　覚えていてくれたんだ
私のこと
ええ
　
まあ
うそ
じゃ
　
あなたが船に乗り遅れた
最後の参加者なの？
そうか
　
俺のこと
ある人に聞いたって言ってたけど
いつきさんから？
ああ
　
彼女はダウジングの
名手として有名なんだ
宝探しの秘密兵器ってとこかな
ダウジング
　
それってあの
へんてこな棒使って
何かを探したりするオカルト系の
そうです
このＬノットで温泉や水道管から
大判小判まで
何でも見つけちゃいます
本当にそんなので
見つかるのかしら
あら
　
七瀬先輩こそ
何しにきたんですか？
わかった
穴掘りのお手伝いですか
何ですって！
まあまあ美雪ちゃん
それよりエミリちゃん一発頼むぜ
こいつらにダウジングの手本をよ
ダウジングは元々は
地下水脈を探すために発展した
人間の潜在能力を駆使する技術で
誰でもある程度の成果を
上げることができます
ちなみにエミリちゃんは
代々伝わるダウザーの家系で
幼い頃から訓練を積み
金属探知機以上の正確さで
地下に埋まっている物の
材質や量まで
当てることができるそうです
はじめちゃん
　
何か眉唾くさいと
思わない？
マンモスパワー
よしなさいよ
　
はじめちゃん
七瀬先輩？
ダウジングは
眉唾なんかじゃありませんよ
ベトナム戦争では地雷を探すのに
使われていたし
東京の武蔵村山市では少し前まで
水道局が地中の水道管を探すのに
ダウジングロットを
使っていたんですから
その話面白いね
ちょいメモっとこ
そんなことも知らないで
よく宝探しの取材ができるわね
いつきさん
１６
世紀のドイツでは
鉱山を探し当てる
ダウジングの資格を取るための
国家試験があったほど確立した
技術だったそうよ
さすが最上葉月助教授先生様
何でもご存知だ
　
こりゃすげえや
何かに反応してんのか
　
これ
クロスしてるってことは
どうしたの
　
何かあった？
水脈か何か
エミリちゃん
　
これ
ちょっと失礼
いいえ
　
水じゃないわ
　
金属よ
金属
　
それもかなり古い
かなり古いだと
どけ
　
どけえ
　
どけえ
ちょっと抜けがけはやめてよ
はじめちゃん
はじめちゃんなんか怖い
皆
　
目の色変えて
これがお宝の魔力ってやつだ
天正菱大判の１枚でも出てくりゃ
１億円だ
１億円
　
本当
　
いつきさん
ああ本当も本当
　
１億円だ
俺もぞくぞくしてきやがったぜ
やった
蛇が出るか
　
お宝が出るか
出た
つぼだ
これは
これは
　
寛永通宝ですね
しかも材質から見て
１８００
年代の
幕末に近い物で
古美術的価値はほとんどない
くそお
あんなところ掘ってる
お兄ちゃん達
　
デウス様の宝を
探しに来たの？
ああ
やめといた方がいいよ
殺されちゃうよ
　
白髪鬼に
知らないからね
行こう
　
行こう
そうだ
　
行こう
　
行こう
何だ
白髪鬼
それえ
おいおい
気持ちいい
　
労働後の風呂は格別だ
なあ美雪
声かけるフリしてのぞかないの
ばれたか
　
やっぱり
くだらない
　
じゃ
　
お先に
言っとくけど
　
明日の７時の
集合時間に寝坊したら
先に行かせてもらいますから
何カリカリしてんだ
　
あの東大野郎
ほっとけよ
　
あの赤門って男は
潔癖症の上に時間にうるさくてな
待ち合わせには
１０
分前にくるのが
ポリシーなんだと
俺とまるっきり逆じゃん
そういう点では我々３人は
気が合いますね
いつきさんも
締め切り守ったことないし
違いねえ
　
違いねえ
そういえば四郎君
ちょっと聞きたいことが
あるんだけど
何でしょう
正覚寺で子供達が言ってた
白髪鬼って
うわさですよ
うわさ
そうです
昔
　
デウス様の
天啓を受けたと称する
首に十字架をかけた男が現れ
財宝を求めてこの天草中を
ツルハシで掘り出した
だがある時
　
落盤事故にあい
ようやく助けられた男の髪は
恐怖で真っ白になり
男はそのまま姿を消した
それ以来
　
その白髪の男は
鬼となって
天草財宝に近づく人間を
ツルハシで
惨殺するようになったそうです
宝を探す人間を殺す白髪鬼
もちろん
　
こんな話は
子供だましのただのうわさですよ
ただのね
あと少しよ
　
あと少し
この情報が確かなら
あのロザリオ秘文の示す場所は
ここに間違いない
誰にも渡すもんですか
子供の頃からの夢だった
この天草財宝だけは誰にも
誰もいない朝風呂って
気持ちいいのよね
朝寝坊のはじめちゃんに
のぞかれる心配もないし
なんて油断してるだろう
だから朝の方がばっちり
のぞけるんだよねって
よーし
　
堂々とのぞけるチャンス
どうした美雪
　
蛇かムカデか美雪
どうした
はじめちゃん
　
これ
これって何？
白髪
はじめちゃん
見るな
　
美雪
　
見るな
絡みつく白髪
　
胸に描かれた十字
そして俺を襲うツルハシの一撃
宝を守る
白髪鬼の伝説は真実なのか
第２の犠牲者が出る中
なおも財宝探しに熱中する
ツアーのメンバー達
彼らの隠している過去の秘密は
白髪鬼の伝説と
何か関係があるのか
金田一少年の事件簿
天草財宝伝説殺人事件ファイル２
隠れキリシタン天草四郎
その伝説の軍資金
デウスの宝を探し出すため
俺と美雪はいつきさんと共に
埋蔵金ツアーに参加した
デウスの宝を探す者を
殺害するという
白髪鬼の不気味なうわさが漂う中
俺達が見た物は…
天草財宝伝説殺人事件
ガイ者は中田絹代
　３６
歳
職業は
トレジャーハンターだそうです
トレジャーなんだって？
トレジャーハンター
宝探しが商売だそうで
ふーん
　
で死因は？
頭蓋骨骨折及び脳挫傷
凶器の特定はまだ出来ませんが
ツルハシのような物で
脳天を一撃されたようです
ツルハシ？
以来
　
その白髪の男は鬼となって
天草財宝に近づく人間を
ツルハシで！
それにしてもよく分からんのは
胸の十字の印とこの白髪だ
こいつは一体？
こら
　
何しとる！
こっちへよこしなさい！
何よ邪魔しないでよ！
すごいスクープが撮れるのに
報道の権利を侵害する気？
何だときさま
　
公務執行妨害で！
すんまへん
　
うちのカメラマン
ちょっと突っ走りおる子で
ねえ
　
警部はん
これってうちのツアーとは
関係ないんですよね
ガイ者の部屋から口紅も含めて
金目の物が持ち去られた形跡が
あったから
行きずりの強盗の可能性は
高そうだ
恐らく
　
がい者は夜中に
この露天風呂にやってきて
入浴中行きずりの強盗に殺された
強盗は脱衣場から鍵を盗んで
部屋に忍び込み
金目の物を持ち去った
まあ
　
こんなとこだろう
そうかなあ？
あ
　
何だと！
だったら
　
口紅で付けた胸の印や
湯船にあった大量の白髪は
どう説明するんですか？
ただの行きずりの強盗にしちゃあ
やることが猟奇じみてると
思いますよ
　
これは
それにほら
　
見てくれよ
中田さんの爪の中
　
真っ黒な土が
入り込んでるでしょ
ああ
　
それがどうした
風呂に入りに来たっていうのに
この爪はたった今
土を掘り返しているとこを
殺されたみたいだ
寺の境内で
みんなで宝を掘ったのは
夕食前だから
そのときの土じゃないはずだし
となると
　
考えられるのは
ただ一つ
多分
　
中田さんは夜中にもう一度
こっそりどこかへ
出かけたんじゃないのかな
そこで犯人に殺されたんだよ
なるほど
うるさいぞ
　
おまえ
　
警視総監賞を
５回ももらったこのわしが
おまえみたいなド素人に
指図される筋合いはない
ガーガ
　
ガーガ
　
怒鳴りやがって
このくそ石頭
　
あかんべ
はじめちゃんのそういう態度にも
問題あると思うわ
ちょっと
　
何してはりますのん？
赤門さん
もしあの女が殺されたのが
何か掘ってる最中なら
その何かっていうのは
天草財宝しかないだろうが
あの女は財宝のありかの
重要な手掛かりを
持っていやがったんだ
別に特別な物はないんじゃないか
そんな馬鹿などこかに…
ん？このカバンは
底が二重になってるぞ
何？
これは
ああ
　
何か地図みたいですよね
何か印が付いてるぞ
三角池と勘太郎峠
何か意味があるのかな
ちょっと待って
三角池の三角って
ひょっとして
さんしゃるになるんじゃないの？
それって
例のロザリオ碑文と同じだ
あの宝のありかを示すって
言われている
さんしゃる二
　
こんたろす五の？
キリシタンにとって
３という数字は
父と子と聖霊による
三位一体を意味する
最も重要な数字なのよ
だから聖と書く部分を
わざと３に
書き換えている古文書もあるのよ
とすれば三角池に
隠れキリシタンが特別な感情を
寄せたのも理解できるし
三角池を聖なる池と読んだ
可能性もあるわ
なるほど
で
　
聖なる池がなまって
さんしゃる池に
なったって訳か
そういやここら辺の人は
先生をしえんしえいって言ったり
何か独特のなまりがあるよな
でしょ？そうなのよね
この地方のなまりに
当てはめてみると
その可能性が高いと思わない？
なんて
　
あんたみたいに
学のない人に言っても
しょうがないわよね
本に書いてないことの方が
世の中よっぽど大事なんだぜ
なるほど
　
三角池がさんしゃるなら
勘太郎峠で
こんたろすって訳ですか
まあ考えられないこともないが
よく見てください
この地図の距離を
三角池はここ
　
勘太郎峠はここ
こんなに離れた二つの地点を
結びつけて
どうやって見つけろって
言うんですか？
第一
　
さんしゃる二
こんたろす五の
数字の意味が分からない
それもそうね
方角じゃないかな
何？
はじめちゃんどういうこと？
ほら
　
戦争映画とかで
１２
時の方向に敵発見！
とか言うだろう
なるほど
　
もしそうだとするなら
２時と５時で
ここは
大江一帯か
そうですね
　
そのあたりなら
口崎の穴観音がありますが
口崎の穴観音？
ええ隠れキリシタンが
マリア観音を安置して
祈りをささげた洞窟ですね
午後になると潮が満ちて
海岸線が塞がれてしまい
波も強く
全く
近寄れなってしまう場所ですが
宝の隠し場所としては絶好だな
ほな決まりでんな
次の発掘は口崎の穴観音
明日の朝
　
現場に着けるように
今日中に別の場所に移動しまひょ
ああ
　
いいお湯だった
しかしな
　
風呂の度に
露天風呂まで行くっていうのはな
すんまへん
　
急な話やったもんで
あんなコテージしか取れへんで
どうでもいいけどいちいち全員で
ぞろぞろ行かなくったって
いいんじゃないの？
あんなことがあった後じゃ
一人でお風呂は入れないよ
いやんエミリ怖い
こわって
ちょっと怖いのはあたしよ
だってエミリ
　
か弱いし
ちょっと離れなさいよ
そう言えば四郎君のお父さんも
トレジャーハンターなんだって？
それも有名な発掘王
蔵元清正の孫弟子だとか
まあ
　
昔の話です
よかったらちょっと会って
話聞けないかな
取材ってこともあるしね
でも
ぞろぞろ行ったら迷惑だろうから
俺と金田一と七瀬君だけでも
内緒ってことで
そういうことでしたら
天堂さん
あなたの先生の師でもある
清正翁は
どんな人物だったんでしょう
土を掘るより資料を掘れ
それが教えでした
実際に翁はその方法で
いくつもの財宝を掘り当てている
秋名山の由井正雪の軍資金
佐々成政の館山財宝
そして天草財宝
　
この３つが
蔵元家が代々探し続けた
三大財宝です
４代当主清正に至って
とうとう
　
その一つ
由井正雪の軍資金
時価
２０
億を発見し
大富豪となったんです
代々宝探しやってる家なんて
あるんですか？
エジプトでは盗掘を生業と
している家系が
１０００
年以上
続いていたりしますからね
へえ
これを見てください
これは？
清正翁が弟子全員に配った
蔵元家の家系図ですよ
何で他人に自分の家の家系図を？
謎かけですよ
資料からの推理を重んじた
清正翁が
弟子達に家系図を配って
謎かけをしましてね
その謎を解いた者に
自分が握っている
天草財宝のヒントを
与えようと言われたそうです
結局
　
当時の弟子だった私の先生も
他の弟子達も
　
誰も謎を解けず
先生は私にこれを託したのです
私にもその謎は
解けずじまいでしたが
なるほどね
あれ？
もしかしてこの蔵元清正って
あの有名な蔵元コンツェルンの
蔵元醍醐の父親じゃないですか？
ええ
　
その通りです
蔵元醍醐は蔵元清正の発掘した
２０
億の遺産を
たった一人で相続したんですよ
でもこの４人も
醍醐の兄弟なんじゃ？
その通りですが
いやこれが悲惨な話でね
清正が亡くなった後
　
兄弟間で
骨肉の争いが起こったんです
当時
幼かった末息子の醍醐を除いて
全員が
殺し合ってしまったんですよ
それで
年の離れた醍醐だけが生き残った
そいつは悲惨な話だ
金銀財宝には
人を惑わす魔力があるんですよ
私も若い頃は
その魔力に取り憑かれて
命がけで宝探しをしたもんですが
この天草財宝も
もしかしたら見つからない方が
いいのかもしれませんね
ひどい話
お金のために
兄弟が殺し合うなんて
何か暗くなっちゃった
じゃあな
　
明日寝坊すんなよ
ういーす
ねえ
　
はじめちゃん
あの家系図の隠された謎って？
ああ
　
あれね
あれは多分
　
共通点だよ
共通点？
分かんなかったのか？美雪
あの家系図の名前
はじめちゃん
今そこでなんか動いた
誰もいないみたいだぞ
タヌキかなんかじゃないのか？
う
　
うん
ほら
　
着いたぞ
　
じゃあな
ありがとう
あ
　
美雪怖いなら
一緒に寝てやろうか？
下心見え見えの男と
一緒にいられないわよ
おやすみ
ちぇ
　
残念
俺も強引さが足りないよな
このままじゃいつまでたっても
えっと鍵は
　
あれおかしいな
えーっと
あれ
　
おっかしいな
　
えーっと
ぎゃあー
金田一！
どうした？
いつきさん
金田一！何だ
　
何があった
いつきさん
は
　
白髪鬼が
何
　
こっちか
大丈夫ですか？
矢木沢さん
　
どうしてここに
いつき君こそ
今こっちで叫び声が聞こえたので
いつきさん
おっ
　
金田一
何だって
　
白髪鬼？
そんな馬鹿な
誰かのいたずらってことは？
財宝探しのメンバーを脱落させて
宝を独り占めしようとして
いたずらで人にツルハシ
打とうとなんかするもんか
ゴムマスクで顔は
よく分かんなかったけど
胸に
十字のネックレスをかけてたんだ
胸に？
十字の
とにかく明日は早い
今日はこれで
集合は７時
地図にある
待ち合わせの場所でしたね
歩いて約
２０
分くらいだそうですよ
そこから例の口崎の穴観音へ
行くそうですから
ああ
はい
　
フロントです
おはようございます
赤門様
　
チェックアウトですね
ああ
　
これから出る
精算しておいてくれ
よ
　
あぁカメラの仕事って
筋力付くわ
　
男は付かないけど
さあ今日も元気で頑張ろう
おっと地図だ
　
忘れるとこだった
えっと
はじめちゃん早く
遅刻しちゃうよ
分かってるてーの
うるせえな
　
もう
もう
　
ちょっと
　
待ってつーの
すんません遅れてもーて
えー
もう全員チェックアウトやて？
こらあかんわ
うそ！昨日の夜
　
白髪鬼が？
おお
　
危うくツルハシで
やられるところだったぜ
ゲームオーバーって感じ
何のんきなこと言ってんのよ
いつきさん
　
もうこんなツアー
やめましょう
そりゃ無理だろう
みんなやる気満々だし
中田絹代のことだって
警察は物盗りの
犯行だと見てるしな
私達だけでも
いや俺も残るよ
はじめちゃん？
何か気にくわないんだよ
俺にはこの事件が行きずりの
犯行とはどうしても思えない
この事件には俺達の知らない
何かがあるはずなんだ
そうだろう
　
いつきさん
んー
白髪鬼のことを知ったときの
いつきさんや他の連中の様子は
普通じゃなかった
前にも何かあったんじゃないの？
まいったさすがに鋭いなお前は
おまえに隠し事は出来ないってか
聞かせてくれよ
一体何があったのか
あれは今回みたいな雑誌の
企画でな
佐々成政の財宝を発掘しに
立山に行ったときのことだ
メンバーは今回の７人の他に
もう１人竜崎三郎という男だった
その男が落盤事故で
埋まっちまったのさ
助けを呼んでちゃ間に合わないし
その場にいた全員が必死で
掘り出したんだ
だが竜崎の息はなかった
問題はその死に様さ
今思い出してもぞっとするぜ
狭い岩の中に閉じ込められた
恐怖でたった一晩でやつの髪は
真っ白になっちまってた
目の前の岩には
　
かきむしった
爪の跡がくっきり残っていて
あれはまさに白髪の鬼
白髪鬼そのものだったよ
ひどい雨が降ってて
運び降ろすことも出来ず
俺達は竜崎をやむを得ず
その場にほおむったんだ
身よりもなかったし
それが一番だろうと思ってな
あの男の亡きがらに
土をかけるとき
そう
　
あれは葉月だった
葉月が自分の胸にかけていた
十字架をそっとやつの胸に
置いたんだそのとき
きゃー
十字架に落ちた雷は胸に
くっきりと十字の刻印を残した
だがそれ以上に俺らを
びびらせた物がある
確かに閉じていたはずなんだ
埋める前には閉じていたはずの
やつの目がまるで生き返った
みたいに見開かれていたんだ
もちろん生き返るはずはなかった
だから俺達はやつを埋めたんだ
だけど心のどっかに残っていた
あの目を見開いた形相が
だから中田絹代が殺されたとき
みんな思ったはずさ
ひょっとしてあいつは
雷に打たれたショックで
生き返ったんじゃないかって
そして生き埋めにした俺達に
復しゅうするためにこの天草まで
追いかけてきたんじゃないかって
わあ
美雪
　
逃げるんだー
やーだ
　
先輩
あたしですよあたし
エミリちゃん
　
どうしたの
そんなにハアハア言って
あは
　
寝坊しちゃいました
１人で走ってきたんです
何だ驚いた
遅い！
えろう
　
すんまへん
遅れてしもて
和田ちゃん
　
遅いよ
言った本人が
１０
分も遅刻だ
すんまへん全員そろって
はりますか？いない人は
返事してください
　
なんてな
さぶー
ひ
　
ふみ…
　
あれカメラの
藤子ちゃんがおらへんがな
ほんとだ
おかしいないつもは早めに
来てるのに
携帯もでーへん
昨日配られた地図もあるし
ほとんど一本道で
迷うほどのこともないだろうに
ダウジングで探してみましょうか
へえ
　
ダウジングって
そんなことまで分かるの
そう
　
あは
　
でも何か分かるかも
カメラとか金属だし
藤子ちゃーん
全く手間のかかる
この草むらに何かある
何だって？
は
　
ねえこれ
藤子ちゃんのカメラやで
まさか
わーどないしょ
和田さん赤峰さんの携帯に
もう一度電話を
はい
は！
ああっ
は
　
白髪鬼や
やっぱりあいつの仕業やったんや
わてら全員殺されてしまうで
白髪鬼となったあの男にや
竜崎三郎に
２人の犠牲者に残された
白髪と十字の跡
　
これは果たして
竜崎三郎の復しゅうなのか？
事件が続く中
ロザリオに刻まれた謎の言葉を
手掛かりに財宝のありかを探る
ツアーメンバー達
そして行く先々で次々と
襲ってくる白髪鬼の魔の手
一体何人が
犠牲になってしまうんだ
金田一少年の事件簿
天草財宝伝説殺人事件ファイル３
隠れキリシタン
　
天草四郎
その伝説の軍資金
　
デウスの宝を
探すため
　
いつきさんと共に
俺と美雪は埋蔵金発掘ツアーに
参加した
デウスの宝を探す者を
殺害するという白髪鬼の不気味な
うわさがただよう中
　
俺達の前で
第一
　
第二の殺人が…
天草財宝伝説殺人事件
凶器はツルハシ
害者の所有していた
マジックで書かれた十字の印
そして遺体にからみついた
白髪か…
　
前の事件と全く同じだ
しかも関係者のメンツも
同じときたもんだ
あーそれじゃあ
　
今朝起きてから
待ち合わせの場所に
着くまでのことを
話してもらおうか
俺は６時
３０
分頃には
コテージを出てるから
大体７時
１０
分前ぐらいには
集合場所に着いていたはずだ
その時はまだ誰もきてなかったよ
途中で誰かに会ったりは？
いや
　
べつに
私がコテージを出たのは
　
確か
６時
４０
分頃だったと思います
待ち合わせの場所に着いたのは
ちょうど７時くらいだった
と思うけど
赤門さんが先に来て
なんだか苛立った様子で
うろうろしてましたね
あんたらが時間通りに来るか
気になってたからな
俺達は３人で金田一の
コテージのそばに集まって
一緒に出かけたんだ
時間は大体
　
集合時間の
２０
分前だったと思う
到着したのは
ほぼ７時ぐらいかな？
先に赤門くんと葉月
　
いや
最上さんが来てたな
そうだ
　
途中で
エミリちゃんに会ったわ
確か待ち合わせ場所の
ほんのちょっと
手前くらいだったと思います
ええ
　
私うっかり
寝過ごしちゃって
コテージを出るのが
少し遅れたから
俺らが着いたのと
四郎くんが来たのは
ほぼ同じ頃だったよな
ええ
僕は家から直接来ましたから
それを証明できる人間はいるか？
出掛けに
　
いつきさんからの
電話を取りました
で
　
テレビを見ていた父に
時間を聞いたら
６時半だ
　
そろそろ出たらどうだ
それで７時頃には
待ち合わせ場所に着きました
俺は確かに電話したぜ
あんたの家から
待ち合わせ場所まで何分だ？
大体
３０
分くらいですね
車かバイクを使えば
もっと早いんじゃないのか
　
ん？
いえ
　
僕の家から集合場所までは
車両の通れない山道が
続きますから…
ついでに申し上げますが
他の皆さんがいらしたルートも
所々に石段があったりで
車もバイクも使えません
そや
　
そやから歩いて
集合場所に集まることに
しましてん
でー
　
次に集合場所に来たのは？
私です
　
寝ぐせを直すのに
手間取って予定より５分遅れで
コテージを出ました
着いたのは７時５分でしたねえ
ということは
　
最後は？
はあ
　
ワテですわ
例によって寝坊してもうて
コテージを出たんは
　
そやね
集合時間の
１０
分ぐらい前
やったと思いますんやけど
よし
　
後は被害者の行動と
死亡推定時刻を
おい
　
検死の結果はまだか？
ちょーっと待った
　
刑事さん
ああ？
なーんだ小僧
　
またきさまかあ
検死なんかしたって
そこまで細かい時間なんて
わかんねえよ
それより俺らが泊まってた
コテージは
出発の際にフロントに
１本内線電話を入れることに
なってるんだ
　
だからフロントに
行って調べれば
　
俺達はもちろん
殺された赤峰さんの行動も
一目瞭然なんじゃ？
そ
　
そんなこと言われんでも
分かっとるわい！
いちいち口出すなと
言ったろうが！
ワシは警視総監賞を
７回ももらったベテランだぞ！
昨日は５回だって言ってたくせに
これがお客様の
チェックアウト表でございます
なるほど
おっ？
しっしっ！
ん？ハエじゃねえっつの！
まあ大体皆
　
自己申告と
ほぼ一致しとるようだな
あんたら２人に絞られる
となると容疑者は
最上さん！赤門さん！
そ
　
そんな
ふ
　
ふざけるな！なぜ僕が
いいでしょう
　
お２人さん
このチェックアウト表を
ご覧なさい
　
これによると
被害者の赤峰さんは
６時
３０
分　つまり赤門さんより後
最上さんより前にここを出ている
そして遺体発見場所は
待ち合わせ場所の手前の
この地点だ
ここまでの道のりで
分かれ道はあるが
見ての通り
迂回ルートのない一本道
となると被害者を含めた全員が
同じ道をまっすぐに
待ち合わせ場所まで
歩いたことになる
この一本道では
誰にも気づかれずに
前を歩く人間を追い越して
殺人を犯すなんてのは不可能だ
要するに赤峰さんを殺せたのは
先に行って待ち伏せできた
赤門さん
　
あんたか
後から走って追いつけた
最上さん
　
あんたしかいないって
ことになるんだよ
そんな…
ちょーっと待ってよ
　
刑事さん！
そういう決めつけは
いくら何でも
やりすぎなんじゃないのか
　
え？
何だと？
あんた
　
ついこないだまで
行きずりの強盗が犯人だって
言ってただろ！その強盗が
道の途中にひそんでて赤峰さんを
おそった可能性も十分あるぜ
そんな根拠の薄い
決めつけで
　
この２人を犯人扱い
しようってんなら
俺は書かせてもらうぜ！
な
　
何！
ベテラン警部
見込み捜査で人権侵害の疑い
ええ見出しですでいつきはん
編集長喜びますわ
ちょっちょっと
　
くう！
と
　
とにかく
　
おまえら全員
この天草から
一歩も出さんからな！
それだけは覚えておけよ！
あ
やるじゃん
　
いつきさん
かっこいい
あったりめえよ
ジャーナリスト魂の見せどころよ
なっ
あっ！うふ
何見てるんすか？和田さん
いやあ
　
県警から取り返した
藤子ちゃんのバッグから
こないなもんが
出てきたんやけど
　
この地図
天草財宝と何か関連が
あるんやろうか？
へっ
　
ただの観光地図じゃねえか
そんなもん
いやあ
　
そんな捨てたもんじゃ
ないかもしれませんよ
ほら
　
見てくださいよ
この五って書いてあるところ
この地名
　
小島子って
こんたろすじゃないですか？
あのロザリオ秘文の
さんしゃる二
　
こんたろす五の
こんたろす？
はー
これだから学のないガキが
なにを！
いいか
　
それはな
コシマゴと読むんだ
こんたろすなんかじゃ
いいえ
　
それ案外いい線かも
しれないわ
何？
漢字の読みなんて元はどうだか
分からないものよ
こんたろすの意味はコンタス
すなわちロザリオを指すと
言われている
コシマゴは
天草島原の乱の発端の地よ
案外この場所は
もともと隠れキリシタンが
こんたろすと読んでいた場所で
それにこの漢字があてられ
長い間にコシマゴと読まれる
ようになったのかもしれないわ
金田一くん
　
ちょっと
はあ
これなんだが
私の古美術商としての記憶が
正しければ
１５９５
年に天草で出版された
ラテン語
　
ポルトガル語
日本語の対訳辞書の写真なんです
ほら
　
サンテルナの項を見ると
ローマ字読みでコガネザイクノ
コガネヲツクルと読めませんか？
まあなんとなくそんな感じっすね
まあ
　
ちょっと意味不明な部分も
ありますが
このサンテルナと言うのを
例のさんしゃるの語源に
近いものだと解釈すると
コガネザイクは黄金の意味だから
まさしくさんしゃるは財宝を
表すことになりませんか？
しかし
　
だったら
五だの二だのっていう数字は
何の意味がある？
例の方位を表す
数字じゃないんですか？
いや
　
しかしそれだと
地名を表すこんたろすと
宝を表すさんしゃるの両方に
数字がついてる説明ができない
五って数字に中心を表す
意味とかってないんですかあ？
え？
ほら
　
そうすれば
　
こんたろす
つまり小島子を中心にして宝を
表す
　
さんしゃるは二の方向に
ありますよって意味に
なるんでしょ
分かったわ
　
気学よ
え？
ほら
　
この遺品の本の付箋が
ついてるところ
　
ね！
ビンゴだぜ
　
金田一！
おまえの言った通り
五は五黄で真ん中を意味するんだ
二はニ黒で南西だなあ
どうだ
　
四郎くん
小島子の南西で宝を隠すのに
都合の良さそうな場所はないか？
一つだけありますね
大浦の宗徒様
月に２回の大潮の時にしか
歩いて渡れない場所にある
石塚です
明日はちょうど大潮ですがな
ほな行ってみまひょか
　
いっちょ
ふっふっふっふっふっふ
朝まで待てるかよ
このチャンスを逃したら
一生後悔するぜ
　
やつらに渡して
たまるかよ
　
天草財宝は
俺だけのものだ
うっふっふっふっふっふっ
やっぱり潮が引くには
まだ早すぎたわね
はっ
白髪鬼だ
ひゃー
ちー
信介
どうしてあなたがここに？
どうもこうも
　
目が覚めて
外見たらおまえが見えてさ
２人も殺されてるってのに
女の１人歩きは物騒だろ
それにおまえにお宝を
抜けがけされたかねえからよ
やめてよ！
私はあんたみたいに
欲ボケしてないわ！
何ぃ
あそこに子供の頃から
ずっと夢見てた天草財宝が
あるかもって思ったら
何か
　
いてもたっても
いられなくなっちゃってさ
踏み絵を踏めずに処刑された
あるキリシタンの老人の
亡きがらが海に何度流しても
同じ場所に流れついたことから
哀れんだ村人が塚を造り
まつったと言われる
伝説の石塚
宗徒様か
もしあそこに財宝があるとしたら
その老人の魂とともに
長い間眠っていたのね
相変わらずだな
おまえのお宝ロマンチストぶり
ほら
　
立山の佐々成政の財宝の
企画の時だってよ
そうね
　
信介に無理言って
こっそりメンバーに
加えてもらったっけ
亡くなった父さんに小さい頃
何度も聞かされてたんだもの
立山財宝と天草財宝の話
小学校の作文に
尊敬する人
　
発掘王
　
蔵元清正
なんて書かねえぞ普通
まっ
　
でも今回
俺はこの天草財宝ってやつに
ちょっと感謝してるんだぜ
どうして？
うん
信介
なんつうか
　
おまえとこうして
また会えたわけだからよ
あっ
おっとだいぶ潮が引いてきたな
うん
　
でもまだ足元がぬれそう
おうっし！
あっ
　
ちょっと！
何だ
　
しばらく抱かないうちに
重たくなりやがってえ
あっ…
　
馬鹿…
あん
どうしたの信介
あ
　
あれは
み
　
見ない方がいいな
ええ
何てこった
赤門
はじめちゃん
第一の容疑者の死か
えっ？
穴観音に向かうルートで
赤峰さんを殺せたのは
このメンバーの中で赤門さんか
最上さんのどちらかってことに
なってた
　
当然
　
警察の目は
最上さんに集中するだろうな
でも
　
私には最上さんが
犯人だなんて思えないわ
だってあのいつきさんがあんなに
かばおうとしてるんだもん
証拠らしい証拠は
どこにもないじゃないか！
とうとう３人も殺されて
このバスの空席も増えちまったな
おい
　
そろそろ終わりにしねえか？
このままじゃお宝が見つかる前に
皆殺しだぜ
そうですね
　
この天草財宝は
掘り出してはならない
宝なのかもしれない
そやけど
　
ここで終わったら
ワテの立場が
そうよ
　
こんなとこで帰るなんて
絶対いや
おめえら
　
自分の命と宝の
どっちが大切なんだ
まあまあ
　
いいじゃないですか
帰りたい人には帰ってもらえば
え
もちろん私は帰りませんよ
こんなものまで
見つけてしまってはねえ
何ですか
　
それ
赤門さんの荷物から出てきた
三角池
いわゆるさんしゃる池の
地図ですよ
　
警察に無理を言って
コピーをとらせてもらったんです
これが伝説のさんしゃる池の地図
伝説のって？
あ
　
それは
ん？ひょっとして最上さん
まだ何か隠していることでも？
やめましょうよ
　
私だって
こうして手に入れた情報すべて
さらけ出しているんですから
分かったわ
私の得た情報によれば
天草四郎が黄金の太刀を
茶屋峠付近の三角池に
埋めたという伝説が
あるそうなんです
ロザリオ秘文については
こんたろすが十字架の意味
さんしゃるが後光を
指すという説もあるわ
二とか五の数字については
何の意味か分からなかったけど
この図面にある
さんしゃる池の形は
見方によっては後光にもとれる
図面のさんしゃる池が前に述べた
伝説の三角池なら
　
財宝は
沈め沈むるの
ロザリオ秘文の言葉通り
さんしゃる池そのものに
沈められているかもしれない
これが
　
三角池？
地元では空池といって
ご覧の通り今は
湧き水があるにもかかわらず
ほとんど干上がってます
はあ
　
でもこれじゃ
池っていう感じはしないよなあ
ん
　
どうしたの
　
エミリちゃん
何か反応があります
え
　
何かって
　
まさか
まだ分かりませんけど
皆さんＬロッド持って来てます？
これだけ広いと私一人じゃ
どうしようもないから
　
みんなで
手分けしてってのは
どうでしょう
何か反応があったら
私を呼んでください
よし
　
分かった
じゃあ
　
一時間後に
　
この辺りで
僕はここで待ってますので
ああ
　
じゃあそういうことで
うーん
ああ
　
やれやれ
そっちはどうだった？いつきさん
いや
　
だめだめ
おう
　
エミリちゃんは？
水脈はあったけど
財宝らしき反応は
この辺りの水は
　
すごく鉄分を
含んでいるみたいでダウジングで
探すのは難しいのかも
宝じゃありませんが
こんなものを見つけましたよ
腐った木のかけら
よく見てください
　
明らかに
人の手が加えられてるでしょ
財宝を運ぶための？
その可能性は大ですね
どうでしょう最上さん
これは考古学上
　
お？
あれ
　
最上さんは？
ああ
　
そない言うたらまだ
はじめちゃん
　
あれ！
あそこだけカラスが
ま
　
まさか
ちょ
　
ちょっと待てよ
　
おい！
冗談じゃねえぞ！葉月！
は
　
葉月
　
おおい！
冗談じゃねえぞ！
目開けろよ
　
おい！
ん？これは
は
　
葉月
　
うう
葉月！
ついに
　
葉月さんまで
絶対に許せない
子供達が口にしていた
白髪鬼のうわさ
そしてコテージの時計
すべては真犯人が仕組んだ
悪魔のようなトリックだったんだ
謎はすべて解けた！いつきさん
あんたの無念は必ず俺が
はらしてやるぜ
じっちゃんの名にかけて！
金田一少年の事件簿
天草財宝伝説殺人事件
ファイル４﻿隠れキリシタン天草四郎
その伝説の宝を探すため
いつきさんと共に俺と美雪は
埋蔵金発掘ツアーに参加した
デウスの宝を探す者を
殺害するという白髪鬼の
不気味なうわさが漂う中
俺たちの前で
次々と起こる殺人事件
葉月
　
おおい
　
冗談じゃねえぞ
目開けろよ
　
おおい
葉月！
天草財宝伝説殺人事件
いつきさん
皆さん
大変残念な形となりましたが
この一連の殺人事件の決着は
どうやらついたようですなあ
決着がついたって
どういうことです？
もちろん犯人が
分かったからですよ
え？犯人が分かったって
そうです
　
もう終わったんですよ
犯人
　
最上葉月の自殺をもってね
自殺
なんてことだ
　
彼女があの３人を？
ふざけんな
　
ヘボ刑事
いつきはん…
葉月が自殺なんてするわけねえ
その上犯人だと？
証拠があんのか証拠は
その証拠は
現場にぶちまけられとった
このカバンの中身が立派な証拠だ
ほらよく見ろ
　
白髪のかつら
ゴムマスクに衣装
白髪鬼に間違いない
それに極めつけはこの遺書だ
ここに全て書かれていた
何でもあんたら以前
富山県の立山で
今回みたいな財宝発掘ツアーを
やったことがあるそうじゃないか
その時に最上葉月の恋人だった
竜崎三郎という男が今回殺された
３人のせいで事故死した
竜崎が葉月の恋人？
その復しゅうのために
今回の連続殺人が行われたんだ
あの落盤事故が３人のせい？
本当ですかそれは？
全てこの遺書に書いてある
冗談じゃねえ
あいつが竜崎の恋人だったなんて
しかし
　
遺書にはっきりと
ちょっと待った
　
石井刑事
金田一
その遺書って
ワープロ書きですよね
ああ
　
それがどうした
本文はともかく
封筒の表書きまでワープロで
打たれているっていうのは
妙だと思いませんか？
封筒って厚みもあるし
印刷するのはかなり面倒ですよ
そんな手間をかけるくらいなら
手書きで十分じゃないんですか
それと
　
彼女は注射器の毒で
死んだんですよね
あの毒は何だったんですか？
まあ検死の結果を待たんと
詳しくはわからんが
恐らく即効性の毒だろう
そいつはますます妙だなあ
彼女は両腕とも袖は
まくってなかった
服の上から注射なんて普通
やりませんよ
それは
　
注射をした後に
下ろしたのかもしれんじゃないか
即効性の毒を注射した後で
袖を下ろす暇なんかありませんよ
しかし
　
だったら昨日の
カメラマンの赤峰藤子殺しは
どうなんだ
殺害現場は遺体が発見された
墓場のすぐ近くの路肩だと
わかったんだ
最上葉月が追いかけて行って
殺したとしか考えられんだろうが
それは犯人のトリックだよ
彼女を犯人に仕立て上げるための
悪魔のトリック
不可能を可能にするトリックが
あの時使われたはずなんだ
何が悪魔のトリックだ
くだらん
　
いい加減にしろ
はい
　
もしもし金田一
何だフミか
何だじゃねえだろう
せっかくのお宝話に
私をのけもんにしやがって
相変わらずがめついなあ
こっちはお宝どころか
殺人事件でてんやわんやなんだぞ
白髪鬼なんて
訳分かんないもんも出てくるし
白髪鬼
　
何だよそれ
真っ白な長い髪を振り乱して
ツルハシ持ってどこまでも
どこまでも追いかけてくんだぞ
作り話なんかで
私を脅かそうったてな
作ってなんかいねえよ
　
この島の
小学生はみんな知ってんだぜ
ああそうだ
この話を聞いちゃったら
少なくとも５人の友達に
話さないと
白髪鬼が夢に出てきて
怖い怖いって叫びながら
目が覚めると髪の毛が真っ白に
馬鹿はじめ
　
何でそんな話
聞かせるんだよ
　
もう
生言ってもやっぱり小学生だぜ
いつきさん
なあ金田一
俺と葉月が付き合いだしたのは
佐々成政の財宝ツアーに参加する
ずっと前のことだ
他のやつらは
知らなかったかもしれないが
俺たちは結婚まで
考えていた仲だったんだぜ
あいつが竜崎の
恋人なんかであるはずがない
まして白髪鬼なんて
竜崎が死んだあの事件の後
つまんないことで大げんかして
別れちまったけど
　
俺はずっと
あいつのことが忘れられなかった
それが今朝たまたまあいつと
２人っきりになった時
あいつも同じ気持ちだったことが
何となく伝わってきて
ひょっとしたら
やり直せるかもしれない
そう思ってたのに
　
それなのに
ちくしょう
　
どうして俺はあの時
さんしゃる池で
葉月を１人にしちまったんだ
３人もやられて危険だったのは
わかってはずなのに
俺が
　
俺があいつにずっと
ついていてやったら
俺がついていれば
あ
　
痛たた
あ
　
痛
大丈夫
　
はじめちゃん
無理ですよ
　
金田一さん
この道の周りはずっと
こんなやぶだらけです
道以外は進めないってことか
コテージから
例の待ち合わせ場所まで
別の近道でもあれば犯人は
先回りして藤子さんを待ち伏せ
出来ると思ったんだけどな
真ん中の崖は
　
とても人が
登れるものじゃありませんし
この道以外には行けませんよ
となると
　
残る可能性は
途中で道が無くなっているけど
こっちの道に
一番近くなっている所か
はじめちゃん
　
この辺でしょう
道が無くなってるわ
よおし
　
このやぶならなんとか
遠りぬけられるかも
だめですよ
　
金田一さん
え　何でだよ
その先は
ただの湿地じゃありません
ほら見ての通り
底なし沼なんです
やだ
　
底なし
こんな所
　
とてもじゃないが
通れませんよ
早くも現場検証は行き詰まりか
どうぞ
　
コーヒーと天草名物
ポンカン羊かんです
綺麗なオレンジ色でしょう
うまい
　
この羊かん
はじめちゃん
あちこち歩き回って疲れたから
甘いものが最高
よかったらおかわりしてください
このカップ両側に取っ手が
付いてる　可愛い
本当だ
　
珍しいですね
あれ
　
俺のカップだけ
取っ手がひとつ取れてる
あら本当
どこかで折れちゃったのね
何だよ俺のだけ
すいません
　
そいつは元々
取っ手がひとつしかないんです
デザインは同じですが
　
取っ手が
２つ付いているカップは
昨日
　
３つ一遍に割っちゃって
ああそうなんだ
同じデザインのカップだから
何となく取っ手が２つあるのが
当たり前に
そっか
　
おそろいだったから
そう思ったのね
どうしたの
　
はじめちゃん
そうか
　
そういうことか
そうかって何が
そういうことなんですか
金田一さん
わかったのさ
　
真犯人白髪鬼が
仕組んだ心理トリックが
はい
　
もしもし金田一
何だよまたお前か
うそつき
　
あんたのせいで学校で
えらい恥かいたじゃん
何だよ
　
フミ
俺がいつ
　
うそついたんだよ
あんた天草には白髪鬼が出るって
言ったでしょ
うちのクラスで
天草から３ヵ月前に
転校してきた子がいるんだけど
そんなうわさ聞いたことないって
言ってたよ
え？そんなはずねえさ
確か四郎君が天草の子供たちは
みんな知ってるって
なんてこった
これも犯人が仕組んだ
心理トリックのひとつだったんだ
もしもし
　
もしもし
あんにゃろ
こない悲惨なことに
なってしもうたら記事にも
出来へんし
私もショックだよ
財宝探しのツアーで立て続けに
こんなことになるなんて
これは呪いかもしれませんね
財宝の由来は大抵多くの人の
苦しみや無念の思いで
つづられています
その無念の思いが更に多くの
悲劇をもたらしているのかも
知れません
いや
　
呪いなんかじゃない
金田一さん
この事件は極めて巧妙に
仕組まれた計画殺人さ
計画殺人？
金田一先輩はまだ最上さんのこと
犯人じゃないと
思っているんですか？
もちろん
　
彼女はシロさ
本当に？
それじゃ赤峰君が
殺された時のことは
どう説明するんですか
俺の考えが正しければ
そのトリックが使われた
決定的証拠が穴観音に行く前夜
みんなで泊まったあのコテージに
まだ残っているかもしれないんだ
どうでしょう
明日東京に帰る前に
あのコテージに寄って
みんなが泊まった部屋を
チェックしてみたいんですが
コテージに証拠だって？
一体何が
真犯人を暴くだと
お前はまたそんなことを
言っておるのか
犯人は自殺した最上しか
おらんのだ
　
もう許せん
わしゃ警視総監賞を
１０
回
いや
２０
回ももらったベテランだぞ
これ以上邪魔するなら
公務執行妨害で逮捕だ
はい
　
はいはいはいはい
その前に
この電話に出てくんない？
何
　
電話
　
もしもし
ああそうだ
　
私だ
何だきさま
　
どこの馬の骨だ
これは申し訳ございません
話は簡潔に済ませましょう
私もベテラン刑事としての
君の手腕を
それなりに買ってはいるのですが
残念ながらそこにいる少年の
推理力を君と比べると
天と地ほどの開きがあることは
否めません
　
したがって
君がこれからすべきことは
その少年の推理を黙って聞き
彼が追い詰めた真犯人を
逮捕することに尽きます
いいですね
恐るべし
　
嫌味明智の精神攻撃
それで金田一君どうなんだね
君は赤峰君殺害のトリックが
分かったと言っていたが
ええ
　
だけどそれを言う前に
ひとつ明らかに
しておきたいことがあります
本当の動機をね
本当の動機？
竜崎とかいう男の
復しゅうじゃないのか
俺たちは今まで犯人が仕組んだ
様々な演出に踊らされてきた
例えばこの島についた時
子供たちが口にしていた
白髪鬼のうわさも含めてね
あのうわさまで犯人の演出？
でも金田一さん
あのうわさはツアーが始まる
ずっと前から
そのずっと前って
いつ頃のことかな
そこまでは
そんなもんだよね
　
あの手の
怖い話ってずっと前から
あったような気もするし
そうでもないようにも思える
言いだしっぺが誰なのかも
よくわからない
でも
　
あの白髪鬼のうわさは
ほんの３ヵ月前までは
存在しなかったのさ
そんな
間違いないよ
俺の親戚の小学生が
天草から転校してきた同級生に
聞いて確かめたんだから
この連続殺人を思い立った犯人は
下準備のために何度も天草を
訪れた
　
そしてその度に
子供たちを捕まえては
世にも恐ろしい
白髪鬼のうわさ話を聞かせたんだ
そやけど
　
何のために
そないなことを
事故死した竜崎三郎を
イメージさせる白髪鬼を
事件に絡めることで
本当の動機から捜査の目を
そらせるメリットはあるが
容疑者が簡単に絞られる
危険性もあった　そこで俺たちが
この島に来る前から
白髪鬼のうわさを流し
外部の犯行の可能性も
あるとにおわせておく
なるほど
そういや
　
そこの刑事さんは
最初行きずりの犯行だって
力説してたっけな
しかし
　
そんなにまでして
隠したかった本当の動機って
いうのは一体何なんだ
それは昔掘り当てられた財宝
正確に言うならそのお宝を元手に
築き上げられた莫大な財産
それこそがこの連続殺人事件の
真の動機だったんだ
由井正雪の軍資金
その通り
　
清正の息子
　
蔵元醍醐は
たった１人でその財宝を相続
ちょっと待ってください
金田一はん
蔵元醍醐は確かに重病とかで
今
　
死にかけていますが
殺された４人は蔵元醍醐とは
縁もゆかりもないはずでっせ
それが何で
その答えはこれを見てくれ
それは
清正が弟子に配った
蔵元家の家系図さ
これにはちょっとした
謎があるんだろう
　
四郎君
この家系図に謎ですか？
よく見てください
ここにある共通点が
隠されていることに
気づきませんか
共通点？
じゃヒントをひとつ
蔵元家の家紋はここにあるように
三日月ですよね
２番目のヒントは
名前に含まれている
ある漢字に注目してみてください
漢字？
わかったわ
　
月よ
　
月
どの名前にも必ず月が入ってるわ
これが清正が言っていた
謎だったんですね
　
金田一さん
そして
　
驚くべきことに
今回の事件の犠牲者４人の名前も
中田絹代
　
赤峰藤子
　
赤門秀明
最上葉月
　
全員蔵元醍醐の実子
血を分けた兄弟だったんだ
殺された４人はいずれも
蔵元醍醐の子供でありながら
その事実を知らされずに
養子に出され赤の他人として
育てられたんだ
我ら蔵元家は代々宝探しを
続けている家系だ
その血を引くからには
この子も我らの悲願である立山
そして天草財宝に興味を
抱くように仕向けてもらいたい
そやけど何でまたそない
面倒なことを
やっぱり遺産争いが
原因じゃないのかな
蔵元清正は財宝を見つけて
大金持ちになったけど
　
彼の死後
小さかった醍醐を除く
４人の子供たちが殺し合った
そんな惨事を目の当たりにした
醍醐としては自分の子供たちに
同じ争いをさせたくなかったんだ
でも
　
里子に出すことでどうして
財産争いを防げるの？
じゃ
　
たった今
　
美雪にいきなり
１０
億の遺産が転がり込んだとして
もっと欲しいと思うか
なるほど
ラッキーって思ってそれ以上
欲しいなんて考えないよね
だろう
　
金なんて物は元々
あると思ってるから
もっと欲しくなるんだ
実は昨日警視庁の剣持警部に
頼んで
　
殺された４人が
蔵元醍醐の実子であることを
調べてもらった
そして
　
その他にもう１人
醍醐の実子がいることもね
その５人目の子供が犯人？
遺産を独り占めするために
いや
　
その５人目はもう死んでいる
蔵元家の証明である月の文字を
含んだ名前の子供を一人残してね
でも
　
この中には
そうや
　
月の文字が入った
名前なんてこの中には１人も
おらへんけど
金田一さん
　
一体誰が
犯人は誰なんだ
　
犯人は
俺は昨日犯人にちょっとした
トラップをかけてみたんだ
時計を使ったトラップをね
トラップだと
まず
　
俺はいつきさんに頼んで
赤峰さんが殺された日に泊まった
このコテージに戻ってもらい
赤門さん
　
赤峰さん
　
最上さんの
コテージの目覚まし時計に
ちょっとした細工をしたんだ
細工って何をしたんだ
　
いつき君
いや
俺はただ金田一に言われた通り
時計を元の時間から
１５
分ずつ
ずらしただけですよ
それがどうなるんじゃ
俺もそれと前後して
犯人とにらんでいる人物の
腕時計にもこっそり
同じことをしておいた
そしてその後全員の前で
こう言ったんです
俺の考えが正しければ
そのトリックが使われた
決定的証拠が穴観音に行く前夜
みんなで泊まったあのコテージに
まだ残っているかもしれないんだ
あの言葉を聞いて犯人少なからず
焦ったはずさ
そして証拠を隠滅したつもりで
実は自滅の足跡を
残していったんだ
このコテージにね
どういうことなのはじめちゃん
自滅の足跡って
赤峰さん殺しのトリックを
実行するために
犯人はあらかじめ時計を
細工しておいたんだ
だから犯人は俺の言葉を聞いて
すぐさまコテージに向かい
時計を元通りに戻しておいたのさ
俺が
１５
分進めておいた自分の
腕時計を見ながらね
ほら見ての通りコテージの時計は
現在朝９時になっています
でも
　
本当の時間は何時ですか
石井刑事
今は８時
４５
分
確かに
１５
分進んでるな
そう
　
犯人の時計と同じくね
それじゃ犯人は
そうさ
　
コテージの時計と
同じ時刻を示している
腕時計の人物こそが真犯人
白髪鬼なんだ
そしてもちろん犯人は
この中にいる
時計
　
そして地図
それは人間の想像力を
巧みに利用した
白髪鬼のトリックだった
莫大な財産を持つ
蔵元醍醐の子供と
真犯人の意外な関係
犯行の
本当の狙いを解く鍵がそこに
そして本物の天草財宝は
存在するのか
今
　
全ての謎が明らかになる
金田一少年の事件簿
天草財宝伝説殺人事件ファイル５
金田一少年のかわら版
天草四郎時貞
その隠れキリシタンの
伝説の軍資金
デウスの宝を探すため
俺と美雪はいつきさんと共に
埋蔵金発掘ツアーに参加した
だが
　
白髪鬼を装う
謎の殺人者の魔の手によって
次々とツアーのメンバー達が
襲われていく
そして
　
犯人は
　
この中にいる！
天草財宝伝説殺人事件
ちょっと待ってくれ
犯人はトリックのために
殺された赤峰君達が
泊まっていたコテージの時計を
進めておいたっていうのかね
そして犯人は
その証拠を隠滅するために
コテージの時計を元通りに戻した
俺が
１５
分進めておいた
自分の腕時計を見ながらね
見ての通り
今コテージの時計は９時ちょうど
でも本当の時間は
８時
４５
分
皆さんの時計を
見せてもらいましょうか
私のもそうですよ
ほら
　
ちょうど８時
４５
分です
僕もですよ
私のも
そう犯人はあんただよ
週刊誌編集者として
このツアーを企画した和田守男！
あんたこそ
　
この事件の真犯人
白髪鬼だ！
何であんたは
ちょっと待ってーな
何でわてが犯人になるねん
第一
　
蔵元醍醐の実子の名前には
月が入ってんのやろ
わては和田守男やで
どこに月の字があるねん
殺された４人以外にも
蔵元醍醐には子供が１人いた
だけどさっきも言った通り
その子供は既に死んでいる
当然あんたのことじゃない
あんたの奥さんだ
そういやあんた
カミさん亡くしてたな
確か名前は
和田明江　２年前に先立たれた
あんたの妻こそが
蔵元コンツェルンの創始者
蔵元醍醐の娘だったのさ
ひどい
じゃあ和田さんは
奥さんの代わりに遺産を？
それはありえませんね
配偶者がもらうはずだった遺産は
夫のところには入ってきません
ええ
　
和田さんは
遺産を手にすることはできません
それを継ぐことができるのは
あんたの娘だ
ちょっと金田一はん
そないな言いがかりで
犯人扱いされたら
なんぼ温厚なわてかて怒りまっせ
言いがかり？
どうかな
　
時計は昨日の夜
俺がいじるまでは
赤門の部屋のやつが５分
赤峰のは
１０
分
　
葉月のは５分と
それぞれ進められてあった
大方あんたは時計に細工して
自分のアリバイ作りを
アリバイ作りやなんて不可能や
あん時
　
殺された藤子ちゃんは
わてよりずっと前に
コテージを出てたんやで
わては寝坊して
出たんはいっちゃん最後
どないして
藤子ちゃんに追いつくんや
いや
　
仮に追いついたところで
いつきはん
　
あんたを含めて
５人もの人間を
　
この一本道で
追い越さなあかんのやで
追いつく必要なんてなかったさ
向こうから近付いてきて
もらったんだからね
あんたは
　
人間に備わった
想像力という便利な力を利用する
心理トリックで
２０
分も先に出ていたはずの
赤峰さんとの距離を
ゼロにすることに成功したんだ
２０
分の距離をゼロに？
どういうことなんですか？
この紙を見てくれないか
この２枚の紙は
トリックの話を明智さんにしたら
お節介にもファックスで
送ってきたものです
何が書いてあるか分かりますか？
だまし絵か何かかな
実は
ある文字が書かれてるんだけど
この奇妙な形の別の切り抜きを
こうして図形の上に重ねてやると
あ！Ｒの文字が描かれてる！
不思議だろ
　
元々の図形は
変わっちゃいないのに
わざと障害物を重ねてやると
全く読めなかったものが
現れてくる
こういうのは
　
空間補完効果って
言うんだそうだ
正直
　
このトリックには
あのコーヒーカップのことが
なきゃ思いつかなかった
昨日の喫茶店の
俺は
　
２人のカップを見て
想像力でありもしない
もう一つの取っ手を補って
考えてたんだ　そして
それに気付いた時に思った
赤峰さんの地図にも
同じようなことが
起きてたんじゃないかってね
この地図からは
集合場所へのルートが
一本しかないことが
はっきりと分かる
他にもいくつか分かれ道があるが
いずれも行き止まりか
別方向へ向かってる
でも
　
もしこんな風に
いくつか焦げ跡が
付いていたとしたら
これは！
つながってない道が
一本の道に見えるわ！
これを見ながら歩いたら
私でも断然近道になるこの道へ
向かってしまうよ
赤峰さんもそう考えたんだと思う
そして和田さんは彼女を殺した後
赤門さんと最上さんを
殺すことを前提に
この２人にいったん
疑いの目が向くように
時計に細工を施したんだ
集合場所に
１０
分早く着く癖のある
赤門さんの時計を５分進め
１５
分早く着くようにした
同様に
最上さんの時計にも細工をして
ただし
細工したのは部屋のじゃない
彼らの腕時計の方だ
どうして？
部屋の時計をいじっても
正しい時間に
直されてしまうかもしれない
普段使ってる自分の時計なら
正確のはずと思うだろ
だからみんな部屋の時計を
自分の腕時計に合わせた
それが既に犯人の手によって
遅らされてるとも知らずにね
いったいいつ？
白髪鬼が怖いからって
みんなで風呂に行ったろ？
あの時さ
そして次の日
　
計画通りに
赤門
　
赤峰
　
最上の３人は
５分置きにコテージを出た
あー
　
すんまへん
え
　
全員チェックアウト？
こりゃあかん
そうか
　
焼け焦げた地図を渡して
道を間違えてしまうように
仕向けたのは時間稼ぎのため
その通りですよ
間違えたルートに
進んでしまったら
戻ってくるしかない
１０
分前に出たとしても
往復の分ロスをして
あっという間に
最後尾についてしまう
こうやって
まんまと順番を入れ替えて
アリバイ作りに成功したんです
そうやってあんたは
分かれ道から戻ってきた
赤峰さんの後を尾行して
あとは焦げの付いた地図を
自分のと取り換えればいい
俺はこのトリックと同時に
犯人の正体にも気がついた
なぜなら
このトリックが可能だったのは
１番最後にコテージを出た
和田さん
　
あんた以外には
いないんだからね
わてやない
　
ぬれぎぬや
わては人殺しなんか
もう言い逃れはできないんだよ
わてやないって
言っとるやろうが
何やねん！
さっきから黙って聞いとったら
寄ってたかって
犯人呼ばわりしくさって
何や腕時計って
こんなん偶然きまっとるが
いつきはん
　
あんたも
何か言うたらどうやねん
こんなガキの言うこと
信じるんでっか？なんでわてが
犯人扱いされなあかんのや
わてはただの編集者やで
何でそないな恐ろしいことが
出来るんや
はい？
今朝早く
　
蔵元コンツェルンが
会社更生法を申請し
１３００
億円の負債を抱えて
事実上倒産しました
何だって！
創業者で現社長の
蔵元醍醐氏は入院中で
危篤状態が続いております
なお
　
ピーク時には
３００
億円と
言われていた蔵元氏の個人資産は
既にそのほとんどが売却され
残る資産も負債の返済に
あてられる模様です
な
　
何で
俺も今朝
　
明智さんに聞いて
初めて知ったんだ
あんたが狙っていたお宝は
既に幻になっちまってたんだよ
そんな…
わては
　
わては何のために
てめえ！そんなもののために
葉月を殺したのか！
いつきさん！
そんなもののために！
ぶっ殺してやる！
殺してくんなはれ
　
殺してくれ
わてを
　
わてを殺してくんなはれ
お願いや
　
いつきはん
　
わてを
誰でもええ
この通りや
頼んますわ
　
頼んます　殺してや
自殺じゃあかんのや
　
自殺じゃ
わてが殺されれば保険金がおりる
そしたらうちの子が助かるんや
頼んますわ　ひと思いにやってや
あんた
　
何があったんだよ
金に目がくらんで
殺しまでやるような
くそ野郎じゃなかった
俺が困ってた時
　
あんた
落ちもしねえ領収書切る振りして
飯おごってくれたじゃねえか
そのあんたが何で
何でこんなことを
うちの子の
　
朋美のためなんや
子ども！
朋美は心臓と肺の病気で
それもえらいたちの悪いやつで
手術できるんは
アメリカにいる医者だけやって
ほっといたら
あと半年か１年の命やて
そやけど手術の費用に
８０００
万かかるて
この不景気やったら
マンション売っても
大した金にはならへん
サラ金行ってもちょっとしか
貸してくれんかった
そんで思いついたんが
あんた
　
まさか
そうや
自分自身に保険掛けてひと思いに
せやけど
自殺てばれたら保険はおりへん
さりげなくいかんと
朋美のためや
　
朋美の
馬鹿野郎
　
死にてえのか
そうや
　
死にたいんや
　
わては
朋美のためやったらなんぼでも
そんな時やった
　
女房の親から
話を聞かされたんは
明江があの蔵元コンツェルンの
ああ
　
赤ん坊の時に
蔵元醍醐氏から預かった
正真正銘の彼の子供だ
それやったら
金は何とでもなるやんか
お義父さん
　
すぐにかけあって
不可能だ　事実を知っているのは
醍醐氏一人だが
あの人は今
　
意識不明の重体だ
朋美が孫ですなどと
名乗り出ても誰も信用しない
そ
　
そやったら
醍醐氏が死んでからなら
今
　
重体なら
　
そう遠くない将来
遺書が公開に
駄目だ
醍醐氏には他に４人の子供がいて
それぞれ預けられている
そして遺産の相続は
子ども本人に
限定するということだ
それ以外は相続の権利はないんだ
んなあほな
せや
　
他の相続人が
全部死んだらどないなる
遺書は意味をなさへん
法律に基づいて
孫の朋美にも遺産が
お義父さん
明江以外の相続人の名前
分かりまっか
自分の娘の命を
助けたかったのは分かるよ
だけどさ
　
あんたは
はかりにかけちゃいけないものを
かけちまったんだ
朋美
どうしちゃったの？
あと一泊天草にいたい
なんて言い出したと思ったら
急に宝探しの資料と
にらめっこ始めちゃって
あ？あーあー
金田一先輩
差し入れ持ってきました
ロザリオクッキー
近くのお土産屋で売ってたの
あー
　
サンキュー
どうです？何か分かりました？
どうしてあなたも残ってるのよ
あらー
七瀬先輩こそどうしてですか？
私はいいのはじめちゃんの
手伝いするんだから
えー
　
それなら私の方が
よっぽどお役に立てると
思うけどな
何ですと
そうか！そういうことか！
ってことは財宝は
３０５
号室の朋美ちゃん
この間の検査の結果
どうだったの？
良くないわね
もって春までだって
あの子かわいそすぎよ
お母さん死んでるのに
お父さんまであんなことに
しっ！
駄目よ何も知らないんだから
ほらマサル
クリスマスプレゼントだ
うわー
　
何だろう
　
大きい
ほら
　
ここで開けちゃ駄目だよ
部屋に戻ってからだ
うん
パパ？パパなの？
君が朋美ちゃんかい？
誰？
パパのお友達さ
君のパパは今
お仕事で遠くに行ってるから
代わりにね　こいつは
クリスマスプレゼントだ
ありがとうおじさん
かわいいお人形だね
これもプレゼントかい？
うん
おじいちゃん達にもらったの
でも
　
一番楽しみにしてる人から
まだプレゼントもらってないんだ
へー
　
誰？
サンタさん
　
サンタさんね
いっつも朋美に
素敵なプレゼントくれるのよ
去年なんか
小さなピアノもらったんだけど
靴下の中に無理やり
ピアノの足が一本入ってて
思わず笑っちゃった
でも
　
ちょっと心配なの
だって朋美入院してるでしょ
サンタさん
また来てくれるかなって
大丈夫さ
そのくらいサンタさんは
お見通しさ
　
心配いらないよ
うん
もって春までか
この世には神も仏もいねえのかよ
なあ
　
葉月
来てくれるかな
　
サンタさん
サンタさん
　
来てくれたんだ
ああ
　
もちろんじゃとも
よっこら
サンタさん
　
だ
　
大丈夫？
大丈夫
わしはいつも煙突から入るんで
窓は苦手なんじゃ
良かった
　
朋美心配だったの
サンタさん病院まで
来てくれないんじゃないかって
今年は朋美ちゃんに
とっておきのプレゼントを
持ってきたんじゃ
えー
　
何だろ
　
何だろ
秘密の宝物じゃ
宝物？
そう
　
昔
　
天草四郎っていう
カッコイイお兄ちゃんが
隠した宝物
　
そのお兄ちゃんは
祈りを込めて宝物を
大事に取っといたんだよ
いつかこれが
貧しい人や苦しんでる人のために
役立ちますようにって
さあ
　
目を閉じて３つ数えたら
プレゼントを
靴下から取り出してごらん
うん！
ひとーつ
　
ふたーつ
　
みっつ！
数えたよ！
あれ？サンタさん
そうだ
　
プレゼント
わー
　
奇麗な色
何だろ
　
これ
おじいちゃんなら知ってるかな
ありがとうサンタさん
刑事はん
話すもんはもう全部話しましたで
はよう死刑にしとくんなはれ
朋美が死ぬのにわてだけ
のうのう生きとるなんて
そうやけっぱちになるな
お前の娘は
死なずに済むかもしれんぞ
奇特なやつがいてな
クリスマスの夜
お前の娘に天正菱大判とかいう
お宝をプレゼントしたそうだ
今日オークションで
１億で売れたとよ
その金はお前の娘の治療費に
あてられることになった
分かるか和田
お前の娘は助かるかもしれんのだ
ほんまの話でっか
うそみたいだが本当の話だ
いや
　
全く驚いたぜ
財宝をめぐる事件の後に
あんなものが
プレゼントされるなんてよ
ああ
　
天正なんたらの
でも良かった
　
病気治りそうで
しかし
　
天草財宝なんて
本当にあったのかな
　
金田一
あー
　
そうね
まあ俺もあの後
いろいろ考えたけど
本命はさんしゃる池
だったんじゃないかなあ
十字架のクッキー食ってて
思いついたんだけど
あの池の形ちょうど十字架の
一番長いところを取った形と
そっくりなんだよ
それで
　
ふと思ったんだ
さんしゃる池は巨大な十字架に
見立てられたんじゃないかってね
例の碑文
さんしゃる２
　
こんたろす５の
フレーズ
さんしゃるが三角池なら
こんたろすは
　
まさに十字架
残りの２と５は
それぞれの足の長さの比率と
考えるとだ
さんしゃる２
　
こんたろす５で
実は
この一番長い部分の先に宝が…
なんて気もすっけどまさかね
何だったらいつきさん
掘ってみたら
なあ
　
そろそろお互い
腹を割って話し合わねえか
え
　
何を？
とぼけんな！お前が宝を
プレゼントしたんだろ！
こそくなまねしやがって！
知らないって
　
そんなこと
吐け
　
このやろう
コラー！
残りのお宝はどこだー！
痛いってよー
助けて
　
美雪ちゃーん
それは
暑い夏の日の出来事だった
とある別荘で
雨宿りした俺の目の前に
現れた３人の美女
この別荘で起きた
１年前の事件の真犯人が
この中にいる？被害者をめぐる
３人の微妙な関係と
残されたダイイングメッセージの
意味は？
そして事件の後に浮かぶ
摩訶不思議な事実
謎はすべて解けた！のか？
金田一少年の事件簿
真夏の悪夢殺人事件
金田一少年のかわら版﻿天草四郎時貞
その隠れキリシタンの
伝説の軍資金
デウスの宝を探すため
俺と美雪はいつきさんと共に
埋蔵金発掘ツアーに参加した
だが
　
白髪鬼を装う
謎の殺人者の魔の手によって
次々とツアーのメンバー達が
襲われていく
そして
　
犯人は
　
この中にいる！
天草財宝伝説殺人事件
ちょっと待ってくれ
犯人はトリックのために
殺された赤峰君達が
泊まっていたコテージの時計を
進めておいたっていうのかね
そして犯人は
その証拠を隠滅するために
コテージの時計を元通りに戻した
俺が
１５
分進めておいた
自分の腕時計を見ながらね
見ての通り
今コテージの時計は９時ちょうど
でも本当の時間は
８時
４５
分
皆さんの時計を
見せてもらいましょうか
私のもそうですよ
ほら
　
ちょうど８時
４５
分です
僕もですよ
私のも
そう犯人はあんただよ
週刊誌編集者として
このツアーを企画した和田守男！
あんたこそ
　
この事件の真犯人
白髪鬼だ！
何であんたは
ちょっと待ってーな
何でわてが犯人になるねん
第一
　
蔵元醍醐の実子の名前には
月が入ってんのやろ
わては和田守男やで
どこに月の字があるねん
殺された４人以外にも
蔵元醍醐には子供が１人いた
だけどさっきも言った通り
その子供は既に死んでいる
当然あんたのことじゃない
あんたの奥さんだ
そういやあんた
カミさん亡くしてたな
確か名前は
和田明江　２年前に先立たれた
あんたの妻こそが
蔵元コンツェルンの創始者
蔵元醍醐の娘だったのさ
ひどい
じゃあ和田さんは
奥さんの代わりに遺産を？
それはありえませんね
配偶者がもらうはずだった遺産は
夫のところには入ってきません
ええ
　
和田さんは
遺産を手にすることはできません
それを継ぐことができるのは
あんたの娘だ
ちょっと金田一はん
そないな言いがかりで
犯人扱いされたら
なんぼ温厚なわてかて怒りまっせ
言いがかり？
どうかな
　
時計は昨日の夜
俺がいじるまでは
赤門の部屋のやつが５分
赤峰のは
１０
分
　
葉月のは５分と
それぞれ進められてあった
大方あんたは時計に細工して
自分のアリバイ作りを
アリバイ作りやなんて不可能や
あん時
　
殺された藤子ちゃんは
わてよりずっと前に
コテージを出てたんやで
わては寝坊して
出たんはいっちゃん最後
どないして
藤子ちゃんに追いつくんや
いや
　
仮に追いついたところで
いつきはん
　
あんたを含めて
５人もの人間を
　
この一本道で
追い越さなあかんのやで
追いつく必要なんてなかったさ
向こうから近付いてきて
もらったんだからね
あんたは
　
人間に備わった
想像力という便利な力を利用する
心理トリックで
２０
分も先に出ていたはずの
赤峰さんとの距離を
ゼロにすることに成功したんだ
２０
分の距離をゼロに？
どういうことなんですか？
この紙を見てくれないか
この２枚の紙は
トリックの話を明智さんにしたら
お節介にもファックスで
送ってきたものです
何が書いてあるか分かりますか？
だまし絵か何かかな
実は
ある文字が書かれてるんだけど
この奇妙な形の別の切り抜きを
こうして図形の上に重ねてやると
あ！Ｒの文字が描かれてる！
不思議だろ
　
元々の図形は
変わっちゃいないのに
わざと障害物を重ねてやると
全く読めなかったものが
現れてくる
こういうのは
　
空間補完効果って
言うんだそうだ
正直
　
このトリックには
あのコーヒーカップのことが
なきゃ思いつかなかった
昨日の喫茶店の
俺は
　
２人のカップを見て
想像力でありもしない
もう一つの取っ手を補って
考えてたんだ　そして
それに気付いた時に思った
赤峰さんの地図にも
同じようなことが
起きてたんじゃないかってね
この地図からは
集合場所へのルートが
一本しかないことが
はっきりと分かる
他にもいくつか分かれ道があるが
いずれも行き止まりか
別方向へ向かってる
でも
　
もしこんな風に
いくつか焦げ跡が
付いていたとしたら
これは！
つながってない道が
一本の道に見えるわ！
これを見ながら歩いたら
私でも断然近道になるこの道へ
向かってしまうよ
赤峰さんもそう考えたんだと思う
そして和田さんは彼女を殺した後
赤門さんと最上さんを
殺すことを前提に
この２人にいったん
疑いの目が向くように
時計に細工を施したんだ
集合場所に
１０
分早く着く癖のある
赤門さんの時計を５分進め
１５
分早く着くようにした
同様に
最上さんの時計にも細工をして
ただし
細工したのは部屋のじゃない
彼らの腕時計の方だ
どうして？
部屋の時計をいじっても
正しい時間に
直されてしまうかもしれない
普段使ってる自分の時計なら
正確のはずと思うだろ
だからみんな部屋の時計を
自分の腕時計に合わせた
それが既に犯人の手によって
遅らされてるとも知らずにね
いったいいつ？
白髪鬼が怖いからって
みんなで風呂に行ったろ？
あの時さ
そして次の日
　
計画通りに
赤門
　
赤峰
　
最上の３人は
５分置きにコテージを出た
あー
　
すんまへん
え
　
全員チェックアウト？
こりゃあかん
そうか
　
焼け焦げた地図を渡して
道を間違えてしまうように
仕向けたのは時間稼ぎのため
その通りですよ
間違えたルートに
進んでしまったら
戻ってくるしかない
１０
分前に出たとしても
往復の分ロスをして
あっという間に
最後尾についてしまう
こうやって
まんまと順番を入れ替えて
アリバイ作りに成功したんです
そうやってあんたは
分かれ道から戻ってきた
赤峰さんの後を尾行して
あとは焦げの付いた地図を
自分のと取り換えればいい
俺はこのトリックと同時に
犯人の正体にも気がついた
なぜなら
このトリックが可能だったのは
１番最後にコテージを出た
和田さん
　
あんた以外には
いないんだからね
わてやない
　
ぬれぎぬや
わては人殺しなんか
もう言い逃れはできないんだよ
わてやないって
言っとるやろうが
何やねん！
さっきから黙って聞いとったら
寄ってたかって
犯人呼ばわりしくさって
何や腕時計って
こんなん偶然きまっとるが
いつきはん
　
あんたも
何か言うたらどうやねん
こんなガキの言うこと
信じるんでっか？なんでわてが
犯人扱いされなあかんのや
わてはただの編集者やで
何でそないな恐ろしいことが
出来るんや
はい？
今朝早く
　
蔵元コンツェルンが
会社更生法を申請し
１３００
億円の負債を抱えて
事実上倒産しました
何だって！
創業者で現社長の
蔵元醍醐氏は入院中で
危篤状態が続いております
なお
　
ピーク時には
３００
億円と
言われていた蔵元氏の個人資産は
既にそのほとんどが売却され
残る資産も負債の返済に
あてられる模様です
な
　
何で
俺も今朝
　
明智さんに聞いて
初めて知ったんだ
あんたが狙っていたお宝は
既に幻になっちまってたんだよ
そんな…
わては
　
わては何のために
てめえ！そんなもののために
葉月を殺したのか！
いつきさん！
そんなもののために！
ぶっ殺してやる！
殺してくんなはれ
　
殺してくれ
わてを
　
わてを殺してくんなはれ
お願いや
　
いつきはん
　
わてを
誰でもええ
この通りや
頼んますわ
　
頼んます　殺してや
自殺じゃあかんのや
　
自殺じゃ
わてが殺されれば保険金がおりる
そしたらうちの子が助かるんや
頼んますわ　ひと思いにやってや
あんた
　
何があったんだよ
金に目がくらんで
殺しまでやるような
くそ野郎じゃなかった
俺が困ってた時
　
あんた
落ちもしねえ領収書切る振りして
飯おごってくれたじゃねえか
そのあんたが何で
何でこんなことを
うちの子の
　
朋美のためなんや
子ども！
朋美は心臓と肺の病気で
それもえらいたちの悪いやつで
手術できるんは
アメリカにいる医者だけやって
ほっといたら
あと半年か１年の命やて
そやけど手術の費用に
８０００
万かかるて
この不景気やったら
マンション売っても
大した金にはならへん
サラ金行ってもちょっとしか
貸してくれんかった
そんで思いついたんが
あんた
　
まさか
そうや
自分自身に保険掛けてひと思いに
せやけど
自殺てばれたら保険はおりへん
さりげなくいかんと
朋美のためや
　
朋美の
馬鹿野郎
　
死にてえのか
そうや
　
死にたいんや
　
わては
朋美のためやったらなんぼでも
そんな時やった
　
女房の親から
話を聞かされたんは
明江があの蔵元コンツェルンの
ああ
　
赤ん坊の時に
蔵元醍醐氏から預かった
正真正銘の彼の子供だ
それやったら
金は何とでもなるやんか
お義父さん
　
すぐにかけあって
不可能だ　事実を知っているのは
醍醐氏一人だが
あの人は今
　
意識不明の重体だ
朋美が孫ですなどと
名乗り出ても誰も信用しない
そ
　
そやったら
醍醐氏が死んでからなら
今
　
重体なら
　
そう遠くない将来
遺書が公開に
駄目だ
醍醐氏には他に４人の子供がいて
それぞれ預けられている
そして遺産の相続は
子ども本人に
限定するということだ
それ以外は相続の権利はないんだ
んなあほな
せや
　
他の相続人が
全部死んだらどないなる
遺書は意味をなさへん
法律に基づいて
孫の朋美にも遺産が
お義父さん
明江以外の相続人の名前
分かりまっか
自分の娘の命を
助けたかったのは分かるよ
だけどさ
　
あんたは
はかりにかけちゃいけないものを
かけちまったんだ
朋美
どうしちゃったの？
あと一泊天草にいたい
なんて言い出したと思ったら
急に宝探しの資料と
にらめっこ始めちゃって
あ？あーあー
金田一先輩
差し入れ持ってきました
ロザリオクッキー
近くのお土産屋で売ってたの
あー
　
サンキュー
どうです？何か分かりました？
どうしてあなたも残ってるのよ
あらー
七瀬先輩こそどうしてですか？
私はいいのはじめちゃんの
手伝いするんだから
えー
　
それなら私の方が
よっぽどお役に立てると
思うけどな
何ですと
そうか！そういうことか！
ってことは財宝は
３０５
号室の朋美ちゃん
この間の検査の結果
どうだったの？
良くないわね
もって春までだって
あの子かわいそすぎよ
お母さん死んでるのに
お父さんまであんなことに
しっ！
駄目よ何も知らないんだから
ほらマサル
クリスマスプレゼントだ
うわー
　
何だろう
　
大きい
ほら
　
ここで開けちゃ駄目だよ
部屋に戻ってからだ
うん
パパ？パパなの？
君が朋美ちゃんかい？
誰？
パパのお友達さ
君のパパは今
お仕事で遠くに行ってるから
代わりにね　こいつは
クリスマスプレゼントだ
ありがとうおじさん
かわいいお人形だね
これもプレゼントかい？
うん
おじいちゃん達にもらったの
でも
　
一番楽しみにしてる人から
まだプレゼントもらってないんだ
へー
　
誰？
サンタさん
　
サンタさんね
いっつも朋美に
素敵なプレゼントくれるのよ
去年なんか
小さなピアノもらったんだけど
靴下の中に無理やり
ピアノの足が一本入ってて
思わず笑っちゃった
でも
　
ちょっと心配なの
だって朋美入院してるでしょ
サンタさん
また来てくれるかなって
大丈夫さ
そのくらいサンタさんは
お見通しさ
　
心配いらないよ
うん
もって春までか
この世には神も仏もいねえのかよ
なあ
　
葉月
来てくれるかな
　
サンタさん
サンタさん
　
来てくれたんだ
ああ
　
もちろんじゃとも
よっこら
サンタさん
　
だ
　
大丈夫？
大丈夫
わしはいつも煙突から入るんで
窓は苦手なんじゃ
良かった
　
朋美心配だったの
サンタさん病院まで
来てくれないんじゃないかって
今年は朋美ちゃんに
とっておきのプレゼントを
持ってきたんじゃ
えー
　
何だろ
　
何だろ
秘密の宝物じゃ
宝物？
そう
　
昔
　
天草四郎っていう
カッコイイお兄ちゃんが
隠した宝物
　
そのお兄ちゃんは
祈りを込めて宝物を
大事に取っといたんだよ
いつかこれが
貧しい人や苦しんでる人のために
役立ちますようにって
さあ
　
目を閉じて３つ数えたら
プレゼントを
靴下から取り出してごらん
うん！
ひとーつ
　
ふたーつ
　
みっつ！
数えたよ！
あれ？サンタさん
そうだ
　
プレゼント
わー
　
奇麗な色
何だろ
　
これ
おじいちゃんなら知ってるかな
ありがとうサンタさん
刑事はん
話すもんはもう全部話しましたで
はよう死刑にしとくんなはれ
朋美が死ぬのにわてだけ
のうのう生きとるなんて
そうやけっぱちになるな
お前の娘は
死なずに済むかもしれんぞ
奇特なやつがいてな
クリスマスの夜
お前の娘に天正菱大判とかいう
お宝をプレゼントしたそうだ
今日オークションで
１億で売れたとよ
その金はお前の娘の治療費に
あてられることになった
分かるか和田
お前の娘は助かるかもしれんのだ
ほんまの話でっか
うそみたいだが本当の話だ
いや
　
全く驚いたぜ
財宝をめぐる事件の後に
あんなものが
プレゼントされるなんてよ
ああ
　
天正なんたらの
でも良かった
　
病気治りそうで
しかし
　
天草財宝なんて
本当にあったのかな
　
金田一
あー
　
そうね
まあ俺もあの後
いろいろ考えたけど
本命はさんしゃる池
だったんじゃないかなあ
十字架のクッキー食ってて
思いついたんだけど
あの池の形ちょうど十字架の
一番長いところを取った形と
そっくりなんだよ
それで
　
ふと思ったんだ
さんしゃる池は巨大な十字架に
見立てられたんじゃないかってね
例の碑文
さんしゃる２
　
こんたろす５の
フレーズ
さんしゃるが三角池なら
こんたろすは
　
まさに十字架
残りの２と５は
それぞれの足の長さの比率と
考えるとだ
さんしゃる２
　
こんたろす５で
実は
この一番長い部分の先に宝が…
なんて気もすっけどまさかね
何だったらいつきさん
掘ってみたら
なあ
　
そろそろお互い
腹を割って話し合わねえか
え
　
何を？
とぼけんな！お前が宝を
プレゼントしたんだろ！
こそくなまねしやがって！
知らないって
　
そんなこと
吐け
　
このやろう
コラー！
残りのお宝はどこだー！
痛いってよー
助けて
　
美雪ちゃーん
それは
暑い夏の日の出来事だった
とある別荘で
雨宿りした俺の目の前に
現れた３人の美女
この別荘で起きた
１年前の事件の真犯人が
この中にいる？被害者をめぐる
３人の微妙な関係と
残されたダイイングメッセージの
意味は？
そして事件の後に浮かぶ
摩訶不思議な事実
謎はすべて解けた！のか？
金田一少年の事件簿
真夏の悪夢殺人事件
金田一少年のかわら版
ちっきしょう
　
何で急に雨なんか
剣持のおっさんの田舎なんかに
遊びに来るんじゃ
　
なかったぜ
あ
　
だああ！
やったー！あがりー
え？ええ！
一ちゃんの負けね
分かってるな
　
罰ゲームは
私はオレンジジュース
俺は缶ビール
ええっと
　
私は…
そうだ
　
トイレットペーパーも
ついでに頼むわ
　
よろしくな金田一
くっそー
あ
　
下駄の鼻緒まで…
ついてねえなあ
　
ったく
くそー
　
う…
まずい
　
腹が冷えてきやがった
トイレ
　
トイレ　ん？
しめた
　
別荘かな
すいません　すいません
開けてください　すいません
何か
な
　
すいません
　
ちょっとだけ
トイレ貸してください
ト
　
トイレ
ちょっと
　
あんた
　
待って
トイレどこですか
トイレどこですかー
はあ
　
満足…
何なの
　
君
いきなり人の別荘に
飛び込んできて
　
失礼じゃない
緊急事態だったもんで
　
ははは
笑ってごまかさないで
私たち大事な儀式の
最中だったのよ
儀式？
あ？これは
降霊術よ
降霊術？
死んだ人間の霊を呼ぶ
　
あれよ
死んだ人間の霊を？
あのろうそくは霊が
現れたかどうかを知る目安なの
降霊が成功すると
　
風もないのに
炎がゆらゆらが揺れるんですって
い？
窓とかにもお札を貼ってあるの
あれがないと動物の霊とか
他の恐ろしい霊が
入ってきちゃうから
その儀式の最中に
そうよ
それは失礼を
じゃあ僕は邪魔ですから
　
これで
もう駄目よ
んが
一度
　
儀式を破った者は
無防備に出ていくと
悪霊にとりつかれるわよ
ええ？でも
儀式に参加するっきゃないよね
勘弁してくださいよ
俺苦手なんすよ
　
こういうの
トイレなんか借りにくるから
いけないんだよ
さあ
　
早く　雨がやむ前に
あの人の霊を
呼ばなきゃならないんだから
そ
　
そんな
ねえ小梅
　
返してあげようよ
何か
　
彼
　
可哀想
降霊術の方は
また日を改めればいいんだし
桜ったら相変わらず
男に甘いんだよ
駄目駄目
　
絶対に
今日のこの時間でなくちゃ
事故や事件で命を落とした人の
霊を呼び出すには
同じ日の同じ時間
　
同じ天候の時を
選ぶとうまくいくんだよ
ちょうど
　
あの時と同じように
雨だって降ってるし
さ
　
飛び入り君
　
始めるよ
もうそろそろ
あの事件が起きた時間なのね
あの事件？
１年前の殺人事件よ
ここにいる３人は
その時の容疑者なの　私もね
殺人事件？お姉さんたちが？
そうよ
死んだのは私たちの
テニスクラブのコーチだった
３人は小学校時代からの
親友同士でさあ
姉妹みたいに仲がよかったんだ
学校もクラブも何もかも同じ
泣くのも笑うのも一緒
もちろん
　
そのテニスクラブも
一緒に入ってさ
ところがね
　
３人が一人のコーチを
好きになっちゃった
それが
友情の終わりだったというわけ
彼
　
須藤さんっていってね
元プロの
テニスプレーヤーだった人よ
聞いたことない？
２～３年前
宣伝のポスターになった
あ
　
知ってますよ
こんなポーズで打つ
両手打ち？ダブルハンドのこと？
そう
　
それそれ
ウーロン茶のポスターでしたよね
缶コーヒーよ
え？すみません　えへへへへ
俺
　
缶コーヒーより
ウーロン茶の方が好きなもんで
あ
　
ああ？
ああ　ああ
とにかく
　
この貸別荘で
須藤さんは殺されちゃった
この３人のうちの誰かにね
３人のうちの誰かがやった
ってのは間違いないんですか？
もちろん
　
状況から見てね
でも誰も罪を認めようとしない
だから命日の今日
事件の起きたこの別荘に集まって
彼の霊を呼び出して
聞いてみることにしたってわけ
私たち小学校の時から
こっくりさんとか大好きで
これまでにも
いろんな人や動物の霊を
呼び出したりしてるのよ
教室で私の飼ってた
インコのオスカルを
呼び出した時なんか
本当に鳥の鳴き声が
聞こえたりしたんだから
え
　
はあ
あ
　
今の聞こえた？声がしたよ
え？ええ
ひ
　
ひいいいいいい！
今のラップ現象よ
霊が来てる証拠　来てるわ
　
近くに
きっと
　
須藤さんがいるんだわ
さあ
　
話しかけようよ
須藤さんの霊に
ち…
　
ちょっと待った
その前にこの俺に
その事件の詳しい状況ってやつを
話してみてくれませんか
あんたに？
俺
　
金田一一　俺のじっちゃんは
日本一の名探偵と
いわれた人なんです
へえ
　
面白いじゃない
まだ事件の時刻まで
少し間があるわ
駄目よ
　
赤の他人に話すなんて
あら
　
怖いの？
本当のことを知られるのが
やっぱり
　
あなたが殺したの？
冗談じゃないわよ
あんたこそ
須藤さんの霊が怖いんだろ
やめましょうよ
　
２人共
私
　
百合と小梅のどちらが
犯人かなんて
ほんとはどうでもいいのよ
３人が昔みたいに仲よくなれれば
そう思って
　
ここまで来たのに
ふん
　
いい子ぶらないでくれる？桜
そうやって
　
うやむやに
しようとしているところが
怪しいんじゃん
そうよ　自分は関係ないみたいな
言い方してさ
ひどいわ
　
そんな言い方って
あ
　
ほらほら
　
だから俺に
ちょっと話してみてくださいって
犯人が誰か
必ず指摘してみせますから
じっちゃんの名にかけて
ほう　君
　
相当自信ありそうじゃん
じゃ
　
話してあげる
あ
　
では
　
どうぞ
あれは
　
去年の８月９日だった
私たちは須藤さんを誘って
この貸別荘に来たの
一応
　
近くのテニスコートで
特別コーチを受けるためっていう
ことだったんだけど
本当の目的は
彼を巡る恋のさや当てに
決着をつけるためだったのよ
ねえねえ
　
今夜は誰が
須藤さんのためにお料理作る？
あっ
　
料理なら私が一番得意よ
小梅なんか
卵焼きしか作れないんでしょう
ふん
　
作ってやるよ
世界一の卵焼きをね
あら
　
卵焼きなんて
　
お笑いだわ
今夜はカレーよ
須藤さんの大好物
２人とも知らなかったでしょう
ね
　
須藤さん
あはっ
　
ああ
じゃあ
　
いいわね
手分けして買出しに行きましょう
私は近くの農家へ行って
じゃがいもを分けてもらうわ
中学の頃から
いいじゃがいもを見分ける目は
私が一番だったんだから
はは
　
そうだったね
百合はその頃から
イモ娘だったもんね
何ですって
イモは小梅でしょ
誰が　誰がだよ
嫌だな
　
みんなカリカリしちゃって
あっ
　
待ってよ
　
桜
あっ
　
あら
まだあの２人
　
帰ってないんだ
ふふっ
百合？
あら
　
じゃがいもは？
買おうと思ったら
　
お財布がなくて
ここに落としてたのよ
ドジね
　
昔から
桜こそ
ちゃんと
　
お肉
　
買ってきたの？
もちろんよ
うん？
何やってるの
　
小梅
うっ
　
ああ！
あ…
須藤さんは
奇妙な格好をしてたんだ
奇妙な格好？
左手にしゃもじ
右手に卵を持っていた
え
　
左手にしゃもじ？右手に卵？
まあ
　
こんなふうにね
目は
　
卵を見ているように
見えますよね
そうねえ
左手にしゃもじ
ルビーか？
彼女も同じ指輪
どうやら
　
その須藤さんって男
３人に
　
全く同じ指輪を
贈ってたらしいな
ま
　
殺されても文句は言えないか
ところで小梅さん　須藤さんは
しゃもじを
しっかり握ってましたか？
え？そうだよ
卵なんか潰れそうなくらい
なるほどね
どうしたの？何か分かった
どうやらね
　
もちろん
　
犯人も
えへへ
犯人も？
謎は全て解けましたよ
ええ？
はっ
何ですって
あなた
　
まさか
今の話を聞いただけで
犯人が分かったっていうの？
ええ
　
そうですよ
ええ？
なぜ
　
須藤さんが
　
こんな
奇妙な格好で死んでいたのか
それこそが
　
最大の鍵だったんです
しゃもじと卵を固くしっかりと
握り締めていたことから
犯人が死後
それらを握らせたとは思えない
須藤さんが生きている間に
自分の意思で握って
それから死んだと考えるべきだ
ということは？
正面から胸を刺されている
須藤さんは
恐らく
　
犯人を
はっきりと目撃したはずだ
ああ…
犯人はすぐに
逃げ去ったんだろうけど
須藤さんは
ほんの少しの間
　
生きていた
そして
　
必死で考えた
何とかして
　
自分を殺した犯人を
誰かに伝えようとしてね
だから
　
薄れていく意識の中で
卵としゃもじを手に取った
つまり
　
卵としゃもじは
犯人を示していたんですよ
須藤さんのダイイングメッセージ
ってやつだったんです
ダイイングメッセージ？
じゃあ
　
犯人は料理が好きだとか？
そんな
　
やめてよ
　
小梅
何で
　
私が須藤さんを
殺さなきゃならないの
もしかしたら
卵焼きしか料理が出来ない小梅を
示そうとしたのかもしれないわ
冗談じゃないよ
　
馬鹿馬鹿しい
そうだ
　
それこそ
卵を食べるとアレルギーになる
百合のことじゃない？
私
　
おかしいと思ってたんだ
百合
　
あの時
　
何で
じゃがいもを買ってこなかったの
あんた
買い物に出たふりをしながら
こっそり戻って
　
須藤さんを…
違いますって　全然違いますよ
須藤さんの
ダイイングメッセージは
そんな
あいまいなものじゃありません
もっと
　
被害者のキャラクターが
はっきり出た
ある意味で
分かりやすいものなんです
分かりやすいって
須藤さんのキャラクターが？
そうです
元テニスプレーヤーであり
殺された時
　
あなた方の
テニスコーチだったという
彼ならではのメッセージです
よーく考えてみてください
卵としゃもじ
何かに似てませんか
何だろう
テニスと関係があるものって
お料理とは関係ないの？
全然　ほーら
　
よく考えてください
丸いものと
　
スプーン型の
あ
　
分かった！
もしかして
　
ボールとラケット？
ピンポン
　
ご名答！
卵はテニスボール　しゃもじは
テニスラケットを
指しているんです
なーんだ
　
そっか　言われてみれば
でも
　
テニスの道具なんか
私たち全員持ってるよ
それが
　
何で犯人を
示すことになるのさ
ところがどっこい
それがなるんですよ
ほら
　
今描いた
その須藤さんの格好を
もう一度
　
よく見てください
ええ？
そうね…
　
これは
分かった　サーブを打つ時の
格好よ
　
このポーズは
その時
彼がボールとラケットを
どっちの手に持っていたかに
注目してください
左手にしゃもじ
　
右手に卵
ということは…
左利き？
そうなんです
須藤さんは
まさに左利きの人物が
サーブを打つ格好を
していたんですよ
ええ？
ちなみに昔見た
須藤さんの
缶コーヒーの宣伝ポスターから
思い起こしてみると
彼は左利きなんかじゃなかった
なのに
　
なぜ左利きのポーズなんか
とっていたのか
それは自分を殺したのが
左利きの人物であることを
何とか知らせようとした
須藤さんのメッセージだった
そう考えられませんか？いや
それしか考えられないんです
犯人はこの３人のうち
左利きの人物なんだ
左利きの？
ライターに右手で火をつけた
小梅さんは右利きだ
百合さんも
右手で絵を描いていたよね
ところが
　
桜さんは右手首に
時計をしている
つまり左利き
桜さん
犯人は桜さん
左利きのあなたですよ
ええ？
はっ…
桜…
もう
　
降霊術の必要
なくなっちゃったわね
桜
じゃあ
あんたが…
うっ
　
うっ…
何で
　
あんたが須藤さんを？
何で？何でよ！
あんなに好きだって
言ってたじゃん！
わ…
　
私はそんなに好きって
わけじゃなかったわ
ただ
　
小梅や百合が
あの人のこと好きだって言うから
だから
私だけ仲間外れになるのが嫌で
そう言っていただけなの
何ですって？
私は小梅や百合と一緒に
あの人のことで盛り上がるのが
楽しかっただけよ
楽しければ
　
それでよかったのよ
なのにあの人！
あんな男のせいで
一番大事な３人の仲が
台無しになっちゃって
それが許せなかったの
桜…
あの日
　
お肉を買った私は
通り掛かりの人の車に
乗せてもらって
あなたたちより先に
別荘に帰ってきたの
上機嫌で早速
カレーの支度を始めたわ
あっ
君たち３人は
ほんとに仲がいいんだねえ
僕のことで
けんかなんか
　
してほしくないんだ
だから皆に
同じ指輪をあげたけど
本当にあげたかったのは
君なんだ
ふふふ
うそ
　
うそでしょ？
ほんとだよ　何でうそなんか
ほら
　
やっと２人だけになれたんだ
あ
　
やめて！
うっ
どうしたんだ
　
桜
ご機嫌斜めなんだなあ
知ってるわよ
何を？
あなたがあの２人にも
同じこと言ってるってこと
まさか
　
そんなこと
いい気になって
もてると思って
　
うぬぼれないで！
ああん？
私たち
子どもの頃から仲がよかったのよ
なのに
　
あなたは
私たちの気持ちをもてあそんで
あなたのせいで
私たちはバラバラになっちゃった
あなたみたいな
くだらない男のせいで！
俺のせいで？
くだらないのは
　
あの２人の方さ
そこへいくと君は可愛い
やめて
百合や小梅を侮辱しないで
私の大事な親友を…
何を怒ってるんだよ
　
ほら
機嫌直してさ
あっ
　
うっ
や
　
やめて　やめて
　
須藤さん
いいじゃないか
　
桜！
ああっ
何するのよ
知らなかったよ
私も桜と同じだった
え？
あんな男　ちょっと
かっこいいなって思ったけど
大して好きじゃなかった
やっぱり
　
あんたたちに負けるのが
悔しかっただけだよ
小さい時から桜も百合も
成績がよくて
珠算も書道も１級だったしさ
だから私
　
コンプレックスの
塊になっちゃって
あんたたちが好きな男なら
私が奪って
ちょっと見返してやろうかな
なんて思ってさ
だから意地になっちゃって
そう
　
そうよ
　
私も同じよ
高校の時
　
小梅も桜も
　
すぐ
ボーイフレンドが出来たでしょ？
相変わらず
　
もてない私は
うらやましくて
　
仕方なかった
だから
　
ああいうハンサムな人を
私のものにして
あんたたちに
差をつけたかったのよ
そりゃあ
　
私だって
あの人顔だけで
中身のない人だってことぐらいは
分かってたわ
百合…
　
小梅…
桜
小梅！
桜！
桜…
え…
　
ええ
もしかしたら
　
私も桜と同じこと
やったよ
　
あんなやつ
ごめんね
　
桜
私たちのこと
　
かばってくれたんだ
金田一君
うい！あ
　
はい
ありがとう
あんたのおかげで
私たち３人の友情が戻った
大したこと出来ないけど
ちょっとだけ
　
お礼させてよ
え？いや
　
いいっすよ
そんなことより
ちゃんと警察には行かなきゃ
駄目っすよ
　
桜さん
ええ
ありがとう
　
金田一君
あ…
　
い
　
いえ
うふふふ
ふふふふ
うふふふふふ…
やれやれ
　
女の友情ってのは
訳分かんねえなあ
一ちゃーん！
おーい！金田一！
あっ　美雪！おっさん
どうしたの
　
こんなとこまで
どうしたの
　
じゃないだろう？
買出しに行ったっきり
戻ってこないんだから
わりい
　
わりい
　
そこの先の別荘で
雨宿りしてたんだよ
いやあ
　
ほんと
ひどい降りだったよな
雨？
雨なんて降ってなかったよ
へ？ああ？
ずっとお天気そのものだったわ
それに
　
一ちゃん
ちっとも
　
ぬれてないじゃない
ねえ
　
二三ちゃん
お天気もお天気
ほら
　
ピッカピカの上天気
んん？そんなー…
ああっ…
　
金田一
お前
　
今
　
別荘って言ったよな
それってまさか
あの崖下のことかあ？
そうだよ　何なら
　
あそこにいた
３人の女の人に聞いてくれよ
ほんとに雨が
土砂降りだったんだから
おい
　
金田一
あそこにそんな別荘が
あるわきゃないし
人がいるはずもないだろう
え…
　
ええ？
あれは…
そう
　
確か
　
去年の夏のちょうど
今ぐらいの時期だったかなあ
とんでもない大雨で
あの崖が崩れて
別荘が１つ潰されたんだ
運悪く
　
遊びにきていた男女４人が
下敷きになって死んだが
地元の警察によると
犠牲者の一人の男が
どうも生き埋めになる前に
刺し殺されていたらしいことが
分かってな　里帰りしてた俺も
現場に借り出されたってわけよ
一緒にいた
　
女の一人が刺したと
思われるんだが
その３人も死んじまった以上
真相は
　
分からずじまいで
お宮入りってことになったんだ
そうそう
　
ここだよ
その別荘が埋まったのは
その辺りじゃないかな
あ…
　
あ
　
あ
どうしたの？一
顔が青いぞ
ま
　
まさか…
　
あ
　
ああ
まさかって
　
一ちゃん
その下駄の鼻緒どうしたの？
へ？あれ？
やーだあ
　
何その鼻緒
き
　
金田一
　
これは
あの時
　
切れたはずなのに…
だあああ！痛っ
あ
　
ああ
　
あの時に…
ありがとう　あんたのおかげで
私たち３人の友情が戻った
んん…
　
ひいいいい
大したことは出来ないけど
ちょっとだけ
　
お礼させてよ
うふふふふ
ふふふふふ
ふふふふ
あはははは…
同級生の秋絵が転校していった
雲場村
うだるような暑さがこもる
この土地で
俺と美雪は
不思議な祭に出会った
３００
年間
　
必ず決まった日に落ちる
雷を合図に始まる
　
雷祭
そして
奇怪で幻想的な祭の日に事件が
芸術家
　
朝木冬生の
突然の死に隠された真実とは
金田一少年の事件簿﻿暑い　犯罪的な暑さだぜ　もう
コンビニも喫茶店も銀行もない
どこにも冷房の効いてるとこが
ないなんて
たくー　あっ？
あっ　あいたー　ハハハ
はじめちゃーん　村の人に聞いて
秋絵ちゃんちの場所　分かったよ
うわっ　ど派手な車
美雪ちゃーん　金田一くーん
あっ
げっ
秋絵ちゃーん
うひゃあ　快適　快適
久しぶりね　２人とも
そうだな　この春以来か
秋絵ちゃんたら突然
転校しちゃうんだもん
びっくりしちゃった
ごめん
でも夏休みには遊びに来てって
手紙来た時は　うれしかった
あんまり田舎なんで
驚いたでしょう
この雲場村が私の生まれ故郷なの
都会の高校に
行かせてもらうまでは
ずうっと　この退屈な村で育ったの
ふうん
ふうーん
何　金田一君？
秋絵　なんか雰囲気　変わったな
えっ？
前は　よくしゃべって
よく笑う感じだったのに
何つうか　こう…
父親があんな死に方を
したんだもの
誰だって物静かにもなるわ
そんなわけじゃ…
紹介するわ　春子叔母様
東京でブティックを開いているの
ハーイ
こんにちは
どうも
もう大変なのよ　秋絵も
父親が死んだせいで　朝木の家を
よそ者に乗っ取られるし
叔母様ったら
まったく　あの２人ときたら
あなたたち　秋絵の父親が
陶芸家の朝木冬生
だってことは知ってるわよね
はい　確か人間国宝って
ええ　私の年の離れた兄にして
鬼のような芸術家　朝木冬生
この春に冬生が急死してね
それ以来　後妻とその連れ子が
我が物顔で朝木の家に
のさばっているわけ
はあ…
今に追い出してやるわ
あの　もののけたち
じゃあ　秋絵
雨が降る前には戻るから
はい
雨が降る？この青空で？
降るのよ　この雲場村は
８月のこの時期
ほとんど毎日　夕方に
ざあっと雷雨になるの
雷雨？
毎日　必ず？
うん　この辺りは
極端な盆地でしょ
夏場は気温が異常に上がって
周りの山に雷雲ができるのよ
昔は「神様が雷を落とす」と
思われてたみたい
ふうん
あ？
祭ばやしね　そう言えば
雲場村には
雷のお祭があるんだって？
雷の？
雷祭って言うの
退屈で何もない村が
別世界に変わるのよ
きっと忘れられない体験になるわ
はあ…
さあ　着いたわ　ここよ
ええっ　ひえー！
これが秋絵んち？
時代劇に出てくる悪代官の
屋敷じゃん
なんか圧倒されちゃうな
ああ
うわあ　でっけえ木だなあ
すごーい
この木は　うちの避雷針代わりなの
避雷針？
うん
雷が多いから
この村の家は低く作られてて
庭には必ず１本
高い木が植えられて
その木の先には
農機具のカマとか
金属製の物をつけて
避雷針代わりにしてるの
へえー　変わってんなあ
どうぞ　あっ　お義母様
あら　いらっしゃい
遠いところをようこそ
私　秋絵さんの母で葉月と申します
七瀬美雪です　お世話になります
金田一っす
はじめちゃん！
セーフ…
何やってんのよ
大丈夫ですよ
何だか高そうな傘立てですねえ
それは亡くなった主人が
朝木冬生が焼いたものです
重要文化財の
候補になった作品とか
げっ
それを傘立てに？
主人は　ただの駄作だと
傘立て以外には使うなと
きつく言われて
すっごーい
掛け軸や家具とか
年代物っぽいね
そうね　食器とかも
大体３００年位前のが多いかな
３００年！
ワーオッ
そういう家具や食器を
生活の道具に普通に使ってるの？
うん　朝木家は代々
陶器の窯元だったの
江戸時代には将軍家にも
器を献上してたみたい
将軍家ねえ
あれ？秋絵たち　どこ行ったんだ
ははっ　参ったな
家の中で道に迷っちまったぜ
何か出そうな感じ
３００年前の幽霊とか　なんてね
あっ　ん？
あっ　金田一君は？
あら　もう　はじめちゃんたら
まさか…
ん？
んん　いかにもお宝が
置いてありそうな
こんにちは
あ　ちょっと失礼しまーす
何だろう　この部屋
ジメジメしてんなあ
壷ってことは　ここ…
あっ　これは…
金田一君　そこはダメ！
秋絵　これ　もしかして…
ここは父の仕事場だったの
お父さんの？
父は　この部屋で自殺した
火かき棒で　のどを突いてね
奇妙な死に方でしょう
父は少し変わった人だったから
変わった人？
父は冷酷と言われるほど
芸術一筋の人だった
最高の作品を生み出すためには
家族も犠牲にする
人殺しさえ　いとわない
それが口癖だったわ
創作を始めると何日も
この部屋から出てこなかった
家族の誰も入ることは
許されなかったわ
私　お父さんの作品
テレビで見たことあるわ
確か空蝉っていう器だった
お父さんの最高傑作って
聞いたけど
これよ　これが空蝉
えっ　これ…
どうしたの？
父の亡骸のそばに
粉々に砕けていたの
なぜ？
空蝉を超える作品を
どうしても作ることができない
父は死ぬほど苦しんで　空蝉に
憎しみさえいだくようになって
そして粉々に砕いて死んだ
それが自殺の原因？
何度　言ったら分かるの
聞こえてるんでしょ
バケツとゴムホースを
持ってきなさいって
言ってるのよ　時雨
ご自分のお車を洗うんでしょう？
ホースくらい　ご自分で持って
こられたらいかがですか　叔母様
どこにあるか分からないから
頼んでるんじゃない
一体　何様のつもり？
この家の疫病神のくせに
３年前　あんたの母親と
結婚した時から
兄は思うような作品が
作れなくなったのよ
兄が自殺したのは
あんたの母親のせいよ
叔母様
何よ　その目は
あっ　どうも
何がおかしいのよ
ごめんなさい　春子さん
時雨　叔母様に謝りなさい
お母さん
どうして卑屈になるの？
私は謝る必要もない人に
謝ったりしないわ
時雨…
あんたねえ！
叔母様
ホースなら私が持ってくるわ
秋絵　なぜ時雨をかばうの
え？
知ってるわよ
あなた時雨を憎んでるくせに
あの気難しかった朝木冬生が
なぜか時雨の
芸術的センスだけは褒めた
あなた　泣いて言ってたじゃない
「お父さんは実の娘の私にすら
絶対に焼き物を
教えてくれなかったのに
時雨にだけは焼き物を教えた」
「あの子には
そんなに才能があるの？」ってね
どうしたって言うのよ
ったく　もういい　不愉快よ
どうせ雨が降るんだから
洗車はやめたわ
気にしないでね
本当は私と時雨は仲いいの　ね？
秋絵さん…
紹介するね　妹の時雨
私より２つ年下で
中学３年生なの
こんにちは　七瀬です
俺　金田一　さっきは…
さっき会ったの？
ちょっとね　あはは
時雨ちゃん
変なこと　されなかった？
おい　美雪
そんなことするわけねえだろ
どうだか　もう　時雨ちゃん
気をつけてね
楽しい人
そうだ
時雨も一緒に雷祭に行こう
美雪ちゃん
私が浴衣の着付けしてあげる
浴衣？きゃあ　うれしい！
ありがとう　秋絵ちゃん
私の浴衣も用意してくれてたのね
サイズも合ってるし　可愛いわよ
本当？えへへ
きゃぴ　なんちゃって
んふふ　ん？秋絵ちゃん
主の自殺
ぎくしゃくした関係の女たち
んー　なんか
重苦しい感じの家だなあ
誰？朝木冬生？はっ
夢…
ダメよ　武藤さん　今は…
ん？
大丈夫ですよ　葉月さん
広い家なんですから
でも…
誰も来やしませんよ　さあさあ
武藤さん
へ？わあー
金田一さん！
ご　ごめんなさい
こんにちは
あ　こんちは
ご紹介しますわ
亡くなった主人のご友人
昆虫学者の武藤恭一先生です
葉月さん
「先生」はやめてくださいよ
僕は　ただの居候なんですよ
そんな偉そうな身分じゃ
ないんですから
昆虫学者さんですか
すごいなあ
この雲場村の辺りは
日本でも有数のセミの生息地でね
それで　ここに
ああ　そうだ
よかったら　僕のコレクション
ご覧になりませんか
ほら　僕　あの離れを
お借りしてるんですよ
はあ…
うっ　あ　すみません
ちょっと雷がね　大嫌いなもんで
いや　まだ遠いですよ
大丈夫
雷は金属に落ちますからね
ベルトまで外すんですか？
僕の伯父が子どものころ
落雷で意識不明になりましてね
はあ…
さあ　どうぞ　雑然としてますけど
ひえっ
ああ　はい
お邪魔します
さあ　中へ
あ　ここにも…
何か？
あ　いえ　別に
わっ　すっごー
どうです
ちょっとしたものでしょう
これ　全部　セミですよね
ここに飾ってない箱の分も
合わせて４０００は超えてるはずです
４０００？
セミは世界に
１６００種ほどいるんですよ
はあ　そんなに
ここにある標本は
その３分の１程度かな
特に特徴のあるものや
奇形種も集めているので
こんな数に
これ全部　抜け殻じゃないですか
そう　セミの抜け殻
いわゆる空蝉というやつです
空蝉…
そっちにあるビンに入ってるのも
全部そうです
その中には　ちょっとつぶれたり
形の崩れたものばかりです
それでも物心ついたころからの
コレクションなんで
捨てられずに取ってあるんですよ
はあ…
子どものころは君も
セミの抜け殻を見つけて
ワクワクしたこと
あるでしょう？
僕のは　それがエスカレート
しちゃったんですね
で　大学も昆虫学を
やれるところに進んで
冷たい麦茶でも　いかがですか
ああ　すいません
でもね　こんな僕にも
自慢すべきことがあるんですよ
あの朝木冬生先生が
僕のコレクションに
インスピレーションを得て
空蝉という最高傑作を作った
そのお陰で僕は先生に
この離れをいただいたんです
先生が亡くなったあとも
葉月さんのご好意で
そのままここに
そんな…
あーら　またお２人でこもって
いらっしゃるのかと思ったら
金田一君も一緒だったの？
あ　どうも
君には関係ないだろう
僕が誰と一緒にいようが
年増女のヒモまがいに
なってるなんて
恭一　あなたも落ちぶれたものね
なんか　ヤバい雰囲気
葉月さんに失礼な言動は
控えてもらいたいね
それと　僕につきまとうのも
つきまとう？
あっ
武藤さん
あっ　どっ　あれ…
はじめちゃん　どこにいるの
あっ　おうおう
ここだよ　美雪
もう　また迷ったのかと
思ったじゃない
ふん　まったく
あんたの母親もいい玉ね
あ…
夫が亡くなって　たった４ヵ月よ
恥を知りなさい
じゃあ　僕は
論文の締め切りも近いんで
ここに　こもりますから
はい
７時ごろに夕食を
お持ちしますわ
お願いします
ふう…
死んでしまえばいいのよ
おいしい　おいしい綿アメだよ
なんか面白ーい
秋絵ちゃん　どうしたの？
えっ
ちょっぴり元気ないみたいね
大丈夫よ　だって　もうじき
雷祭が始まるんだもん
雷祭はね
この神社を囲んでいるご神木の
七欅のどれかに
雷が落ちた時　始まるの
ご神木に雷が落ちた時？
落雷を合図に太鼓を打ち鳴らして
そして…
そして？
ここからは見てのお楽しみ
何だか変わったお祭なのね
でもさ　もし　その欅に雷が
落ちなかったら　どうなるんだ
お祭　始まんないじゃん
そういうことは
雷祭が始まって以来３００年
一度もなかったみたいよ
一度も？
七欅の天辺には
御剣っていう
銅の剣がくくりつけてあって
そこに雷が落ちるのよ
まるで意思があるようにね
不思議　でも怖いね
あら
どうしたの
時雨が　あの子が来てない
えっ　４時半に
待ち合わせとか言ってたろ
うん　まだ４時２０分よ
でも　あの子は…
ごめん　私　時雨を捜してくる
おい　どっか妙だぜ　秋絵のやつ
何か隠してるみたい
胸の奥に　とても重い何かを
えっ？
さっき泣いてたの
時雨ちゃんを見ながら
時雨ちゃんを？
まったく　忌々しい雷だ
あっ　はい
どなた？葉月さんですか
どうぞ
驚いたな
おお　来たぞ来たぞ
待ってました！
キャー
来たぞ
怖いよお
大丈夫だって　この神社は
避雷針代わりのご神木に
囲まれてるんだ
人の上に落ちるわけが…　あっ
どうしたの
トイレ
もうっ　なんでこんな時に
すぐ戻ってくるからさ
あたしも
落ちたぞ
落ちた
ご神木に落ちた！
七欅に神の御印が
落ちた　雷祭の始まりじゃ
やあっ！
落ちた落ちた　ハハハ…
恵の雨じゃ
３００年の恵を讃えるのじゃ
それが世にも奇妙な祭
雷祭の始まりだった
奇妙な祭が行われる中
朝木家の離れで起きた異常な事件
庭に残された不審な足跡
そして現場にバラまかれた
無数のセミの抜け殻
全員のアリバイが
証明されている中
犯人は一体どんなトリックを？
この謎　必ず俺が解いてみせる
じっちゃんの名にかけて
金田一少年の事件簿
「雷祭殺人事件」ファイル２
自殺した人間国宝
朝木冬生の家は
残された女性たちの憎しみに
彩られていた
昆虫学者の武藤恭一は
朝木葉月　時雨　春子　秋絵の
どろどろした感情に
巻き込まれていた
やあっ
どうして平気なの？
この村の人は雷が怖くないの？
５時ちょうど
はじめちゃん早く戻ってきて
七瀬さん？
春子さん
どうしたの？こんなところで
１人？
ええ　よかった　今…　キャー
ふふふ　怖い？
春子さんも怖くないんですか　雷
子どものころから　ずっと
この時期は　こうだったもの
雷は神様だから怖くないって
そう聞かされて育つのよ
この村の人って
雨にぬれるのも平気なんですね
ま　私は東京暮らしが長いから
今更って感じで　このとおりだけど
雷を怖がるか怖がらないかで
この村の人かどうか分かるのよ
例えば葉月さん
あの人は雷が怖くて
絶対この雷祭には参加しない
笑っちゃうでしょ
私は人のこと言えないです
でもね　村の人間でもないのに
最初から全然　雷を
怖がらなかった子もいるのよ
えっ？
時雨よ　本当　嫌な子
ああ　ちょっとゴメン
通してくれよ　ゴメンゴメン
ああ　すいません
なんて祭だ
こっちよ
おいおい　ちょっと
あっ　時雨ちゃん
ありがとう　助かったよ
いやあ　すごいお祭だね
初めて　この村に来た時
時雨ちゃんも
ビックリしたんじゃない？
３年前だっけ？
私は好きよ　このお祭　雨も
えっ　じゃあ…
命が燃えるような気がするから
こんなふうに　ぬれてみたかったの
一度でいいから
ああ生きてるんだなって
感じたかったの
どうしたの
シー
初めて見たわ
俺もだ
真っ白　きれい
蝉の幼虫って
７年も土の中にいるらしいね
だから　こんな白いんだ
だけど　こうして羽化したあとは
たった２週間しか
生きられないんだったね
あなたは　そんなに長い間
暗い土の中にいたの？
今　初めて　この世界に
羽ばたいていくのね
たった２週間の命
飛ぶのよ　自由に　生きるの
こんな不思議な儀式を
一緒に見たの
金田一さんと私だけの
秘密の思い出ね
へ？
ね
金田一君　時雨
いたいた　はじめちゃん
捜したわよ
雨やんだわね
本当
５時１５分か
長く感じたけど　降ってたのは
ほんの１５分ぐらいだったんだな
本当　すっごいお祭だった
あんなに　ぬれてたのに
金魚すくいと射的やってるうちに
すぐ乾いちまったな
ただいま　お義母様
武藤さんに夕食でも
持ってってるんじゃないかしら
７時に持ってくって言ってたし
ああー！
離れのほうだわ
待った　俺が離れを見てくる
私も…
いや　これを見てくれ
足跡？
ああ　男性用のサンダルのもの
もう一つは女性用だ　念のため
余計な足跡をつけたくない
皆　ここで待っててくれ
葉月さん
蝉の抜け殻
いわゆる空蝉というやつです
凶器は　この部屋にあった
ガラスの灰皿と考えられます
殺害現場となった離れの窓には
すべて内側から
鍵がかかっていました
従って犯人は　この戸口から
逃走したに違いありません
うん
しかしですねえ
この辺りは夕刻の豪雨で
ぬかるんでますから
逃走すれば　当然
足跡が残っているはずです
ところが足跡は残っていなかった
ええ　残っていたのは　被害者の
武藤本人が　この離れに向かう足跡
そして第一発見者　朝木葉月夫人が離れに向かう足跡のみでした
なるほど
はあ　つい　このあいだ
朝木冬生が
自殺したばかりだというのに
今度は殺人か
まるで呪われた家だな
検視報告によると
死亡推定時刻は
午後４時３０分から５時３０分までの
あいだと推定された
しかし現場の状況からは
もっと正確な犯行時刻が
割り出されている
本日夕刻５時ごろから
雷雨があった
犯行は雨が降ったあと　つまり
５時以降に限定されておるんだ
俺が駆けつけたのが７時すぎ
とすると　それまで少なくとも
１時間半　武藤さんの遺体は
あそこにあったってことか
長島さん　犯行時刻が
雨の降ったあとってのは
あの足跡から
割り出したんですよねえ
金田一君　またお前か　はあ
やれやれだな　まったくもう
現場に残ってた
武藤さんのものと思われる足跡
あれは雨が降ったあと
離れに向かったものですよねえ
つまり　雨が降る前までは
武藤さんは
生きて母屋にいたことになる
余計な口出しは　せんでいい
今回は　お前の手助けを
借りんでも　事件は解決できる
答えは単純明快　犯人は
すぐにでも逮捕できるだろう
刑事さんは　私たちの中に
犯人がいると思っているんですね
誰かが押し入った跡も
物を盗られた跡もない
そうなんですか　刑事さん
まあその　なんだ…
これは身内の犯行だと
何よ　私を疑ってるの？残念ね
私にはアリバイがあるのよ
犯行時刻の５時から５時３０分
つまり雨が降ってたあいだ
私は七瀬さんと一緒だったわよ
ねえ
ええ　確かに一緒でした
俺と美雪　春子さん　秋絵
時雨ちゃんの５人が
あの雨の中　境内で
顔を合わせたのが５時１５分
あの神社から　ここまで２０分は
かかると考えれば
犯行は不可能だということになる
違う違う
アリバイなんて問題じゃない
これはもっと単純に解決できる
事件なんだ
犯人は分かりきっとる
葉月さん
あなたは被害者の武藤さんに
夕食を運ぶため
離れへ行かれたんでしたなあ
え　ええ
最後に武藤さんに会われたのは
何時ごろでしたか
３時ごろだったと思います
そちらの金田一さんと一緒に
離れに行った時です
ああ　ええ　ええ
俺　確かに一緒でした
うん　うん　３時ごろねえ
しかし妙ですなあ
武藤さんは午後５時までは
母屋にいたと思われる
それなのに　あなたは見かけも
しなかったと言うのですか
ええ
あなたは一体その時刻
どこで何をしていたんですか
ええっと…
その時間でしたら
夕食の準備をしていたと思います
そうですか
実は問題は足跡なんですよ
犯行は雨が降っているあいだに
行われた
となると　逃げた犯人の足跡は
必ず残るはずだ
ところが　あの離れの周りには
金田一を除いて　被害者の足跡以外
たった一つの足跡しか
残っていなかった
それは　葉月さん
あなたの足跡だ
どういう意味か分かりますよね
では　もうひとつ　葉月さん
あなたと被害者の
武藤さんのご関係は？
それは…
ふん　いい気味
朝木葉月さん
署までご同行願います
ちょっと待ってくれ
長島さん　一つだけ
武藤さんのものと見られる足跡は
離れに残っていたサンダルと
一致したのかよ
つまり犯人は雨の中　被害者の
サンダルと同じ物を履いて
後ろ向きに歩いたかもしれない
そんなところかな？
残念ながら　その推理はハズレだ
例の足跡は　離れに残っていた
サンダルと完全に一致したよ
すり減った個所　溝に入った小石やゴミまで完璧にな
お母さん
大丈夫よ
すぐに戻ってきますから
時雨のほうこそ
体に気をつけるのよ
ちゃんとお薬飲むのを
忘れないでね
お母さん
さあ　行きましょう
ああ　なんか納得いかねえなあ
あっ　何だ
秋絵？
「空蝉を超える作品を作るまで
わしは死ぬわけには　いかぬ」
「この体が灰と化すまで
命を燃やし　作品を作り続ける」
これ　日記なのか？
どういうことだ　朝木冬生は
自殺する気なんて　なかったのか
空蝉を超える作品を
どうしても作ることができない
父は死ぬほど苦しんで　空蝉に
憎しみさえ抱くようになって
そして粉々に砕いて死んだ
それが自殺の原因？
朝木冬生の自殺
そして　この事件
犯人は　なぜ空蝉で
武藤さんを覆ったのか
朝木冬生が粉々に
砕いたという最高傑作
空蝉と何か関係あるのか
こんな僕にも
自慢すべきことがあるんですよ
あの朝木冬生先生が
僕のコレクションに
インスピレーションを得て
空蝉という最高傑作を作った
そのお陰で僕は先生に
この離れをいただいたんです
もし朝木冬生が自殺でなく
誰かに殺されたとしたら
そして武藤さんの件も
冬生の死に関係があるとしたら
誰？朝木冬生？
はじめちゃん
どうしたの？ぼーっとして
ああ　美雪こそ
どうしたんだよ　こんな時間に
なんか眠れなくて
ねえ　はじめちゃん　秋絵ちゃんと時雨ちゃんのお母さんが
本当に犯人なのかな
まだ分からないけど
でも俺は違うんじゃないかと
思っているんだ
なぜ？
あの時　２つの足跡をよく見たんだ
武藤さんの足跡は深くて
だいぶ雨に流されていた
つまり雨が降っている最中か
降った直後に
ついたような跡に見えた
ところが葉月さんの足跡は
かなり浅かった
ぬかるみが乾きそうだった
あの７時の時点で
たった今　つけられた足跡の
ようだったんだよ
それは７時に夕食を
運んでいったっていう
葉月さんの証言と一致する
それに葉月さんが夕方５時に
武藤さんを殺害して
７時まで　ずっとあそこに　いた
なんて　そんなの　おかしいだろ
そもそも　この事件は
突発的なものだと思う
前から計画していた殺人なら
離れにあった
ガラスの灰皿なんかを
凶器に使う必要は　ないからね
それじゃあ…
犯人は　その場にあった灰皿で
武藤さんを殺害した
そして　とっさに
何らかのトリックを思いついて
足跡を残さずに
あの離れを脱出したんだ
トリック？
ああ　うまく容疑を逃れて
しかも葉月さんに
罪をきせる巧妙なトリックだ
それって犯人は最初から
おば様に疑いがかかるように
仕組んだってこと？
ああ　覚えてないか　美雪
じゃあ僕は論文の締め切りも
近いんで　ここに　こもりますから
はい　７時ごろに
夕食をお持ちしますわ
お願いします
犯人は　あれを聞いていたんだ
だから自分が足跡を
残さないで逃げれば
あとから離れに
やってくる葉月さんに
疑いを向けることができるってね
そんな…
犯人は　あの時あの場所にいて
葉月さんの言葉を聞いていた
人間に絞られることになる
つまり　朝木時雨　朝木春子
朝木秋絵　の中の誰かだ
バラまかれた空蝉の謎
それが解ければ
必ず犯人の姿が見えてくる
こらあ　何しとる
わあっと…
何だ　長島さんか　どうも
「どうも」じゃないだろう
もうちょっと
マシな口がきけんのか
何してるんだ　こんなとこで
いやあ　いろいろと
長島さん　葉月さんの
事情聴取は　どうでした？
何か成果は　ありましたか
おいおい　捜査上の秘密だぞ
ちょっとだけでも　ねえ
ったく　やっこさん　黙秘を
決め込んで何もしゃべらんのだ
黙秘？
ま　しゃべるとボロが出るから
しゃべらんのだろうが
長島さん
なんだ
離れの中　見せてください
おい　昨日も見ただろう
お願いします
はあー　お前には負けるよ
あの大量の蝉の抜け殻は
あそこのプラスチックのビンに
入れられてたものらしい
葉月夫人は　なんで
そんなものをかけたのか
どうも分からんなあ
長島さん　この傘　武藤さんの？
ああ　東京から持ってきた
彼の持ち物だそうだ
確かこれ　昨日
玄関にあった傘だ
武藤さんと　この離れに来た時は
なかったなあ
武藤が問題の５時すぎに
この離れに来た時
さしてたんだろう
あのひどい雨降りの中だ
母屋から　すぐの距離とはいえ
傘ぐらい　さすだろう
すみません　ちょっと雷がね
大嫌いなもんで
ベルトまで外すんですか
僕の伯父が子どものころ
落雷で意識不明になりましてね
そうか　やっぱり武藤さんは…
あ？
おい
ちょっと見せてください
もう指紋は取ってあるが
あまり勝手なことしないでくれよ
指紋を取ったあと
中　洗いました？
いや　洗わんよ
一体　何が…
どうやら分かったよ
犯人が仕組んだトリックが
何？
そして　そのトリックを
実行した人物もね
お　おい
犯人は　あの朝木葉月に
決まってる　そうだろ
まさか　他に真犯人がいるとでも？いいか　金田一
現場には足跡という
決定的な証拠があるんだぞ
もし朝木葉月でなければ
どうやって足跡をつけずに
殺害現場を脱出できたのか
その方法を説明してくれ
長島さん　今　警察にいる
葉月さんも含めて
関係者全員を集めてください
じゃあ　犯人が分かったのか
俺がこの事件のトリックを
解き明かして　みせますよ
じっちゃんの名にかけて
はじめちゃん
犯人は分かったの？
ああ　１人はね
どういうこと？
まだ　謎の半分は解けていない
たぶん　この事件には
犯人が２人いるはずなんだ
そんな
そして　もう１人　この屋敷に
封印された秘密を
すべて知っている人物がいる
はじめちゃん
今　ここに集まってもらったのは
昨日　この家で起きた殺人事件の
犯人を明らかにするためです
そう　あの雷祭の日
武藤さんを殺した犯人は…
この中にいる
離れに向かう足跡　それは
３００年の歴史を持つ雷祭を
利用した心理トリックだった
現場にバラまかれた蝉の抜け殻
空蝉の本当の意味が今
明らかになる
朝木冬生の死にまつわる謎こそが
朝木家で起きた悲劇の
すべての発端だった
そして犯人の過去を明かす
意外な人物が！
金田一少年の事件簿﻿雷祭の夜
　
雷雨の中で起きた
奇怪な殺人事件
昆虫学者の武藤恭一は
何千という空蝉に覆われて
息絶えていた
あの雷祭の日
武藤さんを殺した犯人は
この中にいる
何ですって？
一体どういうこと？
犯人は葉月さんなんでしょ？
警察の人がそう言ったのに
　
何で？
やましいところがないなら
金田一さんの話を
聞いたらどうですか
時雨
　
あんた何の権利があって
やめて！
朝木葉月さん
あなたは犯人じゃない
そんな…
　
刑事さん！
ああ　はなれ周辺には
朝木葉月の足跡以外
残っていなかったんだ
もし他に犯人がいたとしたら
どうやって足跡を付けずに
あの
　
はなれから逃げたというんだ
ロープを張って
渡ったとでもいうのか
そんなもの仕掛ける場所は
ないんだぞ
犯人は仕掛けなんか
作っちゃいないさ
現場にあるもので
もっと簡単なトリックを
実行したのさ
見ての通り
今はもう土がカチカチに乾いて
ちょっと踏んだぐらいじゃあ
足跡はほとんど残らない
分かっとる
　
そんなことは
実は
犯人はこんなふうに
土の乾いた状態の時
つまり事件の日
雨が振り出す５時以前に
犯行を終えていたんだよ
なっ
それじゃあ
　
死んだ武藤恭一の
足跡はどうなるの？
そうだ
雨が降る前に死んでいたんなら
一体なぜ
被害者の足跡が残っていたんだ
今から俺が同じことをして
見せるよ　時雨ちゃん
はい
ちょっと持ってきてほしい
ものがあるんだ
え？
ゴムホース
　
持ってきてくれないか
ゴムホース？
この家のどこかにあるはずだよね
ええ
ゴムホースが一体何なのよ
ゴムホースのある場所を
知っているかどうか
それが真犯人を示す
鍵になるんだよ
どういうことですか？
はい
やっぱり知ってたんだね
これがどこにあるかを
これでオッケー
はっ…
　
ああ
ようやく気付いたな
何でこんなことに
気付かなかったんだろう
美雪
はなれまで
足跡を付けながらいって
それから足跡を付けないで
戻ってみてくれ
ええ
おお…
事件の日
犯人もまさに
これと同じことをしたんだよ
乾いた地面に残った
自分の足跡はかすかだ
後で降るはずの雨で
跡形もなく消えてしまうだろう
３００
年間
　
一度も
村人の期待を裏切らなかった
あの雷祭の雷雨は
犯人の期待をも裏切らずに
見事に足跡なき殺人を
演出してくれたってわけさ
何てこった！こんな簡単なこと
普通
　
現場から逃げ出す犯人は
足跡を残さないようにするもんだ
ところが
　
この犯人は逆を突いて
わざわざぬかるみを作り
足跡を残した
その思惑通り
　
皆
どうやって足跡を残さないで
現場から脱出するかを
考えてしまい
どうやって現場に足跡を残すか
なんてことには
考えが及ばなかったんだ
そこに巧みな心理トリックが
隠されていたのさ
うーん…
金田一くん
確かにこれで
武藤さんが雨が降る前に
はなれに行った可能性は
出てきたわ
でも
　
これだけでは
実際に彼が雨が降る前に行ったと
証明することは
出来ないんじゃない？
いや
　
出来るのさ
この傘は武藤さんの物だ
昨日
　
俺がこの家に来た時
この傘は玄関に挿してあった
そして
　
そのあと
はなれに来た時この傘はなかった
つまり
　
この傘は
あの雷雨があった５時ごろ
武藤さんが母屋から
ここに来る時に差してきたんだと
誰もが思ったんだ
ところが
　
見てくれ
この傘を
雷雨の中で武藤さんが差すことは
１００
パーセントあり得ないんだよ
どうしてそんな…
大の雷嫌いだったからさ
武藤さんは雷を恐れて
わざわざ自分の
ベルトのバックルまで外したんだ
それほど雷を恐れている人間が
あれほどのすさまじい雷雨の中
こんなとがった金属の付いた
傘を差すなんて
　
あり得ない
ああ…
犯人は武藤さんが雷雨の中
はなれに向かったことを
強調するために
玄関から傘を持ってきて
はなれの傘立てに
放り込んだのさ
つまり犯人は雷が怖いなんて
思ったこともない人物だったから
それが
武藤さんの取った行動として
明らかに不自然だということに
気付かなかったんだ
ということは…
ああ
武藤さん同様
俺たちもこの村の雷が怖かった
ところが
雷祭に出ていた村の人たちは
誰一人
　
雷を恐れていなかった
雷を神と敬う
３００
年の歴史が
体に染み込んでいるからさ
つまり
このトリックを仕組んだ犯人は
この村で生まれ育ち
　
雷祭を
ごく自然に経験してきた人物
あの雷雨の中を
平気で傘を差して歩いていた人間
そう　春子さん
　
あんただよ！
ああ…
違う
　
私じゃない
ふざけないでよ　そんなことで…
時雨はどうなの？
この村の出じゃないのに
雷を怖がらないじゃないの
なのに
　
何で私が犯人だって
その根拠はどこにあるのよ
空蝉だよ
武藤さんの体を覆っていた
セミの抜け殻
　
それが根拠だ
俺も初めは考えた
体をセミの抜け殻で覆ったのは
何か怨恨や
呪いの印じゃないかってね
だが
　
そうじゃない
犯人は考えたんだ
意味ありげに武藤さんの体を
空蝉で覆っておけば
本当に必要だったものから
捜査の目をそらすことが
出来るかも知れないって
本当に必要だったもの？
これだよ
これは
　
事件前にセミの抜け殻が
いっぱいに詰まっていたものだな
犯人は
　
中身を武藤の体の上に
ぶちまけたんだ
ああ　ところが妙なんだよ
この中にはセミの抜け殻の
かす一つ残っていない
まるで水でも入れたように
奇麗なんだ
それじゃあ…
そう
犯人はここに水を入れ
バケツ代わりに使ったんだよ
地面に水をまいて
足跡のトリックを
作り出すためにね
その時
　
中の空蝉が邪魔なんで
武藤さんの体の上にぶちまけた
それが体を覆っていた
空蝉の理由だったんだ
しかし
　
ホースを使った方が早いし
母屋からバケツを
持ってくればいいものを
春子さんには
それが出来なかったのさ
出来なかった？
彼女はバケツとホースが
ある場所を知らなかったのさ
久しぶりにこの屋敷に帰ってきた
人間だったからね
俺たちがこの屋敷に到着した時
春子さん
　
あんたは
車を洗おうとしてたよな
確か
　
あの時バケツとゴムホースを
持ってくるように
時雨ちゃんに頼んでいた
時雨ちゃんがホースの場所を
知っていたことは
さっきも証明済みだ
秋絵もあの時
　
すぐにホースを
取りにいこうとした
葉月さんも俺たちが来た時
玄関でバケツを使っていたはずだ
ホースもバケツも使わないで
水をまくために
この容器を
使わなくちゃならなかった人間は
春子さん
　
あんただけなんだよ
まさか…
　
実はゆうべ
武藤について調べるうちに
春子さん
　
あんたと武藤が昔
恋仲だったという証言が出てきた
武藤が葉月さんに
乗り換えたのを見て
あんたは心穏やかじゃなかった
そういうところか
ろくでもない男だった
女を夢中にさせて
金を貢がせるのが
男のかい性だって言ってた
あいつが目の前で死んだって
あたしは涙一つ流れなかったわ
でも
　
殺すつもりじゃなかった
詳しい話を
聞かせていただけますか
一ちゃん
美雪か
ねえ
　
何か変でしょ？
雲場村から帰ってから
ずうっとこんな感じなんだよね
妙に調子
　
狂っちゃう
一ちゃん…
あの時
　
確か
　
一ちゃん
この事件の犯人は
２人いるって言ってたよね？
一ちゃんの中では
謎はまだ全て解けていない
そうなんでしょ？
一兄ちゃん
　
お客さんだよ！
この暑い中
　
雲場村から
わざわざ来たんだってさ！
何！
ああっ！
よっ…よう
あれから１週間経つが
どうも
　
ふに落ちないことが
出てきてなあ
どういうこと？
そもそも武藤が
あの
　
はなれに
住み着くようになったのも
当時やつにべたぼれだった春子が
兄の冬生にやつを会わせたことが
きっかけだったんだ
ところが冬生が亡くなってすぐ
武藤は葉月夫人と
懇ろになっちまった
で
　
捨てられた春子は
事件の日
　
武藤と口論になり
とっさに灰皿で殴ってしまった
と
　
そこまでは春子も
認めたんだが…
春子の自白と検視の報告が
一致しないんだ
武藤の頭には２ヵ所の傷があり
そのうち致命傷になっているのは
左側頭部のものだった
ところが春子が殴ったのは後頭部
それも一度だけだといって
きかないんだ
え？
それで
　
彼女も
その時
　
武藤に突き飛ばされて
机に頭をぶつけて倒れ
５～６分間
気を失っていたというんだ
どう思う？
やっぱり…
そういうことだったのか
やっぱり？
で
　
その春子さんが認めたっていう
後頭部の傷だけでも
武藤さんは死んでいたのか？
いや　到底
　
死に至る傷では
なかったというのが
鑑識医の見解だ
そうか…
　
最後の疑問の答えも
これでようやく見えたよ
じゃあ
　
一ちゃん
ああ
謎は全て解けた
どういうことだ
　
金田一！
武藤さんは
別の人間に
とどめを刺されたんだよ
春子さんが失神している間にね
とどめを？一体
　
誰がそんな…
お前には分かっているのか？
ああ
　
だが
　
これは
俺の直感みたいなものだ
根拠はない
誰なんだ？武藤を殺した真犯人は
それは…
　
ん？
ちょっと待ってくれ
長島だ　ああ
えっ！何だと！
そうか…
　
分かった
どうしたんだ
　
何かあったのか？
朝木時雨が死んだそうだ
早いものですね
時雨が亡くなって
もう二月経ちました
何もかも全てが
夢だったような気がします
秋絵ちゃんは元気ですか？
ええ　時雨が亡くなった時は
声をからして泣いて
それでも一生懸命
私を励ましてくれました
秋絵さんはほんとにいい子です
秋絵さんが朝木家に
いてくれるから
私は安心して
村を離れることが出来ます
村を離れる？
私
　
警察に自首するつもりなんです
えっ
どうしてですか？
犯人は春子さんだったのに
葉月さん
　
もしかしてあなたは…
えっ
全てお見通しなんでしょうね
あの雷祭の日
本当は何が起こったのか
ええ…
武藤さんを殺したのは
時雨ちゃんですね
ええ…
あの日
　
時雨ちゃんは
全てを見ていたんだ
カッとなった春子さんは
武藤さんを殴ったが
殺すほどの打撃にはならなかった
逆に自分が頭を打って
気を失ってしまったんだ
その時
　
時雨ちゃんは考えたんだ
今ここで武藤さんを殺せば
全ては春子さんがやったことに
なるだろうって
ああっ…
　
時雨ちゃん…
うおっ
そして恐らく
はなれから立ち去る時雨ちゃんを
あなたは目撃した
不思議な方だわ
何もかも見てきたように
知っていらっしゃるのね
そのことに気付いたのは
葉月さんが警察で黙秘を使ったと
聞いた時でした
何もしていないあなたが
黙秘をしてまで
かばおうとする人間といえば
やはり娘の時雨ちゃんだろうって
思ったんです
ところが
そのあと
　
トリックを使ったのが
春子さんしかいないと
分かってしまった
となると
　
この事件は時雨ちゃんが
春子さんに押し付けた罪を
春子さんが
葉月さんに転嫁したという
二重構造になっていると
考える他ないんです
仰る通りですわ
でも
一つだけ
分からないことがあります
なぜ時雨ちゃんが
武藤さんを殺したのか
教えてください
朝木冬生が死んだ日
一体
　
何があったのか
ううっ…
あっ
お話しましょう
主人は自殺などしなかった
えっ
私が殺したんです
私が主人の元に嫁いだのは
３年前でした
主人は大変な資産家で
人間国宝にまでなった
陶芸家でした
世間様にも玉のこしと
うらやまれるような
縁だったのです
ところが
　
この家に入ってみると
主人は言葉に尽くせぬほど
気難しい人でした
名作といわれた空蝉以上の
器が作れない
行き詰まっていら立ち
私と時雨は
びくびく怯える日々でした
そんな時
　
時雨の絵が
主人の目に留まったのです
奇妙な光が
主人の目にともりました
常軌を逸した世界に
入り込んでしまったような
顔でした
焼き物を焼いてみろ
時雨にそう命令したのです
んんっ
おおお…
時雨！
お前はいつか
　
わしを超える
わしの空蝉以上のものを
必ず生み出す
しっ…
　
死ね
あっ
　
ああ…
ああっ
　
葉月　あっ
ううっ
うわあっ
なっ
　
うおっ…
私は
冬生ののどを
火かき棒で突いてしまったのです
工房の壁の血痕は
その時
　
苦し紛れに火かき棒を
引き抜いた冬生の
のど元から吹き出した
血の痕なんです
ふーん
いかにも朝木冬生らしい
最期ですね
けっ…
　
警察を呼んでください
まさか
　
自首するつもりですか？
時雨ちゃんを
一人きりにするんですか
これは言い替れば
　
自殺なんですよ
作品に行き詰まった朝木冬生は
錯乱状態に陥っていた
自殺したとしても
怪しむ者はいない
武藤はそう言い出したんです
ふふふっ
ふえっ
空蝉をたたき割り
いかにも風変わりな芸術家らしい
最期を演出したんです
私は
悪魔の声に耳を傾けてしまった
あっ
嫌とは言えないはずですよね
あの子は私を泥沼から
救い出すために
武藤を殺したんです
主人の死後
日記を見つけた秋絵さんは
主人が時雨を殺す決意を
していたことを知りました
そして
　
その上で
父親がしたことを嘆き
時雨の病気を
心から心配してくれたんです
病気？
時雨は幼い頃から
何十万人に１人といわれる
難病にかかっていました
ほとんど外出も許されず
小さな部屋だけが
あの子の世界だったんです
あと半年は生きられない
医者にそう言われたのは
夏になる前でした
１日３回
　
薬を飲まなければ
夏の終わりまでもたないだろうと
言われていました
なのにあの子は…
時雨が亡くなった日に知りました
人を殺めたあの日から
薬を飲むのをやめていたことを
えっ…
ううう…
えへっ
この夏の初め
あの子は私に言いました
これが最後の夏だから
自由に外を歩いてみたい
気の向くまま日差しを浴びて
たった一度だけ
雨にぬれてみたいと
私は好きよ　このお祭り
雨も
命が燃えるような気がするから
金田一さんと私だけの
秘密の思い出ね
たった
１５
年の人生の中で
時雨ちゃんは
何を思っていたのかしら
さあな
時雨ちゃん
　
聞こえるかい？
あんな夏は
もう二度とこないだろうけど
君に会えてよかった…
うーん
　
あれは昼下がりのこと
私と剣持警部は
　
小さな
レストランに立ち寄りました
私たちを迎えたマスターは
何事もなく
料理を運んできました
でも
　
あの時のあの姿を見て
私は確信しました
マスター
あなたは人を殺しましたね？
うまく
ごまかしたつもりでしょうが
ある決定的な証拠を残してます
ほら
　
そこに
金田一少年の事件簿
お客さんが来るわ
邪魔だから
もう帰ってくださる？
客だ？
ふんっ
　
来るもんか
そんな不衛生な物の上で
食い物作る店なんか
いいのよ　別に私が
食べるわけじゃないんだから
それより
お金
　
用意出来た？
ふんっ
１円だってまからないわよ
この前言った金額じゃなかったら
私
　
出るとこに出ても
構わないんだから
ふふんっ
そしたら
　
あなたの未来は破滅ね
５０００
万円よ
　
分かった？
うううう
　
うおっ！
ううっ
ふっ
　
へへへへ
ざまあみろ
人が下手に出りゃあ
つけあがりやがって
ふう
　
これでとりあえず隠せた
夜になったら運び出して
どこかの山の中にでも
埋めちまえばいい
ふんっ
　
お前が悪いんだよ
何が
５０００
万だ
大体
　
何だ
この少女趣味の内装は
いい年をして
古臭いフォークギターやら
レコードやら
今時
　
アメリカンカントリーじゃ
ねえっつうの
こんなんじゃ
はやるわけねえだろうが
だから借金が膨らむんだよ
うわ！ネズミまでいるのか
まったく
なあ
え？
この辺でコーヒーでも飲んで
休憩しようぜ
そうだな
この店でいいか
でもやってんのかな
なんかこの店
　
中暗いけど
やっとるだろ
営業中って札が出とるし
けどさあ
まずい
今入ってこられたら
あ
　
でもあっちの店の方が
奇麗じゃん
そうだな
　
あっちにするか
ああ
　
はあ
　
はあ
あっちの店は定休日か
仕方ないだろ
コーヒー飲めりゃあ
どこでもいいさ
こっちの店
　
いまいちなんだよな
ああ
　
やってるやってる
おお？何かうまそうな匂いが
してるじゃないか
いらっしゃいませ
どうぞお好きな席に
お座りください
ああ
結構感じのいい店じゃん　よっ
あーっとっと
だああああ！
おっと　何やってんだ
　
金田一
わりいね
　
おっさん
すいませんね
　
マスター
脅かしちゃって
い
　
いえ
　
おけががなくて
なりよりです
マスター
　
この店は
あんた１人で？
ええ
　
そうです
人を使う余裕もなくて　ははは
なあ
　
おっさん
何かこの店
　　
生臭くねえか？
ああ？そういやあそうだな
なんつーか
　
血生臭い匂いが
ぷーんと
いや
　
それはあの
実はたった今まで
鳥をさばいておりまして
少々
　
店内が
血生臭くなっております
へえ
　
じゃあ今焼いてるのは
鳥かい？
来るなあー
どれどれ？
ん？
君
　
この肉
な
　
何でしょうか？
まさか
ば
　
ばれたのか？
リブロースだな？
はあ？
牛のリブロースは高い
高いけどうまいんだよな
　
これが
うーん
　
いい匂いだ
うまそう
な
　
何だよ
　
脅かしやがって
そういや
　
海外のミステリーで
冷凍肉を凶器にして
人殺しするってのがあったな
あった
　
あった
確かその凶器を
煮るか何かして
刑事に食わせちゃう話だったな
きひひ
　
そうそう
犯人
　
どんなやつだったっけ
こいつら
分かってて言ってんのか？
お
　
お客様
ご注文は
え？ああ
　
忘れとった
じゃあホットを２つ
当店自慢っていうぐらいだから
うまいんだろうな
なかなかこだわってるじゃないか
この店
どうも
うわあああ
大丈夫か
　
マスター
ああ
　
はい
どうもお騒がせしました
ああ？
さて
　
俺コーヒーって
インスタント以外
入れたことないんだよな
やかんの中に
コーヒーの粉を入れて
茶こしでこすんだっけ？
まあいいか
うわっ
　
一缶ほとんど
空けちまった
見るからに濃すぎる
待てよ
ここで超まずいコーヒーを出せば
やつらびっくりして
逃げ帰るんでは
お待ちどうさまでした
おお
　
いい香りだな　さすが焙煎
ほんとかよ？
ミルク砂糖は要らんね
おかしいよ
　
あんた
んん？
まずいだろ？
とても人が飲めるような
もんじゃないぞ
さあ
　
しっぽ巻いて帰れ
おっさん？
んー
　
うまい！うま過ぎる！
苦味ばしった男の味だ
そうか？めちゃめちゃ苦いぞ
おい
　
あんたの舌
　
死んでるぞ
そんなもん
　
うまそうに飲むな
死ぬぞ
何なんだ
　
こいつら
大体この２人
どういう組み合わせなんだ
親子じゃなさそうだし
教師と生徒…
　
には見えないな
兄弟？まさか
　
友達？うーん
はい
　
捜査一課
　
剣持警部
け
　
警部？
しかも捜査一課つったら
殺人担当じゃん
何？女が１人殺された？
ひいいい
俺じゃありませーん
あ？もう逮捕した？
しかも
　
もう全面自供してる？
何だ脅かすなよ
それはこっちのせりふだ！
今日の俺の仕事は
なくなっちまった
よかったじゃん
俺
　
何か腹減っちゃったな
この店で何か食ってかない？
そうだな
コーヒーもうまかったし
昼飯でも食ってくか
マスター
　
メニュー
そんな
　
まだ帰らないのかよ
こいつら
うーん
よし
　
俺この
鳥のスペシャルソテーとライス
あ
　
お客様
　
それはちょっと…
何で？さっき鳥肉
さばいてたんでしょ
そ
　
それは
夕食に予約が入ってまして
牛肉ソテーかカレーなら
今すぐ出来ますが　はい
んー
　
じゃあ俺
　
カレーライス
俺は牛肉ソテーだ
かしこまりました
ええい
　
カレーはレトルト
牛肉は適当に切って
ここにあるスパイス
全部入れてやれ
うっ
　
ねえ
　
マスター
はいっ
トイレどこですか？
トイレっすか？ええと
ああ
　
あったあった
うわあああ
　
静かに立て
それを倒したりしたら
いやいやいや
ったく
　
人騒がせな
ねえマスター
はい
　
何か？
紙ないんだけど
ええ？ああ今切らしてまして
え
　
どうすんの？
すいません
しゃあねえなあ
何だよ
天井棚に山ほどあんじゃん
もう
　
やだなあ
自分の店のこと忘れちゃ駄目だよ
あ
　
そうですね
あいつ
　
紙がなかったら
どうするつもりだったのかね
こんちはー
うわっまた客？
クリーニング石原です
ユニホームのお洗濯あがりました
ああ
　
どうもどうも
ユニホームがあったんですか
そうでしょうな
そんな上等なワイシャツで
料理してるから
気になってたんですよ
ええ　私もこいつが届くのを
待ってたんです…
　
よっ！
ああ
　
すっきり爽快
あ？
どったの？
は
　
はははは
はははははははは
変わった趣味ですな
お
　
ほほほほほほほ
そうかしら？
意外と似合うでしょ
おほほほほほほほ
た
　
耐えろ
　
耐えるんだ
今はこの屈辱に耐えるしかない
おほ
　
おほ
　
おーほほほほほほ
お待ちどうさまでした
へえ
　
カレー大盛りだ
肉もすごく多いじゃないか
ん…
　
うまい！
スパイスの配合はまさに絶品
マスター
　
あんた達人ですな
いや
　
あははははは
ほんとうまいや
なあ
　
おっさん
ついでにデザートも食ってこうか
ああ
　
そうするか
マスター
　
食後に
このスイカと花びらクッキー
もちろん
　
コーヒーもね
かっ
　
かしこまりました
とほほ
　
また注文かよ
あー
　
食った食った
ほんとにうまかった
これならデザートも
期待出来そうだ
ありがとうございます
ふーん
何だよ
　
おい
ふーんって何だよ
すごい数のレコードだなあ
アメリカンフォーク？
懐かしいなあ
昔はよく聞いたもんだ
へえー
ねえ
　
マスター！
ここに店長が
あなたのリクエストに
お答えしますってあるじゃん
俺のリクエスト
　
弾いてよ
ギターのリクエストだあ？
あの女
どうしてこう余計なことばかり
待て
　
金田一！
この店の勘定は俺が出すんだから
俺が先だろ！
ええっ？俺が先だよ！
いいや
　
俺だ！
楽器の演奏なんて出来ねえんだよ
何とか
　
この場をごまかさないと
あっ
　
いたたたたっ…
どうしました？マスター
割れた皿で指を…
これじゃギターは
弾けませんねえ
　
残念ですが
マスターすぐに手当てしなくちゃ
救急箱は？
あっああ
　
いいですっ
家捜しはしないでください
ほらこうしたけがには
セロハンテープが一番です
はあ？
ねっ！
そうかあ？
そんなの聞いたことないぞお
そうすっか
テレビでやってましたよ？
チュウ？
うわああっああああっ…
ああああっ！
うわああっああああっ…
ああああっ！
何じゃこりゃ
何でイスの中にこんなものが
入ってるんだ？
いやあ
　
そこは野菜の
ストックケースでして
はははっはははっ…
あはははははっ
何だあ
　
あんまし
でっかい声出すから
何かすごいもんが
出てくるのかと思ったあ
ほんとだよ
例えば死体とかなあ
ふふっ
　
はははっ
ご冗談を
　
あはっはっ
それじゃあスイカを失礼
ご注文のスイカと
花びらクッキーでございます
のほっ
　
でっけえっ！
うん
　
この花びらクッキー
結構いけるぞ！
長い戦いだった…
もうお金は要らないから
早く帰ってくれえ…
そのスイカもよく冷えてて
うまそうだなあ
ああ…
さてと腹も膨らんだし
そろそろ帰るか
マスター
　
お勘定！
はいはいっ
全部で
２０００
円でございます
２０００
円？おいおいっ
いくら何でも
そりゃあサービスのしすぎだぞ
いいえ
　
いいんです本当に
帰っていただけるんなら
ただでも
　
はい
は？
いえいえいえ
ただの独り言です
いやあ
実にラッキーだった今日は
また寄らせてもらうよ
毎度！
ちょっと待った
　
おっさん
ああ？
忘れもんがあるぜ
忘れもん？
携帯も財布も警察手帳もあるぞ
何を忘れたっていうんだ？
まだ残ってるよ
捜査一課としての仕事がね
ええっ？
何？
どうやら謎は全て解けたよ
あんたはこの店の
マスターじゃないね
おいっ
　
金田一
あんたは本物のマスターと
何か争いを起こし
その直後に俺たちが
ここに来たんだ
それで仕方なく
あんたはその場しのぎで
マスターになりすました
何だと？
そして
　
その被害者はこの店の
どこかに隠されているんだ
おそらく本物のマスターは
そんなフリフリのエプロンを
つけていてもおかしくない女の人
つまりマスターじゃなくて
ママさんってわけさ
身長は小柄で
１５５
センチぐらいかなあ
そして
　
ちょっと
だらしないところがあるよなあ
何でそんなことまで
わっ…
ふ
　
ぼろを出したな
簡単な理屈さ
例えばあんたがつまずいた
そこの踏み台
あんたぐらい背が高ければ
踏み台なんて必要ない
この踏み台は
この店のママさんが使ってたんだ
踏み台だけじゃない
あんたがこの店の
マスターじゃない証拠は
たくさんある
自分の店なのに
トイレットペーパーの置き場所を
知らなかったし
ギターもほんとは弾けなくて
それをごまかすために
わざと指をけがしてみせたり
それに
　
ナイフとフォークだ
あんたテーブルに並べる時
ナイフを左
　
フォークを右に
置いたよなあ
そ…
　
それが
ナイフとフォークの
置き方が逆だぜ
おおっ
　
そういうや
俺も変だと思った
だろ？俺も逆に持って
美雪に言われたことあるけど
一応プロである
レストランのマスターが
こんな基本的なミスをすると
思うかい？
おいっ
　
あんた！
うわあああ
　
待った待った
私が偽者の
マスターだというんなら
本物のママさんとやらは
どこにいるっていうんですか？
ううん
あんたが教えてくれたよ
ああ…
ヒントはあんたが出した
料理にあったんだ
あんたはここに入ってたスイカを
切り分けて
　
デザートにしたけど
俺はそれを見てあれっと思った
メニューには
冷たいスイカとあるのに
冷やしてないのを出すなんて
変じゃないか
　
けど出された
スイカはちゃんと冷えていた
そういや
　
そうだなあ
考えられる理由はただ１つ
あのスイカはさっきまで
冷蔵庫に入ってたんだ
スイカだけじゃない
このベンチシートに入っている
野菜も全部ね
うーん
　
確かに冷たいな
俺がうっかりベンチシートを
倒しそうになった時
あんたは青ざめていたけど
それはこの中に冷蔵庫の中身が
入っていたからだ
つまり
　
あんたは冷蔵庫の
中のものを全て取り出して
ベンチシートに移し
かわりに冷蔵庫の中には…
ああっ！
というわけさ
ちわーすっ！宅配便です
ああああああっ…
このおっ！
ひええやあっ！
やあああああっ…
おお
　
お見事
これでも黒帯だからなあ
おっさん
　
まだ生きてる！
何？
救急車だ！
おおっ
　
ああもしもし
こちら警視庁
　
捜査一課の…
ところで
　
お前いつから
あのマスターが怪しいって
思ったんだ？
踏み台につまずいた辺りだけどね
おお
まあ
　
確信に変わったのは
あのカレンダーを
見た時からかなあ
カレンダー？
ああ
　
この店を見回した時
このカレンダーを見た瞬間
おかしいと思ったんだ
なあ
　
おっさん
これ見て
　
何か気が付かない？
ううん
　
何かと言われても
今月のカレンダーだよなあ
祭日に花びらのマークが
入ってるだろ？
うん
１５
日は敬老の日で
２３
日は秋分の日だ
ところが９月
１０
日なんて
祭日でも何でもない日に
ほらっ
　
どういうわけか
花びらマークがあるだろ？
ほんとだ
　
何だこれは？
多分
　
ママさんは男に殴られた時
クッキーの型抜きをしてたんだ
型抜き？
よく
　
おふくろも
作ってくれたんだけどさ
あれってさ
　
小麦粉やら
砂糖やらを混ぜて練ったものに
型を当てて
　
くり抜くんだよ
んで
　
それをオーブンで焼く
けど
　
まな板の上で直にやると
くっついちゃったりして
うまくいかねえんだ
そのため敷き紙っていうのを
使うんだけど
　
ここのママさん
その敷き紙にこのカレンダーを
使ってたんだな
ああっ！
お前が言ってた
だらしないとこあるってのは
それか！
自分で
食べるわけじゃないからってね
そうやってクッキーを
作ってるところを男に襲われ
殴られたママさんは
この調理台の上に倒れ込んだ
ところがそのことが
ヒントになったのさ
ここのクッキーは
桜の花びらの形の
クッキーだったんだけど
それを抜いた穴にママさんの
血が流れ込み
下のカレンダーを
赤く染め上げたんだ
結果
　１０
という数字の上に
赤い桜が奇麗に咲いた
さっき
　
おっさんのを１つ
取っといたんだけど
これ重ねてみるよ
ほらね
　
形も大きさもぴったりだ
何てこった
こんな目立つ形で
血痕が残っていたとは
これがヒントになって
事件を知ることになったんだ
んで
　
犯人がこのカレンダーを
掛けなければいけなかった理由は
うーん
　
被害者の血か
おっ
　
おい
　
勝手に…
いいんだよ
こいつが何か見当はついてるんだ
ママさんは
あのさえないカレンダーを外し
今日届くはずだったこいつを
掛けるつもりだったのさ
なるほど
だからカレンダーを
敷き紙に使ったのか
あっ
　
そういや凶器は一体何を
ああ
　
はああ…
凶器ね…
　
えーと…
ちょっと
　
言いにくいんだなあ
ううっううっ
　
まさか…
まさか
ああっ
　
あの野郎！
もう２～３発
ぶん投げとけばよかったあ
はーい
　
お二人さん
事件解決したんだって？
一ちゃん
　
お手柄じゃん
おっさんが気前よく
おごってくれたおかげさ
大学の助教授だそうだが
学長の娘と縁談があって
ママさんが邪魔になったんだとよ
それで思いあまって？
はあ
　
よくある話
エリートのくせに
コーヒーの入れ方も
知らねえんだもんなあ
え？うまかったぞ
　
コーヒー
おっさん？
そういえばさ
コーヒーがおいしいって
評判の店があるんだけど
寄ってかない？
どうするよ
　
おっさん
いやあ
　
今日は…
遠慮しときます！
じゃあ
　
そういうことで！
ちょっと待ってよ
どこ行くのよ
　
ねえってば！
もう
　
ねえっ！
何よもう
　
ふんだっ！
キャンプに来た俺たちは
人けのない森で
怪しげな研究所に迷い込んだ
そこで出会った
奇妙な医学生グループと謎の老人
彼らが探す
　
あるものとは
そして地下室のおりで発見した
異常な爪痕
プレートに印された
ケルベロスって
　
まさか…
金田一少年の事件簿﻿いやあ
　
絶好の
アウトドア日和だなあ
爽やかな風
　
小鳥のさえずり
そして犬の声　あ
な
　
何だ？こいつ
あ
　
まさか　こら
俺の足
　
電柱じゃねえっつうの
ったくよー
デカプリオ
　
ここにいたんだ
ああ？
デカプリオって　何だよそいつ
ポアロと散歩してたら
ついてきちゃって
今日から家族の一員だよ
冗談じゃないよ
ポアロ一匹だけでも
大変だっつうのに
何でこんなやつまで
一ちゃーん
電車の時間ないわよ
あら
　
おっきいワンちゃんね
二三が汚ねえ犬
拾ってきやがってさー
可愛い犬じゃない
でしょう？
ほら
　
美雪おねえちゃんも
こう言ってんだから家で飼おうよ
駄目だったら
　
駄目
飼うったら
　
飼うー
あー
　
もう
俺がキャンプから帰るまでに
この小便野郎
　
捨てとけよ
ったく
一ちゃーん
何だよ
電信柱野郎
ほんとかよ千家
　
楽しみだな
この前行った時は天気もよくてさ
近くにテニスコートもあるし
最高だぜ
テニスも出来るんだ
　
すてきね
コテージ持ってるなんて
八尾んち
　
金持ちだな
いや
　
コテージっていっても
田舎の安い物件だから
大したもんじゃないよ
でも
　
風呂くらい付いてんだろ
ああ
　
おやじの趣味で
露天風呂を作ったんだ
あの風呂は眺めもいいし
一度は入ってみる価値あるぜ
金田一
露天風呂かあ
それは
　
それは
一ちゃん
変な想像してない？
え
　
いや別に
うそ　何よ
　
その顔
もうやだ
　
最低
最低っす
何だよ
　
これ
おい　ここに泊まんのかよ
まいったなあ
　
こんなはずじゃ
こりゃ
　
ひどいなあ
困ったわね
あーあー
　
美雪の入浴シーン
のぞくどころじゃないじゃんか
ったくよお
あー
一ちゃん
あ
　
はあ
　
痛てえ
天罰ね
ひでえなあ
　
壁中傷だらけだよ
獣の爪痕じゃないのか
動物が勝手に
出入りしちゃってるの？
冗談じゃないよ
熊だったらどうすんだよ
どっか他に泊まれる所
　
探さなきゃ
そうだな
これじゃ無理だ
早くしないと夜になるぜ
こんな所で野宿なんて嫌よ
よし　とにかく
　
どっか探そうぜ
おいおい
すっかり夜になっちゃったけど
家一軒見当たらねえじゃんかよ
どういうことだよ
ここら辺は元々ダムで沈むはずの
村だったからなあ
ええ　ほんとかよ
ん？
どうしたの？一ちゃん
あ
　
いや
　
気のせいか
おい
　
見ろよ
向こうに明かりが
ほんとか？
ほら
　
あの林の向こう
うわっ
　
助かった
行ってみようぜ
何なの
　
ここ
そういえば近くに
何かの研究所があったって
おやじが言ってたなあ
今は使われてないようだけど
どうして明かりが？
とにかく中へ入ってみようぜ
はっ
何じゃ
　
貴様らは
お
　
俺たち
　
あの
泊まる所壊されちゃって
道に迷って
道に迷っただと
そうなんすよ
ここの明かりが見えたんで
一晩泊めてもらおうと思って
うそをつけ！
ふん
　
お前たちも
　
あれを
探しに来たのは分かってるんだ
え　あれって
帰れ！誰にもあれは渡さん
あ
　
いや
　
だから
　
俺たちは
うるさい！
帰れと言ったら帰るんだ
やめろ
何をやってるんだ
　
じいさん
ちぇっ
この一帯はうちの土地なんだ
とっとと出てってくれ
何ですか
　
あの人は
気にしないでくれ
ところで君たちこそ
　
何なんだ
あ
　
ほんの通りすがりの迷子でして
他に家も見当たらないし
　
出来れば
一晩
　
お泊め願えないかと
お願いします
野宿も出来ないので
一晩だけお願いします
ふっ
　
しょうがないな
あー
　
食った
　
食ったー
助かったよなあ
野宿じゃ飯抜きだったものなあ
ごちそうさまでした
部屋の割り振りはこれでいいよな
見てくれ
　
萬屋
八尾君に千家君
金田一君と七瀬さんかあ
お世話になります
この建物も萬屋くんちの物でね
彼
　
大病院のぼんぼんなの
へえ
　
お金持ちなんだ
だからこんなに
　
おいしいもの
たくさんあったんだあ
あ
　
皆さんも
キャンプか何かですか
お前らみたいな
馬鹿な高校生と一緒にすんなよ
俺たちは医大生だぜ
僕らは山上医科大学の
遺伝子研究サークルの仲間で
研究資料を集めに来たんだ
遺伝子研究？
何か
　
難しそうだなあ
ここは昔
　
バイオテクノロジーや
遺伝子工学の研究所だったんだ
動物実験とかしてたのよ
あるいは人体実験とかもな
外に悲鳴が漏れても
大丈夫なように
こんな山奥に建てたんだよ
皆
　
悪いわよ
　
脅かしちゃ
さあ
　
お茶にしましょう
うおう
　
美人発見
松たか子似の美人
二ノ宮です
皆とは別の大学なんだけど
参道さんに頼んで
仲間に入れてもらったの
さ
　
どうぞ
二ノ宮さんですか
　
よろしく
俺
　
金田一です
一ちゃん
金田一君ね
　
よろしく
金田一はこれでも結構
いろんな事件を解決した
名探偵なんですよ
へえ
　
すごいのね
はい
　
すごいんです
それじゃあ
今度何かあったらよろしくね
そいつは
　
面白えや
じゃあ
　
この中に
１人だけ仲間外れがいるけど
誰だか分かるかな？
また渡辺さん
得意のクイズですか
この中にいる仲間外れですか？
どうかな
　
名探偵さん
そんなことでいいんすか？
まるで分かったような口ぶりだな
だったら答えを言ってみろ
俺が一番格下ってことでしょう
萬屋さん
　
その部屋割りの紙を
見せてください
ここにいる
１０
人の名前に
入っている数字を見ると
答えは簡単です
萬屋さんの萬
千家の千　百田さんの百
つまり
　
俺
　
金田一の一が
数字として一番格下で
名前に数字の入っていない
渡辺さん
あなたがこの中で
仲間外れというわけです
自称クイズ王が高校生に
速攻
　
負けかよ
この子
　
すごいわね
あれも探してもらおうか
やめろ
　
参道
え
　
何を探すんですか？
いや
　
君たちには関係ない
いいじゃない
このまま見つからないより
探してもらえば
確かに
　
こいつに
協力してもらうって手は
ありですね
そうだな
な
　
何ですか？
皆そんな顔しちゃって
あ
　
探し物ならお手伝いしますよ
一宿一飯の恩があるんですから
そうか　案内しよう
ちょっと来てくれ
この研究所は閉鎖される直前に
ある実験に成功した
そんなうわさが流れていてね
遺伝子操作による
動物の巨大化実験さ
どこかにデータがあるはずなんだ
巨大化実験？
そうさ
世界初の大発明のデータがね
インターネットに
こんな情報が出回っていたの
医学の大発明
つまりこの研究所のどこかに
さあ
　
早く探してみてよ
名探偵さん
うーん
　
すっごい数の本だぜ
分かるの？一ちゃん
ドイツ語も読めないやつに
探せるわけねえよ
クイズとはわけが違うんだぜ
ふっ
　
う
何やってんだ
あっ
本棚が
あんな所に扉が
隠し扉か　どうして分かったんだ
だって
　
そっちの本棚は
本がばらばらなのに
この本棚は
妙に奇麗にそろってるだろう
やっぱりな
　
ほら
棚を動かしやすいように
中身は空っぽだよ
すごいわね
ね
　
この中にもしかして
入ってみようぜ
資料が見つかるかもな
何だ
　
このかびと獣のにおいは
骨だ
やだ
　
あっ
どうも全部犬の骨みたいだな
資料室にあった本からすると
狂犬病の研究でも
やってたんじゃないかな
こいつは随分でかいおりだな
ほんとだ
熊でも入れそうなおりだな
これ
　
何て読むんだ？
シェ
　
シェ…
ケルベロスだ
ケルベロスって何すか？
地獄の番犬
地獄？
ああ　地獄の番犬ケルベロス
地獄から逃げ出すやつを
かみ殺すという
伝説の魔犬の名前だ
よしてよ
　
百田さん
それは空想上のお話でしょう
見ろ　あんな所にも爪痕が
普通の犬じゃ
　
あんな高い所に
傷をつけるのは不可能よ
まさか
　
巨大化実験
このおりだけ
骨が残ってないってことは
ケルベロスが
ま
　
まさか
そいつが
自分でおりを破ったっていうのか
馬鹿ね
ただの
　
野良犬の遠吠えでしょ
こ
　
怖いよ
　
俺
一ちゃん
とにかく今日は部屋へ戻ろう
ケルベロスのことは
明日
　
夜が明けてからだ
ビール
　
ビールっと
何が地獄の番犬よ
　
ったく
変なこと言うから
眠れないじゃない
きゃあああ
一ちゃん
　
大変なの
食料庫が…
は
　
これ
　
どうしたんだよ
七瀬さんと朝食の準備に来たら
冷蔵庫が誰かに荒らされて
ひっどいな
これは？
肉ばっかり食いちぎられてるわね
この爪痕と黒い獣の毛
ケルベロスのおりにあったものと
同じだ
それじゃあ
　
まさか
どうしたんすか？
朝飯
　
まだかな
大変なの
　
食料が
ほんとだ
　
ひでえなあ
めちゃめちゃだ
萬屋さんたちは
もう起きてるのか？
え
　
萬屋さんならさっき洗面所で
ひげ剃ってたけど？
急いで皆を集めるんだ
皆を？
ひょっとしたらこの研究所には
うわああ
　
うおお
何だ？
あっちから聞こえたわ
ぐお
あんたは昨日の
ああ
ち
　
違う　違うんじゃ
うわあ
　
うわあ
参道さん
わしじゃない
わしは何もやっとらん
ち
　
違う
本当じゃ
　
わしはやっとらん
じゃあ何で
　
こんな物持って
ここにいるんだ
わしは昔
　
この研究所で
働いていたんじゃ
ほら
　
昔の社員証じゃ
ん
　
社員証？
ここで研究員をしてたのか
動物巨大化実験は
わしの発案だった
なのに
　
わしを追い出して
ここの連中が
勝手に研究を始めよって
やはり
　
ここであの実験を
あんたも
あのうわさを聞きつけてここに？
じゃあ
　
誰が参道さんを？
この爪痕と黒い毛も
あのおりのあったのと同じだ
ケルベロスじゃ　巨大化された犬
ケルベロスが生きていたんじゃ
壁の爪痕から察するに
大きさはライオン並み
とにかく警察に連絡しなくちゃ
でもどうやって
こんな山奥じゃ携帯の電波も
千家　逃げろ
え？うわ
　
うわああ
くそお
　
こら放せ
ち
　
逃げやがった
千家君
　
血が
大丈夫
　
大したことない
おい
　
大変だぜ
どうしたんですか
見ろ　野犬の群れが
ここを取り囲んでいる
やばいよ
このままじゃ
　
また入ってくる
あんなたくさんの野犬に
襲われたら
　
一巻の終わりだ
窓とか塞がないと
手分けして出入り口を塞ごう
ドアの前に机や椅子を積み上げろ
よし　１階の窓は全部塞ぐんだ
道具はどうする？
確か
　
物置にあるはずだ
よし
　
急ごう
早く
何でもいいから持ってきてくれ
せーの
こっちの窓は塞いだぞ
これで大丈夫だろう
八尾　千家の様子はどうだ
あ
　
今
　
七瀬さんが見てる
傷は大したことないみたいだ
そうか　よかった
それはどうかな
大したことかもしれないぜ
何が言いたいんだよ
あいつを襲った犬
こぼれたバケツの水に
異様におびえていただろう
あれは恐水症状といって
狂犬病の症状の一つなんだ
狂犬病？
千家をかんだ犬が
狂犬病だっていうのか
まさか
　
そんな
恐水症状といい
あの凶暴さといい
恐らく間違いないだろう
確か
　
狂犬病は
かまれた傷口から感染すると
早ければ１週間で発病
そうじゃ
狂犬病は恐ろしい病気なんじゃ
初めはだるさや発熱
やがて神経障害を起こして
水や光に反応して
けいれんを起こしたり
錯乱状態に陥る
発病してしまうと極めて短期間に
死亡する危険が高い
千家が死ぬ？
た
　
助かる方法はないんですか？
早いとこ
ワクチンを打つしかないな
ねえ
　
思い切って
外に出てみましょうよ
町の病院に行けば
無理じゃな　野犬の群れの中で
１匹だけが狂犬病とは思えない
きっと
　
みんな
くそお
　
何とかなんねえのかよ
あっ
おお
　
どっから入ってきやがった
くっそお
　
こんな犬ころのせいで
嫌　やめて　私の犬なの
殺さないで　お願い
うるさい
　
こいつが
狂犬病じゃない保証が
どこにあるんだ
やめるんじゃ
この犬は狂犬病じゃない
大丈夫だ
恐水症状がない
ユージ
また意味なく命を奪うつもりか
何が言いたいんだよ
　
じいさん
萬屋とお前たちのうわさも
知らないわけじゃないぞ
貴様
　
何を知ってるっていうんだ
ふふふふ
うわさ
そういえば
萬屋さんの姿が見当たらないけど
まさか
萬屋さん
まただ
参道さんの時と同じ
爪痕と黒い獣の毛
ケルベロスだよ
やつが殺したんだ
俺たち
　
とんでもないことに
なってるかもしれないぞ
何だよ
　
金田一
見ろよ　このシャワー室の窓は
塞ぎ終わっている
ええ？
萬屋さんを殺したのが
ケルベロスだとしたら
　
そいつは
この建物の中に
いるということになる
何だって
それじゃ
　
まさか
封鎖したつもりが
こ
　
この中に
　
ケルベロスが
俺たちは
　
今
巨大な魔犬
ケルベロスのおりの中にいるんだ
犠牲者がまた１人
まるで狩りを楽しむかのように
ひそかに忍び寄る
　
魔犬ケルベロス
やつはこの研究所の中に
どこで俺たちを見てるんだ
一刻を争わないと
千家の命が危ない
急いで脱出口を探す俺の前に
ついに魔犬ケルベロスが姿を現す
そしてやつに操られた
野犬の群れが俺たちを
金田一少年の事件簿
朽ち果てた研究所で起きた
殺人事件
現場で発見された獣の毛と爪痕
実験で巨大化した犬の仕業なのか
封鎖した建物の中
研究所の所有者の息子
　
萬屋透が
第２の犠牲者となった
よ
　
萬屋さん
俺たちは今
　
巨大な魔犬
ケルベロスのおりの中にいるんだ
どうしたの　何かあったの？
萬屋さん
またケルベロスだよ
俺たちは
　
やつを中へ入れたまま
この建物を封鎖しちまったんだ
そんな
俺たちが
窓や出入り口を塞いだ時
そんな気配は
どこにもなかったはずだが
もしかしたら
　
２階がやつの
ねぐらなのかもしれない
念のため
１階の各部屋をチェックして
階段を封鎖しましょう
この階に
やつを侵入させないように
しなければ
そーれ
いくぞ
　
そーら
美雪
　
千家はどうしてる
傷口を消毒して
　
今は眠ってるわ
気の毒ね
自分が狂犬病だとも知らずにか
どういう意味ですか
　
それ
あいつをかんだ犬は
狂犬病だったんだ
早くワクチンを打たないと
やつの命は
え？
絶対
　
千家には言うなよ
このこと知ったら
　
あいつ
うん
そうだわ
ねえ
　
ここの資料室には
狂犬病の研究書もあったわよね
だったら
どっかにワクチンがあるかも
可能性はあるな
お願いします
皆さんでワクチンを
探してあげてください
ああ…
　
あっ
七瀬
　
ずっと見ててくれたの
千家君
　
一応
　
けが人だから
だけど
　
こんなかすり傷ぐらいで
やだ
　
気にしないで
あ
　
何か飲む？
じゃあ
冷たいものがあったら欲しいな
分かった
私
　
取ってくる
どうしたの？
七瀬
まさか
　
俺
絶対
　
千家には言うなよ
なあに？千家君
い
　
いや…
千家君
ああ
ないわね
　
ワクチン
この部屋にある薬品は
これで全部でしょ
確かに　じゃ
　
もうひと頑張り
他の部屋を探してみようか
そうね
あれ？
何となく気になってたんだけど
この釘
　
妙だと思わないか？
ええ
　
何が
ここの物にしちゃあ
　
真新しい
他の金属類は
ほとんどさびついてるのに
あ？
笛
　
何でこんな物が
鳴らないな
壊れてんじゃねえか？
ユージ
ん？
どうして急に走り出すの
あ
　
ああっ
　
ははは
くすぐったいよ
やめなさい
　
ユージ
ははは
　
あ
　
あ
　
あ
何だよ
　
お前
ごめんなさい
おしっこしやがったよ
　
こいつ
くくく
八尾
　
何がおかしい
本当にごめんなさいね
トイレのしつけは
ちゃんとしてたつもりなのに
いいっすよ
　
二ノ宮さん
気にしなくて
お前が言うなっつーの
駄目よ
　
ユージ
こいつの服なら
トイレと間違えても
仕方ないっすから
八尾　誰の服がトイレだって？
ん？そうか
　
トイレ
トイレ
もしかすると
　
ケルベロスは
うう
　
よいしょ
十和田さん
うう
どこ行くつもりです？
上は危険ですよ
この目で見たいんだ
わしの発案した動物巨大化実験は
実際に成功した証しを
だからって
かみ殺されるかもしれない所へ
どうして
それとも
　
ケルベロスなんて
本当はいないって
確信でもあるんですか
何
　
どういう意味だ
わしはケルベロスを見たいんだ
少々の危険ぐらい
薬品を調合して
　
犬の嫌がる
臭いを放つ液体を作った
いざという時のために
ガスバーナーも用意してあるぜ
そいつはいいや
実は俺も
上の階を調べてみたかったんだ
何
　
お前が
やっぱり
　
どこにも
ケルベロスの
おしっこやうんちを
した様子がない
あれだけ食料庫が
荒らされてるのに
　
変ですよ
ううん
巨大な犬のふんどころか
爪痕や毛も見つからなかった
ということは
　
やっぱり
ケルベロスなんて
　
本当は
いや
　
そんなはずはない
もし
　
ケルベロスがいないなら
殺されたあの２人のことは
どうなる
やつが
まさか
参道さんに萬屋先輩
殺されたのは
　
どっちも
あの時のメンバーですよ
殺したのは犬だろう
考え過ぎだ
　
百田
でも
　
ケルベロスが
誰かに操られてるとしたら
去年
　
僕らが見たあの女は
　
犬の…
馬鹿野郎
　
死んだ女に何が出来る
呪いですよ
あの女の復讐のために
ケルベロスが
だとしたら
　
次に殺されるのは
僕か渡辺先輩
オカルト趣味もいい加減にしろ
医者になる人間が
呪いなんて信じてどうする
二度とその話はするな　いいな
十和田さん
　
教えてくれないか
さっきの渡辺さんと百田さんの話
あんたが言ってた
やつらのうわさってのに
何か関係があるんだろ？
こんな所に
　
いつまでも
こうしてるわけにはいかないんだ
千家は時間の問題なんだ
十和田さん
　
話してくれよ
何か
　
何か
　
解決策が
見つかるかもしれないんだ
やつらは
　
やつらは
　
悪魔だ
えっ
　
悪魔
殺された医学生
　
萬屋と参道
そしてさっきの渡辺と百田は
この研究所の持ち主である
萬屋病院でアルバイトをしていた
そして
　
普通なら
簡単に治るはずの入院患者が
彼らが担当したことで
死んだんだ
まさか
　
渡辺さんたちが　美雪
うそ　いくら何でもそんなこと
いや
　
僕は信じる
ええ？
五十嵐さん
あいつらは
僕ら後輩も薬の実験台に使ってね
僕もひどい目に遭ったよ
やつらなら
　
患者を殺しても
実験動物が
１匹死んだぐらいにしか
考えてないはずだから
だけど
　
そんなニュースは
死んだのは
萬屋病院の患者なんだろ
じゃ
　
まさか
　
もみ消し
医者になる人が
　
そんな
あんたの想像通り
　
もし
ケルベロスが実在しないとすれば
恐らく
　
動物巨大化実験の資料を
独り占めするために
仲間を殺すってことも
十分にあり得る
そういう連中だよ　あいつらは
はっ
　
ああ…
やっと
　
やっと会えたね
こんな所に閉じ込められて
寂しかったでしょ
二ノ宮さん
あっ
何してるんです
私
　
あの
教えてください
あなたは一体
　
何の目的でここへ
ごめんなさい　私
あっ
まさか
　
あ
　
ユージ
ユージ
二ノ宮さん
待って
　
二ノ宮さん
千家
金田一
　
俺は狂犬病なのか
そうなんだな　だから
七瀬の様子もおかしかったんだ
千家
　
あ
　
あのな
　
それは
俺は…
　
俺は
　
ここに
閉じ込められたまま死ぬんだ
そうだろ
隠したって分かってるんだぞ
心配するな
１週間以内にワクチンを打てば
助かるんだ
そうよ　だから皆で探して
あったのか？
うっ
だろうな　こんな山奥じゃ
携帯電話の電波も届かない
狂犬病の野犬が
うろついてるんじゃ
外にも出られない
諦めるな
俺が何とかしてみせるから
うるさい
お前なんかに何が出来る
ワクチンなんて
　
どこにあるんだよ
俺は
　
俺は
ボロボロになって死んじまうんだ
千家
千家！
待てよ
　
千家
千家
　
心配するな
俺がきっと
　
何とかするから
金田一　悪いけど
しばらく１人にしてくれないか
千家
ごめん　一ちゃん
私がちゃんと
千家君を見ててあげなかったから
美雪のせいじゃないさ
何とか
　
早く
病院へ連れていってやらないと
でも
　
外には相変わらず
狂犬病の野犬の群れ
私たち
　
どうなるのかしら
この建物の中にだって
巨大犬ケルベロスが
なあ
　
美雪
ライオンほどもある
でかい犬なんて
ほんとにいると思うか
ええ？
遺伝子研究サークルの
医大生たちも
　
元研究員の
あの十和田のじいさんも
皆
　
ケルベロスの実験資料目当てで
来たんだとしたら
心のどっかで
実在することを願っている
その願望のせいで
　
皆の中で
どんどん妄想が膨らんでるだけ
なんじゃないんだろうか
ケルベロスは妄想？
ああ　そして
ケルベロスのうわさに乗じて
殺人を犯してるやつがいる
何か
　
そんな気がするんだ
一ちゃん　じゃ
　
誰が？
ん？何だ
　
ユージ
変ね　急にそわそわし始めたわ
ひいっ
一ちゃん
ケルベロス
まさか
　
本当にケルベロスか
でも
　
どうして
階段も窓も
みんな封鎖したはずなのに
行ったわ
待って
　
一ちゃん
まだ近くにいるかもしれないわ
だけど
　
あれが
本当のケルベロスかどうか
この目で確かめないと
ここを動くな
　
美雪
やめて！
どうした　何かあったのか
子牛ほどもある大きな犬が
この廊下に
何だって　そいつはケルベロスだ
ケルベロスに違いない
で
　
どっちに逃げたんだ
それが
　
急いで出てみたんだが
影も形も
確かに
　
このガラスブロックに
そいつの大きな影が
あのライトは
あれ？これは
大変だ
階段のバリケードが壊されてるぞ
何？
ああ
　
バリケードが
何てこった
あんなに頑丈に作ったのに
一ちゃん
　
また爪痕と動物の毛が
やはり
　
いるんだ
　
ケルベロスは
このビルのどこかに
殺される　やつは
　
やっぱり
あの事件で僕たちを狙って
いい加減にしろ
　
百田
そんなこと
　
あるわけねえだろ
じゃ
　
誰が
バリケードをぶち壊したんだ
やつに僕たちは殺される
わめくな
あ
　
あああ…
怖い
　
こんな
ケルベロスがいる中でなんて
私
　
とても眠れないわ
そうだ
今夜は交代で見張りをしながら
皆
　
１つの部屋で寝よう
僕はごめんだね
ケルベロスの存在が
確かだとしても
今までの殺人が
そいつの
仕業だとは限らないからね
どういうこと？
この中には
ケルベロスなんかよりもはるかに
怖い人間もいるってことですよ
五十嵐さん
賛成だな
あんたら
　
動物巨大化の
実験資料を狙ってここに来た
そして
　
競争相手が
１人でも減るのを喜んでおる
やっぱり１人の方が
よっぽど安心で
　
寝心地がいいぜ
へへへ
十和田さんまで
こうなっちゃ
お互い疑心暗鬼ってやつだ
あんたの提案もボツってこったな
ああ
金田一
　
俺たちも部屋に戻ろうよ
ああ
　
そうだな
え
　
あ
　
あれ
どこ落としちゃったのかな
何を？
笛だよ
笛？あの壊れた笛か？
ああ
　
もしかしたら
　
あのワン公に
おしっこされた時に落としちゃ…
な
　
もう
　
やめろって
ユージ
　
あなたも早く
二ノ宮さんのお部屋に戻らないと
危ないわよ
まただわ
　
一ちゃん
さっきと同じよ
この子
　
急にそわそわしちゃって
まさか
　
さっきと同じなんて
また巨大な犬が現れるってか
どうしたのよ
　
ユージ
脅かすなよ
　
こいつ
ああ！
美雪
　
早く逃げろ
早く！
ああ！
助けてくれ
百田さん
　
助けてくれ
　
百田さん
開けてくれ
　
百田さん
やだ！開けたら殺される！
何言ってんだ
　
百田さん
野犬たちは
ケルベロスのしもべなんだ
やつらがほんとに狙ってるのは
この僕なんだ
百田さん
　
百田さん！
一ちゃん
くそ！
一ちゃん
　
怖い
きゃあ！
ええい！
きゃあ！
ちっきしょう
一ちゃん
ふう
　
助かった
金田一のおかげだよ
それはどうかな　ほんとに
あいつらがこんな板切れを恐れて
逃げ出すだろうか
だって
それしか考えられないじゃない
まあ
　
俺だって必死だったけどさ
しかし
じゃあ
　
百田さんが言ったみたいに
ケルベロスが操ってるとでも
おお？
いや
　
やつらは
もっと違う力に操られて
それで逃げ出したみたいな
そんな気がするんだ
ユージ
　
どうしたの
　
あっ
ユージ
　
大丈夫だった
ありがとう
　
七瀬さん
そうか
　
もしかして
野犬たちを操っていたのは
こんなことしたって
また野犬たちは
板を突き破ってくるんじゃないか
ああ
　
やらないよりましだろ
犬の力ってすごいのね
そんな大きな釘で打ってるのに
壊しちゃうなんて
え
あ？何でそんな簡単に
釘が抜けるんだよ
板はこんなに丈夫なのに
まるで抜けやすいように
細工されてるみたいな
まさか　じゃあ
誰かがわざと
　
野犬を中に
入れようとしたってのかよ
うん？
食料庫の方で
物が倒れたような音が
一ちゃん
　
また野犬が
待って
はっ
きゃあ！
ひいい
これは
どうしたんだ
今の悲鳴は何だ
まさか
　
また犠牲者が
ああ
ああっ
渡辺さん
とうとう
　
渡辺先輩まで
今度は僕だ
　
僕の番だ
百田さん
僕も殺されるんだ
百田さん！
リンゴ
ミカン
　
キウイ
　
バナナ
メロンに潰されたトマト
一体
　
これは何の意味だ
まさか
　
渡辺さんが
この中に１人だけ
仲間外れがいるけど
誰だか分かるかな
俺が一番格下ってことでしょ
ええっ
やっぱり
　
ケルベロスのせいなのね
分からない
　
二ノ宮さん
今
　
そう決め付けるのは
まだ早いんじゃないかな
どういうことだよ
　
金田一
この床の上の血痕をたどると
恐らく渡辺さんはあそこで
何者かに襲われた直後
よろめきながら
　
このフルーツの
入った箱に倒れ掛かった
そして
死ぬ間際の残った力を振り絞って
このメロンをつかんだんだ
何でそんなことを
恐らくこれは
渡辺さんが俺たちに残した
ダイイングメッセージに違いない
ダイイングメッセージ？
このフルーツが
こんなもんに
　
どんなメッセージが
隠されてるっていうんだ
このメッセージが
事件の真相を示しているのか
一ちゃん
ほんとかよ
　
金田一
俺が絶対に解き明かしてみせる
じっちゃんの名にかけて
この研究所のどこかで
俺たちを狙う
　
魔犬ケルベロス
それが以前
　
ここで行われていた
動物巨大化実験に
全て関係しているとすれば
ばらまかれたフルーツ
メロンに潰されたトマト
渡辺さんが最後に残した
奇妙なダイイングメッセージ
そしてそれが示す恐ろしい秘密を
俺は知ってしまった
謎は全て解けた
金田一少年の事件簿﻿森の奥深くの朽ちかけた研究所
そこへ調査に来ていた
三城医大の
遺伝子研究サークルの
メンバーたちが
次々と犠牲に
第３の犠牲者
渡辺さんが残していた
ダイイングメッセージ
それが指し示すものとは一体
俺が絶対に解き明かしてみせる
じっちゃんの名にかけて
床に散らばった幾つものフルーツ
そして
　
メロンにつぶされたトマト
きっとこれは渡辺さんが出した
最後のクイズだ　そして
このクイズの答えが示すもの
それは
この中に１人だけ
仲間はずれがいるけど
誰だか分かるかな？
俺が一番格下ってことでしょ？
ユージ
　
どうしたの？
まだ犠牲者を増やすつもりか
こんな状態じゃ
調査も続けられやしない
そんな場合じゃないでしょう？
動物巨大化実験の資料なんて
もうどうだっていいじゃな…
そう簡単に諦める気には
なれないね
五十嵐君
とにかく今は皆で一緒に
事件を解決するのが先だよ
皆で一緒に？あいにくだけど
僕は自分しか信じてないんでね
そういえばさっきから
十和田さんの姿が
見当たらないみたいだけど
まさか十和田さんが
この事件の？
そう判断するのはまだ早い
ただ…
問いただしてみる価値はあるな
あら？
どうしました？
ユージったら急に鳴きやんで
そういえば遠吠えも
やんだみたい
ごほっごほっごほっ
千家
お前は休んでていいぞ
いいんだ
　
八尾
だってお前は
　
その…
知ってるよ　狂犬病のことぐらい
ええ？
１週間以内に
ワクチンを打たなきゃ
発病して
死ぬかもしれないってこともね
千家君
そりゃあ
怖くないって言ったら
うそになるよ　でも
今は犯人を捕まえる方が
先だと思う
そうだろ？金田一
千家
ユージ
まるで僕たちの動きを
見透かしてるみたいだな
ここにはいないみたいだ
他の場所を探してみるか
脅かしやがって
それらしいとこには
どこにもいない
どこへ消えちまったんだ？
ひょっとして十和田さんまで…
それにしたって
　
この建物の
どこかにいるはずだろ
とにか見つかるまで捜そう
この部屋じゃあ
隠れようがないしな
うわ
あっちゃあ
　
失敗失敗
ユージもいつの間にか
落ち着いたみたい
大人しくしててね
ん？
ここで何か探してたみたいだな
ユージ
　
やめなさい！
ん？
こら！
おっと
隠し階段ね
寒ーい
とてつもないものが
冷凍保存されてたりするのかもな
あっ
　
馬鹿
静かにするんだ
どこだ？どこにある？
んっ！
こんな部屋があったんだ
何の用だ？
渡辺さんも犠牲になったんです
またケルベロスが現れたのか
それだけですか？
それだけとは
いや　他にも何か
知ってるんじゃないかと思って
現に
こんな部屋が存在することだって
隠してたわけだし
聞かれなかったから
教えなかっただけだ
じゃあ
　
教えてください
いつからここにいたんです？
もしや
　
わしを疑っとるのか
疑われる理由でもあるんですか？
馬鹿馬鹿しい
うーん
　
何か怪しいなあ
こんな所で何をしてたのかしら
五十嵐さん
　
何を探してるんです？
決まってるだろ　あのじいさん
どこか
見落としているかもしれない
動物巨大化実験の資料が
そんなに大事なんですか？
資料だけじゃなかったんですね
どういうことだよ
教えてくれませんか
十和田さんや
　
五十嵐さんたちを
ここまで引き付けたものって
一体何なんです？
実験の成果
　
そのものだよ
それって一体…
君たちも見ただろ？
インターネットの怪文書
あれには続きがあってさ
実験に成功した遺伝子
　
つまり
動物巨大化能力を持つＤＮＡが
まだこの研究所に残されてると
記されていたのさ
ＤＮＡが？
そいつを手に入れさえすれば
巨大化した家畜のクローンを
大量生産することだって可能だ
一生かかっても
使い切れないほどの大金を
手に出来るってわけさ
そのＤＮＡは誰にも渡さない
僕こそが
そのＤＮＡを手に入れるのに
ふさわしい人物なんだ
やめて！
ＤＮＡは誰にも見つけさせないわ
動物は
　
実験の材料じゃないのよ
動物は
　
富や名声のための
道具なんかじゃないのよ
二ノ宮さん
そうか　二ノ宮って名前
どこかで聞いたことがあると
思っていたけど
やっと思い出したよ
この研究所の所長も確か
私の父よ
小さい頃の私は
よくこの研究所に遊びに来てたわ
あの頃の私には
ここの犬たちが
唯一の友達だったから
その中でもユーリっていう犬が
大の仲良しだった
でもやがてユーリは
実験材料にされて…
ユーリ！
ユージはユーリの血を引く子なの
研究所が閉鎖されてからも
ユーリのことは
ずっと気になっていたわ
だからこの合宿の話を聞いて
ついてきたの
ユーリの骨を
お墓に埋めてあげるつもりで
それと
　
合宿を
失敗に終わらせるために
そうだったのか
だから１人２人と
先輩たちを襲っていった
私じゃないわ
だったら誰の仕業なのか
教えてほしいね
俺たちも上に戻ろう
一ちゃん
心配するな　いろんなことが
見えてきたおかげで
なんとか真相を解き明かせそうだ
本当？
うう
　
ううっ！
千家君
千家
まさか狂犬病が？
ううっ
　
ううう…
こんなに早く
　
こんなふうに
なっちゃうなんてね
千家
だけど
　
狂犬病って
感染してから発病まで
早くて１週間ぐらいかかるって
話だったけど
一般的にはそうだけどね
個人差があるから
まだそうと
決まったわけじゃないわ！
ねえ
　
千家君
気をしっかり持たなきゃ
だよな　これがもし
発病だとしても
今すぐ死ぬわけじゃない
ひと月
　
いや
　
半年くらいは…
せ…
　
千家
　
元気出せって
病は気からっていうし
あと半年の命だったら
何がしたいと思う？
え？
千家君は？
俺は
　
好きな人と一緒にいたいな
やだもう
しんみりするのはよそうよ
約束しただろう？
俺が必ずなんとかする
お前を信じてるよ
少し疲れたかな
金田一
　
早いとこ事件を解決して
千家を助けてやろうぜ
どこ行くの？
金田一
ちょっとトイレ
　
何か地下室で
冷えちゃったみたいでさ
１人で平気なのか？
ああ
　
それもそうだな
一緒に来てくれるか？美雪
な
　
何で私に言うのよ
冗談だよ
　
冗談　すぐ戻るよ
俺の考えが間違っていなければ
当分野犬たちは
動き出さないはずだ
そして
　
この事件の犯人は…
だけど証拠が…
今までに起こったことを
もう一度整理してみるんだ
確か
　
今朝
大変なの！食糧庫が
美雪が俺を呼びにきて
ひどいなこれは
肉ばっかり食いちぎられてるわね
この爪痕と
黒い獣の毛
萬屋さんたちは
もう起きてるのか？
え？萬屋さんならさっき
洗面所でひげそってたけど？
そのすぐ後に十和田さんの悲鳴
うわあ
　
うわあ！
最初の犠牲者
　
参道さんを発見
わしじゃない
わしは何もやっとらん　違う！
あの後
　
さらに追い打ちを
かけるように
野犬の群れに囲まれて
千家が
　
窓を割って
入ってきた犬に
腕をかまれた
窓とか塞がないと
それから
　
全ての出入り口を
塞ぎ終わったのが
もう昼近く
あっ
うわあ！
どっから入ってきやがった
狂犬病のことで
ちょっとしたもめ事に
なっていると
そういえば萬屋さんの姿が
見当たらないけど
まさか
萬屋さんを捜しに行くと
窓を全て塞ぎ終わった
このシャワー室の中で
第２の犠牲者に
あれは
　
手分けして
あちこち塞ぎ回ってた時だから
皆の行動はバラバラだった
あの後
　
階段も
バリケードで封鎖した
だが
　
夜になると
それが壊されていて…
きゃー！
たちまち野犬騒ぎに
そして
　
そのさなかに
渡辺さんが３番目の犠牲者に
ん？
ゆうべ作った部屋割り表か
一ちゃん！
あ？どうした？美雪
帰りが遅いから
心配すんなって
千家は？
眠ってるわ
熱もあんまりないみたい
そうか
どこ行くの？
あ
　
ちょっと　萬屋さんの部屋にな
待ってよ
　
一ちゃん
ひげそり
　
ヘアムース
ヘアミストに洗顔料
いいの？萬屋さんの荷物を
勝手にのぞいたりして
ん？これは？
コンタクトレンズの
ケースじゃないの？
こら！何してる
五十嵐さん
おーう
　
びびっとる
　
びびっとる
五十嵐さん
一つ聞きたいんですけど
ん？何を？
萬屋さんって
コンタクトレンズしてましたか？
ああ
　
してたよ
あの人
　
相当
　
目悪かったもん
コンタクトなしじゃあ
怖くて歩けないって言ってたな
へえ
　
あの人がね
あれ？
コンタクトが入ったまま
そうか　そういうことか
分かったぜ
犯人を追いつめるために
どうしても解かなきゃ
ならなかった最後の謎が
一ちゃん
　
それじゃ
ああ
謎は全て解けた！
うあああ！
金田一！
どうしたんだ
百田さんの様子がおかしいんです
百田さん！ここを開けるんだ
うるさい！僕は一刻も早く
こんな所から出たいんだ！
百田さん！
外は狂犬病の野犬に
囲まれてるのよ？
落ち着いて
　
百田先輩
ううっ…
　
何だよ
　
皆
そんな目で僕を見るなよ
言っとくけど
　
僕は正常だ！
やめて！
うわあ
ああ…
うわああ！
千家！
その犬は
　
水を怖がるはずだ
早く
　
これで塞ごう
とにかく手当てしないと
大丈夫だって…
皆に聞いてもらいたいことが
あるんだ
何なんだよ
　
金田一
この事件の真相さ
こちらに来てもらえませんか
この建物で起きた事件の全ては
やはりケルベロスをかたる
ある人物が仕組んだ
計画犯罪だったんだ
な…
何だって？
ん…
　
な…
　
あ…
し
　
しかし
　
それが本当なら
その犯人とやらは
何でまた
　
ケルベロスなんて
架空の動物をでっち上げる
必要があったんだ？
それはつまり
　
自分の代わりに
殺人の罪をかぶってくれる
存在が必要だったからですよ
犯人は
　
この廃墟を利用した
密閉状況を作り上げることで
複数のターゲットをまとめて
仕留める殺人計画を企てた
しかしこの場合
確実にターゲットを
仕留められる反面
容疑者が限られて
自分が疑われる確立も
高くなってしまう
そこで犯人は
　
架空の犯人を
でっち上げることを
思い付いたんです
犯人は巨大な
ケルベロスのおりを用意し
また
　
現場に
巨大な爪痕や毛を残すことで
俺たちに架空の魔犬
ケルベロスの存在をアピールし
全ての殺人をこの怪物の仕業と
思い込ませようとした
こうして犯人は
　
この密閉空間で
疑いをかけられることもなく
実に
　
スムーズに
犯行を重ねることが
出来たってわけですよ
それじゃあ
渡辺先輩たちを殺した犯人は
ええ
魔犬をかたった殺人者
ケルベロスはこの中にいる！
ケルベロスなんか
本当は存在しない
そいつは
　
真犯人の悲しい過去が
生み出した幻だったんだ
殺害計画に使われた道具は何か
渡辺さんが残した
ダイイングメッセージ
そして
アリバイのために仕組まれた
心理トリックの謎を解き明かす
ケルベロス
　
お前の最後の復讐は
俺が止めてみせる
金田一少年の事件簿
森の奥深く閉鎖された研究所
全てを巨大な魔犬の
仕業であるように見せかけ
３人もの命を奪った
真犯人
　
ケルベロスは
この中にいる
ケルベロスがこの中に
渡辺さんが残した
ダイイングメッセージが
この事件の真犯人を
俺に教えてくれたんだ
それがケルベロスを示すと
渡辺さんは
何種類もあったフルーツの中から
一番大きなメロンで
トマトを潰していた
あれがどうして？
それは
僕たちの部屋割り表じゃないか
僕たちの持つ数字の大小と
フルーツの大きさが
対応していたのか
そう
　
そして
仲間外れのトマトを潰している
メロンの示す人物
それは
千家
ええ？
お前が渡辺さんたちを殺した犯人
ケルベロスだ
ちょっと待ってよ
　
金田一君
あなたたちは
偶然ここに迷いこんだんじゃ
そうだぜ
　
うちのコテージに
泊まるはずだったんだぜ
でも
　
あそこはとても
泊まれる状態じゃなかった
千家はそれを理由に
他の場所を探すことになるよう
仕向けたんだ
そして暗闇の中で
ライトを持つことによって
ごく自然にその場の主導権を握り
萬屋さんたちが合宿していた
この建物へ俺たちを誘導したんだ
更に何人もの殺害計画を
実行しやすくするため
野犬の群れを使って
ここを密閉状態に仕立て上げた
そんなことが可能なのか
出来るんですよ
俺たちには聞こえない
音を使ってね
聞こえない
　
音？
八尾
　
覚えてるか
俺が廊下で拾った金色の笛
え？ああ
　
あの壊れてたやつ？
あの笛は
壊れてなんかいなかったんだ
ちゃんと音を出していたんだよ
ええ？
犬笛か
犬笛って？
人と犬の感じる音域には
かなりずれがあって
犬にしか聞こえない音
というのがあるの
犬笛はその音を出す特殊な笛よ
その通り
　
そもそも
ここを取り囲んでいる犬は
野犬なんかじゃない
俺たちを
この建物に閉じ込めるために
犬笛を使って自由自在に動くよう
確かな訓練を受けた犬だったんだ
だけど狂犬病は？
そうだ
あの犬は
水を怖がってたじゃないか
あの犬は
最初から水を怖がるように
訓練されていたんだ
ただの野犬の群れじゃ
強行突破される恐れがある
だけど
　
狂犬病となれば
話は別だろ
確かに
そこで千家は
自ら狂犬病の恐怖をあおることで
皆がここから
一歩も出られないようにした
俺と美雪が見た巨大な犬の影も
あっ…
犬笛で呼び寄せた普通の犬を
少し離れたライトの前に
立たせることで
やたらに大きく見せただけの
幻影さ
それじゃ
　
巨大な犬の影を見る前に
ユージがいきなり
そわそわしだしたのも
そう
　
犬笛の音を聞いたからさ
だけど金田一
　
千家は
犬笛なんか吹いてなかったぜ
吹いてたのさ
あの朝
千家がかじっていたパンの中に
犬笛を隠しながらね
何だって
千家は俺たちの目を盗んで
犬笛を吹くために
あらかじめパンの中に仕込んで
持ち歩いていたのさ
だが
　
犬にかまれた拍子に
パンと一緒に
犬笛まで落としてしまった
そのあと
　
千家には
美雪がつきっきりで
拾いにいくチャンスがなかった
その時
　
俺たちは落ちていた犬笛を
たまたま見ている
あの笛が犬を操るのに
使われた証拠に
千家がかまれてから
笛があの場所から
持ち去られるまでの間
犬の騒ぎは
何一つ起こってなかっただろ
ちょっと待ってくれよ
　
金田一
萬屋さんが襲われたのは
野犬騒ぎで皆が窓とか
塞ぎにいっている間だろ？
あのとき俺には七瀬が
つきっきりで看病してくれていた
俺にどうやって
萬屋さんをやれるって言うんだよ
そのトリックも既に解けてるよ
千家
そのトリックも既に解けてるよ
千家
お前はあるトリックを使って
不可能を可能にしたんだ
萬屋さんが見つかったのは
例の野犬騒ぎで
皆が建物中の窓を
塞ぎ終わった後だった
手に握られたかなづち
散らばった大釘
塞がれた窓
あの状況から俺たちは
彼が窓を塞いでいる時に
襲われたと考えた
でも本当は
朝の野犬騒ぎが起こる前に
既に萬屋さんは
殺されていたんだ
何だって
でもシャワー室の窓は
釘でちゃんと塞がれて
それも
千家の仕掛けたトリックさ
あの日
　
千家は
朝早く萬屋さんの部屋に行き
彼を襲った
そしてシャワー室に運び込むと
窓に板を打ち付けた
更に黒い毛や
爪あとらしきものを残して
犬に襲われたように見せかけた
そして水道管を壊して
遺体に水が掛かるようにしたんだ
どうして水なんて
そうすることによって
死亡推定時刻をごまかしたのさ
狙い通り俺たちは
萬屋さんは
あそこで窓を塞いでる時に
襲われたと
信じ込んでしまったんだ
でも
　
もし僕たちが建物中の窓を
塞いだりしてなかったら
シャワー室の窓だけ
塞がれていたら
かえって不自然だわ
いや
俺たちが窓を塞ぎ始めることが
千家には分かっていたんだよ
な
　
何だって？
千家は狂犬病の犬に
腕をかまれるという
危機的状況を作り出すことで
あらかじめ用意された
未来に向けて
俺たちを誘導したんだ
あらかじめ用意された未来
千家が犬にかまれることには
俺らをここに閉じ込める以外に
あと２つの意味があったんだ
１つは
　
けが人となって
付添い人というアリバイ証人を
手に入れるということ
そしてもう１つは
俺たちが
窓を塞ぐように仕向けることだ
思い出してほしい　あの時
真っ先に
窓を塞ごうと言い出したのは
窓とか塞がないと
千家本人だった
ああっ
そういえば確かに
こうして俺たちは
知らず知らずのうちに
千家の誘導に乗って
萬屋さんの遺体がある
シャワー室と同じ状態を
作らされてしまった
千家に
　
完全なアリバイを
与えてしまったんだ
そう考えると
物置にあった新品の釘にも
納得がいく
新品の釘？
長い間
置き去りにされていたはずの釘が
どういうわけか
　
さび一つない
ピカピカの新品だった
あれは
　
千家が俺たちに
窓を塞がせるために
用意したものだろう
そんな
あれ？うーん
それは変だぞ
　
金田一
だってあの朝
あの人
　
やっぱりいたじゃないか
そういえば洗面所で
ひげを剃ってたって
そうそう　そうだよ
だとしたら
　
やっぱり萬屋先輩が
早朝襲われたっていうのは
無理があるよ
じゃあ聞くけど
　
この中であの朝
萬屋さんにあった人
　
いるかな
あっ
僕は別に
僕も見てないけど
私も知らないわ
変だな
　
確かに誰かが
言ってたと思ったんだけど
私も聞いたわ
そう
確かに言ってたよ
千家本人がね
ああっ
それじゃ
これはちょっとした
心理トリックだよ
え
　
萬屋さんなら
さっき洗面所でひげ剃ってたけど
あの一言で
　
誰も萬屋さんを
見ていなかったにもかかわらず
俺たちは
　
あたかも萬屋さんが
あの朝のごたごた中で
行動を共にしていたかのような
錯覚に陥ってしまったんだ
俺たちはお前のさりげない
心理トリックに翻弄されてたんだ
違うか
　
千家
俺はあの３人とは面識もなかった
この人たちが
　
こんな所で
合宿することなんて
知るはずがないじゃないか
そ
　
そうだ
僕たちは
　
確かにここに来ることを
誰にも口外していなかった
ここへ来るきっかけになった
インターネットの
怪文書の差出人って
一体誰なんだろうな
そんなの分かるわけ…
あっ
まさか
　
あれも
そいつが流したっていうのか
そう考えるのが自然だろうな
何ということじゃ
俺じゃない　俺はやってない
金田一
　
お前の推理は
確かによく出来てるけど
証拠もないのに
俺を犯人と決めつけるなんて
証拠はあるんだよ
　
千家
それが証拠？
萬屋さんは
コンタクトなしでは歩けないほど
強度の近視だった
なのにこのケースには
コンタクトレンズが入ったままだ
どういうことだ？
不自然なんだよ
あの時萬屋さんは
窓を塞いでいたんだよな
とすると
　
コンタクトなしで
釘を打ってたことになる
ああ
そうか
　
そんなことしたら
間違えて指を打っちまうかも
あと少し
せめて今日一日だけでいいから
ばれたくなかったのにな
金田一
　
お前
　
頭よすぎるよ
千家
　
どうして
　
お前が　こんな…
金田一
　
俺さ
好きな子が出来たんだ
利緒っていって
明るくて
　
けなげな子でさ
でも
　
去年
　
利緒は死んだ
殺されたんだよ
渡辺たちに
ええっ
俺が水沢利緒と出会ったのは
去年の春だった
ああ？
ああ
あんなとこに犬が寝てる
やだ
　
車に跳ねられたのかな
死んでんの？
気持ち悪い
ね
　
行こ
そうね
ねえ
　
ちょっと
この子運ぶの手伝ってくれない
えっ
　
ああ
それが俺と利緒の出会いだった
この犬
　
君の？
ううん
でも
　
大したけがじゃないみたい
あなたが手伝ってくれたおかげよ
ありがとう
え
　
いやあ
利緒は俺と同い年ながらも
犬のトレーナーの見習いとして
人から預かった犬を
しつける仕事をしていたんだ
高校とか行く気なかったの？
一応
　
受かってたんだけど
犬のトレーナーになる夢
捨て切れなくてさ
こうしてこの世界に
飛び込んじゃったの
高校出てからでも遅くないのに
それじゃ
　
遅いのよ
あははは
　
せっかちだな
でも
　
そこまで自分の夢を持って
追い掛けられるなんて
　
すごいや
さてと
千家君
　
見てて
ああっ
お座り
　
待て
まだまだ
ようし
　
いい子だ
日を重ねる度
　
俺の中で
利緒が大きくなっていった
悪いわね
　
千家君
犬たちの面倒見るの
手伝ってもらった上に
送ってもらっちゃって
千家君？
どうしたの
顔赤いよ
　
熱でも…
お
　
俺…
えっ
駄目
ごめん
　
俺
　
その
利緒が好きなんだ
本気なんだ
　
俺
駄目だよ
　
千家君
ごめん
利緒の気持ちも確かめないで
違うの
そんなんじゃなくて
千家君
　
私ね
あと少ししか生きられないの
えっ
そういう病気なのよ
医者の話では
　
あと半年の命だって
もう
　
そんな顔しないでよ
私
　
これでも残りの人生
楽しんでるのよ
夢だった
犬のトレーナーにもなれたし
千家君にも会えた
大切なのは
残りの時間をどう生きるかよ
１００
年だろうと半年だろうとね
利緒
　
君の残された時間を
半分
　
分けてくれ
俺は君を一生分愛してみせるから
ありがとう
　
千家君
私
　
生きるわ
　
精一杯
ところが２週間後
えっ
　
入院？
うん
って言っても
検査入院だから
戻ってきたら電話するわ　ふふっ
うん
そんな…
うそだろ
昨日までは笑ってたじゃないか
あと半年
半年あるはずじゃなかったのかよ
利緒
利緒！
利緒の死に
納得がいかなかった俺は
看護婦に詰め寄ったりして
必死に調べた
そして
信じがたい事実を知ったんだ
彼女を担当していたのは
ちゃんとした医者じゃなく
まだ医師免許も持っていない
大学生だったんだ
萬屋
　
渡辺
　
参道
そして
　
そこにいる
　
百田の４人だ
ち
　
違う
あ
　
あれは僕のせいじゃない
ちょっとまずいわ
血圧も心拍もどんどん下がってる
渡辺
　
どうすりゃいい
お
　
俺に振るなよ
もめてる場合じゃないですよ
誰か先生を呼んできます
待てよ
　
百田
そんなことしたら
これだから学生はって
馬鹿にされるぞ
じゃあ
　
どうすんのよ
俺たちで何とかしよう
百田
　
手伝え
は
　
はい
僕は助けを呼ぼうって言ったんだ
俺は真相を確かめるために
４人のいる大学へ行った
今回のバイトは散々だったよな
誰が悪いのよ
俺
　
知ーらないっと
何か
　
後味悪いですよね
まあな
　
でもあの患者
どうせ
　
あと半年しか
生きられなかったんだろう
不幸中の幸いってやつ
少しは気が楽よね
どうせ
　
あと半年
あいつら
　
そう言ったんだ
人
　
一人の命の重さに
半年も
５０
年も違いがあるかよ
利緒の半年はあいつらの一生より
ずっと
　
ずっと
大切な時間だったんだ
許せない
あいつらだけは
絶対に
千家
　
お前
さあ
　
お前たち
ケルベロス
　
最後の命令だ
あの男を八つ裂きにしろ！
ああ
　
あ…
ああ…
　
よせ
　
やめろ
千家
　
やめるんだ
金田一
　
止めるな
ああ…
　
許してくれ
こいつだけは許せない
今日は俺の誕生日なんだ
利緒と一緒に迎えるはずだった
たった一度の
これが
俺自身に誕生日プレゼントだ
んっ
　
あ…
あ…
　
うわああ！
どうした！
お前たち
　
あいつをかみ殺すんだ
あいつはお前らのご主人を
殺したんだぞ
やれ
　
殺すんだ！
もうよせ
　
千家
そいつらは
　
もう
お前にこんなことを
してほしくないんだよ
そんなお前の姿を見て
天国の利緒さんが喜ぶと
思ってるのかよ
千家君
　
私
　
千家君の誕生日に
すっごいすてきなプレゼント
考えてるんだ　期待してて
何？
ねえ
　
約束して
笑顔で受け取ってね
笑顔で？
そう
　
うれし泣きもなしだからね
約束して
ああ
　
約束するよ
　
泣かない
絶対に
　
泣くもんか…
はあっ…
　
うっ
　
あああ…
こうして
魔犬ケルベロスの恐怖は
朝の訪れとともに
終わりを告げた
利緒さんを死なせた事件に
関わった
百田さんと萬屋総合病院は
警察の取り調べを受け
処分が下った
遅過ぎたかもしれないが
これで
千家も少しは報われるだろう
ねえ
　
どうしても駄目
駄目！ポアロもいるのに
２匹も飼えないだろ
ふううん…
　
冷たい男
おお
　
金田一
ああ
ほう
　
結構
　
可愛いじゃん
うん
　
だろう？
じゃ
　
連れてくよ
ああ
　
頼むわ
さあ
　
行くぞ
　
はいはい
ええっ
　
ちょ
　
ちょっと
ちょっと何なのよ
　
この人
ごめん
　
間違えた
おうし
　
いい子だ
やめてよ
　
触らないで
あれ
金田一
　
話
　
してないのか？
何を？
何かさ
迷い犬を預かってくれる人
探してるって言うからさ
ふん　捨てるんじゃなくて
こういうことなら
　
いいだろう
うちは近いし
いつでも遊びにおいで
何だ
　
そういうこと
デカプリオ
　
よかったね
バイバーイ
そんじゃなあ
さあ
　
帰るぞ
うん
　
あっ
どうした？
何でもない
さあ
　
行くぞ
ええ
　
ええ
ご立派でございますよねえ
得意な楽器は
美少年必須アイテムの
バイオリンだったり
名門音大生のエリートの前で
モーツァルトを
完璧に弾いてみたり
揚げ句
　
誰かのお株を奪うような
名推理をするとか
その名も明智少年だあ？
何か
　
俺と扱いが
違い過ぎるんじゃないすか？
金田一少年の事件簿﻿あーあー
何よ　そのあくびは
だって　眠いんだもんよ
もう　せっかく手に入れた
チケットなのに
へーへー
とっても人気のある
社会人クラシック楽団だから
なかなか手に入らないのよ
人気あるったって
たかが素人の日曜コンサートだろ
せっかくの日曜日
寝てりゃよかった
もっとクラシックわかる人
誘えばよかった
そのとおり　豚に真珠
金田一にクラシック
剣持警部！
俺は豚かって
警部もコンサートに？
こう見えても　俺は
クラシックファンでね
特に　この楽団は
毎年　見に来てんだよ
ケッ！
どうせ　タダ券貰ったんだろ
サンフィッシュ楽団はな
素人なんかじゃないんだよ
メンバーは　今でこそ
日曜音楽家だが
全員が名門　東京音芸大を卒業したトップエリート達で結成された
半世紀以上たつ
伝統ある楽団なんだ
よく覚えとけ！
はい
チラシに書いてあるとおりね
何が　「クラシック談議に
花を咲かせましょう　美雪さん」だ
コーヒーぐらい
自分で買いに行けっちゅうの
ったく　あーあー！
あーあーあー！
うっ　う…
おあー！あー
うっ　セーフ
押すなって　ったく
あっ？
ふーん　俺だって
芸術を理解できるさ　うん
きっと長い髪の美しい乙女が
弾いてるんだよな
あっ　明智さん！
金田一君　フッ
ここは　君には縁もゆかりもない
ところだと思いましたが
まあね　ただ　ちょっと
美少女の捜しものをねと　ん？
ありゃあ　いない
何をしに来たかと思ったら
さあ　間もなく演奏が始まりますよ
ん？
お待たせ
ありがとう　はじめちゃん
遅いぞ
おっさんの
こぼしときゃ　よかったよ
ああ？
独り言　あっ！
あれは誰？
さあ　誰かしら
おっさんは知ってるよな
クラシックファンだし
毎年来てんだもんな　どうよ？
うーん　あれは確か…
桐島レオナっていう
ピアニストですよ
そうそう　桐島さんだ
えっ　なんで　あんな写真が
飾ってあるのさ？
それは…
私から話しましょう
明智さん　お知り合いなんですか？
ええ　知り合いでした
桐島レオナは
才能豊かなピアニストだった
私が会ったのは　今から
１０年以上前の　ある秋の日でした
その事件は　１つの交通事故から
始まったのです
谷村君が左腕骨折？
ああ　全治１ヵ月だそうだ
教授は「代役を立てる」って
言ってた
ちょっと　よりによって
こんな時に
谷村の奴　ホントに運がないよな
そうね　頑張ってたのに
昨日　お見舞いに行ったら
彼　泣いてたわ
運も才能のうちさ
谷村は諦めるしかないな
それより　薔薇祭まで
１週間しかないのよ
ヘタな代役　立てるよりは
いっそヴァイオリンなしのほうが
木戸教授が　秘蔵っ子を
連れてくるってさ
詳しくは知らないよ
薔薇祭というのは　東京音芸大の
伝統ある音楽祭のことです
プロの音楽家達も
駆けつけるのですが
特に　その年のトップクラスの
学生で構成される楽団の演奏会は
毎年　一番の注目の的だったんです
教授！
みんな
レッスンは　はかどってるかね
ええ　もちろんです
そうか
谷村君の代役が
見つかったので　紹介しよう
大学内でも
ピカイチのヴァイオリニストの
谷村君の代わりなんて
いるんですか？
ああ！
秀央高校２年　明智健悟です
どうぞ　よろしく
高校生
この子が代役？
本気ですか？
教授　ふざけないでください！
まあまあ　彼に代役が
務まるかどうかは
君達の耳で確かめてみるといい
モーツァルトの
ヴァイオリン協奏曲第５番だ
ちょっと　これを弾いてみてくれ
はい　初めてですが　何とか
あー　やだやだ　あんたの昔話って
どうして　いつも　そう
自慢に満ち溢れてるわけ？
はじめちゃん！
私は　ただ
事実を話しているだけですよ
いやな奴
そんな才能に
溢れてらっしゃるのなら
ヴァイオリニストの道を
歩まれたほうが
よかったんじゃないですか？
あの…　ほかのメンバーと
うまくいったんですか？
大学生の中では
やりにくかったんじゃ？
音楽を知る者は
心で響きあうんです
年も何も関係ありませんよ
あー　そうですか！
ただ　一緒に演奏してみて
わかったのですが
一見　５人仲良く
演奏しているようで
実は　お互いに妙に張り合ってて
音に　まるで調和がなかったんです
その理由は　ヴィオラの城さんが
教えてくれました
えっ　ニューヨーク国立音楽院に
特別留学？
ああ
毎年　トップクラスの
成績優秀者の中から
たった１人だけ選ばれるんだ
あそこへの留学は
まさに世界への夢の切符だ
あそこを出たら
世界中の楽団から誘いが来る
なるほど　今年は城さん達
５人の中から選ばれるわけですね
もう選ばれてんだよ
えっ　誰がニューヨークへ？
桐島レオナ
へえ　あの人が
見てごらんなさいよ
あれは…
桐島さんの隣にいるのは？
椎名教授　有名なピアニストで
この学内では
一番　発言力があるんだよ
ピアノよか　女性が好きな
情熱家でいらっしゃる
やめなさいよ
フン
桐島があんな手を使わなきゃ
俺達だって…
桐島レオナ以外の４人全員が
思ってました
自分がニューヨークへ
行くべきだと
それが　あの不協和音の
原因だったのです
あら　これは？
桐島レオナさん！
あなた宛てに
花束が届いていましたよ
えっ　わあー　素敵な赤いバラ
ウフフ　気の早い誰かからの
お祝いかしら
もう　心はニューヨークってか
まだ　正式に
決まったわけでもないのに
聞こえるぜ
キレイじゃない
そこの花瓶に生けとけば
そうね
あっ　痛い！
どうした？
トゲが小指に　うっ
これ　見ろよ
あっ！どくろのカード
誰よ！誰がやったの？
私の留学を　妬んでやったんでしょ
誰？誰なのよ！
このことを機に　人間関係は
どんどん
ギクシャクしていきました
しかし　それはまだ　事件の
ほんの序幕にすぎなかったのです
いよいよ薔薇祭は明日だ
今日は　本番のつもりで演奏を
ちょっと待って！
どうした桐島君？
何よ　私の上だけ
電球が割れてるじゃない
ああ　ホントだな
誰がやったか知らないけど
こんなこと　やってる暇があったら
練習しなさいよ
あー！
桐島さん　大丈夫ですか？
桐島さん！
あっ
のこぎりの跡がある
いいかげんにしてよ！みんな
あんた達がやったんでしょ
こういうの
負け犬の遠吠えっていうのよ！
俺達が負け犬？フン
誰かさんに媚びて
しっぽ振ってるような奴に
言われたくないね
何ですって！
やめろよ！
仲間割れしてる場合か？
薔薇祭は明日なんだぞ
送ったものには
目を通していただけましたか？
そう　その印の
入っているところです
では　本番では
打ち合わせどおりにお願いします
チェッ！
こっちは毎日　足を棒にして
聞き込みに
回ってるっていうのに　フン
学生さんは　お祭り騒ぎか
結構な　ご身分だ
あっ　何だ？
ナゾの天才美少年高校生
ヴァイオリニスト
覆面でも被ってんのかよ
さすが　音芸大のトップクラスの
演奏となると　すごい人気ですね
ああ　今年は特に
面白いふれ込みにしてあるからね
あの　ものすごい
キャッチコピーですか？
ハハハ…
ここは問題なしと
それから…
大丈夫かね？桐島君
こんなものがないと　歩けんほど
ひどいケガなのか？
ええ　でも大丈夫です
ペダルを踏むのは右足ですから
演奏には何の支障もありません
もっとも　当てが外れて
悔しがってる人が
近くにいるかもしれませんけど
教授　誰だか
お当てになってみては
いかがですか
おや　緊張してるのかい？
ええ　少し
おやおや　めずらしいな
君を４歳から教えてるが
今まで一度だって
あがったことなど　なかったのに
緊張…
そんな
僕だって　人並みの神経ぐらい
持ち合わせてますよ
これは緊張なのか？
事件の予感？
予感みたいに
確かなものではありません
ですが　事件が起きる
確信に近いようなものは
感じていました
どこがナゾだよ
普通の高校生じゃねえかよ
シー！
確かに　１人１人のテクニックは
すばらしかった
天性のひらめきを感じさせる
完璧な旋律　しかし
メロディーの中には　まがまがしい不協和音が忍び込んでいたのです
おい
何だよ　停電か？
桐島君！
どうした　桐島君　おい！
しっかりしろ！
おい！
大丈夫ですか？
死んでる
ええ！
観客が見守る中
一瞬の暗闇の中で起きた殺人事件
凶器に使われた１本の矢
楽譜につけられていた赤い印の謎
真犯人　魔弾の射手は
いったい誰なのか
明智少年の推理が冴える
どうしたんですか？金田一君
あ？
今日は感情がこもっていませんね
だって俺の活躍
全然ないんだもん
金田一少年の事件簿
東京音芸大学　卒業生達による
演奏会に来た俺達は
明智警視から１０年ほど前の
恐ろしい殺人事件の話を聞いた
演奏中のピアニストの背中に
矢が刺さり　殺されたのだ
犯人は演奏していた
学生の中にいるのか？
今夜　謎が明らかにされる
桐島君！
桐島君　おい　しっかりしろ！
死んでる
えっ！
これは？
触るな！
触っちゃいかん　みんな動くな！
あんた誰ですか？
警察の者だ
うーん　さすが警視庁
実にグッドなタイミングで登場だ
現場を手際よく取り仕切り
見事　犯人を逮捕したんでしょう
その刑事
そんなわけないじゃん
どうせ仕事さぼって
演奏会に
紛れ込んでるような奴だよ
おっさんと　いい勝負なんじゃん
金田一！
俺を無能　呼ばわり
するっていうのか！
やめてよ　２人とも
明智さん　話の続きを
確かに　金田一君の言うとおり
その刑事は
あまり優秀ではなかった
ほらね
しかし　彼は結果的に手柄を立てた
なぜなら　そばに
私という人間がいたからだ
あーあ　また自慢話だ
桐島君　おい　どうしたんだ！
近寄るな！
おい　どんちょうを下げろ
桐島君！
おい　君　待ちなさい！
あっ！
こら　なぜ逃げた
違うんだ　頼まれたんだ！
なんてことだ
北川刑事　照明を消した男を
捕まえました
何？
ここの大学の１年生と言ってます
俺は知りません
何も知らないんです
じゃあ何で照明を消した？
頼まれたんです
誰に？
それが　僕のところに　変な
機械を通したような声の奴から
電話があって　バイトしないかって
お金と一緒に
これが送られて来たんです
ん？楽譜か
さっき演奏してた曲の楽譜です
その譜面の赤い印の音の時に
照明を消せって言われて
怪しいな
ん　この印か？
失礼
あっ　おい
そうか
えっ　何だ？
ここは　曲の一番
クライマックスですね
ハープもチェロもヴィオラ
ヴァイオリンも
それぞれが　フォルテシモで
かき鳴らし　弦楽器が止むと同時に
ピアノコードがせり上がるように
メロディーをかけ上り…
そして…
明智君
何だ　こいつ
城先輩　助けてくださいよ
ええっ
あーん　知り合いなのか？
はい　赤堤さんも
よく知ってます
俺は知らないよ
そんな！
なるほど　連行しろ！
はっ
ちょっと
俺は人を殺してなんかいないんだ
うん　ご苦労
桐島レオナの死因は
この矢の先に塗られた
猛毒のニコチンによるものと
思われる
背中に刺さったとたん
死に至ったらしい
そして　前途有望で
才能豊かな２２歳の
ピアニストの短い一生を
奪った犯人は　この中にいる！
刑事さん
おそらく　この毒矢は
楽器の弦につがえて
放たれたもんだ
すなわち　君達　弦楽器奏者
４人の誰かだ
この毒矢は客席から
死角になっている
被害者の背中に刺さっていた
ということは　犯人は
ステージ上にいた
弦楽器奏者しか考えられない
そんな！
それじゃ　皆さん
詳しい話は署で聞くから
一緒に来てくれ
刑事さん
あ？
みんなで行く必要はありませんよ
ええ？
何だと！
毒矢を放ち
桐島さんを殺した犯人は
このステージの状態から考えて
たった１人しかいない
曲の中の最高音に付けられた
赤い印
桐島さんが　その音を弾いた
まさにその時
魔弾の射手が
彼女の命を奪い去った
魔弾？爆弾の一種か？
いえ　魔弾の射手は
カール・マリア・
フォン・ウェーバーが作曲した
ドイツオペラの傑作ですよ
そして魔弾とは
悪魔の力を宿した弾のこと
劇中　悪魔は狩人の男に
こう言います
７発中　６発は命中するが
最後の弾は欺くとね
この矢は　我々を欺くために
放たれた最後の弾で
彼女の命を奪った本当の魔弾は
別にあったんです
何を言ってるんだ　お前
この事件の不吉なプロローグは
５日前に起こった
偶発的な出来事でした
５日前？
どくろのカードが付いてた
バラの花束
ええ　右手小指の
ほんの小さな刺し傷　それが今日
彼女のおぞましい運命の幕切れを
決定づけてしまった
何の話だ
皆さん　こちらへ
赤い印の付いていた音は
黒鍵の最高音
つまり　一番右端の黒鍵だから
当然　右の小指で弾くことになる
そして　曲がクライマックスを迎え彼女の指が　この黒鍵を叩いた瞬間
黒鍵のすき間から黒い針が
桐島さんは　毒矢ではなく
この毒針で死んだんです
そんな
なんてこった
このトリックの巧妙な点は
毒針による刺し傷を
バラのトゲでできた傷のように
カムフラージュして
背中に刺さった毒矢が
凶器だと思わせようとしたんです
クッソー！
毒針を仕掛けた犯人なんて
全く特定できんぞ
ああ　捜査は振り出しだ！
心配いりませんよ　刑事さん
あっ？
犯人は１つ
重大なミスを犯しましたから
何？
誰かの嫌がらせで
ピアノのイスが壊れ
それまでの
背もたれのないイスから
背もたれのあるイスに
替わっていたことを
犯人は計算に
入れてなかったんです
見ればわかりますが　背もたれが
背中を大きくカバーしてるため
背中に矢は絶対当たらない
しかし　毒矢は桐島さんの
背中の真ん中に刺さっていた
あっ
明智君　桐島君を殺すだけなら
毒針だけでよかったんじゃ？
犯人は　自分だけは容疑者じゃないってことを示したかったんです
何？
だから逆に
桐島さんが
見えない位置にいた人間
毒矢を放とうにも
放つ位置にいなかった人間
その人が犯人です　つまり…
つまり　ピアノの桐島さんより
手前にいた人間
それは　たった１人しかいない
魔弾の射手は　あなただ！
石山さん！
石山君が？
桐島を？
まさか
あなたしか　いないんです
何を言い出すんだ　君は
照明が消され　再びついた時
倒れていた桐島さんに　真っ先に
駆け寄ったのは　あなただ
うん　そういえば
ああ
僕が彼女に一番近かったし
楽器も持っていなかったからね
それもそうだ
真っ先に駆け寄ったのは
そんな理由じゃない
あっ？
彼女を最初に抱き上げて
背中に　あの毒矢を
突き立てたんじゃないんですか？
しっかりしろ
バカなことを　だいたい
イスの背もたれが
何だっていうんだ
彼女は　照明が消えたのに驚いて
立ち上がった時に
矢が刺さったのかも
しれないじゃないか！
なるほど
刑事さん　見ませんでしたか？
あっ？
桐島さんが松葉杖をついて
入場してきたのを
彼女は前日　イスから落ちて
左足を捻挫して
歩くのもやっとだった
そんな彼女が　あの暗闇の中
とっさにイスから立ち上がったり
できるわけがない
そうでしょう　石山さん
石山君　君…
あいつは　僕を裏切ったんだ
石山！
どうして？
許せなかった！
芸術家としても　女としても
えっ　それじゃ！
僕とレオナは　ここに入学して
すぐに付き合い始めた
あの頃　２人とも
世界的な音楽家を目指して
学び合い　理想と夢を
語り合う仲だった
だが　この世界でスポットライトを浴びるのは　ごくわずか
厳しい現実を知るたびに
彼女は変わっていった
４年生になり
ニューヨーク音楽院への
留学話が持ち上がると
２人の気持ちに
すれ違いが生じて
あの日　問い詰める僕に
彼女は　事もなげに言った
そうよ　お付き合いしてるわ
椎名教授と
レオナ！
私ね
今度のアメリカ留学にかけてるの
ニューヨーク音楽院に行けるのは
たった１人
スポットライトを浴びる場所に
立つには
それなりの努力が必要なの
そのためなら
どんなことでもするわ　私
僕だって　最初から
彼女を殺すつもりはなかった
許せないと思いつつ　彼女のことは諦めようとしていたんだ
でも　あの時
バラのトゲが
彼女の小指を傷つけたのを見て
僕の中に　悪魔が舞い降りて
この恐ろしい殺人計画を
ひらめかせた
芸術を踏みにじり　汚した
あの女を断罪してやれと
僕の耳元で　悪魔が囁きかけたんだ
そして　自分でも恐ろしいほど
冷静に計画を実行した
何ということを
石山さん　ギリシャに
こんな　ことわざがあるのを
知っていますか？
「悪魔は芸術を解さない」と
どんな理由があるにせよ
関係のない演奏仲間に
罪をなすりつけようとした
あなたは
あなたを裏切った桐島さん以上に
１人よがりで　身勝手です
それに　神聖なステージを
殺人という
不協和音で汚した
あなたの行為こそ
調和を重んずる音楽という芸術に
一番　背いている
芸術を汚した彼女を
断罪するといいながら
結局　一番芸術を汚したのは
石山さん
あなた自身だったんじゃ
ないんですか
もういいでしょう　明智君
署まで　来てもらおうか
待ってくれ　俺なんだ
ピアノのイスの足に
切れ目を入れたのは
えっ
ステージで　あいつに
恥をかかせてやろうと思って
赤堤君
俺も同類だよ
えっ？
電球を割ったのは　俺だ
桐島に　スポットライトを浴びる
資格なんかない
そう　思いしらせて
やりたかったんだ
私が…
私が　トゲだらけの
バラの花束なんか　贈らなければ
石山君が　こんなことを
思いつくこともなかった
気にするな　吉野
バラがなくったって
僕はきっと桐島を…
やりきれんな
逃げたりしません
１人でステージを下ります
どうした？
いいえ
待って　石山君！私…
私だって　桐島さんと同じなの
椎名教授に取り入ろうって
何度も思ったけど
でも　勇気がなくて
そんな　くだらない勇気なんて
犬にでも　くれてやれ
違うの　私が言いたいのは
私が彼女の代わりに死んでたかも
しれないってことなの
芸術を汚したのは
あなただけじゃないわ！
俺達も
アメリカ留学に目がくらんで
自分達の音楽を
ずたずたに傷つけてしまった
石山　俺達は俺達で
罪を償おうと思う
だから　待ってる
あなたの振るタクトで
もう一度演奏しましょう
必ず帰ってこいよ
待ってるぞ
今度こそ　本当に心に響く
ハーモニーを演奏する日を
石山君
それから　残された３人は
どうなったんですか？
彼らは…
どうなったと思いますか？
木戸教授
ヴィオラの城晋一郎
ハープの吉野音実
チェロの赤堤響介は
事件から半年後に卒業しました
３人とも　あれほど固執していた
ニューヨーク音楽院への留学は
全員辞退
嘱望されていた
音楽家としての将来も捨て
それぞれ　音楽とは無関係の
仕事についた
あれから１０年あまり
彼らは　何よりも
今日という日を
待ち望んでいたに違いない
ええ　きっと
よっ　待ってました！
はじめちゃん
バーカ
皆さん　こんにちは
サンフィッシュ室内楽団の
コンサートマスター　城晋一郎です
今日は　特別な指揮者を
招いての演奏会です
私　城と　ここにいる
ハープの吉野音実
チェロの赤堤響介
そして　残念ながら
若くして亡くなった
天才ピアニスト　桐島レオナ
この私達４人の共通の友である
名指揮者
石山征爾君に盛大な拍手を
皆さん　もう１人
今日の特別ゲストを紹介します
かつての
天才高校生ヴァイオリニスト
明智健悟君です
おい　明智
上がってこいよ
一緒に演奏しましょう
君のヴァイオリンも用意したんだ
あっ　明智さん　聞かせてください
警視　お願いします
もったいつけずに
早く行った　行った
仲間がみんな　待ってますよ
そうですね
久しぶりに弾いてみますか
すばらしい
みんなの心が　見事に調和して
雨上がりの空にかかる
虹のようです
いや　目覚めちゃったよ　音楽に
居眠りどころか　大興奮
クラシックっつうのも
なかなか　いけてんじゃん
明智さん
ホントに楽しそうだったな
おい　おっさん
おい　金田一
俺達も　クラシックやってみんか？えっ！
俺も　同じこと考えてた
音楽はいい　断然いい
帰ったら
息子のカスタネット借りて
練習してみっかな
カスタネット？
俺　タンバリンやろう
タンバリン
お２人さん
どんな音楽やるつもり？
今日から　俺達
クラシックのミュージシャン
頑張ってね
おう！
あっ　美雪は
ウクレレやれよ　ウクレレ
私もやるの？
ようし　３人で
クラシックバンドを組むか！
おう！
面白そうね
５年前に訪れた雪影村から
かかってきた１本の電話
それは俺の大切な人の
死を告げる
悲しい知らせだった
葉多野春菜
そんな彼女の死を悼むように
粉雪が優しく降り積もる
まさか　これがあの恐ろしい事件の予兆だったなんて
金田一少年の事件簿﻿何だよ　はじめ
美雪お姉ちゃんと
ケンカでもしたのか？
別に…
ひと言　ごめんなさいって
謝っちゃえよ
うるさい！
あっ
ごめんなさいだぞ！
美雪？
金田一　一君？
はい　オレですけど…
あの
オレ　島津匠だけど
シマヅ？
シマヅって…
あっ！島津
お前　雪影村の
あっ　そうだ
覚えててくれたか　金田一
当たりめえだよ
中一の時だろ？
懐かしいなあ
何度か　年賀状
出したはずなんだけどなあ
いや　悪い　返事出そうって
気にはしてたんだけど　オレ
究極の筆不精でさあ
お前らしいわ
みんな　元気にしてるか？
それが　実はな
え？
こんな寂しい所で
君は何で絵を描いているんだい？
私　雪を描いてるの
え？でも　雪なんて…
もう５年も前の話だ
この地方の小さな村に嫁いだ
母親の親友を訪ねて来て
ほんの２週間ほど
滞在したことがある
えーと　雪影村行きはと…
３番乗り場だよ
え？
あ！お前　魚住
よう
何だよ　お前
全然変わってねえじゃん
お前こそ　一目で分かったぜ
もう　あれから５年か
早いよなあ
ああ　オレら　中一の時だもんな
ほら　これ
へえ　懐かしいなあ
やっぱ　お前　全然変わってないぜ
この時　埋めたタイムカプセル
どうなった？
あのままさ　校庭のスミに
埋まってるはずだ
確か　５年たったら
開けるって話だったよな
ああ　そうだったよなあ
そういえば　ギター
今でも弾いてんの？
お前　絶対プロになるって
言ってたじゃん
ああ　まあ　時々はな…
今はオヤジの手伝いで
学校が休みの時は
漁船に乗ってんだ
ギターなんて
やってるヒマねえんだよ
スラリと長く繊細だった
魚住の指は
船乗りの
たくましい指に　なっていた
うわあ　５年前と
全然変わってねえや
へえ　村をあげての応援かよ
島津のヤツ
ずいぶんと期待されてんだな
最初で最後の甲子園だからな
最初で最後？
ああ　ウチの高校
今年で廃校になって
岬町の高校と
一緒になるんだ
だから　甲子園出場は
いい記念なのさ
へえ
はじめ！
本物のはじめだあ
お　お前　都かあ？
懐かしい　相変わらず
背が伸びてないんだ
お前が伸びすぎてんだよ
島津君から聞いて驚いたよ
母さんもね　大歓迎するから
前の時みたいに
ウチに泊まりに来てくれってさ
ああ　ところで島津は？
うん…　春菜んち
みんなと一緒に集まってる
そうか
金田一君
おお　金田一か
ありがとう　わざわざ
東京から来てくれたんだ
綾花　久しぶりだな
なんか　いきなり
島津からの電話でさ…
春菜の葬式だなんて
ああ　オレだって
いまだに信じらんないよ
立石
島津？
え？あ　金田一？
少し　やせたな
え　そうか？
でも　よくオレに電話くれたな
オレらが集まると
よく　お前の話が出たんだ
そん時　いつもあんまり
しゃべんない春菜が
やけにおしゃべりに　なってさ
いつか　みんなで会いたいって
言ってたから
何で…
何で自殺なんか
葉多野春菜は
一緒にタイムカプセルを
埋めた仲間の中で
一番おとなしい女の子だった
校庭の片すみでイーゼルを立てて
一人キャンバスに
絵を描いていた姿を
オレも　よく覚えてる
昨日の電話は春菜の死を
知らせるものだった
春菜は昨日の朝早く
海で命を絶った
ごめん　遅くなって
数珠が見つかんなくて
数珠なんて　どうでもいいだろ
友達の葬式だぞ
だから　いるのよ！
みんなで買った
お揃いの数珠なのに
あたしだけ仲間はずれなんて
あ　あれ誰？
冬美だよ
久しぶりね　金田一君
えっ　あの地味なメガネの？
悪かったわね
地元の祭りの
ミス雪影祭りに選ばれたとかで
最近ちょっと　お高いんだ
ちょっと　何　勝手なこと
言ってんのよ！
いい加減にしろ！お前ら
場所をわきまえろよ
そうね　ごめんなさい
ところで　その数珠　何？
これ
修学旅行の時　お寺で記念にって
７人で買ったんだ
ほんのシャレの
つもりだったんだけど
まさか　こんな形で
使われることに　なるなんて
村の古くからの
しきたりに従って
春菜の葬儀が始まった
亡きがらの上に置かれた
３本の矢は
上送りの矢といって
海の神　山の神　雪の神を表し
死者の魂は　この村を治める
三つの神に連れられ
あの世へ旅立つのだという
明日の朝まで　ああやって
お寺に安置されることになるの
あさっては雪影祭りね
春菜も楽しみにしてたのに
そうだ　これから　みんなで
雪影中に行ってみないか？
ああ　久しぶりに行ってみるか
おお　この木だよ　この木
そうそう　金田一
お前　ここに登って落ちたんだよな
あん時　島津と立石で
キャッチしてくんなきゃ
オレ　ヤバかったよ
そうなんだよね
一生　感謝しろよ
でも　それから後が
ケッサクだったわ
うん　うん
新任の先生が金田一君のこと
ウチの生徒と勘違いして
はじめもチャッカリ
その気になって
授業　受けてんだもん
笑っちゃったよ　私
いやあ　居心地よくて　つい
結局　そのまま２週間
居座っちまったんだよねえ
母親は　あきれて
先　帰っちまうし
あのまま　ずっと
ここに　いるのかと思ったぜ
まっさかあ　こんな村にいるより
東京の方が　ずっと面白いじゃん
好きな子だって　いたんでしょ？
え…　ああ
えっへへ　いたとしても
片思いだろ　どうせ
そうそう
あ…　あのさあ
ホントに　自殺だったのか？
春菜は
遺書が残ってたらしい
それが　よく分かんない遺書でさ
うれしい色だったはずが
許されない色だったなんて
許されない色？
涙で　にじんでたみたいだけど
筆跡は確かに
アイツのだったらしい
色って　やっぱ
絵の具のことなのかな？
春菜は絵が好きだったし
まさか　あんなことで
死んでしまうなんてね
どうしよう　冬美　あの子が
死んだの　私たちのせいだわ
あんなこと　しなけりゃ
よかったのよ
綾花！
今さら　何　言ってんのよ
こんなこと　誰かに知られたら
私たち…
バカね　誰も知るわけないじゃない
あの子が勝手に
勘違いして死んだのよ
別に私たちのせいじゃないわ
そうよね　そうだよね
当たり前よ
ああ！こ…　これは
何てことを
おばさん　おかわり　もう一杯
あ　それに
この魚とネギのミソ汁も
はいよ
ああ　朝から何杯食べる気？
すんません
泊めてもらってる上に　ご飯まで
しかも　５杯も
いいって　いいって
でも　アンタの母さんも
一緒に来れるとよかったのにねえ
ホント　５年ぶりだって
楽しみに　してたんですけどね
はい
あ　どうも
あ　そういえば　おじさんは？
朝から姿　見えないけど
ああ　雪影祭りの準備に行ってるよ
ほら　アンタたちが前に来た時も
そうだったろ？
並木の通りが
うっすら雪化粧してさあ
この村では３００年以上　昔から
１１月１５日から２０日にかけて
朝６時頃から雪が降るの
雪は１時間ほどで雨に変わる
それが６日間
毎朝　必ず繰り返されるのよ
それが終わってから
しばらくすると
本格的な雪が
降り始めるってわけか
不思議だよなあ　それって
でしょう？だから　この村では
古くから山の神　海の神と共に
雪の神も
あがめられてるってわけ
じゃあ　明日の朝から
雪が降んのかなあ
もっちろん　絶対降るはずよ
この３００年　ずっと同じなんだもん
甲子園の方も
盛り上がってるみたいだな
あ　そうだ
野球部の練習　見に行こう
今なら朝練やってるはずよ
へーえ　でも
部員の数って　これだけ？
そう！全部で９人　補欠はゼロ
え　たった９人？
オレも入部してたら
甲子園に行けたのにな
魚住　何だよ　その格好？
漁の帰りさ
お前が入っても万年補欠さ
おはよう
お？
あら　みんな　朝練の見学？
冬美…　何で　お前
こんな格好してんだ？
冬美は今年のミス雪影祭りに
選ばれたから
神社で巫女さんの役をやるのよ
今日はリハーサルなの
本番はあさってよ
へえ　冬美が巫女さんねえ
別に巫女さんったって
大したことじゃないわ
こんな田舎のお祭りだし
ふーん
あれ　そういえば島津は？
陸上部のトラックで
走り込んでるぜ
４番でエースか　アイツ
中学の時も　すっごい球
投げてたもんなあ
あ！
何やってんだあ
ミットに入ってから打っても
あったらねえぞ！
島津！
え？
勝負しろ
中学時代のリベンジだ
今度にしねえか？
もったいぶらずに投げろよ
一球だけで　いいからさあ
甲子園初出場の記念に
さあ　どうするかな…
投げてやれよ　島津
どうせ　金田一が
大恥かくだけだけどな
なにおう
ま　いいか
立石　頼む
ああ
いいな！手を抜かずに
どんと来いよ　どんと！
ああ
ガンバレ！はじめ
テッメエ　島津！
やったー　ホームランだ
甲子園出場ピッチャーから
ホームラン打っちゃったもんねえ
イエーイ
え？上送りの矢が消えただと？
春菜の棺にあったヤツか？
それ本当？魚住君
ああ
今朝　寺に魚届けに行ったら
大騒ぎでよ
いったい　誰の仕業だか
でも　そんなもの盗んで
どうする気だろ？
春菜って　けっこう
男どもに人気あったからなあ
隠れファンの仕業とか
やめてよ　それって変態じゃん
それより　明日の朝どうする？
明日の朝って？
タイムカプセルさ
え？
金田一君が東京に帰る時
記念に雪影中に
埋めたヤツでしょう？
ああ…
朝練の前に立石とも話したんだが
明日で　ちょうど５年目だし
約束どおり　明日の朝
みんなで掘りに行かないか？
そうね　死んだ春菜も
楽しみにしてたし
みんなで掘り出そうよ
ああ　そうだな
じゃあ　明日の朝　集合だな
遅れんなよ
こんな晴れてんのに　ホント
雪なんて降んのかなあ
はじめ君！お風呂どうぞ
あ　ハーイ
フンフン　何々？
「その男が発見された山小屋は
完全に　密室だった」
いやー！ヤダ　はじめ　見るな
それって　推理小説か？
あ　そういえば　お前
ミステリー作家になりたいって
言ってたもんなあ
そう　将来はベストセラー作家
ちょっと読ませてくれよ　いいだろあー　ダメ　ダメ　ダメ
ベストセラー作家になってからあ
何だよ　ケチだなあ
何よ　何にも言わずに
一人で行っちゃうなんて
電話くらい
くれたって　いいじゃない
はじめ！いつまで寝てんの
遅れるよ
うわ！雪だ
ね？ホントに降ったでしょう
ああ
遅いぞ！金田一
いやー　悪い　悪い
６時ギリギリだぞ
あと来てないのは
魚住と冬美だけか
どうする？もう１０分もしたら
積もっちまうぞ
遅れたら先に行くって
言ってあるし　そろそろ行くか
うわー　きれい！
ホント
まるで満開の桜だ
いい感じに積もってきたな
おーい　悪い　悪い
魚住　何やってたんだ？お前
ああ　ちょっと　いろいろあってさ
ん？
どうした？金田一
何だ？この足あと
きっと冬美よ
私たちより先に着いたんだ
おい　あれ
誰かが倒れてる
あの白いコートって…
まさか
冬美！
この矢は…
上送りの矢だ
春菜の棺から盗まれたヤツか
いやー　冬美！
白く雪化粧した校庭で
横たわっていた冬美
その手には死者を送る
上送りの矢が握られていた
春菜　お前が会っていた　ほほに
傷のある男って　いったい誰なんだ
何かが引っかかる
オレたちの涙が雪に変わる時
また一つ　大切な命が
消えようとしていたなんて
金田一少年の事件簿
自殺した友人　葉多野春菜の
葬儀に出席するために
オレは５年ぶりに雪影村を訪れた
そして再会した仲間と共に
思い出のタイムカプセルを
掘り出しに雪影中学に行った
ところが雪が
うっすら積もる校庭で
オレたちが見たものは
で　君らが来た時は　足あとは
確かに被害者のものしか
なかったんだな？
はい　真っ白な校庭に
足あとが点々と続いていて
その先に白いコートを着た冬美が
オレも見ました　他に
足あとなんて絶対に　なかった
うん　あんな大雪の中じゃ　誰かが
歩けば必ず足あとがつくはずだ
ふーん
てことは　これは自殺だな
ちょっと待ってください
ん　何だ？
不自然ですよ　あんな死に方
それに冬美には
自殺する動機がありません
じゃあ　何だって言うんだ
自殺じゃないなら
冬美は誰かに
殺されたとでも言うのか？
ああ　そうだ
何だと？
この村には人殺しなんかする
ヤツは一人もいない！
おい　よせよ
冬美は昨日
雪影祭りの巫女さんの
衣装合わせまで　やってるんだぞ
そんな人間が
自殺なんか　するもんか
そりゃ…
でも
もし殺人だとしたら
あの足あとは　どうなんだ？
金田一　お前も見ただろ
真っ白な校庭には
冬美の足あとしか　なかった
ああ…
そういえば　あの時　お前
校庭のまわり調べてたけど
何か　あったか？
いや　何一つ見つからなかった
そうだろ　やっぱり
自殺以外　考えられんな
君たち　もう帰っていいぞ
また聞きたいことが　あったら
個別に連絡する
これは足あと無き殺人事件だわ
冬美は誰かに殺されたのよ
あ…　おい　都？
だって冬美は高校卒業したら
東京行って
タレントスクールに入って
オーディション
ばんばん受けまくって
成功してやるって
いつも言ってたんだよ
あんな前向きで
強気な子が
自殺なんかするわけない
それに何か　こう引っかかるのよね
上送りの矢で
死んでいたってことが
やっぱり冬美の死は
春菜の自殺と関係あるのかな？
よし　行ってみるか　冬美の家に
え？
本当に冬美に自殺する理由が
なかったのか確かめてみるんだ
ついでに殺される理由が
なかったのかも
わざわざありがとう　都ちゃん
それに…
あ　オレ　金田一です
ああ　あなたが
おばさん　冬美ちゃんが
こんなことになって
私　いまだに信じられなくて
私もよ
巫女の衣装が気に入って
祭りを楽しみにしてたのに
でも　警察は
自殺だって言うし　ただ…
ただ？
この前　春菜ちゃんが
亡くなったでしょ
あの時から
冬美の様子が何となく
変だったのは確かだったの
私たちの前では普通に
振る舞ってたんだけど
一人になると
ひどく落ち込んでるみたいで
私のせいだわ
私の
あの冬美が泣いてたなんてね
やっぱり関係あるのかな
春菜のことと
だから棺から
３本の矢を盗み出して
その矢を使って自殺して…　あれ？どうした？
棺から盗まれたのは
３本の矢でしょう？
残りの２本はどうしたのかしら
ああ
実はオレも　それを考えてたんだ
残りの２本で　あと二人
恐怖の連続殺人事件
次に殺されるのは私かな
何　言ってんだ　都
でも　私は
タダじゃ死なないわよ！
犯人の体のどこかが
食いちぎれるほど噛みついて
コイツが絶対に犯人だって
歯型残してやる！
お前だけは絶対に
殺されないような気がしてきたよ
あ　立石
よう
何だ　お前たちも春菜んちに？
うん　私たち事件の真相を
調べに来たの
春菜のおふくろさんに
あまりショックを
与えるようなこと
言うんじゃないぞ
分かってる
ありがとう　わざわざ
お焼香しに来てくれて
春菜も喜ぶわ
いいえ
私たちは何も…
あの　すみませんけど
お母さん　春菜の遺書
見せてもらえませんでしょうか
はじめ！
おい
お願いします
そう言われたのは二度目ね
え？
魚住君にも
そう言われて見せたの
魚住も？
この今井龍矢って？
別れた夫よ
春菜の父親
春菜の？
私は別れてから
一度も会ってないけど
春菜は時々　手紙のやり取りを
してたみたいなの
この遺書も父親に出すつもりで
そのままに　してしまったみたいね
そりゃ　私は母親らしいことは
何もしてやれなかったけど
だからって　一緒に住んでもいない父親宛てに遺書なんて
どうして私じゃなかったんだろう
ごめんなさい
お茶菓子でも持って来るわね
何だか　悪いこと
しちゃったみたいね
だから　オレが言ったじゃないか
うれしい色だったはずが
許されない色だったなんて
この筆跡　春菜のだわ　間違いない
春菜　ホントに
絵を描くのが好きだったもんね
今井龍矢　今井龍矢…
どうした？
ああ　この名前
葬式の時　見たと思ってさ
あの時　オレ
受付手伝ってたから
おい　金田一　勝手に…
これは…
あ！
お待たせ　隣町の名物だけど
よかったら食べて
遠慮なく
はじめ　がっつくな
長々おじゃまして
すみませんでした
いいのよ　また来てちょうだい
あの最後に一つだけ　いいですか？なあに？
春菜のお父さん
お葬式には出席したんですか？
いいえ　ずっと留守で
何度　電話しても
連絡が取れなかったの
そうですか
立石君
何　急いで帰ったんだろう
しかし　どういうことかな
春菜のお母さん
ウソをついてるようには
見えなかったけど
あのね　はじめ　実は春菜の
お父さんのことなんだけど
え？
私…
春菜が父親みたいな人と
会ってるのを見ちゃったの
あれは半年ぐらい前の
ことだったわ
あ　春菜　おは…　あれ？
お父さん
え？
久しぶりだね　お父さん
もう　それから後ろも見ずに
いちもくさん
ちょうど　あの林のあたりよ
ほほに傷あとの　ある男ね
記名帳に名前があったってことは
やっぱり　春菜の葬式に
来てたのかな？
ううん　そんなはずない
来てたら　私　絶対に気がつくもん
そんな人　いなかったよ
５年前か　おっ
これオレが書いた
落書きじゃん
懐かしいなあ
みんなの絵だ
まだ残してあったんだ
あ　そうか　島津も小さい頃
両親が離婚して
おふくろさんと
二人暮らしだって言ってたもんな
あ　春菜の絵か
あ？あの後ろ姿の男は…
父　春菜の父親　今井龍矢か
やっぱり　お前か
東京から来て
授業にもぐり込んでた
あの悪ガキの金田一だろう？
あ　ああ　あの時の板倉先生？
いやー　元気でやってたか？
お前　全然変わらないから
一発で分かったぞ
ダハハ　そうすかあ？
みんなにも
そう言われてるんすけど
おお　そうだ
今ちょうど　蓮沼も来てるんだ
え？綾花も
おい　蓮沼！
よかったあ　金田一君が来てくれて
おかげで　今日中に片付きそうよ
どうでもいいけどさあ
何で　お前が中学の部室まで
掃除しなきゃ　いけないんだ？
時々　先輩風吹かせて
練習しに来てたからね
高校にテニス部は　なかったし
へえ　そうだったのか
だけど　このテニス部も
半年くらい前に部員不足で
廃部になっちゃったの
でも　また部員が増えれば
活動できるようになるし
それまで私が時々掃除に
来ようかなあ　なんて思って
お前って見かけによらず
熱血スポーツ少女してんだな
何　言ってんのよ　これでも私
ウィンブルドンが
夢だったんだからね
また　大それた夢を…　お？
綾花？
ごめんね　泣いたりして
何か気持ちが暗くなっちゃって
イメージ違っちゃうよね
昔は明るいのが取り柄だったのに
無理ないさ　親友が二人も
亡くなったんだから
あれ　何か日が陰っちゃったね
この部屋　電気も切れてるし
もう帰ろう
ああ　腹も減ったしな
うーん
おーい　都　用意できたか？
何やってんだよ
うーん
冬美が殺された時の
足あとのトリックなんだけど
こういうのは　どう？
犯人は
あの日　雪の中
冬美を校庭の真ん中に呼び出し
そして桜の木に登って
手に上送りの矢を握り
桜の木とサッカーゴールの間に
張ったロープをベルトに通すと
白いコートを着た冬美目がけて
一気にさーっと滑って
どう　これなら雪の上に足あと
残らないと思わない？
あのなあ…
そのロープの近くに冬美が
立たなかったら　どうすんだ？
あ　そうか
それに
空中から突進してくる
犯人の物音に
冬美が気付いて
逃げ出したら　どうする？
それもそうね　じゃあ
はじめは　どう考えるわけ？
方法はあるよ　一つだけ
え？
オーッス　待たせてごめん
ちっとも電話してこないし
こっちから　かけても出ないなんて
はじめちゃん
いったい何やってるの？
なあ　島津　魚住って
何でギターやめたんだ？
あんなに好きだったのに
さあな　確か
去年の雪影祭りの
あたりだったかな
アイツ　ふらっと１ヵ月ばかり
村から　いなくなっちまってさ
え？
それで戻ってきたら
急にギターやめたいって言って
オヤジさんの仕事を
手伝いだしたんだ
５年も　たつと
みんな　変わったろ
あの頃は　みんな　将来の
夢ばっかり話し合ってたけど
今じゃ…
島津
お前は夢かなえられるよ
絶対プロに行けるって
そうかな
プロの世界は厳しいから
だから　今度の甲子園で
実績を残せば　いいのさ
ああ　出られたらな
立石！
よう
どうしたんだよ　何で警察が？
ああ　何か
靴が盗まれたとか何とか…
靴？
そんなのは
ただのイタズラじゃないんですか
でも
春菜ちゃんの　お葬式の次の日
縁側で乾かしてた冬美の靴が
一足　なくなってたのを
思いだして
それが　あの子の死と
何か　かかわってるかもと
盗まれた靴ねえ　お母さん
お気持ちは分かりますが
娘さんは自殺ですよ
ちょっと待ってよ　刑事さん
靴が盗まれてるなら
冬美の死は自殺じゃない
れっきとした殺人事件だ
お前は　あの時の…
金田一君　どういうことなの？
あの雪の中に残っていた足あとは
冬美が来た時に
ついたものではなく
犯人が帰った時に
つけたものなんですよ
え？
何だと
雪影祭りの朝は必ず
ほぼ決まった時刻に雪が降り出し
１時間ほどで雨に変わる
そのことを知っていた犯人は
冬美を校庭の真ん中に呼び出して
雪が降るのを　その場で待ってから冬美の靴をはき
後ろ向きに足あとをつけながら
現場を立ち去った
そう考えれば冬美の靴が
盗まれたことの説明がつく
冬美がはいてる靴と違っても
犯人は自分の足あとが
なかったことさえ
誰かに目撃させればいい
どうせ雪は
すぐ雨に変わって　足あとは
消えてしまうんだからな
つまり　あの足あとは
自殺に見せかけるための
犯人の
トリックだったということか
さあ　それを調べるのが
あなたたちの仕事でしょ
すっごい　はじめ！
本物の探偵みたいだった
痛ってえな
金田一君
今の話　本当なんですか？
本当に冬美は誰かに…
き　金田一！
どうした？
これを
今井龍矢？
来てるのか？この通夜に
どうしたの？はじめ
来てるんだ…
春菜のオヤジさんが
え？
どこだ　どこにいる？今井龍矢
違う
いたか？
ううん
きっと警察が来たんで
慌てて逃げ出したのよ
これは　いよいよ怪しいぞ
傷の男　今井龍矢
どうしちゃったの？はじめ
さっきから
黙って考え込んで
どうやら　足あとの謎もはじめの
言ってたトリックで決まりだし
今は今井龍矢を捜す方が
先決でしょ？
その足あとが問題なんだ
ええ？
いいか　都
オレが刑事さんに話した
トリックを本当に犯人が
用いたんだとしたら
犯人は　その足あとをいったい
誰に見せるつもりだったんだ？
どういうこと？
雪はたった１時間で　やんで
雨に変わっちまうんだぜ
そしたら
足あとが消えて
せっかくのトリックも水の泡だ
なるほど　そりゃそうね
つまり犯人は足あとが
雪の上に残っている状態を
誰かが必ず見てくれることを
知っていた人間
ということになる
ええ？それって　まさか
そう　あの日あの時間
タイムカプセルを掘り出す
計画を立てていた
オレたちだけってことになるんだ
そ…　そんな
私たちの中に犯人が？
でも　あの時
雪が降り始めた直後ぐらいに
みんなが集まって
ゆっくり校庭に行ったじゃない？
その前には
まだ雪も降ってなかったはずだし
足あとだって　つけられなかった
だから全員にアリバイが
全員か？
そう　あの時
一人だけ
待ち合わせ場所に来ないで
遅れて直接
校庭にやって来たヤツがいる
うわ　やっぱり真っ暗ね
早く電球を付け換えなくちゃ
不便でしょうがないわ
誰？
なんだ　びっくりした
どうしたの？こんな所で
上送りの矢　まさか…
それじゃ　あなたが冬美を
いやあ！
キャー
まだかよ　魚住と綾花は？
もう　出棺の時間だぜ
あ　来た来た
大変だあ！あ…　綾花が
綾花が
え？
ちょっと　すみません！
入れてください
オレら　綾花の友達なんだ
ダメダメ　下がって
おい！お前
さあ　出ろ
現場検証中だ
綾花　今日のパンツはウサギさん
金田一君　授業　終わったわよ
ごめんね　泣いたりして
はじめ…
はじめ！
許せねえ
こんなこと…
絶対に許さないぞ！
犯人の正体はオレがこの手で
必ず　あばいてみせる
ジッチャンの名にかけて！
みんな　夢を抱いて楽しそうに
笑っていた５年前
もう　あの頃には戻れない
綾花と最後に会った場所で
オレは小さな落とし物を見つけた
それが　そこで
開けられなかった紙袋の意味と
犯人を示していたなんて
春菜　謎はすべて解けたよ
金田一少年の事件簿﻿亡くなった友人　葉多野春菜の
葬儀に出席するために
俺は５年ぶりに雪影村を訪れた
ところが　その小さな村で
連続殺人事件が発生した
冬美！
春菜の親友　冬美が殺され
さらにまた続いて
綾花が殺されたのだ
春菜の次は冬美　冬美の次は綾花
葬儀に次ぐ葬儀か
ったく　どうなっちまったんだよ
この村は
まるで死に神に
とりつかれてるみたいだ
あれ
ん？どうした　立石
いや　俺の数珠がないんだ　確か
このバッグの中に入れてきたのに
数珠って　あの　おそろいのか？
うん
家を出る時は　ちゃあんと見たのに
あれ　俺のもだ
え？ありゃ　あたしもだ
俺の数珠もない
何でだろう　盗まれたのかな
バカ言え　あんなもん盗んで
どうすんだよ
おそろいの数珠が盗まれた
みんなで買った
おそろいの数珠なのに
あたしだけ仲間はずれなんて
仲間はずれ？
あ　刑事さん
魚住響四郎だな
はい
ちょっと尋ねたい事がある
署まで来てくれ
え？何でですか　刑事さん
さあ　来るんだ
俺　何にもしてませんよ
魚住
どうして魚住が
え　魚住が？
やっぱり　警察も魚住君にだけ
アリバイがない事に
気がついたのよ
だけど　ホントに魚住君が？
あ　どこ行くの　はじめ
だから　俺にはアリバイがあるって言ってるでしょ
６時ちょっと前に漁師仲間に
挨拶して港を出てるんだから
そんな事は
こっちも聞き込み済みだ
お前が港を出た正確な時刻は
午前５時５０分
雪が降り出す１０分前だ
しかし　お前は　あの日に限って
バイクで港に来とったそうだな
それはなぜだ
あれは
いつもみたいに自転車じゃ
みんなとの
待ち合わせ時間に
間に合わないと思ったから
だが結局　お前は間に合わず
６時２０分に
校庭に直接　現れたそうだな
ああ　そうだけど
このルートが港から
雪影中学までの最短距離だ
オートバイで飛ばして行ったら
２０分で着いたぞ
という事は　お前が仲間に合流した６時２０分までに　１０分の間がある
社冬美を殺して後ろ向きに足跡を
付け　立ち去る事は十分に可能だ
おい　君
ん？
また　お前か
金田一
勝手に入ってくるんじゃない
今の話
バイクをどんなに飛ばしても
６時１０分より
早く学校に来れないんだろう？
だったら　やっぱり
魚住にはアリバイがある
何だと
よく考えてみてくださいよ
魚住が６時１０分に
学校に着いたとしても
その時にはもう　うっすらと
雪が積もっていたはずだ
だったら　どうやって
その雪に足跡を付けずに
魚住は校庭の真ん中まで
行く事ができたんですか
んん　金田一？
金田一って
もしかしたら金田一　一か？
ええ　そうですけど
そうか
実は俺は警視庁の
剣持警部の知り合いなんだ
おっさんの？
ある事件で東京へ行った時に
いろいろ世話になってな
お前の事は　よく聞かされたよ
いろんな難事件を
解決したそうだな
ええ　まあ
だからって　あまり出しゃばるなよ
ここは東京じゃないんだ
でも　魚住はどうなるんですか
釈放してやるよ　アリバイが
ある奴を犯人にはできんだろう
ああ　どうも
すまなかったな　金田一
さて　こうなると容疑者は
いよいよ謎の男
あの今井龍矢って事に
なってきたわね
あ　そうだ　春菜のお母さんにもう一度　会って詳しく聞いてみるか
そうね
てことだ　じゃあな　魚住
ありがとう金田一　助かったよ
へえ　春菜のお母さん
隣の岬町で働いてたのか
お茶でもどうぞ
すいません　お仕事中
いいのよ　今ちょうど一息ついた
ところだから　で　何の用かしら
あ　はい　実は
この間　お宅にお邪魔した時
仏壇にあった記名帳を
のぞき見しちゃったんです
そしたら　今井龍矢という
名前が書かれていた
こんにちは
あら　いらっしゃい
ちょうどよかった　紹介するわ
この人が今　話してた
今井龍矢さんよ
え？
私に何か？
この人　お店の常連さんでね
春菜のことも　よく知ってたの
それで　お葬式にも
来てくださったのよ
冬美さんのお葬式にもね
という事は同姓同名の別人
ああ　とんだ恥かいちゃったな
この地方　今井って名前
けっこう多いのよ
あたしの親戚にもいるし
「うれしい色だったはずが
許されない色だったなんて」
何が言いたかったんだ　春菜は
ほらほら　あそこにも
え？
ああ　ここも今井かあ
そうだ　ねえ　はじめ
野球部にパン
差し入れしてやろうよ
あ　そうだな
よしよーし
よう
おお
もういっちょ行くぞ
おお
島津君っていつも
ああして走ってばっかりよ
足腰鍛えてんだろう
がんばれよ　雪影高校のエース
甲子園　期待してるぞ
村中総出で応援に行くからなあ
がんばりまあーす
雪影高校が甲子園か
すごいなあ　島津たち
どうした　どうしたあ
島津　悪い
ねえ　はじめ
綾花のことなんだけど
え？
綾花　どうして
中学のテニスの部室へなんか
行ったんだろう
時々　掃除に行ってたらしいよ
偶然あの日　俺も一緒んなってさ
掃除　手伝ってやったんだ
そん時　何か落とし物でも
したんじゃないかな
そっかあ　あん時　現場見たら
やけに机とか箱が
動かされてたけど
あれ　犯人が綾花と
もめた跡っていうより
綾花が捜し物した
跡だったのかなあ
かもな　電気屋の袋も
置いてあったし
電気屋の袋？
ああ
昼間　あの部室へ行った時
電球が切れてたんだ
暗い部屋で捜し物をするんで
電球を付け替えようと思って
買っていったんだろう　きっと
あれ　でも妙だな
え？
俺の記憶が正しければ　あの袋
確かセロハンテープで
封をしたままだった
捜し物をした形跡があるのに
電気屋の袋から
電球を取り出さなかった
数珠なんて　どうでもいいだろ
友達の葬式だぞ
だからいるのよ
みんなで買った
おそろいの数珠なのに
あたしだけ仲間はずれなんて
そうか
なるほど　分かった
何だ　また　お前か
今度は何の用だ
すみません
ちょっと　現場
見せてくれませんか
ん　ああ？
どうした　何か気になる事でも
あったのか
ここに電気屋の袋が
あったはずだけど
あれ　開封されてました？
いや
未開封で
中身は手つかずだったが
それって電球でしたよね
ああ　何でそれを
やっぱり
あ　ああ？
電気は　つかないままか
おい　何をする気だ
これ　固いなあ
やっぱり切れてる
となると犯人は
懐中電灯を使って
刑事さん　ちょっと
捜し物をしていいですか
ああ？あまりあちこち触るなよ
あるはずだ　絶対に
何やってんだ　お前は
これは
これだ　とうとう見つけたぞ
俺の思ったとおりだった
突然お邪魔して　すみませんでした
いいえ　お役に立てなくて
それじゃあ失礼します
やっぱり　綾花の物じゃなかったか
とすると犯人は
よう　金田一
え？あ　立石
どうしたんだ　こんなとこ
ふらついて　何かあったのか
いやあ　ちょっとな
へえ　けっこう
きれいにしてんじゃん
まあな　金田一
今夜　俺んちに泊まってけよ
あとで都んちには電話しとくから
そうするか　いろいろと楽しい
物がありそうだから　ジャン
だあー　それは
慌ててるところが
ますます怪しい　ほら
うわ　やめろ金田一
油断も隙もないな
隠し方が素人なんだよ
お前にあっちゃ　かなわねえなあ
参った参った
だけどお前
マジに勉強してるみたいだなあ
こんな田舎じゃ
ろくな予備校もないしさ
やっぱ東京の大学行くには　一応
それなりに勉強しとかないとな
お前　プロ野球には行かないのか？
まさか　俺は島津みたいに
才能ないからな
笑うなよ　実は俺
弁護士になりたいと思ってんだ
へえー　弁護士　お前が
俺は島津がいたから
ここまでやれたんだ
正直　俺は　どうがんばったって
たかが知れてる
でも島津には本当の才能があった
俺は　あいつと一緒に野球やって
あいつが夢を実現していくのを
しっかりと見ておきたかったんだ
俺にとって野球は高校時代の
いい思い出ってとこさ
そんな事　言って
分かんねえぞ　お前
春の選抜で大活躍して　いち早く
ドラフトの目玉んなったりして
冷やかすなよ　マジだぜ今の話
俺の決心が揺らぐじゃないか
ま　そういう事にしとくか
がんばれよ
ああ
あ？
ありゃあ　予備の蛍光灯
あったかなあ？
よいしょ
まだ熱いから気をつけろよ
ん？ああ
片手じゃ無理か　よっと
よっ　固いな　クソ
これ固いなあ
そうか
よいしょ　熱っ
うおお
危ないっ　とと　ああー
だから言っただろ
熱いから気をつけろって
どうした　金田一
分かったぞ　なぜ犯人が
あの部室の電球を
付け替えなかったのか
そのわけが
容疑者全員にアリバイがある
それとも　俺はまだ何か重要な
見落としをしてるんだろうか
まあ　いっかあ
おわ　痛ってえな
んだよ　立石の奴
朝か
雪だ　そうか
今日で５日目だから　あしたで
この不思議な雪も見納めか
少し積もってきたようだな
ん？
ふーん　浜辺ってあまり
雪が積もらないんだ
ヒックション
ハーックション　寒い
ああ　悪い悪い
やっぱり雪は積もってない
何でだろう
あのう　すいません
ええ？
あっ
おじさん　春菜のお母さんの…
君は大丸食堂で会った子か
ああ　ちょうどいいや
ちょっと聞きたいんですけど
この雪　どうして海岸には
積もらないんですか
え？おいおい　そんなの
中学の理科の問題だぞ
え　中学の理科？
ああ　そうだ
ま　そういう理屈だ
お分かりかな　そこの高校生
え？なんだ　そうか
君は中学の理科の成績
大したことなかったかな？
え？えへへ
そうか　そういう事だったのか
俺は　とんだ勘違いをしてたんだ
とんだ勘違いを
これで　全員のアリバイは崩れたぞ謎は　すべて解けた
金田一　お前ここに登って
落ちたんだよな
あん時　島津と立石でキャッチ
してくんなきゃ　俺ヤバかったよ
んー　そうなんだよねえ
一生　感謝しろよ
でも　それからあとが
ケッサクだったわ
うんうん
新任の先生が金田一君のこと
うちの生徒と勘違いして
はじめも　ちゃっかりその気に
なって　授業受けてんだもん
笑っちゃったよ　あたし
こら　金田一
冗談だよ　冗談だあって
ギブギブギブギブギブ
とりゃあー
みんな　それぞれ
素朴で個性的だった
なのに何で
何で　こんな事になっちまったんだ
何でなんだよ
あっ　もしもし
美雪か？
はじめちゃん？
俺　そっちに帰るから
え　ねえ　はじめちゃん
はじめちゃん　何かあったの？
いや　じゃあおやすみ
あっ　はじめちゃん
うれしい色だったはずが
許されない色だったなんて
冬美と綾花が…
どうしてあいつが
どうしてなんだ
もう　遅いわよ　金田一君
約束の時間　過ぎてるじゃない
悪い悪い
そうプリプリすんなよ　冬美
１０分遅れただけじゃないか
ダメよ　これ以上遅くなったら
せっかくの雪が雨に変わって
ドロドロになっちゃうわ
まったく　あたしが
ちゃんと起こしたのに
まあまあ　金田一をいじめるのは
それぐらいにしてさ
タイムカプセルを埋める前に
記念写真撮ろうぜ
よーし　決まりだあ
もっとみんな
カプセルの方　寄ってくれえ
そこだあ　よし撮るぞ
魚住　早く早く
おう
イエーイ
あれからお互い　いろんな夢を
描いて育ってきたんだ
そして　知らず知らずのうちに
何かがすれ違って　こんな事に
５年前も　こんなだったよな
みんなでカプセルを埋めた朝も
俺が　何でお前だけ
ここに呼び出したか
分かってるだろうな
まさか　こんな事で再会するとは
思わなかったよ
さすがの俺も　できる事なら
こんな結果を見たくなかった
でも俺は　お前に言わなくちゃ
いけない　友達として
すべての謎は解けたんだ
もう言い逃れはできない
冬美と綾花を殺したのは　お前だ
頼む　自首してくれ
自分が犯人だと名乗り出てくれ
５年前に出会った大切な友達
その中に生まれた小さな誤解
それが　みんなを
こんなつらい結果に導くなんて
降り積もる雪は　はじめちゃんの
心に残った悲しみを
覆い隠してくれるかしら
元気出して　はじめちゃんは
名探偵の孫でしょ
あたしは　いつだって
はじめちゃんの　そばにいるよ
金田一少年の事件簿
春菜の葬儀に出席するために
訪れた雪影村で
次々と起こる殺人事件
死者を送る上送りの矢
盗まれた数珠　俺は
何かを見落としているのか…
そうか　分かったぞ
謎はすべて解けた
だけど　どうして　お前が
いやあー
すべての謎は解けたんだ
もう言い逃れはできない
冬美と綾花を殺したのは　お前だ
頼む　自首してくれ
自分が犯人だと
名乗り出てくれ　島津
おい　何を勘違いしてるんだ
そんな用事で　わざわざ
俺を呼んだのなら　もう帰るぞ
島津　頼む
いい加減にしろ
冬美が発見された時
俺は　みんなと一緒だったろ
その俺に　できるわけないぜ
ああ　最初の推理では
お前にアリバイはある
だが　あの足跡のトリックは
冬美を自殺に見せかけるための
トリックなんかじゃなかったんだ
じゃあ　何だっていうんだ
足跡を付けることで
雪が降り積もるまで現場にいた
人物を犯人だと思わせようとした
そのための巧妙な
アリバイトリックだったのさ
だったら　犯人は
どうやって逃げたんだ
後ろ向きで歩いて
立ち去る以外に　自分の足跡を
残さず逃げる方法なんて
ないじゃないか
島津　後ろ見てみろ
え？
雪の上に足跡が
あの朝　お前が仕組んだのと
同じトリックさ
海岸に雪が
積もりにくいのは　なぜか
それは　海岸の砂に
塩分が含まれているからだ
氷に塩をまくと溶け出す
あれと同じ理屈さ
お前は　冬美の靴を盗み出し
夜のうちに校庭に足跡を付け
そこに塩をまいておいたんだ
そして集合時間より早く
冬美を学校に呼び出し
上送りの矢で冬美を殺した
あとは雪が降り出してから
俺たちと合流し
みんなと一緒に
倒れている冬美を見つけ
慌てふためくふりをすればいい
雪影祭りの雪を利用した
鮮やかなトリックだったよ　島津
本当なの？信じられない
島津君が　まさか
都　どうしてここに
ごめん　はじめ　
昨日から　はじめの様子が
変だったから気になって
でも島津君が犯人だなんて
確かに　俺も
足跡のトリックだけでは
犯人を特定する事ができなかった
だが　綾花の死が
俺に犯人を教えてくれた
あの数珠の件がきっかけでね
数珠って　あのとられちゃった？
ああ　綾花の葬式の時
７人でおそろいで買ったっていう
数珠がなくなって
俺も　それが引っかかっていたんだ
この数珠の件と今回の事件と
切り離しては考えられない
きっと　盗んだのは犯人だ
でも犯人はなぜ
そんな事をしたんだろう
その答えは
綾花の殺害現場にあったんだよ
殺害現場って
あのテニス部に？
綾花が殺された部室の床に
１つだけ落ちていた
この数珠玉　お前のだな　島津
あの日は葬儀があったから
お前は数珠をポケットに
入れたままだったんだ
それで綾花を殺した時に
もみ合いになって
床へ　ばらまいちまったんだろう
まさか　どうしてその数珠玉が
俺の物だと言い切れるんだ
そう　まさにこれを見つけられた時そう言い張るために
お前は全員の数珠を盗んだんだ
この数珠は　お前たち以外
この村では誰も持ってないからな
だったら　あたしたちも
容疑者でしょ
どうして島津君だけ疑うの
あの夜　綾花は
新しい電球を買って　部室へ戻り
電球を取り替えようと思ったんだ
でも　それがどうして
妙だと思わないか　暗い部室で
犯人は数珠玉を　ばらまいてしまい
それを　１つ１つ
拾い集めてるんだぜ
なぜ　そこにある新しい電球を
付け替えて捜さなかったのか
犯人は電球を
付け替えなかったんじゃなく
付け替える事ができなかったんだ
俺も実際にやってみたが
電球を交換するには
両手を伸ばさなければならず
片手ではできない
何が言いたいんだ　金田一
島津　俺は野球部の練習を
見ていた時　妙な違和感を感じた
お前はボールを左手で拾い
左手で投げた
なぜ利き腕の右手で
投げ返さなかったのか
妙に引っかかったんだ
お前が真犯人じゃないというなら
そのボールを思い切り投げてみろ
５年前　俺が太刀打ちできなかったあの剛速球を　もう一度見せてくれ
島津
いつから痛めたんだ　その肩
優勝した秋の大会の最中さ
右腕が肩より上がらないんだ
あの時　部室に新しい電球が
あるのは知ってたよ
でも　この肩じゃ
交換するのは無理だった
金田一の言うとおりさ
どうして　どうして島津君が
冬美と綾花を
殺さなくちゃならないの
島津君
春菜の葬儀の日だった
偶然　あの２人の話を
聞いてしまったんだ
どうしよう冬美　あの子が死んだのあたしたちのせいだわ
あんな事で死ぬなんて
バカよ　春菜
でも　きっと
ひどいショックだったのよ
春菜と島津君のお父さんが
同じだって聞かされて
兄妹どうしじゃ
結婚できないものね
でも　それってウソじゃない
たまたま２人のお父さんが
同姓同名だから
からかっただけなのに
それが　あんな事になるなんて
どうしよう冬美　こんな事
誰かに知られたら　あたしたち…
バカね　誰も知るわけ
ないじゃない
あの子が勝手に
勘違いして死んだのよ
そうよね　そうだよね
何が「勝手に勘違いして
死んだ」だよ
あの２人のくだらないウソで
春菜は　春菜は…
なあ　春菜　やっぱり
みんなに言おうよ
俺たち　つきあってること
ううん　ダメよ
どうして　別に
悪い事してるわけじゃないぞ
うん　だけどみんなとは
今までどおり
仲のいい友達でいたいから
そうか　分かったよ
春菜とは　将来結婚する
約束をしてたんだ
「うれしい色だったはずが
許されない色だった」
恋人どうしだったのに
実は兄と妹
あの遺書は
そういう意味だったのか
でも違うんでしょ　お父さん
同姓同名ってだけでしょ
ああ　でも俺は知らなかった
知っていれば
こんな事にならなかったのに
春菜を死に追い込んだのは
この俺さ
どういう事なんだ　島津
春菜は　あの前の日　俺んちに来て
お願い　子供の頃のアルバムを
見せてくれない？
何だよ　急に
ごめんなさい　でも　ちょっと
気になる事があって
あの時　俺は自分の右腕の事で
頭がいっぱいで
アルバムをあいつに渡しただけで
何も話を聞いてやらなかった
春菜は黙って帰ってしまい
残された
開きっぱなしのアルバムに
あの写真があったんだよ
昔　近所づきあいしていた
春菜のおやじさんが
俺を抱いている写真が
ただ貼ってあった写真だけど
春菜を確信させるのには
十分だった
俺が　あいつと
血のつながった兄妹だと
それで春菜は誤解して
まぬけな話さ　あいつの苦しみに
気づいてやるどころか
追い詰められた春菜に
とどめの一撃を与えちまったんだ
そんなに自分を責めるなよ
来るな
島津　何するつもりだ
島津　何するつもりだ
来ないでくれ　金田一
俺が　あいつの話をちゃんと聞いてやってさえいれば　あいつは…
冬美と綾花ばかりのせいじゃない
あの時　気づいてやれなかった
俺のせいなんだ
だからこの３本目の矢は　俺を
罰するために取っておいたんだ
よせ
島津君
立石
俺　知ってたんだ　島津が
肩を壊して投げられない事を
俺たち　７年も
バッテリー組んだ仲だぜ
隠せるわけ　ないだろう
島津　お前が
苦しんでる事も知っていた
村中で甲子園出場を
待ち望んでるしな
でも　俺には
どうしてやる事もできなかった
肝心な時には
何もしてやれなかったなんて
バッテリー失格だよな
許してくれ　島津
島津
もういいだろう　島津
俺も　立石も　魚住も　都も
お前に生きててほしいって
そう思ってる
きっと　春菜だって
雪影祭り　最後の雪も
雨に変わった
あの日　この校庭で無邪気に
はしゃいでいた俺たち
それは　大人になる痛みを知る前の
ほんの短い
幻だったのかもしれない
島津は　その日のうちに自首をした
ねえ　はじめ
何だよ
あした　タイムカプセル見たら
帰っちゃうんでしょ
ああ　学校もあるしな
あれー　お前　寂しいんすか？
べべ別に　誰もそんな事
言ってないでしょ
俺は　ちょっと寂しいんだけどな
ホントにここでいいの？
ああ　大丈夫だよ
ほら　あったあった
おお　タイムカプセルだ
うわあ　懐かしいなあ
よっこい
中は大丈夫かな
どうかなあ
ジャカジャン
おお　入れた時のまんまじゃねえか
ええ　ホントだあ
懐かしいなあ
あ　これ誰んだ
ああ　それ
自分で作った曲だ　恥ずかしい
「１７才のオレにささぐ
セブンティーン・ドリーム」？
ダッサいタイトル
これでキメてるつもりだったの？
うるせえ
あ　このＢ面
「春菜　ＭＹ　ＬＯＶＥ」って
お前　春菜にほれてたのか？
昔の話さ
しっかり振られちまったよ
それでヤケを起こして家出して
ライブハウスのオーディション
受けまくったけど
これもダメ　しかたねえから
うちに戻って
漁師やることにしたんだ
お前　めちゃカッコわりー
キャー
何よこれ
あたしのパンツじゃない
体育の時なくしたと思ってた
誰よ　こんな物入れたの
ゎ
え　それ　お前のパンツだったの？
綾花のかと思って…
やはり貴様か　バカー
痛えっつーの　やめて
お前も　めちゃカッコ悪いよなあ
ったく　最低
島津のは小学校の大会で優勝した
ウイニングボールだ
真面目だったからな　あいつ
立石　何だこりゃ
お前のは野球カードだけか？
カードだけってことねえだろう
そのカード　今ならプレミア付いてちょっとしたお宝だぞ　汚すなよ
へえ　こんなもんがねえ
ああっ
綾花のはテニスボールよ
ウィンブルドン優勝記念なんて
自分で書いちゃってるわ
綾花らしいね
そういやあ
ウィンブルドンが夢だって
言ってたもんな
はあ　何だよ　都の日記
食事のメニューばっかじゃん
ちょっと勝手に読まないでよ
ほんっとに
推理作家んなるつもりか？
「セブンティーン・ドリーム」
歌うよ
冬美のは？
島津の写真じゃないか
裏に何か書いてあるぞ
え？「このタイムカプセルを
再び開ける日までに
島津君が
好きになってくれるような
女の子になれますように　冬美」
あいつ　あの頃から
島津のこと好きだったんだ
冬美　ホントに
きれいになったもんね
その島津が春菜と
つきあってると知って
振られた冬美は悔し紛れに
ちょっとした嫌がらせをした
それが　春菜を
死に追いやるとも知らずに
ほんの小さな
すれ違いや勘違いが
こんな　取り返しのつかない事に
なってしまうなんて
最後は春菜のスケッチブックだ
あ　みんなの絵がある
これ　俺だよ
うまいなあ
おお　俺のもあるぜ　カッコイイ
やあだ　あたしも
みんな　それぞれ
いちばん好きな事して
いちばん輝いてる時の顔だわ
いい絵だ
あいつ
みんなのこと　よく見てたんだな
ちょっと無口で　一歩
引いてんのかなって思ってたけど
ホントは　みんなと一緒にいる時がいちばん好きだったんだ
このタイムカプセルを
もう少し早く開けてたら
何かが変わってたのかな？
ん？雪だ
雪影祭りも終わって
本格的に冬になるんだな
あれ　何か落ちたぞ
春菜
こんな寂しい所で
君は何で絵を描いているんだい
私　雪を描いてるの
はじめちゃん
ん？
美雪
来ちゃった
何だよ　金田一
お前も隅に置けないな
あ　いや
そんなんじゃないんだって
あんなかわいいガールフレンドが
いるなんて聞いてなかったぜ
あたしも初耳
違うって
美雪は　ただの幼なじみで
まあまあ　いいっていいって
ホントだってば
お前は　そういう奴だよ
そうそうスケベだったもんなあ
何だよ　それよー　ほんっとに
ねえ　はじめちゃん　春菜さんって
本当に　自殺する
つもりだったのかな
え？
「うれしい色だったはずが
許されない色だったなんて」
それって遺書なんかじゃなくて
お父さんに怒りをぶつける
手紙だったんじゃないかしら
衝動的に死んじゃったけど
春菜さんなりに
立ち直ろうと必死に
もがいていたような気がするの
そうかもね
俺も　そう思いたいな
そのうち遊びに行くからな
ああ　いつでも来いよ　待ってるぜ
元気でな　金田一
お前も　遊びに来いよな
エロ本いっぱいあっからよ
はじめちゃん
あれ　何だよ都　元気ないぞ
別に　あたしはいつもどおりよ
都　おばさんに「おいしい魚
また食べに来ます」って
言っといてくれよな
お前も
推理作家　がんばれよ　な
あ　おい　泣くなよ
お前　キャラが違うぞ
キャラが　な　な
うるさい
あ　じゃあ　またな
さようなら
じゃあな
また来いよー
いい友達だね
ああ
ここ　よろしいですか
はい　どうぞ
失礼します
ほほに傷　まさか春菜の…
どうしたの　はじめちゃん
え？いやいや　いいんだ
こちらには雪影祭りの
見物か何か？
ええ　雪影村に　ちょっと
いや　失礼　私も昔
雪影村に住んでましてねえ
娘が小さい頃　事情があって
私は村を出ましてね
娘とは　たまに手紙の
やり取りをする程度でしたが
先日　亡くなった事を仕事先で知り急いで駆けつけたんですが
葬儀には間に合いませんでした
あ　すいませんね　こんな話
いえ
いやあ　実は以前
あなたとそっくりな友達が
描いてある絵を
手紙でもらいましてね
それで　つい
母親に任せたままで
一緒に暮らしてなかった娘ですが
失ってみると
胸にぽっかり穴が開いたようで
ひどい父親ですよ
白銀のゲレンデで
スキー好き好きー！
だったはずなのに
お偉いさんの息子が誘拐？
しかも　その身代金の運び屋に
指名されたのが　なぜかこの俺
大金の入ったトランクを持たされ
犯人の難題に挑むことになった
ところが　一瞬にして
その中身が俺の目の前で消えた
クソッ　それもこれも
フミ　お前がよけいな事を
金田一少年の事件簿﻿いやー　滑った　滑った
筋肉痛で痛いの何のって
そりゃ　あんだけ転んでりゃ
あちこち痛いでしょうよ
どうでもいいけど
私が貸したジャケット
破ったりしないでねえ
結構　気に入ってるんだから
任せとけって　俺の転び方は
プロの領域なんだぜ
転んで稼げるのは
サーカスのピエロと
ぬいぐるみの人だけだよ
俺の背中にチャックはない
チャックは　なくていいんだけど
それ　どうすんのよ？
えっ　何？
ジャケットの右後ろ　腰の辺り
んん…　ああっ！
どうしたの？
あー　いやー
何でもありませーん
フフッ
それよりフミさん
僕たちのテーブルは
どこに取ってくれたの？
ほら　あそこ　そこの窓際の
見晴らしのいいテーブル
フミの赤い手袋が目印だよ
こーらーっ　そこのクソガキ！
フミちゃん
お前だよ　お前
返事しろよ　こらっ
今　あんた　私の赤い手袋
はたき落としたでしょう！
別に
ウソ　ほら　これよ　これ
ああ　それね…
ゴミかと思った
何だと！
どうした？フミ
どうしました？巧さん
巧様　あちらの席で
お父様がお待ちですよ
ヤダ　こっちのほうが
見晴らしがいいもん
ねえ　若林さん
こっちで食べようよ
いいっすよ　俺ら　ほら
こっちで食べますから
本当にすいません
お母様が亡くなられてから
少し気持ちが
いら立つことが多くなって
いやー　構いませんから　なっ？
フミちゃん
ほら　フミ
僕　ホットケーキとココア
かしこまりました
それにしても
ホテルのオーナーらしき人が
あんなに気を遣うなんて
どこのお金持ちの子かしら
さあ…
んん？
さあ　フミ　何食う？
カレー
カレー
金田一フミのカレーで活躍
可憐な活躍！
いやあ　さっぱりした
やっぱりスキーに来たら
締めは　温泉よね　おっ
いい眺め
あっ
ママー
おやおや
坊や　どうしたの？
さっ　泣かないで
お名前　言えるかな？
エーン　ママ　アッアア…
ねえ　ぼく　お名前　教えて…
エーン！
あのね…
泣くな！
ハッ
また　こいつ
迷子になったときは
泣きながら歩き回るより
じーっと待ってたほうが
いいんだよ
よーし　いい子だ　そうしてれば
きっとお母さんが
見つけてくれるから
ふーん
ゆうちゃん
あっ…
ママ
どこ行ってたの？捜したんだから
ふーん　意外といいとこあるじゃんフンッ
でも　よかったね
すぐお母さんが見つけてくれて
見つけてくれるさ
お母さんがいればね
父さんじゃダメなんだ
えっ　なんで？
あっ　えーと…
ほら　今のみたいの
あんなのは　父親じゃ
サマになんないだろ？
そうかもね
巧さん
ん？若林さん
巧さん
どこ行ってらしたんですか？
心配しましたよ
ごめんなさい
フフッ　あっ　ヒヒヒッ
あっ　どうかしましたか？
何でもないよ　何でもない
さあ　行こう　若林さん
フフフフーッ
照れちゃって　かわいい
でもまあ　思ってたより
いい奴みたいね
それに父親も　結構　お金持ち
ってことは　案外　狙い目？
お前　なあにやってんだ？
あっ
んん…　別に…
んなことより
のんびりしてて　いいわけ？
美雪お姉ちゃんのウエア
その件に関しては
どうぞ　ご心配なく
すでに問題は　クリアされました
えっ　どうしたの？
ふふーん　ヒミツ
ケチ
まっ　いいから　いいから
行こうぜ
何隠してんだよ
へへー　別に
金田一さん　金田一さん！
はーい　どなたですか？
あれ？あなた　確か…
若林と申します
巧さんが大変なんです
すぐに来てください
あっ　ちょっと着替えぐらい…
急いでください
なん…　なんで俺が…
いいから早く
はあ…
おお…
君が金田一君かね？
うわあ　すげえアップ
私は　黒塚和成という者だ
一ちゃん　この人　確か国会議員の
ええ　国会議員の
黒塚和成先生です
はあ　その国会議員が
俺に何の用すっか？
一ちゃん！
金田一君　頼む
息子を　巧を助けてくれ
はあ？あの…　すいませんが
もう少し状況を
説明してもらえませんか？
俺　なあにが何だか
あっ　すっ　すまない　つい
事情は　私から説明しよう
あれ？
長島警部　どうしてここに？
ヘッ　さあ　どうしてかなあ
この俺が　ネクタイ締めて
楽しくスキーに
来たように見えるか？
ああ　いや　その…
事件だよ　事件！
事件？
そう　こちらの黒塚和成氏の長男
黒塚巧君が　今朝までに
何者かに誘拐されたんだ
エエッ
巧って…　あのマセガキ
あいつ
しかも　犯人は
身代金３０００万を要求し
どういうわけか　お前を
現金の運び役として指名してきた
俺？ああ　ホントだ
けど　なんで俺なんだ？
知るもんか！ともかく　お前は
これから　この３０００万入った
カバンを持って
午後８時に　第３ゲレンデの
レストハウスに行くんだ
だけど　何の関係もない俺が
こんな大金
持っていくってのも…
やってあげて
うん？
人質の安全のためには
犯人の指示どおりにするのが
一番いいんでしょう？
フミ　なんか変だぞ　お前
フミちゃん　あの子のこと
怒ってたんじゃないの？
そりゃそうだけど
でも　今は　そんなこと言ってる
場合じゃないもん
うーん…
金田一君　頼む！
ウチの巧を救ってやってくれ
やっぱ　すげえアップ
クソッ　ったく
なんで俺が　こんなこと
しなきゃいけねんだよ
ハア…　やっと着いた
さて…
あっ
もしもし
ようやく　たどり着いたようだね
あんたが犯人か？
取り引きは
こちらの言うとおりにしてもらう
待ってくれ
まず　持ってきた金を
携帯の入っていたカバンに
詰めるんだ
ハア？なんでそんなマネを？
へえ　ウッソー
やだ
金を移し替えたら
そのカバンを持って
今度は　第４ゲレンデへ行け
第４？あそこ　今日　閉鎖中だぞ
それから　君が今している手袋は
そこへ脱いで行け
エッ　手袋？どういうこった
だまって言われたとおりにしろ
また連絡する
クッソー
あーあ…　行くしかないか
ハア…　やっと着いた
ハア…　ん？
ここにも怪しげなカバンが
ハア
来た！
あっ　クソー　手がかじかんで
もしもし
どうした？ペースが落ちてるぞ
この雪の中だ　これ以上　速くは…
もうバテたか
え？
先は　まだ長いぞ
とりあえず　そこの小屋で
少しだけ休ませてやろう
ただし
下手な動きができないよう
金は　そこのカバンに移し替えて
元の場所に置くんだ
また連絡する
おい　ちょっと待ってくれ　あ…
まだまだ先が長いってか
ハア　だいぶ暖まってきたな
それにしても犯人の奴
どういうつもりなんだ？
俺に雪の中を
散々　歩き回らせたあげく
今度は　この小屋で
もう１時間近く　俺を待たせて
大体　なんで
金の受け渡し役を俺に？
それに
手袋や不自然なカバンの入れ替え
犯人の本当の狙いは　一体…
うわっ　何だ？
屋根の雪が落ちたのか
あっ　カバンは？あった
雪に半分　埋もれてる
うん？
ハッ　まさか　あいつが？
待て！
今だ！
じたばたするな！
長島警部
おう　金田一　ご苦労
長島警部！
えっ？
たっ　大変です
カバンの中身が空っぽです
何だって！
どうなっとるんだ？
申し訳ありません
しかし　犯人の１人は
すでに押さえてありますので
この男から
必ずや　ご子息の行方を
だから　知らねえって
言ってるだろう
俺は　ただ　カバンを持ってきたら
金をやるって言われて
ウソをつくな
ウソじゃねえよ
第一　俺は　あのカバンに
触ってもないんだぜ
一体　どうしてくれるんだ！
まあまあ　黒塚さん
そんなに結論を　急ぐことも
ないんじゃないんですか
何？
ともかく　俺の話を聞いてください
きっ　金田一　それじゃ…
ああ　謎は　すべて解けたぜ
な…　何
俺の考えが正しければ
犯人は　この中にいる
えっ　でも　犯人は　どうやって
カバンの中の
３０００万円を取ったの？
いや　犯人は　まだ
３０００万を手にしちゃいないぜ
何だって？
一ちゃん
何やってんだよ
まあ　見てろって
えっと　たぶん　この辺りに…
あった
ああー！
雪の中から
同じカバンが　もう一つ
あっ　これは…
い…　いつの間に
すり替わったんだ？
俺が小屋の中にいたとき
一度　屋根の雪が
盛大に落ちてきたんだ
あの時
自動的に　すり替わったのさ
自動的に？
実は　金を入れるカバンの下には
犯人によって
落とし穴が掘られていたんだ
やがて屋根の雪が落ちると
雪の重さで金の入ったカバンは
穴の中へ落ちて埋まり
同時に雪とともに落ちてきた
カバンと入れ替わる
しかし　そんなタイミングよく
屋根の雪が落ちてくるものかねえ
もちろん偶然なんかじゃない
犯人は　そのために
雪の中　手袋を脱がせて
俺をあちこち歩き回らせたんだ
そして
俺が疲れたころを見計らって
とりあえず　そこの小屋で
少しだけ休ませてやろう
この小屋で休むように仕向けた
小屋の中には
犯人の用意したストーブがあって
俺が暖を取ると
暖かい空気は　天井を暖め
屋根の雪が落ちてくるってわけさ
うーむ…
そんなことより　犯人は誰なんだ
ウチの巧は　無事なのか？
まあ　落ち着いて
実は　犯人は　犯行前に
あるミスを犯してしまったんです
ミス？
何なんだ？そのミスというのは
金田一！
ボタンですよ　ボタン
犯人は　犯行準備中に
自分のジャケットのボタンを
無くしちまったんだ
もし警察が
普段　人の立ち入ることのない
小屋の周辺や中で
ボタンを見つけたら
自分が怪しまれてしまう
そこで一計を案じたんだ
無くしたボタンと
同じボタンを持った人物に
同じルートを
たどってもらえばいいってね
犯人は　あらかじめ
俺のウエアのボタンを
ちぎり取ったあと
俺を現金運びのため
あっちこっち歩き回らせた
こうしておけば　仮に　どこかで
ボタンが見つかったとしても
それは　俺のボタンだと
警察は考えるだろう
ふーむ
それじゃあ　一ちゃん
そう　犯人は
俺と同じメーカー製で
同じデザインのウエアを着た人物
黒塚巧の家庭教師
若林夕雨子さん　あなたですね
そっ　そんな…　なっ　何を証拠に
証拠なら　あなたが
身に着けてるじゃないですか
あなたが俺のウエアから
取って付けたボタンには
まだ俺の指紋が
残ってるはずですよ
おや　右の腰を押さえましたね
どうして分かったんですか？
俺は　右の腰のボタンが
無くなったなんて
ひと言も言ってませんよ
うっ…
じゃあ　やっぱり　あなたが
若林　巧は　どこにいるんだ！
俺の話は　まだ終わってませんよ
と言っても　ここから先は
もう一人の犯人に出てきて
もらってからにしましょう
もう一人の犯人？
おーい　そこにいるんだろう？
出てこいよ
おお…　たっ　巧…
何これ　どういうこと？
狂言誘拐かあ…
一ちゃん　どうして分かったの？
まず　無くしたボタンの位置
う…　ここからだと　ほら
折り返しの部分で
かなり見づらいんだよ
だけど　俺も美雪も
気づかなかったのに
背の低いフミは　気がついた
それで思ったんだ
犯人も自分では分かりにくい
後ろの腰の辺りのボタンが
取れてるのを
フミぐらいの身長の人間に
指摘されたんじゃないかってね
それに　送られてきた脅迫状も
ああ…　これのことか？
切り張りされた文字を
よく見てくれ
全部　ルビが付いてるだろう？
それに　この紙
何だ？
漫画の雑誌の切り抜きですよ
俺　なんか最初から
引っ掛かってたんだ
ったく　ガキの茶番に
つきあわされて　いい迷惑だぜ
もう少しだったのに…
巧さん　あっ…
巧に近づくな！
あっ
ああ…
金欲しさに　私の巧に
とんでもないことを
けしかけおって
お前に息子を
犯罪者にしてくれなどと
頼んだ覚えはない　お前はクビだ
お前のような…
違うよ　父さん　違うんだ
けしかけたのは　僕のほうだ
僕が全部　考えて
若林さんに持ちかけたんだよ
巧…
だって　僕　見たんだ
お願いします　黒塚先生
母の治療費として　３０００万円
どうしても今月中に　そろえないと
しかしね　３０００万円なんて
返すアテはあるのか？
そ　それは　どんなにかかっても…
悪いが　選挙も近い
赤の他人に　ただで３０００万円を
貸す余裕はないね
僕は若林さんを赤の他人だなんて
思ったことはないよ
いつも　そばにいてくれるのは
若林さんだけだ！
父さんなんか　いつも講演会だ
集会だって　どっか行ってて
巧…
かっ　母さんが…
母さんが死んだときだって
父さんは…
巧さん　ごめんなさい
もういいんです　もう…
父さんじゃダメなんだ
巧　お前は　まだ
あの時のことを恨んで
違うよ　一生懸命だったんだよ
ただ　一生懸命になって
大切な人のためにと思って
それで　精いっぱい
その人の身になって考えて
だから…　その…
おじさんだって
巧君のこと大事なんでしょう？
だったら…
だったら分かってあげなよ
分かってほしいよ
きっと　確かめたかったんだよ
自分が迷子になっても
大事な人が
必ず見つけてくれるって
ハハハ
一度は　白銀の中へ消えた金だ
どこへ持っていくなり
好きにするがいい
父さん…
ありがとうございます
いやー
しかし　フミ　よく言った
「迷子になっても　大事な人が
必ず見つけてくれる」って
うん　いいセリフだなあ　ホント
あくまで一般論だよ　あんなもん
おかしくないわよ　フミちゃん
頑張ったわよ
うん　頑張った　あんな顔でっかい
おっさん相手に　よく言ったよ
そんなことより
一つ　聞いていい？
私が見つけたとき
一のウエアのボタン
もう取れてたじゃん
取れて無くなってたボタンを
なんで　もう一度
取ることができたわけ？
うーん　なかなか鋭い指摘じゃん
初めて若林さんと会ったとき
あの人　ほら
俺と同じデザインで
色違いのウエア着てたろ？
ちょうど同じ位置のボタンが
取れそうになってて
イスに座ったとき
これが取れちゃったんだなあ
それじゃ　あのテーブルで
あんなに粘ってたのは
ボタンを
ゲットするためだったの？
あきれた
お前たちらしい発想だ
あ…　もういいの？
うん
すっごく怒られたけど
なんとかね
おい
なっ　何？
ありがとな
あっ…
じゃあな
うーん
何はともあれ　一件落着ってか
あーら　そうかしら
えっ
一ちゃん　私のウエア
傷つけちゃったでしょう
えっ　でもボタンぐらい
じゃあ　その脇の下は？
えっ　ナアッ！
一ちゃん
私のウエア傷つけちゃったら
何でも　おごってくれるって
約束よね
そうそう
えっ　あっ　えっ…
わっ　わたくし
そんなこと言いましたかね
フミちゃん　明日は
何でも好きなもん食べよう
一ちゃんの　おごりで
えー　ホント？じゃあ　フミね
ステーキと　カニしゃぶと
北京ダックと伊勢エビと　プリン
あとカレー　もう一回！
頼むよ　もう！
聖夜　７時になれば　何かが起こる
ミステリーナイトの
姿なき主催者は
俺たちをこの山荘に招いた
プレゼントとして
そこに用意されていた手紙
それは　俺たちが同じ山荘に
紛れ込んだ殺人鬼と一夜を過ごす
恐怖の物語だった
そして少しずつ
俺たちのいる現実と
リンクし始め　まさか　これは…
金田一少年の事件簿
「迷い込んできた悪魔」
「１２月２０日　夜７時
悪魔が来たりて鐘を鳴らす」
いつきさんのとこに届いたもの
こいつと同じかい？
ああ　やっぱり
差出人は不明だった
私に届いた手紙には
山荘への地図が
私のには
鍵が一緒に入ってました
鍵？
その山荘の鍵なんでしょうね
悪魔が来る山荘かあ
えっ
なんかワクワクしてきますよね
佐木君
おい　どうやら着いたようだぜ
あれが？
悪魔の山荘？
うわあ　真っ暗
おい　こら
勝手に　どんどん
入っていくんじゃない
ほおー　広いな
リビングですかね？
っていうより　ホールだな　こりゃ
なんか寒い
とりあえず　部屋を暖めるか
ふう　落ち着いたわね
しかし　妙だよな
えっ　何が妙なんです？先輩
いや　壁に掛かっている絵さ
絵が？
別に妙なことは
ないんじゃないか
壁に　いくつも
模造画が掛けられてる
この山荘の持ち主は
よっぽど絵が好きなんだろうな
いや　よく見てみなよ
この絵
全部　印刷されたもののようだけど
ちょっと粗すぎないか？
なるほど
こりゃ　コンビニの
カラーコピーのほうが　まだマシだ
先輩　それを言うなら
これから始まる
ミステリーナイトのほうが
よっぽど妙ですよ
そうだな　俺たちをここに招いた
ミステリーナイトの主催者が
誰なのか…　それも気になるしな
たぶん　これから出題される
ミステリークイズを解いていけば
すべてが明らかになるはずだ
クイズって
どうやって出題されるのかしら
そうだよ
ここには　私たち以外　誰も
７時になったら　何か起こるのよ
きっと　そこでクイズが
あっ
ハッ
これが悪魔の鐘
何かが起こるはずだが…
ああ　先輩
どうした？佐木
一つ　言い忘れてました
ええ？
僕あての招待状に
書いてあったんです
「悪魔の鐘　鳴り終わりし時
炎の上を見よ」と
ということは
あの暖炉の上に
何かあるってこと？
これか？
何だ？すごい枚数の手紙だな
読み上げてくれ
ああ
「迷い込んできた悪魔」
何だ？小説のタイトルみたいだな
たぶん　これから
俺が読み上げる物語の
タイトルに違いない
「猛吹雪に見舞われた山中で
若い男女が遭難しかけていた」
いやー　それは　大変でしたね
この別荘の　あるじで
恩田と申します
どうぞ
ゆっくりしていってください
いやー　助かります
ホントひどい吹雪で
お邪魔しまーす
スキーは　その辺にでも
置いてください
あはっ　はい
さあ　奥へどうぞ
いやー　ホント　ラッキーでしたよ
この辺りの別荘って
どこもかしこも無人で
ここに人がいなかったら
マジで遭難してたかも
それは　本当に幸運でしたね
実は私も　たまたま３日前に
ここへ来たんですよ
夏は　ともかく　冬場は２～３度
スキーに来るぐらいでして
わあー　すてき
けど　壁に掛かってる絵ってさ
模造画にしちゃ　印刷　粗いよな
お世話になるんだから
そんなこと言っちゃダメよ
やあ　やあ　やあ
また遭難者ですか？
おっ　今度は　ずいぶんと若いな
高校生くらいじゃない？
ねえ　火口さん
あちらの万田さんと火口さんも
あなた方　同様
この突然の吹雪で
避難してこられたんです
今　温かいものを
お持ちしますので
どうぞ　くつろいでいてください
君たちも　こっち来て暖まりなよ
ああ　どうもどうも
いやー　お互い
ひどい目に遭いましたよね
君たちは
スキーをしていて迷ったんだよね
ああ　そうなんですよ
こいつのせいなんっすけどね
何よ　一ちゃんのせいでしょう！
面白いコースがあるからって
無理やり
ああ　ヤダね
人のせいにしちゃってさ
何それ
何だよ　あそこで　お前が
こけたせいで　コースから
反れちまったんだろ
そっちこそ
人のせいにしてるじゃないの
何すんだ　お前
私は　一ちゃんについていった…
面白い子たちね
えっ？
こっちに座れば
この吹雪は　当分やまないだろうし
体を休めておいたほうが
いいわよ
ああ　ようやく
笑顔を見せてくれましたね
火口さん　あ…
あの…　お二人は
お知り合いなんですか？
えっ　そう見える？
さっき会ったばかりの
真っ赤な他人！
あっ…　火口さん
近くで車が雪にハマって
動けなくなったんだって
俺は　山歩きしてて
吹雪に巻かれて　参っちゃったよ
ああ　そうそう
自己紹介　まだだったね
俺　万田光男　一応　コメディアン
へえ
テレビとか出てるんですか？
出てない　出てない　舞台だけ
ようするに売れてないってことね
えっ　えへへへ…　そのとおり
ピンポーン
あっ
え？
また　お客様が増えました
スノーボードで
コース外を下りてきて
迷われたそうで
鳳　辰馬っていいます
いや　ホント参りました
うっかりボードなくしちゃって
そりゃ　大変でしたね
しかし　この吹雪じゃ
私たち６人とも
下手すると２～３日は
ここに缶詰になりそうですね
そうだ　まだ君たちの名前を
聞いてなかったな
ああ　すみません
私　七瀬美雪といいます
それと　私の幼なじみの…
金田一　一でーす
なんか昔の探偵みたいな名前だね
ええ　一ちゃんのおじい様は
有名な名探偵さんなんです
ほおー
そいつは　すごいな
「その瞬間　一は
集まったメンバーの中に
ただならぬ雰囲気を感じ取った」
なるほど　その物語から
クイズが出題されるわけですね
けど　変だと思わないか？
何がです？
俺たちがいる　この山荘と
この話に出てくる山荘って
つくりや　置いてあるものまで
まるで同じじゃないか
ああ　だが　あらかじめ
この山荘を使うのを前提に
書かれたもんじゃないのか？
そういえば
前に一ちゃんと参加した
ミステリーナイトも
そうだったわ
でも　確か　その時って
実際に殺人事件が
起きたんですよね？
ええ
まさか　今回も？
そんな…
そんなこと　あるわけないじゃん
そうよね
ねえ　続き読んでよ
ああ
「一は　その殺気を
振り払うかのように」
「テレビのスイッチを
入れようとした」
えっ？テレビのリモコンですか？
ええ
天気予報でも見ようと思って
そちらの
サイドボードにありますよ
しかし　こんな山奥で
テレビなんて映るのかい？
それは　映りますよ
だから置いてあるんです
ふん　それは　そうよね
あっ　ヤダな　今の笑い方
もしかして火口さん
俺のこと嫌いですか？
ふうん　残念だな
俺　火口さんが　ここに来た時は
ラッキーって思ったんですよ
この出会いが恋に
発展したりしてとか思ったりして
いいかげんにしてくれる？
えっ…
こっちは　あなたみたいに
暇じゃないのに
車が雪にハマって
イライラしてるの
その言い方はないでしょう！
俺だって　あんたが思ってるほど
暇じゃないよ
だけど　こうやって
閉じ込められちゃったからには
しかたないし
少しは　場を和ませようと…
あっ　ニュースやってますよ
「さあ　次は　シロシカ保育園に」
「サンタさんが
やってきた話題です」
「クリスマスを間近に控えた…」
平和な話題ですね
天気予報　終わっちゃったのかな
「ん？えー　えー」
「ここで今　入ったばかりの
臨時ニュースをお知らせします」
「本日　午後３時ごろ」
「シロシカ市で巡回中の警察官が
殺害されました」
「犯人は　出門章一　３５歳」
「シロシカ市内の劇団に所属する
無職の男です」
「所轄からの情報によりますと
出門は　中年の男性の遺体を」
「シロシカ山に捨てに来たところを地元の警察官に見つかり」
「犯行に及んだものと
見られています」
「現在　出門は
シロシカ・スキー場付近の
山中に逃亡している…」
あっ　何だよ　これ
アンテナが折れたのかも
しかし　シロシカ山中といえば
この辺りですね
どうせ　この吹雪なら
ここに　たどりつけないわよ
でも　用心するに越したことは
ないと思いますよ
念のため　戸締まりは
厳重にしといたほうが…
大丈夫さ
えっ　どうして？
普通　逃亡犯なんてものは
こんな人のいる所より
無人の別荘とかに
隠れるんじゃないかな
ここに来るまでに
そういう別荘　何軒か見かけたし
ああ…　無人の別荘なら
俺たちも見たけど
どこも厳重に戸締まりしてあって
簡単には
入れそうもなかったっすよ
ん…
それに　人のいない所じゃ
食べ物とか寒さをしのぐための
灯油とかもないかもしれないし
その殺人犯
出門っていう名前でしたっけ？
そういえば　最近　読んだ本で
悪魔のことを
デモンって言ってたわね
ハハッ　その殺人鬼・デモンが
ここに迷い込んでくるって
わけですか？
心配は無用ですよ
その殺人鬼とやらが
ここに来たとしても
あるじの私が中に入れなければ
いいんですから
どうかしら
そいつの顔も分からないのよ
うっかり中に入れちゃうかも
いえ　ひょっとしたら
もう入れちゃってるかも
火口さん　どういう意味だよ　それ
よく推理物なんかであるじゃない
雪の山荘に
見知らぬ男女が閉じ込められて
その中で殺人が起きていくって話
やめましょうよ　そういう話
七瀬さんの言うとおりですね
さっ　そろそろ皆さんを
お部屋に　ご案内しましょうか
念のため　寝る前に
戸締まりには気をつけましょうよ
おはよう　一ちゃん
おはよう　金田一君
おはようございます　金田一さん
そちらのダイニングに
朝食をご用意しました
よろしければ　どうぞ
ああ　どうも
おお　来たな
一番若いのに最後とは大物だね
俺が最後…　鳳さんは？
誰か来てくれー！
えっ？
どうしたんですか？鳳さん
そ…　外で人が死んでるんだ！
さっき　外の天気を確認しに
出てきたら…　あそこに
「雪の中に埋もれていた
中年の男は」
「見るからに遭難した
スキー客のようだった」
ツイてないね
あと２０メートルも進めば
山荘に　たどりついたのに
このスキー客　よっぽど腕に
自信があったんだろうね
うん？おい　何やってるんだ
金田一君
「一は
遺体のポケットを探っていた」
おいおい　それマズイだろう
え？
警察が来る前に　そんなことしちゃああ　いや
俺は　ここにそう書いてあるから
読んでるだけさ
それもそうか…　で
ポケットから何が出てきたんだ？
出てきたのは…
あれ？おかしいな
どうした？何が　おかしいんだ？
ちょっとね
ポケットに入ってたのは
スキーワックスの携帯スプレーと
黒い財布　それとハンカチだけ
あと胸には…
スキー検定１級のバッチだ
そして発見した時には
スキーウェアに手袋
スキー板も　ゴーグルも
身に着けたままだった
やっぱり　そういうことか
何が　「やっぱり」なんだ？
これは　遭難なんかじゃない
れっきとした殺人事件だ！
何ですって？
殺人って　どういう意味よ
ああ　これは！
えっ…
何だ？
見てみろ
あっ　首を絞められた痕が
まさか　夕べのニュースの
殺人鬼・デモンの仕業？
そのとおり　どうも
引っ掛かることがあったんだ
その答えが　ようやく見つかったよええ？
えっ？
あっ…
犯人　殺人鬼・デモンは
この中にいる
ということは　容疑者は
スノーボーダーの鳳
山荘の主人　恩田
コメディアンの万田
火口という女性
それと一応
金田一と美雪ちゃんも入れて
全部で６人か
犯人は　かなりの演技派で
その言動からは
なかなか　しっぽを現さないんだ
だけど　演技派であるがゆえに
あまりにもマヌケな
失敗をやらかしているんだ
殺人鬼・デモンの
たった一つの失敗ねえ
先輩　犯人は
万田じゃないっすか？
どうしてだ？佐木
殺人鬼・デモンは
演技派なんでしょ？
コメディアンって
普通の人間よりは
演技力があるはずですよ
じゃあ　彼が犯した失敗ってのは
何なんだ？
問題は　それなんですよねえ
恩田にしても
火口って女性にしても
不審な点は　ないように思えるが
まさか　犯人は
迷い込んできたスキー客？
被害者が犯人…
犯人は
架空の人物に　襲われたように
見せかけようとして
吹雪の中　作業中に
何らかの手違いで
凍死してしまったとか
おいおい　言っとくけど
この被害者は　遭難した
スキー客なんかじゃないんだ
えっ　どうして？
彼は　スキー客なら
絶対に持っているはずのものを
身に着けてないんだ
何？それ
ほら　俺の持ってる　これさ
リフト券…　あっ　確かに
普通　スキーをする時って
一日券とかをホルダーに入れて
腕に　はめてますよね
たまに回数券を買う人もいるけど
１級を持ってるような人が
リフト券を持っていないのも
妙だな
それは　被害者が
スキーをしていたように
見せかけるために
細工されていたからさ
しかも　よく考えてみてくれ
最初に万田さんがやってきた
そのすぐあとに火口さん
それから　俺と美雪
で　最後に
鳳さんが現れたとすると
被害者は　一体　誰で
いつ　ここを訪れたのか
一番　自然な考え方は
こうじゃないかな
つまり　被害者は
山荘に集まった
誰よりも前から　そこにいた
山荘のあるじ
その人だってことさ
ということは　犯人は…
そう　恩田と名乗った男こそ
殺人鬼・デモンの正体さ
彼は　万田さんたちが
やってくる以前に
山荘に逃げ込み
何も知らずに迎え入れた
本当の恩田さんを
殺害していたんだ
ところが　そのあと
万田さんや火口さんや俺たちが
次々に訪ねてきてしまったために
どこかに隠しておいた
恩田さんの遺体を
始末しなければならなくなった
そこで　万が一　見つかっても
遺体の身元が割れないように
スキーヤーの格好をさせて
遭難者に
見せかけることにしたんだ
だけど　恩田さんがデモンだという証拠はあるんですか？
朝食の時の彼の奇妙な行動が
それをはっきり示しているんだ
奇妙な行動？
ここを読み返してみれば分かる
彼は　ホールの観葉植物に
水をやってるだろう？
山荘のあるじが　植物に
水をやるのが　そんなに奇妙か？
確かに　ごく自然なことだよ
これが本物の植物だったらね
何ですって？
山荘の植物は
よくできたイミテーションさ
にもかかわらず彼は
山荘の主人を演じることに
熱中するあまり
本当のあるじなら
絶対やるはずのないことを
しでかしてるんだ
作り物の植物に
せっせと水をやるという
マヌケで　こっけいな行動をね
それが犯人の決定的な失敗
だけど先輩
どうして　その観葉植物が
作り物だって分かるんですか？
そうだ　お前は　この話の中で
観葉植物には
指一本　触れてないはずだぜ
簡単なことだよ　このニセ主人も
最初に言ってるだろう
「冬には
２～３度しか来ない」って
普通　そんな所には
水をやらなくても
日持ちのする植物を置くか
もしくは　山荘に来るたびに
自分の家から
植物を持ってくるなりするはずだ
それに　山荘に飾ってある
絵を見れば分かるように
ここの　あるじは
来るたびに本物の植物を
わざわざ持ってくるようなまねは
しないだろう
ということは　作り物であると
考えるしかないのさ
水をやるという作りすぎた芝居が
墓穴を掘ってしまったのさ
へえー　この手紙の内容から
よくそこまで推理できたな
いや　俺たちがいる　この山荘と
物語の山荘のつくりが
まったく同じだったから
現場を再現して考えることが
できたのさ
ホントだ
ここのも　やっぱり作り物だ
けど　そう考えると
この物語の中の出来事って…
すべてが事実なのかも
ということは
私たちをここへ呼び出したのは
殺人鬼・デモン？
やだ　やめてよ
ハッ
だっ　誰かしら
きっと現れたんだよ
殺人鬼・デモンが！
先輩
獣の顔をした男が立っている
そんな！
まさか…
私たち　全員…
恐らく奴は
俺たちが　よく知っている人物だ
誰だよ？そいつは
おい！
金田一か？
エッ？
佐木　もう電気つけていいぞ
えっ…　あっ　はい
俺たちを脅かすための
扮装だろうけど
こんな　おバカな格好
平気で　できちゃう男が
俺たちの知り合いにいるだろう？
剣持警部！
悪かったな　おバカな格好で
ったく　散々　待たされたあげく
これかよ！
お前もな　分かってるんだったら
さっさとドアを開けろっちゅーの
おっさん　これで終わりって
わけじゃないんだろう？
ケッ　何でもお見通しかよ
ほれ
えっ　ケーキ？
ああ　他にも
いろいろと用意してきたぞ
おっ…　これ一体
どういうことなんだ？
え？金田一
はあ　考えてもみなよ
あの謎めいた手紙
そして　この豪華な山荘での
ミステリークイズ
おっさんが届けてくれたケーキ
すべては　俺たちに用意された
プレゼントだったんだ
プレゼント？
一体　誰からの？
こんなキザったらしい
おしゃれな演出をする
嫌味な男といえば
あの人しか　いねえだろう？
キザったらしい
おしゃれな演出をする
嫌味な男
といえば
一人しかいないだろう
まっ　今ごろカリブで
休暇を取ってるはずだけどな
少々早い
クリスマスプレゼントでしたかね
まっ　ゆっくり楽しんでください
メリークリスマス
さん　はい
ジングルベル　ジングルベル
鈴が鳴る
雪をかき分け
そりは走る
ジングルベル　ジングルベル
鈴が鳴る
今日は楽しいクリスマス
ヘイ！
金田一　イン　金沢
というのも　美雪が
どうしてもって言うんで
俺は　泉　鏡花演劇祭ってやつを
見るはめになったってわけ
ところが　そこで俺たちが
見たものは　鬼のミイラだった
面打ち師の家系に
代々伝わる悲しい伝説が
長い時を越えて
現代によみがえる
そして　鬼の呪いが今
俺たちに降りかかる
金田一少年の事件簿
「嘆きの鬼伝説殺人事件」
ファイル１﻿来る　やつが…
鬼が…
鬼が来る…
まきこ　まきこ
まきこ
まきこ　よせ！
まきこ　まきこ！
いいえ　別のことじゃござんせぬが
「私は癖として都の話を聞くのが
病でございます」
「口にふたをしておいで
なさいましても」
「無理やりに
聞こうといたしますが」
「あなたは忘れても
その時　聞かして下さいますな」
「ようござんすか
私は無理にお尋ね申します」
「あなたはどうしても
お話しなさいませぬ」
「それをぜひにと申しましても
断っておっしゃらないように」
「きっと念を入れておきますよと
子細ありげなことを言った」
よし　そこまで
今のが文豪　泉鏡花の代表作
「高野聖」だ
鏡花は日本的な幽玄美を
華麗な文体で表現し
その作品には
幽霊や　もののけなど
現実と夢の間をさまよう
魂であふれて…
もう　一ちゃんったら　恥ずかしい
どうやらここにも夢の中を
さまよってるやつがいるようだな
こら　聞いてるのか？金田一！
マジで痛いじゃないすか　先生…
のっぺらぼうだ！
み　美雪…
どうしたの　一ちゃん？
うわあ　のっぺらぼうだ！
おはよう　金田一
鬼！
あ…　イテ！
イッテー　まだいてえよ
くそ　教科書の角で
えぐるように殴りやがって
いい薬よ　まったく
何だよ　冷てえなあ
今度の連休　頼むわよ　一ちゃん
向こうに行ったら　あんまり
恥ずかしいマネしないようにね
私まで同類と思われたくないから
向こう？向こうって？
金沢よ
金沢？
何よ　覚えてないの？
この間　約束したじゃない
一緒に金沢の泉鏡花演劇祭に
行こうって
園芸祭？美雪　だめだめ
俺　園芸なんて
花なんか興味ないから
お花の園芸じゃなくて泉鏡花よ
さっき授業でやったじゃない
え？だっけ？
石川県の和倉で毎年催される
高校生の演劇よ
去年　私も見学に行ったんだけど
そこで知り合った
金沢吉野高校の人から
今年は合同で何かやらないかって
打診があったの
で　とりあえず話だけでも
聞きに行こうかなあって
だったら
演劇部のやつらと行けば？
俺には関係ないじゃん
それはそうなんだけど…
一ちゃんにはミステリー研究会の
部員として来てほしいのよ
ミス研の？何で？
な　何でって…　一ちゃん
私と行きたくない訳でもあるの？
いや　別に
よかった
で　話の続きだけど
金沢って　いいとこらしいわよ
去年は忙しくて
どこも回れなかったんだけど
景色はきれいだし
食べ物もおいしいし
演劇祭だって
すっごく華やかで楽しいんだから
あっ　そうだ
去年の写真持ってきたんだ
ほら
うーん
高校生演劇か
あっ　かわい子ちゃんが２人
それが去年　仲良くなった
辻口さんと　その妹さん
妹さんは
まだ中学生だったんだけど
今年から辻口さんと
同じ高校に通って
同じ演劇部に入ったんですって
美雪
ちなみに俺たちが金沢に
行くとして　どこに泊まるんだ？
うん　辻口さんは家に泊めてくれるって言ってるんだけど
ちょっと悪いかなあって
何を言うんだ　美雪
人の好意を無にするということが
どれほど失礼なことか
分からないのか？
俺は決めたぞ
金沢に行こう
そして　その園芸祭とかを
見ようじゃないか
ねえ　人の話　聞いてんの？
超美人姉妹と同じ屋根の下
久々においしいチャンスだ
金沢　金沢
長らくのご乗車
おつかれさまでした
金沢　金沢
もう　一ちゃん　何やってんのよ
何やってるもないだろうが
自分の荷物ぐらい持てよ
七瀬美雪さん？
辻口さん
きゃー　おひさしぶり！
元気そうね　辻口さん
七瀬さん　また胸が
大きくなったんじゃない？
ああ　何か劣等感
そんな…　恥ずかしいわ
胸がデカければいいという
ものではありません
第一　歳を取ってから困ります
誰？
う　うん　同じ学校の…
金田一一です　よろしく
じゃあ七瀬さんと同じ演劇部の…
ああ　そういうわけじゃ
ないんだけど
ははん　じゃあ彼氏か
いいなー
違うのよ
一ちゃんとは　ただの幼なじみで…
いいから　いいから
なかなか　かわいいじゃない？彼
いつまでカッコつけてんのよ
うわあ　すっごい
兼六園ってこんなに広かったんだ
ええ　江戸時代を代表する
林泉回遊式庭園で
およそ１０万平方メートルも
あるのよ
さっすが日本三名園の１つね
ねえ　一ちゃ…
いやー　金沢って
美人が多いんだなあ
やっぱ来てよかった
あきれた　あいつの
考えてることが丸見えだわ
いいじゃない
それだけ正直なんだから
あっ　そういえば金沢城跡って
兼六園のすぐそばだったわよね
行ってみたいなあ
え？ああ…
今日は　これくらいに
しておかない？
うちの演劇部の連中　七瀬さんが
来るの待ってると思うし
ああ　そうだったわね
いやあ　久しぶりだね　七瀬さん
去年の演劇祭以来だから
１０ヵ月ぶりかしら
はい　今年はうちの演劇部も
協力させていただきたいと
思っています
よろしくお願いします
年頃の女の子というのは
恐ろしいなあ
ほんの１年足らずで
見違えるほどきれいになった
で　君は？
ん？あっ　俺？
俺は…　まあ美雪の付き合いで
演劇部とは関係ないんですけど
まあ　そう言わずに
一度　舞台に立ってみたらどうだ？
何だったら今度の演劇祭で
役を振ってやってもいいぜ
鬼に食い殺される役なんか
どうかな？
ちょっと待ってください
中野先輩　演劇祭で何をやるかは
まだ決まってないはずですけど
何を言ってる？
決まりだよ　決まり
嘆きの鬼伝説をモチーフにすれば
泉鏡花の名にも
ふさわしいだろう？
そうね　ずっと反対しているのは
辻口さんだけなんだし
美奈子　あなたはどうなの？
え　別に…
いいと思うけど
お姉ちゃん
神経質になりすぎだと思う
あっ　令衣子さんの妹さん
へえ　写真で見た時も思ったけど
あんまし似てないんだ
それにしても美人だけど
君！今　大事な話をしてるんだ
部外者は黙っててくれないか？
あっ　どうもすんません
すんません
困るなあ　君
たびたび　すいません
一ちゃん…　すみません
へえ　古風できれいな帽子っすね
ああ　去年の学園祭で
使った物なのさ
あの時はシェイクスピアを
やったもんでね　苦労しましたよ
何しろ予算がないから
衣装も全部　手作りでさ
ああ　そうだわ
今度もシェイクスピアにしたら
どうですか？
せっかく小道具や衣装も
そろってるし…
バカ！何度　言ったら分かるんだ
泉鏡花演劇祭で
シェイクスピアなどできるか
でも先輩　鬼伝説は…
辻口君　あれはただの伝説だよ
呪いなんか
あるはずないだろう　今時
鬼なんか本当はいないんだ
いいか？代々　君のうちに
伝わっている鬼のミイラだって
偽物に決まっている
鬼の…　ミイラ？
本当だったんだ　辻口さんの家に
鬼のミイラがあるっていう話
知ってたの？
うん
去年　演劇祭に来た時
そんなウワサを聞いてたから
鬼のミイラね…
でも　それはやっぱ
あのイヤな感じの部長さんが
正しいんじゃないかな
テレビでやってたけど
人魚のミイラが出てきてさ
調べてみたら
ミイラ化したサルの頭を
魚の胴体にくっつけた偽物で
昔はそんな物を作って
見せ物にしてたらしいんだ
たぶんね
でも少なくとも私の父は
あれが本物だと信じてる
本物だと信じて
面を打ち続けているんです
面？
ええ
鬼の面を…
鬼の面？
どういうつもりなの？宏和
うん？何の話だよ
とぼけないで
七瀬さんに色目　使ったりして
ふん　やきもち焼いてんのか？
ふん　誰が
「ほんの１年足らずで
見違えるほど」
「きれいになった」なんて
ねえ宏和　まさかあんた
嘆きの鬼伝説の主役に
あの子を使うつもりじゃ
ないでしょうね？
バカ言うな　主役はお前さ
今度の舞台だけじゃない
裕子は　いつだって
俺の人生の主役さ
何よ…　いつもそうなんだから
そうカリカリしないで
機嫌を直せよ　裕子
よしよし
そうだ　今夜はこれから徹夜で
嘆きの鬼伝説のシナリオを
仕上げるぞ
あとで夜食を
作ってきてくれないか？
カラシのきいたハムサンドと
アイスティーね
ああ　俺の好みを知ってるのは
お前だけだ
腹すかして待ってるからな
分かってる
ちぇっ　まったく疲れる女だぜ
大きなお屋敷ね
俺んちの何倍あるかな
そうねえ…　わあ！
何だよ　いきなり
あれ…
こ　これは…
辻口家は室町の時代から
代々　面打ちの仕事を
続けてきたんです
ここに飾られているのは
ご先祖たちの代表作なんですって
でも　びっくりしたー
まるで生きてるみたいなんだもん
でも　どうして鬼の面ばかりなの？
よく知らないけど　面打ち師って
能楽のためのお面を
彫るわけでしょ？
それなら他の種類のお面も
あるはずじゃ…
ええ　普通なら
そうなんでしょうけど…
どうかしたのかい？
何でもないのよ　お母さん
だめよ　寝てなきゃ
今朝も発作が起きたばかりなのに
心配ないよ　午後から気分も
すっかりよくなってきたから
それより　そこの方かい？
お友達っていうのは
初めまして　七瀬美雪です
おじゃましています
いらっしゃい
ゆっくりしてってくださいね
お客様に失礼がないようにね
少しお体が悪いのね　お母様
ええ　まあ
あれ　一ちゃんは？
そういえば…
いやあ　しかし　すごい迫力だなあ
それにこういうのって
けっこう高いんじゃないのかなあ
骨董的な価値もありそうだし
何だ　あの音？
もう　人の家の中を勝手に
どこ行っちゃったのかしら？
一ちゃん！
美雪
びっくりしたのは　こっちですよ
いきなりあんな大声を出されちゃ
恥ずかしいわ　一ちゃんったら
何がだよ
だって鬼のミイラなんて偽物だ
なんて自分で言ってたくせに
そりゃあ　そうだけど
あの状況で　あんな物
見ちゃったら誰だって…
ねえ　令衣子さん
え？まあ…
偽物か　いや　僕も最初は
そう思ってましたよ
でもね　辻口先生の
内弟子として２年
毎日あれを見ているうちに
考えが変わりました
じゃあ本物ですか？
まさか　そんなあ…
だから言ったでしょう？
嘆きの鬼伝説は
本当にあった話なのよ
あの話には触れちゃいけないのよ
あの　その嘆きの鬼伝説って
一体…
実は金沢城にまつわる
悲しい言い伝えでしてね
いつの頃の話か　その時代は
正確には分からないんですが
金沢城の何代目かの城主に
ふじのいん　という美しい奥方が
いたらしいんです
ところが　なかなか
子宝に恵まれない
どうしても跡継ぎの欲しい
ふじのいんは
密かに魔物に子宝を祈願した
（祈願の言葉）
そして　ふじのいんは
男の子を出産した
でも　すぐにその子供は
大病を患い
どんな手当も効果がない
そこで再び　ふじのいんは
魔物に祈願したけど
今度は魔物の怒りに
触れてしまった
自分自身が魔物に
乗り移られた　ふじのいんは
狂気と化し
錯乱状態の中で自分の子供を…
我に返った　ふじのいんは
己の罪に慄然とし
井戸に身を投げて　命を絶った
それを知ったお城の人たちが
すぐに　ふじのいんを
引き揚げようとしたけど
いくら　さらっても
その姿は見つからない
見つかったのは数年後に
お城が謎の火災で焼け落ち
その後片づけで井戸をさらった時
中から見つけられた
その亡きがらは
鬼のミイラと化していた
恐ろしい
何て悲しいお話かしら
ところが話は
これで終わらなかった
鬼のミイラが見つかった年
原因不明の　はやり病で
金沢の多くの人が
苦しみながら命を落とした
まるで自ら命を絶っても
まだ癒やされない
ふじのいんの悲しみと絶望を
人々に知らしめるようにね
時の将軍は苦悩の表情を刻んだ
ミイラ化した鬼の顔を見て
面打ち師の名門　辻口家に
そのミイラを預けた
ミイラの苦悶を面にうつせってね
面の中に鬼の苦しみを
うつし取れば
それが供養になり　悲劇も終わる
なるほどね
それで鬼の面ばかりか…
美奈子だな　仕事場には
近づくなと言ってあるだろう
勝彦さん
美奈子さん
裕子か？ちょっと待ってくれ
今　ノッてるところだから
うん　我ながらいいセリフだ
あら　宏和？
夜食　持ってきたわよ　宏和？
もう帰っちゃったのかしら
あいつ…
おっかしいなあ
明かりはついてるのに
宏和　寝てるの？宏和ってば
今　何時だと思ってんだよ
あのキザ部長　ぐっすり
寝込んでるだけだって　令衣子さん
でも　ただ事じゃなかったわ
電話の裕子の声
とにかく急いで！
おお　みんな
俺もさっき来たばかりなんだけど
確かに様子がおかしいんだ
あいつ　部屋にいるんだけど
全然　反応がないんだよ
全然？
宏和！
中野！
宏和
し　死んでる…
宏和が…
あ…　あれを見て！
こ　これは…
だから言ったのよ
嘆きの鬼伝説に
触れちゃいけないって
嘆きの鬼伝説…
嘆きの鬼
この伝説に関わった者には
すべて謎の死がつきまとう
辻口家に代々　伝わる鬼の呪いは
ついに演劇部にも降りかかった
密室の現場に残されていた
「鬼」の一文字
演劇祭の舞台の上で燃え上がる炎
その中に浮かび上がる鬼の面に
俺は次の呪いを予感した
金田一少年の事件簿
ある日　金沢は吉野高校演劇部
辻口令衣子から
泉鏡花演劇祭への合同参加の話が
美雪のもとへ届いた
面打ち師の名門　辻口家
そして不気味な
嘆きの鬼伝説が漂う中
俺と美雪が見たものは…
これは…
宏和！
あ　美奈子さん
きゃー
あ　あの声は…
美奈子！
美奈子さーん
いない
誰かー！
外だ
美奈子！
美奈子さん！
今　窓から見えたの
鬼の面をかぶった誰かが…
一ちゃん
どうしたの？
そう　じゃあ　あなたたちが
遺体の第一発見者ってわけね
この事件を担当することになった
如月よ　よろしく
状況から見て怨恨殺人ね　これは
物取りなら　こんな場所を
狙うはずはない
犯人は被害者が夜遅くまで
ここにいることを知っていた人物
すごく身近な人物である
可能性が高い
そう難しい事件じゃなさそうだわ
それはどうかな？
ん？
確かに大筋においては
刑事さんの言う通りだと思うけど
でも１つ大事な点を忘れてますよ
あの時
俺たちがここに駆けつけた時
よし　ドアをぶち破ろう
このドアには鍵がかかっていた
しかも　このドアは内側からは
ロックできるけど
外側から鍵の開け閉めは
できないようになっている
そして見ての通り
この部屋の窓はこれ１つ
しかも　この窓ははめ殺しで
開かないようになってる
その上　ここは３階
つまり犯行時　ここは
完全な密室だったっていうこと
ご丁寧な解説ありがとう　坊や
でもね　我々　石川県警は
お子様の手を借りるほど
ヤワじゃないの
え？お子様？
事件に首を突っ込んでる
暇があったら
一生懸命　勉強して
早く大人になりなさい
そしたら　ゆっくりと
話を聞いてあげるから
あなたがいい男になったら
ゆっくりと　ね？
大人の色気
一ちゃん
あー　困るな　現場を荒らしちゃ
これだから素人さんは
すいません
もう　デレッとするから
まさか中野があんなことに…
一体　誰が？
だから言ったのよ
嘆きの鬼伝説に触れたりするから
あんな…
違う　違うわ
呪いなんかじゃない
宏和は殺されたのよ
鬼頭小百合に！
ん？
鬼頭小百合？
みんな見たでしょ？
あの壁の文字
あれは鬼頭さんが
自分の名前を記したのよ
生きているのよ　彼女は
鬼頭小百合は！
いい加減にしろ！お前
自分が何を言ってるのか
分かってるのか？
ごめんなさい
でも　こんなことになっちゃ
いずれにせよ
泉鏡花演劇祭への参加は無理ね
いや　やるさ　参加をやめたって
中野が喜ぶとは思えない
やるって　まさか…
そう　嘆きの鬼伝説をな
脚本は俺が書く　それが
中野に対する供養ってもんだ
ねえ　一ちゃん　どう思う？
あの刑事さんは身近な人が
犯人って言ってたけど
それとも　ひょっとして
ほんとに鬼の呪いが…
バカだなあ　鬼なんて生き物が
ほんとにいるわけないだろう？
でも　一ちゃんも見たじゃない
あの鬼のミイラ
あの刑事さんの言ったことは
正しいと俺も思う
犯人は中野の行動を
知っていた人物
中野が部室で脚本を
書いていたのを知っていたやつさ
じゃあ　まさか演劇部の…
まだ断言はできないけどね
でも　あの演劇部には
どうやら俺たちの知らない
秘密がありそうだな
鬼頭さんについて？
ああ　さっき坂本さんが
騒いでただろ？
生きてるとか　どうとか…
もしかしたら
事件と関係があるのかなあって
坂本さんは鬼頭さんに
負い目があるのよ
彼女　鬼頭さんに相当　敵がい心を
持っていたみたいだから
だから　あんなことを言って…
敵がい心？
去年の泉鏡花演劇祭の
直後だったわ
うちの演劇部に
転校生が入部してきたの
それが鬼頭小百合さんだった
みんな鬼頭さんを一目見て
息をのんだわ
それくらい彼女はきれいだった
ううん
ただ　きれいなだけじゃなくて
何て言うのかしら
独特の光を放っていて
それが本当に見えたの
だから　どんなに遠くにいても
すぐ彼女だって分かったし
人ごみの中にいても
彼女だけが光っていた
何があったんすか？
その鬼頭小百合に
私と美奈子は
参加しなかったんだけど
演劇部で山登りに
行ったことがあって　そこで…
きゃー
みんなショックだった
鬼頭さんの死は
個人的にはもちろん
演劇部としても大きな損失だった
彼女　女優としての才能にも
すごく恵まれていたから
実を言うとね　今度の演劇祭で
嘆きの鬼伝説をやろうって
最初に言い出したのは
鬼頭さんだったの
え？
事故に遭う少し前だったわ
彼女　自己流にアレンジした
嘆きの鬼伝説のワンシーンを
私たちの前で演じたことがあった
主人公が鬼の面を付けて
殺人を繰り返すんだけど
最後には　その面が
取れなくなるという…
本当に恐ろしい演技だった
あれは鬼頭さんじゃなかった
私たちが見ていたものは
本物の鬼だった
でも彼女はやりすぎたのよ
あの事故は
ただの事故じゃなかったって
今でも私は思っている
嘆きの鬼伝説に触れたせいで
殺されたのよ
彼女は鬼の力に
そして同じように中野先輩も
帰って　帰ってください
奥さん　そない冷たくすること
ないやありませんか
こっちはただ　おいしい話を
持ってきとるだけなんや
その話はもう何度もしたはずです
帰ってください
あの　どうかしたんですか？
昔から　うちに出入りしている
古美術商の人なんですけど
嘆きの鬼を売ってほしいって
奥さん　あんたじゃ話にならへん
旦那さんに会わせて
もらえませんか？
うちの人は仕事場にこもったら
誰にも会いません
第一　会ったところで
無駄なことぐらい
分かってるじゃありませんか
あれは売り物じゃないんですから
お母さん　もういいから
部屋に戻って
寝てなきゃだめ
美奈子　何見てるのよ
手伝いなさい
う　うん
いい加減にしたらどうですか
金森さん
嘆きの鬼は辻口家の祖先が
時の将軍家から下賜された
大切な家宝
いや　それ以上に
あれの怨念を面に写し取って
鎮めることが
この家の存在理由なんだ
売るはずがないでしょう
ほっといてもらおうか
この商売
最後まで粘ったほうの勝ちなんや
そうや　君たちからも
説得してもらえんかなあ
もちろん　ただとは言わん
うまいこと　あのミイラを
買い取ることができたら
それ相応の礼はさせてもらう
な　な？
はあ…
よし　裕子　鬼の登場だ
わー　すごーい
どうだい？せりを使えば
地の底から誕生する鬼のシーンが
表現できるっていうわけだ
ちょっと岡安先輩
練習もいいけど　ほんとに
演劇祭に間に合うんでしょうね？
まだ台本　半分も
できていないじゃないですか
ふん　台本を書くっていうのはな
ひどく神経を使う作業なんだよ
少しぐらい遅れてるからって
ガタガタ騒ぐなよ
中野のやつは偉そうに
いつも台本も演出も
独占していたけど
俺のほうが百倍も才能が
あるってとこ見せてやるさ
それより俺が心配してるのは
主役の演技力のほうだ
こんな時に鬼頭がいてくれたら…
どういう意味ですか？
私じゃ無理だって言うんですか？
ふん　どうかな
あれ？
君たち　吉野高校演劇部の…
どうしたんだい？
演劇祭への出場は
辞退するんじゃなかったの？
辞退？
何だって？
昨日　委員会に届け出が
あったって聞いてたけど
え？辻口　お前まさか…
そうよ　私です
だって仕方ないでしょう？
これ以上　犠牲者を
出さないためには　こうするしか
バカが！何を考えてるんだ　お前
坂本　すぐに委員会に連絡して
もう一度　参加を
申し入れてくるんだ
はい
辻口　お前
勝手なことしやがって
私はみんなを守りたいだけです
このままじゃ　また不幸なことが
美奈子　あなたからも言って
嘆きの鬼に触れちゃいけないって
あなたも分かってるでしょう？
お姉ちゃん
やっぱり気にしすぎだと思う
勝手に出場辞退なんて　ひどいよ
え…　あなたには分からないのよ
辻口家の血を引いていない
あなたにはね
辻口家の血を引いてない？
あれ　何やってんすか　江波さん？
やあ　面を彫り始める前の準備さ
こうやって　まず木材を
適当な大きさに整えておくんだ
へえ　結構　荒っぽい
作業なんですね
最初はね　でも最後には
２０種類の　のみを使って
鬼の表情を彫り出す
繊細な作業になる
さあ　危ないから少し離れて
鬼の表情ね
でも鬼って言えば
何だって令衣子さんは
あんなに嘆きの鬼伝説を
恐れるんでしょうね
ちょっと異常じゃ
ないんでしょうか
令衣子さんは
鬼の力を信じているのさ
鬼の力？
辻口家の祖先には
嘆きの鬼によって呪い殺されたと
言われる人が何人もいるのさ
例えば先生の前の奥さんも
そうだったらしい
前の奥さん？
そう　嘆きの鬼に魅せられて
ある夜
来る　やつが…
鬼が…　鬼が来る
まきこ　よせ！
まきこ　まきこ！
それに今年になってから
今の奥様も
体調を崩されてしまってね
これといった原因もないのに
日に日に体が衰弱してゆく
令衣子さんは　これも全部
嘆きの鬼のせいだと
思っているんだろう
江波さんはどうなんです？
まさか　ほんとに鬼の存在を？
信じてるさ
だいたい人間がこの世を
すべて知っていると思うのは
傲慢なんじゃないかな
この世には我々が
まだ知らない世界があって
そこには得体の知れない何かが
存在している
そう考えちゃいけない理由は
ないだろう？
そりゃ　まあ
それに古い文献にも
鬼の存在を記録するものが
数多くある
例えば出雲国　風土記には
「昔ある人　ここに山田を
つくりて守りき」
「その時　目一つの鬼来たりて」
「たつくる人のおのこを
食らいき」と読まれているし
日本書紀の斉明紀には
朝倉山の上から斉明天皇の
喪の装いを見ていたと
記されている
お…　おい　美雪
何だ　今のは？日本語か？
もう嫌だ　一ちゃん
とにかくまあ　未知なるものを
頭から否定するのは
あまり開けた生き方じゃ
ないということさ
お父さん　あの…
美奈子　何をしている？
お父さん
ん？お前…
先生　やめてください
先生
邪魔だ　放せ！
おはようございます
何すか　それ？
面を燃やしたのさ
面を燃やした？
ああ
先生がご自分の作品も
僕の面も全部ね
そんな　どうして？
全部の面が灰になった
でも先生は本当に念の入った面は
灰にならないって言うんだ
念のこもった面は
炎を跳ね返すって
そんなバカな
ご自分に厳しい方だからね
先生は
ま　凡人の僕なんかには
理解できないことも時々ある
七瀬さん　金田一君
お？
今　岡安先輩から連絡があったの
台本ができたから
稽古がしたいんですって
支度　急いでくれる？
あ　分かりました
僕も頑張るよ
今日一日は仕事場にこもって
新しい気持ちで
面を彫ってみようと思う
ま　燃えない面なんて
売れるかどうか分からないけどね
頑張ってください
よし　まずはシーン１
鬼の誕生からだ
始めろ　坂本
ふん　何よ　偉そうに
宏和が死んだからって
すっかりいい気になっちゃって
一体　何様のつもりよ
早くしろ　坂本
何ぐずぐずやってるんだ
きゃー
坂本さん
これは…
嘆きの鬼の呪いなのか？
舞台にまた残された「鬼」の文字
坂本さんは俺たちの目の前で
第二の犠牲者に
そして伝説を受け継ぐ
辻口家の鬼の面が嘆きの血を流す
その時　俺は珍しいものを目にした
そうか　分かったぞ
密室トリックの正体が
謎はすべて解けた
金田一少年の事件簿﻿泉鏡花演劇祭へ
合同参加の話があり
美雪とやってきた金沢　吉野高校
その演劇部で起こった
密室殺人事件
室町時代より続く
面打ち師の名門　辻口家に伝わる
嘆きの鬼伝説とは？
これは…
状況から見て犯人は
奈落で被害者　坂本裕子を殺害し
このせりを使って
舞台へ上げたようね
それで　あなたたちは
その時どこにいたのか
聞かせてくれる？
どこにも何も
俺たちは　みんな一緒にいましたよ
みんな一緒に？
台本ができて
鬼の誕生シーンを
練習中だったので
俺たちはステージ下の客席で
坂本の現れるのを待ってました
ふーん　あなたたちが全員
客席にいたということは
犯人がここから
控え室に上がり外へ逃走しても
目撃されないわけね
はっきり言って
あなたたちのうちの誰かが
犯人って思ったけど　こうなると
演劇部自体に恨みを持つ
外部の者の犯行って線が強いわね
でも　ちょっと妙っすよね
ん？
だってそうでしょ？
犯人は　なんだって
わざわざ稽古中を
選んだんですか？
犯人にしてみれば
もっと発見されづらい場所で
彼女が一人でいる時を狙った方が
安全だったはずなのに
また君か　金田一　一
聞いたわよ　坊や
数々の難事件を解決した
有名な探偵さんらしいじゃない？
いやあ　それほどでも
お姉さん　頭のいい子は大好きよ
ええ？そうっすか
一ちゃん　もう…
でもこの間も言ったでしょ？
石川県警にお子様の力は
必要ないって
大人になったら
ゆっくり話を聞いてあげるわ
お酒でも飲みながらね
結局　子供扱いかよ
もう無理だ
これじゃ　今年の
泉鏡花演劇祭には
出場できない
２人も死んじゃあな
だから言ったのよ
嘆きの鬼に触れちゃいけないって
みんな鬼の力を信じないから
こんなことに…
鬼なんかじゃないわ
あの刑事さんが言ってたじゃない
うちの演劇部に
恨みを持った者の犯行かもって
ま…　まさか
坂本が言ってたとおり…
あの女が…
え？また殺人が？
これはたたりだ　令衣子さんの
おっしゃるとおり　これは…
江波さん
嘆きの鬼のたたりだ
どうしたの　江波さん
美雪
うん
あいつのせいだ
結局　無理なんだ
いくら面を彫ったところで
あいつの怨念を
しずめることはできやしない
嘆きの鬼の悲劇は続くんだ
何をするつもり？
江波さん
こんなもの　こんなもの
やめるんだ
放せ　みんなこいつのせいなんだ
こんなことしたって
何の解決にも…
勝彦さん
鬼のミイラが
なんてことを
大変！
あー！
お母さん　どうしたの？
血が…　血が…
大丈夫　お母さん？
お母さん
鬼の面に血が
え？
同じ場所だわ
江波さんが　のみを刺した
同じ所から血が出てる
そんなバカな
一ちゃん
嘆きの鬼の痛みに
面が応えてるのよ
お面から血なんて信じられない
でも　さっきはびっくりしたね
一ちゃん
話じゃ　マリア像とかが
血を流すって聞いたことあるけど
ああいうことって
本当にあるんだね
ねえ　一ちゃん　聞いてるの？
ちょっと待ってくれ
第一の殺人は密室
中野宏和が殺された場所は
間違いなく密室だったよな？
ええ　あの時　部室には
他に誰もいなかったわ
その後　美奈子さんの悲鳴で
犯人を追ったけど
逃げられちゃったのよね
ねえ　マスター
ブランデー入れた紅茶　おかわり
はい　ありがとうございます
ブランデー　ブランデー
よいしょっと
それって本じゃないんだ
外国土産のブランデーですよ
変わったケースでしょ？
びっくりしちゃった
高いブランデーなんですよ　これ
面白い物があるのね
そうか　そういうことだったのか
どうしたの　一ちゃん？
分かったぞ　密室のトリックが
謎はすべて解けた
犯人が分かったって
本当なの　金田一君？
ああ
わざわざ呼び出しといて
鬼の呪いとか言うんじゃ
ないんだろうな
いや　呪いなんかじゃないさ
じゃあ　一体　誰が？
誰なの　金田一君？
何をもったいつけて
やがるんだよ
どうやら
役者がそろったって感じね
如月刑事
どうでした？例の件
坊やの言うとおり　間違いないわ
そうですか
ありがとうございました
何がどうしたって言うんだ
犯人が分かったんなら
早く言えよ　金田一
ああ　今回の連続殺人事件
中野宏和　坂本裕子を
殺害した犯人は　この中にいる
この中に犯人が？
俺じゃないぞ　坂本が殺された時
みんな一緒だっただろ？
それは分かってるさ　あの時
俺たちはステージ下の客席にいて
アリバイは完璧だ
それじゃ…
坂本裕子を殺したのは
江波勝彦　あんただよ
僕が犯人だって？
江波さんが？まさか
金田一君　どうして？
返り血さ
稽古中に殺された坂本裕子のね
あんたは犯行に使うつもりだった
自分で彫った鬼の面を
前の日に鈴置さんに
燃やされてしまい
仕方なく辻口家の
先祖の作品である
廊下の面を使い
返り血を受けてしまった
それじゃ　昨日の
あのお面の血は…
ああ　如月刑事に頼んで
調べてもらった
面の血は坂本裕子の血液と
一致したわ
だからって　どうして私が
おかしな言いがかりはよしてくれ
昨日　あんたが鬼のミイラを
傷つけた異常な行動が
逆に命取りになったのさ
面の血を嘆きの鬼伝説と結びつけ
オカルト的な現象に見せ
俺たちの目を犯行から
そらせる行動
犯人以外には　そんなことを
する必要はないからね
知らない　みんな鬼の
嘆きの鬼の祟りだ
勝彦さん
みんな嘆きの鬼の怨念なんだ
待ってください　江波さん
まだあります
鬼の文字を現場に残し
なぜ連続殺人に
見せなければならなかったのか
そして　どうやって
最初の密室殺人を行ったのか
どういうことだ　金田一？
つまり中野さんが殺された
密室殺人は
単独での犯行では
ないということだ
それじゃ　犯人は２人？
そう　その最初の犯人を
かばうために
江波さんは
第二の殺人を犯したんだ
演劇部員のアリバイが
完璧な時にね
じゃあ　もう１人の犯人って…
ああ　最初の被害者
中野宏和を殺した犯人は
辻口美奈子　あんただよ
美奈子
中野宏和を殺害した美奈子さんは
違う　美奈子さんは関係ない
僕が…　僕がこの手で…　僕が…
美奈子さんが犯行を犯した後
江波さんはあなたを逃して
内側から鍵をかけ
そのまま部室に潜んでいたんだ
でも一ちゃん　あの部屋に
人が隠れるようなとこなんて
なかったじゃない
ああ
俺もずっとそう思ってたさ
でも昨日　喫茶店で見ただろ？
あのブランデーケース
ああ…
あの時　気付いたんだ
まさか人が隠れるなんて
普通　思わない場所
そう　帽子入れの中さ
帽子入れって　あんな小さな物に
ああ　１つじゃ小さな物でも
上ぶたと底板を外して
重ねた中なら十分　人１人が
隠れるスペースが取れる
でも　それなら１人でも
密室を作れるわ
どうして美奈子が
共犯でなくちゃならないの？
俺は　この密室トリックに
気付いた時
もう１つの疑問の答えが
分かったんだ
もう１つの疑問？
美奈子さんの悲鳴だよ
中野宏和が殺されて
俺たちが現場に駆けつけた直後
美奈子さんは
窓から犯人を見たと言ったが
それならなぜ　わざわざ
外に出てから大声を上げたのか
みんなを現場から離したかった
つまり部室に隠れていた
江波勝彦を逃がすためね
いくら帽子入れという
心理的盲点を突いた場所に
隠れたとしても　そのままでは
いずれ見つかってしまうからだ
美奈子　本当なの？
あなたが中野先輩を…
違う　やったのは僕だ
僕が…　僕がすべてやったことです
勝彦さん　もういいの
中野先輩を殺したのは私です
美奈子
え？
本当なの　美奈子？
本当よ　あの夜
みんなが寝静まってから
学校へ向かったの
裕子か　ちょっと待ってくれ
今　ノッてるところだから
でも　そのことを勝彦さんに…
美奈子さんが鬼の面を
持ち出すのを見て
何か気になったので
後をつけ　見てしまいました
私はすべての事情を
勝彦さんに話したわ
後は金田一君の言うとおり
密室のトリックで
私をかばってくれ
私のアリバイが成立する場所と
時間を選んで
坂本裕子　あの女を
殺してくれたのよ
美奈子
なぜなんだ　辻口
復讐よ　鬼頭小百合さんの
復讐をしてやったのよ
鬼頭の？
え？
どうして　あなたが
鬼頭さんの復讐なんて？
私　聞いてしまったの
鬼頭さんのお葬式の翌日だった
それにしても　まさか鬼頭が
あんなことになるなんて
くそう　裕子　お前のせいだぞ
お前があんなこと
言い出さなけりゃ…
何を言ってるの　あれは事故よ
私たちが直接
手を下したわけじゃないわ
そうだよ
俺たちのせいじゃないよ
黙っていれば分からないさ
あなたたちの話を
みんな聞いてしまったのよ
あれは違う　俺は関係ない
おーい　早くしろよ
鬼頭　置いていくぞ
そうだ　ねえ　宏和
ちょっと　いたずらしちゃおうか
いいね
ちょっと　からかってやるか
あの子ちょっと生意気だし
なるほど　少しは薬になるかもな
鬼頭さんはお母様を早く亡くして
苦労していたの
私も本当の
辻口家の人間じゃないし
お互いに話が合って
いろいろ悩みも聞いてくれた
美奈子さん
辻口家の人間じゃないって…
美奈子！
実の母は
私を産んですぐに亡くなって
面打ち師だった父も
１０歳の時に亡くなり
辻口家に引き取られたの
内気な私は
「この家に馴染めるかな」
「新しいお父さんやお母さん」
「お姉ちゃんに嫌われたら
どうしよう」って
だから　いつも自分を押し殺して
目立たないように
目立たないようにって
そんな私に初めてできた友達が
鬼頭さんだった
こんなプレゼントをもらったのも
初めてだったわ
そんな鬼頭さんを…
だから私は決心したの
鬼頭さんの代わりに
私が嘆きの鬼を演じよう
嘆きの鬼を演じて
復讐を果たそうって
美奈子
鬼頭さんを殺して
知らない顔してる人たちが
許せなかったのよ
殺したなんて　あれは
運が悪かっただけじゃないか
それに　あいつが優しいだって？
笑っちゃうぜ
あんなお高くとまった女の
どこが優しいんだ？
大体　あの女が
お前に近づいたんだって
鬼のミイラを安く売るように
説得するためじゃないのか？
俺もあの古美術商の金森に
頼まれたことあるぜ
現金をちらつかせてね
違うわ　そんなこと嘘よ
鬼頭さんは
本当に優しくしてくれた
そうよ　美奈子には優しかったわ
その指輪だって一生懸命　選んで
本当に美奈子を喜ばそうって
楽しそうに笑ってた
あの気持ちに嘘なんて
あるはずないじゃない
鬼頭さんは優しかったわ
ね　美奈子
お前をそこまで追い詰めたのは
私のせいだ
許してくれ　美奈子
私は恐れていたんだ
お前の中に流れる血に
私の血？
お前の父親　山崎誠司は
面打ち師として
異常な才能の持ち主だった
若い頃から私の父の元で
一緒に修業をしてきたが
山崎の情念のすごさ
鬼を彫るために
自らをも鬼とするような
あの才能は素晴らしかった
遺言に従い山崎の遺体と共に
焼かれたあの面は
まるで山崎の情念に
支えられているように
真っ黒になりながら
なおも鬼の形を残していた
私はずっと山崎の才能に嫉妬し
お前を見る度に
山崎の血に恐れていた
お前をそんなに追い詰めたのは
みんな　この私のせいだ
許してくれ
美奈子
私　寂しかった
独りぼっちだったの
美奈子さん
今となっては鬼頭さんが
どんなに優しい人だったのか
俺には分からない
でも　あなたがずっと独り
だったっていうのは違うと思う
あなたをかばって
もう１人　嘆きの鬼を
演じてくれた人が　いるじゃないか
江波さんは　あなたを守るために
嘆きの鬼となって
すべての罪をかぶろうとした
もちろん　これは
正しいことじゃない
でも　そんな気持ちは
一朝一夕に生まれるもんじゃない
江波さんは　ずっと
あなたのことを見つめてきたんだ
誰よりも優しい目で
勝彦さん
嘆きの鬼のミイラも怖かったけど
本当に怖いのは人間の心の奥の
鬼かもしれないわね
ああ　そうかもな
何　暗い顔してるの？
あ　如月刑事　何か？
今日　帰るって聞いたから　これ
金沢名物のお弁当　差し入れよ
どうも　いただきます
君　いい顔してたわよ
自分の推理を披露する時
一人前の大人の男になってたわ
いやあ　それほどで…
じゃあね
ちょっと　一ちゃん
本物の鬼！
一ちゃんのバカ
フェンシングの天才少年？
あーあー　またまた始まったよ
キザで嫌みな明智さんの
ご自慢話がよ
で　今度はどんな話？
雪に閉ざされた
フェンシングの合宿所
窓にはめられた鉄格子
厳しい荷物検査
そして幽霊剣士の噂と殺人事件？
明智さん　一体そこで
何があったんだよ
別に聞きたかねえけど
ちょっと　一ちゃん
さっきからあくびばっかりして
だって　こんな貴族趣味のスポーツ俺の性に合わねえっつうの
剣持警部のおい子さんって
どの人ですか？
ああ　ほら　今あそこにいる
背の高いやつ
次の次の試合らしい
ねえ　おっさん
忘れてないよね？
おいっ子が勝ったら　ステーキ
おごってくれるんでしょ？
その代わり
しっかり応援してくれよ
任せとけって　ああ　腹減った
でも　こんな大きな大会に
高校生で出場するなんて
本当　大したもんですね
小学生の時に
フェンシングを始めたんだが
メキメキ腕を上げてね
天才少年なんて
呼ばれたこともあるんだ
僕も何度かそんなふうに
呼ばれました
その声は…
明智さん
明智警視
表のフェンシングって看板を見て
懐かしくなって
入ってみたんですよ
明智さんもフェンシングを？
そりゃ初耳だ
あーあー　また始まったよ
秀央のホームズに
美少年バイオリニスト
揚げ句の果てに
フェンシングの天才少年だ？
ああ　やだやだ
聞きたくもねえ
高校生の頃　全日本の合宿に
参加したこともあるんですよ
でも　その後やめてしまって
高校生で全日本の合宿に？
すごい
嘘　嘘
ったく　いい加減にしろっつうの
自慢話は
一ちゃん
でも全日本まで行かれたのに
どうしてやめてしまったんですか
聞きたいですか？
聞きたくない！
聞かせてください
聞かせてください
そう　あれはちょうど
１０年前のことです
寺山
寺山
あ…　あー！
寺山さん
どうした　寺山
寺山
夢を見てた
丸山が起き上がって剣を…
真昼間から居眠りか
随分　余裕だな
まあ　お前が丸山と
一番　仲良かったからな
気持ちは分かるけどさ
そんなんじゃないんだ
丸山は　あいつは
俺…　俺を恨んで…
何で？丸山が死んだのは
お前のせいじゃないだろ
無理かもしれないけど
一日も早く忘れちまえよ
駄目なんだ　あいつが
丸山が許してくれないんだ
俺だけじゃない　お前たちにも
丸山の呪いがきっと…
すごいよ　すごい雪　最高
うん　そうそう
今度　一緒にスキー行こうよ
マジ？
やれやれ　東城のやつ　またか
当たり前じゃん
けっ　あいつも余裕だな
コーチ　遅いな
早く地獄の合宿を
始めてほしくて仕方ないようだな
そういえば室町さん
何でスキンヘッドなんですか？
ああ　これ　ちょっとね
ひょっとして合宿のプレッシャーで
円形脱毛症にでもなったとか？
まあ　そんなとこだ
次の国際大会
レギュラーのイスは４つ
合宿参加者は５人　でもね
もう落ちる人間は
決まったようなもんです
誰だよ？
寺山さん　相当　重傷だもんな
だけどコーチがもう１人
連れてくるって話だぜ
え？女？
バカ　高校生だって言ってた
高校生？何だ　そりゃ
コーチも冗談きついぜ
いや　意外に侮れないかもよ
ライバルがまた１人
増えるってわけか
面白い
足元に気をつけて
はい
山奥なんでびっくりしたろ？
いえ
いやあ　しかしすごい雪だったな
地元の車とはいえ
ヒヤヒヤだったよ
さあ　行こうか
はい
明智君　ナイフや包丁の類
その他　先の尖った物は
持ってないね？
え…　ええ
よし　じゃあ
今度は君が俺のバッグを
調べてくれ
はあ…
随分　厳重なんですね
まるで空港の手荷物検査並だ
気を悪くせんでくれ
この合宿のルールなんだ
ここに入る人間の荷物は
すべてチェックされる
何か訳がありそうですね
あ…　ああ
ようこそ　地獄の強化合宿へ
明智健悟です
よろしくお願いします
では明智君　早速で悪いけど
君と一戦交えたいんだけど
君の腕前　知っておきたいんだ
おい　宇佐美　いくらなんでも
いきなり試合っていうのも…
コーチ　心構えを試すだけですよ
生半可な気持ちで
この合宿に臨んだら
事故のもとですからね
まあ　それももっともだが
明智君　どうかね
分かりました
エト・ヴ・プレ？
アレ！
やるな
へえ　やるじゃん　あいつ
宇佐美のやつ
楽勝だと思ったのに
宇佐美のやつ　マジになってるぜ
どこ…　狙ってる！
アルト！勝者　宇佐美
ありがとうございました
だいぶ手こずったな　宇佐美
まあ　センスはある方だが
所詮　高校生
何だ？
この紐は宇佐美の？
まさか　あいつわざと？
なんてやつだ
キザ！俺もう腹いっぱい
最初にそんなことが
あったんだから
後は楽だったでしょう
いや　とんでもない
僕はまだ高校生でしたからね
ハードトレーニングについていくので
精いっぱいでしたよ
明智さんが言うんだから
よほどだったんですね
地獄の強化合宿って
いえ　本当の地獄は
練習の後でやってきたんです
本当の地獄？
あの　ナイフとフォークは？
そこに箸があるだろ
ここでは
割り箸しか使えないんだよ
そういえば　ここで
料理を作らないんですね
立派な厨房があるのに
どうしてですか？
そりゃ包丁が使えないからだよ
錦野さん
おっと　そうだったな
お前　丸山のこと知らないのか
おい　やめろよ
丸山？
はい
お待ちください　東城！
ああ　すいません
何だよ
かけてくるなって言ったろ
ああ　もうくたくただよ
すげえハード
ったく　しょっちゅう私用電話が
かかってくるなんて
何を考えてるんだ
丸山？誰かが君に話したのかね
いえ
誰も教えてくれませんでした
なら　知らない方がいい
窓にはめられた鉄格子
包丁はおろかナイフやフォークの類すら
置いてない台所
そして来た時の荷物検査
桜田コーチ
話していただけませんか
君は知らない方がいい
この合宿が終わるまで
余計な雑念は入れない方がいい
チェックメイト
あ！
また負けた　明智君　もう一勝負
このままじゃ　かつての
東京都チャンピオンの
俺のプライドはズタズタだ
いいですよ
明智君　どうかしたか？
いえ　何でもありません
しつこいな
何度も同じこと　言わせるなよ
俺はな　ルミ　お前の
その安っぽさが嫌になったんだよ
東城君　そんなこと言わないで
じゃあな　バイバイ
東城…
お別れだよ　ルミ　しつこい女
誰かいるのか？
誰だ　窓を
開けっ放しにしたやつは
寒いな
さぶー　まだ降ってるぜ
だいぶ小降りにはなったけどな
おう　おはよう
うーっす
おはよう
おう　おはよう　明智
おはようございます
さすがの天才少年も
ハードメニューで朝までダウンか？
いえ　いつもは
こんなことないんですが
今日はちょっと
あれ？そういや
もう１人の天才は？
しょうがねえな
東城のやつ　まだ寝てんのか
いや　今朝　頼まれてたから
起こしに行ったら
もう　いなかったよ
やれやれ
あいつ　また人を
当てにしてんのかよ
秘密特訓でもしてんじゃないの
冗談　あいつに限って
それはないよ
東城のやつ　スキー場へ
ナンパに行ってんじゃん？
１０キロは軽くあるぞ
東城ならあり得るぜ
あいつ女のこと…
おい　宇佐美　どうした
窓が開いてる
ほんとだ
東城！
どうなってんだよ　おい
東城！
死んでる
だったら凶器は？
そうだよ　ナイフや包丁はおろか
カッターひとつないんだぜ
幽霊剣士だ
これは丸山の呪いなんだ
死んだ丸山が幽霊剣士になって
東城を殺したんだ
俺たち　みんな殺されるんだ
あいつに　幽霊剣士に
幽霊剣士
何だ　どうした
コーチ　丸山ですよ
幽霊剣士が出たんです
バカ言うな
だってコーチ　丸山の時と
場所も殺され方も同じなんですよ
偶然だよ
なんてこった
またここで人が殺されるなんて
コーチ　話してくださいますね
丸山さんのこと
あれは２年前の
強化合宿の時だった
練習メニューも現在より
はるかに厳しく
選手たちの競争心も
異常に高まっていた
アルト！
そんなある日
練習場で丸山が刺殺された
その日以来　丸山の幽霊が出ると
噂が立った
事故の再発を防止するために
この建物に入る者の荷物は
厳重にチェックされ
凶器になる可能性のあるものは
一切　建物から消えた
そして外から凶器を
持ち込めないように
窓には鉄格子がはめられた
服の上から心臓をひと突きに
こんな殺し方　素人には無理だぜ
どういうことだ
犯人はフェンシングの
心得のある奴ってことか
凶器は何なんだよ
フェンシングの剣は先がガードしてあるから
せいぜい　あざがつく程度だろ
刃物はすべて持ち込み禁止だし
警察は来るには来るが　この雪で
いつになるかは分からんそうだ
ねえ　共犯者説ってのはどうだ
外から鉄格子の間を通して
凶器を渡すとか
それはないようです
おお　明智君　どこ行ってた？
今　建物の周りを調べてみましたが
どこにも　それらしいものは…
つまり東城さんが殺された時
この洋館は
大きな密室だったってことです
東城さんは　この外部と接触のない巨大な密室の中で
あるはずのない凶器で心臓を
貫かれて死んだのです
丸山だ　やっぱり丸山の幽霊が
バカらしい　密室だの
あるはずのない凶器だの
ミステリーじゃあるまいし
ミステリーなら
例えばカチンコチンに凍らせた肉で
人を殴り殺すってのもありだよな
だけど東城は撲殺じゃないぜ
じゃあ剣のように　とがらせた氷を凶器にするってのは？
氷ならそこの冷凍庫で
いくらでも作れるし
そうか　氷か
なるほど
いや　それは無理でしょう
東城さんは細くて　とがった
剣のようなもので刺殺されていた
そんな細長い氷では
硬度が足りず
とても人体を貫けません
まして東城さんはトレーナーなど
厚手の服を着ていました
それをあれだけ見事に貫くには
真剣のように鋭く硬い
凶器を使わないと
錦野さん
真剣ならあるじゃないか
そうか　例の剣か
しかし　あれは
例のって？
丸山が殺された時
凶器になった剣だ
あれは処分されずに
残ってるんですよね？
ああ　あれはフランスの
フェンシング協会から寄贈された
貴重な剣なんだ
俺の部屋の納戸の中だ
けっこう重いな
やめろ　丸山の
呪いがかかってるぞ
貸してみろ
血だ
呪いだ　丸山の呪いだ
間違いない　東城は
この剣で殺されたんだ
金田一君　どうですか
え？何がっすか？
何がじゃありません
真剣を手にした幽霊剣士が
完璧に作り上げた密室トリックと
その正体を
私がどうやって見抜いたかですよ
ああ　謎はすべて解けたよ
でもさ　結局　明智さんの
自慢話だったってことだね﻿フェンシングの競技会に行った
俺たちは明智警視から
10年ほど前の冬に起こった
おぞましい事件の話を聞いた
フェンシングの強化合宿中に
選手の１人が
鋭い凶器でひと突きに
刺し殺されたのだ
合宿所は厳重な警備体制が
取られていて
包丁はおろかナイフやフォークの
１本まで持ち込めなかったのに
凶器は何なのか　そして犯人は？
若き日の明智警視が
今夜 その謎に挑む
血だ
呪いだ　丸山の呪いだ
間違いない　東城は
この剣で殺されたんだ
て ことは？
剣を
自由に持ち出すことの
できる人間が
犯人ってことになるな
桜田コーチ
まさか！
違う！俺じゃない！
信じてくれ　みんな
俺は昨日の夜は
一歩も部屋から出ていないんだ
だから それを証明して
くださいって言ってるんです
納戸の鍵も真剣を収めた
ショーケースの鍵も
コーチしか持ってなかった
俺たちがコーチを疑うのは
当然でしょう
それにコーチは
東城のことを嫌ってた
奴のチャランポランな生活態度が
気に入らなかったんでしょう？
だからって殺すわけないだろ
待ってください 皆さん
明智君 助けてくれ　頼むよ
話してしまいますよ
昨日の夜のこと
もう こうなったら構わん
２人で何 ｺﾞﾁｬｺﾞﾁｬ言ってるんだ
桜田コーチのアリバイは
僕が証明します
何？
コーチと僕はあの部屋で一晩中
朝までチェスを
打ち続けていたんです
２人とも一歩も
部屋の外には出ませんでした
何だ
それならそうと
早く言ってくれれば…
夜通し打って
高校生に１勝も
できなかったなんて
東京都ﾁｬﾝﾋﾟｵﾝだった者として
恥ずかしくて言えんよ
こんな事件でもなけりゃ
墓に入るまで しゃべらんかった
んなこと言ってる場合っすか？
何だ 何だよ
トイレから戻ってみりゃ
まだ自慢話してんのか
一ちゃん
何とか言ってやれよ おっさん
よーし　気張っていけよ カツオ
気合だ　気合
お！おっさん
いよいよ おいっ子の登場か
おう
あそこのほれ
右側の背の高いのだ
おお
カツオ　頑張れ
おっさん 応援してやっから
勝ったらステーキおごる約束
忘れんなよ
おう
カツオ　勝てよ
カツオ
頑張れ
頑張れ
で コーチとチェスをしている間
誰も部屋に
入ってこなかったんですか
ええ　誰も
部屋にはもちろん
あの部屋からしか入れない
真剣の置いてある納戸に
入った者もいませんでした
ちょっと待てよ
誰も来なかったんなら
あの真剣はどうやって
持ちだされたんだ？
そうだよ
でも２人が共犯なら？
確かに
バカなこと言うんじゃない
君たちは俺が平気で
人を殺したりする
人間だとでも思っているのか
だって…
おい！
コーチ 落ち着いてください
しかし…
あの真剣を凶器と考えるから
見当違いの推理を思い付くんです
え？
じゃあ君は あの真剣が
凶器じゃなかったって言うのか？
ええ
どういうことだ？
あの真剣は
持ち出されてもいないし
無論 凶器でもありません
何？
持ちだされていない？
凶器じゃないってどういうことだ
他に凶器があるって言うのか
いや ここには
凶器になるような物なんて…
犯人はあるトリックを
使ったんです
トリック？
何をする気だ？
おいおい そのつららが
凶器だなんて
言い出すんじゃないだろうな
俺がそう言った時は
即座に否定したくせに
宇佐美さんは つららとは
言いませんでした
｢剣のように尖らせた氷を厨房の
冷凍庫で作ったんじゃないか｣と
それが どうした
でもさ
つららなんかで服を着た人間の
心臓を貫くなんて無理だぜ
明智君 自分で
そう言ってたじゃないか
そんな…
あの硬いメタルジャケットが
つららでひと突きに
いいえ　これはつららなんかじゃ
ありません
ガラスでつららに似せて作った
マンゴーシュ　短剣です
ガラスの剣
２年前の殺人事件以来
この合宿所に刃物類は
一切 持ち込めなかった
しかし合宿所の外は
別だったんです
恐らく犯人は
合宿の始まる前に ここに来て
ガラスの短剣を道場の外の
窓の軒下にｾｯﾃｨﾝｸﾞしたんです
そして事件の当日
誰かいるのか
寒いな
犯人の狙いはただ１つ
刃物厳禁のこの館で
殺人が起これば
凶器は ここに１本しかない
あの真剣だと
誰もが考えるでしょう
そして真剣を
自由に持ち出せるのは
桜田コーチだけ
すなわち犯人は桜田コーチに
殺人の罪をなすりつけようと
仕組んだんです
ただし 犯人は僕とｺｰﾁが
夜を徹してﾁｪｽをしていたことを
知らなかった
じゃあ あの血はどうなる
剣に血が付いていたじゃないか
あっ
錦野さん　ちょっと失礼
何だよ
顔に…
血が
どうした？
いつの間に　あれ？
すいません 錦野さん
これはﾄﾘｯｸです　前もって
ﾊﾝｶﾁにｹﾁｬｯﾌﾟを付けていたんです
何だ　脅かすなよ
皆さん よく思い出してください
貸してみろ
剣に血なんか付いていなかった
逆だったんです
実際にはタオルに血が付いていた
剣をタオルで拭ったのは
剣に付いてる血を
拭ったように見せかけ
本当はタオルに付けた
東城さんの血を
剣になすりつける
ためだったんです
なんだって？
それじゃ
東城を殺した犯人は
あなたですね　宇佐美さん
東城さんを殺した真犯人
幽霊剣士はあなたです
宇佐美が…
幽霊剣士
あなたは殺人の罪を
桜田コーチにかぶせるために
コーチしか取り出せない
あの剣を凶器に
見せかけるトリックを実行した
たまたま僕とｺｰﾁが一晩中
ﾁｪｽをしていたのを知らずにね
そのため自らが犯人であることを
証明してしまったんです
なぜ ガラスの剣のことが
分かった？
宇佐美！
やっぱりお前が
嘘だろ？
宇佐美さん
ガラスの剣のことは
あなたが教えてくれたんですよ
何？
じゃあ
剣のように とがらせた氷を
凶器にするってのは？
氷なら そこの冷凍庫で
いくらでも作れるし
あの時のあなたの発言に僕は
なぜか違和感を覚えたんです
剣のように とがらせた氷とは
言いましたが
つららとは言わなかった
つららで人は殺せないとみんなに
確認させたかったんでしょ？
しかし つららという言葉を使えば
つららで実験してみよう
ということになるかもしれない
あなたは誰かが
窓から ぶら下がってる
何百本ものつららの中から
あなたが仕込んだガラスの剣を
取られることを恐れたんです
その心理的な不安が｢剣のように
とがらせた氷｣などという
妙な言い方をさせてしまった
違いますか 宇佐美さん？
本当か？
参ったよ　お前の言うとおり
東城を殺したのは俺だ
宇佐美
なんてことを
お前は知らなかっただろうが
あいつとは…
東城とは同じ高校だった
俺は中学までは勉強もスポーツも
常にトップの成績で
県下一の進学校に入学したんだ
だが その日から俺は高校の３年間
万年２位に転落した
なぜなら そこに東城がいたからだ
あいつは大した努力もせず
女と遊んでても常に学年トップ
俺がどんなに頑張っても３年間
あいつを抜くことができなかった
俺は努力型の凡才
天才型のあいつには
かなわないのか
あいつに勝るものはないのか
その時 俺はフェンシングに出会い
その魅力に取りつかれ
自分自身を吹っ切るように
練習に練習を重ね
そのかいあって大学に入る頃には
全国大会で優勝するまでになった
俺は自信を取り戻した
だが ある日
じゃ 次の大会も頑張ってね
ええ　任しといてください
それじゃ
やだ　真琴ったら
東城
よう　久しぶり
ああ
宇佐美　俺も始めたんだ これ
フルーレってやつさ
君 強いんだって？
俺はまだ下手くそだけど
そのうち君に
追いつくかもしれないよ
そうか　楽しみに待ってる
じゃあ
精いっぱいの強がりを言ったが
俺は自分の声が震えているのに
気付いた
そして俺はきっと奴に
追いつかれると思った
案の定 それから１年後
ほんとかよ それ
奴が全日本の強化合宿に
現れたんだ
よう
あいつが…
あいつがまた俺の目の前に
恐ろしかった　たった１年で
トップクラスにまで上り詰めた
あいつの才能 センスが
もう駄目だ
このままじゃ また負ける
２番手に転落しちまう
俺はトップでい続けたいんだ
なんで いつも俺に付きまとう
あのにやけた顔で
簡単に俺を追い抜くことが
あいつには快感なんだ
あの女ったらしに負けて
すべての誇りを失い
抜け殻になった自分を想像すると
もう どうしようもなくて
消すしかない　あいつの存在が
俺には耐えられなかった
信じられん
君がそんなことで人を殺すなんて
やっと つかんだトップの座を
手放したくなかった
そのために どんなに
苦しい練習にも耐えた
だけど東城の足音が
俺には聞こえた
ヒタヒタとすぐ後ろまで
迫っていたんだ
宇佐美
俺は迷った　直前まで
だが あの夜
いいのか　ほんとに
こんなもん使わなきゃ
勝てないのか
俺はあいつの何倍 何十倍も
努力してきたじゃないか
もう一度この剣に
懸けてみるんだ
そう簡単には負けない
この剣であいつを
たたき潰してやるんだと
思いとどまったんだ
明智君 どうかしたか
いえ 何でもありません
しつこいな
何度も同じこと 言わせるなよ
俺はな ルミ
ルミ？
お前のその安っぽさが
嫌になったんだよ
東城君 そんなこと言わないで
じゃあな バイバイ
待って 待って　東城…
お別れだよ ルミ　しつこい女
なんてことだ
ルミは俺が付き合ってる女だ
東城の奴と付き合ってたことを
知ったのもショックだったが
あいつが むごくルミを
捨てたことに猛然と腹が立った
俺が初めて心の底から
愛したルミを
あんな言葉で捨てるなんて
許せない 絶対
あいつは俺のルミを
もてあそんだんだ
そう思ったらカーッと
頭に血が上って
後のことは正直よく覚えてない
宇佐美さん　僕は最初から
あなたが犯人だと考えていました
不意打ちとはいえ
真正面から胸元に踏み込んで
心臓をひと突きできる
腕の持ち主は
あなた以外にいない
うん
明智君の言うとおりだ
君と東城との差は
歴然としていた　10年経とうが
彼は君を抜くことは
できなかっただろう
他のことはどうであれ
あなたのﾌｪﾝｼﾝｸﾞの才能 情熱は
東城さんは言うに及ばず
他の誰よりも抜きん出ていました
その類まれな才能で
十分あなたのプライドを
保つことができたはず
そう思うと とても残念です
まったくだ
なあ 明智　お別れにもう一度
俺と剣を交えてくれないか
え？
一本勝負だ
サリューエ
エト･ヴ･プレ？
アレ！
すげえ
２人とも引かねえ
アルト　勝者 宇佐美
明智
はい
俺の最後の試合に
花を手向けてくれたのか
いえ 必死で戦いました
あなたには とてもかないません
今は な
明智
はい
あと２年 いや
１年あとだったら俺は
君を殺していたかもしれないな
１年後 君が俺の
フェンシング選手としての
プライドをズタズタに引き裂く
最初に戦った時
それが分かってたよ
君は天才　俺はしょせん
がむしゃらに努力するしかない
凡才だ
君も気をつけろ
調子に乗って
その天才ぶりを見せつけると
逆恨みした俺みたいな凡才に
心臓 グサリってやられるぜ
その日 私はフェンシングの剣を
置きました
やめてしまわれたんですか？
ええ
動機はどうあれ
宇佐美さんのように真剣に
ﾌｪﾝｼﾝｸﾞに取り組んでなかった
自分に気付きました
そんな人間が全日本の代表として
国際試合になんか
出てはいけないんです
それ以来 剣は…
天才の苦悩って
悲しいもんなんですね
つまらない昔話を長々と
してしまったようです
本庁へ顔を
出さなければいけないので
お先に失礼します
よくやったよ カツオくんは
褒めてやろうよ
社会人相手に大善戦
おいっ子は天才高校生って
言われる逸材だぞ
あんなオヤジにどうして負ける
天才も筆の誤り
弘法も木から落ちるって言うだろ
なあ おっさん
残念会やろう な？
パアッとステーキ食って
元気つけなよ　な？
恥ずかしいわね
彼はいいですね
哀れみこそすれ
一生 嫉妬とは無縁だ
おい １人で行け
俺は帰って寝る
おっさん 待てよ
一緒に応援してやっただろ
俺もうクタクタ
スタミナつけないと
な 美雪　ステーキ食いたいよな？
そうだ　焼肉だっていいよな？
カルビにロースにタンにミノ
石焼ユッケビビンバに
クッパにキムチに冷麺と
きたもんだ
明智さんの言うとおりよね
明智？あのキザ野郎が
何か言ったのか
一ちゃんは一生 嫉妬とは
無縁だって
そう　焼肉は無煙
無煙ﾛｰｽﾀｰで焼くのがいいんだよね
煙出ると服も髪も
におい付いちゃうし そんで
炭火だったらなおのことオッケー
あれも食べたいし
あれも食べたいしって
あれ？あれ？あれ？おい 美雪！
それは去年の出来事だった
晴れ渡る青い空
浜辺に水着のギャル
過激な夏のアバンチュールを
楽しむはずでって何だよ 佐木
お前が言ってた格安の
素敵な民宿ってこれかよ
しかも裏手には墓場？ああ？
合宿の恒例の肝試し？
誰もいないはずの廃校で起きた
不思議な事件
真夏の夜の怪　そして
俺が解けなかった謎とは？
納得いかない　絶対どっかに
謎が隠されてるんだ
珍しい　一兄ちゃんが
真面目に勉強してるなんて
雨でも降らなきゃいいけど
違うのよ
一ちゃん 去年の夏のこと
まだ引きずってるの
え？去年の夏？
二三ちゃんには
話してなかったけど
私と一ちゃん
泊りがけで海に行ったの
２人で海に？
僕も一緒でしたよ
なんだ 佐木君　脅かさないでよ
で どうしたの？美雪お姉ちゃん
ちょっと事件が起こってね
でも それは
一ちゃんが解決したんだけど
１つだけ謎が残っちゃったの
金田一先輩にも
解けない謎なんですよ これが
一兄ちゃんでも解けないなんて
それって どういう事件だったの？
今年の夏は浜辺のギャルと
超過激な真夏のアバンチュールを
過ごす…
何か言った？
いえ 何も
まあ 一ちゃんがウキウキするのも
分かるわ　気持ちいいもん
それに佐木君が格安の民宿
紹介してくれて助かっちゃった
いやあ 僕こっちに
親戚がいるんですよ
子供の頃 夏になると
よく海水浴に来ましたから
この辺りのこと 詳しいんです
へえ そうだったんだ
あ あれじゃない？予約した民宿
うわあ　すてき
ペンションみたい… え？
そっちじゃありません
あっちですよ 予約してた民宿は
え？
格安の割には
しっかりしてるでしょ この民宿
そ そうね
あ？
山科大付属高校美術部
御一行様か
美術部だったら かわいい女の子
いっぱい いるんだろうな
先輩　顔ゆるんでますよ
不動高校ミステリー研究会
御一行様？
大げさよね　たった３人なのに
いや 部活の合宿だって
言っとけばさ
民宿の待遇
良くなるかと思ってね
さすが 先輩
どうだか
いらっしゃい
あのう 予約していた
金田一ですけど
東京の
金田一様
お３人様で
２部屋でしたね
ごゆっくりと
あの そのニワトリ…
今晩のおかずです
やっぱりあったか 卓球台
俺の推理どおりだぜ
俺が実は卓球の鬼だとは
幼なじみの美雪も知らないこと
卓球部のｷｬﾌﾟﾃﾝだった母ちゃんに
ガキの頃から仕込まれてたんだ
こうしてポーチには
イニシャル入りのマイボール
そしてカバンには
マイラケットが忍ばせてあるのさ
今夜 俺は
ここで華麗なるプレーをする
そして みんなの目を
釘付けにするんだ
この夏の主役は俺が独り占めだぜ
一ちゃん　一ちゃん
私たちの部屋は２階だって
俺と美雪が一緒の部屋？
バカ
佐木君とに決まってるでしょ
やっぱり…
まったく
何 寝ぼけたこと言ってんの
ねえ あなたたち
もしかして
不動高校の
ミステリー研究会の人？
はい そうですが
ミステリー研究会ね
それじゃ
ここはピッタリの場所だな
ほんと ほんと
君たち センスいいよ
私たち 山科大付属高の美術部なの
夏合宿で
毎年 この民宿に来てるの
よろしくね
こちらこそ よろしくお願いします
あの 美術部の合宿って
走りこみでもするんですか
走りこみは良かったな
ただの骨休めさ
ああ やっぱり
これから夕飯まで
卓球やるんだけど
あなたたちも一緒にやらない？
え？卓球ですか
大勢でやる方が楽しいわ
荷物を置いて
降りてらっしゃいよ
どうする 一ちゃん？
ふーん 卓球ね
ええ　まあ いいけど
先輩　行かないんですか？
うん 僕はいいからさ
先 行っててよ
早く来てくださいよ
うん
ついに この時が来たか
こんなに早くチャンスが
めぐってくるとは
今こそ俺の真実の姿が
明かされる時だ
一ちゃん どうしたのかしら
先輩 あまり乗り気じゃ
なかったみたいでしたよ
卓球 下手なんじゃないの？
こんにちは
待たせたな 諸君
お客様
夕食のご用意ができました
おお ようやく飯か
お腹ペコペコだわ
ここの夕食 おいしいのよ
本当ですか？
よーし　腹いっぱい食べるぞ
私も
このラケットとピンポン玉
フロントに返しとくんだよな
これで全部かな
たぶん そうだと思うけど
さあ　俺たちも行こうぜ
おう！
どうしたの 一ちゃん
何すねてんの？
食事と聞けば
すっ飛んでくる先輩が
随分 遅かったじゃないですか
ほっといてくれよ
いいんだよ 俺なんて
俺なんてさ
君たち 今 暇？
はい
夏合宿恒例のイベントが
あるんだけど
君たちも参加しない？
恒例のイベントですか
イベントって何やるんスか？
肝試しさ
それも とびきり怖いやつ
肝試しって
どこでやるんですか？
君たち
そもそも この民宿が
なんで こんなに格安なのか
理由知ってる？
ボロいからじゃないんですか？
それだけじゃないのよ
ほら　窓の外 よく見てみろよ
墓場だ
そういうこと
この民宿 裏手が墓地だから
格安だし シーズン真最中でも
部屋が取れるのさ
なんて夏向きだ
雰囲気ありすぎるわ
ほら　墓地の向こうに
学校の校舎が見えるでしょ？
あれは亡霊学校って言われてるの
亡霊学校？
８年前 廃校になった
小学校なんだけど
この辺りじゃ
超有名な心霊スポットなの
まさか肝試しの場所って…
ピンポーン！今年の目的地は
花子さんが出るっていう
１階の女子トイレよ
花子さんは一番奥のトイレにいて
気に入った人が入ってくると
お墓に引きずり込むって
言われてるわ
そして引きずり込まれた人はね…
やめて！それ以上 聞きたくない
ごめん ごめん
目的地は この女子トイレの
一番奥だ
みんな　初めて行く場所だから
間違えないように
道に迷ったら
二度と帰ってこれないかもな
やめてよ 一ちゃん
手順は こうだ
くじ引きで１番を引いた奴が
まず この空き缶を
一番奥のトイレに置いてくる
この中には１人引いた人数分の
ピンポン玉が入っているから
次の奴からピンポン玉を
１個ずつ取って戻ってくるんだ
ズルしないでトイレまで
行きましたっていう証拠さ
さあ　まずは
お客さんから どうぞ
さあ　次は七瀬さん どうぞ
誰かの携帯が鳴ってるぞ
俺のだ
じゃ次は私ね
で 俺か
まったく　無言電話だぜ
頭くるな
ひょっとして
トイレの花子さんだったりして
バカ言え
伊能先輩　ラストですよ
早く引いてください
ああ
はい　これで
全員くじを引きましたね
では一斉にくじを開きましょう
せーの
あ ５番だ
ああ 嘘！私が１番だわ
俺は３番
私は４番だから
一ちゃんの前ね
げっ ７番？
最後じゃん　やだな
僕は２番です
そして僕は６番
これで順番は決まりですね
では本番 いきますか
明かりって これだけですか？
懐中電灯とかダメ？
ダメダメ
こっちの方が雰囲気でるじゃん
はい これ　ロウソクが消えたら
使ってください
じゃ そろそろ肝試し
始めるとするか
では１番 国枝真紀　行きます
ねえ 一ちゃん
お願いがあるんだけど いい？
４番手の七瀬さん 無事ご生還
次は金田一君
よっしゃ　任せとけ！
本当は俺 肝試しって
苦手なんだよな
なんだ 鳥か
びっくりさせるなよ
うわあ　これが亡霊学校か
雰囲気ありすぎるぜ
ここが問題のトイレか
左手の一番奥っていうと…
ええっと　ああ ここか
うわー！
うわー！
ゆ 幽霊…
あれ？
モップ？
何だよ　ここ掃除道具
置いてる所じゃねえか
脅かしやがって
てことは こっちがトイレか
超こえー！
あの中のピンポン玉を１個
持っていきゃいいんだな
早いとこ済ませてっと
げっ いってえ！
あっ いっけねえ
やっちまった
どうしよう これ
そうだ
これをこうしておけばと
分かんない 分かんない
遅いな 伊能先輩
ああ
俺と入れ替わりに出たんだから
かれこれ１時間経つぞ
みんなで捜しに行きましょうか
伊能先輩
先輩
伊能先輩
どこ？
伊能さん　どこですか
伊能君　どこなの
先輩
伊能先輩
隠れてんなら出てきてくださいよ
脅かしっこなしですよ 先輩
いない
缶の中は空っぽだ
てことは 伊能さん
ここに来たんだな
行き違いになったんですかね
あら？何これ
これ 血の跡じゃない？
これ まさか伊能君の…
やだ
いや ちょっと待って
こいつは血じゃない
赤インクだ
赤インク？
本当だ　インクのにおいがする
何だよ　びっくりさせやがって
でもどうして赤インクが
こんな所に？
決まってるわ　あいつよ
伊能君のイタズラよ
他に誰がやるってのよ
まったく 人騒がせな人だよな
ほんと 伊能先輩って…
あいつ 私たちが慌ててるとこ
陰で見て笑ってるのよ
心配して損した　帰ろ 帰ろ
一ちゃん　行きましょう
ああ
佐木　俺たちも…
やっぱり伊能さん 捜した方が
いいんじゃないですか？
いいのよ あんな最低男
ほっとけば
国枝さんって伊能さんのこと
嫌ってるんですか？
いろいろ訳ありだから あの２人
鳴沢！お前 余計なこと
しゃべんじゃねえよ
おい 佐木　どうした
お前 顔色悪いぞ
実は僕 さっきのことで
思い出したことがあるんです
赤インクにまつわる
もう１つの花子さんの話を
昔 こっちに住んでるいとこに
聞いたんですけど…
私もその話 知ってるよ
赤いちゃんちゃんこの
女の子の話でしょ？
ああ
昔 花子っていう女の子が
あの学校のトイレで
血を吐いて死んだの
白いブラウスが
血で真っ赤に染まって
まるで赤いちゃんちゃんこを
着たみたいになって
それ以来 一番奥のトイレには
花子さんの幽霊が出るように
なったって言うの
ただの噂話だけど
でも その話には続きがあるんだ
続き？
そのあと やっぱりあのトイレで
肝試しをした人たちが
いたんだけど
その中に
イタズラ好きな女の子がいて
その子は自分のｼｬﾂに赤いｲﾝｸで
ちゃんちゃんこを描いて
みんなを驚かせて喜んでいたの
でもその子 次の日の朝
トラックにはねられて
死んじゃったの
見晴らしのいい道路で
交通事故なんて 今まで
起こったことない所だったの
私 担架に乗せられた
その子を見たんだけど
制服の白いブラウスが
血に染まって
まるで赤いちゃんちゃんこを
着てるみたいだった
あとから知ったんだけど
その子の名前もね
花子さんだったの
猫ですよ 先輩
植木鉢でも ひっくり返したんだろ
何だ　びっくりしたよ
あれ？どこ行ったんだ あの子
いない…
先輩　おやすみなさい
おやすみ
ありゃ 美雪ちゃん
お前 ひょっとして
花子さんの話 聞いて
ビビってんじゃないの？
そんなことないもん
怖いんなら
こっちで寝てやってもいいんだぜ
結構です　そんなこと絶対に
お断り！
さあ　良い子は寝る前に
おトイレ おトイレ
花子さんか
何だ　停電か？
あの 入ってますけど　あれ？
誰もいない
ねえ 遊ぼうよ　お兄ちゃん
次々と起こる怪現象
肝試しの最中に消えた伊能さんは
一体どこに？
行方を追う俺たちを遮るように
現れた ある少女のお墓
そして再び訪れた学校のトイレで
見つけた奇妙なもの
全ては さまよう花子さんの魂が
引き起こしたイタズラなのか
その答えは君の後ろに
ねえ 遊ぼうよ　ふふふ…
金田一少年の事件簿﻿海辺の民宿へ行った俺たちは
同宿した高校生グループと
肝試しをすることになった
民宿の裏手の墓地
朽ち果てた墓石
今は使われていない
小学校の校舎
女子トイレに出没するという
トイレの花子さん
その肝試しの最中
１人の高校生が行方不明になった
そして その夜…
｢亡霊学校殺人事件｣
あの 入ってますけど
あれ？誰もいない
ねえ 遊ぼうよ　お兄ちゃん
どうしたんですか？先輩
夢か… ああ びっくらこいた
どうしたの 一ちゃん　大声出して
ああ 美雪　伊能さんは？
それが まだ戻ってないんだって
これから みんなで
探しにいくそうよ
一ちゃん どうする？
ああ 行くよ 俺も
それにしても あの夢
伊能さん
伊能君
伊能さん
伊能さん
伊能先輩
どこに行ったのかしら
ケガでもして動けないのかな
だとしても声ぐらい出せますよね
そうよ　人騒がせにも程があるわ
伊能君たら
それにしても この墓地
明るくなっても
やっぱり薄気味悪いよな
おーい みんな！
見つかったのか
これは…
見ろよ この墓
｢花子之墓｣？
こりゃ かなり古そうだな
｢昭和13年｣　戦前の墓だよ
｢享年10歳｣だって
ひょっとして
例の花子さんの お墓だったりして
ええ？嘘…
伊能君
死んでる
これは まるで
赤いちゃんちゃんこ
じゃあ まさか？
花子さんだ
花子さんが伊能先輩を
自分の墓に呼び寄せたんだ
そんなバカな
なるほど
肝試しをやっている最中に
被害者がいなくなったと
いうわけか
で 何か思い当たることは？
あの時は特に これってことは
でも トイレの赤いインク
てっきり伊能君の
いたずらだと思ってたから
いなくなっても
本気で心配しなかったんです
赤いインク？
トイレの床に付いていたやつか
こいつのことだな
刑事さん それをどこで？
被害者のポケットから
出てきたんだ
ということは
やっぱり床の赤いインクは
伊能さんのいたずらだったのかな
それに こんなものも出てきたぞ
そのピンポン玉は
トイレに置いておいたやつです
トイレ？
立ち寄った証拠に１人１個ずつ
持ち帰ることになってたんです
なるほど
こいつを被害者が
持ってたってことは
トイレに立ち寄った帰りに
襲われたってことか
警部 検査結果が
なるほど
今の話の裏付けが取れたよ
被害者の死亡推定時刻は
午後11時半から午前０時
つまり君たちが肝試しをしている
最中だったんだ
あの時に伊能君が？
ま 何にせよ君たちの容疑は晴れた
もう帰っていいぞ
どういうことですか？刑事さん
いいかね　被害者がトイレに
向かったのが午後11時半
その時点から君たちは
一緒に行動してたんだろ？
ピンポン玉のことも
考え合わせると
君たちのアリバイは完璧だ
じゃあ一体 誰が伊能先輩を
やったんですか？
それはまだ今のところ
何とも言えんな
もしかしたら通り魔か何かの
犯行かもしれんがな
伊能先輩 やっぱり花子さんに
殺されたのかな
バカバカしい　ガキみたいなこと
言うんじゃねえよ
一ちゃん どうしたの？
さっきからずっと黙ってて
なるほど　こいつを
被害者が持ってたってことは
トイレに立ち寄った帰りに
襲われたってことか
ほう　スケッチですか
こんなことでもやってないと
気がめいっちゃうからね
そうだよな
せっかくの合宿なのに
ちょっと聞きたいことが
あるんだけど いいかな？
何だい？
昨日の夜
殺された伊能さんと国枝さんが
何か訳ありだって言ってたけど
あれって どういうことなのかな
ああ あのことか
死んだ人のこと悪く言うのは
嫌だけど
伊能先輩って
かなり身勝手な人でね
自分で好き放題なこと
やっておきながら
何かあると その尻拭いは
俺たちにやらせるんだ
この間の文化祭の時も
俺たちがみんなで決めた
展示の配置を
勝手に自分の作品だけ目立つ
ところに置いちゃったりしてさ
大変だったんだよ まったく
へえ そうだったんだ
で その国枝さんのことって？
ああ そのことね　伊能先輩
ある美術館でやったコンクールに
入選したんだ
へえ
それがちょっと問題になってね
鳴沢君！その話
私がモデルだなんて
まさか信じてるんじゃ
ないでしょうね
いえ そんな
違うのよ
絶対に私じゃないんだから
参ったな
すっげえ剣幕だったな
何かやっぱり訳ありだな
国枝さん
こうなったら言っちゃうけどさ
実は伊能先輩が
入選した作品なんだけど
よくやるんだ あの人
コンピュータで写真を加工した
コラージュなんだ
でも その使った写真が問題でね
写真が問題？
その写真のモデルが
国枝さんじゃないかって
学校中のうわさになっちゃってさ
へえ　もしかして
女性の裸だったりして？
まあね　それなりに
デフォルメされてたけどさ
なんせ伊能先輩 国枝さんと
付き合ってた時もあったから
なるほど　で 本当のところは？
国枝さんの
裸じゃないかってこと？
そりゃ分かんないよ
伊能先輩 シラ切ってたし
国枝さんは その話が出ると
さっきみたいな調子だしさ
真相は やぶの中ってわけか
そういうことかな　あ！
この話 君に話したってこと
獅子島には内緒だよ
ええ？
獅子島
国枝さんのこと好きみたいなんだ
俺がしゃべったの分かると
ぶん殴られちゃうから
あいつも
カーッとなるタイプだからさ
芸術家の卵って難しいんだな
金田一君 あなた
私を疑ってるんじゃない？
伊能君を殺した犯人だって
何か疑われるような
訳でもあるんですか？
あるわけないじゃない　何よ
俺は別に何も言ってませんよ
ただ国枝さんが
私 何もやってないんだから
平気よ
俺 今度の一件で
ちょっと気になることがあるんだ
みんなで もう１度あの学校へ
行ってみませんか？
ええ？
伊能さんは墓場で死んでたけど
殺される前に
トイレに立ち寄ってる
ひょっとしたら 何か手がかりが
残ってるかもしれない
そんなこと警察に
任せとけばいいじゃない
変なことしたら
また疑われるのが オチよ
いや 俺 あの伊能さんの
殺され方には
何か訳があるような気がするんだ
シャツを赤インクで
ちゃんちゃんこ みたいに
染めるなんて
普通の人間のやることじゃない
じゃあ あれは花子さんのたたり
だとでも言うの？
それは分からない
分からないからこそ
調べてみたいんだ
この事件の真相を
事件の真相…
とんだ合宿になっちゃったもんね
私たち…
だから もう１度 行ってみようよ
学校へ
そうね　行きましょうか
金田一君
そうですよ　国枝さん
よし 行こう
一ちゃん やっぱり私…
一ちゃん！
昼間でも不気味な学校だな
本当ね
何か踏んだぞ
何 ビビってんだよ
雑巾 踏んだだけじゃん
何やってんの 獅子島
モップだよ モップ
しょうがないわね
さっさと立ちなさいよ
ここだよ　昨夜みんなが
肝試しで来たのは
そうそう　やっぱり
気味が悪いわね
みんなと一緒でも
おい鳴沢 トイレの中
のぞいてみろよ
ええ？俺 やだよ
金田一君 そこ物置よ
ええ 分かってます
物置がどうかしたのか
いや
どうしたんですか？七瀬先輩
ごめん　やっぱり私
怖くて中に入れない
やあね 七瀬さん　今は昼間よ
こんな明るいうちから幽霊なんて
何でしょうか 今の音
俺たち以外 誰もいないはずだけど
とにかく何も
見つからなかったんだし
そろそろ帰ろうよ
でないと俺たちまで
伊能先輩みたいに
バカ言え
花子さん なんて
マジでいるわけねえだろうが
何だよ　お前どこ行く気だよ
どこも行かねえよ
待ってください
やだ　置いてかないでよ
おいおい　ちょっと待ってくれよ
どうしたの？一ちゃん
この白い線
チョークかな
新しいな これ
それが どうかしたの？
一体 あの白い線
はい　どうぞ
金田一様 フロントに
お電話が入ってますが
ああ すいません
わりいな おっさん　こっちの
警察には知り合いいないからさ
ああ　いいってことよ
ところでお前が言ってた
壁に付いてた白い線
あれは石膏だったぞ
石膏？
ああ そうだ
それと被害者の死因は毒物だ
右手の指先に針のようなもので
刺した傷があった
そこから毒が入ったために
その場で倒れ
即死したんだろう とのことだ
なるほどね　で 伊能さんが
握ってたピンポン玉の指紋は？
複数の人間の指紋が出てるぞ
やっぱりな
ついでに その全員の名前
教えてくれないか
おう ちょっと待ってくれ
ああ 分かった
サンキュー おっさん
そうか やっぱり
バッチリでしょ？
この間 買い換えたばかりの
新品なんですよ
ほんと 全然 手振れもないわね
デジタル高画質ですから
すごい　夜でも くっきり映ってる
佐木　ここ 止めてくれ
どうしたの
佐木 再生のままで巻き戻して
最初の辺りから見せてくれ
はい
そこ 止めて
これが何なの？
どうして伊能さん くじ引きの
途中で出ていったんだっけ？
え？ああ
あ そうそう　隣の部屋で
携帯が鳴ったんでしたよね
そうか　そうだったよな
どうします？ビデオ
ああ 続けて再生してくれ
なるほど
何ですか？先輩
分かったぞ　伊能さんは
巧妙な心理トリックに
引っかかったんだ
え？
謎は全て解けた
どうして またこんなとこに
来なくちゃならないのよ
金田一君たら余計なことばっかし
そうだよ　俺たちのアリバイは
ちゃんと証明されてるんだから
こんなこと もうごめんだよ
帰ろうぜ
そうね
まあまあ そう言わずに
待ってくださいよ
遅いな　一ちゃん
あ 用意できたの？
どうも どうも
さあ 皆さん行きましょうか
行くってどこへ？
もちろん花子さんのトイレですよ
ええ？何でよ
あそこに行けば分かるんです
伊能さんを殺した犯人がね
犯人が？
説明してくれよ　金田一君
伊能先輩を殺した犯人って
一体 誰なんだよ
それを話す前に
みんなに打ち明けたい内緒話が
２つあるんだ
内緒話？何それ
まず１つ目だけど 実は美雪は
肝試しに参加するフリを
してただけで
本当は このトイレになんか
来てなかったんだ
ええ？
ごめんなさい　私
みんなの話 聞いてるうちに
どんどん怖くなっちゃって
それで…
だけど七瀬さん
ピンポン玉 持って帰って
きたじゃん
ああ あれは…
俺が美雪に渡したのさ
このマイボールを
マイボール？
俺の母ちゃん 卓球好きでさ
うちの家族 みんなマイボール
マイラケット持ってるんだよ
へえ
それと２つ目の内緒話
これは俺しか知らないこと
なんだけど
ここの指定のトイレに
置かれていた ピンポン玉
あれも俺のマイボールなんだ
どういうこと？それ
実は トイレに入った時
ローソクの火が消えて
真っ暗闇になっちゃってさ
空き缶 倒して入ってたピンポン玉
全部トイレの中に
落としちゃったんだ
ええ？全部？
申し訳ない
でも俺が後から行った時には
空き缶の中にピンポン玉が
ちゃんとあったけど
だからそれは このマイボールだよ
落としたピンポン玉の代わりに
入れておいたんだ
俺のマイボール高級品だから すぐ
分かるように印が付いてるのさ
ほら このとおり
本当だ
米粒みたいな小さな字が
書いてある
ところが あの事件の後
不思議なことがあったんだ
俺より後に行ったはずの
伊能さんが持っていたﾋﾟﾝﾎﾟﾝ玉は
このマークが入った
俺のボールじゃなかった
警察の調べでは
そのピンポン玉には
みんなの指紋が
ベタベタ残ってたよ
しかも肝試しに参加していない
美雪の指紋もね
何だか言ってることが
よく分からないわ
それは こういうことだ
伊能さんの持っていたﾋﾟﾝﾎﾟﾝ玉は
肝試しの時に
使われたものじゃない
おそらく犯人が用意したものだ
だとしたら犯人は一体どこで
そのピンポン玉を手に入れたのか
ああ！あの民宿の卓球だ
そう そのとおり
美雪の指紋までピンポン玉に
付くのは あの時以外にない
ということは
ここにいる みんなの中に
犯人がいるってことなのかよ
まさか そんな
本当に犯人が？
誰なんだ　そいつは
死んだ伊能さんが持っていた
ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ玉が犯人を教えてくれたよ
実は あのピンポン玉には
俺の指紋も付いていたんだ
どうして？一ちゃんの指紋が
付いてたって
別に変じゃないでしょ？
気付かないか？美雪
みんなが民宿で卓球をした時
俺は遅れて行ったから
結局 誰ともゲームをしなかった
あの時 俺がピンポン玉を
触ったのは１回だけ
あのピンポン玉
たった１つだけなんだ
ああ そういえば そうよね
そして俺が触ったピンポン玉は
この中の１人がフロントへ
返しに行った
それじゃ やっぱり犯人は
そう　あの時 卓球の用具を
フロントへ返しに行った奴だ
ここまで言えば もう分かるだろ
亡霊学校の怪談に見立てて
伊能さんを殺した真犯人は
あんただ
佐木のビデオに映った一瞬の映像
その時 俺は気付いてしまった
偶然を必然に変える
あるトリックに
壁に残った白い線 白いピンポン玉
全てが１つの真実につながった
薄暗い学校のトイレが見せた幻影
ここに花子さんはいない
いるのは
殺意に取りつかれた真犯人の
あんただけだ
金田一少年の事件簿
｢亡霊学校殺人事件｣ファイル３
赤いちゃんちゃんこ を着た
花子さんが出る という小学校で
俺たちは肝試しをやった
だが その最中
１人が行方不明になり
翌朝 墓場で死んでいるのが
見つかった
花子さんの たたりなのか
いや 違う
真犯人は この中にいる
｢亡霊学校殺人事件｣
それじゃ やっぱり犯人は
そう　あの時 卓球の用具を
フロントに返しに行った奴だ
ここまで言えば もう分かるだろう
亡霊学校の怪談に見立てて
伊能さんを殺した真犯人は
あんただ　鳴沢研太
ええ？
そんな…
フロントのノートに
あんたのサインが書いてあったぜ
俺の指紋が付いたピンポン玉を
持ち出せたのは
鳴沢 あんただけなんだよ
お前が
伊能君を殺した？
冗談は よしてくれ　俺が
どうして伊能先輩を殺すわけ？
それに俺には ちゃんと
アリバイがあるんだぜ
そうだ　伊能さんが
肝試しに出かけたあと
俺たち ずっと鳴沢といたぜ
だろ？俺に伊能先輩を
殺せるわけがないじゃないか
確かに伊能さんが殺されたのは
肝試しの最中だった
警察で割り出される
死亡推定時刻は
かなり正確だからね
じゃあ鳴沢君のアリバイは
成立するんじゃない？
ああ　だが
それは巧妙なトリックによって
生み出されたものなんだ
どういうことだ
この中で誰か肝試しの前に
このトイレに来た人はいるかい？
いや
こんなとこ肝試し以外じゃ
来ないわよ
そう　俺も初めてだった
だから肝試しで ここに来た時
この物置のドアを
開けてしまったんだ
女子トイレの一番奥が
目的の場所だって
聞かされてたからね
みんなは どうだった？
俺も間違えて物置を開けたよ
私も
僕もです
そして そのあとで１つ手前の
トイレを開けたんだろ？
ええ
一番奥は物置で
花子さんのトイレは その１つ手前
みんなにそう覚えさせることが
実は このトリックを可能にする
第１の条件だったんだ
そして第２の条件は
このトイレの暗さと怖さだ
暗さと怖さ？
このトイレは真っ暗で
明かりはロウソクだけ
その上 幽霊が出るなんて
怖い話まで付いていたら
誰も余計なものは見ずに
さっさと この場を
立ち去りたいって焦るだろ？
その焦る気持ちと この暗さが
ﾄﾘｯｸを成功させる鍵だったんだ
おい そこは物置だぞ
ああ
だが伊能さんがここを開けた時
ここは物置じゃなかったんだ
ええ？
まさか
トイレだ
物置がトイレに？
そう　誰でもここは
トイレだと思う
あの時 伊能さんも
そう思ったはずだ
ところが
ああ！
これは便器じゃないわ
そういうこと　民宿でもらった
発泡スチロールで作ったんだ
明るいところで見れば
一目で分かる偽物も
暗闇の中では
本物に見えてしまうんだから
不思議だよな
まるでマジックみたいだ
俺たちはトイレの中には
こんな形をした便器があると
思い込んでいる　だから
ドアを開けて暗い中で
それらしい白いものを見ただけで
ここがトイレだと
決めつけてしまったんだ
肝試しの時 ここを開けた
伊能さんも
そう思って何も疑わずに
この偽トイレに入った
ここが彼を殺すために作られた
特別な部屋だとも知らずにね
肝試しの順番は俺の次が鳴沢
そして最後は伊能さんだ
俺と入れ替わりに肝試しに出た
あんたは
殺人の下準備のために
急いでここに来た
まず物置から
バケツやら モップを全て出し
どこか別のトイレにでもしまう
そして あらかじめ用意しておいた
偽の便器を持ってきたんだ
この白い線は警察の分析によると
チョークではなくて石膏だった
たぶん あんたは石膏で
偽の便器を作ったんだ
ここに運び込む時 誤って壁に触れ
あんなふうに白い線が付いたのさ
美術部員なら石膏を扱うなんて
お手のもんだよな
俺なんかが作るより
ずっとうまく作れたはず
あんたは偽の便器を物置に置き
別のトイレで使われていた
木のふたを偽の便器の上に置いた
そのあとで本物のトイレから
自分の分と伊能さんが
取るはずだったピンポン玉を
ポケットに収め　物置には
別に用意していた
空き缶を置いたんだ
その中に入っている
ピンポン玉には
猛毒をたっぷり塗った針が
仕込んであった
おそらく どこを触っても
針に触れるように
細工していたに違いない
そして肝試しの時にやって来た
伊能さんは
ここか　花子さんのトイレは
おっと これか
塗ってあった毒は猛毒だ
伊能さんは即死状態で
その場に倒れた
そんな…
ちょっと待てよ
それじゃ 俺たちが伊能先輩を
捜しにここに来た時
ああ　あの時 あの物置には
殺された伊能さんがいたんだ
ここのトイレは内開きで
放すと バネで閉まっちまう
だから外へ出てくる
心配もないのさ
そして このトリックを完成させる
最後の仕掛けが
あの赤インクだった
俺たちが伊能さんを捜しにきた時
ここに長居されると
物置の伊能さんを
発見される恐れがある
だから赤インクの血の跡が
伊能さんのいたずらと
思わせることで
俺たちをトイレから
引き離したんだ
実際 この企みは うまくいった
みんな普段から
伊能さんの言動には
少々 頭にきていたようだからね
あとは民宿に帰って
みんなが寝静まった頃 起き出し
こっそり ここに来て
偽トイレを始末し
事切れた伊能さんを
墓まで運べばいい
一ちゃん　いつ そのトリックに
気付いたの？
きっかけは
佐木のビデオを観た時さ
ビデオを？
そう
肝試しのあと 物置を調べた時
ビデオに映っていた
モップやバケツの配置が
最初に肝試しで見た時と
違っていたんだ
そこから いろいろと考えた末に
ひょっとしたらと思ったのさ
でも どうして
民宿のピンポン玉を盗んだんだ？
トイレの空き缶には
まだ２つ残ってるはずだろ？
安全策さ
ええ？
鳴沢としては 伊能さんが
トイレに立ち寄ったあとに
殺されたことにしたい　だが
そのためには少なくとも
伊能さんの指紋が付いた
ピンポン玉を彼のポケットに
入れる必要があった
トイレの空き缶に
残っているものを
伊能さんに握らせる方法もあるが
彼の右手は毒針で刺されている
例え どんなに小さな傷でも
うっかり血でも付いたら
面倒なことになる
だから民宿のﾋﾟﾝﾎﾟﾝ玉を盗んだのか
そう　あれなら
確実に伊能さんの指紋が手に入る
だが その念には念を入れた行動が
鳴沢にとっては
逆に命取りになってしまったんだ
じゃあ トイレに残っていた
ピンポン玉は？
１つは鳴沢が
自分の分として持ち帰り
もう１つは石膏のトイレや
針の付いたピンポン玉と一緒に
処分したのさ
見てきたようなことを
言うんだな　金田一
君の言うトリックが
本当だとしても
俺がやったという
証拠なんてないだろう？
いや 考えてもみろよ
肝試しの夜
俺が最初に物置の中を見てから
そのあとに撮った
佐木のビデオを観るまで
中の配置は
変わっていないとすると
このトリックができたのは
順番から言っても
俺の次で伊能さんの前だった
鳴沢
あんたしかいないんだ
ふざけるな！その順番だって
くじで偶然 決まったことで…
偶然？
そいつは違うな
あんたは あるトリックを使い
伊能さんが７番目になる
くじを引くように仕向けたんだ
そんなことが できるわけないだろ
それができるのさ
え？
言いたくないなら
俺が代わりに言ってやるよ
あんたが くじに仕組んだ
心理トリックのからくりをね
この中には くじが入ってる
今から こいつで
あの時のトリックを再現する
みんな あの時と同じ順番で
ここから くじを引いてくれないか
死んだ伊能さんの代わりは
鳴沢 あんたがやってくれ
あの時 鳴沢は
お客さんである俺たちが
最初にくじを引くように
さりげなく勧めた
そして まず俺が１番目に
くじを引き
次に美雪　そして佐木が引いた
携帯の音だ
これって鳴沢君の…
ああ！
ない！俺の携帯！
悪いな　あんたの携帯
さっき ちょっとポケットから
失敬して廊下に置いといたんだ
そういえば あの時も確か
こんなタイミングで
伊能先輩の携帯が鳴ったんだ
そうよ　でも無言電話だったって
言ってムッとして戻ってきて
それから くじを…
鳴沢は こうやって
くじを引く最中に
携帯を鳴らすことで伊能さんが
ごく自然に最後の
くじを引くように仕向けたんだ
そして あの時
伊能さんの携帯を鳴らしたのは
彼のすぐ隣に座っていた
鳴沢だったんだよ
ちょうど こんなふうにね
あんたは携帯の
リダイヤル機能を使って
ポケットの中から伊能さんの
携帯に電話をかけたのさ
そうやって伊能さんを
隣の部屋へ追いやり
さっさと他の人に
くじを勧めていき
いよいよ自分の番になる
本当なら この時点で あと２枚
くじが残っているはずだが
実は くじ箱の中は
空っぽになっていた
どういうこと？
最初から くじ箱には
１番から５番までを書いた
くじしか入っていなかったのさ
鳴沢は伊能さんが戻る前に
６番と７番の くじを持って
さり気なく くじ箱に手を突っ込み
くじを引くフリをしながら
７番のくじを落とし
残った６番のくじを持ったまま
手を引き抜いたのさ
こんなふうにね　これなら
どんな番号でも確実に
引かせることができるってわけだ
なかなか考えたトリックだよ
さあ あんたの番だぜ
この中には伊能さんが
引いたのと同じ
７番のくじが入っている
あんたが まだ偶然だと
言い張るのなら
自分で このくじを
確かめてみるんだな　さあ！
参ったよ　俺の負けだ
ここまで理路整然と
追い込まれちゃあね
鳴沢
でも あいつを殺したことは
別に今も
後悔なんてしちゃいないぜ
伊能は俺の妹を
自殺に追いやったんだからな
自殺？
鳴沢君の妹さん
事故で亡くなったんじゃ…
俺は情けない兄貴だよ
妹が死ぬほど
悩んでいたことなんか
全然 分かんなかったんだ
あいつは
小さい頃から内気な性格で
自分の思ってることを人に
話したりするのが苦手な子だった
それでも いつもニコニコしていて
周りにも 家族にも気を使っていた
俺はあいつが死んじまうまで
あいつが それまでに
感じてきた喜びも
悲しみも 何一つ知らずに
一緒に暮らしてきて
何も… 何もしてやれなかった
今でも あいつの寂しそうな笑顔が
鳴沢…
鳴沢君…
残された日記には
Ｋという男に弄ばれた
妹の生々しい苦しみが
書き連ねてあった
Ｋ？Ｋって一体… Ｋ…
誰だ
それから俺は
Ｋという男のことだけを考え
必死に捜し続けた　そして あの日
これが入選 取った作品ですか
女のポーズ 過激っすね
特に色使いがいいっすよ
だろ？
このモデルの女性って
ひょっとして先輩の彼女ですか？
まさか
こいつが
知り合いの女の子の
写真をコラージュしたのさ
体がいいから気に入ったけど
顔が趣味じゃなくてね
だから首から下だけ
利用させてもらったんだ
ま ＣＧだから顔は
どうにでもできるんだけどな
あれ？何だよ 鳴沢　お前
今日 来られないって言ってたのに
え？ええ
予定が変わって
今 来たばかりなんすよ
それ 先輩の恋人が
モデルなんですか？
何だよ お前まで　そんなこと
どうだっていいじゃないか
要は作品の仕上がりさえ良ければ
モデルなんて単なる素材に
過ぎないってことさ
素材ですか　なるほどね
そういうこと
伊能の作品のコラージュされた
モデルの脚には
小さなアザがあった
それは子供の頃
俺が花火で妹にやけどさせて
しまった時に付けたアザと
同じものだった
じゃあ みんなで
茶でも飲みに行くか
当然 先輩のおごりっすよね
バカ言うなよ
割り勘に決まってんだろ
ええ？そんな
俺が妹にしてやれたことは 結局
やけどの跡を付けてしまったこと
くらいだったのさ
だからあの時 俺は
妹に誓ったんだ
あいつを殺してやる　この手で
俺は後悔なんかしていない
死んだ妹も
これで ようやく救われたはずだ
お姉ちゃん
これって
なあ 鳴沢
あんた さっき妹は救われたって
言ったよな
ああ それがどうした
俺 今までいろんなことがあってさ
あんたみたいなことになった奴
結構 見てきたんだよ
だけど 人を殺して誰かが本当に
救われたところなんか
俺 一度だって見たことがないんだ
鳴沢 あんただってそうだよ
あんた結局 救われない魂
もう１つ作っちまった
だけなんじゃないか？
救われない魂か
何を笑ってる
いえ　刑事さん
俺 伊能を殺したし
金田一の言ったことは
ほとんど当たってる
でも １つだけ俺が
やってないことがあるんです
何だと？
トイレの床に赤インクを
垂らしたのは確かに俺だけど
墓場に捨てた伊能のシャツに
赤いちゃんちゃんこ みたいに
インクを垂らしたのは
俺じゃないんです
嘘を言うな
嘘じゃありませんよ
赤いちゃんちゃんこ の話は
民宿の女の子に聞くまで
知らなかったし
それじゃ
あれは一体 誰が
さあ
俺が殺した伊能の救われない魂は
一体 どこに行くのかな
やっぱり あの暗いトイレの中を
さまよい続けるんだろうか
え？それじゃ
まさか あれって
そう
いまだに
その赤いちゃんちゃんこ の謎が
解けないのよ
まったく もう
どういうこった
でも
それだけじゃないの
え？
何か他にありましたっけ？
どういうこと？
佐木君や 一ちゃんには
話してなかったけどね
えらいことになりましたが
これに懲りずに
また来てくださいよ
はい　お世話になりました
さようなら
あのう
忘れ物でも？
いえ　娘さんにも
よろしくお伝えください
娘？私は一人暮らしですけど
え？でも10歳ぐらいの
おかっぱの子が
いいえ
そういえば この民宿の
昔の経営者に
ちょうど それくらいの
娘さんがいましてね
交通事故で亡くなったそうです
なんでも この近くの通りで
トラックに はねられたそうですよ
ひょっとして その子の名前って
確か… 花子とか
ねえ　このこと 一ちゃんに
話したほうがいいのかな
あ ちょっと待ってよ
聞きたくないよ
何もしないでシャツが
赤インクだらけになんか
なるもんか
何か謎が隠されてるんだ
この謎は必ず解いてみせる
じっちゃんの名に懸けて
遊ぼうよ お兄ちゃん
親愛なる 七瀬美雪様
私はあなたを以前から
お慕いしてきました
なぬ？これって
美雪へのラブレター？
ですが あなたのそばにいる
名探偵の孫と名乗る
いんちき男のいいかげんさには
もう我慢できません
今日 私がそれを証明して
みせましょう　ホームズの孫より
愛を込めてって
何が愛を込めてだ
何が親愛なるだ　ホームズの孫
俺に挑戦しようなんざ
百万年早いっつーの
金田一少年の事件簿
｢瞬間消失の謎｣﻿我が校の文化祭も
いよいよ明日に迫り
準備に余念のない
我々 仲間の様子を
このミスタービデオマン 佐木が
つぶさに記録しましょう
村上先輩のクラス
たこ焼きの出店やるんですか？
うん ちょっと明日に向けて
練習中なんだ
佐木　お前も相変わらずだな
うーん この食欲を刺激するタコと
小麦粉の香ばしいハーモニー
映像では
お伝えできないのが残念です
だったら この金田一 一が
実際に食べてみましょう
先輩…
こいつ
さっきから あっちこっちの出店で
試食しまくってるんだぜ
ああん たまんない
早く試食させて 草太君
じゃあ そこのダンボール箱の
中の箱取って
箱？ダンボール箱の中の箱ねえ
へー こんな紙しか
入ってねえぞ
もう早くしないと焦げちゃうよ
ほら こうやって
ほう
ソースとマヨネーズたっぷり
うほ サンキュー
一ちゃん
あ 七瀬さん
こんなところで何してるの？
あ あれ？
京谷　何でお前なんだ
七瀬先輩に頼まれまして
美雪に頼まれれば
何だってすんのか お前はよ
すいません
もう
ミス研の展示 手伝うって
言ったでしょう
だって俺は… あっ たこ焼きが
京谷君　そのまま部室まで
引っ張ってきて
はーい
村上君も後でね
僕もすぐに こいつを試食してから
七瀬さん
今年の文化祭のミステリー
研究会の展示については
この教室はミス研会報とか
資料パネルの展示
そして隣の部屋は
みなさんにお願いした
ミステリーに関する
貴重な お宝の展示室になります
ん？
もう少しっと
ああ　暗幕 借りてきてやったよ
ありがとう 桃子さん
どうってことないよ
誰だっけ？あれ
２年の相田桃子先輩
最近入ったんですよ
何でまた
オカルト研究会を
作ろうとしたんだけど
部員が集まんなかった
らしいですよ
まあ 幽霊部員の俺には
関係ないけど
幽霊部員なら
隣のお化け屋敷にでも
行った方が お似合いじゃないか
あは あは あはは…
それ面白いっすね
うふふ…
うふふ…
あはは…
あれ？そうでもないっすか
冗談で言ったつもりはないんでね
一ちゃん
はい！
ちゃんと真面目に聞いてよね
聞いてます 聞いてます
それで明日の本番の
役割分担ですけど
受付が１人 会場案内係が４人
ドリンクを配る人２人
それに お宝部屋の警備が１人
ねえ 先輩
２人でジュース配る係
やりませんか？
うーん　どっちかっつうと 俺
飲む係の方が…
立候補する方 または
どなたかを推薦される方
時間もないし そういうことは
部長の君が指名して
決めればいいんじゃないかな
賛成
部長 一任
でも お宝部屋の警備は
責任が重いんじゃないかしら
ああ それもそうだな
そういうのって一番 暇そうな人が
案外 適任なんじゃないんですか
なははは…
ばっ ばか　盗んでくれって
言ってるようなもんじゃないか
あれ 七瀬さん？
どうかしたの？
おっかねえ顔してさ
あ 岡持先輩
さっきまで ここに
いませんでした？
ああ　ちょっと抜けて
夕食の仕出し弁当の注文取りに
えっ 弁当？
うふふ…
それでは責任重大な
お宝部屋の警備は
金田一君に
やってもらいましょうか
何といっても
名探偵の孫ですから
何で俺なんだよ
よろしくね 金田一君
このカーペット 高そうね
いかにも お宝部屋って感じ
さすが校長室の借り物ね
一ちゃん
窓の鍵 かけ忘れないでね
オーケー
なあなあ
鷹島先輩の潔癖症って
相変わらずなわけ？
ええ　ゴム手袋だけは
肌身 離さずですよ
七瀬さん　ショーケース全部
きれいにしたわ
ああ はい　じゃあ
お宝を持ってきた人
みんな出してください
僕のお宝は
怪人二十面相が初演された時の
パンフレットだ
へえ
少し傷んでるけど
それでも５～６万の価値はあるね
私はアガサクリスティ直筆の手紙
本当ですか？
鑑定書がないから
本物かどうか分からないけど
エミリのは
なんとホームズのパイプ
といってもロンドンの
ベーカー街のお土産品なんだけど
私のは警視庁捜査一家で使ってる
本物の指紋採取セット
岡持くんは？
俺んちの弁当屋のお客に
骨とう屋の店長がいてさ
そこから ちょっと借りてきたんだ
そ… それは
ホームズが連載されていた雑誌
ストランドマガジンじゃないか
この雑誌で連載されてた時の
シドニー･パジットの挿絵が
今のホームズのイメージの
原点になったんですよね
俺のは
じっちゃんの猿股！
嫌！
フフ
さあて ラストは この僕ですか
随分 自信ありげだな 京谷
イギリスで出版された
ホームズ全集の初版本
えー！
それもコナン･ドイルのサイン入り
大学教授の父の
コレクションなんだ
値段を付けたら
100万は軽く行きますよ
ひゃ…100万円！
駄目！
触っちゃ駄目ですよ！
汚れが付いたら大変ですからね
んん　これは予想以上の
お宝が集まりましたね
しかし そうなると
ますます誰かさんの責任は重大だ
大丈夫よ　何といっても この人
名探偵の孫なんですから
美雪ちゃん　このメインポスター
どこに貼ればいい？
ちょっと待って　確かプリントに
書いてあったはずなんだけど
あら ホームズの孫？
親愛なる七瀬美雪様
私は あなたを以前から
お慕いしてきました
ですが あなたのそばにいる
名探偵の孫と名乗る
インチキ男のいいかげんさには
もう我慢できません
あなたが あの男の能力を
信じているとしたら
それは大きな間違いです
今日 私がそれを
証明してみせましょう
ホームズの孫より愛を込めて
名探偵の孫って
ひょっとして俺のこと？
その手紙って 七瀬先輩への
ラブレターなんでしょうか？
まあ 物好きな　うふふふ…
そんなことより 今日私が
それを証明してみせるとは
夕食の仕出し弁当のご到着
うわお！
まあ もう そんな時間？
準備作業 急がないとな
じゃあ 手の空いた人から適当に
食べちゃってください
結構 散らかってるけど
これ どこに置く？
そうですね
じゃあ お宝部屋にでも
置いてきますよ
そうだな
俺 手空いたぞ　弁当！
はい 先輩　すぐ持っていきます
私 お茶入れるわ
おお！
うまそう
いただきます
京谷　俺も
はい はい
僕のも頼むよ
先輩　お茶どうぞ
サンキュー エミリちゃん
私にも お茶
はあい
僕も弁当
はい ただいま
ああ しかし今年の１年生は
よく働くね
お茶どうぞ
あら珍しい
食べ終わった弁当箱は
どんどん渡してくださいね
うう 渋…
あら お茶って渋いくらいが
一番おいしいんですってよ
さて みんな食べ終わりましたか？
もう一息 頑張りましょう！
あと展示室のパネルを
完成させれば終わりだ
よし
頼むよ
あら？
ん？
あ 手紙
君たちの宝物の部屋で
何かが起こる
ホームズの孫
宝物の部屋
おい まさか
ああ あった
あった あった
何だ？
停電？
おい 誰か　早く電気つけろ
俺が つける
ええと スイッチ　ああ ここだ
まったく誰が消したんだよ
スイッチオフになってたぞ！
ああ びっくりした
ああ！
なくなってる
ホームズ全集が消えてる
そ… そんな ばかな
今 そこにあったぞ
100万円の超プレミアですよ
ど…ど どうしよう
僕 勘当されちゃうよ
鍵は かかったままよ
どこにもありません 真壁先輩
あの全集が隠せそうな場所は
全部 調べましたけど
しかし分からないな
何が？
このお宝部屋の窓には
鍵がかかっているし
隣の展示室とをつなぐ
この扉以外に出入口もないだろう
明かりが消えていたのは
恐らく数秒間
１分にも満たない時間だった
その ほんのわずかな時間に
一体ここで何が起こったんだ？
あの全集は魔術のように
一瞬にして消えてしまった
そんなオカルトみたいなことが
起きるわけないだろ
だとしたら盗まれたってことか
恐らく
それにしたって
あれだけ かさばる全集を明かりが
消えていた わずかな時間内に
全て盗み出すことなんて
可能だったんでしょうか
ホームズの孫の思惑どおりに
なってしまったな
あの手紙にあった お前の
インチキぶりを証明するとは
まさに このことだったんだな
それじゃあ あの手紙は
金田一先輩への挑戦状だったんだ
どうやら そうみたいだな
どうするの 一ちゃん？
もちろん 受けて立つさ
名探偵と呼ばれた
じっちゃんの名にかけてね
一ちゃん
お… お願いします　金田一先輩
僕のホームズ全集
取り返してください
ふん まあいい　だが明日の
本番までに見つからなければ
全部お前の責任だからな
ああ 真壁先輩
あ？
あの ちょっと
指紋 取らせてください
え？
き… 貴様
ぼ… 僕を
犯人だと思ってっつうのか？
いえいえ 指紋は ここにいる全員
のものを取らせてもらいますって
ど… どういうことだよ！
全員の指紋を取るって
ああ　悪いけど頼むよ みんな
だって あのほとんど
密室状態のこの部屋で
あの時ここにいる
ミス研の部員以外の人間が
出入りした気配は
なかっただろう？
それは確かに そう思うけど
だとすると
考えられるのは ただ一つ
10冊の本を消したホームズの孫は
ここにいる誰かってことになる
それにしても美雪が
おっさんのコネで借りてきた
指紋採取セットが
こんなところで役立つとはな
よし終わった
どうですか 先輩？
うん　結局残っていたのは
俺の指紋と京谷 岡持 相田桃子
真壁先輩 そしてエミリちゃん
それに草太 お前の指紋だ
ええ？俺の…
全然触った覚えないのに
いつ付いたんだろ
ホームズの孫は
この中の誰かってことに…
ん？
何か分かったんですか 先輩？
おいしそうな匂い
みんな　お腹 空いてるでしょ？
試食品の残り物
もらってきちゃった
マヨネーズとソース
たっぷりのもあるわよ
サンキュー 美雪
みんなで食べるの
ああ！美雪
あ テープ終わっちゃった
はあい エミリちゃん
渋いお茶のお返し
タバスコと辛子
たっぷり かけといたわ
うわあ ありがとうございます！
先輩…
佐木　今の所
もう一度見せてくれ
え？んん はい
そうか そういうことだったのか
ええ？
謎は全て解けた！
ついに尻尾を出したな
ホームズの孫
お前が今夜中に仕掛けを
回収に来るのは分かってたから
待ち伏せさせてもらったぜ
でも先輩　この部屋のどこに
あの ぶ厚い全集が
隠されているんですか？
全集？そんなものは とっくの昔に
外へ運び出されていたのさ
あの弁当を食べていた時にね
な… 何ですって？
美雪　ちょっと廊下に出てる
弁当の空箱開けてみろよ
え… ええ
一つだけ妙な箱があるはずだぜ
あ… 本当　この箱だけ
洗ったみたいにピカピカ
そりゃそうさ
その中には貴重なホームズ全集が
隠してあったんだからね
ホームズ全集が？
10冊 全部は無理でも１冊ずつなら
その箱にピッタリ入る
犯人は そこに目を付けたのさ
そしてブックケースから
抜き取った本を弁当箱に収めて
１冊ずつ部屋の外に
持ち出していったんだ
そうして俺たちが弁当を
食べていた間に
お宝部屋のホームズ全集は
中身は抜き取られ
ケースだけになっていたわけさ
じゃあ 犯人はあの暗闇の中で
ケースだけを持ち去れば
よかったのか
でもケースだって
かなり かさばるのに
その心配はないさ
どういうこと 一ちゃん？
ああ！
本のケース
まあ 見てみなよ
よ！は！ほら
ああ！
うまい具合にできてるだろう
犯人は全集のケースのつなぎ目を
一つずつ丁寧に剥がして
こんな仕掛けを作ったんだ
これなら ものの数秒で
ケースはペシャンコだ
あの時 犯人は
本を運び終わった時点で
例の脅迫状をパネルに貼り
電気を消したんだ
きっと犯人は暗闇でも
自分だけ見えるように
あらかじめ片目でもつぶって
目を慣らしていたんだろうな
そして あの暗がりの中
すぐさまガラスケースに駆け寄り
ペシャンコにしたケースを
カーペットの下に隠した
あとは暗闇の中で騒然としている
俺たちの中に
そのまま そっと加わっていれば
誰にも怪しまれることも
なかったってわけさ
さっきのビデオを
見せてもらったおかげで
このトリックに気付いたんだ
でも 先輩
そんなこと僕のビデオには
映っていないはずですよ
確かに犯行そのものは
映っていないさ
けれど たこ焼きを作っていた
草太は映っていた
あの時お前 ペシャンコの紙を
瞬く間に
たこ焼きの箱に
してしまっただろう？
その様子を佐木がビデオを
巻き戻している時に見たんだ
なるほど
そして そんな細工のいる
トリックを あの場で
実行できたのは
ただ一人！ホームズ全集の
持ち主であり
弁当を配る係を
率先してやっていた
京谷雅彦　お前だけなんだよ！
お前がホームズの孫だったのか
そういえば お前　誰にも
あの本 触らせなかったよな？
ああ 高価なものだとか
何とか言ってね
それも そのはずさ
他人に触れられちゃ
この からくりが
バレちまうからな
どうだ 何か言い訳あるか？
ホームズの お孫さんよ
僕の負けですよ 金田一先輩
今回だけはね！
今回のトリックは偶然
見破られただけだ！
僕は あんたの推理力なんか
絶対 認めない！
推理勝負で俺に勝とうなんて
100万年早いんだっつうの！
畜生！
あいつ 七瀬先輩のこと
好きだったんだ
しかし 好きな女に対して
屈折した態度
取りすぎだっちゅうの
小学生のガキじゃあるまいしよ
なあ？
じゃあ 先輩なら
どうするんですか？
え？
ええと 俺なら…
こんな感じ！
何すんのよ！
それも小学生以下だぞ 金田一
紺碧の海に ひそかに眠る海底遺跡
その眠りを妨げる者の運命は？
沖縄の孤島
相沢グループが開発した
超高級リゾートホテル
ディープブルー
そこで俺たちは
あいつと再会することに
しかしその時 東京郊外では
奇怪な爆破事件が…
映画とは全く異なる
テレビ版ストーリー
金田一少年の事件簿
｢殺戮のディープブルー｣ファイル１
見ろ　あれがディープブルーだ
ねえ 聞いてるの 一ちゃん？
ああ？
｢ああ？｣じゃないわよ
あの本 ちゃんと読んだの？
ああ 読んだ読んだ
読みましたって ちゃんと
表紙だけな
表紙だけ？
何やってんの？茜のホテルの
オープニングパーティーで
恥かかないために読んでよ！
こんな本 真面目に読めっての？
幻の超古代文明だって？
んなもん ふかしに決まってんだろ
これから行く島は そういう
古代文明と関係あるんだから
一夜にして海底に沈んだ
幻の古代文明アトランティスとか
ムー大陸くらい覚えといてよ
もう　茜の前で
バカなこと言わないでよね
まあ 古代文明は
どうでもいいけどさ
お前の友達には感謝してるよ
おかげでまたシャオロンに
会えるんだからな
上海以来 久しぶりだよな
シャオロン
感謝してるんだったら
少しは言うこと聞いてよ
わかってんの？茜のホテルで
オープニングパーティーに
ヤン雑技団を招いたから
シャオロンに会えるのよ
そのパーティーで恥をかかない
ために覚えてって言ってるの
プラトンが幻の古代文明について
書いたのはティマイオスと
もう１冊　えっと…
クリティアスかな
え？
プラトンは紀元前590年頃
エジプトのサイスへ行き
その地の神官から
幻の文明の話を聞いた
いやいや 申し訳ない
勝手にペラペラと
さっきからお二人の話が
耳に入ってきてね
茜さんのお友達でしょ？
はい
僕は広瀬匠といいます
藍沢茜さんの まあその…
一応 婚約者の１人です
茜のフィアンセ？
ほら 見えてきた
あれが紺碧島です
あの島の全施設が
正式にオープンすれば
日本屈指の高級リゾートに
生まれ変わり
名前も新しいのに
変わるはずだけどね
ディープブルーアイランドってね
キングはまだ
いらしてないようだな
はい
それでは先に我々 五聖者だけで
計画の進行状況を
確認しておきましょう
はい　先日 上海で
自分の記憶通りの地点に
オリハルコンを確認しました
港までの輸送手段の確保も
万全です
ホテル ディープブルーグランドは
全て我々の手の中です
昨夜 ホストコンピューターに
侵入し
自作の時限ウイルスを
完成させました
作戦開始と同時にホテル内の
セキュリティーシステムを
全て掌握できます
そうか　よくやった アナト
その功績をたたえ
王都復活の暁には
勝利の女神として その名は
神殿に刻まれることであろう
はい ありがとうございます
おお 降臨だ
キングシーサー
あなたの力は神の力
あなたの声は神の声
我ら５人
あなたのお言葉に従います
皆の者 運命の日は近い
この腐れきった世界から離れ
我々は美しき理想郷
ネオムーをよみがえらせるのだ
もしもし
お休みのところ申し訳ありません
明智警視でありますか？
そんなに声を張り上げなくても
聞こえていますよ 剣持君
し… 失礼しました
実は４時間ほど前
八王子の廃虚になった遊園地跡で
爆発があり
テロの可能性も考えられまして
廃虚でテロ
どういう意味ですか？
はあ それなんですが
使われた爆弾が
かなり特殊なものだったようで
特殊な爆弾？
はい いわゆる毒ガス爆弾の
一種だとかで
現場は無人の廃虚だったとは言え
そりゃもうひどいもんで
どういたします 明智警視
本部へ来られますか？
それとも私と一緒に
現場に出向かれますか？
では同行させてもらえますか
剣持警部
わかりました
30分でお迎えにあがります
わあ 大きいホテルね！
なあ しかし
すげえ内装だな こりゃ
七瀬様でございますね
どうも
お待ちしておりました
私 藍沢優と申しまして
茜の兄でございます
七瀬美雪です　いつも茜さんには
フラワーアレンジメントで
お世話になってます
それからこの人は私の同級生の
金田一 一です
茜から聞いてますよ
高名な探偵さんのお孫さんだとか
あはは いや
そのような名門ご出身の方に
出席いただけたら 明日の
プレオープニングパーティーも
盛り上がることでしょう
俺んち別に名門じゃないっすよ
ちょっと何…
だって おやじはサラリーマンだし
それに家のローンも
まだ残ってるし
一ちゃん
ははは…
これは面白いお方だ
兄さん ちょっといいかな
どうした 剛？
今 連絡が入ったんだけど
僕がフィリピンに発注した
熱帯植物がキャンセルされたって
兄さんの指図だろ？
どういうつもりなんだ！
やめないか 剛　お客様の前ですよ
あの熱帯植物はスポーツエリアに
必要なものなんだ
これ以上の動植物の輸入は
認められないな
本物志向もいいが
度を過ぎれば滑稽なだけだ
ひどいよ 兄さん　ホテル以外の
管理は全て僕に任せるって
約束だろ！
やめろと言ってるんだ 剛
場所柄をわきまえなさい
失礼しました お見苦しいところを
いえ
新堂君
はい
お部屋にご案内いたします
茜は７階のレストランに
いると思うので
荷物を置いたら
行ってやってください
首を長くして待ってましたよ
はい
こちら私の秘書をしてもらってる
新堂雄一です
よろしくお願いします
さあ どうぞ　ご案内いたします
茜！
待ってたわよ 美雪
すごいホテルね
びっくりしちゃった
シャオロン 久しぶりだな
本当に久しぶりだ 一
でもいつかまた会えると
思っていたよ こんなふうに
そうだな　俺たちは
上海以来の腐れ縁だもんな
くっそー
しかし変わんねえな お前
お前も変わんないな 一
ちょっと 一ちゃんもシャオロンも
茜に失礼よ
仲がいいのね
一ちゃん 紹介するわ
藍沢茜さんよ
このホテルを造った
藍沢国際海洋開発の
ご令嬢なんだから
やだ　やめてよ 美雪
私 いまだにそういう自覚
あんまりないんだから
はじめまして 金田一さん
いつも美雪から
うわさ聞いてましたよ
すごいエッチなんでしょう
いや エッチって… おい美雪！
お前 何話したんだよ
だって本当のことじゃない
確かにな
シャオロン お前まで
茜さん 捜しましたよ
またお母様と
ケンカしたそうじゃないですか
お気持ちはわかりますが
いつまでも仲たがいしていても
しょうがないでしょう
そろそろ家族として
認めて差し上げた方が…
ちょっと松田さん
今は友達が来てるの
そんな話は後にして
それに私の方が年下なんだし
そういう かしこまった
しゃべり方はやめてほしいわ
でも…
それより みんな一緒に来て
見せたいものがあるの
きっと驚くわよ
茜さん
ねえ 茜 いいの？
何が？
うん…
ちょっとかわいそうかなって
さっきの松田さん
いいのよ 別に
一応 彼も私の婚約者なんだけどね
婚約者って
ちょっとどうなってるのよ 茜
来る時 船の中でも
茜さんの婚約者って
人に会ったけど
広瀬さんでしょう
彼も婚約者の１人よ
正確には婚約者候補ってとこかな
お父さんが決めたのよ
３人のうちから
将来 結婚する相手を選べってね
３人って じゃあ
あともう１人 誰かいるの？
ええ　ほら
あそこでサボってるあの人よ
茜さん いやあ
まずいとこ見られちゃったな
相変わらずね
どうもこのホテルにいると
居場所がなくてね
まあ いいわ
それよりもみんな 紹介するね
この人がもう１人の婚約者で
東都医大を卒業したくせに
医者にならないで
お父さんの会社に就職した
変わり者の遠藤由明さん
相変わらず口が悪いな 茜さんは
どうも 遠藤です
君たちのことは
よく茜さんから伺っていますよ
上海雑技団のヒーロー ヤン君と
お友達の七瀬さん
その彼氏の金田一君だろ
違います！彼氏なんかじゃ
幼なじみなのよね
そうです
いわゆる ただの幼なじみです
あはは… ごめんごめん
で茜さん 皆をここへ
案内したってことは
例のアレをご披露するつもりかな
ええ
例のアレ？
驚きますよ　さあどうぞ
うわあ
すんげえ！海ん中だ
きれいだわね
なんて美しい
何だ あれ？
あれが海底遺跡ね
これがうちのリゾートの
一番の目玉で
海底遺跡を見渡せる
アクアリウムよ
素晴らしい
これが遺跡か
そう　ディープブルーさ
すごいわ
ディープブルー
え？上海でか？
ああ
何だよ 言ってみろよ
気になるじゃんか
どうしたんだよ
それは？
茜さんから このホテルでの
ショーの依頼があって
上海の港から雑技団の荷物を
日本へ送る
準備をしている時だった
最後の荷物の確認に 倉庫にいた時
(中国語)
うるさい！
構うな モト
確かに日本人だった
で その連中は
何も取らなかったのか？
ああ　なくなってる荷物は
なかったけれど
何か気になるんだ　どうも…
そうだな
ひょっとしたら盗みに来たんじゃ
ないのかもしれないぜ
それはどういう意味だ？
逆の可能性があるってことさ
つまり連中の目的は運びたい物を
雑技団の荷物に
隠すことだったのかもしれない
そう考えると そいつらがあっさり
引き下がった理由もわかる
お前が見つけた時には もう目的を
果たした後だったんだよ
麻薬とか拳銃の密輸か？
それはどうかな
だったら こんな小さな島に
荷物を運ぶより
もっといい方法が
あるような気もするし
そうだな　とにかく
もう一度荷物を調べてみるよ
ヤム オリハルコンの設置は
どうなっている？
はい　全て計画通りでございます
雑技団の荷物より
無事 回収に成功しました
所定の場所にオリハルコンの
設置は完了しております
オリハルコンの威力は
東京郊外で実証済みだ
今頃 警察の連中も
さぞや慌てていることだろう
だがそれも これから起こることの
プロローグに過ぎぬがな
おお すっげえ　でかい水槽！
本当！すごいわね
ねえ この魚 何て言うんだっけ？
私もよく知らないけど
多分アロワナだと思うわ
８階のこの部屋は一応
アロワナの間って呼ばれてるから
一応って まだ決まってないの？
優兄さんと剛兄さんの意見が
合わなくて
いろいろ複雑なのよ うちは
私の母は３年前に
亡くなったんだけど
父には別の奥さんがいて
その人との間には子供がいなくて
だから優兄さんも剛兄さんも
養子なの
その奥さんが亡くなって
私は藍沢の家に引き取られたけど
お兄さんたちも気を使うわよね
いきなりお父さんの血を引く
私が登場しちゃったんだから
へえ いろいろ大変なんだ
藍沢さんとこも
茜でいいわ 金田一君
私 藍沢の姓になってから
まだ２年くらいだから
何となく そう呼ばれるの
好きじゃないの
え？そうすか　わかったぜ 茜
一ちゃん！
ふふ… 美雪の言う通りね
おかしい
おお ここにいたのか 茜
お父さん
今 お友達を案内していたのよ
そうか そうか
おや そこの美少女が
七瀬さんかな？
いつも茜から
うわさは聞いていますよ
ああ どうもはじめまして
はは… そんなに緊張しないで
ああ そうそう
こいつは由里絵です
はじめまして
いつも茜がお世話になっています
こちらこそ
年は離れているが
一応 夫婦でしてね
こいつは去年までは
私の秘書だったんだ
前の妻の３回忌も済んで
籍を入れましてね
あはははは
いやあ しかし複雑だよな
血のつながらない
２人の兄と母親か…
本当　私だったら
パニックになっちゃうな
それに婚約者が
３人もいるんだもんな
あ？
そろそろ行くぞ 巫琴
はい
巫琴ちゃんか かわいい子だな
何？
あ！何でもない 何でもない
あはは…
ちょ ちょっと待ってください
じゃあこの爆弾は50年以上も前に
作られたものだって
言うんですか？
ええ　太平洋戦争時の
ものだと思われます
性能はまったく衰えていません
このガス爆弾が
都市部で使われた場合
その被害は計り知れません
明智警視
嫌な予感がしますね
これが起爆実験だとするなら
このままで終わるはずありません
いやあ 腹減った
おお ここか　飯 飯 飯
よし いいぞ アナト
オーケー ヤム
うわあ うまそうな肉！
一ちゃん あんまり
ガツガツしないでよ
恥ずかしいな もう！
いいわよ 美雪
シャオロン 荷物はどうだった？
ああ　確かに誰かが
封を開けたような跡があった
明日もう一度調べて見るけど
そうか
スポーツエリアは私の自慢ですよ
楽しみにしてます
それは大丈夫ですよ
ほお そうかね
やはり1981年ものはいいですよ
さすがに詳しいですね
おいしいワインです
ねえ 茜 みんなバラバラに
食事するのね
言ったでしょ 複雑だって
要するに今 派閥争いの
真っ最中なの
派閥争い？
そう　お父さんが引退した後
誰が藍沢グループの
実権を握るかって
何をするんだ 君！
あ！
見ろ　スーツが
汚れちまったじゃないか！
お前の１ヵ月分の給料でも
買えない代物なんだぞ！
ふん！次は穴を開けてやろうか？
何？
何を騒いでるんだ！
いいから動くな！
おとなしくしていろ
な… 何だ お前たちは？
ホテルを占拠した
たった今より このホテルは
キングシーサーの支配下に入る
何をバカなことを言っとるんだ！
黙れ！
我々は本気だ
抵抗する者は容赦なく射殺する
キングシーサーの支配下？
１発の銃声によって
事件が始まった
やつらはこの７階までの
全フロアを封鎖したのだ
全てはキングシーサーが語る
ネオムーのために
そしてその要求が拒絶された時
オリハルコンによって
俺たちの命を奪うと言う
絶体絶命の危機に
俺と美雪は離ればなれに
ここから脱出できるのか
金田一少年の事件簿
｢殺戮のディープブルー｣ ファイル２﻿美雪の友だち
藍沢茜の招待を受け
俺たちは 沖縄の孤島
紺碧島を訪れた
謎の海底遺跡を売り物にする
巨大リゾートホテル
その中に渦巻く
茜の３人の婚約者をはじめとする
複雑な人間関係
そして 思いもよらない事件に
俺と美雪は巻き込まれた
うっ
いいから動くな
おとなしくしていろ
ホテルは占拠した
ええっ！
たった今より このホテルは
キング･シーサーの支配下に入る
抵抗する者は
容赦なく射殺する
きゃあ！
お前たちは 一体 誰なんだ！
うるさい！
ん？あいつ…
あ あの時の…
しゃべるな！
はじめちゃん！
静かにしろ！
騒いでも 事は変わらない
お前たちの運命は
我々の手中にある
バアル 逃げた従業員たちを
追わなくていいんですか？
心配はいらん　セキュリティーは
すでにアナトが掌握している
非常ベルを鳴らしても
警備室にはつながらない
了解しました
間違いない　俺が
上海の倉庫でやり合ったのは
そこの若いほうだ
うん
貴様ら こんなことをして
ただで済むと思っているのか！
まだ 自分たちの立場が
分かってないようだな
我々は２人だけではない
今頃 我ら五聖者の同志が
すべての従業員を
ホテルの外へ追い出した上で
この７階にいたる
エレベーターと
各階段の防火隔壁や非常ドアを
すべて封鎖しているだろう
何だと？
一つ聞いてもいいかな
ん？
ほう あんたが藍沢国際海洋開発の
会長 藍沢秀一郎か
さすが 落ち着いているな
目的は何だ？金か？
フン 情けないな
しょせん その程度の考えしか
持ち合わせてないのか
よく聞け！
我らが偉大なる指導者
キング･シーサーに代わって
このバアルが
決起作戦の目的について
宣言を行う
我々は
聖なるムウからの使者である
ムウ王国の聖地である この島を
観光開発などと称して破壊し
7000年の昔に
海底に没したとはいえ
近く予言の日に
復活するはずの神殿を
見せ者 扱いしようとする
愚かな計画を
断固 粉砕し
同時に この地を首都とする
ネオ･ムウ王国の独立を宣言する
｢もし 我々の要求が
拒絶された場合｣
｢または 日本国政府による
我々に対しての攻撃｣
｢人質奪還行動などが
行われた場合｣
｢オリハルコンを作動させ
我ら同志と共に｣
｢人質全員も死ぬことになる｣
｢なお オリハルコンの威力は｣
｢先日 東京都遊園地跡の
爆破実験において｣
｢すでに 実証済みである｣
うーん
しかし 驚きましたね
本部のコンピュータに
脅迫文が届いた時は
誰かの いたずらだと
思いましたが
まったくだ
今でも信じられんよ
それにしても 一体 この世の中
どうなっちまってるんだよ
ところで 明智警視は？
あの人も信じられん
沖縄には行きたくないそうだ
はあ？
肌が弱くてな
日に焼きたくないそうだと
あら…
キング･シーサー…
あの ちょっといいかな
何だ！
はじめちゃん
さっきから
我慢してたんだけど 俺
その トイレに
行きたいんっすけど
あ いや 笑い事じゃないんだって
その…
切羽詰まってるっていうか…
お前の腹の中は読めている
つまらん小細工を
考えるのはやめろ
これから
お前たちは身体検査の後
２つのグループに分けて
客室に監禁する
さぞ 居心地がいいだろう
なんせ お前たちが造った
ホテルだからな
フンッ モト
はい 両手を上げろ
私たち どうなるんでしょうか
まさか このまま
殺されるなんてことは…
あなた 何とかして！
どうせ この人たち
お金さえ出せば
やかましい
わしに指図するな！
こんな奴らの力で動く
わしではない
フン から威張りも今のうちだ
バアル
ん？
制御室 完全に掌握しました
ん？
全員 異常ありません
よし 客室に監禁しろ
はい
分かりました
お前には上海で世話になったな
小龍！
残念だったな そこまでだ
何？あっ…
何の真似だ 進藤！
これは使命だ
何？
進藤 お前…
短い間だったが世話になったな
お陰で このホテルの情報を
色々と知ることができた
ということだ
そっちこそ残念だったな
いいか 逃げようとしても
ムダなことだ
さっきも言ったように
ヘタなことをすると
全員死ぬことになるぞ
連中の見張りは お前に任せる
俺は予定通り
バアルたちと合流する
了解
クソッ！つながらない
奴ら 外とのケーブルを
切りやがった
はじめちゃん…
もしもし もしもし！
ちょっと待て
ん？
フロントなら どうだ？
内線なら つながるかもしれない
そうだな
よし！コール音がした
え？
ダメだ… 誰も出ない
ホテル全体が 奴らに
占拠されてるってことか？
いや 広瀬さん
あのバアルとかいう奴が
言ってたでしょ
｢エレベーターと各階段は
すべて封鎖した｣とか
｢７階から上は
我々の支配下に置かれる｣とか
奴らが占拠しているのは
やっぱり この７階だけだと
思いますよ
じゃあ どうしてフロントに
誰も出ないんだ？
逃げた従業員たちが
とっくに通報しているはずだろ
警察が来ていても おかしくない
あ…
剣持警部ですね？
ああ そうだ
お迎えにあがりました
沖縄県警の金城です
こりゃどうも ご苦労さんですな
早速ですが 現場の状況を
聞かせてもらえますか
はあ 今のところ
犯人グループからの要求は一つ
｢ホテルの敷地内に入るな｣
ということです
したがって
こちらにできることは
スピーカーで犯人に
呼びかけることぐらいなんですが
距離もかなりあり ホテル内まで
声が届いているかどうか
まあ しかし 犯人の要求に
従ってばかりいたんじゃ
何もできんでしょ　例えば
特別班を編成して
ホテル内に潜入させるとか
いえ それがですね…
何か？
犯人グループから入った
メールによりますと
連中は ホテルの
セキュリティーシステムを
逆に利用しているらしく
もし接近しますと 犯人側に
我々の行動を知られて
取り返しのつかないことに
と言うと？
どういうことですか それは
要するに ホテルのあちこちに
高性能の防御装置が
設置されていて
その制御室というのが
犯人たちが立てこもっている
７階にあるそうなんです
そのシステムと例の毒ガス爆弾の
起爆装置を連動させたから
侵入者があれば
自動的に爆発すると
ところで 人質の件なんですが
何人いるんです？
その身元確認は
できているんですか
はい 脱出した従業員たちから
聴取したところによりますと
ホテルのオーナーである
藍沢国際海洋開発の藍沢一族と
その娘 藍沢茜の３人の婚約者
婚約者が３人？
それと 藍沢茜の友人と思われる
２人の高校生がいます
名前は
七瀬美雪と金田一 一
き 金田一？
ダメだ　あれじゃ
どうしようもない
こうなったら
ジタバタしてもしかたがない
なるようにしか ならんでしょ
ああ そう言えば まだ君たちに
自己紹介をしていませんでしたね
松田武っていいます
茜さんの家庭教師をしてます
ええ 聞いてますよ
茜さんの婚約者の１人なんでしょ
まあ その話は
僕自身 冗談だと思ってます
遠藤さんや広瀬さんはともかく
僕なんか力不足ですから
何言ってるんだよ
現役の東大生の君が
そうだよ
少なくとも秀一郎会長は
君を一番評価してると思うよ
何しろ 司法試験を在学中に
突破した頭脳の持ち主だし
語学に長けていることは
世界各地にホテルを持っている
藍沢国際海洋の将来を担うに
ふさわしい人材だって
俺にまで おっしゃってたからな
そういう遠藤さんこそ
僕ら３人の中では
一番会長の近くに
いる人じゃないですか
心臓のよくない会長が
医大生の遠藤さんを頼りにして
何かというと連れ歩いてるのは
僕もよく知ってますよ
何か 俺だけ
おいてきぼりって感じだな
それはないでしょう　広瀬さんは
藍沢海洋と手を組んでいる
広瀬グループの２代目だ
我々の中じゃ
一番力のある人じゃないですか
次男の剛さんは あなたの企画力を
相当 評価してるみたいだし
ダメダメ
しょせん下請けさ うちなんか
うん？ああ すみませんね
こんな時に場違いな
張り合いを始めちゃって
あ いや別に… でも やっぱり
３人とも タダ者じゃ
なかったんですね
さすが茜さんの婚約者に選ばれた
だけのことはあるっていうか
ま 正直 俺もこんな話を面と
向かってするのは初めてなんだ
秀一郎会長に呼び出されて
｢君たち３人のうちの１人を
娘の婿として迎えたい｣
なんて言われてさ
それ以来 妙に意識しちまって
まったくです
あれ以来 茜さんも妙に
よそよそしくなって
家庭教師として 週に３日も
２人っきりに なるわけですから
でも 今回のことで俺たちの
立場もハッキリするかもしれない
え？どういう意味ですか
つまり
天が俺たちに課した試練かも
しれないってことさ
試練？
そ 試練だよ
これから俺たちは
奴らの手を逃れ 茜さんを助けて
このホテルから
脱出しなければならない
それをやり遂げられるのは誰か
その結果
誰が彼女にふさわしいか
なるほど！受けて立ちますよ
遠藤さん
僕は 何があろうと
命がけで茜さんを守ってみせる
ハッ 何をのんきなこと
言ってるんだ
アクション映画のヒーローじゃ
あるまいし
相手は 何をするか
分からない連中だぜ
ムー王国の復活が狙いだとか
訳の分からんことを言っている
確かにな　あの遺跡に
こんな おまけが付いてくるとは
思わなかったが
作戦はすべて予定通り
キング･シーサーのお言葉のまま
進んでおります
立ち上がれ 聖なる戦士たちよ
時は来た　許しがたき者どもに
裁きの鉄槌を振りおろす時が
さあ 戦士たちよ
確かに心にとどめるがよい
１人目の生けにえは…
遠藤さん
どうしたんですか　さっきから
時計ばかり気にしてますけど
いや 会長が
薬を飲む時間なんでね
さっき余分に渡しておいたから
大丈夫だとは思うんだが
そろそろ 行動を開始しますか
行動って… 今の俺たちに
何ができるって言うんだ？
あれですよ
ここから脱出するんです
なるほど そういうことか
換気扇を外せば エアダクトに
抜けられるかもしれないな
はっ…
何の用だ！
ごめんね 美雪
こんなことになっちゃって
ううん 大丈夫よ 茜
クソッ！一体 いつまで
こんなところに
監禁されてなきゃいけないんだ
これじゃ高い金払って作った
セキュリティーシステムの
意味がないじゃないか
優兄さん あんた
コスト削減とか言って
セキュリティーの手
抜いたんじゃないだろうな
何を言う！このホテルは完璧だ
私がコストを削減するのは
不必要なことに関してだけだ
本物志向だとか言って
お前がやっている
動植物 輸入のようなな
何？
やめろ ２人とも！
奴らは さらに行動を
進めているんだ
お前たちは まず
この私の身を案じ
本当は 奴らが何を
狙っているのかを考えろ
はっ はい
誰？
はじめちゃん！
はじめちゃん…
どうした 美雪
何かあったのか
うん
さっき犯人たちがやってきて
キング･シーサーの命令とか言って
由里絵さんを…
連れ去られたか
チクショウ
あっ！
うん？
何だ 今の音は！
すまん 金田一くん
しっ！
やめてください　バスルームは
美雪が使用中なんですから
うるさい！
美雪 お前はそこで顔を洗ってろ
うん
動くんじゃないぞ！
きゃあ！
うん？
ＯＫだ 小龍
とにかく
ここから早く脱出しましょう
由里絵さんのほうは
俺と小龍で捜し出します
いや 俺も行くよ
このホテルのつくりなら
だいたい把握しているしね
何が おかしい！
逃げられると思っている
お前らが おかしいのさ
何だと？
このホテルは
オリハルコンが
仕掛けられているんだ
もし お前らが７階より下へ
降りようとして
セキュリティーに触れたら
オリハルコンが作動して お前らは
オリハルコン？
何なんだ それは
言え！
オリハルコンとは 何なんだ
フンッ
どうせ はったりだ
それより みんな 急ぎましょう
待てよ 小龍
うん？
警察が動いてるのは確かだ
しかし このホテルには
近づけない　見ろ
この ふてぶてしい
不気味な態度を
何だか自分の勝利を
確信してるみたいな
まさかと思うけど
警戒したほうがよさそうだ
安全だと分かるまで
下の階に降りないほうが
うん 分かった
はじめの勘 いつも当たってる
よし じゃあ 行こうか
大丈夫ですか 会長
あ ああ 何とかな
す すみません バアル　あいつら
バスルームから天井づたいに
その話は 後でゆっくり聞く
は はい！
それより 逃げた連中は
どこへ行った？
わ… 分かりません
失態だな
お前は 古代の神々の名前を
我々に授けてくださった
キング･シーサーの
期待を裏切った
まさか 昔のお前に
戻りたいわけではあるまい
と とんでもない！
捜します すぐに！
フンッ バカめ
フン
クソッ どこ行きやがった
あいつら
こっちにも いないぞ
時間だ　とにかく
キング･シーサーの指示を仰ごう
よし　大丈夫だ
これは…
ハ… ハッキング！
まさか どうやって？
見ろ ドアが開いている
行ってみるか？
ああ
あ…
あ…
ああ！
あっ…
や 奴らが…
監禁され部屋から
逃げ出すことに成功した
俺たちだったが
ホテル７階は完全に封鎖
脱出経路は
すべて断たれてしまっている
だけど このまま奴らの言いなりに
なっているつもりはない
オリハルコンの秘密を解き
脱出手段を
必ず 見つけてやる！その時
背後に再び テロリストの影が
そして 奴らの銃口は
俺たちに…
金田一少年の事件簿…
美雪の友だち
藍沢茜の招待を受け
俺たちは 沖縄のはずれの孤島
紺碧島を訪れた
謎の海底遺跡を売り物にする
巨大リゾートホテル
ディープブルーグランドは
ネオ･ムウ王国の復活を狙う
犯人グループの魔の手に
落ちてしまう
キングシーサーの命令で
連れ去られた
藍沢秀一郎の妻 由里絵を
捜しに行った俺たちが
そこで見たものは…
やりやがった… 奴ら
本当に あんな…
き… 金田一くん
急いで ここを離れた方がいい
犯人どもが戻ってきたら
終わりだ
いや 奴らは すぐには来ないさ
え？
ほら さっき廊下で連中たちが
言ってただろ
時間だから キングシーサーとかの
指示を仰ごうって
たぶん連中 決まった時間に
どこかに集まって
相談することに
なってるんじゃないかな
なるほど　だとしたら…
ああ
この７階から脱出するなら
今しかないってことさ
だが どこから どうやって？
俺に考えがある
小龍には これから
みんなを呼びに行ってほしい
落ち合う場所は
俺らが夕食をとった
サンセットレストラン
俺と広瀬さんは 念のために
７階を見回ってから
レストランに向かう
分かった
本当にいいのか
こんなところにいて
まだ エアダクト内に
隠れていた方が
安全なんじゃないか？
大丈夫よ 剛兄さん
金田一くんも言っていたでしょ
まさか 私たちが
元の監禁場所に戻ってるなんて
犯人たちも思わないわよ
少なくとも しばらくの間は
まったく 何てことだ
だいたい警察は
何をやっているんだ
落ち着け 剛
落ち着けだと？ふざけるな！
こうなったのも
あんたのせいじゃないか！
ホテルのセキュリティーが
しっかりしていれば
こんなことには
ならなかったはずだろう
この事件が終わったら
役員会議にかけて
あんたの責任を
追及してやるからな
この島のプロジェクトから
追い出してやる
追い出すだと？
それは こっちの言うセリフだ
お前が海外から輸入した
動植物のせいで
かえって この島は
破壊されてるんだぞ
あまり 私を失望させるな
２人とも
血はつながっていないとはいえ
お前たちは兄弟だ
こんな時こそ 力を合わせて
私を ホテルを
藍沢グループを守るべきだろう
剛！
金田一くんたちを捜してきます
私には
藍沢グループの役員としての
責任がありますからね
こんなところで
じっとしてるのは恥ずかしい
何なりと お申し付けください
キングシーサー
人質を逃がしたのは
イルウのミスであり
また 私の責任でも
あるのですから
何も心配することはない
お前たちは よくやっている
お前たちの目覚ましい活躍と
忠誠に祝福を与えよう
あ ありがとうございます
キングシーサー
聖者たちよ
我らがネオ･ムウ王国を
復活に導く使徒たちよ
たった今 天啓を得た
おお！
次なる生けにえが決まったようだ
血祭りに上げるのだ！
ムウを滅ぼした悪の化身を
そうか 由里絵が…
はい
俺たちが駆けつけた時には
もう…
そんな… 何てことだ
あいつも運がないな
ようやく 病気で先の短い
資産家の女房になれたと思ったら
お父さん！
私もバカではない
あいつの魂胆ぐらい お見通しだ
しかし ま 私のような
先の短い男にとっては
若くて器量のいい女を
妻にするっていうのは
最後の道楽でな
ま あいつは秘書の頃から
よくやってくれとったから
財産の少しくらい
くれてやっても
いいと思っておったんだが
こうなったら
私の楽しみといえば
松田くんと遠藤くん それに
広瀬くんを加えた３人の中から
茜が 誰を婿に選ぶか
それを見届けるぐらいか
やめてよ お父さん！
こんな時に
どうやら この辺りも
異常ないようだな 金田一くん
ええ…
あっ そうだ 広瀬さん
８階のつくりはどうなっているか
詳しく教えてもらえますか
８階っていうと この上だね
そうだな 中央に海底遺跡の
模型が飾ってあって
あとはショッピングエリアと
大小の宴会場で
占められているけれど
何でまた そんなことを？
あ そういえば
茜さんに案内されて
｢アロワナの間｣ってのを
見学したけど
それが大宴会場さ
ただ反対側に大宴会場は
もう一つあって
｢チョウチョウウオの間｣
ってのがあるんだ
ん？チョウチョウウオ？
ああ アロワナと同じ
熱帯魚の一種さ
熱帯魚か　それにしても
すごいっすよね このホテル
熱帯魚もそうだけど あちこちに
熱帯植物の飾りつけがしてある
いや よく見てごらん
イミテーションだよ それは
えっ？あっ ホントだ
スゲー よくできてるけど
あっ じゃあ
この島の熱帯植物は 全部…？
いや このホテルの中以外の
植物は すべて本物だよ
優さんと剛さんの
経営哲学の相違でね
優さんは このホテルを
剛さんは それ以外の施設を
造ったんだけど
剛さんの方は 海外から
様々な植物や動物を輸入して
この島に放ったんだ
そりゃ
観光客にしてみれば
本物の方が うれしっすよね
問題は そう簡単じゃない
生態系というのは
バランスなんだよ
元々 この島にない
動植物を放つことで
剛さんは 自然を
知らず知らずのうちに
破壊しようとしているんだ
でも 広瀬さんは剛さんに
かわいがられてるんじゃ
ないんですか
ああ あの人には世話になったよ
でも 経営者としての考え方には
ついていけない点が多くてね
まだ 優さんのやり方の方が
マシさ
イミテーションなら
生態系を壊さないからね
もっとも ホテル内の
名画や彫刻の類まで
模造品ってのは ご愛嬌だけどさ
はあ…
しかし これが全部
イミテーションなんて
じゃあ そのつぼみも？
ああ
このホテルのつぼみが
開くことはない　永遠にね
どうですか
連中 何か言ってきましたか？
いいえ 相変わらずメールで
訳の分からない
宣言を繰り返しています
彼らの背後には 50万人の
超国家的規模の賛同者が
ついていて
もうすぐ その連中が決起し
このディープブルーアイランドを
首都とした新国家が造られる
その国家は
｢ネオ･ムウ｣という名前で
１万年前に この辺りで沈んだ
超古代文明の遺跡を…
なるほど 結構です
奴ら まさか本気でそんなことを
き… 金田一！
ま 間違いない
待ってろよ 金田一
必ず助けてやるからな
どういうつもりなんだ
金田一くん
我々をこんな場所に集めて
俺の狙いは
このエレベーターなんです
ええ？
犯人グループの誰かが
言っていたでしょう
この７階は完全に封鎖したから
逃げられないって
あれは
ウソじゃなさそうだ　でも…
このエレベーターだけは 絶対に
気づいていないと思ったんです
最初に俺たちが このレストランで
銃を突きつけられた時から
別の部屋に移されるまでの間
あいつらは 一度だって厨房に
入っていかなかったんですから
そ そういえば そうでしたね
きっと 敵にも
油断があったんだと思う
外から警察が
入ってくることには
ものすごく
警戒してたんだろうけど
俺たちが脱出するなんてのは
計算外だったんでしょうね
さあ じゃあ
まず茜さんのお父さん
あとは茜さんだな　急いで
うん？
どうした 茜さん？
私は あとでいいから
美雪が乗って　私たちのせいで
こんな事件に
巻き込んじゃったんだし
そんな 茜！
いいから 乗れって
時間がないんだ
ちょっと はじめちゃん 私…
美雪 お前には
やってもらいたいことがあるんだ
８階に行ったら
階段室の防火扉を まず閉める
それから その脇の非常ドアを
針金で縛って開かなくするんだ
あと エレベーターで
上がってこられないように
停止装置を…
それは私が分かっとる 任せろ
お願いします
じゃあ 美雪 頼んだぞ
うん はじめちゃんも
早く来てね
よし 次は優さん
あれ？剛さんは？
そういえば さっきから
姿が見えないんじゃあ…
それが…
楊さんが迎えに来る少し前に
金田一くんたちを捜しに行くって
え？何てこった こんな時に
待て！剛さんを
捜しに行くんだろ？
俺も行くよ　１人じゃ危険だ
私にも手伝わせて 金田一くん
これ以上 あなたにばっかり
頼っていられないわ
剛兄さんとは
血はつながっていないけど
兄妹なんだし
ま 茜さんが残るなら
俺たちが先に行くってわけには
いかないな　だろ？
分かりました
じゃあ ここで分かれましょう
この廊下は ドーナツみたいに
輪っかになってるから
俺と松田さんは右回り
茜さんと遠藤さんは
左回りで廊下を捜す
小龍と広瀬さんはダクトの中だ
それから小龍
犯人から奪った銃があったよな
ああ
５分だ
それで見つからなければ
ここに戻ろう　いいな
じゃあ あなたは警察官なの？
そう ただし
君に忠告しておきます
私は君のコンピューターに
ある自作のウィルスを
送りこみました
君がインターネットの接続を
切ったり
何か余計な操作をすれば
ただちに そのウィルスが
君の大事な
コンピューターのプログラムを
破壊します
ちょ… そんなの 平気よ
予備のコンピューターがあるもの
何ですって？
君がインターネット経由で
ホテルのコンピューターに
アクセスした時
私は既に 君のコンピューターに
ハッキングしていたんです
そして 君のコンピューターを
経由して
ホテルのコンピューターにも
侵入し
セキュリティーシステムに
例のウィルスを
感染させておきました
そんな ウソよ！
それが どうしたの？
こっちには人質がいるのよ
分かっています
今 話したことは警察内部でも
まだ誰も知りません
私は ただ君と話がしたくて
こんなことをしているんです
それだけが望みなんですよ
すいませんね 金田一くん
何か 強引に
ついてきちゃったみたいで
いやあ 別にそんな
大変なんですよ 僕たちも
茜さんの前だと
どうしても格好つけちゃって
あ はあ
何となく分かりますけど…
しまった！
誰か 見つかったか
よし そこまでだ
ムダな抵抗はせん方がいい
バカめ　死ぬか お前
き 金田一くん！
大丈夫か はじめ
貴様…
小龍！
お前か…
上海でモトと戦ったというのは
モトは負けん　この男に
拳法を教えたのは わしだ
ケリをつけるがいい
拳で始まった戦いは
拳で終わらせるものだ
来い！
な… 何！
とどめだ！
まずい
みんな逃げるんだ！
金田一くん 早く
茜さん 中央へ
ええ
ああ！
茜さん！
はっ！
ああ！
茜！
よ… 由明！いやあ！
遠藤さん
ここは俺が食い止める
松田さんと広瀬さんは先に行った
はじめ
お前たちも早くエレベーターへ
由明 お願い
死なないで 由明！
急げ 小龍！
そんな！重量オーバー？
俺が降りる
バカ言うな！
いたぞ こっちだ！
そうだ ピストルだ
小龍 ピストルを捨てろ
はじめちゃん！
ん？
どうしたんだ 遠藤くん！
死なないで 由明
由明！
小龍？
美雪 小龍を頼む
うん
俺は大丈夫だ　かすり傷だ
それより遠藤さんを
胸を撃たれている
由明…
いや 彼は大丈夫だ
あれ 俺は確か…
これのお陰で助かったんだ
ジャケットの内ポケットの財布が
弾から身を守ってくれたんだよ
参りましたよ
茜さんを守るために
身を投げ出すなんて
ま でも同じ状況だったら
僕も同じことをしてたっていう
自信はありますけどね
そりゃ 俺だって
今は そんなことで張り合っている
場合じゃありませんよ
それより美雪
優さんの姿が見えないけど？
ええ 今 エレベーターのあと
階段を封鎖する作業を
してもらってるんだけど
よし じゃあ
俺たちも手伝いに行きましょう
優さんが８階の見取り図を
描いてくれたんだけど
このバツ印のところを
封鎖すればいいって
そうだな 作業が終わったら
この｢チョウチョウウオの間｣の
前の小宴会場で落ち合おう
ここなら非常階段に一番近いし
万一 奴らがホテルの外壁から
侵入しようとしてきても
見晴らしがきくはずだ
分かった
君はダメだよ 楊くん
ええ？
俺はもう大丈夫だ
君の傷の手当てをしてから
みんなの作業を手伝うよ
いや でも
ホントにかすり傷だから
何言ってんだよ 小龍
お前はすぐ そうやって
格好つけたがるけど
せっかく 遠藤さんっていう
医大出がいるんだから
世話になっとけって！
分かったよ
そう 大声を出すな
よし 俺の方は
これでバッチリだ
ん？
これは 剛さんのスーツの…
そうか ずっと
姿が見えないと思ってたら
あいつ 俺らより先に８階に
逃げてきてたんだ
きったねえ！ようし
こうなったら見つけ出して
とっちめてやる
ダメだ 開かない
ん？分かった 分かったぞ
キングシーサーが
何を考えておられるのか
どういうことです バアル
見ろ この紋章を
そうだ 人質どもが８階に
逃げることなど
やはりキングシーサーは
すべて お見通しだった
神聖なるムウの紋章を
横書きにした この８階こそが
キングシーサーが
自ら用意された処刑場なのだ
ん？これは ディープブルー
ネオ･ムウ王国か
俺を襲った一撃
薄れていく意識の中で感じた
妙な違和感
奴は なぜ
仮面をかぶっているのか
ひょっとすると…
嫌な予感がする
キングシーサーは
狙った獲物は絶対に逃さない
残された時間は もうない
明智さん 俺たちは
この８階から脱出する
あんたのくれた
その情報を信じて
金田一少年の事件簿…﻿美雪の友達 藍沢茜の招待を受け
俺たちは沖縄の外れの孤島
紺碧島を訪れた
謎の海底遺跡を売り物にする
巨大リゾートホテルは
武装グループたちの手に
落ちてしまった
そして 第一の犠牲者が…
俺たちに魔の手が迫る
イテッ…
そうだ 俺…
あれは…
茜さんに反対されてきた
ここは アロワナの間か
あった　よし…
内線なら つながったはずだ
もしもし
美雪か？
はじめちゃん！
どこに いるの？
みんな心配して捜しに…
美雪
今 得体のしれないヤツに
襲われて
アロワナの間に
ええっ… 大丈夫なの？
ケガとか してない？
ああ 何とかな
ワアッ！だっ 誰だ？
はじめちゃん？
ワアーッ！
はじめちゃん はじめちゃん！
どうした 美雪さん？
美雪？
はじめちゃんが襲われて
アロワナの間に！
ええっ！ちょっと…
どうした？
な… 七瀬さん？
由明
金田一君に
何か あったみたいなの
何だって！
はじめちゃん　はじめちゃん！
はじめ！
はじめちゃん どこ？
どこにいるの はじめちゃん？
はじめ！
はじめ… ちゃん
はじめ　ああっ…
聞いておられるんですか？
明智警視
聞いてますよ 剣持警部
ただ…
今 私は 大事な仕事に
集中しているところなんです
だから いちいち受け答えしている
余裕はないんですよ
では 続けます
先ほども 申し上げましたが
ホテルから脱出した従業員の
話を元に
３人のテロリストの
身元を割り出しました
水城龍之臣
同じく龍壱 巫琴の親子
いや 祖父と孫の３人組ですな
巫琴？
女性ですか？
はい
この３人は
元々 紺碧島の住人でして
藍沢国際海洋開発が
島の所有者になったあと
最後まで立ち退きを
拒否していたようです
その理由というのは 何でも
当時の観光の目玉になっている
海底遺跡にあるようで
まあ 要するに
この水城一家というのは
代々 その海底遺跡に ちなんだ
土着の信仰みたいなものに
こだわっていたらしいんですな
で 当主である水城龍之臣という
78になる老人ですが
これが変わった経歴の持ち主で
引退して紺碧島に帰郷するまでは
東京の化学製品会社の
研究所に勤めておりまして
若いころには
軍関係の兵器開発研究員として
上海に渡っており
例のオリハルコンなる代物も
どうやら
その男が手に入れたものかと
それから もうひとつ
何ですか？
どうやら 金田一のヤツが
今回の事件に
巻き込まれているようで
先ほど ７階の窓に
ヤツの姿を確認しました
ほう
ヤツのことだから
大人しく
じっとしているとも思えないし
危険な目に遭うんじゃないかと
もう 気が気じゃなくて
剣持警部 心配は分かりますが
もしかしたら あの少年の存在が
事件解決の
キーになるかもしれませんよ
ええっ？
とにかく あなたは引き続き
ホテル内で何が起こっているのか
可能なかぎり 情報を収集し
報告してください　ただし
７階だけではなく ８階の様子もね
８階もですか？
よくホテルの構造図を
調べてごらんなさい
７階のレストランには
８階へ通じる
運搬用エレベーターが
あるはずです
あの金田一君のこと
何らかの方法で
テロリストたちを出し抜いて
まんまと ８階に
逃げ込んでいるかもしれませんよ
わっ 分かりました
さて お待たせしました
話の続きをしましょうか
巫琴君
よせ やめろ！
だっ 誰だ… 誰だ お前は？
ああ…
ワアーッ！
はじめちゃん
美雪
はじめちゃん…
よかった！
イテッ！
ごめんなさい　大丈夫？
ああ
どうなってんだ
俺 どうして ここに？
テナントエリアに
倒れていたとこを
広瀬さんが見つけたんだ
え テナントエリア？
君から電話があったあと
みんな 大急ぎで
かけつけたんだけど
もう アロワナの間には
いなくてね
手分けして捜しているうち
倒れていた君を見つけたんだ
何があったの？
俺を襲ったヤツは
仮面をかぶっていた
え？
仮面？
耳元まで口の裂けた 細い目をした
不気味な仮面だった
そいつが 俺を…
君は まだ運がよかった
え… まだ運がいい？
まさか 剛さんの身に
アロワナの間で殺されてた
え…
はじめ　ああっ！
剛さん！
ええっ？
アロワナの間で… そんな
剛までが…
まさか やつらは わしを狙って
お父さん
す… 優
優は どうした？
そういえば ほかの みんなは？
今 遠藤さんと松田さんが
捜しにいってるわ
はじめちゃんを捜しにいったまま
優さんだけ戻らないの
何だって？
なるほど
巫琴君
確かに 興味が尽きませんよ
君が神に等しい存在と信じている
キングシーサーに対してね
そうよ
キングシーサーに不可能はないわ
あの お方の言葉は 神の言葉
私だけではなく
われわれは みんな
キングシーサーの おかげで
生きがいを与えられたの
彼について もっと詳しく
教えてくれませんか？
年齢とか話し方とか 何でもいい
警察官の あなたに
何で そんな情報を
教えなければならないの？
私は そんなバカじゃないわ
もしかしたら 教えないのではなく
教えられないのではないですか？
つまり 君は
例えば パソコンの中で
指令を受け取るだけで
実際には キングシーサーに
会ったことがない
もし そうだとするなら
君たちが 万一 捕まった場合でも
キングシーサーには
実害が及ばないことになる
確かに 君たちのキングシーサーは
頭がいいようですね
いや ズル賢いと言ったほうがいい
ふざけないで！
これ以上
あなたと話すことはない
私たちは
キングシーサーの言葉に従い
３人の いけにえを神に捧げ
ネオ･ムウ王国を復活させる
そして そこで
とわの至福に包まれるの
３人の いけにえ…
優さん
優さーん！
優さん
どこにもいないよ 金田一君
これだけ捜していないってことは
やっぱり…
広瀬さん
俺が意識を取り戻すまでの間に
誰かが この階に進入した形跡とか
ありましたか？
いや 君を運んだあと
当然 みんなで見回ってみたけど
どこも閉鎖されたままだったよ
犯人グループじゃないとしたら
君や剛さんを襲ったのは
優さん どこですか？
何を ビクビクしているんだい？
いえ 別に
ヘヘッ 分かってるさ
俺も同じことを考えてた
え？
俺たちの中に犯人がいるのかも
可能性としては
俺か もしくは 君かもね
うん？
どうかしたんですか？
確か ここに
仮面が飾ってあったんだけど…
ほら フックだけが残ってるだろ
妙じゃないかい？
あ…
あの仮面か
え？
俺を襲ったヤツは
ここにあった仮面を
かぶっていたんだ
となると 金田一君
君を襲った人物は
顔を隠す必要が あったんだよ
え？
ひょ ひょっとしたら 犯人は
優さんじゃないのかな？
え 優さんが？
そう！
このホテルは 優さんが
すべてを 取りしきって
建てたんだけど
自慢のセキュリティーシステムが
まったく役に立たず
こんな事件を
引き起こしてしまった
たとえ事件が
無事 解決したとしても
優さんは 責任を追及され
社長のイスも
失ってしまうかもしれない
当然 その先鋒に立つのは
弟で専務の剛さんだ
そこで 優さんは考えた
この事件に乗じて
剛さんを
亡き者にしてしまおうってね
だとしても なぜ
優さんは姿を見せないんです？
え？
逆に疑いを かけられることに
じゃあ こんな可能性はどうかな？
優さんは 剛さんを殺害したとき
うっかり
服を血で汚してしまった
で みんなの前に
出てこれなくなってしまったのさ
きっと そうだ！
あ… な 何だ
まさか やつらが何か？
オ… オリハルコンか？
いえ 地震です
地震？
この辺りは 地震多発地帯でね
ま 観光事業に
影響するほどじゃないらしい
へえ
そういやあ
ショーケースのカバーが
なくなってる
え カバー？
うん
どうか したのかい？
どうやら 広瀬さんの推理は
見当外れのようです
え？
あっ す… 優さん！
何てことだ
キングシーサーは
今回の作戦を実行する前に
３人の いけにえを捧げようと
言ったんですね？
だったら どうだって言うのよ？
それは 心理的な すり替えですよ
つまり ネオ･ムウ王国の復活
という大義名分を掲げることで
実行者に対する
殺人への心理的な負担を
軽くしてやることができ
そうすることによって
脱落者も出にくくもなる
分かりますか？
もし そうであるなら
キングシーサーの真の目的は
ネオ･ムウ王国の復活などではなく
単なる殺人だということに
なります
もちろん キングシーサーに
洗脳された君たちを
利用してのね
もういいわ
これ以上 あなたの ざれ言に
つきあっていられるほど
暇じゃない！
どうした アナト
何をしておる？
お おじいちゃん
うん？
ねえ おじいちゃん
おじいちゃんは ほんの少しでも
キングシーサーを
疑ったことがある？
わしが疑うとしたら
わし自身だけじゃよ
え？
わしのせいで お前たちを
この計画に巻き込んでしまった
それは
おじいちゃんのせいじゃないわ
だって あの遺跡は
私たち水城家が代々
大切に守ってきた宝なんだから
おじいちゃんは
それを取り戻すために…
ああ わしら水城家は
大昔から あの遺跡を守ってきた
いつか あれが 復活するという
言い伝えを信じてな
それを 藍沢のやつらのせいで
ともに言い伝えを信じてきた
島の連中も
みな 金に目がくらみ
土地を買収されて
島を離れてしまった
そして あろうことか
聖なる神殿遺跡を
金もうけに利用しようとして
やつらは 根こそぎ
この島を破壊したのじゃ
わしは憎い
藍沢のやつらも 島を去った連中も
じゃが…
わしも
藍沢のやつらと同じようなことを
しているのではないかと
思うときがある
お前とモト いや… 龍壱の人生を
壊しているのではないかとな
お前たちの両親が
事故で亡くなって以来
お前たちに
この島から一歩も外に出ない
生き方を強いたのも わしじゃ
お前たちは パソコンで
外の世界を知るだけの日々を送り
そして
今は 冷たい銃を手にしている
おじいちゃん
巫琴
では 最後に
私もキングシーサーにならって
予言をしましょう
もし 私の推理が正しければ
すべての殺人が終わったのち
キングシーサーは
少しでも自分の正体を暴く
可能性のある君たちを
葬ろうとするはずです
一人残らずね
こ これは…
巫琴 どういうことじゃ？
誰と話していたんじゃ 巫琴！
クソッ！
まさか 昔のお前に
戻りたいわけではあるまい？
で さあー
ウッザイ
その株は 買いっすよ
何をやってるのかね まったく
アハハハハ
しょうがねえなあ
笑っちゃうね
ホント
ウワーッ！
俺は生まれ変わったんだ
もう 元には戻りたくない！
やっぱり 同じくらいね
２分ちょいよ
ダメだ 話になんねえな
やっぱり アリバイは
完ぺきだな こりゃ
なあに はじめちゃん
アリバイって？
あ… 何でもねえよ
何それ ごまかさないで言ってよ
ああ…
分かったから 大声出すなって
剛さんや優さん
そして 俺を襲った犯人は
今 そこの小宴会場の中にいるって
考えてるんだ
ええっ！
バカ 大声出すなって言ったろ
だって…
そう考えると
どうして犯人が俺を拉致して
しかも 無事に解放したのかって
疑問も説明できるんだ
でも はじめちゃん
はじめちゃんからの電話を受けた
すぐあとに
私 みんながいたことを
確認してるのよ
それだよ それ
犯人が狙ったのは
まさしく 完ぺきなアリバイを
手に入れることだったんじゃ
ないかってね
でも どうやって？
はじめちゃんが閉じ込められた
アロワナの間から小宴会場まで
どんなに走っても
２分は かかってたわ
うん 確かに
物理的には不可能に思えるよ
今はな
どういうこと？
何か トリックがあるはずなんだ
でも ホントすごいよね
このホテル
あちこちに 珍しい熱帯植物まで
飾ってあるし
ああ でも それ
みんな 実は本物じゃなくって…
まことに申し訳ありません
キングシーサー
われわれの力が足りず
いまだ 人質どもを
捕獲することができません
みなの者 よく聞くがよい
今 天啓が下った
われわれの中に 裏切り者がいる
な なんと…
作戦の滞りは その者のせいだ！
あ はじめちゃん 見て見て
花火みたいなのが
打ち上げられてる
美雪 何か書けるものないか？
え？
何でもいい
どうしたの 急に？
あの光は…
モールス信号になってるんだ
頼むぞ 気づいてくれ 金田一
警部 ホテルの一室の照明が
点滅してます
どこだ？
８階 中央フロアの右側です
あれか　ようし
あの信号をメモしろ
はっ
まったく お前ってヤツは
がんばってくれ 金田一
はじめちゃん 何なの 一体？
行こう
さっきの信号弾は 剣持のオッサン
いや
明智さんのメッセージなんだ
じゃあ 助けにきてくれたのね？
ああ　で ある作戦を立てた
犯人グループの１人を
味方につけたらしい
え… 大丈夫なの？
そこで 美雪
お前に
やってもらいたいことがある
はじめ どこに行ってた？
何だったの 金田一君
さっきの光は？
助けが来たんじゃないのかい？
それとも
やつらが…
みんな 聞いてくれ
あれは
警視庁からの連絡だったんだ
今から みんなで
ここから脱出する
ええっ…
脱出って どうやって？
エレベーターで 下に降ります
な… そんな ムチャな
俺だって
絶対の確信があるわけじゃない
でも ここは 巫琴を信じたい
し… しかし 下の階に降りたら
オリハルコンとかいうのが
作動するんじゃ？
だいたい 相手は
犯人グループの一味なんだぞ
そんなヤツを信じて 一体 何を…
とにかく！
今は 一刻も争うんです
もし ワナだったら…
俺は はじめを信じる
シャオロン
よし 金田一君にかけてみよう
うん
じゃあ 俺
もう少し やることがあるんで
先に エレベーターホールで
待っててください
頼むぞ 美雪
う… うん
それと 悪いけど 誰か１人
つきあってほしいんですが
ああ すいませんね
俺 １人のときに
もし やつらが襲ってきたらと
思ったら ビビッちゃって
あ！ここで
見張っててくれません？
俺 用事 済ませてきます
裏切り者 裏切り者
裏切り者には 死を！
なぜだ？
なぜ 俺たちが裏切り者なんだ！
龍壱にいちゃん？
バカ 立ち止まるな 巫琴！
逃がすか！
キングシーサーを裏切った罪は
死に値するのだ ハハハハ
モタモタしてたら
頭を打ち抜かれるぞ
ご… ごめん
こっちじゃ 早く！
クソッ どうしちまったんだ？
キングシーサーは
俺たちが裏切り者だなんて
やはり 巫琴の言うとおり
だまされていたのか わしらは？
さあ 急ぎましょう
はじめちゃん
ワリイ ワリイ
行こう
うん
だ… 大丈夫かい ホントに？
頼むぜ チクショー
つ… 着いた
よし ここまで来れば
あっ う…
はじめちゃん？
あ…
ああっ！
くっ 苦しい
うおお…
しまった…
ホテル８階から
ついに脱出したが
やつらの言うオリハルコンの前に
俺たちは…
すべては キングシーサーの
思いどおりになってしまうのか？
ネオ･ムウをうたい ホテル占拠を
指揮したヤツの真の目的
そして その仮面の下の素顔は？
すべての真実は 海底に眠る
ディープブルーだけが知っている
金田一少年の事件簿…
美雪の友達 藍沢茜の招待を受け
俺たちは沖縄の外れの孤島
紺碧島を訪れた
謎の海底遺跡を売り物にする
巨大リゾートホテル
ディープブルー･グランドは
武装グループの
魔の手に落ちてしまう
そして 監禁されたホテルから
脱出しようとした俺たちは…
あっ う…
ああっ！
うおお…
苦しい
海が…
私の…
私の ディープブルーが
わ… 私の ディ…
ああ…
アアーッ！
ここだよ ここ！
さあ 始めようぜ キングシーサー
いや 遠藤由明
警視庁の明智さんって人が
犯人グループの１人だった
巫琴の協力を得て
俺たちを救出する計画を立てた
で 俺に そのことを
信号弾のモールス信号で
伝えてきたんだ
俺は あんたが犯人だと
確信したあと
警察が伝えてきた脱出プランを
急きょ
あんたを ワナにかけるための
計略に変更したんだよ
頭のいい あんたのことだから
あのとき なぜ俺が
あんたを みんなから引き離したか
もう 気づいてるはずだ
俺は あんたに
用があったわけじゃない
あんたが いない間に
美雪をとおして
犯人を あぶり出すための
芝居を打つから協力してくれと
残る みんなに
伝えさせるためだったんだ
毒ガスのことは あの時点で
俺しか知らないはずだった
だが あんたが犯人なら
当然 毒ガスのことは
知ってるはずだ
そこで
みんなが バタバタと倒れたら
毒ガスが充満してると思い込んで
何か ボロを出すと考えたんだ
でも まさか そんなものまで
用意しているとはね
遠藤君 まさか 本当に君が？
拾ったんだよ そこの廊下で
え？
みんなが 急に倒れ始めたから
これは何かあると思ってね
ともかく その場を離れようとして
廊下を かけてったら
転がっていたんだ
たぶん テロリストたちが
用意しておいたものだと思うけど
すぐに拾って もう１個あったから
これで１人でも助けられないか
って戻ってきたら
いやあ ビックリしたよ
うまくいったようだな 金田一
オッサンのほうも な？
ああ
もう１人には 装置の解除作業を
してもらっているがな
巫琴さん だよね？
はい
君に 聞きたいことがあるんだけど
え？
あのガスマスク 見覚えあるかい？
いいえ 知りません
ハハ
どうかな？
ガス爆弾の事故に備えて
それくらい 用意しておく
もんなんじゃないのか？
遠藤さん
うん？
今の話で
あんたが犯人だって確信したよ
どういう意味かな？
あんた 今
｢ガス爆弾｣って言っただろ
それが どうしたんだい？
俺は さっきから ガスって言葉は
何度も言ってるけど
｢爆弾｣とは
ひと言も口にしていないぜ
ガスって
袋につめて バラまいたり
ボンベから噴き出すようにも
できるはずだろ？
それに
本当の軍隊なら ともかく
ガス爆弾なんて そう簡単に
用意できるもんじゃないぜ
俺だって 明智さんから
そのことを知らされたときは
ちょっと信じられない気がしたよ
それなのに
あんたは どうして
それが爆弾だって分かるんだ？
実は あんたが 知るはずの
ないことを知ってたのは
これで 二度目なんだ
一度目は
ホテルから脱出するってことを
伝えるために
俺が戻ろうとしたときだった
俺だって
絶対の確信があるわけじゃない
でも ここは巫琴を信じて
大体 相手は
犯人グループの一味なんだぞ
そんなヤツを信じて 一体 何を…
｢でも ここは 巫琴を信じたい｣
俺は あのとき そう言ったが
これは ちょっと
不親切な言い方だったはずだ
昨日 ひょんなことから
海で巫琴の名前を聞いていて
しかも 明智さんから
情報をもらっている俺以外は
巫琴が誰なのか 絶対に
分からないハズなんだからな
そうだった　あのとき俺も
｢巫琴って誰だ？｣って思ったよ
だが 遠藤さんは巫琴の名が
テロリストの名前だと
知っていたんだ
誰も知らないハズのことをね
由明…
あんたは 恐ろしい男だよ
一体 どうやって 自分
つまり…
キングシーサーに
あれほど心酔する人間を
５人も作り上げたのか
想像もつかないぜ
あんたと事件を起こした人間とは
一面識もないはずだからな
そうだろ 巫琴さん？
ええ
私たちは キングシーサー本人には
一度も会っていません
キングシーサーと話をするのは
常に コンピューターの
ネットの中だけで
このホテルを占拠してからも
それは同じでした
しかし 遠藤君は われわれと
ずっと行動を ともにしてたんだよ
その間 彼が
パソコンをいじっていたなんて
恐らく ゲームみたいなもの
だったんじゃないかな
ゲームだって？
そう ロールプレイングゲームです
なるほど
どういうことかね？
テレビゲームのジャンルに
ﾛｰﾙﾌﾟﾚｲﾝｸﾞｹﾞｰﾑというのがあるんです
そのゲームでは
プレーヤー以外にも
あらかじめプログラムされた
キャラクターが登場します
最近じゃ そういった感じの
ネットワークゲームも あるらしく
世界中のプレーヤーが
インターネットを通じて
参加できるそうです
じゃあ キングシーサーも？
ええ たぶん
時には人間が 時には
コンピューターが動かすことで
成り立っていたんでしょうね
このホテルで
テロが発生してからは
指令は 一方的だが
会話のようにも取れるセリフに
なっていたんじゃないでしょうか
そう あんたは
７階にいたテロリストたちと
面識がなかった
そう考えると あんたが８階に
仲間を呼べなかったのも当然さ
向こうは あんたを
人質の１人だと思っている
何をするか 分からないからね
遠藤さん 黙ってないで
少しは反論したらどうなんだ
それとも もう諦めたのかい？
いや 楽しませてもらったよ
君の想像力には感心した
でも 残念なことに
大きな穴が あるけどね
穴？
ああ
それが 俺の無実の証明になる
君が ｱﾛﾜﾅの間で気を失っていた
ときのことを 思い出してくれよ
あのとき
君から電話がかかってきて
それを受けた七瀬さんが
部屋を飛び出していった
そうだったよね？
ええ 確かに
そうよ そうだわ！
そのとき 私
由明に会ったのよ
電話が切れる直前に 犯人は
アロワナの間で
金田一君を襲ったわけでしょ？
由明が 私と会ったのは
美雪が廊下に出てきてから
ほんの 20秒くらいだったわ
あんなに遠くからじゃ
絶対に戻ってこられない
そうよ！
だから言ったでしょ
由明は犯人じゃないって
茜…
由明 どうなの　違うんでしょ？
もちろんだよ 茜
君が俺を疑って
気を失ってるフリなんか
したんじゃないってことも
分かっている
証明したかったんだろ？
俺の無実を
ええ…
私 嫌だって言ったの
でも 何にも起こらなければ
逆に 由明が犯人じゃないって
証明できるって
ああ
そして 俺の無実は証明された
俺には
完ぺきなアリバイがあるんだ
だろ 金田一君？
どうなんだ 金田一？
残念だけど
遠藤さんのアリバイは 成立しない
うん？
今から それを説明するよ
あの アロワナの間でね
遠藤さんのアリバイトリックを
解き明かす前に
言っておきたいことがある
まず 遠藤さんが俺を拉致した
本当の理由は
恐らく 優さんを
おびき出すためだったんだ
優を？
ええ　そもそも 遠藤さんが
こんな大げさな事件を起こした
本当の理由は
恐らく 自分にとって
邪魔になる３人の人物
藍沢由里絵 藍沢剛 藍沢優を
殺害することにあったんです
な なに！
恐らく 遠藤さんと茜さんは
ずいぶん前から
交際していたんでしょう
遠藤さんが
テロリストの銃弾を受けたときの
茜さんの様子を見れば
誰でも ピンとくる
たぶん そのことを隠していたのは
今は まだ 会長の後継者争いに
巻き込まれたく
なかったからだろう
まずは 邪魔な３人を始末して
あとで ゆっくりと
茜さんの夫に納まり
会長の後釜として
すべてを手に入れる
しかし その最終目的のために
まずは
自分に対する茜さんの愛情を
完ぺきなものにしなければ
ならなかった
え…
そして
会長の絶対的な信頼を得ることも
大切だった
そんなふうに
他人の感情を計算して
操れるものかなあ？
できるのさ
そのために あんたは
自分も一緒に人質になったんだよ
危機的な状況の中で
長い間 一緒にいた者同士には
家族的な感情が芽生えたり
男女だったら 結婚までいくことが
あるそうですからね
その上 遠藤さんは
医学の知識がある唯一の人物だ
心臓の悪い会長が 絶対的な
信頼を置くようになっても
不思議じゃない
そんなこと…
茜　大丈夫
え？
俺には
完ぺきなアリバイがあるんだ
そいつは どうかな？
例えば 俺が拉致されていたのが
この アロワナの間ではなく
ここと まったく同じつくりの
チョウチョウウオの間
だったとしたら
何だって？
そんな…
金田一君 アロワナの間にいるって
言ったのは
君じゃないか
ええ あのとき 俺は
あの水槽のアロワナを見て
そう判断した
だが… オッサン
うん？
この部屋の明かりを
暗くしたいんだけど
ああ　照明を落としてやれ
はっ
あのときも こんなふうに
部屋の中は薄暗かった
あのとき 遠藤さんが使った
アリバイトリックは
これだ！
こ… これは
どういうことなの はじめちゃん？
簡単なことさ
要するに これは
水槽なんかじゃなかった
実は テレビのブラウン管みたいな
ものだったんだよ
驚いたな
全然 気づかなかった
ホントに 水が入ってるみたいだし
より 本物に近づけるために
モニターと保護ケースの間に
水が入っているのさ
このトリックに
ピンときた きっかけは
広瀬さんから
このホテル内の すべてのものを
優さんが イミテーションで
済ませていることを聞いたことさ
それで 気づいたんだ
このホテルの すべてが
そんな優さんの
合理的な経営哲学に基づいて
作られたものだとしたら
ここの魚も
本物じゃないかもしれないってね
もちろん チョウチョウウオの間も
同じ 仕掛けになっている
俺を チョウチョウウオの間に
運んだあんたは
映像をアロワナに変えることで
俺に錯覚させたんだ
そして 美雪に電話をした俺を
殴り倒したあんたは
実際は アロワナの間ではなく
チョウチョウウオの間に
いたんだよ
あそこからなら
全然 余裕で みんなの前に
かけつけることができる
由明…
ホントなの ホントに あなたが？
由明…
金田一君
君は 一つだけ
間違っていることがある
俺の狙いは 本当に
ネオ･ムウ王国の
復活にあったんだよ
だが 俺の王国には
誰もいないし 何もない
誰の目にも
さらされることもない
ただ 俺と父さんだけが
訪れることのできる場所だった
由明！
俺の名前は 遠藤由明ではない
那国直人だ
那国！
ま まさか 那国守彦の？
さすがに覚えていたようだな
自分が殺した 男の名前を
どういう意味です 殺したって？
幼いころに母親を亡くした俺に
父さんは まるで子守歌のように
ずっと語り続けていたものさ
沖縄の外れの孤島に残る
不思議な伝説
かつて世界の中心だったという
その海域に
きっと眠っているはずの
文明の遺跡を
自分の手で発掘してみたいって
そのために 父さんは懸命に働き
やがて 小さな観光会社を成功させ
発掘のための資金を作った
そして何年もかけて
ようやく あの遺跡を
ディープブルーを発見したんだ
父さんは 大喜びだったよ
だが
そんな父さんに近づいてきたのが
藍沢国際海洋開発
つまり 藍沢秀一郎
あんただった
父さんの発見を知ったあんたは
資金援助を申し出た
遺跡発掘の資金調達に
苦しんでいた父さんは
喜んであんたの援助を受け入れた
だが あんたの本当の目的は
父さんを助けることでは
なかったのさ
あんたは
父さんの会社を乗っ取り
遺跡の開発事業から
つまはじきにした
父さんは
人のいい人間だったから
あんたにしてみれば 赤子の手を
ひねるようなものだったろうよ
すべてを失った父は 病に倒れ
ディープブルーを夢見ながら
死んでいった
海が… 私の…
私の ディープブルーが
わ… 私の ディ…
ああ…
アアーッ！
やめろ！なぜ
私が責められなければならない？
私は ただ
あの すばらしい遺跡を
人々に見せたかっただけだ
違う
あんたが欲しかったのは
ディープブルーの看板だけだろ？
俺は 復しゅうを誓った
あんたが父さんにしたように
あんたの すべてを奪おうと
決心したんだ
まず 俺は
まったくの別人になるために
俺自身 つまり
那国直人という人間を抹殺した
そして
遠藤由明という人間を作り上げ
医大を受験した
藍沢秀一郎に関する情報を
収集していた俺は
あんたの持病のことも
知っていたからね
そこに つけいる隙が
あると思ったんだ
覚えてるかい
俺とあんたが初めて会ったとき
あんたは 心臓の発作を起こした
あれも
俺が仕組んだことなんだよ
あんたの行きつけの喫茶店を
知った俺は
バイトとして そこに もぐり込み
発作を誘発する薬を
あんたの飲み物に混入させたんだ
そして あんたを助けることで
俺は
あんたに取り入ることができた
すべては
計算どおりに進んでいたんだ
君という存在以外はね
由明
フッ
きさま 何がおかしい？
聞こえないのか？
ディープブルーが 俺を呼んでる
なに？
ああ…
これは！
父さんは 海に帰った
俺も行かなきゃな
ワアーッ！
金田一！
クソ 逃がすな
来るな！
何を考えているんだ 遠藤
もう 逃げ場はないぞ
銃を捨てろ！
由明！
やめろ 遠藤さん
やめろ！
由明！
すごい津波だったらしいな
ごめんね シャオロン
ホテルも水浸しで
ショーも中止になっちゃって
何 言ってる そんなこと
茜さん
うん なあに？
あ… やっぱ いいや
何よ 気になるじゃない
実は
遠藤さんのことなんだけど
話して 金田一君
ほら ホテルの８階に
みんなで
逃げようとしたときのことさ
あのとき 遠藤さんが 茜さんを
かばって銃弾を受けただろ？
あれだけは 狙ってできることじゃ
ないと思うんだ
何が 言いたいんだ？
つまり 遠藤さんは
あのとき 茜さんの代わりに
死んでもいいって
本気で思ったんじゃないかな？
そうすれば 君に
永遠に愛されたままでいられる
罪を重ねて手に入る
どんなものよりも
あの瞬間は きっと 君のほうが
ずっと大事だったんだよ
自分の命よりも ずっとね
茜
金田一 どうだ 容体は？
いや まだ 美雪は…
そうか お前の気持ちも
分からんでもないが
そう思いつめるな
オッサン
俺に犯人の情報をくれないか
分かった
お前が偶然撮った写真から
３人のカメラマンを割り出した
明日 詳しく事情を聞く
許さねえ　絶対 許さねえ
美雪を こんな目に遭わせた真犯人
俺が 必ず暴いてみせる！
金田一少年の事件簿…﻿どうも変だ　あやしい
俺が見たこともない服
妙にソワソワした態度
それに俺に内緒でデートスポット
日比谷ときた日にゃあ
あやしすぎるぞ 美雪
浮気か？不倫か？相手は誰だ
現場をおさえて
証拠写真を撮ってやる
フィルムよし　電池よし
連写 確認
変態か 俺は？
しかし 完ぺきだ
これでお前の不倫疑惑を
突き止めてやる
じっちゃんの名にかけて！
しかし これは
不倫なのだろうか
んなこたあ どうでもいい
いよいよ あやしい
相手は誰だ？
連写一眼
美雪！
病室に行ってなくて
いいのか？
早く意識が
戻るといいんだがな
あの時…　あの時
ワゴンが逃げたりしないで
すぐ病院に
運んでくれてれば…
あのドライバー
絶対 許せねえ
しかし 偶然とはいえ
お手柄だったぞ
写真に写ったワゴンの
ナンバーから
車の所有者は
すぐに分かったが…
だが ここから先が
ちょっと やっかいでな
車の持ち主は個人ではなく
スタジオデモンという
会社だったんだよ
スタジオ…
ああ　カメラの
撮影スタジオだ
日曜 祭日はスタジオ側の人間が
誰もいないんで
スタジオを借りたカメラマンは
自由にワゴンを使えるという
サービスをやってる
車のキーは
そこの受付に置いてあって
誰でも持ち出せる状態だった
じゃあ ひき逃げ犯は
昼間 スタジオを借りていた
カメラマン
てことになるが スタジオを
借りていたカメラマンは
３人いる　そして彼ら全員が
事故のあった時間は
撮影に出ていて
確実なアリバイがあると
主張しておるんだよ
明日 その３人を所轄に呼んで
事情を詳しく聞くそうだ
どうだ　行ってみるか？
勘弁してよ 警部さん
聞き取りってのは
そんなに何度もやるもんなのかよ
僕は今日
大事な用があるんですけど
私もだ それに担当の刑事さんには
すべて話したはずだがね
できれば そちらで
聞いてもらえないだろうか
申し訳ない
実は ひき逃げされたのは
こいつの幼なじみでね
もう一度だけ 詳しく話を
聞かせてもらえませんか
だから 俺じゃないって
その証拠に ほらこれ
昨日はガイドブックの仕事で
鎌倉に行ってたんだ
俺はモデルと一緒に
朝の８時には到着して
撮影を始めてたよ
ひととおり 寺とか神社とか
撮り終えて
鎌倉駅に向かったのが３時
それから
春祭りの商店街を
モデルを入れ込んで
モータードライブで撮った
モータードライブ？
連写機能のこと
シャッターチャンスは
微妙だからな　風景写真でも
よく使うのさ
ひき逃げ事件が起きた
４時半ごろは
俺は東京に向かう
車の中にいたんだぜ
時間を証明するものは
写ってないみたいですけど
ここに写ってる春祭りの行列は
３時半からなんだ
俺が３時半に
鎌倉を出たとしても
４時半に日比谷に着くのは
不可能だ
スタジオに入ったのは？
夕方６時ごろかなあ
それから商品の写真を撮った
ちなみにあんた ２ヶ月前まで
ギリシャに滞在してたよな
遺跡の撮影でね
２年間
その間に３回 交通違反で
捕まったそうじゃないか
やむにやまれぬ事情ってのが
あったんだよ
シャッターチャンスを
逃がすまいと思ったら
現場に急がなきゃならねえ時が
多くてさ
余裕をみて先に行っておくことは
できなかったんですか
そうそう予定どおりには
いかねえもんなんだよ
仕事ってのは
そんなもんなのさ
僕は高校から去年の夏まで
アメリカにいて
今はカメラマンを目指して
修行中です
昨日は午前中 スタジオで
営業用の物撮りをやってました
それから写真コンクールに
出品する風景写真を撮るため
１人でロケハンに出かけました
そして 都内を
少し撮影したあと
水戸の偕楽園に
出かけました
偕楽園は
夕焼けがきれいだったんで
自分を入れ込んで
オートで連写しました
それから しばらくして
新宿の夜景を撮りに
東京に戻りました
事故のあった時刻は
水戸にいました
ご覧のとおり水戸は夕焼けで
だいたい５時すぎです
とにかく日比谷で４時半に
事故を起こして
５時すぎに水戸に着くのは
不可能です
いくら急いでも
２時間弱は かかります
私は お２人と違って
外国に出たことはないが
日本の自然を撮影した写真は
たくさんあります
昨日はグラビア雑誌に
載せるための写真を撮ってました
朝９時から
スタジオデモンで
鉢植えの花や
植物を撮影して
昼ごろ自分の車で
尾瀬に向かいました
この車は？
私は車も好きでねえ
なんなら そのドライバーが
昨日どこにいたか
調べてもらってください
証人というわけか
だいいち
日比谷から尾瀬沼までは
最低 ４時間はかかります
遅くとも夕方５時前には
到着しないと
日没の写真は
撮れないでしょう
確かにな
この白いのは何ですか？
ああ それはミスです
えっ？
露出をうっかり間違えて…
いや お恥ずかしい
プロにあるまじきミスです
運転のしっぱなしで
疲れてたんでしょうね
どうだ　意識は戻ったか？
ひょっとして外部の人間が
スタジオの車を盗んで
事故を起こしたんじゃ
ないのか？
あいつらの供述も
矛盾はなさそうだしな
いや 違うな
何？
おっさん　もう一度
３人を集めてくれないか
それから
確かめてほしいことがあるんだ
冗談じゃねえよ
まだ疑ってんのかよ
まあまあ そう言わずに
警部さんも
お仕事なんでしょうから
でも あれで最後だって
すみません　もうちょっとだけ
つきあってもらえませんか
実は３人の写真を見比べて
俺は妙なことに
気づいたんです
で 鑑識の人にあることを
確認してもらったんです
そして 謎はすべて解けた
いいですか　この写真の中には
アリバイ工作のために捏造された
虚構の映像が
混じっていたんですよ
その映像を利用したトリックで
偽のアリバイを巧みに作り上げた
真犯人は この中にいる
ひき逃げ犯が
この中にいるって？
アリバイトリックって
何のことだよ
その前に この写真を
見てもらえませんか
この中に１枚だけ
他と違う写真があります
みなさんなら
どれか分かるでしょう？
違うって何のことだね？
あっ これのことか
そういえば これだけ
雰囲気が違いますね
こういうのを
複写っていうらしいですね
証明写真は青い色をバックに
神妙な顔をしてるから
なんとなく分かりますよね
これは免許証を
そのまま別のカメラで
接写してもらったものです
免許の写真を複写したぐらいじゃ
すぐに分かりますが
質のいい写真を
さらに複写したものだと
一見 普通の写真と
見分けがつかないそうです
つまり 過去に撮ったか
別人が撮ったかした写真を
複写して
アリバイ工作に
利用していたんですよ
分かった　それは
中神さんの車の写真だ
尾瀬のフィルムを使って
別の誰かが撮った車の写真を
複写したんだ
何言ってるんだ
車のウィンドーに
私が映り込んでるじゃないか
それより あやしいのは
美隅くんだ
あの桜は
去年の春のじゃないのか？
ぼ… 僕は去年の夏まで
アメリカにいたんですよ
春に帰国してないことは
調べれば分かります
堀之内さんこそ この春祭りの写真
去年のじゃないんですか？
冗談！去年の今ごろは
ギリシャだぜ
いいや　春祭りの行列は
日曜日だけじゃないはずだ
あの写真は 平日すでに
撮ってあったものだったんだ
それをアリバイ工作のために
複写して
昨日の写真の間に
差し込んだんだ
ばっ… ばかな
それほどヒマじゃねえよ
あんたの写真こそ いつどこで
撮ったか分かんねえじゃねえか
堀之内さん
えっ？
な… 何だよ
この春祭りの写真は
モータードライブで
撮影したんでしたよね？
ああ そうだよ
それが？
実は これを見て
あることに気づいたんです
あること？
この写真を見比べてください
この２とおりの写真には
ある決定的な違いがあるんです
違いだと？
注目してほしいのは
被写体ではなく
その背景に
写っているものです
まず堀之内さんの写真で
バックに写っている車
シャッターが切れるごとに
同じ距離を
移動しているのが分かります
それがどうしたよ？
で 美隅さんの写真のバックにも
小さく飛行機が飛んでます
何か気づきませんか？
あれ？何だこれ
飛行機の移動距離が
バラバラだ
モータードライブってのは均等に
連続してシャッターを切るはずだ
飛行機が急加速でもしない限りは
こんな写真になるわけが…
飛行機が
急加速するわけないし
機械であるカメラが
気まぐれなタイミングで
シャッターを切るはずもない
結論は１つ
これは機械ではなく
人間の手が連続的に
シャッターを切った写真なのさ
違いますか？美隅さん
これは あんたが１人で
撮影したものではなく
別の第三者が撮った
写真だったのさ
あんたは
虚偽の証言をしたんだよ
ウソをつかなければならない
理由は１つしかない
あんたは日曜夕方のアリバイを
でっち上げるため
前に水戸で撮った写真を
複写して
このフィルムに組み込んだんだ
なぜなら
美雪をひき逃げした犯人が
美隅陽平さん
あんただったからさ
何を言ってるんですか　だって
去年の春はアメリカにいたんだ
パスポートを調べてもらえば
すぐ分かる
こんなふうに
桜が咲くのは春しか…
それはどうかな
花屋の店頭には季節に関わりなく
いろんな花が置いてあるだろう？
そりゃあ 温室栽培や
いろんな方法があるんだろうけど
俺は ふと思ったのさ
ひょっとして俺たちは
花の咲く季節に
こだわりすぎてたんじゃ
ないかってね
そして水戸の偕楽園のことを
調べているうちに…
あったんだよ
茨城まで行く必要もなかった
パンフレットに載ってたよ
二季咲桜ってのがな
二季桜ともいってね
その名のとおり
見ごろが春と秋
年に２回 満開に花を咲かせる
変種の桜だ
美隅さん
あんた去年の夏に
アメリカから帰国したって
言いましたよね
そしてその秋 誰かと偕楽園に
二季桜を見にいって
その人に この写真を
撮らせたんじゃないんですか？
ああ そうだよ
この写真を撮ったのは
僕の恋人だった人だ
だった？
ひと月前に死んだんです
治る見込みのない病気でした
僕が彼女の病気を知ったのは
帰国したあとです
医者から余命半年って聞かされて
僕は目の前が真っ暗になった
けど 彼女のほうはそんなこと
おくびにも出さないで
明るく…
ねえ 陽平くん
ここって春にはね
桜の花が雪のように降って
とってもきれいなのよ
ここの桜並木は
私のお気に入りなの
ああ 手紙にも
書いてたよな
残念だな
えっ？
来年は あなたと２人で
見られると思ったのに
見たかったなあ 満開の桜
僕はどうしても
そんな彼女に何かしてやりたくて
そして いろいろ
調べているうちに
偕楽園のことを
知ったんです
これって全部 梅の木？
春になったら梅の花で
一杯になるのね　すごいなあ
こんなの まだ序の口だよ
えっ？
いいから いいから
これって…
きれい
だろう？
陽平くん
これを見せるために ここに？
二季桜っていってね　一応
年中 花はついてるらしいんだけど
春と今ごろ １年に二度
満開の桜が楽しめるんだって
日本でもほとんど見られない
貴重な桜なんだ
ねえ ここに立ってみて
くんない？おっ？
陽平くん
ん？何だい？
今度 春になって
また二季桜が咲いたら
この桜の写真
私のお墓に届けてくれる？
えっ？
ありがとう 陽平くん
ここに来て
よかった
今日が彼女の
四十九日の法要なんです
僕は どうしても今日中に
あそこの桜を撮って
彼女に見せてやりたかった
だから どうしても警察に
捕まりたくなかったんです
桜の写真を届けたら
自首するつもりでした
けど俺 やっぱ許せねえよ
あんたが すぐに美雪を
病院に運んでくれてたら…
もし… もしかけがえのない人を
失うようなことになったら…
あんたなら
分かるはずじゃないか！
すみません
僕 本当にすみません
はい 剣持　おう…
何？そうか
おい 金田一
七瀬くんの意識が戻ったそうだ
本当か おっさん？
ああ もう心配ないそうだ
よかった
助かったんだ
殺人者にならずにすんで
よかったな 美隅
さあ 行こうか　美隅
警部さん
ん？何だ
いいえ 何でも
ずいぶん かかりますね
まあな
本庁の人間が絡むと
時間食ってなあ
着いたぞ
こ… ここは
偕楽園？
道間違えてうっかりしてたら
こんなところまで
来ちまった
これから戻るが
疲れたから いったん休憩だ
おい お前の所持品のカメラ
預けとくぞ
出発は５分後
ここに集合だ
ありがとうございます
今日中に
届けてやるんだろ？
ほら さっさと行けよ
ありがとうございます
あーあ 今年はお花見に
行けなかったな
まあまあ
いいじゃないの
無事に退院できたんだし
それに犯人だって…
少しは俺に
感謝しろっつーの
でもどうして はじめちゃん
目撃できたわけ？
タイミングよすぎ
えっ？ギグッ！
そ それより美雪
お前こそ なんで日比谷なんかに
あっ こいつあやしい
やっぱデートだな
はじめちゃんこそ何よ　たまたま
カメラ持ってたって言うけど
それって変でしょう？
七瀬さーん
村上草太
あの日は ふられたかと思ったよ
でも退院おめでとう
あー お前 こいつと
ほんとによかった
ありがとう…
何だ そりゃ
広東語か？
こらー！美雪 逃げるな！
走るな！転ぶな！
お前ってやつは！
ちょっとー 待ちなさいっての！
ちゃんと説明しなさーい！
へえー　七瀬さんって
広東語できるんだ
東京で起きた ある事件が
俺たちを
不思議な運命とともに
出雲へと導く
山奥に静かにたたずむ八雲館
そこで出会った７人に結びつく
ある共通項
彼らは謎の言葉と
八角形の方位図に導かれ
この出雲に来たという
今 神話に秘められた
古代の謎に挑む
まだ誰も見たことのない物語
オリジナルストーリー
金田一少年の事件簿…
ここに 一枚の写真がある
彼らは 出雲を心から愛していた
ほかの子どもたちが
遊びや漫画のヒーローに
夢中になっているころ 二人は
スサノオや オオクニヌシの冒険に
心を奪われていた
おい 美雪
タコ焼きだぞ タコ焼き
お前にも買ってきてやっ… あ？
へえ すごーい
ホントですか？
本当だよ　日本の古代史は
ほとんど すべてが
まだ 謎に包まれていると
言っていい状態なんだ
ところが 出雲はね 1984年に
出雲の荒神谷というところで
ほら わが国の考古学史上最多の
358本という銅剣が発見されたんだ
だから 出雲には
王国があったという説が
現実味を帯びてきたんだ
出雲に王国が？
そうだよ 初代の王は
スサノオノミコトだった
という説だ
スサノオノミコトって
本当に いた人なの？
神話の中の神様じゃ
なかったんですか？
実在の人物だったと
考えている学者は多いよ
最近 新聞にも よく出てるけど
日本各地で
古代史を塗り替えるような遺跡が
次々に発見されてるのを
知ってるだろ？
出雲なら
日本最大の遺跡が発掘される日が
来るかもしれないな
日本最大の遺跡！
そんなのが見つかったら
大発見だね え？
あれ 何だ いたの？
誰だい？このオッサンはよ
失礼ね
何 言うのよ はじめちゃん
右艮さんは
私の父の教え子なんです
大学院で
古代史の研究をしてるから
お話を聞こうと思って
大体ねえ
あたしと公子ちゃんと
はじめちゃんと３人 同じ班で
出雲神話の研究することに
なってたのよ
なのに 全部 人に押しつけて
ぶらついてるの誰？
フーン
おい 図書館で タコ焼き食うな
余計な お世話だ
ありがとうございました
右艮さん
そこを曲がれば 小泉八雲公園だよ
研究の参考になるかもしれないね
小泉八雲公園？
小泉八雲は
出雲に住んだことがあるんだ
｢八雲｣の名は
スサノオが詠んだといわれる和歌
｢八雲立つ出雲｣から
取ったんだそうだ
ヘエ
はあ
これから レポートを
まとめなきゃいけないから
それじゃ
さよなら 右艮さん
カッコイイー
右艮さんって
頭脳明晰って感じね
その上 どハンサム
いいか 美雪！
乾 フミもだ
頭も顔も いい男には
必ず裏がある
｢どスケベ｣とか｢性格が悪い｣とか
それは 誰かさんのことでしょ
顔も頭も悪いけど
乾の父ちゃんは
考古学の先生なんだろ？
いちいち調べなくたって
父ちゃんに聞けばいいじゃんかよ
そ… そうなんだけど
父は 今 出張中で
ウワーッ アアッ！
何だ？今の声
こっちから聞こえたよな？
あっ！
どうしたんですか！
大丈夫ですか？
ああ…
刺されたんだ
誰に やられたんですか？
ヤ… ヤマタノ
オ… オロチ
ヤマタノオロチ？
あっ この人 何か持ってる
なに！
ほら 手に
美雪 あの人が言ってた
｢ヤマタノオロチ｣って何だっけ？
出雲神話に出てくる大蛇よ
八つの首と八つの尾を持った
八つの首を持つ大蛇か
金田一！
あ… ああ オッサン
被害者の身元が割れたぞ
朱雀斎助 48歳
朱雀建設の取締役だ
どこへ行くとも告げずに
今朝 家を出たきりだった
ポケットの財布に こんな切符が
東京 今夜の22時発
サンライズ出雲
八雲館？
出雲にある
｢八雲館｣という旅館の名前だ
問い合わせてみたら
朱雀が明日の夜
予約を入れていたよ　つまり
殺られた朱雀は
今夜 出雲に行くつもりだったんだ
家族に内緒でな
あ… そうだ オッサン　これ
あの人が握ってた紙切れだ
あ？
あ… 金田一 お前
勝手に こんなもの！
何？それ
方位図みたい
方位図って？
うーん 確かにな
この文字が 東西南北を示すんだ
古い表現だと こうなる
それより
ほら これ
あ？ああ…
｢６月１日 八雲館に来られたし｣
｢深夜零時 千八百年の時を超え
オロチは よみがえる｣
｢汝を呪い死の舞を舞う｣
６月１日といえば あさってだ
サンライズ出雲
ヤマタノオロチ 八雲館
何もかも 出雲に通じてる
出雲に行け
うん？
乾 どういうことだ？
父の口ぐせなの
｢出雲に行け 八百万の謎
すべての答えは出雲に眠る｣
すべての答えは 出雲に眠る？
雄大な雲ね
さすが スサノオノミコトが
八雲を立つと詠ったといわれる
出雲だけあるわ
ウワア すっごい しめ縄
何で こんなに デッカイわけ？
出雲大社には謎が多いのよ
記録だと 古代には
この社殿の建物自体の高さが
96メートルも あったんですって
えっ 96メートル！
それって ピラミッドの高さと
大して変わんないじゃん
そうね 古代の出雲大社は
ピラミッドの形をしていたと
言う人もいるくらいよ
へえー
出雲大社の宮司は
代々 定められた家が務めていて
その家は
アマテラスオオミカミの子孫で
神代の時代から
代々 宮司を務めてるそうよ
神代の時代から？
何千年も？
へえ…
ふーん
そう信じてる人も たくさんいるわ
ホント
出雲に来ると 神話は
みーんな 本当にあったことだって
思いたくなるわね
早く！行こう 行こう
ああ…
八雲館って こんな山奥なのかよ
ウワー！
見て見て スッゴイ滝だよ
怖いな…
何だか吸い込まれそうだよ
ホントだ
でも 神秘的な滝だわ
ねえ 公子ちゃん
え… ええ
どうかしたの？
ううん 何でもないわ
こんなトコへ落っこちたら
助からないわね
ああ いたいた　遅かったな
オッサーン…
あ？
まだ遠いのか 八雲館は？
何だ何だ そのツラ
ほら もう少しだ
がんばれ 金田一
この八雲館は
相当 古い建物なんでございますよ
スサノオノミコトの娘の
スセリヒメが
この土地の温泉に
つかったというのが
もともとの
由来で ございますんでねえ
どうしたんだよ？はじめ
ど… どうしたって
あ ラッキー！トイレだ
お客様
そこは トイレじゃございませんよ
えっ？
そこの戸は
ここのところ開かないんです
何せ 古い建物ですから
はじめちゃんたら みっともない
ウエッ エヘヘヘ
あ あれは何？
あれは 能舞台でございます
ほほう 能舞台ですか
さすが
歴史のある場所柄ですな
昔は あそこで
よく能を舞ったそうですが
ここ10年は
まったく使っておりませんね
少々 朽ちておりますし
まあ そのようですな
何か オロチでも出そうな
雰囲気だよな
いやあ スッキリした！
何だよ？
ねえ はじめちゃん
あそこ 何だか分かる？
あそこって？
あ？
マア すばらしい！
何だ？あのオバハン
あの お客様！
あの 床が
だいぶ腐りかけていますんで
危険でございますよ
本当ね
この舞台だけじゃないわ
亡霊でも出そうな館ね
ここ何年も
ほとんど お客がないんでしょう？
でも この私が出雲を手に入れたら
そんなこともなくなるわ
この館は 私のｻｸｾｽｽﾄｰﾘｰの
舞台となるのよ
ヘンなオバサン
もしかして 能の役者か？
あれ あのオバハン
テレビで見たことあるな…
タレント議員の青山龍子よ
え？
最近は 贈収賄スキャンダルで
バッシングされてるようだけどね
週刊誌の見出しを
飾ってるじゃない
｢金まみれの魔女 逮捕は間近｣
何ですって？
アンタ 変なこと言うと
名誉毀損で訴えるわよ！
フン
へえ なるほどね
それで 今夜の宿泊客は
ほかに３人いるが
男が２人 女が１人
それも
おおよその調べは ついたが
うん？
彼女は 坤田友代
角館から観光旅行に来たそうだ
２人の男のうちの１人は
白井虎太郎といって
雑誌やテレビの教養番組に
よく出ている
有名な考古学者らしい
へえ 珍しいな
つまり 俺たちを除いて
泊まり客は
全員 一人旅ってことか
ということだな
右艮さん？
き 公子ちゃん！
どうして ここへ？
知り合いか？
最後の１人ってのが あいつだ
右艮さん おとといの夜
公園の近くにいたそうですな？
ええ 金田一君たちと別れてから
そばを通りました
事件のことは 帰宅してから
ニュースで知ったんです
誰か 怪しい人物を見かけたりは？
いいえ
しかし 奇妙な偶然ですな
じゃ ここには なぜ？
あ… はい
実は…
これは…
朱雀斎助が持っていたものと
まったく同じだ
右艮さん
差出人不明で送られてきたんです
ほう
差出人不明？
これの内容に 心当たりは？
え…
どうなんだ？
思い当たることは あります
僕は ヤマタノオロチ伝承を
研究していますから
ヤマタノオロチ伝承？
｢古事記｣や｢日本書紀｣に登場する
ヤマタノオロチのことは
ご存じですよね？
知ってる 知ってる
夏休みの宿題で 調べたことあるよ
ヤマタノオロチはさ
八つの首と
八つの尻尾を持つ大蛇で
八つの谷に またがるほど
大きかったんだって
でもって スサノオノミコトが
出雲に降りてきたとき
毎年 村の娘を
一人ずつ いけにえにしている
ヤマタノオロチの
うわさを聞いたの
今年は クシナダヒメが
いけにえにされると知ったｽｻﾉｵは
たっぷりと お酒が入った
八つのカメを用意して
オロチを待ったの
オロチが
お酒を飲み干しているスキに
退治しちゃったんだってさ
そのとき オロチの尻尾から
出てきた草薙の剣は
今も どっかに あるんだってさ
どっかって？
え… 知らない
有名な話ですよ
草薙の剣は
現在も
熱田神宮に まつられています
熱田神宮って 名古屋の？
ええ
このオロチの話には
いろんな解釈があるんですが
オロチの正体は
当時 出雲を荒らしていた
豪族だったという説や
それは神話の中だけの話として
史実だとは
認めない人たちもいます
で 君は どう思うんだ？
僕は もちろん
公子さんの お父さん
乾先生の学説と同じ考えです
ほう なるほど
私の父は
スサノオノミコトが
実在の人物だと断定しています
乾先生は
ある文献の研究をしていて
独自の説を唱えているんです
ん と言うと？
はい
今から 千八百年前 出雲では
オロチを神と あがめる
暗黒の部族が支配を続けていたと
乾先生は言ってました
この世と黄泉の国の間に住む
ヤマタノオロチは
その王に憑依していた
心に汚れを持つ人間は
みな オロチに
支配されてしまったのです
なぜなら オロチの八つの首は
人間が持つ八つの汚れの
象徴だった
妬み 恨み 憎しみ 裏切り おごり
虚栄 貪欲 そして 殺意
オロチは 王の体を使って
人の心に巣くう
それらの汚れを巧みに操り
人々の憎しみを あおって
殺し合いをさせたのです
そんな時代に現れたのが
スサノオノミコトだった
スサノオは
秀でた勇気と英知を持つ王で
清廉な魂を持った
８人の側近を従えていた
彼らは 八つの汚れに打ち勝つ
誇り高い精霊で
オロチに操られた王と
壮絶な戦いを繰り広げた
ついに ヤマタノオロチは敗れた
彼らは 血の跡を清め
オロチが 二度と黄泉の国から
よみがえらぬよう封印した
ここは 人の魂を食らい尽くす
まがまがしい
オロチの怨念が眠っている
未来永劫
これを ふし暴いてはならぬ
汝ら８人の精霊が 墓を守るのだ
永遠に
スサノオノミコトは
清められた その土地に
出雲王国を築き 王となった
そして 尊い使命を負った
８人の精霊は
極秘で その土地を守った
決して
歴史の表に出ることのないまま
子孫末代に至るまで
未来永劫 守り続けたというのです
もしかしたら 今でも？
今も 守り続けてるかもしれないわ
ほほう そんな話が
今もねえ…
それは ないんじゃないの？
いくら出雲には
千年以上続いてる家が
あるからって
でも ８人の精霊は
墓を永遠に守る使命を負ったのよ
え？
うん…
あ？
まあ それは それとして
その精霊の話と
この手紙には
どんな関係があるんですか？
右艮さん？
えっ それは…
うん？
あっ 12時だ
もし あの話が本当だとしたら
オロチが
死の舞を舞う時間だよ
あっ そういえば
てっ 停電だ！
何か あったのかな？
キャアーッ！
あの悲鳴は？
どうしたんだ！
何か あったんですか？
誰か そこに？
こ… これを見てよ
え？
あ… おい 金田一 これ
これ もしかして！
ヤ… ヤマタノオロチ
こんな びょうぶ
夕方には なかったはずだわ
オロチは よみがえり
死の舞を舞う
ううう…
それは！
あなたも 同じ手紙を
受け取っていたんですか
何ですって ちょっと見せて
あ…
あたしのところに来たのと
同じだわ
えっ！
何だって？それじゃ…
何てことを…
じゃあ あなたも？
ええ そうです
どうなってんだ？
じゃ 今夜の客は全員
差出人不明の
同じ手紙を受け取って
ここに集められたって
ことなのか？
みんな
ホントに初対面なんですか？
無論だ
赤の他人よ
今夜の お客様は みなさん
まったく別々の地方から
いらしてるし
宿帳に書かれた職業も
バラバラで ございますよ
それじゃ なぜ
同じ手紙を もらったのかしら？
いたずらか
誰が何のために？
そんなこと知らないわよ
はっ　私もで ございます
もしかしたら…
うん？
｢もしかしたら｣ 何なんだ？
封印が解け
まがまがしき怨念が
解き放たれたのかもしれない
まがまがしき怨念だと？
まあ 何て恐ろしいことが ああ…
ここにいる僕たちが もし
もしも…
千八百年の時を経て
バラバラになった
８人の精霊の子孫だとしたら？
われわれは
呼び集められたのかもしれない
黄泉の国から
よみがえった オロチに
よみがえったオロチ？
あ？
うん？
何だ？ありゃ
ヤマタノオロチ
なに！
オロチは よみがえり
死の舞を舞う
死の舞を舞う…
アアーッ！
何だ？
あそこに 誰かが
燃え上がる舞台の上で
予言されていた死の舞が
誰かが送った
方位図に記されていた八方位
そして その中で
北西に位置するのは 乾の一文字
まさか 行方不明の乾教授に
何か関係が？
古代の神話に うずもれていた
もう一つの古文書
｢精霊文書｣とは？
ヤマタノオロチの怨念が
今 現代に よみがえる
金田一少年の事件簿…﻿出雲神話をめぐる
謎に満ちた殺人事件
神話の地 出雲に導かれた
俺たちの目の前で
ヤマタノオロチは
炎に包まれていった
アアーッ！
青山さん
オッサン
ああ
たっ 大変だ！早く助けないと
七瀬君
きゅ 救急車　消防に電話を！
はい
ダメだ　やっぱり開かない
向こうから回るしか
大変なことに…
どうして 青山が？
危ないぞ 金田一！
これじゃ 近づけん
青山龍子だ　間違いない
どうして 青山さんが？
詳しいことは
明日の調べを待ってからだ
とにかく
皆さんも 戻ってください
取り調べは
明日から お願いします
やれやれ とんだことに
巻き込まれてしまった
何てことだ！私が この八雲館を
継いで以来の出来事です
人ひとり死んだくらいで
大げさね
そ… そんな言い方は
ないでしょう
あんな政治家が１人いなくたって
何も変わらないってことよ
だからって 何も
そんな言い方をしなくたって
まあまあ とにかく
今日のところは
部屋へ戻りましょう
どうした？金田一　行くぞ
ああ
あっ あれ？
何だよ？
俺のゲタ…
どっかに 転がってるのか？
ないよ
お前 履いてこなかったんじゃ
ないのか？
いや そんな…
ちょっと 待って オッサン
ちょっと… おんぶしてってよ！
子どもか お前は！
この事故で焼死したのは
現職の国会議員
青山龍子さんでした
青山さんは テレビなどでも有名な
タレント議員で
最近は 贈収賄疑惑など
スキャンダルが
話題になっていました
これって 八雲館の前よね？
何か不思議な感じ
事故の原因なども まだ不明ですが
八雲館に宿泊していた
目撃者の話では
焼身自殺だったという情報もあり
警視庁では
慎重に調査を続けています
あっ すいません！
どうなんですか やはり自殺…
あれ 剣持のオジサンだ
現在 調査中だ
青山議員と
贈収賄スキャンダルとの関係は？
検察の追及を恐れて
みずから 命を絶ったということ…
だから 調査中だと言ってるだろ！
記者会見まで待ってくれ
ホントに自殺じゃないんですか？
青山龍子の逮捕も間近だったのは
事実なんですか？
これじゃ 外にも出られんな
ひと言 お願いします！
まだ 決めつける段階じゃない
一体 誰なの？
自殺だってマスコミに流したのは
贈収賄問題は
どこまで進んでいたんですか？
調査中！
どうして ここへ来たんですか？
調査中 調査中 調査中だ…
あのとき…
火は突然 燃え上がった
かけつけたとき
確かに ガソリンの臭い
ヤ… ヤマタノ オロチ
朱雀斎助
青山龍子
はじめちゃん！
うん？
早く来て
みんなが 右艮さんを
右艮君だったかしら
はい
もっと詳しく話してほしいわ
君は夕べ 言ったわよね
ここに集められた私たちは
千八百年を経て
バラバラになった
８人の精霊だって
あれは
どういう意味なのかしら？
あたしたちは 面識もないし
それが なぜ
ここに集められたのか
納得いく説明をしてほしいわ
みんな 何の共通項もない
赤の他人同士よ
共通項は ひとつだけあるんだ
金田一君
ここに集まった みんなは
一見 バラバラに見えるけど
そうじゃない
ほう 一体 何ですかな？
何なの 共通項って？
この方位図だよ
ここにいる 一人一人の名前を
もう一度 確認してほしい
全員 名前の中に
方角を表す文字を持っているんだ
方角？
北を表す｢玄武｣という文字
これは 当然 玄武さんの名前
東北を示すこの字は
右艮さんの｢艮｣
東を表す｢青龍｣は
昨日 亡くなった 青山龍子
東南の この字｢巽｣は
巽海なぎささん
南を示す｢朱雀｣
これは 東京で殺された朱雀斎助
そして 南西を表す この字は
坤田友代さん
西の｢白虎｣は 白井虎太郎教授
もう１人 北西を表す この字は
乾公子
君の名前にも
方角を示す文字が入っている
一体 どういうことなんですか？
少なくとも
ここに集まった みんなは
無関係じゃないということさ
そうです
８人の精霊の名前には
八つの方角が
織り込まれていたんです
八つの方角？
一体 何なんです
その精霊というのは？
およそ 千八百年前
スサノオノミコトと ともに
ヤマタノオロチと戦った
者たちです
ヤマタノオロチと戦った？
スサノオの側近だった彼らは
誇り高く清らかな魂を持ち
オロチの操る八つの汚れ
妬み 恨み 憎しみなどに打ち勝ち
スサノオと ともに
オロチの まがまがしい怨念を
封印し
未来永劫 誰にも明かすことなく
墓を守る使命を与えられた
スサノオは その地を清め
出雲王国を築き
８人の精霊は その地を囲む
八つの方角に住み着き
決して
歴史の表に出ることのないまま
子孫末代に至るまで
守り続けたというのです
八つの方角が織り込まれた名前
その名前こそが
精霊の証しだというのです
確かに みんなの名前に
方角は入っているが
なあ 金田一
千八百年前の話じゃ…
乾先生も私も
そう 信じています！
乾先生って 教授のことか？
はい 私の父です
えっ！
すると やはり あなたが
あの乾教授の お嬢さん？
乾教授を知っているんですか？
え… ええ
も もちろんです
どうして 父を？
初めて 乾教授が
こちらに いらしたのは
数年前でした
それ以来 教授は
出雲の調査に来られるたびに
この八雲館を
常宿にしていらっしゃいました
それが 半年ほど前の
あの日…
先生 お茶が入りましたよ
先生 どうかなさりましたか？
え？
先生 乾先生？
先生…
あのとき 確かに 誰かが
いたような気がしたんですが
私が部屋に入ったときには
乾教授の姿が どこにもなく…
消えてしまったんですよ
部屋一杯 置いてあった
資料などと一緒に
それじゃあ 父は あの古文書と？
はい あの日以来 八雲館には
何 その古文書って？
父が生涯を費やし
研究していた古文書よ
｢精霊文書｣
父は そう呼んでいました
精霊文書？
それは 精霊たちが
千八百年近くもの間 つづってきた
歴史の事実を伝える
古文書だということでした
｢古事記｣｢日本書紀｣などは
当時の権力者が
自分たちに都合のいいことを
書かせて作らせたと
父は考えていたんですが
精霊文書は
歴史の表に出ることのなかった
ありのままの もう一つの歴史を
精霊たちが
ひそかに言い伝えたことを
つづったものだと言っていました
そして その精霊文書には
オロチの墓と出雲王国の場所も
書かれているはずだと
乾先生は この地の伝説と
発掘された さまざまな資料を基に
精霊文書を分析すると
地下に眠っている
出雲王朝の遺跡は
ピラミッド状の
巨大なものではないかと
話されていました
ピラミッド状の遺跡？
ホントに発見されたら
歴史的大発見ね
私たちは 本当に
歴史の裏側にいたという
８人の精霊の
子孫なのでしょうか？
信じられないけど 私も
亡くなった父に聞かされていたわ
うちは
千年以上続いている家系で
もともとは 出雲の出なんだって
絶対に｢巽｣の名を絶やすな
この宝を子どもに伝えろって
宝って？
父から これを
まが玉ですな
ちょっ ちょっと見せてください
え？
何ということだ
どうした？ご主人
こ… この まが玉と同じものを
祖父が持っていました
｢お前は玄武の長男だから｣って
見せてくれたことがありました
何だって？じゃあ
みんな その まが玉を？
まが玉は 精霊の子孫の証しの
１つだと思います
私の家には
まが玉は ありませんでしたが
出雲を出生地とする古い系図が
代々 伝わっておりました
そう言われれば まが玉の話も
聞いたことがあるような
しかし
そんなことが ありうるのか？
千八百年も前からの子孫なんて
ありえない話ではない
実際に
オオクニヌシノミコトの子孫では
ないかといわれている家も
出雲には存在しているんだ
あ… ハア
そんなもんですか
我が家にも まが玉はないが
曽祖父から語り継がれたという
精霊伝説に似た話があり
乾教授の説に
興味を持ったのです
じゃあ 白井先生も
信じてらっしゃるんですね？
あ… うん…
とにかく その精霊文書とやらを
見てみたいものですなあ
それは 乾先生が…
その乾教授って人
ひとりで オロチの墓を
見つけたんじゃない？
ええっ？
オロチの墓を暴き
封じ込められていたヤマタノオロチを
よみがえらせてしまった
オロチは 乾教授の体に憑依して
千八百年の怨念を晴らすべく
精霊の子孫を 次々に殺していく
父が青山さんを殺したと
言うんですか！
やめてください
乾先生を冒とくするのは！
優しいのね　彼女の前で
そんなに いいカッコしたいの
うん？
人の心に 妬み 恨み 憎しみ
そんな八つの汚れが
巣くっているかぎり
オロチは 何度でも
よみがえるんじゃないかしら
確かに ８人の精霊のリストを
持っていたと思われる彼なら
われわれを ここに
呼び集めることができた
そういえば
乾が示す方角 西北は
古代に おいては
死者の国への入り口だと
考えられていたこともあるしね
白井先生まで何を言うんですか！
皆さん
疑いや争いを持つのは
やめにしませんか
私たちは
精霊の子孫かもしれないんでしょ
たとえ
痛ましい事件に巻き込まれても
誇り高い心を持たなければ
そうでしょ みなさん？
いいこと言うね おばさん
ありがとう お嬢ちゃん
とにかく
私たちが精霊の子孫なら
その中の２人が
死んだことになるわ
３番目の犠牲者も
この中から出るのかしらね
えっ…
あたしは 死にたくないですから
ここが お父さんが
最後に泊まっていた部屋なのね
どこにいるの？お父さん
乾先生は
口ぐせのように｢出雲へ行け」と
おっしゃってました
八百万の謎 出雲に眠る
この出雲にいれば
きっと 手掛かりが つかめるよ
きっと
あ… 大丈夫ですか？坤田さん
ちょっと めまいが…
体調が すぐれなくて
夕べ あんなことあったし
当たり前ですよ
もう大丈夫よ　ありがとう
きれいね
え？
こんな忌まわしいことが
あったのに
自然の美しさは変わらないのね
何か？
あ… いや
俺は その精霊ってのが何なのか
まだ よく分かんないけど
もし 本当に
そんな人たちがいるとしたら
坤田さんみたいな人が
ふさわしいような気がしたんだ
まあ ありがとう
金田一さん
笑わないでくださいね
私 実は 自分が精霊の
末えいかもしれないと聞いて
少し誇らしくなったの
今年で 51になるけど
人に話すことなど
何もない人生だったわ
いつ命が消えても
誰の記憶にも残らない
そんな人生に ささやかな明かりが
ともったような気がしたの
精霊なんて 夢のような お話
人は 誰も
信じないでしょうけれど
もう そんなに長くない
人生ですもの
胸に小さな誇りをともして
死んでいきたいと思うのよ
アラ ごめんなさい
こんな話 迷惑よね？
ああ… いえ
昨日 死亡した青山議員に
各界の著名人も
ショックを隠し切れません
また これか…
映画監督のヤマダ…
もちろん 私は
別な考えを持っています
白井のオッサンじゃない？
では 白井先生は
われわれの想像を超えた王朝が
実在したと？
はい
これって ナマじゃないよね？
その出雲王朝を
何らかの形で取り込んだ大和勢は
歴史の中で出雲王朝の存在を
抹殺してしまったのです
実在した出雲の王たちを
ただの神話の神として
つづってしまった
私は 出雲王朝の
最後の王だったという
オオクニヌシノミコトのことも
考えに入れておくべきであり
ひょっとすると その人物は
処刑された可能性も
あると思います
処刑ですか？
しかし
｢古事記｣についての解釈では
オオクニヌシノミコトは
大和朝廷に国を譲って
その代わりに 出雲大社を
建ててもらったことに
なっていますよね？
私が申し上げたいのは
何らかの形で
オオクニヌシノミコトを葬った
大和勢力は
その たたりを恐れ
鎮魂のために
出雲大社を建てたと考えるのが
妥当でないかということです
当時の人々は
非常に たたりを…
誰？誰か いるの？
誰なの？
あれは
うーん…
何なんだ
オロチの怨念とか精霊とか
これは
れっきとした殺人事件だよな？
金田一
ウワーッ！
ビ… ビックリした
オロチ… ヤマタノオロチが！
ホントなのか？おい フミ
ホントだよ
オロチが捨てたんだ 滝の中に！
頭がい骨を… どういうことだ？
ホントだって 見たんだよ！
オッサン
うん…
調べてみるか
気をつけろよ そっちの流れは…
間違いない
目撃した子がいるんだ
オイ！
向こうのほうに何か見えるぞ
おい あったぞ
仏だ！
白骨化した遺体です
どこだ？
やっぱり
よーし 静かに上げろ
鑑識だ　鑑識を呼べ！
はい
すっかり白骨化していて
誰だか分からん
身元が分かりそうな遺留品は
このメガネしかないが
何か心当たりは ありませんか？
そのメガネは…
お父さん！
出雲王国の すべてが
書かれてあるという精霊文書
それは 乾教授の失踪とともに
謎に包まれてしまった
すべての犠牲者の背後にダブる
ヤマタノオロチの影
それは 精霊の子孫たちに
一体 何を示すのか？
そんなとき
再び届いた謎の手紙
時を超え
彼らの運命の歯車が動き出した
金田一少年の事件簿…
ヤマタノオロチの幻影に
導かれるように
神話の国
出雲の地に やってきた俺たち
そこで 俺たちを待っていたものは
紅蓮の炎に包まれた
オロチの死の舞だった
差出人不明の手紙によって
呼び寄せられた
見ず知らずの人たち
手紙に記された八角形の方位図
彼らは 本当に
８人の精霊たちの末えいなのか？
東京と出雲
遠く離れて起きた二つの事件を
被害者の名前が つなぐ
そして 滝つぼから発見された
第三の遺体
それは 精霊文書とオロチの謎を
追っていた
乾教授 その人だった
これも オロチの怨念の
仕業だというのか　それとも…
この謎
俺が 必ず解いてみせる
じっちゃんの名にかけて！
ゾッとするわね
乾教授が行方不明になったのは
半年前だから
そのとき死んだ遺体を
今になって
オロチを装った何者かが
捨てに来たってこと？
しかし だとしたら
精霊文書は 一体どこに？
乾教授が燃やしてしまったのかと
思っていたが
先生が
精霊文書を燃やすわけがない！
あそこには オロチの墓の場所や
８人の精霊の秘密
出雲王国の謎の
すべてが書かれていたんだ
何者かが 乾先生を殺し
精霊文書を持ち去ったんだ
消えた精霊文書
確かに それが
この事件の鍵を握っていることは
間違いなさそうだ　でも
一体 誰が
どこに持っていったんだ？
くそっ
精霊文書さえ見つければ
すべては 私のものになるのに
うん？
朱雀斎助！
こ これは！
そうだったのか
朱雀は死ぬ前に
精霊文書を見つけてたんだ！
何で はじめちゃんが
こんなところで寝てるのよ
知らないって
何やってんの？
大発見だ 世紀の大発見だよ
君たち
ちょうど いいところに
ついに分かったんだ！
オロチの墓の場所が
えっ オロチの墓が？
そうだ とうとう見つけたよ
私が 長年 オロチの墓と
幻の出雲王朝を探してきたことは
知ってるだろう
あと一歩というところ
だったんだが
今朝になって ヒントをつかみ
一気に 謎が解けたんだ
え 謎が解けた？
説明すれば長くなる
とにかく 今から出かける
君たちも来るかね？
歴史的大発見を目撃できるぞ
あ…
間違いない
ついに ついに見つけたんだ
地下深く 静かに眠る
巨大ピラミッド状の遺跡が
この私の手により 千八百年の
眠りから目を覚ますのだ
ハハハハハ
本当かしら？
だとしたら スゴイけど
オロチの墓と スサノオの実在が
証明されれば
日本の古代史は すべて覆るぞ
ハハハハハ
ここだ　この辺りのはずだ
おお！
やはり 間違いない あの岩だ
これが 地下に眠る
オロチの墓の入り口に違いない
これが？
オロチの墓は
出雲王朝の遺跡に
つながっているはずだ
きっと この中に入れれば
それが分かるはず
おお！人ひとり
何とか入れる穴があるぞ
え… 入るんですか？
無論だとも
でも オロチの墓を暴いたりしちゃ
いけないんじゃ？
さあ 君たちは 今
記念すべき瞬間に立ち会うんだ
待って！
そこに入っちゃいけない
乾公子！
後を つけてきたのか？
オロチの墓は
永遠に封印された場所よ
暴けば まがまがしい怨念が
よみがえってしまう
人の魂を食らい尽くす
８つの汚れが
解き放たれてしまうのよ
はっ！
乾英基の娘が
世紀の発見を先を越されて
妬みに われを忘れたか？
あなたにも オロチの怨念が…
お 怨念が何だ？
私は そんなものは怖くないぞ
世紀の大発見が
私を待っているんだ
この墓は 私のものだ
今日 このとき
６月２日 午前７時32分
この瞬間を覚えておくがいい
私の名は 歴史的大発見を
成し遂げた人物として
この国の歴史に刻まれるのだ
ハッハハハハ
白井教授
おっ おお…
これは 間違いない
間違いないぞ
私の思ったとおりだ
ハハハハハ アハハハハハ
ギャアーッ！
はじめちゃん
美雪 フミ ここで待ってろ
ああ あたしも行く
あ… 待って！
まるで 黄泉の国に
飲み込まれたみたいだ
これが オロチの墓なの？
バカ
何で ついてきたんだよ？
イザナギノミコトも
黄泉の国の こんな暗闇を
降りていったんだよね
死んじゃった
奥さんのイザナミを捜しに
やめて
いいか 俺のそばを離れるなよ
はじめちゃん あれ
し… 白井教授！
来るな
秒針が止まってる
フミ　今 何時何分だ？
７時36分だけど
たった今 止まったところだ
やっぱり
オロチの墓を暴いたからだよ
ねえ 大丈夫なの？黄泉の国に
あんなに人が入っちゃって
オロチの墓は
一体 どうなっちゃうの？
報告によると ほとんど
即死に近い状況だったようだ
凶器は ナイフか包丁のようだが
まだ 発見されていない
しかし 遺跡の中の様子は
大体つかめたぞ
白井教授の殺害現場となった
ここが 一番奥だ
出口は 俺たちが入っていった
ここだけか
ほかに 出入り口は なかった
ということは つまり
犯人は
中で待ち伏せしていたとしか
待ち伏せ？
オロチの墓は まだ
誰にも発見されていない
遺跡だったんだよ
何で 待ち伏せなんか
できるの？
誰かが先に この遺跡を
発見していたっていうこと？
いずれにせよ
犯人は 白井教授を殺したあと
洞窟内の どこかに
身を潜めていたんだろう
そして
お前たちが通り過ぎるのを待って
外に出て行ったんだろうな
だったら
乾が犯人を見てたはずだ
乾は ずっと
ここに いたんだから
なあ？
誰も 出てこなかったわ
何だって そんな バカな！
犯人は
ここから逃げるしかないんだぞ
犯人は消えたってのか？
霧のように
オロチだよ
きっと オロチが白井教授を
黄泉の国に引きずり込んだんだ
絶対 オロチの怨念だよ
お墓に入ったから
オロチが怒ってんだよ！
封印は解かれてしまった
とうとう ４人目の犠牲者が…
ねえ はじめちゃん
８人の精霊は
次々に殺されてしまうの？
一見 完全犯罪に見える
二つの事件
だが 犯人は姿を目撃される
危険を何度も冒していた
ひょっとしたら
目的さえ果たせば
逮捕されたって かまわないと
思っていたんじゃないのかな
あの人柄を考えると
十分 納得できる
それじゃ はじめちゃんは…
ああ 犯人の検討は ついた
だが
まだ 謎は すべて解けていない
あのとき なぜ…
よーし 開いたぞ
こいつのせいか
あの どうしたんですか？
ツバメの巣だよ
こりゃあ
扉が開かなかったわけだよ
ツバメの巣？
お客様
そこは トイレじゃございませんよ
何か心当たりは ありませんか？
今日 このとき
６月２日 午前７時32分
この時間を覚えておくがいい
そうか そうだったのか
はじめちゃん？
謎は すべて解けた
金田一
これで関係者は 全員そろったぞ
一体 何なの？
こんなところに集めて
ヤマタノオロチを めぐって
連続して起きた殺人事件
その謎を 今 解き明かすよ
青山龍子 白井虎太郎 そして
朱雀斎助を殺した犯人は
この中にいる
何ですって！
どういうことです？
われわれ この５人の中に
殺人犯がいると言うんですか？
ああ そうだ
そんな！
少なくとも
青山龍子の焼死事件の犯人が
この中にいるなんて
ありえないわ
あのとき
ここにいる５人は 全員
ヤマタノオロチの
びょうぶを見ていた
それから つづみの音がして
オロチの舞が始まって
青山龍子が舞うのを
みんなが見ていたのよ
そして
炎が突然 燃え上がったのを見て
あたしたちは
能舞台に かけつけた
そう あたしたち全員が
事の一部始終を見ていたのよ
ほぼ 完ぺきなアリバイと言って
いいんじゃないかしら？
そう 俺も 初めは
何の疑問も抱かなかった
ゲタが なくなるまでは
ゲタ？
ああ
俺と剣持のオッサンは
庭にあったゲタを履き
ガケを かけのぼり
履いてきたゲタを脱いで
回廊に上がった
あとから来た６人も ゲタを脱いで
あそこに上がったはずなんだ
ところが ほぼ鎮火したあと
俺たちが
本館に戻ろうとしたとき
俺の分のゲタだけが
足りなくなっていたんだ
どこを捜しても見つからなかった
あっ あれ？
俺のゲタは…
どっかに転がってるのか？
ないよ
お前 履いてこなかったんじゃ
ないのか？
つまり ８足あったゲタが
７足しかなかったんだ
８足から７足に…
１足 減っていた？
それが 何を表すんですか？
誰か外部の人間が
ゲタを履いて
逃げていったということしか…
いいや 見ろ
見てのとおり
舞台の周りは断崖絶壁だ
あのガケを わざわざ
ゲタを履いて逃げると思うか？
ゲタは １足 減ったんじゃ
ないってことさ
本当は 最初から
７足しかなかったんだよ
行くときには
７人しかいなかった人間が
帰りには １人増えて
８人になっていたんだ
１人 増えた？
だから お前のゲタが
１足 足りなくなったということか
そのことに気づいたとき
俺は 青山龍子が
この中の誰かに殺されたと
確信したんだ
どういうことですか？
まだ よく…
あのとき
確かに びょうぶの前には
青山龍子を除く
全員が そろっていた
そして 舞台が燃え上がるのを
全員が確かに見ていた
それは みんな
記憶していることだ
だから俺たちは みんなが ずっと
一緒だと思い込んでしまった
でも
それは 俺たちが勝手に
勘違いしただけの
ことだったんだよ
びょうぶや方位図
舞台の上での舞
みんなの関心は
次々 これらのことに向けられ
俺たちは 周囲に気を配ることを
忘れてしまったわけさ
犯人は そんな俺たちの心理を
巧みに利用したんだよ
実は みんなの注意が
びょうぶや方位図に
集中している間に
犯人だけが ひとり
こっそり離れて
あの扉の中に入っていったんだ
あの屋根つきの回廊を通れば
誰にも姿を見られることなく
舞台に たどり着くことが
できるからね
舞台に上がった犯人は
あらかじめ用意していた
同じオロチの衣装をつけ
みんなの前で 舞を舞った
死の舞をね
たぶん そのとき
ついたての後ろには
薬か何かで眠らされていた
青山龍子が いたはずだ
犯人は ついたての後ろに戻り
火を放った
ガソリンを
染み込ませてあったから
舞台は
あっという間に燃え上がった
犯人は そのまま もと来た
回廊を通って戻るつもりだった
ところが… これは 俺が
あることから
気がついたことなんだけど
恐らく
目を覚ました青山龍子が もがき
行く手を ふさいでしまった
俺たちの姿を見て 焦った犯人は
予定を変え
舞台の下に滑り込み
回廊を逆にたどって みんなが
ゲタを脱いだ場所まで戻ると
どこかに オロチの衣装を隠して
あたかも自分も 今
そこに かけつけたかのように
みんなに合流してみせたんだ
そして みんなと同じように
ゲタを履いて 回廊を降りたんだよ
ゲタが足りなくなると
分かっていても
犯人は
履かなければならなかった
なぜなら 犯人だけが あのとき
何も履かず
素足で舞台に向かったんだからね
た… 確かに
不可能なことじゃないけど
いいえ 不可能です
その屋根つきの回廊を
通れるわけがありません！
なぜなら その扉は
あのとき開かなかったんです
間違いありません
ええっ？
じゃあ
どうして 今 開くんです？
それは さっき
ツバメの巣を取ったからですよ
ツバメの巣が あったために
この扉は
ずっと開かなかったんです
見たんですか？
あのとき 本当に
ツバメの巣があったのを
え…
簡単な からくりだったんだよ
前もって
この八雲館を訪れた犯人は
回廊の内側から細工して
扉が開かないように
しておいたんだ
長い間 使われていない扉が
開かなくても
主人の玄武さんが
放っておくことも分かっていた
あの日も 俺たちは
まんまと犯人の計画どおり
この扉は開かないと
思い込んだんだ
夜になってから 犯人は
反対側から ここに やってきて
細工を外し
扉が開くようにしておいた
そして 何らかの方法で
深夜零時に停電を起こし
再び扉が開かないようにしてから
舞台に かけつけたんだ
あとは 事件が収まり
誰も いなくなったあと
ツバメの巣を
はりつけておけばよかった
みんなは 犯人の思惑どおり
扉は ツバメの巣のせいで
ここ最近
ずっと開かなかったんだと
思い込んでしまったんだ
こうして犯人は
あのとき 自分が ずっと
みんなと一緒に
行動していたかのように
錯覚させることに
成功したんだよ
それじゃあ 犯人は…
この中に？
ああ その人物は
乾教授の遺体が 半年前から
あの滝つぼの中にあることを
知っていたのさ
フミに後をつけさせることにより
滝つぼに目を向けさせた人物
じゃあ あの頭がい骨は
ああ
きっと 作り物だったに違いない
お前の注意を引きさえすれば
ホントは何でもよかったんだよ
金田一君
誰が犯人だって言うの？
そこまで言うなら
ハッキリ言ったら どう？
犯人は 俺が おぼろげに
想像していた人物だったよ
だが その名前をハッキリ
教えてくれた人物がいたんだ
黄泉の国の死者だよ
黄泉の国からの死者が
ヤマタノオロチの正体を教えてくれたよ
差出人不明の手紙によって
集められた
８人の精霊の子孫たち
そして その運命
時を超え この出雲でよみがえった
もう一つの神話
その裏には ある人間の
悲しい過去が隠されていた
でも
俺は あえて その正体を
暴かなきゃならない
真実のために！
金田一少年の事件簿…﻿炎に飲まれた 青山龍子
滝つぼに沈んだ 乾英基
オロチの墓では 白井教授が
出雲精霊伝説をめぐって起きた
連続殺人事件
その謎の すべてが
ついに明かされるときがきた
黄泉の国の死者が
犯人を教えたって？
一体 どういうことですか？
教えてください
まず
最初に疑問に思ったことがある
あの朝
白井教授が 突然
オロチの墓を発見したのは
なぜか？
白井教授の
ポケットに入っていた封筒だ
そして これが 教授の持っていた
オロチの墓の地図だ
折り目が
こうして重なることから
地図は この封筒で
送られてきたのに違いない
差出人は ｢朱雀斎助｣
朱雀？
殺された朱雀から
白井教授に
送られてきたって言うの？
白井教授は 日付を見て
朱雀が 死ぬ前に
投かんしたと思ったんだろう
たぶん 教授と朱雀は
顔見知りだったんだ
そして 白井教授には
朱雀が 本物のオロチの墓の
地図を送ってきたと信じる
何らかの根拠があった
だが 恐らく これは
犯人が 朱雀の名前を使って
送ったものだ
白井教授を
あの遺跡に誘いこむためにね
それじゃ…
ああ 恐らく あれは
本物の遺跡じゃないはずだ
そうとも知らず
教授は遺跡に向かった
自分が歴史的大発見を
成し遂げるところを
第三者に証言させるために
わざわざ 俺たちを連れてね
しかし 遺跡の中で
待ち受けていたのは犯人だった
あのとき かけつけた俺は
時計の針が
止まっていることに気づいた
実は あれは 倒れたショックで
止まったんじゃなかった
どういうこと？
時計の竜頭が飛び出していたのさ
えっ？
つまり 白井教授は死の間際に
竜頭を引っ張り出し
わざと 針を止めたんだ
まさか それは…
そう
恐らく 時計の針が指していた
時刻こそが
白井教授の
ﾀﾞｲｲﾝｸﾞﾒｯｾｰｼﾞだったんだよ
針が指していた時刻って
まさか…
ああ これさ
方位図の方角には ８人の精霊の
一人一人の名前が含まれている
つまり
白井教授は 時計の針を使って
ある人物の名を
示そうとしたんだ
その人物こそ
教授を殺した犯人に違いない
そして その犯人は
この中にいる
俺が その人物に
違和感を感じたのは
あの火事の夜以降の
チグハグな行動だった
どういうこと？
ああ　あの夜 その人物は
能舞台に
ガソリンをまいて 細工し
完全に舞台が
燃え上がるようにしていた
そこまでは よかったが
そのあと 大きなミスを犯した
そ… それは？
その人物は
俺が最初に会ったときは
普通に右手を使っていたのに
あの火事の夜以降
なぜか ぎこちなく
左手だけを使ってたんだよ
まるで ケガでもしている右手を
かばうかのようにね
前にも言ったけど あの夜
火事の最中に
何らかの アクシデントが起きた
それによって その人物は
火事の最中に右手を負傷したんだ
そして
その傷を隠そうとしたために
ついつい 右手を かばい
利き腕が変わってしまったように
見えたのさ
教えてくれ
白井教授の時計の針は
何時を指していたんだ？
10時52分
10時52分？
あなたが…
ええ？
そんな… 私は
違います
犯人は あたしです
これが その証拠
すべては 私が したことです
あなたは 分かってらしたのね
私が こうして名乗り出ることも
あ…
どういうことだ？金田一
時計の針が指していたのは
本当は ７時35分だった
つまり 南西の坤田さんを
指していたんだよ
乾には悪いことをしたと
思ってるよ　けど
たったひとつの 決定的な証拠が
犯人自身の体の一部で
決して 人目に
つかないものだとすると
俺は どうすることもできない
というより 本人に みずから
名乗り出てほしかった
あの遺跡の造りから考えても
あのとき 乾は
絶対に犯人の姿を見ているに
違いなかった
なのに
乾は 明らかに犯人をかばった
でも 俺には
分かるような気がするんだ
俺だって
そうしてたかもしれない
あのとき… あのとき 俺は
これまでになく
とても やさしい気分に浸れた
自分が とても温かくなれるのを
感じてたんだ
そんな
そんな人だからこそ 俺は…
だから
どうしても 本人の口から
本当のことを
言ってほしかったんだよ
金田一君？
あっ！
ああ…
本当に
父は 殺されたんですか？
ええ
でも…
あなたが なぜ 父のために？
あなたは
何も知らないほうがいいわ
え？
こんなことに
関わり合いになっちゃ
いけないわ
もっと 自分のことを大切にして
お父さんの分まで
しっかり生きていくのよ
母さん？
え…
父から聞いたことがあります
ある人を
ずっと捜し続けていたと
父が捜していたのは
あなただったのね！
捜し続けた人？
金田一さん
その先は 私がお話ししましょう
すべては 40年前
私と あの人が子どものころ
すでに
始まっていたのかもしれません
乾家と坤田家は 出雲に古くから
続く家として知られていました
両家は精霊の末えいであることを
世間には秘密にしながらも
親しく行き来しており
私と乾英基は
幼いころから
きょうだいのように育ったのです
彼は そのころから
出雲の神々に夢中でした
土蔵の奥に
ぎっしり詰まった古い物語を
繰り返し 私に
聞かせてくれたのです
あたしたちは空想の翼で
時間を さかのぼり
スサノオノミコトや
クシナダヒメと遊びました
それは はるか古代を
二人で冒険するような
夢の時間でした
これは なに？
精霊文書だよ
精霊文書？
オロチとか スサノオノミコトとか
古い時代のことが
たくさん書かれてるんだって
でも 暗号みたいになってて
誰も読めないんだ
ふーん
僕は いつか解読するよ
そして 出雲王国を見つけるんだ
そしたら いちばん最初に
君を連れて行くからね
約束だよ
うん
彼の情熱は年を経ても
色あせることは ありませんでした
そして 私たちの心も
いつしか通い合い
一つになっていったのです
しかし
精霊の血筋である私たちは
別々に
子孫を残さなければならないと
さだめられていました
まもなく 身ごもった私は
乾の子を産んだのでした
そのことは すぐに
彼の両親にも知れてしまい
私たちの子を
連れ去ってしまったのです
断じて許さん！
坤田の娘とは
結ばれてはならぬ運命なのだ
乾と坤田が
別々に子孫を残さなければ
精霊の歴史は
終わってしまうのだぞ！
ならば 私は この家を出ます
私の妻は 彼女…
勝手は許さん！
私は 彼に行き先も告げず
故郷を離れました
そして 小さな町で
子どもたちに書道を教えながら
ひっそりと歳月を重ねたのです
そして 独り身を守り
50を迎えたとき 私は病に侵され
余命いくばくもないことを
知りました
そのとき 私の心の中に
長い間 せき止めていたものが
あふれ出したのです
会いたい…
たった ひとりの娘に
最後に 一度だけ
友代？
あなた
友代
あなた！
ああ…
私たちは 時が経つのを忘れて
語り合いました
友代 私は精霊文書の すべてを
解読したんだよ
見つけたのだ オロチの墓を
そして 出雲王国を
何ですって！
まだ 公子にさえ
話していないんだよ
まあ どうして？
約束したじゃないか
いちばん最初に 君を連れていくと
行こう 出雲へ
奇跡が舞い降りたのです
私たちは 翌週末
出雲で会う約束をしました
幼いころからの夢が
ついに かなうのだと
そう思っていました
しかし 出雲で
私たちを待っていたものは…
それじゃ あなたは
どうあっても あたしたちには
オロチの墓の在りかを
教える気はないのね？
困った人ね
あたしはね この朱雀と組んで
出雲で数十億という金を
動かそうとしているのよ
オロチの墓や 出雲王朝の遺跡を
さらに数多く
発掘することができれば
この出雲を中心に
古代史ブームを起こすことが
できるはず
そうなれば 何十万　いえ
何千万という人が出雲を訪れるわ
ここに 高級ホテル数棟を含む
一大リゾート施設を造れば
出雲は 底知れぬ金を
吸い込むことになる
その関連株を買いあさっておけば
ばく大な利益を
手にすることもできる
贈収賄スキャンダルで
政治生命が危ぶまれている
青山先生としては ぜひ この
出雲開発プロジェクトを
成功させて
もう一度
息を吹き返したいとこですな
あなたにも 好きなだけ研究を
続けさせてあげるって
言ってるのよ
欲しい額を言って
１億 ２億？
あなた方の考えは
受け入れられない
はっ
君は 千数百年前に命じられた
｢使命｣とやらを
いまだに
守ろうとしているのかね
人知れず
オロチの墓を守り続けよという
あれか？
バカバカしい
そんなこと 本気で
考えていたわけじゃないでしょ？
そもそも 精霊伝説自体
アンタの作り話じゃないのかい？
フッ 乾君　どうあっても
教えたくないと言うなら
せめて
精霊文書を渡してもらえんかね
言え　精霊文書は どこだ？
断る！
なに？
私は精霊だ
この出雲の地を汚すようなことに
手を貸すわけには いかない
あなたたちは
もはや 精霊ではない
オロチに心を乗っ取られた
卑しき妖怪だ！
ああっ…
アアーッ！
ああ… アハハ
さ… さすが 白井先生だ
し しっかりと自殺に見える角度で
撃ちましたねえ
ああ… だが ここなら乾君も
一生 見つかることはないだろう
何てことするのよ！
え？
精霊文書を奪ってから
始末するって言ったでしょ！
これで オロチの墓を
見つけられなくなったわ
ヘヘヘヘ 心配は無用ですよ
今ごろ
私の知り合いの若いもんが
ヤツの研究資料を
盗み出しているはずです
そこで
精霊文書も手に入るでしょう
あれさえ手に入れば
私が オロチの墓を突き止める
なるほど そういうこと
先生は
歴史的大発見をした教授として
学会での地位も
ますます 向上するわけですな
けど 教授先生ともあろう人が
とんだ飛び道具を使ったものね
私の知り合いの オモチャでしてね
約束したじゃないか
いちばん最初に 君を連れていくと
行こう 出雲へ
精霊よ
思い知ったか 精霊よ
お前たちも しょせん
汚れに まみれた人間なのだ
清らかな魂など この世に存在せん
人は 欲望の海で のたうつ
生き物なのだ
違う！
あの人は… あの人だけは違う
フッフフフフ
ヤメテー！
目を背けるな
しっかり見るがいい
お前の心を覆い尽くす 憎しみを
ヘッ やっぱり お前か
こんな手紙 送りつけて
一体 何を たくらんでいるんだ？
えっ　お前 まさか…
ヘッ そんなわけないな
それより 精霊文書が
どこにあるのか教えてくれよ
いくら捜しても見つからないんだ
青山さんや白井教授も
困ってるんだよ
アンタなら知ってるはずだしな
ヘヘ 分かってたんだぜ
乾英基と アンタの関係
ヘッヘヘヘヘヘヘ
ヤマタノオロチ
えっ？
ウワーッ！
人の心に巣くう 醜いもの
ヤマタノオロチは その象徴でした
精霊は それに打ち勝つ
清らかな魂の持ち主でなければ
ならなかったのです
なのに 憎しみの炎を
燃やしてしまった私の心は
オロチを 受け入れてしまった
あたしこそ 精霊の誇りを
汚してしまったのです
ごめんなさい 公子
お母さん！
坤田さん
救急車を
あっ あ… ハイ！
あ…
すべてを終えた坤田友代の
体からは
魂が抜けてしまったように見えた
そして その10日後
不治の病に侵されていた彼女は
静かに永遠の眠りについた
金田一君　これ
あ？
これは…
そう 死んだ父が
母さんに宛てて書いた
手紙だったの
そうか…
でも そんな大事な手紙なら
そうよ
大切に しまっておいたほうが…
いいの
読んでみて 金田一君
ああ
友代　私は 今
君に再会した その夜に
この手紙を書いている
16年ぶりに
君のほほに触れた その手で
君のいない長い年月
私は 出雲王国を探し続けていた
かつて この地を かけめぐった
王たちの姿を追い続けたのだ
たった一人で 孤独と闘うとき
私は 遠い日の記憶を
呼び寄せたものだ
そのとき
イザナギノミコトは見た
暗い闇の中で
妻のイザナミの体から
虫が わき出ているのを
怖い…
あのころ 私は
小さな英雄だった
恐ろしい魔物や 悲しみの涙から
君を守るのだと胸に誓っていた
あれから長い年月が過ぎ
私は 君との約束どおり
ついに
精霊文書を読み明かしたのだ
精霊文書には 私たちが
想像していた以上のことが
書かれていた
もし 発表されれば
騒然たる議論を巻き起こし
激しい論争の的になるだろう
今は まだ そのときではない
研究が進み
いつか その内容が証明され
真の歴史が明らかになる
そのときまで
精霊文書は眠り続けるだろう
そして 今
若い二人は結ばれようとしている
精霊同士 禁じられた愛を
誰も止めることなどできない
私たちと同じ悲しみを
繰り返してはならないのだ
たとえ 子孫が途絶えたとしても
何千年の歴史よりも
たったひとつの愛を
祝福してやりたい
千八百有余年
精霊たちは歴史の裏側で
生き続けてきた
その歴史が 終わろうとしている
あとは 若者たちが
受け継いでいくはずだ
友代　私たちは どうして
こんな遠回りをしてきたのだろう
ここに 安らぎの時が
訪れることも知らずに
私は 君の精霊になる
そして 君を守り続ける
ずっと 永遠に
ここに 一枚の写真がある
失われた時間の中で生きた二人は
出雲の空の下で
永遠に眠り続ける
金田一 明智警視が
ロサンゼルスでの活躍を
話してくれるそうだぞ
あ… 俺 いい
いつもの自慢話だろ？
まあ そう言うなって
今度は 警視の趣味である
チェスの世界選手権に出るため
訪れたラスベガスで
ある事件を ロス市警の女性刑事と
捜査する話だそうだ
女性刑事って 金髪？
かもな
まさか 明智さん
そのパツキンの刑事さんに
チェックメイトしたんじゃ？
金田一少年の事件簿…
謎はすべて
うーん
おっさん 考えるのも
ほどほどにしてよ
男なら ぱしっといかなきゃ
ぱしっと
うん うーん
おなかすいたなあ
おっさん まだー？
えーい ままよ
おっと 剣持君
愚かなまねは よしなさい
うーん
そのポジションでは
８手先にルークを取られ
９手目でチェックメイトです
おいおい 明智さん
これは真剣勝負なんだぜ
口出ししないでくれる
単に お昼ごはんが
かかってるだけでしょう
そもそも何だよ
ルークにチェックメイトって
そりゃあ 将棋じゃなくて
チェスだろう
将棋もチェスも
もともとは
インドのチャトランガという
ゲームからきてるんですよ
基本的ルールは同じです
でも チェスって
コンピューターが
世界チャンピオンに
勝ったことがあったんじゃない？
まあ 機械に負けるようじゃ
それだけ将棋より
単純ってことだろうな
それは違います コンピューターと
対戦したカスパロフは
機械に負けるわけには
いかないという
プレッシャーに沈んだのです
んなこと言って
あんた どれだけチェスのこと
知ってるわけ？
これでも 昔からチェスを
たしなんでいましてね
私なりに知ってるつもりですよ
チェスというゲームの
すばらしさと 恐ろしさをね
また
またー
明智警視の華麗なる推理
イン ラスベガス
ムカッ
そう あれは私が
ロサンゼルス市警察に
研修のため
出向いていたころのことです
世界よりお越しの
チェスマスターの皆さん
今宵はこのパーティーに
ようこそ
世界選手権も本日で
日程の半分を消化いたしました
勝者も敗者も
戦いは盤上でのみ
今宵はお互いを
たたえ合おうではありませんか
舟木君
舟木君
うん？やあ
今日は惜しかったなあ
君が勝つと思ってたんだけど
相手が元チャンピオンの
ケネス･ゴールドマンじゃ
しようがなかったかな
ちょっと失礼するよ
気になることがあるんだ
おっ 舟木君
ああ 舟木さん
エヘッ 負けたのが
よっぽどショックだったんですね
みんなも舟木さんの方が
有利だと見て
かけ率はずっと上でしたからね
金田君 君はどうだった？
私は１回戦で舟木さんに
惨敗です
うん？ケネス･ゴールドマンだ
舟木さんも 負けたからって
逃げ出すことないのになあ
んっ あっ 君か
おめでとう 健悟
ウフフフフ
準々決勝まで進出ね
パット どうしてここへ？
あなたの居場所くらい
知らないわけないじゃないの
じゃあ 私はこれで
きちんと休暇届は
出しておきましたからね
私が言いたいのは
ロス市警の敏腕刑事であり
私のワーキングパートナーである
ミス パトリシア･オブライエンが
どうして ここに
いるのかってことです
あなたを応援するため
というのは 半分冗談
半分本音
私もバカンスなの 驚いた？
カーッ 冗談じゃねえよ
まーた自慢話かよ
いけませんね
話は最後まで聞くものですよ
んっ 何かあったんですか？
翌日の夕方
試合が始まる前だった
おれはあんたに自首を
勧めてるんだ
言い訳を聞く気はない
んー ま 待ってくれ 舟木
あんたは
こんな汚いからくりで勝ったんだ
あんたに
チェスを打つ資格なんてない
あんたが話さないんなら
おれがチェス連盟に告発する
まっ 待ってくれ
見苦しいぞ
ああっ
ああ うっ
あっ
ああ あー
ああ あっ
だ 誰か ああ
ううっ あー
神よ お許しください
だが こんなところで
破滅するわけにはいかない
必ず優勝しなければ
あと30分で
試合が始まってしまう
こいつを何とかしなければ
あっ
ミスター舟木
そ そうだ
何の用かな？
ご予約どおり
ルームサービスをお持ちしました
失礼します
まっ 待ってくれ
今 チェスの戦法を考えるのに
集中してるんだ
食事はそこに置いといてくれ
かしこまりました
日本人は妙なものを
食べるんだな
まずい 時間が…
うっ
何でこんなに強く握ってるんだ
くーっ 取れん
そうだ
もしも私が運命の神に
見放されていなかったら
これで疑いを
そらせるかもしれない
さあ 準々決勝はフランスの新鋭
ジャン･モノリスと
ベテランプレーヤー
ケネス･ゴールドマンの対決です
ゴールドマンの本業は
ホテル経営
今大会では 数年来の
スランプを脱して絶好調です
優勝争いのダークホースと
言われています
やっぱりゴールドマンが
優勢なの？
今のところは
ゴールドマン Ｆ３
おおっ 悪手だ
どうかなあ
遠回しに打つ戦略かもしれないぜ
どうするかなあ
おれなら ああするけど
ゴールドマンは
どうしてあんなひどい手を？
いや
えっ？
ゴールドマンが優勢なのは
変わりませんよ
うーん
ここラスベガスでのチェス大会は
選手にギャラリーが
かけ金を乗せています
今 勝ち残っているプレーヤーの
誰が優勝しても
オッズは８倍から10倍
チェックメイト
おおっ ああ
試合終了
ケネス･ゴールドマンが
ジャン･モノリスを破り
準決勝へ進みました
うーん
健悟 あなたの
予想どおりだったわね
で 何があったんだい？パット
えっ？
さっき こっそり
席を外しただろう
君が事件を嗅ぎつける勘は
超一流だからね
うーん 実はそうなの
試合を控えたあなたには
悪いんだけど
凶器は多分
電気スタンドと思われます
しかし どこからも
指紋は採れてません
ああっ 舟木
あなたのお知り合いだと
聞いたけど
チェスの古い友人なんだ
お気の毒だわ
ああっ？
うん？握っているのは駒ね
この駒はポーンだ
逆さだから わかりにくいけれど
ポーンを逆さに？
これは私への
ダイイングメッセージだ
舟木 君は私が
捜査に乗り出すことを予測して
この駒の配置 昨日の試合で
舟木が負けた時のかしら？
いや この棋譜は さっきの
モノリスとゴールドマンの
試合のものだ
ああ あのひどい手？
明日の準々決勝…
テレビを見ながら試合を
再現していたのね
じゃあ この手が打たれた
時間を調べれば
犯行時刻も割り出せる
その時刻なら覚えてる
６時を過ぎたあたりだ
ということは ６時過ぎに
アリバイのない人間が
犯人ってことね
そして このホテルは
入り口のチェックが厳しいから
外部の人間による
犯行の可能性は低い
ルームサービスを
運んできたのは 君ですか？
は はい ５時にルームサービスを
予約なさっていたので
その時 舟木に会いましたか？
いえ 廊下に置いておいてくれと
うーん で サインは？
すいません
お取り込みの様子でいらしたので
あっ 妙だな
舟木はフロントに
注文した時点では
これをすぐに
食べるつもりだったはず
ねえ 健悟 ちょっと聞いて
えっ？
日本の将棋では
ポーンにあたる駒を
｢歩｣っていうんでしょう？
ああ よく知ってるね
その歩は 敵陣に入ると
裏返って金になる
確か 金ってこう書くのよね
この字が名前に
含まれている人物が
確か 選手の中にいたはずよ
だから言ってるだろ
おれじゃないって
弁護士を呼んでくれ それまでは
何もしゃべらないからな
ショーヘイ･カネダ
彼は一回戦で舟木に負けたのよね
そのことで舟木を恨んでたかも
おまけにアリバイもないし
逆さまの
ポーンが
ダイイングメッセージなら
ねえ パット
えっ？
ケネス･ゴールドマン 彼も
念のため事情聴取したいんだけど
ウッフフ ゴールドマンを？
彼にはアリバイがあるじゃない
彼とモノリスが試合をしている
時に 舟木は殺されてるのよ
お作りします
それに ゴールドマンは
舟木に勝ったんだから
動機だって
負けたのならわかるけど
やっぱり本命は金田よ
どう？これから金田の逮捕状を
取るよう 州警察に言って
いや パット
もう少し待ってくれないか
えー？
私はまだ
納得のいく答えを見つけていない
この事件の真相は 私自身の手で
はっきりさせたいんだ
私にダイイングメッセージを
残して死んだ 舟木のためにもね
ふーん オーケー
あなたの意見を尊重するわ
ねえ パット
私の頼みを聞いてくれないかな
えっ？
なーあ もってもてで
結構ですねえ
はじめちゃん うるさいわよ
ウニャー
ねえ それからどうなったんですか
いやだわ 殺人事件なんて
ケネス あなた
何か関わってるんじゃ
ないんでしょうね
ばかなことを言うんじゃない
それより
次の準備はできてるのか？
えっ ええ できてるわ
でも こんなことして
ほんとに大丈夫なの？
もし ばれたら 私たち
大丈夫 うまくいくさ
何て言ったか
舟木の仲間の日本人が
嗅ぎまわっているとは
聞いてるが
誰も本気にはしとらんよ
あなた…
やあ
あっ
ゴールドマンさん
ここは あなたが経営する
ホテルだそうですね
ええ えー そうです
ところであなたは確か
ミスター…
明智です
チェス選手権に参加しております
ああ ああ 明智
ケネス･ゴールドマンです
ああ よろしければ どうぞ
なるほど 会場のホテルで
お会いしないわけだ
朝食はこちらで
召し上がってらしたんですね
このホテルは
会場からこんなに近いんだ
競技会場からもよく見えますね
アハハハハ ええ まあ
ああ 紹介しよう えー こちら
おやっ ひょっとして
こちらは
コンピューターエンジニアの
アニタ･ロビンソンさんでは？
え？ええ
どうして私のことを？
あっ
コンピューターについては
チェスと同じくらい
興味があるものですから
確か 去年パソコン雑誌の
インタビューを受けてらした
シリコンバレーの会社の
優秀なシステムエンジニアとして
ああ でも もうあそこの会社は
やめましたの
そういえば ゴールドマンさんも
同じ会社にお勤めでしたね
おおっ
同僚の方たちと一緒に
写っている写真を拝見しましたよ
お二人は その頃からの
お知り合いで？
エッヘヘヘ えー まあ
ああ そうそう
朝食はまだなんでしょう
どうです ご一緒に
ありがとうございます
日本食はありますか？
申し訳ない 日本食は
私 全く食べたことがなくて
ホテルのメニューにも
コンチネンタルか
アメリカンブレックファストしか
載せてないんですよ
それは残念
コーヒーをいただきましょうか
ところで ミスター明智
失礼ですが どんなご用件で？
実は私 この記事にある
被害者 舟木の友人で
アマチュアの
チェスプレーヤーのかたわら
殺人課の刑事もしています
はっ！
できれば ゴールドマンさん
チャンピオンの経歴もあり
チェスに造詣の深いあなたに
捜査のご協力を
お願いしたいのですが
はっ 何ですって？
私は日本人ですし
西洋人である あなたほど
チェスを理解していません
お願いします ゴールドマンさん
なっ
ああっ
わかりました
チェスのことなら何なりと
ありがとうございます
と言ったばかりで
申し訳ないのですが
ホテルの仕事があるので
これで失礼しますよ
まっ どうぞ ごゆっくり
後ほど 会場で
コンピューターに
興味があるだなんて
例のこと 嗅ぎつけたんじゃ
そんなはずはない
ああ もうこんなこと
早く終わらせたいわ
かけ金さえ手に入れば あなたの
離婚話も決着がつくんだし
そうすれば 私たち…
当大会も いよいよ大詰めを迎え
ただ今 準々決勝が
展開中であります
この試合は
全くノーマーク同士の対戦です
スペインの新星
カルロス･ロッシュ対
本職の刑事という 異色の
肩書きを持つ ケンゴ･アケチ
明智は強いぞ
おれが勝てなかったんだからな
いやいや カルロスの奇跡を
もう一度信じようぜ
チェックメイト
おー
あっ
おや ちょっと待ってください
この棋譜は
昨日のゴールドマン対
モノリス戦と
全く同じですね
ホントだ
こんなことってあるのか？
偶然だよ 偶然
とっさの思いつきとはいえ
あのアリバイトリックは
最高の出来だった
あんな チェス駆け出しの若造に
見破られるはずはない
おめでとう 健悟
いよいよ準決勝じゃない
あ ああ
でも チェックメイトの形が
ゴールドマンと同じパターン
だったのは 偶然？
いいや 必然さ
え－？
ところで
頼みは聞いてくれたかい？
ええ 経営状態は
あんまり芳しくないようよ
ゴールドマン対舟木戦の時の
ホテルの宿泊状態よ
西側の客室は ほぼ満室なのに
東側の客室には
一つもリザーブが入ってないのよ
どう考えても 奇妙でしょう
これは…
おめでとう
ミスター明智
ああ ゴールドマンさん
明日の対戦を楽しみにしてますよ
こちらもです
それにしても さっきの試合
偶然にも 私と同じ
棋譜で勝つなんて
神のお導きかな
ああ
偶然でも 神のお導きでも
ありませんよ ゴールドマンさん
うん？
あれは 私からあなたへの
ちょっとしたメッセージですよ
私へのメッセージ？
ワハハハハ
もし私を疑ってるのなら
それはお門違いというもんですよ
あの日 このホテルにいた人間は
みんな疑わしいと思っています
神と舟木に感謝しなくては
ならないでしょうね
あの試合が
私の不動のアリバイとなって
無関係を証明して
くれてるんですから
不動のアリバイ
でしょうか？
パット 行こう
えっ？
失礼します ゴールドマンさん
今夜は彼女と祝杯をあげたいので
まあ フフ
どういうつもりなの？
バーはここ
どこ行くのよ
まあ いいから
わあ きれい
やっぱり そうか
えっ？
だから舟木は 殺されなければ
ならなかったんだ
えっ えー？
謎はすべて解けましたよ
次回はいよいよ解決編だな 金田一
また明智警視
犯人のｱﾘﾊﾞｲﾄﾘｯｸの謎も判明
また自慢話
あの美人刑事との関係
またキザなセリフ
そうだ 次回の放送は中止だ
おいおい 無茶言うなよ 金田一
何だよ おっさん
まだ 明智さんの自慢話を
延々聞かされたいのかよ
おれは断固 阻止するぜ
じっちゃんの名にかけてな
金田一少年の事件簿
明智警視の華麗なる推理
イン ラスベガス
ファイル２﻿ラスベガスで行われた
チェス世界選手権
優勝候補だった
舟木敏朗が殺害された
犯人は 同じチェスプレーヤーの
ケネス･ゴールドマン
彼は あらかじめ
チェス盤に駒を置き
その棋譜を試合で再現することで
偽のアリバイを成立させた
ご存じ キザな明智警視が
アリバイトリックの謎に挑む
そして ラブアフェアの行方は
あっ どうなっても
関係ねえっつうの
｢明智警視の華麗なる推理
イン ラスベガス｣
おっ おいー
これが ダイイングメッセージ？
そっ
チェスのポーン つまり
将棋の駒でいうと 歩だな
それを反対に
持っていたということは
裏返って 金となる
ふーん
何だ しっかり聞いてたんじゃん
えー とと 当然だ
ははーん パツキンの
ねえちゃんが気になるんだろ
なっ 何を言う
純粋に事件の解決に
緻密な整理をだなあ
ヒヒヒヒヒ
でも 肝心の動機が
わかんないのよね
では お話ししましょう
なぜ ゴールドマンが
舟木を殺したのか
どうやって 私が彼のアリバイ
トリックを見破ったのか をね
アニタか 準備はできたのか？
ああ わかった
あと30分で開始だ 頼むぞ
ああ
ラスベガスの魅力は
光の反乱にこそある
そうは思いませんか
ミスター ゴールドマン
あっ
しかし
光がまばゆければ
まばゆいほど
闇は深いことも また事実
これは意外だ 刑事なんて
無骨なばかりだと思ってたら
あなた 詩人ですなあ
フフッ 大会事務局から
対戦表をもらったんですが
ゴールドマンさんのゲームは
すべて 夜の部なんですね
たいていの選手は
昼の部と夜の部が
半々にセッティング
されているはずなのに
ええ あなたもご存じのとおり
私にはホテル経営という
本業がありましてね
昼間の対戦は
避けてもらったんです
なるほど
他の選手はコンディション作りに
苦労するのに 私だけ不公平だと
おっしゃりたいのかな？
いいえ そうは
今はお客もかき入れ時で
なるべく仕事に
穴を空けたくないんですよ
あなたのように 休暇を
取るわけにもいかないんでね
おお そういえば 連れの
美しい女性はどうしたんです？
パットですか？
夕べは非常に仲むつまじい
ご様子でしたな
彼女は用事がありまして ちょっと
おおっと失礼
これは立ち入ったことを
それにしても 応援がないのは
寂しいですな
アハハハハハ
ねえ お願い
反対側のお部屋でしたら
ご用意できますが
それじゃあ 困るのよ
ストリップ通りに面してなきゃ
そこからの夜景が見たいんだもの
申し訳ございません
もー
んっ？
チェックメイト
トーマス･ミドルトン
決勝進出です
ん？明智が
うーん
ダークホースが
優勝候補に立ったぞ
今年は荒れるな
準決勝の対戦相手は
ゴールドマン 元チャンピオンだ
過去の栄光さ ここまで
残れただけでも奇跡に近い
それはどうも
あっ
い いやー これは
き 期待しているよ
いい試合を見せて…
もちろん　だろ？
ミスター明智
ええ
もういいだろう あっ
ミ ミスター明智 おっ
んっ
おっ
ミスター ゴールドマン
席を替わっていただけませんか
か かまわんよ
おっ どうしたんだね？
正面に… ホテルの明かりが
正面に見えると
気が散りますので
おっ おお おお
私は気にならんよ
そんなことで 集中力は
散らんのでね
申し訳ありません
できれば
ベストコンディションで
戦いたいもので
ケネス･ゴールドマン対
ケンゴ･アケチ
いよいよ 準決勝開始です
ならいいわ
は はあ
ちょっとレストルーム借りるわね
あっ はい どうぞ
どうも
両者一歩も譲らず
淡々と戦いが続きます
おっ ここでゴールドマンの手が
止まったが
これは意外な一手
明智 苦しくなったか
メッセージと言ったね 確か
どういう意味なのかね
なぜ私の棋譜と
君の棋譜が一緒だったことが
メッセージになるんだ？
おわかりになりませんか？
ん？さあ わからないねえ
そうだ 昨日あなたのホテルで
コーヒーをごちそうに
なりましたから
夕食は私がおごりましょう
あっ ああ
すいませんがメニューを
はい
何になさいますか
任せるよ
ほんとかい ジョー
ああ うそなもんか
ナタリーは おれにモーション
かけてきたんだ アッヘヘ
現時点ではゴールドマンが やや
優勢か 明智の反撃が待たれます
健悟
どうぞ ゴールドマンさん
ああ
あっ
やはり日本食は
お口に合いませんか？
ああ ああ いや
そんなことはないんだが
それは良かった
では失礼して いただきます
おお
食事をし始めました 明智
心理作戦でしょうか
あ 失礼
そういえば 舟木の一件は
もう片が付いたのかね？
ええ ほとんど
ほー
舟木は あなたに殺されたんですよ
はっ ばかな
私は舟木との試合に
勝ってるんだぞ
どうして私が彼を
殺さねばならん？
その理由は あなたの不正です
なっ！
あなたは ひそかに
カンニングをしていたんです
舟木はそれを見抜いたため
殺された
なっ
何のことだ？
根拠はあるのか？そうでなければ
単なる誹謗中傷だぞ
ありますとも
そば湯が欲しいところですが
まあ いいでしょう
いい加減なことを言うのなら
名誉毀損で訴えますぞ
わかりました
今から説明しましょう
あなたのアリバイトリックの
からくりと
不正の方法をね
私は昨日の
あなたがモノリスとの試合で
残した棋譜を
意図的に再現してみせました
あなたも モノリスに対して
同じことをしたのでしょう？
ふーん
その試合で
あなたがチェックメイトの
チャンスを あえて
やり過ごしたのを見ました
なぜ？
モノリスはあなたに比べ
明らかに格下のプレーヤー
それがどうしたのかね？
同じことをしたとは
その試合の投了図は
20数年前の名プレーヤーの
棋譜と全く同じでした
そして あなたは格下の相手に
巧みに駒を操り
それをそっくり
再現してみせたんです
はっ たまたま そういうことも
可能だったというだけで
可能だということは
あなたのアリバイが
崩れるということです
おー これは明智 絶妙な一手
ゴールドマン どうかわすか
舟木の部屋にあったチェス盤は
舟木が あなたと
モノリスの試合を見ながら
並べたものではなく
試合の前 あなたが舟木を
殺害した後に並べたんです
そして 試合会場に出掛けた
危険な賭けでしたが
あなたは棋譜の再現に成功し
まんまと アリバイを手に入れた
ケネス
確かに 一応 筋は
通ってるようだな 明智
だが それはあくまで可能性だ
私がやったという証拠ではない
おお 形勢逆転
ゴールドマン優勢だ
明智 追い込まれたか
君は 有力容疑者の
金田をかばうあまり
私を犯人に仕立て上げようと
してるんだろう
日本人の同胞意識というのは
すさまじいもんだなあ
はっ どうだ
反論はないのか ミスター明智
何とか言いたまえ
反論なら たくさんありますよ
うん？
まず 私は日本人でも何人でも
犯罪者をかばうつもりは
ありません
ご存じですか？漢字の金は
ゴールドを意味するんですよ
舟木は 外国人のあなたには
決してわからず
日本人の私には
確実に伝わるメッセージを
とっさに残したというわけです
それに 犯人が金田なら
将棋はよく知ってますから
あのようなわかりやすい
ダイイングメッセージを
見逃すことはなかったでしょう
ん？おっ
なのに
そのまま残っていたということは
犯人が 将棋について
全く無知だったからにすぎない
つまり 犯人は
日本人ではないのです
はーっ
な 何と明智
思わぬ一手に出ました
またまた逆転です
そ そんな
す すごい
全く すごい戦いになりました
ケネス･ゴールドマン対
ケンゴ･アケチ
舟木は将来を嘱望された
チェスプレーヤーでした
死の直前でも
彼のすばらしいひらめきは
鈍ることはなかった
カーッ クッ
ふん おもしろい
実におもしろい仮説だ
だが 仮説は所詮
仮説に過ぎず
確定的な証拠にはならん
そうじゃないかね
あっ
ミスター明智
状況は明智に不利になりました
勝利の女神は
ゴールドマンにほほ笑むのか
良かったのよ これで
君の話は実におもしろかったよ
真剣勝負の合間に
こういう話をするのも悪くない
だが それももう終わりだ
23手先に 君のキングは
私のポーンの前に
ひれ伏すのだからな
ミスター ゴールドマン
ん？観念して投了するかね？
いえ
ひれ伏すのは あなたです
チェック
はっ
あっ まさか！あり得ないわ
あっ
アニタ･ロビンソン そこまでよ
ああ！ケネス
お 驚きました
明智の放った見事な一手で
チェックを掛けられた
ゴールドマン ついに
追い込まれました
信じられん この手は…
アニタ どうした？
まだか おお…
あの 失礼します
な 何だ
試合中だぞ じゃまするな
すいません
ミスター明智に
何だ
私に何か？
パトリシア･オブライエン様より
緊急のご伝言が
試合が終わってからにしろ
プレーヤーは誰の忠告も
受けてはならないというのが
基本ルールだろう
しかし たった一言なんですが
一言？
はい イエスと
何だそれは？
すみません ゴールドマンさん
彼女には 本業の方で
一つ調べ物を頼んでおいたもので
冗談じゃない 認められんぞ
明智は明らかに試合の進行を
妨害し 外部と接触した
それはあなたです
ゴールドマンさん
もはや あなたがうそを吐き続ける
理由はありません
なっ！
逃げ道はすべて ふさがれました
おおっ クッ
おお
ケンゴ･アケチ 決勝進出決定
実にマーベラスな
勝利と言えましょう
ゴールドマンさん
もういいでしょう
あなたの再生がかかった
この試合に負けた以上
あなたが罪を犯した意味も
なくなるのですから
ん？
あなたの経営するホテルは
赤字続きで
早急に資金を必要としていた
そこであなたは 優勝が誰かを
かけるチェス賭博に目を付けた
スランプ続きのあなたに
かける人は少なく
優勝すれば
かなりのオッズが期待できる
自分で自分にかけ金を積み
確実に勝つために
カンニングを行うことにした
しかし その不正行為に
舟木が気付き
怒った舟木は あなたを問い詰め
思いあまったあなたは
彼を殺害した
私は断じて不正などしていない
この部屋には係員がいて
試合はモニターで映されている
ボディーチェックも受けた
これでどうやって
カンニングができる？
それは
えっ？おい 見ろ
窓の外
あれは
ああっ
こういうことですよ
あの ジ･エンドマークは
あなたのパートナーからの
ラストメッセージです
あなたは優秀なコンピューター
プログラマーだったアニタさんと
共謀して コンピューターに
チェスをプレイさせた
そして 駒の動きを
あなたのホテルの
窓の明かりで再現し
窓越しに
カンニングしていたんですよ
カンニングぺーパーは
誰にでも見える形で
デカデカと表示されているのに
大きすぎて 誰も
気付かなかったというわけです
私は あなたの試合が
夜に集中しているのを疑問に思い
パットにあなたのホテルを
調査してもらったんです
そうしたら
この会場側に面している部屋は
すべて満室だと
言うじゃありませんか
経営難のホテルが 片側だけ
満室だなんて あまりにも不自然だ
犯人はあなたではないのか
で パットはイエスと
伝言をよこしたのです
カ カンニングと
殺人事件とは無関係だ
私が舟木を殺したという証拠が
どこにある？
証拠は 舟木が頼んでいた
ルームサービスですよ
何だと？
それは そばという
日本人には なじみ深い食べ物で
時間が経ったら まずくて
食べられない代物なんです
ところが ボーイの証言では
部屋の中の舟木は
顔も見せず
置いておいてくれと言った
日本人の舟木なら
そんなことを言うはずがない
すなわち 犯人は そばが
運ばれた時間にアリバイがなく
殺人を犯す動機を持ち
ポーンのダイイング
メッセージに当てはまり
そばという日本食を全く知らない
外国人ということになるんです
そばぐらい私だって知っている
これがそばだろう
チェックメイトです
ゴールドマンさん
あなたは今
自分が犯人であることを
自ら証明してしまったんですよ
えー！
あなたが指さしたのは
おにぎりというものです
そばは さっき私が食べていた
ヌードルです
つまり こういうことです
舟木が注文したのは
確かにそばでしたが
ホテル側は間違えて おにぎりを
運んできてしまったんです
中味と伝票を見たあなたは
おにぎりをそばだと思い込んだ
わかりますか ゴールドマンさん
日本食を知らない外国の方は
たくさんいます
しかし おにぎりとそばを
とり違えて覚えてる人は
あの時 殺害された舟木と共に
部屋にいた犯人 ただ一人
ああ… あっ
ハハハハ
おれは指示どおりに打った
おれはアニタとコンピューターに
裏切られたのか
それとも コンピューターに
おれが負けるように
仕掛けをしたのか？
いいえ 私は
いかさまで勝ち進んできた
あなたとの勝負には
興味はありませんでしたが
舟木を負かした
コンピューターには
少々 興味を持ちましてね
だから あえて
ホテルの照明を使ったトリックは
試合終了まで
放置してもらいました
ああ そ そうか
コンピューターに勝ったのか
はっ 何という男だ 明智
最後の起死回生の一手は
すごかった
どうして あんな手が打てた？
開き直りです
何だと？
実はあの時 負けるかも
しれないとは思いました
でも ただ負けるのは
いやでしたから
あー コンピューターは
してやられたわけだ
定石にない手で ハハハハ
おれがスランプに陥ったのは
そのコンピューターなのさ
数年前 おれを負かした
若いチャンピオンが
コンピューターに負けた時
むなしさに捕らわれた
おれを負かした人間が
コンピューターに勝てなかった
まして おれなんて
そして おれはいかさまをした
コンピューターに魂を売ってな
そうしなければ
勝てなかったんだ
だが おまえが勝ったのを見て
やっと吹っ切れたよ
まだまだ人間は
コンピューターより
上だってことがわかったからな
いつか あなたが復活なさったら
実力で対戦したいものです
それは遠慮するよ
おれはほっとしてるんだ やっと
チェスの呪縛から
逃れられるんだからな
健悟 アハッ
あっ
すごいわ 最高のチェスプレーヤー
最高の刑事
最高よ あなたって
パット
最高のパートナーに
カクテルを
ごちそうしたいのですが
ノー
んっ
私がごちそうするわ どう？
イエス
ねえー
あんたはコンピューター負かして
犯人捕まえて
美人刑事とラブラブってわけ？
けしからん 全くけしからん
で 決勝は？最後はどうなった…
飯だ 飯
あー ちょっと はじめちゃん
待って
明智さん 決勝は？
チェスのゲームなど
女性の神秘さに比べたら
まるでつまらないものですよ
あの夜のパットの瞳
ラスベガスのネオンよりも
さらにまばゆく
あたかも 宝石のように
輝いていました
え？もう片付けてもいいかね？
夏だ 水着だ 超ハイレグだ
おれのハッピーサマーって
思ってたら 美雪が殺人犯に？
流れるプールで起きた殺人事件
その半径５メートル以内に
いたのは美雪だけ
近くにいた医大生３人には
完ぺきなアリバイがある
だけど 美雪は絶対関係ない
おれが おまえの無実を
必ず証明してみせる
金田一少年の事件簿…
あー うほほほ
やっぱプールは ええなあ
美雪も新しい水着
買ったっていうし
ワンピースかなあ
ビキニかなあ
超ハイレグだったりして
金田一 さっきから
何１人で ぶつぶつ言ってんだ
ああ いやあ
独り言 独り言
だいたい なんでお前が
ここにいるわけ？
無料チケット
七瀬さんにあげたのに
かたいこと言うなよ
友達じゃんかー
なつくなよ
でも遅いなあ 七瀬さん
あいつ 時間に
うるさいのにな
あーあ　大丈夫？
ちょっと あんた
すみません
すみませんじゃ すまないわ
あれ 美雪じゃないのか？
えっ？
いったい どこ見て歩いてんのよ
あんたが突き飛ばしたから
ほら見てよ
コーヒー こぼしちゃったのよ
どうしてくれるの？
すみません
待ち合わせに遅れて
急いでたもんで
これ 日本じゃ発売されてない
超レア物なのよ
あんたみたいな貧乏人の
女子高生の
持てるもんじゃないんだから
そんなに大事なバッグなら
持ち歩かないで 家に
しまっておいたらいかがですか？
あんたにそんなこと
言われる覚えないわ
こんな人混みの中で
コーヒー飲みながら
歩くほうも不注意です
何ですって？
人にぶつかっておいて
その言い方は…
失礼な子ですねえ
澪さんのバッグ 高いのよ
うん 素直に
謝ったほうがいいね
どうした 美雪？
はじめちゃん
何なの あなた？
何かあったんですか？
この子 澪さんのバッグに
シミつけちゃったんだよ
ちょっと ぶつかって…
君たち友達なら一緒に謝ったら？
何それ
謝るだけじゃ すまないわ
弁償してよ 弁償
まあまあ 落ち着いて
それより こんなもの
落ちてましたけど
これ おねえさんのじゃ
ありません？
そんな小汚いぼろきれが
どうして 私の…
まさか それ 私の？
どうしたの 澪さん？
あっ 澪さん
どうしたんですか 澪さん
お前 昔から得意だよな
こういうこと
うーん またつまらん物を
すってしまった
はじめちゃん ありがとう
いやあ 軽ちん 軽ちん
でも こっちは
返しそびれちゃった
医学部　てことは
医者の卵　ウソだろ？
俺さあ このテンキーってやつ
嫌いなんだよね
入れた番号
すぐ忘れちゃうんだ
普通 忘れないぜ
誕生日とかに
しときゃあ いいじゃん
俺の誕生日 いつだったっけ？
えーと…
なんで そんなこと
俺が考えるんだよ
もう 忘れるならメモしとけば？
そうだな じゃ１２３４と
お待たせ
わお！
もう やあね
何 ジロジロ見てるのよ
ああ いやあ
トンネルの入り口で
注文したドリンク
出口で受け取れるのよ
なるほどね
あっ ほんとだ
待ってる 待ってる
俺 コーヒー
ありがとうございます
こちらコーヒーになります
どうぞ
私 オレンジジュース
こりゃいいね
トマトジュースです
ありがとうございました
また買いにいっちゃおっと
ねえ 澪さん
その時計のベルト 革でしょう？
水気は まずいんじゃない？
それにイヤリングも
うるさいわね
いちいち口出ししないで
あれ？見ろよ
さっきの連中だぞ
私の物なんだから
どうでもいいでしょう？
ねえ 四至本くん
日焼け止め 買ってきて
えっ？持ってこなかったの？
早くしてよ
日焼けしちゃうじゃない
あ… ああ 分かったよ
すげえ　あごで
こき使われちゃってるよ
あの イヤな女の人以外
腕章つけてるってことは
バイトなんだ
へえ みんなリッチな
医大生だと思ったのに
医大生だからって
金持ちとは限らないさ
辻村くん さっきこの水着と
同じの着てた子がいたわよ
えっ でもそれは…
日本にない
新作だっていうから
もらってあげたのよ
なのに
でも僕 お店で確かに
そう言われてさ
15万もしたんだぜ それ…
もう二度と着ないから
15万の水着？
なあにそれ
バカみたい
さあ行きましょう
第１駐車場
入り口付近にお停めの
赤いオープンカーで
お越しのお客さま
恐れ入りますが お車が
通行の邪魔になっております
至急 お車の移動を
お願いします
いやだ 私の車じゃない
めんどくさ
ちょっと 千花
あんた駐車場 行って
私の車 動かしてきてよ
でも 私 パラソルの
整理中だから
文句あるの？
分かったわ 行ってくる
まだやってるよ
超ものぐさ　嫌なやつ
ほら これ
テンキーの番号と鍵
車の鍵はロッカーの中だから
お願いね
行ってくるわ
わがままな人　最低ね
ああ ほっとけ ほっとけ
それよかさ 腹減ったなあ
えっ もう？
おーっ サンドイッチか
これ お前が作ったのか？
うまそう
でも なんか
腹こわしそうだな
薬飲んでから食おうかな
なあ 美雪？
どうした？
ああ ごめん
せっかくプールに来たんだから
あんなやつらのことは
忘れちゃえよ
そうだよ 楽しく食べよう
卵は俺だってーの
卵はダメだって もう
どうしたんだ 澪さん
顔が真っ青だよ
大丈夫？
なんかクラクラして気分悪い
バイト用の休憩室に
ベッドがあったわよね
ああ 仮眠用だけどあるよ
僕も行こうか
触んないでよ
こういう時
ベタベタされるの大嫌いなの
知ってるでしょ？
ったく 勝手な女だぜ
病院の理事長の娘で
金持ちだからって
つけあがるのも
いいかげんにしろってんだ
ほんと もうウンザリだわ
ま 将来のこと考えて
我慢しよう
俺らみたいな
貧乏勤務医の息子じゃ
コネでも使って
いいとこ勤めないと
奨学金も返せないしさ
ほんとに どうなってんの？
ジャングルプール
点検タイムのため
流れを止めさせて
いただきます
しばらくお待ちください
よっしゃー　おーっと
はは おぼれるなよ
てめえ この
自分で転んだんだろう？
やめろよ
ちょっと ふざけてないで
ちゃんとやってよ
おう わりい わりい
ほら ちゃんとしろよ この
お前だろう ふざけてんの
点検タイム
終了いたしました
ほら 美雪
やだ 届かないじゃない
ああ ごめんごめん
草太 流れるぞ
もう またやってる
おおっ　お前には…
返せ 返せ
ほら ボール ボール
よこせって
お前なんかに…
村上くんも はじめちゃんも
いいかげんにしてよ
もう 帰っちゃうわよ
あっ 美雪？
大丈夫？
ばーか　何やって…
キャーッ！
美雪
七瀬さん
どうしたの？
何だ？
おい 何やってんだ…
み… 澪さん？
美雪 大丈夫か？
澪さん どうした？
救急車を呼んで
いや 警察だ
誰か 警察を呼べ
早く　警察だ！
はじめちゃん
私じゃありません　私は
あの人を乗せたビーチマットと
ぶつかっただけです
だがプールの底には
凶器と思われる
カミソリが落ちていた
それに事件が起こる前に
被害者と君が
激しく言い争っていたという
証言もあるぞ
確かに ちょっとは
言い争いはしました
でも そんなことで殺すなんて…
言い訳は署で聞こうか
おい ちょっと待ってくれ
何だ お前たち
はじめちゃん
美雪が
人殺しなんて
するわけないだろう
どうして七瀬さんが
容疑者なんですか
被害者は のどを切られて
大出血で即死状態だった
その大量の血が
プールに広がった瞬間に
被害者の半径５メートル以内に
いたのは この子 １人だ
だからって犯人扱いは
ひどいじゃないですか
じゃあ この子が
殺人と無関係だという
確かな根拠でもあるのか
根拠って言われても…
だったら素人が
余計な口出しするな
さあ行こう
ほんとに私じゃありません
根拠なら
俺が必ず見つけ出してやるよ
何だと？
美雪の無実は俺が証明してやる
じっちゃんの名にかけて
はじめちゃん
金田一
大変なことになったな
ああ おっさん
所轄のほうには話をつけといた
七瀬くんは連行せず
こっちで事情を聞くそうだ
わざわざ ごめん
いいってことよ
あの３人か　被害者と同じ
医大生の仲間ってのは
ああ
事件は この
ジャングルプールで発生した
わがままな被害者を
よく思っていなかったあの３人に
動機は十分
あり得るってことだが
彼らにはアリバイがある
被害者が殺された時
バイト中で荻野知花は ここに
はい 悲鳴を聞いた時
私は監視台にいました
辻村は ここ
パラソルを整理していたら
悲鳴がして
四至本は ここで…
俺が駆けつけた時には
もう澪さんは…
仕事中だった彼らは
被害者が気分が悪いと言って
休憩室へ行ってから
誰も彼女の姿を
見ていないということだ
休憩室の出入り口は
トンネル内にある非常口と
建物の裏手の通用口だが
プール側からは
死角になっていて見えない
それじゃ 澪さんがマットに乗って
プールに現れるまで
誰も見ていないってことか
どういうことなんだ 金田一
ねえ おっさん
澪さんの乗っていたマットが
見たいんだけど
ああ 一緒に来い
おい 金田一
あの刑事さん お前の親戚？
いや 単なるダチさ
えっ ダチ？
しぼんでる
凶器のカミソリで切れたのかな
あっ 穴だ
針か何かで開けたみたいな
小さな穴だな
なあ おっさん　このマットには
紙コップが載ってたよな
ああ 500ミリリットルの
ドリンクが２つな
あわせて１リットルか
ちょっと前まで気分が悪くて
休んでいた澪さんが
１リットルも
ドリンクを飲むかな
そういや妙だな
紙コップが２つってことは
誰かと一緒にいたってことか
なあ 金田一
ドリンクが何だっていうんだよ
こんなんで七瀬さんの無実が
証明できるのか？
気がついたら あたりは
血だらけだったんだもん
私にも さっぱり分かんないの
ごめんね 迷惑かけて
いいって
とにかく心配すんな 美雪
お前の無実は
俺が絶対 証明してやるからさ
うん
おい 差し入れだ
腹減ったろう
オー　センキュー
うまそーっ
やだ はじめちゃんたら
ほんとに もう
草太 このたこ焼き
ほっぺた落ちるくらい うんめえぞ
はっはっは　大げさだな
売店で買った
レンジでチンってやつだ
冷凍食品じゃないか？
へえー 冷凍食品か これ
いま焼いたみたいに
よくできてるな
ほんとだ 前もって焼いてから
冷凍したんだろうけど
焦げ目も
ちゃんとついてる
前もって焼いてから冷凍か
最近の冷凍ものって味もいいし
いま焼いたみたいね
そうか
その手があったか
これが 被害者
千吉良澪の持ち物
ロッカーの中の物と鍵
これは被害者が身に着けていた
水着　これですべてだ
おっさん
気づかなかったのか
な… 何だ？
彼女の持ち物の中に 絶対
なければいけない物がないんだよ
なければいけない物？
何だ それは？
金田一
分かったよ 犯人が
ほんとか？
謎は すべて解けた
はあ 何を言い出すのかと
思ったら
俺たちの中に
犯人がいるって？
澪さん殺したのは
その子じゃないのか？
澪さんが殺された時
バイト中だったんだぜ
変な言いがかりはやめてよ
プールにいた彼女を
殺せるはずないだろう
そのとおり
プールにいなければ
殺せるはずなんてない
そう思わせることが
まさに犯人の狙いだったんた
何だって？
まず 犯人は
澪さんの飲み物に睡眠薬を入れて
気分を悪くさせ
休憩室に行くように
仕向けた
そして 完全に薬が
効いたころを見計らって
休憩室へ入り込む
澪さんの首から
１リットルほどの血液を抜き取り
ドリンク用の
紙コップへ移した
そのあと シャワールームで
凶器のカミソリを使い
首筋を切って殺害した
それじゃあ 被害者はプールの中で
死んだんじゃないのか
ああ 犯人はそのあと
点検タイムを利用して
流れの止まったプールの
トンネルにある非常口で
ビーチマットに乗せた澪さん
それに
カミソリと紙コップを２つ
用意して 時を待った
紙コップには血が
ああ
血が固まらないように
何か薬を混ぜてあったはずだ
それが このトリックの
重要なポイントなんだ
やがて点検タイムが
終わった時
ビーチマットに針で穴を開け
プールに押し出した
ビーチマットの空気は
小さな穴から
じわじわと抜けていき
やがて ひっくり返る
はずだったが
そうなる前に たまたま
美雪にぶつかり ひっくり返った
血の入った２つの紙コップ
もろともね
キャーッ！
これがトリックのすべてさ
つまり
鮮血が流れたその時が
まさに殺人の瞬間に
違いないという
われわれの思い込みを利用した
心理トリックなんだ
そうか　となると
お前たちのアリバイは
崩れたことになるぞ
もう犯人は分かっているよ
澪さんの遺品が
教えてくれた
遺品が犯人を？
覚えてるかい？
澪さんがプールの入り口で
美雪とトラブルを
起こした時のことを
俺は美雪を助けるために
澪さんの下着をすり取って
気をそらそうとしたんだけど
彼女が着けていたのは
ビキニの水着だった
だけど彼女の遺品の中には
着替え用の下着は
なかったんだ
澪さんは初めから
泳ぐ気がなかったということさ
泳ぐ気がなかった？
どういうこと？
彼女はブランド物の
水着やアクセサリーを
見せびらかすために
来ただけで
水に入る気はなかった
だから水着で来て
水着で帰るつもりだったんだ
それで下着は
必要ないということか
ところが殺された澪さんは
アクセサリーを
身に着けていなかった
全部 彼女のロッカーに
入っていたんだ
妙だと思わないか？
犯人が外して
ロッカーにしまったのか？
ああ アクセサリーを
ごてごて着けたまま
プールに入るのは
不自然だからね
でも 金田一
あのロッカー テンキーだぞ
番号が分からないと…
よく思い出せよ 草太
澪さんは場内アナウンスで
呼び出しを受けただろう？
車を移動させてほしいって
あっ ああ
あの時 自分で行くのが
面倒だった彼女は
番号を書いた紙と
ロッカーの鍵を渡したんだ
そ… それじゃ 犯人は
そう あの時
車の移動を任された人物
荻野千花 あんただよ
あんたこそ千吉良澪を殺害した
真犯人なんだよ
千花 お前が澪さんを？
まさか…
車の移動を
アナウンスさせれば
いくら澪さんでもロッカーぐらい
自分で開けるはずだと思い
あんたは さりげなく
ついていき
テンキーの番号を
盗み見するつもりだった
ところが澪さんは あんたに
車の移動を頼んだ
テンキーの番号さえ分かれば
同じことだと あんたは思ったが
結果的にはそれが あんた以外に
犯人はいないっていう
決定的な証拠に
なっちまったんだ
そうね　ついてないわ
認めるんだな
千吉良澪殺しを
仕方なかった 仕方なかったのよ
殺すしか…
大学を卒業したかった
何が仕方なかっただよ
あんたも医者の卵だろ？
人の命を救う仕事を
するんじゃないのか
人の命を
助けなきゃいけない医者に
人を殺してまで
なりたかったのかよ！
なあ 金田一
あの犯人だった千花さん
被害者に
弱み 握られてたんだって？
ああ 入試問題の横流し
手伝わされてたんだって
バレたら身の破滅だし
医者になる夢も消えちまう
それで殺そうって気に
なったのか
村上くん　はじめちゃん
いつまで食べてるの？
早く　ビーチバレーやろうよ
おっしゃー　美雪
おっぱい触らせなさーい
お前の無実
証明してやっただろう？
お礼に おでん
おごってあげたでしょう？
金田一か
変なやつだぜ まったく
こらーっ　金田一
七瀬さんにエッチなことしたら
承知しないぞ
汚らわしいな　その汚い手で
七瀬さんに触るんじゃない
あっ いま触ったろう
おい この野郎
忍び寄る悪夢との再会
俺は この宿命から
逃れられないのか？
ミステリー作家 山ノ内恒聖の
遺産相続をめぐって用意された
暗号解読ゲーム
それが俺たちをロシア館へと導く
暗号文を解く鍵は
５体の露西亜人形
時計塔の鐘が鳴る
そしてゲームは始まった
金田一少年の事件簿…﻿何だろうな？
いつきさんの用事って
きっと
すごい事件が起こったんですよ
何たって わざわざ
｢金田一はじめ探偵事務所｣に
依頼してきたんですから
ほら センパイ！
ん… あ？
なあに それ？
ホームページですよ
この間 僕が立ち上げまして
今 はやりのバーチャルカンパニー
ってやつです
で 第１号の依頼者が
いつきさんで…
ばーちゃんだか じーちゃんだか
知らんが
勝手に人の名前 使うな！
やめなさいよ はじめちゃん
そんな大きな声 出して
うるせーっ！
あれっ…
何で お前が ここにいんだ？
ミス研部長なんだから当然でしょ
悪いな！
わざわざ
編集部まで来てもらってさ
おお 佐木君 久しぶり！
ホームページ見たよ
やるねえ
いやあ
センパイの助手として
少しは役に立とうかと
早速だが 紹介させてくれよ
文芸常談で副編やってる
宝田光二さんだ
いつきさんから
おうわさは伺っております
有名な探偵さんの
お孫さんだそうで
あっ ハア
ええ　実は ですね
個人的に
極秘の お願いがありまして
宝田さん
音羽証券さんから
急ぎの電話が入ってますけど
あっ…
あとで かけ直すと言っといて！
すみませんね
ここは落ち着かなくて
あまり 人に聞かれたくない
ことでもあるし
場所を変えようか いつき君？
ああ そうっすね
え… エヘヘヘヘ
遺産相続？
ええ
実は 私にとっても
降って湧いたような話でして
とにかく これを ご覧ください
ああ…
あ この人 最近亡くなった
ミステリー作家の
山之内恒聖さんだわ
実は その山之内先生の
遺産の相続人の１人に
私が選ばれたんです
エエーッ！
フーン…
やっ 山之内恒聖の財産といえば
何十億の世界じゃないですか
ええっ 何十億！
宝田さんは長いこと
山之内番の編集者として
ほとんど家族同然の
つきあいを続けてきたんだよ
山之内は身寄りもないし
そういう意味じゃ
最も親しくしていた宝田さんに
財産をってのも
何か いい話だろう？
ハーン
そんなこと あるんっすかねえ
ところが
ちょっと難しい条件が
ありましてね
それで
金田一さんの お力を拝借したいと
条件？
ええ　実は その…
相続人には
私を含めて５人いるんです
全員 先生の親しい友人や恩人で
ちょっとした
素人楽団のようなものを組んで
おつきあいをしていた
仲間なんです
事前に届いた案内状によると
まだ 相続人は
決まったわけではなく
われわれは
あくまで 相続候補者に
すぎないようなんです
候補者…
山之内先生は
この５人の候補者に対して
相続資格を手にするための
ゲームのようなものを
用意していらしたんです
え？
ゲームのようなものって言うと？
候補者たちは
亡き先生の指示に従って
北海道の先生の別荘に
行かなければなりません
そこで決められた時間の中で
用意された暗号を解き
隠された遺書を見つけた者だけに
遺産を与えると言うんです
要するに その｢暗号｣を解けと
頼むよ 金田一
俺の つまらん原稿を
たまに拾ってもらってんだよ
この人にはさ
その暗号って
どんなもんなんですか？
ええ… 案内状の中に
先生が作られた詩のようなものが
同封されてました
読んでみてください
｢楽団は朝礼で
前から順に首を刈られた｣
｢さあ お次は数合わせ｣
｢２番の子の首を ５番目の子の
首の右に並べてみてごらん｣
｢楽しいリズムの始まり始まり｣
何のことかしら？
全然 分かんない
どうでしょう？
お手伝い いただけないでしょうか
面白そうじゃないですか
すっごい 霧ね
ホントに
こんな山奥に館があるのかしら？
見えてきましたよ
ほら あの浮島に建っている館
あれが 山之内先生の別荘
露西亜館です
ウワー すっごい！
ああいうの
ロシア風建築っていうんですよね
宝田さん
よく ご存じですね
何か 玉ネギみたいっすね
お疲れさまでございます
宝田様
あ… どうも 田代さん
お待ちしておりました
私 山之内の執事の
田代と申します
どうも 金田一っす
ホウ… あなたが
あの有名な名探偵のお孫さんで
え？
さあ どうぞ
ここからは 船になりますので
ああ… ボートが戻っちゃった
申し訳ありません
亡くなられた山之内先生の
ご指示でございます
先生の誕生日である
５日後の午前０時を過ぎるまで
外部との接触や 電話の使用と
携帯の持ち込みは禁止で
そのときまで迎えも参りません
それにしても すごい別荘ね
ホントですね
絵になるなあ
さあ こちらです
皆さん もう
おそろいのはずですので
オウ！
宝田君か
神明先生！
もう
始めていらっしゃるんですか？
いいじゃないか
私の唯一の趣味なんだ
そちらの かわいいお嬢さんは？
七瀬美雪です
あの… ひょっとして
ミステリー評論家の
神明先生じゃ？
いやいや　ハハ
これは よく ご存じで
私は マスコミ嫌いで
あんまり顔を出さないんだが
ハハ もしかして
宝田君の例の助っ人とは
この美少女かね？
いえ… それは 私じゃなくて
あっちのほうで
ああ？
あの頭の悪そうなガキが？
ハニャ？
せ… 先生
そこまで おっしゃらなくても
お言葉ですが
彼は高名な私立探偵の お孫さんで
ＩＱも 180だそうで
へえ そりゃ驚いたな
あ？
そんな人と
謎解き合戦ができるとは
光栄ですね
そういう アンタは？
僕は 犬飼高志
山之内先生の隣の家に
住んでいたのが縁で
親戚同様の おつきあいを
させていただきました
今回は どういうわけか
遺産相続人の候補者に
選ばれましてね
よろしく
ところで… えっと
金田一！
それにしても
こんな屋敷で推理合戦とは
さすがミステリー界の重鎮
山之内恒聖
シチュエーションも
先生の初期の傑作
｢露西亜人形殺人事件｣に
そっくりだ
ハッ 相変わらず
素人探偵気取りだな
たかだか
近所の つまらん殺人事件を
まぐれで解決したからって
いい気にならんことだ
桐江君！ブランデーだ
いい気なもんだ
もう すっかり
この館の主人の気分でいるよ
最近 お酒の量が
増えておられるようで
評論の原稿も
以前のようなキレがなくなって
離婚が よっぽど
こたえたんじゃない？
もともと その離婚だって
身から出たサビだけど
うそー！｢死者の砂時計｣で
ミステリー大賞を取った
あの梅園先生！
うーん
絵になりますね
さすが ビジュアル系作家
あっ… ひょっとして
梅園先生も
遺産相続の候補者なんですか？
うん らしいわね
山之内先生は
私の師匠みたいなもんだから
もっとも 遺産なんか
もらわなくても 私の稼ぎだけで
十分 潤ってますけど
見え張ってるんですよ
あの人 一発屋なんです
一発屋って？
処女作 ｢死者の砂時計｣は
完ぺきな まぐれで
そのあとの作品は まるで
ミステリーになってないから
あれは盗作じゃないかって
うわさもあるくらいで
それに 最近
交通事故を起こしましてね
彼女 賠償金で だいぶ苦しいとか
宝田さん
ひそひそ話は やめてくれる？
お宅の編集長に言いつけるわよ
そ… そんな
ちょっと 金田一さんと
打ち合わせをしてるだけで
あっ そう
あたしたちと遺産相続戦
やる気満々ってわけね
ふーん
やっぱり うそじゃなかったんだ
株で大借金抱えたっていう
うわさ
梅園先生 やめてくださいよ
そういう話
単なる うわさですよ
キャア！
な… 何をするんです
は… 離してください 先生
どうしたんだね 桐江君
君じゃ 棚のボトルに届かんだろう
け… 結構です
１人で 取れますから
あーあ… 酔っ払っちゃって
さあ ホラホラ
こうして 持ち上げてあげる…
アチャー
ねえ はじめちゃん
アレ？
いいじゃないか 桐江君
うん？さあ…
おっ？
すいましえーん
神明先生に ボトルを
取って差し上げようと思って
つい手が
きさま わざと…
天下の神明を なめくさって！
覚えておれ！
おっ！ゆ… 幽月君
聞こえましたよ 神明先生
相変わらず お見苦しいですわね
それじゃ 遺産相続の勝負なんて
できるのかしら？
なに どういう意味だ！
誰なんです？あの人
挿絵画家の幽月来夢先生
あの方も
遺産相続人の候補者なんです
ハッ 古今東西のミステリーを
すべて読破しとる
この私と勝負だと？
片腹 痛いわ！
あたしも そう思ったので
ちょっと 助っ人を
へえ 幽月さんも助っ人を？
ええ ご紹介しますわ
奇術師の
スカーレット･ローゼスさんです
フフ
奇術師…
どうかしましたか？
え…
あ いや… その仮面は？
ああ
これは傷跡を隠しているんです
以前 奇術の練習中に
ひどいケガを負いましてね
ケガ… そうですか
えー 皆さん おそろいでしたら
そろそろ時計の塔の応接間へ
おこしください
では これから
山之内先生のメッセージを
公開させていただきます
私 山之内先生の顧問弁護士の
代理人として派遣されました
有頭大介と申します
私は 先生の指示を守る
監視係として参りました
公平を期するため 皆さんが
探し当てなければならない
遺言状の中身
また その隠し場所などは
一切 知らされておりません
君！
前置きは いいから
さっさと始めたまえ！
ハア… では
あっ 先生
あんなに やつれて
あれが 山之内恒聖
では
私の大切な友人であり
愛すべきクインテットの
メンバーでもある 皆さん
このビデオを ご覧になるとき
私は もう この世にはいない
私の最後のミステリーに
つきあっていただき
心から感謝する
早速だが あらかじめ
お伝えしてある暗号文について
お話ししよう
実は あの暗号文は
意味をなさない
もう一つ それと対になった
メッセージを用意してあるのだ
後ろを見たまえ
なにっ？
あれは…
もう一つのメッセージ？
第１バイオリンの コンスタンチン
第２バイオリンの ターニャ
ビオラのオリガ
チェロの エミール
コントラバスの イワン
この 君たちと同じクインテットを
構成する５体のロシア人形こそが
すべての謎を解き明かす
第２の暗号なのだ
この暗号を合わせ解いた者に
私の遺書は渡る
ヘヘッ
フフフ
なお この推理合戦の参加者は
期日５日間
強制的に この館に
とどまってもらうことになる
さあ 参加する意志があるなら
受け取ってほしい
用意された 君たちの楽器を
では 参加者の方は
ご自分のパートの楽器を
お取りください
言われるまでもないな
やる気がなければ
こんな北海道の山奥くんだりまで
来るものか
私は コントラバスだ
僕は この 第１バイオリンと
いうことになりますね
あたしも バイオリンね
私は ビオラを いただきます
では 私は チェロを
さて 全員参加が決まったところで
早速だが
この推理問題の答えを
考えようじゃないか
そうね
パッと見たところ 気になるのは
この１行目よね
さすが 現役の
推理作家ですね 梅園先生
実は 僕も
あの人形の大きさの違いと
暗号文の１行目
｢楽団は朝礼で
前から順に首を刈られた｣
というくだりが
ポイントだと思うんです
ハッ 素人探偵気取りが
がっつきおって
そんなことぐらい
誰でも気付くことだ
そういう あなたは
酒を飲んで管を巻くのが
お似合いですよ
ハン！金が欲しいんだろう
親父さんの会社が倒産して
飼ってる命より大事な猟犬まで
手放すって話じゃないか
おやおや 皆さん
仲がよろしいのは結構ですが
そんなふうに
お互い知恵を出し合って
ほかの参加者に出し抜かれても
いいんですか？
ふとしたヒントで 競争相手が
得をすることがありますからね
気を付けなくては
フフフフ…
桐江君 ご案内して
はい
あ… すいませんね
滅多に見られない館なんで
見学しておきたくて
とんでもございません
ごゆっくり どうぞ
えっ 想子さん 18なんですか？
ええ
こんな山の中の屋敷で
住み込みで働くなんて
何か すごいっすね
私 もともと
山之内先生の大ファンで
自分で書いた小説を 先生の
ところに持ち込んだのが縁で
何となく 半分弟子みたいな形に
なっちゃったんです
でも すごい お屋敷
何か日本じゃないみたい
そうですね
この館は もともと
ロシアから日本に居ついた
貿易商が建てたホテルだそうです
客間にある調度品も
全部ロシアから運んできたもので
まとめられているとか
ほら あそこに見えるのが
さっき人形が並んでいた
時計の塔の応接間です
あの窓の下のほうに
小さく人形の頭が見えるでしょ？
ああ ホントだ
それにしても 用心深いこと
こんな田舎に来ても
仮面を かぶってるなんて
一応 指名手配中の身ですからね
でも もう よろしいんじゃなくて
地獄の傀儡子
いえ 高遠遙一さん
フッ
ウフフ
犯罪に興味のある人たちの前で
堂々と素顔をさらすのも
はばかれると思って
用心してきましたが
正解でした
え？
私の素顔を知っている
人間がいましたので
こうなると 宿命としか思えない
とにかく お願いよ
頼りにしてますからね
弟の病気を治すために
どうしても お金がいるの
お力になれるかどうか
分かりませんが
気になることがありましてね
高遠さんが気になること？
何かしら？
いや まだ何とも言えませんが
ただ 私は 性悪説論者でしてね
この館には
人間の醜い本性を さらけ出させる
ドス黒い悪意のようなものが
満ちている気がして
ならないんです
遺産どころの騒ぎじゃなくなる
そんなことが
起こらなきゃいいんですがね
アアー　腹へった
へりすぎて
胃液が逆流しそうだぜ
やあねえ はじめちゃんったら
確か 夕食は
10時半とか言ってましたね
ロシアは白夜の国ですから
きっと 夕食も遅いんですよ
あん バカ者
ここは北海道だぞ
そんな国と一緒にして
何の意味があるんだっつんだ…
あ？
あ 10時の鐘だわ
アアーッ あと30分か
腹へった…
あ… あれ？
俺の時計 ５分も遅れてんじゃん
あ？
ワア すごい雨
フン　山之内先生よ
アンタの財産は ありがたく
私が全部もらってやるぜ
見てろよ
あの暗号
｢前から順に首を刈られた｣か
つまり 人形の身長に
何か関係してるってことだな
コントラバスのイワンが
20センチ
チェロのエミールが 30センチ
ビオラのオリガが 40センチ
第２バイオリンのターニャが
40センチ
第１バイオリンの
コンスタンチンが50センチ
うん… 何だ これは？
どうして？
どうして人形が
うーん　うめえ！
このボルシチ 超うめえ
はじめちゃん
お願いだから 盛大に音を立てて
すするの やめて
うん？
まあまあ センパイ
飯食いながら撮るな！
うん？
どうしたんだね 桐江君
神明先生は
召し上がらなかったのかね？
それが…
お声を掛けても返事がなくて
はじめちゃんってば…
あ？
あ…
田代さん この中２階の上って
何が あるんですか？
皆さまの お部屋に
なっております
金田一様 何か？
え… ええ
あ あそこは 確か…
神明先生の部屋
さっきより 大きくなってる
神明先生 神明先生！
先生 どうかなさいましたか？
キャアー！
神明先生！
どうして 先生が？
楽団は 前から順に…
イワンですね コントラバスの
じゃあ ほかの人形は？
あっ…
ない…
ロシア人形が
５体ともなくなってる！
ばく大な遺産を めぐって
暗号解読ゲームに参加する
５人の候補者たち
その１人 神明さんが殺害された
そして その傍らには
コントラバスのイワンが
山之内恒聖の残した暗号が
意味するものは？
｢楽団は朝礼で前から順に｣
まさか 次に狙われるのは！
金田一少年の事件簿
俺は
文芸編集者 宝田光二の依頼で
５体のロシア人形と それに関わる
謎の暗号文を解くべく
北海道の とある湖にそびえる
露西亜館へ赴いた
そこには 推理作家
山之内恒聖の残した
ばく大な遺産をめぐって
５人の遺産相続候補者たちが
集まっていた
そこで 俺たちが見たものは…
皆さま 温かい
ロシアンティーでも どうぞ
落ち着きますよ
どうぞ
どうぞ
ありがとう
有頭さんによると 神明先生
後ろから
撲殺されていたらしいですね
一体 誰が？
と… とにかく警察に連絡を
無理ですよ　忘れたんですか？
山之内先生の誕生日が来るまで
外部との連絡は
シャットアウトされて
いるんですから
で… でも　どうして犯人は
神明先生の遺体のそばに
ロシア人形を？
｢見立て｣じゃないですかね
見立て？
忘れたのですか 例の暗号を？
｢楽団は朝礼で
前から順に首を刈られた｣
神明さんとともに バスタブに
放り込まれていたロシア人形は
５体の人形の中で
いちばん背の低い
コントラバスのイワンでした
それじゃ 神明先生は
暗号文に見立てられて殺された…
ちょ… ちょっと待ってください
前から順にってことは
確か ２番目に背の低いのは
私と同じ チェロ奏者の
エミールだったはずじゃ？
相変わらず気が小さいのね
宝田さん
ローゼスさんも 人が悪いわ
神明先生１人が殺されただけで
次々に殺人が起こるみたいな
言い方して
そんな
ミステリー小説じゃあるまいし
見立て殺人なんて バカバカしい
果たして そうでしょうか
え？
思い出しませんか？
山之内先生の初期の代表作
｢露西亜人形殺人事件｣を
あの小説では
館に集まった５人の人間が
ロシア人形に見立てられて
次々と殺されていき
そして 最後には
誰も いなくなってしまった
ただ一人
真犯人コンダクターを除いては
コンダクター？
ええ
いうなれば 殺人協奏曲の
指揮者というわけです
さて もう12時ですし
皆さん そろそろ
部屋に戻りましょうか
べ… 弁護士さん その人形
遺体と一緒に
浮かんでたものでしょう
そんなとこに置いといて
いいんですか？
でも この人形は
山之内先生の暗号の一部ですから
なるべく
元のとおりにしておくべきかと
それに ５日後の深夜０時まで
続行するように指示されてますし
いずれにせよ 迎えが来るまでは
この館に とどまらざるを
えないわけですから
もちろんよ！こんなことで諦めて
たまるもんですか
では
私は先に休ませてもらいますか
明日の推理合戦に備えてね
グッドナイト
カルテットの皆さん
じゃ あたしたちも
あ ちょっと待ってください
部屋に戻ったら
ドアに必ず 鍵を掛けてください
この中の誰かが尋ねてきても
うかつに開けたりしないこと
いいですね
ちょっと それ どういう意味？
もう 分かっているでしょう
梅園さん
この館は
氷みたいに冷たい湖で
外界と切り離された
密閉空間なんです
外から殺人者が侵入した可能性は
極めて低い
つまり 神明さんを殺した犯人
コンダクターは
この中に いるかもしれないんだ
ええ…
これで よしと
しかし 冗談じゃないよ
そりゃ 遺産は欲しいけど
命を取られたんじゃ
何の意味もない
でも
本当に あれが見立て殺人なら
次に殺されそうなのは
２番目に背の低い
お… 俺…
ああ… あんなに寝たのに
体が石のように重い
ぼ… 僕もです センパイ
おはよう
それにしても みんなして
この強烈なダルさは妙だな
ひょっとして…
センパイ あれ！
人形が ２体に
あれは 確か チェロのエミール
宝田さん これは 一体？
あ…
アアーッ！
どうしました 今の悲鳴は？
あっ 宝田さん！
これで
トリオになってしまいましたね
どうやら あの暗号文に見立てて
犯人が殺人を行っているという
私の仮説は
残念ながら的を射ていたらしい
こんなところに隠し扉が
宝田さんを殺した犯人は
恐らく
ここから出入りしたんでしょう
これじゃ 鍵なんか掛けても
無駄じゃないの！
私も 長年
この屋敷に出入りしておりますが
こんなものがあったなんて
存じませんでした
思い出しましたよ
この館は もともと
ホテルだったそうですか
確か オーナーのロシア人は 当時
世界でも名の知れた
奇術師だったはずだ
違いますか 田代さん？
は… はあ
そういえば
そのように山之内先生が
おっしゃっていたような
じゃあ もしかして
ほかの部屋にも こんな仕掛けが？
嫌だわ　ローゼスさん
私の部屋も見てくださる？
もちろんですよ
ほかの皆さんの部屋も
順番に調べてみましょう
まずは 幽月さんの部屋から
うん…
このチェストは
引き出しを すべて抜き取ると
まあ こんなところに 階段が！
どこに続いているのかしら？
ワイン？
これは すごい
すべて
50年以上前の逸品ばかりだ
また ひと財産
見つかりましたね
まあ…
あたしの部屋には隠し金庫が？
梅園さん 何が入っているのか
楽しみですね
犬飼君の部屋には
ｱﾝﾃｨｰｸのドレスコレクションか
私の部屋には
何もないようですけど
いや
これは マジックミラーですね
隣の部屋から
のぞけるようになっている
えっ 隣って…
くそっ
もう少し早く気付いてれば
桐江さん 目隠し用に
シーツか何か貸してください
は… はい
さて
私の部屋は もう自分で調べて
外から進入できるような仕掛けは
ありませんでした
次は 金田一君の部屋ですが
あ… 俺の部屋は いいっすよ
あとで
自分で調べておきますから
それより 想子さんや有頭さん
田代さんたちの部屋も
念のために見ておいたほうが
いいんじゃないんですか？
お… お願いします　ぜひ
そ そうですね
うん　あの仮面
目に のぞき穴がありますね
ええ？
隣は何だったんですか？
山之内先生の寝室でした…
ホウ それは それは
田代さんと有頭さんの部屋には
何も ないようですね
そ… そうですか
これで あとは
皆さんが部屋にいるときは
きちんと内側から鍵を閉めれば
身を守れそうですね
あ 田代さん
そういえば マスターキーは？
でも ずいぶん厳重なんですね
マスターキーの置き場にも
鍵が掛かるなんて
ええ 昔は各部屋に
大変な貴重品が
置かれていましたから
でも そのキーのヒモを
切ってしまえば
いえ これは
細い金属と炭素繊維を
組み合わせて織った
特殊なヒモで
簡単には 切断できないとか
そうでしたよね 桐江君？
はい そう聞いています
で このキーストッカーの鍵は
誰が保管しているんですか？
一応 私が
だったら！
その鍵さえ
完ぺきに保管しておけば
寝込みを襲われる心配は
なさそうね
ちょっと その鍵
あたしに預からせてくれない？
え… そ それは ちょっと
どうして！
それが いちばん安心なのよ
あたし
だったら 私が預かりましょう
弁護士の私は
遺産相続権はないわけだし
中立的な立場ですから
本当に そうでしょうか？
え？
弁護士の あなたが
実は 誰かに ばく大な利益を
約束されているとしたら
しかし そんなことを言い出したら
誰だって怪しいことになる
そういう あなただって！
だから こうしては いかがですか
この鍵は とりあえず
私が預かりましょう
そのかわり
私の部屋を決して開かないように
外から封鎖してもらっても
かまいません
どうでしょう 皆さん？
そうね ローゼスさん
あなたなら とりあえず安心だわ
よろしいですか 金田一さん？
いい案かもしれませんね
奇術師の あなたなら
ひょっとしたらキーがなくても
メンバーの部屋に
入れるかもしれない
それを防ぐ意味でもね
セ センパイ！
言い過ぎよ はじめちゃん
やれやれ
ずいぶんと信用がないんですね
昨日 知り合ったばかりなのに
フッ
まるで 昔から因縁のある
かたき同士みたいだ
暗号を解く鍵として用意された
５体のロシア人形
でも 犯人は
どうして あの２人を
暗号に見立てて殺したんだろう？
そして この奇妙な館
そうだ 佐木
お前のビデオ見せてくれないか
この館に到着したときのやつ
はい
こうして見ると
塔の高さは全部バラバラね
この塔には 時計がありますから
どの塔からも見えるように
工夫されているんじゃないですか
今度は ロシア人形ね
確かに コントラバスのイワンが
いちばん小さくて
２番目が チェロのエミールね
すると
３番目が ビオラのオリガか
いや 第２バイオリンの
ターニャかな
あれ どっちだ？
ん… このターニャとオリガ
こうして見ると
服装は違うけど よく似てるな
そういえば まるで双子みたい
なあ 美雪
どっちが ビオラで
どっちが バイオリンなの？
俺には同じにしか見えねんだけど
うーん
あたしも よく…
大きさが違うのよ
あ… あ 幽月さん
あたしのパートの このビオラは
65から66センチで
バイオリンより 少し大きいの
バイオリンは 60センチ
チェロになると
ぐっと大きくて120センチ
最低音のコントラバスは
180センチから２メートルもあるわ
へえ 音とかも違うんですか？
当然よ
バイオリンは ビオラよりも
弦の調律が
完全５度ずつ高いといった具合に
それぞれの楽器が
異なった音域を担当しているのよ
これが ビオラの音
きれいな音
でしょう
バイオリンみたいに 主旋律に
使われることは少ないけど
言ってみれば
小説の中の挿絵みたいなものね
いい挿絵が入っているのと
そうでないのとでは
作品の面白さが大きく違うわ
でもね 時々
ふと むなしくなることがあるの
地味なレパートリーから
はみ出して
自己主張してみたくなることが
自己主張？
ええ
ちょっと前のことなんだけど
あたし 実は 山之内先生の
作品の挿絵を描いていて
トリックの答えに気付いちゃって
それを挿絵の中で
表現しちゃったことがあるの
え… それって マズいんじゃ
それで どうなったんですか？
それに気付いた読者から
どっとクレームが来ちゃって
あせったな あのときは
山之内先生は
笑って許してくれたけど
でも 今にして思えば
どうだったのかしらね
え… どうだったって？
本当は 私のこと
殺したいくらい
憎んでたんじゃないかって
ちょっと思うのよ
人格者で通った手前
あのときは許すふりを
せざるをえなかったけど 本当は…
そ… そんな
山之内先生に かぎって
そうかしら　例えば
さっき あなたの部屋で見つかった
のぞき穴
あ…
あれなんか
山之内先生の裏の顔が
何となく見えてくる気がしない？
人格者の仮面の下に隠された
陰湿で執念深く 好色な顔が
もっとも それは
この館に集まった連中にも
言えることだけどね
状況によっては
何をしでかすか分からない
人間って
そんなものじゃないかしら？
あたしだって ほら
びっくりした？
ひどいヤケドでしょ
以前 火事に巻き込まれてね
そのとき 弟は一酸化炭素中毒で
意識を失い 今も病院に
だから あたしは
どうしても遺産が欲しいの
どんな手段を使ってもね
うーん
｢朝礼で前から順に｣か
やっぱり 背の小さい順に
並べろってことなのかな？
でも 同じ背のやつが
２体あるんじゃ どっちが前…
あ… 美雪か どうした？
のぞいてほしいのか？
バーカ 何言ってんのよ
なー！何だよ いきなり
ズボン ズボン…
そこにいるの はじめちゃん？
えっ　あ… ああ いるよ
あ そうか　マジックミラーで
向こうからは見えないんだ
あたし 何か怖くなっちゃって
あ？
そりゃあ 俺だって
殺人鬼が潜んでるんだし
それもあるんだけどね
もし 山之内恒聖が
幽月さんの言うように
本当は陰湿な人間だったとしたら
だから 本当は憎んでいた
幽月さんとかを
こんな館に閉じ込めて
殺人事件が起こるような
遺産争いを
させようとしてるんだとしたら？
殺人鬼なんかより
そっちのほうが よっぽど怖い
そんな おぞましい本音を
誰もが仮面の下に持ってるなんて
考えたら…
バーカ 何言ってんだよ
人間 誰だって少しは
仮面をかぶって生きてるもんさ
洋服着てるのと一緒だ
俺だって
そんなもん かぶってるよ
本当の顔ばっか見せてたら
恥ずかしくて生きてけないだろ
大事なのは
何のために仮面を かぶるかだ
他人を傷つけないために
かぶる仮面だったら
それは
ちっとも悪いことじゃない
なーんて
じっちゃんの受け売りだけどね
じゃあ はじめちゃんは
どんな仮面を つけてるの？
えっ！
何か 今
すごく それが知りたい
じゃ… もっと こっち来いよ
え？
いいから
あ うん…
ダメだよ それじゃ
もっと鏡に顔がくっつくぐらい
こう？
イヤ… もっとだよ もっと
これくらい？
ねえ… まだ はじめちゃん？
ねえってば
ダーメ やっぱ ヤメ！
教えてあげない
えっ… ずるい ずるい！
ずるくないよ また今度な
今度って いつよ？
だから 今度は今度なんだよ
いやあ… さすがに怖いですね
殺人のあった館の中を
歩き回るというのは
しかし！
金田一センパイの助手として
できるかぎりのデータを
収集しておかないと
あっ 深夜０時か
僕も そろそろ
寝たほうがいいかな？
でも 興奮して目がさえちゃって
なかなか 眠れないんですよね
何なんだ 昨日も今日も
この強烈な眠気は？
やっぱり 食事に何か薬でも？
あ… なぜ あなたが？
センパイ センパイ
金田一センパイ！
どうした 佐木？
たっ 大変です
ゆ… 幽月さんが！
幽月様 幽月様
幽月様！
田代さん 幽月さんは？
ダ… ダメです
さっきから 何の反応もなくて
さあ 急ぎましょう
ローゼスさん
あの鍵は 確か あなたが
もちろんです　犯人が
幽月さんの部屋に
入れるはずはないですから
ゆ… 幽月様 大丈夫ですか？
ゆ… 幽月さん
キャアー！
あっ！また人形… 幽月様まで
あの暗号に見立てられて
センパイ 何を？
あった！
この部屋の鍵
窓の鍵が掛かっているうえ
しかも ここは３階で
窓からの出入りは不可能
そ… それじゃ センパイ
ああ これは完全な密室殺人だ
くそっ！
密室トリックの謎が解けない
殺人者コンダクターは
一体 どうやって幽月さんの部屋に
それが可能なのは ただ一人
だけど 知らなかったぜ
アンタが
そんなつもりだったなんてな
分かったよ
その賭けに乗ってやる
だから これ以上
犠牲者を出すのは やめてくれ
もう アンタの
やりたいようにはさせない
じっちゃんの名にかけて！
金田一少年の事件簿﻿推理作家 山之内恒聖の残した
ばく大な遺産をめぐって
５人の遺産相続候補者たちが
北海道の とある湖の真ん中に
そびえる露西亜館に集まった
俺は
文芸編集者 宝田光二の依頼で
５体の露西亜人形と それに関わる
謎の暗号文を解くべく
露西亜館に赴く
だが 謎の殺人者の手により
２人の候補者が惨殺され
そして ３人目の被害者が…
これは 完全な密室殺人だ
｢完全な密室｣
でも どうかしら？
例えば 窓の すき間から
細い針金を使って
掛け金を開け閉めしたりって
手もあるでしょう？
いや
窓周りも よく調べてみたけど
針金を差し込むような すき間は
まったくなかった
やっぱり あの部屋は
完全な密室だったのね
果たしてそうでしょうか
え？
１人だけ いるじゃないですか
針金だなんて そんな
ちゃちなトリックを使わなくても
キーストッカーから
マスターキーを取り出して
あの部屋に
堂々と出入りできる人物が
ローゼス様が？
で… でも 彼の部屋は
外から封鎖されていたし
それに…
私の部屋は もう自分で調べて
外から進入できるような仕掛けは
ありませんでした
そう　しかし そもそも
彼の部屋に抜け穴がないと
言ったのは 彼自身であって
誰も それを
確認したわけじゃないんです
なるほど　だから
私が犯人だと言うんですか？
もちろん 根拠は
それだけじゃありませんよ
そこの 眼鏡の彼
え？
佐木君… でしたっけ？
は… はい 何でしょう？
昨日の夕食のとき
ずっと ビデオを回してたよね
あれ ここで
再生してもらえないかな
ええ いいですけど
そんなもの見て
どうしようっていうの？
実は おとといの夜
宝田さんが殺されたときも
不思議に思ったんです
神明先生が殺された直後なのに
僕も ほかの みんなも
やけに ぐっすりと
眠り込んでしまった
そして
幽月さんが殺された 夕べもね
もし これが 何者かが
われわれに対して仕込んだ
睡眠薬によるものだったとしたら
そう思った僕は 昨日の夕食のとき
注意して皆さんの食事の状況を
チェックしていたんです
できましたよ
ああ ありがとう
その食事の中でも
特に気になったのが
食後のココアだった
ココアが？
ああ　あのとき みんなココアに
砂糖を入れていたはずだ
じゃ どうぞ
佐木君
このとき 君は
ココアに砂糖を入れてなかったね
ええ 僕 虫歯があって
砂糖は控えてるんで
ところで
君は夕べ よく眠れた？
いいえ　全然
目が さえちゃって
ってことは… まさか！
そう
ココアに あのフロストシュガーを
入れなかった佐木君は
目がさえて眠れなかったのに対し
ほかの皆さんは
なかなか 朝 起きれないほどに
眠り込んでしまった
これは偶然ではありません
そして
佐木君同様 もう一人だけ
ココアに砂糖を入れなかった
人物がいる
いかがですか？
いや　私は 結構
あっ！
ああ…
このあと 恐らく
ビデオにも映ってるはずですが
間違いなく 全員が
ココアを飲み干していました
この砂糖に
睡眠薬が入ってたとしたら
犯人が それを飲むはずもない
あとは ローゼスさん
あなたの部屋に
外へ通じる抜け穴があれば
確かに 抜け穴ならありますよ
えっ？
それじゃ やはり…
観念したというわけですか？
なかなか潔い方だ
ねっ 金田一君
そいつは どうかな？
ココアに入れた
フロストシュガーに
睡眠薬が入っていたことは
恐らく 間違いないだろう
俺も あのとき 全員の
食事の様子を見ていたけれど
ほかの料理も 全員が同じように
飲んだり食べたりしていた
でもさ 睡眠薬入り砂糖を
ココアに入れて飲み干しても
睡眠薬は飲まずに済む方法が
あるのを 知ってた？
ハハッ　何言ってんだ
そんなこと できるわけが
簡単なことさ
今から再現してみせるよ
さて 想子さんには
夕べと まったく同じココアを
用意してもらった
でも 入れるのは砂糖じゃなく
この唐辛子の粉だ
ああっ センパイ
そんなもん
まさか 入れて飲むんじゃ…
へヘッ その まさかさ
あ… 何？
フッ
ちょ… ちょっと はじめちゃん
あ ああ…
うっ！
はじめちゃん？
ああ… 何てね
そんな！
辛くないんですか？
ちょっと 貸してくれ
どうぞ
まったく辛くない　どうして？
よく見てみなよ カップの中
何だ これは？
貸してみな
ココアって 牛乳で作るだろう
だから どうしても
時間が経つと
表面に膜が張っちゃうんだよね
これって 案外 丈夫でさ
ホラ
こういう具合に
ひとさじの粉ぐらいなら
包み込んで
溶けないようにできるってわけ
な なるほど
でも
犯人が君の言うようなトリックを
使ったという証拠はない！
確かにね　でも
密室殺人までやらかした
こうかつな犯人が
佐木がビデオを回している状況で
堂々と砂糖を入れずに済ますとは
考えにくい
それじゃ ｢自分が犯人です｣って
言ってるようなもんだからね
だが
それなら なぜ ローゼスさんは
あんな うそをついたんだ！
うそ？
外から進入できるような仕掛けは
ないって 言ったじゃないですか
あんな うそをついたのは
抜け穴があることを隠して
密室殺人に利用するため
だったんじゃないですか？
私は うそなどついてませんよ
な… 何を この期に及んで
私は
｢外から進入できる仕掛けはない｣
と言っただけです
私の部屋には
確かに 抜け穴があったが
それは 部屋の内側から
外に出るためのもので
外側からは どんなことをしても
開けることはできないと
そう言ったのが
なぜ うそなんですか？
そんなの へりくつじゃないか！
見苦しいわよ
男なら 潔く引くべきところは
引かなきゃね
とうとう デュオか
なるほど　これなら
外から入られる心配は
ないようですね ローゼスさん
君には 礼を言っておかなくては
いけないな
私の容疑を
晴らしてくれたんですからね
アンタが犯人でないことは
最初から分かっていたよ
アンタほどの天才が
抜け穴なんて
あとで調べれば
簡単に発覚するものを使って
必要のない密室殺人なんか
やらかすはずがない
そうだろう ローゼスさん？
いや
地獄の傀儡子 高遠遙一
フッ やれやれ
まあ とっくに
見破られているとは
思ってましたけどね
金田一君
まったく こんな
おあつらえ向きの場所で
君と鉢合わせするとは
神様も なかなか
しゃれたことをなさる
確かに
どうやら神様は どうしても
俺に アンタを
捕まえさせたいらしいぜ
さあ それは どうだか
フッ
まあ 無駄にいがみ合うのは
これぐらいに しときましょう
こんな屋敷から
消え失せることぐらい
私は いつだってできます
だが やらなければならないことが
一つできてしまった
どういうことだ？
この館で起きた連続殺人の犯人は
大変な過ちを犯してしまった
その過ちを償わせるまで
私は ここに残らなければならない
過ち？
そうです
犯人は 私の逃亡生活に
力を貸してくれた幽月さんを
奇術めいた やり方で殺した
しかも
あろうことか この私に
真っ先に嫌疑のかかる やり方でね
犯罪芸術家を自称する この私が
こんな侮辱を受けて
すごすご引き下がれると
思いますか？
アンタ まさか…
ま どちらが先に
犯人の正体を突き止められるか
勝負でもしましょうかね？
金田一君
もっとも 私が勝てば
誰も気付かぬうちに
犯人自身の死体が
転がり出るだけですけどね
その勝負 乗るぜ
ホウ
そのかわり 約束しろ
俺が先に事件の謎を解いたら
もう これ以上…
フッ いいでしょう
君が勝ったら
犯人の命は助けましょう
だが 私は もうすでに
あの密室トリックは解いている
何だって？
当然です
あれは
奇術師の私の守備範囲ですから
それでも 私に勝つ自信があると？
ああ 必ず勝ってみせる
名探偵と言われた
じっちゃんの名にかけて！
それにしても なぜ犯人は
一度 この人形をここから持ち去り
そして また
被害者に添えるようにして
１体ずつ出現させているんだ？
まさか すべて単なる
見立て殺人のためとも思えないし
うーん
はじめちゃん もう お昼よ
あたしたち以外
みんな集まってるんだから
え… もう そんな時間？
あ… ホントだ
12時 あれ…
俺の時計 合ってるじゃんか
何言ってるんですか？
センパイ
確か 初日の夕食前
あ… あれ
俺の時計 ５分も遅れてんじゃん
どういうことだ　俺は
時計を合わせた覚えなんかない
となると あのときは
この館の大時計が５分進んでいて
それから 誰かが
時間を合わせたってことか？
は？
この塔の時計ですか
ええ 確かに
この暗号解読レースの前に
私が田代さんに頼んで
正しい時刻に
合わせてもらったんです
先生の誕生日の
午前０時ちょうどに
レース終了という
決め事を守るために
正確な時間を 皆さんが知っておく
必要がありましたので
でも どうやって
時間を合わせたんですか？
はい それは
ほら よく見てください
簡易バシゴが下に伸びてるでしょ
それを つたって
時計の下側に降りていくと
時計の針を調節する
歯車があるんです
ちょっと
降りてみてもいいっすか？
えっ ええ？
ウウワーッ！
大丈夫 はじめちゃん？
あ… 平気平気 これぐらい
だから言ったのに！
センパイ
これが最後の映像になったら
どうするんです
｢はじめの終わり｣じゃ
そう言いながら ビデオ回すな！
分かりますか？
そこにある扉を開ければ
調節用の歯車があります
犯人は わざわざ こうやって
危険な思いをして
時計の下に降りてきて
なぜか５分間時計の針を進め
そして また戻した
アリバイ作りのためか？
しかし
最初の神明さん殺しのときには
犯行時刻を
正確に絞ることもできず
全員が ハッキリした
アリバイを持っていなかった
２人目の
宝田さんのときにいたっては
深夜 全員が寝ている間に
犯行が行われた
当然 アリバイ作りなんて
やりようがない
な… 降ってきやがった
ああ… はじめちゃん
早く早く 濡れちゃう！
よっ　アイタ…
なあ…
もう
吹き込んで
あたしまで濡れちゃったじゃない
おおげさな
それぐらいで濡れるなんて…
あっ… 雨だ！
え？
そうだ 確か あのときも
あれ これって
はじめちゃん？
いったん すべて消えて
小さい順に また現れた人形
そうか
だから犯人は 暗号文に見立てて
殺人現場に人形を
え？
田代さん
はい
ここ以外に ビデオを見れる
部屋ってないですか？
どういうこと はじめちゃん？
ええ
一つだけ ございますが
センパイ 出ましたよ
ああ サンキュ
この館に着いたときの
人形の映像です
こうして見ると
やっぱり バイオリンのターニャと
ビオラのオリガは 服装は違うけど
まったく同じ人形だな
ちなみに バイオリンとビオラって
何が違うんでしたっけ？
ビオラのほうが大きいのよ
この前
幽月さんが言ってたでしょう
でも 人形が持ってるのは
同じにしか見えませんけど
もちろん それは実物の話よ
あたしが測ったところによると
この人形が持ってる楽器は
５つとも
まったく同じ 20センチね
あれ お前 いつの間に
そんなの測ったの？
ここに来て すぐよ
一応 ミス研の部長だもん
人形のサイズも測ってあるわよ
見る？
うん？
コントラバスのイワンが
20センチ
チェロのエミールが 30センチ
ビオラのオリガと
第２バイオリンのターニャが40ｾﾝﾁ
最後に 第１バイオリンの
コンスタンチンが 50センチよ
で… 楽器は全部
20センチってわけか
でも 実際の楽器は
それぞれ大きさが違うんですよね
あたしのパートの このビオラは
65から66センチで
バイオリンより 少し大きいの
バイオリンは 60センチ
チェロになると ぐっと大きくて
120センチ
最低音のコントラバスは
180センチから２メートルもあるわ
美雪 何か書くもん貸してくれ
え？
うん
そうか そういうことか
え？
分かったぜ
この暗号の答えが！
ホントなの はじめちゃん？
ああ 同時に
山之内恒聖の遺書の隠し場所もな
す… すごい　じゃあ 残るは
密室殺人の謎と
真犯人の正体ですね
密室殺人のほうは
今んとこ分かんねえけど
犯人の おおよその見当は
ついてるぜ
え？
ええっ！
佐木 もういっぺん
お前の撮ったビデオを
洗いざらい見せてくれ
俺の記憶が正しいかどうか
確かめたいんだ
も もちろんです
うれしいな　今回も僕のビデオ
大活躍じゃないですか
助手冥利につきますよ
エヘヘヘヘ… まったく
お前を連れてきて よかったよ
セ… センパイ
そんな言葉かけてくれたの
初めてですよ
いつも どっちかといえば
邪魔者扱いして
ハイハイ どうどうどうどう
えーと…
あ ここからですね
この館に着いたとき
次は 時計塔の部屋
次は 抜け穴探しのときですね
ここは 幽月さんの部屋
そして ここは梅園さんの部屋
次は 犬飼さんの部屋
ここは
七瀬センパイの部屋ですね
これは…
あ メイドの桐江さんの部屋
確か 有頭さんの部屋には
何もありませんでしたよね
はじめちゃん
これだけで何か分かるの？
ああ もう十分だよ
え？
やっぱり 俺の記憶は正しかった
犯人のコンダクターの正体が
ハッキリと分かった
そ… それじゃ はじめちゃん
いよいよ 大詰めっすね
だが その前に やることがある
やること？
ああ
まだ それだけじゃ
完全とは言えない
もう一つ 謎が残っているんだ
ああ 幽月さんの密室の謎ね
ドア下の すき間も窓も
トリックに利用できる感じじゃ
なかったし
マスターキーも しっかり
ストッカーに はまってたし…
そうそう あのマスターキーが
くっついてるヒモ
あれ 一見外せそうで
全然ダメなんですよね
あれなら あたしもやってみたわ
でも 何度やっても
鍵のほうが長すぎて
取れないようになってるのよね
あのヒモが ゴムみたいに伸びれば
簡単に外れるんですけど
どちらが先に犯人の正体を
突き止められるか
勝負でもしましょうかね？
もっとも 私が勝てば
犯人自身の死体が
転がり出るだけですけどね
高遠は すでに
この密室の謎を解いている
あいつが
犯人の正体を突き止めたら
何のためらいもなく
犯人を血祭りに上げるだろう
そんなことになる前に
何としても
密室の謎を解かなければ
だ… 誰？
だっ 誰よ そこにいるのは！
追う者と 追われる者
これは宿命なのか？
幽月さんが殺された密室トリック
その謎を
あいつは すでに解いている
真犯人の正体を知れば
あいつは 必ず…
待てよ
キーストッカーの この形
そのとき 静寂を破り
露西亜館に悲鳴が響く
まさか… くそっ
この俺が必ず食い止めてやる
金田一少年の事件簿
推理作家 山之内恒聖の
遺産をめぐって
５人の遺産相続候補者たちが
北海道の露西亜館に集まった
だが ５体のロシア人形と
それに関わる暗号文を解くべく
館に赴いた俺たちの前で
謎の殺人者
コンダクターの手により
次々と
候補者たちが殺されていく
そして…
だっ 誰よ！
分かったぜ
ロシア人形の暗号の答えも
真犯人コンダクターの正体も
本当 はじめちゃん？
ああ
残るは あの幽月さん殺害の
密室の謎だけだ
まず 一番可能性として高いのは
糸やヒモのようなものを使って
ドアの下の すき間から
鍵を送り込むパターンだ
でも センパイ
ドア下の すき間は
ほんの少しだし そもそも鍵は
ピッチリ閉まった引き出しの中に
あったんでしょう？
そんな二重の困難を
クリアするのは
絶対に不可能ですよ
ま パッと見はな
う… うーん
鍵の尻尾のところだけなら
ギリギリ入るんだけどな
何か こう
知恵の輪やパズルみたいに
するっと入る やり方があるとか
下がダメなら 上は どうなの？
よっ！
ここも 入りそうもないわ
そうか？
もう ちょっと頑張ってみてくれよ
無理よ
えー？
だって これ下の すき間よりも
狭くて
イヤ… もうちょっと このまま
下の すき間で挟まれていたいの
頭ごと ブッ飛ばしてほしいの
ああ… 縦にしても横にしても
斜めにしても
ドアの すき間からは無理だ
やっぱり
地獄の傀儡子が
犯人なんじゃないんですか？
殺人マニアなわけだし
いや あの男は
殺人を芸術だと思っている
もし やつが犯人なら
俺に堂々と宣言して
謎解きを吹っかけてくるはずだ
そういう男なんだよ
地獄の傀儡子ってやつは
なあー ちくしょう！
やだ！値札つけっぱなし
いけね 引きちぎって…
ダメよ 無理に ちぎっちゃ
ハサミを使ったほうが
いいんじゃない？
ん… 待てよ
え？
うん？
ひょっとしたら…
はじめちゃん どうしたの？
急にフロントへ来て
あ… ひょっとして
鍵を つないでいるヒモを
ハサミで切ったんじゃないかって
ことですか？
でも これは
特殊な金属でできていて
簡単には切断できないって
第一 切ったら
あとは どう つなぐの？
うん…
簡単に外せそうなんだけどな
やっぱり 無理か
ヒモの長さが足りなくて
キーが くぐらない
このヒモが
ゴムみたいに伸びるとか
鍵が縮まないと
｢このヒモが ゴムみたいに
伸びるとか鍵が縮まないと｣
本当に そうなのか？
何か 見落としてる気が…
待てよ もう一つあるじゃないか
え？
そうか なるほど
奇術師の高遠が
あっという間に見抜くわけだ
この館は
奇術師が作ったパズルの館だ
この密室トリックも もともと
この露西亜館にあったパズルを
応用したものだったんだ
そ… それじゃ
ああ
謎は すべて解けた
え？
よし それじゃ
すぐ みんなを集めましょう！
いや
その前に やっておくことが
はじめちゃん
た… 高遠
まさか… 先に真相を？
キャアー！
えっ 何だ？
想子さん！
キャアー！
今度は何事ですか？
みんな 下がって！
それ以上 近づかないで
梅園先生まで
とうとう
ソロに なってしまいましたね
犬飼君
分かりました
犯人 コンダクターの正体が
何だって！
この 梅園さんの服に
ついているものが
何だか分かりますか？
犬の毛ですよ
猟犬として飼われる
ポインターの毛だ
そうですよね 犬飼君？
家で たくさんの猟犬を
飼っている君なら
よーく
知ってるんじゃないですか
犬の毛というものは
飼い主も気付かないうちに
体の あちこちに
こびりついてるものです
君は 彼女と
もみ合っているうちに
ワンピースに
飼い犬の毛を残してしまった
うかつでしたね
ち 違う！
そんな 犬の毛なんかで
僕が犯人だなんて
決めつけないでくれ！
そうだ
たった それだけの証拠で
決めつけるなんて
何よりの証拠は 犬飼君
君が生きていることです
梅園さんが いなくなり
遺産相続の候補者は
君１人に なってしまった
君が ここで暗号を解き
遺書の在りかに たどりつけば
巨額な遺産が
すべて君のものとなる
これ以上の状況的証拠は
ほかに ありませんよ
どうやら この賭けは
私の勝ちのようだな
金田一君
か 賭け？
ええ
実は そこの金田一君と私は
因縁深い つきあいでしてね
そう
追う者と追われる者として
ああ…
ア… アンタは
指名手配中の殺人犯！
実は 金田一君と
どちらが先に犯人を突き止めるか
賭けをしたんです
もし 彼が勝てば
犯人コンダクターは
司法の裁きを受け
私が勝てば
私自身が裁きを下す
とね
そ… そんな めちゃくちゃな
ウワーッ！
ま 待ってくれ
た… 確かに
梅園先生を死なせたのは僕だ
でも 殺したわけじゃないんだ！
逆に梅園先生が
僕を殺そうとしたんだよ
僕を犯人だと決めつけて
襲いかかかってきて
それで仕方なく よけようとして
もみ合っているうちに
勝手に頭を ぶつけて
じゃあ なぜ
こんな ちゃちなトリックで
私を おとしいれようと
したんだ？
おとしいれるだなんて…
だって そうだろう
こんな奇術まがいの細工ができる
やつがいるとすれば
この私ぐらいだからね
犯人は私だと疑われても
仕方がない
僕は ただ これまでの殺人と
まぎれさせればと思って
やっただけだ
愚かなコンダクターに死を
キャアー！
犬飼さん！
高遠 きさま！
私は こう見えても犯罪のプロ
いくつもの修羅場を
潜り抜けてきた殺人者だよ
今度は 君が
この刃の餌食になりますか？
金田一君
逃げて はじめちゃん！
み… 皆さん 逃げて！
誰か ロープか何かを
バリケードを作るんだ！
この塔のエリアは
その廊下以外から
行き来することはできません
この扉を封鎖してしまえば
外へ逃げ出すことは
不可能なはずです
どうですかね
あの男は 奇術師だ
今ごろ煙のように
消え失せているかもしれませんよ
それにしても まさか
こんな結末になってしまうとは
結局 候補者全員が
死んでしまった
先生の遺産は このままだと
寄付ということに
なってしまいそうですね
でも 本当に犬飼さんが
コンダクターだったのかしら？
何だか 私 信じられなくて
違いますよ
私は あの高遠とかいう
殺人鬼の仕業だと思いますね
それに 以前にも何人もの人間を
殺めているんでしょう？
ともかく
期日は明後日の深夜０時
あと 50数時間です
それが過ぎれば
翌朝には 迎えの船が来る
手はずになっています
まったく 驚きました
犬飼様の部屋を
一応 調べてみようと思い
ドアを開けましたら
あの隠しクローゼットが
開いていて
中に あの人形が
じゃあ やっぱり
犬飼さんが犯人だったんですね
あ… あの 有頭さん
何です 桐江さん？
え… いいえ
やっぱり いいんです
どうせ
もう何の意味もないことですし
何ですか？
気になるな 言ってください
あ… はい それじゃ
あの 私 ひょっとしたら
山之内先生の出された
暗号の答えが
解けてしまったかも
しれないんです
な 何ですって！
ええっ！
実は さっき 皆さんが集まる前
私 あることが気になって
人形の大きさを測ってみたんです
｢あること｣と言いますと？
ええ
よく見ると
このロシア人形の持っている楽器
種類は違うのに
全部 同じ大きさなんです
それで 私 ピンときたんですよ
もしかしたら
この人形の背の大きさって
楽器の大きさと合わせて
考えたときに
もう一つの意味が
出てくるんじゃないかって
どういうことですか？
ほら 例の暗号文
｢楽団は朝礼で前から順に
首を刈られた｣って あったでしょ
あの｢首｣っていうのは
人形の頭文字のことで
それを人形の大きさの順に
並べるのかなって
ああ それなら 僕も
一番最初に考えましたけど
違うんです
単純に人形の大きい順に
並べるんじゃなくて
元の人間の大きさに戻して
並べ直すんですよ
元の人間の大きさ？
ええ
そもそもバイオリンって
実物は60センチでしょう
それが この５体のロシア人形では
20センチになっていて
同じように
ビオラは 65センチが20センチ
チェロは 120センチが20センチ
コントラバスは
２メートルが20センチ
という具合に作られているんです
このように 楽器の大きさが
すべて同じ20センチっていうのが
重要だったんです
それは 一体？
分かりませんか 皆さん？
楽器の大きさを
それぞれ実物のサイズに戻して
それと同じ比率で
人形も拡大してみるんです
そうすると 見かけの大きさが
まったく違ってしまうんです
ああっ！
私 さっき測って
メモしてみたんです
コントラバスのイワンの背丈は
20センチで
楽器も同じ 20センチ
だから コントラバスを
実寸の２メートルに戻すと
イワンの身長も ２メートルになる
同じ やり方で
チェロのエミールは 180センチに
ビオラのオリガは 130センチ
第２バイオリンのターニャは
120センチ
第１バイオリンの
コンスタンチンは
150センチになります
そして この５人を
背の低い順から並べて
頭文字を拾っていくと
時計だ
この館には 時計は
塔の時計１つしかない！
じゃ まさか 先生の遺書は
時計の塔に何らかの方法で？
その 何らかの方法も
先生の暗号の中に隠されてました
それが ｢さあ 次は数合わせ
２番の子の首を｣
｢５番目の子の首の
右に並べてみてごらん｣
｢楽しいリズムの始まり始まり｣
という くだりです
うん 待てよ
２番の子っていうと
Ｏですよね？
こいつを
５番目のＩの右隣に置くと
あ… 10だ
数字の10ですよ これ！
ええ そうなるんです
そして 楽しいリズムが
時計の鐘の音を意味するとしたら
ああ！
ワア…
確かに この封筒の表書きは
山之内先生の自筆のものです
何という皮肉だ
候補者全員が
愚かな殺し合いをしたあとで…
読み上げます
私 山之内恒聖の出題した
暗号の謎を解き明かし
この遺書の在りかを
突き止めた人間こそが
わが遺産を…
わが遺産をめぐる
連続殺人の真犯人
コンダクターである
何ですって！
どういうことだ？
こ… これは
じょ… 冗談じゃないわ
その遺書は偽物よ
誰かが すり替えたんだわ
すり替えたって 誰が？
ウーン
バレたか
え？
え…
き 金田一さん
まさか あなた
そう
遺書を すり替えたのは
俺どえーす
本物は こっちなんだな
どうぞ 読んでください
私 山之内恒聖の出題した暗号を
解き明かし
この遺書の在りかを
突き止めた人間こそが
わが遺産を手にすることになる
相続資格者は
あらかじめ指名しておいた５名
ただし
暗号解読の期限になった時点で
これら５名の有資格者が
１人もいなかった場合は
資格者に限らず
暗号解読者本人に譲るものとする
ええっ！
ちょ… ちょっと待ってください
ということは…
そう 数十億の遺産は 俺のもの
と言いたいとこだけど
オーイ もう いいっすよ
エエー！
ああ
どういうこと？
見てのとおりさ ２人とも
死んでなんかいなかったんだ
全部 芝居だったんだ
芝居とは心外だな
マジックショーと
言ってもらいたいね
ま あまりにも
基本的なトリックだが
で… でも あのとき梅園さんは
あの首のあったテーブルの下に
斜めに鏡が張ってあって
周囲の壁を映し出し
からっぽのように錯覚させる
マジックの基本トリックです
テーブルの下に鏡を張って
梅園さんの体が隠れる空間を
作ってあったのです
し… しかし
あのとき 梅園様はイスに
あれは 幽月さんです
みんなが反対したのに
あたしの服を着せろって
それくらいやらないと
用心深いコンダクターは
納得しないと思いましてね
で… でも
なぜ こんなことを？
１つは 真犯人に
残るターゲットである２人が
死んだと思わせ
これ以上の殺人を防ぐため
そして もう一つは
この２体のロシア人形を取り戻し
それによって 今回の殺人事件の
本当の真犯人を あぶり出すためさ
想子さん
え？
アンタは
まんまと俺の仕掛けたわなに
掛かってくれたよ
そして 俺たちの目の前で
あたかも
今しがた気付いたかのように
暗号の謎を解き明かし
自分自身に殺人を犯す
動機があることを証明してくれた
遺産相続資格者である５人が
全員いなくなれば
この遺書に従って
暗号の謎を解き明かした者が
山之内恒聖の遺産を
手にすることになる
事前に暗号を解いて
遺書を盗み見た想子さんは
この事実を知って
全員を殺害する計画を立てたんだ
違うかい 桐江想子さん？
そんな
き… 桐江さんが
いやだわ 金田一さん
私は この人形を見て
たまたま答えが分かっただけで
じゃあ どうして
俺が すり替えた遺書が
偽物と分かったんだい？
え…
この内容だけ見れば
山之内恒聖の いたずらだと
思うことはあっても
この遺書が偽物で
誰かが すり替えたとは
言えないはずだ
これが偽物だと分かるのは
あらかじめ本物の遺書の内容を
知っていた人間だけだ
ち… 違うわよ　たまたまよ
たまたま そう思っただけよ
いいだろう アンタがやる気なら
こっちも受けて立つ
なぜ人形が盗まれ
なぜ それが暗号に見立てられ
遺体とともに現れたか
なぜ 大時計が５分進み
そして また元に戻ったか
そして 幽月さんを
密室で殺したトリックの答え
その すべてを
この場で解き明かしてみせる
それは すべて
あいつの わなだったんだよ
アンタが犯行現場に残した人形
それが 皮肉にも
アンタが犯人である
動かぬ証拠になってしまったのさ
コンダクター
あいつの見せた心の闇に操られ
もう これ以上
罪を重ねるのは やめるんだ
俺が推理で
それを たたき切ってやる
俺自身の誇りにかけて
金田一少年の事件簿﻿北海道の とある湖に
そびえる露西亜館
推理作家 山之内恒聖の残した
ばく大な遺産をめぐり
５人の遺産相続候補者たちが
集まった
だが 謎の殺人者
コンダクターの手により
次々と殺されていく
遺産相続候補者たち
すべて アンタが仕組んだことさ
違うかい 桐江想子さん？
いや 殺人者 コンダクター
そ… そんな
桐江さんがコンダクター？
ひ… ひどい言いがかりだわ
金田一さん
私が コンダクターだなんて
一体 何を証拠に
そんなことを言うんですか？
証拠は たった今
アンタが俺らの目の前で
暗号を解いたことさ
どういうこと？
だいたい アンタが
なぜ 初日に持ち去られちまった
ロシア人形の大きさを
そんなに正確に知ってるんだ？
それなら さっき言ったじゃない
つい さっき
皆さんが集まる前に
ふと思いついて測ってみたって
つい さっきですか？
え… ええ
田代さん このメジャーで
人形を測ってくれませんか？
あ… ああ はい
えーと
コンスタンチン 50センチ
これを 実物大に換算すると
150センチ
ターニャ 40センチ
次は オリガ… 同じく40センチ
エミール 35センチ
えっ…
イワン 20センチです
それを
背の低い順に頭文字を並べると
どうなる 美雪？
えーと…
これじゃ 暗号は解読できないわ
そう ここにある人形をもとに
暗号を解いても
頭文字は
｢ＴＯＫＩＥ｣となるだけで
｢時計｣に たどりつくことは
できないはずなんだ
そんなバカな！
こ… これは
ああ
そいつは エミールじゃない
恐らく アンタは
その５体のロシア人形を見て
すぐに 何らかの方法で
暗号の謎を解き明かし
10時になるのを待って
そこの人形の後ろの窓から
降りていった
ところが そのとき
ポツポツと雨が降り始めたんだ
雨は やむどころか
どんどん強くなってくる
アンタは あせった
ビショ濡れになるのを
待っているわけにもいかず
10時５分前だった時計の針を
５分だけ進め
時計に仕掛けられた
隠し扉を開けて
遺書を取り出したんだ
たった５分だし
あとで針を戻しておけば
問題ないと思ったんだろうけど
運が悪いことに そのとき
俺も たまたま
腕時計を見ていたんだよ
遺書を見たアンタは
候補者が全員死ねば
遺書の発見者に
遺産が転がり込むことを知り
全員を殺し終えたあとで
あたかも たった今
思いついたように暗号を解き
幸運な偶然を装って
遺産を独り占めにする
それが アンタの計画だった
ところが 遺書を盗むために
時計の下に降りたとき
アンタは
大きなミスを犯していたんだ
遺書を取り出して戻るころには
雨は土砂降りになり
風も強く吹いていた
そのせいで
窓際に置かれていた人形が
ビショビショに
濡れてしまったんだよ
じゃあ 犯人が人形を持ち去った
理由っていうのは
ああ ビショ濡れの人形を
そのままにしておいたら
時計に近づいたことが明白になり
暗号のヒントになっちまう
そこで この失敗を暗号に見立てて
殺人を行い
巧妙にカバーしようと考え
暗号文の
｢前から順に首を刈られた｣
という部分を利用して
人形の背の低い順に
殺人が行われていると
見せかけたんだ
そうか だから
その日のうちに殺してしまった
神明先生の場合は
人形が濡れていることが
バレないように
バスタブに浮かせておいた
ってわけか
それじゃ
宝田さんのエミールは？
人形は小さいほうが
当然 服も乾きやすい
それだけのことだったんだよ
うん？
すごいわ 金田一さん
すごい想像力ね
まるで ミステリー作家みたい
でも
私は遺書を盗み見た覚えはないし
人形を盗んだり
殺人を犯した覚えもありません
ただ これだけは認めるわ
確かに私は
初めて あの人形を見たときから
暗号の答えが分かっていました
トリックノートのようなものを
見たんです
えっ？
よく分かりませんが
今 梅園さんが使っている部屋の
隠し金庫の中で
以前に見つけたんです
これは…
ほら そこに書かれているのよ
ロシア人形と
時計の仕掛けを利用した
暗号のトリックもね
いろいろなトリックが
びっしり書き込まれている
ほら
先生のデビュー作のトリックまで
それじゃ
山之内先生のメモかしら？
いえ 筆跡が少し
違うような気がしますが
私は このメモを見て
何となく 遺書の隠し場所は
分かったんですけど
ずっと黙っていたのが
気まずくて
つい さっき
思いついたふりをしただけ
それだけなのに
犯人扱いされるなんて
もちろん それだけじゃないさ
佐木 例のビデオを
はい
これは 俺たちが
最初に目にした人形の映像だ
今と比べて 変わっているものが
あるのに気が付かないか？
変わっているもの？
何なの？分からないわ
スタンドの傘ですね
そう 今あるのと違う
本当だ　模様が全然違う
でも どうして？
簡単なことですよ
人形と同様に このスタンドの傘も
雨に濡れてしまい
乾くまで どこか別の傘と
すり替えておく必要があったんだ
では すり替えられた傘は
どこへ行ったのか？
桐江さんの部屋に 同じ傘が…
そういうことです　さあ
これを どう説明するんです？
想子さん
幽霊よ
山之内先生の幽霊の仕業よ
そうとしか考えられない！
何 訳の分かんないこと
言ってんの アンタ？
だって そうじゃない
３番目の犠牲者の幽月さんは
完全な密室で殺されたんですよ
皆さんも見たでしょう
それとも 高遠さん
やっぱり
あなたが犯人なんじゃない？
あなただったら
抜け穴から こっそり外に出て
マスターキーを
手に入れることができるわ
よせ！想子さん
いいかげんに 罪を認めてくれ
私は やってないわ
できっこないじゃない
密室殺人なんか！
できるんだよ
アンタは この館に
さまざまに仕掛けられた
パズルめいた
からくりを利用して
あの部屋を
密室に見せかけただけなんだよ
どういうことですか
からくりを利用して
密室に見せかけた？
例えば 宝田さんが殺されたとき
俺と高遠が
部屋の隠し扉を発見したのも
アンタにしてみれば
計画の一部に過ぎなかった
本当は あのとき
すでにアンタは
隠し扉なんか使わなくても
鍵の掛かった客室すべてに
自在に出入りする方法を
手にしていたんだ
冗談じゃないわ
私が どうやって密室に
出入りしたのよ！
もちろん マスターキーを使ってさ
でも はじめちゃん
マスターキーは
キーストッカーに はまってたし
そう それこそが
マスターキーに ほどこされた
心理的な わなだったんだ
田代さん キーを お願いします
あ… はい
このマスターキーの
キーとリングを結ぶヒモは
特殊な繊維で できていて
切断することができない
つまり
キーストッカーから外さなければ
ﾏｽﾀｰｷｰを使うことができないと
思い込まされていたんだ
だが その心理的な わなに
とらわれなければ
実際は 簡単に… ほら
キーは外せるのさ
あ…
そんな
どうやって？
俺たちは
本当は何の意味もない
厳重そうなキーストッカーに
惑わされ
この心理の鍵を開けることが
できなかっただけなのさ！
まず 外したい鍵を
ここに１つ残し
ほかの鍵は 輪のほうへ送る
この キーホルダーの
奇妙な形が重要なんだよ
美雪
輪っかのほうを持っててくれ
これで いいの？
ああ
確かに このままじゃ
外そうとしても
ヒモが短くて外れないけど
こんなふうにして通してやると
ほら ヒモの長さに関係なく
あっ 外れた
こ… こんなに簡単に
驚いたな
ホント
そんなトリックがあったのか
こんな具合で 最初っから
キーストッカーに
鍵なんか必要なかったんだ
この程度のトリックなら
私にとっては
考えるまでも
ありませんでしたがね
まだ 何か言うことがあるかい？
想子さん
分かったわよ
認めりゃいいんでしょ 認めりゃ
そうよ あたしが やったのよ
あたしが あの３人を殺した
コンダクターよ！
桐江君
アラ 何よ その顔？
ハハハ アハハハハ…
まさか あたしが 本当に純情な
田舎娘だとでも思ってたの？
言っとくけどね あたしはね
こう見えても
アンタらなんかより
ずっと修羅場を くぐってんだよ！
なぜだ　想子さん
たかが金のために
何で人殺しなんか…
たかが金？
フッ そんなこと言えるのは
アンタが苦労知らずの
すねかじりだからよ
世の中すべて 金 金 金よ
あたしは金が欲しかったのよ
山之内の残した何十億という金が
それが もともと あたしのものに
なるはずだったと思えば
なおのことね
想子さんのもの？
そうよ このノートが
何よりの証拠よ
それは
山之内先生のトリックノートじゃ
違うわ　このノートは
あたしの父が書いたものよ
何だって… それで筆跡が
父は 親の跡を継いで
貿易商になったものの
本当は もともと文学青年で
ミステリー作家になるのが
子どものころからの夢だった
このノートは
そんな父が学生時代から
少しずつ書きためていた
トリックノートなのよ
いつか自分の手で
これを小説にして発表したい
そんな父の夢を あたしは
ひざの上で何度も聞いてきたわ
想子 実はね
また新しいトリックを
思いついたんだ
この露西亜館を舞台にした
お話で それから
ロシア人形を使った暗号もね
うーん 何か難しそう
ねえ 答えは？
このノートに書いてあるよ
でも 答えは自分で考えなくちゃ
そのころ 父の大学の
ミステリー研究会の
友人だったという男が
時々 お金を借りに
この館に やってきたの
あたし 何となく覚えている
ギョロギョロした目が印象的な
やせ気味の男だった
そうだ 恒ちゃん
作家修行中の君に
ぜひ 見てもらいたいものが
あるんだ
私の考えた
ミステリーのトリックなんだけど
ほう トリックね
どうかな？
うーん…
その最初のやつなんか
結構 自信作なんだが
あ… いやいや 失敬
なかなか奇想天外だが
小説には ならないよ
残念ながらね
そうか
まあ 君が言うんだから
そうなんだろうな
スマン スマン
つまらんものを見せてしまって
ハハハ…
それから しばらくして
父は 仕事先のヨーロッパで
事故に遭って急死してしまい
この館も 二束三文で人手に渡り
それからは話したくもないような
人生だったわ
ねえ 金田一君
とうの昔に落としてしまった
大金の詰まった財布を
思いも寄らない場所で
偶然 見つけたとしたら
あなた どうする？
拾うでしょう 当然
ほかに手を伸ばそうとしている
連中を押しのけてでもね！
そう あれは３年前だったわ
皮肉な運命のいたずらよね
すいませんね 先生
こんなところしかなくて
あ いや 結構 結構
アラ このオヤジ
どっかで見たような…
お父さんに お金を借りにきてた
あの男じゃない
マア 山之内先生ですよね？
あの有名なミステリー作家の
宝田君
私の本を出してくれたまえ
彼女たちにプレゼントだ
はい
私の記念すべきデビュー作
｢露西亜人形殺人事件｣だ
その本に書かれたトリックや
設定は お父さんが
あたしに話して聞かせてくれた
内容そのものだった
あの男は 父のノートを見て
ミステリーのネタを盗んで
デビューしたに違いない
そう確信した あたしは
作家修行をしたいと偽って
山之内の家に メイドとして
入り込むのに成功したわ
そして あたしは
ハッキリと この目で見たわ
山之内が父のトリックノートを
読みふけっている姿を
間違いなかったわ
あいつの作品は ことごとく
父のアイデアを そっくりそのまま
盗用したものだったのよ
どう 分かった？
ここに あるものは
みんな あたしのものなのよ
山之内が小説にならないなんて
言わなければ
父は これを作品として
発表していたはずだわ
分かるでしょう あたしのものに
なるはずだったのよ
この館も 何十億っていう財産も
何もかもね！
あっ
何をする気だ？
ダメだ 桐江さん
近寄らないで！
もう終わりにしてやるんだから
あたしの最悪の人生なんて
もう いらない
よせ 想子さん！
バイバイ
名探偵君
アアーッ！
バ…
バラ？
これで約束は果たしましたよ
金田一君
高遠
どちらが先に真相を解き明かすか
その勝負は 君の勝ちだ
確か 君が勝ったら
犯人の命を助けるという
約束だったはずです
ま… まさか
今のは アンタが仕組んだ
マジックなのか？
桐江さん 探偵に
ちょっと追い詰められたくらいで
死を選ぶようでは
冷徹な犯罪者には成りえません
あなたは たった今 一度死んだ
生まれ変わる気があるなら
もう少し自分のあるべき姿を
見つめ直してみることですね
おや 霧も晴れたようですね
美しい湖に浮かぶ
壮麗なロシア建築でも眺めながら
空の旅と しゃれこみますか
あ…
くそっ
それでは 皆さん グッドラック
あ… 気球で
高遠
でも どうしてだろう？
あの地獄の傀儡子が
約束だからって
桐江さんを助けるなんて…
自分と重なったからじゃないのか
やつを連続殺人に走らせた動機は
母親が残した 魔術の
アイデアノートだったじゃないか
偶然とはいえ よく似た理由で
犯罪を犯した彼女に
ちょっとばかり
同情しちまったんじゃないのかな
そっか あの人は桐江さんに
昔の自分の姿を見たのね
ホントか いつきさん？
ああ
こいつは まだ
上がったばかりのゲラなんだが
山之内の未発表作品さ
お前らが北海道に行ってる間に
代理人から
編集部に送られてきたんだが
いつきさんの言うとおり
この小説は
まるで今回の事件そのままだった
一体 どうして…
さあ 名探偵と地獄の傀儡子の
勝負の行方は！
どうなんの？
残念だけど 今日は ここまで
さあ お帰り
恐ろしい怪人が やってくる前に
ワアー！
どうやら君も その山之内の遺稿を
読んだようですね
アンタも読んだのか？
ええ
君も もう気付いているでしょう
あの連続殺人の
本当のコンダクターは
山之内恒聖 本人だってことに
殺人を企てたのは想子さんだ
そんなことまで
山之内が計算してたっていうのか
山之内は 彼女の正体にも
とっくに気付いていた
可能性が高い
つまり あの暗号ゲーム自体が
桐江想子を殺人へ誘う
巧妙な わなだったんです
君も 幽月さんから
聞いているでしょう？
例の挿絵事件 笑って許したという
山之内でしたが
その本心は 憎悪で
煮えたぎっていたに違いない
担当の宝田編集者は
原稿の取り立てが
しつこかったそうですし
評論家の神明は 山之内の作品を
何度となく批判した
作家の梅園は 山之内の愛人で
そのとき盗んだアイデアで
山之内も取れなかった
大きな賞を手にした
犬飼は… 彼は ただの隣人じゃ？
彼が飼っていた猟犬は
とてつもなく うるさい鳴き声を
発していたそうです
作家として集中しなければ
ならなかった山之内としては
いちばん殺してやりたい
相手だったかもしれない
ま… まさか そんなことで
どうしてですか？
ピアノが うるさいことが原因で
隣人を殺してしまうことだって
ありえない話でもない
アンタ
そんな くだらないことを
言いにきたのか！
精かん気取りの君に 誰にでも
持っている心の闇の部分を
少しは分かってもらいたくてね
ふざけるな　俺は認めないぞ
アンタみたいな人間は！
結構
しょせん 私たちは
決して交わらない並行線
だが 平行線は交わりこそしないが
いつも隣にある
まるで 双子の兄弟のようにね
待て 高遠！
アンタは 一体…
また会いましょう 金田一君
今度は 殺人事件という
美しい舞台の主役同士でね
何が双子だ
そうやって お前が
芸術犯罪とやらを振りかざすなら
俺は 推理で
それを たたき切ってやる
俺自身の誇りにかけて！
名画｢朝日のあたる家｣を
狙って届けられた１通の予告状
差出人は… 怪盗紳士？
剣持のオッサンいわく
この厳戒態勢を かいくぐって
名画を奪いに来るとは
それにしても このメッセージ
｢本物の朝日が
三度 昇るまでに｣って
ヨッシャー
今度こそ 俺が捕まえてやる
じっちゃんの残した
あの言葉にかけて
金田一少年の事件簿
名画｢朝日のあたる家｣を
本物の朝日が三度昇るまでに
頂戴に参上
とうとう３日目の朝ですな
せっかく楽しい
余興になると思ったのに
現れずじまいでしたな
でも 先生
あの怪盗紳士に
狙われたというだけでも
絵の知名度は
ますます高まりますわ
名画泥棒が より一層の名画に
仕立て上げてくれるというわけだ
とにかく絵が無事で
よかったですわ
全くですよ　絵にかけられた
何億もの保険金を
支払うことになってると思うと
僕は
気が気じゃなかったんですから
まだ怪盗紳士が現れないと
決まったわけでは ありませんぞ
え？
予告状には｢本物の朝日が
三度昇るまでに｣とありました
確かに今日は予告状が
届けられてから３日目の朝ですが
あいにくの雨
つまり次の朝日が昇るまでは
この絵は狙われ続けている
お楽しみは これからか　ふん
気をもませてくれるわい
そんな悠長な
でも さすがに眠気が
押し寄せてきたわ
あとは警察の方々にお任せして
少し休みますか
異議なし
やれやれ お互い大変ですな
あとは頼みましたぞ
怪盗紳士 逮捕の時は
うちの独占スクープってことで
よろしく 刑事さーん
あのー
はい
コーヒーでも…
あ いや お構いなく
では
いただいたわよ
わあ！
うふ
はっ 誰か！
せ 先生が！
何てことだ
ふ 藤田さん
救急車だ　早く！
はい
そういえば
こんな雨の日だったなあ
ちっちゃい頃 ２人で
はじめちゃんの
おじいちゃんの お見舞いに
行ったことがあったじゃない？
ああ あの病院は確か
こんな長い坂の上にあったっけか
そうそう
ああ ははっ　スッキリしたって
ちゃんと手 洗った？
雨で洗ったー
あの時ね
ああ？
雨やまないかなーって
空 見上げてたらさ
はじめちゃんの おじいちゃん
ありのままを見つめれば
本当の姿が見えてくるって
言ったの覚えてる？
あれ どういう意味だったのかな
さあ
さあって
分かんねえ
それでも名探偵の お孫さん？
はあ？何でそうなるんだよ
もういーい
あら？
何か あったんじゃ…
おっさん 事件 起きたのか？
ああ 遅かったじゃないかよ
この方たちは？
私が捜査協力を依頼した者です
七瀬です
金田一っす
こんなｷﾚｲな人がいるんだったら
早く来りゃあよかった…
はじめちゃん！
はい
うわはは はは
おもしろい方
ん？
ですから警察の厳戒態勢を
くぐり抜けて怪盗紳士が
現れたんですよー
その姿を見られたために
先生を襲った
命を取りとめたのは幸いだったが
私が言いたいのは…
スッゲー豪邸だな こりゃあ
おおー これかあ
朝日のあたる家ってー
はじめちゃんっ！ごめんなさい
感激だなー
風景画の名匠
西山海里画伯が
唯一 ご自分の家族を
題材にした作品
そして彼の遺作です
何だか優しい絵ね
だ 誰ですか？
彼は金田一といって 以前
｢我が愛する娘の肖像｣を
怪盗紳士の手から
救ったのが彼なんです
ええ！
こんな子供だったの？
へえ
とにかく あんな事件の
起こった家の中に
絵を置いとくのは危険すぎます
銀行の地下金庫で保管しよう
手配は私が
待った
ん？
そうやって まんまと絵を
持ち去るってわけかい？
何！
警察の話では
先生が襲われた時間帯に この家に
出入りした人間はいないらしい
となると 始めから ここにいた
誰かが犯人である可能性が高い
確か 怪盗紳士は変装の
名人だとか
私は怪盗紳士じゃ ありませんよ
そんなこと言うなら
安岡さんだって
怪しいんじゃないですか？
ええ？
先生とは親しくもなかったのに
このところ頻繁に
ここへ通ってた
それは あの絵の特集記事を
うちの雑誌で組むからで
だったら遠藤さんは どうなの？
テレビ番組の取材でパリに
行ってるはずじゃなかったの？
あの絵が大変な時に
おちおち仕事もしてられなくてね
怪しいもんだ
おい
だから この絵を…
やめて下さい
よってたかって この絵を
もて遊ぶのは やめて下さい
絵がかわいそう　先生を襲った
怪盗紳士が この中にいないとは
言い切れないけれど
でも この絵をどうするか
決める権利のある人も
いないはずです
藤田さんって自分でも
絵を描いていたのねえ
犯人は この灰皿を凶器に
使ったらしい
指紋は採取されなかったがなあ
しっかし ホコリだらけだなあ
窓から誰かが侵入した形跡は
なかったんだろ？
ああ 襲われた藤田以外の４人には
事情聴取をしたが
朝方 部屋に引き上げてから
藤田を発見するまで
このアトリエには
入っていないと言っとる
だが金田一 あの怪盗紳士が
人を襲ったりすると思うか？
さあねえ
京香さん？
あっ あの
お茶を入れましたので
京香さん
はい
家の中 案内してくれません？
わーあ お宝の山だなー
わあ
ここにあるもの
全部売っぱらったら
いくらになんだろうな？
はじめちゃん！
これなんて 高えんじゃねえのー
ダメよ　素手で触っちゃ
ちぇっ！減るもんじゃないし…
｢ちぇ｣じゃない
どうぞ ご覧になって下さい
すいません
で これ いくらっすか？
もう！
広い お庭って気持ちいーなあ
晴れた日にゴロゴロしたーい
あ！あそこの窓って あの絵の
置いてある広間のですよね？
ええ
いい景色が見えるのに
何で すりガラスなんだろう？
ひと月前 どかかのカメラマンが
先生の未発表の
コレクションを窓から
盗み撮りしようと
したことがあって
それで先生が お怒りになって
外から のぞかれない
すりガラスに変えたんです
へーえ　あれは？
電気を供給する変電施設です
えっ あ じゃあ 夜中に
あそこをぶっ壊されでもしたら
家ん中 真っ暗じゃないすか
もし停電になっても
非常電源が働いて
１時間は電灯がともるように
なっていますから
だとすると…
あ？
いや こんなとこに住めるなんて
美術鑑定士って もうかるんだな
ひとの作品を富と名声を得る
道具にしているだけですよ
自分が作ったわけでもない作品に
ああだ こうだと
勝手な理屈をつけて
その価値を決めてしまう
それが鑑定という仕事
ビジネスなの
でも きっと本当に絵とか
好きじゃなきゃ
やれない仕事だと思います
京香さんだって…
そうね
いいか ここが正念場だ
警戒を怠るな！
はっ
来るなら来やがれ 怪盗紳士！
今度こそ ふんづかまえてやる
うわああ まったく
いよいよ ３度目の朝日が昇るか
この絵って何で
｢朝日のあたる家｣なんて
題名なんだろう
え？
どうして？
だって これ 夕方の風景を
描いたもんだぜ
なぜ知ってるの？
その隠された真実を
え？
その題名が西山画伯の
いたずら心で
名付けられたものだということは
つい先日 藤田先生が
発見した画伯の日記によって
初めて分かったことなのよ
ああ 日記なんか見なくても
絵をよく見れば分かりますって
まさか
ほらあ
ここの洗濯物ですよ
洗濯物？
朝に洗濯物 干すのは普通じゃない
いや これは干してるんじゃなくて
取り込んでるんです
ええ？
この絵が もし
洗濯物を干してるんだったら
カゴの中の物が
こんなに ふんわりしてるのは
おかしいってことね？
ピンポーン！つまり これは
夕方 夕日を浴びながら
干してあった洗濯物を
取り込んでる光景を
描いた絵なんだ
なるほど
うんっ
あ… 待てよ
はじめちゃん？
うわっ
もしかしたら
はじめちゃん
美雪
じっちゃんが言ってたんだよな？
ありのままを見つめれば
本当の姿が見えてくるって
う… うん
そして こうも言ってた
目に見える物の奥に
さらに真実が隠されている
ヤツは今夜 必ず動く
おっさん
どうした 金田一
何を慌てて…
やっと確信したよ
怪盗紳士は この中にいる
この中に怪盗紳士が？
やっぱり… 誰だ
誰が藤田先生を襲ったんだ
わ 私じゃないわ
慌てない 慌てない
何？
まずは名探偵君の推理を
拝聴しようじゃないか
オレ 犯行現場を
見せてもらった時に すぐ
おかしなことに気がついたんだ
おかしなこと？
凶器になった灰皿と
何かを探していたかのような
手の跡さ
おそらく藤田さんを襲ったのは
突発的な犯行だったと思う
もし計画的に藤田さんを
襲うんだったら
あらかじめ犯行に及ぶ凶器を
用意していたはずなのに
机の上に置かれっぱなしの
ｶﾞﾗｽ製の灰皿が凶器だったからね
それが どうした？
安岡さんは あの時 大きな物音で
アトリエに行ったんですよね？
えっ ええ　その時には
倒れている藤田先生以外
誰も見なかったわ
だとしたら手の跡は犯行が
起こる前に ついていたことになる
つまり 犯人は
指紋を残さないように
手袋をして何かを探していた時
そこに現れた藤田さんに
見とがめられ
おそらく とっさに
犯行に及んだんだ
ええ？
その人物は
美術品をこよなく愛し
尊敬の念を
抱いていたんでしょうね
みんなが｢朝日のあたる家｣を
めぐって言い争いをしていた時
絵がかわいそうと
嘆いていたことでも分かります
まさか
森京香さん
あなたは職業柄 いつでも
美術品に触れたりできるように
真新しい手袋を
いくつも持っている
その あなたが
オレと美雪が ここへ来た時
ホコリで汚れていた手袋を
していたのをオレは見た
その汚れはアトリエで
何かを探していた時に
ついたものじゃないんですか？
だが金田一 汚れた手袋を
ずっとしてたってのは妙だぞ
突発的な犯行だったとはいえ
自分のやったことに恐れをなし
我を忘れていたんでしょうね
手袋のことなんて
気にも止めなかった
違いますか？京香さん
あなたの言うとおりよ 金田一さん
き 君が！
藤田先生を…
京香さん
あの絵に描かれている女の子は
私なの
何ですって？
じゃ 君は
西山画伯の一人娘？
父は絵を描くために
日本中を歩き回ってばかりいて
ほとんど家に寄りつくことの
ない人だった
その父が不治の病に
侵されていると分かってから
一心不乱に１枚の絵に
取り組み始めた
それが あの絵
家を眺めて絵を描く姿が
私の中に唯一残っている
父の記憶
父にとっても あの絵を
描いている時に見ていた私の姿が
父の中に残っている
唯一の記憶だったでしょうね
たった一度だけ
一緒に過ごした時間が
あの絵には描き込まれてるの
父は言ってくれたわ
あの絵だけは
誰にも売るるもりはない
お前に残すために
描いたんだってね
その絵が
どうして藤田先生の所に？
父が亡くなってから かなりの
借金があったことが分かって
残された作品を売ることになった
その時 やって来たのが
藤田だった
あの男は すぐに
あの絵に目をつけたわ
風景画の名匠
西山海里が
唯一 描いた家族を描いた
絵となれば
価値が出るに
決まっていると踏んだのよ
私は泣きついて
すがりついて頼んだわ
私の大切な宝物を返してって
それを あの冷酷な金の亡者
あの心のこもった絵を
あの男が持つ資格はないわ
だから私は…
大切な絵を取り戻す機会を
うかがっていたと
だって 私の絵なんだもの！
絵を金もうけや名声を得るための
道具としてしか
見ていない人間が持っているのに
ふさわしい絵じゃないのよ
だけど あの絵が
私の物だという証拠はない
それで もしかしたら父が
残していたという日記に
何か書かれているんじゃないかと
思って 今朝も…
で… 出た！か… 怪盗　ん？
おい 何をしておる
コソ泥のまねか？何とか言え
西山画伯の日記を
見せて下さい
何？お前 あの絵が目当てで
私に近づいてきたのか
そのために私の弟子に
だって あの絵は
西山画伯は私の…
絵も日記も誰にも譲らん
先生！
ふんっ 私が発掘したからこそ
あの絵の価値が上がったんだ
誰が コソ泥をするような
お前なんかに
私の功績がなければ あの絵だって
何の価値もない ただの紙切れだ
だいたい西山海里なんぞ
個展も開けないような
どうしようもない無名の
画家だったんだぞ
それを私が目をつけてやったんだ
ヤツも あの世で
私に感謝してるだろうよ
あいつは そう言ったの
あの絵に対して 父に対して
だから だから…
あるべき物をあるべき場所に
返してもらうのは当然じゃない
京香さん…
確かに絵というものは
持つべきものが持ち
見るべき者に見られてこそ
その存在価値が
あるのかもしれない
３度目の朝日が昇ったわね
しっかし まさか彼女が
怪盗紳士だったとはね
謎は全て解けた
どうした？
何なの？
明かりは？
暗くて見えん
ああ！え 絵がない
何！
おっさん
大丈夫だ
止まれ！
待てー！
いたぞー
追えー
そっちに行ったぞ！
い いたぞ！
残念だったな
こっちは行き止まりだ
もう逃げられん
そ その絵を返せ！
よくも だましたな
何が どうなってるのか
さっぱりだわ
朝になったのに どうして
真っ暗になったの？
朝日の絵を盗むために
本物の朝日を盗む
絵と一緒に絵に描かれた
モチーフを盗むってのが
あんたの趣味だろ？
どういうことだ？
さっき広間に差し込んできた光は
朝日なんかじゃなく
庭にある照明器からの
ものだったんだ
あれが？
じゃあ ニセの太陽だったのか
そのとおり 明け方
すりガラスの向こうからの光が
強まってくれば
誰もが夜明けだと思う
だが その瞬間
外の照明が いっせいに消え
本来の夜の闇に戻り
室内は真っ暗闇になる
あらかじめ眼帯をしていて
暗闇でも
目が利くようにしていた あんたは
１人 ゆうゆうと
絵を持ち去るってわけさ
美雪がオレに思い出させてくれた
じっちゃんの言葉が
このトリックを暴く
きっかけになったんだ
どうなんだい？遠藤さん
いや 怪盗紳士
遠藤さんが怪盗紳士？
森さんじゃなかったのか
ふっふ また名探偵の坊やに
やられちゃったみたいね
お 女！
どうもー
変装の下は あの時の
醍醐真紀の顔か
まあ どうせ
それも変装だろうがなあ
この顔ね ちょっと気に入ってるの
私の素顔の１つ
ふんっ その絵は
返してもらうぞー
仕方ないわねえ
偽物と すり替えてないだろうな？
そーんな こそくなことしないわ
でも その絵は あるべき場所へ
返してあげてね
え？
じゃないと私 許さないわよ
じゃあね
あっ ああ…
お… 追いかけろ
何としても捕まえるんだ
あるべき場所か…
で 結局あの絵はどうなったんだ？
それがなあ 藤田の家から盗まれた
西山画伯の日記を
裁判所に
送りつけて来たヤツがいてな
その中に写真が１枚
はさまれていたんだな
写真？
で その写真の裏に画伯の直筆で
｢朝日のあたる家｣を娘
千里に送ると書かれていた
それが画伯の正式な
遺言として認められたよ
じゃあ 絵は
京香さんのものになるの？
うん　彼女が罪を償い終えた
時には そうなるだろう
んで 日記を
送りつけて来たヤツって？
怪盗紳士に決まってるだろうが
ステキ！
ええ？
あー ごめんなさい
で その怪盗紳士なんだがな
見てみろ
満月の輝く夜 天使の大時計が
７つめの鐘を打つ刻
｢嘆きの女神像｣は
我が手の中に
新しい予告状？
手伝ってくれるよな？金田一
何でも好きなもん食っていいぞー
2000円以内なら
ここんちの2000円のサーロイン
ステーキセット食っていい？
ダメ！消費税 入れたら
2100円だろーが
んなセコイこと言ってっから
怪盗紳士に してやられんだよ！
それとこれとは関係ないだろ！
恥ずかしいから
やめなさい ２人とも！
はい…
南海の孤島 アカネ島
そこでオレたちが出会った
奇妙なサーカスの一団
女吸血鬼 オオカミ男
スネークマン
怪しげな怪物に
ふんした団員たちが
まか不思議な世界へと いざなう
その周りで起こる奇怪な事件
現場に残された｢モンスター｣
という文字
それに おびえる団員たちには
ある秘密があった
金田一少年の事件簿
最後の事件﻿さあ よい子の皆さん
楽しいゴブリンサーカスの
始まりだよー！
そして いよいよ最後を飾るのは
炎の巨人
モンスターだー！
うーん 潮の香りだわー
最高だね
南の島でバカンスなんて
まっ どうせ おっさんのコネだ
しょうもない激安ホテルか
ペンションに決まってるけどなー
激安？甘いな
超激安 １泊 3980円だ
そのホテル 屋根あるの？
もちろん ないかもな
あるある　大ありだ
おっ あれだ
リゾートホテルがある 茜島だ
なーんか妙に楽しそうじゃねえか
おっさん
おっ そうか？
なんせ久々の休暇だからな
鬼のいぬ間に思いっきり
息を抜かんとな
鬼のいぬ間って？
キャリア組だか何か知らんが
毎日 毎日 俺たちを監視しおって
えっ …っていうと つまり
分からんか この顔で
あっ 何となく分かるような
嫌みで
キザで
鼻持ちならない
エリート意識の塊の
お久しぶりです
ハーバード博士
ミスター明智　ロサンゼルスで
食事をして以来ですね
博士のレポートは漏らさず
読ませていただいています
全米を代表する精神分析医が
日本で更なる研究を
続けていらっしゃる
お会いするたびに勉強になります
いやいや 恐縮です
今日あなたに ある患者を
ご紹介しようと思います
おそらく あなたにとって
大いに興味深いと思いますよ
彼です
へー 結構いい感じじゃない
このホテル
気持ちがいいほど人けがないね
お察しのとおり
ただ今はシーズンオフなもんで
ございますから
今夜のお泊まりも
お客様方の他には
あ あれは？
サーカスのテントですよ
ゴブリンサーカスの方が
見えているんです
ゴブリンサーカス？
こぢんまりとした
サーカス団でしてね　当ホテルを
ご利用いただいています
毎年 この季節になると
サーカスの中でも
花形の何人かが特別練習のために
いらっしゃるんです
サーカスかあ　懐かしいなあ
ちょっと見てみようじゃないか
どこだ どこだ 入り口は
なーんか 今日のおっさん
はしゃぎすぎだな
俺みたいに緊張の続く
仕事をしてるとな
ふと童心に返りたくなるときが
あるんだ
分かるわー その気持ち
私だって同じですよ
あっ ここ開いてるよ
えっ？
こんにちは　お邪魔しまーす
はじめちゃん あそこに
ようこそ まか不思議な
サーカスの世界へ
僕たちは愉快な
ピエロジョーカーズ
スペードのサム
クラブのエド
ハートのジョンでございます
うわーっ！
驚かせてしまったようだね
我がゴブリンサーカスは
全員が怪物に扮することに
なっているんだ
彼女は女吸血鬼 黒木田 紅子
こんにちは
このヘビ男は
関節を自在に外せるスネークマン
海老沢 弓夫君だ
そして僕が狼男の犬神拓郎だ
それは どうも
あなたたち
ホテルの お客さんなの？
ええ
今の船で着いたばかりなんです
どうでもいいけどさ
夜中に出てこないでよね
今夜は満月だからね
みんなで行くよ
君の血を吸いにね
やめてー！
キャー！
誰か来てー！
あそこだ
ど… どうしたんですか？
そ… その小屋の中に
こ… これは
誰が こんなことを
はじめちゃん これ
どうした？
何だ この足跡
俺の倍はあるぞ
そうだな
これは
ん？
アルファベットのカード
モンスター イズ バック
モンスター！
やはり モンスターは
生きていたってこと？
帰ってきたんだわ
このゴブリンサーカスに
何のことですか？モンスターって
どうしたんだよ みんな
顕人
顕人？
ハーフかな
そうか 分かったわ
顕人 あんたの仕業なのね
あんな いたずら
何の話だよ
あんな悪趣味なことすんの
あんたしかいないわ
１年ぶりに ここに来て
ただでさえ みんな
あの事件のこと思い出して
不愉快になってるのに
どうして あんな
あの事件？
俺は何も知らないよ
とぼけないで
やめなさい ２人とも
団長
団長？
あなたが このサーカスの
団長さん？
お客様？これは どうも
お見苦しいところを
お見せしてしまったようで
申し訳ございません
なはー どうも
我々こそ部外者なのに
勝手に入りこんじゃって
すいませんな
とんでもない
こうしてサーカスに
興味を持ってくださる皆さんは
大切なお客様ですわ
そ… それは どうも
もし よろしければ ご自由に
テントで遊んでいってください
ええっ？
いいんですか？
ホントに？
やったー
さあさ みんな　午後から
リハーサルよ　準備をしてね
はーい
はーい
うーん 全く
けどさ 何か あの人たち
変な雰囲気だったよね
まあな　怪奇サーカスって
いうぐらいだからな
しかし…
おっさん
何か引っ掛かることでも
あんのか？
いやあ 別に
それにしても サーカスなんて
懐かしいなあ
何十年ぶりかなあ
あんたたち
ごめん ごめん
話し声が聞こえたもんで つい
ところで さっきは
ビックリしただろ
妙なもの見ちまってさ
あ はあ
俺たちも まさか モンスターの
名前を今日この日に
思い出すことになるとは
思わなかったよ
あんたたちの言ってる
そのモンスターってのは？
モンスターはモンスターさ
知れば命を落とすかもしれない
悪夢の物語
人間て１度 好奇心を持ったら最後
知りたいという欲望を
満たさずにいられない
愚かな生き物だ
ヤツの本名は 石川 隆
だが このゴブリンサーカスでは
炎の巨人 モンスター
そう呼んでいたよ
炎の巨人？
身の丈２メートル30センチ
とてつもない巨体の持ち主で
炎の技を操る
ゴブリンサーカスの名物だった
あれは１年前
客足が落ち込んでいた
ゴブリンサーカスは
強烈な出し物を目玉にして
観客を呼ぼうと
躍起になっていたんだ
そこで そのいけにえに
モンスターが
選ばれたというわけだ
確かに面白いアイデアだ
あのモンスターを
火だるまにしたらどうだ
それこそ客は度肝を抜かれるぜ
でもよ 万が一 事故でもあったら
どうってことないわよ
モンスターってからには
それくらい やらなきゃ
そうだよ
そのほうが迫力が出るぞ
あいつは文字どおり
怪物だからな
分かったわ　じゃあ私のほうから
石川さんに話しておくわ
彼はプロだから
危険と背中合わせの技でなければ
お客様を呼べないことぐらい
分かってるはずだわ
ところが モンスターの
新しいショーのテストの日
テストは失敗　モンスターは
あっという間に火だるまに
貴様らー　だましたな
この恨み 必ず晴らしてやるー
お… おい
誰か火を消して！早く！
消火器 持ってこい！
お… おい！早く…
ところが すべてが燃え尽きた
焼け跡から
モンスターは消えていた
消えていた？
そりゃあ 一体どういうことだ
遺体が発見されなかったと
いうことさ
生きて炎から
はい出したってことか
もちろん みんな手分けして
この島中を捜したよ
だが どこにも いなかったし
船を使って島を出た形跡も
なかった　つまり
もしも さっき見た
モンスターの足跡が
本当にモンスターのだとしたら
ヤツは あれから ずっと
この島の どこかで
生きていたことになる
１年に１度 ゴブリンサーカスが
この島にやってくる日を
待ち構えていたんだ
だましたな
この恨み 必ず晴らしてやるー
今日は ちょうど１年前の
あの日なんだよ
見て
こ… これは
どうしたんです？
こんなのが出たわ
今夜 誰かが死ぬらしいわ
えっ？
それ タロットカードでしょ？
自慢じゃないけど私の占いは
外れたことはないわ
ええっ…
金田一さん
さっきは ごめんなさい
改めて自己紹介します
私 このゴブリンサーカスの
空中ブランコで
妖精を演じている小椋 乃絵留です
よろしくね
の… 乃絵留ちゃん？
あー 妖精のイメージ
ピッタンコだね
なはっ なはっ なはっ
なはっ なはっ
何 デレデレしてんのよ あいつ
あのバカが
私と弟の顕人は空中ブランコの
コンビなんです
今からリハーサルをしますから
よかったら ご覧になりませんか
ええー いいんですか？
くそー あいつ
よく見ろ あのオヤジ
間違いない
マズイなあ
ハイッ
あっ
すごいな あの２人
息がピッタリね
さすが姉弟だわ
でも やっぱり
仲がいいって感じはしねえな
えっ？そういえば
一応ネットが張ってあるとはいえ
よく あんなに お互い命を
託すようなことができるよな
すごい
カッコいい　カッコよすぎだよ
うわー
はー　あ？
なーんか おめえ 顔が赤いぞ
それともオタフクか？
ドアホ だまってろ
顕人さーん
すっごい すてきだったわ
２人とも
ありがとうございます
あの…
私 金田一フミです　よろしく
どうも 小椋顕人 よろしく
素っ気ないとこが またいいわ
あの 顕人さんて
もしかしてハーフですよね
お母さんがアメリカ人とか
ああ そうだけど
どーりで カッコいい
ホント 姉弟そろって
まるでアメリカ映画に出てくる
スターみたいだわ
それに息もピッタリだしな
やめてくださいよ　僕と姉貴を
合わせて１人前みたいな言い方
僕と姉貴は空中ブランコで
コンビを組む
ただのビジネスパートナーなんだ
僕は そのうち このサーカスを
出ていくつもりだ
何を言うの 顕人
いいんだよ
このサーカスは いずれ
偉大なアネット伯母様から
可愛い めいっ子の姉貴に
受け継がれるはずだから
僕には無関係さ　ねっ 伯母様
皆さん 悪いニュースですわ
ええ？
台風が近づいてるようなんですの
予報では この付近を
直撃するっていう
ですから この島に来る便も
本土に帰る船も
すべて欠航になりました
ええ？それじゃあ
どうしよう
困りましたわ
私たち２～３日この島を
出られなくなりそうですわ
わー
ホントだ
あんなに風が
どういうことだと思う？
あのバカでかい足跡
いたずらだよ いたずら
乃絵留の言ったとおり
あのクソガキの顕人辺りが
でもよ あのメッセージ
やっぱり モンスターが
ビクつくんじゃねえ！
モンスターが何だ　問題は
あのボーッとしたオヤジだよ
おそらく ヤツは刑事だ
とうとう ここまで嗅ぎつけて
来やがったのかもしれねえな
俺たちのことを感づかれたら
今までの苦労は すべて終わりだ
今 誰か そこにいなかったか
えっ…
あと もうちょっとの辛抱だ
くれぐれも慎重にな
船は欠航してるんだ
何かあったら逃げ場がなくなるぞ
分かってるな
あ… ああ
ああ
まさか ホントに
あのモンスター野郎が
そんなこと あるはずがねえよな
ゆうべは眠れなかったわ
雨と風の音で
ああ 俺もだよー
ウソつけー　割れるような
大いびきかいて寝てたくせに
おはようございます
あっ おはようございます
昨日は どうも
よろしかったら私たちと
ブレックファーストしませんか
えっ いいんですか？
もちろんですよ
ホントに？
あいにくの天気に
なっちゃいましたね
毎年この時期はねー
骨休みになって いいじゃないか
あ… あの人たち　狼男
女吸血鬼に スネークマン
メイクを取ると意外と普通なのね
あっ あら？あの煙 何かしら
煙？
あ？ああっ
あれって燃料置き場の辺りじゃ
あそこには ガソリンもある
爆発したら大ごとだ！
おっさん
お… おお
あそこだ
あそこだ
あの文字は
見るな！
わー！
こ… これは
それはモンスター以外の人間では
とても運ぶことのできない
巨大なドラム缶だった
そのとき 俺たちは
巨大な怪物がさまよい歩く
逃げ場のない悪夢に
足を踏み入れていたんだ
嵐の中で燃え上がる文字
巨大なドラム缶に
押しつぶされていた犠牲者
これは やはり復しゅうを誓う
モンスターの仕業なのか
１年前の あいつの死に
隠された真実
それが今 団員たちの脳裏に
忌まわしい記憶としてよみがえる
そして その記憶が
恐怖に変わるとき
俺は見た　怒りに燃える
あいつの姿を
金田一少年の事件簿
茜島のリゾートホテルに
やって来た俺たちは
ゴブリンサーカスという
奇妙なサーカス団のメンバーに
出会った
そこには１年前に
炎と共に消え去った謎の巨人
モンスターの影が チラついていた
そして今 巨大なドラム缶と
赤く燃え上がる火文字の中
俺たちの目の前で犠牲者が
ドラム缶で押しつぶしてから
火を放ったか
んー 顔は誰だか分からんが
衣装からすると
３人のピエロのうちの１人だな
エドだ　クラブのエドだ
クラブのエドだと？
同じだ　同じだ
１年前と
あのときと
貴様らー　だましたな
この恨み 必ず晴らしてやるー
一体どういうことだ
あのでかいドラム缶は
灯油で満タンだった
総重量は400キロ
いや それ以上ある
それが エドの上に
エドは押しつぶされたんだ
満タンのドラム缶に
間違いないわ
モンスターの仕業よ
ドラム缶を持ち上げて
人間をつぶすなんて
あいつ以外の誰に できるの？
やはり モンスターは
この島のどこかに潜んでいたんだ
俺たちに復しゅうするために
バカなこと言わないでください
大人４～５人でも持ち上がるか
どうかってドラム缶ですよ
いくらモンスターだって１人では
持ち上げられるはずがない
持ち上げていたわ
えっ？
彼は
あの燃料置き場にドラム缶を
全部 運んだのは彼だった
私が見てる前で彼は平然と
ドラム缶を持ち上げ
積み上げて
それは すごい怪力の持ち主だった
そんな　そんなことが
ありえるのか
これは きっと始まりなんだ
ヤツは俺たちを１人ずつ
殺していくつもりなんだ
ここにいる全員に
モンスターに復しゅうされる
心当たりがあるんですか？
１年前 モンスターが消えた日
ホントは何があったんですか？
モンスターが火だるまに
なったのは
あれは単なる事故だったんだ
俺たちに復しゅうされる
いわれはない
そうかしら？彼はいつも１人
無口で文句１つ言わない男だった
だから みんなでギリギリの
危険な技を彼１人に押し付けて
平気でいるようなところが
あったじゃない
彼がそれを恨んでいなかった
はずはないわ
恨まれる理由なら
犬神さんが一番じゃないのかな
なにっ？
知ってるんだよ
モンスターが断らないのを
いいことに
毎月カネを借りてただろ
返すつもりもないくせにね
顕人 貴様！
フンッ
だ… 第一 恨みを買うなら
ヘビ男 お前だろ
ヤツを焼き殺した最後の技
あのとき鎖の仕掛けを作ったのは
お前だった
あの鎖が外れなかったから
ヤツは火だるまになったんだ
俺は万全を期した
鎖が外れなかったのは
不測の事態だったんだ
だがもし あのとき誰かが灯油と
ガソリンをすり替えていなければ
たとえ鎖が外れなくても
彼は脱出できる可能性があった
そ… そんな　確かに あの日
アネットさんに注文された灯油を
舞台まで運んだのは私でした
でも私は すり替えてなんか
いません
中身がガソリンだなんて
気づかなかったんです
あれは… あれはホントに
不運が重なった事故だったんです
でも彼は そうは思わなかった
次に殺されるのは誰かしらね
やめて
もう やめて！
乃絵留ちゃん
どうして こんなことに
モンスターは私たちの
仲間だったのよ
なのに今は この島のどこかで
私たちの命を狙ってる
今も すぐそばに
いるかもしれない
怖いわ 私　金田一さん
の… 乃絵留ちゃん
灯油のにおいだ
犯人は灯油を使ってエドを
ねえ はじめちゃん
この火文字の燃えカスの中にある
これ 何だろう
ん？
スモーク花火の
一種じゃないかなあ
スモーク花火？
ああ
煙を出すための花火さ
ほら 自動車なんかの
発煙筒のような…
そうか　だから あのとき
レストランからでも見えるほど
煙が上がったんだ
これも犯人が仕掛けたのかしら
でも なぜスモーク花火なんか
たく必要が…
金田一
ん？
事件は複雑になってきたぞ
えっ？
はっきりしたことは正式な検視を
待たんと分からんが
クラブのエドの死亡時刻は
死斑の状況から
どうも ゆうべ
深夜頃じゃないかと思うんだ
何だって？
殺されたのは深夜？
死因は絞殺の可能性がある
首の辺りにロープみたいなもんで
絞めたような跡があった
それじゃあ 犯人は深夜
クラブのエドを絞殺してから
ここに運んだっていうことか？
そして重いドラム缶を
体の上に置き
朝になって俺たちがレストランで
朝食を食べていた７時頃
エドに火をつけた
一体なぜ わざわざ そんなこと
いずれにせよ 朝から この雨だ
時限発火装置を使っても
火は うまくつかずに
消えてしまっただろう
つまり犯人は
俺たちが朝食を食べていた
まさに あのとき
火をつけたに違いないんだ
何だ 君たち
あ いやあ その… 気になって
エドは大事な仲間でしたからね
刑事さん
刑事さん？私 あんた方に
名乗りましたかなあ
いやっ… いやあ 分かりますよ
雰囲気で
な… なあ
も… もちろんですよ 刑事さん
えーと スペードのサムさんに
ハートのジョンさんでしたかな
お２人は今朝７時半頃
どこで何をしていたか
お聞かせ願えますかな
ちょっ ちょっと待ってください
まさか俺たち
疑われているんですか？
一応 全員に聞いてるんでね
ちなみにサーカスの他の皆さんは
私や金田一と一緒に
レストランで朝食を
取っていました
つまり アリバイがある
その時刻なら 確か
俺たち２人は部屋で
ショーの打ち合わせを
していましたよ
エドも来るはずなのに
なかなか来ないから
思い出したんですよ　エドが
朝の燃料当番だということをね
ホントは俺が当番だったんですが
代わってやると言ったんです
だから燃料置き場に
違いないということになって
ほーう それで騒ぎを
見つけたということですか
もういいですか？
勘弁してくださいよ
どうぞ
何か妙だな あの２人
いつもメイクをしたままだ
ここの団員たちですら
素顔を見たことがないらしいぞ
おっさん　あの２人の他に
もう１人だけ
あのとき レストランに
いなかった人物がいるぜ
アリバイのない人間が
うん？
もう１人？
あっ
団長のアネット根来さ
あーあ
とんだことになっちゃったな
嵐に閉じ込められちゃったときは
ラッキー 顕人君と仲良くなれる
チャーンス
って思ったんだけどな
よっし この際 ｢災い転じて
福となす｣というか
どさくさに紛れてというか
何とかして顕人君に
接近しなくっちゃー
はじめの じっちゃんの
名にかけて！
あ…
これ 英語劇の台本
持ってきてたんだ
はい
ちょっといいですか 顕人さん
な… なに？何だよ
顕人さんのお母さんは
アメリカ人でしたよね？
顕人さんも英語とかって
ペラペラですよね？
えっ？そりゃあ まあ 一応は
でも僕は日本育ちだし
アメリカは時々 公演に行くだけで
それで十分　私 今度
学校でやる英語劇で
白雪姫のシナリオ
書くことになったんです
ちょっと英語のセリフ 直して
くれたりなんかしてくれちゃうと
うれしいなー なーんて
変なヤツ
分かったよ　いいよ
散らかってるけどな
すると ある日 王子様が
やって来て
ワンデイ ザ プリンス
ハド カム
白雪姫の唇にキスをしました
ヒー キス… と… ところでさ
この劇 君がシナリオを書いて
君が白雪姫 演じるわけ？
当然っしょ
シナリオ書いて
主役までやるなんて
みんなの反感を
買うかもしれないぜ
えっ どうして？
僕の父さんは 元 このサーカスの
団長だったけど
裏方に徹して自分は決して
表には出なかったそうだよ
だから人望も厚かった
顕人さんのお父さんて
このサーカスの元団長だったの？
あ… いやあ　まあ とにかく
君も裏方に徹したほうが
いいんじゃない？
じゃあ 白雪姫は
他の人に回すかな
ちょっと書くもんと紙
貸してくれるかな
ああ
ありがと
はあ 仕方がない
魔女は私で やっぱ白雪姫は
星リエ辺りかな
星リエ？
うん かなりの美少女だよ
私より ツーランクは落ちるけど
よく言うよ
イヒヒヒッ
今日は ありがとう
また教えてね
なーんか とってもいい感じ
作戦 大成功！っと
あれ ここ どこ？
やだ 帰り道 分かんない
あー いっけねえ
ここって立ち入り禁止
エドが… エドが あんな姿に
モンスターだ　きっと あいつだ
次は俺たちの番だ
ガタガタ言うな
そんなこと あるわけがねえって
モンスターは間違いなく
あの火事で死んだんだ
死んだ男が エドを
やれるとでも思うのか
だったら 誰が エドを
誰だか知らんが そいつが
俺たちをやるつもりなら
返り討ちにするまでだ
それより問題なのは ヤツだ
あいつは俺たちのことを…
おい　ここは団員以外
立ち入り禁止だよ
あ… 迷っちゃったんです
ごめんなさーい
あのー アネットさん ちょっと
今朝７時半のことですね
殺人犯がエドに火を放ったと
思われる時刻
私は１人で ここにいました
ええ？
つまりアリバイは ございません
それを聞きにいらしたんでしょ？
いや まあ その… 念のために
お伺いしておこうかと
思った程度でして
私 いつも何か
考えたいことがあると
こうして誰もいない舞台に
ライトをつけるんです
何か もの悲しい感じがしますよね
誰もいない舞台っていうのは
ええ
特に このゴブリンサーカスの
舞台は
え？
かつて このサーカスも
魔法のような光に
あふれていたんです
けれど ある日
光り輝く舞台の裏に
深い闇が宿るようになった
何があったんですか
このサーカスに
それを説明するには
まず顕人と乃絵留の母親
リリーのことを話さなくては
なりませんね
リリー
彼女はアメリカのサーカスの
大スターでした
いつ どこにいても輝きを放つ
天使そのものでした
そして彼女がアメリカで
活躍していた頃
一緒にショーに出ていたのが
石川さんなんです
えっ？石川といえば
モンスターのことですよね
ええ 彼は東洋の大巨人として
持ち前の怪力で
人気を博していたんです
そして その頃 リリーは
私の弟と出会ったんです
弟はサーカスを勉強するために
渡米していた
２人は すぐに恋に落ち
リリーは駆け落ち同然で
祖国を飛び出し
弟の元に やって来ました
弟が団長を務める この小さな
ゴブリンサーカスに入団し
当時 空中ブランコをしていた私と
コンビを組んだんです
今 思えば その頃が
ゴブリンサーカスの絶頂期だった
誰もが まばゆい光の中にいた
ところが その後 間もなく
あの石川さんが リリーのあとを
追うように日本にやって来て
このサーカスに入団したんです
ええ？
正直ビックリしました
ちょっと怖い感じもしたんです
石川さんには リリーに
特別な思いがあった
そうとしか思えなくて
ちょっと胸騒ぎを感じていた
その矢先でした
リリーが練習中に
空中ブランコから落ちて
亡くなったんです
リリー！
その事故以来 リリーを
深く愛していた弟は
抜け殻になってしまいました
顕人や乃絵留のことも忘れ
自ら破滅を選ぶかのように
荒れ続けて
ほとんど自殺同然の死でした
今は もう遠い過去
けれど リリーと弟が
いなくなってからというもの
このサーカスでは どんな楽しい
ショーが演じられていても
どこかに暗い闇が潜み続けて
いるように思えるんです
そして その闇は
石川さんと切り離せない
無論 誰も石川さんを
責めることはできません
でも もし… もしも石川さんが
このゴブリンサーカスに
やって来なければ
リリーと弟は今も この舞台の上に
立っていたんじゃないか
私には そう思えてならないんです
夢か　しかし何なんだ
この胸騒ぎは
ジョン 俺を呼んだか
どこだ　こんな所で何の用だ
はっ
ああ もしもし 金田…
あっ 乃絵留ちゃん？
どうしたの？
早く… 早く来て！
お願い！
乃絵留ちゃん！
金田一さん
あの部屋から恐ろしい声が
えっ？
くそっ　鍵は？
鍵は普段 中からしか閉めないから
たぶん フロントに行かないと
あっ
おい 誰かいるのか
モンスター！
わあっ
金田一さん
早くフロントに行って
この部屋の鍵を
はい
何の騒ぎだ
モンスターが中にいるんだ
何だって？モンスターが
ドアを破るんだ
ま… 待て
相手は怪力の殺人鬼なんだぞ
武器がなけりゃあ
ひとたまりもない
よーし こう見えても剣道２段だ！
煙？まさか火を
この部屋には窓がないんだぞ
中で火をつけたりしたら
自分も蒸し焼きに！
こ… これが鍵です
開けますよ
よーし みんな 少し離れてろ
動くなー！警察だ！
これは…
死んでる　スペードのサムだ
どこだ　どこだ
どこだ　モンスターは
モンスターは… はっ
そ… そんなバカな
俺は はっきりこの目で
見たんだ モンスターを！
密室から こつ然と
姿を消したモンスター
部屋に残されていたのは
謎のメッセージだけ
確かに この目で見たんだ
くそっ　俺は何かを
見落としてるのか？
おい フミ　何でお前が それを
まさか モンスターの正体って
そして日本中を揺るがせた
もう１つの事件の影が今
金田一少年の事件簿﻿密室から こつ然と姿を消した
巨大な殺人者 モンスター
ゴブリンサーカスで次々と起こる
ピエロの連続殺人
炎に焼かれたモンスターの
復しゅうなのか
モ… モンスターの仕業か
何ていうことだ
サムまで殺されるなんて
しかしモンスターは どこへ
確かに見たんだ　スペードの
サムが逆さづりにされてて
その倍はある バカでかい巨人が
たいまつを振りかざすのを
俺は はっきり見たんだ
私も この部屋の中から
恐ろしい声がするのを聞きました
間違いありません　この中には
絶対サムさんの他に誰かいました
ここは窓もない部屋だぞ
一体どこに消えたって言うんだ
同じだ １年前と
ヤツが炎の中から消えた あの時と
ジョン！
モンスター
彼は悪霊になったのよ
そして１人ずつ自分と同じように
炎の中に引きずり込んでいくのよ
おやめなさい　悪霊なんて
サムは自殺したのよ
何らかの理由で
こんな手の込んだことをした上で
自殺した
そう考えるしかないでしょう？
出口のない部屋から
人が消えるわけないわ
どう思う？おっさん
モンスターが出ていったとすれば
唯一この通気口しか ないんだ
おいおい 金田一
お前が見たのは
２メートル以上の
巨人だったんだろ？
こんな通気口から どうやったら
出られるっちゅうんだ
やっぱりお前が見たのは 何かの…
いや 違う
あれは幻でも悪霊でもない
絶対に生身の人間だった
それにしても全く
何にもない部屋だよなー
これじゃあ隠れる場所も
トリックもありゃしねえっつうの
ああ そういえば もう１つ
こんなものが
遺体の下敷きになっていて
燃え残っていた紙切れだ
モンスターのメッセージか
被害者のダイイングメッセージ
という可能性も考えられるが
妙だな　何か にじんだ感じだ
油性のペンで書いたのか？
何だろう
剣持警部
あ？
お電話です
警視庁からだそうですけど
おお すまん
待てよ　逃げる気か？
貴様だ　貴様がエドとサムを
やったんだろ！
白状しろよ
どうしたのかしら
俺には分かってんだ
貴様に違いない！
やめろよ ジョン
つまらん言いがかりは よしてくれ
待てよ ヘビ男
どうしたんですか？一体
あいつが犯人に決まってるんだ
えっ 海老沢さんが？
ヘビ男の得意技は関節外しだ
関節を外せば あの部屋の
通気口からでも
抜けられるはずだろ？
サムをやったのは
ヤツしかいないんだ
こっちは２人も
犠牲者が出てるんだ
嵐もやんだし
一刻も早く来てくれ
もしもし？おい どうした こらっ
聞いてるのか！
もしもし もしもーし
聞いてますよ 剣持警部
そっ… その声は
私です
ああ… あの… 明智警視
休暇中のはずでは？
けっ こんな島 おさらばだ
嵐がやんだら船が来る
こんなとこにいたら
今度は俺が殺されちまう
そちらで何が起こったかは
聞きました
は… はい
実は私からも重大なことを
お伝えしなくてはなりません
重大なこと？
ええ　10年前に起きた
津雲銀行の襲撃事件を
覚えていますね？
警備員を２人射殺して
２億円を強奪した あの事件ですね
俺はエドやサムと違うんだ
殺されねえぞ
そんなの動かせるわけ
ないじゃない
そうだよな
仮に あの小さな通気口を
通れたヤツがいたとしても
400キロもある こんなでかい
ドラム缶を運んで
人の上に乗せるなんて
できるのかなあ
やーだ はじめちゃん
汗びっしょりよ
くそー　もう１度 頭冷やして
考え直すか
あー 気持ちいい
何だ この水
どうしたの？
どうしたも こうしたも
このホース
あ？
そうか　分かったぜ 美雪
分かったって何が？
犯人は巨大なドラム缶を使って
あたかも巨大な人間にしか
できない殺人のように
見せ掛けたんだ
それじゃあ
犯人はモンスターじゃないの？
これは れっきとした
生きた人間の仕組んだ
計画犯罪なんだ
俺が見た あの巨人も 何らかの
トリックだったに違いない
必ず解いてみせる
じっちゃんの名にかけて
待て！待たんか こらあ
くっそー
ハートのジョン
津雲銀行 襲撃の件で
貴様に話がある
くそー！
ピエロ３人が指名手配中の
強盗殺人犯？
10年前の津雲銀行 襲撃事件を
覚えてるだろ？
ああ　日本中 大騒ぎだったもんな
ハートのジョン 本名 大久保勇夫
そして死んだエドの小平と
サムの榎本
３人組の強奪犯人だ
ピエロのメイクをしてりゃあ
顔を隠せるし
誰も不自然には
思わないってわけか
身元を隠すにはサーカスは
うってつけの場所だったな
あ？でも どうして分かったんだ
おっさん
なっ… いやあ
明智警視の情報だ
どうして明智さんが？
明智警視が独自で調査していてな
もしやというんで問い詰めたら
ビンゴってわけだ
ピエロが銀行強盗の犯人？
ねえ はじめちゃん
やっぱり この事件
ピエロたちの仲間割れ
なんじゃないの？
何とも言えないけど
大きなヒントだと思うよ
何すんだよ
はみ出ちゃったじゃない
もう せっかくうまくいってたのに
何やってんだ お前
英語劇の準備に決まってるでしょ
それ ひょっとして白雪姫が
食べる リンゴですか？
これがカボチャに見えるのか？
おーお そんなでかいリンゴ
食うの大変だな
舞台は広いから あれくらい
大きいほうがいいのよ
分かってないな
客席から見ると こんなんじゃ
小さすぎるでしょ
遠くから見るのは これくらい
大きくして ちょうどいいんだよ
遠くから見るために大きくする
そうか もしかしたら
何だよ
何か分かったの？
段ボールと模造紙 貸してくれ
ええ？
ダメだよー　ああ もう
あーん ちょっと
実験してみたいことがあるんだよ
何か落ちたよ
え？ああ
ああ 悪い 取ってくれよ
何なの？これ
あっ
モンスターのメッセージ？
あ 違うよ　これ
フミ お前 それ
何か知ってるのか？
知ってるけど
ホントか？
教えてあげようか　これはね
ホントか？金田一
ああ　密室のトリックは
模型を作ってみて分かった
この焼け残った紙も
犯人を示す証拠になる
謎は すべて解けた
どうする？金田一
早速 全員を集めて
いや その前に まず俺たちの手で
炎の巨人モンスターを
作り出すんだ
モンスターを作る？
そうさ　犯人がやったのと
全く同じ やり方でね
わざわざ集まってもらって
すみません
何だっての？練習中に
呼び出したりして
これから みんなの前で
解き明かしたいんだ
すべての謎を
すべての謎？
そう　今回の事件に
モンスターなんて最初から
どこにも いやしなかったんだ
巧妙なトリックや
心理作戦を使って
モンスターの仕業に見せ掛け
ピエロのエドとサムを
殺害した真犯人
それは この中にいる
えっ　そ… そんなバカな
そうだよ　妙なことを
言い出さないでくれ
エドの上には400キロを超える
ドラム缶が乗せられてたんだ
この中の誰が そんなもん
運べるっていうの？
それが運べるのさ
答えは実に簡単
小学校の理科の実験だよ
よっ
あっ
要するに400キロのドラム缶は
400キロの鉄の塊とは
違うってことさ
よっ
中身を空っぽにすれば
２～30キロの重さで
簡単に運べるんだ
そして運んだあとから
ドラム缶の中へ灯油を入れるには
こうしてホース１本あれば
高低差を利用して
簡単に移せるんだ
んー ひと缶につき
５分の１くらいだったら
減ったことも目立たないしね
こうやってホースの口を
吸い上げて
手で押さえて下のドラム缶へ
この方法で灯油を移せば
んー １時間もあれば
400リットルを満タンに
できるんじゃないのかな
そういうことだったのか
でも どうして
そんなことまでして
モンスターの犯行に
見せようとしたっていうの？
それを説明するには まず あの朝
何が起こったのか
整理しなくちゃならない
ハートのジョン
なっ… 何だよ
あんたは あの朝のことを
こんなふうに言ってたよな
エドも来るはずなのに
なかなか来ないから
思い出したんですよ　エドが
朝の燃料当番だということをね
ホントは俺が当番だったんですが
代わってやると言ったんです
だから燃料置き場に
違いないということになって
あの話はウソだったんだよな
本当は あの朝あんたは
燃料当番として ここへやって来て
ドラム缶の下で死んでいる
エドを発見した
慌ててサムに知らせたけれど
400キロのドラム缶が
重しになって
全くエドは動かせない
警察が来て調べれば
身元がバレてしまう
焦った あんたたちは
手近にあった灯油を使って
火をつけ エドの顔を
分からなくすることで
自分たちの正体を隠そうとした
そうだろ？
ああ
お前の言うとおりだ
た… 確かに俺たちは エドを
でも 火をつけた途端
導火線みたいに炎が走って
あの火文字が もうもうと
煙を上げて燃え出しやがったんだ
すごい煙だったんで
誰か来ると思い
急いで逃げたんだ
そう　実際 俺たちも
その煙を見て
すぐ この現場に駆け付けた
そして煙が上がった時間と
火文字が まだ くすぶっていた
ことなどから
当然 犯人が火をつけたものと
思い込まされていた
だが この行動すべて
ピエロが お尋ね者の
犯罪者であることも
火をつけることも犯人は
すべて先読みしていたんだ
それじゃ モンスターの犯行に
見せ掛けたのは
そう　400キロの重しで
エドをここから
動かせなくすることで
自分自身のアリバイを
手に入れることが狙いだったのさ
じゃあ 犯人は？
つまり逆説的に言えば
あの朝 アリバイのあった人物こそ
この事件の容疑者になる
ええ？
あの朝 レストランには確か
団長とジョン以外は
全員いたよな
あなたたち まさか
この坊やの言うことを
うのみにするわけ？万が一
クラブのエドを殺したのは
モンスター以外の人間でも
可能だったとしてもよ
サムの場合はどうなるの？
そうだよ
自分で言ってたじゃないか
間違いなく
身長２メートルを超える
巨大なモンスターを見たって
張りぼての巨人を
こしらえたとでも
言い出すのかしら？
その謎は すでに解けてるんだ
えっ？
あれは確かに生身の巨人だった
そして巨人は今も あの部屋にいる
そんなバカな
美雪 準備してくれ
オッケー
さあ みなさんも あの焼けた
部屋の前へ集まってください
どういうことなんだ？
信じられないわ
モンスターが どうして
この中にいるのよ
俺は あの朝 乃絵留ちゃんに
呼ばれ
この部屋の中から恐ろしい声が
聞こえたっていうんで
この隙間から のぞいて
モンスターを見たんだ
海老沢さん ちょっと
のぞいてみてくれませんか
あのときと同じように
えっ 俺がか？
無駄だと思うけど
お願いします
モンスターなんて
えっ？
ああっ モンスターだ
まさか
ちょっと代わって
はっ
これは どういうことなの？
簡単なトリックさ
もういいぞ　出てきてくれ
誰なの？
フミちゃん
そんなバカな
すぐ隣に立ってた七瀬さんより
でかかった
1.5倍はあったぜ
私も確かに見たわ
もちろん ただの錯覚なんかじゃ
ありませんよ
この部屋には誰が見ても
そう見えるように
こんな仕掛けがしてあるんだ
これは？
紙で部屋の形を変えてあるのか
俺たちが模造紙をはって
作り上げた
トリックの実験室さ
見てのとおり左奥から
右手前に向かって
部屋を間仕切りする形で
紙を はってある
天井にも左から右へ向かって
傾斜が つけてあるんだ
つまり この部屋は天井も奥行きも
右側が左側よりも
小さくなっているのさ
しかし さっき のぞいたときは
普通の四角い部屋に見えたぞ
当然だよ　だって
遠いものより近いもののほうが
大きく見えるでしょう？
俺も この模型を作って
分かったんだけど
壁の右隅を左隅と
同じ高さに見えるように
こんなふうに部屋を変形させて
遠近感なしなら普通の
四角い部屋に見えるんだ
そうか 床ぎりぎりのドアの
隙間から片目で見れば
遠近感が分からないからな
しかも視点を低くすれば
床も ほとんど見えないし
ホントだ　これなら手前の人物と
後ろの人物の大きさが
随分 違って見えるんだ
つまり あのとき俺が見た
巨大なモンスターは
ここにいる誰にでも
可能だったんだ
えっ？
わざと暗くした照明といい
サーカスの舞台や奇術に慣れた
犯人の思い付きそうなトリックだ
あのあと犯人は のぞいている
ドアから俺を引き離すために
たいまつを投げつけ視界をふさぎ
用意しておいた灯油をまき
火をつけたんだ
トリックに使った紙や糸は
瞬く間に燃えてしまって
何も残らない
そして その炎はエドのときと同様
サムの正体も隠してくれる
でも それが事実だとしたら
犯人は どうやって
部屋から出たのよ
その答えは この焼け残った
紙切れにある
モンスター
最後のＥとＲは切れてるけど
そう見えるのは当然だ
俺たちは何度も現場で
同じようなメッセージを
見せられてきたからね　だが
そう見えるのは単なる偶然で
ホントは全く別の意味を
持っているんだ
別の意味…
これを見てくれ　この一見
無意味に見える６本の線
何に見える？
それが何だっていうんだ？
実は こいつを逆さまにすると
犯人が分かるんだ
ピエロのエド そしてサムを
殺したモンスター
それは お前だ！
謎は解けたよ　そう
この紙切れが教えてくれた
あの密室から消えてしまった
巨大なモンスターの正体をね
だけど なぜ お前は
２人のピエロの命を
奪わなければならなかったのか
一体まだ どんな秘密が
このゴブリンサーカスに
隠されているんだ
俺は今 その最後の謎に挑む
じっちゃんの名にかけて！
金田一少年の事件簿 最終回
ＭＯＮＳＴＥＲ
ＩＳ
ＢＡＣＫ
クラブのエド
スペードのサム
地獄の炎に包まれ
次々に命を落としていった
２人のピエロ
ゴブリンサーカスにうごめく
邪悪な陰謀
煙と共にかき消えた炎の巨人
モンスターの正体とは
実はこいつを逆さまにすると
犯人が分かるんだ
クラブのエド
そして
スペードのサムを殺した
モンスター
それは
お前だ！
まさか
顕人が？
馬鹿な
一体どういうことだよ
この訳の分からない６本の線
何だと思います？
うん？
それ…
漢字か？
漢字の
一
二
三か
そう
しかも
それは単なる数字ではありません
え
どういうことなの
それは
ある人物の名前なんです
最も身近にいながら
逆さに見てたので
俺も気が付かなかった
そして
その隣のアルファベットも
こ
これ
ＳＮＯＷ…
ＳＮＯＷだわ
一番上は文字が切れてて
何だかよく分からないけど
だから
それと顕人と
一体
どういう関係があるっていうの
それは
それは
スノーホワイト
白雪姫のことだよ
ニ三ちゃん
いい
私から言う
今度
学校で
英語劇やるの
それが白雪姫
この劇
君がシナリオ書いて
君が白雪姫を演じるわけ？
うん
じゃあ
白雪姫は他の人に回すかな
やっぱ
白雪姫は
星リエ辺りかな
このレポート用紙に
私が書いたものよ
それが
下の模造紙に写ったものなの
その６本の線は私の名前
ＳＮＯＷの上は
白雪姫の役に決めた
星リエちゃんのエの字
間違いない
顕人君
君の体格なら
あの通気口から
楽に脱出できる
そうだろ
そんな
し
しかし
相手は大の大人だぞ
顕人が本当に２人も
ああ
もちろん１人じゃ無理さ
今度の事件には共犯者がいるんだ
あっ
あ…
ああああ
うわあああ
乃絵留
ま
まさか
金田一さんの言う通りよ
ふん
あんたそれで
事件を解決したつもりか
何にも分かっちゃいない
全て僕が１人でやったんだ
姉ちゃんは無実さ
顕人
あんなけだものたち
僕１人で十分だったよ
やめて
私をかばわないで
私も顕人と同じ気持ちだった
どうして
どうしてこんなこと
復讐だよ
そこにいるハートのジョンたちは
父さんと母さんと
石川のおっちゃんを殺したんだ
団長たちを
どういうこと
真実はおっちゃんが教えてくれた
おっちゃんは
モンスターなんて呼ばれてたけど
本当は優しくて
誰よりも泣き虫だった
僕はそんなおっちゃんが
好きだった
１年に１度
ゴブリンサーカスが
この島に来ると
僕たちはいつも
秘密基地にしてた
大きな木の下で遊んだ
そしてある日
タイムカプセルを埋めよう
ってことになったんだ
あ
これも入れなきゃ
それって
お母さんだよ
写真
これしかないもんね
仕方がないよ
お母さんが天国に行った時ね
お父さんは悲しくて
お母さんの写真
全部焼いちゃったんだって
それですぐ
お父さんも
お母さんの所へ行っちゃった
これじゃ
忘れてしまいそうだよ
お母さんの顔
でも
いいや
見たくなったら
おっちゃんに見せてもらお　ね
いいでしょう
あ
う
うううう
おっちゃんは無口だったし
あまり友達がいなかった
でも
父さんと母さんは
おっちゃんの
本当の友達だったんだ
おっちゃんの一番大事な宝物は
僕たちの父さんと母さんだって
おっちゃんは言ってた
君たちのお父さんとお母さんが
天国に行った時
おっちゃんは約束した
顕人と乃絵留はおっちゃんが守る
ずっと
おっちゃんは僕たちの親友だった
僕にとって
一番大事な人だったんだ
なのに
おっちゃんは炎に焼かれ
消えてしまった
僕は待ち続けた
おっちゃんはどこかで生きてる
必ず帰ってくる
でも何の手掛かりもないまま
また夏が来て
ゴブリンサーカスは
この島にやってきた
そしてふと思い出し
懐かしくなって開けてみると
それは初めて見る
おっちゃんの手紙だった
おっちゃんは万が一の時のために
真実を書き残していたんだ
いつか僕が掘り起こすと信じて
おっちゃんは
薄々気付いてたらしい
父さんや母さんの死と
３人のピエロたちに
何か関係があるんじゃないか
ってことに
そして１年前のある晩
俺はもう嫌だ
こんなメーク
もううんざりだ
馬鹿野郎
もう少しの辛抱だ
時効まで我慢するんだ
それが出来ねえようなら
今度はてめえが
リリィのようになる番だ
お
そこにいるハートのジョンは
石川のおっちゃんに
散々愚痴をこぼしたそうだ
ぐでんぐでんに酔っ払って
サムへの不満をぶちまけてたって
あんな汚ねえやつはいねえぜ
死んだ小椋が
俺たちの面倒をみててくれたのも
小椋には俺たちに
借りがあったのさ
それをうまく利用したのは
サムの野郎だ
何が次は俺の番だ
リリィのようになるのは
てめえの方だ
どういうことだ
え？
な
何でもねえよ
へへへ
酔っ払いのたわ言さ
どういうことだ！
リリィがどうした
言え！
おっちゃんは
そこで全てを知ったんだ
言え！
どああああ
榎本
このサーカスに
かくまってやるのは
もう限界だ
頼む
自首してくれ
いいのかい？俺たちの金使って
傾きかけたこのサーカス
立ち上げたんだろ
じゃあ
この俺が警察に
もう遅いんだよ
そんなことがばれたら
このサーカスは
恨むんなら
自分の甘さを恨むんだな
リリィは
リリィなら分かってくれる
リリィが
そうだ家族は大切にしなきゃな
なあ
お前からも言ってくれよ
考え直せってよ
私はあの人を信じてます
あの人が決めたことなら
そうさせてあげたい
もうこれ以上
あの人を苦しめないで
痛い思いをしなきゃ
分からねえようだな
馬鹿が　そっちの方こそ
逃げ道ねえじゃねえか
さあ
どうするかな
もう後がないぞ
と
飛びます
馬鹿なこというんじゃねえ
あんたには出来ねえよ
顕人や乃絵留のこと考えるとな
くそう
あああ
そんな
そんな
殺してやる！
あああ
わあああ！
そして
おっちゃんは
ピエロたちを警察に突き出す
決心をした
だけど何が起こるか分からない
だから身の危険も感じていた
おっちゃんは
念のために
手紙を書き残しておいたのさ
その後のことは
簡単に想像出来たよ
こいつらは事故に見せかけて
おっちゃんを
あの手紙を読んで
僕はせめて証拠くらい
つかんでやろうと思った
そしてある日
ボロボロになって
磯に打ち上げられた
おっちゃんのマスクを
見つけたんだ
ちょっと持ち上げただけで
ちぎれてしまったそのマスクは
もちろん去年は
そんな所にありはしなかった
おっちゃんのマスクは
この広い海を
１年かけてさまよって
そしてこの島に
やっと帰ってきたんだ
おっちゃんは今でも
どこか海の底にいるんだ
だって
あのマスクが
ちぎれて粉々になった時
声が聞こえたんだ
助けてくれ
敵を討ってくれって
そ
そんなことが
あいつは自分では警察に通報せず
俺たちに自首を勧めた
しつこくな
それがあいつの
身の破滅を呼んだんだ
石川は俺たちに
チャンスをくれたのさ
灯油をあらかじめ
ガソリンにすり替えておき
どんなに早く鎖を解いても
絶対に炎からは
逃げられないように工夫した
悪く思うなよ
まだ捕まるわけにはいかねえんだ
だから
おっちゃんの形見と
なってしまった写真を見る度
自分に言い聞かせてたんだ
僕は
僕は
おっちゃんと同じ苦しみを
こいつらに
こいつらに
石川さんは
誰も巻き込みたくなかったのね
他の団員たちに
迷惑が掛からないように
無理やりにでも
自首をさせようと思ってたんだわ
おっちゃんは
父さんと母さんが好きだった
そして何より
このゴブリンサーカスが
大好きだったんだ
ごめんな
姉ちゃん
無理やり計画に付き合わせて
えっ
でも
僕は自分でしたことは
自分で片をつけるよ
けりをつける
顕人
何を
顕人！
顕人！
馬鹿なまねはやめろ！
下りてきなさい！
いつも飛んでる
ここからなら怖くない
いつもと同じように
やればいいんだ
顕人君！
マットか何かないのか？
そうだ
あのクッションなら
皆でかかれば
何とかなるわ
父さん
母さん
おっちゃん
やめろ！
やめるんだ
お前一人が罪かぶって
姉ちゃん助けるつもりだろうが
残されたもんは
もっとつらくなるのが
分かんねえのか！
自分一人死にゃ
何とかなるなんて
お前が考えてるほど
世の中
甘くねえんだよ！
来るな！
そんなこと
絶対させねえ
そんな死に方
俺が絶対許さねえ！
あああっ
一ちゃん
それに
悲しむのは
お前の
姉ちゃんだけじゃないんだぞ
駄目
駄目
死んじゃ嫌だ！
自分一人で片つけるだと
けりつけるんだと
けりなんかつかねえじゃねえか！
生きろよ
生きてくれよ
頼むよ
あはっ
ああ
あああ
あああ
ああ
あ
うわあ
もう駄目だ
顕人
もう少しだ
我慢してくれ
顕人！
ああっ
うわああ
あ
あっ
あっ
ああ
死ぬかと思った
一ちゃん
大丈夫？
何とか
よかった
ああ
心臓に悪い
石川さん？
おっちゃん？
おっちゃんなのか
言ったろう
お前たちは
おっちゃんが守るって
おっちゃあん！
顕人
会いたかった
会いたかったよ
おっちゃんもだ
おじさん
おじさーん！
乃絵留
わあーん
寂しかった
寂しかったよ
ごめん
ごめんよ
これは一体
おおっ
明智警視
１年前
大けがと大やけどを負った彼は
ここから遠く離れた
伊豆の海岸に
流れ着いていたのです
身元も分からず
記憶を失っていた彼は
ハーバード博士の患者として
治療を受けていました
ただ
最近になって
記憶の断片を語り始めた
その話を分析した
ハーバード博士と私は
３人のピエロと
過去の銀行襲撃事件との関係に
たどり着いたというわけです
そして彼がここに着いた時
完全に記憶を取り戻したのです
顕人
石川さん
戻ってきてくれたのね
団長
もう
行かない
もう
どこにも行かない？
ああ
どこにも行くもんか
これからもずっと一緒だ
おっちゃーん！
これからも一緒に生きていこう
こうして
また一つ
事件が終わった
アネットさんはこう結んでるわ
あの日から私たちは
初めて本当にゴブリンサーカスが
一つになったと感じています
皆が力を合わせ
いつかきっと
かつての輝きを
取り戻す日が来る
今はそう信じています
ですって
最後に顕人君から
一ちゃんに
心からありがとうって
顕人君
元気そうでよかったね
うん　まあな
ああ
いたいた
何やってんですか
学校始まっちゃいますよ
ああ
いつきさんから
メール届いてんですよね
助けてほしいって
うううん
やだ！
そんな
焼肉食べ放題らしいっすよ
今
そんな気分じゃねえっつうの
おおい
金田一！
駄目ったら
駄目なの
ああ
先輩
逃げないで
まだ何も言っとらんぞ
でも当たってんでしょ
先輩
お願いしますよ
嫌だあ！
今日はやけに頑固だな
手伝ってくれたら
乗っけてやるのに
でも結局やることになんだよね
やっちゃうんだよな
一生こうかな
ああいうのと一緒になるやつは
大変だろうなあ
大丈夫ですよ
私なら
慣れてますから
そうか
あっはははは
あ
うえっ
ええ
うえ
ええ
ああっ
あっ
ああ
やっぱ
乗っけて！